安斎都「Iにまつわるミステリー」高森藍子「遺産相続人高森藍子」 (31)

ガバガバなんちゃって推理ってほどでもない日常の謎っぽいミステリーもどき、始まります。
多少個性を盛っています。今回の話の元ネタは蒼井上鷹作の『4ページミステリー 60の奇妙な事件』より抜粋しています

前スレ
安斎都「Iにまつわるミステリー」荒木比奈「彼女が眼鏡を忘れた理由」
安斎都「Iにまつわるミステリー」荒木比奈「彼女が眼鏡を忘れた理由」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435233104/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435398718


藍子「今週も始まりました高森藍子のゆるふわタイム。この番組は毎週木曜日に346プロダクション所属アイドルの私、高森藍子がお届けする30分のラジオ番組です」

藍子「のんびりとふんわりした時間を貴方に。また、夜の23時半から再放送もしています。そちらもチェックしてみてくださいね」

藍子「では、今回のゲストをお呼びしましょう。ゲストさん、いらっしゃい」

都「こんにちは! 見た目は子供、頭脳は大人! その名は……名探偵安斎都です!!」

藍子「はい。4869プロダクション所属の安斎都ちゃんですっ! よろしくお願いしますね」

都「こちらこそです! 収録中に事件が起きても、ババンと解決しちゃいますからね!!」


みなさんこんにちは!! 私はああ安斎都探偵事務所(4869プロダクション)所属の探偵アイドル安斎都です!!
今日は346プロの先輩アイドルである高森藍子さんのラジオにお呼ばれしちゃいました!!

藍子「メッセージが届いていますね。ラジオネーム:黒澤陣さんから」

藍子ちゃん、そしてゲストの都ちゃんこんにちは!

藍子「こんにちは」

都「こんにちは!!」

いつもはゆるふわ時空なラジオですが、元気いっぱいのメイ探偵がゲストということでどんな化学反応が起きるか楽しみです!!

藍子「良く言われるんですけど、そんなにゆるくてふんわりしているのでしょうか? 噂によると、不眠症に悩んでいる人が私のラジオを聞いて眠れるようになったって話を聞きましたが……」

都「それだけ優しい時間ってことですよ!」

藍子「優しい時間、ですか。そう思っていただけるのなら、パーソナリティー冥利に尽きますね。それではまずはこちらの曲をお届けしましょう。愛内里菜さんで、恋はスリル、ショック、サスペンス――」


収録後――

P「お疲れ都。今日は中々よかったんじゃないか? 無表情でパラパラ踊りだしたときはどうなるかと思ったけど……」

都「すみません、つい探偵の血が騒ぎだして」

P「なにその呪われた血」

藍子「お疲れ様です」

P「ああ、お疲れさん。藍子も番組の進行が上手くなったな」

藍子「はい。経験が活きてきていますから」

P「そうか、ジュースを奢ってやろうか?」

藍子「いえ、大丈夫ですよ」


都「前から思っていたんですけど」

P「うん?」

都「プロデューサーさんって、346プロの先輩アイドルの皆さんを下の名前で呼べるんですね」

P「まあ、元々346で仕事していたしな。色んなアイドルと関わってプロデュースして、今の社長が独立するって時に誘われて、まあ今に至る」

藍子「私もプロデューサーさんには色々とお世話になりましたからね。感謝しています」

都「本当は凄いんですね! 流石私のワトソンくんです!!」

P「本当はってなんだよ」


藍子「ふふっ。それじゃあ私はこれで……」

???「すみません、高森藍子さんですね?」

藍子「ええ、そうですけど……どちら様でしょうか?」

藍子さんの前に初老の男性が立ちます。高そうなスーツを着て、胸にきらりと光るバッジ――

P「えっと、弁護士さん?」

弁護士「ええ。私、こういうものでして」

P「あのっ、私は高森のプロデューサーではないんですけど……」

弁護士「そうでしたか、それは失礼いたしました。ですが今回要件があるのは、高森藍子さん自身でして」


P「何か訴えられるようなことでも?」

藍子「ええ!?」

弁護士「いえ、そういうわけではございません。実は」

もったいぶるようにひと呼吸おく弁護士さん。そして彼は、私たちの予想もつかないようなとんでもないことを言い出したのでした。

弁護士「私の依頼人が、高森藍子様に2000万円の遺産を残されたのです」

藍子「えっ?」

P「えっ?」

都「えええ!?」


あの後のことですが、最初藍子さんは戸惑っていました。それもそうでしょう、名前も顔も知らない人から2000万円の遺産を相続するなんてドッキリか何かと疑っちゃいます。

弁護士『依頼人は、貴女の声に救われたのですから』

藍子『そう……ですか』

藍子さんも終始キョトンとしていました。でも2000万円なんて大金が出てきたら、放心状態になるのも無理はないですね。

P「調べてみたら結構な資産家だったみたいだな。弁護士さんも言ってたけど、近親者がいないから藍子が全部相続するってことになったみたいだし」

P「これ、裏に何かややこしい事情とかあるんじゃないか?」

都「ええ。謎に包まれた遺産と藍子さんの関係……私、気になります!! プロデューサーさん! この謎、解き明かしてみせましょう!!」

P「ま、そうなるわな。今回の話は俺も気になるし、ちょっくら考えてみるか」


P「じゃあまずは藍子と依頼人の関係を考えてみようぜ」

都「はいっ!」

P「なんだ? もう解けたのか?」

都「弁護士さんは近親者がいない、と言っていました。ですがそれは本当でしょうか?」

P「どういうことだ?」

都「藍子さんはその依頼人さんの隠し子ではないでしょうか!!」


P「おお、何だかドロドロした話になってきたな」

都「依頼人さんは藍子さんのお父さんなんです。だけど何らかの理由で、それを隠して生きてきた。アイドルとして活躍している娘を見たとき、こみ上げてくるものもあったでしょう」

都「実の娘に触れたい、話したい。そんな気持ちを抱きながらも実現することができなかった。藍子さんはアイドルです、スキャンダルは命取りですから」

都「依頼人さんは藍子さんの未来のため、陰ながら応援していたのでしょう。だけど……天寿を全うする時がきてしまいました」

都「彼は藍子さんに遺産という形で応援したかったのではないでしょうか? 父親、ではなくて熱心なファンからのものということにして」

P「サスペンス劇場っぽい話だけど……筋は通ってなくはないな」


都「ええ。悲しくも優しい、真実なんです」

P「ただまあ……藍子と依頼人との間に血縁関係は100%ないけどな」

都「えっ?」

P「理由は2つあるぞー。1つ。さっき依頼人の名前で調べたんだけど何年か前に奥さんを亡くしているんだ」

P「2人の間には子供がいない。というよりも、依頼人が無精子症だったみたいで、子宝に恵まれなかったってのが正しいな」

P「だから藍子がその依頼人の子供、という説は成立しない」


都「もう一つは?」

P「ちょっと前にあっただろ? タレント夫婦の子供が、実は父親が違いましたーっての」

都「そんな事件もありましたね!」

P「それで遺伝子調査が流行ったんだ。藍子も受けたって言ってたよ、正真正銘ご両親の子供で安心したってさ」

都「むぅ、となるとお父さん説は否定されましたね」

P「今のところは熱心なファン説が一番大きいかな」


都「2000万円……凄いですよね」

P「総選挙で結構なお金を使う人ならいるだろうけど……1人で2000万円も払える人はそういないだろ。よっぽど、藍子のことが好きなんだろうな」

都「……もしくは、藍子さんに助けられたとかは?」

P「というと?」

都「例えば依頼人さんが川で大きなカエルを見つけて捕まえようとした時に足を滑らせて溺れた時に」

P「ごめん、一気に話されてもついていけないから区切って話して」


都「つまりは溺れている依頼人さんを藍子さんが助けたんです!!」

依頼人『うっぷあっぷ……た、たすけて!!』

藍子『任せてください! ア・ラ・モード!!』

依頼人『あ、ありがとうございますぅ……え、えっとお名前は……』

藍子『名乗る程では……藍子です!! ではサラバッ!!』

依頼人『あ、待ってください!!』

都「ということがあったのではないでしょうか!!」

P「お前の中で藍子はどんなキャラなんだよ」


P「弁護士さんは面識がないって言っていただろ? 助けた恩人って言う線は悪くないと思うけど、藍子と依頼人は直接会ったことはない」

P「それに。弁護士さんも言っていただろ? 貴女の声に救われたって」

都「うーん……」

P「じゃあこう考えようぜ。直接顔をあわせることなく、藍子と関わる方法を」

都「CDを買ったりテレビを見たり……ですよね」

P「ああ。そのあたりが関係しているような気がする」

都「プロデューサーさんはどう思っていますか?」

P「うん? 俺の推理か? まあイマイチ釈然としないけど、一番自然なのがこれかな」


P「依頼人さんは何かしらに絶望して自殺しようと考えていたんだ」

都「アバウトですね、なにかしらって」

P「うるさいやい。いざ死のうと思ったとき、テレビかラジオかから歌が聞こえてきたんだ。藍子の歌だろうな」

都「それを聞いて、自殺をやめたってことですか?」

P「ああ。藍子の歌やトークは優しくて癒し系だからな。依頼人の心にも暖かな光がともったんだと思う。生きる希望を、藍子からもらったんだ」

都「それで藍子に感謝の気持ちをと、遺産を相続させたと」

P「苦しい推理だってのは俺も分かっているけどさ、それぐらいしか思いつかないわ」


都「依頼人さんが既に亡くなっている以上、どうでしたかって聞けません。だから想像で推理するしかありませんしね」

P「都はどう考えているんだ?」

都「むむむ……まだ何かピースが足りない気がするんですよ。プロデューサーさんの言うように、ファンだからというよりかは感謝の気持ちで2000万円ポンッと渡したんだと思うんです。そこは否定しません」

P「自殺説は違う、と」

都「うまく言えないですけどねぇ。まだ見落としているものがあるような……」

P「もう少し依頼人とやらを調べてみるか。結構な資産家だったみたいだし、何か情報が……うん?」

都「どうしました?」


P「いや、これを見てくれよ。依頼人さん、3ヶ月ほど前に泥棒にはいられてる」

都「あっ、本当ですね。えーと……」

日本お間抜け事件簿~居眠りした泥棒~

●●邸に侵入した泥棒は●●氏が寝静まるのを待っていたが、先に自分が眠ってしまいめでたくお縄となった。
なんでも部屋から聞こえてきた音声を聞いているうちに眠くなってきたとのことで……

P「なんじゃこりゃ。催眠音声でも流していたのか?」

都「なんといいますか、先に寝ちゃうなんてお間抜けさ……」

P「都?」


都「あの、プロデューサーさん。この日って何曜日ですか?」

P「えっ? 3ヶ月前の……木曜日だな」

都「藍子さん……依頼人……感謝……居眠り……木曜日……ッ!!!」

都「そうか! そういうことだったんですね!!!」

P「えっ、分かったのか!?」

都「ええ! バッチシ分かりましたよ!! この事件の真実が!」


都「思えば不思議な事件でした。突然藍子さんが2000万円の遺産を相続することになって、強盗は獲物を前に眠ってしまって。でもこれは、一つの線で繋がっていたんです!」

都「藍子さんだからこそ、相続できたんです。その理由は……ちょっと微笑ましいものでした」

都「ヒントはゆるふわ時空。ここまで言えば、何となく検討がついたんじゃないでしょうか?」

都「それでは解答編と参りましょう! 真実は都のものっ!!」


藍子「えっと、どうして私に遺産をのこしたかが分かったんですか?」

P「みたいだな。俺もまだ教えてもらっていないけど」

都「ええ、この不思議な出来事の真相を明らかにしてみましょう!!」

都「まず前提として。藍子さんと依頼人さんは直接会ったことがありません。なので藍子さんが意図していない形で、依頼人さんを助けたんです!!」

藍子「私が助けた? どういうことですか?」

都「このサイトを見てください。依頼人さんの家に、泥棒が入り込んだ記事が載っています」


藍子「3ヶ月前、ですね」

都「ええ。この強盗なんですけど、侵入したのはいいものの眠ってしまったんです」

藍子「眠った? 疲れていたんでしょうか?」

都「いえ、彼は全神経を集中させていたと思います。家の主である依頼人さんが寝静まるまで、音も立てずただその瞬間を待っていた」

都「彼の部屋から聞こえる音も、聞き漏らさないようにしていたんでしょうね。それが命取りになったんです」


都「この日は木曜日です。木曜日というと、何がありますか?」

P「アンビリバボー?」

都「違いますよっ! 藍子さんに関係のあるものです!」

P「……ああ!!」

藍子「私のラジオの日が放送される日です!!」

都「ええ、そうなんですよ。ゆるふわタイムは木曜日のお昼と深夜に流れることになっています」

P「じゃ、じゃあまさか強盗が寝てしまったのって……」


都「ええ。ゆるふわ時空に巻き込まれてしまったんですよ!!!」

P「な、なんだってえええええ!?」

藍子「え、えーと……それって、どういうことですか?」

都「依頼人さんはゆるふわタイムを聞いていたんだと思います。ほら、藍子さんも言っていたじゃないですか。不眠症の人も眠くなったって」

藍子「!!」

P「そうか、依頼人さんはゆるふわタイムを睡眠導入に使っていたのか」

都「恐らくですけど、寝る前に聞いていたんでしょうね」


藍子「じゃあ私が助けたっていうのは、ラジオ越しに」

都「ええ、藍子さんのゆったりとしたトークを聞いていくうちに、強盗は眠くなってしまったんですよ」

P「泥棒はお縄について、依頼人さんの命とお金は無事だったというわけか」

都「そういうことです。もし藍子さんのラジオがついていなければ、依頼人さんは不本意なかたちで財産も命も奪われていたかもしれません」

都「藍子さんの声は、間違いなく依頼人を救っていたんです」

藍子「なんだか、変な感じですね。眠くなるラジオって、ダメなのに」

P「それが藍子の持ち味さ。聞いている人たちは、皆藍子の声に癒されて、ときには救われているんだ」

藍子「ふふっ、そうでしたか――」


数日後

2000万円の遺産はどうなったか。最初は渋っていた藍子さんですが、自分の番組で依頼人が救われたという話を聞いて、相続することを決めました。
でもそれは自分のためじゃなくて――。

P「あっちこっちに引っ張りだこだな、藍子」

都「マスコミが好きそうな話ですからね。でも、好感度がアップしたと思いますよ!」

なんと藍子さんは、遺産を全額森林保護のために寄付をすると発表したのでした。
それがマスコミに受けたこともあってか、藍子さんは今まで以上に忙しい日々を過ごしています。

P「……ちょっと勿体無いよなあ」

藍子さんらしい選択だと私は思います。ちょっと勿体無いなあと思ってしまうのも……まあ、人間なら仕方ないでしょう! 寧ろ藍子さんがぐうの音もでない聖人すぎるだけです!


都「しかし……謎を解いたのは私なのに、中々来ませんねー」

P「うぐっ……すまん都。俺の営業力不足で」

都「事件、なにか起きませんかね?」

P「そっちかよ!!!」

ああ安斎都探偵事務所は、今日も平和です――

P「だから4869プロだっての!!!」

Fin.


P「Next Miyako’sヒーント!」(声:高木渉)

都「きれいは汚い、きたないは綺麗!」


P「都は2000万円あったらどうする?」

都「全額貯金しますよ?」

???「2000万円あればガチャが沢さ」

P「すんません帰ってください」

短いけど以上です。読んでくださった方ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom