モバP「杏とくっついて離れなくなった」 (249)


双葉杏「……そういう冗談いいから」
http://i.imgur.com/jJcFwyo.jpg

P「冗談だったら良かったんだけどなー」

杏「いいから離してよ。杏帰るんだから」

P「だから帰るんじゃないって。今来たところだろうが」

杏「そうだよ。今日のノルマ達成。それじゃお疲れ」グイグイグイ

P「待て待て待てコラ」

杏「ねえ、杏の後頭部を掴むの止めない? て言うか、どんな握力してるのさ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435336970


P「だから離したくても離れないんだよ!」

杏「またまたー」クルッ

P「あっちょっ! そっち側に振り向kいててててててっ!!」ギリギリギリッ

P「関節があぁぁぁぁぁっ!?」

杏「えっ」グリッ

P「まってまってまってせめて逆に回ってくれぇっ!」

杏「あ、うん……」

P「ふぅ、華麗なステップを披露してなかったら、折れてるところだった……」


杏「えー、ホントにくっついてるの?」

P「だからそうだって」

杏「なんでこんなことしたのさ、プロデューサー」

P「……なんで俺がやったことになってるんだよ」

杏「だって、杏が自分の後頭部に何かするわけないじゃん」

杏「そうすると、プロデューサーの手に接着剤か何かが塗ってあったと思う方が自然だよ」

P「俺は何もしてないっての」

杏「じゃー、なんでこんな事になるのさー」

P「俺も知りたいわ」


杏「もうこうなったら、あれだよ。杏と一緒に帰って寝よう」

P「なんでだよ」

杏「プロデューサーがくっついたままじゃレッスンも仕事もないじゃん」

P「――……っ!?」

杏「あ、気づいてなかった」

P「え、あ、あれ? マジ!?」

P「よく考えたら、俺も外回りできないじゃん!?」

杏「ほら、もう諦めようよ」


P「そんな訳に行くか! とにかく原因を突き止めないと!!」

杏「えー……原因って言ったって、接着剤なら中和剤? とかあるんじゃないの?」

P「ホントに接着剤なのか……? 流石に手の平に何か付いたなら気付くはずだし」

杏「じゃあなに? プロデューサーの手に吸盤があるとか?」

P「タコやイカじゃねーよ!」

杏「他に何かある?」

P「とりあえず何か変わった事があったかどうか、かな……」

杏「何か? うーん……」


P「あー、俺は今朝は事務所来てから、ドリンクを飲んで仕事の準備してたな」

杏「杏は……途中で志希と会って、飴貰って舐めながら来たかな」

P「どんな……?」

杏「やけに黒い飴だったかなぁ。味は悪くなかったけど」

P「……」

杏「……」

P「……志希?」

杏「う、うん……」


杏「ちなみに、プロデューサーが飲んだドリンクって?」

P「来たら机の上に置いてあった、スタドリ……」

杏「もしかして、これ?」

P「そう、それ」

杏「ラベルが貼ってなくない?」

P「そうだな……」


P「要約すると犯人は……」

 バンッ

一之瀬志希「にゃ~っはっはっは~!!」
http://i.imgur.com/ZHeK0lS.jpg

P「随分良いタイミングで来たなぁ志希ぃ!?」

P「で、俺たちに何かしたのか!?」

志希「うんっ、ちょっと実験をね~♪」

杏「人体実験するなら報酬が欲しいね」

志希「わお、現実的~♪ さっすが杏ちゃん!」


志希「しっかしキミ達、面白い形でくっついたね~」

志希「なんでこんな状態に?」

P「見てたんじゃないのか」

志希「確かに観察も実験の大事な要素だけどさ、思ってたよりも早く二人が接触しちゃったからね~」

志希「そ・れ・で~、なんでそんな状態になったのかにゃ~?」

P「それはだな――」


―――
――――――

P『今日のスケジュールはーっと……』

 ガチャ

杏『おはよ~』

P『おう、おはよう杏。お前が一人で来るなんて――』

杏『そしてお疲れ~』クルッ

P『褒めようとした瞬間にコレだよチクショウ!!』

P『待てって杏!』ガシッ

杏『ちょっ、後頭部掴まないでよ!?』

P『いやー、案外手の平にジャストフィットするな、杏の後頭部』

杏『どういう事!?』

P『いや、まるで吸い付くかのように……ん、あれ?』

杏『え、どうしたの?』

――――――
―――


P「――とまぁ、そんな感じに」

志希「なるほど~♪」

P「で、なんでこんな事になってんだ、俺ら」

志希「えっとね~、まずキミが飲んだドリンク」

P「うん……やっぱりただのスタドリじゃなかったのか……」

志希「マグネットドリンクSって言うドリンクだよ~」

P「不味そうなネーミングだな……」

志希「え~、そう?」


杏「じゃあやっぱりプロデューサーのせいじゃん」

P「なんでだよ!」

志希「それと杏ちゃんが舐めた飴」

杏「えっ」

志希「マグネットキャンディーNって言う飴なの」

P「SとNって……」

志希「にゃふふー。それぞれを摂取した同士が効果時間中に最初に接触した場所がくっついちゃうよ!」

P「すぐ解毒剤を寄越せ!!」


志希「解毒剤なんてひっどいなー」

志希「そもそも毒じゃないから解毒剤なんて作ってないしー♪」

P「」

杏「じゃあ、ずっとこのままなの!?」

志希「ダーイジョーブ♪ 時間が経てば薬の効果は切れるから」

杏「マジで!?」

P「……その時間ってどれくらいだ?」

志希「んー、24時間くらい? あくまで計算上だけどー♪」

P・杏「」


P「24時間……24時間って何日?」

杏「現実逃避しないでよ」

P「だって、仕事どうするんだよ。右手がこれじゃ何もできねーよ」

杏「だからほら、やっぱり今日は帰ろう?」

P「それはダメ」

杏「えー」


P「まず……杏の仕事は……」ゴソゴソ

P「えぇい! 手帳が開け辛いっ!!」

志希「はい、ちょっと貸してー」ヒョイッ

 ペラペラ

志希「このページで良い?」

P「ああ、サンキュ。えっと、バラエティ番組のゲストか……」

志希「あたし秘書っぽーい♪」

P「……よし、志希代わりに行ってくれ」

志希「一瞬で秘書クビになった!!」

P「お前それ、絶対に留美さんの前で言うなよ……」


和久井留美
http://i.imgur.com/00yc49O.jpg


志希「あ、そうそう~」

P「ん? なんだ?」

志希「手を離す事は出来ないけど、触ってる部分が変わらなければ角度は変えられるよ?」

P「え? どういうことだ?」

志希「ほら、今の状態だと正面に手の平を向けた状態だし、二人の身長差だと立った時にツライでしょ?」

P「ああ。地味に今も極まってるんだ、手首」ギリギリ

杏「なんで杏の頭を下に向けようとしてるのかと思ったら、そんなことになってんの?」

志希「それ、横に回してみー?」

P「回すって……こうか?」クルッ

P「うおっ!? 意外と簡単に回った」

杏「その勢いで離れたりしないの?」

志希「それは無理~♪」

P・杏「」


志希「じゃあお仕事行って来るねー♪」

 バタンッ

P「この状態じゃ運転出来ないし、やっぱり外回りは行けないなぁ」

P「送り迎え関係は大人組の手の空いてる人に頼むとして……」

P「とりあえず片手で企画書やスケジュール管理を頑張るか」

杏「杏はどうしたら……」

P「付き合って貰うしかないな。良かったな、仕事は休みだぞ」

杏「寝られないなら意味ないじゃん!!」


 ガチャッ

千川ちひろ「おはようございます。すいません、遅くなってしまって」
http://i.imgur.com/T2vAMXW.jpg

P「おはようございます」

杏「おはよー」

ちひろ「あら、杏ちゃん? そんなにプロデューサーさんの近くにいるなんて珍しいですね?」

杏「だよねー。まぁ捕まってるだけなんだけど」

P「言い方ってものを考えてくれ……」


ちひろ「どうしたんですか?」

P「志希にしてやられまして、右手が杏から離れないんですよ」

ちひろ「接着剤?」

P「いえ、飲み薬?」

ちひろ「また凄いもの作りましたね、志希ちゃん」

P「そういう訳なんで、今日は事務仕事します」

P「パソコンなら左手だけでも何とかなると思うので。かなり遅いですけど」

ちひろ「そういうことなら、仕方ないですね」


 カタ カタ カタ

P「んー……」

杏「……」

P「……っ、片手だとシフト押しながらがキツイな」カタ

杏「うあー……」

P「……なんだよ」

杏「寝て良い?」

P「お前……片腕でお前の体重を支えながら、もう片腕で仕事しろってか」

杏「杏なんて軽いもんでしょ」

P「人が仕事してる真横で寝られると、なんかムカつくからヤだ」

杏「それはそれでヒドイ」


杏「って言うかさー」

P「なんだ?」

杏「ひまー」

P「しょうがないだろうが」

杏「ゲームやってちゃダメ?」

P「俺が集中できなくなるからダメ」

杏「ちぇー」


杏「じゃあさ」

P「んー?」

杏「杏が右手になってあげるよ」

P「……ん?」

杏「ずっと杏の頭に手がくっついてるしさ」

杏「例えば、親指に力を入れたらシフト押してあげるとか」

杏「人差し指に力入れたら左クリックとか」

杏「前後左右に頭を傾けたらその方向にマウスも動かしてあげるよ」

杏「あ、もちろん報酬は飴で。1時間に1個ね」

P「……面倒くさそうではあるが、まぁ試しにやってみるか」


P「……」キュ

杏「こう、かな……」カチッ

P「うん……」キュ

杏「んっと……これ?」カタッ

P「そう、正解」カタ

ちひろ(器用なことを……)


P「……」カタカタカタキュ

杏「……」カタッ

P「……」カタカタクイ

杏「……」スススー

P「……」キュ

杏「……」カチッ

ちひろ(言葉もなく作業してる!? しかも作業スピードが結構上がってる!?)


ちひろ「そ、そろそろお昼にしましょうか」

P「あ、そうですね」

杏「ふぅー……」

ちひろ「杏ちゃんがあんなに集中するなんて珍しいですね」

杏「集中? してないよ?」

ちひろ「えっ」

杏「むしろ無心だったかも」

P「なにそれすごい」

杏「んー、あれこれ考えると疲れるからさ、なーんにも考えてなかったねぇ」

P「要するに?」

杏「脳みそだけ、ダラけてた」

ちひろ「さすが杏ちゃん……」


P「あ、んー……」

ちひろ「どうしたんですか?」

P「いやぁ、昼飯どうしようかな、と」

ちひろ「ああ……」

P「外で食べるのは論外だな……杏、コンビニで良いか?」

杏「え? 良いけど?」

P「ん。それじゃ、ちょっと行ってきます」

ちひろ「はーい」


 コンビニ

P「さて、と……」

P(この状態じゃ箸は無理だよなぁ……)

P「おにぎりでも良いか」

杏「え?」

P「あ、こっちの話」

杏「……」

P「杏は食いたいものカゴに入れろ。この際だから奢ってやる」

杏「……うん」


杏「じゃあ、これとこれとこれ」

P「ん? 三つも? って一つは飴か」

P「でも、弁当二つも食えるのか?」

杏「何言ってんの? 一つはプロデューサーの分だよ」

P「え。あ、いや、俺はほら、今は箸使えないから」

杏「いいからいいから、大丈夫だから」

P「はぁ……?」


P「えーっと、財布財布……ぐぉ」

杏「ほら、杏がやるから」

P「ああ。んん……?」

杏「なに?」

P「杏がわざわざ自分から……何を企んでる?」

杏「ほんっと失敬だよねー。まぁ、言いたい気持ちも分かるけどさ」

杏「むしろ、ここで手伝わなきゃ奢って貰えないんだから、そんだけだよ?」

P「そ、そうか……」


槙原志保「あれ? プロデューサーさんと杏ちゃん?」
http://i.imgur.com/ilpc5Ne.jpg

P「お、志保?」

杏「おー」

P「何か買いに来たのか?」

志保「えへへ、なんだかプリンが食べたくなっちゃって」

P「へぇ……ちゃんとしたお店のじゃなく、コンビニの?」


志保「こう、たまにプッチンしたくなりません?」

P「あー、そういう……」

杏「杏ならプッチンしないで食べるね」

志保「えー」

P「杏の場合、皿洗うのが面倒だからだろ」

杏「良く分かってるじゃん、プロデューサー」

杏「だから、最初からお皿に載ってきて、後片付けもしてくれる分には文句は言わないよ?」

志保「もー、上手いなぁ杏ちゃん。ついでですから、いくつか買って事務所に行きますね?」

P「なんか悪いな……」


志保「プロデューサーさんと杏ちゃんは?」

P「ああ、昼飯を買いにな」

志保「杏ちゃんがついて来るなんて珍しいですね」

杏「でしょー」

P「ちょっと色々あってな」

志保「へー……あれ?」

志保「杏ちゃんが持ってるお財布……」

杏「プロデューサーの財布は杏のものだぁ!」ドヤァ

P「くれてやった覚えはねーぞ!?」


P「いや、今右手が使えなくてさ。杏にちょろちょろ手伝ってもらってるんだよ」

志保「そうなんですか……」

志保(使えないって、プロデューサーさんの右手、ずっと杏ちゃんの頭に……)

志保(逃げないように捕まえてる……?)

志保(確かに杏ちゃんは、よく仕事を休もうとしてるけど……)

志保(でも、お財布を渡しておいて???)

志保(お財布……お金……援助……)

志保(……まさか、そんな……)

志保(あれ? 袋の中に、飴……)

志保(飴で誘って……)

志保「――事案!?」

P「なにが!?」


P「あ、そうだ。杏、ちょっと財布広げてくれ」

杏「ん」

P「志保、手」スッ

志保「はい?」スッ

P「ほい」パシ

志保「え、あの、これ」

P「プリンの資金にでもしてくれ」

志保「口止め料ですか!?」

P「さっきから何の話!?」


P「どうせ事務所に行くなら待ってるか」

杏「そだねー」

志保「じゃあ急いで買ってきますね♪」

P「焦らなくてもいいぞー」


志保「プリン代って……3000円もあるんだけど……」

志保「そんなに大量にはさすがに置いてないですよねー」

志保「……そうだ、それじゃあ――」


警察官「君、ちょっといい?」

P「はい? 私ですか?」

警察官「幼女を連れたスーツ姿の不審者がいると通報があってね」

P「はぁ、不審者ですか」

杏「へー、怖いねぇ」

P「……ん?」チラッ

杏「ん?」キョトン

P「もしかして、不審者って俺!?」


志保「お待たせしまし――」


警察官「――!?」

P「――!!」

杏「――」


志保「――た?」

志保「な、何があったんですか!?」

警察官「君は?」

志保「この二人の仕事仲間ですけど……」


P「いやー、助かった」

志保「何してるんですか」

P「なんもしてないんだけどなぁ」

志保「……ずっと気になってたんですけど、杏ちゃんの頭から、手、離さないんですか?」

P「あ、これ? 離れないの」

志保「はい?」

P「志希に変な薬盛られてさぁ」

杏「自爆じゃん?」

志保「……それで納得できちゃうのも、どうなんでしょう」

杏「まぁ、志希だしねぇ。薬の使い道がいまいち分からないけど」


 事務所

P「ただいま戻りましたー」

杏「ただー」

志保「おはようございまーす♪」

ちひろ「おかえりなさーい。志保ちゃん、おはようございます」


P「さて、メシメシ……あっ」

ちひろ「どうかしました?」

P「いやー、これ……」

ちひろ「あー、普通のお弁当買って来ちゃったんですね」

P「買って来ちゃったというか、買わされたというか……」

ちひろ「はい?」


杏「ほら、プロデューサー。座って」

P「ん、ああ……」

杏「んっしょ、と。じゃあ、はい」ヒョイ

P「はい?」

杏「食べないの?」

P「いや、あの……」

杏「ほらー、早くしないと落ちちゃうよ?」

P「――おう」パクッ


ちひろ・志保「!?」

志保「ち、ちひ、ちひ、チッヒー!」

ちひろ「お、おお落ち着いて志保ちゃん! キャラがおかしくなってるから!」

志保「ごめんなさいちひろさん! ……じゃないです!!」バンッ

ちひろ「」ビクッ

志保「あれは……いわゆる一つの、アーンじゃないですか!!」

志保「杏ちゃんがプロデューサーさんに! どういうことですか!?」

ちひろ「プロデューサーさん、右手が使えないから……?」

志保「それならそれで! おにぎりとか! サンドイッチとか!!」

ちひろ「プロデューサーさん、あのお弁当は買わされたって言ってましたね……」

ちひろ「もしかして杏ちゃんの計画的犯行?」

志保「……杏ちゃんが?」


杏「ほら、次はどれにする?」

P「なあ、杏」

杏「なに?」

P「フォークとかあれば、自力で左手で食べられるような気がするんだ」

杏「杏じゃ不満?」

P「不満と言うか、な」

杏「なにさ?」

P「……恥ずかしいんだよ!」

杏「えっ、まだ羞恥心なんて残ってたの?」

P「お前俺をなんだと思ってる」


ちひろ「イチャイチャしてますねぇ」

志保「イチャイチャ……かなぁ?」


杏「もう、勝手に選ぶよ?」ヒョイ

P「もがっ……」モグモグ

P「杏は食わないのか?」

杏「あー、そうだね……」ヒョイパク

P「あれ? お前気にしないの?」

杏「なにを?」

P「いや、いいや……」


志保「イチャイチャですね……」

ちひろ「同じお箸使って、同じお弁当食べてますもんね……」

志保「あ、そうだった。私も準備しなくちゃ」

ちひろ「準備?」


P「ふぅ……食った」

杏「うん、お腹いっぱい」

P(杏と弁当半分ずつを二つ……)

P(まぁ杏は俺なんかより小食だから、俺の方が少し多めに食ったが)

志保「デザートですよ♪」

P「ん? デザート?」

志保「はい、どーぞ♪」

杏「おー、凄い!」

志保「プリンアラモードです♪」


杏「もしかしてこれ、プッチンした奴?」

志保「そうですよ」

P「うおぉ、あれがこんなに豪華に!?」

杏「いやぁ、すごいねぇ。普通にプッチンして出てくるだけで、ぜんぜん良かったんだけど」

P「このクリームとか、フルーツとかどうしたんだ?」

志保「さっき、プロデューサーさんから沢山資金を頂いたので――」

志保「ホイップクリームと、フルーツの缶詰を一緒に買って来ました♪」


P「なるほどなぁ。さすが志保だな」

志保「飾り付けただけですから、大したことないですよ?」

P「いやいや、ちょっとしたひと手間でここまで変わるんだ。気遣いのなせる業だよ」

志保「そんなに褒められるとむず痒いですよ」

杏「……」

志保「あ、ちひろさんの分もありますから、宜しければどうぞ♪」

ちひろ「あら、ありがとうございます」


志保「そうだ! プロデューサーさん、あーん♪」

P「えぇ!?」

ちひろ・杏「!?」ガタッ

志保「先ほど、杏ちゃんに食べさせてもらってたみたいですし、私も、ね?」

P「見られてた!?」

志保「ほらほら~」

P「ん、んん……あーん」パクッ

志保「どうですか?」

P「あ、うん、美味いよ?」


杏「……」ムスー

志保「はい、杏ちゃんも、あーん」

杏「えっ、杏も!?」

志保「はい♪」

杏「ぬぬ……苦しゅうない」パクッ

P「何様だよ……」

杏「杏様だー」

志保「杏様、お味は如何でしょうか?」

杏「うむ、美味である」

P「志保も乗るんかい」

杏「いやー、ホントにうまー。流石だねー」

志保「ふふっ、ありがとう♪」


志保「そう言えば、二人ともくっついてるんですよね?」

P「ん? まだ信じられないか?」

志保「いえ、そうじゃなくて、その……」

P「なんだ?」

志保「……えっと、おトイレとかどうするのかな、って」

P「あー……」

杏「おー……」

P・杏「……」

P・杏「えっ」

ちひろ「二人とも気づいてなかったんですね」


P「言われてみれば、どうしよ……」

杏「……」ブルッ

P「杏?」

杏「ご、ごめん、プロデューサー……」

P「え」

杏「気になったら、したくなってきた……」

P「マジか!?」

杏「やば……」

P「が、我慢しろ! すぐ連れてってやるから!!」ガバッ ダッ

杏「わっ!? ゆ、揺らすなー!?」

 ダダダダッ バタンッ


ちひろ「……」

志保「……」

ちひろ「はっ!?」

志保「プ、プロデューサーさん!?」


 トイレ

P「良いか、杏。俺は目を瞑ってるからな?」

杏「はいはい。よいしょっと……」

 チョロチョロチョロロロロロ

P(しまった、耳を塞ぎ忘れ……塞げねー!!)

P「あ、あーあーあー」

杏「んっ、どうしたの?」

P「あーあー……ほら、音がさ」

杏「大丈夫、杏は気にしないから」

P「いや気にしろよ!? 羞恥心捨てるなよ、アイドル!」

杏「ヒキニートならボトラー経験の一度や二度あるし」

P「うぉい!? 今はやってないだろうな!?」

杏「きらりに本気で怒られたから、もうやってないよ」


杏「そう言えば、うちの男性用トイレって、トイレの音消しの奴無いんだね」

P「あー、そう言えば女性用は付いてるんだよな」

杏「えっ」

P「なんだ?」

杏「なんで知ってるの? 早苗さんに通報しておいた方が良い?」

P「入ったことはないからな!?」

P「ここ借りた時に、ちひろさんがビルのオーナーに掛け合って、女性用の方には設置したんだよ」

杏「なるほどー、女性アイドル事務所ともなると、お年頃の子も多いからねー」

杏「杏は使ったことないけど」

P「杏も十分そのお年頃のはずなんだけどなー」

杏「そうだねー」


杏「ふぅ、もう良いよ」

P「おう、世界がまぶしいぜ」

杏「何それ?」

杏「ところでプロデューサーはトイレ大丈夫なの?」

P「あ……」

杏「今しちゃえば?」

P「いや、今は大丈夫なんだが……流石に明日まで我慢は無理だよなぁ」

杏「我慢は良くないよね」

P「左手だけで出来るかな……」


杏「杏、手伝うよ?」

P「……は?」

杏「ズボンとパンツの上げ下げとか」

P「おい、ズボンはともかく――」

杏「する時に手を添えたりとか」

P「ちょっと待て、何に添えるって?」

杏「そりゃ、ナニに――」

P「何言ってくれてんの!?」


杏「だって飛び散っちゃったら汚いでしょ」

P「だからって触らせられるかそんなもん」

杏「なんで?」

P「他人に気安く触らせられるもんじゃないっつーの」

P(反応しちゃったら色んな意味でヤバいからだよぉ!!)

杏「元気になっちゃうから?」

P「」

杏「ねぇねぇ、どうなのさー?」ニヤニヤ

P「お前なぁ……」


 ガチャ

志保「出てきました!」

ちひろ「杏ちゃん! プロデューサーさんに、変なことされてない!? 大丈夫!?」

P「」

杏「大丈夫だよ。プロデューサー、ヘタレだし」

P「ちょおい!?」

杏「じゃあ何? 手、出すの?」

P「出さないけどさ!? 出さないけどさぁ!!」

志保「出さないんですか……」ジトッ

ちひろ「言い切っちゃうんですねぇ……」ジトッ

P「なんか理不尽じゃない!?」


P「なんなんだよもう……」

ちひろ「まぁ、手を出さないのは正しいんですけどねー」

P「だったらいいじゃん……」

志保(いじけてる……)

P「……あ、そうだ。ちひろさん、俺、今日はここに泊まりますんで」

ちひろ「え? 何か急ぎの仕事ありましたっけ?」

P「いえ、お昼買いに行ったときに、不審者として、通報、された……ので…………」ズーン

杏「そんなこともあったねー」

志保「そう言えばそうでしたね」


ちひろ「何やってるんですか……」

P「何もやってないよ? いやホントに」

杏「善意の第三者の通報だったみたいだよ」

志保「私もちょっと疑いましたから、仕方ないかと思いますけど」

P「あれ、疑ってたの!?」

ちひろ「はぁ……それで?」

P「いや、この状態だと、もう外に出るだけで通報されかねないというのが分かったので――」

P「だったらいっそのこと、ここに引きこもっちゃえばいいじゃん、と」


ちひろ「……養いませんよ?」

P「誰がヒキニートだコラ」

杏「ヒキニートって言うより、ヒモ?」

P「ちひろさんのヒモになるなんて、恐ろしいこと言うんじゃない!」

P「きっと半年後には貯蓄どころか、内臓の多くが無くなって――」

ちひろ「あ゛?」

P「ナンデモナイデスヨ?」

P「……まぁ、あくまで杏と離れるまでの話ですよ」

P「さっきはたまたま志保が近くに居ましたから助かりましたけど――」

P「次もそう都合よく助かるなんてことないでしょう」

ちひろ「それは、まぁ……」


P「っと、そろそろ午後の仕事始めますかー」

ちひろ「あら、もうそんな時間なんですね」

杏「えー、もっと休まない?」

P「もう十分休んだだろ……」

志保「あ、それでは、私はレッスンに向かいますね」

P「おう、気をつけてな」

志保「はーい!」

一旦ここまで
ねむすぐる……

そういえばくっついた部分後頭部ってことは髪切れば離れられる?
逆(Pの頭に杏の手)だったら良かったのにな

>>77
プロデューサーの手の平と、杏の後頭部(頭皮)に磁力的な何かが発生している設定なので、仮に髪を切っても無意味です
例えば衣類越しに触れても、磁力的な何かは皮膚同士で発生しているので、衣類をどうこうしても離れられない感じです


ちひろ「……」カタカタカタカタ

杏「……」ススーカチッカタッ

P「……」カタカタ

 バァーンッ!

P・ちひろ「」ビクンッ

諸星きらり「にゃっほーい!」
http://i.imgur.com/TYcNuVo.jpg

P「きらり、扉は静かに開けような? いつも言ってるよな?」

きらり「うぇへへ、ごめんにぃ☆」

P「ん。おはよう、きらり」

ちひろ「おはようございます、きらりちゃん」


杏「……」

きらり「あれあれ~? 杏ちゃん、なんでPちゃんのお膝に座ってるゆ?」

P「あ、それはな――」

きらり「きらりもまざるぅー! ハピハピすぅー!」ギューッ

P「うお!?」

きらり「うぇへへへへー☆ ちひろさんも一緒にハピハピすぅ?」

ちひろ「えぇ!? わ、私もですか!?」

P「……」

ちひろ「い、いえ、流石に遠慮します……」

きらり「むぇ~、ざーんねーん☆」


ちひろ「そう言えば、さっきから杏ちゃん静かですね?」

P「言われてみれば……」

きらり「杏ちゃーん?」


杏「……すー……くー……」


P「寝ておる!?」

ちひろ「うそ!?」

きらり「もー、こーんなところで寝てると風邪ひいちゃうにぃ?」

ちひろ「何時から寝てたんでしょう……」

P「あくまで多分ですけど、仕事してる最中には寝てたんじゃないかと……」

ちひろ「えっ」


P「途中から腕が若干重かったので、多分……」

ちひろ「信じがたいですが……杏ちゃんですしねぇ」

P「ええ、杏ですからね……」

ちひろ「って言うか、寝ながらプロデューサーさんのお手伝いしてたんですか!?」

P「そう言う事になりますね」

きらり「杏ちゃん、すっごーい!」ガバッ

杏「うぼあ!? なに!? なにごと!?」


P「うおあ! きらり! ちょっと待て!」

きらり「うゆ?」

P「実は今な、杏は俺の手から離れなくなってるんだ」

きらり「むぇー?」

P「だからそうやって杏を持ち上げられると、俺も漏れなく釣られちゃってな?」

きらり「んー……?」

杏「……」

P「……」


きらり「にょわーっ☆」グイーン

杏「うえぇ!?」

P「ちょっ!? とっ、ほあっ」スタッタッタッタッ

きらり「……」

P「……」

きらり「えーいっ☆」グイーン

杏「うぇーい」

P「よっ、たっ、とっ!」タッタッタッタッ

きらり「……」

P「……」

きらり「なんでくっついちゃったにぃ?」

P「実験する前に聞いて欲しかったかな! かな!!」


杏「志希の薬を飲んだらくっついちゃったんだって」

P「なんで他人事なんだ、お前は……」

きらり「むぇー? よくわからないにぃ……」ショボーン

P「安心しろ。志希の薬ってことで効果に納得は出来ても、誰も理解は出来ないから」

杏「確かに」

ちひろ「そうですか?」

P「えっ」

杏「えっ」

きらり「にょわっ」

ちひろ「えっ」


ちひろ「あ、そう言えば、今日のお仕事終わりました?」

P「ええ。多少非効率でも、集中すれば何とかなるもんですね」

ちひろ(あれは集中力だけでは何ともならない気がしますけど……)

ちひろ「着替えとかどうするんですか?」

P「シャツなんかは替えを置いてあるのでなんとかなるかな、と」

P「ただ、コレが離れないと上は着替えられないですからね、このまま仮眠室で寝るんじゃないですかね」

杏「自分のとこのアイドルをコレ扱いしたよ」

きらり「にょわ?」


きらり「Pちゃん、Pちゃん☆」

P「ん? どうした?」

きらり「今日はお家に帰らないにぃ?」

P「ああ、色々あって、今日はここに泊まることにしたよ」

きらり「! じゃあじゃあ~ ――」

 ガチャッ

高橋礼子「お疲れ様」
http://i.imgur.com/v832445.jpg

佐久間まゆ「ただいま戻りましたぁ」
http://i.imgur.com/iLr3Qen.jpg


P「まゆ、お帰り。礼子さん、送り迎え、ありがとうございました」

まゆ「プロデューサーさん、まゆ、寂しかったですよ?」

P「いや、すまなかったな」

礼子「急でビックリしたわよ。それで、何があったの?」

P「いや、それがですね、志希の薬を俺も杏も飲んじゃったら、杏とくっついちゃいまして」

礼子「へぇ、ホントにくっついてるの?」

P「やっ、ちょっと待って! また実験されるの!?」

礼子「またってことは、もうされてるのね」

P「ついさっき、きらりにやられました」

きらり「ホントにくっついてたにぃ☆」

まゆ「……」


きらり「それで~、今日はPちゃん、事務所にお泊りなんだって~☆」

まゆ「!!」

礼子「えぇ? なんでそんなことに?」

ちひろ「お昼に外に出た時に通報されたそうですよ」

礼子「なるほどね……」

まゆ「あっ、あの――」

きらり「だからぁ、きらりがPちゃんと杏ちゃんのお世話してあげゆ!」

P「えっ!?」


まゆ「だ、ダメですよぉ?」

きらり「むぇー、なんでぇ?」

P「そうだぞ、そんなこt――」

まゆ「未成年の、しかもアイドルが男の人と二人きりなんて……」

杏「あれ、二人きりって、杏は?」

まゆ「それにプロデューサーさんのお世話は、まゆがするんです」

P「おい、この場で最年少のアイドル!!」

杏「ねえ、まゆちゃん、杏は?」


礼子「……はぁ」

礼子「ま、確かにこの状態で、未成年の子を事務所に泊まらせる訳にもいかないわね」

きらり「むぇー」

まゆ「」

杏「杏も未成年なんだけど……」

礼子「杏ちゃんの場合はしょうがないでしょ?」

礼子「だから私が泊まるわ」

P「えっ」


礼子「何か不満があるかしら?」

P「いえ、そんなこと無いですよ?」

礼子「大丈夫よ、ちひろちゃんも付き合ってくれるし」

ちひろ「えぇ!? 私もですか!?」

礼子「あら、アシスタントなのに、この大変な時にアシストしないのかしら?」

ちひろ「うっ……あーもうっ! 分かりました、私も泊まりますよ!」

P「あの、無理しなくても……」

ちひろ「いーえ! 無理してないですー!」

杏(なんか意地になってるなぁ……)


礼子「ナイトウェアは……流石にジャージとかは用意してないわよね?」

ちひろ「そうですね……」

まゆ「……でしたら、まゆの予備のジャージ使いますかぁ?」ショボーン

ちひろ「良いんですか?」

まゆ「はい……」ショボーン

ちひろ(なんだか居たたまれませんね……)

礼子「……あ、そう言えば、夕飯はどうするつもりだったのかしら?」

P「あー、それは適当に……カップ麺なり、コンビニ弁当なり」


礼子「そう……」

礼子「でも、私はたまには誰かの手料理を食べたいわね」

P「へ? 手料理ですか? 誰かのって……ちひろさん?」

ちひろ「えっ!?」

礼子「ちひろちゃんねぇ……なんか、こう……エナドリ煮とか出てきそうね」

ちひろ「作りませんよ、そんなの!!」

P「あー確かに……」

ちひろ「何納得してるんですか!?」

杏「わかる」

きらり「にょわー……」

ちひろ「」


まゆ「……で、でしたら、まゆが作りましょうかぁ?」

礼子「あら、良いの?」

まゆ「泊まれないのなら、それくらいさせて欲しいです……!」

礼子「じゃあ、お願いしようかしら」ニコッ

まゆ「!!」パァッ

まゆ「すぐにお買い物してきますねぇ!」

きらり「きらりもお買い物手伝うにぃ!」

まゆ「でも、そんなに大量に買う訳じゃないですから……」

P「あ、そう言えば米が残り少なかったような」

きらり「きらりが運ぶから、ばっちし☆」

まゆ「じゃあ、お願いしますねぇ」


まゆ「行ってきまぁす」

きらり「まーゆちゃんと~おっかいっもの~☆ おっかいっもの~☆」

ちひろ「あ! 領収書貰ってきてくださいね!」

まゆ「わかりましたぁ」

 バタン

礼子「……え? この事務所、お米常備してるの?」

P「何故か厨房がありますからね……」

ちひろ「料理番組とかのオファーが来た時に、練習用に有った方がいいかと思いまして」

ちひろ「今じゃ、たまにアイドルの子がお昼作ってたりしますけど」

ちひろ「基本的に材料は各自持ち込みですけど、お米まで持ち込むのは大変ですからねー」

杏「事務所にいると、おこぼれを貰う事もあるよー」

礼子「気付かなかったわ。はぁ……」

P「礼子さんたちも結構使ってますよね、厨房」

礼子「適当におつまみ作るくらいだもの。そんなに隅々まで見てないわよ」


P「礼子さん、さっきの振り、わざとですよね?」

礼子「あら、何のことかしら?」

ちひろ「え、振り? お米のことですか?」

杏「うわぁ……」

P「ちひろさん、マジですか……」

ちひろ「え?」

P「手料理云々の話ですよ」

ちひろ「えっ、えっ?」

P「最初から、まゆに頼もうとしてたんでしょ?」

礼子「さあ、どうかしらね?」ニッコリ

杏「あのままじゃ、ちょっと可哀想だったしねぇ」


ちひろ「――あっ、エナドリ煮に気を取られてて、気にしてませんでした……」

P「エナドリ煮じゃなかったら、スタドリ蒸しとか――」

ちひろ「プロデューサーさんの中の私のイメージ、どうなってるんですか!?」

礼子「そう言えば、楓がふざけて作ったスタドリ割りを、早苗と心が飲んだら即潰れたことがあったわね」

礼子「あのドリンク、大丈夫なの?」

ちひろ「なんて飲み方してるんですか!?」

P「やっぱダメなんですか?」

ちひろ「普通に飲む分には問題ないですけど、変な飲み方されたら色々保証しかねます!」

杏「ドリンクの闇は深い」

ちひろ「杏ちゃん!?」


高垣楓
http://i.imgur.com/aweDcJy.jpg

片桐早苗
http://i.imgur.com/ogdDrZG.jpg

佐藤心
http://i.imgur.com/R6XKf6Q.jpg


礼子「ドリンクの話をしておいてなんだけど、みんなコーヒー飲む?」

ちひろ「あ、入れますよ?」

礼子「良いわよ。元々暇なんだから」

P「すいません」

杏「杏、砂糖いっぱい入れたいから、別で持ってきてもらいたいなー」

礼子「はいはい」


P「……」グニグニ

杏「……」

P「……」グニグニ

杏「さっきから、何?」

P「ん?」

ちひろ「どうしたんですか?」

杏「プロデューサーが杏の後頭部を揉み込んでくる」

P「あー、いや、なんか右手を動かしたくて。ずっと同じ状態って疲れるんだよ」グニグニ

杏「なんか頭が柔らかくなりそうなんだけど……」

P「杏の頭は、割と柔らかい方じゃないか?」


礼子「傍から聞いてると、なんか猟奇的な話に聞こえるわね」

礼子「はい、コーヒー」トン

P「ありがとうございます」

P「猟奇的って?」

礼子「杏ちゃんの頭部が物理的に柔らかいように聞こえたわよ」

P「ああ、そういう……」

杏「他に聞こえようがなかったよ、今のは」

ちひろ「……」ソー

杏「……で、ちひろさんは何しようとしてるの?」

ちひろ「えっ!? いやぁ、杏ちゃんの頭が柔らかいのか、ちょっと触ってみようかなー、なんて……」


杏「……ここの社員は、なんでこうなんだろう」

P「お前が言うか?」

杏「そもそも物理的に柔らかかったら、今頃プロデューサーの手で、杏の脳味噌ぐちゃぐちゃになってるよ」

ちひろ「ひぃっ」

杏「本気で引かないでよ!?」

ちひろ「ごめんなさい……ちょっとリアルに想像してしまって……」

礼子「……小梅ちゃんが喜びそうな絵面ね」

杏「あー……」


白坂小梅
http://i.imgur.com/eWxnFdo.jpg


 ガチャ

まゆ「ただいま戻りましたぁ」

P「おぉ、おか――」

きらり「おっすおっすばっちし!」ズズンッ

P「」

杏「きらり? お米、何キロ買って来たの?」

きらり「いーっぱいあった方が良いと思ったからぁ、60キロ!」

杏「60キロって、1俵じゃん……」

礼子「ここまで一人で担いで来たの? 凄いわね……」

まゆ「無理しなくても良いって言ったんですけどねぇ」


ちひろ「まゆちゃん、領収書貰ってきました?」

まゆ「はぁい」

P「経費で落ちるんですか?」

ちひろ「こうなったら落としますよ、無理矢理でも」

P「えぇー……」

ちひろ「えーっと……」

礼子「ねぇ、ちひろちゃん」

ちひろ「なんですか?」

礼子「あのお米、なんて書いてあるか読める?」

ちひろ「はい? えっと、『魚沼産コシヒカリ』……えっ」


P「うわ、すげぇ。こんな大量の魚沼産コシヒカリ見たの初めてだ」

ちひろ「」

杏「見るだけなら、スーパーでも行けば見れるでしょ」

ちひろ「」

P「いや、魚沼産って流通量が結構少ないって聞いたことがあったから」

ちひろ「」

まゆ「どうせ買うなら、美味しいお米にしようかと思いまして」

ちひろ「」

礼子「大丈夫? 等級は多分、間違いなく一等米よ」

ちひろ「ぐはっ!?」


ちひろ「ふふふふふ、これはもう、経費の落とし甲斐があるってものですよ、ええ……」ズーン

P「ちひろさん……」

きらり「ちひろさん、どうしちゃったゆ?」

P「うん……大人は大変なんだよ、色々と」

杏「これ、茜にばれるとあっと言う間になくなりそうだよね……」

P「あー……そうだなぁ……」


日野茜
http://i.imgur.com/FQVuYug.jpg


まゆ「それでは、夕飯の準備を始めますねぇ」

礼子「そうね、お願いね?」

まゆ「はぁい♪」

きらり「お米、運ぶにぃ!」


P「そう言えば何を作ってくれるのかな?」

礼子「そう言うのは出来てからのお楽しみってものでしょ?」

P「それもそうですね」

杏「美味しければ何でもいいじゃん」


ちひろ「プロデューサーさん!」バンッ

P「はいっ!?」

ちひろ「明日からお昼とか夕飯とか、集まれるアイドルに集まってもらって、お食事会にしましょう!!」

P「なんでですか!?」

ちひろ「アイドルのみなさんに、最高級のお米の味を知ってもらうのが狙いです」

杏「食育って奴?」

ちひろ「そんな感じです。こんなチャンス滅多にないですからね。この際、良い機会だと思うことにしました」

P「なるほど。ちなみに誰が作る――」

ちひろ「それは集まったアイドルの中からチョイスして」

P(料理できるアイドルが居なかったらどうするんだろう……)

礼子(自分では作らないのね)

杏(食費削ろうとしてる……?)


P「うーん……それについては、後でもうちょっと考えましょう」

P「どうせやるなら週末とか休日とかの方が良いでしょうし」

礼子「学生の子は平日は学校があるものね」

ちひろ「そうですか……」

杏「お食事会って言うよりパーティー?」

ちひろ「パーティー……お米を食べるのがメインのパーティーってどうなんでしょうね」

礼子「パーティーならお寿司とかあることもあるけど、お米メインのパーティーは色々怖いわね……」

礼子(ヘルスメーター的な意味で)


 1時間経過

まゆ「出来ましたよぉ」

きらり「おまたせだにぃ☆」

P「おお、待ちわびたぞー」

まゆ「ごめんなさい。戻ってからご飯を炊き始めたので……」

P「ああ、いや、いいんだ。そうだよな、米炊いたら、これくらいは時間かかるよな」

ちひろ「いい匂いですね」

礼子「今日の献立は何かしら?」

まゆ「レバニラ炒めですよぉ」


杏「げ、レバー? あんまり得意じゃないんだよねぇ」

きらり「好き嫌いはダメだに?」

ちひろ「ちょっと分からなくもないですけどね」

P「ちひろさんも苦手なんですか?」

ちひろ「あの独特の風味が少し苦手で……」

礼子「あら、美味しいのに」

P「礼子さんは好きなんですか。ちょっと意外ですね」

礼子「そう?」

杏「中華だったら、もっと高級なもの食べてそう」

礼子「そうでもないわよ? 餃子や麻婆豆腐も好きだし」

ちひろ(でもきっと、食べるお店は高級料理店だったりするんだろうなー)


杏「げ、レバー? あんまり得意じゃないんだよねぇ」

きらり「好き嫌いはダメだに?」

ちひろ「ちょっと分からなくもないですけどね」

P「ちひろさんも苦手なんですか?」

ちひろ「あの独特の風味が少し苦手で……」

礼子「あら、美味しいのに」

P「礼子さんは好きなんですか。ちょっと意外ですね」

礼子「そう?」

杏「中華だったら、もっと高級なもの食べてそう」

礼子「そうでもないわよ? 餃子や麻婆豆腐も好きだし」

ちひろ(でもきっと、食べるお店は高級料理店だったりするんだろうなー)


まゆ「うふふ……まぁ、食べてみてください」

礼子「作ってもらって食べない訳にはいかないわよね?」

ちひろ「わかりましたよぅ……」

ちひろ「……」ジー

まゆ「ちひろさん?」

礼子「ちひろちゃん、魔法の言葉を教えてあげるわ」

ちひろ「なんですか?」

礼子「レバーはね……美容にも良いのよ?」ボソッ

ちひろ「っ!? いただきますっ!」パクッ


ちひろ「……」モグモグ

まゆ「……」ソワソワ

P「……」

礼子「……」

きらり「……」

杏「……あ、これ、杏も食べなきゃいけない流れじゃん」


ちひろ「あら、美味しい……」

まゆ「!!」パァッ

礼子「ふふ、良かったわね?」

まゆ「はいっ」

ちひろ「臭みも感じませんし、ああ、これスゴい……」

杏「ふ、ふーん……美味しいんだ……?」

きらり「杏ちゃんも食べるにぃ☆」

杏「え、やっぱりそうなる?」


きらり「はい、あーん☆」

杏「あ、いや、杏は自分で食べるから……」

きらり「むぇー? 食べてくれないゆ?」

杏「……あーもう。分かった、分かったから」パク

きらり「どぉどぉ?」

杏「あ、うん。これなら食べられる」モグモグ

P「へぇ、やっぱりまゆの料理は凄いんだなぁ」

まゆ「美味しく食べてもらいたいですから、いろいろ勉強してるんですよぉ」

まゆ「ちなみに今日のレバニラ炒めは、ガッ○ン流で料理しました」

P「まさかの○ッテン流だった」


杏「じゃあ、プロデューサー、はい」ヒョイ

P「おおっと」パクッ

まゆ・きらり「!?」ガタタッ

礼子「あら」

ちひろ(そうでしたー!!)

杏「どう?」

P「うん、確かに美味いな、これ。流石まゆだ」

まゆ「ありがとうございます……」


まゆ「ところで、杏ちゃん……?」

杏「なにー? あむっ」

まゆ「っ!? っ!!」

ちひろ(まゆちゃんが悶えてる。うん、ツッコミたいことは分かります)

まゆ「ど、どうして、プロデューサーさんに、その、あの、あーんってしたんですかぁ?」

杏「だって、プロデューサー、利き手が使えないじゃん?」

杏「だから杏が右手の代わりしてるんだよ」

まゆ「じゃ、じゃあ、それは良いとして……」

まゆ「どうしてそのお箸で、自分も食事してるんですかぁ……」

杏「えー、いちいち持ち替えるのも、めんどくさいじゃん」


きらり「あ、杏ちゃん、それはダメだにぃ!!」

杏「えー? なんで?」

きらり「だってぇ……それ、か、間接、キス……」モジモジ

杏「んー、気にする程のことじゃなくない?」

P「いや、気にしろよ? 昼飯で慣れちゃった俺が言うのも、なんだけどさ」

まゆ「……お昼?」

P「あっ」

まゆ「お昼も同じように?」ユラァ

P「お、落ち着こうか、まゆ?」


まゆ「でしたら……まゆも同じことをしても、良いですよねぇ?」

P「え」

まゆ「杏ちゃんだけズルいです。良いですよね、杏ちゃん?」

杏「んー、まぁ、杏はいいけど……」

P「あれ、俺の意見は?」

まゆ「それでは、えーっと、プロデューサーさんのお箸は……」

杏「んん? 杏と同じことするなら、自分のお箸で良いんじゃない?」

まゆ「えっ。いえ、あの、やっぱり間接とは言え、その、キ……は、アイドルとして良くないかなぁと……」ワタワタ

P「……まゆは偉いなぁ」


礼子「はい、まゆちゃん。プロデューサーのお箸よ」

まゆ「あ、ありがとうございます、礼子さん」

礼子「それと、順番ね?」

まゆ「――はい?」

礼子「まゆちゃん一人に負担をかけるのも良くないもの」

まゆ「いえ、まゆのことなら――」

きらり「きらりもPちゃんのお手伝ーい☆」

まゆ「……はい。そうしましょうかぁ」

ちひろ「……あれ? もしかして私も?」

P「って言うか、誰か俺の意見も聞いてくれませんかね……」

杏「無理じゃない?」


まゆ「はい、プロデューサーさん♪」

P「ああ……」

きらり「Pちゃん、あーん」

P「あ、あーんもがっ、お、おおひおおひ」

礼子「はい」

P「ん、んん」

ちひろ「え、えっと、あーん、とか、言った方が良いですか?」

P「もう好きにして……」

杏「ほらほら、口開けろー」

P「うぇい……」


P「うっぷ、ごちそうさまでした……」

P「なんて疲れる夕飯だったんだ……」

礼子「美味しかったわ、まゆちゃん」

まゆ「ありがとうございます」

礼子「さてと、良い時間だし、私は二人を送ってくるわね」

P「ああ、すいません。お願いします」

きらり「礼子さん、おにゃーしゃー!」

まゆ「失礼しますね、プロデューサーさん」

きらり「おっつおっつ!」

P「おー、お疲れー」

今夜はここまで


ちひろ「食後のコーヒーですよ」

P「あ、ありがとうございます」

ちひろ「杏ちゃん、砂糖ここに置いておきますからね」

杏「あー、うんー」

 ズズズ

P・杏・ちひろ「はふー」

ちひろ「なんだかまったりしちゃいましたねー」

P「そうですねー」

杏「そろそろ蛍光緑が目に痛い時間だねー」

ちひろ「う゛っ」


P「なんてことを……」

杏「事実を言ったまでだよ」

ちひろ「……この際なので、まゆちゃんのジャージに着替えてきます」

P「まぁ、仕事も終わってますしね。いってらっしゃい」

ちひろ「ついでにシャワー浴びてきちゃいますね」

P「わかりました」


ちひろ「……覗かないでくださいね?」

P「覗きませんて」

ちひろ「…………覗かないで、くださいね?」

P「二回も言うなんて、そんなに信用有りませんかね?」

杏「大事なことなので」

P「そりゃ大事かもしれないけどさ……」

ちひろ(……言い切られるのも、なんかなぁ)


P「うーむ、一気に人が居なくなったな」

杏「って言っても、ちひろさんはシャワールームにいるし、礼子さんもそんなにしないで帰ってくるでしょ?」

P「ま、そうなんだけどな」

杏「まー、のんびりしてよーよ。慣れないことして杏も疲れたしさ」

P「いや、お前寝てたじゃん」

杏「こう、寝て起きても妙に体が疲れてる時ってない?」

P「あー、それは良くあるなぁ」

杏「良くあるんだ……杏は普段あんまりないけど、まぁ要するにそんな状態なんだよ」

P「ふむ……」


P「っと、やべ。テレビテレビ」ピッ

杏「なんか面白いのやってるの?」

P「『ふれあい狼と小さな赤ずきんちゃん』の放送だ」

杏「あー、あれかぁ。録画予約してないの?」

P「してるぞ? 映像も円盤で貰ってある」

杏「だったらリアタイで見なくても……」

P「バカ言え。リアタイ放映もチェックしなくてどうする」

杏「ホント、アイドルバカだよね」

P「それとPC起動して、と」

杏「え、まだ仕事するの?」

P「仕事じゃない……とも言い切れないか」


P「ネットでの反応のチェックしないとな」

杏「……もしかして、いつもやってる?」

P「ああ、そうだけど?」

杏(プロデューサーがエゴサしてるなんて……)

P「放送中の方が、率直な感想が見れる気がして、ついやっちゃうんだよなー」

杏「ふーん……タイトルで検索すればいい?」

P「あ、やってくれるのか? 助かる」


 カチカチッ カチカチッ


P「ふむ……愛海が叩かれないかがちょっと心配だったが、思った程じゃないな」

杏「その脚本にOK出したの、プロデューサーでしょ」


棟方愛海
http://i.imgur.com/2w0dMZU.jpg


P「あれさ……」

杏「?」

P「最後の方さ、ほぼ全部、アドリブなんだよな……」

杏「……え?」

P「愛海が正体を現した辺りから、だんだん話が変な方に行っちまってさ」

杏「それって、ホントに邪気? だかが愛海についてたってこと……?」

P「いやまぁアイツの場合、普段から邪気が溢れてるようなもんだから、何とも言えないんだけどな」

杏「……確かに。杏の胸すら揉んだからね」

P「マジか……」

杏「そして、それを祓える芳乃」

P「乃々、頑張ったな……」

杏「だよねぇ」


依田芳乃
http://i.imgur.com/XJD2E5G.jpg

森久保乃々
http://i.imgur.com/25CsHtZ.jpg


杏「――そう言えば、ちひろさん遅くない?」

P「うん? ……もうこんなに時間経ってたのか」

P「確かに遅いな。なにかあったか?」

杏「様子見てきた方が――」

 ガチャ

ちひろ「ただいま戻りました~……」

杏「噂をすれば」

P「ずいぶん遅かったですね?」

ちひろ「なっ、何でもないですよ!?」

P「そ、そうですか……」

P「……今まで、結構色んな格好のちひろさんを見た気がしますけど、ジャージ姿ってありましたっけ?」

ちひろ「多分、無いですかねぇ……いまいち覚えてないですけど」

杏「……痴呆が」

ちひろ「杏ちゃん!?」


ちひろ「――って、ああ!?」

ちひろ「芳乃ちゃんの赤ずきんちゃんの放映、今日でしたっけ!?」

P「ええ。もう終わっちゃいましたよ」

ちひろ「うぅ、失敗した……」

杏「え、ちひろさんも見るつもりだったの?」

ちひろ「リアルタイムで見れるものは見る! ファンの鉄則ですよ!!」

杏「えぇ~、杏はアイドルのファンにはなれなそうだよ」

P「いや、お前は見られる側だからな?」

杏「そうだけどさぁ」

杏「って言うか、ファンなんだ?」

ちひろ「所属してる皆さんのファンですから!」ドヤァ


ちひろ「……プロデューサーさんは何してるんですか?」

P「ネットの反応のチェックです」

ちひろ「マメですねぇ。なにかありました?」

P「いえ特に……いや、愛海のファンが少し増えたような気がします」

杏「え、増えるの?」

P「んー、なんか浄化されるときの苦しみ方がリアルで、演技力が凄いとか評価されてるな……」

杏「……それ、ホントに苦しんでただけじゃ」

P「なー。どうしよう、これで演技系の仕事来たらメッキが剥がれちゃうな」

ちひろ「脚本次第じゃないですか?」

ちひろ「結構なアドリブがあったとは言え、根っこのところは愛海ちゃんそのものの役でしたし」

P「んー……ま、なるようになりますかね」


ちひろ「そう言えば、シャワーはどうするんですか?」

P「いやいやいや、色々問題が有りすぎでしょ」

ちひろ「まぁ、入るとしたら杏ちゃんと一緒に、って事になっちゃいますしねぇ……」

P「それもですけど、そもそも行けると思います? 服、脱げないんですよ?」

P「服の上から浴びたとしても着替えられないんで、濡れたまま寝る事になりますよ?」

ちひろ「そう言えばそうでしたね……」

杏「杏なら、しばらく入らなくても気にしないよ」

P「安心しろ。明日になって手が離れたら、シャワールームにぶち込んでやるから」

杏「横暴だー!」

P「実際はちひろさんか礼子さんか、その場に誰か居たらその誰かに頼むかなぁ」

杏「えー、シャワー浴びるのは決定事項なの?」

P「頼むから、シャワーくらい浴びてくれ……」


 ガチャ

礼子「戻ったわよ」

ちひろ「っ!!」ガタッ

P「お帰りなさい、礼子さん」

杏「意外と時間掛かった?」

礼子「ちょっと買い物しててね。ちひろちゃん、頼まれた物――」ガサガサ

ちひろ「ちょっ、礼子さん! ここで出さないでください!」

礼子「あら、気にするの?」

ちひろ「気にしますよ! プロデューサーさんだって居るんですよ!?」

P「俺が居ると都合が悪いなら、少し出てましょうか?」

礼子「大丈夫よ。ついでに私もシャワー浴びてくるし」

礼子「それに、プロデューサーが出て行くって事は、杏ちゃんも一緒でしょ?」


杏「なに? 生理でも始まっちゃった?」

ちひろ「違いますよ!?」

礼子「ただの下着よ」

ちひろ「なんで言っちゃうんですか!?」

礼子「そこまで気にする事でもないわよ。下着姿を見られた訳でもないでしょ?」

ちひろ「そうですけど! そうですけどぉ!!」

P「なんで下着なんて――あ」

礼子「流石に、そこは流すところじゃないの?」

P「いや、うっかりしてました。ごめんなさい、ちひろさん」

ちひろ「」プルプル

ちひろ「身体洗った後に同じ下着付けるのって、気持ち悪いんですよ!?」

P「いやまぁ、一応解りますよ、それは」

P「さっきのは本当にちょーっと、うっかりしちゃっただけなんですよ」


杏「杏なら、数日くらい同じ下着でも気にしないけどなー」

P「それは分かってた」

杏「怒らないの?」

P「怒られたいのか?」

杏「まさかー。そんな趣味はないよ」

P「だろうな。とりあえず今の状態で怒られるのは、普通の時に怒られるよりも嫌だろ?」

杏「逃げられないしねー」

P「だから今は怒らない」

杏「う……『今は』かぁ」

礼子「さて、私もシャワーを浴びてくるわ。ほら、ちひろちゃんも」

ちひろ「あ、はいっ、そうですね」


P「さて、何するか」

杏「んー、ゲームとか?」

P「ゲーム……?」

杏「ちょっと移動するよー」

P「はいはい」

杏「えーっと、確かこの辺に……」ゴソゴソ

杏「……あったあった」

P「なんでゲーム機が出てくるんだ。しかも結構古いな」

杏「家で使わなくなったゲーム機とか、持ち寄ってるんだよね」

P「いつの間に……」


杏「ゲーム機自体が古いだけに、ゲームも古いのばっかなのが難点だなぁ」

P「ふーん」

杏「どれやる?」

P「いや、俺は出来ないぞ」

杏「えー、なんだって付き合うよ? 格ゲーでもシューティングでも」

P「片手で出来る奴有るか?」

杏「あ……あー……」

杏「……うーん」ゴソゴソ

P「別に杏がやってるのを眺めてるだけでも――」

杏「あっ、これなんかどう?」

P「ん……?」


ちひろ(ふぅ、やっと落ち着きました……)

 カチャ

P「杏、ないてみようか?」

杏「えー、ないて良いの?」


ちひろ(!?)


P「イけると思うんだよなぁ」

杏「イっても良いけどさー」


ちひろ(!?!?)


P「ま、やってみようぜ」

杏「もう、しょうがないなー」


ちひろ(……え? …………え?)


P「お、来た」

杏「……あー、ほら、ツモで上がれないじゃん」

P「あー、ダメだったかぁ」

ちひろ「麻雀ですか!!」バンッ

P「うおっ!?」

杏「びっくりした……」


ちひろ「それで、なんで麻雀なんてやってるんですか?」

杏「プロデューサーとゲームしようと思ったんだけどさ、ほら、片手しか使えないじゃん?」

ちひろ「そうですね」

杏「だから、何かないかなーと思ってたら麻雀ゲーム見つけて、これなら一緒に出来るかなって」

ちひろ(そもそも、一緒にする必要性があるんでしょうか……)

ちひろ「もしかして二人とも、麻雀やったことないんですか?」

P「良く分かりましたね」

ちひろ「役を知らなそうでしたので」

P「なるほど」

杏「杏も興味がなかったからなー」


ちひろ「宜しければ教えますけど……」

P「いやぁ、ちょっと時間潰してただけですし、そこまでは」

杏「とりあえずやりながら、いくつか覚えたけどねぇ」

P「マジかよ、この短時間で?」

杏「うん。CPUの上がり役見て、なんとなくね」

杏「たぶん、細かいところは間違ってると思うけどさ」

ちひろ「あぁ、だから鳴いた時の役は、自信がなかったんですね」

ちひろ(って言うか、それはそれで凄いですね……)


 ガチャ

礼子「ふぅ……あら? 何やってるの?」

杏「ちょっとゲームをね」

礼子「へぇ、麻雀ねぇ」

P「礼子さんもやります?」

礼子「四人もそろって、TVゲームで麻雀するの?」

杏「それもそうだよね。杏とプロデューサーがルール知ってたら、本物で出来るかもしれないけど」

礼子「知らないで、よくやり始めたわね」

杏「出来そうなのが思いつかなかったから」

礼子「TVゲームなら……なんだっけ? スゴロクみたいのなかったかしら?」

杏「!! あ、杏としたことが、それを忘れてるなんて……」ガックリ

P「んな、大袈裟な」


杏「それじゃ99年で行こうかー」

P「へぇ、そんなに出来るのか」

杏「しまった、冗談のつもりがツッコめる人が居なかった」

P「え?」

杏「99年なんてめちゃくちゃ時間かかるんだよ。まぁ無難に10年くらいかなぁ」

P「どれくらいで終わるんだ?」

杏「さぁ?」

P「おい」

杏「途中で変えられるし、時間を見て決めれば大丈夫だよ」

P「ふむ。礼子さんたちはそれでいいですか?」

礼子「任せるわ」チビチビ

ちひろ「……」チビチビ

P「なに飲んでるんだアンタら!?」


礼子「少しだけよ。いいでしょ?」

P「良くはないでしょ」

ちひろ「美味しいから大丈夫ですよー」

P「いやそういう問題じゃなくて」

杏「うーん、結構匂いしないんだね」クンクン

P「こらこら、飲むなよ?」

杏「飲まないよ。ちょっと匂い嗅いだだけだから」

P「なぜ嗅ぐ必要が……こいつか」ヒョイ

 【杏露酒】

P「」

礼子「杏ちゃんにちなんで買って来たわ」

P「楓さんじゃあるまいに……」

ちひろ「ダジャレって感染するんですかね?」


 プレイ中

杏「よしっ、一番乗りっ」

P「うげ、なんか来た」

杏「貧乏神よろしく! じゃあ次の目的地はー」

P「ちょおい! さらに遠くなってんじゃねーか!」


礼子「ふぅん、この駅は色々物件があるのね」

杏(礼子さんの今の所持金なら買い占めイケるなぁ……)

礼子「ここは買い占めね」

ちひろ「えっ、収益率が低いのも買うんですか?」

礼子「ダメかしら?」

杏「良いと思うよー。いろいろ利点はあるし、あとで増資すれば収益率も増えるしねー」

ちひろ「そういうのもありなんですね……」


ちひろ「あれっ!? お金が無くなりましたよ!?」

杏「あー、スリにあったんだね。ご愁傷様」

ちひろ「」

P「ちひろさん?」

ちひろ「――うふふ、私のお金に手を出すなんて……いい度胸ですねぇ」ニタァ

杏「銀次逃げてちょー逃げてぇ!!」


礼子「あら、なんか貧乏神が変身した?」

杏「キングボンビーだね」

礼子「へぇ、キング……凄そうねぇ」

杏「ちなみに他の人を乗り越えると擦り付けられるよ」

P「おま、そういうことはもっと早く教えろよ」

P「って言うか、今、礼子さんとスゲー近いんだけど、俺……」

礼子「ふふっ」っ【新幹線カード】

P「oh……」


杏「大・勝・利!」

P「そりゃそうだよな」

杏「色々コツがあるからねぇ」

P「大先輩杏さんは、もうちょっと他の人に助言しても良かったんじゃないかな?」

杏「えー、してたじゃん」

P「ああ、俺以外の時にな!」

杏「ぷーくすくす」

ちひろ「助言があったにも関わらず、プロデューサーさんと僅差の私はどうしたら……」

杏「助言しようとする直前に、もうボタン押してるんだもん」

礼子「まぁまぁ、ほら、飲みましょ」

ちひろ「よーしっ!」

P「あんまり飲ませないでくださいよ。一応未成年者が居るんですから」


P「……ちょっと待った。杏露酒、何本買って来たんですか」

礼子「ん? 10本くらい?」

P「多い!!」

礼子「こんなにちっちゃいビンだし、余ったらいつものメンツで飲めばいいかと思って、ついね」

P「これ10本って、結構重いと思うんですけど」

礼子「そうね、ちょっと重かったわ」

P「……少し味見ていいですか?」

礼子「良いわよ?」

P「……」チビ

P「あっま!? これいっぱい飲んだらアカン奴だ!!」

杏「甘いの!?」

P「反応するんじゃない!」


杏「ま、ジュースもあるし、飲まないよ」

P「それ、ジュースなかったら飲んでたようにも聞こえるんだが」

杏「いやぁ、どうかなぁ。流石に色々怖いし」

礼子「色々って?」

杏「アルコール飲んだらどうなるのかとかさ」

杏「多分だけど、めちゃくちゃ弱い気がするんだよね。体積的な意味で」

ちひろ「体積って……」

礼子「お酒の強い弱いは、体格とか無関係だとは思うけど……」

礼子「でも、杏ちゃんの場合、肝臓も幼児レベルの可能性はありそうね」

杏「幼児……いやまぁ自覚はあるけど、人に言われるのもモヤモヤするなぁ」

礼子「あら、ごめんなさい」

P「二日酔いとかなると、実際キツイしなー」

杏「そうなんだ……うん、杏はずっと縁はなさそうだね」


P(……さて…………)

P(なんだかんだ誤魔化して参りましたが、そろそろ膀胱が限界を迎えそうです……)ダラダラ

P(くそっ! あんなにコーヒー飲むんじゃなかった!!)

P(しかし、杏の目の前で用を足すのも……ぐぬぬ……)

P(だからと言って漏らすわけにもいかないし……)

杏「……ところでプロデューサー」

P「ん? どした?」


杏「トイレ行きたい」

P「っ!? そ、そうか! 良し急ごう!」ダキッ

杏「おわぁっ!?」

 ダダダダダダダ

礼子「……」

ちひろ「……」

礼子「えっ」

ちひろ「あっ」


 トイレ

 ガチャバタンッ

P「ふぅ、ほら、杏――」

杏「えっと……」カチャカチャ

P「って、何で俺のベルト外そうとしてんの!?」

杏「え? だってもう限界でしょ?」

P「気付いてたのか!? いや確かに限界だけど!」


P「いいから俺のベルトから手を放せ!」

杏「や、漏らされるのもイヤなんだけど。いざそうなっても、杏逃げられないし」

P「そ、そうか……とりあえず自分でベルトは外すから」

杏「ん」

P「よっ……っと」

杏「窓開けるよ」ジーッ

P「窓ってお前」

杏「社会の窓って言うじゃん」


杏「あとは、アレを引っ張り出せばいいの?」

P「っ……いや、もう下は全部下ろしちゃえばいいや」

杏「え?」

P「重力を利用すれば……よっと」パサッ

P「あぁ……ようやく解放されるのか……」

 ストン

杏「そこまで我慢しなくてもいいのに」


P「流石に葛藤くらいするわ。もう諦めたけど」

 ヂョボボボボボボボッ

杏「凄い音だねぇ」

P「聞くなよ……ついでに見ないでいてくれると助かる」

杏「でも、男の人って立ってするのかと思ってた」

P「いや、俺も普段ならそうだけどな」

P「デッカい方する場合はやっぱり腰は下ろすし、その時に小も出すからなぁ――」

P「これでも良いんだと土壇場で気づいた」


杏「どうせだし大きい方もしちゃえば?」

P「……は?」

杏「我慢は体に毒だよ」

P「いや、流石にそれは……」

杏「生理現象だよ、生理現象。仕方ないじゃん」

P「いや、杏さん……?」

杏「出ないならお腹押してあげようか?」

P「いや……ちょっ、待て! 待って!」

 アッ――!!


 ギィ バタン

杏「ふー」

礼子「あら、お帰りなさい。ずいぶん遅かったわね?」

P「そ、そうですか? あ、あはは……」

礼子「言ってくれれば、私も手助けしたのに。プロデューサーのお世話」

P「」ビクッ

ちひろ「えっ?」

礼子「ん?」ニッコリ


杏「すっかりばれてたねぇ」

P「い、いやぁ、礼子さんにまで見られたら、立ち直れなくなってしまいそうで……」

礼子「あら、残念ねぇ」

礼子「あなたのだったら、どんなのでも受け入れるわよ?」ボソッ

P「っ!? や、やめてくださいよ! 心臓に悪すぎる!!」

礼子「ふふっ。でも元々、そういう事も含めて、フォローするつもりでいたんだから、頼ってくれていいのよ?」

P「はぁ、わかりました……まぁ、今夜はもう大丈夫かとは思いますけど」


杏「んー……」クシクシ

P「ん? 眠くなったか?」

杏「んー、今日は慣れないことして疲れたしねぇ」

P「ま、俺の手伝いとかしてくれたしな」

礼子「それじゃあ、もう寝る?」

P「そうしますかねー」

ちひろ「ちょっと早くないですか?」

礼子「私は寝れる時はこれくらいには寝ちゃうわよ」

ちひろ「――そ、それはやっぱり美容的な?」

礼子「ええ」

ちひろ「なるほど……寝れるかなぁ」

礼子「眠くなるまで飲んでてもいいのよ? そのつもりで買ったんだし」

ちひろ「じゃあ、私はもう少しだけ頂いています」


ちひろ「プロデューサーさんは寝れるんですか?」

P「俺は常時若干の寝不足なので、たぶん大丈夫です」

礼子「それはそれで、どうなのかしら……」

杏「プロデューサー、長生きしてよね……」

P「その切なくなる言い方、やめてくれないかなぁ」

杏「でもほら、突然死とかも実際あるしさ」

礼子「そうね……もしそうなったら、この事務所は終わりかもしれないわね」

ちひろ「!?」

ちひろ「プ、プロデューサーさん、いざと言う時はドリンクありますからね!!」

P「おーい、そこでドリンク勧めちゃうんですか」

杏「やっぱりちひろさんは、ちひろさんだった」

P「突然死すらどうにかできるんだったら本当に凄いけど、常飲はしたくないな……」


 仮眠室

P「じゃあ、自分たちはこのベッドを使いますんで」

礼子「なら、私はこっちね」

杏「プロデューサー、早く……もう、限界……」フラフラ

P「わかったわかった」

礼子「それじゃ、電気消すわね」パチッ

 モゾモゾ

P「ふぅ……」

杏「くぅ……ぐぅ……」

P「もう寝てるし……」

礼子「ふふ、本当に疲れてたんじゃない?」

P「どうでしょうね。案外いつもこんな感じかもしれませんし」

礼子「それもそうね」


P「あ、そうだ」

礼子「どうかした?」

P「このタイミングで話すのはどうかとは思うんですが、レディビーストのメンバー追加を考えてるんですよね」

礼子「あら、もうちょっと色っぽい話を期待したのに」

P「……すいません」

礼子「それで、新メンバーは誰になるのかしら」

P「いえ、まだ絞り切れてないんですよ」


礼子「そう。それでなんで今のタイミングだったのかしら」

P「いや、ふと思い出しまして」

P(電気消した後の礼子さんのシルエット見てて、獣っぽいとか思ったなんて言えないよなぁ)

礼子「決まってないんじゃしょうがないわね。それじゃあ、決まったら紹介してね」

P「はい、そうします」

P「そろそろホントに寝ますか……おやすみなさい……」

礼子「ええ、おやすみなさい……」

今日はここまで
多分明日で終わります

おやすみなさい


 翌朝

P「ん、んん――……」

P「……」

P「ヤバい遅刻!!」ガバッ

P「――ん? あれ?」キョロキョロ

P「あ、ああ、そうか、昨日は事務所に泊まったんだっけ……」

P「……」


P「……」ワキワキ

P「!? は、離れてる!!」

P「杏起きろ! 手が離れたぞ!!」バサッ

ちひろ「ん、やぁー……」モゾモゾ

P「」

P「」

P「はっ!?」


P「なっななっなんでちひろさんがっ!?」

ちひろ「んんぅ、おかーさん、まぶしいー……」

P「誰がお母さんだ!」

ちひろ「んぇ……?」

P「おはよーございます」

ちひろ「あー……あれぇ……?」

ちひろ「いつ結婚したんでしたっけぇ……?」

P「いや、してないですよ?」

ちひろ「あー、じゃあ夜這いですかぁ……」

ちひろ「責任は取ってくれないと、ダメですよー……?」

P「もっとしてないですよ!?」

P「なんだこれ、絶対ちひろさんに似た別の何かだ」


P「ってか、寝ぼけて幼児退行してる?」

P「その割には結婚だの夜這いだの言ってるし、ホント、なんだこれ……」

ちひろ「……」フラーフラー

P「いい加減起きてください! ちひろさん!」ユサユサ

ちひろ「っ!? は、はい!?」ガクガク

ちひろ「えっ、プロデューサーさん!?」

ちひろ「ひ、人の部屋で何してるんですか!?」

P「事務所ですよ、ここ!」

ちひろ「えっ!?」

P「……」

ちひろ「……」

P「落ち着きましたか?」

ちひろ「はい、失礼しました……」


P「それで、なんで俺と杏が寝てたベッドに、ちひろさんが居るんですか……」

P「それより、杏はどこ行ったんですか?」

ちひろ「えー……それがですね……」

 ガチャ

礼子「あら、二人とも起きたのね」

P・ちひろ「」ビクゥッ

礼子「……どうしたの?」

P「あ、あはは、いえ、何でもないです。おはようございます」

ちひろ「あはは~、おはようございます」

礼子「はい、おはよう。それより、ちひろちゃん?」

ちひろ「はひぃっ!?」

礼子「流石にあなた、飲み過ぎよ?」

P「……え?」

ちひろ「す、すみません……」


礼子「杏露酒、3本しか残ってなかったわ」

P「えっ」

ちひろ「気付いたら、それだけになってて……」

礼子「約6本、一人で飲んだことになるわね」

P「うわ、あの甘いのを……」

ちひろ「それで、立とうと思ったら立てなくて、這ってここまで来たんですよー」

ちひろ「なので、正直どこに誰が寝てるのか分からないまま、ベッドに潜り込みまして……」

P「結果、こっちのベッドだったと……」

ちひろ「はい、たぶん……」

P「それで結局、杏はどこへ……」

礼子「杏ちゃんなら、私が使ってた方のベッドで寝てるわよ」

P「えっ」


礼子「目が覚めたら、布団の中に杏ちゃんが居てびっくりしたわ」

P「そりゃ驚きますよね」

礼子「いつ離れたかは?」

P「寝てる隙だったので、さっぱりですね」

礼子「それじゃ仕方ないわね」

礼子「それより一応朝食作ったけど、食べる?」

P「ええ、いただきます」

礼子「ちひろちゃんは?」

ちひろ「」

P「ちひろさん?」

ちひろ「ぁ、すいません、頭痛が酷くて……」

礼子「二日酔いね。あれだけ飲んだら当り前よね」


礼子「朝食と言っても、サラダとベーコンエッグとトースト、レトルトスープって言う簡単なものだけど」

P「いえ、十分どころか、豪華なもんですよ、これ」

礼子「まゆちゃんが朝食用にって、材料を冷蔵庫に入れて行ってくれたのよ」

P「oh、さすがまゆ……」

礼子「あとちひろちゃんには、これね」ゴロッ

ちひろ「えっと、これは……?」

礼子「グレープフルーツよ」

ちひろ「丸ごと……」

礼子「半分に切って、スプーンで中身を食べる」

礼子「シンプルだけど、シジミの味噌汁並に二日酔いには効くわよ?」

ちひろ「なるほど……」

P「礼子さんなら、プレーリーオイスターとか言い出すかと思いました」

礼子「良く知ってるわね、そんなの……」


 ガチャ

杏「ふあぁぁぁ~」ノソノソ

P「お、起きてきたか」

杏「んー、一応……」ウツラウツラ

P「立ったまま寝るな!?」

礼子「杏ちゃん、朝食食べる?」

杏「……んー、もらうー」


杏「むぐむぐ、んっ。ちひろさんはなんでグレープフルーツ食べてるの?」

ちひろ「んぐっ!?」

P「自業自得なんだ。そっとしておいてあげなさい」

杏「ふーん?」

ちひろ「こ、これはこれで、美味しいですよ?」

礼子「ふふっ」

P「ところで俺も聞きたいんだが」

杏「休みをくれるなら答えるよ。あぐ」

P「そういうのいいんで」

杏「もぐもぐ。ちぇー」


杏「それで、なに?」

P「いつ手が離れたかわかるか?」

杏「んー、杏も気付いたらって感じだったからなぁ」

P「ふむ、そっか」

杏「それだけ?」

P「これは答えてくれなくても、どっちでも良い質問なんだが――」

P「なんで礼子さんの方に移ったんだ?」

杏「それねー」

杏「気付いたら、プロデューサーとちひろさんに挟まれて寝てるんだもん。すっごい暑くてさー」

ちひろ「うっ」

杏「しばらくは我慢してたんだけど、やっぱり寝れないし。動けないし」

杏「で、しばらくして手が離れてるのに気付いたから、脱出したよ。4時くらいだったかなぁ」

P「なるほどな。何はともあれ、志希の計算以上に早く、薬の効果が切れたってことか」


――――――

志希「ありゃ~、そんなに誤差が出ちゃったか~」

P「そうなるな」

志希「それにしても今回の実験は、観察面で色々失敗だったねー♪」

P「その前に、他人を騙し討ちして実験するな」

志希(ふーん、そういう事言っちゃうんだ?)

まゆ「プロデューサーさん、コーヒー入れましたけど、飲みますかぁ?」

P「お、じゃあ貰おうかな。ありがとう、まゆ」

まゆ「いえ、いいんですよぉ?」

P「……」ズズ

まゆ「……」ジー

志希「……」ジー

P「え? なに?」


まゆ「うふ、プロデューサーさん……」ジリジリ

P「ま、まゆ? どうしたんだ、にじり寄って……」

まゆ「えいっ」ギュッ

P「おいっ!? まさかお前!?」

まゆ「うふふふふ、これでまゆもプロデューサーさんとくっつい――」

 ググッ

まゆ「くっついて――」

 グググググッ

まゆ「あらぁ??」

 グイーンッ

まゆ「きゃぁっ!?」

P「うおっ!?」カラカラカラ……


P「な、なんだ? 椅子が勝手に移動した?」

まゆ「……」

P(もしかして、これ……)

まゆ「プロデューサーさぁん、動かないでくださいねぇ……」ジリジリ

P「だから怖いって!」

まゆ「えいっ」ダッシュ

P「のわぁっ!?」シャーーーーーーーーーッ

 ドンッ


P(勢いを付けたまゆに合わせる様に、俺は椅子ごと移動して壁にぶつかった……)

まゆ「ぬぬぬううぅぅぅぅぅぅぅっ」グググググッ

P「落ち着くんだまゆ! アイドルどころか女の子がしちゃいけない顔になってるぞ!?」

まゆ「はっ!? み、見ないでください!」

P「大丈夫だから! もういつもの可愛いまゆだから!」

まゆ「そ、そうですかぁ?」テレッ

P(チョロくて助かった)


まゆ「志希ちゃん……これはどういうことですかぁ?」

志希「えー、まゆちゃんが『プロデューサーが飲んだ薬が欲しい』って言うから、それを渡しただけだよー?」

P「あー、やっぱりそういうことか」

P「マグネットドリンクSを飲んだ同士では、逆に反発し合うんだな? 磁石の同極を近づけた時みたいに」

志希「ピンポーン♪」

まゆ「」

志希「基本的にこの薬は、最初に触った場所同士に特殊な磁場が発生するんだけど~」

志希「同じ薬を飲んだ同士だと、逆に斥力が発生して反発し合うんだよね~♪」

志希「まゆちゃんさー、さっき思いっきりガバッと行ってたよね~♪ だいた~ん♪」

志希「あれだけ面積があると、反発力もすっごいことになるんじゃないかにゃ~」

まゆ「」

志希「まぁそういう訳なんでー、少なくとも今日一日は、プロデューサーには近づけないと思った方が良いね~」

まゆ「そ、そんなぁ……」ヘナヘナ


 ガチャ

杏「おはよー」

志希「杏ちゃんおっはー!」

まゆ「」

杏「まゆちゃんはどうしたの? なんか燃え尽きた矢吹丈みたいになってるけど」

P「なんで知ってるの、お前……」

杏「有名だからねー」

杏「で、プロデューサーはプロデューサーで、なんでそんな隅っこに」

P「あぁ、ちょっとな……」

杏「ふぅん。まぁいっか」トコトコ

P「?」


杏「よいしょっと」ポスンッ

P「杏さん? 何してるんですか?」

杏「いやー、なんかプロデューサーの膝の上落ち着くしさー」

P「へー……」

P「あっ、お前、昨日のアレ舐めてないよな?」

杏「さーねー」

P「ちょっと待てぇ!?」ヒョイッ

P「ほっ、離れた……」

杏「なに? また飲んじゃったの?」

P「コーヒーに仕込まれたんだ、まゆに……」

杏「あー、そういう事……」


杏「まゆちゃんさぁ、正直あの薬、たぶんまゆちゃんが思ってるよりヤバいと思うよ?」

まゆ「――そうなんですかぁ?」

杏「うん。女の子として見られたくないところも、見せることになるよ?」

まゆ「それって、例えば――」

杏「トイレとか、ね」

まゆ「プロデューサーさんのなら、まゆは――」

P「待てコラ、何言ってんだ!」

杏「いやまぁ、まゆちゃんならそう言うだろうなとは予想してたけどね」


杏「問題は逆のパターンだよ」

まゆ「逆……?」

杏「まゆちゃんがトイレに行くときも、プロデューサーと一緒に個室に入るんだよ?」

まゆ「――……っ!?」

まゆ「そ、それはぁ、こ、困りますねぇ……」

杏「でしょー?」

まゆ「あの、杏ちゃんも、そういう事に……?」

杏「なったよ。杏はまぁ、楽出来るなら割と何でも受け入れるからねー」


杏「あとさ、多分どこがくっついても、服が脱げなくなっちゃうからさ――」

杏「お風呂も入れないよ?」

まゆ「お風呂……」

杏「まゆちゃんは、一晩お風呂に入らずに居られる?」

まゆ「一晩……」

杏「しかも、プロデューサーの至近距離にずっと居るんだよ? 耐えられる?」

まゆ「……まゆは……耐えられないかも、しれません……」

杏「まぁ、そう言う事になるよって話」

まゆ「そう、ですか……うぅ、わかりました、この薬は諦めます……」

杏「そうそう、それが良いよ」


志希「あっれー、つまんなーい」

P「つまんないじゃねーよ、志希!」ガシッッ

志希「にゃっは~♪ 触っちゃったねぇ?」

P「は?」グググッ

 グイーンッ

P「うおっ!?」

志希「にゃっははーっ! 実は志希ちゃんも飲んでたのだーっ♪」

P「なに!?」


志希「このまま失踪するねー! バイビー♪」

P「待て志希ぃ!! くそっ!」

杏(あー、そういう使い方があるのかー)

杏(うーん、でもまぁ――)チラッ

P「あいつめ! 今日はオフだからまだいいが、明日には帰ってくるんだろうなぁ!?」

杏(近寄れないのも、近寄ってもらえないのも、寂しいからなぁ……ちょっとだけ)

杏(杏的にはそっちの使い方も要らないかなー?)


 おわり

これで薬に関する話は終わりです

この後、薬に関係ないおまけをちょろっと投下します

あ、そうだ
>>122はミスです


 おまけ

 数日後

木場真奈美「今日は何の用だい?」
http://i.imgur.com/6KbjMYy.jpg

礼子「真奈美と一緒と言うことは、例のメンバーが決まったのかしら?」

P「ええ、決まりました」

真奈美「メンバー?」

礼子「レディビーストにメンバー追加だそうよ」

真奈美「ほう」


P「新衣装でここに来る手筈になってますので、そろそろ――」

 コンコン

P「あ、来ましたね」

 ガチャ

相川千夏「メルシ ダヴァンス」
http://i.imgur.com/SZsvleU.jpg

P「」

 バタンッ


礼子・真奈美「……」

 ガチャ

千夏「締め出すなんて酷くないかしら?」

P「いや、なんでその衣装なんだよ……」

千夏「ビーストなんでしょう? だから動物衣装を着てきたわ」

P「」

礼子「……ぷっ、ふふっ、それくらいにしておきなさい、千夏ちゃん」

P「……礼子さん?」

礼子「千夏ちゃんなりのジョークでしょ」

千夏「ええ、その通り」

P「なんだよ、もう……」


真奈美「千夏は、案外イタズラ好きなのかな?」

千夏「今回はたまたま思いついただけよ?」

礼子「それにしても、千夏ちゃんとは縁があるわね」

千夏「そうね。本当にお姉様と呼んでしまおうかしら」

礼子「それなら三姉妹ね。ねぇ真奈美?」

真奈美「私も入るのか……」

千夏「あら、頼り甲斐のあるお姉様が二人になってしまったわ」


P(うわぁ、この三姉妹、絶対勝てる気がしない……)

P(……何に勝つんだろうな? まぁいいや。それよりも……)

P「千夏、いい加減ホントの衣装に着替えてきたらどうだ」

千夏「あ……そうだったわね。あまりジラしても仕方ないものね」

P「あ、ああ……」

千夏「それでは、行ってくるわ」

 パタン

P「あいつ、あの言い回し気に入ったのかな……」


 コンコン

P「え……? もう着替えたのか?」

真奈美「いや、いくらなんでも早すぎだろう。つい今しがた出て行ったところだぞ」

P「ですよね」

礼子「純粋に、プロデューサーに用事がある誰かかもしれないわよ?」

P「それもそうですね。どうぞー」

 ガチャ

柊志乃「どう? 似合うかしら……」
http://i.imgur.com/Nw26UE8.jpg

P「」

 バタンッ


礼子「……志乃も新メンバーなの?」

P「い、いえ、あれぇ?」

 ガチャッ

志乃「どうして、ドアを閉めたの……?」

P「いやいやいやいや、なんで志乃さんがその衣装を着てるんですか!?」

P「って言うか、どこから手に入れたんですか、その衣装!?」

P「一瞬礼子さんの衣装かと思ったけど、良く見たら微妙に違うし……」

志乃「千夏ちゃんの衣装の発注書に、差し込んでおいたわ……」

P「なにしてくれてんですか!?」

真奈美「よくまぁ、チェックを潜り抜けたものだな」

P「やべぇ、ちひろさんに怒られる……」


 ガチャッ

千夏「着替えてきたわ」
http://i.imgur.com/89LK5CM.jpg

P「はぁ……お帰り……」

千夏「……溜息で出迎えられるとは思わなかったわ。何があった……の」

志乃「うふふ……」

P「いや、なんというか……」

千夏「いいわ、何となく察しはついたから」

礼子「まったく、どうするつもりよ、志乃?」

志乃「似合ってないかしら……?」

礼子「似合う似合わない以前の話をしてるのよ?」


真奈美「それで、どうするんだい?」

P「どうしますかねー、なんて言っててもしょうがないか……」

P「志乃さん、このユニットにそんなに入りたいんですか?」

志乃「それは、ねぇ? 楽しそうなんだもの……」

P(楽しそう……?)

P「はぁ……ま、衣装はちゃんとした物があるし、コンセプト的にも外れてるわけじゃないですからね」

P「何より、その衣装代分以上は稼がないと、俺はちひろさんに〆られてしまうので――」

P「志乃さんも加入ってことで!」

志乃「ありがとう……」


千夏「いいのかしら、こんな決め方で」

真奈美「他ならぬプロデューサー君の決定だ、良いんじゃないか?」

志乃「ではお祝いに、パーッと飲みに行きましょう……?」

礼子「志乃、それが目的なんじゃないの?」

志乃「ほら、礼子。プロデューサーのそっちの腕をとって……」スッ

P「えっ」

礼子「……ふふ、仕方ないわね」スッ

P「あれっ」

真奈美「どうやら逃げ場はなさそうだね、プロデューサー君」

P「」

千夏「どのお店にしようかしらね」

P「ま、待って、俺まだ仕事が……頼むから聞いてくれぇ~!!」


 おまけ おわり

と言う訳で全部終わりです

今回、当初考えてたよりかなり長くなってしまい、書き溜めにえらく時間がかかりました
赤ずきん辺りを書いてた頃はイベント直後だったんスよねー(遠い目)

千夏さんの衣装が出た時にはおまけの内容が何となく思い付いてたんですが、書き上げる前に志乃さんまで追加されてるし、礼子さん抜きに別名のユニットになってるしでお蔵入りにしようかと思ったんですが、せっかくなので書きあげてみました

それではHTML化依頼してきます

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