正義の味方提督【艦これ】 (106)

みなさん初めまして、電です

この度私は新しく設置される鎮守府の司令官さんの下に秘書官として配属される事になりました

聞くところによると司令官さんも佐官に成り立ての新米提督さんらしく、私が部下として初めての艦娘らしいのです

新しい生活に不安な事は勿論山程あるのですが、私も司令官さんも新米同士、仲良くやって行けるように頑張ります!なのです!(←緊張して語尾が変になった)

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電「初めまして司令官さん、電です!どうかよろしくお願いします!」(ビシッ


提督「よろしく電くん、私がこの鎮守府に司令官として配属された者だ、まぁ仲良くしよう」

顔は美形では無いけど男前

背は高く骨太でしっかりと筋肉のついた身体

軍人らしいと言えば軍人らしい風貌

一言で言うと強そう
好意的に言うと頼り甲斐がありそう
正直に言うとちょっと怖い

そんな第一印象だったのです

提督「あー…その、なんだ電くん、なんていうか堅いな、そんなにかしこまらないでもっと楽にしてくれ」


電「楽に…ですか…?」(びくっ


提督「かく言う私も提督などという地位を与えられて緊張していてね、君にまで緊張されるともうどうして良いか解らないじゃないか」


電「へ………?」(ぽかーん

電「……ぷっ、あははははっ!急に何を言い出すのですか、司令官さんなんだからもっとしっかりしていて欲しいのです!」


提督「な…っ!?別に笑う事無いだろう!私だって緊張の一つや二つ!」


電「ははははっ!すみません…でもまさかその顔からそんな言葉が出てくるなんて思っていなくて……あはははははっ!」


提督「んなぁ!?顔は関係無いだろう顔は!というか君笑いすぎだろう!!」

さっきまで緊張していたのがバカみたいなのです

うん、心配だったけど怖い司令官さんじゃなくて良かったのです

大丈夫、この人とならきっと上手くやって行ける
胸のつかえが一つ取れて一安心なのです

そう思った時でした……

提督「…こほん、まぁいいんだ、もうお互い緊張はしてないみたいだしな」


電「あはははは…そうですね、なんだかもうそんな空気じゃないのです」


提督「…さて、ときに電くん」


電「はい、なんでしょうか?」


提督「単刀直入に訊こう、ヒーローは好きかな?」


電「……へ………?」(きょとん

電「し…質問の意味がよくわからないのですが……?」


提督「言葉通りだ、アニメやドラマで活躍するあのヒーローだよ
弱気を助け、正義を貫き悪を討つ、そんな無敵のヒーローだ」


電「まぁ…別に嫌う理由は無いですが……」


提督「そうか、実は私はそういうのが大好きでね!本当は司令官ではなく戦士になりたくて軍人になったんだ!」


電「は…はぁ……」(ぽかーん…

先程とは打って変わって饒舌に語り始める司令官さん

お話には着いて行けませんが、電は少年のように目を輝かせてお話をする司令官さんを見て、つい「なんだか可愛いな」と思ってしまいました

提督「だが我々が戦う敵は深海棲艦であり、彼女達を相手に我々ただの人間はあまりにも無力だ…私はそれがとても口惜しい」


電「その為の艦娘なのです、司令官さん達が戦えない分私達が戦うのです!」


提督「そうそれだ!私は君達を本当に凄いと思う、ヒーローになれなかった私にとって君達艦娘こそが本物のヒーローなんだ!」


電「なんだか…悪い気はしないのです」


提督「解ってくれるか!そうだ、ヒーローにはなれなかったが、君達のようなヒーローに関われる役職に着けて本当に嬉しく思っている!
さぁ電くん!私と共に暁の水平線に勝利を刻もうじゃないか!!」


電「お…おおーっ?」


これはそんな司令官さんと艦娘のお話なのです


△プロローグ

プロローグが終わったところで今日はここまで、明日からちょっとずつ本編を書きます

ストーリーものやヒーローものではなく、どっちかというとのんびりしたお話を書く予定

ではお粗末

次回タイトル
【提督と電と正義の味方論】

『提督と電と正義の味方論』


▽数週間後
【鎮守府前海域】


駆逐イ級の群れ「「「「イーッ!イィーッ!」」」」


雷「しまった囲まれた!?」


電「全艦散会!!的にならないようにとにかく動き回って避けて!反撃のチャンスを待つのです!」


木曾「チッ…!いくら駆逐艦でもこう数がいると分が悪いか…!」

ザザザザザッ!!


木曾「しめた!イ級達もバラけ始めたぞ!」


電「この機を逃さず各個撃破なのです!ありったけの魚雷を打ち込むのです!」


雷「任せて!雷の本気、見せてあげるわ!」


ドンドン!ドドォン!!


イ級「ウヴァア"ア"ァア"ア"ァ"ア"ア"あぁァアァァァああぁアアァァァ……!!」(ゴゴゴゴゴ……


電「…………っ!!」

雷「やったわ!この雷様に勝てるとでも思ったのかしら?……あれ?どうしたの電?聞いてる?」


電「あ……うん雷、ありがとう…なのです
今ので最後だったみたいですし、帰投するのです」


木曾「今回は肝を冷やしたな、電の指示が冴えていて助かった
電も旗艦が様になって来たな」


電「……いえ、電なんてまだまだなのです……」

【鎮守府】


電「艦隊帰投、なのです」


提督「うん、報告書を読んだぞ!よく陸地に奴らの手が伸びる前に叩いてくれた!流石だ電くん!」


電「………はい、ありがとう…なのです…」


提督「ここ暫くで雷と木曾も艦隊に加わり戦力は増したが、やはり旗艦に君を添えていて正解だったな!」

電「……本当にそうでしょうか…」


提督「……うん?何か気がかりな事でも?」


電「司令官さん…少しだけ相談をしても良いですか?」


提督「ああ、なんでも言ってくれ」


電「それではお言葉に甘えて……」

電「司令官さん、電達は…なんのために戦っているのですか?」


提督「それは勿論、世の平和を守る為だろう」


電「平和ってなんなのですか?」


提督「……誰も涙を流さずに済む世界……かな」


電「……なら、やっぱり戦うのはおかしいのです…」


提督「………電くん…君はいったい何を見たんだ…?」

電「今日電達が倒した駆逐イ級…電にあの子達の言葉は解りませんが……沈んで行く時…なんだか泣いていた…ような気がするのです……」


提督「………何?」


電「誰も泣かずに済む世界なら…あの子達と戦うのは本当に正しい事なのですか?」


提督「だが…戦わなければ何も守れないだろう」


電「でもそれじゃあ…あの子達に涙を押し付けているだけなのです」

提督「…何が言いたいんだ?」


電「…沈んだ敵も、出来れば助けたいのです…」


提督「…電くん、君の優しさはよく解った
だがこれは戦争なんだ、敵を倒さなければこちらがやられてしまう」


電「解っているのです…でも、戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって…そう思うのはおかしいですか…?」


提督「電くん…」

電「ごめんなさい、出しゃばった事を言って…こんな電が旗艦のままでは、いつか絶対に良くない事が……」


提督「いいや確信した、やはり我が鎮守府の第一艦隊の旗艦を務められるのは君しかいない」


電「…………えっ?」


提督「確かに君の言う事は生っちょろい戯言だ、だが!ヒーローとはそういう戯言を本当に貫き通せるからこそヒーローなのだ!」


電「え?えぇっ?」

提督「"沈んだ敵も助けたい"、か…素晴らしい!感動したぞ!それこそヒーローの言葉だ電くん!」


電「ちょ…なんで急にそんなテンションに……っ!?」


提督「私は迫り来る敵や脅威と戦う事しか考えていなかった…それがとても恥ずかしい!戦う事の愚かさを、君は気づいていたんだな!」


電「い…いえ別にそう言うわけじゃ……」(オロオロ…

提督「いいや謙遜する事はない!むしろまだ温い!どうせなら沈める前に助けてしまえ!君になら必ずそれが出来る!」


電「で…できないのです!そんなの買い被りなのです!!」


提督「別に今すぐそうしろというわけではない、君がその想いを忘れなければいつかそれは実現できる
本気で想い、努力さえすれば、成りたいと思った自分に必ず近付いて行けるんだ!」


電「そ…そういうものですか…?」


提督「ああそういうものだ!!」

提督「…しかし…君は本当に立派だな、今まで"電くん"などと子どものように呼んでいた自分を恥ずかしく思うよ」


電「い…いえ!電は別に気にしていないのです!」


提督「せめて呼び方を改めなくてはな…そうだ!これからは敬愛を込めて『レッド』と呼ばせてくれないか!?」


電「れれれれれレッド!?」

提督「ああ!君は旗艦…即ちリーダーだし、ウチの最初のメンバーだ!
レッドとは主役であり、リーダーの色!君以上にこの呼び名が似合う者はここにはいないだろう!!」


電「恥ずかしいからやめるのです!『電くん』のままで良いのです!!」


提督「いいや遠慮するな!この呼び名は"司令官"として君へ最高の敬意を払った呼称なんだ!」


電「司令官さんがそういう人なのは承知しているのです!でもやめるのです!!人前でそんな名前で呼ばれたら恥ずかしくて顔から火が出るのです!!」


提督「大丈夫だレッド!君はレッドの名に決して恥じることのない艦娘なのだから!」


電「早速呼ぶな!!なのです!!!!」

▽数日後


雷「レッド!司令官が次の作戦の事で話があるって言っていたわ!」


木曾「レッド、今回もいい指揮だった、また頼りにしているぞ」


大淀「レッド、提督にこの任務を届けて欲しいんですけど…」


明石「レッドの主砲!バッチリ改装しておきましたよ!」


間宮「レッド、お疲れでしょう?アイスを用意してありますのでいかがですか?」





電「司令官さんのせいで定着してしまったのですこのスカポンタン!!どう責任とってくれるのですか!?」


提督「ん?何が不満なんだレッド?そんな事より次の作戦なんだが……」


電「だからやめるのです!!!!」


※アナウンス※

鎮守府内での電のアダ名が「レッド」で定着しました

今後文中に「レッド」という固有名詞が出てきたらほぼ電の事です

一旦ここまで
また夜に書きます

『軽巡木曾の決闘』


木曾「………はぁ……」


電「うん?木曾さんどうしたのですか?」


木曾「レッドか…いや、来週に決闘を挑まれて少し憂鬱でな…」


電「レッド言うな、なのです……決闘?」

木曾「ああ、隣の鎮守府の天龍って奴なんだが…キャラが被ってるだなんだのとイチャモンをつけられてしまってな」


電「そんなの適当に受け流しておけば良いのです」


木曾「そうしたいのは山々なんだが、一つ大きな問題があってな」


電「問題……?」


木曾「その…天龍なんだがな……同じ軽巡なんだが…俺より圧倒的に弱いんだ」


電「…………え?」

木曾「艤装が旧型過ぎて弱いんだよ、そのおかげで上手く負けてやる事ができないんだ」


電「い…いっその事完全勝利して文句を言えなくしちゃうとか…」


木曾「それができたらやっている…だがあちらにも意地があるんだ、完全勝利までは取らせてくれなくてな」


電「中途半端な強敵なのですね……」


木曾「ああ、だから困っている」

【執務室】


提督「それでどうしたらいいか私に相談に来た、と」


木曾「ああ、何か出来るだけ穏便に済ませる良いアイディアは無いか?」


提督「いやぁ青春だなぁいいじゃないか決闘!思う存分やりたまえ!」


電「そうしたくないから相談に来たのです!!」

木曾「だがあちらにもプライドがあるんだ、俺が全力で戦ってボコボコにしてしまったら奴を傷つけてしまうんじゃないか?」


提督「…その考え方がまず間違いだな」


木曾「何?」


提督「決闘を挑んで来たのはあっちなんだろう?決闘と言うからには、彼女は既にプライドを掛けているんだよ、それに手を抜き全力で挑まない事の方が礼節に欠けるというものではないか?」


木曾「……一理ある、が…弱い者虐めは俺の趣味じゃないんだ」

提督「…成る程…良く解った、尚更君はその天龍と全力で決闘に臨むべきだよ」


木曾「どうしてそうなる」


提督「戦えば解る、場所が決まっていないならウチの演習場を貸してやろう、私もその天龍を見てみたい」


木曾「……お前は変な奴だが適当な事を言う奴ではないからな…解った参考にしておく、演習場も遠慮なく貸してもらうぞ」


提督「まぁ頑張ってくれ」

提督「………ところでレッド、木曾くん、私はそんなに変かな」


木曾「今更何を言っているんだ」


電「司令官さんが変人でなければ変人の定義が緩すぎるのです」

▽決闘当日
【演習場】


天龍「フフフ…逃げずによく来たな、褒めてやるぜ」


木曾「来たのはお前なんだがな」


提督「君が天龍くんか、木曾くんから話は聞いているよ」


天龍「あんたがここの提督か、場所を貸してくれて感謝するぜ」


提督「いいや構わんよ」

提督「しかし天龍くん、君はとてもいい目をしているな」


天龍「へっ、褒めても手は抜かねぇぞ?」


提督「ああ、決闘なんだから手を抜かれては困る、ウチの木曾を頼んだぞ」


天龍「ん?まぁなんだかよく解らねぇけど俺に任せておきな!」


木曾「そろそろいいか?俺は早く終わらせたいんだ」


天龍「へっ、自信ありってか?そんな余裕面してられるのも今のうちだぜ!」

▽数分後


天龍「…ハァ…ハァ…ハァ……」<<大破!!>>


木曾「…まだやるのか?艤装がその状態じゃ砲撃もロクにできないだろう、いい加減に諦めろ」(カスダメ)


天龍「…うるせぇ…まだだ…俺は死ぬまで戦えるぞ…っ!!」


木曾「馬鹿な考えはやめろ、そんな旧型の艤装じゃ俺に勝てない事はお前が一番よく解っているだろう」

天龍「……それがなんだってんだ…旧型でもなんでもなぁ……俺はまだ立ってんだよ……ならまだ負けてねぇ!
こんな俺にだって…戦う力があるんだ…守らなきゃなんねぇモノがあるんだ……ここで諦めるような奴になってたまるかよ!!
艤装がダメでも俺にはまだコレがある!!」<ジャキン!


木曾「!!…剣か!!」


天龍「でりゃあああぁああああああ!!!!!」<ブォン!!


木曾「く……っ!!」

ザシャァ!
ドン、ドガァン!!


天龍「ぐあああぁああああぁあああああああッッッ!!!!」


提督「そこまで!勝負ありだ!!」


木曾「………っ!」<<中破>>

提督「レッド、天龍くんを入渠ドックに連れて行ってやってくれ」


電「天龍さん、立てますか?」


天龍「……大丈夫だ…すまねぇな、お言葉に甘えてドック貸してもらうぜ」(ヨロ…


提督「ああ、ゆっくり浸かって来るといい」

提督「……さて木曾くん、私の言っていた事が解ったかな?」


木曾「……ピンとは来ないが、なんとなくはな…」


提督「今はそれで良いさ」


木曾「俺はあいつを見下していたんだな……今なら解る、それがどんなに傲慢で情けない事なのかな」

木曾「あいつは…天龍は強い、立派な戦士だ
そんな奴を単純な性能差だけで格下だと侮っていた自分が恥ずかしいな」


提督「その通りだ、戦いというのは装備の優劣だけで決まるものではない
いざという時こそ、その精神力が勝敗を分けるんだ」


木曾「俺はケンカには勝ったかもしれないが、心で完全に負けていた……決闘としては俺の完敗だ」

【入渠ドック】


天龍「かぁーっ!最後のは惜しかったよなぁ最後のは!」


電「まさか砲撃も出来ない状態から木曾さんを中破させると思わなかったのです」


天龍「フフフ…どうだ怖いか?」


電「いいえ、どちらかと言うと格好良いのです」(にこっ


天龍「…まぁそれで良いか、悪い気はしねぇしな」(ぽりぽり…

天龍「にしてもここの提督は良い面構えしてんな」


電「そうですか?電からするとただの変人なのですが…」


天龍「あのくらいの歳であんな綺麗な目をしてる奴を俺は他に知らねぇよ、あんな捻てねぇ大人は中々いねぇぞ?」


電「あの人は頭の中が子どもなだけなのです」


天龍「そこが良いんじゃねぇか、それでいてどっしり構えてる、ここの奴らはあんな提督の下につけて幸せモンだぜマジでよ」


電「はぁ…そうですか…」

天龍「ところでなんでみんなお前を『レッド』って呼ぶんだ?」


電「そこには触れないでほしいのです」(ぷいっ

【港】


天龍「世話になったな、俺はもう帰るぜ」


木曾「いい勝負だった、また戦おう天龍」


天龍「おう!今度は負けねぇからな!」


木曾「それはこちらの台詞だ」


天龍「へっ、よく言うぜ」

提督「決闘じゃなくてもまたいつでも遊びに来い、君なら歓迎するぞ天龍くん」


天龍「ああ!俺もあんたらの事は気に入ったしな、近くに寄ったらそうさせてもらうぜ!」


電「お待ちしているのです」


天龍「おう!またなレッド!」


電「レッド言うな!なのです!」(ぷんすか!

ザザーン…


提督「天龍くんか…いい友人を持ったな木曾くん」


木曾「ああ、そうだな」


提督「正直ウチに欲しいくらいの人材だったよ」


木曾「むっ、それは聞き捨てならないな」


提督「木曾くん?」

木曾「ここには俺がいるだろう、俺じゃ頼りにならないか?」


提督「そういう事ではないんだが…頼りになる奴はいくらいても良いだろう?」


木曾「…でも今は俺が頼りにされたいな、今日の決闘で何か掴めた気がするんだ」


提督「…そうか、期待しているぞ 」


木曾「任せてくれ、俺がお前に最高の勝利を与えてやる!」

■幕間■
『戦艦が来た!』


山城「初めまして、山城です」


電「戦艦!戦艦ですよ司令官さん!」


提督「ああ!これからの戦いがぐっと楽になるな!」


山城「あの…扶桑姉様はいないのですか…?」


提督「ああ、ウチでは君が初めての戦艦だ!」


山城「そうですか…あぁ…不幸だわ……」(どよーん…


電(なんだかめんどくさそうな人なのです)

山城「姉様はいないし…提督もなんだか暑苦しそうな人だし…姉様は居ないし…人手不足でこき使われそうだし…廊下は狭いし…姉様はいないし……」(ぶつぶつぶつ…


提督「なんにせよこれからよろしく頼むぞ山城くん!」


電(空気読んで話しかけるのですこのアホ!!)


山城「はぁ…よろしくお願いします…おまけに間も悪いし…不幸だわ……」(ずぅーん…

提督「さてレッド、せっかく山城くんも加わってくれた事だし次の作戦は少し遠くの海域に行ってもらおうと思う」


電「そうですね、いつまでも近隣の海域でくすぶっているわけにはいかないのです」


雷「やっと本格的に戦えるのね!」


木曾「レッド、雷、俺、山城の四隻だな、戦艦の山城の手が届かないところをカバーすればいいんだろ?」


山城「(レッド…?)えっ四隻?四隻しかいないんですか?」

提督「ああ、まだウチは結成してから一月くらいだからな」


山城「駆逐艦が二隻に軽巡が一隻に…その、重巡の方はいないんですか?」


電「あー、そう言えばいないのです」


山城「く…空母…せめて軽空母くらいは……」


雷「ここにいるので全員よ?」


山城「い…今まで索敵とか偵察はどうしてたの!?」


木曾「全部俺がやってたが」


山城「人手不足ってレベルじゃない!!」<ガーン!!

山城「あぁ…これから私はこんな過酷な労働環境で休む暇もなく酷使されるのね……不幸…不幸だわ………」(ずぅーん…


提督「言う程過酷だったか?」


電「あ、この人自分に出来ることは他人も出来ると思ってるタイプなのです」


木曾「軽巡の俺に索敵を全部押し付けるのはどうかと思うぞ」


提督「でもお前しか水偵積めないし…」


電「だから艦娘が足りないと言っているのです」


雷「あ!でも山城さんも飛行機積めるから今後は楽になるわよね!」


山城「だから先に空母か重巡を引き入れなさいと言っているの!!ああやっぱり不幸だわ!!」



結局空母と重巡が着任するまで山城の出撃は先送りになった。

というわけで今日はここまで

次回はレッドvs赤城
の、予定

それではお粗末

私の名は航空母艦、赤城
押しも押されもせぬ正規空母である

最近立ち上がったばかりの鎮守府へ配属になり、新たな艦隊でこの弓を引くことになった

私が初めての空母という事らしく、より一層気を引き締めて行かねばならないと思っている

当鎮守府を指揮する提督は今時珍しい熱血漢であり好感が持てる

その指揮下にある艦娘達も皆頼りになりそうな者ばかりであり、私はなんと良い部隊に配属になったのだと喜びを禁じ得ないところである

だがここで一つだけ腑に落ちない事がある

それは……

提督「さて、赤城くんも加わった事だしそろそろ出撃してもらえるかな山城くん」


山城「ええそういう約束だったものね、こんなに早く正規空母を引き入れるなんて見直しましたよ提督」


電「この人は性格がアレなくせに割と有能だから評価に困るのです」


提督「アレとはなんだアレとは」

雷「わかってないわねレッド!司令官はこういう人だから素敵なんじゃない!」


木曾「まぁレッドは一番こいつに振り回されてるからな、文句の十や二十出て当然だろう」


羽黒「れ…レッドが頑張ってるのは私も見ていますよ!」


電「司令官さんはもっと電に気を使うべきなのです!」


提督「いやぁすまない、レッド相手だとつい遠慮が無くなってしまってな!まぁ信頼の裏返しだよ!」


電「そういうところがアレだと言うのです!」(ぷんすか!


赤城「…………」


何故かみんな電さんの事を「レッド」と呼ぶ。

サブタイ忘れてた

『レッドと"赤"城』


【食堂】


赤城「あの……電さんを『レッド』と呼ぶのは変じゃないですか…?」


電「!!」


カラーン…(←スプーンの落ちる音


木曾「…………は?」


雷「え?変かしら、考えた事も無かったわ」


山城「慣れてしまえばレッドで問題ないわよ」


羽黒「そうですね…レッドはここの旗艦(リーダー)で秘書艦ですし…」


赤城「えぇ…?でもレッド要素そんなに無くないですか?」

電「そうですよね!変ですよね赤城さん!!」(ずいっ!


赤城「わわっ!?どうしたんですかそんなに乗り出して!?」


電「司令官さんが電をレッドなんて呼ぶからみんな慣れて呼び出して…やっと違和感を感じてくれる人が来たのです!」(ブンブン!


赤城「痛い!そんなに強く手を握って降らないで下さい!」


電「あ…ごめんなさいなのです…嬉しくてつい……」

赤城「ほら、電さんもあまりレッドとは言われたくないみたいですしこれを機に改めては…」


電「赤城さぁん…頼りになるお姉さんなのですぅ…っ」(うるうる…


雷「えー?でもこの子ってば一緒に戦ってるとレッド以外の何者でもないわよ?」


木曾「そうだなぁ、俺と雷は特にレッドと連携を取るから余計にな」


羽黒「その…私もレッドにフォローされてばかりで…」


山城「…まぁ駆逐艦とは思えないくらいリーダーが板についてるわよね、私はまだ戦果報告しか見てないけど」

木曾「…ははぁん?解ったぞ、お前自分の名前が"赤"城で服も赤いのに一見赤くないレッドがレッドと呼ばれているのが羨ましいんだな?」


雷「えぇっ!?赤城さんレッドのポジションを狙ってたの!?」


赤城「えっ!?いえ別にそういうわけじゃ…」


電「いいのです!こんな名前あげるのです!さぁレッドの名を受け取るのです赤城さん!!」(ずいずい!


赤城「えっ、要らな…っ!?ちょっ…電さん落ち着いて!」


羽黒「…でもやっぱり私としてはレッドにレッドでいて欲しい…です……ごめんなさい!わがままみたいな事言って!」

山城「ならいっそ次の出撃でどっちが"レッド"に相応しいか対決でもしたらいいんじゃないかしら」


木曾「おおそれ良いな」


雷「頑張ってねレッド!」


電「あいたたたた…急にお腹が……!というわけで旗艦は赤城さんにお譲りするのですさぁ!!」


羽黒「だ…大丈夫ですかレッド!?」


山城「気にしなくていいのよ、本当に痛いわけじゃないんだから」


赤城「えぇー…なんか妙な流れになってしまいました……」

【執務室】


電「というわけで司令官さん!次の作戦で電と赤城さんのどちらをレッドと認めるかみんなに決めてもらうのです!」


提督「まぁ別に構わんが…」


電「ふふふ…電をレッドと呼べるのも今日が最後なのです……!」


提督「負けたいのかよお前」


電「"レッド"を返上するいい機会なのです!!」

赤城「あの…提督、電さんもこう言ってますし呼び名だけでも改めては?」


提督「と言ってもなぁ…レッドは私の司令官としての電くんへの敬称だからなぁ…」


電「みんなまで呼び出したのが問題なのです!」


提督「みんな君をレッドと認めているからじゃないのか?」


電「嬉しいけど嬉しくないのです!」


赤城「そ…そんなにレッドなんですか電さんは…」


提督「そりゃあもうレッドだぞ、一緒に出撃すればよく解るだろう」


赤城「そうなんですか……」

【海上】


電「というわけで作戦海域にやって来たのです!」


山城「それでレッド、この作戦の目的はなんだったかしら?」


電「輸送路の確保なのです、ここ最近この辺りの海域に深海棲艦が出没するらしく、沈められた船も一隻や二隻ではないのです」


木曾「沈んだ仲間の仇も取ってやらないとな」


雷「腕がなるわ!」


羽黒「戦いなんて…全て終わってしまえばいいのに…」


赤城「終わらせましょう、私達の手で」


羽黒「赤城さん…」


山城「あ、ほらレッド今赤城さんのレッドポイントが上がったわよ、負けてられないんじゃない?」


電「良いのです赤城さん!その調子なのですヒューヒュー!」


木曾「そんなキャラぶっ壊れる程必死にならなくても」

ブゥーン…


木曾「おっ、偵察に行っていた水偵達が帰ってきたな」


赤城「発見した敵の構成は…軽巡が二隻に駆逐艦が二隻…それに軽空母と正規空母が一隻ずつですか」


山城「こっちの空母は赤城さん一人…制空権は厳しいかしら」


赤城「いいえ取ります、一航戦の誇りにかけて…!」(キリキリキリ…パシュゥン!!


木曾「おお…あれが偵察用じゃない攻撃用の艦載機か……流石に格好良いな」


電「肉眼でも敵影が見えてきたのです!みんな油断しないで下さい!」


赤城「総合的な戦力はこちらが上とはいえ、慢心してはだめよ!」

木曾「出たな深海棲艦共!海の藻屑にしてやるぜ!」<ガシャッ!


電「…!?待つのです木曾さん!!」


木曾「どうしたレッド!?」


駆逐イ級
駆逐イ級
軽巡ホ級
軽巡へ級
軽母ヌ級
空母ヲ級


ヲ級『……………』

電「明らかに…人型の艦がいるのです!」


赤城「見た目に惑わされてはダメです電さん!幾ら私たちと近しい外見をしていてもアレは深海棲艦なんですよ!?」


電「でも…話ができるかもしれないのです!!」


赤城「何を馬鹿な…っ!今更彼女達と何を話すと言うんですか!?」


電「そんな事…話をしてから考えるのです!!」<ザザッ!


赤城「…!電さん!!」

羽黒「あの…いいんですか?レッドを行かせてしまって……?」


木曾「なぁにいつも通りだ、俺たちはあいつの判断に従ってついて行くだけさ」


雷「ええ!あの子は絶対に曲がった事はしないもの!」


山城「なんだかんだ言って…あの提督と似た者夫婦だものね
はぁ…あんなのに付き合わされるなんて……不幸だわ」


木曾「でも、別に嫌いじゃないだろう?」


山城「ええ…馬鹿だとは思うけどね」(にこっ

ザザァッ!


電「空母ヲ級!こちらの言っている事が解りますか!?」


ヲ級『……………』


電「解るならなんでも良いから合図を下さい!電達は戦いたい訳じゃないのです!」


ヲ級『………ォオ…』


電「!反応が…!電の言っている事が解るのですか!?」


ヲ級『ォオォオオ…ッッ』

ヲ級『ーーーーーーー死ネーーーーーーー』


電「…………え……っ」


ブゥーン…ヒュゥーン…ドガガガガガッッ!!ドガアァッ!!!!

赤城「電さん!無事ですか!?」


電「……あ…赤城さん…っ!」


赤城「私があちらより先に艦載機を飛ばしていたから助かったものの…あのままではあなたは轟沈していましたよ!?」


電「赤城さん……ヲ級は電に…『死ね』と言ったのです……」


赤城「だから話なんか出来ないと言ったでしょう!深海棲艦は怨念…悪意の塊なんです!!貴方も艦娘ならそれくらい知っているでしょう!?」

電「…違うのです!!確かに『死ね』と!電に解る言葉で言ったのです!!」


赤城「それがなんだと言うんですか!!」


電「言葉が通じるのです!話が出来るのです!!望みはあるのです!!」


赤城「……っ!!そんな小さな望みに命を賭ける価値がありますか!?
私たちは深海棲艦から地上を守る使命を背負った艦娘ですよ!?
私達の力は!命は!!そんな事で散らせて良いものではないんです!!
それが解らないとは言わせませんよ!?」


電「でも…!!それでも電は!!あの子達だって沈めずに助けたいのです!!」


赤城「それであなた自身が命を落としても良いと言うんですか!?」

雷「レッドは沈ませないわ、その為に私達が守るもの!」


赤城「雷さん…!?」


木曾「さっきのは良いアシストだったぜ赤城、レッドはああいう無茶ばっかだからな…ああやって俺たちが助けてやらないと」


羽黒「戦いなんて…無い方が良いに決まっています!」


山城「はぁー…こんなバカ集団に付き合わされるなんて……やっぱり不幸だわ…」


木曾「フッ、満更でもない癖に」


山城「ただの諦めよ」

電「みんな!一隻も沈めてはダメなのです!彼女達はやっと見つけた希望なのです!!」


木曾「でもここを突破しないと補給路は確保出来ないぞ?」


電「全艦大破まで追い込んで撤退させればこの海域にはもう来れないのです!!」


羽黒「解りました…やってみせます…!」


山城「まったく…無茶な事言うリーダーだわ」


雷「この雷様に恐れをなして逃げなさい!!ってぇーっ!!」<ドンドンドォン!!

【鎮守府】


赤城「…戦果報告は以上です」


提督「うん、若干の被害はあったものの全員よく帰投してくれた」


赤城「あの…提督、よろしいですか?」


提督「ん、なんだ?」

赤城「電さんのやり方は無茶苦茶過ぎます、ただ一言…悪意の言葉を向けられただけで、あの敵を"希望"と言い張り、最終的に一隻も沈めず撤退まで追い込みました」


提督「ああ、いつも通りのレ…電くんだ」


赤城「あんなの戦いではありません…ただの偽善…自己満足です」


提督「…それは否定出来ないな」


赤城「今日あの場所で見逃した敵が何処かで私達の仲間を沈めないとどうして言えますか?
耳障りの良い言葉を使って、敵を沈める覚悟を濁し、"戦う"という事から目を背ける事が正しい事だとは私には思えません」

提督「赤城くん、君は何のために戦うんだ?」


赤城「無論、戦う力を持たない人々をこの力で守る為です
その為にこの手を血で染める覚悟なら、この弓を手に取った時既に出来ています」


提督「…そこに"正義"はあるか?」


赤城「…解りません……それでも私手を汚したその先に…私が守りたかった人達が笑って過ごせる日々があると信じています」


提督「…あぁ赤城くん、君はきっと正しい、だがそれだけだ」


赤城「……なんですって…?」

提督「確かに深海棲艦と話をしようだなんて馬鹿馬鹿しい、妄想にも等しい愚考だよ
だが電くんはそれができると信じている、沈んだ敵も本当は助けたい・と心の底から思っている」


赤城「それができれるならこうして今も戦い続けているわけがありません」


提督「そうかもしれない、だがな、例え無茶でも成し遂げようと思わなければ永遠にできないままなんだよ」


赤城「………言っている事は理解できます」

提督「なぁ赤城くん、本当は戦わずに済むならそれが一番だと思わない?」


赤城「…当たり前です、もしそんな世界に出来るなら、もう誰も傷つかないんですから」


提督「電くんはそんな世界を諦めちゃいないんだ、ここにいるみんなはそんな電くんの理想が好きなんだよ
だからそんな理想をおっかなびっくりでも掲げる電くんの力になりたいと思っている、だから彼女達にとって電くんは間違いなく『レッド(リーダー)』なんだよ」


赤城「でも…それで誰よりも傷つく電さんを…私は見ていられません…っ!!」


提督「赤城くん、君はとても優しいな」


赤城「提督も解っているでしょう!?電さんの理想どれだけ綺麗でも!どれだけ立派でも!あの小さな身体ではそれに耐えられません!いいえ…そんな大きすぎる理想に耐えられる人なんて何処にも……っ!!」



提督「…赤城くん、君にだけは話しておこう、私が何者なのかね」


赤城「………え……?」


【食堂】


電「みんなごめんなさいなのです!電のワガママで無茶な戦いをさせてしまって…!」


木曾「良いって事だ気にするな」


雷「そうよ!私たちは好きでやってるんだから!」


山城「でも次はもっと自分の体も大事にしなさいレッド」


羽黒「そうです!レッドに万が一の事があったら私は…っ!」

赤城「ふふふ、皆さん盛り上がっているみたいですね」


電「あ!報告お疲れ様なのです赤城さん!」


雷「あれ?秘書艦はレッドなのに赤城さんが戦果報告してきたの?」


赤城「ええ、提督にお話があったものですから」


木曾「おっ、そう言えばレッドの座の話はどうなったんだ?」


電「今回のMVPは赤城さんなのです!レッドは赤城さんで決まりなのです!!」


赤城「いいえ私は辞退させて貰いますよ、次の作戦もよろしくお願いしますね『レッド』♪」


電「えっ」

電「うわーん!!赤城さんまでレッドって呼び始めたのですぅーっ!」


木曾「いいじゃないかレッド」


雷「これからもよろしくねレッド!」


電「あんまりなのですー!」


赤城「ふふふふ♪」


山城「……随分とスッキリした顔をしているのね、提督と何を話してきたの?」


赤城「うふふ、私と提督だけの秘密ですっ♪」


山城「はぁ…ああそう、じゃあいいわ」

提督『私はね、本当はヒーローになりたかったんだ

でもなれなかった

深海棲艦にあまりに無力な自分に気付いた時、その心は折れてしまったんだ

だから今の私に出来ることはただ一つ

誰かがその理想に潰されてしまわないように、
その心が折れてしまわないように、
ただ支えてやる事だけだ

私は誰かの正義に寄り添い力を貸すだけの

卑怯で情けない"正義の"味方なんだよ』

というわけで一旦ここまで
それではまた

正直このネタで今やりたい事殆どやっちゃったんで続きが上手く纏まらないッス

というわけでやっと第一艦隊が揃ったところですが一旦ここまでという事で、続きは構想がまとまったら書く事にします

別のネタを書こうにもこのスレを残しておくと気が引けるので、一旦このスレは閉めて続きを書く時は続編として別スレを立てる事にしました

見てる人あんまりいなかったでしょうけど、気になっていた方はごめんなさい

どれくらい先になるかは未定ですが必ず続きは書きますので

それでは失敬

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月04日 (土) 00:30:45   ID: azHqeY4d

なんか他のSSとは違った感じがして面白かったです

2 :  SS好きの774さん   2015年07月05日 (日) 12:27:23   ID: jtn6LrBk

正義の味方っつうと、Fateの切嗣と士郎思い出すわ。

3 :  SS好きの774さん   2015年07月07日 (火) 19:16:40   ID: 4r4PB8XW

あれはただの狂信者だから…

4 :  SS好きの774さん   2015年07月10日 (金) 03:01:52   ID: bA53BBeh

確かに歪だけど狂信者ではないんだよなぁ…

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