【咲-saki-】京太郎「海だ…」【安価】 (75)

俺、須賀京太郎は途方に暮れていた。

これだけでは意味が分からないだろう。

俺は海に来ていた。

退屈な日常に飽きたのだ。

生まれてから一度も見たことなんてなかった海を見にきたのだ。

潮風が肌に当たるがとても心地良い。

現実から目を逸らしていたからだ。

俺は、財布と携帯を失った。

帰る術を、失ったのだ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435324894

京太郎「どうしよう…」

波の音が俺を急かしているように思えた。

下1
京太郎のとった行動

京太郎「募金箱…」

不意にボッキン箱という安易な下ネタが浮かんで顔がにやけた。

さて、材料を集めよう。

テトラポットの間に…あった。

エロ本だ。

濡れているが何も無いよりマシだろう。

───────────

誰も募金をしてくれない。

ていうか人の目が痛い。

別の手段だ。

下1
京太郎が次にとった行動


そもそも俺はなぜ、携帯や財布を紛失してしまったのか。

思考を過去へと向ける。


数時間前

京太郎「すーいすーいすーだらったすーいすい」

京太郎「ん?あれはカピバラ!?」

この時、俺は海にカピバラを見た気がした。

気付くと俺は海に向かって走り出していた。

カピバラなんていなかった。

俺は遠い海の彼方に投げ出され、目を覚ました時には地上に流れ着いていた。

ラッキー!

だが財布と携帯は失くした。

アンラッキー!

下1
京太郎が次にとった行動

京太郎「タクシーだ…」

幸いなことに現在地には多少の交通はあるようだ。

タクシーが通りかかるのを待とう。

金は親にでも払って貰えばいい。

1時間後。

腹が鳴った。

だがタクシーを探さねば。

更に3時間後。

京太郎「ふごー…ふごー…もにゅもにゅ…びぇっくしょい!はっ!寝てしまっていたのか!」

既に空は闇に包まれていた。

京太郎「タクシー…」

消え入りそうな声で呟いた。

その時、向こうから人がやってきた。

下1
京太郎に近づいてきた人物とは

揺杏「おにーさん何してんの?」

誰だろう、この少女は。

俺は今とても寒いんだ。

でもタクシーを待たなきゃならないんだ。

揺杏「身体震えてるよ?服も汚れてるし」

聞いたことがある。

美人局。

京太郎「近寄んじゃねえ!!!」

大声を出すと余計腹が減った。

彼女はせっせと去ってしまった。

金を取られなかっただけ、よかったのかもしれない。

あ、取られる金ねーわ。

俺は、凍える身体を抱きしめて、眠ってしまった。

起きた時、雨が降っていた。

もはや寒いことを口にする気力すらなかった。

道行く人々の視線が俺を軽蔑しているようでとても羞恥を感じて顔を下げてしまった。

また、人が近づいてきた。

俺をバカにする気だろうか。

目を上げると学校の制服を着た少女が立っていた。

昨日の子だ。

彼女は傘を置いて、行ってしまった。

どうしようもないので、俺は傘の中に座り込んだ。

夜、この土地での二回目の夜が訪れた。

彼女はまた俺の前に現れた。

お湯が入ったカップラーメン。

視線で彼女に聞いた。

彼女が黙って頷いたので、一心不乱に箸を進めた。

涙が出ていることも気にしないで。


揺杏「落ち着いた?」

京太郎「……」コク

揺杏「私の家、来る?」

訝しんだ表情を向けると彼女はまた、黙って頷いたのだ。

下1
揺杏の家までの道中、京太郎のとった行動

京太郎「あの…」

先行く彼女の袖を掴み、歩みを止めるよう促す。

彼女は不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。

京太郎「言いたいことが…あるんです…」

俺の重苦しい雰囲気に合わせたのか、彼女は何も言わずに俺の目を見ていた。

京太郎「最初…あなたのこと…美人局だと思ってました…」

自分で吐いた言葉に自分でも侮蔑する。

京太郎「でも…俺…今じゃあなたのことを!」

ここまで来てさすがに彼女も俺の言いたいことを理解したようだ。

揺杏「や、それはちょっと…」

当然の反応である。

下1
京太郎のとった行動

京太郎「すいません忘れてください」

揺杏「あ、はい…」

重苦しい空気は更に重量を増して俺の居心地を悪くした。

あー死にたい。

いっそのこと死んでしまおうか。

爽「おっ、揺杏じゃん」

揺杏「よー爽」

おそらく彼女の知り合いであろう女子と遭遇した。

爽「誰それ、ペット?」

揺杏「あーこの人、えーっと…自己紹介してください」

下1
京太郎のとった行動

京太郎「須賀京太郎、高一です」

揺杏「えっ!?歳下かよ!」

爽「私は高三、獅子原爽だ。よろしく」

揺杏「私は岩館揺杏」

爽「え?揺杏知らない人だったの?」

揺杏「いやー」

そうか、この聖母のような人は揺杏様というのか。

そしてそのご友人が爽様。

爽「うーん、とりあえず部室で飼うか」

揺杏「私もそれがいいと思ってさー、チカセン怒らねーかな?」

爽「あー」

なんだか不思議な会話が聞こえたが異議を唱えられるような立場ではなかったのでスルーした。

翌日

揺杏様と爽様と共に隠れて学校の部室へ入った。

揺杏「それじゃあ私達が来るまでは絶対に外に出るなよー」

京太郎「はあ」

爽「漫画とか呼んでいいけど教師に見つかんないようにしろよ?私達が怒られる」

じゃあ連れてくんなよ。


近麻を読みながらくつろいでいると部屋の扉が開いた。

俺は驚いて身体を動かすことができなかった。

扉の奥にいたのは

下1
有珠山高校から一人
こなや先輩とかはナシで

誓子「……」

金髪の少女。

目をこすってもう一度俺を見た。

誓子「え…っと…」

俺は嫌な汗が流れ落ちるのを額で感じた。

誓子「先生…じゃないですよね?」

静かに頷く。

誓子「先生…呼びます?」

大袈裟に首を横に振り回した。

精一杯の抵抗だった。

誓子「…っ」

彼女が踵を返そうとしたが、俺は既に動いていた。

おそらく人生で一番疾く動いただろう。

彼女の口を手で押さえ、部屋の扉を閉める。

抵抗する彼女を抑えていたが、足が絡まり、躓いてしまう。

押し倒したような体勢になった。

悲鳴を出される前に慌てて口を押さえた。

彼女の表情が恐怖に染まっていたが、俺は逆にときめいていた。

揺杏「京太郎ー、飯届けに…」

爽「揺杏どした…」

扉の向こうには二人の少女。

どう説明すればよいか悩んでいると

爽「離してやれ、チカ、大丈夫だからな」

揺杏「京太郎、ビンタな」

理不尽な様に思えたが、チカと呼ばれた少女の目が涙で濡れているのを見て、潔く目を閉じて平手を待った。

爽「おーよしよし」

誓子「な、 なんなのよっ…怖かった…」

揺杏「ふん!」

京太郎「ごはあ!?」

飛んできたのは平手ではなく箒だった。

揺杏「飯届けに来たんだけどよー…どうしよっかな…」

京太郎「申し訳ございません…」

誓子「……」

京太郎「あの、誓子さん。すいませんでした」

誓子「……」サッ

誓子さんは爽様の背中に隠れてしまった。

全然隠れてないが。

爽「お前次やったらデッキブラシだからな」

京太郎「はい……」

肝に銘じておこう。

揺杏「とりあえず許してもらうまで飯渡さねえ」

下1
京太郎のとった行動

揺杏「もういいの?チカセン」

誓子「まあ、誤解だったし…あんな土下座見せられたら」

京太郎「ありがとうございます」

土下座なんて軽いと思える自分が少し怖くなっていた。

誓子「うん…もうあんなこと、やらないでよね」

まさか本当に許してもらえるとは。

この人も聖女だ。

誓子様。

ていうかいつ帰れるんだろう。

揺杏「昨日拾ったんだ」

と言いたいが恩に罪を重ねてしまったおかげで余計言いにくくなった。

成香「あきらめたーらおーわーりー」

京太郎「気持ちをリセットっていうかこの数日間をリセットしたい」

歌いながら部室にやってきた少女。

なんだか咲のような雰囲気を醸し出している。

全然似てないのに。

誓子「成香ー」

授業を終えた誓子様も部室に飛び込んできた。

成香「あの、チカちゃん。この方は」

誓子「揺杏が拾ったらしいわよ」

ああ誓子様、俺の悪事を教えないとはなんと慈悲深い。

由暉子「あれ?」

絶句。

俺はとんでもない物を見てしまった気がしてならなかった。

成香「あ、ユキちゃん」

とりあえず今日はここまで

一発ネタのつもりだったんだけど安価って難しいですよね
続きは今日の夜に



由暉子「へー、揺杏先輩が」

なんだ、それは。

誓子「あの、なんか目つき悪くなってない?」

なるともさ。

京太郎「なんですかそれは!!」

成香「ひっ」

由暉子「それ…とは?」

京太郎「あ、なんでもない…です。すみません」

誓子「……」

俺は小さい物が嫌いなわけではない。

優希や咲みたいなちんちくりんは愛らしい、守りたくなる。

だけど、この小さな少女が携えている『それ』は。

あまりにも…あまりにも……。

由暉子「それで、揺杏先輩と爽先輩は来てないんですか?」

誓子「あ、4人で打っててだって。メッセージが来た」

成香「四人ってことは…」チラッ

下1京太郎
下2誓子
下3成香
下4由暉子
コンマの大きさで麻雀の順位が決定
大きい程上位

なぜだろう。

その時、まるで世界が急に明るくなったような、地面が輝きだしたような。

そんな幻覚を見た。

光は牌に刻まれた模様をその背中に透かした。

見える。

全てが、視える!

京太郎「ツモ、8000、16000」

成香「わっ」

由暉子(その捨て牌、まるで次に来る牌が分かっていたかのような、そんな感じがします)

京太郎「はは…ははは…」ポタ

誓子「ちょっと!口から血が!」

京太郎「止めないでください…!」

由暉子「何がそこまで」

なぜだろう。

勝利が欲しかったのか、誰かに認められたかったのか。

牌に伸びる腕を、止めることができなかった。

京太郎「ツモ、国士無双」

京太郎「ごはあっ!」

誓子「須賀くんっ!」

床に吐いた血溜まりを見て、まるで漫画だな、なんてどこか楽観的な感想が出た。

そのまま、俺は意識を失っ…ていなかった。

案外大丈夫なものである。

由暉子「だ、大丈夫なんですか…?」

京太郎「いやー吐いたらなんかスッキリしたっていうか」

成香「意味不明で怖いです」

京太郎「ていうか俺トップじゃん!」

由暉子「三位でした…」

誓子「まあ須賀くんしか和了してなかったし」

京太郎「ひやはや、まさか俺がここまでとは」

誓子「ねえ須賀くん、ラスの成香になにか罰ゲームやらせて」

京太郎「へ?」

成香「あ、有珠山ルールなんです。役満和了してトップだったらラスに罰ゲームさせられるんです」

俺の中の天使が囁いている。

肩でも揉んでもらいなさい。

俺の中の悪魔が囁いている。

小さくても乳は乳だぜ。

そして俺は小さく呟いた。

下1
罰ゲームの内容

京太郎「膝枕で」

誓子「あーよかった、エロいこと言ってたらデッキブラシだったわよ」

京太郎「それは安心です」

成香「それじゃあどうぞ」

スカート越しに伝わる華奢な膝の感覚。

人──いや、男に触られた経験が少ないのか、膝は小刻みに揺れていた。

ゆりかごのように俺を眠りの世界へと連れ込んだのであった。


成香「あれ、寝ちゃいました」

誓子「疲れてたのかしら」

由暉子「先輩、須賀さん涙が…」

誓子「寝かせておいてあげよっか」

成香「そうですね」

今回はここまで
短くてすみません!
月曜の夜にまた続きをしたいと思います

誓子(涙を流すほど、苦労したのね)

成香(この涙を、少しでも安らかなものにできるなら…)

由暉子(神は乗り越えられる試練しか与えない…かっこいいですね)


俺は涙を流していた。

夢を見ていたのだ。

和「こんにちは須賀くん」ツルーン

京太郎「の、和?」

憧れていた、乳が消える夢。

美穂子「久!」ツルーン

京太郎「いやだああああ!!」

ハギヨシ「須賀くん…」ムキムキ

夢の中で辿り着いた答えは、岩のように堅い胸板だった。

京太郎「こんなんじゃ…こんなんじゃ…!」


京太郎「くるな……やめて……zz」

成香(せめて今だけは…)

京太郎「はっ…!ここは…」

揺杏「起きたな、京太郎」

窓から差し込む赤い光が雀卓に影を作っていた。

京太郎「揺杏様」

成香「おはようございます」

京太郎「あ、膝枕…ありがとうございます」

成香「力になれたなら」

なぜか嬉しそうに微笑む少女に、京太郎は心が安らいだ。

爽「役満和了ったんだって?」

揺杏「まさかそんな強いとはな」

俺を称賛する言葉。

慣れない光景に、つい鼻をかく。

揺杏「それじゃあ、帰るか」

京太郎「揺杏様、一つ、聞いていいですか?」

揺杏「ん?」

京太郎「なぜ、俺を助けたんですか?」

昨日も通ったこの路。

揺杏「なんでって…お前が、一人ぼっちに見えたからだよ」

ふと脳裏に浮かんだ。

京太郎「そうですか、あなたなら、きっとそう言うと思ってました」

緑生い茂る畦道。

揺杏「なんだ?もう私のことを知ったつもりかー?」

並んで歩いたいつかの記憶。

京太郎「俺、帰ります」

俺の言葉に彼女は疑問を出しかけたが、中途半端に開いた口を閉じて、頷いた。

京太郎「俺の答えはこの土地で見つかりました」

退屈だと思っていた日常は、いつの間にか過ぎ去っていく。

俺は、全力で生きることを決めた。

下1
京太郎が長野に帰る前にした行動

きっとこの世界の誰もが孤独を恐れている。

そのくせ、人間関係が少し面倒になると一人になりたがる。

一人になるとまた他人が恋しくなる。

そうやって人間は様々な人々と心を通わせていくんだ。

この広い海に囲まれた広い大地に見守られながら。

今回の旅で俺は人の優しさと初めて本気で向かい合った。

だから、俺はそれをまた別の人に繋いでいこう。

ありがとう、北海道。

ありがとう、有珠山高校。

俺はまた、別の答えを探しに一歩を踏み出し始めた。


京太郎「海だ…」 完

咲「京ちゃん、どこいっちゃったの…」

京太郎が消息を絶ってから約半月が過ぎようとしていた。

あの高い山に登れば、京太郎を見つけられるだろうか。

戸惑いを隠せない咲は、雪をかぶった山の頂に視線を向ける。

すると、上空から一羽の鳥が咲めがけて急降下した。

器用に脚に巻かれた紙を捨てると、また空の彼方へ飛び去っていった。

咲は、それを放っておくことができなかった。

紙をくしゃくしゃに広げると、そこには久しぶりに見る、友人の姿が写った写真と彼の字が書き連ねられていた。

京太郎「俺、山籠りするわ」

咲「……なんじゃそりゃ!!」


京太郎「山か…」へ続く

終わりです。

短くてやっつけでごめんなさい!
だっててっきり女の子とくっつくENDだと思ったけどまさか山籠りとは
次もまた気がむいたらやってみたいと思います
有珠山ではユキちゃんが好きです


有珠山に篭ったのか

>>68
有珠山ではなくどこか別の山です
次やる時はまた別の高校を出したいので

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom