幼馴染「男が幸せなら…私…」男「何を言ってるんだ、お前は」(164)

幼「え?だって…」

男「だって…なんだ?」

幼「男、b組の女さんと、お付き合いしてるんでしょ?」

男「は?何だそれは。初耳なんだが」

幼「え?クラスでも評判になってるんだってよ?」

男「…それは、どんな評判だ?」

幼「男と女さんがラブラブだって…」

男「お前はそれを誰から聞いたんだ?」

幼「幼友ちゃんと、友君」

男「…ほう」

幼「だからね。男が幸せなら…私…、応援するからねっ!」

男「とりあえず、俺の話しを聞け」

幼「わかってる!わかってるから!」

幼「女さん、美人だもんね!」

幼「私みたいなちんちくりんが、側にいたら、誤解されちゃうもん!」

男「だから、話しを聞け!」

幼「あっ!私、担任の先生に呼ばれてたんだった」

幼「もう行くね!じゃあね、男!」

男「待て!幼!」

男「…」

男(…あの2人、どういうつもりだ…)

待ってた


男「おい。そこのアホ面」

友「…」

男「顔だけじゃなくて、耳も悪くなったのか?」

友「…」

男「そうかそうか」

男「お前が大切に隠しているntr物の薄い本の事を」

男「幼友にバラしても良いんだな?」

友「あれ?男じゃないか、居たのか、ハハハ」

男「お前ら、覚悟は出来てるんだろうな?」

友「何?何の覚悟?えっ?まさか告白?」

友「気持ちは嬉しいけど、俺…ノンケなんで…ごめんなさい!」

男「俺に言うべき事があるんじゃないか?」

友「アイシテル、ケッコンシテクレ?」

男「殴られるのと、蹴られるの、どっちがいい?」

友「えっ?暴力?dv?それって愛情表現としては間違っていると…」

男「うるさい。黙れ」

友「…」

男「…」

友「…」

男「…」

バシッ

友「えっ。黙れって言われたから黙ったのに、何で頭叩いた?」

男「いや、俺に言う事があるはずだが、どうだ?」

友「何の事?告白?」

男「次、余計な事言ったら、股間をグーで殴る」

友「えー。男くん、酷い~」

男「…」

友「…」

男「覚悟はいいな?」

友「まぁ落ち着けよ親友」

男「…お前と幼友、2人で幼に何を吹き込んだ?」

友「あぁ、その事な?」

男「…」

友「あー、あれはそのーあれだー」

男「どれだ?」

友「あのな、男。良く聞けよ?」

男「あぁ、聞こう。俺が納得する様な話しなんだろうな?」

友「ご納得いただけると、信じております」

男「言ってみろ」

友「お前と幼ちゃんてさぁ」

友「ぶっちゃけ、お互い好き同士だろう?」

男「…だとしたらどうだって言うんだ?」

友「いやぁだからさ…ちょっと幼ちゃんに発破かけて見ようって…」

友「幼友が言うからさ、俺もちょっと乗っちゃったってワケよ」

男「…余計な事をしてくれたな…」

友「言わせてもらうがな、男」

友「お前らそろそろ、結論出すべきじゃないのか?」

男「何の結論だ」

友「いや、お互いの気持ちにだよ」

友「学校中の人間が、お前らの事カップルだと思ってるよ」

友「だって、四六時中一緒に居るんだもんな」

男「…」

友「でも、どっちに聞いても」

友「『付き合ってない』って言うもんな」

男「…そうだな。男女としての付き合いはしていないな」

友「でもよ…俺らそろそろ卒業だぜ?」

男「…」

友「良い切っ掛けになればいいなと思ってやった事だ」

男「…それが、悪い方に行ってるから、困ってるし」

男「怒ってるんだ」

友「え?『男君の彼女は私しかいない!』って感じで」

友「積極的になっただろ?」

男「…お前も幼友も、幼の事を全然わかっていない」

男「確かに幼は積極的になったさ」

友「じゃあ良いじゃん!」

友「俺と幼友のナイスプレイだっただろ?」

男「わかってないな…」

友「何だよ、何て言われたんだよ?」

男「俺が幸せなら、応援するんだってよ」

男「俺と女さんの恋を応援するって言われたんだよ」

男「自分みたいなちんちくりんと一緒にいたら誤解されるからって」

男「慣れないウソまで付いて、俺から逃げてった」

友「」

男「お前ら2人とは中学からの付き合いだが」

男「俺と幼は生まれた時からの付き合いなんだよ」

男「俺は誰よりも幼の事をわかっているって自信がある」

友「…そうだろうな」

男「…幼友はどこだ?」

友「…あの、男くん?その、あーあのー」

男「幼友はどこに行った?帰ったのか?」

友「…いや、今日は部室に顔出すって言ってたけど…」

男「行ってくる…」

友「ま、待ってくれ!俺も行くから!」

男「来なくていい。お前ら2人が揃うと、話が進まなくなるからな」

友「…」


男「…幼友は居るかな?」

後輩「あ、はい。呼びますか?」

男「頼む」

後輩「幼友先輩~。男先輩がお呼びですよ~」

幼友「ほう?ほう?」

男「ニヤニヤするな、幼友」

幼友「ようこそ、文芸部へ!入部希望かな?」

男「高校3年の2学期後半にもなって」

男「今さら入部希望もあるか」

男「だいたい幼友も引退したはずだろ?」

幼友「文芸部はほら…ただ部室で本読むだけだから」

幼友「別に引退とかないしー」

幼友「私ってば、超出来る女だからさー」

幼友「可愛い後輩たちからも頼られる存在だし~」

男「文芸部の後輩が、先輩に何を頼るんだ?」

男「特にお前みたいな、鈍感無能な奴に」

幼友「…」

男「…後ろで可愛い後輩達が苦笑いしてるぞ」

幼友「えー?」

幼友「…あれあれー?おっかしいなー?」

幼友「男くん、ひょっとして機嫌悪い?」

男「あぁ…正直良くないな」

幼友「何で~?今日、幼から大切な話しをされたんじゃないの~?」

男「されたから、怒ってるんだよ」

幼友「え?アンタ幼の事、嫌いなの?」

男「それは今は横に置いておけ」

男「それよりも、幼友、どういうつもりだ?」

男「なんで幼に変な事を吹き込んだんだ?」

幼友「幼って、いっつもアンタと一緒に居るでしょ?」

男「それがどうした」

幼友「なのに、告白とかしてないって聞いたんさ」

男「俺も幼も、そういう事を言った事はないな」

幼友「だからさ!」

男「発破をかけて、幼をけしかけようとしたんだな」

幼友「そうそう!ちゃんと告白されたんでしょ?」

男「告白といえば告白か」

男「ただし、お前らの思惑とはまるっきり逆だがな」

幼友「え?」

男「…なんで女さんだったんだ?」

幼友「え?」

男「俺と付き合っている相手が、なぜ女さんなんだ?」

男「嫉妬心を煽るのなら、別にお前でも良いだろう」

男「お前だって一応性別は女子なんだから」

幼友「え。普通に嫌だよ」

幼友「私達4人、ずっと友達でしょ?」

幼友「アンタと付き合うなんて、絶対ないわー」

男「俺もお断りだがな」

幼友「そう言われると傷つくけど…」

男「で、何で女さんだったんだ?」

幼友「学校一の美人で、アンタなんかと、絶対接点なさそうだから」

男「ほう」

幼友「たとえば、ウチのクラスのモブ子とかだと」

幼友「逆にリアル過ぎるかなーと思って」

男「…はぁ」

幼友「ね、幼に何て言われたの?」

男「俺と女さんの恋を応援してくれるとさ」

幼友「」

男「自分みたいなちんちくりんと一緒にいたら誤解されるからって」

男「慣れないウソまで付いて、俺から逃げていった」

幼友「」

男「…友の奴にも言ったが」

男「お前達は、幼の事をわかっていない」

幼友「あ、あの…そんな事になるなんて…」

男「お前らは幼に何て言ったんだ?」

男「まぁ、大体想像はつくが」

幼友「えっと…女さんが、男の事、気になってるみたいだよーって」

男「そんな所だろうと思った」

幼友「…軽い気持ちで言った訳じゃないけど…」

幼友「本当にごめんっ、男っ」

男「お前と友が、俺たちの事を気にしてくれたのは嬉しい」

男「だが今回のは、ぶっちゃけ、余計なお世話だった」

男「幼がこの後、どんな行動を取るかも」

男「大体わかってる」

幼友「…」

男「…まぁ、それだけだ」

幼友「ごめん…ホントにごめん…男」

男「幼の所に行ってくる」

担任「ん?どうしたの、男君」

男「先生、今日何か用事があって、幼を呼びましたか?」

担任「ん?幼さん?呼んでないわよ?」

男「…そうですか。わかりました」

担任「何かあったの?」

男「…いえ、何でもないです」

担任「まぁ、夫婦ゲンカもほどほどにね」

男「そんなのじゃないです」

担任「そ?」

男「失礼します」

担任「気をつけて帰りなさいね」

幼母「あら、男ちゃん。どうしたの?」

男「幼、帰ってきてますか?」

幼母「帰って来てるけど…」

幼母「帰るなり部屋に飛び込んで、呼んでも返事がないのよね」

幼母「寝てるのかしら」

男「…ちょっとお邪魔します」

幼母「どうぞどうぞー」


男「…幼、居るんだろ?起きてるんだろ?」

男「…」

男「俺の話しをちゃんと聞け」

男「…」

男「お前は勘違いしている」

男「俺と女さんは、付き合っていない」

男「あれは友と幼友がついた嘘だ」

男「だから、変な事を考えるのは止めろ」

男「…」

男「幼、お前は頭は良いのに」

男「ある事柄に関してだけ、バカになる」

男「…」

男「…それは俺に関する事だ」

男「お前は、俺に何かあった時だけ暴走する」

男「長い付き合いだから。わかってるんだ」

男「…」

男「言っておくが籠城は無駄だぞ?」

男「この扉の鍵が一円玉で開く事はわかっている」

男「それに籠城は援軍が来るまでの時間稼ぎだ」

男「お前に援軍はこないぞ」

男「だからここを開けろ、幼」

男「…」

幼「…違うもん」

男「何がだ?何が違う?」

幼「わ、私、女さんに聞いたもん!」

男「…やっぱり聞きに行ったんだな」

幼「女さん、男の事好き好き大好きって言ってたもん!」

男「何?」

幼「ま、まだお付き合いはしてないけど…」

幼「男の事が好きだって言ってたもん!」

男「…」

幼「わ、私は…私は男が幸せなら、それで良いから」

男「何を言ってるんだ、お前は」

幼「私、2人の事、応援するって決めたんだもんっ」

男「おい、幼」

幼「…もう帰って」

男「…幼」

幼「…」

男「…今日はもう帰る。また明日な」

幼「…」


友「あれ?今日、幼ちゃん休みか?」

男「あぁ。昨日も、今朝も部屋から出てこなかった」

幼友「…なんか、本当にごめん」

男「…二人とも、俺たちの事考えてやった事だ」

男「それはもう謝らなくていい」

友「そうか…」

男「今日も帰りに幼の家に行ってくる」

友「俺と幼友も一緒に行くぞ!」

幼友「私も幼に、ちゃんと謝りたい!」

男「いや、いい」

友・幼友「え?」

男「…別の問題も、発生しているみたいだから」

友「問題?」

男「お前らが一緒に行っても、幼は話しを聞かない」

幼友「…そう」

男「必要な時は、頼るから」

友「…おう」

男「女さん、居る?」

モブ男「女さん?今日は休みだな」

男「…そうか。女さんと仲が良いのは誰かわかる?」

モブ男「女友さんかな?」

男「女友さんて、このクラス?」

モブ男「あの人だよ」

男「ありがとう、モブ男」

男「女友さん」

女友「おや、誰かと思えば…」

男「ん?」

女友「今、丁度君の事を考えていた所だよ」

男「…どんな事?」

女友「君が、一体どんな手を使って」

女友「我が校一の美女の心を撃ち抜いたのか?ってね」

男「…」

女友「本当に、どうやったんだい?」

女友「君はてっきりいつも一緒にいる幼さんと」

女友「お付き合いしているものだと思っていたんだけど」

男「…その話は今はいいです」

女友「そうかい」

男「どうして俺と女さんが付き合ってると思ったの?」

女友「まぁ、すぐ側で聞いちゃったからね」

男「何を?」

女友「女が君の事を好きだって、幼さんに言ってるのをだよ」

男「それはいつの話し?」

女友「昨日の放課後だね」

男「幼が女さんの家に行ったんだね?」

女友「あぁ、いきなりだったね」

女友「昨日、女の家で一緒に勉強していたら、突然幼さんが来たよ」

女友「『あなたは男くんとお付き合いしてるんですか』と」

女友「いきなりだったからね、女も私も驚いたよ」

男「そうでしょうね」

女友「でももっと驚いたのは、女の言葉だったよ」

女友「『私と男君は、お付き合いはしていないけれども』」

女友「『私は男君の事が好きよ』」

女友「『幼さん、あなたに負けないくらいにね』」

女友「『幼さん、あなたと男君は…』」

女友「『お付き合いしているわけじゃないんでしょう』」

女友「『それなら、私が彼女になっても良いわよね?』だって」

男「…」

女友「幼さんは、泣きそうな顔で…」

女友「いや、涙は出ていなかったけど泣いていたな、あれは」

女友「泣きながら走って行ったよ」

男「…」

女友「女とは中学からの付き合いだけど」

女友「あんな事を言うとは思わなかったよ」

女友「君と女にどんな接点があるんだい?」

男「別にたいした接点はないよ」

女友「たいした接点もない人を好きになるものかね?」

女友「少なくとも、女はそんな子じゃないよ」

女友「何かあるんだろう?」

男「…」

女友「幸いお昼休みはまだまだあるからね」

女友「長い話しでも、深い話しでも聞くよ」

男「…別に長い話しでも、深い話しでもないよ」

男「小学校の時、一度だけ同じクラスになった事がある」

男「ただそれだけだよ」

女友「フフ。たったそれだけで女は君に好意を持ったのかな?」

女友「それは無いと、私は思うけどね」

男「…」

女友「どうやら言う気がないみたいだね」

女友「私は今日の放課後、女のお見舞いに行くんだが」

女友「君も来るかい?」

男「…あぁ、ご一緒させてもらおうかな」

女友「それじゃあ、放課後に」

男「…うん」


女友「君は女の家を知っているのかい?」

男「知ってます」

女友「幼さんも知っていたから、昨日来たんだよね?」

男「まぁ、俺も幼も、女さんの家を知っています」

男「女さんとは小・中・高と同じ学校なのでね」

女友「そうなのかい。君たちは同じ学区だったんだね」

女友「それじゃあ、君の家もこの近くなのかい?」

男「あぁ、向こうの通り曲がったらすぐです」

男「幼の家は、俺の家の隣りです」

女友「近いね。つまり女も君達の幼馴染って訳か」

男「そう言う事になりますね」

女友「…その辺りに答えが隠れているのかな?」

男「…ノーコメントでお願いします」

女友「着いたね。インターホン押すよ」

男「…」

女『はーい』

女友「お見舞いに来たよ」

女『今、玄関開けるわね』

女友「今日はゲストも居るんだ」

男「…久しぶり」

女「…ちゃんと話すのは久しぶりだね、男君」

女「立ち話もなんだから、入って。ね?」

女友「さて、女、体調はどう?」

女「まぁ、体調が悪くて休んだ訳ではないので問題ないわ」

女「心配かけたわね、女友」

女「男君も心配して来てくれたの?」

男「そうだな。心配だな」

女「フフ。嬉しいわね、心配してくれるなんて」

女友「さて、女。休んだ理由を聞いて良いかな?」

女「そうだね。2人になら、話してもいいかな」

女「特に男君には直接関係のある事だしね」

女「実は昨夜、幼さんからメールがあってね」

女「『明日、学校さぼって、2人で話しをしませんか?』と言う内容だったわ」

女友「行ったんだね?」

女「もちろん行ったよ。たくさん話しをしてきたよ」

男「…おそらく幼は」

男「俺の事を、それもおそらく長所を」

男「つらつらと述べたんじゃないかな?」

女「さすがね。幼さんの事、良くわかってるのね」

男「付き合い長いから」

女「あなた、ダッフィのぬいぐるみなんて好きなのね」

女「ちょっと笑ってしまったわ」

女友「へえ、それは意外だね。ぬいぐるみなんて」

男「まぁ、それはそれだ」

女「…とにかく色々な事を言われたわよ」

男「…そして最後に幼は」

男「『男君の事をよろしくお願いします』とでも言ったんだろう?」

女「一言一句違わない、まったく同じ事を言われたわ」

男「それに対して、女さんは何て答えたんだ?」

男「と言うか、何故俺の事が好きなんて嘘を幼に言ったんだ?」

女「何故私が嘘をついたと思うの?」

男「女さんが、俺の事を好きになる理由がわからない」

女「…本当にわからない?」

男「俺と女さんは、高校までずっと一緒だったけど」

男「ほとんど話したこともない」

男「同じクラスになったのは、小6の時だけだ」

女「…その時にあった事、覚えていない?」

男「…」

女友「何があったんだい?」

女「出来れば男君に思い出して欲しいのだけど…」

男「…接点があったのは1度。覚えてるよ」

……過去……

「少女ってさぁ、ブリッ子だよね」

「だよねー。あとちょっと根暗だし」

「でも顔は良いから男子受けは良いし」

「ちょっとムカつくよね」

「わかるわかる!」

「ちょっとイタズラしてみようか?」

「給食に絵の具混ぜてみるとか?」

「面白そう!早速今日やってみようよ」

………

少年「おいっ!やめろっ!」

「はあ?何を?あたしら何もしてないんですけど?」

少年「今、給食に絵の具まぜたう。見てたんだ!」

「証拠も無しにそんな事行っちゃっていいわけ?あんた、何様?」

「てか、その給食、あの女のじゃん」

「あんた、あいつの事好きなの?チョーウケるんですけど」

少年「じゃあそのカレー、食ってみろよ!」

男「なにもしてないなら食えるだろ?」

「…」

少年「食えないのか?ならあの子に謝れよ!」

少年「悪い事したら謝る、当たり前の事だろう」

少女「あ、あの…もういいから…私のカレーだから…」

少女「私が、ちゃんと食べるから…」

少年「は?待て!さっきあいつ等が絵の具入れるの見たんだよ!」

少年「食うなよ!おい!」

少女(ムグムグ)

「ぎゃはは!おら、そいつちゃんと食ったじゃねーか!」

「あたしら何もしてねーし!濡衣だし!」

「1人で騒いで、男ってマジバカじゃねー?」

「根暗眼鏡女とマジ切れ勘違いブサイク」

「お似合いじゃね?2人仲良く死ねば?」

少年「…おい、ブスども。もう一回言ってみろ…」

「は?は?あたしらの事、ブスって言った?」

「ねー、チャラ男ーこいつが私らの事、ブスって言ってんだけどー」

「うちらチョー傷ついたんですけどー」

「おい、おめー、人のカノジョに何言ったんだ!コラ!ぶっ殺すぞ!」

少年「殺す?お前が?俺を?」

少年「…人が死ぬって事がどういう事か、わかってんのか?」

「うっせえ!」
バキッ

少年「…こんなんで人が死ぬかよ」

「黙れこの野郎!マジぶっ殺してやるからな」
バキッ!ドガッ!ドスッ!

「はあっ…はあっ…思い知ったかよクソ野郎!」
ドスッ!

少年「…そっちこそ、思い知ったかよ」

少年「人間、これ位じゃ死なねーよ…」

「何だこいつ!気持ちわりぃ!」

担任「こらっ!何やってるのアンタたち!」

………

「クソッ!あいつらのせいで、父ちゃんに殴られたっ」

「チャラ男、酷い顔になってるよ」

「あいつらムカつくよねー」

「二人まとめて、何かしてやろうぜ」

「dqn、良い事言った!やってやろうぜ!」

「いいねいいね!」

少年「…誰に何をするんだ、バカ共」

少女「…」

「お、お前ら…チッ」

「いいじゃねえか、今ここでやっちまおうぜ!」

「洋服全部破いて、素っ裸で家まで帰らせるとか?」

「ギャハハ!それいーじゃん!」

少年「そうか。バカだとは思っていたけど、ここまでバカとはな」

「バカって言ったほうがバカなんだぞ!」

「dqnの言う通り!アンタの方がバカだよ!」

少年「俺たちの服を破くのか?」

「あぁ、いいな。ビリビリに破いてやるぜ」

「こっちは4人もいるんだ、覚悟しろよ!」

「え?ウチらも数に入ってるの?」

「お前らは少女の方をやれ!」

「あー、そういう事ね、おっけー」

少年「バカなお前達に言っておく」

「またバカって言ったな、このクソ野郎!」

「ていうか、命乞いか?無駄だぜー?」

少年「…俺はある習い事をしている」

「はぁ?公文とか?ギャハハ」

「頭良いって言いたいの?今から素っ裸で家まで帰るやつが?」

「ギャハハハハ」

少年「お前らが、今、もしくは、今後」

少年「少女に何かしたら…」

少年「俺はお前らを許さない」

少年「反省するなら、今のウチだぞ」

「は?ビビらせようとしてるのか?」

「やっぱこいつムカつくわー」

「やっちゃえ!チャラ男!dqn!」

「徹底的にボコっちゃえ!」

少年「…そうか、反省はしないんだな」

「うるせえ!黙れっ!」
ドガッ!

「今日は先生も止めにこねーぞ?」
ガスッ!

「アタシらも蹴っていい?」

「おう、蹴れ!蹴れ!」
ゲシッ!ゲシッ!

少年「…少女、お前が証人だ」

少女「え?」

少年「もし俺がやりすぎて、警察沙汰にでもなったら」

少年「先に手を出したのは、こいつらだって」

少年「ちゃんと言ってくれよ」

「ごちゃごちゃうるせぇ!」
ガスッ!

少年「もうそろそろいいだろ」
ガッ!

少年「昨日、あんな事があったからな」

少年「少女と一緒に帰って良かった」

少年「お前には昨日の恨みもあるしな」

「う、うわ、なんだコイツ」

少年「俺の習い事は、公文式じゃねえよ」

少年「空手だ」

少年「父ちゃんから習ってる、実戦空手だ」

………
少女「…も、もうそろそろ…いいんじゃない?」

少年「そうだな。そろそろ良いか」

「いたい…いたいよう…ママぁ」

「骨が折れたぁ…いてぇよぉ…」

「…あんた、強かったんだね」

「チャラ男!dqn!しっかりして!」

少年「…折れてる訳ないだろう」

少年「そんなに強くやってない」

「…」

少年「お前ら、これに懲りたら、少女に手を出すなよ?」

少年「俺に手を出したいなら、来い」

少年「いつでも相手してやる」

「覚えてなよ!絶対先生に言いつけてやる!」

少年「好きにしろよ」

………
担任「あなた達2人が待ち伏せして、チャラ男君とdqn君」

担任「それにブス美さんとブス代さんまで殴ったって言うのは本当?」

少年「チャラ男とdqnを殴ったのは本当です」

少女「先生、それは!」

少年「…いや、少女。良いんだ」

少女「え?でも…」

少年「良いんだ」

担任「殴ったのは本当なのね?」

少年「はい。本当です」


女「結局あの時、男君は全部の罪を被ってくれた」

男「…」

女「男君はね…」

女「あの時、私を助けてくれたヒーローなんだよ」

女「弱い私を助けてくれた」

女「弱い私を変える切っ掛けをくれた」

女「最高に格好いいヒーローだった」

女「…あの頃の私は弱かったの」

女「だから、あんなバカ達に目を付けられたし」

女「抵抗もしなかった…」

女「違うわね。出来なかったのよ」

女友「…今の女からは想像も出来ないな」

女「そうね、自分でも考えられないわ」

女「結局あの後、バカな女子たちの嫌がらせは」

女「私から、男君へと向いたわ」

女友「それは…」

男「…」

女「男君は女子には手を上げなかった」

女「だから調子に乗ったあの子たちのいやがらせは…」

女「結局中学3年まで続いていたのよね?」

男「…」

女「中学の卒業式の日、あの子達が私に言ったわ」

女「『あんたの代わりに男に嫌がらせしてたけど』」

女「『アイツ、何も抵抗しなくて、つまんなかったわ』」

女「『だから、これが最後の嫌がらせ』」

女「『アンタが少しでも嫌な気分になればそれで満足よ!』」

女「『ざまあみろ!』って捨て台詞まで付けてったわ」

女「私は自分を変える事に必死で」

女「その事に気付けなかった」

女「それが悔しくて…」

男「…違う」

女「え?」

女友「何が違うんだい?」

男「あれは女さんが思っているような、美談なんかじゃない」

女「でも…」

男「あの頃の俺は…ただ身につけた力を使いたかっただけの」

男「ただのアホだったんだ」

男「だから女さんが気にするような事はなかったんだよ」

女「それでも!それでも私は…」

女「男君の事が、好きなんだよ」

女「私のこの気持ちは、無かった事には出来ないよ!」

女友「女…」

女「中学に入ってからの私は、必死に自分を変えて」

女「強くなった」

女「あなたに振り向いて欲しくて!」

女「強くなった私を見て欲しかった!」

女「…でも、あなたの隣には、いつも幼さんが居て」

女「私が入り込む隙なんてなかった…」

女「そして、中学卒業の時、あの子達にあんな事を言われて」

女「私は自分の知らない所で、男君の事を…」

女「酷く傷つけていたのだと思い知らされて」

女「諦めた…諦めたつもりだった」

女「けど昨日、突然幼さんから急にあんな事言われて」

女「つい…ね、秘めていた想いをぶつけてしまったの」

男「…」

女「貴方と幼さんは…」

女「男女としてのお付き合いは、していないと聞いたわ」

男「…あぁ、そんな関係ではないな」

女「それなら、私と真剣に…お付き合いする事を」

女「少しでいいから、考えてみてくれないかしら?」

男「…」

女「私があなたの事を、本気で好きだと言う事はちゃんと伝わったわよね?」

男「あぁ、ちゃんと伝わったよ」

女「そういう事だから」

女「今、即答しないでね?」

女「ちゃんと、考えてみて欲しいの」

女「幼さんと、あなたの関係について」

女「そして私について、ね?」

男「…わかった」

女友「なるほどね」

女友「ちゃんとあるじゃないか。長くて、深い話しが」

男「…」

女友「フフ。私の親友の事を、真剣に考えてくれよ?」

男(俺が幼の事をどう考えているか?)

男(そんな事はとっくの昔に答えは出ている…と思っていた)

男(…でも幼は、幼はどうだろうか)

男(…俺は幼の事を、わかったつもりでいただけなのか…)

男(友と幼友の事、笑えないな…)


男「こんばんは、おばさん」

幼母「あら、男ちゃん。こんばんは」

男「幼、居ますよね?」

幼母「部屋に居るみたいだけど…」

幼母「今朝と同じで返事してくれないのよね」

男「…ちょっとお邪魔します」

幼母「どうぞー」


男「幼。起きてるか?」

男「…」

男「俺が一人で勝手に話すぞ?」

男「…今日、女さんと会ったんだってな」

男「俺もさっきまで女さんと会っていた」

男「確かに昨日幼が言ってた通り」

男「女さんは俺の事が好きらしい」

男「俺と、男女として、付き合いたいらしい」

男「…なぁ幼」

男「お前は昨日、俺が幸せになるなら…って言ってたな」

男「俺の幸せってなんだろうな」

男「俺は…今まで、幼の事なら何でも解ってると思ってた」

男「長い付き合いだもんな」

男「…でも、それは間違いだったみたいだ」

男「今の俺には幼の気持ちが解らない…」

男「それに、俺は俺自身の事が全然解らない」

男「俺なんかより幼の方が、俺の事を解ってるだろう」

男「…だから教えてくれよ、幼」

男「俺の幸せって、どうする事なんだろうな」

男「…なぁ、何か言ってくれよ、幼」

男「…」

男「…また明日来る。おやすみ、幼」

幼「…」

幼「…男」


男(女さん…か)

男(確かに美人だし、優しいし、心の強い人だ)

男(俺の事を一途に想っていてくれてたのもわかった)

男(…俺の隣りに女さんが立つ?)

男(その時の俺は幸せなのか?)

男(笑って居られるのか?)

男(…)

男(…想像もつかないな)

男(…幼、やっぱり俺は…お前に…)

友「今日も幼ちゃん、休みか…」

男「あぁ」

幼友「…」

男「お前らが気にしても何にもならないぞ」

友「でもよ…」

幼友「私達のせいで、アンタと幼の仲が悪くなったら…」

男「…」

友「何だよ、男」

男「…いや、なんでもない」

友「いつもみたいに『そんな事にはならない』とか言ってくれよ」

男「…すまんな、2人とも」

幼友「…なんでアンタが謝るのよ!」

男「…hr始まるぞ、自分の席に戻れよ、幼友」

幼友「…」

友「…」

幼友「ね?どうしよう?どうしよう!」

友「…どうするかなぁ」

幼友「このままケンカ別れなんて、絶対嫌だよ!」

友「俺だってそうだよ!」

幼友「私達、幼の事、わかってなかったね…」

友「…だな」

幼友「あの子は、いつも笑顔で、前向きで」

幼友「男の事が大好きだと思ってた」

友「たぶんこの学校中のほとんどがそう思ってるだろうよ」

友「辞退したとはいえ、文化祭で3年連続ベストカップルに選ばれてるんだから」

友「中1の頃からずっと見てたけど」

友「俺だって、幼ちゃんは男の事が好きだと思ってたさ」

幼友「だよねだよね。絶対そうだよね」

友「でもまさか身を引くなんて思わなかった」

幼友「そうだよね…男に告白するって思ったよね」

友「男も、絶対幼ちゃんの事好きなはずだから…」

幼友「男の行動っていつも幼中心だったもんね」

友「いつでも幼ちゃんの事を考えて、守るようにして」

友「あれで、付き合ってない方がおかしいだろ」

友「と思ったから、相思相愛な2人を恋人同士にしようっていう」

友「お前のアイデアに乗ったんだけどな」

幼友「幼…」

幼友「ね、とりあえず、幼の家に行ってみない?」

友「そうだな。ちゃんと謝らないとな!」

幼友「おばさん、こんにちは!」

幼母「あら、久しぶりね、幼友ちゃん」

幼母「それと、友君だっけ?」

友「そうです!お久しぶりです」

幼母「2人とも、幼に会いに来てくれたのよね?」

友「そうです!」

幼母「ありがとう、2人とも」

幼母「でも今、あの子居ないのよ」

友・幼友「え?」

幼母「昼頃、部屋から出てきたと思ったら」

幼母「ちょっと出てくる…って」

幼友「ど、どこに行くとか言ってましたか?」

幼母「何も…ただ『心配ないから』って」

幼友「そうですか…」

幼母「さっき男ちゃんも来てね」

友「男も来たんですか!」

幼母「ええ。幼が出掛けたって知ったら、帰ったけども」

幼母「幼と男ちゃん、何かあったのかしら」

幼友「すみません、おばさん!」

幼友「幼が部屋に引きこもってたのは、私達のせいなんです」

友「その事を謝りたくて来ました」

幼母「二人とも、ありがとうね。あの子の為に」

幼母「でも多分大丈夫よ」

友・幼友「え?」

幼母「小さい頃からね、たまにあるのよ」

幼友「そうなんですか?」

幼母「えぇ。でもいつも男ちゃんが何とかしてくれたわ」

幼母「二人がどんな話しをしてるのかはわからないけども」

幼母「今回もきっと、男ちゃんがあの子を連れて帰ってくると思うわ」

友「で、でも…」

幼母「私はこれでも、あの子の母親を18年もやってるのよ?」

幼母「大丈夫だから、ね?」

幼友「わかりました。私達も、幼と男君の事、信じてます」

幼母「明日にはきっといつものあの子に戻ってるわよ」

女「あら、来たのね、いらっしゃい」

女「上がっていく?お茶くらい出すわよ?」

男「いや、すぐ済むから」

女「例の件のお返事かしら?」

男「そうだ」

男「その前に1つ、改めてはっきりさせておく」

男「俺と幼は、男女としての付き合いはしていない」

男「家が隣同士の、幼馴染だ」

男「それ以上でもそれ以下でもない」

男「それを踏まえた上で、女さんの気持ちに応えたい」

女「…」

男「ごめんなさい。俺は女さんとは付き合えない」

女「理由を聞いても良いかしら?」

男「俺、他に好きな人がいるから」

男「…振られるかもしれないけど」

男「俺も女さんと同じで」

男「自分の気持ちを無かった事には出来ないから」

女「…」

男「昨日、家に帰ってから、考えてみたんだ」

男「俺の隣りに女さんが立っている姿を」

男「でも、どうしても想像出来なかったんだ」

男「自分が幸せに笑っている顔が、思い浮かばなかったんだ」

男「俺の隣りには、幼が居ないとダメなんだ」

女「…そう。そうなのね」

男「ごめん。女さん」

女「いいのよ、大体わかってた事だもの」

女「ただ、自分の気持ちを、あなたに伝えられて良かった」

女「あなたがちゃんと私の事を考えてくれて嬉しかった」

女「はっきりした返事が聞けて良かったわ」

男「…」

女「今から行くんでしょう?幼ちゃんの所に」

男「あぁ、行ってくる。俺の気持ちを伝えてくる」

女「いってらっしゃい、頑張ってね」

男「じゃあ、また」

女「また、ね」

女「…はぁ。振られちゃったわよ、私」

女友「聞いてたから、わかってるよ」

女「本当にね。美人すぎるのも問題よね」

女「高嶺の花、何て言って、誰も寄ってこないんだもの」

女友「フフ。私にはわからない悩みだな」

女「早く誰か、私を迎えにきてくれないかしら」

女「ピンチの時に颯爽と現れる、私だけのヒーロー」

女友「…そのヒーローとやらが来るまでは、私が側にいるから」

女友「今はいくらでも泣きなよ。付き合ってあげるから」

女「…ありがとう、女友…」


男「やっぱりここだったか」

幼「男…」

男「久しぶりだな、ここに来るのも」

幼「私はたまに来てたよ」

男「…そうか。俺が知らない幼の一面が明らかになったな」

幼「…」

男「…隣り座っていいか?」

幼「うん」

男「…」

幼「男、元気無いね」

男「お前もな、幼」

幼「そんな事ないよ!私は元気一杯だよっ!」

男「そんな顔には見えないな」

幼「普段は私がする事、考えてる事何でもわかるって言うくせに」

幼「昨日から調子悪いねっ」

男「…そうだな。調子悪いな」

幼「男には美人な彼女が出来るんだよ?」

幼「もっとニコニコしてなきゃ」

幼「男は幸せにならなきゃ!」

幼「その為なら、私は何でもするよっ」

幼「それが私の存在意義だから!」

男「幼、お前はたまにこうなるよな」

男「一昨日の夜、部屋の前でも言ったがな」

男「お前は俺の事になると、暴走する」

男「最終的には結局、自己嫌悪に陥るんだ」

男「そしてここに来る」

幼「…ここは大事な思い出の場所だからねっ」

幼「最初に…大切な約束をした場所だもんね」

男「そうだな、俺にとっても大事な場所だ」

幼「でも、この場所に来るのも、今日で最後にするよ」

幼「いつまでも男の面倒を見ていられないもんね!」

幼「これからは女さんに面倒見てもらいなよ?」

男「それが、お前が出した答えか?」

幼「そうだよっ」

幼「いつかこんな日が来ると思ってた」

幼「男の隣りに、私じゃない誰かが居る光景」

幼「もし、中学の頃、男の事を傷つけてた様な女の子だったら」

幼「絶対阻止してたけど」

幼「女さんだもんね。男とお似合いのカップルだよ!」

男「そうか、俺と女さんはお似合いか?」

幼「お似合いだよっ」

幼「美男美女の、本当にお似合いの…」

男「幼、お前は本当にそれで良いと思っているのか?」

幼「男の幸せは、私の幸せ!」

幼「私の幸せは、男の幸せ!」

幼「お互い、それを守るためなら、何でもする…」

幼「それがここで交わした、一番最初の約束じゃん!」

幼「男だって覚えてるでしょ?」

男「もちろん、覚えてる」

男「そうか、俺は女さんとお付き合いした方が幸せになるのか」

幼「そうだよっ」

男「なぁ、幼、一つ聞かせてくれ」

幼「なぁに?」

男「ちゃんと本当の事、答えろよ?」

幼「私は嘘なんてつかないよっ」

男「俺の事、好きか?」

幼「!」

幼「そ、そんなの…」

男「友達としてじゃなく、仲の良いお隣さんとしてじゃなく」

男「一人の異性として、お付き合いする対象として、俺の事、好きか?」

男「それとも、そんな目では見られないか?」

幼「…」

男「俺はな、幼」

男「今まで、幼との距離が近すぎて、よく見えてなかったんだ」

男「灯台もと暗しってやつだ」

幼「…」

男「ずっと俺の側に居た」

男「隣りに居て当たり前の存在だった」

男「俺は幼の事をどう思っているのか、わかっているつもりだった」

男「でもそれは間違いだった」

男「俺も俺なりに考えたんだ」

男「幼、俺はお前の事が好きなんだ」

幼「!」

男「異性として、好きだ」

男「幼と付き合いたい」

男「他の誰よりも、幼の事を知っているつもりだったけど」

男「もっともっと深く、幼の事を知りたい」

男「幼を誰にも…渡したくない」

男「ずっと、隣りで笑っていてほしい」

幼「…」

男「もう一度聞くぞ、幼」

男「俺の事、好きか?」

幼「そ、そんなの!す…好きじゃ、ないよっ!」

幼「き、嫌いだよ」

男「…」

幼「男の事は、幼馴染だから、一緒に居たってだけで…」

幼「異性としては大嫌いだよっ!」

男「そうか、大嫌いか」

幼「そうだよっ!」

幼「私達は、親同士も幼馴染同士で」

幼「生まれた日まで一緒だもんね」

幼「だから、小さな頃からどこへ行くのも一緒だった」

男「そうだな」

幼「小さい頃から、私の一歩前を歩いて」

幼「何でも出来て、何でも知ってる」

幼「私が困った時は絶対に助けてくれる」

幼「何でもわかっているような顔して」

幼「なんでもズバズバ答えを出しちゃう」

幼「私自身が気付いてない気持ちにだって」

幼「男が結論を出しちゃう!」

幼「もう、そういうの嫌なんだよっ!」

幼「わ、私の理想のタイプはね!」

幼「自分の事にも、周囲の事にも、ものすごーく鈍感で」

幼「自分の身の回りの事もちゃんと出来ないようなだらしなさがあって」

幼「私が居ないと、生きていけないくらい、ダメな人が好きなんだよっ」

男「そうか」

幼「男とは正反対のタイプが好きなんだよっ」

幼「わかった?」

男「あぁ、わかった」

幼「じゃあ、もうこんな所に居ないで」

幼「女さんの所に行きなよっ!」

幼「きっと男の事を待ってるよ」

男「わかったぞ、幼」

幼「…わかったなら、早く行きなよ」

男「お前には、ある特徴がある」

男「…嘘をつくとき、右の耳がピクピク動く」

幼「えっ!嘘っ!?」

男「今さら耳を押さえても無駄だ」

幼「…嘘だっ」

男「残念ながら、本当だ」

幼「わ、私は…私は…」

男「お前は俺の事が好きだ。違うか?」

幼「ち、違う!私は男の…事なんか、大嫌い…」

男「ほら、また耳が動いた」

幼「違う…違う…」

男「違わない。お前は俺の事が好きなんだよ、幼」

幼「…うぅ」

男「幼が俺の幸せを考えてくれてるのは、わかってる」

男「小2の時、いじめられてた幼を助ける為に」

男「ケンカの中に割って入って、俺が大怪我をした時も」

男「小6の時、バカなガキだった俺が」

男「ケンカして、親と学校に叱られた時も」

男「中2の時、同じクラスになった時」

男「俺がクラスの女子に嫌がらせを受けているって知った時も」

男「幼、お前は必死に駆け回って、何とかしようとしたな」

男「どれも空回りで。結局自己嫌悪」

男「その度、ここに来て、泣いてたな」

男「友や幼友にも内緒の、俺たち2人だけの秘密基地」

幼「…」

男「幼、今回もそうだ」

男「今回もお前は空回りしたんだよ」

男「自分でもそれがわかってるから、ここで泣いてたんだろう」

男「さぁ、そろそろ正直になったらどうだ?」

幼「わた、私はいつでも、自分に正直に生きてるよ!」

幼「嘘なんて、ついてない!」

幼「耳も動いてない!」

幼「…男の事なんて…だ、大嫌いなんだからぁ…」

男「…泣かないでくれ、幼。気持ちは伝わったから」

幼「私みたいなのが、男の側に居たら」

幼「男が不幸せになっちゃうよ…」

男「…俺の不幸せを、お前が決めるなよ」

幼「…だって…」

男「幼」
ギュッ

幼「な、何?何してるの?」

男「俺と一緒に居てくれ。幼が居ないと、ダメなんだ」

幼「…」

男「ここに来る前、女さんの家に行ってきた」

幼「!」

男「ちゃんと考えて、ちゃんと返事してきた」

幼「な、何て…」

男「ちゃんと断ってきた」

幼「…」

男「俺の隣りに居て欲しいのは、幼だって」

男「ちゃんと伝えてきたよ」

幼「…本当に、私で良いの?」

幼「こんな、小学生と間違えられるような、ちんちくりんが」

幼「男の隣りにずっと居ていいの?」

男「幼が自分の容姿にコンプレックスを抱いているって知っている」

男「家が隣り同士で、長い事一緒に居たから」

男「好きって感情とは違うと、思い込もうとしているってのもわかってる」

男「でも、そんな事はどうでも良いんだ」

男「幼は俺がチビだったら、好きにならなかったか?」

男「家が隣り同士じゃなかったら、好きにならなかったか?」

男「違うだろう?」

幼「…」

男「俺が、俺だから、好きになってくれたんだろう?」

幼「ぅあ…あの…私は…」

男「観念しろ、幼」

男「俺はお前が好きだ。愛してる。ずっと側に居て欲しい」

幼「…うん。私も…私もだよ、男」

幼「私も男の事が好き。愛してる。ずっと側に居たい!」

幼「もう今までの関係じゃ嫌なの!」

幼「私ね、男」

幼「男と一緒に笑って、泣いて、過ごしてきた時間を」

幼「大切に想って、想って、…想い過ぎちゃったみたい」

幼「必死に閉じ込めようとしてた」

幼「男の事、好きだって事」

幼「でももう我慢出来ないよ、男」

幼「私の名前を呼んでくれる、男の声が好き」

幼「落ち込んだ時、ダッフィのぬいぐるみをクシャクシャにしてる男の姿が好き」

幼「たまに見せる、焦った顔が好き」

幼「実は料理が上手な所も」

幼「空手が強い所も」

幼「私をかばってついちゃった、左腕の傷も」

幼「付けまつげみたいな、長いまつ毛も」

幼「男を形作る全ての事が、愛おしくて、愛おしくて…」

男「だからお前は、俺の事になると、熱暴走するんだ」

男「わかっている」

幼「さすが男。私の知らない事、何でも知ってるよね」

男「何でもは知らないさ。俺は俺の事を知らない」

幼「そうだね、男、自分の事だけは全然わかってないよね」

幼「これから私が教えていってあげる」

幼「男っていう、最高にカッコイイ男の子の事を」

男「あぁ、頼むよ、幼」

幼「…大好きだよ、男」

男「俺もだ、幼」


友「幼ちゃん、ごめんっ!」

幼友「幼、ごめんね、ごめんっ!」

幼「2人とも、もう良いから…顔上げてよ」

友「俺達の変な嘘のせいで…」

幼友「土下座しますっ」

幼「そんな事したら逆に怒るよっ?」

男「2人とも、もう良いだろう、幼も許すと言っているんだ」

男「もちろん、俺も許す」

友・幼友「ありがとう、2人とも」

幼「今回の事は、私達の為にもなったんだよ」

男「そうだな」

友「?」

男「俺たち昨日から、男女として正式に付き合い始めたんだ」

幼友「マジで!?」

幼「切っ掛けを作ってくれたのは、2人がついた嘘からだったから」

幼「結果オーライなんだよっ」

友「おぉ…良かった。本当に良かった…」

幼友「ホント良かったよ…」

友「こいつなんか昨日『男と幼がケンカ別れしたら、私のせいだ』なんて言って」

友「公園でワンワン泣いちゃって、大変だったんだぜ?」

幼友「あ、アンタだって泣いてたじゃん!」

友「俺は泣いてない!」

幼友「いーや、泣いてたね!女々しい!」

幼友「涙も言い訳も、どっちも女々しい!」

友「うっさい!バーカ!」

幼「…フフ。普段通りになったね、男」

男「あぁ、いつもの光景だな」

友「おい!なんだよ、今の!」

幼友「くっそう!熟年カップルみたいな雰囲気出しちゃって!」

幼友「付き合い始めて1日目のくせに!」

友「はーぁ。俺もそんな相手が欲しいぜ」

幼友「まったくよね。私の王子様はいつ私を迎えに来てくれるのかしら」

友「王子様は平民には興味ねぇんじゃないか?」

幼友「なんですって!」

友「なんだよ!」

幼「フフフ」

男「フフ」

友・幼友「!」

男「なんだ?2人してそんな世界の終わりみたいな顔して」

友「男が、笑った!」

幼友「6年近く一緒にいるけど、初めて見たかも…」

幼「2人とも、実は男はね、たまに笑うんだよ」

男「たまになのか」

幼「そうだよ、たまにだよ」

幼「すっごく嬉しい時だけ、一瞬笑うんだよ」

幼「今の笑顔、すっごくレアなんだよっ」


女「そう、やっぱり2人、お付き合いする事になったのね」

男「うん」

幼「ごめんね、女さん」

女「いいのよ、幼さん。謝らないで」

幼「…でも私、女さんに酷い事を…」

女「私は男君のおかげで変われた」

女「そして、男君の事を好きだった」

女「それをきちんと伝えられただけで、良いの」

幼「女さん…」

女「二人とも、お幸せにね」

幼「ありがとう、女さんっ」


男「付き合い始めたと言っても…」

男「別に今までと何も変わらないよな」

幼「そうだねっ」

幼「気持ちの問題だもんねっ」

幼「でもね、男」

男「なんだ?」

幼「私はね」

幼「男が幸せなら…私…」

男「何を言ってるんだ、お前は」

幼「え?」

男「幼が隣りで笑って居てくれる」

男「それ以上の幸せがあると思うのか?」

幼「…あるよっ」

男「ほう?どんな事だ?」

幼「…」

幼「あ、男、靴紐解けてるよ?」

男「む。ちょっと結ぶからカバン持っててくれ」

幼「…」
チュッ

男「…」

幼「こうすれば、もっと幸せな気分になる、でしょ?」

男「…おう」

幼「これから先、もっともーーーっと!」

幼「幸せな事がいっぱいいっぱいあるよ!」

幼「大大大好きだよ、男っ」


おわり

これで終わりです
読んでくれた人ありがとう

次スレは
幼馴染「幼馴染に幻想抱いたっていいじゃない!」男「は?」
ってタイトルで立てたいと思います

長いの、向いてない
お目汚しすみませんでした




次回も期待する



出来ればもう少し幼をほりさげてほしかったかな


良かった

乙です
>>1の書く幼馴染ss大好きだわ

乙!

乙~

おつ

幼稚極まりない

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月05日 (火) 17:50:26   ID: OApWRUmz

イイハナシダナー!

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