櫻井桃華「IMCG・薔薇色愛情地獄」 (51)

あらすじ
わたくしが、ここで、どんなアナタでも愛してあげますわ。


IMCG第7話

前話
松永涼「IMCG・絶唱」
松永涼「IMCG・絶唱」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432987397/)

設定はドラマ内のものです。

それでは、投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434881135



薔薇の花言葉を知っていまして?

知ってますの?

愛、ええ、赤い薔薇の花言葉はその通りですわ。よしよし、してさしあげますわ。

でも、薔薇は赤だけではありませんわ。

白なら純潔、桃色なら気品、オレンジなら絆、そして黄色なら嫉妬ですわ。

色が違えば意味も違いましてよ。

美しいものもあれば、醜い感情もありますの。

人を傷つけるトゲでしか薔薇だと言い張れないものもありますわ。

でも、心配いりませんわ。

わたくしがどんなアナタでも愛してあげますわ。

薔薇色の愛で満たしてあげますわ。

それが幸せな世界というものでしょう?

序 了

OPテーマ

HEATS UP!!

歌・浜川愛結奈・小室千奈美・松山久美子



IMCG・オペレーションルーム

井村雪菜「うーん……」

井村雪菜
IMCGのオペレーター。ただいま、書類作成中。今日のメイクはナチュラル。

浜川愛結奈「そんなに難しい顔してどうしたの?」

木場真奈美「悩み事があるなら相談に乗るぞ」

浜川愛結奈
IMCGのオペレーター。今は行けない旅行の相談中。

木場真奈美
シュリンク4、ウルフのパイロット。銃器を自身の一部と感じることで、ウルフの内蔵兵器を操作する。

雪菜「カルテ、どうしましょうかぁ?」

愛結奈「前の暫定版は良くできてたわよ?」

雪菜「でもぉ、これだけじゃ足らない気がして」

真奈美「見せてくれるか」

雪菜「はい、真奈美さん、どうぞ」

真奈美「ありがとう」

愛結奈「シュリンクのパイロットがフェイズ1を円滑に進めるために、どこまで必要かしら」

真奈美「正直、出たとこ勝負にならざるを得ない」

雪菜「そうですけどぉ……」

愛結奈「普通のカウンセリングとも違うもの、難しいところね」

真奈美「十分だとは思うが、この前の件が気になっているのか?」

雪菜「はい」

愛結奈「墓標のIMCね。特殊な例だと割り切る、わけにもいかないわね」

真奈美「たまたま、相手が存在しなかっただけだ」

愛結奈「ワタシたちには見えてすらいないけど」

雪菜「櫂さんには居ましたから……」

真奈美「IMCを駆動させた感情を捨てられない可能性は、これからもあるな」

雪菜「だから、なんとかしたいんですぅ」

愛結奈「一人で悩まなくていいのよ、雪菜ちゃん?」

真奈美「ああ。思考が固まって、また硬い仮面になる前に相談してくれ」

雪菜「……ありがとうございます」

真奈美「私も考えないといけないな。櫂君が出来ないことは、私も出来ない可能性が高い」

雪菜「真奈美さん、なら大丈夫ですぅ。私が、保障します」

真奈美「そうだな。少しは自信を持つとするよ」

愛結奈「そういえば、今日は櫂ちゃんは?」

真奈美「大学だ」

雪菜「待機任務は、解除中ですぅ」

愛結奈「そう、だから真奈美さんがずっといるのね」

真奈美「そういうことだ」

雪菜「大丈夫でしょうか、櫂さん……」

愛結奈「大丈夫よ。大丈夫じゃないなら、ワタシ達は放っておかないわよ」



H大学・食堂

西島櫂「取り過ぎた……男子並みに食べてるよ」モグモグ

西島櫂
H大学の学生。シュリンク6、ドルフィンのパイロット。パイロット業は少しお休み。

櫂「前ほど水泳してないから、こんなに食べなくていいのに……」

仙崎恵磨「おっ!いたいた!」

仙崎恵磨
某雑誌の記者。高い行動力と勘の鋭さを持つ。

櫂「えっと、誰だっけ?同級生?」

恵磨「まだまだ大学生に見えるかっ!ありがとっ!」

櫂「じゃあ、学生じゃないんだ」

恵磨「うん、名刺あげる」

櫂「記者、なんだ」

恵磨「そうそう。千夏とは会ったことある?」

櫂「千夏?」

恵磨「ごめん、思い出したっ!千夏は会ってないんだった」

櫂「でも、記者さんが何かあたしに用なの?競泳はほぼ引退しちゃったし」

恵磨「もっと上行けそうだったのに残念だね。それにしてもさー、お腹空いてんの?」

櫂「やっぱり取り過ぎかぁ……ちょっと自棄食いかも」

恵磨「アタシも食べようかなっ!一般の人も使っていいよね?」

櫂「うん、大丈夫」

恵磨「待ってて!そしたら話を聞かせてよ」

櫂「なに……って」

恵磨「怪物のこと、聞かせてよ」



H大学・食堂

恵磨「どう、パイロットは?」

櫂「どう、うーん……」

恵磨「やっぱり大変なの?」

櫂「大変だと思う。IMCはいつ出てくるかわからないし」

恵磨「今日はいいの?」

櫂「……失敗しちゃってさ、お休み中なんだ」

恵磨「そうなん?」

櫂「うん」

恵磨「アタシにはそうは見えなかったけど?ちゃんとIMCは倒したじゃん」

櫂「……それは」

恵磨「それは?」

櫂「えっと、言わない」

恵磨「言えない?会社から止められてる?」

櫂「そう。あんまり不安にさせてもいけないし」

恵磨「へー。不安になるようなことがあるんだ、大変だねっ!」

櫂「は、はぁ……」

恵磨「それでさ、結局IMCってなんなん?」

櫂「IMCは……なんだろ?」

恵磨「ホント、いきなり出てくるよね」

櫂「うん。だから、IMCGの人は敷地内にずっといる人が多いし」

恵磨「なんか知ってる?」

櫂「ねぇ、記者さん」

恵磨「なに?」

櫂「なんで、IMCがそんなに気になるの?」

恵磨「何って、IMCGはIMCを倒すための組織なんでしょ?」

櫂「そうだけど」

恵磨「なら、人なんていうわけわかんないものよりIMCっていう原因を調べたほうが楽じゃん」

櫂「そうなのかなぁ……あんまり隠し事があるようには思えないけど」

恵磨「ま、誰にでもどこにでも秘密はあるっしょ。あ、櫂ちゃん」

櫂「なに?」

恵磨「デザート食べる?奢るよっ」

櫂「うーん、ご馳走してくれるなら」

恵磨「オッケー!代わりにお願い」

櫂「さっきのことは話せないよ?」

恵磨「いいよ。IMCって何なのか、少しでもわかったら教えて」



IMCG・オペレーションルーム

古澤頼子「お疲れ様です」

古澤頼子
IMCGのオペレーター。最近、猫背ぎみな姿勢を気にしている。

愛結奈「おはよう」

頼子「真奈美さんはどうしたのですか」

真奈美「いちゃいけないか?」

頼子「いいえ。そういうことでは」

真奈美「お茶菓子で許してくれ。待機任務で暇なんだ」

頼子「どんなものかにもよりますね」

真奈美「お手製のマフィンで許してくれ」

頼子「ふふっ、許します」

雪菜「お茶淹れてきますねぇ」

愛結奈「お願い。新しく届いた紅茶があるから、試しに淹れてみて」

雪菜「はぁーい」

頼子「櫂さんはお休みですか」

真奈美「ああ」

頼子「音葉さんは、どちらに?」

真奈美「敷地内にはいると思うが。ドックか?」

愛結奈「調べる?」

真奈美「いや、いい」

頼子「さて、何をしましょうか」

愛結奈「無理に働かなくても」

頼子「そう言いながら、愛結奈さんがデータ解析してるのは知ってますよ」

真奈美「そうなのか?」

愛結奈「ワタシだって、やれることはやるわ。ここにいる以上は、ね」

柳清良「こんにちは」

柳清良
IMCGの職員。役職はレナのアシスタント。

真奈美「清良君か、どうした?」

清良「櫂ちゃん、帰ってるかしら?」

愛結奈「まだね。午後は1コマしかないって言ってたわね」

頼子「ええ。早ければそのうち帰ってくるかと」

真奈美「用事があるなら、呼び出すか?」

清良「いえ、いいわ。そうね、帰ってきたら教えて」

頼子「はい。わかりました」

愛結奈「連絡するわ」

清良「お願いね」

雪菜「お待たせしましたぁ~。あっ、清良さん、お茶はいかがですかぁ?」

清良「いただこうかしら」

雪菜「はいっ!カップを用意しますねぇ」



世界はきっと広いのですわ。

だけれど、わたくしが見える世界はとっても小さい。

庭の薔薇はきっと今年も美しく咲きますわ。

いいえ、咲かなくてもいいんですの。

美しいから愛す、なんて身勝手じゃありませんの?

だから、愛してあげますわ。

わたくしが愛せるものは全て。

それが幸せでいる秘訣でしょう?



某雑居ビル3F

恵磨「ただいま、帰りましたっ!」

相川千夏「おかえりなさい」

相川千夏
恵磨の同僚。紅茶よりはコーヒー派。

恵磨「デスク、これ朝市の写真ね!確認よろしくっ!」

柊志乃「受け取ったわ」

柊志乃
千夏と恵磨の上司。役職はいわゆるデスク。紅茶よりワインがいい。

千夏「朝市、どうだったかしら?」

恵磨「良かった!デスク、その記事のかき揚げ丼本当に美味しかったから!」

志乃「ふむ……お酒は?」

千夏「朝から飲むんですか?」

恵磨「夜はやってないよ。市場閉まるし」

志乃「残念ね……この記事は残しましょうか」

千夏「大学には行ったの?」

恵磨「うん。この子とも会えた」

志乃「ロボットのパイロット?」

恵磨「そうそう。個人的に連絡先も聞けたし、ばっちり」

志乃「何か、重要なことは聞き出せたのかしら?」

恵磨「焦ると失敗する、ってデスクが」

志乃「そうね……その通り」

千夏「IMCについては?」

恵磨「全然、どんなものかは良くわかってるみたいだけど」

志乃「何かは知らない、ということね」

恵磨「由来とかは知らないみたい。そこは聞いてもムダかな」

千夏「そこじゃない、ところがあるの?」

恵磨「うん。やっぱりさ、千夏と見つけたこと当たりみたい」

千夏「へぇ……いるのね」

恵磨「どうしても避けられない、シュリンクが止まってる時間があるのは」

志乃「人がいるのね。映像に映りこんでいたから、まさかとは思ったけれど」

恵磨「明言したわけじゃないから、記事とかムリだけどさ」

千夏「ふむ……怪物に取り込まれた人ね」

志乃「進んで公開しない、レベルなんでしょう」

恵磨「それが不思議なんだよね」

千夏「人命が関わるなら、理解が進みそうなのにね」

恵磨「なんで、そこは隠すんだろ?」

志乃「さぁ……どうしてかしら」

千夏「ひとまず、記事はまだですね」

志乃「ええ。然るべき時に然るべきものを」

恵磨「了解!あ、そうだ、千夏!」

千夏「なにかしら?」

恵磨「シュリンクの映像一通りある?アタシも見る」

千夏「ええ。確認してちょうだい」



IMCG・女子寮

櫂「ただいま」

槙原志保「櫂さん、おかえりなさい♪」

槙原志保
IMCG女子寮の寮母さん。甘くて優しい性格。

志保「今日はまっすぐ帰ってきたんですね」

櫂「うん。プールも行かなかったんだ」

志保「元気だしてくださいね?」

櫂「あたしは元気だよ」

志保「……そうだ!真奈美さんがマフィンを作ってくれたんですよ。一緒にお茶しましょ♪」

櫂「うん、荷物だけ置いてくるね」

志保「はい。食堂で待ってますね」



IMCG・女子寮食堂

清良「こんにちは」

志保「清良さん、待ってました」

櫂「あれ?清良さん、この時間にいるの珍しいね」

清良「たまには、話でもと思って」

櫂「……」

志保「清良さん、紅茶がいいですか、コーヒーにします?」

清良「紅茶はさっき頂いたから、コーヒーにしようかしら」

志保「はい。櫂さんも待っててくださいねー」

櫂「ありがと」

清良「大学は楽しい?」

櫂「それ、皆聞くけど答えに困る質問だよね」

清良「楽しくないのかしら?」

櫂「ううん、楽しいよ。たぶん」

清良「言いきれるようにならないとね」

櫂「言い切るのも大変だと思う。楽しいだけじゃ多分ないしさ」

清良「ええ。それでも、ね」

櫂「……」

志保「はい、どーぞ♪マフィン、美味しいですよ」

櫂「真奈美さん、特製だもんね。いただきます」

清良「甘いものでも食べて、気分が晴れる?」

櫂「少しは。ありがとう、清良さん」

清良「なにかしら」

櫂「心配してくれるの、わかる」

清良「私達のパイロットだから。ドルフィンに乗れるのは櫂ちゃんだけだもの」

櫂「それでも、いいよ」

志保「……」

櫂「大丈夫。あたしは、ちゃんとケリをつけるよ」

清良「時間はかかりそう?」

櫂「わかんない。大学とか楽しくなったら長引くかも」

清良「ふふ……わかったわ」

志保「冷めないうちに、飲んでくださいね」

清良「ええ。いただきます」



IMCG・女子寮

池袋晶葉「ただいま、帰ったぞ!」

池袋晶葉
IMCGの技術主任。授業が終わったので帰宅した。

志保「晶葉ちゃん、おかえりなさい」

櫂「おかえり」

晶葉「おや、櫂。帰ってたのか」

志保「カバンを部屋に置いて、手を洗ったらオヤツにしましょうね」

晶葉「そうしよう。真奈美のマフィンがあるらしいからな」

ピンポンパンポーン……

櫂「あ……」

晶葉「おや、ゆっくりしている暇はないようだな」

頼子『集合を。IMCは既に攻撃を開始、警戒レベル上昇』

清良「ごちそうさまでした、志保さん」

志保「いえいえ。いつでも来てくださいね」

晶葉「志保、オヤツをもらっていいか!」

志保「はい!どーぞ!」

清良「行きましょうか、晶葉ちゃん」

晶葉「ああ!」

櫂「あたしも……」

清良「警戒レベルが上がっているから、真奈美さんが出れるわ」

晶葉「そうだ。真奈美と音葉を信頼していい。それとも、出来ないか?」

櫂「ううん、そんなことない。わかった」

清良「行ってきます」

志保「がんばってくださいねー」

櫂「引き続き、休憩かな」

志保「テレビつけましょうか。えっと、リモコンリモコン……」

川島瑞樹『今回出現したIMCによって既に被害が出ています!付近の人は警察の指示に従い、冷静に避難してください!』

川島瑞樹
地元テレビ局のアナウンサー。家庭的な面もあるとか。

櫂「花……?」

志保「バラみたいですね。あっ、なにか撃ちました!」

櫂「この様子だともとから出番なかったかも」

志保「そうかもしれませんね。コーヒー、もう一杯いかがですか?」

櫂「ありがと。さっ、観戦観戦っと!」

10

IMCG・オペレーションルーム

兵藤レナ「被害状況を報告して」

兵藤レナ
IMCGの責任者。敷地内にはいるが、多忙。

頼子「建物の被害は6棟。被害は全てIMCが射出したものです」

愛結奈「薔薇の花弁みたいね」

レナ「コアになった人物の特定は?」

雪菜「まだですぅ。警察の方に調査をお願いしてますぅ」

レナ「惠ちゃん、避難の状況を」

伊集院惠『学校帰りの生徒が多いようで、少しだけ時間をください』

伊集院惠
IMCG所属の警察官。主な任務は警察との折衝。

レナ「了解。人命最優先で急いで」

大和亜季『了解であります!』

大和亜季
IMCGに派遣されている警察官。体力を持て余し気味。

梅木音葉「……これは美しいのでしょうか」

梅木音葉
シュリンク5、ディアーのパイロット。独特な雰囲気と感性の持ち主。

雪菜「私は、綺麗なIMCがいるとは思わないですぅ」

音葉「そう……ですね」

清良「遅れました」

レナ「櫂ちゃんの様子は?」

清良「心配はいらないわ。だって」

レナ「そうね。自分のIMCに勝ててるんだから」

清良「でも、今日はお休みよ」

レナ「オーケー」

頼子「警戒レベル高。シュリンク4出撃許可」

レナ「真奈美さん、発進準備を!」

真奈美『了解』

11

IMCG・ドック

高峯のあ「真奈美、聞こえてるわね……」

高峯のあ
IMCGの技術職員。最近、屋上に天体観測スペースを勝手に作って怒られた。

真奈美『ああ。コクピットを開けてくれ』

一ノ瀬志希「りょーかーい。開けごま~」

一ノ瀬志希
IMCGの技術職員。IMCGでは彼女の失踪対策がなされている。

晶葉「真奈美の搭乗を確認した」

のあ「弾丸装填……」

志希「ウルフの牙装着~」

真奈美『コクピットを閉じてくれ』

頼子『了解。コクピット閉じます』

のあ「全兵装……完了」

晶葉「真奈美、接続だ!」

真奈美『集中……』

のあ「……状態は」

真奈美『私は平気だ。いつでも何も問題ない』

頼子『シュリンク4、接続完了』

愛結奈『ウルフ、ロック解除!』

頼子『兵装との接続確認』

のあ「安全装置確認……大丈夫よ」

雪菜『エレベーター稼働、ハッチを開きましたぁ!』

レナ『状況確認。ウルフ、発進!』

晶葉「真奈美、頼むぞ!」

のあ「……」

12

IMCG・女子寮

松山久美子「優ちゃん、新聞とって」

太田優「はぁーい」

松山久美子
IMCGの事務職員。待機任務はないものの、制約が色々とあるとのこと。

太田優
IMCGの事務職員。IMC出現時は3人揃って女子寮に避難している。

瑞樹『警察による避難区域をお知らせします』

持田亜里沙「今回の避難区域は広いんですね」

持田亜里沙
IMCGの事務室付職員。託児室計画が保留になってしまったので事務職をしている。

久美子「もう少しで、ここも避難区域に入りそうね」

亜里沙「近いんですね」

志保「その時は地下に避難するんですよ」

櫂「いきなり攻撃してたしさ。IMC中心に広めだと思うよ」

優「そうなんだぁー」

櫂「考えてるし、早いと思うよ」

久美子「ふーん」

瑞樹『今のところ、10棟以上の建物に被害が確認されています。幸運なことに、怪我人は出ていません』

亜里沙「あら、よかったです」

櫂「そろそろ、かな」

瑞樹『シュリンクです!シュリンク4の姿を確認しました!』

志保「真奈美さんが到着しましたね」

優「前のよりずっとカッコいいよねぇー」

久美子「そうね。前はもっと無骨だったもの」

櫂「地下にあるやつだよね、あれ角ばっててかっこよくないよね」

亜里沙「ドルフィンが一番カッコいいと思いますよ?」

櫂「ありがと。個人的にも実はそう思ってるけど、真奈美さんと音葉ちゃんには秘密ね」

亜里沙「ふふ」

志保「フェイズ1ですね」

櫂「しまった」

久美子「どうしたの?」

櫂「フェイズ1だと何もわからないや。テレビだとコアのこと秘密だし」

志保「じゃあ、行きます?」

櫂「……」

優「お休みなんだから、休めばいいよぉー」

久美子「って、割り切るわけにもいかないのよね」

亜里沙「なら、行ってきたらどうですか?」

櫂「気になってるもの、そうかな」

亜里沙「きっと、向き合わないと始まらないんですよ」

櫂「そうだね、よし!」

優「がんばってねぇー」

亜里沙「いってらしゃーい」

志保「長引いたら差し入れもっていきますねー」

櫂「行ってきます!」

13

IMCG・オペレーションルーム

愛結奈「センサー稼働!」

真奈美『止まっているようだな』

頼子「3度の攻撃がありましたが、それ以降は止まっています」

愛結奈「花弁のように見えるところがあるわね?」

真奈美『ああ』

頼子「射出された物体はその花弁のようです」

雪菜「少しずつ再生してますねぇ。気をつけてください」

真奈美『発砲許可を』

レナ「許可するわ」

のあ「指部兵装を解除……」

音葉「……ドックへ移動します」

レナ「音葉ちゃん、よろしく」

音葉「はい……」

頼子「指部兵装解除完了」

愛結奈「IMCに動きなし」

雪菜「避難は完了していますかぁ?」

惠『完了してるわ。被害者は確認されてません』

レナ「……ゼロ、それは幸運ね」

頼子「シュリンク、接続可能距離まで入りました」

レナ「真奈美さん、フェイズ1移行」

真奈美『了解』

雪菜「気をつけてくださいねぇ」

真奈美『わかってるさ。ウルフ、フェイズ1移行!』

14

薔薇咲く庭園のティータイム

櫻井桃華「ようこそ、いらっしゃいまし」

櫻井桃華
櫻井家のお嬢様は年齢よりも大人びた態度で来客を迎えた。

真奈美「ここは……」

桃華「わたくしの家の庭ですわ。さ、こちらに席を用意しておりますわ」

真奈美「お茶会かな?」

桃華「そうですの。自慢のローズヒップティーを用意しておりますわ」

真奈美「ふむ……」

桃華「どうぞ、お座りになって」

真奈美「ご招待にあずかるとしよう」

桃華「嬉しいですわ!紅茶を注ぎますわね」

15

IMCG・オペレーションルーム

レナ「花、開いてるように見えるわね。どう?」

愛結奈「実際、開いてるわ。データを出すわよ」

雪菜「惠さん、お聞きしていいですかぁ?」

惠『どうぞ』

雪菜「匂いはしますか?」

惠『ええ。本当に薔薇の臭いがするわ』

清良「薔薇のIMCというのに相応しいかしらね」

頼子「花開くことを除いて、IMCに動きはありません」

レナ「誰がコアか、わかった?」

惠『ええ。目撃情報が多かったので』

亜季『はい。カルテに記入したものを送るであります』

レナ「……隠し通すのは難しいかしら」

清良「……元からわかっていたことよ」

雪菜「受け取りましたぁ。画面に出しますねぇ」

頼子「櫻井桃華ちゃん、ですね」

レナ「櫻井桃華?」

愛結奈「知ってるの?」

レナ「櫻井さんのお嬢様じゃない。同じ町内会だから知ってるわよ」

頼子「……良い所に住んでますね、司令」

レナ「といっても、知ってるだけなんだけどね。可愛い子だったことだけは覚えてるわ」

愛結奈「ふーむ……」

櫂「どう?」

清良「あら、櫂ちゃん」

レナ「ほら、言った通りでしょう?」

清良「そうですね、今度お酒をご馳走します」

レナ「やった。櫂ちゃん、カルテを渡すから意見があったら言って」

雪菜「櫂さん、プリントアウトしましたぁ」

櫂「ありがと。自分で取るよ」

頼子「ウルフ、パイロット共に異常ありません」

櫂「進展はなし?」

愛結奈「ええ。手こずっているのかしらね」

櫂「信じて待たないと」

レナ「そうね」

雪菜「真奈美さん、お願いしますぅ」

16

薔薇咲く庭園のティータイム

真奈美「名前を聞いていいかい?」

桃華「櫻井桃華ですわ。アナタは?」

真奈美「木場だ、木場真奈美」

桃華「まなみ……漢字をお教えになって」

真奈美「まことの真、なは奈良の奈、みは美しい、だ」

桃華「良いお名前ですわ。アナタを現していると思いますわ」

真奈美「そうか?」

桃華「そうですの。自信を持ってくださいな」

真奈美「素直に受け取るとしよう」

桃華「紅茶はいかが?」

真奈美「上品だ。私には似合わないかもしれん」

桃華「そうやって、卑下しなくてもいいですの」

真奈美「……君はどうなんだ?」

桃華「何の話でしょう?」

真奈美「悩みとかあるのか?」

桃華「ふふっ。可笑しいことを聞きますの」

真奈美「可笑しい?」

桃華「わたくしの悩み事なんて一杯ありますわ。湿気が多いと髪がまとまりませんの。イジワルな同級生もおりますわ。通学路のワンちゃんには懐かれません」

真奈美「それは、大変だ」

桃華「ええ。だから、大丈夫ですの。そんなことより、真奈美さんのことを聞かせ欲しいですわ」

真奈美「……」

桃華「そうですわね、お返しですわ。悩みごとはありますの?」

真奈美「悩みか。あまり考えたことがないな」

桃華「ずるいですわ。わたくしは三つも言いましたの」

真奈美「そうだな……」

桃華「少しだけ考える時間をあげますわ。別のお話でもいいですわ」

真奈美「そうさせて貰うよ」

桃華「好きなものとかありませんの?」

真奈美「……寂しさか、何かだろうか」ボソッ

17

IMCG・オペレーションルーム

頼子「15分が経過」

雪菜「ウルフに異常はありません」

櫂「どうなってるんだろ?」

愛結奈「真奈美さんに慌てた様子はないわね」

頼子「心拍等正常です」

櫂「普通のお嬢様だよね」

レナ「普通かどうかは知らないけど、女の子だもの」

清良「話始めればいつまでも」

櫂「ふーむ」

雪菜「そんなに話したいのでしょうかぁ」

櫂「そこが理由かなぁ」

頼子「それはわかりません」

愛結奈「戻ってくればわかるわよ」

櫂「そうなんだけどさ」

雪菜「でもぉ、どうしてでしょう?」

レナ「どうしたの、雪菜ちゃん?」

雪菜「どうして、夕方なのでしょう?」

櫂「夕方……学校帰り?」

頼子「一度家に帰ってるようです」

櫂「家に帰ってけど、出かけて、何か引き金がある……?」

清良「考えるわ。櫂ちゃん、私にもカルテを見せて」

櫂「はい」

清良「ありがとう」

愛結奈「真奈美さん、一度呼び戻す?」

櫂「呼び戻すのも変な感じなんだよね。相手に変な印象与えそうだし」

レナ「櫂ちゃんの意見を採用しましょう。私達は待機」

18

薔薇咲く庭園のティータイム

桃華「真奈美さんは経験豊富ですのね」

真奈美「ふらふらとしていただけさ」

桃華「羨ましいですわ」

真奈美「羨ましい?」

桃華「わたくしはまだ広い世界を知りませんわ」

真奈美「時間はこれからだ」

桃華「わかってますわ。わたくしの時間はこれからですの」

真奈美「……辛いか?」

桃華「何が、ですの?」

真奈美「学生の身の上だ。ままならぬことも多いだろうさ」

桃華「……」

真奈美「私もそうだった。いつか来るのにその時が待てなかった」

桃華「ふふ、うふふ」

真奈美「どうした?」

桃華「やっぱり、わたくしが必要ですわ」

真奈美「必要……何の話だ?」

桃華「勘違いしてますわ。わたくしに辛いことなんてありませんわ」

真奈美「いや、それは違う」

桃華「真奈美さん、薔薇は見まして?」

真奈美「ああ。君の花は綺麗だな」

桃華「綺麗でなければ、愛してはいけませんの?」

真奈美「いや、そんなことはない」

桃華「わたくしは愛していますわ。わたくしの世界を愛してますわ」

真奈美「……それは本当なのか」

桃華「ええ。それと勘違いをしてますわ」

真奈美「何を、だ?」

桃華「アナタはわたくしを助けようとしてますわ」

真奈美「……?」

桃華「逆ですわ。わたくしがアナタを楽にしてあげます、愛してあげますわ」

真奈美「何をだ?」

桃華「最後までお聞きになって。ロボットのパイロットさん?」

真奈美「まさか、わかってるのか」

桃華「ええ。アナタを呼ぶために花びらを使いましたの」

真奈美「……どうして、知ってる?」

桃華「どうして、ふふ、わかりますの?」

真奈美「いや」

桃華「わたくしとアナタは繋がってますのよ」

真奈美「まさか、私からか」

桃華「わたくしが愛してあげますわ。それと良く見てくださいな」

真奈美「な……庭じゃない」

桃華「わたくしが愛してあげますわ。ここはわたくしの庭ではなくて、アナタの内側ですのよ」

真奈美「接続解除を……」

桃華「大丈夫ですわ。わたくしが愛してあげますわ」

真奈美「……」

桃華「見たくない過去もありますわ。それでも、愛してあげますわ」

真奈美「ちっ……」

桃華「さぁ、お話になって。どんなアナタでもわたくしが愛してあげますわ」

19

IMCG・オペレーションルーム

頼子「シュリンクとパイロットに異常なし」

愛結奈「やっぱり時間がかかってるわね」

雪菜「……あれ?」

愛結奈「気になることでもあるの?」

雪菜「同じ過ぎませんかぁ、このデータ?」

頼子「確認します」

のあ「同じ……?」

レナ「頼子ちゃん、急いで」

櫂「お嬢様、皆に優しいお嬢様か……」

頼子「パターン検知、画面に出します」

レナ「シュリンクからの出力が」

雪菜「操作されてますぅ!本当の状況を出していません!」

愛結奈「原因は!?」

晶葉「そんなの考えるまでもないだろう」

レナ「なにかしら」

晶葉「IMCが原因だ。フェイズ1中だぞ、今は!」

のあ「出力を偽装されたわね……もしかしたら、IMCのコアのデータかもしれないわ」

櫂「もしかして……攻撃されてる?」

レナ「接続強制解除!」

のあ「……失敗」

愛結奈「フェイズ1強制解除が止められてるわ!」

レナ「なら、物理的に落としなさい!」

頼子「機能はついていますが……」

雪菜「そんなことしたら、真奈美さんが危ないですよぉ!」

音葉『出ますか……』

レナ「出れないわ……外から見た状況は何も変わってない」

愛結奈「頼子!手動でなんとかするわよ!」

頼子「了解です。一ノ瀬さん、サポートを」

志希「りょうかーい。大変だぞー」

晶葉「そうか、フェイズ1攻撃型IMCか。ふむ、興味深いが」

櫂「大丈夫かな、真奈美さん……」

雪菜「真奈美さん、応答してください、真奈美さん!」

20

見知らぬ土地

桃華「大変な生活でしたのね」

真奈美「……ああ」

桃華「大丈夫ですのよ。わたくしはどんなアナタでも愛してあげますわ」

真奈美「余計なお世話だ」

桃華「いいえ。この風景は、何もなくて、誰もいない、寂しい景色は、アナタの後悔ですの。見過ごすなんて出来ませんわ」

真奈美「……」

桃華「いつだって、自分が強くなくては居場所がないなんて、寂しくはありませんの?」

真奈美「人に必要とされることは、悪いことじゃない」

桃華「そうやって、自分を武器のように思わなくてもいいのですわ」

真奈美「私は武器じゃない」

桃華「アナタはシュリンクですわ。わたくしを倒そうとする、武器ですわ。自分の一部を武器と思い込んで、操縦するなんて悲しいことですわ」

真奈美「……」

桃華「アナタを定義するのは、シュリンクという機械ですわ。もし、それが無くなったら?」

真奈美「私は私だよ」

桃華「私とは、なんですの?」

真奈美「なんですか?決まってるだろう……」

桃華「大丈夫ですわ。わたくしがアナタを愛してあげますわ」

真奈美「私はヘイキだ。君に心配されなくても」

桃華「おいでなさい。強さも、武器もいりませんわ」

真奈美「それが、私の仕事だ」

桃華「悲しいですわ。アナタはそんなことをしなくていいのに」

真奈美「私を否定するのか?」

桃華「否定なんてしませんわ。わたくしはどんなアナタでも愛してあげますわ」

真奈美「君の言っていることはわからない」

桃華「わかりました、言ってあげますわ」

真奈美「……辞めろ」

桃華「怖がらないで、大丈夫ですの。わたくしはアナタを愛してあげますわ」

真奈美「入ってくるんじゃない!」

桃華「強さも能力も優しさもいりませんわ。枷も武器も使命も捨てて構いませんわ。未来に進む力もいりませんわ。人助けなんてしなくて構いませんわ。期待なんて捨ててしまいましょう。それでも、わたくしはアナタを愛してあげますわ」

真奈美「それは、出来ない!」

桃華「出来なくていいですわ。何も出来なくていいですわ。何も出来なくていいんですの。わたくしには優しさなんていりませんわ。ありのままで。堕落した人間のままでいいんですのよ。どんなアナタでもわたくしが愛してあげますわ」

真奈美「私は、シュリンクだ。君を助けに……」

桃華「悲しいですわ。アナタはそんな自分を認められていないのに。もっと違う、普通の未来があったかもしれないのに。そんなアナタしか誰も求めてくれないのですわ」

真奈美「なんだ……」

桃華「大丈夫ですの。何もかも失っても、わたくしがアナタを愛してあげますわ。だから、その武器なんて捨てて。こちらにいらっしゃいな。そうして」

真奈美「がっ……」

桃華「わたくしの薔薇色の愛に墜ちていればいいんですの」

桃華「……あら?」

桃華「連れていかれてしまったようですの。なんて、酷いことをする人がいるものですわ」

桃華「ここなら、わたくしの愛で幸せにしてあげますのに」

21

IMCG・オペレーションルーム

愛結奈「強制解除!」

志希「ふ~」

頼子「なんとか……」

雪菜「真奈美さん、応答してください!」

のあ「……兵装との接続が切れてるわ」

真奈美『く……兵装は無理か』

雪菜「真奈美さん!」

レナ「銃を抜かないで。今のあなたには無理よ」

晶葉「ふむ……辛うじて動くことは出来るか」

愛結奈「何があったの!?」

真奈美『あれがIMCの中か……自分の世界を見せつけられるのは応えるな……』

櫂「……自分の世界」

雪菜「何を見たんですかぁ……?」

真奈美『IMCと接続した時に見える世界だ。逆にやられた』

晶葉「十分に考えられたことだ。IMCが上を行った。面白いじゃないか!」

レナ「……」

頼子「ウルフ、パフォーマンス低下」

真奈美『私はまだ平気だ』

レナ「許可しないわ。距離を取りなさい」

真奈美『了解……』

音葉『出撃しますか……?』

レナ「警戒レベルは?」

頼子「変わりません。ディアーの出撃許可は出ていません」

櫂「……よし。清良さん、カルテあげる」

清良「櫂ちゃん」

レナ「状況、わかってるわね?」

櫂「うん」

レナ「あなたなら行けるわ。お休みのところ、申し訳ないけど」

櫂「よしっ、行きます!晶葉ちゃん、手伝って!」

晶葉「了解だ!行くぞ、志希、のあ!」

22

避難区域前

恵磨「ん……なんか、ロボットの様子おかしくない?」

千夏「距離を取ったわね。拳銃を抜こうとしてたし、何してるのかしら?」

恵磨「ウルフって、武器内蔵してるよね?拳銃取る意味がわっかんないなー」

千夏「私達的には収穫はあったわね」

恵磨「さて、IMCGはどうでるんだろ?」

千夏「IMCの発生には人間が関わっていること、もう隠せないわよね」

恵磨「ここが、タイミングかな」

千夏「ええ。停止時間の謎を……」

恵磨「おっ!」

千夏「ドルフィンが今頃になってきたわね」

恵磨「あら、休みじゃなかったのかな?」

千夏「そういえば……」

恵磨「なに?」

千夏「いえ、帰ってから確認しましょう。気になることがあるわ」

恵磨「オッケー、野次馬増えてきたし、退散退散」

23

IMCG・オペレーションルーム

レナ「櫂ちゃん、聞こえてる?」

櫂『うん。真奈美さんから、桃華ちゃんの態度も聞いたし、行けるよ。亜季さん、調べものありがと!』

亜季『どういたしまして、であります』

清良「油断は禁物よ」

愛結奈「攻撃はしてこないだろうけど」

頼子「被害者が一人もいないことは偶然ではありませんでした」

雪菜「どうして、愛することに固執するのか、わかりましたか?」

櫂『それは話してみないとわかんない』

真奈美『頼む……』

櫂『わかってる。信じてよ』

頼子「接続距離に入りました」

櫂『全部受け止めてから、行くから。信じて』

レナ「わかったわ」

雪菜「準備はいいですかぁ?」

櫂『スタンバイ!』

レナ「ドルフィン、フェイズ1移行!」

真奈美『……』

24

薔薇咲く庭園のティータイム

桃華「いらっしゃいまし」

櫂「こんにちは」

桃華「薔薇を見にいらっしゃったの?」

櫂「違う」

桃華「強い瞳ですの。わたくしは好きですわ」

櫂「お茶をしてる時間も、ないかな」

桃華「真奈美さんはどうされまして?」

櫂「ここにいるのは、あたしだから。あたしと話をしようよ」

桃華「わかっているなら、遠慮はいりませんわね。ここはわたくしの庭園ではありませんわ」

櫂「……変わった」

桃華「暗く、塩素の臭いがしますわね」

櫂「ここは……水の底だから」

桃華「良い水泳選手でしたのね。だけれど、肉体がそれを許しませんでしたわ」

櫂「わかってる」

桃華「大丈夫ですわ。それを失ったアナタでも、わたくしが愛してあげますわ」

櫂「そういうこと、ね……」

桃華「辛いですわね。自分の世界が暗い水の底に沈んでしまうのは」

櫂「そう、だね」

桃華「辛い思いなんてしなくていいですのよ。何もしなくても、わたくしがアナタを愛してあげますわ」

櫂「何もしない?」

桃華「ええ。克服なんてしなくてもいいんですわ。ありのままのどんなアナタでも良いですわ」

櫂「……なるほどね」

桃華「さぁ、いらっしゃいな。抱き留めてあげますわ」

櫂「ごめん」

桃華「いいんですのよ」

櫂「あたしは、強いよ」

桃華「なっ!明るくなってきましたわ!」

櫂「あたしはIMCだった」

桃華「消えて行きますの……」

櫂「ここはもう乗り越えた場所だから」

桃華「庭園に、戻りましたわ……」

櫂「間違えないで」

桃華「なにを……?」

櫂「君がじゃなくて、あたしが助けに来たんだ!」

25

IMCG・オペレーションルーム

頼子「パターン消えました」

清良「IMCの世界なら、櫂ちゃんは勝てるわ。もちろん」

レナ「成功ね!」

愛結奈「まだ成功してないわ。スタートラインに立っただけよ」

頼子「通常のフェイズ1へ移行」

雪菜「これからですよぉ」

レナ「櫂ちゃん、確信がありそうだったわね」

愛結奈「吹っ切れたかしら?」

清良「さぁ、戻ったら聞いてみましょうか」

レナ「真奈美さん、援護を」

真奈美『……』

雪菜「真奈美さん、大丈夫ですかぁ?」

真奈美『ああ……相変わらず兵装は使えなさそうだが』

レナ「あまり落ち着いてないようね、真奈美さん」

真奈美『不甲斐ない』

レナ「いいわ。櫂ちゃんを信じてあげて」

真奈美『ああ、わかってる』

頼子「IMCの数値が変化しています」

レナ「フェイズ1進展中ね」

愛結奈「頼むわよ、櫂ちゃん」

26

薔薇咲く庭園

櫂「綺麗だね、薔薇」

桃華「え、ええ。自慢ですのよ」

櫂「君の世界のものだからね。でも、現実の庭にはない」

桃華「ありますわ」

櫂「自分のもの?」

桃華「違い、ますわ」

櫂「嫌いな人とかいる?」

桃華「いませんわ。皆、良い人ですわ」

櫂「どんな人でも愛してあげるなんて、言えちゃうもんね」

桃華「何か、文句でもありますの?」

櫂「今日、一度家に帰ったよね」

桃華「ええ。散歩に出かけようと思いまして」

櫂「誰にも気づかれてないよね」

桃華「どうして、それを?」

櫂「ちょっと調べてもらった」

桃華「そうですわ。それがなんですの?」

櫂「それは、自分を守るため」

桃華「アナタの話は、回りくどいですわ」

櫂「全部許すのがきっと一番簡単なんだよ」

桃華「……」

櫂「どんな人でも愛してしまえばいい。どんな悪い人でも」

桃華「そうですわ!それが幸せですわ!誰も傷つかないですわ!」

櫂「全員、自分より下だと定義するのに?」

桃華「どうしてですの!?わたくしは、どんな、誰でも、愛してあげますわ!それの何が悪いんですの!」

櫂「……」

桃華「忙しくて、話も出来なくても構いませんわ!お茶の時間が取れなくても構いませんわ!粗暴な性格でも構いませんわ!意地悪なことを言う同級生でも構いませんわ!傷つけられても許しますわ!わたくしが、みんなを許してあげますわ!」

櫂「桃華ちゃん」

桃華「みんな、みんな、大好きですわ!わたくしは大好きですわ!」

櫂「誰から、お返しをしてもらいたいの?」

桃華「愛は無償のものですわ!見返りなんていりませんわ!」

櫂「……そこまで追い詰めないと、IMCを創れないか」

桃華「わたくしが、この世界を愛で満たしますわ!」

櫂「大人びてても、子供だもんね」

桃華「わたくしは、わたくしは!」

櫂「おいで!」

桃華「おいで?」

櫂「あたしが愛してあげる」

桃華「……」

櫂「自分で言うのに、言われたら受け入れられないんだ」

桃華「わたくしが愛する側ですわ」

櫂「自分が受け入れられないものを他人に求めてもダメだよ」

桃華「……なら、どうしたらいいんですの!?わたくしはどうしたら、幸せになれますの!?」

櫂「きっとさ。そんな簡単じゃない」

桃華「わたくしが許さなかったら、現実なんて醜いだけですわ!」

櫂「そんなことない!見ようよ!」

桃華「わたくしは……」

櫂「あー、もう、こうだ!」ダキッ

桃華「あっ……」

櫂「最初からこうしておけば良かった」

桃華「離してくださいまし!」

櫂「見てあげて。最初から全部否定しないで、見てあげて」

桃華「……優しいですのね」

櫂「桃華ちゃんのやり方は優しくないよ」

桃華「……」

櫂「薔薇じゃないよ。桃華ちゃんは見られるだけの薔薇じゃない」

桃華「どうして、ですの」

櫂「なに?」

桃華「アナタはどうして、向かい合いますの、わたくしに」

櫂「どうして、と言われても困るなぁ。あたしがやりたいから、だよ」

桃華「強いですわ……」

櫂「最初に言ったじゃん。あたしは、負けないよ。もう、負けない」

桃華「わたくしは、正しく、愛せると思いますの?」

櫂「うん。桃華ちゃんは、方法は知ってる」

桃華「桃華を……皆は愛してくださいますの?」

櫂「醜いものだと決めつけないで、向かい合えば、きっと」

桃華「自信が、ありませんの」

櫂「自信は結果がないと着いてこないよ。実践あるのみ」

桃華「……体育会系ですのね」

櫂「それは元から!さぁ、帰るよっ!」

27

IMCG・オペレーションルーム

愛結奈「フェイズ1完了!」

レナ「櫂ちゃん!」

櫂『よしっ!桃華ちゃんの位置は!?』

愛結奈「根本よ!」

雪菜「まだ何枚か花弁が残ってますぅ!」

頼子「IMCに動きあり。攻撃が来ます」

レナ「櫂ちゃん、行きなさい!」

櫂『ドルフィン、いっきまーす!』

雪菜「花弁を発射しましたぁ!」

櫂『おっと!』

晶葉「ふむ。良い反応だ」

のあ「何で察したのかしら……」

櫂『せーのっ!』

頼子「花弁を剥がしました」

愛結奈「あと一枚!」

櫂『おりゃああああ!』

雪菜「コア露出しましたぁ!」

櫂『よしっ!』

愛結奈「コア摘出!」

櫂『惠さん、桃華ちゃんよろしく!』

惠『わかったわ。亜季ちゃん、準備を』

亜季『了解であります!』

頼子「フェイズ1完全完了」

レナ「フェイズ2移行!櫂ちゃん、思いっきりやりなさい!」

櫂『りょーかい!』

28

IMCG・オペレーションルーム

頼子「IMC、完全に停止しました」

レナ「フェイズ2完了。櫂ちゃん、お疲れ様」

櫂『お疲れ様でした!』

レナ「櫻井桃華さんの様子は?」

惠『無事よ。櫂ちゃんと話したいと言ってるけど』

櫂『落ち着いてからね』

惠『わかったわ。伝えておくわね』

雪菜「真奈美さんもお疲れ様でしたぁ」

真奈美『……』

雪菜「真奈美さん?」

晶葉「真奈美、聞こえてるか?」

のあ「……」

頼子「愛結奈さん、これは……」

愛結奈「あ、IMC反応!嘘でしょ!」

レナ「IMC反応!どこから!?」

音葉『……悲しい音色がします』

雪菜「真奈美さん、応答してくださいぃ、真奈美さん!」

晶葉「櫂、後ろだ!」

櫂『なに、が……』

愛結奈「ウルフが発砲!内装兵装稼働!」

頼子「ドルフィンに被弾はしませんでした。ですが……」

櫂『危なっ……えっ!』

のあ「兵装、緊急ロックを」

愛結奈「制御通信が受け取られてないわ!」

頼子「司令、IMCが出現しました……」

レナ「わかってるわ……櫂ちゃん」

櫂『嘘でしょ……』

愛結奈「IMC出現、場所はドルフィンが目撃してる通り!」

レナ「総員、気を引き締めなおしなさい!」

雪菜「真奈美さん、答えて、お願いです!真奈美さぁん!」

続く

次回
木場真奈美「IMCG・ワタシハヘイキ」

製作
テレビ〇日

オマケ

CuP「あの」

PaP「どうした?」

CuP「アイドルからなんて呼ばれてます?」

PaP「プロデューサーとかPちゃんとか」

CoP「後は、さん付けですかねぇ」

PaP「そっちはどうなんだよ」

CuP「Cuちゃま、ですよ?」

CoP「可愛いですね」

PaP「まったくだ。背伸びしてて可愛いじゃないか」

CuP「そうなんですけどね、気遣われてるのもわかるんですが」

PaP「なんだ、どう呼ばれたいんだ?」

CoP「まさか、ダーリン?」

PaP「ヒモ狙いか」

CuP「そんなわけないでしょう!」

PaP「僕は呼ばれたい。当然だ」

CoP「先輩……冗談ですから、しっかりしてください」

PaP「あ、メアリーが呼んでくれてたわ。可愛いやつめ、今度クレープでもおごってやろう」

おしまい

あとがき

ちゃまは年相応なところがあるのが本当に可愛い。

次回は、
木場真奈美「IMCG・ワタシハヘイキ」
です。続きます。

それでは。

木場さああああああん!!
来週は海外勢くるの?

>>47
海外勢は真奈美回の次で。
キャラとタイトルは決めてます。

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