プラシド「ドライブシステムは世界を破滅へと導く……」 進ノ介「何……?」 (28)


遊戯王5D's×仮面ライダードライブのSSです

すぐ終わります



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―――特状課

進ノ介「不審な連続事故?」

霧子「はい。最近都内で車、バイクでの事故が多発しているんです」

進ノ介「そうか……。で、何が不審なんだ?」

霧子「共通点があるんです。まず事故はいずれも深夜帯、人目が少ない時に起こっています」

進ノ介「でもまぁ、深夜に事故が起こるのはけっこう普通じゃないか?」

霧子「それはそうかもしれませんが、まだあるんです。次に、全て車両同士の事故ではないということ」

進ノ介「つまり、壁にぶつかったり?」

霧子「はい。今までの事故は全て道路の壁への激突なんです」

進ノ介「ふーん……」


霧子「続けますね。更に監視カメラの映像によると、毎回不審なバイクがそばを走っているんです」

進ノ介「おいおいそれを先に言えよ!それだと事故じゃなくて事件じゃんか」

霧子「すみません。……でもこのバイクが、色々と変で」

進ノ介「どういう意味だ?」

霧子「これを見てください。三件目と四件目の事故の資料です」スッ

進ノ介「どれどれ……」ペラ

霧子「時刻と場所を見てみてください」

進ノ介「時刻と場所?三件目は首都高速4号新宿線……時刻は午前3時14分」

進ノ介「四件目は……同日なのか。首都高速6号向島線……午前3時17分」


霧子「そしてどちらの映像にも同じものと思われるバイクが映っているんです」

進ノ介「三件目の方は高井戸付近……四件目は向島か。3分で行けるわけないな。まるで瞬間移動だ」

霧子「はい。ですからこれは違うバイクだろうとは思われるんですが……」

進ノ介「……。そのバイクは直接何かをしているのか?」

霧子「いいえ。映像を見る限りだと並走しているだけなんです。車が勝手に運転を誤っているように見えます」

進ノ介「だけど道も空いてるのに並走ってのが怪しいな。運転手、目撃者の証言は?」

霧子「目撃者の方は不審な点はなかったと言っています。運転手の方は『何が起きたか分からない』と口を揃えています」

進ノ介「どんよりは?」

霧子「報告はないです。重加速粒子も検出されていません」


進ノ介「うーん。『何が起きたか分からない』、か……」

霧子「どんよりは出ていませんが、ロイミュードの仕業である可能性も否定はできません」

進ノ介「そうだな。過去にもそういうケースは何件かあったし」

霧子「泊さん……」

進ノ介「ああ。今夜あたりパトロールしてくる。課長に許可もらってくるよ」

霧子「助かります。剛にも連絡入れておきますね。交代制で出来たらいいんですけど」

進ノ介「ああ。しかし敵は神出鬼没だからな……そう簡単に見つかるとは思えないけど」

霧子「何にせよ、お願いしますね」

進ノ介「ああ」

 ・
 ・
 ・


―――深夜・AM3:30、首都高速5号池袋線

進ノ介「ふぁあ……」

ベルトさん『おいおい進ノ介。ミイラ取りがミイラになっては困るぞ』

進ノ介「ああ、そうだな……。でももしそうなった時は運転頼むぜ……」

ベルトさん『全く、呆れたものだな』

進ノ介「しっかし、毎晩こんな時間にバイクをとばしてるって、いい趣味してるぜ」

ベルトさん『そうやって軽口を叩けている内はまだ大丈夫そうだな』

進ノ介「はは……ん?」

 進ノ介は何かに気付いて、バックミラーを見た。
 いつの間にかトライドロンの背後に白い光が現れ、それが渦を巻いていたのだ。

進ノ介「何だあれ……」

ベルトさん『!気を付けろ、進ノ介!』


 距離を離そうとしてアクセルを踏む。するとその渦の中から何かが飛び出してきた。
 “それ”は深夜の高速道に轟音を響かせ、そして猛スピードでトライドロンに迫ってくる。

進ノ介「あれが……噂のバイクか?」

ベルトさん『らしいな』

 “それ”は、レースマシンのような鋭利な形状をした、灰色の大型バイクだった。
 しかしタイヤは前方に二輪が縦に並び、後方に一輪がつき、合計で三輪。
 車体後方に備え付けられているマフラーには緑と紫の淡い光が灯っている。

 そしてそれに騎乗しているのは、人間の男だった。
 見慣れない独特な雰囲気を持った服を着込んでいる。

ベルトさん『!来るぞ!』

進ノ介「!」

 突然、バイクがスピードを上げた。トライドロンの横につき、みるみる内に運転席の隣まで近づいてくる。
 暗い道路の中、ちらちらと横を見る。紫色のバイザー越しに男の顔が見える。
 一瞬、目が合う。その頬が緩んだように見えた。


男「はぁっ!」

進ノ介「!」

 その瞬間、男はバイクの脇腹をトライドロンに衝突させた。
 重量を考えればバイクが弾かれるに決まっている。だが――

進ノ介「ぐうっ!?」

 考えられないことに、トライドロンが一方的に吹っ飛ばされたのだ。
 ハンドルを回し、ふらついた車体を元に戻す。しかしその間も隣のバイクは体当たりを繰り返してくる。

進ノ介「どういうつもりだ、こいつっ!」

ベルトさん『マッシブモンスター!タイヤフエール!!』

 マッシブモンスターのシフトカーがタイヤになり、トライドロンに装備される。
 その能力によってタイヤから怪物の舌が伸び、バイクに向かって振り下ろされた。


男「ふんっ!」

 体当たりをやめてその攻撃を躱し、男は更にスピードを上げてトライドロンの前に出る。

男「シフトカー……ということは、やはり貴様が……」

進ノ介「!」

 バイクが突然横向きになり、ドリフトしたタイヤが火花を吹く。
 それを見て、進ノ介は慌ててブレーキを踏んだ。同時にバイクも止まり、辺りには夜相応の静寂が戻った。

進ノ介「ベルトさん、行くぜ」

ベルトさん『ああ』

 ドライブドライバーを腰に巻き、車を降りる。
 見れば、男もまたバイクを降りてヘルメットを脱いでいるところだった。


 その顔が照明灯の光に照らし出される。
 逆立った灰色の髪。額には緑色の宝石のようなものが埋められている。

 切れ長の左眼の瞳は真紅、右眼は眼帯のようなものに覆われて見えない。
 腰にはベルトが巻かれ、バックル部分は上下に割れた卵のような妙な形になっていた。

進ノ介「何者だ!」

男「トライドロン、シフトカー……そしてそのベルト……貴様が泊進ノ介だな」

進ノ介「だったらどうする!」

男「フン……俺の名はプラシド。よく聞け、貴様が得意気に使っているドライブシステム、それは世界を破滅へと導くものだ!」

進ノ介「は……?」
ベルトさん『何だと?』


プラシド「俺は、その未来を変えるためにこの時代へ来た……」

進ノ介「この時代?」

プラシド「行くぞ」

 言って、プラシドはどこからともなく一枚のカードを取り出した。

プラシド「――変身」

進ノ介「……!」

 プラシドがカードをバックルに差し込む。
 するとその周囲に機械のパーツが浮き上がり、それが装甲として彼の身体を覆っていく。

『仮面ライダー“ワイゼル”』

 進ノ介とクリムが息を呑む前で、彼の変身は完了した。


 照明灯の光を照り返す美しい白の体躯。
 右手首には手甲が、左手首には鎌のような形の剣が備わっている。

 胸の中心には「∞」の記号が埋め込まれ、その内部は黒く、そしてその中に緑色の球体が浮かんでいる。
 白の装甲に覆われた頭部も前面は黒で、そこに赤い光の文様が刻まれて機械的な顔が描かれている。

 その名は――仮面ライダーワイゼル。
 声も出ない進ノ介に向かって、一歩、足を踏み出した。

ベルトさん『進ノ介!』

進ノ介「!あ……ああ!」


ベルトさん『奴が何者かは分からない……だが』

進ノ介「ああ。ビンビンに感じるぜ。尋常じゃない殺気ってやつを」

ベルトさん『彼から素性を聞き出すまでやられるわけにはいかない。行くぞ!スタートユアエンジン!』

 シフトブレスに「シフトスピード」を装填し、掛け声を上げる。

進ノ介「――変身!」

ベルトさん『ドライブ!タイプ“スピード”!』

 進ノ介の姿も仮面ライダーのものに変身する。
 黒のスーツに赤い装甲を纏ったその戦士の名は、仮面ライダードライブ“タイプスピード”!


ワイゼル「ハアァッ!」

 ワイゼルが迫ってくる。左腕の剣が振り上げられ、照明灯の光を浴びてまばゆく輝く。
 その姿を認めたドライブの目もまた眩しい白に点灯した。

ドライブ「来い!ハンドル剣!」

 トライドロンの車体に収納されていたハンドル剣が飛来する。
 それを掴むと同時にワイゼルの斬撃を受け止める。

ドライブ「テヤッ!」

 すかさず空いた腹に蹴りを入れる。衝撃に相手は後ずさったが、手ごたえはない。

ドライブ「どうやら随分いい鎧みたいだな。いくらで買える?」

ワイゼル「戯言を!」

 煽りに乗せられたワイゼルは力強い斬撃を繰り出し続ける。閑散とした深夜の道に剣戟の音が響いた。


ワイゼル「ハアッ!」

ドライブ「――フッ!」

 ハンドル剣の切っ先に手を添えて、振り下ろされた剣を受け太刀する。
 力任せにはねのけ、体勢が崩れた隙を見計らって空いた胴を切り払う。

『ターン!』

ドライブ「デリャアッ!」

ワイゼル「グゥッ!」

 後ずさり、ワイゼルは膝を突く。

ドライブ「話し合いで解決できるなら考えてやるぜ。お前は何者なんだ?」

ワイゼル「……!」

 またもやどこからともなく、ワイゼルは一枚のカードを取り出す。


ドライブ「おい!妙な真似はやめろ!」

ワイゼル「黙れ!今ここで、貴様を始末する!」

『ワイズ“A3”』

 カードをバックルに差し込むと、ワイゼルの左腕の装甲が消滅した。
 しかしその代わりに新しい装甲が出現した。変形を経て装着され、より攻撃的なフォルムに変貌する。

ドライブ「何だ……?タイヤコウカンみたいなもんか?」

ワイゼル「ハァッ!」

ドライブ「ったく!こうなりゃ力づくで黙らせるしか――」

 再び敵の斬撃を受け太刀する。


ドライブ「グッ……?」

 しかしその一撃は、先程とは比べ物にならない重さを持っていた。
 思わず身体がよろける。ワイゼルは再び剣を振り上げていた。

ドライブ「クッ」

 咄嗟に横に躱す。続けて放たれた切払いを受け太刀する。

ワイゼル「ウオォッ!」

ドライブ「!」

 しかし受け流すことはできず、今度はドライブが吹っ飛ばされた。
 十メートルも転がり続け、じんじんと痛む身体を懸命に持ち上げる。

ベルトさん『進ノ介!この相手はまずい、出し惜しみはなしだ!』

ドライブ「分かったぜ、ベルトさん」

 頷いたドライブは「シフトトライドロン」を取り出す。


『ファイア!オールエンジン!』

ベルトさん『ドライブ!タイプ“トライドロン”!』

 停められていたトライドロンが細かく分裂し、ドライブの身体を覆っていく。
 その意匠を全身に纏ったドライブの究極の姿――その名は、“タイプトライドロン”!

ドライブ「さあ行くぞ!」

『カモーン!フレア・スパイク・シャドー!』

 マックスフレア、ファンキースパイク、ミッドナイトシャドーのタイヤが宙を舞い、ドライブの左腕に順に装着される。
 それを見たワイゼルの眼光は鋭く煌めいた。

『タイヤカキマゼール!“アタック123”!』

 タイプトライドロンの力によって三つのタイヤは合成され、新たな一つのタイヤへと生まれ変わった。
 それがドライブの“トップギアカウル”に装着されようとした、その時――


ワイゼル「ハァッ!」

ドライブ「!?」

 ワイゼルの胸部、その∞の文字が開いた。
 内部の暗黒に浮かんでいた緑色の球体から放たれた光が、ロープのような形となって虚空を裂く。
 今にも装着されようとしていた「アタック123」のタイヤを捕縛し、ドライブの元から奪い去った。

ドライブ「何を!?」

ワイゼル「人類の愚かな進化の象徴よ!我が力の糧となるがいい!」

 タイヤはロープに絡め取られ、元の形をなくし、不定形な光の塊となってワイゼルの胸に収められた。
 ワイゼルが左腕を掲げ上げる。備え付けられた刃に、三色の光のオーラが纏い、激しく燃え上がった。

ドライブ「何……!?」

ベルトさん『信じられん!タイヤを吸収したというのか!』


ワイゼル「――ハアアッ!!」

ドライブ「!」

 ワイゼルは、掲げ上げた刃を道路に思い切り叩きつけた。
 アスファルトは難なく砕け散り、そのエネルギーの波は鮫の背鰭のように、道路を破壊しながら突き進んでくる。

ドライブ「グアアアーーーッ!!!」

 躱すこともできず直撃を受けたドライブは吹き飛ばされ、変身も解除された。
 うつ伏せになりながら顔を上げる。逆光の中、高笑いを上げながらワイゼルが歩いて来る。

進ノ介「くっ……!」

 剛とチェイスには交代制でと言ったばかりだ。加勢は期待できない。
 ――これは、本格的にまずい。何とか打開策を見つけようと頭を巡らしながら、進ノ介はそう考える。

ワイゼル「これで終わりだっ!」

ベルトさん『進ノ介っ!』

 ワイゼルが剣を振り上げる。打開策も、逆転の方法も見つからない。
 顔を背けて手を翳すことしかできない。今にも剣が振り下ろされようとした、その時――


???「――シュートブレード!!」

ワイゼル「何ッ!?」

 遠くから聞こえた低い男の声と、近くから聞こえた爆発音。
 煙が立ち込める中、それを切り裂くように、バイクの駆動音が夜空に響いた。

???「ハァッ!」

ワイゼル「グゥッ!」

進ノ介「……!」

 進ノ介の目の前に現れたのは、プラシドのものよりも更に鋭利な、深い青のバイクだった。
 それに跨っているのは、黄緑色の装甲に身を纏った戦士――

ワイゼル「貴様、何者だ!」

???「消え行く者に名乗る名前は無い」

ワイゼル「……フッ。俺好みの答えだ」

進ノ介(仮面ライダーが、また一人……?)


おわり

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