八幡「雪ノ下が相撲に興味をもったらしい」 (37)

奉仕部の部室で

雪乃と八幡は静かに本を読んでいた。
結衣はスマホを見ていたが、途中でやめて雪乃に話しかける。

結衣「ねぇ、ゆきのん、ちょっと言いにくいんだけど、ゆきのん少し顔が丸くなったかなぁって」

雪乃「太ったって言いたいのね。だって太ろうと努力しているんだもの。うまくいってるんだわ」

結衣「えーなんで、なんでー?」

八幡「雪ノ下は、わざわざ太る必要なんかないだろ」

雪乃「最近、相撲に興味があるのよ」

結衣「えっ」

八幡「相撲?」


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雪乃「そう、土俵で行うものね」

八幡「なんでまた、そんなものに」

雪乃「あなたには理解できないでしょうね」

八幡「相撲の稽古のために太ったというわけか」

雪乃「まぁ、そうね。でも弟子入りするつもりはないけど」

八幡「雪ノ下は、相撲とかは無理じゃないのか」

雪乃「あなたは、人がやる前からできない理由を見つけて挑戦をあきらめさせようとするのね。
別に女相撲をやるわけではないわ」

八幡(俺はただ客観的な意見を述べただけなのだが)


結衣「ゆきのん、どうしてそんなに……」

雪乃「ちょっと前に、姉といろいろあってね……」

結衣「あ、お姉さんと、いろいろ事情があるんだ。
でも、ゆきのん、あんまり無理しないでね」
(事情がよくわからないけど、今はこれ以上は聞かないほうがよさそう)

雪乃「ありがとう。今はできる範囲で『四股ふみ』と『てっぽう』をしているわ」

八幡「『てっぽう』って柱に向かって手を突くやつか」

雪乃「そうね。家にはいい柱がないから、公園で手ごろな柱を見つけようと思って」

結衣「なんかさ、ゆきのん気合いが入ってる感じだね」


八幡と結衣の二人で帰り道に

結衣「ゆきのん、どうしたんだろうね」

八幡「俺にはよくわからんが、陽乃さんとケンカでもしたんじゃないか」

結衣「それだけで相撲になるのかな、なんかいつもとは違う感じで心配だなぁ」

八幡「そうだな」

「相撲(すもう)」と書くとわかりやすかったかもね。
続きは明日にでも書きます。

比企谷八幡がショッピングモールへ出かけた。

陽乃「あら比企谷君じゃない、ひゃっはろー」

八幡「あぁ雪ノ下さん、お買い物ですか」
(また出会ってしまった)

陽乃「そうなの。ねぇ比企谷君、最近さ、雪乃ちゃん太ったと思わない?」

八幡「はぁ、そういわれれば、そうかなぁ」

陽乃「なーに言っているのよ、もう気づいているくせにー。まぁ、それでさ、
雪乃ちゃんね、ふだんは結構きついこと言ったりしてるけど、繊細なところがあって
最近ちょっと心配なのよね。私がこのまえ厳しいこと言ってしまって……」

八幡「そうなんですか」

陽乃「急に太ってきたんで、過食気味なのかなとも思っているのよ……」

八幡「それは少し心配ですね」
(過食の可能性は考えていなかった)

陽乃「比企谷君には、いろいろお世話になっているからね。でも雪乃ちゃんのこと
ちょっと気にかけてくれるとうれしいな。こんな話するつもりなかったんだけど、
ごめんね。また、こんどゆっくり話そうねー」

八幡「はぁ、いや」
(ゆっくりお話するのはご遠慮したいところですが)

奉仕部の部室
雪乃と比企谷八幡の二人で


雪乃「比企谷君、今日このあと時間空いてるかしら」

八幡(びくっとして)「あぁ、えーと、大丈夫だ」

雪乃「ちょっと、付き合ってもらいたい所があって……」

八幡「あ、いいけど」
(陽乃さんの話を聞いたので、断らないことにした)

雪乃「よかったわ。一人で稽古するの恥ずかしくて」

八幡「相撲の稽古をやるのか」

雪乃「そのつもり」


帰りに公園に行く。

八幡「もしかして『てっぽう』をやるのか?」

雪乃「そうなんだけど、使えそうな鉄柱のまわりは人が多いのよ」

八幡「で、おれも一緒にというわけか」

雪乃「あなたは、いやかしら」

八幡「いや、かまわんけど、あまり時間はかからないんだろ」

雪乃「そうね」

雪乃「あら、今日は子供たちが相撲をやっているわ。私も一緒に相手してもらおうかしら」

八幡「子供とやるのかよ、あの子たち小学生じゃないのか?」

雪乃「大丈夫よ、手加減するから。それに私は体が軽いから小学生でちょうどいいかもしれないわ」


子供たちのところに雪乃が歩いて行ってしまう。

雪乃「ねぇ、あなたたち、私も相撲をしてみたいわ」

雪乃「あなたなんかどうかしら」

子供A「えー、でもー」

子供B「おねえさんの希望だろ、おまえ相手してやれよ、大丈夫だよ」

八幡「おい、ほんとにやるのかよ」

雪乃「大丈夫よ」

子供A「じゃあ、僕やります。制服が汚れそうだけど……」

雪乃「制服のことは気にしなくていいわ」


はっけよい、のこった、のこった

雪乃「この子けっこう力があるわ」


すぐに雪乃は負けて転んでしまう。

子供A「ごめんなさい」

雪乃「いったーい」

雪乃「謝らなくてもいいわ、私が無理して相手してもらったのだから」

八幡「あっさり終わったな、大丈夫か、制服に砂がついてるぞ」
とスカートのあたりの砂ぼこりを払った。

雪乃「あなた、どさくさに私のお尻を触ったわね」

八幡「いっや、触ってないだろ」

雪乃「冗談よ、なに焦ってるのよ、ふふっ」

八幡「そりゃ、あせるだろ」
(こんな所で痴漢扱いされたくはない)


雪乃「はぁ、まだまだ稽古が足りないようね、小学生くらいの子に負けるなんて」

八幡「雪ノ下、そんなに相撲にこだわる理由はなんなんだ」

雪乃「……」

八幡「いや、言いたくなければ別に無理しなくて……」

雪乃「このまえ姉と言い争いになった時、張り倒したいって思ったのよ。
姉に勝てるものなんて相撲くらいしか思いつかなかった」

八幡「それで相撲の稽古なのか……」

雪乃「そう……」

雪乃「比企谷君、わるいけど、あしたの放課後もう一度付き合ってもらえないかしら」

八幡「明日か、あぁ、別にいいよ」

雪乃「ありがとう。今日はごめんなさいね、つきあってもらって」

八幡「いいや、気にするな。じゃ帰ろうか」

雪乃「そうね」

続きは明日にでも書きます。

次の日の放課後に学校の屋上で

雪乃「今日の稽古は、あなたに受け止め役をしてもらおうと思って」

八幡「なんだ、まだ稽古をするのか。こういうのは材木座のほうが向いてそうだが」

雪乃「材木座君のことはよく知らないし、こんなこと頼めないわ」

八幡「それは、そうかもしれないな」

雪乃「私が向かっていくから受け止めてくれるかしら」

八幡「あぁ、わかった」

雪乃が八幡に向かって突進する

八幡「おっと、思ったより重いな」

雪乃の上履きが砂で滑って後ずさりする。

雪乃「ここは砂があって滑るわね、もう一回お願い」

八幡「おぉ」

雪乃が八幡と抱き合う感じになって、
二人とも無言のまま「ふー」と溜息だけついて離れた。


雪乃「もう一回」

八幡「あぁ」
(あまり乗り気でない返事になった)

また二人が抱き合う状態になった。
今度は雪乃は抱きついたまま、しばらくじっとしていた。

雪乃(私は何をしているのかしら、抱き合っていていい気分になってきたわ。
比企谷君の胸はなんだか落ち着く)

八幡「どうした、力が入ってないぞ」

雪乃「力の入れ具合を確かめているの。ちょっと背中のところを押さえて
くれないかしら」

八幡「こうか?」

雪乃「そう、そのあたり」
(なんかいい感じだわ)

八幡(これじゃ、ただ男女が抱き合っているみたいに見えないか)

雪乃「もういいわ、ありがとう」

八幡「おう」
(もう少しで興奮してしまうところだった)

雪乃が屋上の手すりに近づいて外を眺めている。
八幡も景色を眺めていたが、そばにいる雪乃の横顔が気になって見た。
雪乃の長い髪が風で舞い上がる。

雪乃「ここは風が強いわね、もう帰ろうかしら」

八幡「もういいのか」

雪乃「えぇ、ありがとう」

雪乃「相撲の稽古も、もうやめるかもしれない。なんだか、どうでもよくなってきて……」

八幡「そうか……」
(それがいいとは思ったが、こうやって相手をするのも終わると思うと寂しい気もした)


1か月後の奉仕部の部室で

結衣「やっはろー」

八幡「おう」

結衣「あれ、ゆきのんは?」

八幡「今日はまだ来てないな」

雪乃「こんにちは、ちょっと遅れてしまったわ」

結衣「ゆきのん、やっはろー。なんかさ、ゆきのん、またスッキリした感じになったかな」

雪乃「そう? もう相撲の稽古はやってないし、興味もなくなったわ」

結衣「そっかー」
(いつものゆきのんに戻ったみたいで良かった)

八幡「あぁ、本当にやめたのか」
(雪ノ下はそれがいいだろうな)


八幡と雪乃で以前の公園に行く。

子供たちが、また相撲をやっていた。
一人が気づいて「この前のおねえさんだ」と言った。
「また相撲をやるの?」

雪乃「もうしないわ、負けると痛いんだもの」

子供たちと少し離れたら、誰かが「あのお姉さんいい匂いがしたよ」と言うのが聞こえた。

八幡「雪ノ下、なんかいい匂いがするとか言ってたぞ」
と言いながら近づいた。

雪乃「やめなさい、あなたがそんなことをすると変質者にしか見えないわ、
先にいくわよ」

八幡(雪ノ下の長い髪を見たら、制服が少し細くなっていた。
ハムみたいだったのが懐かしく思えたが、これでいいんだろう)



(おわり)

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