幼馴染「キミが気にする事じゃないよ」男「気にするよ!」(48)

幼「何故だい?」

男「俺たち、幼馴染だろ?」

幼「幼少期から仲良く過ごしてきたからね」

幼「まぁ、そう言っても差し支えないだろうね」

幼「だからってキミが気にするような事じゃあないんだよ」

男「だけど!」

幼「立候補してきたとは言え、副会長を指名したのは私だし」

幼「半年間、彼がしていた事に気付かなかったのも私」

幼「つまり生徒会長である、私に全責任がある」

男「だからってあのアホどもがしたことの責任を…」

男「何で全部、幼が取る事になるんだよ!」

幼「全部ではないよ、男」

幼「私は私の本分を果たすだけだよ」

男「本分って…」

幼「学校というコミュニティ内でのリーダーとして選ばれた私には」

幼「責任という物があるんだよ、男」

男「…」

幼「そんな目をしないでくれ、男」

幼「私まで悲しくなってしまうじゃないか」

男「…」

3日前
幼「…案外遅くなってしまったな」

幼「最近は日が落ちるのも早い」

幼「早く職員室に鍵を戻して、帰ろう」

幼「…?三階のあの教室…カーテンの隙間から光が漏れているな」

幼「完全下校時刻は過ぎている…消灯し忘れか?」

幼「いや、そもそも、あの角の教室は使われていないはずだな」

幼「…見てくるか」



幼「…中から話し声が聞こえるな」

副会長「あ、それロン!メンタンピンドラ3!」

不良a「ぎゃー!やられたー!」

不良b「オーラスでマクられるとはな…」

副会長「ハハハ、これで俺がトップか?」

不良c「お前たまにすげーな」

副会長「頭の出来が違うよ、ハハハ」

不良a「マージャンって、頭の良さ関係あるか?」

副会長「フフ。ある程度は運だけど、頭の良さは関係あるさ」

副会長「さぁ、負けた分払えよ?」

不良a「わかってるよ、おらよ」

不良b「おう、今日はそろそろ帰るか?」

副会長「もう半荘やろうぜ?」

不良c「タバコ切れた…集中できねー」

副会長「メンソールで良ければ一本やるよ」

不良c「お、ありがとよ」

不良a「じゃ、あと半荘いくとすっか!」



幼「…君たち。下校時間は過ぎているが?」

副会長「!!!!」

不良達「あぁん?」

幼「副会長…くわえ煙草で賭けマージャンか」

幼「窓も開けず換気もせず」

幼「ゴミ溜めの匂いだな、これは」

副会長「か、会長」

不良a「あ?こいつがいつも話してるバカな生徒会長様か?」

不良b「何だよ、結構可愛いじゃん」

不良c「あれ?ここ、絶対バレないんじゃなかったか?」

幼「こんな時間に、使われていない教室の電気が付いていたんだ」

幼「不審に思うのは当然だろう?」

副会長「な、なぜこんな時間まで残って居たんですか」

幼「図書館の司書先生に頼まれてね」

幼「さっきまで図書室で手伝いをしていたんだ」

副会長「…」

幼「申し開きがあるなら聞くが?」

副会長「…黙ってろって言っても、聞かないよな。アンタなら」

幼「言葉使いがよろしくないな。普段の口調は嘘だったという訳か」

副会長「あぁ、そうだよ!」

副会長「俺は大学へ行く時に有利になると思って、生徒会に入ったんだ!」

副会長「幸い、仕事は、有能なアンタと、アンタの子分が片付けてくれるからな!」

幼「男は私の子分じゃない」

副会長「知るか!だいたい俺は生徒会長になるはずだったのに」

副会長「アンタが…アンタなんかが選ばれたから…」

幼「…」

副会長「知ってると思うが、俺の親は市長なんだぜ?」

副会長「エリートなんだ!」

副会長「その俺より上の立場のお前が憎かった!」

不良a「なぁ、その話し長いのか?」

副会長「黙れよ!クソが!」

不良a「ぁあ?誰がクソだと?」

幼「…いい加減にしないか、見苦しい」

幼「そこの3人も含めて、生活指導に報告させてもらう」

幼「…では、失礼する。この臭いにもう耐えられない」

副会長「…頭が良いと思っていたけど、買いかぶりだったみたいだな」

幼「…何だい、副会長。言いたい事があるなら言うと良い」

副会長「そのまま帰す訳ないだろって言いたいんだよ、バカか?」

不良達「おう、やっちまおうぜ!」

幼「古今東西、悪の栄えた試しは無し、だよ」

副会長「このクソが!」

幼「…どうやら殴られないと、解らないようだね」



幼「さて」

幼「すぐに職員室へ行き、先生を呼んでこよう」

幼「大した怪我もないはずだが、救急車でも呼ぼうか?」

不良達「」

副会長「…覚えていろよ…親父に言いつけてやるからなっ」

幼「お好きにどうぞ」

副会長「学校に居られなくしてやる!」

幼「それだけ大声が出せるなら、救急車は必要ないようだね」




幼「先生達も事情は分かっているさ」

幼「だからこそ、退学ではなく、私は自宅謹慎3日で済んだんだよ」

幼「副会長は自主退学、不良達は退学になってしまったがね」

男「でも、幼は生徒会長を…」

幼「まぁ、それは仕方のない事だよ」

幼「暴力事件を起こした人間が、生徒の見本となれる訳がない」

男「悔しくないのかよ?」

幼「それが不思議と悔しさは無いよ」

幼「…いや、嘘だな」

男「やっぱり悔しいんだな?」

幼「違う。私がついた嘘とは、悔しいと思っていないと言う事ではないよ」

男「ん?」

幼「私は全然悔しくない理由を、明確に分かっているんだ」

幼「不思議でも何でもないんだよ」

男「相変わらずの遠回しな物言いだな、幼」

幼「歯痒いかい?」

男「付き合い長いんだ。別になんともないよ」

幼「フフ。そうかい」

男「で?もちろん理由は教えてくれるんだろうな?」

幼「もちろんさ」

幼「あぁ、これは良い機会かもしれないね」

幼「私の思いの丈を伝えてしまおうか」

男「思いの丈?」

幼「私はね、男」

幼「生徒会長として、全校生徒の為を思い、行動していた訳ではないんだよ」

幼「ただ一つの事だけを想い、行動していたんだ」

男「何の事だ?」

幼「ふふ。ちょっと昔ね」

幼「ある事をしたら、ある人に褒められた」

幼「私はまたそれが欲しかっただけなんだ」

男「ん?」

幼「その人に褒められただけで、私は何でも出来た」

幼「体に羽根が生えたら、きっとこんな感覚なんだろうとさえ思えた」

幼「どんなに大変な事も、その人の一言で」

幼「全部、軽々と乗り越えられた」

幼「単純だろう?」

幼「だから別に良いんだ」

幼「庶務の後輩男君は、しっかり者だから」

幼「立派に次の生徒会長を務めてくれるよ」

…過去…
保育園の先生「はーい、それじゃあみんなー」

保育園の先生「仲の良い人と4人で輪になってくださーい」

園児「はーい」

幼「男くん、いっしょにわになろ?」

男「いいよっ」

幼「友くんと、幼友ちゃんもいっしょにやろう?」

友「わーい」

幼友「はーい」

男「幼ちゃんはえらいね!」

幼「えー?なにがー?」

男「みんなでなんかするとき、いつでもいちばんにやるよね!」

男「えらい!」

幼「えへへ。そうかな?」

男「えらいよ、幼ちゃん」
ナデナデ

幼「男くん、はずかしいよー」

男「えらい人はあたまナデナデしてもらえるんだよ!」

幼「えへへ。ありがとう、男くん」




男「幼ちゃん。委員長頑張ってね!」

幼「うん。頑張るよ」

男「もう4年連続で委員長だね!凄いよ幼ちゃん」

幼「えへへ。そうかな」

男「うん。偉い!」
ナデナデ

幼「お、男くん…恥ずかしいよ」

男「偉い事した人は頭を撫でて貰えるんだよ!」
ナデナデ

幼「あ、ありがとう。男くん」




男「幼、空手大会優勝おめでとう!」

幼「ありがとう、男君」

男「小学生の頃から頑張ってきたもんな」

幼「フフ。そうだね」

男「委員長やら、児童会長やらをやりつつ」

男「空手、頑張ってたもんな」

幼「体を動かすのは楽しいし」

幼「精神の鍛錬にもなるからね」

幼「それに、男君が色々手伝ってくれたから、ここまで頑張れたんだよ」

幼「男君、いつもありがとう」

男「いやいや。頑張ったのは幼だろ?」

男「俺はほんの少し手伝っただけだよ」

男「偉いのは幼の方!偉いぞっ幼」
ナデナデ

幼「…ありがとう、男君」




幼「それじゃあ、生徒会に入るつもりはないんだね?」

男「あぁ。今まで通り、自主的に幼の手伝いをするって感じで頼む」

男「全校生徒の前で壇上に上がるなんて、ぞっとする」

男「俺、ヘタレだからさ」

幼「そうかい…では立候補してきた彼を副会長に指名しよう」

男「大丈夫。生徒会長、頑張れよ!」

男「いつも隣りで見てたからわかる」

男「幼ならやれるよ」

幼「そうかな?」

男「間違いないよ」
ナデナデ

幼「…頑張るよ」




幼「保育園の年長組の時、班分けの時、男君が私を褒めてくれた」

幼「フフフ。幼いながらに感じる事があったんだよ」

幼「それからかな。私は君に褒めて欲しくて」

幼「ただそれだけが欲しくて、頑張っていたんだよ」

幼「だから、生徒会長に固執していないんだよ」

男「幼…」

幼「私は男君が思っているような、善人ではないという事さ」

幼「偽善の塊みたいな存在だよ」

幼「幻滅されても仕方のない事だけど」

幼「この気持ちは偽れないよ、男」

幼「私は幼い頃から、ずっと君の事が好きだったんだ」

幼「ただ君だけを見ていたんだよ」

幼「でもこれは私の一方的な想いだから…」

幼「君が気にする事じゃないよ」

男「気にするよ!」

幼「!」

男「幼っ!俺も思いの丈を伝えるぞ!」

幼「…なんだい?」

男「幼のその気持ちは一方的なんかじゃない!」

男「俺も、幼の事が好きだ!」

幼「ほ、本当に?」

男「俺が嫌いな奴の側にずっと居るわけがない。わかってるだろ?」

幼「…そうだね」

男「理由はどうあれ、幼は何をするのも一生懸命だった」

男「俺はそれを隣りでずっと見てきた」

男「一生懸命に頑張る幼の事が大好きだ」

男「できればこれからもずっと、幼の側に居させてくれ」

幼「…フフフ。それは愛の告白と受け取っていいのかな?」

男「あぁ。そのつもりで言った」

幼「私の勘違いではないんだね?」

男「俺、はっきり言葉にしただろ?」

幼「あぁ、夢みたいで、信じられないよ」

男「なら改めてもう一回言うぞ」

男「幼さん、俺とお付き合いして下さい」

幼「…こんな、偽善者な私で良ければ、貴方の彼女にしてください」

幼「ずっと…私の側に居て下さい



幼「良かったよ」

男「何がだ?」

幼「実はね…大学には生徒会なんて無いだろうから」

幼「もう褒めてもらえないな…などと思っていたんだ」

幼「滑稽だろう?」

男「もう良いだろ、幼」
ギュッ

幼「なっ…」

男「俺に褒められる事で幸せになるなら、いつでも褒めてやるよ」

男「幼の良い所なんて、山ほど知ってるぞ?」

男「毎日褒めてやるからな?覚悟しろよ」

幼「嬉しいよ、男」

幼「…ずっと一緒に居て、ね、男」

男「…おう」


おわり

これで終わりです
読んでくれた人がいたら嬉しいです

次スレは
幼馴染「大丈夫だからね」男「何がだ」
ってタイトルで立てたいと思ってます

では。


いつも疑問だったんだがタイトル先に考えてストーリーねってるんだろうか
深い意味はないんだけど

読んでくれたみなさん、本当にありがとうございます

>>43
自分はワンシーンを妄想して、そこからタイトルになりそうなセリフを考えて
それをスレタイにしています
スレタイを話しの途中にも出すようにしてます

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