幼女「ふぇぇ……」男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」 (855)

幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」

男「ご、ごめんなさい……」

幼女「あら、謝罪の言葉程度で終われると思ってるの?おじさんは、もう既遂なのよ?あとは私が警察署に駆け込むだけなのよ?」

男「くっ……」

幼女「さあ、どうするの?おじさん??」クスクス 

男「……なんでも、します。だから……許してください……」

幼女「アハハハ……!分かってるじゃない!それでいいのよ、それで!アハハハ……!」

男「……それで、何をすれば?」

幼女「そうねぇ……。まずは、私の家に電話して貰おうかしら」

男「家に?なんて言えばいいんだ?」

幼女「……」

男「……?」

幼女「……まだ、自分の立場が分かってないのかしら?敬語くらい使いなさい!!」

男「ヒィィ!す、すみません!」

幼女「ふん。まあいいわ。……簡単なことよ。私を、誘拐したって言えばいいのよ」

男「ゆ、誘拐!?」

幼女「なにを驚いているの?」

男「だ、だって誘拐って……」

幼女「なによ。現に、今してるじゃない」

男「そ、それはそうですけど……。電話したら、もう後に引けなくなるじゃないですか」

幼女「ああ、それなら大丈夫よ。ちゃんと考えてるから」

男「ほ、ほんとですか?」

幼女「疑い深いわね……。もういいわ。私がかけるから」スッ――

男「スマホ、持ってたんすか……」

幼女「当然よ。今の世の中、幼稚園で持ってても不思議じゃないわ」ピッピッピッ…

プルルルル……プルルルル……ガチャ

母『もしもし?』

幼女「……」

母『もしもし?どうしたの?』

幼女「マ、ママ?ちょっと話が……」

母『だからどうしたのよ。ママ、まだちょっと仕事中で……』

幼女「ヒィ!ご、ごめんなさい!言うから叩かないで!」

母『――ッ!?どうしたの!?ねえ!?』

幼女「……む、娘は預かった。返して欲しければ、言うとおりにしろ」

母『なッ!?』

幼女「指示は追って連絡する。なお、お前の家の様子は仲間が見ている。もし警察に連絡すれば、娘とは二度と会えないものと思え」

母『ちょっと!言わされているの!?大丈夫なの!?』

娘「娘を思うなら、下手なことをするな。……ママ!助け――」ガチャ

男「……」

幼女「ふぅ……こんなもんでいいでしょ」

男「マジでしやがった……」

幼女「私の演技もなかなかでしょ?」クスクス

男「やべえよ。マジでやべえよ……」

幼女「今さら何ビビってるのよ。ほら、行くわよ」

男「行くって……どこへ?」

幼女「どっかよ。まあ警察には連絡しないとは思うけど、仮にされたときに逆探知されたら面倒だし。携帯の電源は切るわよ。後の連絡は、公衆電話からね。もちろん、防犯カメラの心配がないところで」

男「……」

幼女「ほら、行くわよ」スタスタ…… 

男「お、おい!待てって……!」スタスタ……

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

男「……なあ」

幼女「何よ」

男「電車なんて乗って、どこ行くんだよ。おまけに、あんなに大金引き出して……。てか、なんでキャッシュカードなんて持ってんだよ」

幼女「敬語くらい使いなさいって言ったでしょ?……お金を下ろしたから遠くに行くのよ。履歴にのこるし

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

男「……なあ」

幼女「何よ」

男「電車なんて乗って、どこ行くんだよ。おまけに、あんなに大金引き出して……。てか、なんでキャッシュカードなんて持ってんだよ」

幼女「敬語くらい使いなさいって言ったでしょ?……お金を下ろしたから遠くに行くのよ。履歴に残るし」

男「だったら下ろさなきゃ良かっただろ?」

幼女「バカね。これからの旅費、あんたなんかに出せるわけないでしょ?カード使ったらバレちゃうし、基本は現金払いなのよ?」

男「……クレジットカードも持ってるんかい」

幼女「当然よ」

男(え?何者?)

男「とりあえず、海に来たのはいいけれど……」

幼女「……」

男「こんなところに来て……」

幼女「……」

男「なんんんもないんだけどさ……」

幼女「……海だあああ!」ダッ――!!

男「!?」

幼女「水気持ちい!アハハハ…!」

男「……あんなにはしゃぎやがって……。子供かよ……」

男「……」

男「……」

男「……子供だけど」

幼女「ああ楽しい!」

男「……おい。こんなことしてる場合か?」

幼女「別にいいじゃない。こんな短時間に居場所なんてわかるわけないし。山と海しかない片田舎よ?当分は安全よ」

男「はぁぁ……なんでこんなことに……」

幼女「あんたが私をさらったからでしょ?」 

男「どっちかって言うと、今は俺がさらわれてるけどな……」

幼女「……ところで、あんた仕事は?してないの?」

男「……してたけど、もう辞めた」

幼女「は?なんでよ」

男「俺に合わなかったんだよ。したくもないことを毎日毎日してさ。なんか、どうでもよくなったんだよ」

幼女「……で、私をさらった、ってこと?」

男「ああ」

幼女「ふ~ん……」

男「お前こそ、なんでこんなことしてんだよ」

幼女「私?」

男「そうそう。なんでこんな大それたことしたんだよ」

幼女「う~ん……退屈だったから」

男「退屈?毎日遊んで、幼稚園行ってるんだろ?」

幼女「ああ、私幼稚園なんて行ってないわよ」

男「は?じゃあ保育園?」

幼女「ううん。自宅学習してる。この前、高校課程終わったとこ」

男「こ、高校!?嘘だろ……」

幼女「ほんとよ。なんなら、なんか解いてあげるわよ。微分積分?正弦定理?なんでも出していいわよ?」

男「い、いや……いいけど……」

幼女「今の世の中学力が全てじゃない?だから、小さい頃からたくさん勉強させられてたんだよね」

男(いや、今も小さいんだけど……)

幼女「最初は家庭教師付けてたんだけど、あの人達って参考書通りにしかしないのよね。だから断って、自分で勉強してるの」

男「……お父さんとお母さんは、何も言わないのか?」

幼女「別に。パパもママも、毎日仕事忙しいし。たまに出かけるけど、いつも途中で呼び出されて仕事。ただ、勉強してたら褒めて来るのよね。よく出来たね、凄いねって……」

男「だからしてるのか?」

幼女「そんなわけじゃないわよ。ただ、私の居場所ってそこしかないのよね。私の価値も。私が勉強することで、パパとママのステータスになるのよ。自分の子供は天才だって、仕事の人に自慢できるでしょ?」

男「……」

~幼女自宅~
父「そうか……娘が……」

母「そうよ!早く警察に……!」

父「落ち着け。警察に通報したところで、居場所なんて分からん。それよりも……おい」

???「はい……」

母「こ、この人は?」

父「私の会社のものでな。少々、“小汚い”仕事を専門でしている者だ」

???「……」

父「……娘を連れ戻せ」

???「分かりました。犯人は、いかがいたしますか?」

父「決まっている。目には目を、だ……」

???「コクリ……」ガチャ……

母「だ、大丈夫なの?」

父「ああ。何も心配する必要はない。何も、な……」

~数時間後~

男「……で?今日はどこに泊まるんだ?」

幼女「そうねぇ……」

男「もう日も落ちてきたし。今から宿探しても見つからないぞ?」

幼女「……仕方ないわね。今日は野宿しましょ」 

男「結局かよ……」

幼女「いいじゃない。今日は雨も降らないし」

男「別にいいけどな。それより、早く山に身を――」

男「――ッ!?」

幼女「……どうしたの?」

男「しっ!誰かにつけられてる……」

幼女「えっ!?」

男「身を屈ませろ」

幼女「う、うん……」スッ――

男「……」

幼女「な、なんで分かるの?」

男「静かにしてろ」

幼女「……」

男(一人……二人……。二人だけか……こんなに早く嗅ぎつけられるとはな。ほんと、この子、何者なんだろうな……)

幼女「ど、どうするの?」

男「……逃げても無駄だろうな。それなら、方法は一つだ……」

男「……」スクッ……

幼女「――ッ!?ちょ、ちょっと!」

男「……いるんだろ?出て来いよ」

ザッ――

スーツ男A「……よく分かったな」

スーツ男B「しかし、どういうつもりだ?」

男「どうせ隠れても無駄だろ。それより、一応聞いておくけど……用件はなんだ?」

スーツ男A「聞くまでもないだろ……」スッ―

スーツ男B「お嬢様を、返して貰おうか……」スッ―

男「……お前の親父さん、警察より面倒な奴らに連絡したみたいだな……」

幼女「パ、パパが……」

男「……」

男(辺りは木々に囲まれている。俺一人逃げようと思えば逃げられるが……)

幼女「て」

男「……」

男(辺りは木々に囲まれている。俺一人逃げようと思えば逃げられるが……)

幼女「……」ブルブル……

男(……ったく。本当なら、すぐにでもこいつを押し付けてさっさとサヨナラしたいんだけどな……)

スーツ男A「……」ダッ――

スーツ男B「……」ダッ――

幼女「――ッ!?き、来たよ!」

男「……」

スーツ男A「脇見するとはな!」ブオン!!

幼女「……ッ!」






――バキィッ!!

スーツ男A「あぐっ――!」ドサァッ!!

スーツ男B「――ッ!?な、なに!?」

男「……」

幼女「……え?え?な、何をしたの?」

スーツ男B「な、何をした!?」

男「……別に。ただ単に、殴ってきたから殴り返しただけだけど」

スーツ男B「チィッ!」スチャッ――

幼女「じゅ、銃!?」

男「……そこまでするかね、普通」

スーツ男B「フフフ……!調子に乗るからだ……!」

幼女「に、逃げておじさん!」

男「……」

スーツ男B「死ねぇ!!」

――ターーーーーン!!

幼女「――ッ!」

男「……」

スーツ男B「……な、なんだ…と……」バタッ

男「急所は外しておいたからな。死にはしない。ただ、早めに病院行けよ」

幼女「お、おじさん……?」

スーツ男B「ま、まさか……なぜお前が銃を……それに……俺よりも早い、だと……?」

男「銃は慣れてんだよ。職業柄、な……」

男「……」スタスタ……

幼女「……」スタスタ……

男「……」スタスタ……

幼女「……ねえ」

男「なんだよ」

幼女「どうして銃なんて持ってるの?」

男「……仕事柄、いつも持ってるんだよ」

幼女「仕事って……まさか、警察?」

男「ハハハ。警察は常に持ってるわけじゃねえよ。ドラマの見すぎだ」

幼女「じゃあ、なんでよ……」

男「……まあ、仕事にも色々あるんだよ。色々……」

幼女「……」

~幼女自宅~
父「なに!?やられただと!?」

スーツ男C「は、はい!お嬢様を連れ戻しに行った2名とも、負傷しまして……!」

母「そ、そんな……!」

父「……なんたることだ……!」

???「――それも、仕方ないでしょうね……」

父「――ッ!?だ、誰だ!」

???「開いてたもんで、勝手に入らせてもらったよ。……それより、あなたのお嬢さんを連れた男のことなんだけど……」

父「――ッ!?し、知ってるのか!?」

???「知ってるも何も、こちとらずっと探していた身でね。ようやく足を掴めたと思ったら、なんだか面倒なことになってて何が何やら……」

母「あ、あなたは……いったい……」

???「……挨拶が遅れたな。俺は、FBIの者だ。その男を追っている。俺達が、お嬢さんを連れ戻してあげますよ……」

~山中~

男「……」

幼女「……」

男「……寝ないのか?」

幼女「……確か、仕事辞めたって言ってたわよね。どうして?」

男「言ったろ?合わなかったからって」

幼女「それだけ?」

男「……」

幼女「……」

男「……寝るまでの間、ちょっとした小話をしようか」

幼女「そんなのはいいからさ……」

男「まあ聞けって。……あるところに、一人の男がいたんだよ。そいつは、とても人に言えないようなことを生業にしてたんだ」

幼女「……人に言えないようなこと?」

男「ああ。暗殺、誘拐、買収、恐喝……頼まれればなんでもやる、とても汚い仕事だ」

幼女「……」

男「ある日、男は仕事を受けたんだ。某企業と対立関係にある企業の重役を、闇に葬るって仕事だ」

幼女「それって……」

男「男にとっては日常茶飯事のことだった。ちょうど前の仕事も終わったばかりだったから、男はそれを引き受けた」

幼女「……」

男「その日の夜、目標の家を突き止めた男は、そいつの家に言った。懐に、銃を忍ばせてな。家にはそいつしかいないはずだった。だからこそ、やりやすかった」

幼女「……」

男「そして男は、仕事を達成した。……その時だった。家の奥から、目標の子供が出てきたんだ。まだ小さい、ちょうどお前くらいの男の子がな」

幼女「……その人は、どうしたの?」

男「もちろん、その子に顔を見られてしまった以上、始末するしかなかった。だから男は、銃口をその子に向けたんだ」

幼女「……それで?」

男「……でも、男は引き金を引けなかった。変わり果てた父親の姿に泣きじゃくるその子を、撃てなかったんだ」

幼女「……」

男「結局、男はその場から逃げ出した。もちろん、そんな小さな子供に見られたくらいなら仕事には支障なかったが……。男は、その子の顔が忘れられなかったんだよ。見慣れた景色の、ほんの一コマのはずの、その子の顔が、な……」

幼女「……それで?」

男「男は、それ以降仕事を受けることはなかった。事実上の引退だな。……ま、つまんない話だけどな」

幼女「……でも、その人はなんで忘れられなかったの?」

男「……きっとさ、気付いたんだよ。自分の人生のためにしてた仕事だけど、その手で消した人にもそいつの人生があったってことに。今さら取り返しもつかないはずなのに、誰かに許して欲しかったのかもな」

幼女「……じゃあ質問を変えるわね。おじさんは、どうして私をさらったの?」

男「……似たようなもんだ。俺はキミに、許して欲しかったんだと思う。汚れのない純粋さに、少しでも浄化させて欲しかったんだ。たぶんな」

幼女「……」

幼女「……ふん。その男もバカよね。それまでのことなんて、何をしても消えるはずなんてないのに」

男「ああ。まったくだ。本当に、大バカ中の大バカ野郎だよ」

幼女「……」

男「……ほら、もう寝ろよ」

幼女「う、うん……」

男「……」

幼女「……」

男「……」

幼女「……」

男「……」

幼女「……私はさ」

男「?」

幼女「おじさんのこと、許してあげるわよ……」

男「……ありがと」

~幼女自宅~
ガヤガヤ……

FBI「よーし!その機材はそこに運べ!それはここだ!」

「分かりました!」

ガヤガヤ……

父「こ、こんなに機材を……」

FBI「まあ、相手が相手ですしね」

母「あ、あの、娘といる男は、いったい……」

FBI「……詳しくは言えない。ただ、裏社会では既に生きる伝説になってる凄腕の仕事人……とだけ言っておきましょうか」

父「そ、そんな奴と、娘はいるのか……」

FBI「ええ、まあ。だが、確か引退したという噂があったんですがね。いやいや、最初聞いた時は何かの間違いかと思いましたよ。あいつが、こんなに簡単に足を出すなんてね」

父「……」

FBI「もちろん、娘さんは出来る限り無事取り戻します。……ですが、万が一ですが、相手も抵抗した場合は、激しい銃撃戦になるかもしれません」

母「そ、そんな……」

FBI「すみませんね。ですが、こちらも命がけなんですよ。相手も我々も、生死を問わず、ですよ……」

~山中~
男「おい。起きろ」

幼女「……う、うーん……。もう朝?」

男「寝過ぎだ。もう昼前だぞ」

幼女「……ちょっと」

男「なんだよ」

幼女「なんで、私を背負ってるの?」

男「そりゃ、寝てたからな」

幼女「スケベ!変態!ド変態!」バタバタ

男「お、おい!背中で暴れるな!」

幼女「降ろして!降ーろーしーて!」バタバタ

男「分かったから!暴れんな……うおっ!」グラッ

幼女「キャアッ!」

……バタン

幼女「……もう、痛かったじゃない」

男「お前が暴れるからだろ?……それより、ほら」

幼女「ん?あそこは、街?」

男「ああ」

幼女「あんなとこで、何するの?」

男「……」

幼女「ねえ……ねえって」

男「お前は……家に帰れ」

幼女「…………え?」

幼女「え?……な、なんで?」

男「決まってるだろ。お前はまだ子供なんだよ。親御さんが心配してる」

幼女「で、でも……」

男「あの街に行って助けを求めれば、すぐに家に帰れるだろ」

幼女「ちょ、ちょっと待って……」

男「じゃ、俺は行くからな」スタスタ……

幼女「――待ってってば!!」

ピタッ……

男「……なんだよ」

幼女「……」

男「お前は家に帰れるんだぞ?これ以上、俺といる理由なんてないだろ」

幼女「……たくない……」

男「……え?」

幼女「――私!帰りたくないの!」

男「……お前……」

幼女「あんな家に帰っても……誰もいないし……。いくら勉強しても、いい子にしてても、パパもママも、いつも仕事優先……」

男「……」

幼女「初めてなの!初めて、おじさんが私のこと大好きだって言ったの!誰からも愛されてない私を、おじさんは大好きだって言ったの……!」

男「……」

幼女「嬉しかった……変態だって分かってたけど、私嬉しかった……。だから、私はおじさんとここまで来たの……。私を好きだって言ったおじさんに、付いてきたの……」

男「……」

幼女「ひぐっ……ひぐっ……」

男「……そう、か……」

幼女「……」

男「……分かったよ。なら、一緒に行こうか」

幼女「……」コクリ

男「……」

幼女「……」

男「……その前にさ、ちょっと待っててくれ」

幼女「……置いてく気?」

男「違うって。小便だ」

幼女「…………最っっっ低」

男「生理現象だ。仕方ないだろ」

幼女「もう……早くしてよね」

男「ああ」

スタスタ……

男「……」

男「……」

男「……さて……」

~幼女自宅~
プルルル……

父「――っ!?娘から!?」

FBI「来たか――!!」

父「どど、どうすれば……!」

FBI「落ち着いて。落ち着いて、ゆっくり話を伸ばしてください。冷静に……」

父「は、はい……!」

プルルル……プルルル……ガチャ

父「……も、もしもし?」

男『……初めまして、でいいのか?あの子の、父親か?』

父「あ、ああ!私が父だ!お、お前は……!」

男『ああそうさ。俺が、あんたの娘をさらった』

父「――ッ!」

父「む、娘は……どうした……!」

男『……』

父「おい!なんとか言え!」

FBI「お父さん、落ち着いて……」ヒソヒソ

男『……ククク。あんたの娘、元気だよ』

父「ほ、本当か!?」

男『ああ。実に、“いい声”で泣いていたよ。ククク……』

母「――ッ!?ああ……」バタッ

父「き、貴っっ様ぁぁ!!娘に、何をした!!」

男『ククク…』

父「殺してやる!殺してやる!!」

FBI「落ち着いてください。ただの挑発ですよ」ヒソヒソ

父「落ち着いてられるか!!」

男『……そこにいるんだろ?FBIの犬ども』

FBI「――ッ!」

男『そいつじゃ話にならない。変われ』

FBI「……」

FBI「……初めまして、仕事人さん」

男『ああ。初めまして』

FBI「まさか、こうして直に話を出来るなんてな。意外に若いんだな」

男『あんたもな。……それより、今から指定する場所に、金を持ってきて貰おうか』

FBI「……いくらだ?」

男『日本円で、30億』

FBI「……ずいぶん、ふっかけたものだな」

男『その父親なら、出せるだろ。もちろん、これからの生活は苦しくなるだろうが……。それは、俺の知ったことではない』

FBI「……とりあえず、場所を聞こうか」

男『○△県の、××山西側麓。耳そろえて用意しろよ』ガチャ――

ツー……ツー……

FBI「……」

父「くそっ……!くそっ……!」

母「……」

FBI「……どういうことだ……?」

父「……え?」

FBI「あいつが自分から尻尾を掴ませるなんて……あり得ない……」

父「ありえないも何も!現に身代金を要求してるじゃないか!」

FBI「それは……そうだが……」

父「私もそこへ行く!直接、あの男の顔を拝んでやる!!」

母「わ、わたしも」

母「わ、私も行きます……!娘のところへ……!」

FBI「……何を言っても、無駄なようですね……。分かりました。あなた方の身は、私達が必ず守ります」

父「私らはいい!……娘を……娘を、必ず救い出してくれ……!!」

FBI「はい……」

~山中~
スタスタ……

男「……待たせたな」

幼女「遅かったじゃない。何してたの?」

男「大したことじゃない。クソだ」

幼女「ほんっっっと!最っっっっ低!!」

男「うるせえな。ほら、行くぞ」

幼女「行くって……どこへ……?」

男「頂上付近。とりあえず、人気がないところで今日は過ごす」

幼女「う、うん……」

スタスタ……

男「……」

男(あと、数時間ってところか……急ぐか……)

スタスタ……

~数時間後~

ガヤガヤ……

FBI「俺と来る奴は防弾チョッキ、ヘルメットの着装を忘れるな!狙撃班は後方300メートルの距離を保て!持ち物は持ちすぎるなよ!いざという時に走れなくなるぞ!」

「了解!!」

FBI「急げ!遅れるなよ!」

ガヤガヤ……

父「……」

母「……」

FBI「あなた方も、防弾チョッキの着装を……」

父「は、はい……」

FBI「……」

FBI(いよいよか……。ようやく、この時が来たな……)

FBI「――出発!!」

~山頂~

男「――ッ!」

幼女「どうしたの?」

男「来たか……」

幼女「来たって……警察!?」

男「いや……もっと質が悪い連中だ。俺の、客だ」

幼女「ど、どうするの?」

男「数は多いが……まあ、ある程度は減るだろうな」

幼女「?」

~山中~
スタスタ……

FBI「……」

FBI(……おかしい。ここまで、あの仕事人が何もしてこないとは……)

スタスタ…………カチッ

FBI「……ん?」

――ヒュンヒュンヒュンヒュン……ドドドドド!!

「――ッ!?き、木が落ちてくるぞ!!」

FBI「な、なにっ!?」

ドドドドド……!!

「う、うわあああ!!」

「ひいいい!!」

ドドドドド…!!

FBI「と、トラップだ!岩の影に隠れろ!!」

ドドドドド…!!

「うわあああ!」

「退避いい!!」

FBI「なんたる姑息な手を……!!」

~山頂~

ウワアアア……!!
ヒイイイ……!!

幼女「……なんか、下から阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてくるんだけど……」

男「う~ん……予想以上にトラップが上手くいったみたいだな」

幼女「トラップって……いつの間に」

男「ついさっきだよ」

幼女「抜け目ないと言うか用意がいいと言うか……」

男「どっちでもいいだろ。ほら、お前はここに隠れてろ。相手も全員のびるわけじゃないんだからな」

幼女「う、うん……」コソコソ……

FBI「はぁ……はぁ……くそっ!残ったのは俺達だけか!」

父「ど、どうなってるんだ!?」

母「これも、犯人の仕業なの!?」

FBI「そうらしい……。だが、あなた方が無事でよかった」

FBI(本当に、よかった……)

FBI「……ともかく、上を目指しましょう」

父「ああ!分かった!」

母「ええ!」

スタスタ……

FBI(……もうすぐだ……)

~山頂~
FBI「ここが、山頂か……」

父「わ、私だ!娘はどこだ!」

母「き、聞こえてるの!?私もいます!」

幼女(パパ……!ママ……!)

スタスタ……

男「……遅かったじゃないか」

父「――ッ!お、お前が……!?」

男「ああ。あんたの娘をさらった、犯人だよ」

母「娘は……娘はどこ?」

男「安心しろ。安全なところにいる」

FBI「……こうして顔を合わせるのは、初めてだな」

男「ああ。俺としては、見たくなかったけどな……」

FBI「そうか?俺は会いたかったがな。それにしても、裏社会であれだけ名が売れていたお前が、こんなちんけな犯罪を犯すとはな……。おまけに、こんなに簡単に顔を見せるとは……」

男「……俺の、勝手だろ?」

FBI「ハハハ。違いない……」

男「そんなことより、さっさと商談に移ろうや。……金は、持ってきたか?」

父「あ、ああ!この山の麓にちゃんと置いてある!嘘じゃない!」

男「そうか……。あんたの金、尽きたんじゃねえか?」

父「……」

母「……」

幼女(……)

男「これからの生活、苦しくなるな……」

父「……それがどうした!」

幼女(――ッ!)

父「娘が無事に帰るなら、そんな金いくらでもくれてやる!」

母「あの子以上に大切なものなんてないわ!だから……娘を返して……!」

男「……そう、か……」

幼女(パパ……ママ……!)

男「……ちょっと待ってろ」スタスタ……

幼女「……」

男「……だとよ」

幼女「……うん……」

男「なんだよお前。ちゃんと愛されてるじゃねえか。親父さんにも、お袋さんにも。何が居場所がないだ。ちゃんとあるじゃねえか。お前だけの居場所がよ」

幼女「うん……うん……!」ポロポロ

男「……ほら、帰ってやれよ。お前の大好きな、お前のことを心から思う両親のところにさ……」

幼女「……うん!」ダッ――!!

タタタ……!!

タタタ……!!

幼女「パパ!ママ!」

父「お、おお!!」

母「無事だったのね!」

男「……フッ」スタスタ……

幼女「パパ!ママ!ごめんなさい!私……私……!」




FBI「――やっと出てきたか……」

男「――ッ!?」

ターーーーン!!

父「うぐっ!?」バタッ

母「……あ、あなた?――あなた……!?」

FBI「うるさい」

ターーーーン!!!

母「うっ……!」バタッ

幼女「……え?」

幼女「……パ、パパ?ママ?」

父「……」

母「……」

幼女「……いや……いやああああ!!」

FBI「……たく。手間取らせやがって……」

男「……お前……!!なぜだ!?なぜ撃った!!」

FBI「……」

男「答えろ!!」

――ターーーーン!!!
バシュン――!!

男「――ッ!?」

FBI「……今のは警告だ。それ以上動くと、次は頭を撃ち抜くぞ?」

男(くそっ!狙撃班か……!)

幼女「うわあああん……!!パパああ!ママああ!」

FBI「……さて、ようやく俺も仕事を終えそうだ。感謝するぞ、仕事人……」

男「くっ……!仕事ってなんだ!?何が狙いだ!?」

FBI「……まあ、どうせお前は処刑台行きだしな。いいだろう。冥途の土産に話してやるよ」

男「……」

FBI「俺達の狙いは、お前なんかじゃねえんだよ。その子だ……」

幼女「……え?」

男「なん……だと……?」

FBI「おそらく、その子自身も知らないだろうがな。その子は、普通の人間じゃない。この世界初の、人造人間なんだよ」

男「なっ――!?」

幼女「――ッ!?」

FBI「この夫婦は、その子の開発者だった。秘密裏
その子を開発し、誕生させたんだ。そして、自分の子供として育てたんだよ」

幼女「……う、嘘……」

FBI「真実だ。並外れた知識が、その証拠だ」

男「……嘘だろ……」

幼女「そ、そんな……」

父「……うぅ……娘よ……」

幼女「――ッ!?パ、パパ!?」

FBI「……ちっ。まだ生きてたか……」

幼女「パパ!しっかりして!」

父「……い、今、この男が話したのは……事実だ……」

幼女「そ、そんな……」

父「わ、私達は……子供が欲しかった……。子宝に恵まれず……それでも欲しかった……。そして……お前を生み出した……」

男「……」

幼女「……」

父「だ、だが、一つだけ分かってほしい……。私達は……間違いなく、お前を愛していた……こ、心から……」

幼女「パパ……!」

父「む、娘よ……強く、生きろ……生き…ろ……」ガクッ

幼女「……パ……パパあああ!!」

男「……その子を、どうするつもりだ?」

FBI「決まってる。本国へ持ち帰り、研究するんだよ」

男「……研究、だと?」

FBI「ああ。何せ、世界初の人造人間だ。研究を進めれば、本国はたちまちこの世界で不動の地位を確立出来る。軍事、商業……全てを牛耳ることが出来るんだよ」

男「……その子をバラバラにするつもりか?」

FBI「ああ。かまいやしない。なにせ、そいつは化け物だからな」

幼女「……」

男「……黙れ」

FBI「なんだ?怒ってるのか?化け物を化け物と言って何が悪い。まあ、そいつでも本国の為に死ねるんだ。いちおう、感謝はしてるよ」

男「黙れよ!!」スチャッ

FBI「……ほう。銃を向けるか……。だが、どうするつもりだ?今まさに、お前はスナイパーの標的になってるんだぞ?」

男「……」

FBI「……終わりだ。お前も、その子も、な……」

男「……それは、どうかな……!!」

タタターーーーーン!!!

FBI「――ッ!?」


……シィーーーン……

男「……」

FBI「……フフフ……外れたな。この距離で外すとは……お前も落ちたもの――」

男「――外れてねえよ。狙い通りだ」

FBI「……何?」

男「……」

FBI「……ふん。強がりを……。もう終わりにするか。――狙撃班。合図と共に撃て」

男「……」

FBI「――撃て!!」





シィーーーン……

FBI「……な、なんだと?」

男「どうした?自慢の狙撃班で、撃たないのか?」

FBI「そ、狙撃班!どうした!応答しろ!」

シィーーーン……

FBI「……ま、まさか……!お前……!」

男「ああ。さっき俺が狙ったのは、お前じゃない。――スナイパー達だ」

FBI「――ッ!?」

FBI「ば、バカな……!どれだけ離れてると思ってる!?それに、狙撃班の居場所なんて……!」

男「お前らの敗因は、一つ。最初の狙撃で、俺を撃たなかったことだ。放たれた弾道から計算すれば、狙撃班の位置なんてすぐに分かる」

FBI「バ、バカな……!よしんば分かったとして、これだけの暗闇の中、ただの銃で狙えるはずは……!」

男「……俺を、誰だと思ってるんだ?伊達にこの仕事はしてねえんだよ」

FBI「……っ!!ば、化け物め……!」スチャッ

男「サヨナラだ。クソ野郎……!」スチャッ

――ターーーーーーーンッッ!!

男「……」

FBI「……」

男「……」

FBI「……が……はっ……」バタッ

男「……」

FBI「……こ、これで終わったと思うなよ……」

男「……」

FBI「その娘は……既に世界中が知っている存在だ……。裏社会から……国家から……常に狙われる存在なんだ……」

男「……」

FBI「お、お前ごとき小物に……その娘を守れるかな……ハ、ハハ……ハハハ……!」

ターーーーーン!!

FBI「おぶっ――!」ガクッ

男「……品のねえ断末魔だな。黙ってろよ」

男「……大丈夫か?」

幼女「……」

男「……」

幼女「……パパも、ママも……」

男「……ん?」

幼女「私のこと……本当の子供のように思ってくれてたのかな……」

男「……違うな。本当の子供のように、じゃない。本当の子供だったんだよ。お前は……」

幼女「――ッ!う、うん……!」ポロポロ

男「これから……どうするんだ?」

幼女「うん……分からない……」

男「……だったら、俺と来いよ」

幼女「……え?」

男「お前の親父さん達の意思は、俺が引き継ぐ。俺がお前を守る。絶対に……」

幼女「……本当?」

男「ああ。約束する」

幼女「……うん」

~数十分後~

男「……最後の挨拶、ちゃんと出来たか?」

幼女「うん……」

男「じゃあ、行くか……」

幼女「うん……」

スタスタ……

男「……」

幼女「……おじさんさ、物凄く射撃が上手いんだね……」

男「まあな。それしか能がないんだよ」

幼女「他には、特技とかないの?」

男「うう~ん……。あやとり、かな。今度教えてやるよ」

幼女「うん。……最後にさ、名前教えてよ。おじさんの、本当の名前……」

男「……俺の名前は、のび太。野比、のび太だ……」

幼女「……変な名前」

男「ほっとけ。ほら、行くぞ」

幼女「うん……!」

スタスタ……







終わりでいい?
続きあったほうがいい?

じゃ書く
ノープランだから勢いだけで書くけど
セリフだけって難しいね

 季節は、秋へと移り変わる。先日まで緑色に染まっていた街路樹は、深い紅で彩られていた。しかし風が街を吹き抜ければ、葉達はたちまち枝を離れ、空を舞う。
 鮮やかさと儚さ……それらを同時に感じ取れるこの季節は、どこか感慨深い。

「のび太。早く来てよ」

 リルルは、急かすように歩きながら振り返ってきた。

「そう急ぐこともないだろ」

「もう……。のび太はいっつもそう。のんびりし過ぎ」

 少しだけ不機嫌そうに口を膨らませ、彼女は再び前を見る。しかしふいに空を見上げれば、そこには風に乗る紅葉が。
 その光景に、彼女は笑った。

「……見て。躍ってるみたい」

「……ああ。そうだな」

 そして俺達は、落ち葉の絨毯を歩いていった。

 リルルは、さっきまでの不機嫌さはどこへやら。上機嫌に歩いていた。

「のび太ー! 遅いよー!」

 天真爛漫と言うべきか。しかしながら、一つだけもの申そうか。

「……リルル。その、“のび太”って言い方止めてくれないか?」

「え? なんで?」

「なんでって……。俺さ、お前より遙かに年上なんだけど。呼び捨てってどうよ」

「ん? 何がいけないの?」

 彼女は大きな目で俺を見てきた。どうやら、本気で何も思わないらしい。

「……いや、もういいよ」

「……なんで疲れた顔してるのよ」

「だから、もういいって」

「変なのび太。それより、これからどうするの?」

「ちょっと、知り合いのところに行く」

「……知り合いって?」

 リルルは、少しだけ不安そうな表情を見せる。

「昔からの知り合いなんだよ。大丈夫だ」

「……そ」

 俺達は、とある人物の元へと向かっていた。
 心から信頼出来る、その人のところへ……。

あれ、ガチになってる

>>131
こっちの方が書きやすい
セリフだけはキツかった(´・ω・`)

 その街の一角には、とある商店があった。
 外見はかなり年季が入り、コンクリートの壁にはところどころヒビがある。

「……おい。いるか?」

 店の中へ、声をかける。後ろにいたリルルは、店の看板を見上げていた。

「……ここ、なに?」

「言ったろ? 知り合いのとこって」

「ふーん……」

 リルルは、改めて看板をマジマジと見つめる。すると奥から、野太い男の声が聞こえてきた。

「……いらっしゃーい」

「……相変わらず、不機嫌そうだな」

「――ッ!? その声は……!」

 俺の声を聞いた瞬間、慌ただしい足音が近付いてきた。 
 その時、リルルが看板の屋号を口にした。

「……剛田、商店……」

 それと同時に、店主が顔を出す。

「……やっぱり、のび太か……!」

「ジャイアン……久しぶり」

 ジャイアンは、あの頃と変わらない笑顔を俺に見せていた。

「……そうか……。そんなことが……」

 ジャイアンに、これまでの経緯を話す。彼は小難しい顔を浮かべ、リルルに視線を送った。

「それにしても久しぶりだな。……風の噂じゃ、仕事は辞めたとか聞いたが?」

「ああ。色々あってな」

「そうか……。ま、その方がいいだろ。お前に裏社会なんて似合わないもんな」

 ジャイアンは顔を綻ばせながらそう話す。どこか安心したようにも見える。
 しかしすぐに、表情を険しくさせた。

「……で? “ここ”に来たからには、何かあるんだろ?」

 これが彼の仕事の顔だ。眼光鋭く、心の内側まで見抜くかのようだ。
 彼の前に、前置きなんていらないだろう。

「……武器がいる。この子を守るための武器が……」

「……」

 ジャイアンは再びリルルを見つめ、視線を戻した。

「……わかった。付いてこい」

「……リルル。少しここで待ってろ」

「うん。分かった」

 そして俺とジャイアンは、店の奥へと向かった。

 そこは店の地下。周囲は白いコンクリートに囲まれ、少しカビ臭い。灯りは天井に吊された電球だけであり、室内は薄暗く、時折影が動かしていた。

「……ここも、久々だな……」

「まあ、のび太が最後に来たのは1年以上前だしな……」

 ジャイアンは奥の木箱の中を漁りながら、背中越しに声をかける。 

「ええと……確かここに……あった」

 そしてジャイアンは、一本の銃を取り出す。

「これは……」

 見慣れない銃だった。フレームは銀色に輝き、銃把は赤い。自動式ではあるが、サイズが通常の銃よりも大きい。
 銃をくまなく見てみるが、どこにもメーカーの刻印はなかった。

「……これ、どこの銃だ?」

「フフフ……」

 ジャイアンは自慢げに笑みを浮かべる。

「それはな、この俺が自ら設計、作製した、世界で一つの銃……剛田スペシャルだ!」

「剛田……スペシャル……」

「ああ。装填弾は通常よりニ割ほど多い。夜間でも正確に狙えるように、赤外線ライト付。サイレンサーもワンタッチ。おまけに特殊素材を使ったことで、丈夫でありながらも軽量化されているんだ」

「……凄いな」

 名前はアレだが。

「それと、これも持ってけ」

 ジャイアンは、大きめのスポーツバッグを目の前に置いた。バッグは膨らみ、見るからに中に色々詰まっているようだった。

「これは……」

「中に弾や装備が入ってる。これでしばらくは持つだろ」

「そうか……。すまないな。これ、全部でいくらだ?」

 するとジャイアンは、照れくさそうに鼻もとを指でかいた。

「……金ならいらないって」

「え? でも……」

「いいんだよ。お前の元気そうな顔も見れたことだし。強いて言えば、それが支払いの代わりかな」

「そういうわけにもいかないだろ。これ、けっこうするだろ?」

「だからいいって。人の好意は、素直に受けとけ。俺に失礼だぞ」

「ジャイアン……」

 そしてジャイアンは、俺の肩を叩いた。

「……すまないな、のび太。俺には、これくらいしか出来ない。でももし何か困ったことがあるなら、いつでも来いよ。お前は、俺の心の友だからな」

 ジャイアンは、優しく微笑みかける。彼の優しさに、色んなものが込み上げてきた。言葉ではうまく言い表せない、感謝や懐かしさ……そういった、とても暖かいものだった。

 それからしばらくして、俺とリルルは剛田商店を後にした。

「……あの人、見た目は怖そうだけど、いい人だね」

 後ろを振り返りながら、リルルは言う。

「ああ。すげえいい奴だよ」

「のび太も“知り合い”ってしか言わなかったし、どんな人かと思ったよ。もっと言い方あったんじゃない?」

「それは……」

 リルルの方に視線を向ければ、彼女は俺の目をじっと見つめていた。

(……そうだな。なんで素直に言わなかったんだろうな)

 正直に言えば、こそばゆかったこともある。久々に会うこともあり、素直にそれを言えなかった。
 ……だが、それももうやめよう。そんな遠慮なんてあいつに失礼だ。それに、俺の本心とも違う。自分の心を誤魔化す必要なんてないんだ。
 だってあいつは――

「――俺の、心からの親友だ」

「……うん!」

 リルルは、笑顔を浮かべて頷く。
 俺の中にまとわりついていた重荷のような感触も、どこか軽くなった気がした。

 夕暮れ時。窓の外からは虫たちの鳴き声が響く。それに合わせるかのように草木は風に揺れ、心地よい涼しさが体を通り抜けていく。空は黄昏色に染まり、夜の色に変わり始めていた。
 この日俺達は、街の片隅にある宿に泊まっていた。素泊まりではあるが、なかなか経済的な金額だ。

「……この旅館、ちょっとボロすぎない?」

 リルルは不満そうにぼやく。

「贅沢言うな。節約はするに越したことはないんだぞ?」

「でもさぁ……」

 こいつは、どんだけ裕福な暮らしをしていたのやら。世間一般常識というのを、俺が教えないといけないのか……。

「リルル。あのなぁ――」

 その時、何かの音が僅かに聞こえた。とても聞き慣れた音。何かが床を擦るような、微かな音――。

「――ッ!? リルル伏せろ!」

「え? ――キャッ!」

 リルルに覆い被さり床に伏せる。その刹那、入口から轟音が響き渡った。

「きゃあああ!」

「……!」

 轟音は断続的に響き、それと共にドアには無数の穴が開く。そして横殴りの雨ように、弾丸が室内に降り注いだ。

「な、なにが起こったの!?」

 体の下からリルルが叫ぶ。何が起こったのか――そんなものは決まっている。

「客が来たんだよ! 呼んでもねえ客がよ!」

 銃弾の雨は、依然として止まることはなかった。

「のび太! どうするの!?」

「くそっ――!」

 懐から卓球程度の球体を取り出す。

「それなに!?」

「いいもんだよ!」

(ジャイアン――信じてるぜ!!)

 それを既に原形すらとどめていないドアの足元へと投げる。球体は二度ほどバウンドし廊下へと転がった。
 その直後、激しいスパーク音が廊下に響いた。

「うわあああ!!」
「ぎゃあああ!!」

 男の悲鳴が、スパーク音に混じる。そして一瞬銃撃が納まった。

(今だ――!)

 すぐさま立ち上がり、リルルを抱える。

「跳ぶぞリルル!!」

「跳ぶって! まさか――!」

 リルルが何かを叫ぶ前に、窓から勢いよく飛び出した。

「ここ! 三階だよおおお!?」

 リルルの絶叫と共に、俺達の体は宙を舞った。 

 地上へと落ちる。その途中、枝の群れが体を包む。へし折る音を鳴らしながら、落下速度は僅かに弱まった。

「くっ――!」

 最後に太めの枝を片手で掴む。だが勢いに押され、惜しくも離れてしまった。そのまま体を反転させ、背中から地面と衝突した。

「……効いたぁ……」

 全身に痛みが走る。息も途切れ途切れだ。体中生傷だらけにはなったが、何とか軽傷で済んだらしい。

「……リルル……無事か?」

 俺の上で体を丸めていたリルルは、疲れたような顔を見せた。

「し、死ぬかと思った……」

「生きてるだ! 走るぞ!」

「あ! 待ってよ!」

 旅館の裏は雑木林となっていた。光も通らず、常闇が広がる。
 俺とリルルは、闇に紛れるように林へと駆け出していった。

 しばらく林の中を走ったところで、とある大木を見つけた。見れば袂には穴が空いており、ちょうどリルルくらいなら入れそうだ。

「この中に隠れてろ」

「う、うん……!」

 リルルは屈みながら根の間に身を寄せる。

「いいか? そっから動くなよ?」

「わかったけど……のび太はどうするの?」

「決まってるだろ……」

 腰元に下げていた銃を取り出し、弾を装填する。
 銀色のフレームに赤い銃把……その名も、剛田スペシャル。

(……まったく、締まらない名前だな)

 だがその獲物はとても軽く、手に吸い付くようたった。
 
「……客は、もてなさないとな!」

 リルルを残し、俺は再び夜の中へと走りだした。

「探せ! 林のどこかにいるはずだ!」

 遠くから、男の声が聞こえてきた。足音からすれば、敵の数は八人ほどか。

(少し多いが……どうとでもなる数だ……)

 見れば四人が周囲をライトで照らしていた。

(この暗闇の中でライト……自分から標的になってくれるとはな。素人かよ)

 こちらとしては狙い安く、実に助かる。

(まずは、存分に混乱してもらおうか……!)

 サイレンサーを装着させた銃を構え、四発撃ち出す。弾は正確にライトを撃ち抜き、辺りを再び漆黒に染める。

「――ッ!? 何が起こった!」

「て、敵の銃撃です!」

「バカな! これだけの木々の中で正確に……! しかも、四つ同時だと!?」

「うあああ! て、手があああ!」

「わ、私も……負傷しました……!」

 どうやら、二人が負傷したようだ。急所は外したから、死ぬことはないだろう。

(上々だな。それにしても……)

 銃を撃った時、衝撃が殆どなかった。銃身が大きく狙いやすいが、軽く疲れにくい。剛田スペシャル……締まらない名前だが、そんじょそこらの銃とは比べものにならないくらいだ。

(……サンキュ。ジャイアン)

「な、何も見えません!」

「敵は……敵はどこだ!」

「落ち着け! 陣形を崩すな!」

 指揮官らしき男が檄を飛ばすが、もはや統率など取れてはいなかった。

(……終わらせるか)

 ゆっくりと銃口を声の方へと向ける。声の聞こえる方向、物音、木々の間に見える微かな影……それらの散らばる情報を集め、敵の全身像を脳裏に浮かべた。

(敵は六人……)

 引き金に、指をかける。そして、連続して引く。

(一人……)

「うわっ!?」

(二人……)

「あうっ!」

(三人……)

「うぐっ!?」

(四人……)

「うっ!?」

(五人……)

「ぐあっ!」

 引き金を引く度に、短い呻き声が聞こえてきた。どうやら、全て命中したようだ。そして……。

「どうした! 撃たれたのか!?」

 残された男の、慌てる声が響く。先ほどの指揮官らしき男だ。

(どうやら、当たってたようだな)

 指揮官だけは残すつもりだった。あいつには、聞くべきことがあったからだ。
 銃を下げ、歩き出す。そして、指揮官へと近づいていった。

「くそっ! くそくそくそっ! ――くそおお!」

 残された男は、苦し紛れに銃を乱射する。だがそんな銃弾が、そうそう当たるはずもなかった。
 一発だけ弾を放ち、男の銃を弾き飛ばす。

「うっ――!?」

 手が痺れたのか、男は右手を抑え体を丸めた。

「――動くな」

「――ッ!?」

 銃を構え、男の前に姿を出す。その時、月の灯りが差し込み、俺と男の姿を映し出した。
 
「……お前が……」

「ああ。お前らが殺そうとした奴だよ」

「こんな……若造に……!」

 突然男は腰元からナイフを取り出す。そして俺に刃先を向け突進してきた。

「……甘い」

 だがその刃が届くことはない。素早く身を翻し初撃を躱す。そして銃を持たない左手で男の右手を掴み強く捻った。

「ぐっ!」

 男の右手を背後に曲げて関節を固める。手首、肘、肩の三カ所を固められた男は、膝を地につけたまま動けなくなった。
 そして改めて、俺の膝元の位置にある男の後頭部に、銃口を当てた。

「……お前に、聞きたいことがある」

「……な、なんだ……!?」

 男は痛みに顔を歪ませていた。それでも強い口調を保つのは、男の意地なのかもしれない。

「派手に撃ちまくりやがって……。今頃、街は騒然となってるだろうよ」

「……」

「あんだけ目立つことするなんて、普通の奴らじゃないよな。たが俺の知る限り、国家の犬とも裏社会の連中ともやり方が違う」

「……」

「……お前らいったい、何者だ?」

「……フフ……フフフ……」

 男は、意味深にほくそ笑んでいた。

書き溜めしてないんで鈍足すみません
仕事終わったんで今から書きます

「……我らの目的は、下郎の民である貴様ごときでは到底理解出来まい」

「……なに?」

「全ては、三界併合のためよ……フフフ……」

 全く何を言ってるのか理解出来ない。だがそれでも、男は笑う。もはや敗北した身でありながら、勝ち誇るかのように笑っていた。

「お前……狂ってるのか?」

「……いや、正常なのは、むしろ俺の方かもな……!」

 すると男は、固められた腕をもろともせず振り返る。男の右腕からは筋が切れ、骨が折れる音が響いた。

「なっ――!?」

「ガアアアア……!」

 激しい痛みを感じながらも、男は鋭いナイフ俺に向けた。般若の如きその形相は、人からかけ離れていた。

「チィッ……!」

 やむを得ず、引き金を引く。
 サイレンサー越しの銃声は、辺りに静寂を取り戻させた。

ああああぁぁぁぁ! >>1 の家が!!!   〈     . ’      ’、   ′ ’   . ・
                           〈     、′・. ’   ;   ’、 ’、′‘ .・”
                          〈       ’、′・  ’、.・”;  ”  ’、
YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY´     ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;

                              、′・  ( (´;^`⌒)∴⌒`.・   ” ;
::::::::::::::::::::::   ____,;' ,;- i                、 ’、 ’・ 、´⌒,;y'⌒((´;;;;;ノ、"'人

::::::::::::::::::   ,;;'"  i i ・i;                _、(⌒ ;;;:;´'从 ;'   ;:;;) ;⌒ ;; :) )、___
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                           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ああああぁぁぁぁ! >>318 の家が!!!   〈     . ’      ’、   ′ ’   . ・
                           〈     、′・. ’   ;   ’、 ’、′‘ .・”
                          〈       ’、′・  ’、.・”;  ”  ’、
YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY´     ’、′  ’、  (;;ノ;; (′‘ ・. ’、′”;

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::::::: |.    i'"   ";        

支援

ここで1を振り返ってみましょう

幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」



のびたとリルルの妹変わりようにワロタ

幼女「ふぇぇ……」

男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」

て、提督(´;ω;`)

て、提督ーぅ(´;ω;`)

てかタイトル見たらあれがこんな話になるなんて誰も想像しなかったよな

連投してる奴うざい
イッチ楽しみにしてるよ

>>727面白いと思ってんだよ。スルーしろ

あいえん


幼女「ふぇぇ……」男「うへへへ。泣いても誰も来ないぜぇ」
1 :名無しさん@おーぷん:2015/06/19(金)11:23:48 ID:C3B(主) ×
幼女「おじさん、誰ぇ?」

男「おじさんはねぇ、キミのことが大好きなんだよ?だからさ、こうして連れてきたんだよ」


幼女「でもさ、これっていけないことなんじゃないの?」

男「そんなことないよ。おじさんは、純粋にキミを……」

幼女「でも、これって未成年者略取・誘拐の罪になるんじゃない?」

男「へ?」

幼女「仮にここで私を好きにしても、おじさんは社会的に抹殺されるよね?今の世の中、顔なんてすぐにネットで出回るし、ろくな就職なんて出来ないだろうし。そもそも、仮に就職しても私や家族への慰謝料で大半は飛ぶけどね」

男「ええと……」

幼女「つまり、おじさんの人生は、私の手にかかってるってことよね?おじさんを生かすも殺すも、私次第なのよ?」クスクス

男「」

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