男「売られてた奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまった」2 (1000)


前スレ

男「売られてた奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまった」
男「売られてた奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまった」 - SSまとめ速報
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変態と合法ロリとツンデレメイドのお話(´・ω・`)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434289831

とりあえず書くのは明日から(´・ω・`)おやすみ


南の女王国を発ってから数日後、王子は居城でもある王宮へと到着した。

王子「帰ったぞ!!扉を開けよ!!」

その一声で荘厳でいて強固な門がゆっくりと開き、堀に橋が掛けられる。

王子「よし、では入るぞ我が愛馬よ」

白馬「ヒン」

馬を引き連れて門を潜る、その先は広い庭がある。

王子「そなたを休ませたら我が妹に事の次第を伝えねばな、兄として策を任せきりにするのは不甲斐ない所だがあれは出来が良すぎる故に誰も勝てん」

白馬「………」

王子「…どうした、我が愛馬よ」

手綱を引いていた馬が急に立ち止まり、何かと辺りを見渡す。

王子「………!…」

正面、それに左右から武装した兵が近づいて来ている。

王子「…………」

背後をちらりと見やる。やはりそちらも同様だった、門に設置されている詰所から百を越す数の兵が出口を塞ぎ初めていた。

「………若、お戻りになられましたか」

兵の包囲が終り、完全に取り囲まれたのを確認した後で正面の兵の後ろから聞き慣れた声が響く。

王子「……爺、これは何事だ」

老近衛「……………」

向かい合うように立ち塞がった老人に尋ねる。

王子「…………………爺!!」

その者は王子が最も信頼する者の一人、自分が生まれる前から母に仕え、母亡き後も忠義を尽くしてくれた歴戦の戦士である。


老近衛「何も言わず投降してくだされ、若を傷付けとうはございません」

王子「………投降だと?」

投降。

つまりは負けを認め、剣を捨てろという事だ。

負けとはなんだ?何に対しての敗北を迫っている?

………思い当たるのは1つしかない。

王子「……我が妹は、王女は何処だ、爺」

老近衛「…………」

沈黙。

王子はそれだけで理解する。

何もかもが勘づかれ、抑えられたのだ。

父に、あの名君であり、暴君でもある王に。

王子「…………私を王子と知っての狼藉てあろうな?もし何かの間違いであるならばその方らの命に関わると心に留めておけ!!もう一度聞く……これは何の真似か答えよ!!」

その言葉は只の確認に過ぎない、武装した兵が王子である自分を包囲しているのだ、余程の理由なくばそんな事はしない。


「それにはわたくしがお答え致しますわ」

王子「………っ!!」

老近衛の背後から、再び包囲の中に入ってくる者……その者は美しく、よく響く声で王子の問いに答える。

王子「…………近衛総団長殿か、我が父の直衛であるそなたまでこの騒ぎに便乗か」


団長「…………ふふっ…」

近衛総団長と呼ばれた女性は王子の目の前まで近づいて来ている。

美しい人だった。妖艶な雰囲気と仄かに香る花のような香水の匂い、年齢は既に四十を越えているにも関わらず十代である王子と並んでも大した歳の差があるとは到底思えぬ程に肌は潤い、顔には皺の一つも無い。

団長「……ゆっくりと話をしたい所ではあるのだけれど……こんな場で世間話をする訳にもいかないから説明してあげましょう……元殿下?」

王子「………元…だと?」

団長「そう、貴方……それと妹君の王位継承権は剥奪されました、国王の勅命ですわ」

王位継承権の剥奪。それの意味する事はつまり……王は自分達兄妹を捨てたという事だ。

王子「…………っ………!!」

恐らく理由は自分達兄妹の計画のせいであろう。だが、父である王には自分達以外には子供は居ない、つまり、国を継ぐ者を捨てると、そう言っている。

王子「………我が父は何を考えている、王家の血筋を絶やすつもりか!?」

団長「いいえ」

王子の問いに、抑揚なく平淡な声で近衛総団長である美しい女性は答える。

団長「貴方と妹君は陛下の実子ではない。お亡くなりになったお妃様に不義があり、その時にもうけられた子だと確認が取れましたの」

王子「………な……」

団長「つまり、貴方は元より王子などではなかった、そういう事ですわ」




目の前の女は何を言っている?

私の母が不義……つまり、父を憚り他の男と寝て、それで孕んだのが自分だと言っているのか?

団長「その通りよ」

何かの間違いだ、母はそのような事をする人ではない。

団長「それは、貴方が女を知らぬからそのような事を言えるのよ」

私は……妹もだ、父と呼んでいた王と似ている。血が繋がらぬのならば似たりはしない。

団長「不義を行った相手は、ご隠居為されている王兄様……あの変わり者の公爵様だそうよ?陛下の兄上様の御子息なら、陛下ともお顔は似ても不思議はないでしょう?」


…………………。

王子「…………」

団長「………陛下はこう仰ってましたわ、『我が子として我の意思を継ぐ者だったなら何も言いはしなかった、だが愚か者の子は所詮愚か者だった』と」

王子「……………」

団長「貴方方兄妹は陛下のお情けで泳がされていただけ、度が過ぎれば捨てられる身分だとも知らず、陛下に刃を向けようとした、これはその報いですわ、ふふっ」

王子「…………く……ふふ……くくっ……」

団長「………?…何故笑うのかしら?気でも触れてしまって?」

王子「……ふっく……くく……はははははははははは!!!!なるほど、道理で反りが合わぬ筈だ、我が父は父ではなかった、そういう事か!!はっはっはっはっは!!!!」


団長「……………」

高笑いを続ける王子を見て、周囲の兵に動揺が走る。

妙な行動をするのはこの王子のいつもの行いではあるがその時は少し違う、何かざらつくような、殺気じみた気配が混じるのを肌で感じていた。

王子「ならば遠慮など要らぬか……親殺しの汚名に怯える事なく我が道を突き進めるという事だ、そういう事ならば私は喜んで逆賊として身を落とそう」

そう言な放ち、王子と呼ばれていた青年は剣を抜いた。

青年「王子という身分等に未練は無い、敢えて私自ら捨て去ろう、そして……」

青年は、目の前の美しい女性……自らが討つべき国の、近衛総団長に剣を突き付けた。

青年「我が妹を渡して貰う、渡さぬというならばこの場の兵全て切り殺してでも探しあてるぞ」


団長「怯むな、我が国最強の剣士とはいえ数には勝てない、四方から攻めなさい……陛下は殺しても構わぬと仰っています」

青年の圧に気圧された兵に指示を出し、自らは下がろうとする団長。

しかし。

青年「……すまぬが加減は出来んぞ……!!」

数人の兵が四方から飛び掛かるも、王子は正確に襲い来る剣や槍をいなし、かわして突撃してきた兵の腕や足、鎧の隙間を切り裂、そして突き入れる。

一瞬の内に複数の兵が戦闘不能にされ、第二波として駆け付けていた兵の多くが足踏みし、その場に固まる。

その隙を見逃さずに青年は団長が下がった方向へと全力で駆けた。

団長「………っ!!流石に……!!」

青年「爺や女兵士ならいざ知らず……コネで入ったような貴女が私を止められるかな?悪いが取らせてもらう……!!」

青年が間合いに団長を捉え、その剣を振りかざす。


瞬間、剣撃の火花が散る。

青年「………!!」

団長「一つ勘違いをしていますね?わたくし、爵位を持ってはいますが本来は戦士の部族の出身ですの」

青年は剣の鍔迫り合いなど殆ど行わない、それは青年の剣が相手の剣を受ける前に全て切り伏せるからという理由だ。しかし、今青年の剣は完全に受けきられてしまった。

団長「ご存知だったと思いましたが?」

青年「……ちっ…!!」

一度間合いから離脱し、体制を立て直す。しかし今度は向こうから追撃の刃が飛ぶ。

団長「詳しく説明すると、にじゅうねん程前にこの国が攻め滅ぼした東方の遊牧民族なのですけれど、その血筋を持つ者は身体能力に優れ、剣を握ればその剣は岩を砕き、その拳をそのまま武器とするなら虎でさえ一撃で屠ると言われた戦闘民族ですの」

青年はその高速の剣を紙一重で避ける、そして相手が連撃する一瞬に合わせて手首を狙い剣を払う、だがまたもや剣の軌道を変えて受け流されてしまう。

団長「…………まあ、わたくしがそんな者ではなくとも、貴方はわたくしを斬ることは出来ませんけれど」

だが剣の技量自体は青年の方が上だった。身体能力はほぼ互角なようだが戦闘に関しての経験値は自分の方が勝る。少しずつ青年の刃が団長の身体を掠めるように捉えていった。

青年「…………どうやら口だけのようだな……獲ったぞ!!」

決定的な隙が生まれ、青年の剣が団長の首筋を目掛け走る。

しかし。団長の首は胴を離れる事はなかった。


団長「……■■■坊や、止めなさい」



今、首に剣が触れるかどうかという所でそう呟く。

それは人の、青年自身の愛称だった。

青年「………っ!!」

そして、青年はその振るった剣を、今切り飛ばさんとしていた者の首筋にあてがうにどどめる。無意識に止めてしまった。

それは今はもう誰も呼ぶ事の無い、幼い頃から面倒を見てくれた爺や……妹ですら呼ぶ事の無い、かつてただ一人だけ自分をそう呼ぶ者がいただけの自分の名前だった。

団長「………馬鹿な子……分かっていてもやはり手が止まる、母親と同じ顔で名を呼ばれただけで、ね?」

トン、と……青年の脇腹に音が響く。

青年「…………っ……」

青年は下を見る。そこには自分の脇腹に……革製の防具を貫いて突き刺さる剣が見える。

団長「……それとも、敵視はしても母の姉は斬れない、そうおもいとどまってくれたのかしら?坊や……?」



ねる(´・ω・`)おやすみ


青年「……っ……ぐ……!!」

団長「……ふっ……」

団長の剣が青年の脇腹より引き抜かれ、そして流れるような動作で自分の首筋にあてがわれた青年の剣を払い除ける。

続けて力を込めた蹴りを放ち青年を後ろへと吹き飛ばす。

青年「がっ……!?」

互い間合いの外となる距離まで離され、青年の腹部から血が溢れる。

団長「……少々浅かったかしらね、でもわたくしとの死合は坊やの負けね」

剣先にまとわりつく血を振り払い、団長はそれで剣を鞘に納めた。

青年「………ま……まだ……!!」

致命傷ではない、脇腹を刺されたとはいえ内臓には届いていないようだ、だがその刺された傷からは血が止まらずに溢れ、青年が方膝をついた地面に滴り落ちて染みを作っている。

まだ闘えるす傷は浅くは無いが闘えない程ではない。青年はゆっくりと立ち上がり……再び剣を構える。

青年「………妹を………!!……」

今退くわけにはいかない、王女……妹が無事かどうかはまだ確認していないがどちらにせよこのままでは命が無い。何があろうと連れ出し逃げ延びなければならない。


青年(………奴だ、近衛団長さえ仕留めれば兵に動揺が生まれる……そうすればまだ……)

激痛により汗が吹き出て、眼が霞む……だが倒すべき相手はしっかりと見据えていた。

次は斬る。

もう惑わされはしない、あれは、目の前の女は母ではない。

一度吹き飛んでしまった闘志を再びたぎらせ……青年は背中を向け下がろうとする女に斬りかかろうと腰を落とした。

だが……

団長「……兵達、手負いならば貴方達にも仕留められる筈よ………やりなさい」

団長が手を振りかざし、号令を放つ。

辺りを取り囲む兵は、それで傍観者から迫り来る敵へと変貌した。

団長「……さあ、どこまでもつかしら?ふふ……」


青年「…………っ……!!」

妖艶な微笑みを見せてから、団長の姿は襲い来る兵に阻まれ見えなくなる。

そして、怒号と地響きに似た振動が青年の身体を包んだ。

…………


団長「…………………」

兵に号令を放ってからどれくらい時が過ぎただろうか?三十分……否、一時間近く経過しているかもしれない。

青年「……ぐ……がァッッ!!」

王子であった青年は未だに倒れず、剣を振るっていた。

頬を、肩を、胸を背を……全身に何ヵ所も切り傷を作り、そこから血を流し、青年が剣を振るうと血飛沫がまるで返り血のように兵に降りかかっている。

既に百を越える数の兵が青年の剣によって戦闘不能に陥られている。そしてそれはまだ続いていた。

赤く染まる青年はどう見ても瀕死だ、しかし……どれだけ切り刻まれようとその威圧感は衰えない……むしろ増しているようにも感じる。

団長「…………ちっ……」

いくら最強と詠われた剣士とはいえ、手負いの小僧一人にここまで手こずるとは思っていなかった。

団長(…………もう一度わたくしが痛め付けるしかないかしらね……役に立たぬ雑兵共が……)

一歩、青年の前に踏み出し舌打ちをする。本来ならば自分はこんな血生臭い事をやるような立場の人間ではないのだ、ただ目的のためにこんな下らぬ位に身をやつしているに過ぎない。

団長(…………忌々しい妹に奪われたものがようやくわたくしの元に戻ろうと言うのだ……これ以上手を煩わされたら堪らないわね坊や……!!)

やはり自らが動かなければ次へ進めない、ならばそうしてやろう………そう思い剣を引き抜いた。

団長「………っ……!?」

瞬間、射抜くような殺意を感じて身体が強張る。

団長「……………」

その殺意の元は、ふらつき今にも倒れそうになりながらも剣を振るい続けて兵達を切り伏せている青年からだ。

待っている。

団長「…………」

あの坊やは自分が再び目の前に来るのを待っている。襲い来る兵の頭を抑えるために、確実に仕留められる機会を伺っている。

今行けば自分は殺される。確実に……。

団長「………王の器、そして勇者の血族とはよくいったものね……坊やは異常だわ」

引き抜いた剣を納めて、再び下がる……焦れて飛び出せば思うつぼのようだ、ここは雑兵に任せるじっくりと狩るのが最善だろう、あの戦いぶりがもう一刻持つとは考えられない。


老近衛「……若、それまでです」

青年「………っ……!!」

血みどろになりながらも襲い来る兵を撃退して暫く経過している。そして、その老人は青年の前に立ちはだかった。

老近衛「兵達よ下がれ、これ以上被害を出すな」

その一声で辺りに居た兵が下がる。

青年「…………っ……次はそなたが相手か、爺よ」

乱れた呼吸の中でなんとか声を絞り出す、掠れた声……いや、声になっていたかも分からない。

老近衛「…………」

青年「…………爺………何故だ……」

老近衛「…………お答え出来ませんな、ここでは」

青年「…………そうか……ならば……」

青年は老人に剣を向ける、いまの状態で勝てる相手ではない……切り結びたくもない、だが……斬らねば成らぬというのなら自分はやらなくてはいけない、妹の為に、この国の為にも。

老近衛「私は終いだと言ったのです、若………あれをご覧下さい」

青年「…………?……」

老人の目線の先を見やる。

青年「………!!」

そこには、近衛兵に拘束された王女……妹が居た。

老近衛「これ以上抵抗するならば、姫様のお命は亡いものと思って下されい……今は薬で眠らせてあるだけですが私の一声で隣の近衛の剣が姫様の首を飛ばしますぞ……」

青年「……貴様……これがそなたがする仕打ちか!!爺!!」

老近衛「……………」


老近衛「………お許しは乞いませぬ、どうとでも受け取って頂きたい」

青年「……………………」

青年の脳裏に、数日前に切り伏せたこの国の近衛兵の言葉が過る。

『御乱心為さっているのは両殿下だけでございます故…』

どうやら、あの言葉は真実だったらしい、自分達兄妹には味方……信頼出来る者など居なかったのだ。

老近衛「若、剣を棄てて貰えませぬか?」

青年「…………」

老近衛「…………若…!!」

青年「………ふぅ……もはやこれまで、か……」


老近衛「…………では…」

老人は青年の呟きを聞いて、一歩近付く、だが。

青年「……助かったぞ爺、よくぞ我が妹をここに連れてきてくれた」

にやり、と…満身創痍の青年は笑った。そして。

青年「我が愛馬よ!!我が妹、そなたのもう一人の主を救い出せ!!」

その青年の叫びに呼応して、けたたましく気高い馬の嘶きが響く。

白馬「ヒヒィィィィィィン!!」


近衛兵「なっ!?ひ、ひぃ!?ごがっ!!」

王女を拘束していた近衛兵の近くにいつの間にか近付いていた白馬がその蹄を踏み下ろす。

王女「……………」

弾みで王女は地面に転がるが、怪我はしていないようだった。

老近衛「……!!」


騒然となる辺り一面、その隙を突いて青年は走る、激痛により既に身体はまともに動かないが、妹とそれを守るようにへいを阻んでいる愛馬までならば行ける。

団長「………ちっ……何をしているの!!馬ごとき槍で突くか矢で射殺しなさい!!」

今更指示を出しても遅い、一度崩れた体制は数が多いなら立て直しは難しく捗らない、青年が白馬と王女の元へ辿り着く方が早かった。

青年「我が妹よ……!!ちっ、やはり薬で眠らされているか……!!」

王女を抱きかかえ無事を確認する、薬で眠らされているのなら暫く目を覚ますまい……ならば…。

青年「我が愛馬よ、落とすでないぞ」

馬の鞍に乗せて、簡単に縛って落馬しないように固定する。

白馬「ヒヒィン!!」

その間に兵達の体制て立て直され再び襲い掛かって来るがし騎してしまえばこの青年の愛馬ならば包囲を突破するのは容易い。


青年「よし、行くぞ我が愛馬よ……っ!?」

青年が白馬に乗騎する瞬間、上空から無数の矢が飛来した。

避わせない。避ければ妹に当たる。

青年「………っ……かはっ…!!」

眠らされている妹に覆い被さり、青年の背に矢が突き刺さる。

無理な体勢で庇った為だろう、青年はそのまま地面へと転がり落ちる。

倒れたままに、矢が飛来した方向を見る、そこにはやはり近衛団長の姿、それに数人の弓兵が弓を構えていた。


団長「………そう易々と逃げおおせるとでも思ったかしら、諦めなさい坊や」


青年(………妹は……)

馬の上に居る妹を確認する……どうやら矢は全て自分が受けたらしい、妹には傷ひとつ見つけられなかった。

白馬「…………ヒン…」

倒れたままの自分を心配しているのだろう、白馬が青年を鼻先で押しやろうとする素振りを見せる、だが……

青年「……行け……妹を、我が妹を逃がせ……!!」

白馬「…………」

青年「………行け……!!」

留まろうとする愛馬を叱咤し、青年は気力を振り絞り叫んだ。

そして、一瞬躊躇うようにしたあとで白馬は兵達の上を飛び越え、そして駆けた。

青年「………そうだ、良い子だ、お前は私と違い頭が良いな…………」




青年「…………頼むぞ…」


団長「……!!……逃がすな、すぐに門を閉じなさい、何故未だに開いたままになっている!?」

王女を乗せた白馬は門を潜り、いま上げられんとする桟橋をも駆け抜け、飛び越え走る。

団長「………くっ……!!役に立たない…!!弓馬兵う要請を出しなさい、必ず仕留めろと伝えておきなさい、急げ!!」


青年「………っ……王宮は無事抜けた、か………ならば無駄だ、我が愛馬は……っ……この国随一の駿馬だ、追い付けぬよ……くくっ……」


団長「…………生意気な…!!」

青年は既に身体を動かす力も残っていなかった……だが、一番の目的は果たした、今はそれで十分だ。

団長「…………まあ、いいわ……逃がしたのは小娘一人、貴方に逃げられるよりは仕留めるのも簡単でしょうし……それに…」

近衛団長は剣を抜く、そして青年にそれを突き付けた。

青年「………どうやら正真正銘、もはやこれまでらしい、もう戦えぬしな」

団長「そうね、坊やの命はここで終わりにしておくわ、貴方は危険過ぎるもの」

青年「…………そうか」

(´・ω・`)俺から注意しといた方がええんかね、レスくれるのは嬉しいが度が過ぎると迷惑行為になっちゃうからあまり過剰にレスするのは控えておくれ。

前スレ以上に埋まるペース早いと俺も困ってしまう、3スレ目は行かずに終わらせたいから見ている人はその辺りよろしくお願いしたい。

あくまでも抑えてねとの事だからレスすんなとは言ってないからね?そこんとこもヨロシク(´・ω・`)ノ


老近衛「待たれよ」

団長「…………何かしら叔父様、貴方は口出しするなと命じていた筈よ?」

老近衛「陛下は捕らえよとご命令された筈……違いますかな?」

団長「同じ事よ、国家反逆の罪は斬首……ならば首を飛ばすのは今でも佳いのではないかしら?」

青年「………?……」

団長「……それとも、わたくしへの忠義を反古してこの坊やにつく気かしら?わかっているのよ?門を閉じさせなかった事もそうだしあの小娘をここへ連れてきたのも叔父様の独断だとね……わたくしは殺しておけと兵に命じたと思っていたのだけれど、どういう事かしら?」

老近衛「…………」

青年(………爺……?……)

ねる(´・ω・`)レス0はかなすぃから勘弁だがみなさんほどよく荒れない程度に応援ヨロシク(´・ω・`)ノじゃ、おやすみなさい


団長「……まあ良いわ、叔父様の責を問うのは後回し、今は……」

老近衛「…………」

老人はそこで背後を見る、そして方膝を付き頭を垂れる。それは敬礼の姿勢である。

団長「………なにを………っ……!……」

老近衛「お控えなされ、陛下の御前じゃ」

近衛団長は視線を延ばす、その先にはこな国の覇者の姿。

王「……………」

王はゆっくりと歩み寄る、そして近衛団長と老人……そして青年の前まで近付いて止まる。

青年「………っ……!!」

団長「……陛下!!よもや此方にいらっしゃるとは…」

近衛団長も老人に習い跪き頭を垂れる……その美しい顔、その頬に怯えと共に汗が滲む。

だが、そんな彼女に一瞥もくべず王は言葉を放った。

王「不様だな、我が息子」

青年「…………っ……」

何の表情も浮かべぬままに、その眼だけは冷たく、威圧するように細めて王は言う。

王「力も持たぬ身で事を急ぎすぎた代償だ、理想だけしか見えぬ愚か者は総じてそうなる」

青年「……………」

青年は既に言葉を放つ気力すら残って居ない。ただ父だと思っていたその暴君の言葉を薄れゆく意識の中で辛うじて聞いている。

どうやったら、直接続きから見れる?
最初の1ページからじゃなくて。
続き読みたい( ^ω^ )

王「………せめてもの慈悲だ、アレだけはこのまま見逃してやろう、どうせ権威と、兄であるお前という拠り所がなければ何も出来ぬ弱い娘だ……放っておいても独りでは生きていけずすぐに果てる」

青年「………っ……ぐ……」

団長「っ!!へ、陛下それは!!あれは中々に頭が切れます、放置など…!!」

王「黙れ、これ以上の勝手は我が妃の姉であろうが容認せぬぞ、辺境の蛮族ごときが今の地位に居るのはどういう理由であるのか、それをよく考えろ」


団長「……っ………申し訳ありません、陛下」


王「………ふんっ……では我が息子、いや……不遜な反逆者の小僧、貴様には然るべき処罰を下す、これも運命と受け入れるのだな」

青年「…………」

青年の意識はそこまでで途切れる。


暗く、深い処へと青年は、この国の王子として民に愛され、民を愛した者はゆっくりと堕ちてゆく。

………………

続き見れた。
お疲れ様です。
良い仕事してますね。( ´ ▽ ` )ノ


……………

王女「…………………っ……」

彼女が目を覚ました場所は、ゆっくりと歩く白馬の上だった。

白馬「……………」

王女「………ここは?」

担がれたような体勢だった身体を起こし、鞍の上へと座り直す。それから辺りを見渡しながら、どうして自分が兄の馬に乗せられていたのかを考える。

彼女は何が起きたのか知らなかった。ただ、王宮でいつものように過ごしていただけだ、直前の記憶では食事を採っていたいた筈だかその後の記憶が無い……突然眠気に襲われたような、その程度だった。

王女「…………」

今居るのは木々か閑散とそそり立つ林の中だ、見覚えはない。

王女「………薬で眠らされた……?……にいさまは……」

自分が兄の馬に乗っているのなら、兄はシロニ帰って来たのだろう、なら事情に兄に聞くのが早い。


王女「…………」

だがおかしい、兄の姿は見当たらない、それに何故こんな夜更けに馬の上に居る?薬で眠らされた理由は?ここは何処なのか?

王女「………………っ………」

悪い考えが過る。今の状況が起こり得る事態を想定してしまう。してしまえた。

怖い。

にいさまに会いたい。

どうすれば良いのか分からない。

王女「……にいさまは?……ねぇ?」

白馬「……………」

自分が跨がる白馬に問い掛ける、だが馬が言葉を放つ事などない……白馬は嘶くこともせずに、ただ歩を進めるだけだ。


怖い。

どうしようもなく怖い。

独りで居るのが、何も分からぬのが、不吉な予測をしてしまうのが怖い。

王女「……にいさま?にいさまは?」

兄の事を尋ねるとも誰も返しはしない。

怖い。すごく怖い。

自分は兄が居なければ何も出来ない。それを彼女は分かっていた。

自分が兄に守られて居たのも自覚していた。そしてそれに甘えてずっとすがっていた。

自分は兄が居ないと駄目なのだ。これまでそれで良かった。これからもそうだと思っていた。

王女「にいさまは?教えて……ねぇ…」

だから、今こんな時に兄が居ないのは恐ろしく、不安で仕方がない。

王女「………戻って…」

白馬に向かい、そう呟く。

王女「……帰る、にいさまはきっと王宮……だから、帰る」

手綱を引き、進路を改めさせようとする。

……だか、白馬はそれに従わない。

王女「……戻って……戻って、お願い…」

力を籠めて手綱を更に引く、だが従わない。白馬はただ真っ直ぐに林の中を突き進む。

白馬「……………」

王女「……戻って!!戻ってったら!!」

瞳から涙が溢れ、叫んだ。こんな大声なんか出したことなどなかった、だが……叫ばずにはいられなかった。

怖い。

にいさまに会いたい。

にいさまはどうなった?

どうして自分はここに居る?

考えたくもない答えだけが頭に浮かんで離れない。

王女「……うっ……く……にいさま……にいさまに会いたい…」


白馬「………ヒュ……ブルル」

王女「………っ……?……」


突然、白馬が止まる。

転進するわけでもない、ただ立ち止まってしまう。

王女「…………」

掛けた眼鏡をずらして涙を拭う、そして少しだけ落ち着く為に深く息を吐く。

王女「……どうしたの?」

白馬「……………」

耳をよく澄ましてみると、白馬の呼吸がおかしい事に気付く。

風を切るような、息苦しそうな音を漏らしている。

王女「!!」

そこで初めて気付いた、白馬の身体……自分の足の近くに深々と矢が刺さっていたことに。

それは彼女の予測を決定的にする証拠でもあった。だか、それは今はいい。

止まっている馬の背から降りて傷を見るれはとうどう見ても不味い箇所だった、命に関わるかも知れない。

白馬は彼女が降りてすぐに地面に膝を着け、倒れるように伏せてしまった。

王女「……どうすれば…」

何時受けたのかは分からない、だがかなり時間は経っている筈だった。

そんな傷を負っているのに、自分を乗せてずっと走っていたのだ、この子は。

白馬「…………」

白馬は力無く瞳を彼女に向ける。

………ここからは独りで行け。

そう語りかけている、それだけは分かってしまう。

この子はとても利発で、何をすべきなのか分かっているのだ。そして主人である兄の命を命懸けで聞いたのだ。

王女「…………」

拭いさった筈の涙が再び溢れる、だけど泣いている訳にはいかない。

王女「………助けなきゃ……でも、どうすれば…」


応急措置の知識はある、だけどそれは知識だけだった。したこともなければ必要な道具もない。

王女「……どうしよう……にいさま…」

きっと兄ならば正確にどうするべきなのか判断するだろう、でも自分はいざという時に対処の仕方が分からない。

兄よりは頭が良い、知略や政治の事についてなら誰にも負けない自信はある。だけど、それは机上での予測や推論ばかりで本当に上手くやれていたのかなんて分からなかった。

様々な書物や論文等を見て、自分なりに解釈して判断していただけだ。自分で経験した事を踏まえた行動なんかしたことがない。当然だ、自分はただ兄の後ろでぬくぬくとしていただけなのだから。

今回の事だってそうだ、自分の知識が兄の助けになると思い考えを巡らし策を講じていたが、何一つ上手くやれていたのか行かなかった、上手くやれていたのなら今こんな所に自分は居ない。知識だけの自分では、あの父を上回る事など出来なかった。助けになるどころか、下手をすれば窮地に陥らせたのは自分の失敗が原因なのかも知れないのだ。

王女「………私じゃ無理……人を……」

辺りを見渡す。

夜。それに何処とも知れぬ林の中。

当然人なんか居ない。

王女「…………」

怖い。

だが行かなくては駄目だ。

王女「………待っていて、すぐに戻ってくるから」

白馬「……………」

王女と呼ばれていた少女は、何処とも知れぬ場所で、暗く何も分からぬ所へと歩き出す。


暗くて足元も覚束無い、だけど進まなきゃいけない。

あの子は独りで行けと語りかけていた、でもそんなのは無理だ。

怖い。

どうしようもなく怖い、怖くて震えが止まらない。

にいさまは今居ないんだ。だから自分でどうにかしなくてはいけない。

王女「………うっ……!!」

木の根に足を取られ転んでしまう。

王女「……め、眼鏡……眼鏡が…」

転んだ拍子に眼鏡が外れ、更に何も見えなくなってしまう。

王女「………うっ……ひっく……うぅ……」

怖い、どうして自分はこんなに非力で何も出来ない?助けが無ければこんなにも矮小な存在なのか、自分は。

ようやく探し当てた眼鏡は石か何かにぶつかったのだろう、ひび割れて使い物にならない。

王女「………うっ……ひっく……」

それでも行かなきゃ行けない、蹲って泣いている暇はない。


何も見えない、方角も、場所も、何もかも分からない。それでもあの子を助けなきゃいけない。

あの子まで居なくなるのは嫌だ、それこそ自分は怖くて動けなくなってしまう。だから行かなくては駄目なんだ。

……………


…………

王女「…………っ……」パチッ

少女「あっ、気が付きました?」

王女「………?………?……」キョロキョロ

少女「ちょっと待っていて下さいね?ご主人様と女兵士さん!!王女様が目を覚ましましたよっ!!」タタッ

王女「ここは……どこ?」


バタン!!

女兵士「で、殿下!!お目覚めになられましたか!!」タッ

王女「……!!」

男「良かった、何ともない様子で…」

王女「………私……」

男「南の女王国から戻って来たら近くの林の中にあの黒馬が入ってくんで付いてったら王女様が倒れてるんですもん、びっくりしましたよ」

王女「……っ…!!そう、あの子はここに向かって……」

女兵士「……殿下、あのような所に何故?一体何が……」

王女「………!!それよりあの子は…!!」

男「はいはい落ち着いて、まずは食事にしましょ?メイドさんが今持って来ますから」


王女「そんな余裕は…」ノソッ

男「まあまあ、ほらメイドさんが丁度運んできたし」

メイド「タイミングが良かったようですね、たった今出来た所です」カタッ

王女「…………」

女兵士「殿下、この者達の言う通りです、まずは何かお食べになられてから……心配ありませんから」

王女「………でも…」

男「うまそうな匂いだな、メイドさんなに作ったの?」

メイド「シチューですよ、丁度新鮮な馬肉が手に入りましたので」

王女「」ビクッ

男「へぇ、うまそうだな、たくさんある?」

メイド「ええ、有り余るほど、なにしろお肉だけでかなり量が……」

王女「ば、ばにく……?」オロオロ


メイド「馬肉お嫌いですか?おいしいですけど」キョトン

王女「」


男「………あー、メイドさん待って、タイミング悪い」フルフル

メイド「へっ?」

女兵士「ああ、そういう事か……いや、殿下それは…」

カチャ

盗賊妹「おー、本物のお姫様だー!!でもちっこいな?」モッチャモッチャ

盗賊「お、おい窓から話し掛けるな!?失礼だろ!!」


男「外に居たのか……ていうかなにくってんの盗賊ちゃん達」

盗賊妹「焼ばにく、うまー」モッチャモッチャ

盗賊「ちゃん付けすんなって……そこのねーちゃんが捌いたの余ると腐るからって俺ら家族で食ってんだよ、旨いな骨付き馬肉」モグモグ

男「…………」アチャー

女兵士「………」

王女「…………………………………………………………………………………」ジワッ

王女「…………あの子は?殺したの?死んでたの?」オロオロ

女兵士「あ、いや、殿下?」

メイド「へっ?えっ?」

男「ちょっと待って下さいってば、えーと…」ポンッ

王女「殺したなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」メキョ

男「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?腕!?腕がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」ミシミシ

女兵士「で、殿下落ち着いて!?その者腕が複雑骨折してしまう!?」

メイド「えっ?えっ?」オロオロ

盗賊「な、なんだなにごと!?」モグモグ

盗賊妹「おー、見た目よりパワフルだなー?」モッチャモッチャ

王女「あの子を喰うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ポロポロ

男「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」ビッタンビッタン

メイド「わ、若旦那様!?ちょ、ちょっと王女様ーー!?」オロオロ

メイド「と、とにかく落ち着いて!?ちょ……うそ力強っ!?」ガシッ

王女「う"う"う"う"……」ポロポロ

男「う、腕が……俺の腕が紫色にぃ……」ビクビク

女兵士「殿下は実はむっちゃくちゃ力が強いんだ……リンゴ程度なら片手で握り潰せる」

男「………何処かの誰かさんと同じ特技持ちだと……」チラッ

メイド「そ、そんな事よりどうすれば!?わ、私でギリギリなんですけど押さえるの!?」ギチギチ

パッカラパッカラ

にゅっ

白馬「ヒン」ブルル

盗賊「お、手当終ったかコイツ」

盗賊妹「よかったなー」

王女「………あれ?」キョトン

女兵士「殿下、兄上様の愛馬は無事ですから、この通り」

王女「……え?でも…矢が……」

男「刺さってましたね、でも肋骨で止まってたから軽傷でしたよ、見つけたとき鼻ちょうちん作って寝てました」

王女「」

白馬「………ヒン」ニヤリ

ねる(´・ω・`)おやすみ

あとなになにの人ってけっこう聞かれるがオリ系は初めてだし全部違うでしょ、禁書SAOエヴァ辺りで見たってなら当たりかもね、じゃ


王女「……途中で倒れて、行けって語りかけてきたから……力尽きてしまって、だから助けないとって……」ウルウル

白馬「………ブルル」ジー

盗賊「ずっと走りっぱなしで疲れたんじゃねぇの?だってオレの国から帰ってきたりそっからここまで来たりでコイツ走りっぱなしだったんだろ?なぁ?」ポンポン

白馬「ヒン」

王女「……………でもあんな人の居ない所で急に止まったら勘違いする……」

男「この屋敷から200メートルぐらい手前でしたけどね、コイツが寝てたの」

王女「え?」

白馬「ヒン」ブルル

女兵士「ちなみに殿下はまったく逆方向の林の中で倒れてました、わざと道外れて林の奥へ行ったような感じで馬が見つけなければわかりませんでしたよ?」

王女「…………」

白馬「………ヒン」ジー

王女「…………」

―――(疲れたし、もう近いから)ここからは独りで行け。って言ったんですが?

白馬「ブルル、ヒン」ヘッ

王女「…う……ふぇぇ……だ、だってホントに死んじゃうのかと……」ホロホロ

男「なんか、ひねた眼をしてんなこの馬」

メイド「たぶんあれですよ、主人がちゃんと名前付けてくれないからひねくれてしまったんだわきっと」

白馬「………」コクリ


王女「………とりあえず、取り乱して怪我をさせた、あやまる」ペコリ

椅子「」

男「いや、俺こっちっす………まあ大丈夫ですよ王女様、こんなもん慣れてるんで、ほらもう平気だし」プラプラ

王女「………?……やっておいてあれだけど、骨が砕けてもおかしくないぐらい強く握ってしまったはず」

女兵士「どうなってるんだ貴様の体は、マジでなんともないが」ジロジロ

男「さぁ?なれてんじゃないすか?子供の頃からぼっこぼこにされても次の日にはけろっとしてたもんですが、こんなもんじゃね?なぁ?」

メイド「どうなんでしょうね?このぐらいが普通なのでは?」

女兵士「………殿下、どう思います?」ヒソヒソ

王女「…………さあ、人の事は言えないけど、とにかく異常」ジー

男「失礼な、人を化物みたく言わんで下さいよ、俺はいたって普通の青年商人だというのに!!」プンスカ

メイド「そうですよ、若旦那様は特に取り柄なんかないですから、弱いし」

男「…………さらっと言われると心に来る……!!」ズキズキ


少女「あれ?なにかあったんですか?盛り上がってますけど」トタトタ

男「ん、ああいや……なんでも」

メイド「食事の用意が出来たんですか?」

少女「はい、別室に人数分配膳しました、とりあえずお話はお食事をしながらで良いのでは?」

女兵士「私はここで殿下と頂く、用意してもらって悪いが運んで貰えるか?」

王女「いい、大丈夫、私がそっちにいく……ここにいる全員に話して置かないとダメ」

男「そうですか……ならこのシチューは向こうに持ってきましょ」スッ

王女「……………あの…」

男「はい?」

王女「……で、出来れば馬肉以外がいい」

男「………ですよねー」

メイド「それなら違うもの用意しますね、すぐに出来る物でよろしいならですが…」

王女「大丈夫、ごめんなさい…」ペコリ

盗賊「いや、なんでオレに向かってあやまる」

女兵士「……眼鏡も用意しなければダメか」

………

男「さて、一段落した所で話を聞きましょうか、一体何があって王女様は倒れてたんです?」

王女「………事実は知らない、でも推測は出来てる、恐らく父に企みが全てバレた」

女兵士「……っ……!!」

男「……メイドさんと少女ちゃん、ちょっと席を外してくれ、大事な話みたいだ」

メイド「えっ、ああはい…」

少女「……むぅ…」

王女「まって、どうして席を外させるの?」

女兵士「この者まだ詳細を話してないようですよ殿下、問い詰められてもはぐらかしてばかりでしたから」

男「うぐっ…」ギクッ

王女「…………詳しく話しておいたほうが良いと伝えた筈だけど」ジー

メイド「…………」ジー

少女「…………」ジー

男「………い、いや……そのぅ…」ダラダラ

王女「……まあいい、どうせ今から話す、二人も聞いて」

少女「はいっ、わかりました」コクン

メイド「じゃ、このまま居ていいんですね?」

男「……む、ふぬぐ……」ダラダラ


説明後

メイド「」

少女「…………………………やっぱり…」

王女「これが私のおおよその予測」

女兵士「…………王子様が……くっ……」

男「……状況証拠から見て間違いない……か……王子は薬で眠らされた王女様を救出したは良いが自身の脱出には失敗したんだな……」

王女「………にいさま……」

女兵士「……救出に向かわなければ……!!」ガタッ

男「どうやって?王女様の予測は正しいでしょうけど正確な情報って訳じゃない、今から行っても何も出来ませんよ」

女兵士「……………」プルプル

王女「私も同じ意見、にいさまの無事は心配だけど、私達だけでは何も出来ない、味方は一人も居ないと考えるべき」

メイド「あ、あのっ!!」ガタッ

王女「なに?」

メイド「……………な、なんでそんな怖い事をしてるんですか……?こ、コイツ…じゃなくて!!わ、若旦那様まで巻き込んで…!!」

男「……………」

少女「………メイドさん」


王女「巻き込んでいるのは確か、私達が依頼しなければ彼は関わる事は無かった事、それは謝っても償いきれない、ごめんなさい」

メイド「……そ、そんなの……!!ど、どうして若旦那様なんですか!?商人としての能力だったら他にもっと優秀な人なんてたくさん!!」

男「…………」ボリボリ

王女「………彼ほど優秀で、それに私達の理念に共感してくれそうな人は他に居なかった。だから」

メイド「……ゆ、優秀なって……でも…」チラッ

少女「……め、メイドさん……ご主人様はその……」

男「………ごめんメイドさん、黙ってたけどけっこう荒稼ぎしてるので有名だったんだ俺、メイドさんに教えてる金額なんか利益の1%にもならない」

メイド「…………で、でもそんなお金いつも持ってないし、貧乏で大変だって……」

男「ごめん、全部嘘だ」

メイド「……………」

少女「…………」


メイド「……わ、わかった……ううんわかりました、えと……殿下達が依頼なされたのと、今の状況はわかりましたけど……」

少女「…………」

男「…………」

メイド「お、王女様達には失礼な発言だと思いますけど………若旦那様は……まだ関わるつもりなんですか?」

男「………うん、ほっとけないな、出来ることがあるなら何でもやるつもりだよ」

メイド「…………なんでですか?」

男「言ったでしょ、王子も王女さまもほっとけないよ、こんだけ仲良くなってんのに危なくなったらはいサヨナラなんて言えない」

メイド「…そう……ですか…」ガタッ

少女「あっ……メイドさん……」

メイド「……すいません、少し休ませて貰います」トタトタ

少女「……ご、ご主人様…」

男「少しほっといてあげて、後で話はしにいくから」

少女「……は、はい…」


王女「………少し言い方を考えるべきだったかも、ごめんなさい」

男「いえ、こうなった以上言い方なんか気にしてられないから良いです」

女兵士「………あれは相当不服だと思っている顔だぞ、良いのか?」

男「良いのかというと?」

女兵士「お前はここからも関わると言っていたが……ここからは商人の出番はないぞ、ここで引き下がっても誰も文句は言わんし、あの娘も納得するだろうに」

男「無理ですね、はっきりいってドツボにハマりました、ここで俺が関係ないなんて手を引いても敵さんがハイそうですかって見逃してくれない、違いますか?」

王女「…………」

女兵士「…………ぐ……」

男「逃げないんじゃなくて、逃げられないんですよもう……だったら腹くくりますよ、それしかない」

少女「……ご、ご主人様…?」

男「ん?なに?」

少女「…い、いえ……」フルフル


少女(…………あれ?なんか男らしい…)


男「で、ここからやらなきゃいけない事を確認しますよ、王女様も居るなら戦略的にはほぼ万全になる」

王女「…………」

女兵士「戦略って……お前戦いはド素人のだろうに」

男「商人なめんな、夜逃げトンズラその他諸々の逃走戦術なら商人に敵う奴なんか居ねぇ」キリッ

女兵士「………いや、逃げてどうする」

王女「一旦何処かに逃げるのは私も同意見、間違ってない」

女兵士「えっ、いやしかし王子様はどうすれば!?」

男「…………王女様が一番辛いだろうけど逃げるって意見なんだ、それで分かって下さい」

女兵士「………だ、だが……」

王女「…………にいさまは簡単に死んだりする人じゃない、分かって」

女兵士「……………」

男「愛すべきバカは死なない物理法則があるんですよ、むしろ俺達の方がヤバイ、さっさと逃げないと王女様にかけられた追手が来る」


男「少女ちゃん、今すぐ荷物まとめて、そんで表の俺の荷馬車に積んでくれ、盗賊ちゃん一家にも手伝わせて急いでやってくれ」

少女「え?あ、はいっ!!わかりました!!」タタタッ

女兵士「馬車なら私達のがあるぞ」

男「あんなゴツい派手な馬車で逃げろってか、嫌ですよ見つけてくれって言ってるようなもんだ」

王女「………なるべく目立たない方がいい、彼の判断は正しい」コクリ

女兵士「……は、はぁ…」

男「……問題は何処に逃げるかだけど……うーん、出奔時代の貸家にでも行こうかな……」

王女「それにはあてがある、平気」

男「ん?そんなんですか?」

王女「叔父の隠居先へ向かう、ここからなら二日ほどで行ける」

男「へ?叔父?」

王女「そう、父の兄で本来ならこの国の王になっていた人、でも王の座を弟である父に譲って隠居生活をしてる変わり者……そして」


王女「私達兄妹に生き方を示した人でもある」

男「…………生き方を……」

………………


…………

ガチャ

少女「……あ……メイドさん…」

メイド「………っ……」ゴシッ

少女「…えと、泣いてたんですか?」

メイド「…………」コクリ

少女「…えと……」

メイド「………あいつ、どうしてこんな事に首突っ込んでるの?全然何いってるのか分かんなかった……」ジワッ

少女「………それは……そうですね…」

メイド「あんたは?知ってたの?あんまり驚いてないけど」

少女「………わたしの場合は……故郷の事がありますから、王子様と居たときに何となく何をしようとしてるのかは気づいてました、ご主人様までここまで関わって居たのはびっくりですけど…」

メイド「…………じゃ…あたしだけ知らなかったんだね……」

少女「………ええと…」

メイド「なんでいっつも言ってくれないの?いっつもいっつもいっつも!!勝手に決めて一人で何でもやっちゃって……あたしだけなんにも知らないで過ごしてるだけ、ずっとそればっかり!!」

少女「………」

メイド「さっき言ってた事なんてすごい怖い事じゃない!!あたし嫌だよ、知らない内に居なくなっちゃいそうで、また何処かに行っちゃいそうで怖くてすごいやだ!!もうやめてよあの時みたいなことはもうこりごりなんだから!!」

少女「……ご主人様は、えと……メイドさんの事が大事で、心配かけたくなかったんだと思いますよ?きっと……」

メイド「…………」


少女「あのですね、ご主人様ってすごい優しい……優しすぎるぐらいいい人なんですけど、それ以上に不器用な人だと思うんですよわたしは」

メイド「……………」

少女「さっきも話してましたけど……ご主人様が稼いだお金で何してるかは……」

メイド「……知らない、あんたは知ってるの?」

少女「直接聞いた訳じゃないですけどね、わたしが買われた時、一緒に何十人もまとめて買ったんですよご主人様……それで、わたし以外の人はみんなその場で開放したんです」

メイド「………っ…」

少女「そういう事する人で、メイドさんに内緒ですごい儲けてるならきっと、ご主人様ってずっと奴隷になった人達を開放し続けてたんじゃないですかね、どうしてそんな事してるのかは知らないですけど…」

メイド「…………そっか……だから……」

少女「………だから、そういうご主人様だから王子様達と一緒になってるんじゃないかなって、そう思いますよ」

メイド「………うん……あたしにも分かってきた、あいつはそういう奴だったわね…うん…」ゴシッ


少女「……もしかするとわたしの故郷の事も理由のひとつかもですけど…」

メイド「………そうね、それとあたしのせいだと思う」

少女「メイドさんの?」

メイド「あ……そっか…教えてないもんね、あたしも身分は奴隷なの、元々は大旦那様の所有物だったんだけど、今はあいつが主人なのには変わらないわ」

少女「えっ、そうなんですか?……わ、わたしはてっきり幼馴染みなだけだと……」

メイド「………まあ、ね……あいつはあたしの事奴隷扱いなんかしないし……それはあんたもだけど」

少女「……そっか………でも、ご主人様はどうしてメイドさんだけは開放ないんです?」

メイド「あんたこそ」

少女「わたしの場合は身寄りが無くなって仕方なくなのでは?」

メイド「………どう考えてもそれ以外にもありそうだけど」

少女「メイドさんだって」

メイド「あ、あたしは……ええと………ああもう!!隠してるの面倒になってきた!!もういいあんたにだけは教える!!ちょっと耳貸して!!」

少女「えっ、は、はい?」


…………

少女「………そんな事が?」

メイド「う、うん……人には言えない事けど……だから、あたしはあいつとは……」

少女「……で、お互い2年も、一緒に居ながら微妙な関係を?」

メイド「………うん…」

少女「……………」イラァ

メイド「な、なにその顔?」

少女「なんですかそれ、バカじゃないの?さっさとつべこべ言わずに結婚しなさいよあなた達」イライラ

メイド「えっ、へっ?け、けっこ…!?」

少女「わたしご主人様の事見損ないました、なんですかそれ、そんな事あって一緒にそのまま暮らすって判断しながら何もしないで2年も居たと、そんで変な気の迷い起こしてわたしまでここに来たと」

メイド「えっ、いやだからね?それはあたしが……」オロオロ

少女「ホントに無理って思って居たなら、ここから出て行ってますよね、違いますか?」ジッ

メイド「……………うっ…」

少女「……ここだけの話です、メイドさん、ホントはどうなんですか?ねぇ?」ジッ

メイド「………ぅ……そ、それは……」

少女「…………」

メイド「……す……好き……だよ…?……ずっと……」

少女「…………はぁ……だったら…もう気にするのなんかやめて、自分から……」

メイド「……ッッ!!……ッッ!!!?」ブンブンブンブン!!

少女「……そんなに思いっきり顔を振らないでも…」

メイド「い、いまさらそんにゃ!?む、無理無理無理っ、で、出来ないから!?」イヤイヤイヤ

少女「……言いなさい、はやく」イラッ


少女「ええ、確かにご主人様のやり方とか?メイドさんに起きた事とかその辺りは言葉も無いほど悲惨な出来事ですよ、わたしだったら下手したら自殺してます、ええ」

メイド「…………」

少女「でもですね?その後の判断はちょっと無いです、どんだけお互い不器用なんですか、そこは素直になっとくべきでしょ、違うとは言わせませんからね?」

メイド「えっ、あの……」オロオロ

少女「じゃ、聞きますけど、このままご主人様の気の迷いが続いてわたしがご主人様と結婚とかしたりしたらどうするんですか、メイドさん出てくんですか?それともわたしとご主人様がイチャイチャしてるの黙って見てるんですか?」

メイド「」

少女「ちなみにわたしはそんなの絶対勘弁です、[ピーーー]ますね、ええ」

メイド「………で、でも!!」

少女「……メイドさんは大人になろうとし過ぎです、良いじゃないですか、甘えたって、ホントはその時甘えたかったんでしょ?」ジッ

メイド「………………………」


男「………あのぉ、すいませぇん」

少女「はぅ!?」

メイド「ぴぃ!?」

男「…………頼んだ準備は?急いでんすけど……」

少女「あっ!?ご、ごめんなさい!?」ワタワタ

メイド「えっえと?準備?」オロオロ

男「急いで荷物まとめて、逃げるから」

メイド「は、はあ……あ、あのわ、若旦那様?今の話……」

男「……んあ?なに?そんなんいいから早くして、命かかってんだから」スタスタ

少女「………聞かれてはなかった、かな?」

メイド「……う、うん……」

………

ねる(´・ω・`)おやすみ


………

盗賊父「そんじゃ今すぐここを離れるって訳ですかい、随分とせわしねぇこって」

男「すまんなおっさん、まさかこんな事になるとは思わなくてな」

ハゲ「け、結局お尋ね者かよ、なんだかなぁ……」

モヒカン「只の盗賊よりヤバイような……」

女兵士「貴様らは別に付いてこんでもいいぞ、こうなった以上殿下も咎めはしないだろう、好きにしろ」

ハゲ「そ、そうですか?じゃ……じゃあ…へへへ」ソソクサ

モヒカン「ご、ご武運を…てへへ」ソソクサ

盗賊「…………テメェら逃げたらキ●タマ切り取ってこの国のオカマバーに売っぱらうからな」ギロッ

盗賊父「男が一度決めた事を旗色悪くなったからって逃げ出すようなまねすんじゃねぇよ情ねぇな」

盗賊妹「いいじゃんとーちゃんねーちゃん、にーちゃんらはどうせやくたたねぇから捨ててこうぜ、早く逃げるなら余計な荷物つめないしなー?」

ハゲ「ひでぇ!!なんで俺らばっかりこんな言われなくちゃならないんだ!!」

モヒカン「差別反対!!平等に扱えチクショウ!!」

男「捨ててかねぇよ、それにお前らにも役割あるよ、重要任務だ」ポンッ

ハゲ「だ、旦那…!!あんたは俺らに気を使ってくれるんだな、むしられたりしたけどあんたはいい人だ…!!」ジワッ

モヒカン「流石王子様達に一目置かれてる人っす!!ついでに美少女とお知り合いになるテクも教えて旦那!!」ハシッ


…………

男「よし、着替えはこれでよし」

メイドハゲ「」

モヒカン姫「」

盗賊「………うわぁ…」

盗賊妹「キモいな、ひでーひでー」ウエー

メイドハゲ「………これは一体…」プルプル

モヒカン姫「…………:////」ポッ

女兵士「……おい、殿下の着ていたドレスをどうしてこいつに着せる」

男「まあまあ、そんで……お前らこっちの馬車乗って北の国境目指せ」

王女「……囮?」

男「イエース」ビシッ

メイドハゲ「おぃぃぃい!?!?一番危険な役目じゃねぇか!?」

男「はっはっはっはっ!!」フイッ

モヒカン姫「あんまりだ!!結局捨て駒じゃないっすか!!あんまりだぁ!!」

男「分かってる分かってる、これ報酬な、上手くやれたらまた同額渡すから」ポンッ

メイドハゲ「ん?ひぃふぅみぃ………」

モヒカン姫「アニキ、これどんだけあるんすか」

メイドハゲ「………飲み屋のねーちゃんたぶらかしてあんな事やこんな事をしまくる生活を10年ぐらいつづけられる」

盗賊「……さいってぇな勘定の仕方だな」

王女「……不快」ササッ

女兵士「クズめ、殿下……見たらいけませんよ目が腐る」シッシッ

ハゲメイド「旦那、お役目必ずや全うしてみせます」ビシッ

モヒカン姫「ついでにモテる秘訣聞かせて下さいっす」ビシッ

男「現金な奴等で頼もしいな、うん」コクリ

盗賊父「……ふぅむ、だったらワシも囮役に志願しやすぜ、コイツらだけじゃ心配なんで」ゴソゴソ

男「おっさん、いいのか?」

盗賊父「なに、姫さんのそばにゃあ盗賊は居ちゃいかんでしょうしね……ただ娘二人はそっちで面倒見てくだせぇ、危険な役目は親としちゃさせらんねぇ」モソモソ

男「ああ、それは承知したけど……」

盗賊「親父!!みんなそっちならオレも……」

盗賊父「駄目だ、お前まで付いて来ちまったらチビまで付いてきちまうだろうが……黙って言うこと聞け」

盗賊「………で、でも…」ジワッ

盗賊妹「とーちゃん、行っちゃうのか?」

盗賊父「なに、ヤバくなったらトンズラかますさ、それで良いんだろう旦那?」

男「ああ、ヤバそうならマジで逃げてくれ、元盗賊ってなら逃げるのは得意だろ?」

盗賊父「そこは自信あるぜぃ?なんせ盗賊家業初めてから一度も捕まった事なんざねぇからな?王子様ん時が初めてだ」ニヤリ

男「分かった、それじゃ国境抜けてからは自分の判断で戻るかどうか考えてくれ、時間は掛かるけど大きく迂回して西か東の関所から再入国するのをおすすめしとく」

盗賊父「そうしまさぁ、そんじゃ行くぞ息子達」

メイドハゲ「わ、分かったぜオヤジ」

モヒカン姫「旦那!!次会うとき可愛い女の子コマす方法教えて下さいよ!?」

男「そんなもん知らん、まあとにかく気を付けてな」




少女「……とっ…とと、お待たせしましたっ!!ごめんなさい準備が遅れて!!」トタトタ

メイド「荷造りの方は終りました!!」

男「…ん……ごくろうさま…」フイッ

女兵士「では殿下、少々汚いですが荷馬車の上へ、馬に乗るよりは疲れないでしょう」

王女「うん、この子は?」

白馬「ヒン」

男「かすり傷だけど怪我してるし、そのまま誰も乗せないで歩かせましょ、付いてこれるだろうし」ポンッ

白馬「ブルル」


男「さて、そんじゃとりあえずまずは街へ行きましょ、急な決定だから色々足りないし」

女兵士「そんな余裕あるのか?」

男「無くても行くしかないっすね、まあちょっと手回ししとくのもあるし」

王女「………眼鏡…」ボソッ

男「そう、それも用事のひとつ」

女兵士「……ふむ、仕方ない……任せる」

メイド「あ、あの若旦那様…」

男「…………」フイッ

メイド「……え、あれ?」

少女「ご主人様?メイドさんが呼んで……」

男「……………………」カァァァ

少女(……真っ赤だ、真っ赤になってる!!メイドさんにそっぽ向いてるからどうしたのかなって思ったら真っ赤になってなんとも言えない顔になってる!!)

男「……さ、さぁ……こっちも急ごう、寄り道までするんだしホントに時間はないと思うし」スタスタスタスタ

メイド「……あ……えと……」ショボン

少女(……聞いてたんだ、絶対聞いてたんだご主人様)

少女「………かわいい」ボソッ

メイド「……え?な、なに?」

王女「どうかしたの?」

少女「……いえ、ちょっと耳を……ゴニョゴニョ…」ボソボソ

メイド「」ぼんっ!!

王女「……ふーん?」キラキラ

少女「………かわいいと思いませんかね?」

王女「おもう、わりと純情」コクリ

メイド「あうあうあうあう!?」オロオロオロオロ

男「………なに話してんだろ…」ソワソワ…チラッ…チラッ…

女兵士「おい、早く出発するぞ、荷馬車をさっさと走らせろ」ジー

男「……あ、はいただいま…」パシン

………

仕立て屋「………ほう?人数分の外套と簡単な服ですか」

男「ああ、時間がないから在り合わせで良いんだ、どう?」

仕立て屋「………なになに?巨乳二人に貧乳三人のお子様一人ですな?成る程なるほど………」

男「外套に胸のサイズは関係無いでしょ……」

仕立て屋「いえいえ、ちょとしたオプションですので」ニヤリ

男「んん?」

仕立て屋「少々お待ちを、急ぎだと言うのなら出来合いの物を御用意致しますぞ?」ノソノソ

男「主人、今回はエロは要らんからな?ふざけてる場合じゃないからな」

仕立て屋「ふっ……エロだけが私の仕事ではございませぬ所をお見せしましょう……これでどうだぁ!!」ドドン!!

男「な、なんだってーーー!?!?」ガビーン

仕立て屋「お代は通常料金で構いませぬぞ」ニッコリ

男「あんたスゲェよ……こんなもんまでツネニ常備してんのかよ、か、敵わねぇ…」ワナワナ

仕立て屋「漢としては当然でしょう?」キリッ

男「くうっ!!あんた俺のお師匠さんだ!!買ったぜこんにゃろう!!」ブワッ

仕立て屋「まいど有り難うございます、旦那さま」ニヤリ

………


…………

少女「………なんですこれ?」

男「……マントだよ?」

メイド「猫耳フード……」

眼鏡っ娘「……眼鏡……よくあったのね」

男「あっ、それはまあ元の度さえ分かればなんとかなるし、王女さまもこれを」サッ

眼鏡っ娘「………ねずみ耳」ジー

盗賊「オレのは犬だな」

盗賊妹「うさぎみみー」ピコピコ

少女「……………わたしも猫耳ですか……というかなんでマントにこんなのついてるんですか」

男「コレシカジュンビデキナカッタンダヨ?」キョトン

女兵士「おい」

男「はい?」

女兵士「私には?」

男「え?いや、女兵士さんのは年齢的にゲフンゲフン一枚だけは普通のあったのでそれを」

女兵士「………………そうか……」ズーン

男(仕立て屋主人曰く、動物耳は25までですぞ!!らしい、まあ、確かに)

男(胸のサイズで種類わけとか、凄まじいこだわりだ、流石伝説の仕立て屋主人……素晴らしい)ゴクリ

眼鏡っ娘「じゃま、切る」チョキチョキ

盗賊「こんな恥ずかしいもん被れるか」チョキチョキ

メイド「………」チョキチョキ

男「」ガーン

少女「ご、ご主人様?え、えーと…」ピョコン

盗賊妹「ウチは切んないでかぶるぞ?にあう?」ピコピコ

男「……うん、にあうよ?」ウルウル


続きは夜に(´・ω・`)じゃ


男「さて、用事も済んだし出発しましょうか」ドシャ

眼鏡っ娘「それは?」

男「へ?ああ金貨ですけど、念のためにコツコツ貯めといたのを全部下ろして来たんですよ」

女兵士「その辺りは商人だな、自分の財産はキチンと持っていくというわけか」

盗賊「……ざっと金貨千枚ってところか?スゲェ」ゴクリ

盗賊妹「にーちゃんけっこんしてくれ」

男「全財産でこれなら商人としちゃ少ないよ、あくまでもいざという時の為の緊急資金だし……って、メイドさん?」

メイド(¥Д¥)ガーン

少女「………め、メイドさん?」

メイド「い、今まで節約に節約して頑張ってたのに……なんか虚しい……」ガクーン

男「………い、いやぁ……その辺りはなんというか……ごめんね?」テヘッ


眼鏡っ娘「何かするの?そんなお金下ろしてくるということは考えがありそう」

男「そりゃね、ちょっと考えがあるので」

女兵士「ふむ?何をするのだ?」

男「商人は金を武器に戦うもんでしょ、まあ楽しみにしててくださいますって」ニヤリ

盗賊「なんだゼニナゲでもすんのか?」

盗賊妹「もったいねー、それならウチにくれよー」

男「投げてどうする、違うよまったく……」

メイド「……つ、使っちゃうんですか?これ……」

男「そりゃね、全部ぱーっと使っちゃう」

メイド「…………ダメです止めて下さいお金は大事なんですよ!?」ハシッ

男「………い、いや……そのぐらいならすぐに稼げるから……そんな必死に止めんでも」

メイド「わ、私がどれだけ苦労してたと思ってるんですか!!か、稼ぎが悪い人だとばっかり思ってたから家計赤字に毎日怯えながらやりくりしてたのに!!」

男「……えぇー?そんなに?おかしいな………」タジッ

少女「………銅貨一枚すらケチりますからねメイドさん……そのわりには買い食いに目がなかったけど…」

メイド「うぐっ…」ギクッ

男「いや、メイドさんの給金がほとんど買い食いに消えてたのは知ってるけどね、うん」

メイド「」



メイド「…………」ショボーン

男「……と、とりあえず行こうか?」

女兵士「ようやくか……お前達逃亡者って自覚があるなのかまったく……」

男「まあまあ……それで、どっちへ?」

眼鏡っ娘「西の国境近く、あの遠くに見えている山脈の麓辺りに居を構えているはず」

男「はず?」

眼鏡っ娘「……実は私は会ったことがない、にいさまが偶然出会って色々学んだと言っていた、私はにいさまから叔父の考え方を聞いて賛同したに過ぎない」ショボン

男「………なるほど、王女様はつまりお兄さんから又聞きしたってだけなのか」

盗賊「……そんなんで行って大丈夫なのか?顔も分からないって事じゃ…」

眼鏡っ娘「顔はだいたいわかる、見た目はにいさまにそっくりらしい」

盗賊妹「イケメンそっくり……ナイスミドルか!!」

眼鏡っ娘「間違いなく」コクリ

男「………顔だけで探さにゃならんのか……まあ、王子そっくりなら分かるかな、確かに顔だけは別格にいいからな王子」

女兵士「……出会ってというと……王子が国中を旅していた時に?」

眼鏡っ娘「そう、それからにいさまは戦う道を選んだ」コクリ

男「へぇ……なるほど…」

女兵士(…………つまり、私の王子たまが変態になった原因………)ズーン

………その日の夜。

眼鏡っ娘「…………zzZ」

女兵士「殿下に野宿をさせる事になるとは……不甲斐ない」

男「状況が状況ですからね……我慢してもらわないと」

女兵士「………兄上のことが御心配だろうが弱音は吐いていない、殿下は思ったよりもずっと強かったようだ…」

男「……ですね、そこは俺もびっくりですよ」

眼鏡っ娘「……………」スー…スー…

男(………王子は無事なんだろうか……あの人がやられる図は思い浮かばないが……それでも相手が相手だからな……)

女兵士「お前ももう休め、見張りは私がしておく」

男「………わかりました、何かあればすぐに起こして下さい」

女兵士「ああ」


男(…………さて、と……ちょっと考えをまとめとかないとな……王女様が王宮から脱出してから少なく見積もってまる1日以上って所か……となると………やっぱ追手が来るとしたら今からだな……)カキカキ

男(………こっちは戦えるのは女兵士さんだけだし分が悪いな……あいつは…剣で武装してる相手じゃまともに動けなくなるだろうし、そもそも戦わせたくない…)

男(…………………屋敷出る前少女ちゃんと話してたの、あれマジなのか?)

男「……………」

男「わかんねぇ………まいったな……」ガリガリ

メイド「………あ、あの……」ヒョコ

男「ブフォ!?」バキン

メイド「わ、ちょ……そんなに驚かなくても……」

男「い、いやおおお驚くなと言われても!?」ワタワタ

メイド「あっ……万年筆が」

男「んん…?げっ……」ゴシゴシ

メイド「インクが顔に……ま、待って下さい?えと……」ゴソゴソ


メイド「あった……インク汚れならこれでっと…」

男「用意良いね……持ってきてたの?」

メイド「はい」

男「ふーん?まあ、助かったよ……流石にペン先潰してインクマミレになるのは予測してなかった、メイドさんはしてたわけ?」

メイド「へ?いえ、私はあれですよ、若旦那様はいつも手がインクで汚れてるので……」

男「ふーん?そお?よく見てんのね…自分じゃ気にして………ない……」ギクッ

メイド「……あっ……えと……」

男「………………その……」

メイド「…………」モジッ

男「……………」ダラダラ

メイド「……………」

男(まて、なんだこの空気は、ちょっとまて、待ってくれ諸君!?私にはこの空気耐えられん!!)オロオロ


男(諸君、ハッキリ言っておこう、俺は彼女がこんなしおらしい表情するとこなんざ見たことがない!!だから今俺は非常に困っている、どうすればいいのだ諸君!?)

メイド「……………」

男(マジか、やっぱり聞き間違いとかでなくてマジなのか?俺の事ずっと好……っ……!?)

メイド「………わ、若旦那様?えと……実は少しお話が……」

男(いかん、ちょっと待ってくれ!?2年前のあんときならいざ知らずこんな突然そんな展開になられても心の準備など出来ておらんのだよ諸君!?や、やめろ押し倒せとかそんなコールは要らねーぞ黙ってろボケぇ!!)オロオロオロオロ

メイド「………聞いてます?」

男「今なら晩飯に食ったパンと豆の塩煮味だと思うよお互い!?」ビクッ

メイド「はい?」キョトン

男「あっ違う違う!?そうじゃなくて、なに?話って?」オロオロ


メイド「……あの、き……今日ずっと言おうとしてたんですけど……タイミング悪くて……だから二人っきりになれるの待ってたんです…」

男「ふ、二人っきりに…?」ギクッ

メイド「……はい、やっぱり言わないとって」

男(………こ、告白を?い、いやしかし……そうだとしたらどうすんの俺!?いや、メイドさん…こいつの事は好きよ?そりゃもう死ぬ程好きさね!?じゃなかったらこんな大事に扱ったりしねーよ!!)

男(……で、でもな……待ってくれ……まだ、じゃないか……今はどうすりゃ良いのかわかんねぇんだよ!?)チラッ

少女「………zzZ」

男(………こ、こんな最低なまんま俺もすきー、なんて言えるか!?無理に決まってんだろ!!)

メイド「………あの……だから…」ギュッ

男「待った!!」ハシッ

メイド「へっ?あ、あの……」

男「…………ああくそ……なにが何だか考えがまとまんねぇ!!と、とにかく……まずは俺の正直な気持ちを伝える、それからその言葉を言うかどうか決めてくれ」キッ

メイド「え、は…はい……」


男「まず、だ……俺は一度お前に駆け落ち申し出たな?覚えてる?」

メイド「へっ……え、ええ!?」カァ

男「3年ぐらい前俺一度出てっただろ、そんとき」

メイド「…………お、覚えてる……」カァァァ

男「ぶっちゃけるとな、気持ちは変わってない、返って来たときだってホントはお前の事無理矢理にでも連れ出すつもりで戻ったんだからな……まあうやむやになっちまったが」

メイド「……………ぇ……えと……」

男「それはいい、それだけなら俺は正直な話今すぐにでもお前の事抱きたいぐらいだ、ハッキリ言おう、超愛してる」

メイド「ふぁ……」

男「だがすまん、愛の告白しといてあれだが俺は少女ちゃんも超大好きだ、保護目的もあったが少女ちゃん買ったのはだいたい予想してるんだろうが惚れたからだ、一目惚れだ」

メイド「…………え……えと……」

男「ええ、軽蔑していい、自分でも最低野郎だと思う、正直な話現状どっちか片方選べ言われても無理だ!!俺には片方だけ選べ言われても、どっち選んでも後悔しそうというか間違いなくする!!」

メイド「…………」

男「……ごめん、つまりおれは優柔不断なんだ、今の関係が一番良いんじゃないかとすら思ってる……お前が俺の事ずっと好きって聞いて、あの時の判断間違ってたんだなって気付いて……それで、俺が判断したらまたまちがっちまいそうでさ」

メイド「……やっぱり、聞いてたんだ……」

男「すまん、聞くつもりはなかったけど早く逃げないとって焦ってたからな……」

メイド「…………それで?」

男「……どうすれば良いのかホントに分かんないんだよ、片方選んだら……もう片方が不幸になっちゃうんじゃないかって思ったら尚更……」

メイド「…………そう……」


メイド「………あの子には好かれてる確信……あるんだね?」クスッ

男「へ?あーいや……まあ、なんとなく……」

メイド「………そっか、あの子素直だしね……あたしと違って気持ちをそれとなく伝えるの上手いのかな……」

男「…………」

メイド「…………あのね、さっきの話でひとつだけ間違ってるところあるよ?」

男「……どこ?」

メイド「あの時の、大旦那さまの事があった時のやつ間違ってたつていつた言ったでしょ?」

男「……ああ、俺はあの時……この先お前も俺も、お互い気持ちを確かめ合う事はもうないと思ってた、本当はあの屋敷に居るのも嫌なんじゃないかとも、思ってたよ……でもな」

メイド「……うん」

男「………それでも離したくなかったんだ、俺のただのわがままだよ」

メイド「……うん」

男「………間違ってなかったのか?」

メイド「……間違ってなかったよ、あの時……あたしはあなたが居なかったら本当にダメになってた」


メイド「あたしはね、もうとっくに救われてるよ?……だから大丈夫」

男「………そう……そうか、それなら良かった……」


………

本当は、逃げようって言うつもりで待っていた。

なにもかも棄てて、何処か遠くへ……怖い思いをしなくて済む場所へ二人で……ううん、三人で行こうって言うつもりだった。

このまま進めば、彼が居なくなってしまいそうで怖いから、だから逃げようって言おうとしていた。

でも、きっと彼は断るだろう。

彼は誰かが悲しんでいるのを放っては置けない人だから、優しすぎる程に優しい人だから。

私の時も、あの子の時もそうだったのだから。

不安はある。これからの事を思うと胸が張り裂けそうになる。だけど、彼の進む道を行こうと思う。

今、手を重ねているように、彼がずっと居てくれるなら、怖くても大丈夫だ。

助けられてばかりだったけれど、これからは彼のたすけになろう。

……私は、彼の横顔を見つめながらそう心に決めた。


………翌日。

男「……んん……」ムクリ

少女「あっ、お早うございますご主人様っ!!一番最後ですよ起きるの?」トタトタ

男「……んん…おはよ……ちょっと夜更かしし過ぎたかねぇ……ふぁ……」ウーン

女兵士「寝ぼけてないでさっさと仕度しろ!!まった唯一の男手の癖になにもせんのかお前は……」グチグチ

男「すいまへぇん……んあぁ……」シパシパ

メイド「おはよ、はい濡れタオル、もう出発するらしいからこれで顔拭いてね?」ポイッ

男「さんきゅー、はー……逃亡中はせわしな……んん?」フキフキ…ピタッ

メイド「朝ごはんは移動しながらだってさ、ほら立って馬の仕度残ってるんだから!!」

男「…………」ジー

メイド「なに?」

男「……いや、口調がお澄ましてないんすけど」

メイド「だめなの?あんた似合わないっていってたじゃん」プイッ

男「……いーや……やっぱりそっちの方が落ち着くよ」

メイド「……そう……ならもうやめる、あの口調疲れるし」スタスタ

少女「………」ジー

男「……ん?」

少女「わたしが寝てる間になにが……」ハラハラ

メイド「べっつにぃ?ふふっ」スタスタ

少女「あ、あれ?メイドさんどうしたんです教えて下さいってば!?」トタトタ

男「……………はぁ、結果オーライ、かねぇ?ようやくか……」クスッ

ねる(´・ω・`)おやすみ


……二日後。

男「……お?村が見えて来ましたね」

女兵士「だな……おそらくあそこで話を聞けば王兄様の事も少しは分かるだろう……殿下、構いませんね?」

眼鏡っ娘「任せる」

少女「小さい村ですね……わたしが住んでた所ぐらいかな?」

盗賊「……すげぇ田舎だな」

盗賊妹「とりあえず馬車あきた、ベッドで寝たい」

メイド「そうね、屋敷には一日も居なかったから……ずっと馬車の上なのよね……」

男「もうちょいの辛抱だよ、今日は宿に泊まれるだろうからね」

…………


……………

少女「ご主人様、ここはなんて所なんです?」

男「……いやぁ…流石にここまでへんぴな所には来たこと無いからな……王女様は知ってます?」

眼鏡っ娘「たしか麓の村、人口は二百人程度、主な生産物は麦とちょっとした野菜、質が良いから高値で取り引きされてる筈」

男「えっ、マジっすか?やべぇチェックチェック……あっ、ペンがない!!」オロオロ

メイド「後にすれば良いじゃないの……他にすることあるんでしょ?」

男「い、いやしかし……そうか農作物か……利率厳選すれば少ない運搬量でも確実に……」ブツブツ

女兵士「……商魂たくましいのはけっこうだが今は人探しが優先だろうに、ほれ、聞き込み行くぞ」ガシッ

男「え、俺と女兵士さんで?」

女兵士「そうだ、情報収集に長けてそうなのはお前ぐらいだしな、他の者は殿下と宿を取ってから買い出しやら色々しておけ、良いな?」

少女「あ、はい分かりました」コクリ

メイド「雑用ならあたしたちよね、やっておきます」ペコリ

女兵士「うむ……では殿下、暫しお待ちください」

眼鏡っ娘「そっちは任せる、私も買い出し手伝う」トタトタ

少女「いいんですか?」

眼鏡っ娘「平気、やってみたい」コクリ

男「………いいんすか?」

女兵士「大丈夫だろう、むしろ殿下自ら率先して申し出てくれるのはいい傾向だろうし」


男「さて、そんじゃ聞き込みと言えば酒場とかなんですが……」キョロキョロ

女兵士「この規模の村だとあるか疑問だな……ふむ……」スタスタ

男「……お?」

女兵士「む?」

[麦酒あります]

男「わりとでかい店がありますね……」

女兵士「そうだな……まあとにかく入ろう」


ギイッ

ハンサム「おや?見かけない顔のお客様だ、いらっしゃい」ニカッ

男「」

女兵士「」

ハンサム「ん?」

男「…………なにしてんすか王子?」

女兵士「……なんでこんな所に!?ご心配いていたのですよ!?」ザザッ

ハンサム「王子?さて、知らぬな」フイッ

男「いやいやいやいや!?どっからどう見ても王子………あれ?なんか歳とってる?」

女兵士「………そ、そういえば髪の色も違う」

ハンサム「おお、アレの知り合いか?なら見間違えるのも無理はないな、そっくりだからな」

男「………あのぉ……王さまの兄上様で?」

女兵士「……………」

ハンサム「………む?」


ハンサム「…………」

男「………」

女兵士「…………」

ハンサム「…………」

男「………」

女兵士「…………」

ハンサム「…………」

男「………あのぉ?」

ハンサム「さらばだ!!」シュバッ!!

女兵士「はっ!?ちょっと何故逃げるのですか!?」ガシッ

男「いきなり逃げなくても良いでしょう!?やっぱり王兄様ですね!?」

ハンサム「は、離してくれ!?俺は何処にでも居る只のハンサムだ!!王兄などではない!!」ジタバタ

女兵士「その自意識過剰さは殿下そっくりではないですか!!絶対貴方が王兄様でしょう!?」

ハンサム「………離してくれ、美しい人よ」クイッ

女兵士「あふんっ」へにゃ

ハンサム「さらばだ!!」シュバッ!!

男「おいぃ!?なに逃がしてんすか!?」

女兵士「だ、だってぇ!?」ウルッ

ハンサム「悪いがお引き取り願おうか!!俺は話を聞くつもりはない!!」タタッ

男「ここまで来といてハイそうですかなんて言えないんですよこっちも!!事情ぐらい聞いて下さいよ!?」タタタッ

ハンサム「断る!!」タタタッ

男「こ、こんの……逃がすか!?」タタタッ!!

ハンサム「ええいしつこい……ぜぇ……ぜぇ……!!」ヨロヨロ

男「……ん?」タタッ

ハンサム「…………聞くだけだぞ、話終えたら帰るのだな」キリッ

男「……疲れたんですか?」

ハンサム「これでも五十手前なのだ、体力などあるわけ無いだろう」ゼー…ゼー…


……………

男「……という訳で、まずは酒場に全員集合」

少女「あっさり見つかって良かったですね」

メイド「……王族の方なのにお店開いてるんですか?」

ハンサム「俺の店じゃないがな、只の雇われだ」

男「………ますます分からん…」

ハンサム「只の客寄せだろう、俺が居ると若い娘がゾロゾロ入ってくるからな」

眼鏡っ娘「…………」ジー

ハンサム「……む?」

眼鏡っ娘「ホントににいさまそっくり」ジー

ハンサム「……にいさま?ああ……なるほど」フム

男「えーと、察しの通りこの方は王女殿下です、お会いしたことはないと聞きましたが……」

ハンサム「ああ、初めて会う……そうか、こんなに大きくなるほど時間が経っていたのだな……数年前のあれにも驚かされたものだがな」ポンッ

眼鏡っ娘「………っ…」

ハンサム「………そうか、面影がある……母親似だ」ナデ

眼鏡っ娘「……母さまを知って?」


ハンサム「………話が長くなりそうだな、すまないが少し待っていてくれ」カタッ

男「え、何処へ?」

ハンサム「雇われと言っただろう?奥に居る店主に今日は休みを貰いにいくのさ……なに、半刻ほどで戻る、そうしたら俺の家に招待する」スタスタ

少女「………休みを貰いに行くだけでそんなに時間が掛かるんですか?」ヒソヒソ

メイド「さあ……分かんないけど」

バタン

女兵士「……しかし、最初は逃げようとはしたものの……王子様とは違って物腰は柔らかいしとても例の変態に豹変した原因には……」ウーム

眼鏡っ娘「………」

男「変態の師匠だなんて予測でしょうに、ほら生き方の指導をしただけかも…」

盗賊妹「………どれどれー?」コソコソ

盗賊「……なんだ?覗くつもりかよおい」

盗賊妹「だってきになるしなー?」キィ

男「………」ヒシッ

メイド「………」ヒシッ

女兵士「………」ヒシッ

盗賊「……なんでみんな覗こうとしてんだよ」ヒシッ

少女「……あなたも人の事言えないよね」ジー

眼鏡っ娘「………悪趣味」


ハンサム「すまない、今日は休ませてくれないか?」

女店主「……えっ…そんな……私とお店に居るのが嫌なの!?」

ハンサム「違う、そうじゃない……誰もそんな事は言っていないだろう?泣かないで」スッ

女店主「……んん…!!……あ、あなた……」ダキッ

ハンサム「仕方ない人だ……少しだけだからな……俺は誰か一人の物になるつもりは無いんだ、だからお前の夫でいる時間は少しだけだ……」

女店主「それでもいいわ…!!めちゃくちゃにしてっ!!」

ハンサム「ああ、望み通りに」ガバッ

女店主「ああんっ/////あ、愛してる//////」ギュー


バタン

男「はいストップ、よいこのみんなは座って待ってようね、はい」グイグイ

盗賊妹「えー、最後までみたいぞ…」ジタバタ

男「いいから、マジで子供は見たらいけません」

盗賊妹「むー」

盗賊「」

メイド「」

女兵士「」

男「……きみらも固まってないで、席戻って」グイグイ

眼鏡っ娘「……?…なに、どうしたの?」

少女「何か変なことしてたんですか?」

男「……よいこのみんなは知らなくて良いの、おけー?」ポンポン

少女「……は、はぁ」キョトン

眼鏡っ娘「気になる」


………で。

ハンサム「すまないまたせたな」

女店主「………/////」ウットリ

男「……ああ、いえ……」

メイド「」

盗賊「きもちわるい」

ハンサム「なんだ?覗いていたのか、んん?」

女兵士「………い、いや…」フイッ

盗賊妹「にーちゃん…じゃねーおっちゃんか、スケコマシなんだなー?」

ハンサム「む?まあ、否定は出来ん」コクリ

男「…………」

少女「……えーと」

ハンサム「俺の事は置いておけ、わざわざ来たことの理由を話してみなさい、俺の家はすぐそこだ」スタスタ

眼鏡っ娘「わかった、ついてく」トタトタ

女店主「ダーリン!!またちゃんと来てね!?待ってるからぁ!!」ウルウル

ハンサム「仕事の日は来るさ、安心しろ」ニコッ

男「………なるほど、王子はこれ真似してたんだな……ちっとも上手くやれてなかったみたいだが…」


……道中

村娘「ダーリン!!あたしもう我慢出来ない……結婚してぇ!!」ダキッ

ハンサム「やめるんだ……俺ではお前を幸せには出来ない、ただ一時だけ情にほだされるだけの関係でしかない、無茶を言うんじゃない」クイッ

村娘「だって……あたしダーリンしか見えない!!」ウルッ

ハンサム「我が儘ばかり言う悪い口は塞がないとな……」

村娘「……んんっ……はうん//////」


男「」

少女「」

メイド「」


熟女「あなたが居れば他には何も要らない!!亭主とも別れるわ、だから結婚してぇ!!」ダキッ

ハンサム「やめてくれ……貴女の主人は俺も良くして貰っている、そんな事は出来る訳がない」

熟女「ひどいわっ!!私の身体はもうあなたなしじゃ生きられないのに!!」ウルッ

ハンサム「そんな事はないさ……貴女愛するのは俺じゃない……ただ火遊びがしたくなっただけなんだ……さあ、これが最後だ……」

熟女「んんっ!!/////」


盗賊「」

女兵士「」

眼鏡っ娘「………」

盗賊妹「すげぇなおっちゃん」


ハンサム宅前

修道女「お願いでございますっ!!わたくしを……わたくしを女にしてくださいませっ!!」ダキッ

ハンサム「やめてくれ、神に仕える聖女を汚したとすれば、天罰が二人に下ってしまう……」クイッ

修道女「構いませぬっ!!あなた様に汚されるならわたくしは本望です!!たとえ地獄に堕ちてしまうおうと後悔なんてっ!!」ウルウル

ハンサム「……堕ちるのは恋心だけにしておきなさい、俺は貴女が堕落する所など見たくはない……さあ、これで我慢して欲しい…」

修道女「んんっ////はぁ……/////」ウットリ


男「何人コマしてんすかあんたは!?」ガビーン

メイド「………あんたも人の事言えないよね」ボソッ

少女(……ご主人様がこんな事になったらどうしよう)


ハンサム宅内

ホモ「ダーリン!!今日こそ一つに合体しt…

ハンサム「断るッッ!!付きまとうな勝手に家に入るな!!」ドカッ

ホモ「ああん////」ガシャーーン!!

ハンサム「……やれやれ、すまんなここまで来るのに時間が掛かってしまった」キリッ

男「………お、男までときめかしてんのか」

ハンサム「ふっ……顔が良すぎるのも考えものだな」ヤレヤレ

眼鏡っ娘「それじゃ話す、叔父様」コクリ

ハンサム「………頼む」

…………


…………

ハンサム「………なるほど、それで俺を訪ねてきたか」

眼鏡っ娘「現状味方が居ない、だからにいさまに道を示したという叔父様の助力をお願いしに来た」

ハンサム「…………」

男「王女さまを一時期匿うだけでも構わないんです、お願い出来ないでしょうか?」

ハンサム「………ふぅ……どうにもめんどうな話を持って来たな、言っておくが俺は公爵としての位はあるが権力などとは無縁だぞ、そちらの事で助けを求められても何も出来ん」

男「………国王の兄だというのに、ですか?」

ハンサム「この家を見て分からんか?屋敷でも何でもない只の家だ、それに財もない……でなければ雇われで働いてなどおらんよ」

眼鏡っ娘「………どうして王族である叔父様がこんな生活を?」


ハンサム「………そうだな、何処から話すべきか…」

眼鏡っ娘「……」

ハンサム「………まずは彼女、お前の母の話をしなければならんかな」

眼鏡っ娘「…母さまの?」

ハンサム「ああ、今から20年以上昔の話になる、そこから話そう」

……………


…………

弟「兄上!!此度の遠征、指揮を取られるとお聞きしましたがまことなのですか?」

それは、今から20年ほど前の話となる。

当事の王宮には二人の王子がいた。俺と、そして現国王である堅物の弟……歳は離れており、性格も違っていたがお互い仲は悪くなかった。

兄「耳が早いな、どうも親父は支配欲が強すぎるようでな、東の草原地帯も国土として欲しいんだそうだ、俺はその手先という訳だ」

弟「そんな言い方をするのは父上に失礼ですよ兄上、それに東の草原地帯は広大です、少数の蛮族たちに任せておくより我らが管理する方が農地としても利用できるし賢明でしょう」

兄「今年は国中凶作で切羽詰まっているからな?新しい土地が欲しいのはそのためだろう」

弟「兄上!!」

兄「そう大声を出すな、間違っているとは言わんよ、民を食わせる為には当たり前の判断だろうからな?」

先王の時代は今よりも貧困に喘ぐ年が多々訪れていた、それは奴隷制度などが今とは違い禁止されていたというのも理由の一つに入るだろう。

ねる(´・ω・`)おやすみ



表向きこそ父に従ってはいたが俺は気乗りはしていなかった。

自国の飢饉と言うのはまぁ……他所の土地を攻めるには十分過ぎる理由ではあるが、それは侵略者の一方的な都合でしかない、攻められる側はたまったものではないだろう。

兄「………平和的に、というのは存外難しいものだな弟よ」

弟「……兄上?」

兄「……いや、なんでもないさ」

その数日後、俺は軍を率いて新たな国土の『開拓』へと向かう。

そして、そこである出会いをするのだ。


「立ち去りなさい、この地は少数とはいえ我らが民の立派な国です」

兄「………っ……!!」

国。そう呼ぶには何もない、ただ緑が何処までも続く地に、彼女は立っていた。

緩やかに吹く風に、その長く美しい髪を靡かせ、意思を感じさせる瞳を真っ直ぐに向けて。

手には大剣、だが防具の類いは何も身につけていない。簡単な造りのドレスだけが風で踊っていた。

たった一人で、俺が率いてきた大勢の兵にも怯まず、だだ立ち塞がっていたのだ。

その姿は美しく、おとぎ話で聴いた勇者のようだと、俺は思ったものだ。

そして。



女勇者「この地にはこの地の生活がある!!立ち去りなさい!!」

兄「フォーーーーッッ!?!!」┣¨┣¨┣¨┣¨!!

女勇者「っ!?」ビクッ

兄「そんな事より結婚してください」シュバッ!!

女勇者「……はっ?」

俺は見た瞬間に前へと猛ダッシュし、彼女の前へひざまずいて求婚した。女性に言い寄られるのは多々有れど、自分からアタックしたのは後にも先にもこれ一度きりだった。


国の事情もくそも何もかもすっぽぬける程に彼女は美しかったのだ。俺は後ろの兵士達が唖然としていようが何だろうが全く気にせずに想いを口にしたのだ。

兄「貴女が欲しい」キリッ

女勇者「……………」

兄「…………」ポッ

女勇者「…………」

兄「…………」モジモジ

女勇者「……フンッ!!」

兄「ほげごっ!?」

数秒の沈黙後、強烈な一撃。大剣で峰打ちされたらしい、そしてそのまま剣に引っ掛けられた。

女勇者「……この男はお前達の長だと判断した!!お前達が立ち去るまで私が預かる、さらばだ!!」ダダダッ!!

そして拉致られた。

「お、王子がさらわれたぞ!?お、追えーー!?」

「だ、駄目です追い付けません!?こ、こっちは馬だぞ!?」

「で、殿下ぁぁ!?」

後できいた話だが、彼女は戦闘に長けた一族の中でもとりわけ力の強い族長の娘だった。大の大人と鉄の塊担いで馬より速く走るのだ、恐ろしい力である。


叔父「……姫様!?一人では危ないといったでは……なんじゃいその男は」

女勇者「敵将」ポイッ

兄「ぐへっ!?」ビタン

姉「敵将って……隣の国の?」

女勇者「バカっぽいけど王子とか呼ばれてたし、人質にして交渉するのよ」

兄「なに?人質だと……?」

女勇者「……そうよ、いくら私達が強くても大軍相手じゃ勝てないかもしれない、に……」

兄「……それに?」

女勇者「人は殺したくはない」

叔父「……姫様」

姉「………」

兄「……てっきり俺は求婚が受け入れられたのかと…」クッ

女勇者「………」ドスッ

兄「ぐぼぁ!?」メキャ


兄「……な、ならばあれだ、とりあえず俺はこのまま開放しろ……戦いを望まんのは俺も同じでな」ピクピク

女勇者「………攻めてこようとしてる国の人を信じろって?無理よそんなの、開放は出来ない」

姉「こいつが頭なんでしょ?なら殺せば良いんじゃないの?」ジャキッ

叔父「………だな、とりあえず指揮する者を潰しておけば戦いは楽にはなるが…」

兄「俺を安易に殺せばお前たちは皆殺しにされるぞ」

女勇者「…………脅しのつもり?言っておくけど私達は戦士の部族よ、貴方が連れてきた千人程度の数なら勝てない相手じゃない」

兄「人と剣を担いで馬より速く駆けるのをみたらそれもハッタリとは到底思えんが……だが、その次は?」

女勇者「……次?」

兄「千人を撃退したら次は五千、その次は一万の兵がお前たちを殺しにくるぞ、しかも今度は一方的な領土侵犯じゃない、王族殺し討伐という大義名分のおまけ付きだ、反対する奴など居なくなる」

女勇者「………」

兄「殺したいのなら殺せ、だが俺は貴女たちをむざむざと打ち滅ぼされたくはない、惚れたのは本当だからな」

女勇者「……くっ…」

その後、悩んだ末だろう、俺は開放され、戻った俺の指揮で撤退を命じたのだ。

それが彼女との初めての出会いだった。


し、それからのおれ俺の日々はかわった。

兄「およめさんになってくだほげぇ!?」メキャ

女勇者「お断り!!」ドンッ

後日。

兄「愛してるぜべいべろボォッッ!?!?」ドシャー

女勇者「しつこい!!」ハァ…ハァ…

また後日。

兄「キミに届け俺の想い!!さあ今こそ熱いヴェーゼを!!」

女勇者「届かない!!!!あときもちわるい!!」ゲシゲシ

更に後日

兄「あ、あんたなんかぜんぜん好きじゃなきんだからねっ!!勘違いしないでよばかっ!!」プイッ

女勇者「そうか、私もだ」スタスタ

兄「待ってくれ!?ツンデレというのださっきのは!!頼む察してくれ!?」ハシッ

女勇者「は、離して!?やだ止めろヘンタイ!!」ビシバシドゴォ!!

兄「ぐはっ!?」ヒューーー……キラン☆

暇さえあれば口説きにいっていた。


一方、王宮でも変化があった。

弟「……兄上、いい加減お遊びは辞めて頂きたい」

兄「お遊び?何の事だ」

弟「私が知らぬとお思いですか……度々あの蛮族共の地へ赴いておいででしょう」

兄「蛮族と言うのはやめろ……彼らは同じ人間だろうに」

弟「人であるかどうかすら怪しいものですがね……」

兄「やめろと言っている」

弟「………っ……はい、申し訳ありません兄上」

兄「……ふぅ…お前は頭が良いが少々融通が効かんな」

弟「兄上が奔放過ぎるのです」

兄「それに遊びと言うが俺は至って真面目なつもりだぞ、真剣に口説いているからな?」ニヤリ

弟「……それがふざけていると言っているのです、兄上の伴侶となるのはそれに相応しい貴族諸公のご令嬢から選んで頂かないとと以前から……」

兄「顔と権力でしか男を見れぬ娘など願い下げだな、どんなに綺麗に着飾っていても俺には豚にしか見えん」

弟「………そう言う割りには娘に手を出した責任を取れとの諸公からの苦情が絶えませんが?」

兄「………最後まではしておらん筈なのだが……」

弟「…………」

兄「なんだその目は本当だぞ向こうから来るのだ多少は仕方ないだろうに!?」


弟「……まあ良いでしょう、どうせ大半は言いがかりなのは分かっていますし……それよりです」

兄「なんだ?」

弟「兄上も聞いているでしょう?父上が危ないと」

兄「……………」

先代国王、つまり俺達の父は長く病を患い、必死の延命処置も虚しくその生に終わりを告げようとしていた。

弟「父が崩御為されれば次の王は兄上なのです、自覚を持って貰わねば困ります」

兄「…………そうだな……お前の言う通りだ」

王になる。それは王族として、王の嫡子として産まれた瞬間から決まっていた事だ。

しかし、俺は王などになりたいとは思わなかった。責任はある、なれと言われればなるしかないという諦めにも似た覚悟だが、それもあった。

兄「…………」

だが、俺は王として自分が相応しいと思えなかった。

それに自信もない……この国を、民の暮らしを安定させ、導く器量が自分にあるとは到底思えなかったのだ。


飢饉、疫病、それに伴う人々の不安、怒り……それは暴動や犯罪へと姿を変えて牙を剥く。事実ここ数年、この国は酷い有り様なのだ。

それらの責任を全て負う。それが王としてやらなければならない事なのだ。

兄「………………逃げ出せるのならば逃げ出したいものだな」

弟「……兄上?」

兄「気にするな、只の愚痴だ……お前に背負わせるつもりはない」



……………

兄「これが最後だ、俺の妃となってくれ、頼む」

女勇者「……だから嫌だと……」ジャキッ

兄「話を最後まで聞いてくれ、キミ達の部族にも悪い話ではない、約束する」

女勇者「………どういう事?」

兄「………本当はこんな条件を出して釣るような真似はしたくはないのだが、もう時間がないのでな……すまないが長達とも話をさせて貰えないか?」

女勇者「……わ、分かった……話だけなら……」コクン


族長「………貴族の位を?」

兄「ああ、貴殿方族長の家系の者に貴族としての位を授ける、この草原一帯がそのまま領地として残せる唯一の手段だろう」

女勇者「……それは断ればまた侵略しに来るっていう脅しじゃない!!何が悪い話ではないよ!?ふざけないで!!」

兄「…………そうだな、その通りだろう、すまない」

叔父「王子殿下、貴方が姫様を庇ってだろうが……この地への派兵を押さえてる事は知っていますがね……だからと言ってはいそうですかと首は振れませんじゃろうに」

兄「ああ、これは此方側の一方的な押し付けだ……怒りを買うだろうと言うのも分かっていた」

姉「貴族の位を授ける……つまり軍門に無条件で下れという訳だけど、それは私達戦士の部族への侮辱だわ、断じて受け入れられない」

兄「………………」

女勇者「………私に言い寄っていたのも取り入り易くするためでしょう?ふざけてるわ」

兄「違う……キミを伴侶としたいというのは本心だ、信じては貰えないだろうが……」

女勇者「………」


兄「…………分かった、貴殿方の想いを踏みにじってまで押し通す訳にもいかないだろう、残念だが諦めるとしよう」

女勇者「…………」

族長「それでまかり通るのかね?」

兄「通すのが王の務めだろう、願わくば貴殿方とはこれからも良い関係でいたい」

女勇者「…………」

兄「…………本当に残念で仕方がない」ハシッ

女勇者「いや、諦めたのなら袖を掴むのやめて欲しいんだけど」

兄「残念で仕方がないのだ」ジー

女勇者「はよ帰れ」イラッ

その数日後に王……父が崩御した。

父の死を悲しむ心はあった。だがそれ以上にこれからの責務への重圧を感じていたものだ。


しかし


兄「…………王族とは嫌なものだな、こういう時」

弟「…………」

兄「………さあ、からはおれ俺が父の意思を継がなくてはならない、弟よ……お前も俺を助けてくれるな?」

弟「………それは出来ません」

兄「………?……どういう事だ?」

弟「貴方には王はつとまらないと言ったのです、兄上」

兄「…………何を…」

弟「王には私がなります、兄上は優しすぎる、それは良い事でしょう、だがそれではこの国はもうダメなのです」

兄「…………お前は…」

弟「既に私が王座につけるよう根回しはしています、あとは貴方が私に、弟が王座に座るべきだと宣言するだけです」

弟が王になる、それは俺も考えてはいた……弟の方が政治に優れ判断も的確だと、常々思ってもいた。だがその重圧に弟が堪えられるのか?それだけが不安だった。だから俺はそれまで自身がどんなに王になることを望んで居なかろうと、弟にその座を明け渡すつもりはなかったのだ。

兄「………お前に務まるとでも思っているのか?」

弟「兄上よりはこの国に必要な事が分かっているつもりですよ……この国に必要なのは非情さだ、生温い情で采配をするであろう兄上には決してこの国は任せられない」


弟「………例の件、兄上が防止した事で民はどうなると思いますか?たかが色恋の事で貴方は民を飢えさせようとしていると理解していたのですか?」

兄「…………っ……」

その時の俺は、何も言い返せなかったのだ、弟の言い分は正しい、俺は王族で次期国王だというのに、民を蔑ろにしたのだ。


そして、弟の言うがままに俺は王の座を譲り渡した。

弟は決して権力、支配欲に囚われて俺を貶めた訳では無いことだけは分かっていたし、王の責務への覚悟も出来ているように思えたからだ。

そんな覚悟を決めさせてしまった罪悪感と、ほんの少しの安堵を胸には秘めながら。

兄「………分かった、お前に任せるよ……元々俺は王の器ではないと自覚はしていたからな……」

弟「………理解が早くて助かります、兄上」

兄「だが条件がある、これを飲んでくれないのなら俺は意地でも王座にしがみつく、例えお前と粗そう事になってもだ」

弟「……条件?内容次第ですね……」

兄「…………簡単な事だ、それは……」


……………

兄「という訳で、またむかえに来たよハニー」キリッ

女勇者「」

姉「……なぜまたきた」

族長「王子殿下、王になられるのではなかったのか?」

兄「弟に譲った、これで俺は責務から開放された自由の身、好きなだけ愛する者に愛を語りに赴けると言うものだ」

女勇者「来なくていいっ!!」ムカムカ

族長「………ふむ、それは良いが我々を脅かす事態には今後ならないと言えるのかね?貴方が王となるなら心配は無用と思っていたのだが、違うと言うなら我々はかなり危うい立場になってしまうからのぅ」

兄「そこは安心して欲しいものですな義父さまよ、王となるのは弟……そして俺は貴殿方の部族とそれが守る地には手を出すなと約束させました。安心して貰いたい」

女勇者「………っ……」

兄「だから、俺とキミは敵対関係でなくなったのだ、今度こそ受け入れへぼごぉ!?」ビターン

女勇者「……それとこれとは話はべ、別でしょうに!!」

叔父「………そんな事言ってここ最近毎日「もうあいつ来ないのよねぇ…」とかぼやいていたのは誰でしたかのぅ姫様?」

女勇者「叔父さんは黙ってて!!」キッ


そして。

兄「いいかげん俺の女になりやがれよ!!あぁーん!?」クチャクチャ

女勇者「しね」

後日

兄「恋は青春!!愛は情熱だ夕焼けのバカヤロォーーーー!!」

バカヤローー!!

……カヤローー

………ヤローー……

女勇者「……何処に向かって吠えてんのよ……」

また後日。

兄「お友だちからで良いんです!!お願いします!!」ペコペコ

女勇者「…………ぐっ……」タジッ

さらに後日。

兄「……うっ……た、頼むよぉ……あんた以外に嫁さんになって欲しい娘なんか居ないんだよぉ……!!」ポロポロ

女勇者「な、なんでどんどん卑屈になってくの!?や、やめてよ!!」オロオロ

またまた後日。

兄「お前のハートにラブハーー……おっとすまない姉の方だったか、失礼」スタスタ

姉「………すぐに見抜いたわね、どうするの?」

女勇者「……ぐっ……ま、間違えてくれたらそれ口実に突っぱねるのに!!」コソコソ

叔父「……もう観念してやりゃいいと思いますがねぇ?まんざらでもないんでしょう姫様?」

女勇者「………ぐっ…うぐぐ……」

兄「なにぃ!?ほ、本当か!?」パァ

女勇者「……っ!?」バキィ!!

兄「ぐはぁ!?」ズシャー!!

叔父「………あーあ」


そんなこんなで1ヶ月が過ぎた頃。

女勇者「……わ、分かったわよ……もうあんたが諦めるのを諦めるわよ……ど、どんだけしつこいのよ……」ゲンナリ

兄「お、おぉ……」フルフル

女勇者「……………悪い奴じゃないのは分かってるし、恩義もあるし……いいわよもう断ってるたのも半分意地になってただけだし」

兄「おぉおおおおおおお!!!!勝ったぞ!!遂に俺は勝ったぞ!!ふぁーーーー!!!!」ヒシッ

女勇者「い、いきなりひっつくな!?や、やだちょっと!?」ワタワタ

どこまでも続くかと思えた激闘を俺は制し、遂に想いを遂げた。

戦士の部族式の結納を済ませ、互いに愛を誓いあう。
彼女は押し負けてと言っていたが……その時の顔は幸せそうに俺には見えた。少し不安だったのだが無理強いしてしまったという訳でもないのだなとその時気付かされ、更に愛そうという想いに駈られたものだ。

それから二人で話し合い、俺たちは王宮で住まう事になった。

族長「娘を頼みますぞ、貴方なら大丈夫だとは思うが……」

兄「もちろんです、任せて下さい」

女勇者「定期的に戻ってくるから、心配しないでお父さん……それに姉さんも」

姉「こっちは私が継ぐことになるわね、王族の方の伴侶となるならサポートはお互い出来るでしょう?」

女勇者「ええ、そうでしょ?あなた」

兄「ああ……その辺りは力を尽くそう」

叔父「では、行きましょうか、王宮に行ってまたすぐに向こうでの挙式の準備をせねばならんのでしょう?」

兄「ああ、貴方も付き人としてこれからお願いします」

叔父「一族の者が一人じゃ姫様……じゃない奥方様も大変じゃろうしのぅ」フン

女勇者「叔父さんは子供の頃から私達姉妹のお目付け役なの、けっこう強いし頼りになるわよ?」

兄「………わ、渡さんぞ?」ハシッ

女勇者「はい?」キョトン

叔父「………さすがにそれは考えたことないのう……」


それから一年程は幸せだと、そう強く思える時期だった。

子供も授かった………俺に似た元気な男の子だ。

赤ん坊「あうー」ギュー

兄「お、おお!!みろ指を……俺の指をしっかりつかんで笑っていた痛い痛い痛いぐあぁぁぁあ!?!?」ジタバタ

赤ん坊「うー!!」ミシッ

女勇者「あっ!?ちょ、だめよ坊や!?パパは貧弱なんだから!!」グイッ

赤ん坊「あうー」キャッキャッ

兄「……ゆ、指が変な方向に……し、しかしお前もそうだが何故戦士の部族はそう力が強いのだ……赤子の時からこれか…」

女勇者「えーと、言い伝えではご先祖様は魔王と戦った勇者様らしいわ、それで只の人間ではとうてい勝てないであろう魔王に打ち勝つ為に世界中の精霊様に加護を授けて貰ったとか」ウーン

兄「………勇者ねぇ?おとぎ話では……」

女勇者「私もそう思うけどわ詳しくは誰も知らないわ、何百年も昔の話らしいし、それに精霊様の加護っていうのがどうして遺伝するのかもわからないもの」

赤ん坊「ばぶー」

兄「………一族の者はみなこんな赤子の時から怪力なのか」

女勇者「この子は特別よ、どうも力を特別強く受け継いだみたい、私もそうだけど」


一方で不穏な空気もこの国に漂い始めてもいた。

兄「………奴隷制度だと?」

王「ああ、そうですよ兄上」

兄「何故そんなものが必要になる!?民を貶め使役するなど!!」

王「必要だからです、この国には改革が必要なのだ……奴隷制度だけではない、先代の父の頃よりの法は殆ど改正してきたのです、今までの温い法では国は立ち行かないのですから」

兄「だが…!!」

王「奴隷とするのは他国の敗残者だ、民の暮らしはそれで保証される!!」

兄「……!!」

王「兄上、貴方は王になる者は責務を負うと言っていた、私はその責務を果たしているに過ぎない、貴方には負えないであろう物を、今私はやっているだけだ」

兄「………」

王「ここで反発するような人だから……あの時兄上に王座をそのまま座らせられなかったのですよ……兄上自身も分かっているでしょう」


王となった弟の手腕は見事だと、そう言えるものだった。

この国の民の暮らしはどんどん良くなって行き、みな弟を名君と、そう讃えた。

だがその人々の幸福は様々な怨念と悲鳴、涙の上に成り立っているものだった。

一年程の時間のなかで王は三つもの隣国を支配し、人々を奴隷として連れ去り……様々な物を奪い尽くした。

その行いを知る者は弟を暴君とそう呼び畏れた。

人々が知らずに幸福を享受する中、王に反抗する者は達も多かった。

戦士の部族もその内のひとつだった。


………

兄「止まれ!!話を聞け!!」

族長「止めなさるな、この国の暴走もはや無視出来ん、我々は勇者の末裔……弱き者に手を差し伸べずしてなにが戦士の部族か」

兄「それは分かる、俺とてこの状況を良しとはしておらぬ!!だが貴殿方だけで派兵された部隊を止めるなど無謀だ、死にたいのか!?」

族長「むざむざ死にはせんよ王子殿下……我々の加護は知っておろう?」

兄「それでもたった数十人で何が出来る!?我々の軍は万を超す、無駄死にだ!!」

族長「それでも往くのだ!!一人でも多くの兵を倒せばそれだけ奴の…あの暴君の愚行を妨げられる、罪無き人々をそれだけ多く救える!!」

兄「………頼む……!!待て…待ってくれ!!俺が……俺が弟を、王をどうにか止めてみせる!!だからそれまで……!!」

族長「…………娘だけは宜しく頼みますぞ、夫として支えてやってください」

兄「…………っ……!!く……そ……!!」

………………


数日後、軍の進行を妨げようとした少数民族は、多くの兵を道連れにしつつ全て殺されたと、報告を承けた。

兄「……………」

女勇者「………どうして?ねぇ、どうしてこんな事になるの?大丈夫だって言ったじゃない!!ねぇあなた!!」

兄「……すまない」

女勇者「………お父さん……うっ……うぅ……!!」

王子(2才)「うー?」ペチペチ

兄「………すまない……!!」ギュ

老近衛「……………殿下、それに奥方様……これからどうするんじゃい」

兄「………叔父上、まずは集落に残っている筈の女子供、それと義姉殿を安全な所へ逃がさなければ、それに妻と息子も」

女勇者「………っ……嫌よ!!私は戦う、黙って逃げるなんて出来ない!!」

兄「言う事を聞け!!今は駄目だ、止まれなかった義父達がどうなったのかお前も聞いただろう!!」

女勇者「……っ………」

兄「耐えてくれ……俺も一緒に行く、もう内からは止められん……だから、外から仲間を集めて戦うしかない……だから、今は……」

女勇者「……………わかった、この子も居るんだものね……ごめんなさい…」

王子「………?…」キョトン


王宮からの脱出、そして潜伏。俺はどうにか王を止めるべく戦う事を選んだ。

話し合いで解決する道は一方的に絶たれ、王宮内で俺に味方する者は居なかった、だから野へ下り時期を待った。

しかし。

子爵「また味方が寝返ったのか!?ええい欲にかられた俗物共が!!」ダンッ!!

男爵「……名のある商人共もほとんどが国王派として活動しているようだ……これでは…」

騎士「仕方ありますまい……奴隷を使役して直接利益を得るのは商人がほとんどだ、表向きは国の治世は良くなってもいる、好きこのんで反抗する者は……」

兄「…………諸外国に送った書簡の返事は?」

男爵「森と湖の国は内密ながら食糧や資金の援助を申し出て下さいました……しかし兵力となると南の女王国を始めどの国も………」

兄「……………辛抱強く使者を送ってくれ、これは我が国だけの問題じゃない、自らの国に矛先が向くかもしれないと分かれば必ず手を取り合う事が出来る筈だ」

子爵「しかし殿下……他国に借りを作れば例え現国王を討ったとてあと後の我が国は……」

兄「…………土地でも財でも別けてくれてやればよい、大切なのは人としての尊厳と生きる権利だろう」

子爵「……………はっ……」


どれだけ親身に戦う理由を述べても、離反者は耐えなかった。最初こそ王の非道さに顔をしかめ、俺に味方してくれた者達は数多く居た。

だが、安定し、次第に強固となって行く国と、もたらされる利益……そして弟の王としての器に皆惹かれて離れてゆく。

一方俺は、王座を追われた腹いせに売国に走る愚者、そのように言われるようになる。

兄「…………味方する者は殆ど去ってしまった……最後は皆、俺を売国奴と蔑んで行ったよ……」

女勇者「………あなた……」

兄「………俺は、間違っているのか?」

女勇者「……そんなことはないわ、あなたは優し過ぎるだけなのよ…」

兄「…………叔父上から連絡は……?」

女勇者「…………」フルフル

兄「………そうか…」

戦士の部族の生き残りを救出に向かった叔父はそのまま消息不明となっていた。

義姉や生き残りについても詳しくは分かっていない。あの後自分達で調べはしたが何も残っていなかった、無事に逃げ出せたのか、それとも追われた先で殺されてしまったのか……それすらまだ分かっていない。


………そこから更に一年、王宮から逃げ出してからたったそれだけの時間で、俺は決定的な敗北を迫られる事となる。

離反者の中から情報を漏らし、俺達家族の潜むであろう場所を密告され、ついに拘束されてしまう。


王「………久しぶりですね、兄上」

兄「…………」

王「馬鹿な遊びはこれぐらいで良いでしょう?いい加減目を覚まして貰えませぬかね?」

兄「………それはこちらの台詞だ、弟よ……」

王「………やれやれ、困った兄上だ……どうにも昔から融通が効かん、はっはっはっ!!」

兄「………そういうお前はえらく演技が上手くなったな?俺の真似か…?」

王「ええ、似ているでしょう?兄上の振る舞いは人に好かれるので参考にさせて貰いましたぞ」ニッ

兄「………虫酸が走るな………似合わぬにも程がある」

王「………ふん……衛兵、この愚か者を地下牢へ連れて行け、兄嫁殿とそのうえ息子は少し話がある、錠と鎖を厳重に重ねて私の部屋へ連れて行くのだ」

衛兵「はっ!!」

兄「………!!妻をどうするつもりだ!!」

王「あなたにはもう関係無い………おい…」

衛兵「失礼を」ガッ

兄「……待て……貴様!!妻と息子には手を出すな!!それだけは……弟よ!!」


王「………殺しはせん、安心しろ兄上よ……」

…………


牢獄。

兄「……………まさか、貴殿方が拘束されていたとは……なんの情報も入らぬからまさかとは思っていたが……」

老近衛「………殿下こそ、どうやら道は潰えましたか……」

姉「…………………………………………………」ブツブツ

兄「………義姉殿は……」

老近衛「あの時からこの様子じゃぞい……無理もない」

兄「………他の一族の者は……」

老近衛「殺されましたよ……全員、残らず生かしておけば危険と判断されたのでしょう」

兄「………っ……そうか……」

老近衛「……姉殿はのぅ……一族の青年と結婚し、子供を出産したばかりだったんじゃ……だからあの時の戦士達が殉した戦には参加せんかった」

兄「………その子は」

老近衛「………隙を見て逃がしはした、追われ、もう後がないと思った時に偶然馬車を見つけてな、中にいた乳飲み子を抱えた女にその娘を自分の娘として扱ってくれとな、ありったけの金を渡して頼んだ……」

姉「……………………無駄よ………頼んだ女は奴隷商人の女でしょう……?とっくに捨てられているかしているわ……」ブツブツ

兄「…………」

姉「………………殺してやる……どいつもこいつも……ぜんぶ、ぜんぶ………」ガリガリ

老近衛「………察してやってください、私でももうかける言葉が見つからんのじゃ…」

兄「………」ギリッ


半年後。

衛兵「…………出ろ、全員だ」

兄「…………?……どういう事だ」

老近衛「…………!!」

姉「……………」

衛兵「恩赦だ、理由はこの方に説明して頂ける、まずは頭を下げるのだ!!」

兄「…………!!」

王妃「……………」スッ

老近衛「……奥方様」

姉「………………」

王妃「貴殿方3名に、此度の私と陛下の婚姻に伴い恩赦と、義兄様と姉上には爵位の復権、叔父様には近衛隊長として復職する権利を授けます……どうかよしなに」

兄「………婚姻?どういう事だ!?」ガキッ

王妃「……………」

兄「………なんだ?何をされた?弟はお前に何をしたんだ!?」

老近衛「………奥方様……事情を」

王妃「何も語る事はありません、本来ならば死罪である貴殿方に恩赦を申し出たのは私です、狼藉は控えなさい」

姉「……………………そう………そうなの……ふぅん?」スッ

王妃「……………」

姉「……………では、王妃様にお願いが……わたくしも護衛としてで構いません、お側にお置き下さいませ、姉妹としての関係は忘れ、ただ同じ一族の者として貴女の為に剣を振るう機会を」

王妃「………姉さん……」

姉「…………………………………………」ギリッ

王妃「………分かりました、陛下にはそう伝えましょう」フイッ


王妃「………では、衛兵……義兄様だけを門外へ……後の二人はまず陛下の所へ連れてゆきます」スッ

兄「ま、まて……頼む……!!」

王妃「……………これしかなかったの、ごめんなさい」スタスタ

兄「……ふ…ざ…けるな……!!」ガチィ!!

衛兵「止まれ!!折角の恩赦を無駄にしたいのか!?王妃様は現在身重の身だ、負担を掛けるような真似は断じて許さんぞ!!」

兄「………な……!!」

王妃「………………」

老近衛「………殿下……」ポン

兄「離せ!!お、俺は……!!」グイッ

老近衛「…………ここは耐えて下され……!!貴方も分かるでしょう!?」

兄「……………っ……ぐっ……ガァァァァァァ!!!!」

姉「…………」

………………


その後、打ち捨てられるように俺は王宮を後にした。

宛もなくさ迷いながら、想うは愛した人と、その間に設けた息子の事だ。

何故、弟はこんな真似をした?考えに考え………結論に至る。それは……戦士の部族としての加護を王族の中に取り入れるつもりなのだろう。だからこそ俺の最愛の妻を奪った……息子は子を為せなかった時の保険代わりだろう。後から聞いた話だが産まれてきた子供は女であり、息子もずっといきながらえ……実子として育てられて続けていた。

全てを奪われ、力も、何もかもを失った俺はこの辺境の地で隠れるように日々をただ過ごしている。

そして、現在へと至る。


…………

ハンサム「………名残惜しいというか、まあ全てにおいて後悔しかないが……せめて愛した人の死に目には立ち会いたかったものだ……」フゥ

眼鏡っ娘「………………」

男「………その話、全部?」

ハンサム「真実だ、公式記録等は改竄されているだろうが……」

メイド「………うっ……ひぐっ」ズビッ

少女「可哀想なんですけど……うぅ…」チーン

女兵士「ハンカチ……ハンカチ……」ジュル

盗賊妹「みんな鼻水きたねーぞ……なーねーちゃん……」

盗賊「ぶぇぇぇぇ……」ポロポロ

ハンサム「………………」

男「す、すいませんこんなんばっかで…!?ちょっとみんな酷いことになってるよ!?ほら!?」ポイポイ

メイド「………うう…」チーン

ハンサム「……む?君は……」

メイド「……はい?」

ハンサム「……いや、何でもない」フルフル

眼鏡っ娘「………にいさまとは異父兄妹だった……知らなかった」

ハンサム「………当然だろう、この事は王宮内部でも極秘の事だ、もし漏らせば容赦なく処分されるほど徹底して秘匿していた事のようだからな」

>>425
>国民の人口が記された帳簿が奇跡的に焼け残っていたらしく、そこに記された数字が、連れて来られた奴隷の数と死体の数が一致したと言っていた

これ単に奴隷の数+死体=人口の間違いじゃね?

これは衝動的にシリアス突っ込んで風呂敷畳むのに悩むパターン

>>429,430
そこはそれで合ってる(´・ω・`)分かりづらくてすまん

NTRに関してはやらないって言ってたの失念してた、すまぬ

>>431
図星(´・ω・`)

韓流なんちゃらって意見に関したらそんなつもりはないが王室とかそんなんってぐちゃどろ上等なイメージあるし、はいすいません適当にやり過ぎました。気を付けます( ;∀;)

後一時間程したら再開する(´・ω・`)


ハンサム「………まあとにかくだ、奴がどういうつもりかは分からんが……王子だけでなく王女にまで牙を剥いたというのならば匿う程度の事はしても構わん、そのつもりで来たのだろう?」

眼鏡っ娘「…………お願いします」

男「ここは安全なんでしょうか?」

ハンサム「完全にとは残念ながら言えん、だから一時的な隠れ蓑という認識でいてくれ」

男「………そうですか……やっぱり本格的に国外へ連れてく事も必要かもな」

眼鏡っ娘「……それは嫌」

男「………王女さま?ですが……」

眼鏡っ娘「私はまだ諦めない、にいさまならそうする」ジッ

ハンサム「……………その辺りはここでしばらくゆっくりと話し合うと良い、自分の家だと思って寛いでくれ、他の者もな……部屋は足りる筈だ」ガタッ

眼鏡っ娘「はい……ありがとう、叔父様」ペコリ

ハンサム「………構わんさ」スタスタ

………


…その夜

男「……まあとにかくだ、なんとか一息付けたな」フゥ

少女「ずっと馬車で移動で夜は野宿ばかりでしたもんね、ベッドで眠れるのは有り難いです」フカフカ

メイド「独り暮らし……なのよね?あの人、なのになんでこんなに部屋あるのかな?ベッドもたくさんあるけど」パタパタ

男「さぁ?まあなんにしても有り難いこどな」グダー

少女「だらけてますねぇ、ご主人様」

男「今日ぐらい良いでしょ……これでもかなり気をはってたんだから」ハァ


少女「ところで、ずっと気になってたんですけど」ジー

男「…んん?」ゴロゴロ

メイド「なに、どうしたの?」パタパタ

少女「……この前からメイドさんがご主人様の前で敬語使わなくなりましたけど何があったんですか?気になって仕方がないんですけど」ジー

男「ぶふはぁっっ!?!?」ビクゥ

少女「なんですか!?そんな噴き出すような事なんですか!?」ユサユサ

男「い、いや!?それはあの!?」オロオロ

メイド「愛の告白されたわ」

男「にょあッッ!?ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとぉぉぉ!?!?」

少女「……えっ、あ…愛の…?」

メイド「うん、超愛してるって言われた」コクリ

男「きゃぁぁぁやめてぇ!!な、なんでそういうこと言うのさ!?新手のいじめ!?おいぃ!?」ジタバタ

メイド「うっさい、あたしだけ聞いてるの不公平でしょ?だから良いの、ほら、あんときみたくハッキリこの子にも同じ事言いなさいよ」

男「」

少女「えっ?ええ?」ソワソワ


男「…………」

メイド「ほら、はやく」

少女「えっ、えと…」

男「」

メイド「はやく」

少女「あ、あの……」オロオロ

男「………こ、この状況で言えとか拷問だろぉが!?おべっか止めたら相変わらず脳ミソ筋肉かよこんちくしょう!?」ウガー

メイド「あたしは不公平なのがきにいらないだけよ、なによ別に大丈夫でしょ、おんなじぐらいなんだったらあたしに言えたんだったら言えるはず、はやく言え」

男「……ふぇぇ、ムードもへったくれもないよう……」メソメソ

少女「あ、あの……何となくは分かりますから無理しなくても……」オロオロ

男「………なんて良い子なんだ……どっかの誰かさんと違って女の子らしい優しさにみちあふれとる……」グスン

メイド「悪かったわね」フンッ


メイド「ふぅ……冗談はさておいて、そろそろ寝よう?疲れてるんだし」

少女「あっ、ああはいっ!!そうですね……」モソモソ

男「冗談て……まあ、それはそれとして、ちょっとまて」

メイド「なに?」キョトン

少女「なんでしょうか?」キョトン

男「いや、なにナチュラルに同衾しようとしてんの、別に部屋はあるだろ!?」

メイド「いや……そうなんだけど」

少女「まあ……その……」

男「………な、なに?ええと……もしやつまりそういう……」

メイド「王兄様居るでしょ?……その、女だけで部屋にいたらなんというか……」

少女「……昼間のあれを見ちゃうと……なんとなく警戒しなきゃだめかなーって」

男「ああ、なるほど」ポン

メイド「そういうわけ、だからあんたは魔除けみたいなもんね、どうせ何もしないでしょ?あんたは」モソモソ

少女「慣れちゃいましたよね、けっこう何度も同じ所で寝てますもん」モソモソ

男「あっ、なんだろうこの気持ち、すごく男として酷いことされてる気がする」


コンコン

男「ん?」

ガチャ

ハンサム「夜分遅くにすまん、ちょっと手伝って貰えんか?」

男「っ!?な、なんか血まみれ!?」ビクゥ

少女「な、なんですか!?何があったんですか!?」オロオロ

メイド「か、返り血みたくみえるんですが!?」オロオロ

ハンサム「まて、話を聞いてくれ、確かに返り血なのだが別にやましい事などしておらん!!」

男「じゃ、じゃあなんなんですか!?尋常じゃない量浴びてんですけど!?」

ハンサム「とにかく違うのだ、訳は説明するから来てくれ!?」


別室

女兵士「」ピクッ、ピクッ


男「………」

メイド「女兵士さん?え…ちょっと!?」ユサユサ

少女「大丈夫ですか!?ち、血まみれ!?」オロオロ

男「……………鼻血か?一体なにが…」

女兵士「」ピクッ、ピクッ

ハンサム「いやな、彼女がどうにも俺に熱い視線を送ってくるものだからこう……軽く口づけでもして我慢して貰おうかと、こんな感じで腰に手を回してもう片方の手で顎をこうクイッと」クイッ

男「は、はぁ……」

ハンサム「そしたらな?こう鉄砲水のようにどばーんと鼻血が」フキフキ

メイド「………」

少女「………」

女兵士「」ガチガチカタカタ

ハンサム「量が量なので心配でな、介抱を頼みたくてな、うん」

男「………なんてイケメンに弱い人なんだ、あんたは…」

女兵士「」ピクッ、ピクッ

ハンサム「やれやれ、どうも生娘はこうなりがちだから大変だな……なるべく気を付けているのだが稀に彼女のような人もいるから油断出来ん」フキフキ

男「えっ?」

メイド「………」

少女「………」

ハンサム「ああ君たちは安心していいぞ、俺は確かに女に言い寄られてばかりだが生娘だけは相手にせんようにしているからな、ではガチガチの介抱を頼んだぞ」スタスタ

バタン

男「…………スライムがラスボスにいきなり挑むような真似しやがって……」クッ

女兵士「」グッタリ

メイド(………まえ彼氏居るって言ってたのに)ジー

少女(王都で婚約者と許嫁が自分を取り合って毎晩求めてくるとか言ってたのに)ジー


ガチガチの介抱を←×

彼女の介抱を←○


………

バタン

ハンサム「………む?」

眼鏡っ娘「………あの…」オズッ

ハンサム「………なんだ?まだ寝ないのか?」ポン

眼鏡っ娘「…………母さまの事、聞きたくて」

ハンサム「……そうか」

眼鏡っ娘「にいさまも小さかったからあまり覚えていない、爺もあまり……だから」

ハンサム「構わないよ、俺が伝えられる事は全て話そう」ニッ

眼鏡っ娘「………!…」

ハンサム(…………この子を見るのは、正直複雑な気分だ………だが、それはこの子に罪のある事じゃない)


ハンサム「………きっと、君は母親には愛されていただろうしな、あれはそういう女だ」ギュ

眼鏡っ娘「……っ……?……」


一方その頃、王宮内部地下牢。


「…………ぐ………」

冷たい石の感触と湿気を帯びた冷気が肌にまとわりつく。

他に感じるのは痛み。全身をくまなく引き裂かれるような刺激を身動きする事に身体を襲う。

「…………こ…こは……?」

眼が覚めたのはつい先程だった。意識がおぼろげながらも戻り、眼を開く………だが、開いた瞳には何も写らなかった。

「……………?…」

一瞬自身の瞳は光を喪い、盲目となってしまったのかと錯覚したがそれは杞憂のようだ。少し間をおいてよく眼を凝らせばほんの僅かにだけ光が見える……どうやらずっと遠くにこの空間への出入り口があるのだろう……揺らめく松明の炎のような朱色の光が湿った石の壁の僅かなおうとつに影を作っていた。

「………地下牢か……」

自分の居る場所を予測し、そこに居る訳を考える。理由は簡単だ……自分は負けたからここに居るのだ。

青年「……………………生き延びた、か……いや……生かされているのか…」


青年「………………」

気になる事は幾らでもあった。

妹はどうなったのか?

逃げ延びたとして何処へ向かったのか?

友やその他の協力者達の安否は?

……時分はまだ戦えるのか?

どれひとつとして蔑ろには出来ない事ばかりが脳裏に過る。

青年「………逃げ出す……だがしかしどうやって……?」

青年はこういう時、気転を利かせて不利を押し留める事を得意としてはいた。しかし、牢獄となると簡単には脱出は出来ない。


青年「……………!…」

脱出の方法に考えを巡らせていると、何処からか足音が響いてくるのに気付いた。

その足音は規則的に鳴り響き、そして大きくなっていく。それに僅かにだが灯りも強くなっているようだ。

青年「………誰だ?」

近づいて来る者が居る。青年はそれを感じとりその誰かに向かい声を掛ける……ここが地下牢なのは検討を付けたが他に投獄されている者が居る気配はない、近づいて来る者は自分に用があるのだろう。

「気付かれましたか……若」

ちかくまで来た者が声を反してくる。聞き慣れた声であった。

青年「爺か……」

老近衛「数日眼を覚まして貰えませんで心配致しましたぞ……」

青年「…………」


青年「今更何用だ、私を生かす理由など最早無かろう?」

老近衛「…………」

王子と呼ばれていた青年は、まさにこの目の前の初老の戦士に裏切られた形で今ここに居るのだ、自分ではそう思っていた。

自分と妹の謀反に関する行いは王宮内部では一部しか知らせていない、当然だが志を同じくする者を……この者ならば間違いはないという者だけで行動をおこしていたのだから……目の前の初老の戦士はその中でももっとも信頼していた人物だった。

青年「何時から裏切っていた?」

老近衛「………その前に、若には謝らねばならぬ事があります……どうか…」

問い掛けには応じずに、牢獄の鉄格子を隔てて頭を垂れる初老の戦士に青年は違和感を覚える。

青年「………なんだ?」

老近衛「あの場では、あれしかお二方を生き延びさせる手段が思い付きませなんだ……結果姫様は脱出出来ましたが若には深手を…それに投獄の憂い目に遇わせる形になってしまった……全て私の力不足故に起きた事、どうか許して下されい…」

青年「………爺……では……」

老近衛「裏切り者などおりません、全て筒抜けだったのでしょう……国王は恐ろしい方だ」

青年「…………そうか……」


青年「…………分かった、そなたの言葉だ信じるしかあるまい」

老近衛「……有り難い」

青年「爺、ひとまずここから出してくれぬか?私も妹に合流せねば」

老近衛「無論そのつもりですぞ……しかし、入り口は衛兵に固められている、傷の癒えぬ若では王宮から正攻法で脱出など無茶ですぞ」

青年「無茶は承知だ、それでも行かねば」

身体を起こそうとしたがまともに動かない、手当てはされていたようだが傷は深く……動けば無数の切り傷が開きかねない。

青年「……痛っ………参ったな……無茶をし過ぎたか………」

老近衛「………致命の傷こそ受けておりませんでしたが傷口が多すぎるのです……もう少しで出血により命を落とすところだったのですからな」

牢獄の鍵を使い老人が中へと入ってくる、そして青年を抱きかかえて……それから持ってきていた治療用具を使い傷の手当てを始める。

老近衛「…………本来ならば傷を癒すまでここに留まらせておきたい所なのですがそうも行かぬようなのです、若」

青年「………なに?」

老近衛「やはりと言うか、予想通りです……王があの場で若の首を斬らなかったのは正式な罪状を用意し、民に人気のある若への印象操作をするためです……若は国民には知名度も高く人気者ですからな、それを突然斬首としても国民は不服を申し立てかねんのでそれを抑える為に数日時間を置く必要があった」

青年「…………もっと分かりやすく言え、爺よ」

老近衛「………若を悪者に仕立ててから処刑するつもりだったから投獄サレタッテ事ですじゃ」

青年「なるほど、初めからそう言えば良かろう回りくどい!!」

老近衛「……………」


青年「つまり悠長に傷が癒えるのを待っていたら処刑台送りにされるという事だろう?」

老近衛「そういう事ですな」

青年「ではどうする?いっそ処刑される寸前まで待って外に出た時点で大立ち回りでも………」

老近衛「若はそれやって負けたの分かっておるんでかね……」

青年「む……ぬぅ……あれは油断してだな……うぅむ……」

老近衛「やれやれ……若は性分なのかどうも目立とうとするのが珠に傷ですな……」

手当てを終えて老人は青年に衣服を渡す、それから牢獄の奥……石の壁の前へと歩み寄った。

青年「用意がいいな、しかし服などどうするのだ、脱出しようにも手は今のところ無いのだろう?」

老近衛「そんなことは一言も言っとりやせんぞい若……何も正面きって脱出劇などやらんでもよいだけの事」

青年「む?」

石の壁を探るように撫でる老人は続ける。

老近衛「……この地下牢は私も閉じ込められていた事がありましての」

老人が壁を押す。その部分は妙に石の積みかたが雑に見える。

老近衛「私一人で一年と半年、更に二人係りでもう半年……なんとか脱出しようとあの頃は毎日隙を見て掘り進んでおったものです」

更に強く押すとその壁はあっさりと崩れ、中から空洞が現れる。

青年「……爺、それは……!!」

老近衛「まあ、あとほんの少しという所で釈放されたんですがね、いざという時の為に長年かけて完成させといたんですじゃ」

老近衛「何でもやっとけば無駄にはならんもんですな?」ニヤリ


………

青年「…………ここは……堀の内側か」

老近衛「丁度王宮の真裏辺りになりますな……ほっ!!」

穴の出口近くに結んであった縄を老人が引き上げると、堀の水の中からいかだが現れる。

老近衛「見つからんようにいかだに重りを付けて沈めてあったんですじゃ」

青年「……本当に準備がいいな……よし」

音を立てぬよう慎重にいかだへと乗り移る二人、いかだは水気を含んではいたが人二人を乗せる浮翌力はあるようだった。

青年「向こう岸までで良いのか?」

老近衛「はい、それでまずは街の中へ紛れましょう、それから馬や必要な物を手配して姫様の元へ」

青年「何処に行ったのかは分かっているのか?」

老近衛「若の御友人とかいう若者の所へ行ったのはつかんでおりますぞい、どうやら女兵士をあてにして向かったのでしょう」

青年「………ならば場所を移しただろうな、あそこは王都に近い、探られればすぐに見つかる」

老近衛「ふむ、ならば北でしょうな……大きな馬車にドレスを身に纏った者と使用人風の者を連れて国境への道を走らせているとの話がありましたのでな」

青年「………ふむ……北か……そちらの方は確か……」

老近衛「近々攻めいる予定の地ですな……止めに行ったのか、それとも敵国の方が亡命しやすいと判断したのか、いづれにしても向かう理由はあるでしょうな」


青年「よし、ならば急いで向かうとしよ………っ……!!」

対岸……街側へもう少しという所で突然いかだに何かが突き刺さる。

老近衛「矢か!!気付かれていたか!?」

突き刺さる矢が飛んで来たであろう方向へ眼を向ける。そこには弓をつがえた一人の美しい女性が立っている。

団長「…………ふふっ……今夜辺りだとは思っていたけど、あっさり見つかって嬉しいわね?」


団長は弓を投げ捨てて身の丈程もある大剣を構える。

団長「…………ハァッッ!!」

そしてそれを投擲する。投擲された大剣は空を切り裂く音を出しながら青年達の乗るいかだ目掛けて向かって来ていた。

青年「いかん!!飛び込め爺!!」

老近衛「くっ……バカ娘が!!」

青年達が堀の水の中へ飛び込んだ瞬間、いかだは跡形もなく吹き飛んだ。


青年「……ぐっ……ぶはっ……!!」

なんとか泳いで岸へと這い上がる。だが全身傷だらけで完治していない身体はそれだけで悲鳴を上げる。


老近衛「若…!!ご無事ですか!?」


老人もすぐ近くに這い上がっている。そしてそのあがったすぐ近く……見下ろすように微笑む女を睨み付けた。

青年「……随分と察しがいいな?近衛総団長殿?」


団長「あの牢に抜け穴があるのはわたくしも知っていましたので、なにせ間近で見ていましたもの……ねぇ、叔父様?」

老近衛「……………くっ……」


団長「逃げてどうしようというの坊や?もうあなたに出来る事などないでしょうに」

青年「……それはどうかな?」

団長「……………嫌な眼ね、昔居た誰かを思い出して不愉快だわ」

そう言い、団長は腰から剣を引き抜く……今度構えた剣は幅広のブロードソード、彼女の愛用している剣である。

青年「………爺、剣を貸せ」

立ち塞がるなら容赦しない。一度は手痛い敗北を喫した相手だが勝てない相手ではない、今の自分負傷具合を考えても逃げるよりは戦って打ち勝つ方がまだ活路がある、青年はそう判断したのだが……

老近衛「若……貴方はこのままお逃げ下され、団長……いや、姫様は私がなんとかしますぞい」

老人はそう言い、青年と団長の間に割って入る。

青年「……爺……だが…」

老近衛「私が負けるとお思いですかな?これでも貴方の剣の師ですぞい」

老人は笑う。

老近衛「……それに、一族の者として、叔父としてこやつを叱ってやらねばならん」

団長「……ふん…」


老近衛「さあ若、お行きなされ!!」

老人は抜刀しながら叫ぶ。

老近衛「今は一人のようですが長引けば兵が来ますぞ!!その前に……」

青年「断る!!」

老近衛「若!?何を…」

青年「そなたをおいて行ける訳がなかろう!!それに兵なら既にそこらにおる、丸腰で逃げ出せば格好の餌食になってしまうだろうが!!」

老近衛「……むっ……ちっ…!!」

団長「流石に気配を察知するのが上手ね坊や……いいわ、隠れるのを止めて姿を見せて上げなさい貴方たち」

団長の指示に従い、四方から人の姿が現れて行く、その数は三人。

青年「………全員我が妹の近衛達ではないか」

団長「あの可哀想な容姿の子がたまたま私の配下を選んでいただけよ、都合が良いからそのままにしておいたけれどね、ふふ……」

老近衛「……だから部下はキチンと選べと言ったのにあのうつけめ……」


団長「実はわたくしま今は謹慎中でしてね、あの時陛下の命令を忠実にこなさなかったという事でね、ですから今はこの子達三人しか手駒がおりませんの……良かったわね、逃げ出す機会はあるかもしれませんわよ?」

イケメン近衛「団長様、ここは我らが」

ハンサム近衛「貴女の為ならばどんな事でも」

男前近衛「私達は貴女の騎士となります」


青年「………爺、団長殿はいくつだったかな?…」

老近衛「今年41ですな」

青年「おい貴様ら!!女兵士の方がまだ若かろうが!!良いのかそれで!?」

老近衛「…………」

団長「………」ビキッ

イケメン近衛「黙れ!!この御方程の美貌があれば年齢など関係あるものか!!」

ハンサム近衛「俺は元々熟女フェチだ!!年増最高だろうが!!」

男前「仮に団長様が無しだとしても女兵士殿はもっとないわ!!あんな腐ったパイナップルみたいな女願い下げだ!!」

団長「………」

青年「ええい!!分からず屋共め!!」

老近衛「他に気にする所無いんですかい若」


団長「……下らない事を言って居ないで貴方たちは坊や……王子の方を相手しなさい、丸腰の上怪我人よ、必ず仕留めなさい……殺しても構わないわ」

イケメン近衛「……はっ?しかし陛下は……」

団長「気にする必要はないわ、逃がすよりは確実に仕留める方がまだましよ、それともわたくしの言うことが聞けないの?」

イケメン近衛「…い、いえ!!」

ハンサム近衛「……ならば、申し訳ありませんが殿下、ご容赦を…」

男前近衛「謀反の上に脱走となれば容赦は出来ますまい…」

青年「………爺、剣は一本だけか?」

老近衛「生憎とそうですな……後はちゃちな短剣が一本たけてわです」

青年「それで構わん、貸してくれ」

老近衛「………無茶はせんで下されよ若」

青年「……ふん、多少の無茶程度で道が開くのならその言葉は聞けんな」

老近衛「やれやれ……私はアレの相手をせねばならんので手助けは出来ませんからな?」

青年「問題ない、いくぞ爺!!」

老近衛「…はっ!!」


ねる(´・ω・`)おやすみ


青年「さて、あまり身体は動かしたくはないのだが……!!」

イケメン近衛「御覚悟を!!」

ハンサム近衛「はぁぁ!!」

まず二人が左右から斬りかかってくる。もう一人も時間差で正面から斬り込んで来るだろう、突きの構えを取り真っ直ぐ此方を見据えている。

男前近衛「…………」

左は上段、右は中段。ほぼ同時に剣が振るわれた。

青年「ん」

青年は右の近衛の切り払いを短剣で受け止める。そして左の近衛の降り下ろしに対してはあっさり手で払ってしまった。

イケメン近衛「えっ……は…?」

あまりにも無造作に、簡単そうに払われてしまった為一瞬何が起きたのかと考え、動きが止まる近衛。

青年「戦いの最中に呆けるなたわけが」

イケメン近衛「うごぉ!?」

間髪入れずに青年はその呆け顔をぶん殴った。そして爽やかフェイスが自慢の近衛はいろいろ残念な感じに顔が変形しつつ大きく後ろへぶっ飛び夜の堀の水面へ叩き付けられ、沈んだ。

潰れ顔近衛「」ブクブク

ハンサム近衛「………えっ」

男前近衛「ちょ……」

青年「……ふむ、痛いが多少は動けそうだな、よし」

(´・ω・`)てすと

ハンサム近衛「なっ……怪我人の筈では……!?」

青年「うむ、動くと痛いぞ?」

ハンサム近衛「ひ、ひぃ!?」

一撃で、しかも素手で一人倒されたのが余程効いたのか、ただ剣を振り回して威嚇する笑うと白い歯が眩しい近衛。

青年「……そなたも近衛に選ばれた者ならもう少し心を鍛えられんのか……ふっ!!」

闇雲に振り回される剣の軌道に合わせて短剣を近衛の剣の横腹へ強く叩き付ける。すると近衛の剣は柄の少し上辺りからボッキリと折れてしまう。

青年「む?」

だが青年の持つ短剣も強度が弱かったのか砕けてしまった。

ハンサム近衛「………は……ははは!!焦ったが武器が壊れてしまったのでは終わりですな殿下!!さあ観念しでげべっ!?」

自身も武器を破壊されている筈なのに妙な事を口走る口目掛けて青年はとりあえず胴回し回転蹴りを叩き込み黙らせる。

歯っ欠近衛「うぴゅ…」

青年「………そなたら、もしや弱いのか?」

仰向けに倒れ白目を剥いている近衛を一瞥してから残り一人に話し掛ける青年。

男前近衛「あかん」

一人レスしてくれないか?(´・ω・`)反映されんから投下出来ん。


青年「さて」

男前近衛「く、くそ……丸腰の怪我人などに!!」

青年「…むっ、そなたはまだマシか」

連続で攻撃を繰り出すキリッとした顔立ちで汗と笑顔が似合いそうな近衛。フェイントを交えてどうにか青年を仕留めようと間合いを詰めながら吼える。

男前近衛「おおおおおッッ!!」

青年「うむ、遅い」

わりと全力で繰り出していた剣撃は、ぱしっという感じに白羽取りされてしまった。

男前近衛「」

青年「ふんっ!!」

で、両手で挟んだまま剣を下にさげさせて膝を使い叩き折る青年。

男前「参りまひでぶぉ!?」

青年「むっ………しまった」

最後の一人を殴り飛ばしてから青年は後悔する。

青年「剣を壊さず奪っておけばよかった……ううむ……」

失禁近衛「」ピクッ…ピクッ…


一方。

団長(………チッ…!!役に立たない子達ね…!!)

老近衛「ぬぅん!!」

団長「老いぼれが……!!」

老近衛「おぬしもそろそろ歳じゃろうが…!!」

老人と団長は互いに一歩も退かずに打ち合いをしていた。

老人は齢六十を越え、力が衰えているとはいえかつては戦士の部族の中でも屈指の怪力を誇り、その実力は青年の母親が剣を覚える以前は一族最強と言われた者である。

一方、近衛総団長である美しい女性は青年、それに実の妹と同様一族が身に備えた加護の力を強く引き継いだ、かつての勇者の直系の血筋に当たる者だった。剣の実力はやや劣るがそれを補って余りある身体能力を、主に瞬発力で勝っていた。

団長「いいかげん諦めたらどうですか叔父様?いまさら……何に抗おうとしているのです!?」

首を狙った一撃を受け流され一歩下がる。追撃の突きをいなし側面に回り込みその流れで脇腹を斬りつけようとするも素早く体勢を整えられこれも止められる。先程から致命の一撃は全て見切られている。だが団長側も老人に攻めに転じる隙を与えず防戦を強いていた。

老近衛「おぬしに語ったところで耳を貸さんじゃろうが…!!いつまでも過去に縛られよってからにこの馬鹿娘が……!!」

団長「……知っていてそれを言うのね叔父様……あの時、何があったのか忘れたのかしら?」


老近衛「おぬしの子供の事か!?それは諦めずに探せと言っているではないか、それをせぬのならばただの言い訳に過ぎんぞ!!」

団長「それだけじゃない!!わたくしは……私は!!何もかもが憎いだけだ!!この国も、あの王も、何も知らずに幸せそうに生きている奴らも!!」

団長「子を産めぬ身体にされてまで私はあの時守ったのだ!!それを妹は……あいつはそんな私の行いを踏みにじってまで命乞いをした、だから許せないのだ、あいつもその子供も!!私だけ全部失って!!失う事を覚悟してまで一族の誇りを守ったのに、あいつは裏切った!!叔父様は知っていたでしょう!?奴は私が拒んだから妹を狙った、あの時妹は命に代えても誇りを取るべきだったのに!!」

老近衛「子と夫を……それに姉であるおぬしの命まで盾にされていたあやつの想いをそのように……!!どうして分からん馬鹿者がぁ!!」

団長「解るものか……!!私の大切なモノは亡くして、あいつの大切なモノは今も憎たらしく生きている!!それが全てだ!!」

青年「あっすまぬ、団長殿の子供?うん、たぶんそうだな、心当たりがあるのだが……」フリフリ

団長「っ!?」ビクッ

老近衛「は?」ピタッ

青年「いや、だからな?心当たりがあるのだが」


団長「…………冗談にしては笑えないわよ、坊や?」ギリッ

青年「いや、冗談などではないんだが」

団長「第一坊やは私に子供が居たの知っていたかしら?話していない!!」

老近衛「……う、うむ……私も奥方様も話しておらぬ筈じゃが……」

青年「うむ、聞いておらぬぞ、だからもしかしたらなのだが」コクリ

団長「話にならないわね」フン

青年「いやしかしだな……他人にしては……」ブツブツ

老近衛「若、その者はどういう?」

青年「我が友に支えている使用人なのだがな?いや、だがどうなのだろうな……うーむ…」

団長「特徴は」

青年「どえらい美人のボインボインだ」

老近衛「………いや、若?そういう事ではなくてですな?名前とか生い立ちとか……」

青年「名前か、はて?なんだったかな……メイドさんと呼ばれている所しか聞いていないので分からぬ」ウーン

団長「ああもう!?だったら他になにか特徴は!?髪の色!!瞳の色とか肌の色!!私に似てるとかそういうのは!?」ガシッ

青年「う、うむ、えーと……髪の色も瞳の色も肌の色も団長殿と同じだな……まあ顔はそっくりという訳でもないがまったく似てない訳でも……」

団長「は、はっきりしなさいよ!?どうなの!?間違いないの!?」ブンブン

青年「ふぉ!?揺らすな傷に響く!?」グワングワン

団長「ぜぇ……ぜぇ……!!年齢とあと叔父様も聞いてたけれど生い立ちは!!そこが一番重要なのよ!!」ミシミシッ

青年「や、やめろ……そ、そうだこの怪力!!まるでゴリラの如き握力は瓜二つだ…グァァァァァ!?!?」メキョ

団長「!!」

老近衛「………一族の者か?そうだとしたら可能性は……」

団長「…………う、うそ……ホントなの…?」ドサッ

青年「」グッタリ

シリアスに飽きてきた(´・ω・`)今日は寝る、おやすみ


老近衛「……実際に会って確かめる必要があるじゃろうな」

団長「………」

老近衛「どうした、何か言わんかい!!」

団長「無理よ……今さら確めてどうしようって言うの……今になってそんな事聞かされても私は止まれない!!止まったらなんの為に私はここまで生きていたの!?なんの為に屈辱に耐えてまでここにいると思っているの!!」

老近衛「……おぬしがあの王を殺そうと機会を伺っていたのは知っている、しかしじゃな…」

団長「……殺すどころか逆に掌で踊らされていたけれどね………それでも私は……!!」ギリッ

青年「む?私はてっきり母上そっくりだからと言う理由で妾的な関係なのかと思っておったのだが」

団長「……坊や、本気で殴るわよ?」ビキッ

青年「全力で殺しに来てた者に殴るわよと言われてもな……いや、深い事情など私は知らぬし」


団長「……いいわ、この際だから教えてあげるわ、そもそもあなたが王の実子ではないのは言ったわね、あなたの母の不義があったとは言ったけれど実際は違うわ、実の兄の妻だった妹を無理矢理組み強いて奪ったのよ、私や叔父様、それにあなたとその父親である王兄様の命を盾に取ってね」

青年「………む……」

団長「だけどそれは本来なら最後の手段だったのよ、本来目を付けられていたのは私の方よ」

老近衛「………兄嫁を奪うよりはそちらの方が御しやすいとの判断だったんじゃろうな、じゃが……」

団長「……冗談じゃなかったわ、夫を、父を殺され、娘を手放す羽目になり、一族はほとんど根絶やし……残ったのは叔父様と妹だけなのよ……それを行わせた国の王の子供など断じて孕ませられたくなかった、だから私は必死で抵抗した」

青年「……………では、先程言っていた子供が作れぬ身体にされたとは…」

団長「…………」パサッ……グイッ

老近衛「………」

青年「……その傷は」

団長「……王族以外にはこの力を持って産まれる子孫は作らせないという事でしょう?私を従わせるのが無理だと判断されたその時に使い物にならなくなるまでね……」

青年「………酷い事を」

団長「ふん……別にこれ自体は大した事ではないわ……」キュ

団長「分かったでしょう?私はもう憎しみでしか生きる糧を獲られない、だからこそ坊や、あなたですら私は本気で殺そうとしたの、能天気にバカ面したお坊っちゃまが、私がここまでして貫いた意地をあっさりと無下にした妹が許せなかったから」

老近衛「………馬鹿者め……どうしてそのようにしか考えられぬ」

団長「私からすれば、叔父様こそおかしいわね……一族の恨みも晴らせずに余生を過ごして満足かしら?」ジャキッ

青年「むっ、なるほどよう分かったぞ叔母上」フム

団長「………は?何が分かったと…」

青年「よかったな娘に会えるかもしれんで、憎しみなど置いといてさっさと会いに行こうではないか、うん」ニカッ

団長「………だ、だから…!!」ギリッ

青年「会いたくないのか?そうは思えぬのだがな」

団長「…………………っ……!!……」ワナワナ

青年「素直でないのう、まあいい、そろそろ行くぞ爺」スタスタ

老近衛「し、しかし若!?」

青年「もう邪魔はせぬよ叔母上は、行こう」

老近衛「…………むぅ…」スタスタ

団長「……………」

青年「…」ピタッ

老近衛「む?」

青年「叔母上、置いて行って良いのか?娘に会いたいのなら付いて来るべきだと思うが」ジー

団長「だ、誰が……!!」キッ

青年「む、そうか…なら好きにせい」スタスタ

老近衛「…………どうするんじゃい」

団長「…………」…トタトタ

老近衛「…………素直に会いたいと言えばよかろうに」

団長「………くそっ……今さら会ってどうしろって……」ブツブツ

…………………


それから数日後、麓の村ハンサムさん宅。

少女「………………」ジー


男「………ふむ……ちょっと」

メイド「はい」つペン

男「うい」

少女「…………」ジー

メイド「……あれ何処だっけ……えーと」

男「ベッドの下」

メイド「あっホントだありがと」ゴソゴソ

少女「………メイドさん何を探してたんですか?」ジィ

メイド「衣類カバンだけど?いつでも発てるように洗濯したものはちゃんとね?」

少女「……そうですか、それじゃご主人様がペン取って欲しいって何故?」

メイド「え?言ってたじゃん、ペン取ってって」

少女「…………」ジー

メイド「……えっ、なに?どしたの?」

男「おーい」

メイド「飲み物?ちょっと待って?」トタトタ

少女「いやいやいや、なんですかそれ」

男「んー?」

メイド「えっ、なに?何かおかしいの?」タジッ

………

少女「……っていう流れが先程ありまして」

女兵士「………何故私達に言う」

眼鏡っ娘「…………」

少女「……いえ、その……他に言える人が居なくて…」

眼鏡っ娘「ツーカーの仲、熟年夫婦はそうなるらしい」

少女「………熟年て……で、でも二人はまだ若いし」

女兵士「あの二人は幼馴染みなのだろう?別に不思議は無いだろう」ハァ

少女「……えぇ……でもいきなりですよ?ちょっと前はお互いまるで理解しあってませんでしたよ?」

眼鏡っ娘「そうなの?」

少女「はいっ」コクリ

女兵士「……なら二人の間に何かあったのだろう、何かまでは知らんが」

盗賊妹「ヤったな」ヒョコ

少女「っ!?」ビクッ

眼鏡っ娘「やった?」

盗賊妹「ん、こうな?おとこがおんなにのっかってあーしてこーして」ワキャワキャ

女兵士「」

少女「ちょ、ちょっと!?それはないよ!?だっ、だって寝るときは三人で……」ワタワタ

眼鏡っ娘「……貴女が寝てる隙に事を済ませたという事……」

盗賊妹「おー……とーちゃんとかーちゃんみたいだな、こっそりやってふぎゅ!?」ムグッ

少女「……こ、子供はそんな事言っちゃダメ
!お姉ちゃん居ないからって悪い子じゃダメでしょ!?」ハシッ

盗賊妹「ふぐっ……ぷはっ!?ねーちゃんは関係ないんだがなー?」ブー

眼鏡っ娘「……?……あの子?なにしに?」キョロキョロ

女兵士「王街へ偵察と情報収集に向かわせました、それなりに動ける者で素性が知られていないので都合が良かったので」

少女「……危なくないんですか?」

女兵士「大丈夫だろう、この国は表向き治安は良いからな……我々の味方だとバレない限り危険はない」


盗賊妹「ねーちゃんはすばしっこいしに死にはしねーぞー?それよりだな?ヤったのかどうなのか……」

少女「だ、だから違うって…」

眼鏡っ娘「でも二人の距離は一気に縮んだ、余程の事がないとそうはならない」

少女「………た、確かに…」ゴクリ

女兵士「何か心当たりはないのか?ほら、なんだ……そう肉体的な事でなくてもだな?うん…」ソワソワ

少女「…………うーん……そういえば……ゴニョゴニョ…」

眼鏡っ娘「……ふむ、お互い気持ちを知った?それで?」

女兵士「その後は?」クワワ

少女「いえ、それだけですけど、そのあとは別に何も」

盗賊妹「隠れてヤってんな」

少女「!?」ギョ

眼鏡っ娘「………実際そうっぽい」コクリ

女兵士「…………チッ…」ペッ

少女「え、えぇ……そうなのかな…」

盗賊妹「なんだ、ちっちゃいねーちゃんはショックなのか?」

少女「え……それは……」

少女(………あれ?どうなのかな……ご主人様とメイドさんがそういう仲になるなら歓迎してた筈なんだけど……うーん…)


メイド「……あれ?どうしたんですみんなして?」トタトタ

少女「あっ…メイドさん」ギク

メイド「なんの話?」

盗賊妹「メイドのねーちゃんメイドのねーちゃん、ヤったのか?」クイクイ

メイド「なにを?」キョトン

少女「ちょっ!?な、なんでもない!!なんでもないですメイドさん!!」ブンブン

メイド「……な、なに?気になるんだけど」

眼鏡っ娘「面倒、直接聞けばいい」

少女「だ、ダメですってば!?」

女兵士「気になるから私達に相談したのだろうがまったく…」

少女「相談したのはそういう事じゃないです!!」

メイド「だ、だからなんの話……」

眼鏡っ娘「………痛かった?」ボソッ

メイド「へっ?」

少女「」

女兵士「…………ど、どんな感じなのか詳しく……」ソワソワ

メイド「だ、だからなんの話なのか分かりませんってば!?」


少女「………えーとですね、メイドさん………ご主人様と急に意志疎通が捗るようになりましたけど、なんでです?」

メイド「えっ、そ、そうかな……?」

盗賊妹「だからヤったんだろーって…」

少女「……っ…!!」キッ

盗賊妹「お、おおぅ?ちっちゃいねーちゃんこわい…」ビクッ

メイド「え、えーと……自分じゃよくわからないんだけど……そんなに違う?」ソワソワ

少女「ぜんぜん違いますね」コクリ

メイド「………えぇぇ……」カァ

眼鏡っ娘「思い当たる節は?」

メイド「……………えと……うーん……自分に少しだけ正直になろうかなって、そしたらなんとなく……」

少女「……………」

眼鏡っ娘「………」

女兵士「…………ハァ…」

メイド「えっ、あの……なにかおかしいですか?」

眼鏡っ…「ううん、なにも」フルフル

女兵士「………」

少女(…………どうしよう……ちょっと羨ましいって思っちゃった……いいな、メイドさん)ジッ

メイド「えと……」オロオロ


………

男「…………さて諸君、先程の会話の流れでお気付きだろうか?正直に言おう、少女ちゃんに指摘されるまで自分でも分からなかった」

男「つーと言えばかーで通る、まさに熟練の夫婦間の会話さながらの意志疎通が俺と彼女の間で行われていたようだ………さぁ、それが意味する事が分かるかね諸君?」クワワ





男「……………ヤれんじゃね?」



男「諸君、どう思う諸君?お互い好きだとは確認したがな、だがだよ諸君?いっていいと思うか?いつも諸君はやれキスしやがれだの押し倒せだの谷地を飛ばすがそれを実行するべき時が来たのではないかね?どうなのだ!?」ウロウロソワソワ

男「………………」


男「何故だ!?何故俺がその気になった時だけ止めとけだの調子乗んなだの言うのだ!?諸君等は俺の脳内に住む観客だろう!?いつものスケベ魂はどうした!?何故背中を押してくれぬのだ!?」

男「………………」


男「なに?お前が勝手にビビってるだけだと?何を言うか!!俺は決める時はたぶん決められる子だぞ!!見くびるな!!」プンスカ



男「………いやまあしかしだ、現状俺は彼女と少女ちゃん二人を愛してしまっているからな?そんな半端な気持ちで片方に粉かけるような事して良いのかとは思う………だがしかしだ諸君!!」



男「…………俺が何年、ひとつ屋根の下に暮らすあのドスケベボディを間近に見てきたと思っている?」


男「俺が手を出さなかったのはぶっちゃけ嫌われるのが怖かったからだ!!だが今はいけそうな雰囲気なんだぞ!?もうこっそりバレないように処理するなんて惨めな思いしなくて済むかもしれんのだぞ!?良いじゃん下半身の権化になったってさぁ!!」ウルウル


男「……………王街へ出発した日からこっち処理するタイミング無くて辛いのもあるが」ボソッ


男「男は紳士であり続け無くちゃいけないんですか!?おんなじベッドで寝てるおっぱいに顔埋めちゃいけないんですか!?ぷりぷりの太ももすりすり頬擦りしちゃいけないんですか!?ぼくはもう耐えられません!!いっそ殺せよぉぉぉぉぉぉ!!!!」サメザメ


ハンサム「ふむ、なにやら騒がしいと思ったら中々切実だな」ヌッ

男「はぅあ!?」ビクッ

ハンサム「一緒に寝ている様子だったのにどうもずっとあの二人は生娘のままだから気にはなっていたのだが、なるほど好いているが故に手が出せぬと………分かる、分かるぞ若者よ、俺にもそんな時があったものだ」ウンウン

男「お、王兄さま……」

ハンサム「…………若者よ、ひとつだけアドバイスをしよう」ニッ

男「……アドバイス?」ゴクリ





いいわけは

おわったあとで

かんがえろ



ハンサム「………良い女は男が馬鹿でも許してくれるものさ」フッ

男「……な、なるほど……さすがイケメンスケコマシ!!」

ハンサム「そういう訳だ、大丈夫……愛しているのならなおさらな、頑張れ若者よ」スタスタ

男「ありがとうイケメン!!おれ、がんばるよ!!」ウルウル


………………


スペック

ハンサム

46歳、身長178cm体重67kg

スケコマシの王兄さま。王子(青年)の実父、顔はやや更けているがまんま王子(顔年齢30前後)スケコマシだけど勝手に女がコマされるだけで本人は特になにもしているつもりはない。


団長

41歳、身長176cm全備重量380kg (大剣、長剣、短剣、弓矢、鞭他金属製のアーマー装備状態)
B, 96,W, 62,H, 89

顔面偏差値95、メイドさんの実母。作中一番悲惨な目にあってる人でダークサイドに引きづり込まれてるおばさん。子供が産めない云々は詳しく描写するとリョナになってしまうためこれ以上は掘り下げるつもりなし(´・ω・`)ちなみに顔面偏差値作中2位、1位は雄姉様。

老近衛

68歳、身長195cm体重134kg

ひげもじゃ筋肉だるまハゲじじい(´・ω・`)若い頃はケ●シロウ的なイケメンだった剛の者。


ねる(´・ω・`)おやすみ


……で、夜。

ガチャ

少女「……あれ?ご主人様何処に行ったんでしょう?」キョロキョロ

メイド「ああ、あいつ?村にある宿にいるわよ?」ゴソゴソ

少女「えっ、宿ですか?泊まる所ならここで良いのに……」

メイド「えーと、仕事だとは言ってたけど詳しくは教えて貰ってないのよね」ギュ

少女「はあ……」

メイド「よしと」スクッ

少女「……?……メイドさんも外出ですか?もう寝る時間なのに」

メイド「夜食届けてって言われてるのよ、いつもならこういう時軽食持参するなり他所で注文するなりするクセに絶対あたしが届けろって言うもんだからさ?」

少女「届けろ、ですか?あのご主人様が?だってこのお宅って村の宿から徒歩で10分ぐらいですし……自分で取りに来そうな感じですけど………あっ…」ハッ


メイド「なに?」

少女「……わざわざ宿に居るんですよね?」

メイド「うん、それが?」

少女「……………」ムゥ

メイド「な、なに?何か気付いたの?」

少女「……………い、いえ……なんでもないです」フルフル


メイド「……なにか気付いたの?なら教えてってば!!」

少女「……い、いえ…なんでもないですから大丈夫です」フルフル

メイド「大丈夫って顔じゃないんだけど…」

少女「………ホントになんでもないですってば」

メイド「……うーん……な、ならあんたも付いて来てよ?別に大丈夫でしょ?」

少女「…え…それは」

メイド「……ダメなの?」

少女「えと、わたしは呼ばれていないですし、それに今日はその…ちょっと疲れたので先に休んでます」ニコリ

メイド「そ、そう?うーん…」

少女「メイドさん、ご主人様待ってますよきっと、早く行かないと」

メイド「……わ、わかったわよ…行ってくる」

少女「はい、いってらっしゃいメイドさん」

メイド「……う、うん……ホントに何にもないのよね?」

少女「大丈夫ですってば」

メイド「……う、うん……」トタトタ

バタン


少女「………」


少女「………はぁ…」コテン

少女「いいんだよねこれで、うん……」


…………

メイド「……あっ、居た……おーい、言われた通り持って来たわよ」トタトタ

男「………お、おう」ソワソワ

メイド「……?…仕事だったんだよね?わざわざ中断して外で待ってたの?」

男「え、ああ……まあ、ね?」チラッチラッ

メイド「なに?」

男「い、いや………」フイッ

メイド「…?……まあ、いっか。それじゃこれね、簡単だけどサンドイッチ作ったから」ズイッ

男「お、おうよ!?ありがとうな!?」

メイド「なんでそんなにそわそわしてるのよ……」

男「いや?ソンナコトナイヨ?」オロオロ

メイド「…………」ジー

男「………ぬぐ…っ…」ダラダラ

メイド「………はぁ…まあいいわ、あんたの挙動不審は今に始まった事じゃないし、それじゃ頑張ってね、あたしは戻るから」スタスタ

男「ちょ待!?待って!?」ガシッ

メイド「えっ、な、なに?」ビクッ

男「…………」

メイド「………えと…」

男「…………」

メイド「……は、離してよ…」タジッ

男「……………ちょっと中入ってけ、良いだろ?」ジッ

メイド「えっ、別に……いいけど」

男「………うん」スタスタ

メイド「え、ど…どうしたのよ?」グイッ

男「……………」スタスタ


ガチャ

男「………」スタスタ

メイド「……えと」

男「……」ボスッ

メイド「…………」

男「……と、とりあえず座ろか」ポンポン

メイド「と、隣に座れってこと?」

男「んだ」コクコク

メイド「………」ポスッ

男「……………」ソワソワ

メイド「………?…?…」

男「…………」チラッチラッ

メイド「……えと」

男「…………あー……その……えぇとだな?」モジモジ

メイド「な、なに?」ジリッ

男「………………」

メイド「……ち、ちょっと!?言いたい事あるならなんか言いなさいよ!?」

男「………そ、そうだな……ここまで来てビビってどうする俺……よ、よし」キッ

メイド「ふぇ?」キョトン


『メイドさん視点』

どうにもよく解らない。私はただ夜食を届けに来た筈だったのだけれど、何故か宿の中に来いと言われて意味も分からず二人でベッドに腰掛けている訳だけれど。

何やら私の隣に座っている主人……彼の視線がすごく私に向けられている気がする。なんなのだ。

何がどうしたと聞いてはみたけどどうにも口ごもっていて要領を得ないし、らおち落ち着きが無いのだ。

………こういう彼は正直何度か見た事はあるが、どうしたのか聞いてもはぐらかすだけで何がしたいのやらと毎度思う………。





メイド「……………あっ……」

いや、過去にこんな感じで挙動不審を起こした時は大抵そのあとこいつは変なことをしてくるのだ、久しぶりなので忘れていたけど。

以前は確か、彼の出奔前だから子供の時の事だけど、スカート捲られたり胸触られたりとトイレに無理矢理侵入してきたりとろくな事をしてこなかった。

………まさか、いまさらそんな子供のイタズラみたいな事をするつもりだろうか、だとしたら先手を打っす沈めるべきなのだけど。

男「…………よし、覚悟は出来たぞ」

と、色々考えていたら、彼が真っ直ぐこちらを見つめてくる。なんだ、なんだというのか。

男「……………っ………」

そのまま無言で私の腕を掴む、強く握るのではなく、いたわるようにやさしく掴まれた。

メイド「……ふぇ?ちょっ……」

そのまま、訳の解らないまま私は押し倒されてしまった。

男「……………」

彼は真面目な眼差しで私を真っ直ぐに見つめたままだった。ここまでされて、私はようやく気付く。

メイド「………ぁ……」

つまり、そうつまり。彼は私を抱こうとしているのだ。


メイド「………っ……」

男「…………」

拒もうと思えば拒める。いきなり過ぎるし一応私が彼を好きだというのと、彼が私を愛していると言ったのだから両想いだというのはあるけど……正直それだけで交際するわけでも結婚の約束をしたわけでもない。つまり、まだ早いんじゃないの?というのが私の考えなのだけれど……。

………正直、求められているのなら今でも良いんじゃないかと思ってしまう。

あの子への気持ちはどうするんだとか、今こんな事してる暇なんてあるの?とか、色々とぐちゃぐちゃになりながら頭には過っているけど……どうしてだろう、今まではどうしても素直になれなかった自分の心が嘘みたいに正直になれと言ってくる。

彼の手が私の頬を撫でる。すこしこそばゆくて顔をそらしてしまう。でも嫌な気分じゃない……撫でられた頬は焼けるように熱くなって、それに息が詰まって声が漏れてしまう。そんな程度の事で反応している自分が恥ずかしくて、泣きそうになってしまう。

男「……………」

このまま彼に身を任せて、どうなるか解らないけれど、私はそれでもいいかなと……思ってしまっているから。

少し怖いけど、あの時のような嫌な気分ではない、それは確かだから。

『男視点』

……………。

メイド「………ぅ……ひっ……う……」

俺は何をしているんだ?

俺は、今彼女を抱こうとしている。それはいい、俺は彼女を愛している。それは間違い無いのだから。

だが見ろ。

今の彼女の姿を、冷静に見つめろ。突然押し倒され、組み敷かれた彼女をよく見てみろ。

男「…………っ……」

……泣いている。

顔をそらして、震えながら泣いてしまっているじゃないか。

考えてもみろ、怖がらせて当たり前、泣かせて当たり前じゃないのか?だって……彼女は以前、俺の父親に乱暴されかけているんだ、それ自体は未遂だったようだがその後の結末を含めて、こんな事をされたらトラウマを呼び覚ましてただ彼女を傷付けてしまうだけじゃないのか?いや……事実彼女は震えて泣いてしまったんだ……間違いなくそうだろう。

男「……………」

俺は激しく後悔した。彼女と気持ちが通じあったからといって浮かれて、彼女の事をまるで無視して一人で盛り上がってしまっていたんだ。とんだ愚か者だ。

男「…………っ……ごめん……」

彼女を掴む腕を離して、身体を退ける。

メイド「………?……へっ?」キョトン

今ほど自分が憎いと思った事はない、俺はあれだけ見下していた父と同じ事をしようとしていたのだ、謝ったって許される事じゃない。

男「…………!!…」

いたたまれなくなり、おれは部屋を飛び出した。

メイド「へ…?ちょ」ガーン

『メイドさん視点』

何がなにやらまるで解らない。

どういう事なんだろう、何が起きた。

メイド「……は?」

どう考えてもさっきまで彼は私を抱こうとしてただろうに。なんでいきなりどっか行っちゃうのだ。

自分に正直にと思って、彼がそうしたいのなら私は受け入れようと、恥ずかしかったけれど覚悟していたと言うのに、何故だ、何がどうして何が起きた。

メイド「」

走り去った彼。

開け放たれたままの扉。

……そこから吹き込んでくる妙にうら淋しい渇いた風…。

メイド「…………からかわれた?」

いや、まさかそんな子供のイタズラじゃあるまいし。

メイド「…………」

なんだろう、それでも彼ならやりかねない気がする。

………なんと言うか、恥をかかされたとはこんな感じなんだろう。

そう思った瞬間、私の中の何かがブチッと切れた音がハッキリ聞こえた。


翌日。

少女「……………」ジー

男「…………」ズーン

メイド「………」ムスッ

男「…………」チラッ

メイド「……なんですか?こっち見ないで下さいませんか若旦那様?」ジロリ

男「……ぅ……ごめん…」

少女「……あ、あの、メイドさん?」オロオロ

メイド「なに」ブスッ

少女「く、口調がまたお澄ましモードになってますけど何が……」

メイド「別に何も」フンッ

男「…………」

少女「ご、ご主人様……」オロオロ

男「……良いんだ、彼女の好きにさせてあげてくれ」

メイド「………言うことそれだけですか?」ジロリ

男「ごめん…」

メイド「謝るなら初めからあんなことしないでくれませんか」

男「…………」

メイド「…………もう知りません、さいてー」プイッ

男「ふぇぇ…」ウルウル

少女「……なにがあったんですか」ゴクリ

メイド「だから、何も、ほんっとに何も」ムッスゥ

少女「………あ、あれー?」オドオド

男「…………」ショボーン


一方その頃。

青年「よし!!あれだ、あの馬車だ!!見つけたぞ!!」

老近衛「……ようやく対面か」

団長「…………」ソワソワ

青年「止まれ!!そこの馬車よ止まれ!!」ザッ

盗賊父「っ!?王子さまかい!?ご無事で!?」グイッ

馬「ヒヒーン!!」

青年「おお、そなたか!!ではやはり間違いないな!?」

老近衛「ふむ、どうやら若の知り合いで間違いないようですな、では姫様と件の娘は中に…」ガチャ

モヒカン姫「ん?」

老近衛「く、曲者!?」ガーン

団長「わ、わたしの娘は……!?」コソコソ

メイドハゲ「え?」

団長「へ、変態ーー!?!?」ガガーン

青年「む?なんだそなたらその格好は……他の者は?」

盗賊父「ああ…ワシらは囮ですんでてんで逆方向ですぜ姫様達が逃げたのは」

青年「なに?なんと謀られたか…」

老近衛「………なんでこんなもんが姫様達の目撃情報になるんじゃい…目が腐っとる」

団長「騙したわね!?娘に会わせるなんて言いつつこんな醜いハゲを見せて嫌がらせなの坊や!?」ダンダン!!

モヒカン姫「ひどい」

メイドハゲ「誹謗中傷にはもう慣れたぜ」フッ


……………再びハンサムさん宅。

少女「…………という話の流れがありまして」

眼鏡っ娘「そう」フーン

女兵士「只の痴話喧嘩だろうに、ほっとけ」

少女「ええ……でも…」


眼鏡っ娘「人の恋路に首を突っ込む趣味はない」

少女「………そ、そうですか……はぁ…」

女兵士「………お前はどうなのだ、どうも見ていて遠慮しているように見えるが」

少女「えっ…わたしですか?」

眼鏡っ娘「人間素直が一番だと思う」

女兵士「………殿下」

眼鏡っ娘「どうせなら母親も違えば良かったのに」

少女「…………お、王女さまそれは」

眼鏡っ娘「私は気にしていないけれど、にいさまは違うからめんどう」クイッ

少女「あんまり堂々とし過ぎるのもどうかと」

眼鏡っ娘「むっつり過ぎる故に失敗例が身近にいる。だから私は常にオープン」ブイッ

少女「………」チラッ

女兵士「なぜ私を見る」

盗賊妹「この前親子バーガーやりてえって呟いてたなー?」

女兵士「」ビクッ

少女「なんですそれ?」

眼鏡っ娘「何とは言いたくないけれど、仮に彼女がそうなったら命にカカワルかもしれないしお奨めしない、妄想に留めておくべき」

女兵士(´・ω・`)


女兵士「………と、とにかくだ……自分の気持ちを押し殺していても良いことはないぞ…………わ、わたしみたいになるし……」メソメソ

眼鏡っ娘「大丈夫、貴女はちゃんとかわいい、私が保証する、にいさまはダメだけど」ヨシヨシ

女兵士「で、殿下…」グスン

盗賊妹「なんでも腐りかけが一番うまいって言うからなー?」

眼鏡っ娘「発酵すると甘くなるらしい」

女兵士「ほめてるんですかそれ」

少女「…………わたしの気持ち……うーん……」

ねる(´・ω・`)おやすみ


……酒場。

男「…………ふぅ……息が詰まる、どうしてこうなった……あっ俺のせいか…」ウジウジ

女主人「お客さん昼間から飲み過ぎだよ」

男「……………今は呑みたい気分なんれす」ヒック

ガチャ

ハンサム「むっ?見ないと思ったらここに居たのか、どうした暗い顔をして」スタスタ

女主人「あなた!!おかえりなさいっ!!」ダキッ

ハンサム「ここは俺の家じゃないだろう?仕方ない人だ……」クイッ

女主人「ああん////つれない……でもステキ////」ウットリ

男「…………せんせい、ぼくおとこにはなれなかったよ」グスン

ハンサム「そのようだな、なんだ?怒らせるような事でも言ったのか」

男「……いや、言ったというよりはなんというか……」

ハンサム「ふむ?」

………

ハンサム「……ふむ、つまりとある事情がありそのせいで怖がらせてしまったから自分が許せんと」

男「そうっす、簡単に言えば初めから間違ってたんすね、もっと時間を置くべきだったのに」ズーン

ハンサム「………はて?どうにも解せんな、あの娘、単純にぶすくれてるだけに見えたのだが」

男「………いや、めちゃくちゃ怒ってたじゃないですか」

女主人「女は本気で嫌な事されたら怒らないでそいつの事徹底的に避けるけどねぇ?顔も見せないぐらいに」

ハンサム「うむ、そうだな、それに比べたらあの娘の怒り方など可愛いものだろうに」

男「……………えーでも」

ハンサム「理由はだいたい見当付くが……まあそうだな、本人に直接聞くのが良いだろう」

男「……話してくれるかなぁ…」

ハンサム「なに、俺がひとつアドバイスしてやろう」ニッ

男「またっすか」



酔わせれば

どんなおんなも

ほんねはく


ハンサム「酒というものはな、女を素直にさせるものさ」フッ

男「………な、なるほど」ゴクリ

ハンサム「ここは酒場だし丁度良いだろう、どれ……女が酒を初めて呑むのだとしたら…この辺りか?」ゴトゴト

女主人「果実酒も甘くて良いけどこっちのエールも中々だよ、この村の麦で造る麦酒は苦味が少なくて都じゃ女に大人気って話だし」ドンッ

男「……お、おお……いいんですか?」

ハンサム「金は貰うぞ?」ニヤリ

男「……よ、よぉし……買いましょう」ゴクリ


……で。

男「…………おーい、ちょっと良いかな?」

メイド「なんですか、下らない事だったら話し掛けないで下さい」ブスー

男「………い、いやね?怒るのは分かるんだけど、そのね?そろそろ仲直りをと……」

メイド「やです」プイッ

男「」グサッ

メイド「それだけですか?私は泊めさせて頂いている身分なので色々とお手伝いさせて頂いている最中なんですが?邪魔するなら何処か行っていてくれませんか若旦那様?」ジトー

男「………くっ…!!ええい良いからちょっと来なさいってば!?」グイグイッ

メイド「ちょ、ちょっと押さないでよ!?じゃない押さないで下さい!!」

男「いいからいいから、変な事じゃないから」ウンウン

メイド「………昨日の今日で変な事じゃないとか言いますか」ジロッ

男「うぐっ……い、いや負けんぞ!!とにかく来てってば!!」

メイド「………むぅ…」


ドンッ

メイド「……?…お酒?」キョトン

男「一緒に飲もうか」コクリ

メイド「……えー、要らないです」ウエー

男「露骨に嫌な顔したな……飲んだことあったっけ?」

メイド「ないですけど、のんだくれて悲惨な状態になっている誰かの姿ならわりと目撃してるので」プイッ

男「………そ、そういやそうね」ショボーン

メイド「あんな醜態自分が晒す事になったら嫌ですし、要らないです」

男「………そ、そう……まあそうだよな、そりゃ呑みたいとは思えないか」

メイド「……はぁ、呑むのは良いですけど程々にしてくださいね?処理大変なんだから……」ガタッ

男「うーん……折角女の子でも飲みやすい奴をって事で探して貰ったのにどうしようかな」

メイド「……?…女の子でも?」

男「ん……まあ、ちょっとね」

メイド「………あた…私の為にわざわざ?自分が飲むんじゃなくて」

男「……まあ……自分で呑むだけならちょっと来てって言わないよ」

メイド「…………むぅ……」モジモジ

男「呑まないならいいよ、俺が呑むし……」

メイド「…………せ、せっかくだから…ちょっとだけ」ボソッ

男「……そ、そう?良かった」ホッ


男「えーと、これが果実酒だね、酒ってよりジュースに近い」トクトク…

メイド「……へー、綺麗な色…」ジー

男「はいどうぞ」スッ

メイド「……ありがと、それじゃいただきま…」

男「ちょっと待った」

メイド「へ?」

男「よいこのみんな!!この世界のこの国では飲酒が認められる年齢は18歳以上っていう設定なんだ、だからメイドさんはお酒を飲めるんだよ!!キミ達の国ではお酒は20歳になってから!!未成年者の飲酒は法律により規制されているので20歳未満の子はお酒を飲んじゃいけないぜ!?変態のお兄さんとのやくそくだ!!」ビシッ!!

男「よし、それじゃ召し上がれ」ニコリ

メイド「なにさっきの」

男「一応言っとかないと」


メイド「……ん……ホントだ、甘い…」

男「どう?」

メイド「うん、美味しいかも…」

男「どんどん呑んでいいよー」トクトク…

メイド「…………あんまり飲むと酔っ払っちゃうんじゃないの?」

男「これは度数低いからそんなには……まあ自分なりのペースでね?」

メイド「ふーん?」グビッ

………………


30分後。

男「…………」カラッ

メイド「これホントにお酒?別になんともないけど」ゴクゴク

男(………度数低いとはいえ一瓶丸々空けて平気だと?酒に強いのか…)

メイド「………んー……もうないの?」

男「エールなら樽でありますが」ゴクリ

メイド「ちょーだい」ズイッ

男「お、おう……でもエールはどうだろな……はい」トンッ

メイド「ありがと」ゴクゴク

男「…………」

メイド「……こっちもおいし♪」エヘッ

男(あっ、酔ってるわこれ)


更に一時間後。

メイド「………」グビグビ

男「………ち、小さい樽とはいえ半分近く平らげ……あ、あのぉ……そろそろ…」ドキドキ

メイド「おかあり」ズイッ

男「……もうやめた方が」

メイド「ん!!」ズイッ

男「…………少々お待ちを」トポトポ…

少女「………あの、何してるんです?」

男「あっ、少女ちゃん……えーと」

少女「お酒?メイドさんお酒飲んでる……」ジー

メイド「うん……あんたもね…のも?あい」ドンッ

少女「えっ、えとわたしは……」オロオロ

メイド「ん!!」ズイッ

少女「…………い、いただきます」ビクッ

男「ちょ……大丈夫か?」ヒソヒソ

少女「…な、なんか断れなくて……飲んだ事ないし大丈夫かはわからないです、ちょっとずつなら平気かな…」チビチビ

メイド「……うー…」グイグイッ

男(………だ、大丈夫かこれ?)


5分後。

少女「あうー……ふわふわすりゅ…ふへへへ」ニヨニヨ

メイド「おかあり」ズイッ

男「大丈夫じゃなかった!!グラス半分も呑まないで酔っ払ったぞ!?」

少女「おしゃけ、へんなあじーふへへへへ……」チビチビ

メイド「ねぇーおかありぃー!!」グイグイッ

男「」

少女「なんでおしゃけにゃんかにょんでりゅんでしゅ?ごしゅりんしゃまはにょんでにゃいのににゃんでメイドしゃんらけいっぱいにょんでりゅんでしゅ?ねぇごしゅりんしゃまってばぁ!!」ユサユサ

男「あかん」


男「……と、とりあえずもうそろそろ呑むのはやめて落ちついて…」

少女「しょんにゃこちょよりごしゅりんしゃま!!きのうメイドしゃんとにゃにしてきちゃんでしゅか!?メイドしゃんおこりゃせりゅとかにゃにしたんでしゅ!!わたしきょうはじゅっとしょればっかりきににゃってひょうやがにゃかったんでちゅからにぇ!?おちえてくだしゃい!!」プンプン

男「……え、あのなんて?」

メイド「ねぇーおかありぃー!!」ウルウル

男「ちょ…ちょっとまってってば!?ええと……」オロオロ

少女「しゃんときいちぇりゅんでしゅか!!」クワワッ

男「」ビクッ

少女「ごしゅりんしゃまはメイドしゃんがしゅきにゃらにゃんでわたしにゃんかずっとおいちょくんりぇしゅか!?はっきりしちぇくだしゃい!!うわきはいけにゃいこちょにゃんれしよ!!」ペチペチ

男「ちょ……ええと!?」

少女「……………う"ー…」ジトー

メイド「………樽ぅ…もういいや自分でやるー」ドボドボ…

男「」

少女「ごしゅりんしゃまはわたしのこちょどうおもってりゅんでしゅ?メイドしゃんがしゅきにゃらどうちてわたしまでそんにゃにやしゃしくしゅるんでしゅか?かんちがいしちゃりゃどうしゅるんでしゅか……」ジー

男(なにいってんのかまったくわからん)ダラダラ

少女「……う"ー……しょれちょもわたしもしゅきっていっちぇいいんでしゅか?めいわくにゃとおもうかりゃがまんしちぇりゅんでしゅよわたし、ほんちょわごしゅりんしゃまにょことわたしだいしゅきでしゅよ?ほんとでしゅかりゃね?はちゅこいにゃんでしゅから!!どうちてくれりゅんでしゅごしゅりんしゃまにょばかぁ!!」ポコポコ

男「……え、えーと?……???」

少女「メイドしゃんらけじゅりゅいれしゅ!!わたしもごしゅりんしゃまにぎゅーてしてもらいちゃいれしゅ!!れもメイドしゃんからごしゅりんしゃまとっちゃいけにゃいからがまんしゅりゅってきめちゃっにゃんれすもん!!しょれにゃにょにみんにゃしてわたしはどうにゃんだとかすにゃおににゃれとかかっちぇにゃことばっかりいってこまっちゃいましゅ!!どうおもいましゅごしゅりんしゃまは!?」

男「えっ?ああうんそうだねー?」オロオロ

少女「かいわがなゃりちゃってにゃいれしゅ!!ほんちょにきいてたんれしゅかごしゅりんしゃまは!!」ペチペチ

メイド「………ぶー…おしゃけー!!もっとー!!」パタパタ

男「」


少女「ごしゅりんしゃまはにゃんでふりゃふりゃしちゃうんりぇしゅかにぇ!?にゃんにぇんもメイドしゃんしゅきだったにゃらメイドしゃんらけみちぇにゃきゃだめれしゅよ!?わたしみちゃいにかんちがいしちゃうここにょままりゃとふえちゃいましゅよ!?そんにゃのわたしがしゃせにゃいりぇすけどにぇ!!」プンスカ

男「………えーと」

少女「………う"ー……どうしちぇごしゅりんしゃまだったんでしゅか……ほかにょひちょにゃらだいりょうぶだっちゃにょに、ごしゅりんしゃまはやしゃししゅぎてわたししあわしぇだけどちゅらいんでしゅからにぇ?」ズイッ

男「……え……ちょ……」ギクッ

少女「………っ……ん……」チュ

男「んん……!?」ング

メイド「ふぇ?」フラフラ

少女「……ん……っ…」クチュ

男(…舌っ!?……んおおおっ!?!?)

少女「……ぷはっ……う"ー……………zzZ」 コテン

男「」

メイド「…………キスしてた……」ジー

男「」ビクッ

少女「………zzZ」 スー…スー…


少女「……zzZ」 スピー

メイド「………………………………………」ジー

男「」ダラダラ

メイド「……ヒック……ふぇ……」ジワッ

男「あ、あのね?こ、これはその……」

メイド「………………きのうはしてくんなかったくせにぃ…!!やっぱりあたしのことからかって……ふぇぇぇ……」メソメソ

男「えっ、はい?」

メイド「やっぱりロリコンなのね!!おっぱいちっちゃいほうがすきなのね!?自分よりしんちょうたかいおんなはキライなんだ!!だからあたしのことからかっそあそんでたんでしょばかぁ!!」ポロポロ

男「ちょっと待てぇい!?からかったってなんだ!?」

メイド「きのう押し倒してするのかな?するのかな?っておもわせといてどっか行っちゃったじゃん!!すっごいショックだったんだからぁ!!」メソメソ

男「は?いや待て、だってお前嫌がって……」

メイド「………?……びっくりはしたよ?でも嫌がってないもん」グスッ

男「……………マジで?」

メイド「うん」コクリ

男「いやいやいや、でもな?お前そういう事トラウマじゃ……」

メイド「なんで?」キョトン

男「」


男(……俺はひとつ勘違いしてたのかもしれん)

メイド「?」

男(……コイツ、強姦未遂自体はまったく気にしてねぇ!!)ガーン

メイド「ねぇ?なに?ねぇ?」グイグイッ

男(……………この二年の俺の我慢は一体……いや、そもそも好きとはもう言えまいと思って過ごしていた時期だから元々我慢もくそもなかったか……)ズーン

メイド「………むー……」ヨタヨタ

男「………はぁ、なるほど……つまり俺の思い違いだったと……はぁ…」

メイド「ぎゅー」ダキッ

男「」ビクッ

メイド「いいもん、あんたがしてくれないならあたしからするもん、ぶー」ギュー

男「えっ、あの……ちょっと?」オロオロ

メイド「…や?」ジッ

男「はぅっ!?嫌じゃないよ!?で、でもここで!?ちょ!?」ドサッ

メイド「いいもん、あんただってさっきあたしが見てるまえでキスしてたもん……あたしもできる!!」モソモソ

男「や、やだだいたん……」オロオロ

メイド「しよ?ね?」ギュー

男「わ…わかった!?わかったからせめてベッdごべがっ!?!?」ミシミシミシ……ッッ

メイド「……?…あれー?」ギュー

男「ち、力抜い……グハッ!?」バキバキボキボキバキッッ

メイド「あれ?ねえってば!!ねちゃうの?ねぇ!!」ブンブン

男「」チーン

メイド「……うぅ……ばかぁ……」ジワッ

男「」グッタリ

メイド「…………ぶー………zzZ」 ギュー

少女「……zzZ」 スピー

……………


翌朝。

メイド「…………痛っ……???」モソッ

少女「…………」ムクリ

男「………おはよう」

メイド「お、おはよ……痛……頭ガンガンする……」ズキズキ

少女「…………おはようございます」

男「…………はい、二人とも二日酔いの薬と水ね?」コトリ

メイド「………二日酔い?……そ、そっか……お酒飲んで………いつ寝たのかな覚えてない……」クラクラ

少女「…………」

男「………まあ、酒飲んだらキオク飛ぶのはよくある事だから気にしないで、少女ちゃんは?」

少女「…………………………覚えてません」フイッ

男「………そうか、うん……まあいいや」

男(………本人たちは覚えてないほうがいいだろな、あれはひどい)

メイド「………二日酔いって最悪なのね……きもちわるい」ウプ

男「………とりあえず二人はもう二度とお酒飲んじゃダメね、飲ましといてあれだが」フイッ

メイド「……そんなに酷かったの……?」ゾッ

男「………気にしないで良いよ、それじゃ俺は部屋出てくからお風呂入って着替えちゃってね、じゃ……」スタスタ

バタン

メイド「…………酷かったんだ、あー……最低……」ゲンナリ

少女「…………」ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ……

メイド「壁に頭ぶつけてなにしてんの、頭痛いの?」

少女「……………いえ、最低最悪の悪夢を見まして、消えないかなーと」ゲンナリ

メイド「………?」

ねる(´・ω・`)おやすみ


一方その頃。

盗賊「…………ふへー、でっけぇ街」キョロキョロ

情報収集の為に王都へと赴いた盗賊が人混みの中をうろちょろしていた。

盗賊(人混みすげぇし、スリし放題じゃん、やらないけど)

人混みの中を器用に進み街を観察、人を眺め耳を澄ます、意識しないと人が多すぎて雑音にしか聞こえないがキーワードとなる単語だけを聞き取るように徹すればそれなりに会話を聞く事が出来たりする。もちろん誰にでも出来る事ではないが。

盗賊「………!…」ピクッ

キーワードとなる単語は複数あるが、たった今聞き取れた単語は一番重要なものだった。

「だから王子さまが実はね?……」

盗賊「…………」

王子。あのキザで馬鹿で変態だけどやたら顔が良い今の自分の親分的な人の安否の確認が頼まれた仕事の一応大事な事だった。

「ほう、それであの御方がどうしたって?」

盗賊(………右側、道端で駄弁ってるあの男女か……何か知ってりゃ良いけど)

聞き取れた会話をそれとなく盗み聞きするための近づいてゆく、どうやら普通の平民のカップルらしい。大した話は聞けないだろうが情報収集というのは根気がいるものだ。

「マダムキラースキルを極めて遂にあの近衛団長さまを口説き落としたって噂よ」ヒソヒソ

「マジか?俺は逆に王子が手籠にされたって噂を聞いたが……」ヒソヒソ

「ええ?でも何日か前向こうの堀の近くで二人の逢い引きみたって友達が…」

「それじゃどっちとも取れるだろ、他に証拠は……」


盗賊(……………役に立たなそうな噂だな、次だ次)

先程から何度か話は聞いて来たのだがどうもろくな話がなかった。

盗賊(………城の関係者とかから話聞き出さないとダメかもな……めんどくさー)


盗賊「……それにしても」キョロキョロ

改めて見ても大きな街だ、活気もあるしなにより治安も良さそうである。盗賊だった自分が治安云々言うのは何か違う気がするが。

盗賊(………あの王子さまたちは何がふまんなんだろな、自分の国がこんだけ豊かなら文句なんか出なそうなもんだけど)

自分は他国の出身だし、恩義もあるしで協力しているがもし自分がこの国の人間だったらわざわざ安定してるものを脅かすのはどうにも違和感を覚える。まあ、王子さま達にも事情とか色々あるんだろうから批判なんかしたりはしないけれど。

盗賊「……なんだっけ、奴隷がどうとか言ってたか」

可哀想な人らぐらいにしか思った事はないが、まあそれでもごはんぐらいは食わせて貰えんじゃねーの?ぐらいにしか認識していない。果たして盗賊とどっちがマシだろうか、盗賊は自由は自由だがお尋ね者なのでガチで命掛けの仕事である。まともに食事もありつけない事など多々あるしわりと辛いもんである。


盗賊(……まあ、じゃあ奴隷になれって言われても絶対勘弁だけどな……さて、埒も明かないしやり方変えるかな)

ひとまず人混みに紛れて噂話ばかり聞いていてもどうにもならなそうなのでもっと正確な情報を持ってる奴を見つけて話をさせないとダメっぽい、だいたい今さらだがさっきまでやっていた方法は何処の人の誰さん宅は今留守中だとかあの店の店主は今の時間サボってるから出てこないだとかそんな感じの空き巣とかするのにわりと使ってた方法である。そんなんで王子さまの安否なんぞわかるわけなかったとちょっと反省する。

盗賊「………となると、やっぱ城勤めの兵士とかかな、でもいねーな………」

正確には憲兵のような出で立ちの兵士はそこかしこにいるのだがそこは元盗賊、おまわりさんはこわかった。

盗賊「………よし、そんじゃあそこいってみるか、昼間からサボって入り浸ってる兵士なんて必ず居るだろうし」トタトタ


盗賊ちゃんが訪れたのは街のメインストリートから外れ、なんか妖しい雰囲気漂う裏路地街である。

盗賊「………うへぇ、こういう場所は何処も似たり寄ったりだな……」

ハッキリ言うと娼館やら立ちんぼ御用達の宿やらそんな感じのピンク色の店が集まる場所である。

盗賊「さて……」チラッ

自分で客を待つふりをするのが一番無難だろうし早いだろう、そう思い宿の前ででも突っ立っていると……

婆「よそ者は他でやんな!!こかぁアタシの縄張りだよ!!」ペッペッ!!

盗賊「ひぇ!?」ビクッ

厚化粧のおばあちゃんに唾を吐かれて追い出されたので別の所へ。

ガリ女「ちょっと、人の店の前で客横取りしようとすんじゃないよこのブスが!!」ブンブン

盗賊「ひぅ!?」ガーン

ネグリジェ着た骸骨女に罵倒されたのでまた移動。

青髭「あらやだ可愛い子、ウチの店で働きたいのぉん?え、なに女?あんだとゴルァァァァァ!!ここは二丁目よ縄張りだ本物は立ち去れやァァァァ!?!?」

盗賊「ぎゃーーー!?ごめんなさーーい!?」ダダダダ!!

髭の剃り跡が青々しいブロンドヘアーのママ♂に追い立てられてしまう。

盗賊「……あ、あれぇ?」ゼー、ゼー……

盗賊ちゃんは娼婦の母の元に産まれた娘だがそんな裏路地街のルールとか色々はちんぷんかんぷんな娘だった。


盗賊「く、くっそう……ぜんぜん上手くいかねぇ……!!」

そもそも客引きの真似事なんて自分には無理な話なのだ自分は母親は好きだったが仕事だけは真似したくないのだ将来の夢は大恋愛の末に結婚してお嫁さんになることなのだそれまでは例え何があろうと自分の身体を安売りなどするつもりはないのだ、一度危ない事はあったが一応妹の件での恩返しなのでノーカンである。しかも相手も違うし見られただけなのでギリギリセーフだ。

盗賊「………ん?」

などと上手くいかない事への言い訳を考えていると目の前から数人の男が歩いてくるのが見える。

盗賊(………剣を持ってんな、しかも全員同じ種類、そんでもってありゃ鎧の下用のチュニックだな)

まず間違いなく兵士だろう。一人だけなら分からなかったが全員同じ格好なのだ、勤務中の集団サボりって所だろう。


盗賊(…………よ、よし……あいつらだ!!あいつらから何とか情報聞き出すぞ!!)キッ

目の前から歩いてくる兵士(たぶん)達は三人居る。いざと言うとき複数相手にするのは危険なのだかこれを逃したら次はいつ城の関係者を捕まえられるか分からない。なので意を決して自分から誘うしかないだろう。

盗賊(……大丈夫だ、あの兵士達全員兄貴と弟レベルの顔だ、声さえかけりゃ絶対付いてくる!!)

オタ近衛「ん?」

萌豚近衛「なんぞ」

厨近衛「ーーー何者だ」

盗賊「お、おにーさん達暇?お話しない?」テヘッ

盗賊(うへぇ恥ずかしい、なんでこんな猫なで声ださにゃならねぇんだ…!!)

オタ近衛「チェンジ」

萌豚近衛「俺氏華麗にスルー」

厨近衛「ーーー寄るなビッチが」

盗賊「」ビキッ

盗賊(……なん……だと……)ガーン

なんだかんだで顔にはそれなりに自信があった盗賊ちゃん、まさかの一蹴で驚愕。


盗賊「ちょ、ちょっと待ってよ!?話ぐらい……!!」

オタ近衛「…………」スタスタ

萌豚近衛「俺氏想い人はもう居るなり、ばいちゃ」スタスタ

厨近衛「ーーー話す事などない、耳に精子かかるわ」スタスタ

盗賊「」

オタ近衛「…………チッ……」

盗賊「……ぐっ!?ま、まだだ!!おにーさん達誘い乗らないならなんでこんな所いるのー!?ねーってば!!」トタトタ

厨近衛「ーーーただの通り道」

盗賊(………こいつが一番キモいな)タジッ

萌豚近衛「んんん……(-.-)はそこそこだがおっぱいが残念なり、まあ、ドンマイ」

盗賊「……っ!?/////」バッ

萌豚近衛「およよ、中々に可愛い反応でござる」ムフー

盗賊(……ざ、残念……?えっ、そうとうデカイつもりだったんだけど?)

オタ近衛「置いてくぞ」

萌豚近衛「んんー、すまぬお、それじゃばいちゃビッチちゃん」フリフリ

盗賊「ビッチって言うな」ムカッ

厨近衛「ーーー貴様、処女だな?」クワッ

盗賊「えっ、なんでわかっ……うっ!!/////」ムグッ


厨近衛「ーーー」ガタッ

萌豚近衛「オタ氏オタ氏、厨氏が反応しちゃったお、どうしよ?」

オタ近衛「…………」ジー

盗賊「………っ……?」ジリッ

オタ近衛「……す、すきにしろよ……」スタスタスタスタ

盗賊「……なにあいつ?」

萌豚近衛「オタ氏はコミュ症なんだお」

厨近衛「ーーー話が在るならば聞こう、付いてこい」バサッ

盗賊「は、はい……」ビクッ


…………

盗賊「…………なんか人気のない所だな」ゴクッ

オタ近衛「…………」ガチャ

萌豚近衛「ビッチちゃんじゃないだっけ、ええと処女ちゃんちょっと待っててくだされ!!」ビシッ

盗賊「へっ?なんで…」

厨近衛「ーーー女性を招ける状態に在らず、故にーーーー掃除ーーー」ブワッ

盗賊「あっ、はい」ビクッ

オタ近衛「…………」トタトタ

萌豚近衛「ここは男の居城なんだお、それで察してクレメンス」ビシッ

バタン

盗賊(住んでんのかここに?城の兵士ならもうちょいまともな所住めるだろ、なんだこのボロ家)

盗賊「………ちょっと覗くか」コソッ




厨近衛「ーーー唸れ、我が拳よーーー混沌を律する力となれ」テキパキ

萌豚近衛「オタ氏オタ氏!?これどうしようページこびりついてる奴ばっかりだお!!」

オタ近衛「捨てろ!!いいか女の子にドン引きされるようなもんは全部収納戸に押し込んどけ!!あ……あとティッシュ用意しろ!!」ソワソワ


盗賊(………逃げようかな)ゾッ


萌豚近衛「お待たせだお!!さっドゾー」

盗賊「は、はい……」ビクビク

厨近衛「ーーー我等が聖域へよくぞ赴いた」

オタ近衛「…………」チラッチラッ

盗賊「……そ、その……あはは…」ヒクッ

盗賊(なんかくさい!!ていうかぜんぜん片付いてない!!兄貴の部屋とおんなじ臭いする!!)ジワッ

萌豚近衛「お、オタ氏オタ氏……どうしよう顔がひきつってるお、どうするお?」オロオロ

オタ近衛「し、しらねーよ」フイッ

厨近衛「ーーー愚問、我等はただ欲望の権化となれば良い」クワワ

萌豚近衛「そ、それはまずいよ厨氏?だって僕らには女神さまが既に居るお、裏切れないお」ソワソワ

厨近衛「ーーーならば赦しを乞えば良いだけの事ーーー聖処女よ」コトッ

盗賊「ん?それ…」

萌豚近衛「僕の作った御神体だお、我等が女神にして近衛兵団第三位隊長の女兵士様ですお」ウットリ

盗賊「」

オタ近衛「……女兵士さん、逢いたいな…」ハァ

萌豚近衛「色々あって帰って来てないでござるからね……そろそろ女神成分が切れちゃうお」ハァ

厨近衛「ーーー聖処女よ……」スッスッ


盗賊「なんだこいつら」ゴクリ

…………

女兵士「………ひっくち!!」

眼鏡っ娘「風邪?」キョトン

女兵士「……いえ、なんでしょうすごい悪寒が」ブルッ

眼鏡っ娘「無理しないでね、倒れられたら困る」

女兵士「はい、気を付けます…」


女兵士(…………はぁ、イケメンに風邪の看病されてぇ)ボケー


……………

ねる(´・ω・`)おやすみ


人形「」

オタ近衛「…………」ブツブツ…

厨近衛「ーーー我が女神よ、どうか我等の愚行をこの場だけでもお見逃しを」ペコリ

盗賊「…………あ、あのぉ……」

萌豚近衛「なんだお?御神体は何で出来てるかって?素材は粉末の木材を接着剤で硬めてそれを丁寧に削りながら形を作って色彩したんだお、ちなみに衣服部分は脱着可能で今装着している近衛兵正式武装バージョンの他に普段着バージョンやパジャマバージョン、猫耳メイドや包帯ビキニバージョンなんかもあって更に詳しく言うと毛髪の部分はこっそり採集した本人の毛髪で………」ペラペラ

盗賊「聞いてない聞いてない!!つーかあんたらあの人しってんのかよ!?」

厨近衛「ーーー愚問、我等の女神、聖処女女兵士様は我等が国の兵士達、それに国民に愛される現世に降り立った偶像そのものーーー知らぬ者などこの街ではおらぬ」

オタ近衛「………お、女兵士さんは……あ、アイドルだから…」ボソボソ

萌豚近衛「近衛総団長と人気は二分してるんだお、僕らは女兵士様派だけど」

厨近衛「ーーー非処女ババアに価値はない」

オタ近衛「団長様の方が一般受けは良いけどね……」モジモジ

萌豚近衛「まあ、言い方悪いけど女兵士様は僕らみたいな底辺非モテ野郎と一部女の子、後はご年配のじいちゃんばあちゃんに大人気で、団長は一般人にモテモテなんだお、にわかはこれだから困る、顔しか見てないお」キリッ

厨近衛「ーーー膜から声が出るか否か、それが全てーーー」

盗賊「ふ、ふーん…そう……」


萌豚近衛「もしや女兵士様に興味あるお?おっつおっつ」ニヤリ

盗賊「え、いや、なんというか……」

厨近衛「ーーー百合希望ならば素晴らしい」ガタッ

盗賊「ゆ、ゆりってなに?」

オタ近衛「…………」ゴクリ

萌豚近衛「……知らない……だと?」ガタッ

厨近衛「ーーーふぅーーー」

盗賊「……?……??……な、なんだよ!?つーかにじり寄ってくんな!!きもちわるい!!」ズサッ

オタ近衛「………ご、ごめん」オロオロ

萌豚近衛「わ、われわれの業界ではご褒美ですしおすし」ショボン

厨近衛「ーーー面と向かってなじられるとーーー普通にへこむ」ガクッ

盗賊「だぁーー!?なんなんだてめぇらは!?もういいとにかく聞きたい事あるんだよ教えろ!!分かったかよ!?」クワッ

オタ近衛「」ビクッ

萌豚近衛「お、怒ったお……実際キレられると普通に怖いお」ガタガタ

厨近衛「ーーーだが、それが良いーーー」ポッ

盗賊「うがーーー!?!?キモいし情けないしくさいし!?なんでオレが知り合う男はこんなんばっかりなんだ!?普通の男っていねーのかよ!?」イライラ


盗賊「あんたらに付いてきたのはちょっと調べなきゃいけない事あるからなんだけどよ、城の兵士ならしってんだろ?あの王子さま今どうしてるか教えろ」

オタ近衛「……君、そんな事聞いてどうすんの?」

盗賊「良いから答えろ、じゃないと力ずくでも聞き出して……」チャキッ

厨近衛「ーーー物騒な物は懐へしまったままにしておけ」ビュッ!!

盗賊「っ!?う…っ…!!」ギクッ

萌豚近衛「ほいっ、ナイフなんか出したらダメだお?これでも僕ら王族直衛の近衛兵団の一員だお」スチャ

盗賊「………ぐっ!?」

盗賊(や、やば……!?見た目と雰囲気で完全に実力見誤ってた……コイツらつえぇ……!?)ゴクリ

萌豚近衛「オタ氏オタ氏、この子どう思うお?老近衛隊長に報告しようにも不在だお」

厨近衛「ーーー総団長も居ない、故に老近衛隊長下副隊長のお前が判断しろ」

オタ近衛「とりあえず話を聞こうか、不穏分子ならば憲兵にでも引き渡せばいい」

盗賊「………げっ……ちょ……!?」

萌豚近衛「……ちょっとごめんお、暴れられたらやだし拘束するお」

厨近衛「ーーー堪らんーーー」ゴクリ

盗賊「……むっ!?や、やめ!?」ジタバタ

…………

盗賊「ち、ちくしょー離せ!!これほどけ!!」ジタバタ

厨近衛「ーーー萌豚、何故亀甲縛りにしなかった」

萌豚近衛「そんなもんするわけないお、あくまでも暴れるからでそういうプレイ目的じゃないですし」

オタ近衛「…………厨、お前は女の子よって集って乱暴したいのか、女兵士さんに嫌われるぞ」

厨近衛「ーーーそれは困る、やめておこう」ガックリ

盗賊「………な、なんだよぉ……!!強いなら強そうな格好してろよ変態野郎!!」ウルウル

オタ近衛「…………うるせぇよ」

盗賊「ひぅ」ビクッ

オタ近衛「……あっ」

萌豚近衛「オタ氏は女の子の前じゃまともに話が出来ない恥ずかしがりやなんだお、許してちょ」テヘッ

厨近衛「ーーー故に、居ない歴イコール年齢」

オタ近衛「う、うるせぇな……」モジモジ

盗賊「そんなのどうでもいい」ジト

オタ近衛「………萌豚、後は頼む」モジモジ

萌豚近衛「任されたお、そんじゃ処女ちゃん、聞くけど君は誰だお?」

盗賊「………盗賊」ボソッ

厨近衛「ーーー年齢と好みのタイプ」

盗賊「…………そんなの関係あるのか」

厨近衛「ーーースペックは重要事項」キリッ

オタ近衛「……趣味と仕事をまぜるなよ」ボソッ

萌豚近衛「まあまあオタ氏、僕ら非番だしそう真面目発言しなくてもいいと思うお」

厨近衛「ーーーはよ」

盗賊「年は16、好みのタイプはお前らみたいなキモいかい以外ならなんでもいい」ジロッ

オタ近衛「…………」ショボン

萌豚近衛「断固拒否ワロエナイ」ショボン

厨近衛「ーーー男の価値は顔じゃない」ガクッ

盗賊「いや、仮にお前らが王子さまレベルに美形でもキモいのには変わんないから」


萌豚近衛「……と、とにかく続けるお、王子殿下の事を僕らに聞いてどうするつもりだお?」

盗賊(…………一応素直に話した方がいいか?あの姫様の護衛のねーちゃんが好きだってなら話通じるかも……いや、でもそれだけで信用できるかわかんねーな)

厨近衛「ーーー早く言えーーーさもなくば」

盗賊「な、なんだよ…」タジッ

厨近衛「ーーー悪い子は閉じ込めるのが世の常なり」ガチャ

モワーーン……

盗賊「ぴぃ!?」ビクッ

オタ近衛「おい、収納戸は今壮絶な事に……」オロオロ

萌豚近衛「鬼だ、鬼がいるお」ゴクリ

厨近衛「ーーー鬼に非ずーーーしまっちゃうおじさんだ」

盗賊(く、くさっ!?なにあれ!?へ、変な道具が!?染みだらけの服とか本とか……あ、あんな所閉じ込められたら死ぬ!!絶対死ぬ!!)ガタガタ

厨近衛「ーーーさあ、吐け」ワキャワキャ

盗賊「ひ、ひい!?言います!?言うから許してしまわれるのはやだぜったいやだぁ!!!!」ガタガタ

萌豚近衛「こうかばつぐん杉内」

オタ近衛「そりゃそうだろ………オ●ホとか使用済みエロ本とかてんこ盛りなんだぞ……」


…………

盗賊「」グッタリ

萌豚近衛「ふむ、だいたい白状してくれたお、流石僕らのプライベートゾーンなり、あっさりゲロッたお」

盗賊「……と、とりあえずその戸をしめて……開いてると臭いでリアルに吐き気が……」ウップ

オタ近衛「………こんな所閉じ込められたら五分で肺が腐る、人が入っていい世界じゃないし白状して当たり前だ」バタン

厨近衛「ーーーいずれここも腐海に呑まれる」

盗賊(……く、くそ…喋っていいのか判断する前に話しちまった……!!だ、だってあんなとこ入れないし!!)ウルウル

オタ近衛「……さて、とりあえず縄をほどいてやろうか、安心していい、俺達は王子殿下派だよ」モソモソ

盗賊「へっ?」

厨近衛「ーーー聖処女、女兵士様がおわす所に我等の忠義はある、当然だ」

萌豚近衛「すまんちょ、今王宮はごたついてて誰が誰の味方なのかいまいち分かんないんだお、君みたいな一般人っぽい刺客もいたりするから安心出来ないし」

オタ近衛「萌豚が先程非番だとか言っていたが本当は俺達は潜伏中の身の上なんだよ、同志を集めつつ機を探っている所だ」

盗賊「じゃ、じゃあ……」

オタ近衛「両殿下に味方する奴は多いよ、現国王し確かに名君だけど、恐ろしい人だから」

萌豚「ちなみに王子殿下は無事だお、老近衛隊長が救出して街を出たからね、向かった場所も把握してますお」

厨近衛「ーーー北へ、王女殿下の元へ合流しに向かった」

盗賊「えっ、北……?」

オタ近衛「俺ら側の協力者が見かけたらしい、王子が懇意にしていた商人の住む街から移動していたようだからまず間違いないだろう」

盗賊「……あー、いや、あのそれは……」


盗賊「……カクカクシカジカ…という訳なんだけど」

萌豚「なんですと」

厨近衛「ーーー我等の女神の居場所、まさかそんな辺境だとは」

オタ近衛「なるほど……王兄様か……」

盗賊「ど、どうしよ……無事なのはいいけど逆方向じゃ…」

萌豚「大丈夫なり、その囮のもの達が行き場所知ってるなら殿下もそっちへ向かうはずだお」

盗賊「そ、そっか、そうだよな……」

オタ近衛「………ひとつ気になる事がある」

厨近衛「ーーーどうした、オタ」

オタ近衛「………少部隊だがその麓の村へ兵が出向いたって情報がある、例のあの部隊だ」

萌豚「マジで?」

厨近衛「ーーーいかん」

盗賊「例の部隊って?」

オタ近衛「通称奴隷狩り部隊、元はどこぞの商人の私設兵団だったんだがどうやったのか国王に取り入ってな、今じゃ正規軍の一員って連中だよ」

萌豚「けっこう強い上に人間を生け捕るのが得意って奴らだお、最近じゃ森と湖の国がそいつらだけで壊滅させられてるお」

盗賊「……な、なんでそんな奴らが国内の村に向かってんだよ?」

オタ近衛「……さあ、でもヤバい事は確かだな………」

厨近衛「ーーーオタ、どうする?」

オタ近衛「……………」


……………

男「チェック」コトッ

眼鏡っ娘「甘い」コトッ

男「なぬっ!?」

眼鏡っ娘「キャスリング、それでこっちがチェックになる」

男「………参りました」

眼鏡っ娘「感心した、わりと強い」

男「……王女さまは強すぎ」

眼鏡っ娘「ボードゲームの類いは負けたことがない」ブイッ

男「策士タイプって事っすか、納得……」

眼鏡っ娘「それで、首尾は?」

男「8割方って所みたいですけど、今の状況で上手くやれますか?」

眼鏡っ娘「少し変更点はあるけど問題はない」

男「……………ふーむ……しかし、今さらですけど本当に良いんですか?」

眼鏡っ娘「……構わない、この国はもうそうでもしなければ止まれない」

男「…………そうですか、まあ俺はどっちだろうと良いですけど」


眼鏡っ娘「貴方の方は?」

男「はい?」

眼鏡っ娘「この先どうするの?」

男「………というと?」

眼鏡っ娘「今なら間に合う、あの二人を連れて逃げるべき」

男「逃げて来たからここにいるんですけどね?」

眼鏡っ娘「違う、本当に逃げるつもりなら貴方は何処にでも逃げられた、ここにいるのは逃げたくないから、違う?」

男「まさか、あの二人が大事なのは今さら隠しませんけどね、独り善がりの意地で大切な人を巻き添えになんてしませんよ」

眼鏡っ娘「………そう、なら良いけれど」

男「王女さまだって、兄上様以外は全部汚物とか言いつつ随分気にかけてくれますね?」

眼鏡っ娘「貴方は少しだけにいさまに似てるから」

男「………はぁ、そうですかね?」

眼鏡っ娘「ええ」

男「……王子と変態的な行動が同じとかそんなんですかね、ははは…」

眼鏡っ娘「違う、優しい所」フルフル

男「…………あ、あの?」

眼鏡っ娘「か、勘違いしないでよねあんたの事なんか好きじゃないんだら」シラー

男「めっちゃ棒読みっすね」

眼鏡っ娘「冗談はさておいて、さっきの逃げるべきというのは本音、貴方は十分役目を果たしてくれた、感謝してる」

男「…………ツッコミスルーするなら言わなきゃ良いのに……まあ、気には留めておきますよ、忠告ありがとうございます」

ねる(´・ω・`)おやすみ


ハンサム「ここに居たか、二人ともちょっと良いか?」

男「はい?どうかしました?」

ハンサム「急ぎの事態だ、まずはついて来てくれ」

眼鏡っ娘「…………」カタッ

男「あんまり良い知らせじゃなさそうっすね、何処へ?」スタスタ

ハンサム「村の外れに櫓がある、まずはそこまで行こう」

……………

男「……こんなへんぴな村になんで櫓なんて?」ギシッ

ハンサム「一応な、備えのつもりで建てさせて貰った」

ホモ「ダーリン!!遂に来たわ!!わたし怖い!!」ガバッ

ハンサム「俺は貴様の方が怖いわ!!」バキィ!!

ホモ「ゲハーー!?!?」ゴロンゴロン

眼鏡っ娘「それで、何が?」

ハンサム「つい先程ここの見張りをしていた者がアレに気付いた、見てみろ」スッ

眼鏡っ娘「……望遠鏡…………………っ……!!」

ハンサム「数は分かるか?」

眼鏡っ娘「……おおよそ500、でも正確には分からない、伏兵してると見るべき」

男「………どっかの部隊が向かって来てるんですか?」

ハンサム「ああ、あの距離なら一時間程でここまで辿り着くだろう」

男「………マジかよ、王女さま俺にも見せて下さい」

眼鏡っ娘「はい」スッ

男「どれどれ?あー、ホントに向かって来てますね………でも随分バラバラで規則性が無いな……国の正規軍ならもうちょい………!!」

ハンサム「どうした?」

男「………いや………王女さま、あの連中が持ってる旗の紋に見覚えは?」

眼鏡っ娘「…………奴隷狩り部隊の紋章」

男「奴隷狩り部隊っすか……なるほど」

眼鏡っ娘「知ってるの?あの部隊の存在は隠蔽されて殆どの国民は知らないはず」

男「いや、昔俺の家で使ってた家紋なんでなるほど、やっぱりか………」

眼鏡っ娘「………家紋?」

男「………ええ、今は権利を丸ごと人に渡したから俺自身は使ってないものですけどね、間違いないです」


男「どうして奴隷狩りの連中が来るのかはともかくとして、やっぱり俺も無関係って訳じゃないな……」

眼鏡っ娘「貴方の父親の関係?」

男「そんなところです」

ハンサム「………事情は後で聞くとして、あの連中の狙いはなんだと思う?」

眼鏡っ娘「………ん……」

男「単純に王女さまへの刺客にしては大袈裟な数だし、何よりタイミングが遅いですね……囮は出したけど王兄様を頼りにここに来る可能性なんてあの国王さまならすぐに解りそうなもんだけど」

ハンサム「俺の所在はバレてると判断するか」

男「俺なら何処に居るかぐらいは把握しますよ、なんたって王兄様は王子以上に反乱の旗頭として相応しい立場の人なんすから」

ハンサム「まあ、当然か……」フム


眼鏡っ娘「おじさまに力があるかどうかは今は恐らく関係無い、事実今まで放置していた、それに私達がここに来てから既に一週間以上過ぎている、それを考えると本来は私の事も放置するつもりだったのだと思う」

ハンサム「その根拠は?」

眼鏡っ娘「その気になればこの人の屋敷へ逃げ込む前に私を捕らえるなり殺すなりするのは容易だった筈」

男「まあ、そりゃそうっすね」

眼鏡っ娘「でも今まで放置していた、それが今更部隊を出して来ているということは……」

ハンサム「ふむ……」

眼鏡っ娘「………断言は出来ないから今は言わない、安易な希望は身を滅ぼすから」フイ

男「………?……なんすか気になるな…」

ハンサム「まあ良いだろう、とにかく目の前の危機をどうにかせんとな……話し合いは通じると思うか?」

眼鏡っ娘「無駄、あの部隊は扱いこそ正規軍とほぼ同様だけれど言わば日陰者の汚れ役、交渉しようにも話なんか聞かない」

男「……じゃ、このまま降参ってのは?」

眼鏡っ娘「論外、私の関係者は皆殺し、無関係の村の住民も口封じに殺され、女子供は奴隷行き、国民かどうかなど一度身分を剥奪してしまえば証明出来ないから問答無用」

男「………国民の暮らしなんたらってのはどこへやらだな、それじゃ……」

眼鏡っ娘「戦うしかない」コクリ

ハンサム「………逃げても無駄、か………まあそうだな」

男「…………」


男「………勝てるんですか?小部隊って言ってもこっちに戦力なんて……」

眼鏡っ娘「正直分が悪い、でも備えがないわけじゃない」スタスタ

男「備え?」

眼鏡っ娘「兵のぶつかり合いだけが戦いじゃない、おじさま」クルッ

ハンサム「ああ、派手にやればいい、人さえ無事なら村などいくらでも再建出来る」コクリ

眼鏡っ娘「分かった、派手に[ピーーー]」コクリ

男「………な、なんかおっかないな」ゾクッ

ハンサム「君は住民の避難誘導を仲間達と手分けしてやってくれ、小さい村だ、人だけなら15分も掛からず避難出来る」

眼鏡っ娘「急いで、時間がない」

男「わ、分かりました!!」

…………

メイド「……え、それって…」

男「言った通りだ、国の部隊が攻めてくる……だから俺達で手分けして村の住民に知らせて回るから急いでくれ」

少女「…………あ、あの……」

男「………ごめん、こんな事になるなら二人だけでも別に逃がすべきだったのかもな……でも今はその事を言ってる場合じゃない」

少女「………だ、大丈夫なんですよね?わ、わたしそうじゃなきゃ……」

男「ん?ああ大丈夫大丈夫、部隊って言っても少人数だし、あの王女さまは策士だしね、ちゃんと逃げれば誰も死なないよ」ポンッ

少女「……………」

メイド「………ホントに平気なのね?」

男「ああ、人さえ避難させりゃ問題ないってさ」

メイド「…………わかった、じゃあ村の人に逃げるように伝え回れば良いのね?」

男「そういうこと、村の奥に森があるだろ?ひとまずそこに全員隠れさせろだってさ」

メイド「分かった、伝えてくるわね?ほらあんたも」

少女「………はい」トタトタ

男「……………」


…………

豪商「………ふん…」

その男は手勢の部隊の中心辺りを進む馬車の中に居た。その男は以前ある奴隷商の下で使われるだけの者だったが二年前、ある事をきっかけにのしあがり現在ではこの国の奴隷獲得、売買に至るまでの殆どを取り仕切る者だった。

豪商「いつまでも汚れ役ばかりさせよってあの暴君が……ワシが居らねば国が成り立たんと理解しているのか」

この男の狙いは国でもっとも国王に次ぐ重要な座に座る事、王宮に巣くう血統でしか物を見ぬ愚者である貴族共を押し退けて政治に係わる事である。その為に王にへつらい、財を貢ぎ平民出の一商人に過ぎない身分にも関わらず王宮の中へ入り込んだのだ。

だが与えられる役目と言えば私兵を使った奴隷狩り、なんの事はない……取り入る前とやる事はさして変わらなかったのだ、むろん扱う『商品』の質は上がったが。

今回も似たような物だ、ただ狩りの対象が異国の猿なのかそれとも温室育ちの血統書付の犬なのか、その程度しか違わない。

豪商「…………まあ、良い……王の勅命とあればやらぬ訳にもいかん、それに………」

王はこうも言った、全て任せると。

由緒正しい小娘を組み敷いて顔を歪ませるのも一興だろう、以前から顔立ちは整った娘だと内心思っていた、ある意味神に感謝したい巡り合わせとも言える。

豪商「……おい」

大男「……………」

男の一声で側に控えていた巨躯の男が頭を下げる。

豪商「今回は奴隷狩りが目的ではないがいつも通りやれ、なるべく殺さず商品の質を下げるような真似もするな、特に元王女の小娘は絶対にワシの前に連れてこい」

大男「…………」

大男は頷き、その場を離れる。もうじき目的の村に到着するので先頭へ向かったのだろう。

豪商「………そういえば、坊っちゃんもどういう訳か一緒なんだったかな?」

この男がのしあがる直接的なきっかけとなった青年が、理由までは知らないが獲物の味方をしているという事を伝え聞いていた。

豪商「………馬鹿な小僧だ、そのまま父親、大旦那の跡を継いでいればケチなんぞ付かなかったものを」

縁もある、それに才能は目覚ましい物があると見て此方側へ誘いをしようとしたこともある、しかしその青年は聞く耳すら持ちたくないと自分の顔を見るなり退散してしまった。1ヶ月ほど前の事だがあの時ついて話だけでも聞いていればこうは為らなかったろうに。


………………

眼鏡っ娘「………来た、準備は?」

女兵士「なんとか終りましたが……殿下、本気で戦うのですか!?数が違い過ぎます!!」

眼鏡っ娘「私が投降すれば助かるならそうしてる、仕方ない」

女兵士「………分かりましたよ、ああもう!!」

眼鏡っ娘「ごめん、逃げたいなら逃げても構わない」

女兵士「逃げませんよ!!意地でも無傷で乗りきってやる…!!」

ハンサム「……無傷とは勇ましいな」

眼鏡っ娘「おじさまも、どうせ狙いは私だから逃げても大丈夫」

ハンサム「そう言うな、策はあっても人手は必要だろう?」ニッ

眼鏡っ娘「……ありがとう」


ハンサム「で、具体的にはどうする?」

女兵士「まともに剣を使えるのは私と王兄様だけでは……」

ハンサム「ちなみに俺は弱いぞ、武芸はからきしなのでな」

女兵士「えっ、でも王子さまのお父上では……」

ハンサム「あれは母親の血だ、見ろこの貧相な身体を、今にもあばらが浮き出てきそうなほど筋肉がないだろう?」ヌギヌギ

女兵士「ぶはっ!?」ブシャー!!

ハンサム「あっ」

眼鏡っ娘「おじさま、貴重な戦力を減らさないで欲しい」

ハンサム「す、すまん、まさか上をはだけただけでこうなるとは……」

女兵士「//////」ビクンビクン

眼鏡っ娘「起きて、貧血用の薬飲んで」グイグイ

女兵士「あががががが……ひょ!?りょ、量ががががが!???」モガガガ

ハンサム「君はもう少し男に耐性付けた方が良いな、それでは子供も作れんぞ」ジッ

女兵士「子どっ……!?ふにゃぁあ……」へにゃ

眼鏡っ娘「………」

ハンサム「勝てるだろうか」

眼鏡っ娘「………不安になってきた」



オォォォォ!!

女兵士「……はっ!?で、殿下!!」

眼鏡っ娘「平気、まだ村の入り口、トラップは仕掛けてある」

ドォォォン!!

ハンサム「む?なんの音だ」

眼鏡っ娘「村への突入タイミングを計算して、近くの民家を爆破した」ブイ

ハンサム「………爆破?どうやって……」

眼鏡っ娘「度数の高いお酒とあと色々混ぜて作った、黒色火薬でも良かったけれどちょっと材料が足りないからお酒にした」

女兵士「……ああ、あの焚き火にくべてきた樽ですか……あんなに派手に爆発するようなものだったんですか……あれ?でも2つありましたが」

眼鏡っ娘「二つ目もそろそろ、いい感じに小麦粉が舞散ってる」ウン

ハンサム「小麦粉?」

眼鏡っ娘「ひとつめの爆発は民家一杯に運ばせた小麦粉を飛び散らせる為、ひとつだけじゃあまり効果がない」

ドォォォン……!!



ギャーーー!?

ヒィィィーー!?

眼鏡っ娘「空気中に漂う小麦粉に火が付くとああなる、粉塵爆発」

女兵士「」

ハンサム「…………熱気がここまで来てるな、わりと離れているのだが」

眼鏡っ娘「初めてのわりには上手く出来た、一発目で小麦粉に引火しないようにとか、風向きの確認とか難しいトラップだけど決まれば被害は凄まじい」ピース

ハンサム「…恐ろしい子だな」

ギャァァァァ!?

タ,タスケテクレェェェ!!

女兵士「うわー、現場は地獄ですねあれは」


女兵士「だいぶ減りましたでしょうか?」

眼鏡っ娘「さあ、損害は与えただろうけれど、せいぜい先発の部隊だけ、全滅なんか望めない」

ハンサム「………ふむ」スタッ

ハンサム「上から見た限りではそこまで被害は出ていないな、諦めもしておらんようだ」

眼鏡っ娘「これで撤退してくれるなら簡単だったのだけど、難しい」ウーン

ハンサム「流石にまとまって動くのは止めたようだがな、村を囲むようにバラバラに散って兵が動いているようだ」

眼鏡っ娘「計算通り、ここからはゲリラ戦」チラッ

女兵士「各個撃破なら問題ありません、行って来ます」チャキ

眼鏡っ娘「よろしく、あくまで撹乱に徹して」コクリ

女兵士「はっ!!」

ハンサム「彼女一人で大丈夫か?」

眼鏡っ娘「………」ギュ

ハンサム「………つまらん事を聞いたな、すまない」

眼鏡っ娘「大丈夫」フルフル

ハンサム「………よし、ならば俺も武芸はからきし等とは言っていられんな、撹乱に徹していれば良いのだろう?」

白馬「ヒン」トコトコ

眼鏡っ娘「……おじさま」

ハンサム「あれの馬を借りるぞ、俺は俺でなんとかしてみよう」


…………

男「……派手に始まったな」

メイド「……そ、そうね……ずいぶん大きな音したけど」

少女「みなさん大丈夫なのかな……」

男「………いざというときはここにいる子供達連れてとにかく逃げるしかないが……大丈夫、なんとかなる」

盗賊妹「にーちゃんは行かなくて良かったのか?みんな戦ってるけどなー」

男「大人が一人も居なくなったらそれこそ危ないだろ」

少女「…………」ギュ

男(………ホントは参加する気満々だったんだけどな)

少女「…………行っちゃ嫌ですからね」ジッ

男「………行かないよ、大丈夫」ポンッ

メイド「……………よかった…」ボソッ

男「………………」

男(…………二人を残して無茶は出来ない、か……)


「ぐはぁ!?」ドサッ

女兵士「ふぁははは!!!!こんなものか不細工共めっ!!」シュババババ!!

兵士A「つ、強い…!!こいつが例の……!!」

兵士B「王家直属近衛兵団第三位隊長……通称行き遅れの守護天使か!!」

女兵士「その名を呼ぶなああああああああああ!!!!」シュババババ!!

兵士A 「ぎゃーーー!?!?」ブシュー

兵士B 「ぐわーーー!!!!」ズシャー


兵士C「ひ、ひぃ!?お、おいこっちだ!!こっちにいるぞーーー!!」

女兵士「むっ!!」ピクッ

兵士Cはなかまをよんだ!

兵士D「囲め囲め!!相手は一人だ!!」ゾロゾロ

兵士E「もっと呼んでこい!!もっとだ!!」

兵士F「取っ捕まえてひんむいて無茶苦茶に犯してやんぜぇ…」ヒヒヒ

兵士G「( ゜∀゜)o彡゜ちっぱい!!ちっぱい!!」

兵士H「ヒャッハー!!」

兵士I「年増のくっせぇパンツを所望します」

兵士D E F G H Iがあらわれた!

女兵士「きりがないな…戦略的撤退!!」シュバ!!


マテヤオラー!!

チッパイチッパイ!!

女兵士(………くそ、数が多すぎるな……あんな不細工共に慰みものになどされてたまるかせめてイケメン連れて来やがれ!!)ペッペッ!!

…………

ハンサム「……ちっ!!」グイッ

白馬「ヒヒーン!!」

兵士J「居たぞ!!こっちだ!!」

兵士k「弓兵呼んでこい!!馬をまず射殺せ!!」

ハンサム「させるか!!」ヒュッ!!

スカッ

兵士J「何処狙って撃ってやがる下手くそめ!!」

ハンサム「ぬ、ぬぅ……剣や槍よりはマシと思ってボウガンを持ち出したが……いかん、老眼か?」ゴシゴシ

兵士k「撃ち取ったりぃぃぃ!!」ブンッ

ハンサム「!!」

ホモ「ダーリンになにさらしとんのじゃあああああああああああああああああああああ!!!!」スドゴォッッ!!

兵士k「くぺっ!?」ゴキッ

村娘「ダーリンが死んだら生きて行けないんだからぁ!!!!」ドスゥッッ!!

兵士J「ごはぁ!?」

熟女「ダーリンが死んだらこの身体の疼きは誰が止めてくれるっていうのよ!?絶対に死なせないんだからぁ!!!!」ビシンバシンビチーン

兵士L「む、鞭!?ほげっはぐっがはぁ!?」ビクビク

熟女夫「悔しい!!でもハンサムさんなら仕方ねぇ!!俺もついでに堕としてくれぇ!!」ザシュ

兵士M「ぬわーーー!?」

修道女「神の天罰!!ダーリンに害なす不届き者はこの巨大十字架で潰されてしまいなさい!!」ドッゴンドッゴン

兵士N「うびゅ」プチッ

女主人「燃えろ燃えろ!!火炎瓶攻撃!!ダーリンの敵は全部燃えろ!!」ポイポイポイポイ!!

ワー!!

ギャー!?

ハンサム「お、お前達何故居るのだ!?」

村長「皆貴方様が好きなのですじゃ、王兄様」

ハンサム「………村長まで、避難していろと言ったではないか!!」

村長「そうは言っても子供達以外はみーんな貴方を助けに行くと聞かんでな、止められやせんかった」

ハンサム「他にも居るのか!?死ぬぞ!!」

村長「ですから、貴方様が皆を纏めて指揮を取って下さればなんとかなるでしょう、なに、この村の者はいつかこんな日が来るのではと武器の扱いの特訓なんぞをこっそりやっておりましたからの、そこそこ使える筈ですぞ」

ハンサム「…………お人好し共め、俺はそんな大層な人間ではないというのに…」

村長「そんなこたぁありませんよ、貴方を知る者は皆、貴方こそ王に相応しい方だと思っておりますからな」

ハンサム「…………すまん、恩にきるぞ」


…………

豪商「……先発隊がほぼ壊滅しただと!?何を馬鹿な、あんなちんけな村に200も兵を送り込んでおいて!!」

大男「……………」

豪商「残りを全部投入して必ず叩き潰せ!!次はお前らも出ろ、良いな!!」ダンッ

大男「…………」コクリ

眼帯男「………ちっ、俗物が……良いのか大将、あれのお守りが居なくなるぞ」

大男「……………」クイッ

火傷女「ああ?なに?」

大男「……………」ボソボソ

眼帯男「………俺が正面からでてめぇは裏から回り込めだとよ、わかったかアバズレ」

火傷女「あ"?テメェの腐れチ●ポ噛み千切ってやろうか?どうせ散々弄り倒してもう使い飽きてんだろ」

眼鏡男「おーおー、やだねぇ下品な女ってのは、勃つもんも勃たねぇよ」ケッ

火傷女「不能かよテメェ、あー可哀想に」ハン

大男「……早く行け」ボソッ

火傷女「あ、大将が喋った」

眼帯男「馬鹿かテメェは、これでも大声で叫んだんだよ、大将は声がめっちゃ小さい人なんだ」スタスタ

火傷女「フーン、てっきり無口なのかと」スタスタ

大男「…………」


…………

女兵士「ぜぇ……ぜぇ……!!な、なんとか凌いだようですね……」フラフラ

眼鏡っ娘「お疲れさま、上手く撹乱しながら敵を排除出来た」

女兵士「………途中村人達が加勢してくれなければ流石に危なかったですよまったく……」ハァ

ハンサム「皆にも礼を言わんとな……」

眼鏡っ娘「こちらの被害は?」

ハンサム「怪我人が何人か居るが死人は出ていない、だが流石に疲れたようだな……次は堪えられるかわからん」

眼鏡っ娘「…………やっぱり分が悪い、困った」ウーン

ホモ「ダーリン!!奴らまた来るわ!!わたし怖い!!」ガバッ!!

ハンサム「………」サッ

ホモ「っ!?ダーリンが殴らない!?」

ハンサム「死ぬ気で頑張れ、凌げたら付き合い方を改める事を考慮しよう」クイッ

ホモ「なんですって!?わ、分かったダーリン!!わたし、がんばる!!」クワワッ

ハンサム「ウン、ガンバッテネ」コクリ

ホモ「おおおおおおお!!!!敵がなんぼのもんじゃあい!!蹴散らしたらぁぁぁあ!!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨

眼鏡っ娘「…………考慮するだけ?」

ハンサム「うむ、なに……多少は優しく接してやるさ」コクリ

女兵士(……厄介払いだ、絶対死んでくれって思ってる)

ハンサム「ははは、なに、いくらキモくても無下にしたりはせんさ、ははは」


眼鏡っ娘「……!……いけない、読み違えた」

ハンサム「なんだ、どうした?」

眼鏡っ娘「正面からの敵が少ない、恐らく背後から来る」スタッ

女兵士「背後から………では!!」

眼鏡っ娘「貴方は村の人達を連れて森の中の子供達を、進軍には適さない深い森だから入らないとは思うけれど、それでも万が一子供達が見つけられたら大変な事になる」

女兵士「しかし正面の敵は……」

眼鏡っ娘「なんとか凌ぐ」

女兵士「……わ、分かりました、ご武運を!!」ダッ

ハンサム「………彼女が居らんとなると、此方は余計に厳しいな」

眼鏡っ娘「…………にいさま…」ギュ

…………

キリが良いところまですら行かなくなるから控えてくれ(´・ω・`)このペースで消費されるとすげえ半端な所でこのスレおわっちまう、句切りはびしっとやりたいのよ頼む


……………

盗賊妹「…………!……なぁなぁにーちゃん、なんか来る!!」クイクイ

男「っ?なんかって?」

盗賊妹「あっちの方からガチャガチャ音すんだよ、たくさん」

男「………何も聞こえないけど、確かか?」

盗賊妹「とーぞくはみみと目が命なんだぞ?」

男「……聞こえるか?」

メイド「ちょっと待って、見てくる」タッ

少女「ご、ご主人様…」

男「…………これだけ深い森なら鎧兜身に付けた兵士には入って来れないって言ってたんだけどな……」


メイド「………居たわ、ホントに来てる、けっこう大勢」スタッ

男「そうか……くそっ……」

少女「ご主人様、に、逃げなきゃ!!」

男「……いや」チラッ

子供「な、なにどうしたの?」

子供2「お父さんたちは?いつまでここにいるの?」

男「森の中だとしても大人の足に子供ら連れて逃げ切れるとは思えないな……」

少女「で、ですけど……」

男「……少女ちゃん、嫌な事思い出させて悪いけど、君の時はどうなった?逃げてなんとかなったのか?」ジッ

少女「…………それは…」

男「……また怖い思いさせてるのは謝るしかないけどさ、話を聞いてくれるか?こんな時にだけど」

少女「…………はい」コクン

男「正直言うとね、君ら二人は逃がせられたんだ……こうなる前に、安全な場所まで逃がすことは出来た筈なのにしなかった、ごめん」

メイド「…………」

少女「…………」

男「どうしてそうしなかったのかってのはつかりゆ理由はあるよ?例えば、君ら二人だけ逃がしたとして、その後の生活はどうするかとかね、身分が奴隷じゃ国内じゃどうなるのかなんて想像もしたくないし、国外だとしても二人とももう行く宛なんてない、女の子二人が生きていくには世の中辛すぎるから」


男「あとはそうだな……好きな人達ぐらい自分自身で守りたかったのかもな、自分が知らない所で何かあったらと思うと気が気じゃない、それは南の女王国行った時に散々思い知ったし……だからさ……」

少女「やめてください……!!」

男「……最後まで聞いて欲しいんだけどな、もし何かあったとき嫌だしさ?」

少女「何かってなんです!?ご主人様は行かないって言いましたもん!!それに、どうしてわたしたちだけの事しか考えてないんです!?今からでも逃げれば良いじゃないですか!!逃げてもいいって言われてるのにどうして逃げないんですか!!」ジワッ

男「これが俺のけじめなんだよ、あの王子さま達に出会って、やっと道が見えたんだ俺にも、あの糞親父のやってきた事をずっと精算したいって、そう思って生きてきたから」

メイド「…………あんた、そんなことを?」

男「ああ、親父が掠め盗っていたもので俺はぬくぬくと育ってきたんだ………嫌だろそんなの?」

少女「…ご主人様の、お父さんですか?」

男「言ってなかったよな、俺の親父は奴隷商だったんだけど……あれ、もしかして聞いてたりした?」

少女「………メイドさんから一度聞いてはいましたけど……でも、そんなのご主人様には関係ないじゃないですか!!ご主人様はご主人様で、子供に親の罪が引き継がれるんですか!?おかしいですそんなの!!」

男「………そうだね、だからこれはぶっちゃけ俺のただの我が儘なんだ、だから巻き込んで悪かったって思ってる」


男「………まあ、言いたい事はこんなもんかな?さてと……」

少女「……ご主人様、どうするつもり……」

男「俺がなんとか囮になって近付いてる連中を遠ざけるよ、だから二人はもう少し森の奥へ、隠れてやり過ごせる場所があるならそこで待ってるか……無さそうならとにかく逃げてくれ」

少女「………!!」

メイド「……あんた…」

男「………あー、本来はもっと早くこうするべきだったかな……たった今から二人の奴隷としての身分を解除し、開放するよ、だから自由にた痛い痛い痛い二の腕のお肉が引きちぎれる!?」ミチミチミチ

メイド「いつまでカッコつけてんの」ギュー

少女「め、メイドさん……」

男「な、なんだよぉ!?人がせっかく決死の覚悟で!?」

メイド「あたしが行くわよ、あんたじゃまともに動けないでしょもやしっこ」ハァ

男「なっ……ダメに決まってんだろそんなの!?」

メイド「奴隷から開放したから自由にしていいんでしょ?」

男「……ぐっ!?な、なら無し!!さっきの発言無し!!ダメだめ駄目ダメぜーったいだめぇーーー!!」バンバン

メイド「………心配してくれるの?」

男「当たり前だろ!?子供の時のお遊びじゃねぇんだぞ!?刃物怖い奴が無茶いってんじゃねぇよ!!」

メイド「そっ、ありがと……でも大丈夫よ、平気」

男「平気でも行くな!!」

メイド「………自分はよくてあたしはダメって、我が儘」ジー

男「何かおかしいか!?俺は……!!」

メイド「………俺は?」

少女「……………」

男「………お、おれはその……本気で心配して……あーもう!?」ガシガシ

メイド「………まあ、いいか……まだはっきり決めてないんでしょ?」

男「…………ぐっ…」

メイド「……じゃ、あたしから言う、キチンと面と向かってはまだ言ってなかったから」ジッ

男「………え…?」

メイド「あたしも好きよ、ずっと大好きだった」

男「………!…」

少女「……メイドさん」

メイド「だから、うん……待ってて?なんとかしてくるから」クスッ

男「……お、おい……!?……んむっ……!!」ギクッ

メイド「………ん……」チュ

少女「……えっ……わっ……!」ギョ

メイド「………………」カァ

男「……い、いきなりなにを!?」ドキドキ

メイド「怖くならないようにね、おまじない」ニコリ

男「……お、おい!!」

メイド「じゃ、行ってきます」タッ

少女「め、メイドさん!!」

男「……ッッ!!くそ!!」ガンッ


……5分後。

男「………いやさ、なんつーか?あんな決死の覚悟をした彼女を見たらさ?どうして自分はこんな非力なんだとか、そう悔いるじゃん?」ウン

少女「……ご、ご主人様…」オロオロ

ギャーーーー

ヒ,ヒィィィィ!?

ダ,ダレカタスケッ……!?

ゴ,ゴリラガ!?メイドフクノゴリラガ!!

「だぁれがゴリラだごるぁ!!!!」ドゴゴゴゴンッッ!!

ギャーーーー!?

ドラミングガーーオタスケー!?

オカーチャーーン!!

盗賊妹「なぁなぁにーちゃん、あのどごごごんって音なんだー?」ゴクリ

男「……あれはね、メイドさん…あいつが木と木の間を連続で蹴り飛ばして反動で高速移動する彼女の出す音だよ、本物のゴリラのドラミングと酷似した音を出しながら彼女は戦うんだ」

少女「」

ヒ,ヒィィィィ!?ギャーーーー!?

男「………いやぁ、マジで杞憂も良いところだったなぁ……」シラー

少女「……も、森の中から悲鳴がずっと……」ゴクリ


女兵士「………お、おい?加勢に来たのだが……」トタトタ

男「……ん?あれ?いいんすかむこう?」

女兵士「……良くはない、無いが此方は非戦闘員しか居ないだろうからって……」チラッ

ウワーー!?

ギャーーーー!?

女兵士「なにがおきた」

男「いや、彼女が頑張ってくれてるんですけど……加勢か、おーーーい!!」

ガササササッッ!!

女兵士「」ビクッ


メイド「なにー?よんだー?」ヒョコ

少女(呼んだらすぐ来れるほど余裕なんだ……)ゴクリ

男「女兵士さんが加勢するっていうけどさ、どうーー?」

メイド「んー、いらなーーい!!あたし一人でなんとかなりそうだしー!!」ブラブラ

男「どのくらい来ててどのくらい倒したんだーー!?」

メイド「100人くらいー、半分はもうたおしたよーー」ヒョイッ

女兵士「」

少女「」

男「そっかー!!ならなんとかなるんだなー?」

メイド「だいじょーぶー!!」ガササササッッ!!


ドゴゴゴゴン!!


ヒィ!?マタキタ!?

タスケテー!!

男「……だ、そうなんで、むこう戻って平気っす」コクリ

女兵士「………何者だあの娘、どんだけ強いんだよ!?」ガーン

男「いやぁ、彼女前世がゴリラなんで、こういう深い森での局地戦闘なら無敵なんじゃないっすかねぇ」

メイドさん、通称ゴリラ・ゴリラ

>>839
学名じゃないですか(笑)
じゃあ正式には「ゴリラ・ゴリラ・メイド」か

まあ、ゴリラの語源自体が西アフリカの謎の女部族からだからなぁ…

ゴリラ「お妙さァァァァん!」

ゴリラ「お妙さァァァァん!」

・・・お妙さんの娘でも納得出来る(このSS的にありえないが)


……………

ハンサム「………よし、上手く連係して第二波も凌いでくれ!!」

村人達「「「オォォォォ!!!!」」」

兵1「……くっ…たかが村人の分際で!!」ジリッ

眼帯男「………おーおー、必死こいちまって見苦しいねぇ、そんでもってテメェらは不甲斐なさすぎだろ、ああ?」

兵2「………も、申し訳ありません」

ホモ「くたばれくそがぁぁぁぁぁ!!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨


眼帯男「……あァ?」ギロッ

ザシュッッ!!

ホモ「がはっ…!?」ガクッ

ハンサム「なっ……おい!!」

眼帯男「……チッ……いいかテメェら、こういう仲良しこよしって連中相手ならこういう風に戦うんだよ、よく見とけ」ガシッ

ホモ「………ぅ……」

眼鏡っ娘「……人を盾に……」

眼帯男「これであのガキが仕掛けてるであろう罠は大半潰せる、巻き添え食らわしちまうからな……まああとは普通に盾にも使うがな?」ズイッ

ハンサム「………き、貴様!!」ギリッ

眼帯男「全員まずは適当に痛めつけた奴を盾にしろ!!なるべく[ピーーー]なよ、盾の役目しなくなっちまうからな!!」

兵士1「…は、はっ!!」ジャキ

ハンサム「……いかん!!下がれ、一旦下がれみんな!!」

眼帯男「下がってどうすんだよ、あァ!?何人か倒れてんのは盾に出来んだぜ?そいつら見殺しに出来るなら逃げても良いぜ?」

村人「……ぐ、あぐ……!!」

眼帯男「村の連中盾にした奴の後ろに弓兵を付かせろ!!まともに動けねぇ奴らなんぞいい的だ、撃ってりゃ盾が増えてくからなァ!!」

ハンサム「………くっ!!」ギリッ

眼鏡っ娘「………っ……」


……………

大男「…………」

大男(………村に直接突入した隊は順調………が、挟撃の為に背後に回らせた隊が姿を見せん)

大男(……………手強いのが居るか、世話の焼ける)スタッ

豪商「おい!!どうなのだ!!まだ終わらんのか!?」

大男「…………」コクリ

豪商「ちぃぃ……国王め、何がなんの力もないただの小娘だ、冗談じゃない!!」ブツブツ

大男「…………私も行ってきます」ボソッ

豪商「……初めからそうしろこのグズが!!ワシはお前も行けと言っただろうが!!」

大男「……………」

豪商「とにかく!!まともな兵もおらん奴ら相手にこれ以上手をこまねいて居られるか!!分かったらさっさといって自分の飯の種を稼いでこい!!いいなとっととだぞ!!」ガッ

大男「…………」ギロッ

豪商「……ぐっ…!?」ゾクッ

大男「………」ペコリ、スタスタ

豪商「………ふ、ふん……低脳な野蛮人が…」ブルッ

……………

火傷女「」

メイド「おわったよ、この子だけ女の子だったから捕まえてきたよー、殴るの気が引けちゃって」

火傷女(………特になんの見せ場も無いままやられた……)ズーン

男「他の奴らは?」

メイド「縛って木にぶら下げてきた」

少女「ぶら下げて……」

メイド「さすがに殺しちゃうのはやだったから、あれなら気がついても身動き出来ないもん」

男「この子もそうだけど木の皮で即席の手錠にしたのか……まあ、この状態でなら誰かに下ろして貰わんと動けねぇだろうね」フム

火傷女「……チッ……テメェら、只で済むと思うなよ」ペッ

メイド「この子どうする?やっぱりぶら下げてくる?」

男「いや、見たとこコイツ隊長格だな……だったら色々聞き出しとこう、情報はとにかく欲しいしな」

火傷女「…………ハンッ……喋ると思ってんのかよ?」ケッ


男「うーん前にもこんな尋問するシーンあったよなぁ……でも今回女の子だし髪の毛むしる訳にもいかないし、そうだなぁ…」

火傷女「…………あんだよ、犯りてぇならさっさとやれよ、童貞臭ぇにおいプンプンさせて顔近付けやがって」

男「」

火傷女「こっちはなぁ、んな事慣れっこなんだよ、どいつもコイツもひんむいてこきたねぇチ●ポ突っ込んでよだれたらしてアホ面させるしか能がねぇしな、まあいいやそれなりに楽しませてやるからさっさと済ませろよバーカ」ゴロン

男「………ど、どうしようねぇどうしよう、俺この子こわい」プルプル

メイド「……え、えーと」タジッ

火傷女「……?……ああ、女の前じゃ出来ねぇってのか、上品なボンボンだなおい」

男「……じょ、上品て……普通じゃないかなーって……」

火傷女「知るかよ、こちとら身分は奴隷でね、毎日毎日擦り切れるほど輪姦されるのが普通だったからよ」

男「………!…」

少女「……奴隷…」


少女「…………」スタスタ

火傷女「……あァ?なんだよ」

少女「……奴隷だったら、なんでこんなことを?命令だからですか?」

男「………少女ちゃん?」

火傷女「……他になにかあんのかよ?いかにも温室育ちって感じのいい子ちゃんにはきちゃない奴隷女は珍しいのかにゃー?」

メイド「……っ…この…!!」

男「…待った」バッ

メイド「で、でも……!!」

男「いいから」フルフル

少女「………貴女に比べたら温室育ちかも知れないです、でも、身分で言うならわたしも奴隷ですから」

火傷女「……ハンッ……男も知らねぇような面して奴隷かよ、よっぽど変人が主人なんだろうな?」

少女「…………命令なら、なんでもするんですか?貴女も色々奪われたから奴隷なんでしょ?なのに、自分が奪う側に回るのは良いの?」ジッ

火傷女「………なにを言い出すかと思えばくっだらねェな……知らねぇよそんなもん、良いだろなんでも、自分以外は他人だろ、他人がどうなろうがどうでも良いだろ」

少女「…………良くないです、そんなの続けてたら誰も居なくなるよ」

火傷女「……………それで?お説教なら相手選んでやれよ、なんでアタイがそんなの聞かなきゃいけねぇんだよ……」ジロッ

少女「…………わたしも、もしかしたらあなたみたいになっていたのかなって思ったから、ごめんなさい」

火傷女「……………ハンッ……」


…………

音も無く森の中を移動する影があった。

大男「………………」

木々の枝を蹴り、幹をつたい、翔ぶように進む。

その巨躯の男はあまり多くを語らない、語る必要を感じないからだ。

時折語る必要が生じると言葉の出し方を忘れたようにボソボソと呟く程度にしか声が出ない、人に聞こえる音量で話すのに苦労する。それほどにこの大男は寡黙で、人と話す必要がないほどに孤独だった。

生まれは知らない。物心つく頃には戦っていたと思う。

人、猛獣、そして軍隊……その迫り来るすべてを蹴散らし、生きてきた。それ以外には何もない。

歳は知らない。数えた事がない、最近ようやく年齢というものを数えるのが普通なのだと知ったのだがそんなもの戦いには必要ない知識だ、まあ、だが数えるとすれば産まれて20年程度だろう、細かい事は苦手で知りたいとも思えなかった。

大男「…………あそこか」

森の木々の合間を進みながら、巨躯の男は目を細め、頭のなさかをあわせね住むむ


………………

火傷女「…………」

男「……あー、まあとにかくだ……ここで暫く大人しくしててもらうからな」

火傷女「ふん」フイッ

少女「…………」

メイド「それでどうする?むこう平気なのかな?あたしいったほうが……」

男「いや、頼りにするようで気が引けるけどまだこっちから戦える奴が居なくなるのはちょっとまず………」

メイド「………?……なに?」クルッ

大男「…………」タンッ

男「……っ……!?……誰だ!!」

火傷女「大将!!こっちに来てくれたんですか!?」

大男「…………」ジロッ

火傷女「…っ…ぅ……」ビクッ

メイド「……っ!!」ゾッ

大男「お前か、兵を潰したのは」スタスタ

メイド「コイツヤバい!!みんな逃げて!!」

男「えっ…?」ギク

大男「………………………………………」ドッッ!!

メイド「っ!!」


……………

女兵士「…………戻ってきてみればなんだこの状況は…!!卑劣な!!」ギリッ

眼帯男「おーおー、何処まで下がるんだテメェら?もう村の奥、その先は森ん中だぜぇ!?」

ハンサム「………くっ!!」

眼帯男「森ん中はガキか何か避難してんのかね、さっきから一匹も見てねえがよ……良いのか?ガキ共見つけたらさっさと盾につかっちまうぜぇ……?大人捕まえてんのも疲れんだ、軽い方が良いだろ、なァ?」

眼鏡っ娘「………………………」

女兵士「………斬り込もうにも盾にされた村人が多すぎる……!!どうすれば……」ギリッ


眼鏡っ娘「……………ここまで、降服する」

眼帯男「……あァ?」

ハンサム「……おい!!本気か!?」

女兵士「殿下!!」

眼鏡っ娘「………ここまで非道な行いをするとは思っていなかった、悔しいけれど手が出せない」

眼帯男「…………まぁ、妥当な判断かねぇ?つまんねぇけどな」

眼鏡っ娘「狙いは私?」

眼帯男「お前が王女さまだってんならそうだなぁ、テメェを餌に逃げた王子さまを釣ろうって話らしいからな?」

眼鏡っ娘「……!……やっぱりにいさまが……」ギュ

女兵士「……王子はご無事なのか……しかし…!!」

眼帯男「でぇ?降服すんなら武器捨てな、そんで王女ちゃんはこっちまで歩いてこい」クイッ

眼鏡っ娘「ひとつ条件がある」

眼帯男「なんだよ、言ってみろ」

眼鏡っ娘「私は投降する、抵抗も止めさせる、だけど他の人には手を出さないと誓って、捕まえるのは私一人、餌にするのが目的なら私だけで事足りるはず」

ハンサム「…………」ギリッ

女兵士「殿下!!」

眼帯男「………あー、まァ良いだろ、おいテメェら、村の連中離してやれ」ドサッ

兵士「……はっ…」ドサッ

ホモ「……う、うぐ……だ、ダーリンごめんなさい…」

ハンサム「………じっとしていろ、後で手当てしてやる」

眼帯男「開放してやったぜ?おら、次はお前さんがこっちに来るばんだ」

眼鏡っ娘「……分かってる」スタスタ

ハンサム「…………くそっ……なんて無力なのだ俺は……!!」

女兵士「殿下……!!」


眼鏡っ娘「……っ……」ギチ

眼帯男「一応捕虜なんでな、拘束はさせて貰うぜ王女ちゃんよォ……まあ、そのうち縛られんのにも慣れて快感になって来るかもなァ?ギャハハハハ!!!!」グイッ

眼鏡っ娘「……触らないで」

眼帯男「………どっかのアバズレと違って初々しくてうまそうでたまんねえなおい?まァ……多少ガキだがよ?」

女兵士「………この……!!」

ハンサム「よせ!!今は……!!」

女兵士「しかしあれはあまりにも!!」

眼帯男「そうそう、まだ俺にヤられる方がまだ幸せじゃねぇかね?外で帰りを待ってる成金豚の慰み物よかよっぽどなぁ?初めてぐらい若い男の方が良いだろ?なァ?」

眼鏡っ娘「………………」

眼帯男「…………ちっ…反応が少なくていまいち面白みがねぇ、もういいか………おい」サッ

兵士達「「……はっ!!」」ジャキ

眼鏡っ娘「………!」

眼帯男「じじいとババアは殺せ、働けそうな男と若くて高値が付きそうな女つ絶対殺すな、儲けがなくなるからな」

ハンサム「……!!」

女兵士「約束が違うぞ貴様!!」

眼帯男「そうかい?俺は神様にちゃーんと誓ったぜぇ?まあ、神様なんざ信じてねぇけどな?くっく……ギャハハハハ!!!!」

眼鏡っ娘「…………!!」ギリッ


女兵士「……クソ!!この下衆が……!!」ギリッ

眼帯男「おっと!?動くなよ近衛隊長さんよぉ、テメェだけはマジで近付くなよ、良いんだぜ?弾みでころしちまいましたすいませんって報告したってよぉ……あの豚はともかく王様は別に王女ちゃんが生きてようが死んでようがどっちでも構わねぇって話らしいからな?」スッ

女兵士「……!!」ズサッ

眼鏡っ娘「……………」

眼帯男「そうそう、森から出てきたあんたなら分かるかも知れねぇが実はな、俺ら挟み撃ちの段取りだったんだけどよ、何か知らねぇ?」

女兵士「……貴様などに教えるか!!」

眼帯男「あっそう?まァ、どうせやられちまってんだろうけどよ、良いこと教えてやるよ」

ハンサム「………良い事だと?」

眼帯男「……全体見て芳しくねぇ所があればウチの大将が動くだろうからな、後ろのガキ共、今頃全員お縄についてるぜ?」

眼鏡っ娘「……!!」

女兵士「………何故そう言いきれる!!」

眼帯男「あたりめえだろ、ウチの大将は本物の化け物だぜ」

眼鏡っ娘「化け物…?」

眼帯男「噂じゃなんだ、どっかの戦闘民族の生き残りだとかなんとかな、矢が何本も刺さって死にかけてた所を拾われただとか、まァそれはいいか……とにかく、誰も勝てる奴なんか居ねぇって事だ」

ハンサム(……………!!……生き残りが居たのか!?)ゾクッ

眼帯男「そんなわけで、テメェらゲームオーバーだ、残念だったな?」

『まだだ!!まだ、終らぬ!!この私が居る限り!!』

眼帯男「………あ?」

ハンサム「………あれは!!」ハッ

女兵士「!!」

眼鏡っ娘「………!!……」ジワッ


村娘「あ、あれは何!?」

村長「人か!?」

熟女「いえ、蝶!?」

修道女「違うわイケメンよ!!」

眼帯男「……テメェは!!」ギロッ





パピオンマスクV「アイキャンフラァァァァァァァイッッ!!!!」ピョーン



村人達「「「「へ、変態だーーーーーー!?!?」」」」ガビーン!!


兵士達「「「「裸マントだーーーーーー!?!?」」」」ガビーン

女兵士「ぎゃーーーー!?!?ぶほぉ!?」ブハァ

ハンサム「」

白馬「ヒヒーーーン!!!!」←喜んでいる。

眼鏡っ娘「にいさま!!」ポロポロ


※パピオンマスクVの「V」ビクトリーパンツのV、全裸ではない。


パピオンマスクV「ふはははは!!悪逆非道な者共め!!この私、再び羽化を遂げ舞い降りた蝶の化身、傾国の美男子パピオンマスクが来たからには好きにはさせぬ!!我がいも…ゲフンゲフンその少女を開放せよ破廉恥者がぁ!!!!」クワワ

ハンサム「いや、お前の方が破廉恥だ!?」ガーン

パピオンマスクV「えっ?」ガーン

ハンサム「ええいなにを意外そうな顔をしている!?と、とにかく来たのなら何とか出来るのか!?」

パピオンマスクV「異な事を、美形の男子に不可能などありはしない!!そうでしょう我が叔父う……いや、父?んん?まあいいかハンサム殿よ!!」キリリ

ハンサム「……………誰の血だ、誰の影響でこんなになったのだマジで……」ヨロヨロ

女兵士「だいたい貴方の血のせいかと……」フラフラ

眼帯男「………おい変態」

パピオンマスクV「………?」クルッ

眼帯男「お前だよふざけてんのかテメェは!?」

パピオンマスクV「私が変態だと?確かにこの姿は一見変態そのものだ、だがしかしだ!!」カッ!!


パピオンマスクV「顔が良い男はどんな姿だろうとも美しさは損なわれぬ!!故に私は変態でも許されるのだ!!」ドーン

眼帯男「………………………」

ハンサム「…………嫌だ、あれが俺の血だなんて思いたくない」フルフル

女兵士「認めて下さい、ぶっちゃけ大して変わりません!!」

眼鏡っ娘「…………いつものにいさまだ」ホッ


眼帯男「もういい、下らねぇギャグぶっこみやがって……おいテメェら!!相手は一人だ、囲んで切り刻め!!」


ズガガガガッ!!

ドゴォォォッッ!!

眼帯男「!!?!」ギョッ

老近衛「誰も若一人だなどと言ってはおらんぞ」ゴキッゴキッ

団長「………ふん……」ザンッ

兵士達「「「」」」ピクッ、ピクッ……

ハンサム「………!!貴殿方は!!」

女兵士「老近衛殿!?それに……だ、団長!?何故!?」

団長「……別に、ちょっと気が向いただけの事よ」フン

眼帯男「………いつの間に……」ギリッ

老近衛「お前さんが若に注意を向けとるあいだにの」フン

団長「この程度の数、わたくし達なら一瞬でかたをつけられるもの」

パピオンマスクV「形勢逆転だな、さあ、大人しく開放しろ!!」

眼帯男「動くな!!まだだ、コイツだけは連れて帰るからな……命令なんでな!!」グイッ

眼鏡っ娘「……っ…にいさまはここに居る、餌だというならここへの貴方達の襲撃だけで事足りたということ、もう役は果たして私を連れて帰る理由はない」

眼帯男「うるせぇ!!だぁってろぶっ殺すぞ!!」ギラッ

眼鏡っ娘「……っ……にいさま」ジッ

パピオンマスクV「わかっている、安心しろ」ニッ

眼帯男「……寄るな!!離れろっつってんだろうが!!」


パピオンマスクV「………我が妹よ、動かずじっとしているのだぞ?」ニッ

眼鏡っ娘「うん」コクリ

眼帯男「…………やる気かテメェ、良いのかよ?俺は遠慮なくコイツを盾にするぜ?」

パピオンマスクV「…………」スチャ


青年「…………好きにせよ」スッ

眼帯男(…………馬鹿が……剣の軌道なんざたかが知れてんだ、目の前の妹突き[ピーーー]リスク考えりゃまともに攻撃なんざ!!)グイッ

青年「……………」

剣を正眼に構え、射抜くように眼を尖らせる。

相手は妹を盾にしている。普通に突いた所で攻撃を読まれ、その切っ先は妹の肉に突き刺さるだろう、だが。

青年「………ッッ…ハッ!!」

青年はそれでも剣を振るう。その切っ先は妹の頬を掠め髪の合間を縫って相手の胸元へと滑り込んだ。

眼鏡っ娘「……………」

眼帯男「………が……なに……?」

青年「………我が妹が怖じ気づいて動くと踏んだか?残念だったな、生憎常人が反応出来るほど我が剣は鈍くない、集中さえすればこの程度雑作もない」

眼帯男「……俺がこんな……簡単に………」

青年「……妹を盾にすることに執着せず普通に対峙すれば善戦ぐらいは出来たものを、そなた、それなりに実力者であろう、見れば分かる」

眼帯男「………チッ………化け物がここにも居やがった……ついて……ねぇ…糞が……………………」

青年「……………」



……………

大男「…………………………………」

メイド「……ッッ!!」

突如現れた巨躯の男は一目見ただけで敵となり得る者を判断し、肉薄する。
腰に剣は差して居たが抜刀する気配はない。粗末な布を包帯のように巻き付けただけの拳そのものを振り上げ襲い掛かって来た。

メイド「この……!!」

真正面に降り下ろされる拳を避けて後ろへと跳ぶ、追撃の為に更に迫って来るかと思ったが巨躯の男は放った拳を地面にめり込ませたままの体勢で眼を向けるだけだった。

メイド「………………」

大男「………………」

注意深く動きを探るが巨躯の男はゆっくりと上体を起こすのみで仕掛けては来ない、ただ一言呟くように言葉を放つ。

大男「………素人か」

メイド「………?……………っ………」

男「お、おい大丈夫なのか!?」

メイド「………わかんない」

素人という言葉の意味はその場にいた言葉を放った巨躯の男以外全員が理解出来なかった。ただ、その男の放つ異様な気配だけは感じ取れる。

火傷女「た、大将!!悪いけど縄ほどいてくれよ!!アタイまだ戦える!!」

大男「……………」

顔に火傷の跡が残る女が叫ぶ、だが巨躯の男は女の方へ顔も向けようともしない。

火傷女「……た、大将……?」

大男「………身体能力だけの獣に負けるような塵は要らん、ここで朽ちろ」

火傷女「………な……?」

少女「……ごみって……味方なのに……」


メイド「…………け、けもの……」ヒクッ

男(だいたいあってる)フイッ

大男「…………剣はやはり要らんな」

再び腰を落とし突進しようとする巨躯の男。しかしそれは見越して居たのか、先に彼女の方が動く。

メイド(ここじゃみんなが巻き添えになる、少し離れなきゃ……!!)

皆が居る場所から大きく横に飛びその場から離れようとする。しかし。

大男「……ふん…」

即座に飛び込む軌道を変え、立ち塞がるように彼女の前へと移動、更にその勢いを殺さず勢いを乗せたままに蹴り足を出す。

突然正面に回り込まれ攻撃まで仕掛けられた彼女は反応が遅れその一撃を避けられず、後方へと吹き飛ばされてしまった。

メイド「………かはっ……!?」

そして、大木に叩き付けられるように激突して彼女の口から呻き声が漏れる。

男「……っ!?」

少女「メイドさん!!」

メイド「…………な、なによコイツ……?」

よろめきながらも立ち上がるが、先程の一撃だけで実力の違いははっきりと自覚してしまう。

大男「………………丈夫だな……」

メイド(…………強すぎ……こんな奴居るの……?…)


メイド(………あたしじゃ勝てない、でも……!!)

ちらりと辺りを見渡す、その場には村の子供達が数人、それに大切な人達が居る。

大男「………………」

巨躯の男はゆっくりと近付いて来る、仕留めるのは容易だと判断したのだろう。その眼は明らかに格下を見る眼をしていた。

メイド「…………ッッ!!ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

怒声の如く叫び、敵わないと理解して、それでも飛び込んだ。
し自分がなんとかしなくてはいけない、でなければみんなが殺されてしまう、会えなくなってしまう。それだけは嫌だった。

大男「……………つまらん」

……………


男「………ッッ!!……」

少女「………め、メイドさん…!!」

……数度の拳の撃ち合いの後、とどめとなる一撃を腹部に喰らい彼女は倒れこむ。

メイド「…………ぐ……っ…」

大男「……………」

彼女の攻撃はその殆どがかわされ、いなされてしまっていた。巨躯の男には数ヶ所痣が出来た程度で殆ど無傷だった。

大男「………戦士でもない女を[ピーーー]趣味はないが……暴れまわる獣にこれ以上邪魔されるのも癪だ、悪く思うな」

巨躯の男はそこで初めて腰に帯びた剣を取る。動けぬ彼女に本当に止めを刺すつもりなのだろう。

メイド「…………」

大男「…………………」

剣を逆手に握り、振りかざされる瞬間。

男「……………待て……!!」

彼女の主人である青年がその間へと割って入った。


大男「…………」

男(………こいつは……気絶してるみたいだが息はまだある……)チラッ

メイド「………」

大男「…………」チャキ

男「待てっつってんだろ!!交渉だ、コイツは見逃せ!!」

大男「……………………聞くつもりはない」

男「………そうかよ、でも聞いてもらうぜ?損はねぇっていってんだから聞けよ」

大男「………………ふん……」

男「………俺達全員見逃せ、金は払う、金貨千枚だ」ドサッ

大男「……金?」

男「ここに居る全員奴隷として売ってもこの十分の一の値段にもならねーぞ、テメェら奴隷狩りもついでにやりにきてんだろ?どうだ」ジロッ

大男「………………」

男(………くそ!!まともな言い訳思い付かねぇ…!!これでなんとか納得してくれ!!)ギリッ

大男「………金はどうでも良いが貰っておこう、その女にやられた兵の補充やらで使うだろうからな……だが……」

ブンッ!!

男「が!?ごはっ……!!」ズサッ

少女「ご主人様!!」

大男「貴様らを捕らえない理由にはならん、[ピーーー]のは止めておいてやるがな……俺の前に立ち塞がった度胸だけは認めてやる」

男「…………ぐ……っ……!!」ギリッ

大男「…………」グイッ

少女「……ひっ……!!」ビクッ

男「……っ!?おい!!その子をどうする気だ!!」

大男「………人質だ、面倒だが一度陣に戻るからな………おい」

火傷女「………っ!!」ピクッ

大男「縄はほどいてやる、後から他の奴を連れて戻ってこい、その程度は出来るな?」ザッ

火傷女「……は、はい……」

男「くそ!!離せ!!」ダッ

大男「………………」ゴッ!!

男「がっ……!?」ドサッ

少女「ご主人様!?い、いや離して!!」

大男「……………」タッ

男「……………く……ぐぅぅぅ……!!」ギリッ


男「……はぁ……はぁ…!!馬!!」

黒馬「ヒン?」トコトコ

男「万が一の為にお前連れといて良かったぜ……!!頼む、奴を追ってくれ、森の中じゃ走りにくいだろうがそれしかない!!」グイッ

黒馬「ブルル……」コクリ

火傷女「あァ?勝手に行こうとしてんじゃねえよ……テメェもふんじばられて後から行くんだからいいんだよ」チャキ

男「………!!……おいあんた、さっき捨てられそうになったくせにまだ言いなりになるのかよ?馬鹿じゃねえのか!?」

火傷女「………それがなんだよ?アタイは奴隷だよ、捨てられるのも生かされるも上の判断だろうが」

男「ふざけんな!!そんなもん人間の生き方じゃねぇだろ!!良いのかよ!?本当にそれで納得出来るのか、あんたは!?」

火傷女「………………納得なんて……」

男「だったらあんな命令反故しちまえ!!人を人とも思えない野郎共に付いてっても不幸になるだけだろ!?」

火傷女「………………でも……」

男「不安なら俺がなんとかしてやる!!奴隷なんて糞みたいな生き方しか知らないなら他の生き方を俺が教えてやる!!だからもう良いだろ!?本当は嫌なんだろ、じゃなかったらそんな自虐めいた考えなんか出来るかよ!!」

火傷女「………………行ってどうすんだよ、大将……あの人半端じゃねぇんだぞ、死ぬぞお前」ジロッ

男「そんなもん後で考える!!もういいな?行くぞ!!」グイッ

黒馬「ヒン」

火傷女「待て!!…………アタイでも、まだ糞みたいな生き方から抜けられるって、ホントにいってんだな?嘘だったら……」

男「……連れてかれた子を見てわかんねぇかよ、あの子はお前らが少し前に攻め滅ぼした森と湖の国の生き残り、連れてこられた奴隷の一人だ、彼女見て、糞みたいな生き方させられてるって思ったか?」

火傷女「…………!……そうか……そうなんだ……」

男「………妹ちゃん」クルッ

盗賊妹「う、うん……なんだー?」

男「メイドさん頼むな?見た感じ致命傷はないから大丈夫だとは思うけど」

盗賊妹「う、うんわかったけどな?にーちゃん大丈夫なのか?しんじゃうよ……」オロオロ

男「大丈夫だよ!メイドさんにももし起きたら大丈夫だって伝えといてくれ」ニッ

盗賊妹「………うぅ」コクリ

火傷女「………………勝手にしな、アタイは仕方ないから見逃してやるよ……ふん」フイッ

男「………ありがとう、よし……!!」パシン

黒馬「ヒヒーン!!」ダッ!!

男「………急いでくれよ!!」ギュ


……………

青年「ここか!!我が友は!?」

火傷女「……………」

女兵士「……!!……これは……おい、そこの女!!この子の傷はお前の仕業か!?」

メイド「…………」

団長「……!!」

老近衛「……打撲傷ばかりで骨折などはしておらぬようだな………この娘ですか若?」

青年「……ああ、そうだ……しかしこれはいったい……」

火傷女「……やったのはウチの大将だよ、あんたら村の方から来たね、そうなると……なんだよ、あの馬鹿も結局やられたんじゃねぇか」ハン

青年「……我が友は何処だ、それにあの幼い娘も姿が見えぬぞ」

火傷女「大将があのちっこい娘連れてって、我が友だかなんだか知らねぇけど若いにーさんが取り返しに馬で追いかけてったよ」

女兵士「……なんだと?それで、貴様は?」

火傷女「アタイは馬鹿馬鹿しくなったし、降参したんだよ、あのにーさんが身元引き受けてくれるって言うしな」

青年「……追いかけてだと?」

老近衛「……ここまで一族の者を傷つける事が出来る者となると……若…」

火傷女「早く追いかけな、でないと……」

青年「……!!」

……………


大男「………………」

巨躯の男が森を抜け、村を見渡せる丘の上へと駆け上がる。そして村を一瞥し状況を把握する。

どうやら村を攻めていた正面の兵達も失敗したらしい、村からは歓喜の声が上がり、そして逃げ出すこちら側の兵がちらほらと確認出来た。

大男「………………」

どうやらここまでのようだ、国王の命令……自身の主の命令とはいえ独りでは戦えない、村人共はともかく、複数の手練れが居るのは間違いない場所では自身の命が危うい、その見極めは戦場にとってもっとも重要だ、戦いの中で生きる為には退くべき時は必ず退く、でなければ無駄死にするだけだ。

大男「………戦利品はこの娘だけか、散々だ」

利益など自分はどうでも良いが主はそうは思わないだろう、いっそあの俗物もくびり殺して放浪者になるのも考えなくもない。

だがそれでは只の獣と変わらない、先程痛めつけた女よりも凶悪な害獣でしかない。最低限とはいえ、自分は人としての尊厳だけは残して起きたい。例え奴隷、例え非道な殺戮者だとしても人にはかわりない。

大男「………さっさと戻って適当にお叱りでも受けんとな」

溜め息をひとつ吐いてから丘を下る。

大男「…………!……」

その途中、黒馬に跨がる青年が目の前を遮った。

男「…………よお…」

大男「………………」


男「その子を返して貰う、大事な子なんでな」スタッ

大男「…………ふぅ…………独りで来たのか?」

男「他に誰か居るように見えるか?」

大男「………………」



大男「……一人のようだな……馬鹿にも程があるな」

男「………その子、動かないが……」

大男「安心しろ、泣いて鬱陶しいから気絶させただけだ、怪我ひとつ負わせていない」

少女「……」

男「………そうか、ならいい」

大男「返して貰うと言っていたが、素直に返すと思うか?」

男「………そうして貰えるならありがたいんだがな……」スッ

大男「……………ナイフ程度出した所でどうする?」

男「……………」


男………やつやっぱり脅しにもならねーよなぁ……そりゃそうだ……)ゴクリ

大男「………武器を構えたのなら、まして女でもないなら容赦はしないぞ、いいな?」ズンッ

男「……………………」

大男「…………」ダッ!!

シュッッ!!

男「………っ!?速っ……がっ!?」ガクッ

大男「…………?……」

男「………ぐ…ぅ……!!……へ…へへっ……」フラ

大男(…………何故倒れん…?)ゴッ!!

男「がっ……!?」ミシッ


大男「……………」

男「……痛……!……………いてえなくそ……」ヨロッ

大男「…………………肋を砕いた筈なんだがな…………っ…はぁ!!」ドォ!!

男「ッッ……!!……ぁ……?」ドサッ

大男「………………ふん……」スタスタ

ガシッ


男「………待……て……」グググ…

大男「…………なんだ、貴様は?」


男「…………」フラ


大男(…………なんだ、この男は?)ジリッ

男「…………返せ……!!……」

大男「………!!」ブンッ!!


男「ぐはっ!!」ビシャ


大男「………内臓にダメージが入った、無理に動けば吐血では済まんぞ」

男「…………………だから………なんだよ………少女ちゃん返せよ……」ジリッ

大男「…………………っ……!!……」ガッ!!

男「ぶっ!?」ビチッ

大男「ッ!!ッッ!!」ガッ!!ガッ!!


男「……………うぇ……あが………」ビシャビシャ


大男「………っ…………」

男「……………返せっつってんだろ…!!糞野郎………」グイッ

大男「………寄るな……なんだお前は?何故立つ?死ぬぞそれ以上は!!」ジャキ


男「……………それがどうした……」

大男「……………!?……」ズサッ


男「………少女ちゃんはもう家族なんだよ……!!死んでも守るって俺が勝手に決めてんだよ、何かおかしいか……!?」




男「…………返せ……!!」ジリッ

大男「……………寄るな……なんだ貴様は……!!」

男「……返せ!!」ダッ!!

大男「…………うっ……!?」ゾクッ


ドッ………!!


男「……………ぁ………?」


大男「…はぁ……はぁ……!!」ズサッ



男(…………やべ………おもっくそ剣で突き刺されてやんの……あーあ………)ゴホッ…


男「………ヒュー………ヒュー……返せ……!!」トッ


大男「……っ…!?……痛っ………!!」


大男(…………短剣……!!……あの状態で……!!)ズッ


男「…………………ぅ……か……かえ……せ……」ドサッ


大男「………………………………っ……………」ゾクッ


男(……………くそ………ヤバい、意識が……………くそ………くそ………っ……まだ……!!)



男(…………あーあ……ひ弱な只の商人の癖に無茶し過ぎたかな……?……参ったな…………)


大男「…………執念、か………?俺が恐怖を感じるとはな……」



男「……………………………………………」

男(………もう声も出ねぇな……やっぱり無量だったかな……ごめん……)

薄れゆく意識の中で様々な光景が浮かぶ。

幼い頃の思い出、日々の中で交わした何気無い会話、笑顔。

いつも傍らに居た幼馴染みの少女との思い出、突然の出会いから心を奪われ、短いながらも幸せだと思える日々を与えてくれた女の子の顔も、次々と流れ渦巻いてゆく。

男(………あー、これ走馬灯?マジかよ、こんな感じなんだな……はは……)


様々な人々と出会いがあったのだなと……記憶の奔流を見詰めながら思う。バカで変態だが妙に気の合う王子様、無表情で何考えてるのか分からないようで結局にいさまの事しか考えて無さそうな王女様にその護衛の残念過ぎる美人の近衛兵士のおば…もといお姉さん、南の女王国で知り合った元盗賊の面々にスケコマシハンサムと村人達、地元の人らや仕立て屋の主人、商人として仕事をしている時に知り合った様々な人々、なんか妙に親近感の湧く女僧侶に自分の父、それに幼い頃に死んだ母親まで………。


男(……………参ったな……まだ死にたくねぇ……)

自分が死んだら、彼女達はどうなるだろう、幼馴染みで使用人の彼女はどうなる?いま正に連れ拐われそうになっている少女は?

男(………………ごめんな……)

暗く、底の知れぬ闇の中へと沈む意識の最後の力で強く、そう言葉を放った。


男「……………ご………ん………」


そして、その青年の意識は途絶え、決して抗えぬ眠りへと進む。

……肉体は死に、意思は闇へと融けて霧散した。


大男「……………」

息絶え、骸となった男を眺めながら巨躯の男は思う。

意思の強さで、自分は負けていた。

当然だろう、守る物があったこの男と、ただ己の為だけに漫然と生きているだけの自分では肉体の強さはともかく、魂と呼ばれるものに強さなどありはしないのだ、それを思い知るには良い機会だったのかもしれない。

大男「……だが、馬鹿な男だ……結局何も出来ずに死んだだけだ」

無駄死にだ。それは変わらない、変わらないが……巨躯の男にはそれを認めるのは更なる敗北だと感じてしまう所があった。

大男「……………それに……」


どうやら本当に時間切れのようだった。

丘の中腹辺りから辺りを見回すと、数千という規模の軍隊が此方へ向かっているのが確認出来た。

国王が軍隊を動かす等とは聞いていない、それに今は北への派兵のためにそちらへ軍隊は集結させている筈なのだ、こんな西の外れにあの規模の軍隊を寄越す余裕などある筈がなかった。

大男「………反乱軍か、それとも西か南からの侵略部隊か………どちらにせよ長居は無用、主を連れて逃げるのを考慮すると余計な荷物は捨てるべきだな」

そう呟いて、抱えていた少女を地面へと寝かし付ける、この男の亡骸の隣に捨てておけば仲間がどちらも見つけるだろう。

大男「………あれはこの男がここへ来たのを考慮すれば既に裏切ったか殺されたのか……まぁ、一度捨てたのだからどうでも良い」

そして巨躯の男はその場を後にする。

何も失う物の無い戦士は、僅かな心の凝りを自覚しながら、あるべき場所へと還って行った。

………………


……………

少女「………………っ……!……」

少女が眼を覚ました時、目に飛び込んで来たのは空の澄みわたる青さだった。

覚めたばかりで朦朧とする意識をはっきりさせる為に首を振るう………自分は確かあの時連れ拐われ、途中で気絶させられた筈だった。

少女「…………?………」

しかし、自分が今居るのは馬車の中でも檻の中でもない。手錠や鎖も付けられていなかった。

少女「…………なにが……」

何があったのだろう?という疑問はすぐ後ろからの声に遮られた。

メイド「………ねぇ……どうしよう……どうしよう?」

少女「……メイドさん?」

聞き慣れた声が聞こえて安堵する、どうやら自分は助かったらしい、理由は分からないがみんなの居る所へ戻って来られたのだ。

メイド「………息してない……血が……!!どうしよう?ねぇどうしよう!?」

少女「………ぇ…?」

彼女の悲壮な呟き、そしてようやく気付く………その膝の上で冷たく、血にまみれた自分の主人……大切な人の姿を。

青年「…………………私達が駆けつけた時にはもう……」

女兵士「………馬鹿が……無茶な事を……!!」


少女「…………………え………」



穏やかな陽射しが注ぎ、風がそよぐ丘に少女達の悲鳴が響いた。


つづく


本編は次スレへ(´・ω・`)

残り数十レス番外編やってから立てる。

30から40残してくれれば大丈夫(´・ω・`)そんじゃおやすみ


おいおい(;・ω・)なんじゃこりゃ……次スレ立てて貼るまでレス禁止、多少余裕あるなと思ったらもうギリギリやんけ


番外編

『前世占いを面白半分でやったら酷い目にあった』



それは少女ちゃんの為にメイド服を仕立てに行き、何故かメイドさんとも合流して三人で街を遊び歩いていた時の話である。

見世物小屋の見物や露店商の冷やかし等をしながら街を歩き、さてそろそろやることなくなって来たぞという時、表通りから外れた狭い路地の片隅にひっそりと座る婆さんに声を掛けられたのだった。

占い師「そこな若人よい、ちょいと占ってみんかの……」

男「………んん?俺達?」

薄っ気味悪いしわくちゃの婆さんだったのでぶっちゃけ気乗りはしなかったのだが……

男「………占いねぇ……そういうの商人としちゃあんまり信じられないしなぁ……二人はど…………」


メイド「………………」キラキラ

少女「…………」ソワソワ

男「…………」

無言だったがすぐ分かった、二人は興味津々だった。女は占いの類いは大好物だという例に二人も当てはまったらしい。

男「占いって言っても何占ってんの婆さん?」

占い師「恋愛星座手相動物前世、守護霊なんでもええよい」

男「………えらく幅広いな、インチキくせぇ」

占い師「そう言わんとやっとくれい、安くしとくよ」

まあ、端からこの手のもんは信じるつもりはないのでインチキだろうが何でも良いというのが率直な意見である。二人が満足してくれりゃ別に構わないだろう。

男「………だそうだけど、何の占いが良いの二人は、好きなの選んでいいよ」

メイド「ど、どうしましょうか?何が良いですか?」ソワソワ

少女「え、えと…わ、わたしは何でも良いので選んで貰えれば………」ソワソワ

メイド「えっと……私が選ぶんですか?どうしよう何が良いのか……あなたは本当に何でも良いのですか?これが良いっていうのは……」オロオロ

少女「えっ!?その、ホントに何でも良いですっ!!全部興味ありますしわたしじゃ選べなくて……」オロオロ

メイド「……わ、私だって目移りして……えぇっと……」モジモジ

あーでもないこーでもないと選択権の譲り合いというか押し付けあいをする二人、ぶっちゃけ全部やったって構わないがそのつもりは無いらしい、どれかひとつしか出来ないと勝手に判断して揉めているのであった。

男「………まぁ、時間も時間だしそろそろ帰んなきゃならないからひとつだけかな、さて……」

このまま二人に決めさせてはいつまでも決まらなそうなので失礼ながら勝手に選ばせて貰う事にした。女の子は買い物だけでなくこういう選択肢系の物はマジで時間掛かるんだなぁと感慨深く頷きながら占い師の婆さんにどれをやるのか告げる。

男「じゃ、前世占いで良いや、婆さん占ってくれ」

メイド「えっ!?」ガーン

少女「……あっ…」ショボーン

男「……ん?」


男「あれ?違うのが良い?」

メイド「………べ、別に平気です…」

少女「………だ、大丈夫です」

何やらガッカリしているが何故なのかは分からない。どれでも良いから悩んでいたのではなかったのか。

占い師「若い娘子は大抵恋愛占いやら結婚相手の占いやらするもんじゃがの、ホンマに前世占いで良いんじゃな?」

男「ああ、なるほど」ポンッ

言われてみればその通り、少女ちゃんはともかくメイドさんに至っては恋愛云々など毛ほども感じさせないのでまさか興味無いのかと思ってもいたのだがもしかしたらもしかするかもしれない。だがしかし。

メイド「えっ、その、べ、べべ別に恋愛占いがしたいわけでは……」オロオロ

少女「………えっと……」モジモジ

男「違うって婆さん、いいよ前世占いで」

メイド「………あぁ………」ショボン

少女(……動物が良いなぁ……)モジモジ

占い師「………まあ良いさね、そんじゃ銀貨1枚ね、三人分」

男「たけぇ!!安くしとくんじゃないのかよ!?」

占い師「ワシの占いはようけ当たるけんの、当然の値段じゃい」ヘンッ

男「……ちっ!!まあ良い、さっさと頼む」チャリーン

占い師「毎度あり、そいじゃそこなチビ娘、お前さんからじゃ」チョイチョイ

少女「あっ、は、はいっ!!」トタトタ


占い師「さっさっさーのほいさっさぁー!!」クイクイ

男「やっぱりインチキだろババア」

占い師「………時は魔が徘徊する混沌の時代、禍々しき邪悪に立ち向かう救世の冒険者…………おお、なんと!!」クワワ

少女「………」ドキドキ

占い師「お前さん……前世はどえらい大物じゃぞい、さる高名な賢者様じゃ」ゴクリ

少女「はぁ………賢者様ですか?」

占い師「うむ」コクリ

男「へぇ……賢者様ねぇ……どんな人だったか分からないのかな」

占い師「ちょいとまっとくれ、もう少し深く探ってみよう………」ホワホワーン


『………ゆ、勇者のばかやろぉ……ひっく……うい……ふぇぇぇ……』


占い師「………酒に溺れて恨み節呟きながら泣いとるのう」

少女「…………えぇー?」ガーン

メイド「なんですかそれ……なんで……」

占い師「ちょいとまっとくれ、まだ別の場所が映っておる……」ホワホワーン

『やめてよぉ!!僕男だよ!?それ女の子の装備じゃないか!!』


占い師「女装させられておるの、どうやら男でかなりの女顔だったようじゃ……あっひんむかれて泣き出したのう」ジー

少女「」


男「……………偉い賢者様なんだよね?」

占い師「そうじゃぞ、この御方ほどの賢者様は他にはおらんというぐらいに素晴らしい方じゃ」コクリ

男「あんまり尊厳がないなぁ」

少女(………女の子の格好した男の人が前世……)ズーン


少女「………」ショボーン

占い師「それじゃ次じゃな、そこな冴えない殿方、お前さんじゃ」クイクイ

男「冴えないは余計だ」

占い師「じゃ、占うとしよう……わっ♪わっ♪わたしはうらないばばぁ♪きゅーとなきゅーとなうらないばばぁ♪」クネクネ

男「おいそれやめろ」


占い師「…………時は魔が徘徊する混沌の時代、禍々しい邪悪に立ち向かう救世の冒険者の姿が見える………おお、なんと!!」クワワ

男「またそれかよ、もしかして誰にでもそれ言ってません?ねぇ?」

占い師「…………神に支えし女性の僧侶じゃな、ふむ……この御方も相当に高名なお人じゃ」コクリ

メイド「女の人なんですか……」

占い師「うむ、股にニンジン突っ込んだ変態女僧侶じゃ」コクリ

男「」

メイド「…………ニンジン?」

占い師「ナスでもええぞい」

男「」

メイド「………うわぁ、前世から……」ササッ

男「ちょ!?流石にそれは酷くないかなメイドさん?!ぜ、ぜぜ前世はかんけーし!!」ブンブン

少女「仲間ですねご主人様」ニッコリ

男「そのカテゴリはなにか引っ掛かるんだけども!?」ガーン


男「」ズーン

占い師「そいじゃ最後じゃの、そこのピチピチギャル、こっち来て座るんじゃ」クイクイ

メイド「……うっ……」ジリッ


[前世が変態だったゾーン]
↓↓↓↓
男「オイデオイデ」フリフリ
少女「ナカマナカマ」チョイチョイ


メイド「………わ、私は絶対違いますからね!?だ、誰がそんな変な前世なんか…!!」クワッ

占い師「見てみりゃ分かるわい、ホニャララハラヘッターーー!!!!」カッ!!

男「その呪文言わなくて絶対良いよね?違う?」


占い師「ズバリ、ゴリラじゃな」


メイド「」


占い師「ゴリラ」

メイド「」



男「ぶふぉっwwww 」 ブフー

少女「人間じゃないんですね……」

メイド「」


男「あははははははははははははははは!?!?ご、ゴリ…!?ぎゃははははははははははははは!!ご、ごめっ…まさかのてこ的中過ぎてwwwww いひっwwww はひっwwww wwww wwww wwww あははははははははははははははは!?!?!?はらいてぇ!?ひーっ!!ひーっwwww あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?!?」ビッタンビッタ

メイド「……………」

占い師「こんなもんかの、そんじゃ今日は店じまいじゃ、また来ておくれ」スタスタ

少女「……ご、ご主人様」オロオロ

メイド「…………」

男「だっ、だってwwwwこ、子供の頃のあだ名がまさかのwwwwダメだ堪えられんwwwwあははははははははははははははは!?!?」バタバタ

メイド「…………」スタスタ

男「wwwwwwwwwwww……んん?」


堪えられず大爆笑する俺だったが突然彼女が近付いてきて両手でどんっ、と押され転ばされてしまう。

男「いで!?ちょ…なに………」

メイド「……………」ジワッ

転ばされた体勢のまま彼女を見上げてみるとどうだろう、膨れっ面で涙目になって俺を睨んでいるではないか。

しまった。思わず笑ってしまったがかなりショックだったらしい、両手でスカート握り締めて今にもぼろぼろと大粒の涙を流さんとしている。これはいけない早く機嫌を取らないと小さい子供みたくガチ泣きしかねない。

男「あー……えーとそのぉ……」

メイド「…………信じないもん」グス

路地裏の更に暗くて狭い方に歩いて行ったと思ったらしゃがみこんでなんかブツブツ言い出した。これはいけない、早くなんとかしないとせっかくセクシーに育った彼女のイメージがぶち壊しになってしまう。

少女「ご主人様……どうしましょう?」

男「……………うーん」キョロキョロ

こういう時は好きな物をプレゼントすると女性は機嫌を直すものである。故に……


男「め、メイドさん?ほら見て、珍しい果物売ってたから買ってきたよ!!」ソワソワ

メイド「………………」ジロッ

男「南の島国な果物なんだって!!ほら、メイドさん果物好きじゃん?ね?」ウロウロ

メイド「…………なんて果物ですか?」

男「バナナ」ニコリ

少女「……………」


結論、彼女は食いしん坊で食べ物……特に果物大好きである。


メイド「……………」

男「はい、食べていいよ」

メイド「………あ、ありがとうございます……」


メイド「…………おいしい」モキュモキュ


男「………オウイエ!!」ガッツ

少女「それで良いんですね、メイドさん」

無事ご機嫌取りを終えた俺ではあったが、占いの類いはもうこりごりなのでやらないと誓ったのだった。


メイド「全部食べて良いんですか?」モキュモキュ

男「うん、イイヨイイヨー」コクリ

少女(………バナナって確か……まあ、メイドさんがそれで良いなら……)



番外編その1おわり


番外編その2

『御先祖様達の冒険』


時は魔が徘徊する混沌の時代!!

人々は魔族と呼ばれる異界の住人達により苦しめられていた!!

そして魔族達の王、魔王と名乗る強大な破壊者がこの世界の魔法という力の源である魔石を奪い、我が物とし更なる混沌と恐怖がこの世界を支配した!!



………だが!!



勇者「天界の神に授かりし使命、魔王を討つ為に俺は旅立つ!!」


一人の少年が神の祝福と使命を与えられ、立ち上がった!!


勇者「さあ行こう!!仲間達が居ればどんな苦難も乗り越えられる筈だ!!」

ショタ賢者「頑張りましょう勇者!!」

オカマ戦士「魔王なんか勇者ちゃんの敵じゃないわん……アタシたちも付いてるもの!!」クネクネ

女僧侶「………ちょっと不安ですけど、勇者が居るなら大丈夫だよね?」


こうして四人の冒険者達が打倒魔王をかかげ祖国を旅立った!!


勇者「魔王は強い、今の俺達ではとてもではないが倒せないと神様は言っていた!!だから各地に眠る精霊達にも力を貸して貰いに行こう!!」

ショタ賢者「精霊ですか……魔法とは別の理の力を司るとも言いますが……」

女僧侶「精霊様の加護を授かれば魔物達との戦いも少しは楽になるのかな……」

オカマ戦士「魔物って強いものねぇ……少しでも楽はしたい所ね」

勇者「実際に会ってみないと何とも言えないが……世界の混乱を正す為だ、精霊達だってきっと力を貸してくれるさ」ニッ

女僧侶「……うん、そうだね勇者」ドキッ


………………

火の精霊『我が試練、よくぞ耐え抜いた勇者とその仲間達よ、さあ我が加護を授けよう!!』ゴォォォ!!

勇者「……おお、精霊の加護は色々種類が選べるみたいだぞみんな!!俺は力の加護を授かろうかな」フム

ショタ賢者「なるほど、これは悩みますが……僕は呪文詠唱時間短縮化の加護を」コクリ

オカマ戦士「魅力増加よ!!それしかないわ!!」クワワ

勇者「戦士は十分強いからな……それでもいいが、僧侶は?」

女僧侶「えっと、それじゃあおーオートヒーリングを付加して貰おうかな」

ショタ賢者「オートヒーリングですか……ですけどそれってあまり回復しませんよ?自動で肉体が修復するとはいえ効果は微々たるものです」

女僧侶「いいのこれで、私の役目は皆の回復でしょう?だったら私は少しでも死ににくくならなくちゃ」ニコリ


…………

水の精霊『水面に巣くう魔の配下をよくぞ退けてくれました勇者よ、さあ……私の加護を授けましょう』ざぱーん!!

勇者「筋力アップ」

ショタ賢者「詠唱短縮化」

オカマ戦士「魅力増加よぉ!!!!」

女僧侶「自己修復効果アップ!!」

…………

大地の精霊『我が大地に住まう民達を救ってくれて礼を言おう勇者達よ、さあ我が加護を授けよう!!』ゴゴゴゴゴ……

勇者「筋力アップ筋力アップ」ムキャ

ショタ賢者「詠唱短縮化詠唱短縮化」ブツブツ

オカマ戦士「誰がなんと言おうが魅力アップじゃぁぁぁ!!!!」

女僧侶「自己修復効果アップ!!!!」


風の精霊『さあ私の加護をry…

勇者「筋力」

ショタ賢者「詠唱短縮化」

美形戦士「魅力アップよ」

女僧侶「自己修復効果アップ!!まだまだ足りない!!」


雷の精霊『我がry
木の精霊『我がry
光の精霊『我がry
闇のry

勇者「筋力アップ筋力アップ筋力アップ筋力アップ!!!!」

ショタ賢者「詠唱短縮化詠唱短縮化詠唱短縮化詠唱短縮化!!!!」

美貌の戦士「魅力アップ魅力アップ魅力アップ魅力アップ」ウッフン

女僧侶「自己修復効果アップ!!!!!!!!」


………で。

勇者「見てみて、オリハルコンを無造作に引き千切れるんだけど」バキッ、グシャァ

ショタ賢者「詠唱短縮化極めて詠唱破棄になりました、極大呪文八発同時発動可能です」

初代雄姉様「美しい……」ウットリ

女僧侶「超速再生ですねここまでくると」

勇者「…………よし、いよいよ魔王を倒す為に奴の居場所へと乗り込むぞ!!」

ショタ賢者「おー」

女僧侶「い、いよいよね…」ドキドキ

初代雄姉様「美しい……美し過ぎるわ」ウットリ


勇者「ここからの戦いは更に熾烈になる!!で、おれが考えたフォーメーションでこれからは戦う!!」キリ

女僧侶「フォーメーション?」


………………


暗黒騎士「……………」ジャキッ


勇者「敵だ!!行くぞフォーメーション『僧侶総受け』!!」ガシッ

女僧侶「えっ」

暗黒騎士「…………」ズハバババ!!!

女僧侶「ちょ!?盾!?わたし盾なの勇者!?」ガボーン

勇者「がんば」ニカッ

女僧侶「わたし女の子なんですけど!?わたし女の子なんですけどわたし女の子なんですけど!?!?」ブンブン

ショタ賢者「ま、まあ傷は即治りますし……一応防御膜は張っておきますね?」フイッ

女僧侶「」

初代雄姉様「美しい…」ウットリ


暗黒騎士「………」ズハバババ!!!


女僧侶「ぎゃーーーーー!?!?」ビクンビクン

勇者「僧侶の(服の)犠牲を無駄にするな!!今の内に仕留めるぞ!!」ダッ!!

ショタ賢者「魔王戦まで無傷で行けそうですけど……ほんとに良いんですかこれ……」

女僧侶「よくない!!よくないよすっごい痛いんだからね!?治るけど痛いんだからね!?」ウルウル

勇者「がんば」ニカッ

女僧侶「……こ、この脳筋野郎…!!」ワナワナ


初代雄姉様「美しい!!」ワナワナ

女僧侶「あんたは真面目に戦いなさいよこのオカマぁ!!」ウガー

ドラゴン「ギャーーース!!!!」ガブガブ

女僧侶「ふぎゃーーー!?!?」ブチブチ

勇者「僧侶がもぐもぐされてるうちはブレス攻撃は来ない!!今の内だ!!」


………………


ゾンビ群「「「あ"ーーー」」」ガブガブ

女僧侶「ひぎぃぃぃぃ!?!?」ジタバタ

ショタ賢者「ご、ごめんなさいまとめて蹴散らします、『核熱(アトミックレイ)!!』

ゾンビ群「「「」」」」ジュッ

炭「」ジュッ


……………

オーク達「「ぶひぃぃ」」カクカク

女僧侶「ひ、ひっ!?流石にそれは待って!?異種間が初って最悪……」ズササッ


初代雄姉様「美しい、美しいったら美しい!!」プルプル

女僧侶「助けろやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ダンダンダンッッ!!

そして、そんなこんなで着実に魔王の元へと迫って行く勇者達だった!!


…………

魔王「ふはははは!!よくぞここまで来たものだな愚かなる神の手先共よ!!かくなるうえは我自らが貴様らの魂もろとも永遠の闇へと引きずりこんでくれるわ!!」

ショタ賢者「最後の戦いです!!行きましょう勇者!!みんな!!」

初代雄姉様「男は根性女は度胸!!そしてオカマは最強じゃあ!!」←叱られた

女僧侶「………うへぇ痛い事してくるんだろうなぁ……あれ?勇者?」クルッ

勇者「かわいい」ポッ

女僧侶「…………は?」

ショタ賢者「えっ」

初代雄姉様「私が!?」

女魔王「………ん?」


勇者「魔王かわいい」

女僧侶「」

ショタ賢者「………勇者?」

初代雄姉様「私の方がかわいいわよ!!」プンプン

勇者「決めた!!俺は魔王を口説き倒す!!覚悟しろ魔王!!」クワワ

女魔王「な、なにこいつ……」ビクッ

女僧侶(´д`)


女魔王「………戯れ言を、『雷光(ボルテッカー)!!』」キュゴッッ!!

ショタ賢者「対属性無効結界八種同時展開」ピキピキピキン

女魔王「えっ、な、ならば『原子崩壊(ブレイク・アマルテア)!!』」

ショタ賢者「『相殺(インフィニティ・アマルテア)』」

バキーン

女魔王「えっ」


勇者「魔法に関しては賢者がいる限り通用しないぞ魔王!!さあ、今行くぞ!!」ガシッ

女僧侶「あっ盾には使うのかよ」ブラーン

女魔王「くっ、くるな!!ええいこれならどうだ!!奪った魔石の力を最大限に発動させねば使えぬ最大の究極魔法だ!!喰らえば魂ごと粉々だぁ!!防げるものなら防いでみよ!!『虚無(ゼロインフィニティ)!!』」

ショタ賢者「いけない!!あれは相殺出来ない!!勇者!!」

勇者「ん」ズイッ

女僧侶「」


バーーーン



勇者「…………おお、ほんとに粉々だ」


女魔王「………お、おま……普通仲間盾にするか?本気で魂ごと消し飛ぶ魔法……」


モコッモコモコモコ……にゅっ


女僧侶「い、痛いぃ!?痛いよう……ほんきで死ぬかと思ったぁ」メソメソ


女魔王「」

勇者「ん、おつかれ」

女僧侶「………もうやだこんな能力」シクシク


勇者「さあ近くまで来たぞ、観念しろ触らせろキスさせろ!!」ジリジリ

女魔王「よ、よるな!?このっ!?」ジャキッ

勇者「ふんっ!!」バキバキッ

女魔王「す、素手で鎌が……なんだそれは!?」

勇者「愛の力だ」

ショタ賢者「いや、精霊達の加護でしょ」

勇者「さーて、じゃあさっそく……おお、玉座の裏に自室があるのかこれ?ちょうどいい」ガシッ

女魔王「ひ、ひぃ……」ジタバタ

勇者「あ、そうだ、奪った魔石出せ」

女魔王「…………くっ…!!」

勇者「まあいいまさぐって探す」ワキャワキャ

女魔王「あっ、はひっひぐ!?にゃあ!?」ビクン

勇者「これか!!」ガシ!!ビキビキ……バリーン

ショタ賢者「あっ」

初代雄姉様「あっ」

女僧侶「魔石って世界中の魔法の源なんじゃ……」

勇者「やべ……壊れた」テヘッ

女魔王「」


ショタ賢者「…………『火炎(ファイヤーストーム)』」スカッ

ショタ賢者「……火炎!!火炎!!」スカッスカッ

只のショタ「ちょっと勇者ぁぁぁぁぁ!?!?なにしてくれてんすかーーー!!!!」ガーン

勇者「いやあ、まあ大丈夫じゃね?魔法なんかいらないって」

ショタ「ふ、ふざけないで下さいよぉ!?僕ただ女顔なだけの無能になっちゃったじゃないですかーーー!!!!」ガーーン!!

女魔王「」

勇者「いやあ、はははははは」


その後、まおうはゆうしゃの下半身にひれ伏して世界は平和になりました。

おしまい。




………………


女僧侶「………ふぅ……冒険の記録を連ねてたけど、ひどいなこれ……書き直そ、もっと万人受けするラストにしなきゃ、いいよもう捏造で」カキカキ

女僧侶「………ちくしょお……勇者のばかぁ……あんな性悪女にたぶらかされやがってちくしょぉ……」ウルウル


女僧侶「わたしの方がお得でしょうが!!毎回処女膜破れるとか男は最高だろうが!!ぐうう……」ポロポロ


ショタ「いや、貴女のそういう所察してたから勇者はノーサンキューだったんじゃ……」

女僧侶「うっさいわね!!あんな酷いことされまくって責任取らないとかどうかしてるもん!!私は悪くない!!」ガルル

ショタ「………まあ、あれは意外でしたけどねぇ」ハァ

女僧侶「………ちくしょお、ちくしょお……もう女なんかやだ、生まれ変わったらゼッタイ男になってやる……膜再生しないように野菜仕込んでんのなんか惨めすぎる……」メソメソ

ショタ「………うわぁ」

女僧侶「そうでもしなきゃ教会のエロジジイ共に処女懐妊の聖母に仕立てられちゃうんだもん!!すっごい苦労してんだからぁ!!」ビッタンビッタン

ショタ「……そ、そうなんだ……」


一方。

男の子「ままー」

女の子「ママー、だっこー!!」

魔王「はいはい、ふふふ……でも待ってね?下の子におっぱい上げてるからねぇ」

赤ん坊「あぶー」

少年「おかーさん!!クマしとめたー!!お肉たくさんとれたよ!!」ズシッ


童女「おかあさんこっちも!!ほら、ワニー!!」ズルズル

魔王「あらあら、今日は御馳走ね?」クスッ


女の子「わーい!!」ピョンピョン

男の子「にくー!!にくー!!」トタトタ

魔王(……………ふっ、くはははははは!!どうやら精霊の力とやらは我の魔族の血と混ざり会うと子供にも力が受け継がれてしまうようだな!!はははははは!!一度は世界征服の野望は忌々しき我が夫によって閉ざされてしまったが次は、次こそは……我が子供達の力を使い野望を実現させてみせようぞ!!なーに、放っておいても勝手に無理矢理我が軍団となる子供はポコポコ産まされてしまうからな、戦力はどんどん膨れ上がって行くだろうよ!!ふはははは!!!!)ヨチヨチ

赤ん坊「きゃっきゃっ」

男の子「ぱぱー!!ママが悪い顔してるー!!」

勇者「ん?そうかそうか、またお仕置きが必要か?」ポン

魔王「あう」ビクッ

勇者「子供達ー、また家族増えるから赤ん坊少し見てておくれ?はい」

童女「おとうさん!!今度は双子の弟が欲しいな!!」ワクワク

勇者「はっはっはっ、まかせろ」ニカッ

魔王「ひ、ひぃぃ……」ビクビクッ


晩年、勇者と魔王は仲良く年老い(魔王も寿命は同じだった)沢山の子供達とさらに沢山の孫たちに看取られ息を引き取るまで幸せに暮らしたそうな。

魔王「わ、わたしはお前なんかに屈しは……にゃ、にゃあ!?」ビクビクッ

勇者「いやー、いつまで経っても飽きない身体だわー、打てば響く」

魔王「うぐぅ……/////」

その勇者と魔王の子孫は後に戦士の部族と呼ばれる事になる。


おわり

男「売られてた奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまった」3
男「売られてた奴隷にガチ惚れして衝動買いしてしまった」3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436366542/)

次スレ(´・ω・`)

じゃこのスレはこれで終わり。サラダバー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月03日 (金) 00:42:06   ID: cdRBe3gO

はよしろ。

2 :  SS好きの774さん   2015年07月05日 (日) 03:54:44   ID: sd8kejVj

毎日の楽しみ!

3 :  SS好きの774さん   2015年07月05日 (日) 09:48:20   ID: KUugTKoq

ゴリラw

4 :  SS好きの774さん   2016年02月08日 (月) 02:44:11   ID: WPZe4tnv

勇者げすいwwww

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