妹「フッ……『おはよう』か。良い響きだ」(16)

妹「……もう朝」

妹「うー、まだ眠い」

妹「顔洗わないと」

兄「……なんだ、起きてたのか」

妹「あ、兄さん」

兄「さっさと顔洗いな。母さん達が待ってるぞ」

妹「顔を洗って待っていろ!ってやつだね!」

妹「そういえばなんでここに?」バシャバシャ

兄「妹さんをお越しに来たに決まってるろ」

妹「へへ、ありがとー」

兄「ま、母さんに言われた事故」

妹「なるほど……」フキフキ

妹「じゃあ行こっか」

兄「うん」

妹「ああ、朝御飯の良い匂いがする……」

兄「今日はハムエッグだ」

妹「大好物!」

兄「さっさと食べないと遅刻しちゃうかもね」

妹「そういうこと言わないでよー」

兄「冗談やよー」

妹「むう」

兄「母さん、妹さん連れてきたよー」

母「ありがとねぇ、そろそろ出来るから待っててね」

兄「はーい」

妹「はーい」

母「妹さんも、」



母「おはよう」




キュピーン




妹「……」

妹「フッ……『おはよう』か」

妹「良い響きだ」

母「ほう、貴様も味わったか」

妹「何ッ!?」

母「『おはよう』……それは魔の言葉」

母「口に出す事で圧倒的な魔力を得る」

妹「何だと……」

母「我程の魔導師となると、無意識で発するようになる」

妹「な、つまり毎日魔力を本能で供給しているとでも言うのか!!」

母「無論」

妹「ぐぐ……」

母「まあ良い、実際に見ればわかること」

母「丁度我より優れた魔導師である奴の」

母「父さんの魔力が今供給されようとしている」

妹「……」

父「んじゃ、皆お先に」


父「行ってきます」



キュピーン



妹(な……これは!?)



母「はーい、行ってらっしゃーい」



キュピーン

母「ほら、妹さんも挨拶しなさい」

妹「ごめんごめーん」


妹「行ってらっしゃい」



ゾワァッ



妹(……!?何だこの感覚は!?)
父「ハハハ……君も達したか」

妹「父さん……!?ま、まさか!?」

父「そうだ。今の感覚が」

父「『魔力』が体に入る感覚だ」

妹「なんだこれは……力がみなぎる」

父「名付けるならば……『挨拶の魔法』」

妹「何……」

母「最近の若者は見知らぬ人だからと挨拶を交わさない、などという愚かな年代だ」

母「故に、その魔力は薄い」

父「大体高校生ぐらいが魔導師としての能力が発現する年だと言うのに、ね」ファサア

妹「くっ、老いた者が挨拶を多くするのも」

母「無意識なる魔力の供給だ」

父「ようやく能天気なお前でも飲み込めたようだな」

父「当然、その魔力は使用する事が出来る」

父「例えば……母さんの作ったこの冷めてしまった朝御飯」

母「我が力を注ぐとどうなるか、解るであろう」

妹「!」

母「ハァッ!!」



キュワーン



妹「こ、これは」

妹「ハムエッグが焼きたてになっている!?」モグモグ

妹「だが、そこまで1日で魔力を使い果たすのか?」

父「良い質問だ」

母「魔力は魔導師の運動量に比例して体を抜けていく」

父「魔導師は運動に魔力を使わねばならないのさ」ファサア

妹「引き篭りは挨拶を交わさない物が多いのも!」

母「運動しない故に供給は必要無くなるのだ」

父「だが魔力の供給には注意が必要だ」

妹「どういうことだ?」

母「『挨拶の魔法』はただ闇雲に言えば良いという物ではない」

母「適した状況で、適した態度で発する場合のみ魔力は得られる」

父「昼に間違えておはようと言っても得られぬし、話の中に挨拶の言葉だけが出るのも不可能だ」

妹「そうなのか」

妹「だが何故だ!何故2人はそこまで魔力について詳しい!?」

父「いずれわかるさ。いずれな……」

妹「くっ、私は所詮若輩者というわけか」

母「……さっさとご飯食べないと遅刻するわよー」

妹「あ、しまった!早く食べないと!」モグモグ

父「僕も会社に行かないと!じゃあね!」バタン

兄(うちの家族は何処か変だ)

今日はここまでッス

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