莉嘉「美羽ちゃん、一緒に時子さんから大人を学ばない?」 (52)



美羽「えっ? どういうこと莉嘉ちゃん」

莉嘉「もー、美羽ちゃんにっぶいなー。時子さんから、大人の魅力がとんなものかを、学ぶって事だよ」

美羽「それは分かるんだけど……なんというか、よりによってというか……何で時子さんから?」

莉嘉「大人を学ぶには、時子さんが良いって未央ちゃんから聞いたの!」

美羽「未央ちゃんが?」

莉嘉「そう」

美羽「そもそも、なんで未央ちゃんとそんな話に?」

莉嘉「んーとね。初めはお姉ちゃんとミニライブをやった時なんだけど――」


―――
――


美嘉『お疲れ様でーす!』

莉嘉『お疲れ様でーす!』




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スタッフ『お疲れ様でーす』



美嘉『今日のライブ、いい感じだったよ美嘉』

莉嘉『ホント、お姉ちゃん?』

美嘉『モチに決まってるっしょ』

莉嘉『えへへ、ありがとー! でもお姉ちゃんには、まだまだ遠いって感じだよねー』

美嘉『そんなことないよ、莉嘉もチョ―人気じゃん!』

莉嘉『でも声援がさー』

美嘉『えー、そんなことないよ? 莉嘉だってあたしに負けないくらいファンのみんなが応援してくれてるじゃん』


美嘉『みんな「可愛いー!」ってさ』


莉嘉『そう、それだよお姉ちゃん!』

美嘉『?』



莉嘉『私の事、みんな可愛いって言うんだよ?!』



美嘉『それがなによ? 莉嘉はファンのみんなから可愛いって言われるの、嬉しくないの?』

莉嘉『嬉しいけどさー……お姉ちゃんはさ、可愛いだけじゃなくて、かっこいいって言われるじゃん!』

美嘉『ああ、そう言う事』



美嘉『つまり莉嘉は、可愛いだけじゃなくて、カッコいいって言われたいんだ?』

莉嘉『そう、お姉ちゃんばっかカッコいいって言われるのはずるいー!』

美嘉『あはは。そう言ってる間は可愛いって言われちゃうよねー』

莉嘉『なんでー?!』

美嘉『だってそんなこと言う莉嘉、チョ―可愛いもん』ナデナデ

莉嘉『もー、お姉ちゃん止めてよー』エヘヘ



莉嘉『……ねえねえお姉ちゃん』

美嘉『何?』

莉嘉『お姉ちゃんにあって、アタシにないのって何かなー?』

莉嘉『やっぱりお胸? お胸がないからカッコいいって言われないのかな?』

美嘉『あはは。莉嘉ならこれからおっきくなるって』

美嘉『それにさ、かっこよさってのは、そういう大きさだけじゃないと思うな―』

莉嘉『でも、藍子ちゃんは可愛いって言われてるよ?』

美嘉『そこはノーコメント』





美嘉『だけどまー、大きいとか大きくないとかじゃないと思うんだよねー。カッコよさってのはさー』

美嘉『生きざまって奴?』キャハ

莉嘉『お姉ちゃん家でダラダラしてるじゃんー』

美嘉『それは今、関係ないでしょ』チョップ

莉嘉『あたっ』

美嘉『まあ焦んなくても、莉嘉だってカッコいいって言われるようになるって』

美嘉『あたしとしては、ずっと可愛いでもいいけどね』ニヒヒ

莉嘉『むー』



――事務所

莉嘉『うーん』

未央『なになに、どうしたの莉嘉ちー』




莉嘉『あ、未央ちゃん』

未央『ソファーで悩み顔だけど、何かあったの? お姉さんでよければ相談に乗るよ!』

莉嘉『あのねーー』



――
―――


未央『ふむふむ、つまり莉嘉ちーはかっこいいって言われたいんだね』

莉嘉『そうなの! お姉ちゃんは可愛いとカッコいい両方言われるんだもん』

未央『まあねえ。美嘉ねえは確かに、可愛いしカッコいいもんなあー』

莉嘉『だよねー!!』エヘヘ-

未央(姉が褒められるのはやっぱり嬉しいんだ。ホント可愛いなーもー)


莉嘉『可愛いって言われるのは嬉しいよ』

莉嘉『でもあたしも、お姉ちゃんみたいに可愛くてカッコいいって言われたいの』

未央『おお、言うねえ莉嘉ちゃん。それは美嘉ねえへのライバル宣言ととってもよろしいのですかな?』

莉嘉『ライバルじゃないって。お姉ちゃんみたいになりたいだけ! お姉ちゃんは私のお姉ちゃんだもん!』

莉嘉『ねえ、お姉ちゃんにあってあたしにないものってなにかな?』

未央『むむむー、そうだなー……』






未央『それはやっぱり、大人の魅力かな?』





莉嘉『大人の魅力?』

未央『そう、大人の魅力。やっぱりそう言う奴? を醸し出してると、かっこいいって感じると思うんだよねー』

莉嘉『それって、たたずまい? って奴かな?』

未央『そうだね! 佇まいは大事だと思う!!』

莉嘉『お姉ちゃんもたたずまいって言ってた!!』

未央『美嘉ねえも?』

莉嘉『やっぱりお胸も大事?』

未央『胸も大事だねー』

莉嘉『やっぱりお胸かー。お胸が無いと、可愛いとしか言われないんだなー』

未央(なんだろう、あんまり深く訪ねない方がいい気がする)






莉嘉『どうやったら大人の佇まいを手に入れられると思う?』

未央『そうだなー。いきなりは難しいと思うけど……ここは大人だーって思う人を真似たらいいんじゃないかな?』

莉嘉『お姉ちゃんとか?』

未央『もちろん美嘉ねえでもいいよ。でも例えば、他の人とかでもさー』

莉嘉『千秋ちゃんとか?』

未央『おお、いい線いってるねー』

莉嘉『瑞樹さんとか?』

未央『川島さんとかいいねー。超アダルト』

莉嘉『亜里沙さんとか?』

未央『カッコいいからはズレた気もするけど、いい大人だよねー』

莉嘉『時子さんとか?!』

未央『そうそう、チョー大人』





未央『……ん?』





莉嘉『ありかとうね、未央ちゃん!! 話聞いてみるよ』ジャネー

未央『あ、うん。頑張ってー……』




未央『……何か嫌な予感がするような』

未央『なんちゃって、考えすぎだよね!!』アハハー





未央『……考えすぎだよね?』



――




莉嘉「って訳なの!」

美羽(その中で時子さんを選ぶとは……未央ちゃんも驚いてるだろうなあ……)





莉嘉「せっかくお勉強するなら、みんなも一緒にどうかと思って、美羽ちゃんに声をかけたの!」

美羽「あはは、それはありがとう」

美羽「でも、カッコいいなら私も美嘉さんに負けてないよー?」エッヘン

美羽「なんて言ったって公演じゃ、かの織田信長を演じたんだからね!」オダハオダコラシイーゾー

莉嘉「え、うん。そうだね」トオイメ

美羽「カッコ良かったでしょ!?」

莉嘉「あれはスゴがったけど……カッコいいとは違うんじゃないかなー」

美羽「えー?」





美羽「……まあ、それはともかく」ゴホン

美羽「みんなって事は、他の子にも声をかけたの?」

莉嘉「そうなんだけど、みんな仕事とか予定入ってて駄目だって」

美羽「じゃあ、あたしと莉嘉ちゃんだけ?」

莉嘉「うんうん、他にも――」


仁奈「仁奈がいるでごぜーますよ!」


美羽「え、仁奈ちゃん!?」

仁奈「美羽おねーちゃん元気でごぜーますか!」ダキツキー

美羽「あはは、元気だよー。でもまさか仁奈ちゃんとは……」

仁奈「仁奈と一緒はいやでごぜーますか?」

美羽「そう言う訳じゃないんだけど……不安と言うか……」

周子「あたしもいるよー」ヒョッコリ

美羽「周子さんも?!」




美羽「でも周子さんって、十分に大人なような……」

周子「あたしも全然こどもだよー」アハハー

周子「ってもまあ、直接に声を掛けられた訳じゃないんだけどさー」

莉嘉「みりあちゃんと話してる時に周子ちゃんも一緒にいたの。みりあちゃんは用事があって駄目だったけど、代わりに周子さんが一緒に来てくれるって」

美羽「へえー」

周子「まあほら、時子さんに大人を学ぶってのはちょっと不安じゃん。ここはしゅーこちゃんが保護者役を買って進ぜようと思ってねー」

美羽「周子さん……」ソンケー

周子「それにちょっと、面白そうだしね?」

美羽「周子さん……」アキレー





―――
――


周子「って訳でさっそく、時子さんのごとーじょーでーす」

「おおー」パチパチパチ


時子「……なんなのこれ?」

周子「さらにー、時子さんのアシスタントとしてプロデューサーもお呼びしましたー」

「おおー」パチパチ

P「いや、ゴメン何これ?」

時子「ちょっと貴方、これはどういう事?」

P「俺に言われても困る。マジで」

時子「周子」

周子「では早速、本日の先生たる時子さんから一言ー」

時子「話を聞きなさい、周子。これはなんなの?」

周子「以上、時子さんからのお言葉でしたー」

時子「私帰るわ」スタスタ

周子「あーちょいまちー!」





――



時子「つまり私から、大人を学びたいって事?」

美羽「えーっと、まあそう言う事です」

P「いや、何で時子なんだよ」

時子「黙りなさい。貴方、私に何か不満でもあるの?」

P「不満というか。大人の魅力なら別の人に任せた方が……」

時子「あたしには大人の魅力がないって言うのかしら?」ギロリ

P「そう言う訳じゃないけど。その、子供には早いと言うか……」チラッ

仁奈「子供には、はえーですか?」キョトン

莉嘉「ひどーいPくん。レディを子供扱いしないでよ」ブー

周子「ひどーいPくん」

P「周子、茶化すな」





周子「という訳で、時子さんの大人の魅力を教えてちょー」

時子「嫌よ。めんどくさい」バッサリ

莉嘉「えー。いいじゃんー」

時子「そう言うのは、そこの豚にでも聞けばいいじゃない」

P「その呼び方やめてくれない?」

時子「黙りなさい」

莉嘉「Pくんは男の人だもん」

時子「大人の魅力なら、別に男でも関係ないでしょ」

周子「まあまあ、堅く考えないでさー」

時子「周子、あなた楽しんでるでしょ?」イラッ






周子「あたしも時子さんから学びたいだけだよー」

周子「ほら、時子さんに頼むのも、それだけ時子さんが魅力的だからだって。大人の魅力むんむんって感じ? だよねー」

莉嘉「うん!」

仁奈「そうでごぜーます!」

美羽(私は流されただけだけど……今さら言いづらい)

周子「ほらー、こうやって思われるのは悪く気分じゃないでしょ?」

時子「……まあ、そうね」

周子「ここにいるみんな、時子さんに期待してるんだから。少しでもご教授お願いできませんかねー」

時子「……」




周子「ほら、みんなもお願いしないとー」

莉嘉「お願い、時子ちゃん」ジー

仁奈「おねがいでごぜーます」ジー

美羽「お、お願いします」

時子「……はあ、良いわよ。退屈しのぎに少しだけ付き合ってあげるわ」

莉嘉「ホント!?」

仁奈「やったー!」

周子「さっすが時子さーん」




時子(……なんか上手く丸められた気がする)




P「なあ、時子」

時子「どうしたのよ」

P「なんというか、あいつらはまだ小さいんだから控え目にな?」

時子「向こうから頼んで来たんだから、私がやりたいようにやるわ」

時子「……まあ、入門編って所かしら」

P「流石は時子。何だかんだ分かってくれてるな」グッ

時子「そのしたり顔、やめなさない」イライラッ



周子「じゃあ改めて、時子さんでーす」パチパチパチ

「わー」パチパチパチ

時子「そのやる気のない感じ、止めてくれない?」





周子「ではまず初めに、時子さんの考える大人ってなんだと思いますー?」

時子「そうね……」







時子「豚共を調教することかしら」






P「ちょっと時子さーん?!」






P「しょっぱなから飛ばしすぎじゃないか?!」

時子「だまりなさい豚」

莉嘉「Pくんー。人が話してる時に遮っちゃダメだよ?」

時子「莉嘉の言う通りよ。発言を慎みなさい豚」

P「ここは挟ませてもらうよ!? あとブタブタ言うのやめてくれないか!?」

仁奈「プロデューサーがブタなら、プロデューサーをちょうきょうするんですか?」

美羽「ちょっと仁奈ちゃん?!」

P「ほら変な方向に話が広がった!」

時子「良い質問ね。そうよ」

P「そうよじゃねえよ!?」



莉嘉「Pくん調教されてるの?」

P「されてねえよ!」

美羽「え、プロデューサーさん……?」

P「ガチな感じで引かないで! 傷つくから!」

周子「あー、そうだったんだプロデューサー……」

P「周子、そこは茶化せよ!!」




時子「勘違いしないで。その豚が特別って訳じゃないの。豚はみんな調教するものなの」

美羽「えーっと、それって時子さんのファンのことですよね?」

時子「そこに限らないわ。この世には二種類の人間がいる事を理解しなさい」

莉嘉「二種類?」



時子「豚であるか、豚でないかよ」

P「その二択は極端じゃないか?」

時子「黙りなさい豚」

莉嘉「プロデューサーは豚なんだー」ヘー

P「違うから」ヘー、ジャネエ




仁奈「つまり豚の気持ちが分かればいいんでごぜーますか? だったら豚になればいいんでごぜーますね!!」

P「仁奈、変なこと言わない!」

仁奈「豚の気持ちはちげーでございますか?」

時子「豚になる必要はないし、豚の気持ちを理解する必要はないわ」

美羽「ファンの人の気持ちは理解してあげましょうよ……」

時子「その考えが甘いのよ」

美羽「へっ?」

時子「いい、アイドルってのはファンに媚を売るようじゃ駄目なの。ファンが媚を売って靴を舐めたくなるような存在になるべきよ」

美羽「おお……」カンシン

P「良いこと言ってるけどなんか違うからな!?」




時子「だから、豚の気持ちを理解する必要はないわ」

周子「ちょい待ってー時子さーん。あえて豚の気持ちになるものいい感じじゃなーい?」

時子「そう?」

周子「豚の気持ちを理解したうえで、その人たちに崇めてもらうのー。理解できるからこそ、うまく調教出来る感じ?」

P「何物騒な事を言ってるんだよ!? 」

時子「……なるほど、それも悪くないわね。残念ながら、私は好まないやり方だけど」

P「お前の好みじゃない事にこれほど安堵するとはな」

莉嘉「時子さんがやらないなら、あたしがやっていい?」

P「やっていい訳あるか!」

仁奈「仁奈もやるです!」

P「頼むから安堵させて!」

美羽「莉嘉ちゃんのPくんって呼び方、豚のピッグと被ってませんか!?」ハッ!

P「美羽、ちょっと黙って」




P「おい、時子。やり過ぎだぞ」ヒソヒソ

時子「ちゃんと抑えてるわよ」ヒソヒソ

P「もうちょいマイルドにと言うかな」

時子「じゃあ最初からあたしに聞かないで。頼んできたのは向こうよ」

P「つっても。もう少し抑えた感じでやれよなー、全く」ハアッ……

時子「ア゛ァッ?」イライライラ

時子「あたしにやり方を変えろっていうの、貴方」

P「時と場合を考えろって話だ。いい大人なんだから。そう言う所で大人を見せるのも大事だろ」


時子「うるさいわね」イライライライラ

P「そうカッカするなよ」




時子「……もういいでしょ、あたしは帰るわ」

莉嘉「えー、もう終わり?」

時子「後はそこの豚からでも聞きなさい」

P「あ、ああ。俺に聞けることなら何でもな。立派な大人ってのを教えてやるよ」

時子「……」チッ



周子「じゃあさー、最後にちょっと実演してみてよー」



時子・P「はっ?」

美羽「ちょっと周子さん!? 何言ってるんですか?」

周子「簡単にでいいからさー。みんなも見たいよねー」

莉嘉「みたーい」

仁奈「でーす」

P「ええぇ……」




時子「……いいわよ、やってあげる」

P「おい、本気かよ!」ヒソヒソ

時子「簡単にやってみせれば満足するでしょ?」ヒソヒソ

P「おお……しおらしい感じだな」

時子「大人らしい態度をとれって言ったのは、何処の豚かしら」

P「はは」

時子「……まあ、たまには貴方の言う事も聞いてやるわ」

P「助かるよ、時子」







P「なんだかんだ言って、お前も事務所来てから丸くなったもんなー」ハハハ


時子「……ア゛ァ?」ア゛ァ?



時子「私が丸くなったですって?」

P「いや、だってそうじゃないか。昔のお前ならもっと厳しく罵倒したりとかさー。こいつらの前でも平気でやってそうじゃん」ハハハッ

時子「……それは、あたしを馬鹿にしてるの?」

P「違うって。ただちゃんと弁えるようになったって事だよ。まあよろしく頼むよ」カタポーン

美羽(なんか雰囲気が……)

時子「なれなれしく触らないでくれないかしら……」ワナワナ






P「大人だろー。これぐらいでいいじゃんか時子さまー」ハッハッハー

時子「」プッツーン




時子「ええ、そうね。じゃあ見せてあげなきゃね、大人の『私』を……」

P「?」

時子「それから、やる前に。『プロデューサー』に一言言っておくわ」スッ

P(?! 豚じゃなく、プロデューサーって呼ぶなんて。どんな心境の変化が!?)

時子「あのね」

P「お、おう」





最近、豚のくせに調子に乗りすぎじゃないかしら?」


P「おろ?」



時子「少し、上下関係というのを思い出せてあげる」ニヤリ

P「」ゾッ





P(凄く嫌な予感がする……)

P(いや待て、仮にも仁奈や莉嘉の前だ。そこまできつくはやらないはずだ……多分)

時子「じゃあ行くわよ」ビシッ

美羽(え、鞭?)

周子(一体何処から……?)




時子「まず豚、こう言いなさい。『私は愚かで惨めな豚でございます』」





P「はっ、なんでそんなこと?!」

時子「出来ないって言うの?」

P「いやいや、いくら何でもさ……」ハハハ

時子「そう……分かったわ」

P(あら、あっさりと……?)





時子「分かった、あなた達? これが大人よ」

P「へ?」




時子「自分が少しでもやりたくない事があれば、言い訳を並び立て逃げる。それがたとえ仕事であろうともね。大人っていうのはそう言う事」

P「ちょっと、時子!?!?」


莉嘉「大人ってそうなの?」

仁奈「そういうのが大人でごぜーますか?」

時子「そうよ、あなた達も覚えはない? この豚に何か用事をつけられて冷たくされたこととかは?」

莉嘉「そういえば、一緒にご飯食べよーって言ったのに会議で無理って言われた……」

仁奈「仁奈もこの前お出かけするはずだったのに、急な打ち合わせが入ったって言われました。あれって……?」ウルウル

P「ちょ、ちょっ、っちょ?! 待て待て、あれは本当に会議だったし! 仁奈の急な打ち合わせも本当だって!!」

時子「さあ、何所まで本当なのかしらね?」

P「全部本当だよ!!」




P(しまった、仁奈たちが居るから大したことはしないと思ったが、それを逆手に取られるとは?!?!?
  時子……恐ろしい子ッ!!)

時子「いい、よく分かって? これが大人――」

P「分かった分かった、やるから!!」

美羽「え! やるんですか!? ここは大人しく引いた方が」ヒソヒソ

周子「そーだよー。あたしが言うのもなんだけど、ちょっとヤバげじゃない?」ヒソヒソ

P「いいか美羽、周子。お前等は大丈夫だろうが仁奈や莉嘉はまだ幼いし、他人に影響を受けやすい。ここで逃げたら大人ってのは言い訳ばかりする存在だって思われちまう……あいつらに、そんな希望がないことを思わせたくない」ヒソヒソ


P「それに、ここで立ち向かわなきゃ時子に負けた事になるだろ!」ヒソヒソ

美羽「立ち向かった方が負けじゃないですか?」

周子「うんうん」コクコク




時子「何を話してるの、やらないならそれで良いわよ? 立派な大人を見せられて良かったじゃない?」

P「いいや、やらしてもらう!」

時子「へえ」

美羽「あー……」

周子「しゅーこちゃんしーらない」



時子「じゃあ言いなさい、『私は愚かで惨めな豚でございます』って」

P「私は……愚かで惨めな豚でございます……」

時子「ハァ……見たかしら? これが大人よ。私は真剣に真面目に取り組もうとしてるのに、こんなダラけて気持ちが入っていない言い方をするの。表じゃ頑張るけど、裏じゃ手を抜く、これが大人」

P「おい!?」

莉嘉「そう言えば、お姉ちゃんも家でダラしない……」

P「美嘉もちゃんと頑張ってるからな!?!?」

P(時子オオォォォォ!!!!  コイツ!! 使えるものは何でも使う気か?!?!)




時子「あなた達もこの豚から立派な大人を見習うのよ」

莉嘉「それが大人なんだー」ヘー

仁奈「大人は手をぬくんでごぜーますね」ヘー

P「ま、待つんだ!」

時子「ア゛ァ?」

P「ちゃ、ちゃんとやる。ちゃんとやるから」

時子「人にモノを頼む態度ってあるんじゃない?」


P「お、お願いします。私に……」

時子「私? 貴方は何なの? ちゃんと口にしなさい」

P「こ、この豚にもう一度チャンスを……」

時子「なに、聞こえないはねグズ」


P「このグズな豚にもう一度チャンスを下さい!!」




時子「ふふっ、惨めね。いいわよ、もう一度チャンスを上げる」


時子「さあ言いなさい、『私は愚かで惨めな豚でございます』と」

P「私は、愚かで惨めな豚でございます……」

時子「それが貴方の限界?」

P「私は愚かで惨めな豚でございます!」

時子「もっと感情を込めて!」ビシッ!

P「私は!! 愚かで!! 惨めな豚でございます!!」

時子「もう一度!」ビシッ!!

P「私は愚かで惨めな豚でございます!!」

時子「愚かなだけ!? 違うでしょ!!!」

P「私は愚かで惨めでグズな豚でございます!!!!」

時子「そう! そうよっ!」ビシッ!



時子「もう一回!!」ビシッ!

P「私は愚かで惨めでグズな豚でございます!!!!」

時子「『自分などに時間を割いて頂きありがとうございます!』」

P「自分などに時間を割いて頂きありがとうございます!!」

時子「本当にそう思ってるのかしら!?」ビシッ!!

P「自分などの愚かな豚に時子さまの大事な時間を割いて頂きありがとうございます!!」

時子「どれだけ価値があるか分かって?!」

P「はいっ!! 時子さまの輝く大事な一瞬を割いていただけることを至極の喜びと――」

時子「違うわ!! 私は輝き続けるの!!! 一瞬では終わらないわ!!」ビシンッ!

P「永ごうなる輝きに僅かでも触れられてありがとうございます!!!」




時子「本当にそう思ってるの!?」

P「本当でございます!! 本当でございます!!」

時子「ならこう言いなさい!!」

時子「『時子さま、どうか哀れなこの豚を躾けてください』!!」

P「時子さま! どうか哀れなこの豚を躾けてください!!」

時子「もっと強く鳴くのよ!!!」ビシンッ!!

P「時子さま! どうか哀れなこのグズ豚をその鞭で躾けてください!!!!」

「おい……」




P「どうか哀れな豚をその鞭で優しく甘く躾けてください!!!」

「おい、プロデューサー?」

P「私は豚でございます!! 豚でございます!!」



「プロデューサー!!」

P「えっ、あれ……あい?」

あい「何をしてるんだ、プロデューサー」



あい「君は一体、何をやってるんだ。変な叫び声が聞こえると思ったら」

P「え、っと、それは……」





莉嘉「」ボーゼン

美羽「……」メフサギー

周子「はははー……」ミミフサギー

仁奈「何が起きてるでごぜーますか? まっくらでよく聞こえないですよ」メミミフサガレー



P「」チーン





あい「時子くん。君はプロデューサーに一体何をしてるんだ」ギロッ

時子「別に? やれと言われたことをやっただけよ? ねえ周子」

周子「え、あ。うん。そー……かな?」

美羽「まあ、そうかもしれませんけど……」

時子「という訳? 私は何も悪くないわ」

あい「……美羽くんや周子くんが言うなら、間違いはないだろが」

時子「そう。プロデューサーも仕事をしただけ。『大人の仕事』という奴をね」

あい「?」




時子「あら、誰から連絡……」スッ

時子「なんだ法子か……ドーナツをねえ。今は気分がいいし、付き合ってあげようかしら」フフン

時子「それじゃあ失礼するわ」ガチャッ




あい「まったく、君は何をしてるんだか……」

P「こ、このことはその。みんなには……」

あい「分かってるよ。しかし、薫くんがいなくて良かった」

あい「もし薫くんに見せてたら、私も気が動転して、『然るべき人物』に詳細を語るところだったよ」ヒソヒソ

P「」ビクッ

あい「では、私も失礼するよ。君たちも程ほどにな」ガチャ



P「」ワナワナ




莉嘉「えっと、P君大丈夫……?」

仁奈「プロデューサー、どうしたんでごぜーますか?」

美羽「あ、あの元気出してください!! 迫真の演技でしたよ!!」

周子「そ、そうだよー。凄かった凄かった」イヤホント




P「お、お前らに……」

「?」

P「お前らに、こんな辛い思いをさせる仕事、絶対にとって来ないから……」ポロポロ



美羽(プロデューサーさんが……)


時子(泣いた……)




仁奈「プロデューサー!? どうしたんでごぜーますか?」オロオロ

P「いいんだ、いいんだ。ただ、大人だって、無性に泣きたくなる時があるんだ」




莉嘉「美羽ちゃん」

美羽「どうしたの、莉嘉ちゃん」

莉嘉「大人って、大変だね……」

美羽「そ、そうだね……」

莉嘉「しばらくは大人の魅力はいらないかなあ……」

美羽「あははは……」







莉嘉「美羽ちゃん、一緒に時子さんから大人を学ばない?」
《終》


――――――――おまけ

友紀「美羽ちゃん」

美羽「どうかしましたユッキーさん?」

友紀「最近、プロデューサーの時子さまへの態度おかしくない?」

美羽「そ、そうですかね?」

友紀「なんか凄いぎくしゃくしてるというか……前は呼び捨てだったのに、いつのまにか『さま』づけになってるし。何かあったのかな?」

美羽「さ、さあ。どうでしょう」



美羽「というか、ユッキーさんも時子さまって呼んでるんですね?」

美羽「……なんでそう呼ぶんですか? なにかあったとか」

友紀「別になにもないけど?」

美羽「へえ……」

友紀「ホ、ホントだよ?」



美羽(……触れないでおこう)

《終》


――――――――――おまけのおまけ

友紀「あれ、冷蔵庫の中に見知らぬタッパーが」ガチャ

友紀「甘辛い匂いがするけど……?」スンスン

時子「私の作った料理よ」

美羽「わあ!?」

友紀「あ、時子さま」オハヨー

時子「驚きすぎじゃない、美羽?」オハヨ

友紀「これ、時子さまの料理なんだー」ヘー

時子「他意はないわ。作り過ぎたから持ってきたのよ」

友紀「食べていいの?」

時子「フンッ……好きにしなさい」

友紀「中身はー。豚の角煮! ビールに合いそう!」

美羽「豚……」ハッ!



美羽「プロデューサー!?!?」


時子「落ち着きなさい」ソンナワケナイデショ


《終劇》


やめようと思ってた。今年の五月、ガチャからユッキを一枚引いた。イベ限定がちゃからである。お花見のレアユッキであった。ピンクのユニフォーム風衣装を着ていた。これは可愛いものであろう。夏まで書こうと思った。

おしまいです。
ユッキが可愛かったけど、最近はユッコがいいなあと思ってなんか書こうと思っていたらいつのまにか時子様になってた。
時子様はプロデューサーの調教の時でも実はちゃんと手加減をしてくれている大変に優しい人なのです。

前作です。【デレマス】姫川友紀「美羽ちゃん。あたし、プロデューサーのこと――」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431955912/)
繋がりはあって無い様なものなので気にしないでもオーケーです。

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