比企谷「それでも雪ノ下、俺はお前が」 (131)

「俺にはほかに好きな奴いるんだわ、だからお前とは付き合えない」

そう答えたとき彼女がどんな顔をしていたか思い出せない
正しくは思い出したくないのかもしれない

フラれた時の喪失感と惨めさ

忘れようにも忘れられねぇ己の惨状

そんなもんを経験した俺だからこその時にあいつがどれだけつらかったかわかっちまう
だが嘘なんかで埋め立てたくなんかなかったしあいつにもそんな偽善を振りかざすなんざ失礼だろ?

結局は自己満足
だけどあいつにも本物は本物であってほしかったと言う気持ちに偽りはない
だからこそ俺の本音を伝えた事に後悔はない

俺は何も間違ってはいなかったはずだ


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「八幡ってば!」

「…っうお?!」

いきなりの刺激に目を覚ます
そこには天上から舞い降りた天使…いかんいかん
クラスメイトの戸塚彩華が可愛らしく頬を膨らませこちらをにらんでいた

なんなの?俺を誘ってんの?式場予約してきちゃうよ?本気で

「八幡ってばずっと無視するんだもん!さすがに怒るよ?」

「すまんすまん、で?用事はなんだ?ご家族への挨拶か?」

「?…えっと、八幡の家族みんな旅行行っちゃってるんだよね」

「…ああその事か」


先週の日曜小町のあざと可愛さに騙された親父はデパートへと財布もといデート相手として出かけ、その買い物のレシートで福引きをしたところなんと1等温泉旅行を見事当てたらしい
しかしその旅行券は三人分であり、当然の事ながらうちのペットかまくらよりもカーストが低い俺にはなんと自宅湯船(アイヌの涙)の券が献上された

小町にいたっては
「それで彼女さんとお風呂なんてどう?」
なんていってくる始末
やめてやれよ親父とお袋固まってんぞ

てかそんなことよりも
「誰から聞いたんだ?それ」

「え?由比ヶ浜さんだけど」
やっぱりかあのアホの子ビッチ

「まぁ別に一人だからってなんか変わることでもねぇし、つか家の中独り占め万々歳じゃねーか」

だけど小町ちゃんアイヌの涙はないだろ…
なんなの?小町の心は絶対零度なの?

つか第一そんなもん何処で手に入れた、お兄ちゃん心配でねむれません!


「そうなんだ…一人で寂しんだったら僕が…」

「寂しい!俺超寂しいから!是非来てくれ嫁に!!」

「嫁?!待って八幡僕男の子!」

「…何をしているのかしら?比企谷くん」

そんな俺のプロポーズを邪魔するかのように扉の前で絶対零度の笑顔でこちらに刺すような視線を向ける氷の女王雪ノ下雪乃がいた
小町よ、お前のくれた自宅湯船券必要ないみたいだぞ?俺の背筋は氷点下だ

おいほら見ろよクラス奴ら固まってんだろ?あいつら引いてんだぜ?
そんな連中をただの風景と切り捨てるように無視しながら俺の机の前に歩き出す

「…ちょっと来てくれるかしら」

「…おう」

どうやら俺の命はここまでのようだ、愛してるぜ戸塚




「いきなりだけどあなた、ちゃんとご飯は食べてるの?」

「本当いきなりだな」

部室の窓を開けながら彼女はそう口を開く
つうか今までの怒気はなんだったんだよ、ドキドキしちゃったよドキだけに

「ええ、あなたの事だからどうせ面倒だからと言ってインスタントやコンビニ弁当を1週間分買い占めているんじゃないかとおもっただけよ」

なんでしってんの?まさかお前俺のストーカーなの?

「俺にとっちゃあ家の中すらぼっちタイムができる最高な1週間だ、飯つくんのに時間つかえるか」

雪ノ下は「…そう」とため息混じりに言うと俺の方から目を背け聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声で
「だったら私が作りにいくわ、こ、恋人の食生活の悪化を黙って見過ごせなもの」
と呟いた

しかしこいつ

…顔真っ赤だぞ、無意識だろうがなかなかにあざとい

「…何かしら」

「…何でもないです」

前言撤回、やっぱり氷の女王だわ



雪ノ下雪乃、こいつは俺の彼女である
約1ヶ月前くらいに俺の告白で付き合い始めた

ずっと心の何処かで憧れ、引かれていった存在
今でも彼女は憧れだし何よりどこに出しても恥ずかしくない自慢の彼女といっても過言ではない
まあどこにもださないけどね!

ちなみに材木座に自慢したら血涙を流しながらつまり君はそういう奴だったんだなと量膝を床に落とし泣き叫んだ
キャラぶれすぎだろ材ミール君

と言うか何か言わなきゃさすがに気まずい、雪ノ下にいたっては顔を背けなんかもじもじしてるし

「俺も可愛い彼女の作った飯くいてーな」

「気持ちが悪いわ、その腐った目のせいで更に凄みを増してその言葉でバイオテロが出来そうね」

うっわー、スゲーいい笑顔
八幡ないちゃう、ないちゃうわー
つか言葉でバイオテロとかなにその最強生物兵器

「冗談はそこまでにしてあなたの家行くから生物兵器谷君」

「冗談なの?俺お前の言葉本当に信じていいの?!」

ちょっと雪ノ下さん?冗談ならその呼び方はなんなんだよ、もはや原型すらないんだけど!
そんな俺の悲痛叫びを完全無視し再び顔を背けるとまた小さな声で

「…だから、買い物とか…付き合って欲しいのだけれど」

と囁いた





もうじきチャイムがなると雪ノ下は先に教室へと向かっていった
つうか平常心は保ってはいたがあいつ可愛いすぎだろ、なんなの?デレのん到来?

なんかあれだな、俺だけが知っている彼女の裏面って感じでなんか優越感を感じる
うん!自分でいってて超キモい!

そんな自演だらけの脳内会議を繰り広げていると後ろから聞き覚えのある声が俺を引き留めた

「せんぱーい♪」

「…一色か」

「何ですかその反応!と言うかいくら変な噂が立たないようにと言ってもそっけ無さすぎですよ!」

あざとく手をパタパタとさせながら怒ったようにそう言う
つうか素っ気ないって…
俺の態度は平常運転だ

「わかってんなら変に絡んでくんな」

「…別に見せつけたっていいじゃないですか」

「なんだって?」

「何でもないですー♪そー言えば先輩、先輩って今家に一人なんですよねー」

おい由比ヶ浜、お前一体どこまでもらした
つうか俺にプライバシーはないの?セキュリティもざる並みなの?
ここまで来ると戸部辺りに「ヒキタニ君家って今ヒキタニ君しかいないん?wwwww」とか言われても驚かない殴るけど



「それがどうした、空き巣したって不健康な猫しかいねーぞ」

「しませんよ?!」

「…だったら何で」

「それはですねー」


「私がご家族が帰ってくるまでご飯作ってあげますよ」

は?

何を言ってるんだこいつは
俺に彼女がいることを知っているはずのこいつが何を言い出すんだ
冗談にしてもたちが悪い

「…なにいってんだお前」

「ふふ、そうでしたねー♪変な噂たったら不味いんでしたねー先輩は」

一色はそれだけ言い残すともうすぐ授業が始まると教室へと走っていった

なに考えてんだあいつ…
わかってんならんな下らん冗談はやめて欲しい、正直寿命が縮むかと思った

ふぅっ、と重たいため息をつくとキーンコーンカーンコーンと鐘がなる
…そういえば次は現代国語だったな


なるほど、確かに寿命は縮まったみたいだ





「おい雪ノ下、トマトは入れんな」

「あなたの意見をどうして取り入れなければいけないのかしら材木谷くん」

「おいやめろそれは混ぜるな危険だ」

部活後、俺たちは近場のスーパーにて買い物中トマトでカートをゴールにバスケ擬きを繰り広げていた
右左の手のひらを動かしカートへの侵入をあの手この手と妨げた
幻のシックスマンと呼ばれた俺に敵はない
まあそんな俺の奮闘やむなしく忌々しきトマトはカートのど真ん中に居座ったのだが

己トマト…食ったふりして絶対流しに捨ててやる…

「…わりい雪ノ下トイレいってもいいか?」

「…いちいちそんなこと聞かないで、モラルがなってないってレベルじゃないわよ」

「当然だ、ぼっちだからな」

「そんなこと誇ってどうするのよ…」

といつものヤレヤレポーズをとりながら雪ノ下は嘆いていた
そして深くため息をつくと俺を無視して買い物を続行しだした

これは雪ノ下なりのとっとと行ってこいと言う合図なのかと自己解釈するとトイレに向かう事にした





「…っ?!」

トイレを出て一番始めに気づいたのは視線
間違いなく俺を見ている…
前方の雑貨売り場のほう、横目でしか確認できないが

…ここはどうする、奴の狙いが俺なら雪ノ下と合流する前に何とかしないと
俺は入り口前にいる、幸い奴は俺が気づいた事を知らない
ならば俺のほうに奴を近づかせなければ袋の鼠だ

まずは行動のパターンの把握
横目で実物とガラスに写った姿で行動を確認

完全に平行移動
俺が右に行けば奴も右に行く、左に行けば左とNPC顔負けの単純行動

つまり左端に移動すれば左側の逃げ道がなくなる
しかし棚や台車が並ぶこの中で一つでも逃げ場を残せば高確率で逃げられるだろう


しかしなぜそんなことを知りながら左端を目指し歩いているか

それは簡単、ここはこの時間小町が好んでここに来る
俺は知っていたからだ、その理由を

店員が数々の品物の乗ったカートを持って現れる
それにつられるように人が集まりだした

まだだ、まだ焦るな
あのストーカー野郎がどんな奴にせよ失敗すれば雪ノ下に被害がでる可能性がある
それにこんな人目がつく場所ならそんなに大胆な行動は取らないだろう

店員が時間を確認しマイクに電源を入れる
ここからカウントダウン 3 2 1

「ただいまよりタイムセールを開始します!」

今だっ!!

そのアナウンスとともに振り替えると奴も気づいたのかものすごい勢いで踵を返す
ちぃっ!気づかれたか、だがあの服装は間違いなく総武高の女子制服
あのタイムセールに群がる肉壁だ、そう簡単には抜け出せない
制服姿の女子があの中に混ざり混んでるなら余計に目立つはずだ


確実に逃がさねぇ、絶対見つける

その決意とともに走りだした瞬間に腕を掴まれ引っ張られた

「比企谷くん!」

「雪ノ下!?」

「…トイレにしては向かう方向が違うのね」

「あ、嫌それは」

そんな彼女のジト目に耐えながらタイムセールのほうを見る
どうやらほとんどむしりとって満足した専業主婦様たちは解散していったらしい
当然の事ながら制服の女子などいない

理由も正体もわからないまま、俺に気づかれたと言う情報までくれてやった
…状況は最悪だ


「悪い雪ノ下、送るから今日はもう帰れ」

「?…わかったわ、だけど理由くらいは」

「…後で電話する」

そう俺が言うと「あなたがそう言うなら」としぶしぶ了承してくれたようだ
何はともあれこいつに被害は出したくない

これがあいつ目当てにせよ俺目当てにせよ
俺一人で決着をつける




雪ノ下をマンションまで送り帰宅した

その瞬間雪ノ下を帰らせて正解だったと安堵する
リビング、玄関、台所
他の部屋は無事なのに一室だけ無残に荒らされた跡

机に置かれた空のティーセットにベッドに置かれた見たことのない謎の枕

床に落ちた交換日記のようなもの

完全に奴の目的は俺だと確信した

部屋のドアに鍵をかけ、家具で開かないように固定
そしてポケットからスマフォを取りだしアドレス帳から雪ノ下雪乃の電話番号を引き出す

プルル『もしもしわたしよ比企谷くん』

ワンコールなる前に出るとかどんだけ待ちわびてたんだよ俺からの電話

「さっきの事なんだが、何を言っても信じてくれるか?」

『…ある程度は善処するわ』

ある程度…か
手厳しいなと心の中で笑う
今はそうでもしないとやってらんねーよ…

だって俺にだぜ?
あり得ねぇよな、ははっ
だから雪ノ下…お前はきっと

「自意識過剰だと思うかもしれねぇがストーカーにあってるみたいだ」

きりいいし寝るわまたな

ピピビッ…

これが私の紛れもない本物です、しんじてくれましたか?

やめろ…

先輩がいたから見つけられたんですよ

ピピピピッ…

やめてくれ…

先輩、私先輩のこと

黙れ…

ピピピピピッ…

黙れ、黙れ、黙れ
これ以上しゃべんな!!

好きなんです付き合って下さい

『俺には他に好きな奴いるんだわ、悪いがお前とは付き合えない』

「やめろぉぉおおお!!」

ピピピッ


「はぁっはぁっ…クソ、寝覚めわりいのにもほどがあんだろ」

時計が示すは6時30分、平日起床するためほとんどの人間を不快にさせるであろう安眠妨害もとい迷惑な音を放つ

気持ちが悪い
吐き気がする

やっぱり夢落ちなんて甘い考えつうじねーわな…


扉は俺が塞いだままだし、謎の拒否反応により触らなかった日記もそのままだ
…昨日はまともに見なかったが空のティーセット、マグカップと少し離れた場所にどうみても違和感しかない湯飲みがおいてある

なるほど、これはどうみたってあの机だ

つうかこれはあれか?ここでおままごとでもしていたのか?
本気で笑えない、つうか気味が悪い

頭を抱えててもしょうがない
俺は入り口を塞ぐ家具を乱暴に退かすと最大の警戒心と最小限の動きで部屋を出た


「あら比企谷くんおはよう、すっとんきょうな声が聞こえてからここに来るまで約10分以上かかりました」

「…お前は校長か、つかお前いつからいたんだよ」

「今さっきよ、鍵はポストにもどしたから」


…脅かすんじゃねーよ
リビングに近づいた時電気ついてんの見て本気でびびったぞ!?

そんな俺の思考完全無視で雪ノ下雪乃はフライパンを振るっていた
すげーなお前、小町がほとんど使っていた代わり映えのないキッチンにお前が立ってるだけで高級感あんぞマジで

「そんなことより、お前昨日は帰れって言ったよな」

「あら、私がきたのは今日なのだれど」

「むぐっ…?!」

「そんなことより少しくらい手伝ったらどうなのかしら、専業主婦希望さん?」

そう言う問題じゃないんだけど
まぁ無事なら皆まで言うことでもないか

とりあえず雪ノ下に言われたように机を拭き皿を並べる
そして雪ノ下が俺の並べた皿にスクランブルエッグを盛り付ける

なにこの共同作業、つうか俺出番ねーだろこれ
専業主婦希望としてなんか不味くね?
俺は養われるつもりはあってもヒモになる気はない!これ重要な!



「なにをしてるの?早く座りなさい」

「…おう」

そんな激しい俺の葛藤中に飯は出来たらしい
雪ノ下の言葉に席につくと手を合わせ「いただきます」と箸を持ち直した



うめぇ…
これ、本気で俺が専業主婦する必要ないんじゃねと自分の進路に危機感を感じ始めた

でも働きたくねーしな

しかしこいつ俺にきを使ってか昨日の話ふりもしない
まぁ正直その方が助かる
今だけはあの部屋を忘れる事ができるから

「…む、トマトが入ってない」

「入れてほしかったのかしら?」

「あ、いや…お前いつも好き嫌いすんなとか言って無理にでもトマト入れるだろ?」

俺がそう返すと雪ノ下は一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした


その後深いため息を吐くと眉間に手を付け頭を左右に小さく振る

「あなたはやっぱり特殊な性癖があったのね見損なったわ、はなから目を付けるところもなかったのだけれど」

「ねーよ?!お前の考えてることは特にな!」

俺の言葉に軽く首をかしげると「私の考えてること?」と呟く
するとその後何かを思いついたのかものすごくいい笑顔を向けて口を開いた

「残念ね、あなたと私は相思相愛だと勝手に盛り上がっていたのだけれど勘違いだったなんて」

「は?」

「あなたが性癖と呼ばれるくらい私に溺愛していたと思うなんて図々しかったわね」

「え?いやまて」

まてまてまて、やめろそんな上目遣いでそんな悲しそうな顔すんのは
わざとってわかってても騙されちゃうだろ雪ノ下さん
つか惚れちゃうから、もう惚れてるけどね!

「あなたもこんな重い女嫌でしょう?ごめんなさい」

「わりい、やっぱりあったわその性癖」

「やっぱりマゾヒストの素養があったのね気持ち悪いわ」

そう言いながら今日もすげーいい笑顔
楽しそうで何よりだね、俺は不快だ



そんな他愛のない話をしていると既に時計は7:30を示したようで雪ノ下は先に行くと後片付けだけして登校していった

さすがに全部任せるのは悪いと片付けは俺がやると声をかけると
「洗えば何度でも使えるものをもう破棄するのはもったいないと思わない?」
とのこと
俺が触ったら捨てなきゃならないのかよ、洗っても拭えない比企谷菌マジすごい
後過去のトラウマもな!

つか時間やばくね?俺も出ねーと




「ひゃっはろー、比企谷くん」

「…何でいるんですかあなたは」

遅刻は確定ですねわかります
つか何で家出て数分でエンカウント?ご近所に魔王城なんて建ってたか?
まじかよオルテガ最低だな


「そんなつれないこと言わないの、でー?最近雪乃ちゃんとどう?イチャイチャしてる?」

「どうっていつも通りですけど」

「いつも通りイチャイチャしてるんだー若いねー二人とも」

「何の話ですか」

何度目だよこの会話
つかこの人最近俺に会うたびに雪乃ちゃんとどう?しかきいてねぇじゃねぇか
何なの?シスコンなの?俺もだけど

「…と言うか何でこんなところにいるんですか」

「私だって散歩位するよ?」

「そうですか、散歩してたらたまたま家を出た瞬間俺とエンカウントしたと」

「そうそう、偶然ってこわいねー」

偶然かー
ってんなわけあるか!
恐らくは雪ノ下の後つけて俺の家の場所を知ったんだろう

しかしこの人、一体何を企んでやがる
怪しげな微笑みをしながら俺の顔をなめ回すように見る
正直怖いです、逃走のコマンドがあるなら逃げたい


「それで?雪ノ下なら先に行ったんですけど…」

「うん、あったよー、ご飯作りに来てたんだよねー」

「どこまで聞いたんですか?」

「え?今比企谷くんがお家に一人しかいないのと、自意識過剰拗らせてストーカーと言う被害妄想まで見始めたとか」

おーい雪ノ下、お前俺に何の恨みがあるんだ
目の前の魔王すっげー嬉しそう、だって最高に面白いオモチャみつけたみたいだもんね!俺だけど!
つうか俺のプライベート筒抜けなのはデフォルトなの?

「あ、雪乃ちゃには口止めされてるんだった今のナイショね?」

「…もう隠す気ないでしょ」

「一応だよ一応」

雪ノ下だって気づいているだろうさ、もう口を滑らせてるなんて


「もっとお話したかったんだけどなー」

「俺は結構です」

「つれないなーお姉さん泣いちゃうぞ?」

手のひらで瞼を擦りながら棒読みでかなしーなーなんて言っている
そんな表情に悲しみはない、間違いなく次の俺への嫌がらせを考えてるに違いない

「つうか俺と雪ノ下が付き合ってからやけに絡んできますね」

「うーん?そうかな、別にそんなに意識はしてないよ?」

それなら何時も何時もあの質問から会話を始めるのは何故だ、どう考えても妹が気になっているとしかとらえられないのだが

つうか意識してないなら余計になんで最近エンカウント率上がってんだよ
このままじゃいつ全滅してもおかしくないぜぼっちだけど


「…だけど強いて言うなら」


「昔の雪乃ちゃんと逆になったから…かな?」

「はぁ?」

「それに君とお話したいってのは紛れもない本心だよ?」

それだけ言うと俺の耳元に行きが当たるくらい顔を近づけ「またね」とだけのこし去っていった
つうか雪ノ下と逆?
まったく意味がわからない…
あの人の事だ、意味深な言葉だけ言って悩む姿を見て喜んでいる可能性もある

何も考えねぇのが一番だ、それが例えもう既に時間がホームルームの時間を回っていたとしても



「ヒッキー何で今日遅刻したの?」

「…ムドーが襲来してきたんだがな炎の爪を取り忘れて苦戦した」

「意味わかんない、あとヒッキーキモい!」

「俺もキモいの意味わかんない」


何でだよ炎の爪初見なら取り忘れることよくあんだろ、つうか炎の爪の道具としての効果知らずにハッサンに装備させた奴まである
それをキモいとか初見ユーザー喧嘩うったぜ?俺は攻略サイトみたが

見慣れた景色、いつかからずっと同じ顔ぶれ
俺から見える表面上だけかもしれないが奉仕部は何ら変わらずやっている
由比ヶ浜の気持ちに薄々気づいていただけに俺の選択はこの関係を壊してしまうんじゃないかと恐れていたが、俺は思いを伝えることを選んだ
自分勝手かもしれない、だがしかし俺はこの関係を信じて見たかったんだと思う
…俺の完全なエゴを受け入れてくれると

だけど由比ヶ浜は泣きながら応援すると微笑んでくれた

どんな事があってもあいつを支えてなれと、信じてやれと、隣にいてやれと
最後らへんは泣きじゃくるもんだけらほとんど何と言ったかわからない
だけど最後のセリフだけはしっかりと聞き取れた


『ヒッキーを好きになれて良かった、だって私のためにこんなに悩んでくれたんだもん』

『だから、ありがとう』

気がつけば俺も泣いていた、わからない、理解ができない
だけど嬉しくて、だからこそ悲しかった
…ずっと受け入れてなんてくれるなんて思っても見なかったから





「どうせこの男の事よ、昼夜逆転した暮らしのせいで寝坊したとかそんなレベルの話じゃないかしら」

おいおい、俺の黄昏タイムを簡単にぶっ壊してんじゃねーぞ
つうかお前いただろ、俺普通に朝起きてたよね?

「残念だな雪ノ下俺は睡眠はしっかりと取る、わりと睡眠時間にはこだわってんだよ」

「…可愛そうに、その目は寝不足ではなく根本的に腐っていたのかしらゾンビ谷くん」

「お前は俺に悪態しかつけんのか」

「だってあなたマゾヒストじゃない」

「え?ヒッキーキモい!」

お前ただヒッキーキモいって言いたいだけだよね?確かに語呂はいいが傷つくよマジで



…ん?よく見たら雪ノ下、朝は微妙にだがメイクしてたのか?
自然過ぎてわからなかったが…

つうか今はとれていると言うことはわざわざ俺だけに見せるために…
と普通なら思う筈である
だがそんなことを雪ノ下に言おうものなら自意識過剰やら気持ちが悪いやら罵倒が飛んでくるのは見えている

ならばここはあえて

「雪ノ下、お前はいつものままが一番可愛いぜ」

「は?」



「…そう」

「…もしもし?ここに不審な」

「何やってんの?!俺社会的に死んじゃう!!」

「…冗談よ」

「えっと、よくわかんないけどヒッキーキモい」

今日1日ヒッキーキモいしかいってなくねお前
つうか雪ノ下、お前の冗談はマジで冗談には聞こえない


「そういえば私達これから用事があるの戸締まりお願いしてもいいかしら」

「二人で久しぶり一緒に遊ぶんだ、ねーゆきのん♪」

「…確かにそうなのだけれど、少し離れてくれないかしら?」

「ええ?!いいじゃんヒッキーに独り占めなんてさせないし!」

「…別に独り占めなんてしてねーよ」

戸締まりはいいんだけど目の前で百合フィールド全開にすんのやめない?
俺弾き出されてるから、まぁ見てる分には眼福なのだが

「じゃあいこ?ゆーきのん♪」

「え、えぇ…それじゃあ、あなたも」

「…おう、じゃーな」


「…」

「…八幡、また明日」

「は、はち?!」

それだけ言うと雪ノ下は顔を真っ赤にしながら部室を出ていった
去り際の由比ヶ浜のしてやったりと言うどや顔を見る限りあいつの差し金であるのは間違いない

だがしかし…よくやった由比ヶ浜
アホの子ビッチってよんでごめんな?

さて戸締まりだけするかとドアに鍵を差し込んだ時だった


「ヒキタニくん、少しいいか?」

なんかちょーしわりーからここまでにするわお休み

とりまちょーし戻ったから昨日の分残り書く
前回の解説程度と思って読んでくれ

「ほら、俺の奢りだ」

「…おう」

そんな爽やかに渡されたボスのエメラルドマウンテンを見てやっぱり葉山隼人とは趣向あわねーやと深々と再確認した
MAXコーヒーダース買いしてこいやこのやろう

つうかこんな人気の少ない校舎裏呼び出してなにすんの?人集めてリンチでもされんの?

「ははっそんなに身構えるなよ、別にとって食おうなんて思ってはいないさ」

「じゃあなんだ?告白でもする気か?気持ちが悪い」

「告白か…だが君には雪ノ下さんがいるだろう?」

何?俺が雪ノ下と付き合ってなかったら告白したの?
マジやめて海老名さん以外喜ばないバッドエンドしかまってないよ?
俺は後ろに微妙に下がりながら「じゃあ何のようだ」と問う

「…そうだな…まどろっこしいのはやめよう、率直に聞くが最近お前の回りで何か異常な事は起きなかったか?」

「…っ?!」


真っ先に思い浮かんだのは昨日の出来事、しかし何でコイツがしってんだよ
俺は雪ノ下にしか言っていない

…もしかしなくても雪ノ下さんだわな

「その反応はあったんだな…あぁ、あらかじめ言っておくと誰かから聞いたんじゃない」

「…どういう意味だ」

「…いろはの様子がおかしい、やけに明るいと言うかなんと言うか」

「…はぁ?一色の様子がか?」

いやまて、一色の様子がおかしいのと俺の異常に何の関係があるんだ
しかも一色がやけに明るいのは平常運転だろ、つうかウザくなるレベルでな

…それに俺がフッた後からの立ち直りが早いと言うことならば葉山の前例があるし逆に何がおかしいかわからない


「いつもと一緒じゃないのか?」

「…そうだな、いろははいつだって明るい奴だよ」

「だったら何の問題も「彼女は君の部屋に遊びに言ったことがあったか?」

俺が全部言う前にそう問いを重ねてきた
その質問に返すのはもちろんNoだ、そんな浮気と疑惑がつくことを保身第一の俺がするわけがない

「…彼女が言ったらしい、俺だってただの虚言だと気づいているさ」

「あいつが…?だがなんで?」

「君は本当にそう言う事には疎いんだな…」

「本当にムカつくなお前」

はぁ、とため息混じり言う
なんだこいつ、俺に喧嘩売りにきたのか?すっげー腹立つんだけど
思わず奴の顔を睨み付けるとそれに気づいていたのか安定の爽やかスマイルで
「そんなつもりはないよ、すまない」
と謝罪した

間違いなく煽ってやがる完全に理解した


「ただ、いろはの異変には少し気をつけてくれ」

「…忠告どうも」

「いや、こっちこそ悪いな時間をとらせて」

「…別に帰っても暇だし気にすんな、じゃーな」

悪いと思うならとっとと帰れ、正直二度と面見せんなと言いたいまである
そんな事思いながら社交辞令としてしっかりと挨拶している俺マジ大人

そんな風に自画自賛していたら凄く概視感を感じる声が俺と葉山の動きを止めた

「あっれー?隼人に比企谷くんじゃんどうしたのこんなところで、もしかして告白中だった?」

あぁ、本当に今日はついていない



「それじゃあ陽乃さんは学校のパンフレットのモデルとして来てたんですか」

「そうだよー、私の制服姿想像しちゃった?比企谷くんのおませさん♪」

「…何で俺にふるんですか」

結局雪ノ下さんに捕まり俺と葉山はオサレ()でスウィーツ()のカフェ()に連行された
立ち話もなんだしと言う話なのだが、何故話をすることを前提で話がすすんでいるのか

つかなにこの状況、美形カップルと引き立て役ですか?わかります

「ダメだなー比企谷くん?そんなんじゃ雪乃ちゃん不安になっちゃうよ?」

「いや、別に想像してませんし」

「そう?じゃあ目の前で着替えてあげようか?」

「…自宅で一人で楽しんでください」

「つめたいなー比企谷くん」

何なのこの人、目の前で着替えなんて見たいに決まってんじゃねーか!
つか葉山なんか喋れよ、何で今日に限って爽やかスマイルでステルス状況放ってんだよ!!



「…俺そろそろ帰ってもいいですか?用事思い出したんで」

「用事? 隼人なんかしってる?」

「いえ、さっき暇と言っていましたが」

葉山ぁあああ!!ふざけんじゃねーぞぉぉおお!!
雪ノ下さんに至っては「なら問題ないわね」とニッコリ笑っているし
後葉山、ニヤニヤしてんじゃねーぞぶん殴るぞ!



「…悪いわね姉さん、比企谷くんはこれから私と買い物をする約束をしているのだけれど」

「雪ノ下?!何でここに?」

「あなたがどれだけ待っても来ないからよ」

と言いながら話を合わせろと言わんがばかりに俺の目を見つめる、つうか由比ヶ浜と遊びにいたんじゃないのか?
そんな救いの手に対し「悪い少し葉山に捕まっていた」と自演丸出しの返答に一瞬雪ノ下は呆れた顔をすると
「そう言う事だから私達はもういくわ」
と俺を連れ出そうとする


雪ノ下さんはその茶番劇を黙って見ていたかと思うと、今までの悪戯を含んだ笑顔とは違う絶対零度を感じさせる鋭い視線をこちらに向けて俺達を引き止めた

「まって雪乃ちゃん、今私は比企谷くんと楽しくお話してたんだけど」

「…楽しく?比企谷くんの顔がひきつっていたのがわからなかったのかしら」

「確かに比企谷くんには無理に付き合わせちゃたかな?だけど私は少なくとも雪乃ちゃんよりは言葉を選んでるつもりだけど、そんなんじゃそのうち愛想つかされるわよ?」

「…そうね私は八幡の彼女なのだからもっと彼の事を理解してあげなければならないわね、明確な助言ありがとう姉さん(ニッコリ」

「…ッギリ」

なにこの空気、つうか俺も葉山も完全に空気なわけだが
雪ノ下はその言葉を最後に俺の手をつかむとカフェの出口へとあるきだした

その時一瞬振り返って見えた景色は、どうすればいいのかわからないと言う葉山の困惑の顔と悔しそうに俯く雪ノ下さんの姿だった



「雪ノ下、雪ノ下もういいから」

「…」

「もう手を放せって」

「…ごめんなさい」

その言葉にそっと掴んでいた手を放すと不安そうな顔で俺を見つめてきた
…一瞬つうか本気でドキッとするからやめてよね!余計惚れちゃうだろ?

「…私に愛想つきたかしら」

「は?」

「姉さんに言われるまであなたが酷い事を言われて何を思ったかなんて考えたことなんてなかった」

「…ああ、あれか」

何を気にしているかと思えばそんな事
その程度で愛想つかすなら今までお前と共に部活動をして、それでもお前が好きだなんて言わねーよ


それに

「俺はお前が好きなんだよ、それも含めてお前じゃねーか」

「…よくもまぁそんな恥ずかしいセリフ吐けるわね黒歴史谷くん」

「さっきのドキドキ返せマジで」

「それとこれ、本当は放課後渡そうと思ったのだけれど」

と思い出したように黒い包みに包まれた物をこちらにさしだす

「家に着てほしくなさそうだったからお弁当作ってきたの、帰ってから食べて頂戴」

「わ、悪いな、助かる」

今の俺絶対メチャメチャキョドってるすっげーキモい
雪ノ下はそれだけ渡すとそろそろ帰るとあいつのマンションがある方に踵を返した

「…それと比企谷くん、私もあなたの事悪い所を含めて全部すきよ?」

「…ぶふっ?!」

「それじゃあまた明日」

その言葉を最後に雪ノ下は歩き出す
つうかマジで不意討ちやめろって、俺キョドってすげーキモいから
今なら由比ヶ浜のヒッキーキモいに納得出来ちゃうから


「…っ?!」

…この視線はあの時と同じ
後ろを振り向くと誰もいない、当然だ
ただの思い過ごしだと自分に言い聞かせ自宅の方に走っていった

あれ?俺学校に自転車忘れてね?

多分またくるじゃーな

何かしらんけど落ち着けよ確かに比企谷口調に違和感あるかもな指摘サンキュー
次から気を付けるわ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月17日 (水) 23:23:36   ID: tD9P6jeU

続けて

2 :  SS好きの774さん   2015年06月18日 (木) 01:01:39   ID: eobe98cp

続ききになります

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