橘ありす「ありすっち?」 (34)

ありす「なんですか、この丸い物体は」

P「シンデレラプロダクション協力のもと作られた『アイドルっぽいなにか』育成ゲーム、その試作品だ。その名も『アイドルっち(仮)』」

ありす「アイドルっぽいなにか?」

P「アイドルっぽいなにか、通称アイドルっちをペットにして育てる携帯ゲームだ」

ありす「はあ……そういえば、昔はこういうゲームが流行っていたと聞きました。確か」

菜々「わあ、それ『たまごっち』ですか? 懐かしいですねえ。ナナが小学生のころに大ブームで、みんなでこっそり学校に持ち込んで……」

P「………」


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ありす「……タブレットで調べたところ、たまごっちブームは1997年あたりだそうです。今から18年前ですね」

菜々「う、ウサミン星では地球の後追いでブームが来たんですよ! だからナナの故郷でたまごっちが流行ったのはもっともっと後なんです!」

菜々「(やった! ごまかせた!)」

ありす「それで、これを私にプレイしろということですか」

P「ああ。これはCoolバージョンだから、ありすもバッチリ収録されてるぞ」

ありす「そうですか。まあゲームは好きですし、早速やってみましょう」

菜々「完全にスルーされてる!? なんですかその危ない話題に蓋をするかのような反応は! ナナはリアルJKなんですよ!」

5分後


ありす「とりあえず、操作方法は覚えました」

P「あれ、菜々さんは?」

ありす「そういえば、いつの間にか姿が見えなくなっていますね」

P「まあいいか。それじゃ早速スタートだな」

ありす「はい。電源を入れて……あ、卵が出てきました」

P「少し待ってると卵がかえる」

パリ、パリ……

【おめでとう! たまごが かえって ありすっちが うまれた!】

ありす「なんでメッセージがポケモン風なんですか」

P「知らん」

ありす「まあいいですけど……それよりこれ、私ですよね。ありすっちって。ドット絵も似てますし」

P「その通り。まだ試作品だから幼少期のアイドルっちのバリエーションが用意できなくてな。卵からかえったら必ずありすっちが生まれる」

ありす「だから私にテストプレイを頼んだんですね」

P「そういうことだ」


ありす「とりあえず、何をすればいいんでしょう」

P「お世話の基本は、『えさやり』『そうじ』『あそぶ』『プレゼント』だな。これらを行う頻度によって、この後ありすっちがどういう成長を遂げるかが変わっていくんだ」

P「ちなみに、育てたアイドルっちは他のプレイヤーのアイドルっちと通信対戦させることもできるぞ」

ありす「たまごっちに対戦機能ってあったんですか?」

P「ないけど、面白そうだからという理由で搭載したらしい」

P「まあデジモンにはあったからいいだろ」

ありす「さっきから他のゲームとごちゃまぜですね」

ありす「あ、なにかサインを出していますよ」

ありすっち【おなかが すきました】

P「お、早速お世話の機会がやってきたな」

ありす「自分で自分に食事をあげるって、なんだか変な気分です。……えっと、これで餌をあげられたはずですけど」

ありす【ごはんくらい じぶんでたべられます こどもあつかい しないでください】

ありす「なんですかこの生意気な態度は」イラッ

P「反抗期なんだ。許してやれ」

ありす「これ、本当に私がモデルなんですか。性格が違うじゃないですか」

P「(そんなに違うとも思えんが……)」

ありすっち【ふまんがあるなら ろんぱしてあげます】

ありす「上等です。主従関係をわからせてあげましょう」

P「まあまあ。喧嘩するなって」

数時間後

ありす「あ、なんだか光り始めました」

P「少女期に進化するんだな」

ありす「進化ですか」


【ふーん アンタが わたしの ごしゅじんさま? まあ わるくないかな】

【おめでとう! ありすっちは しぶやっちに しんかした!】

ありす「だからなんでメッセージがポケモン風なんですか」

P「俺に言われても困る」

ありす「それにしても、しぶやっちですか。これ、凛さんをモデルにしたやつですよね」

P「おう。各コマンドをバランスよくこなしていると、たいていこれに進化するらしい」

ありす「初プレイということで、どのお世話もまんべんなくやっていましたから」

P「あと、しぶやっちは犬耳をプレゼントすると喜ぶぞ」

ありす「なぜ犬耳?」

P「制作サイドの趣味じゃないか? 少女期でいる時間は1日くらいあるから、空いた時間にちょくちょく面倒見てやってくれ」

ありす「わかりました。では今日はそろそろ帰ります」

翌日


ありす「そろそろ進化する時間でしょうか」

P「そのことなんだが、昨日大事なことを伝え忘れていた」

ありす「はい?」

P「アイドルっちには『おみあい』コマンドが存在するんだ」

ありす「アイドルなのにお見合いするんですか」

P「アイドルじゃなくてアイドルっちだからな。それで、しぶやっちをお見合いさせないまま進化させると――」

【わたしもそろそろ けっこんをかんがえないとね】

【おめでとう! しぶやっちは わくいっちに しんかした!】

P「こうなる」

ありす「進化先が和久井さんで固定になるんですね……」

わくいっち【ねえ いつになったら こんいんとどけに サインしてくれるのかしら】

ありす「なんでペットが飼い主に求婚してるんですか」

P「焦ってる部分もあるんだろ。女心をわかってやれ」

ありす「知りませんよ……」

別の日

ありす「とりあえず、またありすっちからスタートです」

ありす「別のに進化するよう、少し育て方を変えてみましょう」

ありす「今回は遊ぶコマンドを減らして、かわりに『小難しい本』を多めにプレゼントしましょうか」


【まぶしいんだ このセカイ すべて……】

【おめでとう! ありすっちは あすかっちに しんかした!】

P「ちょっと個性的な進化を遂げたな」

ありす「ちょっとですか? これ」

ありす「ステータスも『いたさ』に特化してますし」

P「まあ、モデルになった奴が自分で自分のこと痛いヤツだと言ってるからな」

P「でもきちんと育成したら、あすかっちは『あいさんっち』という強キャラに進化するんだぞ」

ありす「確かにその二人、時々セリフ回しが似てますけど……というか、なんであいさんだけさんづけなんでしょう」

P「さんを付けざるをえないオーラを持ってるから」

ありす「納得ですね」

また別の日


ありす「なにやら『ひみつのメガネ』なるものをゲットしました」

P「おっ、レアアイテムじゃないか。これでプレゼント欄のメガネが25種類全部そろったな」

ありす「コンプリートすると何かあるんですか」

P「特殊進化が起きる」


【おめでとう! ありすっちは はるなっちに しんかした!】

ありす「なるほど、眼鏡だから春菜さんですか。ちょっとコミュニケーションをとってみましょう」

はるなっち【めがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがねめがね】

P「どうやら眼鏡に夢中でそれどころじゃないみたいだな」

ありす「これ軽くホラーじゃないですか? ペットがこんなバグみたいな言動とったら小さい子泣きますよ」

またまた別の日


【やっぱ じだいは ロックでしょ!】

【おめでとう! ありすっちは にわかっちに しんかした!】

ありす「この名前ひどくないですか」

P「中途半端にロックな音楽を聴かせた結果だな」

P「だが安心しろ。通信でなつきっちと友達になればちゃんと『りーなっち』に進化するから」

ありす「一応救済措置つきですか。安心しました」

またまた別の日


【おめでとう! ありすっちは みなみっちに しんかした!】

【みなみ がんばります!】

ありす「あ、美波さんだ」

P「栄養のある食事を与え、適度な運動をやらせると進化するんだ。グラフィックもエロいし人気間違いなしだな」

ありす「グラフィックって言ってもドット絵ですけどね」

ありす「ステータスも高そうですし、じっくり育てていきましょう」

翌日


ありす「ふう、やっとお仕事終わり……」

ありす「今日はあまりみなみっちの面倒を見られなかったけど、元気にしてるかな――」


みふねっち【あめがふると おもいだします あのひのこと……】

ありす「大人の階段を数段踏み飛ばしている!?」

P「おお、みふねっちじゃないか。この哀愁漂う雰囲気がいいよな」

みふねっち【すこしだけ いまはいない だいじなこのことを おもいだしちゃって……】

ありす「哀愁漂いすぎですよ。私がちょっと目を離している隙に、出会いと別れと悲しみを一気に経験してませんかこれ。みなみっちからみふねっちになるまでにいったい何があったんですか」

ありす「ちょっと顔が似てるからっていろいろ段階飛ばしすぎです!」

P「まあまあ。細かいことは気にするな」

ありす「細かいことなんでしょうか……」

数日後


ありす「………」ポチポチ

紗南「おっ、ありすちゃんもやってるんだ! それ」

ありす「紗南さんもですか」

紗南「Pさんが、ゲーマーとしての私の感想が聞きたいんだってさ」


紗南「そうだ。せっかくだし対戦やろーよ」

ありす「いいですけど」

紗南「やった! じゃあ早速通信して……」

【しゅーこっち VS あべななっち】

紗南「お、そっちは周子さんかー」

ありす「そちらは菜々さんのようで……えっ」

紗南「どうかした?」

ありす「すみません。ちょっと聞きたいんですけど、なぜあべななっちのステータスがしゅーこっちの5倍近くあるのでしょう」

紗南「あー、それはね」

紗南「このあべななっちは不老不死の永遠の17歳だから、経験値も永遠に溜まり続けるんだよ」

ありす「はあ、なるほど」

ありす「………」



ありす「なんですかこのクソゲー」


おわり

久し振りにデジヴァイスを見つけて懐かしい気分になったので書きました
たまごっちは妹の持ってたやつを世話していた記憶があります

お付き合いいただきありがとうございました

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