モバP「ニセモノ」 (212)


「プロデューサー!」

『?』

「アタシはこれからもカッコいい自分でいられるようにがんばる!」

『……』

「だから……プロデューサーもカッコいいプロデューサーでいてくれ!」


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「約束だ!」


第13回 ドリームLIVE フェスティバル

『ビートシューター with 光』控え室

















南条光「おはようございます!今日はよろしく!!」

結城晴「おう、おはよー。よろしく」

的場梨沙「おはよー……ふわぁ……光、アンタ……朝からテンション高いわね……」

光「ああ!挨拶は大事だからな!元気な挨拶は人として大事なマナーの1つだ!!ヒーローとして、そこは欠かせない!」

晴「……」

梨沙「……」

光「? どうした?二人して目配せなんかして」

晴「……」

梨沙「……別に」



梨沙「なんでもないわ」

晴P「おはよう光くん。今日はよろしくな」

光「うん!おはよう!」

梨沙P「お!おはよう光ちゃん!俺が誰かわかる?」

光「! あぁ!たしか、梨沙の……」

梨沙P「イエス、私が梨沙のパパです」

光「!?」

梨沙「はぁ!?……はぁぁぁっ!!?」

晴「プッ…!」

梨沙P「いつも娘がお世話になってます」ペコリ

光「!! こ……こちらこそ!お世話になってます!」ペコリ

梨沙「ちょっ……」

光「えー……娘さんには、常日頃?大変お世話になっており……レッスンも?大変真面目で……えーっと……面倒見もよく……」シドロモドロ…

梨沙「いやアンタ何急に言い出してんの!?」

梨沙P「おー!それはそれは、とても良かったでございますです」ペコリ

梨沙「なんでライラになってんのよ!!」


梨沙「違うわよ!こんなキモいのが私のパパなわけないでしょ!Pよ!ウチのP!信じてんじゃないわよ!!」

晴P「光くん、今日は君のプロデューサーは?」

光「あ!さっきちひろさんから電話がかかってきて、多分まだ外で話してると思う。だからアタシだけ先にここに来たんだ!」

晴P「なるほど……」

梨沙P「じゃあいつ来るかまだわかんねぇな。俺らで先挨拶言っとくか」

晴P「そうだな。晴、梨沙くん、光くん、君達も衣装に着替えたら来てくれ」

光「わかった!」

晴「おう」

梨沙「ふん!言われなくてもわかってるわよ!」

晴P「よし、行くぞ」

梨沙P「おう」


ガチャッ

バタンッ



光「……よし!さぁ!ヒーローに変身タイムだ!!」





晴「……」

梨沙「……」


光P「遅くなっちまったなぁ……ん?」



光「あ!プロデューサー!」

P「光か。もう着替えてたんだな」

光「ああ!今から晴と梨沙と一緒に二人のPと合流して挨拶に行くんだ!」

P「あぁ、そうだったのか……じゃあ丁度良いタイミングだったな……」

P「……! 今日はよろしくな、二人とも」

晴「……うす」ペコッ

梨沙「……どうも」ペコッ


P「……?」

光「プロデューサー!アタシのマフラー変じゃない!?」

光「でさ!思ったんだ!今度アタシがソロライブする時は……こう、光と煙がバーーーンッ!って……」

P「……」

晴「……」

梨沙「……」

P「……二人はさ」

梨沙「!」

晴「……?」

P「俺は仕事の関係であんま今回のレッスンに顔出せなかったんだけど……ウチの光、ぶっちゃけどうだった?」

晴「!」

梨沙「……どうって……?」

光「……プロデューサー?」

P「やかましかったろ」

晴「!」

梨沙「!」

光「え"っ!?」

晴「……まぁ、正直かなり」

光「えぇっ!!?」ガーンッ

梨沙「……プッ」

光「えぇぇっ!!?」ガガーンッ

P「……」

光「やかましかったのか……」ズーン…

P「……お、凹んどる」

梨沙「……意外にナィーブなのね……」

晴「……でもまぁ、楽しかったぜ。ダンスとか合わせんの大変だったしたしに少し五月蝿かったけど、3人でたまにサッカーやったりさ 」

梨沙「あーそうね。やったやった」

光「! あぁ!アレは楽しかったな!」

晴「意外と動けるよな光は。オレよりチビなのに」

光「なっ!チビじゃないぞ!140cmはある!!」

晴「あ、わりぃ」

梨沙「……組むの初めてだったから、3人で色々話したわよね」

晴「……おぅ」

光「あぁ!そうだったな!!」

P「……へー」

晴「……」

梨沙「……」

P「……?」

P「……ダンスはどうだった?上手く合わせれたのか?」

光「あぁ!梨沙はアイドルらしくセクシーで可愛いダンスが良いって言ったんだけど、アタシと晴はカッコいいダンスの方が良いって言って、そのあとずっと3人で話し合って、本番ではカッコいい方のダンスをやることになったんだ!」

P「へー……セクシーで可愛いダンスにはしなかったのか?」

光「もう!プロデューサー……アタシはヒーローなんだからやるならカッコいい方を選ぶってわかってるだろ!?」

梨沙「……」

P「ハハッ 冗談だよ。わかってるよ」

晴「……」

光「まぁ、どっちにするか決まったのは実は最後の方でさ……ほんとは少し大変だったけど実は両方練習してたんだ!」

P「……何気に今スゴいことさらっと言ったな」

光「その分大変だったけどね!でも本番はカッコいい方のダンスでいくよ!な!晴!」

晴「……おぅ」

光「へへっ……プロデューサーも舞台袖から見て応援しててくれよな!!」

P「おー……じゃあ俺は言われたとーり袖からハンカチくわえて見守っとくわ」

梨沙「…なんで嫉妬みたいになってんのよ」

光「へへっ!約束だよ!」














光「……もうすぐ本番だな!!」

梨沙「えぇ……そうね」

晴「さーて、じゃあ気合い入れていくか」

梨沙「……ええ」

光「……」

光「……緊張するか?」

梨沙「緊張?はっ!大丈夫よ!」

光「……お腹とか痛くないか?」

晴「……いや、大丈夫だよ。飯も食い過ぎてないしちゃんと八分目にしたしな」

光「……もし何かあってもアタシがついてるぞ……!もし本番で困った時はアタシが側にいることを思い出すんだ!そして大きな声ですぐに助けを……」

梨沙「もう!大丈夫だってば!!光は心配しすぎなのよ!しかも変な方向に!!」

晴「つーか本番で大声でメンバーに助けを呼ぶってどんなんだよ」

光「そうか……?大丈夫か?なら良いんだ!」

梨沙「……じゃあ、打ち合わせ通りに私と晴が先に出るから……」

晴「オレ達が呼んだら……」

光「ああ!アタシの出番だな!」

梨沙「……うん、そう」

晴「……よし、先にいくぜ」

光「ああ!任せてくれ!!そして会場のファンの皆に(とあとPにも)、ヒーロー・南条光の活躍を存分に見せてあげるんだ!!」


梨沙「……」

晴「……」


光「じゃあ二人とも!次は舞台で会おう!!」


梨沙「……」

晴「……」



晴「……おう」


梨沙「……」

晴「……もうすぐだな」

梨沙「……ホントにやるの?」

晴「……もう決めただろ」

梨沙「……そう、よね」

晴「……」

梨沙「……光の、ためだもんね」

晴「……おう」


司会「さぁ!ドリームLIVEフェスティバルも今日で第7ラウンド!!そして今日のスペシャルゲストは……ビートシューターのお二人でーーーす!!」



ワァァァァァァァァッ



梨沙「ハァーイ!皆元気ー?カッコよくてセクシーで可愛いアイドル、梨沙の登場よ!!」

ワァァァァァァァァッ

晴「ファンの皆ー!今日はオレ達ビートシューターのライブよろしくな!!」

ワァァァァァァァァッ

梨沙「……なーに喜んでんのよ!この変態ども!」

ワァァァァァァァァッッッ!

梨沙「変態!変態!変態! 変 態 ! ! 」


ワ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ッ ! ! ! !



梨沙「……ふふん♪ さぁっ!今日は皆で私達のライブ……楽しんでいってね!!」


舞台袖










梨沙P「見事な変態!5連発、いただきました」

P「いただきましたじゃないが」

梨沙P「だが会場を見ろ。熱気に包まれてるじゃないか」

P「包まれてるな。包まれてて良いのかこれ」

梨沙P「大丈夫大丈夫。梨沙のパパも今の変態の連呼っぷりには満足間違いなしだろうしな」

P「パパそれ大丈夫なのか?つーかお前らのアイドルが大丈夫なのか?ファンこんなんばっかなの?」

晴P「大丈夫だ、問題ない。俺達にとってはいつもの光景だよ」

P「いつもの光景なの?」

晴P「梨沙くんのファンは当然としてウチの晴のファンも晴のバニーやヘソ出しウェイデング、ハーフパンツに興奮する猛者たちだ。変態コール程度で会場の空気が壊れたりはしない。寧ろ見ろ、空気がみるみる暖まっていくじゃないか」

梨沙P「掴みはバッチリだな」

P「余計心配だわ」

梨沙P「……前から言おうと思ってたんだけどさ」

P「?」

梨沙P「お前……ちょっと自分のアイドルに過保護すぎない?」

P「……?」

梨沙P「……別に他所のプロデュース方針をどうこう言う資格はないんだろうけどよ……お前光ちゃんにスカートすら履かせたことないだろ?」

P「……」

梨沙P「他のP連中の中でも同じようなこと思ってる奴等、多分ちょいちょいいるぞ?」

P「……」

梨沙P「俺はアイドルなんて攻めてなんぼだと思ってるからよ。梨沙もノリノリだし偉い人に怒られない程度に攻めた衣装着させてるよ」

P「……」

梨沙P「……俺は正直お前のやり方、いつか限界が来ると思ってる」

P「……!」

晴P「……」

晴P「……俺もコイツの言うことは一理あると思う」

P「……」

梨沙P「……」

晴P「……アイドルをファンの前に出すと言うことは少なからずそういう部分を押し出す必要がある」

P「……」

晴P「そういう商売だ。それがアイドルだろう?」

P「……」

晴P「……俺は晴は最近変わってきたと思ってる」

P「……?晴ちゃんが?」

晴P「……ああ。ファンを意識して、アイドルとしての自覚が強くなっていってるように思う」

P「……ファンならウチの光だって大事にしてるぞ」

晴P「……大事にはしてるんだろうが…多分、俺の晴のとはまた違うと思う」

P「……?」

晴P「……いや、わからないならいい」

P「……???」

梨沙P「……」

梨沙P「お、そろそろ光ちゃんの出番だぞ」

P「! 来たか」

晴P「いよいよか」

梨沙P「俺はあの3人の相性は良いと思ってるが……どうだろな!」

晴P「ふふ……楽しみだな」

P「そういや曲はどっちにするか最後まで迷ってたらしいな」

梨沙P「え?そうなの?」

晴P「初耳だな」

P「……え?」











梨沙「はーーーい!皆注目!今日はサプライズがあるわよ!!」

晴「オレたちビートシューターにもう一人今日は加わるんだ」

ワァァァァァァァァッ!?

梨沙「フフッ……誰だと思う?」

ダーレーーー!?

梨沙「今日だけの特別ゲスト、私達のもう一人の仲間……それはなんと……この子!!」


バァァァァァァァァンッ


光「とう!」バッ

ザザァッ!

光「皆!待たせたな!!」



光「南条光! ファンのミンナの声援に応えて、只今見参!!」

晴「皆!というわけで今日はオレたちはビートシューターwith光で行くぜ!!」

ワ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ! !

梨沙「フフッビックリしたー?」

ビックリーーーー!

梨沙「……と、言うわけで改めて紹介するわよ!」

光「とう!」ビシッ

ワァァァァァァァァッ

梨沙「アタシ達のユニットにゲストの光が来てくれたわ!」


ワァァァァァァァァッ


梨沙「……」

晴「……」コクッ


梨沙「……っ!」

梨沙「ヒーロー封印してね!」

光「ああ!いつものように正義のヒーローとして……」


光「……えっ?」


光「ふ……封印!?」

梨沙「そうよ!さぁ!音楽始まるわよ!」

晴「よし!やるか!」

光「ちょっ……」


~♪~~~♪♪


光「……あれ?これって……」

梨沙「……何よ?“こっちのダンス”も練習してたでしょ!やるわよ!」

晴「光!もう始まってる!本番なんだぞ!」

光「……でもいきなり封印って……」

梨沙「もう!アンタね!それでもプロなの!?」

晴「光!いくぞ!ダンス覚えてるだろ!」

光「……っ」



光「……アタシは……」





P「……?」

晴P「……」

梨沙P「……ん?」

P「……アレ……事前に聞いてたのと内容ちがくないか?」

晴P「……たしかに。今日やると聞いてたのとフリも何も違うな」

梨沙P「……急に変更せざるをえないようなトラブルがあったのか?」

P「……いや、どうだろうな……俺には光だけ何か戸惑ってるように見える」

晴P「……そうだな……少なくとも晴たちは落ち着いて踊ってる」

梨沙P「……連絡ミスかなんかがあったのか?いや、でもさっき俺らがいたときは……」

晴P「……まぁ、もう始まった以上どうしようもない。終わるまで俺達に出きることはないしな」

梨沙P「……だな。まぁ、大丈夫だろう」

P「……」


P「……?」

光(……なんでいきなりこんな……それに……)

光「……アタシは……ヒーローじゃ……」

晴「オレらは、まずアイドルだぜ!!」

梨沙「そうよ!そんなの今さらじゃない!!」

光「……っ」

光(でも……)

光(でも……今日来てくれたファンはヒーロー・南条光を見に来てて……)



光「……!」


光(皆……笑ってる……)


光(……いつもと…同じように……)



ワァァァァァァァァッ


晴「……よし!」

梨沙「まず一曲目ね!」

晴「LIVEバトルだからな……あっちの曲が終わるまでちょっと休めるな」

梨沙「……光もバッチリ踊れてたわね!流石じゃない!」

晴「……まぁ、こう見えてオレらの中で最年長だしな……」チラッ


光「……」


梨沙「……っ」

晴「……」


梨沙「……晴、ちょっとこっち」クイクイ

晴「!」


晴「……ん」

梨沙「……」

梨沙「ねぇ晴、光がヘコんでたけど、これでよかったのかな……?」

晴「いいんだよ梨沙。光のためにも、オレたちがアイドルらしくいなきゃ」

梨沙「……そうね……そうよね」

晴「うん」


ワァァァァァァァァッ…


梨沙「! 一曲目の結果が出るわよ!」

晴「!」


光「……」


司会「結果が出ました!!一曲目のLIVEバトルは……ビートシューター with 光の勝利です!!」


ワ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ッ ッ




梨沙「……っ!!やった!やったわ!!」

晴「よっし!まず一勝だな!!」

光「……」ハァ…ハァ…

梨沙「……光?」

晴「……」

光「……」ハァ…ハァ……



光「……っ」

光「勝った……けど、いつもと違う」


晴「……」

梨沙「……」


光(LIVEに勝った……でも……ヒーローじゃなかったのに……)

光(勝っちゃった……?皆喜んでくれたの……?でも……)


光(でも……)


光「……」ゼェ…ハァ…


ワァァァァァァァァッ


梨沙「! ほら!二人とも!ファンに応えなきゃ!」

晴「! そうだな!」

梨沙「皆ーーー!私たちに入れてくれてありがとね☆」

ワァァァァァァァァッ

晴「おう!応援サンキューなーーー!!」

ワァァァァァァァァッ


光「……」


晴「……」

晴「……光」


光「……!」ビクッ

晴「ファンに応えなきゃだろ。手、振ってやれよ」

光「でも……でも、今のアタシは……!」

梨沙「……」

光「今のアタシは……皆が見ようとして来てくれてたヒーロー・南条光じゃなくて……」

晴「……光」

光「!」

晴「ヒーローはファンに手を振れない。ファンが求めてるのはアイドルの光だよ」

光「――!」


ワァァァァァァァァッ……


光「……っ」


梨沙「……ホラ、手……振ってあげなさいよ。ちゃんと笑顔で」

光「……」






P「……」

晴P「明らかに雰囲気がおかしいな」

梨沙P「……だな」

P「……」

梨沙P「光ちゃん笑顔なんか下手すぎないか今日?」

晴P「控え室で見せてた元気が完全に消えてるな……」

P「……」






司会「さぁ!それではLIVEバトル2曲目いきましょう!!」



晴P「!」

梨沙P「……始まっちまったか」

P「……」

P(……どうしたんだ……光……?)




光(……アレ?)

光(……アタシ何してるんだっけ?)


光(……これ、可愛くてセクシーだって梨沙が言ってた方のダンスじゃないの……?)

光(……なんでアタシこっち踊ってるんだろう……)

光(ヒーローっぽくないって……止めようってなった方じゃなかったっけ……)



光(……アレ?これ……本番?お客さんやライトの光が沢山みえる……)

光(……晴も梨沙も普通に踊ってる……笑顔で……)


光(……なんだろう……他人事みたいな……変な感覚……)



でも……お客さんの笑顔はいつもと変わらない……

アタシがちゃんとヒーローの役割を果たさないと……晴と梨沙の足を引っ張っちゃうって思ってたのに……

こんなに今ヒーローっぽくないことしてるのに……






なんで……?



晴P「……」

梨沙P「……目に見えてパフォーマンスが落ちてんな」

晴P「踊りは今のところギリギリ、といった感じだが……顔からは完全に笑顔が消えてるな。そろそろ客の中にも空気が違うのに気づき始めてる人が出てるだろう」

梨沙P「だな……でも光ちゃんああいう可愛いフリもいけんのな……表情さえイケてりゃかなり良かったんじゃないか?」

晴P「……かもな」


P「……」


晴P「……」

晴P「……予定と内容が変わった同様か?」

梨沙P「え?いやー……そういうトラブルならもっとアドリブ入れたりして“遊び”入れそうなもんだが……」


P「……」



ワ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ……






司会「さぁ!最終結果が出ました!!どうぞ!!……お!?この結果は……!」


ワァァァァァァァァッ


司会「今日のスペシャルゲスト……ビートシューター with 光は……!」



晴「……!」ハァ…ハァ…

梨沙「……っ」ゼェ…ゼェ…

光「……」グッ



司会「惜しくも!敗北という結果に終わってしまいました!!」


アァァァァァァァァァァッ…


晴「……!くっそー!」

梨沙「……悔しいわね……」

晴「だなー!あー……ちくしょー……」


光「……」


司会「ですが!」


晴「!」

梨沙「!」

光「……?」


司会「今日のビートシューターと南条光さんは新しい姿を見せてくれましたね!特に南条光さんは今までのヒーローっぽいキャラに反して可愛い踊りを見せる事で新たな一面を私たちに見せてくれましたね!!」


光「……っ」


ワ ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ! !


光「――っ!!」


晴「……」

梨沙「……」


光「……」


『ヒーロー封印してね!』

『ファンが求めてるのはアイドルの光だよ』

『ワァァァァァァァァッ』


光「……」ハァ…ハァ……






光(……ずっと……ずっと求められてるのはヒーローの……ヒーロー・南条光だと思ってた……)

光(プロデューサーにスカウトされて……アイドルになって……ヒーローみたいな衣装を貰って……)

光(それで……ヒーローみたいになれたと思ってた……ヒーローになれたって思ってた……ヒーローとして……求めてくれてる人たちに応えようって……)

光(けど……でも……)

光(……もしかして……やだ……)



光(でも……ひょっとして……っ)


光(……ヒーローとしてのアタシは……別に必要とされてない……?)



司会「ビートシューター with 光 の皆さん!どうもありがとうございました~~~!!さぁ!次のスペシャルゲストは……」















晴「ふぅ……負けちまったけど楽しかったな」

梨沙「そうね……まぁ、色々改善点があったけど、次までにそこは直せば良いわ」チラッ


光「……」


晴「……」チラッ

梨沙「……、……」



光「……くっ……」

光「……アタシがやってたのは、中途半端なヒーローごっこだったの……?」


晴「!」

梨沙「……」



梨沙「……私達が目指すのはトップアイドルでしょ」

梨沙「“ごっこ”じゃ……届かないわよ」








晴P「晴、お疲れ様」

晴「! おう、サンキューな」

梨沙P「梨沙!お疲れだったな!ほれこれ羽織れ、冷えるから」

梨沙「! あら、ロリコンの変態のくせに気が利くじゃない」

梨沙P「お前な……そこは『ありがとう!親切で素敵なプロデューサー!』とかでいくね?」パサッ

梨沙「♪」




P「……光」

光「……」

晴「!」

梨沙「……」


P「……」

光「……」

P「……っ……」

P「……とりあえず、お疲れ」

光「……」コクッ


晴P「……?」

梨沙P「……」


P「……」

P「……一旦戻って、ちゃんと休もう」

光「……」コクッ

P「……」


P「……あとで、時間いいか?」

光「……?」


控え室










梨沙P「光ちゃんとアイツはどっか行っちゃったねぇ……」

晴P「まぁ、明らかに様子がおかしかったしな」

晴「……」

梨沙「……」

梨沙P「そういや打ち合わせと微妙に違ったよな?なんかあったのか?」

晴P「そうだ。一応は成功したから良かったようなものだが……トラブルがあったのなら聞いておかないといけない。準備不足か?連絡のミスか?」

晴「……いや、なんつーか……」

梨沙「……」


梨沙「……わざと打ち合わせと違うことしたのよ」


梨沙P「……?」

晴「……」

晴P「……?どういうことだ?」

晴「……短期間とはいえユニット組む以上一緒にレッスンとかするだろ?」

晴P「……当然だな」

梨沙「……アタシたち、光としばらく一緒にレッスンする内に色々気付いたのよ」

梨沙P「……?」

梨沙「……」

梨沙「……あの子、睫毛長いの」

梨沙P「……」

晴P「……」

晴P&梨沙P「……は?」

梨沙「……」

晴「……あと、眼、瞳がすげぇキラキラ綺麗なんだよ、光は」

晴P「……」

梨沙P「お、おぅ……」

晴P(天然ジゴロだとは思っていたが……まさか晴……そっちの気が……?)

晴「……?なんだよ?」

晴P「……いや……」

梨沙「……」

梨沙「……小さい女の子って可愛いわよね?」

梨沙P「? まぁそうだな。可愛いな」

晴P「うわっ」

梨沙「げっ……アンタやっぱそういう趣味なの……?」

晴「梨沙、とりあえずオレの後ろに下がってろ」

梨沙P「えっ!?いや……えっ!?ちょっと待って!今のは酷くない!?何!?誘導尋問!?」

晴P「……後でちゃんと自首しろよ」

梨沙P「何を!?えっなんなの!!?」

梨沙「……私達二人とも、一緒にレッスンするうちに気付いたのよ」

晴P「……気付いたって……何にだ?」

梨沙P「……」

晴「……今日の光のダンス、どうだった?」

梨沙P「……笑顔が足りない、動きに迷いがある、自信も足りない」

晴P「声量もだな。ファンへのサービスにも欠いてる。踊ってないときはほぼ棒立ちだ」

晴「……そういうんじゃなくてさ、ダンス、合ってただろ?」

梨沙P「……?」

晴P「……そうだな。あまり普段の光くんとは違うイメージのダンスだったが……アレ自体は悪くなかったという印象だな」

晴「……だろ?」

梨沙P「晴ちゃんも合ってたぞ。可愛かったぜ」

晴「おっ……オレはいいんだよ!!オレの話は!!」

晴P「次の仕事も可愛い系でいくか」

晴「おい!いいっつってんだろ!!」

梨沙「……話戻していい?」

梨沙「……きっかけはさ、私が可愛くてセクシーな方のフリが良いって言ってとりあえず皆で合わせた時なのよ」

梨沙P「……」

晴P「……」

梨沙「そしたらその……思いの外良かったのよ……光が……その、良い感じに」

梨沙P「……まさか……」

晴P「……最後まで聞こう」

梨沙「……ありがと。で、その……晴も同じこと思ったみたいだったの」

晴「……」

晴「……でもさ、光はそっちには全く興味なかったんだ。まぁ、オレも気持ちはわかるんだけどさ。カッコいい方が良いもんなって」

梨沙「……でもあの子、自分はヒーローだから!しか言わないのよ。ホントに考えもしてないのよ!! でも私も晴も、光のああいう所出した方がぜっっったいファンが見たら喜ぶって思ったの!」

晴「……オレさ、最初はアイドルの仕事ノリ気じゃなかったけど……今は色々とさ、仕事楽しいと思ってんだ」

晴P「……!」

晴「……こっち見んなよ照れ臭いから」

梨沙「……」

梨沙「……私もパパのためってだけだったけど、今の晴と似たような気持ちよ。今はね」

梨沙P「梨沙……!」ジーン…

梨沙「キモいこっち見ないで」

梨沙P「梨沙……」ズーン…

晴「……」

晴「……それでさ、なんか……光がスゲェ勿体無いって……そう思っちゃったんだ。多分アイツ、そういうのは知らないと思うんだよ」

梨沙「……だから、そういうの実際にさせてみようって。絶対お客さんは……ファンは喜んでくれるからって確信があったし、私達」

晴P「……なるほど」

梨沙P「……ちょっと良いか?」

梨沙「ん……」

晴「なに?」

梨沙P「……それなら事前に本人にそう言って納得して貰ってからそっちでやれば良かったんじゃないか?いきなり本番でやるってのは流石にプロデューサーとしては……」

梨沙「……仕方ないでしょ。あの子、頑固だもの。ヒーローとしての自分しか求められてない!とか、考えてそうだし」

晴「……オレたちも色々考えたけどさ、逃げ場のない本番でいきなりやればどうとでもなると思ったんだ。元々オレらのユニットだからもし光がそれでミスしてもカバーできるとも思って……」

梨沙「そうよ!それでファンが喜んでる姿を実際に体感させたら、もう逃げ場ないでしょう!?ちょっとショック受けるかもしれないけど、あの子がアイドルとしてこれから続けていくこと考えたら……って!」

晴「……オレらライバルでもあるけどさ、オレらが感じた楽しいって気持ちとか……そういうの知らないのってやっぱり勿体無いって思ったんだ。二人とも」

梨沙P「……」

晴「……」

晴P「……二人の言い分は分かった。共感できる部分もあるし、気持ち自体は理解もできた」

晴「……!」

梨沙P「……まぁな。話聞いてて確かに光ちゃんはよく見りゃ可愛いしそういうのもアリかもなって思ったよ、実際」

梨沙「……!ねっ!でしょでしょ!?そうでしょ!?」

晴P「……ただ」

晴「!」

梨沙「……!」

晴P「本番でいきなり打ち合わせと違うことをやったのはダメだ。少なくとも俺達には伝えておくべきだった」

梨沙P「そうそう」ウンウン

晴「!」

梨沙「あ……」

晴P「……少なくとも俺達二人は色々思うことはあっても最終的にお前らの意見を支持したと思う」

梨沙P「……まぁな」

晴「……」

梨沙「……」

晴P「晴が……お前達がアイドル活動にそこまで楽しさを感じてくれていたのも、聞けて本当に嬉しい」

梨沙P「うん、ちょっと泣きそうになった」

晴P「……だが、何も言わないっていうのは信頼も信用もしてないと言うのと同じだと俺は思ってる」

晴「……!」

梨沙「……」

晴P「……次からは、ちゃんと言ってくれ」

梨沙P「……俺もだよ。な?」

晴「……」コクッ

梨沙「……」コクッ

晴P「……それで、光くんの反応はどうだった?」

梨沙「……」

晴「……」

梨沙P「……今の話聞いてから思い返しても、思ってたより元気なかったな」

晴P「……」

晴P「……何か言ったのか?」

晴「……ファンが求めてるのはヒーローの光じゃなくてアイドルの光だって」

梨沙「……私は、トップアイドルを目指すなら中途半端じゃなれっこないって」

晴P「……」

梨沙P「……」

晴「……」

梨沙「……キツいかなって思ったけど……でも……事実でしょ?光が半端なことしてる間に、他のアイドルたちはアイドルとしてアイドルを頑張ってるじゃない。トップアイドル目指してできた」

晴「……正直、一緒にレッスンしてる時もヒーローの事ばっかり言ってて、アイドルとして中途半端だと思ったよ。妬んでるわけじゃないけど、オレだってその……色々な格好仕事でしてきてるわけだし……でも、光にはそういうのがないだろ?」

晴P「……そうだな。もしプロデュースしてたのがアイツじゃなくて俺なら今の晴と同じような感じで売り出してたと思う」

梨沙P「……俺だったらどうしたかな……今の梨沙みたいな感じとまではいかなくても、もっと攻めるかな」

梨沙「フン!私はもっと攻めても良いのよ?パパのために日々女としての美貌を磨いてるもの!」

晴P「……ただな」

晴「?」

梨沙「?」


晴P「光くんのプロデュース方針を決めるのは俺たちじゃない。アイドル・南条光の担当プロデューサーだ」

晴「……!」

梨沙P「俺達は互いのプロデュース方針に過度に干渉はしない。俺も梨沙のプロデュースの仕方に外野にあまり干渉されたくないよ。お前のパパなら良いけどな」

梨沙「……っ」

晴P「……俺達はお前達のプロデューサーとして、これだけは言っておく事がある。大事なことだ」

晴「……」

梨沙「……なに?」

晴P「……俺と晴は、出会ってプロデュースしてデビューして、色々な仕事をしてここまできた」

晴「……うん」

晴P「……。そうして積み上がって、今の晴がある」

晴「……」

晴P「……フッ……本当に色々あったな」

梨沙P「……俺もコイツと同じく、梨沙のパパと出会って梨沙のパパとプロデュースして梨沙のデビューからの色々な仕事を梨沙のパパと見守ってきた」

梨沙「ちょっと!私のパパばっかりじゃないの!ちょっとは離れなさいよ何それ!!?」

梨沙P「俺と梨沙パパと梨沙が積み上げてきたのが……今の梨沙だ」

梨沙「……なんか釈然としないわね」

晴P「……とにかく、そうやって二人で……互いに積み上げてきたものが今のお前達だ」

晴「……」

梨沙「……?」

晴P「そして、そこにファン達が加わる」

晴&梨沙「「!」」

梨沙P「……自分にファンが出来たことで、お前ら多分意識も世界も変わったろ?」

晴「……おう」

梨沙「……そうね」


晴P「……」

晴P「そうやって沢山のものが積み上がった結果出来たのが今の君たちだ」


晴P「そして、それは光くんも同じだ」

晴「……?」

梨沙「……」

晴P「今の光くんも、光くんのプロデューサーと色々なものを積み上げて積み上げて、そしてファンと築き上げてきたものだ。二人にどう写ってたとしてもな」

晴「……」

梨沙「……」


晴P「……でも、今日二人はそれを否定してしまった。悪意なんかなくても、な」

晴「!!」

梨沙「――!!」


梨沙P「……二人にそんなつもりは無いことはわかってるし、光ちゃんのことを、ライバルとして仲間として……しっかりと考えてやったことだったんだと思うよ。……でもな、今コイツが言ったことも覚えといて欲しい」


晴「……っ」

梨沙「……っ……!」


晴P「……同じ仲間で、同じライバル……相手も一緒なんだよ。……ただ……俺達はどういう結果になっても今日の二人の行動を支持すると決めた。だから今日のことについてはどういう結果になっても二人は誰にも頭を下げる必要はない」

晴「……」

梨沙「……」

晴P「ただ、やったことの意味は……二人の担当として覚えておいて欲しい」

梨沙P「……うん」


晴&梨沙「……」


ガチャッ


晴P「!」

梨沙P「!」


P「悪い、光の体調やっぱ悪いみたいだわ。俺先に光送って帰すから二人に後のこと任せる。すまん」


晴P「……ああ、わかった」

梨沙P「……大丈夫なのか?」

P「……わからん。ただ熱とかじゃないみたいだからそこはちょっと安心した」

梨沙P「……そっか。とりあえずアレだ、お大事になー」

P「ん。悪いな。二人もお疲れ様。またよろしくな」

晴「……」

梨沙「……」

P「……ん?」

晴「……うん」

梨沙「……お疲れ様って、光に伝えといて」

P「……あぁ、ありがとう」


バタンッ




梨沙「……」

晴「……」

晴P「……気にしなくていいからな」

梨沙P「……な」

梨沙「……」

晴「……」


帰り道・車の中



ブロロロロロロロロ…





P「……道混んでんなぁ……まぁ、さっきのライブの客とかもいるからかな」

光「……」

P「……」チラッ

光「……」

P「……」

光「……」



P「……」

P(……何も喋らず、か……)


光「……」

P「……」ハァ…


P(参ったな……)

P(……こんな光は初めて見た……)


P「……」

光「……」



P(……ライブの後、スタッフの人らに挨拶は出来てた。様子は若干おかしかったし元気もなかったが……出来てはいた)

P(でも楽屋に戻る途中……ポツリとあの一言……)


『……ごめん、プロデューサー……』


P(……その後は時間とって何を聞いても答えてくれねえしずっと沈みっぱなし……)

P(……なんなんだよ畜生……なんで何も言わないんだ……?何に対してのごめんなんだ?フリが聞いてたのと違ったのがか?でもライブ自体は大きなヘマもしてなかったぞ?)

P(……そうだ、本当なら今日のライブの反省会だのなんだの…いくらでもやることあんのに……何してんだ俺らは)

P(……)

P(……ライブの内容……多分あの二人がアドリブで変えたんだろうな……普段の光がやらないようなライブだった……)

P(まぁあの二人のライブにこっちがゲストで入ってんだ。そこはあっちのノリややり方があったんだろう。寧ろアドリブで光はよく合わせたよ)

P(……あんまやらない、女の子女の子したダンスや歌のライブだったな……)


P「……」

P「……なぁ、光」

光「……?」

P「……」

光「……」

P「……お前さ」


『プロデューサーの指示なら、どの現場にも飛んでいくから!』


P「……」

P(……『嫌な仕事することになったからそんなに落ち込んでんのか?』)

P「……」

光「……プロデューサー?」

P「……」ハァ…

光「……」

P「……んなわけねぇよな……」ポツリ

光「……え?」

P「……なぁ光」

光「……?」



P「……飯でも食いにいくか」


P「……ファミレスとか久し振りな気がするなぁ……何にすっかな……」

光「……」

P「……」

光「……」

P「……決まったか?」

光「……」フルフル

P「……」



P(……明らかに食欲がなさそうな人間を飯に連れてきたのは失敗だったかもしれん……)

P(……けど14歳の女子中学生連れて適当にドライブってのもな……どのみちあのまま適当に走らせても、話してくれるか怪しい予感はするし……)

P(かといってなんも聞かないまま帰すのだけはナシだ。それに、光と同い年のナターリアちゃん担当してたアイツも言ってた)


ナターリアP『でかい仕事が終わったらまずは飯、というか寿司だな。回る方の奴だ。労い、ご褒美、反省、そういうのをまとめて美味いものを食べながらする!それに限る!』

ナターリアP『労いながら美味いもの食っていい気分!ご褒美に美味いもの食べていい気分!反省で気分が落ち込んでも美味いもの食べて最後はいい気分!何事もプラスのところから始める!それが仕事やアイドルとのコミュニケーションを上手くいかせる秘訣だ!』

ナターリア『P!ナターリアお仕事頑張ったヨ!ごホービにスシが食べたいんだナ!』テッテッテー

ナターリアP『お!そうかそうか!よしよし良い子だナターリア!じゃあ、今日は寿司食いに行くか!回る方の奴な!』

ナターリア『わぁい!スシ!ナターリアおスシ大好き!!』

ナターリアP『うん、回る方のな!……クーポンある奴な!』



P(……)

P(……正直他に思い付かなかったしな……なんか腹に入れればもしかしたらリラックスして話してくれるかもしれん)

光「……」

P「……」

P(……)

P(……光だって14歳の女の子だ。それぐらい俺だってわかってる)

P(例え普段は事務所の屋上で小学校低学年の子どもらとノリノリでヒーローごっこしてようとそこは変わらん……筈だ。うん)

P(……俺が思うより、実際悩みは多いんだろうし色々考えてるのもわかってる)

P(……それがわかるだけの時間の過ごし方は、してきた筈だ)


P(……だけど……)


P(……だけどこんな光は……こんな顔は初めてだ……なんなんだ……まるで違う人間を見てるみたいじゃないか)

光「……」

P(……こいつ、こんなに脆そうだったか……?見てる方が精神的に参るよ……)

光「……」

P(無理に踏み込んで悩んでることを聞くのも、有りなのかもしれないが……)

光「……」

P(……『何で言ってくれないんだ』『俺に言えない類いの事で落ち込んでいるのか』『なら何処まで踏み込んで良いんだ』……)

P(……)ハァ…

P「……決まったか?」

光「……ううん…まだ……ごめん」

P「……適当に頼むから、とにかくなんか食え。ライブで散々身体動かして体力消費してんだ。とにかく腹に入れとけ。……食べれるだけで良いから」

光「……うん」


店員「以上でご注文はおそろいでしょうか~?」

P「はい」

店員「それではごゆっくりお過ごしくださいませ~」


P「……いただきます」

光「……いただきます」

P「……」カチャカチャ モグモグ

光「……」

P「……」モグモグ

光「……」

P「……」モグモグ

P(……食わないな)

P(たしか光と同い年の蘭子ちゃんがハンバーグが好きって聞いてたから光にもハンバーグを頼んだんだが……少し安直過ぎたか?)

P「……」ゴクンッ

P「……冷めるぞ」

光「……うん……ごめん」

P「……」

P「……!」ハッ

P「……しまった」

光「……?」

P「……このあと光のこと送り終わったらな、事務所に戻って書類仕事片すつもりだったんだ……」

光「……」

P「……だのに……だのに何故俺はスーパーガーリックイカスミブラックパスタなんぞを頼んでしまったんだろう」

光「……」

P「……」ニッ←歯が真っ黒

光「……っ!」

光「……プッ……フフッ……アハハハハッ!」

光「アハハハハハッ!ぷ…プロデューサー……顔、怪人みたいになってる……!アハハハハハハハハ!!」

P「……!!」

P「……」ニッ

光「……っ!アハハハハハッ!!」ゲラゲラ

P「……」ニッ ニッ

光「~~~っ!!!!」プルプル

P「……」ニッ ニッ ニッ ニッ ニッ ニッ

光「――っ!!」バンバンッ

光「お……お腹痛い……っ!もう、やめてよプロデューサー……プッ……ククッ…アハハハハハ!!」ゲラゲラ

P「……」

P「……悪かった。まさかそんなにツボに入るとは……とりあえず落ち着け。笑いすぎだ。水でも飲め、ホラ」 コトッ

光「ハァ…ハァ……うん……あー……笑った笑った……」

ゴクゴク

P「……」



P「……」ニッ

光「ゴフッ!?」ブフゥゥゥゥッ

ビチャビチャァッ


P「ぶわっ!おまっ……マジかよきったねぇ!!お前……お前マジかよ?」

光「ゲホッゲホッ……ぷ……プロデューサーが水飲んでる時に笑わせるのが悪いんでしょ!?ゲホッ…ひ…人のせいにしないでよ!!」カァァァァ

P「お前……それにしたってこれ……お前狙ったろ絶対!顔にモロ食らったぞ!つーかよくここまで飛ばしたな!」

光「そんなん偶然だよ!!大体プロデューサーがイカスミパスタなんか食べるから!」

P「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!?あくまで僕のせいだと仰るんですか!?そうですか!そうなんですか!あーわかった!もう怒った!寄越せよ!お前のハンバーグ寄越せよ!」

光「えっ!?ちょっと!なんでそうなるの!?」

P「元々俺が頼んだんですぅ~!大体光が俺に水かけたんだからお詫びにハンバーグくれたって良いだろ!?」

光「なっ……!笑わせたのはPさんなんだから自業自得でしょ!大体Pさんが食べろって言ったんだからこのハンバーグはアタシのでしょ!言われた通りアタシが食べる!」

P「イカスミパスタと交換しない?」

光「やだよ食べかけじゃん!歯黒くなっちゃうししかも半分ぐらいもう食べてるし!」

P「なんだよ食べかけぐらい良いだろ!!俺とお前の仲じゃないか!一緒に歯黒くしようぜ!」

光「やだ!どのみちアタシのハンバーグは手つけずだから釣り合わないでしょ!」

P「よし。じゃあお前ハンバーグ半分ぐらい食え。そしてお前の食べかけと俺の食べかけを交換しよう。これでイーブンじゃないか」

光「……」

P「本気でドン引きした顔やめて」





P「……あー食べた食べた。もう口の中白いところないわ」

光「……美味しかったけど……なんかスゴい疲れちゃった」ハァ…

P「大声だしまくったからな。お店の人にも怒られちゃったし」

光「……うん」

P「……まぁ、アイドルってバレなくて良かったな。変装は上手くいってたわけだ」

光「……!」

光「……」

P「……」

P「……まぁ怒られたのは俺も2割ぐらい悪かったよ」

光「……」

P「……4割かも」

光「……」

P「……5……?」

光「……違うよ」

光「……やっぱり、アタシが悪かったんだ。なんにも言わなかったから、心配して笑わそうとしてくれたんでしょう ?それであんなことPさんは、さ」

P「……イカスミパスタは普通に食いたかったからだぞ」

光「……そっか」クスッ

P「……ああ」

光「……」

光「……心配かけて、ごめん」

P「……」

P(今度アイツ(ナターリアP)とナターリアちゃんに寿司でも奢ってやろう)

光「……」

P「……聞いてもいいのか?」

光「……」

光「……」コクッ

P「……何があった?」

P「……なんで、何も言ってくれなかった?」

P「……どうしたんだ?お前……今日、何かあったのか?」

P「……あったなら、ちゃんと話してくれ。言いづらいなら、ちゃんとそれを言ってくれ」

光「……」

P「……頼むからさ」

光「……」

光「……」

光「……プロデューサー」

P「……ん?」

光「……アタシのしてきたことって間違いだったのかな……?」

P「……え?」

光「……誰も、本当は必要としてなんかなかったのかな……?」

P「……はあ?」

光「……Pさん……アタシ……アタシが今まで信じてやってきた事って……全部……」


「全部……ニセモノのヒーローごっこだったの……?」

翌日・事務所




P「……」





P(……一睡も出来なかった……)

P「……我ながら情けねぇなぁ……」



P「……」



『アタシが……アタシが今まで信じてやってきた事って……全部……』

『全部ニセモノのヒーローごっこだったの……?』



P「……」


P「……きついな」ハァ…




ナターリアP「ん?」

ナターリア「ンー?プロデューサー、ドウしたノ?」

ナタP「いや、ちょっとな」

P「……」



ナターリアP「よ!」

ナターリア「ヨ!」

P「うぉっ! ?」 ガタタッ

ナタP「……驚きすぎだろ」

ナターリア「フフッ ドッキリ大成功だナ!」

P「……! あぁ…お前か……いやすまん、ボーっとしてたからビックリしたわ。あと、ナターリアちゃんもおはよう」

ナターリア「ウン!ヒカルのプロデューサーもオハヨウだネ!」

ナタP「な~んか朝から湿気たツラしてんなお前。どうした?何かあったか?」

ナターリア「アッたのカ?」

P「……いや……」

P「!」

P「……そういや、ナターリアちゃんってウチの光と同い年だったよな?」

ナターリア「?」

ナタP「あん?」

ナターリア「ウン、ナターリア、今14歳だからヒカルと一緒だネ!」

ナタP「あーそういやそうだったな、光ちゃんとウチのナターリアは14歳で同い年だな!」

ナターリア「同い年だネ!」

P「……!」



ナタP「……ん?同い年?」

P「あのさ、二人は今日の予定は?」

ナタP「ん?ウチのナターリアは今日は午前中に事務所でインタビュー受けて昼挟んでグラビア撮影だけど……え?同い年?」

ナターリア「ナターリア、セクシーに撮ってもらうんダ!」

P「……じゃあさ、二人が良ければなんだが……」

ナタP「……?」

ナターリア「ン?」

P「……昼飯奢るから……ちょっと相談乗ってくんないか?」

ナタP「……相談?」

ナターリア「……何かあったノ?」

P「いや、ウチの光との事でちょっとね」

ナタP「……」

ナターリア「ヒカル、何かあったのカ?」

P「……まぁ……ちょっと」

ナタP&ナターリア「「……???」 」

P「午後から撮影で昼が厳しかったら夕方でも何でも良いよ。寿司でもなんでも奢るからさ…」

ナタP&ナターリア「「ノッた!!」」

P「早っ」

ナタP「まぁ……俺達同僚だしな。それに仲間が悩んでるなら相談に乗るのが日本男児ってもんだ」

ナターリア「流石ナターリアのPだナ!カッコいいゾ!」

ナタP「もっと誉めて! ……あと晩飯の方が助かるな。撮影前に腹一杯はやっぱ問題がある。うん。とりあえず仕事終わったら1回ケータイに連絡するわ。あとですね、僕たちとっても寿司が良いです」

ナターリア「ナターリアも、ヒカルに何かあったラ心配だからナ! あとナターリアもスシが良いです!スシが良いナ!」

P「……悪いな二人とも、助かるよ」

ナタP「おいおい……随分凹んでんな……大丈夫か?クーポン使う?」

P「いや、大丈夫だ。最近あんま金使う機会がないからな。気にすんな」

ナタP「お、おぅ……まぁいいや!詳しい話はまた後でな!行くぞナターリア!今日の晩飯は寿司だ!寿司を食いにいくぞ!奢りで!!」

ナターリア「ウン!後でネ!ヒカルのプロデューサー!スーシ!スーシ!!」

P「……」







ナタP「……え?マジで同い年なの?」

P「どんだけ驚いてんだお前」


夕方・事務所近くの寿司屋(クーポン使えない)






ナタP「いや~とりあえずお疲れ!かんぱ~い!」

カシャーンッ

ナターリア「お疲れ様だネ!ナターリア、トッテモ頑張ったゾ!」

P「お疲れ様、ナターリアちゃん」

ナタP「いや~ほんと!今日もよく頑張ったなナターリア!偉いぞ~!ホレ、ナデナデしてやる!」

ナターリア「~♪ フフッ!ナターリア、イッパイイッパイ頑張ったからナ!後でイッパイ、ハグもしてネ!」

P「……ハグするにしても人目のつかないところでしてくれよ二人とも……アイドルなんだからさ」

ナタP「大丈夫大丈夫、流石にそこは気を付けてるよ」

P「……さて、とりあえず二人とも好きなもん好きに頼んでくれ。朝言ったようにここは全部奢るからさ。遠慮しなくて良いよ」

ナタP「おう……まぁアレだ、真剣な話みたいだし、な。
ナターリア!聞いた通り今日はこのお兄さんの奢りだからもう好きなもの好きなだけじゃんじゃん頼んでじゃんじゃん食べなさい」

ナターリア「ウン!じゃあまず大トロ!次、ウニ!あと……大トロ!!それと、大トロだナ!!」


P(……まぁ、大丈夫だろう……多分)

ナタP「うわっ!美味し!この赤だし美味し!?何これ!つーか蛤デカっ!?」

P「子供かお前は」

ナタP「あ?男はいつまでたっても子供だろーが! そっちだって、ヒーローアイドル?だっけ?そんなんプロデュースしてんだからさ、わかんだろ?そういうの」

P「……!」

ナタP「……?」

ナタP「マジで何があったよお前ら」


P「……」



P「……昨日さ、ライブあったろ?ドリフェス」

ナタP「?」

ナタP「……あぁ、あったなウチの事務所主催のが。アレ確か光ちゃんも出てたろ。何?昨日なんかあったのか?」

P「……実はさ、ライブ終わったあとウチの光がこんなこと言いだしたんだ」

ナタP「?」

ナターリア「このエビもプリっプリだナ!」



ナタP「……なるほどなぁ……んなこと言われたのか」

P「正直参ったよ。こっちからしたら今までのプロデュース全部間違ってたのかって言われてるようなもんだし」

ナタP「……あー……それはキツいな」

P「……あぁ。で、なんでそんなこと言い出したのかも一応聞いたんだが……」

ナタP「……なんて言ったの?」

P「……。昨日の光はライブにゲスト参加だったんだよ。ライブ出てるユニットにゲストで入るアレ。ナターリアちゃんもたまにやってるだろ?」

ナタP「ん? あ~そうだな。むしろウチのナターリアはライブの時はそっちがメインだったりするかもな。即席ユニットタイプだ」

ナターリア「ナターリア、色んな人と仲良クなれて嬉しいゾ!」

P「……ウチの光も今回はソレだったんだけど、参加先のユニットの子らがアドリブで当日やる内容変えたんだ。元々カッコいいタイプの曲やダンスでライブする予定だったのを変えて、さ。
それ自体は上手くいったんだけど……変えた先がなんつーかこう……すごい女の子っぽいというか……結局光もすごく女子っぽいライブやることになったんだよ」

ナタP「……ほぅ……女子っぽいライブか……」

ナターリア「オンナのコのライブナ……」





ナタP「……女の子じゃねぇの?」

P「いや、女の子だけどさ」

ナターリア「ナターリアはもう立派なレディだヨ!」

ナタP「レディご飯粒ついてる」

ナターリア「えッ?ホント?」

ナタP「可愛い」

ナタP「ライブはアドリブで変更、しかもいつもと真逆の路線……でも上手くいったってことはお客のウケは良かったんだろ?」

P「……あぁ。大盛況だった」

ナタP「……大盛況、か」

P「……」

P「……それが不味かったらしい」

ナタP「……?」

ナタP「それがどうしたら今までやってたことの自信喪失に繋がるんだ?1回可愛いライブやってウケただけなら『そういうのもアリ』みたいな感じで受け取りゃ良いだけだし、そもそも別に否定になんかなりゃしないだろう」

P「……そん時にユニットの子らに言われたんだと。『ファンが求めてるのはヒーローの光じゃない、アイドルの光だ』って」

ナタP「……」

ナターリア「……」

P「……」


P「……多分、重なったんだと思う。普通ならこんなことで悩まなかったと思うけど、今回は体感としてファンにウケてしまったのがキツかったんだろうな、と」

ナタP「……」

ナタP「……まぁ、間違ってはないな。光ちゃんはまずアイドルだ。ヒーロー路線で売ってるってだけで」

P「……それはわかってるさ。勿論。けど……」

ナタP「わかってるよ。売り出し方ってだけかも知らんが光ちゃんのは本人がやりたがってて、本人も真剣にしてたタイプのだろ?売るためのキャラ作りとかでなくさ」

P「……ああ」

ナターリア「……」

P「……まぁ、光がどうでも、アイドルのプロデューサーとしては売るためにまず売り出し方を考えなきゃならんのだけどな……。
でも本人の希望とは別に俺はあの路線は売れる確信があったんだ。実際光はヒーロー路線で間違ってなかったと思うし、あの形が光が一番輝く売り出し方だと思ってた」

ナタP「……そういや、ウチは最初からセクシー路線だったな……」ナデナデ

ナターリア「! ……♪」

P「……何より、光自身があの形で一番『活きる』と思った。これからアイドル続ける上で、楽しんで、モチベーションも保てて、一番『活きて』アイドルが出来る……ってな」

ナタP「……」

P「光は元々アイドル目指してたというよりアイドルになったら特撮番組で主題歌歌えてヒーローになれるからやる!……みたいな動機だったし」

ナタP「へぇ……!ははっ そりゃあ、また光ちゃんらしい動機だなぁ」

P「ああ。……俺はヒーロー目指すなら売り出し方も早い内からそれで固めるべきだと思った。
話してみたら俺が生まれる前っぽい特撮番組の話までポンポン出てくるし、中学生であれだけ特撮の話が出来る女の子も少ない。だから、もう最初からヒーロー路線で売ろうと思ったんだ」

ナタP「……」

P「……そんでそのままヒーロー系衣装のアイドルとしてデビューさせたよ。他とも被らない上にオタクトークも出来る女子中学生……営業の時も売る強みがハッキリしてたからな。これが一番正しい形だと、疑いもしなかった」

ナタP「……」

P「……何より、光が楽しそうだったんだよ。初めて衣装見たとき大はしゃぎしてたからな。衣装さん達も満面の笑みになってたよ」

ナタP「そうだな……Pa組のアイドルは特に、見てたら元気もらえたりそういう形で笑顔にさせてくからな」

ナターリア「ナターリアもカ?」

ナタP「ん?勿論だぞ!」

ナターリア「♪」

P「……自分がスカウトしてアイドルやらせた子が、本人もそれを楽しんでくれてたらさ、プロデューサー冥利に尽きるだろ?……光がそんなだったから、それが何よりも俺もモチベーションに繋がったんだ」

ナターリア「……じゃあ、ヒカルのプロデューサーもヒカルに元気貰ってきてたんだネ」

P「……うん。そうだね。そうだった。だから、自分の売り方に疑問とか持たなかったのかな」

P「……不意討ちだったよ。まさか現役の、しかも光と同年代のアイドルに今までしてきたプロデュースを否定されてたなんて……そう周りには見られてたんだなって、聞いたときは正直堪えたよ」

ナタP「……」

P「……何より、光にまで『もしかしたらその通りなんじゃないのか』って思われたのが一番キツかったよ」

ナタP「……」

ナタP「……で、なんて答えたんだ?昨日そう言われて、お前はさ」

P「……」









光『……アタシ、ずっと今まで自分はヒーローとして頑張ってきてたと思ってたし、それでファンにも勇気や元気を与えられてたんだと思ってたんだよ……』

光『……でも、本当は別に……誰もそんなのを求めてた訳じゃなかったのかな……?』

光『アタシは……アイドルもヒーローだと思ってた。アイドルもヒーローも、人に夢や希望をあげて勇気を与えられる存在だって……同じだって……
だからアタシのやってたアイドルは、ちゃんとアイドルもヒーローも出来てると思ってた。ヒーローになれたって……』

光『……それで、トップアイドルになってもっと……もっと沢山の人に勇気をあげたいって思ってたんだ』

光『……でも……晴はヒーローのアタシが必要とされてるんじゃないって……結局はアイドルとヒーローは違うんだって……アタシが思ってたのは違うんだって……』

光『……アタシは……アタシはアイドルでヒーローだからファンを励ますことが出来てると思ってたんだ。ヒーローも大事な一部だって。でも……お客さんは全然ヒーロー出来てない、ヒーローを封印されたアタシでも全然気にしてなくて……晴の言う通り、別にヒーローのアタシが求められてたとか、必要とされてたとかじゃなくって……』

光『アタシが……アタシが信じてやってきた事は……アタシだけが、アタシ一人がその気になってた、ヒーローごっこだったのかな?って……』

光『……言ったんだ。二人に、聞いたよ。アタシがしてきたことはごっこ遊びだったの……?って』

光『……そしたら梨沙は……梨沙は否定しなかったんだ。……ごっこ遊びじゃトップアイドルにはなれないって、そう言ったよ』

光『……プロデューサー……アタシ……』

光『やっぱり……全部全部、ニセモノだったのかな……?』


P『……』

P『俺は……』

P『……俺は、正直ショックだぞ。そんなに俺のプロデュースが信じられないのかお前は?』

光『……え?』

P『つまりお前は俺の今までのプロデュースの仕方が、売り出し方が間違ってんじゃね?って言ってる訳だろ?いや~傷つくわ~』

光『……!ち、違うよ!そういう話じゃなくて……アタシが言いたいのは……!』

P『冗談だよ』

光『へ?』

P『話してくれてサンキューな。なるほどな……そりゃあキツかったな。自信も元気も、なくなって当然かもな』

光『……っ』

P『……でもな、悩みすぎだ。とりあえず、色々言いたいことはあるけど……プロデューサーとしてはまず……』

光『……!』

P『……俺はお前がしてきたことをごっこ遊びともニセモノとも思ってない。本当だ』

光『……!』

P『ファンレターのチェックとかもしてるんだぜ?間違いないよ。……あとな、そんなマイナスなことばっか考えんのって疲れが溜まってるせいもあると思うぞ』

光『……』

P『……光は明日からしばらく休みだから、とりあえずまずゆっくり身体休めろ。な?身体が疲れてるから変なことまで余計気になるんだよ』

光『……うん』

P『……』

P『まずは心も身体も休めて、ほんでもっと俺を信用してどっしり構えてろって!な?』





P「……たしか、俺が言ったのはこんな感じだった気がする」

ナタP「……」

ナターリア「……」

ナタP「……一見すると良い感じの事を言って解決させたように見える……けどその実肝心の部分は解決できておらず尚且つなんやかんやなぁなぁにして帰しました的な、そんなように見える」

P「……やっぱ気づく?」

ナタP「気づくわい」

P「……だよなぁ……」

ナタP「寧ろプロデューサーへの信頼や絆を盾にして無理矢理黙らせたようにすら見える。『俺を信じてないの?』なんて、黙らせ方が卑怯だな」

P「うっ……そこは正直自覚してる」

ナタP「実際、光ちゃんそれで解決した顔してたか?」

P「……俺が今までのを肯定したときは少し表情が和らいでたかな。ただ……完全にスッキリした顔はしてなかった」

ナタP「……だろうな。同年代の他の子に否定されて且つファンの反応を体感して出来た悩みなんだろ?いくら俺らがオッケーオッケー言ってもそれで全部晴れると思う?晴れませんよそりゃあって話だ」

P「正直な話、その時は俺も殆ど頭が真っ白だったんだよ……ガツンとやられた気分というか」

ナタP「……まぁ本人の前で導く立場のプロデューサーが悩んでる姿を見せなかったのは良かったと思うよ?俺は」

P「……」

ナターリア「……Pも、ナターリアのプロデュースのことで悩んだりするノ?」

ナタP「ん?当たり前だろ!もう毎日悩んでるよ!『こんなに可愛くてセクシーなナターリアの姿を俺以外の男に見せていいのかしら!?』ってな!」

ナターリア「ホント!?フフッ♪ナターリアのコト、独占したいんダナ!ナターリアスッゴク嬉しいゾ!」

ナタP「あ、可愛い」

ナタP「……でもナターリア、アイドルだしセクシーな可愛いアイドルスルの大好きだからPにはワルいけどお仕事もっとしたいんダナ……」

ナタP「ん?ああ!安心しろよ!それもちゃんとわかってるから可愛いお仕事もセクシーなお仕事もどんどん持ってくるからな!」

ナターリア「フフッ♪アリガトなプロデューサー!ナターリアはダイジョウブだヨ!」

P「……」



P「……なんか、二人を見てると羨ましいな。極端に壁がない感じがするよ」

ナタP「ん?……まぁ、その辺は俺とナターリアの仲とかプロデュース方針の違いとかあるからな」

ナターリア「プロデューサーとナターリア、とっても仲良しだモンナ!」

P「……まぁハグはやりすぎだと思うけど……ブラジル式なのか?」

ナタP「……要するにお前も光ちゃんもこのまま同じことやってて良いのか?って今思っちゃってんだろ?」

P「……まぁな……そうだな、うん」

P「今までは光が一番輝くと思う、且つ光も望んだ路線で売ってたよ」

ナターリア「……」

ナタP「……アイドルがやりたいことやらして受けるならそれに越したこたねぇもんな」

ナターリア「……!」

P「ただ、今は光自身がこの路線に悩んでしまってる。ただの自己満のごっこ遊びの範囲じゃないのかって、な。……今までと同じことしても本人にモヤモヤが残ってる限り今まで通りの仕事が出来るとは限らない」

P「でもだからといって、例えば路線を変えれば下手すりゃ今までのを否定を他ならぬ俺自身がすることになりかねない。何より、路線変えてもアイツが同じように楽しんで仕事出来るかどうか、わかんねえしな……」

ナターリア「……」

P「……アイツなら何させても大丈夫だろ!って、余計なこと考えずそういうヒーロー路線以外の仕事取ってくるのも出来たんだろうが……それって信頼なのか?とも思う。それに、正直あんな風に揺らいだり凹んだりするとは思ってなかったからな……」

ナタP「……」

P「……今更こんな事で悩むとも思ってなかった。カッコいいプロデューサーでいてくれって昔約束させられたが……我ながら情けねえな……」



P「二人は、どう思う?同じ年頃のアイドルプロデュースする人間として、光と同い年の人間として」

P「もっと売れる可能性があるなら、今までのを切り捨てる事になってもそっちにシフトすべきだと思うか?」

ナタP「……」

ナタP「……あくまで、俺個人の意見だが」

P「……」

ナタP「俺のナターリアには色んな仕事をやらせてる。それこそセクシーなサンタでも綺麗なウエディングでも大人っぽいダンサーでもおしとやかな晴れ着でも可愛いお姫様でもエロエロな鬼娘でも、な」

ナタP「……で、それは何をやらせても俺のナターリアは輝くと信じてるからだ」

ナターリア「……!」

P「……っ!」

ナタP「ただな、それはウチのアイドルがナターリアだからだ。他とは違う」

P「!」

ナタP「売り方も信頼の仕方や表し方も
アイドルによって違う。でも俺のナターリアは少なくともそうだ」

P「……」

ナタP「お前がもし自分のアイドルがこのままの路線でも大丈夫だと思ってるなら、そのままでいけば良いと思う。そう信じてるならな」

ナタP「でもお前が自分のアイドルは今までを切り捨てて路線変えたぐらいで凹たれたり折れたりしないって信じてるんならそっちの路線に変えても良いと思う。そう信じてるならな」

ナタP「……正直な、その悩みにはこれ以上の事は誰も言えねぇよ。結局決めるのはお前だ。アイドルの弱いところを見て、お前がどう受け止めてどっちを信じるかが全てだろう?」

ナタP「……俺は光ちゃんの担当じゃないからな」

P「……」

ナターリア「……」

ナターリア「ナターリアは……ナターリアは正直難しい話トカ、スシ食べるのトカで忙しかったカラ、わからないこと多いケド……」

ナタP「だよね。割りともくもく食べてたもんね」

ナターリア「ウン!ここのスシスゴく美味いナ!流石おタカいスシだな!!」

ナタP「そうだな!トロ霜降り過ぎだしな!サーモンも口の中で溶けたしウナギ国産だしな!」


P(まぁ、二人とも話しながらでもちょいちょい食ってましたもんね)


ナターリア「……ンットね、ダカラナターリア、あんまりムズかしいことは言えないしワカンナイケド……」

P「……?」

ナターリア「ナターリアは、ジブンのプロデューサーが取ってきたお仕事ならどんなお仕事でもやると思うナ」

P「!」

ナターリア「ヒカルもタブン一緒だと思うヨ?」

P「……っ」

ナターリア「アイドルが一番信用してるのって、ニニニン・サンキャクで頑張ってきたプロデューサーだと思う。ダカラ、プロデューサーが自分を信じて取ってきた仕事なら、結局ドンなのデモやると思うんダ!」

P「……!」

ナターリア「ナターリア、アイドルはプロデューサーのこと、プロデューサーが思うよりタクサン信頼してると思うヨ?」

P「……ナターリアちゃん」



ナタP「ナターリア……」ブワッ

ナターリア「フフッ♪」

ナタP「グスッ……あ、やべ……超可愛い」

P「……」




ナタP「いや~ほんっとにご馳走さまでした!」

ナターリア「ゴチソウサマでしタ!」

P「いやいや」

ナタP「沢山食べてなんかゴメンね!」

ナターリア「ゴメンナ!」

P「えーよえーよ」

ナタP「……」

P「……今日は二人ともありがとな」

ナタP「……まぁ、俺も同じ仕事してるからな。色々悩むとは思うけどよ、あんま難しく考え過ぎんなよ。中途半端なプロデュースしたらそれこそアイドル潰すだけになるぞ」

P「……ああ。わかってるよ」

ナタP「ほら!よく言うだろ?プロデュースはティン!と来るかが大事だって 。結局お前が本当にティン!と来る方を選べば良いと思うぜ」

P「……ティン!か……」

ナタP「そういやぁ今日光ちゃんは?」

P「昨日終わってからそのまま女子寮送って、あとはしばらく休みが続くから今朝徳島に帰ったよ」

ナタP「……ってことは今ごろ実家か」

P「ああ」

ナタP「……」

P「……」



ナタP「徳島ってどの辺だっけ?」

P「四国だバカヤロー」

徳島・光の実家

光の自室









光「……」ゴロン…


光「……」




『ヒーローはファンに手を振れない。ファンが求めてるのはアイドルの光だよ』

『私たちが目指すのはトップアイドルでしょ。“ごっこ”じゃ届かないわよ』




光「……っ」

ギュッ…






ナタP「……まぁアレだ」

P「?」

ナタP「女の子の人生背負ってんだ。悩んで当然だよな俺らもさ」

P「……ああ」

ナタP「……今日ので悩みは解決しそうか?」

P「……正直、まだだな。改めてこれから色々考えるよ。でも、気は少し楽になった」

ナターリア「オオ!良かったナ!」

P「……うん。ありがとな」

ナターリア「♪」

ナタP「……まだやっぱ答えがハッキリ出ない!ってんならさ」

P「……?」

ナタP「いや、まぁ俺の考えも所詮は1意見だからな」




ナタP「他の連中にも聞いてみたらどうだ?」

翌日・事務所









美由紀P「……」

裕美P「……」

森久保P「……」

愛海P「……」

美羽P「……」



グツグツ…(※蟹鍋中)




美由紀P「いいか皆……蟹の足は一人一本ずつだからな……」

愛海P「ケチくさいな……」

裕美P「……下の細いのは左右2本ずつで一本扱いで良くない?」

森久保P「胴体の方はどう分けるんだ」

美由紀P「身を取って均等に分けて蟹味噌は別皿に移そう」

愛海P「ケチくさいな……」

森久保P「男の鍋だぞ……もう早い者勝ちで良いんじゃないか?」

美由紀P「ダメだ。仲良く分けるって美由紀と約束したからダメだ」

森久保P「……」

美羽P「雑炊用のご飯は炊けてるからそこだけは安心して欲しい」




P「何してんだお前ら」

美由紀P「え?蟹鍋だけど」

愛海P「見ればわかるだろう」

P「いやそうだけどそこじゃなくて」

森久保P「人が増えてしまった……分け前が減るじゃないか」チッ

P「舌打ちやめろ。安心しろ参加しねぇから。というか昼から蟹鍋ってお前ら……」

裕美P「美由紀ちゃんの実家から贈ってもらったんだよ」

P「あー……北海道の?」

裕美P「そうそう。夕方皆が帰ってきたらもっとおっきい蟹でもっかい鍋するんだけどね。
美由紀ちゃんが先にちっこい蟹食べてても良いって許可くれたからさ、今いる連中は昼も蟹鍋なんだよ」

P「……」

美羽P「ご飯炊けてるから雑炊もできるぞ」

P「……」

P「……!そうだ、丁度いいや」

美由紀P「? どうした?」

P「……あのさ、お前らの担当って確か皆光と同い年だったよな?」

全員「「「……?」」」

P「……鍋食いながらで良いから……ちょっと相談乗ってくれねぇかな?」


美由紀P「……プロデュース方針?」

愛海P「……今さらそんなんに悩んでんの?」

P「……色々あったんだよ」

森久保P「……色々?」

P「……ああ」

裕美P「……それで、プロデュース方針って言うけど具体的に何を相談したいの?」

P「……さっきもちょっと言ったけどさ、“アイドルとしてより売れる可能性があるならアイドル本人の希望とは別の売り出し方でもするべきなのかどうか”ってのをな」

裕美P「……また難しいやつきたね」

美由紀P「……あー……そういうのか」

美羽P「……」

森久保P「……」



グツグツ…←蟹鍋

美由紀P「可能性ってことは別に確実に売れる!ってものでもないんでしょ?」モグモグ

P「ああ。だからそれも悩んでる原因だな」

裕美P「路線を変えて……か……ウチの裕美にはあんま関係ない悩みだからなぁ……考えたこと無かったや」モグモグ

P「……俺だって考えたことなかったよ……。だから直面して悩んでんだけどな」

美羽P「……」モグモグ

森久保P「お前の担当はたしか南条だっけ?確かに路線で迷うのは予想外かもな。俺は仕事の時の姿しか見てないからあの子はヒーロー路線ってのか?そういうの以外考えもしなかったが」モグモグ

P「……」

愛海P「でもヒーロー路線捨てるってのも別に悪い手じゃないのは確かだよね。ヒーローって固いイメージあるしファン層が低年齢層に向きやすいんじゃないの?アイドルっぽい仕事出来なくない?」モグモグ

P「……!」

愛海P「今14歳でこれから心も身体も大人になってく時期で大人とこどもまさに中間って所じゃん。本当に路線を変えるんなら案外最適かもよ?」

P「……」ムーン…

P「……お前らはさ、担当が今の売り出し方を内心嫌がってたらどうする?変えるか?」

森久保P「変えないな」モグモグ

裕美P「うわ」

美由紀P「即答だ」

森久保P「売り出し方以前にウチの森久保は基本仕事自体嫌がってるからな」モグモグ

裕美P「よく逃げてるもんね乃々ちゃん」

森久保P「すぐ逃げる。最初の頃は特に少し目を離せば逃げてたよ。今でこそ大分慣れてきたが森久保に限って言うなら路線を変える変えない以前の問題だ。まず目の前の仕事をやるか、やらせるか、この2択だ」

P「……1択じゃね?」

森久保P「……森久保は仕事そのものにまず積極的じゃない。売り出し方以前に取ってきた仕事をとにかくさせる。グラビアでもファンイベントでもな。
ただ、強いて言うならそういう逃げ腰な部分がアイツは全身に滲み出てるからそれ自体が味になってる」

P「味?」

森久保P「ああ。その全身に滲み出てる嫌々感を味としてそのまま仕事に使ってる部分はある。森久保に売り出し方と言えるのがあるとすればそこぐらいか」

愛海P「ネガティヴアイドルとか雑誌に書かれてたもんね」モグモグ

森久保P「完全に狙ったわけでは無いがな。実際笑顔で仕事するように俺も最初は気を付けてた」モグモグ

裕美P「じゃあ意図せずやって後から売り出し方が決まった感じなんだね」モグモグ

美羽P「……」

美由紀P「俺は……美由紀の強みは“幼さ”とか“純真さ”だと思ってる。
無邪気というか、良い意味で年齢不相応な部分。だから売り出す時もそこに気を付けてるよ。その辺殺さないように仕事を選んでるつもり」モグモグ

P「ガラパゴス並の貴重さだもんな……あの幼い雰囲気と無邪気な感じは」

愛海P「あーわかる。中学生なんて変に大人になりかけだったり変に煩悩まみれだったりするもんなのにな」モグモグ

森久保P「……お前のアイドルは煩悩にまみれすぎだろう。この前の赤ずきんツアー、ウチの森久保は最後まで本気でビビってたぞ」モグモグ

愛海P「うっ……」

美羽P「ウチの美羽も一回やられたからなハワイで。本人がそんな気にしてなかったから別に良いけど」モグモグ

愛海P「うっ……すまん……ただまぁ、同性だし悪意……はあるわ……下心……もっとあるわ……。嫌がらせとかがしたい訳じゃないからさ、本人なりの愛情表現だと思うしスキンシップの範囲の内は大目に見てやって欲しい」モグモグ

P「……もはやスキンシップってなんだ」

美由紀P「……頼むからウチの美由紀に変なことは覚えさせないでくれよ?」

森久保P「父親かお前は」

P「変なことって?」

美由紀P「わかんないけど……変なことだよ」

愛海P「どういうイメージだよ。愛海を教育に悪いみたいに言わないでくれ。……いや実際悪いけども」

美由紀P「いつまでもそのままって訳にはいかないけどさ……やっぱ美由紀には少しでも長く純粋でいて欲しいんだよ……そりゃさ、いつか大人になっちゃうんだろうけど……グスッ」

森久保P「父親かお前は」

美羽P「……」

裕美P「……ウチの裕美はそっちみたいに特定のキャラを作るような売り出し方はしてないな。強いて言うならアイドルらしい格好とか可愛らしい衣装になるようには拘ってるよ。裕美自信が作ったアクセサリー組み込んだこともあるね」 モグモグ

P「アイドルらしい格好?」

裕美P「うん」

森久保P「そういえばよく笑うようになったな。最初は正直何故ガンを飛ばされてるんだと勘違いしたが」

美羽P「逆に乃々ちゃんは常に目逸らしてるよね」モグモグ

森久保P「一度泣き落とし仕掛けてきた時は向こうから目を合わせてきたな」モグモグ

P「泣き落とし!?乃々ちゃんがっ!?」

森久保P「ああ。涙は女の武器とか言い出してな。無視してそのまま仕事に出したけど」モグモグ

美由紀P(多分後でホントに泣いてたろうな……)モグモグ

裕美P「ははっ、ウチの裕美は目付きにコンプレックスあるからね……本人も悩んでる。でも、だから本人は笑顔が可愛い素敵なアイドルになりたいって、ずっとそう思ってたんだよ。
それもあって俺は出来るだけ素直に可愛らしい格好だったりが出きるような仕事を選んだりしてる。特に衣装関連小物関連には気を付けてるよ。裕美自信が結構凝り性で細かいからね」

P「それはつまり……本人の望む売り出し方を尊重してるタイプの売り方だよな?」

裕美P「だね。ただ本人が望んだからってだけじゃないよ。当然それが一番裕美の笑顔が輝くって判断した結果でもある」モグモグ

P「……なるほど」

美羽P「……笑顔が輝くってよくわからんなぁ……具体的にどんなん?」

裕美P「まず、女の子だからね。可愛い格好してたら自然と笑みが出てくるだろうって。形から入るというか、だから素直に可愛らしい衣装になるよう気を付けるよ

裕美P「例えば最初の衣装は着てる方も見てる方も落ち着くような柔らかい緑系の衣装になるようにしたよ。裕美に余計なストレスがかからないように且つ笑顔が優しく映える感じになるように」

美由紀P「へー」

P「そこまで考えてたのか……」

裕美P「ウチの裕美はスペインで仕事した経験が大きかったかも。外国で裕美が由愛ちゃんと道に迷った時はホントに心臓止まるかと思ったけど。
情熱の国ってだけあってお客さんの熱気や明るさが強かったのもあるのかな。楽しんで仕事してくれて、あそこから笑顔っていうか笑うことに自信がついたような気がする」

P「……」

裕美P「あとは裕美も年頃の女の子だしハロウィンやバニーみたいな少し大人っぽい衣装の仕事もさせたことあるな。それでもセクシーとかより可愛いの方に重点置いたけどね。本人も衣装可愛いって気に入ってくれてたよ」

美由紀P「なるほどなー……形から入って気持ちを作るのもやっぱ大事なのか……ウチの美由紀も今取材受けてるこの前のツアーの時コック衣装、あれを着たら気合い入る的なこと言ってたや」

美羽P「……形からか……」モグモグ

愛海P「……俺の記憶が正しければあの娘バニーの時とときんの真似しようとし出してなかったか?」

裕美P「……ああ、うん。アレは肝が冷えたよ……いきなり『あ……暑くなってきたね!』とか言い出すから……一瞬『!?』って頭が真っ白になったよ。慌てて止めたけど……大人への憧れがやっぱあんのかな?」

森久保P「……」

裕美P「ウエディングの仕事やった時もすごく喜んでたし田舎や遊園地遊びに行った時に子供っぽさとかで悩んでたみたいだしこれから少し大人っぽさも意識すべきか、どういう仕事や衣装やらせていくのかを俺も考えないとなぁ」




P「……」


光『衣装って、気分出るねっ!』


P「……」

愛海P「そういやウエディングドレスを結婚前だかに着ると婚期が遅れるとか和久井さんが言ってたな」モグモグ

森久保P「和久井さんか……」

美由紀P「和久井さんか……」

P「和久井さんかー……」

美羽P「和久井さんが言ってたのか……」

愛海P「……」

裕美P「あぁ、聞いたことあるな。でもそんなこと言ってたら仕事なんか出来ないじゃん俺らもアイドルも」モグモグ

愛海P「まぁな。それに所詮ジンクスだしな。案外大人になったらあっさり結婚しちまったりするかもなお前らの担当も」

美由紀P「やめてくれよ」ゴフッ

美羽P「喀血した!?」

美由紀P「いや蟹で口切った」

美羽P「ああ……そう……」

森久保P「落ち着けP(パパ)」

美由紀P「まだそんな歳じゃない……せめて兄にしてくれ……」

裕美P「裕美が大人になって将来誰かと……?」ゴフッ

森久保P「お前もか。お前も蟹か?」

裕美P「蟹だよ」

P「……光が……結婚……っ!?」ガフッ

森久保P「お前もか……なんなんだ?また蟹で切ったのか?」

P「喀血だ」

森久保P「喀血したのか。過保護すぎるだろもうなんなんだお前らやめちまえこの仕事」

美羽P「そういやお前は鍋食ってなかったな……」

愛海P「でもお前さ、森久保ちゃんがある日突然『彼氏……できたんですけど……!』とか言い出したらどうするよ」

森久保P「次その不快な物真似したら森久保の衣装着せてお前をステージに上げるぞ」

愛海P「」

美羽P「それ可哀想なの乃々ちゃんなんじゃ……」

森久保P「アイドルにスキャンダルは御法度だからとりあえず何処のどいつか確認して調べあげるな。どの程度どういった付き合いなのかしっかりこっちで把握しておく必要がある。恋愛禁止とは言わんがスキャンダルは絶対にダメだ」

愛海P「うわーつまんねー反応」

P「人の情とかないのかしら」

美由紀P「ねー」

美羽P「流石泣き落としの通じない男……」

愛海P「鬼畜ですよ!鬼畜!(裏声)」

森久保P「殺すぞ。言っとくけどお前らが入れ込みすぎなだけだからな。俺が普通だからな」

裕美P「でもじゃあさ、もし乃々ちゃんが大人になって、お前のところに結婚の報告に来て、しかもお前に結婚式出て欲しいとか言い出したらどうする?こう、グッとこない?」

森久保P「……」

森久保P「…はぁ?」




乃々『……プロデューサーさん……あの……実は……』

乃々『結婚……するんですけど……もうもりくぼじゃなくなります……』

乃々『その……今まで……本当にありがとうございました……っ!幸せになります……してもらいます……!』




森久保P「……」


ズズッ←蟹鍋の汁


愛海P「あっ!蟹汁飲んで呑み込んだぞ!」

裕美P「誤魔化した!今絶対誤魔化したよ!!」

P「ホレ見ろお前人のこと言えねーじゃねぇか!!」

美由紀P「絶対今涙目になってる!涙腺にキテるって!!」



美羽P「……売り出し方の話は?」

愛海P「アレだね。鬼の目にも涙だね」

森久保P「……」

森久保P「別に俺は無闇やたらにアイツに厳しくしてる訳じゃないから鬼扱いされる筋合いはない。そもそも本当に嫌な仕事ならアイツだってやらない」

美由紀P「でも見かけるたびに仕事嫌がってるけど」

森久保P「さっきも言ったけどそもそもアイツは仕事自体どんなものでも嫌がってる。隙あらば逃げようとするし実際撮影中に消えたことすらある」

P「……乃々ちゃんはなんでアイドルやってるんだ?ウチの光みたいになりたいものがあったのか?」

裕美P「それ俺も気になる。苦痛なら無理に続けるべきじゃないと思うんだ。」

P「……!」

森久保P「……アイツはこの仕事は親戚に誘われて一度だけのつもりで始めたんだよ。そういうわけで、スタートから他のアイドルとは違ったんだ。自己評価が極めて低いのにアイドルやってる理由はつまりそういう訳だ」

P「……」

裕美P「……」

美羽P「……」

森久保P「受け身で引っ張ってくれる人間についていくタイプだな。楽に生きたい、前に出たくない、そういうことばかり言ってる」

愛海P「聞けば聞くほどなんでアイドルやらせてるんだ……」

美羽P「……」

美羽P「……そんなに嫌がってるなら辞めさせた方がいいんじゃないか?」

森久保P「……」

P「!」

美羽P「アイドルは才能と運の世界だしそういう意味では乃々ちゃんはアイドルの才能も運もある。実際彼女のキャラはウケてる。他とも被ってないし応援してくれるファンも沢山いる」

森久保P「……」

美羽P「ネガティブで逃げ腰な子が頑張ってる姿は応援も得られるんだろう。でも俺の所の美羽みたいに本気でアイドルになりたくてアイドル目指して頑張ってきてる子だっている。
売れるから、なんて理由で嫌々仕事やらされてる子がドームでライブやらせてもらったり大きな役貰ってるのは正直言って良い気分しない」

P「……」

美由紀P「……」

裕美P「……」

美羽P「戦国ツアーでウチの美羽が大きな役貰った時は本当に良かったと思った。空回り気味のアイツがどんな形であれ認められたってことだから、担当Pとしてはやっぱり嬉しかったよ」

美羽P「お前の所の乃々ちゃんも別のツアーで大きな役貰ってたよな。でも今の話聞いたら……嫌々やってるんだとしたらおめでとうも良かったなも、頑張れも言えない。寧ろ、ふざけんなとも思う」

森久保P「……」

美羽P「……」



愛海P「……ウチの愛海はツアーの役に大喜びだったしやる気十分だったよ」ボソッ

P「……やる気違いだろお前の所のは」

裕美P「うん。俺もそう思う」

美由紀P「……赤ずきんツアーだっけ?観に行ったけど芳乃ちゃん確か『邪気を感じる』とか言ってたよね」

P「アレ多分役とか関係なかったと思うわ俺」

裕美P「……出てたんだろうね、邪気」

愛海P「……」

美羽P「……怒ったか?」

森久保P「……」

森久保P「……いや、今の話聞いたら……聞かなくても普段逃げてる森久保を見てたらそう思うのは当然かもな。俺だって普段から他のアイドルが皆頑張ってるのを観てるんだ。当然だと思う」

P「……」

美由紀P「……乗っかる訳じゃないけどさ、アイドル辞めさせないのはなんでなんだ?やっぱり売れるから?」

森久保P「……」

森久保P「それもない訳じゃない。森久保には……乃々にはアイドルの才能がある。アイドルとして輝けると思ってる。そうじゃなきゃプロデュースなんて続けないし続けられん」

美羽P「……」

森久保P「だが一番は……乃々自身が本心では変わりたがってるんだ」

P「!」

裕美P「……変わりたがってるって……乃々ちゃんが?」

森久保P「……ああ」

美羽P「……」

森久保P「……悪い。一本吸ってもいいか?」

スッ←煙草の箱

美由紀P「ああ、良いよ別に。ここ禁煙じゃないし今ならアイドルいないし」

愛海P「アイドルに煙草の匂いついたら洒落にならんからな……」

裕美P「喫煙室移動すんのもメンドイしね」

森久保P「……悪いな」

トントンッ←箱

森久保P「……ん?空か……他に持ってなかったかな……」ゴソゴソ

森久保P「……!お、あったあった」

スッ←別の煙草の箱

トントンッ



ニョキッ←きのこ



全員「」

森久保P「……」

パクッ←きのこ



P「……」

美羽P「……」

美由紀P「……」

裕美P「……」

愛海P「……」



P(おい煙草吸い始めんのかと思ってたらきのこ吸い(?)始めたぞどうなってんだアイツ)

裕美P(ストレス貯まってるのかな……?)

美由紀P(というかなんで煙草の箱の中にきのこが入ってるの……?)

???(フヒ……)

美羽P(……今誰か混じってなかった?)



森久保P「……」ゴソゴソ

スッ←ライター

シュボッ←きのこ

森久保P「……フゥーッ……」



P(オイオイそのままきのこに火つけちゃったよ!)

愛海P(いやフゥーッってなに?何を吸ったの!?何を吐き出したの!?)

裕美P(ストレス貯まってるのかな……)

森久保P「乃々は本心では逃げ腰のままじゃダメだとちゃんとわかってる。勇気が足りないだけなんだ」

P(話再開しちゃったよ!真面目な感じのまんまだよ!)

裕美P(……とりあえず聞こう?話聞こう?)

美由紀P(ひょっとして想像以上にストレス貯めてるのかな……?)

美羽P(俺が言い過ぎたせいかな?俺が言い過ぎたせいなのかな?)

森久保P「……アイツは昔、俺に逃げると後悔しそうだからって……そうこぼしたことがあるんだ」

裕美P「! へぇ……あの乃々ちゃんが……?」

美羽P「……!」

美由紀P「……逃げると後悔……か」

森久保P「……ああ」

パクッ←きのこ

スゥーッ…

森久保P「……フゥーッ……」

全員「……」


森久保P「……だからどれだけ逃げ回っても最後にはやり遂げる。確かにまだ仕事を嫌がるけどな。少しずつ成長してるんだ。少しずつだが……」

チリチリ…←きのこ

全員「……」

森久保P「アイドルになりたくて始めた訳じゃあない。でもそこからアイドルを続けようと乃々なりに頑張ってる。同じアイドルの友達も増えたんだ……星とか……早坂とか……」

メラメラ…←きのこ

全員「……」

森久保P「俺は乃々はアイドルの才能があると思ってるしアイドルをやっていけると信じてる。信じる価値があると思ってる。何故ならアイツは無理な人間なんかじゃないからだ。やれば出来るんだよ」

P「……本人が変わりたいかどうか、か……」

森久保P「……」

美羽P「……まぁ、なんだ……色々言い過ぎたよ。悪かったな」

森久保P「いや、さっきも言ったが良い気分がしない奴はそりゃあ出る。気にするなよ」

裕美P「何か悩みがあったら、すぐ相談してくれよ?」

森久保P「……?あ、あぁ……」

P「……お前も大変だと思うけどさ、無理すんなよ?」

森久保P「……うん……?」

愛海P「辛い時こそ息抜きが大切だぞ?」

森久保P「……」

美由紀P「ほら、蟹の脚の大きいのあげるよ」

森久保P「……お前らなんでそんな急に優しいんだ?」

美由紀P「ほら、脚はないけど味の染みた野菜と美味しい汁をやろう」

P「あらまぁ、いただいて良いの?」

美由紀P「良いよ良いよ。北海道の雄大な味を味わうが良いよ」

P「へへー!ありがたき幸せ!」

森久保P「不快な小芝居やめろ」

裕美P「野菜全部上げたら雑炊にしよう」

森久保P「そうだな」

ジュッ←灰皿にきのこ

美羽P「……」



愛海P「……」ズズッ…

ゴクッ

愛海P「あぁ~この蟹鍋うめぇっすねぇ~……!」

P「いやぁ……これホントに美味しいな」モグモグ

美由紀P「前に美紗希ちゃんが美味しい作り方教えてくれたんだよ」

P「美紗希ちゃんが?あの子意外となんでも出来るんだな」

美由紀P「良い子だよー。美由紀とも仲良くしてくれたし料理上手いし」

愛海P「スタイルも良いしね。中々良い娘だよほんと」モグモグ

ゴクンッ

愛海P「……ふぅ……」



愛海P「ウチの愛海はスカウトがきっかけだったね」

P「あ、この流れで語るんだ」

愛海P「愛海は俺が直接スカウトしたんだよ。一目見て、『なんだこの美少女は!!!?』って思わず叫びそうになったね。それぐらい美少女だった」


全員「……」


愛海P「……まぁ、中身は皆が知ってる通りだったんだが……たしかに初めて見たときから手つきはなんかおかしかったというか……うん」

全員「……」

愛海P「でもな、たしかに俺にはティン!ときたというか……この子は絶対にアイドルにしなきゃ!って言わせる何かを持ってたんだよ」

裕美P「……そういや愛海ちゃんもスカウトで入ったタイプか」

森久保P「アイドルになりたくて自分からやって来たタイプじゃないんだな」

美羽P「でもモチベーションはスゴい高いよねあの子」

愛海P「そこはそうだね……うん。たしかウチの愛海と一緒で光ちゃんもスカウトだよね」

P「……」



『アタシがアイドル!! そっそれは本当かっ!? ア、アイドルになれば歌って踊ってテレビデビューしてあのヒーロー番組の主題歌ゲットしてそれつまりヒーロー南条光の誕生じゃないかうぉぉ!! やる気出てきた!』



P「……あぁ、ウチもスカウトだ」

裕美P「スカウトってことは光ちゃんも『アイドルにならない?』って言われてOKしたってことか……改めて考えると意外だなぁ」

美由紀P「確かに。ヒーロー好きって事しか俺ら知らないからねぇ。そう考えるとアイドルに興味あったのは驚きだよね」

森久保P「よく受けてくれたな。……それともスカウト受けた理由みたいなのはあるのか?」

P「光がスカウト受けたのはアレだよ、アイドルになったら特撮番組の主題歌の仕事もらえるかもって」

美羽P「あ……、そんな理由?」

森久保P「意外に俗っぽいな……」

P「うるさいよ」

美由紀P「まぁ子供なんだからそういうのも充分な理由なんじゃない?」

裕美P「愛海ちゃんも歌や踊り特別好きに見えないけどよくスカウト受けてくれたね。なんて勧誘したの?」

愛海P「沢山女の子と仲良くなれるよって」

森久保P「完全に俗じゃねぇか」

美由紀P「口説き文句が怪しすぎる……」

P「よく通報されなかったなお前も」

裕美P「というかそれで受ける愛海ちゃんも割りと……」

美羽P「一周してスゴい器な気がしてきたあの娘。ブレがないね」



愛海P「……」

光マジかよ

美羽P「愛海ちゃんは……売り出す時気を付けてることある?」

愛海P「特に気を付けてるのは他のアイドル、特に他所の事務所の娘に失礼をしないように」

美羽P「ごめんプロデュース方針の話で」

愛海P「特には。どんな仕事もやらせてるよ。なんせ愛海自身が自分の武器を一番よくわかってるし基本仕事にもノリ気だから。だから正しい意味でどんな仕事も任せられるって感じだと思うよ」

裕美P「ほんとアイドルとしては天性のスペックだなぁ……お山狙ってくるけど」

美由紀P「他のアイドルと触れ合えるしそりゃあノリ気にもなるんだろうね……お山狙えるし」

愛海P「……」

P「?」

愛海P「勘違いはして欲しくないんだが、愛海は別に乳揉みだけが全てな奴じゃないぞ」

森久保P「ハッキリ乳っつったな」

美由紀P「オブラートに包まなくなったね」

愛海P「ちょっと真面目にいい?」

他P「すまん」

愛海P「愛海はあんな言動や行動で誤解されがちだが、アイドルの仕事は本気で楽しんでる。愛海は乳に夢中なだけのバカじゃないよ」

P「……仕事を楽しんでるって、胸とか関係なしにか?」

愛海P「ああ、うん。そりゃ確かに他の娘の乳ばっか狙ったり追いかけたりファンに手出そうとしてたりを今もやってたりするけど、愛海はそれだけの奴じゃない。いやホントに」

愛海P「最初は愛海も女の子のファン沢山増やしたい、みたいなことばっか言ってたよ。でも今は違う。愛海自身がアイドルって仕事に改めて向き合ってアイツなりに別の答えを出してる。今のアイツには『女の子だけじゃない、沢山の人に愛されるアイドルになる』って別の目標があるんだ」

他P「……!」

愛海P「自分は芸能(アイドル)界の荒波なんかに揉まれない、寧ろ優しく揉みほぐしてやる……なんて言えるぐらい、アイツは強くなったよ」

森久保P「……微妙に上手いこと言ってる感じが若干腹立つな」

裕美P「でもなんか、そこまでいくともう逆にカッコいい気がしてくるね」

美由紀P「ウチの美由紀と同い年とは思えないや」

P「美由紀ちゃんと同い年と思えるアイドルの方が少なくないか?」

森久保P「見た目ならお前のところのも大概だろう」

P「……」タシカニ

美羽P「……ひょっとしたら、ほんとにスゴい器なのかもなあの子」

愛海P「……ま、変わり者なのは間違いないし変なイメージは自業自得ではあるんだが……」

愛海P「……でも、アイドルプロデューサーとして、これだけは本当に確信持って言える。俺は棟方愛海という人間をスカウトして良かった。それだけは本当に間違いないよ」

美由紀P「やべ……ちょっと俺感動しちゃった……」グスッ

裕美P「……やっぱ皆それぞれ色々あるんだな……」

美羽P「……沢山の人に愛される、か。当然の目標と言えばそうだけど……あの愛海ちゃんが自分で出した目標だと考えるとやっぱスゴいのかもな」

P「あのって」

愛海P「そういやウチの愛海、結構演技派なんだよ。麻理菜さんもなんかそんなん前言ってた。ツアーの時もちょっと邪気出しちゃったけど役自体はしっかりやってるし役者関係の仕事もっとやらせてもいいかもなー」

美由紀P「むっ……演技力ならウチの美由紀だって負けてないぞ。なんたってこの前の美食公演ツアーでそれは立派な演技で見事主役を……」

森久保P「対抗するなP(パパ)」

森久保P「赤ずきんの時のアレはキャスティングした側も彼女のキャラを知ってて狙ってやったものだとは思うがな。ウチの森久保もそうだったと思うし」

愛海P「多分な。愛海本人ももしかしたらその辺本能でわかってるのかも。自分に求められてるもの、みたいなのが。俺が釘刺したらちゃんと聞くし自分のブレーキ頼むって言ってきたり、限度を弁えてないようで弁えてると思うよ」

森久保P「根はクレバーなのか……?」



P「……自分が求められているもの、か」

P「……光に求められてるものってなんだろう……」

森久保P「……」
美由紀P「……」
裕美P「……」
愛海P「……」
美羽P「……」

P「……」ハッ


森久保P「お前……今の……仮にもプロデューサーが言う台詞か?」

美由紀P「流石にそれはない。ないよ」

裕美P「今の発言はちょっとフォロー出来ないや……」

愛海P「マジかお前」

美羽P「出会ったばっかの頃とかなら兎も角……いや、それ以前の問題なのか」


P「」ザクザクザクザクッッッ

P「……マジで口が滑っただけなんだよ……忘れてくれ」


他P「……」

森久保P「……ただ売り出し方で悩んでるって感じじゃなくなってきてるなもう」ヤサイモラウゾ

美由紀P「『何が求められてるのかわからない』までいくともう自分の担当アイドルの魅力が何処なのかわからなくなってるレベルまでいくからね」トウフアゲルヨ

裕美P「ファンが求める=そこがそのアイドルの魅力だからねぇ……」

P「……やべー……今俺スゲー死にたい」

美羽P「……あのさ」

P「……?」

美羽P「……そもそもなんで光ちゃんを『ヒーローキャラ』で売ったんだ?」

P「……そりゃ、光本人がヒーロー好きだし、実際にそれが一番輝く形だと思ったからだよ」

美羽P「……ヒーローキャラが一番輝くって……正直よくわからないな。ヒーローである必要って、なんなの?」

P「……」

美羽P「なんでそこから始めたの?」

P「……」

P「……光も最初のきっかけは特撮の歌歌いたい、なんてのだったけど……いつからだったかな……まだデビューする前だったか、後だったか……皆に夢と希望を与えたいって、そう言うようになったんだ」

愛海P「ウチと一緒で後から別の目標が出来たタイプか」

P「うん。そうだ」

美羽P「……」

P「それで、そうだ。人を勇気づけたり、心が負けそうになった時に励ましたり応援したり支えてくれる存在……うん。そういう、『ヒーローみたいなアイドル』が光の目標になってたんだな」

P「……そうなりたいって笑顔で言う光が……その時のアイツが、スカウトしてから、一番魅力的に写ったんだ。輝いてたよ。
その時にこう……ティン!と来たんだ。俺の中で、全部決まった。『光はヒーローみたいな売り出し方で行こう。ヒーローアイドル・南条光で行こう』って」

美羽P「……」

P「……人を励ましたり勇気づけるの自体は多分、ヒーローじゃなくても出来るんだろうな。でもそれじゃ曖昧だと思った。
ハッキリとヒーローとして形にすれば、自分の弱い心に負けそうになった人とかに、特に強く光の応援や思いが届いてくれるんじゃないかって。より光が望む形で、アイドル出来るように、アイツの夢に向かえるように」

森久保P「……意外にロマンチストだな」

P「ほっとけ。 誰かを助けたり応援したいって言ってる光が一番輝いて見えた……改めて考えると俺が見た輝きは内面的な光だったから……それをどうやって外に出すか、どうわかりやすく売り出すかを考えた結果がヒーローだったんだな……」

美羽P「……まさに光(ひかり)輝くって話だったわけか……光(ひかる)ちゃんだけに」

P「……」
森久保P「……」
裕美P「……」
美由紀P「……」
愛海P「……」


美羽P「……」



美羽P「みうさぎぴょーんぴょん!!」

他P「!!!?」ビクッ

美羽P「……」

他P「……」

美羽P「……すんませんでした」

愛海P「おぅ気にすんなみうさぎP。はよご飯入れて雑炊やろうや」

美羽P「うん。はい。なんかごめん」

美由紀P「みうさぎP卵溶いてくれる?」

美羽P「うん。ほんとゴメンねなんか」

裕美P「みうさぎPスイッチそっち側だから1回切ってもらえる?ガス換えるから」

美羽P「はい。いや、ほんと改めて俺は自分の担当アイドルのメンタルの強さを実感しました」

美由紀P「美羽ちゃんのアレは俺は1つの才能だと思ってるよ」

美羽P「なんであんなこと言ったんだろう俺は……」

P「……」

森久保P「……プロデューサーは担当アイドルに似る傾向とかでもあるのだろうか?」

P「その理屈でいくと俺は特撮詳しい感じになるけど俺そんな知らねぇぞ」

愛海P「俺とかどうなるんだ。担当に似ちゃいけないアレじゃないのこれ」

裕美P「……気が合うとかそのレベルの波長の合い方はしてるかもだけど、精々その程度じゃない?」

美由紀P「その理屈でいけばそっちはネガティヴ逃走プロデューサーになってる筈だもんね」

森久保P「……まぁそうか」

美羽P「ヤバイ超恥ずかしい」

美由紀P「茹でた蟹みたいになってるね」

裕美P「まぁ、なんだろうね。今の話、最初にキャラや路線決めてる組にもそれなりの理由や過程があるんだなって改めて実感したよ」

美由紀P「俺も。明確に『ウチの子はこのキャラ!』ってのがこっちはないからね。ちょっと新鮮だったかも」

美羽P「よく考えたら他のPが売り出す時デビューさせる時何考えるかとかは気にしたことなかったかもなぁ」

愛海P「まぁねぇ。でも所詮担当してるアイドル違うし。飲みの席とかでたまに話すぐらいか?アイドルの売り出し方とかの話を他のプロデューサーとすんのは」

森久保P「……酒も入ってないのによくここまで話せたもんだな俺らも」

美羽P(変なきのこは入ってた気がする)

美由紀P「蟹しか入ってないのにね……真面目な悩みっぽかったのと鍋というアットホームな空気からの雰囲気に呑まれた感はあるかも」

P「……なんだろう、改めてなんかすまんかったな」

裕美P「……うん、ホントに参ってんだね」

P「……自分の担当が実際に凹んでる姿を見たらどうにもな……しかも俺のプロデュース方針が原因となると余計……」

森久保P「……ん?お前のプロデュース方針が原因で南条が凹んでたのか?」

P「……あっ」

他P「……」

P「……実はな」





美羽P「……なんで路線変える云々の話をキャラ売りしてるアイドルのPがしてくるのかとは思ってたけど……」

美由紀P「同僚で光ちゃんより年下の現役アイドルにごっこ遊び扱いされて、しかもその子達に普段と違う活動やらされたらファンやお客にも普通にウケたちゃった、か……それで担当アイドルが調子崩しちゃったと……」

裕美P「一晩で色んなこと起きすぎじゃないのかお前のところ」

P「正直完全に頭こんがらがったよ。光にはとりあえず今までの自分達の否定だけはしないように言葉かけて返したけど……」

裕美P「それやると自分に今までついたファンの否定にもなるしね」

P「……その時に『ヒーローとしての光は必要とされてない。必要とされてるのはアイドルの光だ』って言われたのが特に堪えたみたいでな……光まで自分がやってきたのはごっこ遊びだったのか、なんて言い出すからマジでダメージでかかったんだよ」

森久保P「単品なら気にならんかもしらんがファンの反応がついてきてたのはキツかったかもな。アイドルにとって最大のモチベーションの筈のファンが間接的に今までの自分の活動を否定してしまったように感じたんだろう」

愛海P「しかし話だけ聞いてたら笑えないな……それ女子小学生二人に『私達の方が光ちゃんを上手くアイドルとしてプロデュース出来るんだから!』って言われて実際にやられたようなもんじゃん」

P「そこは改めて言葉にしないでくれ……その部分には触れないようにしてたんだ」

森久保P「内容に賛否あってもプロデュース方針に口出しとか俺ならキレるかもしれん」

愛海P「ふむ。キレたらどうなるんすか?」

森久保P「森久保の仕事が増える」

裕美P「なんで?」

美由紀P「乃々ちゃんホントに泣くんじゃないのか」

森久保P「泣いたらもっと仕事が増える」

P「……本人がやる気になったら?」

森久保P「そりゃ仕事増やすに決まってるだろう」

裕美P「どういうシステム?」

南条光!誕生日おめでとう!!

愛海P「でもさ、必要とされてるのはキャラの部分じゃなくてそれをやってる本人の方だってのは別に間違ってる訳ではなくね」

P「……だからこんなに悩んでるってのもある。光の場合それが自分が憧れた『他人を支えるヒーローキャラ』だからってのが大きいんだよ」

美羽P「夢叶ったと思ったら『別にそっちは要らないよ』って言われた感じになるのかな……?まぁ皆大元はアイドルだからなぁ」

P「俺だってそりゃずっと同じような路線の仕事だけをやらせるつもりはなかったよ。昔真尋ちゃんや珠美ちゃんとRUN・RUN・RUNってユニット組んで普通にイベントでライブ参加やったこともあったし……ただ……」

森久保P「こんな形で事態が大きく変わるのは想像してなかったって所か」

愛海P「これに関しては想像するのは無理だと思うけどな」

美羽P「他人事だけどもし自分に起こったらと考えるとしんどい話だな……」

美由紀P「……なんか思ってたより面倒な事態になってたんだねぇ……ほら、蟹雑炊をお食べ。心が落ち着くよ」

P「……いただきます」

裕美P「特定のキャラがあるってのも考えものなんだね」

P「熱っ……あ、スゲー美味い……」

森久保P「蟹自体は脚の数の問題があったが……蟹雑炊はそれがないとはいえこれ作りすぎじゃないか?」

美由紀P「みんないっぱいお食べ」

裕美P「どんだけご飯入れたのこれ」

美羽P「炊飯器の中全部……」

美由紀P「蟹雑炊は匂いも素晴らしいと思うんだ」モグモグ

愛海P「オイオイおかわりが欲しくなっちゃうよ」モグモグ

裕美P「裕美にも食わせてやりたかった……インタビューまだ終わってないのかな」

森久保P「どうせ晩飯は皆でまた蟹食うだろうが」

美羽P「豪勢だよな俺ら……プロデューサーになって良かった」

P「プロデューサー関係あるのかこれ……」



???「いやー手伝ってくれてありがとう。助かったよ」

ナターリアP「いや別に良いよ。面白そうだったし」

???「……ん?なんだこの匂い……」

ナターリアP「……?ホントだ。あっちの部屋からだ」


ヒョイッ


ナターリアP「あ!お前ら何食べてんの!?」

七海P「蟹の匂いがする」

美由紀P「あ、増えた」

森久保P(蟹食っといて良かった)

P「おっ」

ナターリアP「おっ」

P「……昨日はありがとな」

ナターリアP「おう。気にすんなってば」

P「……あれ?お前今日休みじゃなかったっけ?」

七海P「あはは。ちょっと野暮用があってさ」

美羽P「……なんで二人ともゴム手袋にゴム長靴してんの?」

七海P「ん?あぁ、実はこないだの事務所の掃除で倉庫整理に当たったときにこんなのを見つけたんだ」

美由紀P「……?何それ水槽?」

七海P「うん。倉庫にあったんだ。使ってない水槽みたいでさ。洗えば使えそうじゃない?」

ナターリアP「で、コイツが事務所の外の水道あるとこあるじゃん?そこで水槽洗ってんの見かけてなんか面白そうだったから手伝ってた」

愛海P「……お前良い奴だな」

ナターリアP「そして良い男だからな」

森久保P「ノリが良いだけだろ。コイツ今年の節分の時にどこから調達したのかわからん鬼の格好に変装してナターリア追いかけ回してたぞ」

ナターリアP「あー……あれは失敗だった。まさか泣かせてしまうとは……」

裕美P「何やってんのコイツ」

美由紀P「担当アイドルを泣かすなよ……」

七海P「これでさ、事務所にアクアリウム作ろうと思うんだ。いや~七海絶対喜ぶぞ~!」

裕美P「事務所にアクアリウム?」

七海P「ん。ちひろさんには許可もらったしとりあえずデスクルームに置こうかなーと今は考えてるよ」

美羽P「七海ちゃんはともかくお前も魚好きだったり詳しかったりしたっけ?」

七海P「いや?七海は魚詳しいけど俺は人並み程度のことしか知らないよ?」

愛海P「ホントに七海ちゃんの為だけなのか」

七海P「思い付きではあるけど七海のこと考えたら楽しいし俺自身の為でもあるよ。とりあえず今は水槽しかないから後は帰りに本屋で本買ったりペットショップ行ってポンプとか魚とか他のを買うつもりだな」

森久保P「自腹なのか!?」

P「マジ!?」

七海P「会社の金でアクアリウム作れないっしょ。でもその辺でちひろさん含めてこう、癒し効果を認めてもらって経費で落ちないかな~って今画策してるよ」

P「強かだな……」

七海P「いや~……七海の笑顔が目に浮かぶようだ……何水槽に入れよっかな……グッピー……メダカ……金魚……ザリガニ……ブラックバス……う~ん迷うなぁ」

森久保P「コイツ知識0か」

美由紀P「まぁそれは置いといて、二人も蟹雑炊を食べるかい?」

七海P「マジで!?」

ナターリアP「良いの!?オイ早く手洗いに行こうぜ!!」ドタドタ

七海P「あ、水槽も置いてこないと!置いといてって言われたし!」ドタドタ

森久保P「子供かアイツらは」

美由紀P「仲良し事務所って感じで良いじゃあないか」ウンウン

裕美P「アイドル同士もそうだけどウチって結構横の繋がり強いかもね」

裕美P「積極的に他のアイドルとユニット組んだりしてるしねぇ」

ナターリアP「いただきまーす」

七海P「蟹の良い匂いがする」

美由紀P「お食べお食べ。美由紀と美由紀の家族と北海道の大自然に感謝してたんとお食べ」

ナターリアP「うめぇ」モグモグ

七海P「美味しいなぁ……七海にも食べさせてあげたかった」モグモグ

美羽P「魚とか魚介とか好きなんだっけ?」

七海P「七海?そうだよ。イクラが特に好きなんだってさ」

美羽P「……七海ちゃんもかなりキャラ濃いよね」

愛海P「あー、お魚アイドルか……イメージ的には人魚姫か?」

七海P「? やだよ人魚姫なんて。最期バッドエンドじゃん。そもそもウチの七海泳げないし」

愛海P「おぉ……そういやそうか。なんかごめn……えっ!?泳げないの!!?」

P「魚アイドルなのにか……」

森久保P「マジか……」

裕美P「……アレ?でもいつだったかイルカの背中乗ってたような……?」

ナターリアP「つーかこれなんの集まり?俺呼ばれてなくない?」

森久保P「蟹鍋の会お昼の部だ」

ナターリアP「蟹鍋の会!?俺呼ばれてないよ!? つーかこの雑炊蟹雑炊じゃね!?俺呼ばれてないよ!!?」

七海P「俺も呼ばれてないよ」

愛海P「休みだったもんね」

七海P「うん」

美由紀P「蟹が小さめの奴だったんでその時いた連中で分けようかと……夜は今日来てる皆でまたもっとおっきい蟹鍋するから。豪勢だから」

ナターリアP「えー!なんだよなんだよ聞いてないよ!LINE回しといてよ!」

森久保P「LINE回したらお前とか食いに来るだろうが」

ナターリアP「まぁそうだけどさ……アレ?今の酷くない?」

七海P「っていうかキミらアイドルは?」

愛海P「撮影だったりインタビューだったりで今そこの別室。ユニットだったりツアー組は他のプロデューサーとかが見てくれてるんだよね」

美由紀P「うん。ウチの美由紀は今のあさん達と一緒だね」

美羽P「うちの美羽はほら、こないだやったツアーで信長したからその時ので一緒に美由紀ちゃんとインタビュー受けてる。ツアー特集の」

裕美P「皆バラバラだったりだね」

森久保P「そこで蟹持ってるコイツとばったり会ってな」

裕美P「たまたまだけど俺たち皆同い年のアイドル担当してるからそこ繋がりで雑談してるウチにお腹空いてきちゃってさ」

美由紀P「で美由紀の許可もらって先にいただいてたんだ」

P「俺はたまたまここ見かけてさっき入った」

ナターリアP「ふーん……うわっ!ほんとだ!よく見たら全員14歳アイドル担当してるメンツじゃん!なんか気持ち悪っ!!」

七海P「ホントだ。気持ち悪いね。でも俺たちたまたま通りかかっただけだから……これ偶然かな?」

裕美P「そう言われると気持ち悪い気がしてくるかも……」

美羽P「改めて見たらたまたまにしては上手いこと集まったもんな……」

森久保P「……たまたまなんだよな?」

P「いや俺に聞かれても……俺はたまたまお前らが集まってるの見て丁度聞きたいことあって入っただけだし……」

愛海P「たまたまたまたまうっせぇなここ」

愛海P「全く勘弁してくれよな……。俺は下ネタとかお下品な話は苦手なんだ」

森久保P「は?」

美由紀P「え?ギャグ?」

愛海P「え……?」

七海P「偶然集まった感じならアレだね。ホント気持ち悪いよね君ら」モグモグ

スマホスッスッ

ナターリアP「コラ!食事中にスマホを弄るんじゃありません!お母さん怒りますよ!」

美羽P「怒った後に言ってるしお母さんにしてはゴツいし」

P「? 何やってんだ?」

七海P「いやどうせ気持ち悪いならもっと気持ち悪くしようと思って」モグモグ

P「?」

七海P「蟹の写真とかある?鍋の前に撮ってたりしない?」

美由紀P「ああ、それなら鍋の前に撮った写真が俺のスマホに」

七海P「ホント?送ってー」

美由紀P「?」

ピロリーン

七海P「……」

P「……?」
ナターリアP「……?」

チラッ

※美由紀P達が蟹を取り囲んでピースしてる写真

七海P「……」
P「……」
ナターリアP「……」

美由紀P「……?」

七海P「……可愛いな君ら」

「「「!?」」」

P「つーかこれ誰がシャッター切ったんだ……」

美由紀P「のあさんが」

P「ああ、のあさんか……のあさんが!?」

美由紀P「ハイチーズも言ってくれたよ」

P「マジで!?」

ナターリアP「それは見たかったぞ!?」

七海P「よし」ピロリーン

裕美P「あ、なんか来た。何したの?」

七海P「前学校関連で色々あるかもって担当アイドルが同じ年齢のP達でグループ作ったでしょ?そこにLINEで『今、事務所に蟹が!』って送った」

森久保P「……蟹はあったがもう俺達の腹の中だぞ」

美羽P「雑炊ももうあんま残ってないや」

愛海P「事務所に蟹が!あったじゃないのこれ」

七海P「まぁあるには言ってないし」

P「自慢か嫌がらせに思われるぞ。お前性格悪いな……」

七海P「違う違う。こうしとけば蟹に釣られて他のPも来るかなって。来たらホラ、気持ち悪くて面白そうじゃん」

ナターリアP「お前ウチの事務所に馬鹿しかいないと思ってない?」

美由紀P「蟹に釣られて来るなんてそんな……」



ガチャッ


美玲P「今事務所に蟹が!って来たんだけど」

P「うわっ」

ナターリアP「ホントに来た。しかもお前かよ」

美由紀P「なんで来るの?」

七海P「普通来る?引くわー……」


美玲P「え……何これ……ウチの事務所でイジメとか始まったの……?」

美玲P「蟹無いし……雑炊しか無いし……」モグモグ

七海P「ごめんごめん。でもこんな時間、それも勤務中に蟹雑炊が食べられるってそれだけで幸せなことだと思うんだ」

P「なぁ……俺ら色々大丈夫なんかな……社会人として」

森久保P「まぁこのプロダクションじゃなきゃ無理だろうな」

愛海P「パスポート怪しい娘でも平気で抱え込むからなウチ……ちょいちょい緩いよな色々……」

美玲P「……で、これなんの集まりなの?」

七海P「さぁ。これそういやなんの集まりだっけ?」

森久保P「最初は蟹鍋の会だったが今は南条光Pお悩み相談室みたいになってるな」

P「……すまん」

ナターリアP「……」

七海P「悩み? 何それ。あ、光ちゃんに好きな人か彼氏でも出来たとか?」

P「」オブフッ

美玲P「吐血した!?」

七海P「うわぁびっくりした」

P「冗談でもやめてくれ……」ボタボタ

森久保P「気にしないでやってくれ。彼は病気なんだ」

七海P「わかった気にしない」

愛海P「気にしないんだ……」

七海P「細かいこと気にしてても楽しくないでしょ」モグモグ

美由紀P「おお……!」

美玲P「流石お魚アイドルの担当P……心が海のように広い……!!」

ナターリアP「海のように大きな男だな」

愛海P「なるほど……心は常に穏やかな海面のように落ち着いていると……器がでかいな」

裕美P「……器関係あるの?」

美羽P「というか、吐血って細かいことなのか……?」

森久保P「まず吐血するか普通ってことにツッコまないのか?」

七海P「で、男じゃないなら悩みってなんなの?」

P「……ああ、実は……」

P「……」

七海P「なるほど……『今までのやり方を棄てるか否か』か……」

美玲P「プロデュース方針の悩み……また厄介な話だなぁ」

七海P「でもまぁ悩んで当たり前だよね。トップ目指す以上どうすればもっと売れるか常に付きまとう訳だし」

P「……まぁ、だからこんな悩んでる訳で」

七海P「悩まない方がおかしいよ。気にすることない」

美羽P「おお……海のように広い心……」

ピロリーン

美由紀P「あ、誰だろLINE来た」

P「……」

P「……なぁ、二人もある程度売り出すときにキャラが付いてるアイドル担当してるだろ?」

七海P「?」

美玲P「ん?そうだなぁ……ウチの美玲は眼帯ってアイテムとこう、一匹狼系()の動物っぽいキャラがウリな所はあるね」

森久保P「なんだ今の()は」

愛海P「眼帯キャラってまた濃いっちゃ濃いよな」

美玲P「でも似合ってるでしょ?なにより個性になってる」

P「そうだな……」

P「……七海ちゃんはさっきも言われてたけどお魚アイドルって他にないキャラだし……俺もヒーローアイドルっていうキャラ意識したプロデュースしてる。だから何か1つ2つキャラや個性を武器にしてるアイドルのPとして聞きたいんだけどさ、お前らなら……どう考える?こういう時」

美玲P「……うーんそうだなぁ……俺なら……」

七海P「やだよ俺ライバルにアドバイスなんて」

P「えっ」

美羽P「海急に大荒れになったんだけど!!?」

森久保P「どうしたお前。なんだなんだ」

裕美P「なんか怒ったの?海のように広い心は?」

七海P「いや、怒ったとかそんなんじゃないけどさ。でもさ、光ちゃんもウチの七海のライバルじゃん。ライバルになんでわざわざ売れるにはどうしたらいいかに繋がりかねないアドバイスしなきゃなんないの?」

P「うっ……」

ナターリアP「オイオイそれはちょっとケチ過ぎるだろう」

七海P「でもさ、確かに同じプロダクションで仲間って言えるかもしれないけどトップアイドルの座は一人しか取れないんだよ?」

七海P「俺は周りのアイドルは全員七海がトップ目指す上でのライバルだと思ってる。だから正直な考えライバルに塩を送りかねない真似はしたくない。周りの子が飛躍するってことは自分の担当がその分枠を奪われる可能性が増えるんだもの」

全員「……!」

七海P「特に担当と同年代ってことは七海がこれからもアイドルとして生きていく間ずっとその子達が付いて回ってくるんだよ?5年10年立っても常に同じ世代のその子達がいる。ライバルとして。その辺は皆考えたことある?」

全員「……」

七海P「俺は七海を絶対トップアイドルにしたい。だからこの件に関しては何も言いたくない。悩んで滞ってるならそっちの方が都合がいいからね」

P「……」

七海P「総選挙の時とかさ、ここにいる皆は悔しくなかったの?」

全員「……」

七海P「だから助けになることはわざわざ言わないよ。脱落するなら勝手に脱落すればいい」

森久保P「……コイツ俺よりドライだな」

ナターリアP「……お前ドライな自覚あったのか」

美羽P「ドライというかある意味情熱はかなり強いけど……」

P「……」

P「……いやでも……一理、あるかもな。……スマn」

七海P「まぁ8割以上冗談だけど」

P「えっ」

全員「えっ?」



七海P「絶対七海をトップアイドルにするって所は本気だけどね。後は今適当に言った」

P「え……えぇ……?」

美由紀P「びっくりした……」

愛海P「ドキッとしたぞお前……なんでそんな冗談言うの……?」

七海P「ライバルと思ってるのも本当だからね。それっぽいのが適当に浮かんだ」

P「本音かと思ったぞ……」

七海P「……そんなに性格悪いと思われてんの俺?」

裕美P「そういうわけじゃないけど……でも俺も冗談じゃなくて本気と思ってた」

七海P「えっ」

裕美P「七海ちゃんがたまに毒吐くからなぁ……温厚に見えてやっぱり実はお前も……!?みたいな」

美由紀P「あーわかる。七海ちゃんたまにさらっとスゴいこと言うよね」

愛海P「俺一回下ネタ振られた事あるし愛海も軽くあしらわれてたな」

美玲P「結構ね、舌足らずだけど毒舌だよね」

P「割と言いたい放題だな……あの舌足らずな感じ可愛くて俺好きだけど……」

森久保P「そろそろ怒らなくて良いのか」

七海P「まぁ七海はお魚以外でもキャラ作ってるし」

ナターリアP「えっ!?他にもなんかキャラ作ってんの!?」

七海P「たまに普通にダ行発音して喋ってるの見る」

P「作った舌足らずなの!?」ガーンッ

美由紀P「え……えぇー……それ事実なら聞きたくなかった……」

七海P「たまたま言えただけかもしれないけど。まぁ可愛いけりゃどうでもいいじゃん」

美羽P「ここで海のように広くなるのかよ……」

七海P「あ、でも七海はフレデリカちゃんのことはちゃんと『フレレリカさん』ってって呼んでたよ」

全員「「「可愛い」」」

すいません、なんか脳が停止してきたのでここで一旦止めます。失礼しますm(__)m また明日続き投下するつもりです

作者はどうせ誰も見てないと思ってるだろう!
リトルヒーロー良かったね

>>164
なんか……ホントありがとうございますm(__)m

俺もリトルヒーロー見るためだけにイベント参加してました。更新遅くなってすいません。
今回はなんかもう、本当に良いユニットをいただいたと思ってます

P「フレレリカさんだって」

美由紀P「これは可愛いね」

愛海P「フレデリカちゃんには悪いけど癖になるな」

森久保P「語感も悪くないしな」

裕美P「仮に舌足らずがキャラ作りだとしてもどうでもよくなる可愛さだね。可愛い」

ナターリアP「毒舌と相まって寧ろ舌足らずキャラ作ってたとしてもそれはそれで魅力なんじゃないのか」

美玲P「ちょっとブラック系?アリかもね。Mっ気ある人に需要が出るかも」

P「……いや、中学生だぞ」

ナターリアP「?」

七海P「君らアレだね。ベタ褒めだね。もっと七海のこと褒めてよ」

美羽P「しかしスゴい濃いなぁ……お魚アイドルでカナヅチで舌足らずで毒舌気味で下ネタも話せるのか……」

ナターリアP「ウチの事務所良くも悪くも皆良い子ばっかだからな。毒みたいなマイナス面も飲み込んでキャラに出来るのは強いかもしれんぞ」

七海P「……言っとくけど七海は純粋で可愛いが基本にあるからね?そこ間違えないでよ?どの角度から見ても可愛いのがウチの七海だから」

美羽P「ところでなんで自分の担当をそんなキャラでいこうと思ったの君?」

七海P「……?」

七海P「……」ウーン…?


七海P「……いや、なんか……出会った時には七海はもうこんな感じだったよ」

美羽P「出会った時から!?」

森久保P「濃すぎるだろ……オーディションか?」

七海P「まさに天然物の養殖だったね。スゴいのが来たなぁって見たとき思ったよ」

P「聞いたことない表現やめろ」

ナターリアP「マジか……会った時からあんなだったのか……?」

七海P「うん」

七海P「俺も海のように広い男になろうと日々努力してるけど今でも七海には手玉にされてるよ」

森久保P「大人だろお前……」

七海P「なんかこう……勝てないんだよ」

美羽P「あー……わかる気がする」

美玲P「じゃあプロデュース方針はウチと同じタイプか……アイドルの好みや持ち味そのままキャラとして売り出すプロデュース」

七海P「……んー……まぁそうなるね」

P「美玲ちゃんも七海ちゃんと同じタイプなのか?」

美玲P「もうそのまんま。キャラ作ってるというかもう美玲がほっとくとキャラになってる。同じタイプかもね」

P「へー……」

美玲P「……光ちゃんもそのタイプじゃない?」

P「……ああ、そうだな。うん」

森久保P「……なぁ、例えばだが……舌足らずを矯正したりお魚キャラを変えようみたいなことはお前は思わなかったのか?」

七海P「思ったことない」

森久保P「即答か」

七海P「七海はお魚アイドルでトップ目指す為に来たんだから変えたら意味ないじゃん。今後ドラマとか舞台みたいな仕事が来て必要に迫られれば喋り方や発音とかの矯正はこっちも考えるけどさ」

P「……」

美玲P「ちょいちょい思ってたけどコイツほんと七海ちゃん大好きだな……」

美由紀P「七海ちゃんの為に自費でアクアリウム事務所に置こうとしてたしね」

裕美P「ちひろさん上手く説得すれば経費でいけるかも、だっけ?」

美玲P「おお……なんかもう色々すごいな……どんだけ大好きなんだ……」

七海P「……?自分のアイドル大好きじゃない奴なんかいんの?」

全員「……」

七海P「いないでしょ?」

七海P「俺は本気で七海を次のシンデレラガールにするつもりだしトップも目指してるよ。それだけの魅力があると思ってるしどれだけ濃かろうとそれが七海に合ってて輝くスタイルだと思ってる」

P「……っ!!」

七海P「色んな仕事させて七海を色んな人に知ってもらいたいし、それとは別に七海がやりたがってる漁船関係の仕事も今企画してる。俺も七海もこのキャラで本気でトップ目指してるよ」

全員「「「……!」」」

七海P「……」



七海P「逆に聞くけどこの中に『自分の担当はシンデレラガールやトップアイドルになれる器じゃない』なんて思ってる人いる?」


森久保P「それはジョークか?」

ナターリアP「思ったことねーわこの世で一番セクシーで可愛いわ」

美羽P「美羽はああ見えて大物だから」

P「あくまで悩んでるのは売り出し方だ 。器で光が負けるわけがない」

裕美P「裕美の笑顔は沢山の人に愛されるトップになれる笑顔だから」

美由紀P「美由紀はこれからどんどんアイドルとして成長するよ。優しい気持ちにしてくれる美由紀の魅力が伝わらないわけがないもの」

愛海P「俺の愛海は登ると決めた山は登り切る」

美玲P「美玲は逸材だよ。ずっと見てたくなる。アイドルとしての素質は狼どころかグリズリーも遥かに超えてるから」

鈴帆P「上田の笑いは世界を変える。既存のアイドルの常識は鈴帆が壊す」 ゾウスイモグモグ

飛鳥P「――世界には引力が溢れ……それによる必然で出来ている。俺は飛鳥の世界を見せるだけでいい。そうすれば……自然と世界が彼女を選ぶ」モグモグ



七海P「……ね?俺と皆とでさ、その辺に違いなんて」

美羽P「ちょっと待って。ゴメンなんか混じってた気がする」

愛海P「何お前ら!?どっから涌いてきたの?つかいつの間に!?ビックリしたわ雑炊食ってるし!」

鈴帆P「済まない。昼飯がまだだったんだ」

飛鳥P「営業帰りで体力を消費していてな」

美由紀P「いや、食べてるのは別に良いんだけど……マジでいつの間に間に座ってたんだ……?」

鈴帆P「ところで蟹は……」

森久保P「美味かったぞ」

鈴帆P「蟹……」

森久保P「美味かった」

鈴帆P「……」

森久保P「……」

飛鳥P「……」

森久保P「本当に美味しかったぞ」






P「……」

美羽P「……また同年代どころか事務所内でもトップクラスに濃いアイドルのPが来たね……」

七海P「……」

美羽P「……?」

七海P「……あのさ」

P「……ん?」

七海P「さっきウチの七海のことキャラが濃いって皆言ってたけど……」

光P&美羽P「「……」」

七海P「……七海のキャラって濃い?」

P「……」

P「……俺はキャラについて色々相談しに来た側だし……」

美羽P「……ノーコメントかな」

七海P「……」

ちょっと頭がヤバイので一旦切ります。ごめんなさいm(__)m

七海P「……」

七海P「……ねぇ、キャラについて悩んでるんだよね?」

P「?」

P「ああ、それで皆ならどう考えるかも聞きたいなって思って……さっきも言ったなこれ……」

P「……今光は今までやってきたことに悩んで迷ってるんだよ。俺はアイツをアイドルとして売り出す立場にいて、責任がある。ちゃんと……ちゃんとアイツのこれからの道を考える必要があるんだ」

P「……俺は光が間違ってたとは思わないし中途半端な仕事をしてたとも思ってない。でも光が他のアイドルの言葉や考えで悩んでるなら……俺も他のプロデューサーの意見や視点に、一度目を向けなきゃダメだ。そう思ったんだよ」

七海P「……。そっちがキャラを棄てるとか棄てないとか……ぶっちゃけそこは俺はどっちでもどうでも良いんだけどさ……」

美羽P「正直だな……」

七海P「それでも、真面目にプロデューサーとしてアイドルのキャラに関して悩んでるみたいだから……」

P「……?」

七海P「……キャラ売りしてるアイドルの担当Pとして、一言だけ」

七海P「キャラを……武器をアイドルの足枷にしちゃ、ダメだよ?」

P「――!!」





鈴帆P「……今なんの話?」コソッ

森久保P「……多分お前とお前のアイドルにはあまり縁の無い話?」ボソッ

鈴帆P「え?鈴帆も?」コソッ

飛鳥P(……)モグモグ

七海P「七海は、確かにキャラは濃いかもしれない。しかもキャラって呼ばれる要素が複数ある。客観的に見てもそこは間違いないと俺も思ってる」

P「……」

七海P「……サバオリくん(七海の持ってる人形)もある意味キャラになるのかな?人形持ち系アイドル?」

P「あ、まだ増えるのかキャラ」

七海P「サバオリくんもカウントするなら増えるね。そうそう七海はぬいぐるみ複数あるんだよ。あんこうのアンキモさんとか」

美羽P「うん。やっぱ濃いわ」

愛海P「濃いね」

美由紀P「ぬいぐるみなら美由紀だって持ってたことある!仕事じゃないけど……」

裕美P「それなんの対抗心なの?」

森久保P「……浅利は……まぁ一度見たら恐らく確実に頭に残るな」

七海P「そうだよ。確実に残る。見かけた時知った時に、しっかり覚えてもらえる。
売り出す側が手っ取り早くアイドルにキャラを付ける一番の理由って普通はそこだよね。記憶にしっかり残す為」

P「……」

七海P「君は多分、ただ心に残すだけじゃなくてどう心に残すかを重視してるんだろうけど……わかりやすい取っ掛かりを作って覚えてもらいたいわけじゃん?そこはキャラ売りしてる皆が変わらないと思うんだよ」

七海P「覚えてもらってから……何かを切っ掛けにもっと興味を持ってもらったり、そこだけじゃない魅力を知ってもらったり……そうなってさ、欲しいじゃない?」

P「……ああ」

七海P「理想だよね。キャラ売りしてるアイドルの。キャラを通してそれをやってる本人を愛してもらえるって形が」

P「……」

七海P「キャラはさ、アイドルとしての武器だよ。印象に残らなければ、覚えて貰えなければそもそも愛してもらえない。生き残るための武器んだ。アイドルとして生きる上で、足を引っ張るためのモノじゃない」

美羽P(……なんやかんや大変なんだな……キャラ売りも……)

七海P「……まぁ、諸刃の剣でもあるけどね。無理なキャラ付けや合わないものを無理矢理付けるのはアイドルに負担がかかる。長い目で見れば後になってもずっと、それをやってたことがのし掛かるし」

P「……」



七海P「……美羽ちゃんってこのままダダスベり駄洒落キャラで生きていくのかな?」

美羽P「いきなりこっちに飛び火してくるのやめてくんない?」

飛鳥P「……そうか彼女もまた……重い禍(カルマ)を背負ってこの世界を生きる咎人なのかもしれんな……。いや、その前に俺達も……人は皆誰もが咎人だった、か……」フッ

美羽P「……」

ナターリアP「落ち着けみうさぎP。今君見たことない顔してるぞ」



七海P「七海はキャラが濃こうが多かろうが、七海そのままの意志や姿勢があってあのキャラになってる。負担はそこまでないと今のところ考えてるかな。
そして何よりとっても強かな面がある強い娘だよ。だから俺の所はそこで心配は無いと思ってるけど」

P「……」

七海P「一度付けたキャラを棄てるか棄てないかは君と光ちゃんの自由だよ。ただ似た立場の人間として言うなら、そこを判断するラインだけは誤っちゃダメだって忠告しとく」

P「……」

七海P「何年も何年も残っていくモノだからね。芸能界でのキャラ付けは」

P(……俺だってそうだ……光そのままの意思と姿勢があってヒーローキャラ……ヒーローアイドル・南条光として売り出そうって思ったんだ……)

P(……光自身も頑張って、そうして老若男女問わず人を応援して励まして、子供のお手本や目印になりチビッ子の目標になる……格好良いヒーローアイドル……)

P(……でも曲がりなりにヒーローアイドル……ヒーローとしてテレビに出たりして……それが光に将来的に負担になる事態が来るかもしれない……か?)

P(……アイドルもヒーローもイメージが大事だ。そこは変わらない。人に明日の元気を与えたり応援したり励ましたり、そこだって同じだ)

P(……アイドルとヒーロー……それでも決定的に違うとしたら……)



美由紀P「……そういやみくちゃんは最初別の事務所だったらしいけどそこでは別の動物キャラやらされそうになったとか噂で聞いたことある」

美玲P「みく?前川みくちゃんか……初耳だな」

美由紀P「たしか、キリンアイドルだったかなんだったか」

美玲P「 キ リ ン 」



ナターリアP「……」

ナターリアP「ねぇ知ってる?(裏声)キリンって、牛の仲間なんだよ?(裏声)」

森久保P「黙れロリコン」

ナターリアP「ろっ……ロリコンじゃねぇし!!違うし!絶対違うし!!」

美由紀P「えっ……何?なんて?君、ロリコンだったの……?」ドンビキ

裕美P「えっ……そうだったの?」ドンビキ

美玲P「初耳なんだけど……」ドンビキ

鈴帆P「ロリコンは犯罪だろ……」ドンビキ

飛鳥P「他人に定められた掟やモラルに反抗する姿勢……俺は嫌いじゃない、が……しかし……」ドンビキ

七海P「あー……七海には近付かないでね」ドンビキ

美羽P「やけにナターリアちゃんと仲が良いと思ってたら……」ドンビキ

愛海P「えっ!?お前まさか……担当アイドルに手を……?」ドンビキ

ナターリアP「丁寧に皆ドン引きしてる!?罪状まで追加されそうになってるし!?」

P「……」

ナターリアP「ハッ!?お前は……お前は信じてくれるよな!?相談のってやったもんな!?」

P「……」



ナターリア『後でイーッパイナターリアのコト、ハグしてね♪』



P「……」

P「……俺……お前の事良い奴だと思ってたのに……」グスッ…

ナターリアP「うわっ!?コイツ一番腹立つ殺してぇ!!ちょっ……ちょーちょーちょー待って!違うから!違うし!!ホンッッットちげーし!!」

森久保P「実際お前担当アイドルと距離が近すぎるだろう。彼女のスキンシップが過剰だとしても、中学生だぞ?ベタベタし過ぎだ」

愛海P「……まさか……やっぱり一線越えちゃってたりするの?」ゴクリ…

P「!!?」

ナターリアP「いやちょっとホント待って!待って!ね!?お願い!弁明させて!ホント弁明させて!!つーかお前下ネタ嫌いっつってたじゃん!?なんなの!?」

七海P「で、実際どうなの?」

ナターリアP「え!?……まぁ、な?確かに距離は近い。近いよ?正直俺も鼻の下伸びたことある」

P「壁がない所が羨ましいとは言ったけどまさか……つか14歳に……」

ナターリアP「待ぁぁぁって!!待って!ちょっと待って聞いて!ホント聞いて!」


ナターリアP「良いかお前ら……真面目な話だぞ?よ~く聞いてくれ。ちゃんとだ。良いか?」

全員「……???」

晶葉P「この部屋で合ってるのか?」

紗南P「多分合ってるよ。でもあの写真なんだったんだろ」

晶葉P「写真は皆で集まってたしわざわざ『今事務所に~』とか書いてたから集まれる奴は集まれって意味なんじゃないか?蟹分けて貰えるとかだったりして」

紗南P「そうか……蟹貰えるとかだったらどうしようか……俺ワクワクしてきた」

晶葉P「既に食ってて自慢のためのメールだったりする可能性もあるな」

紗南P「……それは腹立つな……ここか」

晶葉P「おっ声がするな。入ってみるか」

紗南P「クンクン……この匂いは鍋……ってことは蟹鍋かな?」

晶葉P「事務所で鍋か……この季節にやるか普通……というかやっぱり食ってるんだな」

コンコンッ

ガチャッ

晶葉P&紗南P「失礼しま」


「良いかお前ら?よく聞けよ?」


晶葉P&紗南P「???」





ナターリアP「14歳は……女だぞ……!!」





晶葉P&紗南P「」

ずっと寝落ちしそうで脳が限界なので一旦切りますm(__)m

早坂美玲(14)
http://i.imgur.com/jHOtYN3.jpg
http://i.imgur.com/dK1XImQ.jpg
池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/6aBsVUz.jpg
http://i.imgur.com/AGFcH9d.jpg
三好紗南(14)
http://i.imgur.com/muyObYM.jpg
http://i.imgur.com/o5yUD8k.jpg

おまけ
神崎蘭子(14)
http://i.imgur.com/ZVE5CQo.jpg
http://i.imgur.com/bU1cOIR.jpg
輿水幸子(14)
http://i.imgur.com/arp9Jzs.jpg
http://i.imgur.com/ORYvAMU.jpg

メキメキメキメキ…

ナターリアP「ぐああああああっ!?ギブギブッ!ギブだってこれ!?」

メキメキメキメキ… (※逆海老固め)

七海P「早苗さんまだ?」

ナターリアP「ぐあああ待って!待ってホント!誤解なんだ!!言葉足らずだったんだよ!!大事なところで大事な部分言葉足らずしちゃったんだよ!!俺の話聞いて!?」

森久保P「性犯罪者は皆そう言うんだよ」

ナターリアP「何それソースどこ!?ぐああああああっ!!?」

メキメキメキメキ…





晶葉P「……ああ、そんな流れになってたのか」

紗南P「マジでビックリした……」

美由紀P「まぁ俺たちもビックリだったけどね」

裕美P「14歳は女だって。怖いなー……世の中何処に何が潜んでるのかわからないね」

P「アイツ……良い奴だって信じてたのに……クッ……!」


ナターリアP「『信じてたのに……クッ……!』じゃねぇよ!?お前……!お前もう悩んでても絶対相談乗ってやんないかんな!?覚えてろよ!?ぐあああああああああっ!?」バンバンバンッ

P「でも流石にああもハッキリ断言されるとな……」

ナターリアP「だぁ~から誤解なんだってば……ぐああああああっ!!?なんで俺こんな可哀想なの!?なんなの!?」


鈴帆P「……」

鈴帆P「『あのー、逮捕された○○さんはどんな方だったんですか?(裏声)』」

スッ←箸(マイク代わり)

愛海P「『そうですねぇ……スゴく仕事熱心な人だと思ってたんですが……少し担当してるアイドルとの距離が近すぎるかなぁ~って前から思ってたんですよ~(※モザイク声)』」

飛鳥P「……」←指で目にかかるモザイクを作ってる

愛海P「『まさかロリコンだったなんて……いやぁ~怖いですねぇ……(※モザイク声)』」


ナターリアP「ぐああああああっ
!?て……テメェら言いたい放題言いやがって……覚えてろよぐああああああっ!!?」メキメキメキメキ…


美玲P「どうする?ほんとに早苗さんかちひろさん呼ぶ?」

ナターリアP「えっ!!?ガチなの!?えっ!?お前らマジなの!?ぐああああああっ!?ギブっつってんじゃん!?長くない!?逆海老長くない!?ぐああああああっ!?」バンバンバンッ

美羽P「まぁ待ってみようよ。彼の言い分も最期まで聞いてみない?ね?」

ナターリアP「ああああああ美羽P!!お前……お前なんて良い奴……ん?今『最期』っつった……?」

メキメキメキメキ…

ナターリアP「あっちょっ待っ……待って!最期になる!!ホントに最期になる!!ちょっやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」

ナターリアP「まぁ真面目な話、だ。お前ら自分の担当アイドルのことどう思ってる?」

P「?」

森久保P「質問の意味がわからん。どうってどうなんだ?」

ナターリアP「つまりだ。大人として扱うか子供として扱うか、どっちだ?」

P(光P)「……?そりゃあ、子供だろう」
美由紀P「子供だね」
裕美P「ウチも子供かな」
美羽P「まだ中学生だしな」
晶葉P「立派にアイドルとして働いてはいるが、一応子供だと思ってる」
紗南P「流石にまだまだ子供デショ」
美玲P「大人……は少し違うしな。どっかと言えば子供かな、俺も」

ナターリアP「……まぁ、お前らはそうか」

P「この歳じゃまだ中学生だし、いくらしっかり仕事してたり考えてても2年前はまだ一般の小学生だったわけだしなぁ」

美羽P「うん。子供だからって嘗めてる訳じゃないぞ。俺も多分皆も」

ナターリアP「そこはわかってるし、まぁ一理あるわなどれも。……で、子供って言わなかった人らは?」

子供組P「!」

森久保P「……」

森久保P「周りにどう見えてるかは知らんが一人の社会人として扱ってるつもりだ。大人が子供に仕事をさせてるのは確かだろうが、森久保……乃々のような気弱な性根の娘を大人が無理矢理上から強制するような形にはしたくない」

愛海P「おお……意外な一言……」

森久保P「こう見えて俺は持ってくる仕事も乃々の性格や出来ることに慎重になってるつもりだ。お前らの俺のイメージはなんなんだ」

全員「「ドS」」

森久保P「よし今日のことは忘れんぞ」

愛海P「忘れなかったらどうなるんスか?」

森久保P「森久保の仕事が増える」

愛海P「どういうシステム?」

愛海P「愛海も子供ではあるんだろうし実際子供っぽい所まだまだあるから子供なんだろうけど……あんまり意識したことはないかもなぁ」

ナターリアP「大人として扱ってるというよりあんま子供子供と意識してない感じか」

愛海P「子供、というとなんか少し違うかなって程度だよ。子供ではあるんだけどね」

ナターリアP「わかるようなわからんよーな」

愛海P「妹と悪友が混ざったような感じ?なついてくれてるし困ったところはあれど可愛い奴なんだけどね」

ナターリアP「お前は?」

鈴帆P「仕事においては完全にプロだと思ってる」

ナターリアP「プロだよね。わかるわ」

全員「……」ウンウン

鈴帆P「そもそも俺はあんな逸材見たことがない。今までいなかったよね、あんなアイドル」

森久保P「いてたまるか」

鈴帆P「でも必ずウケは取ってるし仕事の度に必ず話題になる。他の娘には出来ない真似だよ。アレを素面で心底楽しんでやりきるんだ。その辺があるから俺も信頼してどんな仕事も取ってこれる」

ナターリアP「……なるほどな」

七海P「七海は……子供ではあるけどお魚アイドルだし水着とか大人向けの仕事、結構取ってるんだよね俺」

美羽P「そう言われれば……」

七海P「そういう売り方しても大丈夫って思って取ってるからね。そういう意味ではあまり子供として扱ってない、かも」

七海P「水着とかの仕事回すってことはまぁ、そういう需要も俺はちゃんと考えてる訳で」

ナターリアP「お前……それならあんなロリコン容疑だけで逆海老かける必要無かったんじゃ……」

七海P「アレは別でしょ」

ナターリアP「そうなの?」

七海P「別でしょ」

ナターリアP「……別な気がしてきた」

飛鳥P「……」

ナターリアP「……」

飛鳥P「……子供や大人、その枠組み……カテゴライズに果たして意味はあるのだろうか?」

ナターリアP「OK、ありがと。うん、そっからなんだけども」

飛鳥P「俺達が生まれる前からなのか生まれた後からなのか……世界にはありとあらゆる規範、ルールがその世界を生きる俺達の意思とは無関係に定められてきた……常にな……」

ナターリアP「まぁお前らさ、なんやかんや聞いてて皆基本子供である、って前提持ちつつそこからどう扱うか決めてる感じじゃん?」

飛鳥P「そうしたルールに縛り付けられて生きる……多くの人間はソコに疑問など持ったりは、しないのだろう……」

ナターリアP「大人として扱う組も意識的にこう、子供扱いしないように~みたいなさ?」

P「……?」

美羽P「……まぁ」

森久保P「どっちに転んでも子供であることを意識してからになるのは間違いないな」

飛鳥P「枠から溢れるもの……弾かれてしまうもの……既に染められた世界に交わることの出来ないもの……そういう人間達は、少なくはないだろう……」

ナターリアP「そう、そうなんだよ!子供って前提をちゃんと皆持ってるだろ?俺も持ってる!ちゃんと持ってるんだよ!14歳は子供だ!まだまだお子様だ!ってな!」

P「でも女だって」

ナターリアP「そう!女なんだよ!最後まで聞けよ!?確かに相手は子供だ!だが実際に接してみればわかる!!間違いなくもう立派な女性なんだよ!!俺達が相手にしてるのは!!」

森久保P「何を力説してんだコイツは」

飛鳥P「……虚無を知るもの……虚像を虚像とわかった気になっている……ペシミストを気取っただけの……そう飛鳥と俺はどんなカテゴライズにも当てはまらない……敢えて近い言葉を探すなら……」




飛鳥P「同志、か……」フッ…

美玲P「お前就活の時どうやってここの面接通ったの?」

ナターリアP「俺らが中学の時どうしてたっけか。14位の時」

「……馬鹿やってたような」

「遊んでばっかだったかなぁ」

「友達とつるんで自分等だけでちょっと遠出したり」

「あー遠くの海とか自分らだけで行ったり」

「学校の帰りに買い食いしたりな」

「部活ばっかだった」

「俺初めて女子に告ってフラれたな……」

「ウチ田舎だったからなー」

「こっそりバイトしてた俺。校則違反だったけど」

「俺はゲームばっかりしてたなー」

「俺その頃アニメハマってたかも」

「既に……いや、丁度その頃にこの世界の構造に気付いたかもしれない、な……」


ナターリアP「ね、皆そうだよな。男は馬鹿だもんな。大体やんちゃやったり馬鹿やったりだよな。なんか最後混じってた気がするけど」

ナターリアP「だがな、女……女子は違うぞ。もう14とか中途半端な数字の癖してお前……マジで扱いに困るぞ?」

森久保P「いつまで自供してるつもりだロリコン」

ナターリアP「だから違うって!!じゃあお前ら想像してみろよ!!」

全員「?」

ナターリアP「お前らの担当がことあるごとに平気で腕とか背中とかにこう、ぴとっとくっついてきたり、胸とか押し付けてきたりとかさぁ!?」

全員「……」

ナターリアP「そんなことしながら『プロデューサー!結婚しようね!』みたいなこといっつも言ってくるんだよ!?あぁ!?お前らならどうするよ!?考えてみろよ!!」

P「……」

ナターリアP「……」

P「……」



ナターリアP「……どうよ?」

P「……脳が」

ナターリアP「……?」

P「……脳が想像することを拒否してるというか、考えたくもないと言うか……」

ナターリアP「……」

P「その状況を想像すること自体俺の脳機能的に無理と言うか……想像してる自分が嫌と言うか……」

ナターリアP「……」

P「……」

美由紀P「……ごめん、正直俺も……特に前半が……」

裕美P「……なんだろう、俺もちょっと」

ナターリアP「……ごめん」

ナターリアP「まぁ、お前らはそうか。担当してるメンツ的に……でもほら、他のは……」

晶葉P「正直あまりピンと来ないな」

紗南P「……同じく。バレンタインに義理チョコなら貰ったけど……紗南が『結婚してー!』とか言う姿は想像できないかなぁ」

美羽P「美羽にそういうのは少し早いかなって」

愛海P「……ひたすら愛海に俺の乳揉まれてるイメージが何故か浮かんだが」

七海P「対応に困る例えだなって」

美玲P「いくら美玲が牙の抜けた獣だからってそれはデレ過ぎかな……」

ナターリアP「……」

森久保P「……」

ナターリアP「……お前は?もし森久保ちゃんがそんなんやりだしたら」

森久保P「(笑)」

ナターリアP「酷くない?」

飛鳥P「……飛鳥なr」

ナターリアP「……いや、悪かった。これは俺のミスだ」

ナターリアP「例えを間違えたな……そうだな……お前らの担当皆つんつるてんだもんな」

「「ぶち殺すぞ」」

ナターリアP「ごめん」

ナターリアP「だがまぁ、お前ら考えてみてくれ。俺の担当アイドルは誰だ?そう、ナターリアだ」

ナターリアP「ブラジル出身、褐色の肌とダンスで鍛えたセクシーなボディが売りのアイドルだ」

森久保P「隙あらばダイマか」

ナターリアP「さっき俺が言った例え、お前らの担当ではピンと来なかったかもしれない……が、もしそれをやってくるのがウチのナターリアだとしたら……どうだ?」


P「……?もしそれがナターリアちゃんだったらって……?」

愛海P「さっきのおっぱいくっつけるだの結婚してーだののアレか」

美玲P「もしナターリアちゃんだったらってそりゃ……」

全員「「……」」


ナターリアP「……」


全員「「……」」


ナターリアP「……」


全員「「……」」


ナターリアP「……1つだけ聞かせてくれ」

全員「「……」」

ナターリアP「……」

全員「「……」」

ナターリアP「……確かに俺はナターリアを同僚ではなく一人の女性として意識してる節がある。認めよう。担当アイドルで中学生にも関わらず、だ。ちゃんと子供とわかってるが……その節が心にあったのには間違いない」

全員「「……」」

ナターリアP「……だがナターリアを……彼女を女性として内心意識してしまう時がたまにとはいえある俺は……果たしてそんな俺は……本当にロリコンだと言えるだろうか……?」

全員「「……」」



P「……ごめんな。配慮が足りなかったわ」
美由紀P「俺も少し言い過ぎたよ」
裕美P「お前も大変なんだな」
愛海P「当人なら大変なんだろうな……実際」
美羽P「外野がとやかく言うのは簡単だもんな……」
美玲P「他人にはわからない苦労って皆あるよな」
晶葉P「難しい年頃だもんな……」
紗南P「社会的にも、か……?」
飛鳥P「……統計的に見れば色々と難しく、制約の多い年代であることには間違いないのだろう」
森久保P「キツく当り過ぎたか……悪かったな」
七海P「逆海老してゴメン。やり過ぎたよ」


ナターリアP「いや、わかってくれたならいいよ。うん。お前ら想像以上に手のひら返してくれたな」

森久保P「……静かな奴がいるな」


鈴帆P「……」


鈴帆P「……正直俺はまだあまりピンと来ないかも……」

ナターリアP「えっ!?マジで!?ED!?」

P「大声で何叫んでんだお前……」

ナターリアP「……いや、でもお前……ウチのナターリアはほんとにヤバイんだって!!」

晶葉P「力説しだした」

ナターリアP「お前……昔な、俺がナターリアと海外ロケで撮影一緒に行った時なんか……」



ナターリア『ナターリア、Pをユウワクするんダ♪いいダロ♪』



ナターリアP「セクシーな衣装に着替えてそんなこと言ってきたんだぜ!?」

紗南P「うおお……すげぇなナターリアちゃん……」

鈴帆P「……」

鈴帆P「……ませてるなぁとは思うけど」

ナターリアP「」

ナターリアP「う……嘘だろ……これ言われてもなんも感じないのか……!?」

鈴帆P「結局鈴帆の同級生だろ?いくら発育良くてもなぁ」

ナターリアP「そんな……いや同級生だろうとヤバイって!魔性だって!!」

鈴帆P「その言い方だと逆説的に鈴帆も魔性になるんだけど……」

森久保P「お前はお前で担当アイドルに酷いな」

P「ムキになってるな……」

ナターリアP「他にもお前……」


ナターリア『今夜はオタノシミだヨ♪』


ナターリアP「とか!!」


『ナターリアのドコ見てる?カオ?』

「とか!?」

『ナターリアのドコ見てる?ヴェール?』

「とか!!?」

ナターリア『ナターリアのドコ見てる?ウェスト?』

「とか!!?」

ナターリア『ナターリアのドコ見てる?ムネ?』


ナターリアP「とか言っちゃったりして!!?」

森久保P「何処見てんだお前は」


ナターリアP「そんで極めつけに……っ!!」






ナターリア『ナターリアのドコ見てる?アソコ?』






ナターリアP「“アソコ”って何処ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?」


森久保P「ウルセェェェェ!!さっきからデカイ声で何叫んでんだテメェは!!」


P「どっちもキレた!?」

ナターリアP「ぐえええええっ!?ギブギブ!!」メキメキメキ…

七海P「……でもそれナターリアちゃんが早熟なだけなんじゃないの?ウチの七海も(俺が言うのもなんだけど)似たようなもんかもしんないけど」

メキメキメキ…

ナターリアP「ぐえええええっ!?待て!よく考えろ!!大事なのはお前らの担当とそんな女性としての意識バリバリな子供のナターリアが同じ年齢だということだ!!」

美羽P「それは今更な話では……?」

ナターリアP「バカ野郎!つまりお前らの担当だっていつどうなるか、こんな風にいつ女性としての意識が強くなったり大人っぽいアプローチを推したりするように変わってもおかしくないと言っているんだ!ぐえええええっ!?」メキメキメキ…

P「」ゴフッ←吐血

紗南P「うわっ!?吐血した」

森久保P「気にするな。彼は病気なんだ」

美由紀P「み……美由紀もいつか大人っぽいアプローチやプロデュースを望むように……?」

愛海P「完全にチャイルドポルノだな」

裕美P「……思い当たる節はあるが……」

ナターリアP「だろっ!?女の子は男が思うよりすぐ大人になるしアイドルなんだからその辺が武器だってちゃんとすぐに理解する!馬鹿な男とは違う!!もう男がエスカレーターで昇る大人の階段を女子はエレベーターだからな!?」

森久保P「誰も階段使ってないな」

ナターリアP「ぐああああああ!?上田P!!テメェこれだけは覚えとけよ……!!あとついでに光Pも!!」メキメキメキ…

鈴帆P「?」
P「……?」

ナターリアP「お前らが相手してるのは……ぐああああああ!?女の子だってことを……まず前提に覚えとけあぐぁぁぁぁぁぁっ!!?」

ナターリアP「か……完全に頭から飛び抜けてるみたいだが……そこまでいくと危険だからな!?ぐああああああ!?」

晶葉P「この状態でアドバイスとは見上げたやつだ……」

ナターリアP「ちゃんと女性だって意識だけは持っとかないと……万が一……心変わりが万が一起こったとき……どっちも心の逃げ道なくなるぞ……ぐああああああああああっ!!?」


P「……」


ナターリアP「と……ところで……なんで俺、今逆海老固めされてんの……?」

美羽P「さぁ……」

ナターリアP「……死んじゃう……」グッテリ…

紗南P「俺はとんでもない部屋に入ってしまったのかもしれん……」

晶葉P「俺もだ」

P「……」

鈴帆P「……確かに将来可愛らしい路線やセクシーな路線……というか“一般的な他のアイドルと同じ”な方向性を望む日も来ないとは言い切れないから忠告は受け取っとくけどな」

鈴帆P「本人が今この瞬間何をどう望んでるのかが結局一番大事なんじゃないか?鈴帆は今のお笑いキグルミ路線が一番輝いてるだろうし」

P「……。もし、さ……」

鈴帆P「……?」

P「……もし現実に鈴帆ちゃんが今の路線に迷う事態に直面しちまったら……お前……どうするよ?」

鈴帆P「……???」

鈴帆P「……んー……結局俺ならその時鈴帆がやりたい方、で考えるよ。多分。迷ってるなら迷った先を1度やらせてみてもいいかもしれん」

P「……そうか」

鈴帆P「迷う理由にもよるけどな。つか嫌々仕事させる為に俺鈴帆をアイドルにしたわけじゃねーもん」

P「!!」

美羽P「さらっと言ってるけどどんな路線でも上手くプロデュース出来るって自信がないと言えない奴だな……」

鈴帆P「今の鈴帆のは実際面白いし仕事には溢れないって面もある。別の見方してもな。一番食いっぱぐれないと思うよ?同期の中ではさ」

鈴帆P「まぁ、笑いやギャグって実は寿命が短いからその辺も考えなきゃな訳ではあるが……それでもだ」

美玲P「実際あの子事務所主催のイベント……ツアーでもなんでもよく出てるもんな」

鈴帆P「出演率がダンチなのも仕事が多いのも今の路線のおかげだよ。そりゃ、例えば事務所の偉~い人が『方向性変えろ!』とか突然言ってきたなら俺も鈴帆が望まない方向でも変えざるを得ないんだろうけど」

ナターリアP「……偉い人に言われたら変えるのかよ」

鈴帆P「個人の力でどうこうできるならそら断るわい。ここはなんやかんや自由が利く事務所だから皆好き勝手プロデュースしてるけどな」

飛鳥P「否定はしないな」

鈴帆P「だろ?幸子ちゃん蘭子ちゃんのPなんかやりたい放題じゃないのか?」


鈴帆P「……アイドルの役割なんて世の中色々言ってる人がいるけどさ、結局ファンを笑顔にするのが一番のアイドルだろ。形に囚われる必要なんか本当はないんじゃないか?」

鈴帆P「……それにな、アイドルがファンに夢を見せるのが仕事ならアイドルに夢を見せるのは誰がするんだよ」

全員「……!!」

鈴帆P「夢追ってアイドルになったんならそれをプロデューサーが折るわけにはいかないだろ。担当Pだぞ。だったらそれはもうあの子ら一人の夢じゃないだろ」

P「……!!」




森久保P「……コイツ……あんなふざけたプロデュースの仕方してるくせに意外とまともな考えを……」

愛海P「芸人の癖に……キグルミの癖に……」

紗南P「アイドルかどうかも怪しいプロデュースの仕方なのに……」

晶葉P「晶葉も昔中の仕組み手伝ってたなそういや……よくよく考えたらコイツイベントの度に太陽神とかフェニックスのアレとかの案通して実現させてるんだよな……」

美玲P「もしかして実はとんでもないプロデュース能力と交渉力を持ってるのか……?」

裕美P「あんま考えたことなかったな……なんでだろ……」

美由紀P「なんか、急に悔しくなってきた……」


鈴帆P「あと一応俺も鈴帆が芸人じゃなくアイドルって認識でこの仕事やってるから。双方の需要をちゃんと考えてるから」

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