星輝子「また……明日」 (20)

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「み、見て……P」

「ん?」

「フヒ……綺麗な夕焼けだぞ……」

「お、本当だ。綺麗だな……」

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真っ赤に染まった空が

一日の終わりを告げる

昼間より若干冷たい空気に

少し身を震わせる

だけど心は暖かい

今日も、楽しい一日を

過ごすことができたから

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「あ、あの……P……」

「おう」

「これから、キノコの世話するんだけど……よかったら一緒に……」

「ああ、手伝うよ」

「フヒ……ありがとう……」

今日は一日中乾燥していたから

いつもより念入りに世話をする

キノコたちは私と同じ

ジメジメした空気が好き

雨の日の方が元気に見える

トモダチが元気だと

私まで元気になってくる

だから雨は好きだ

野外ライブがある日を、除いては

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「……輝子」

「な、なに……?」

「今日は……楽しかったか」

「……もちろん、楽しかったぞ」

「そうか」

「うん」

「……よかったな」

「……うん」

仕事が終わったあと

いつもPは聞いてくる

今日は楽しかったか、と

そのたびに私は答える

楽しかった、と

Pは心配してくれているのだろう

多少改善したものの

未だ人と交わるのが苦手な

私のことを

そんなPの気遣いに

私はいつも助けられている

そんなPの気遣いに

私はいつも感謝している

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「き、今日は……幸子ちゃんにバラエティーの基本を教えてもらった……」

「ほう。例えば」

「……先ず第一に……お客さんが一番求めてる行動をとること……」

「なるほど」

「それから――」

一緒に過ごしていくうちに

トモダチとは普通に話せるようになった

……とはいえ

自分から他人に話しかけるのは

まだちょっと苦手だ

だけど

いつか、誰とでも

気軽に話せるようになりたいな

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「輝子。明日の予定は分かってるよな?」

「うん……」

「よし。いちいち確認しないけど、明日もしっかり頼むぞ」

「フフ……了解……」

……明日

アイドルになる前は

明日が少し嫌だった

夢はなく

トモダチもキノコだけ

何も変わらない退屈な時間が

ただ淡々と繰り返される

それだけの毎日だったから

……でも今は

今は、違う

Pのおかげで

キノコ以外のトモダチも

たくさんたくさんできた

皆のおかげで

ゆっくりとだけど

私は変わることができた

私が変わったことで

退屈だった毎日も

少しずつ……変わっていった

そう

だから

だから、今は――

そう

だから

だから、今は――

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「う……んと。そろそろ帰るとするかな」

「も、もう帰るのか……?」

「ああ。仕事も全部終わったし」

「そうか……」

「輝子も気をつけて帰るんだぞ」

「フフ……わかった」

「おう。じゃあな、輝子」

「フヒ……じゃあな、P……」

明日はもっとよい日になる

明日はきっとよい日になる

そんな小さな期待を込めて

私はいつも

最後にこう付け加える




「また……明日」

終わりです。
輝子誕生日おめでとう。

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