怜「ごめん、日曜日彼氏とデートやねん」(89)

千里山高校の昼休み。

竜華が日曜日に遊びに行こうと怜に誘った返事がこれであった。



竜華「………………」

竜華「えっ………………?」

怜「ごめんな」

怜「埋め合わせはその次の…」

竜華「もっかい、言うて」

怜「えっ?」

竜華「もっかい言うて!!」

怜「せやから、悪いけど次の日曜日は彼氏とデートなんよ」

竜華「!!!」

竜華「い………」

怜「い?」

竜華「いややあああああああああああああッッッ!!」

怜「竜華?」


ガタッ!!

ガラッ!!

ダダダダダダダダッ!!


怜「ちょっ、竜華ぁ!?」

セーラ「うわあっ!?」

セーラ「なんや、今の竜華か?」


怜「あっ、セーラ!!」

セーラ「どないしたんや、怜」

セーラ「竜華、凄い顔で廊下を駆け抜けてったで」

怜「凄い顔ってどんなん?」

セーラ「涙と鼻水と涎を垂らしながらなぁ、」

セーラ「奇声を発して、どこ見てんのか分からん目で走ってたわ」

怜「そりゃまた凄いな…」


怜(けど、竜華にとっては、日曜行きたかったとこはそんなに大事やったんか)

怜(後で謝って、ちゃんと来週埋め合わせするて約束せなあかんな…)

怜(ごめんな、竜華)


――しかし、この日竜華が教室に戻って来ることはなかった。

――放課後。怜は診察があるので今日は部活に寄らず帰りました。


泉「なんや部長、生気が抜けてますね」

船q「昼からずっと、部室の隅っこで縮こまっとるらしいわ」

船q「江口先輩、なんか園城寺先輩から聞いてませんの?」

船q「部長がこんなことになるゆーたら、」

船q「園城寺先輩絡みとちゃいますのん、どうせ」

セーラ「あー、それがやなあ」


竜華「言わんといて!!」

泉「!?」(ビクッ!)

船q「!?」(ビクッ!)


セーラ「竜華。現実逃避しても始まらんて」

セーラ「怜にも、ついに一人の女として巣立つ日が来たんやで」

セーラ「気持ちよぉ応援したるのが友達やないか」

竜華「いやや!!」

竜華「うちは認めへん…!!」

船q「一人の女!?」

泉「それってつまり、そういう事ですか!?」

セーラ「せや」

セーラ「怜の奴なあ、とうとう男作りよったらしいわ」

セーラ「女子校通うてるくせに、よおチャンス見っけたなぁ」

竜華「いやあああああああああああああああああ!!」

竜華「夢や!」

竜華「これは夢なんや!!」


竜華「本当のうちはな、」

竜華「今頃怜の家の縁側でな、」

竜華「穏やかな日差しの中で怜を膝枕しながら寝てるんや!!」


竜華「んで、突然怜がうちの胸を揉んで来て、はっと目が醒めんねん!!」

竜華「”竜華、うち放ったらかしにして寝たらあかんよ?”」

竜華「ああ、もう、怜はかわええなぁ!!」

竜華「放ったらかしになんかしてへんやん!!」

竜華「うちはいつだってあんたの事を…なあ、怜、怜ぃぃ!!」

泉「部長そろそろヤバないですか?」

セーラ「言うてもなぁ」

船q「ところで江口先輩」

セーラ「何や?」

船q「園城寺先輩の彼氏さんて。どんな方ですか?」

セーラ「ん~? 自分気になんの?」

船q「部員に関する情報はなるべく多く確保しときたいんですわ」

セーラ「詳しくは知らんで」

セーラ「昼間怜から簡単に聞いた範囲やとな…」

――回想。本日の昼休み。竜華が去った直後。


怜「実は…最近知り合うた人なんや」

怜「今、大学の2年生なんやけど」

セーラ「大学生かい」

怜「病院行く途中で倒れたうちを、病院まで連れてってくれたのが始まりやった」

怜「イケメンて感じやあらへんねんけどな、」

怜「優しいて、真面目で、一緒にいると心が落ち着くんよ…」

怜「そんで、告白したらな、」

怜「…」

怜「付き合うてもええて、言ってくれてな… ///」

セーラ「そうか…」

セーラ「良かったな、怜」

怜「うん、ありがとセーラ」

――回想終了。

船q「先輩乙女チックオーラ丸出しですやん!」

泉「けど、うち分かりますよ」

泉「麻雀ばっか打ってても、うちらも年頃の乙女ですからねぇ」

泉「私だけの王子様がいたら…なんて事思ったりもしますもん」

セーラ「せやなあ」


竜華「怜、怜ぃぃぃ!!」

竜華「なんでやろ!?」

竜華「怜、なんで男なんか作ったん!?」

竜華「怜にはうちがいるやんか!!」

竜華「怜は、うちの事が嫌いになったんか…?」

竜華「怜、うちがなんかした…?」

竜華「膝枕に飽きてしもたんか?」

竜華「怜が…、怜ぃ…」

船q「部長落ち着いてください」

船q「園城寺先輩に彼氏さんが出来たことと、」

船q「園城寺先輩の部長への好感度云々はまるっきり関係無いと思いますよ」


竜華「関係あるわ!!」

竜華「怜にはな、うちがおらんとあかんねん!!」

竜華「うちがおらんと…」

セーラ「竜華は怜がおらんとあかん、の間違いちゃうかそれ」

竜華「なのに、うちがいらへんようになったって事やんか…」

竜華「うち、怜にとっては一番やのうなってしもたんや…」

セーラ(無視しよったぞコイツ)

竜華「こないな話、セーラには分からへんねやろな」

竜華「なあ、泉」

竜華「泉は分かってくれるやろ?」

泉「えっ!?」

泉(うちに振んの!?)

セーラ(適当に相槌打っとき)

船q(こじらせたら面倒臭いだけやで)


泉「そ、その通りやと思います部長!」

竜華「流石やわ!! 一年生はちゃんと分かってくれんねんな!!」

泉「はぁ……」

竜華「ああ、どうしたらええのん、怜ぃ………」

竜華「…」

竜華「…せや」

竜華「簡単な事やん」

竜華「そないな男との仲、壊したったらええねん」

セーラ「おい」

竜華「見事に破局したら、怜はうちんとこ戻ってきてくれるはずや!」

竜華「”ああ、可哀想な怜!”」

竜華「”けど分かったやろ、男なんかあかんで”」

竜華「”怜を理解してあげられるのはうちだけなんよ”」

竜華「”せやな、竜華…、うちには、竜華しかおらん…”」

竜華「”ああっ、怜ぃぃぃぃ!!”」


竜華「…」

竜華「決めたわ」

竜華「なんとかその男と、怜を離れさせたる!!」

泉「発想が最低ですねぇ」

船q「それこそ園城寺先輩との友情に亀裂が入るんとちゃいますかね」

――そして時間が飛んで土曜日の夜。



竜華「ここで間違い無いねんな」

船q「ええ。ここのアパートの202号室が、」

船q「園城寺先輩の彼氏さんの部屋ですわ」

竜華「敵の苦手なモンは、あれでええねんな?」

船q「はい」

船q(敵て…)

竜華「流石は情報収集と分析のエキスパートやなあ。頼りになるわ」


船q「けど、本気でやりますのん?」

船q「今からでも思い直した方がええんと違いますか」


竜華「何を言うてんねん!」

竜華「怜を毒牙にかけようとしとる悪魔の巣やで!?」

船q「悪魔て」

竜華「待っててや怜!」

竜華「うちがあんたを正しい道へと引きずり戻したる!!」

船q(”こんな手段”を取る親友のいる道が正しい道なんかねぇ…)

――それから少し経った頃、怜の部屋。


怜(明日は彼とデートや)

怜(ドキドキすんなぁ)

怜(そういやうち、usjて行った事も無いねんなぁ)

怜(どんな一日になるんやろ)

怜(気になって眠れへんわ…)

怜(ん…?)


携帯電話『~♪』<【futuristic player(一巡先を見る者)】

怜(電話や)

怜(誰からや?)


『彼氏君』


怜(おっと)

怜(明日の確認かいな!?)


ピッ

怜「は、はいもしもし、うちですけど」

彼氏「ああ、怜か…」

怜「どうしたん?」

彼氏「明日やけど、俺、無理かもしれへん…」

怜「!?」


怜「ど、どういう事!?」

彼氏「ごめんな…、ごめん…」

怜「ちょっと待ってや、そんな急に…」

彼氏「うああああああああああああああッッ!! また出」

ガチャッ! ツー、ツー、ツー。


怜「もしもし!? もしもし!?」

怜「…」

怜「いったい、何があったんや!?」

怜「とにかくこっちから折り返しで電話してみよ!!」


―――”おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、
電源が入っていない為…”


怜「ええ?」

怜「ええええええええええ!?」

――同時刻。


船q(この人、とうとうやってしまいよった…)


竜華(許してな、怜)

竜華(あんたのデートを潰したいのは、あんたを悲しませたいからやないんよ)

竜華(全てはあんたの為なんよ)

竜華(初日のデートをドタキャンなんかする男はあんたも願い下げやろ?)

竜華(それでええんや)

竜華(これで空いた日曜日は、うちが代わりに埋めたるさかい…)



船q「あれ? あれ、園城寺先輩ちゃいます?」

竜華「嘘!?」


怜「はっ! はっ! はっ…ごほごほ!!」

怜「ぜぇぜぇ、はぁっ、はぁっ…」

船q「早いですね…」

船q「園城寺先輩宅から彼氏さん宅までは自転車でも10分くらいかかるはずですが」

船q「デート中止の連絡行ってから猛ダッシュで来たんでっしゃろか」

竜華「ちょっと怜、何してんの!?」

竜華「そんな息を切らして、苦しそうに!!」

竜華「病弱なあんたがそんな速さで走るなんて無茶したらあかんやないの!!」

船q「あっ、アパートの階段上がってきますよ」

竜華「ええええええ!?」

怜「はぁっ、はぁっ、ぜぇっ、ぜぇっ…!!」


怜(あの人が、なんで突然あんな電話してきたかは知らん…)

怜(けど、あの人は理由も無しにドタキャンする人やないんや)

怜(そこはうちの人を見る目に誓う!)

怜(それにあの悲鳴はただ事やない)

怜(なんかあったんや)

怜(なら、うちが行かんとあかんのや)

怜(うちは、もうあの人の彼女なんやから…!!)

――怜の彼氏の下宿。


ガチャッ!!


怜「うちや、怜や!!」

怜「入るで!!」

怜「…!!」

彼氏の部屋に入り彼女が見たもの。
それは、布団を被りぶるぶる震える一人の男の姿だった。


怜「どうしたん!? 大丈夫か!?」

彼氏「その声、まさか怜か…?」

怜「そうやで。玄関の鍵、空いてたからあがらせてもろたで」

怜「はぁ、はぁ………ごほっ!!」

彼氏「おい大丈夫か!?」

彼氏「走ってきたんか!?」

彼氏「お前身体弱いんやからさあ…」


怜「だ、」

怜「大丈夫かっちゅーのは、うちの台詞や!!」

彼氏「ッ!!」

怜「何やったん、さっきの!!」

彼氏「それが、やな……」

――とりあえずお茶で一服しながら、かくかくしかじか。


怜「幽霊が出た?」

彼氏「ああ、せや…」

彼氏「窓の外に髪の長い女の幽霊が出てな、」

彼氏「明日は家から出るな、出たら呪うて繰り返し繰り返し…」

彼氏「俺、実は子供の頃から幽霊とかオバケが大の苦手で…」


怜「誰かのイタズラちゃうのん?」

彼氏「そうかも知れんけどああも不気味やと取り乱してもうてな…」

彼氏「つい怜にあんな電話した後、電話放り投げて布団被ってしもうたんや」

彼氏「ごめんな…」

怜(確かに、この人の携帯電話、床に投げ出されてバッテリーはずれてんな)

怜「それにしても手の込んだ悪戯して悪い奴や」

怜「今度見かけたらうちががつんと言うたる」

彼氏「…」

怜「?」

彼氏「…」

怜「どうしたん?」

怜「うちの顔、まじまじと見つめて」

彼氏「いや、意外やなと思て」

怜「えっ?」

彼氏「怜て、もっと静かな印象あったんやけど、」

彼氏「割とアクティブやなって」


彼氏「そんな事言うたり、さっきみたいに体調悪いのに走って来てくれたりな」

彼氏「強い女やなって」

怜「や、やめてや…」

怜「うちはそんな強ないし」

怜「大事な人が困ってたら身体押してでも頑張るのは当たり前やて」

彼氏「いやあ、その当たり前が出来ん人も、けっこういるんちゃうか」

怜「そうなんかな」

彼氏「そうやて」


怜「…」

怜「そう言って貰えるのは嬉しいけど」

怜「多分それは、竜華のお陰やな」

彼氏「友達?」

怜「うん」

怜「うちの大事な、めっちゃ大事な親友やねん」

怜「うち、身体弱いやん?」

怜「麻雀もあんまり強のうてな」

怜「けど、竜華はうちをめっちゃ頑張って助けてくれんねん」

怜「うちはいつでも、竜華に守られてきたんや…」


怜「けど、そんな竜華を見て、」

怜「うちはずっと思っとったんや」

怜「誰かの為に頑張れる女になりたいて」

怜「竜華の力を借りずに、自分の力で立てるようになって、」

怜「自分の大事な人を守れるようになりたいて」

彼氏「…」

彼氏「本当に大切に思てんねんな、その子の事」

怜「うん」

――同時刻、外。


船q「部長、もういい加減帰りません?」

船q「園城寺先輩、彼氏さんの部屋入ったきり出てきませんし」

船q「お楽しみ中やったら、チャチャ入れるのは野暮やないですか」

竜華「いやや…」

船q「えっ」

竜華「もう一回やる!!」

船q「やめた方がええですて」

船q「ほんとは幽霊のカッコして人様の家のベランダに上がるだけでもアウトですよ」

船q「まして、今回は園城寺先輩が中にいてはるんですよ」

船q「先輩に見つかったらどうするんですか!?」

竜華「なんであんたはそない薄情なん!?」


竜華「怜が!!」

竜華「うちの怜が男に取られてもええの!?」

船q「うちは園城寺先輩が幸せならなんでもええと思いますけど」

竜華「ならうちと怜の幸せを願ってくれてもええやん!!」

船q「それは園城寺先輩が決めることやないんですかねぇ」

オチも考えずノリで書いたけど
書き貯めストックももうないし
眠いので寝ます

続きできた。


竜華「かまへん!!」

竜華「もっぺん幽霊になって、あの男をびびらせるんや」

竜華「年上の癖に幽霊怖がる彼氏なんか、怜も幻滅するやろ?」

船q「ほな勝手にしてください」

船q「うちはもう知りません」

――竜華は制服の上から白装束を着、頭に額紙を巻き、ベランダへ上がる。


竜華(さて…)

竜華(後は、中にいる怜にバレへんように、)

竜華(上手く怜の彼氏にだけ見えるようにせんとあかんな)

竜華(…チラッ)



怜「うん」

怜「うちは、竜華の事が大好きやで」



竜華(えっ!?)

竜華(今もしかして、うちの名前出た!?)

彼氏「そんなにええ子なんか」

怜「ええ子やで」

彼氏「会うてみたいなぁ」

怜「竜華の都合さえ合うたら、紹介するわ」


怜「うん、その方がええな」

怜「やっぱりうちの良い人には、うちの親友の事知っといて欲しいし、」

怜「うちの親友には、うちの良い人の事知っといて欲しいし」

怜「仲良うしたってな?」

彼氏「勿論や」


彼氏(その竜華って子、本当にええ子なんやろうな)

彼氏(けど怜、お前も凄いええ子やな…)


竜華(な、なんなん!?)

竜華(怜とあの男、)

竜華(うちの話してんのかいな…!?)

竜華(………ちょっと聞いててみよ)

竜華(…!?)

竜華(しもた、バランスが崩れ…!!)


がっちゃーん!!

<がっちゃーん!!


怜「!?」

彼氏「!?」


彼氏「ベ、ベランダに誰かおる!?」

彼氏「さささ、さっきの幽霊か!?」

怜「せやから、幽霊の格好してあんたを脅かそうとしてる奴やて!」

怜「うちが懲らしめたる!!」

怜「誰や、そこにいんのは!?」


ガラガラガラッ!!


竜華「あっ」

怜「あっ」

彼氏「で、出た!! この女や!!」

怜「…」

竜華「…」

怜「…」

竜華「…」


彼氏「…?」


彼氏(なんや、この二人の目)

彼氏(怜はいきなりしっぽ踏まれた犬みたいにキョドッとした後、)

彼氏(カエルを睨むヘビみたいな顔になりよった)

彼氏(幽霊女は、なんとか視線を逸らそうと必死や)

彼氏(それに凄い汗が滴っとる)

彼氏「…」

彼氏「もしかして、」

彼氏「怜、知り合いか?」


怜「ッ!!」ドキッ!

怜「ああ――、うん、」

怜「せやなぁ…」

怜「丁度良かったわ」

怜「これがさっき言うてた子」

怜「竜華、清水谷竜華や…」

彼氏「えっ」


竜華「ど、どうも初めまして…」

竜華「清水谷竜華いいますぅ…」

竜華「あはははははは……」(渇いた笑い


怜(…)

怜(頭痛くなってきたで)

怜「ごめん、ちょっと席はずすわ!」

彼氏「ああ、かまへんけど」

怜「あのな、誓って言うんやけどな、」

怜「この子、普段こんな事せえへんねん!!」

怜「今日が何か訳があるんやてきっと!!」

彼氏「ああ、うん、そうか…」


怜「ごめんな!!」

怜「竜華、こっち来ぃ!!!」

竜華「はい………」

――怜、竜華を連れて彼氏宅を出る。


怜「どういう事やのん!?」

怜「そんな格好して人の彼氏脅すて、信じられへんわ!!」

竜華「う………」


怜「うちな、彼氏に、竜華の事なんて言うてたと思う!?」

怜「もの凄い良い子で、うちの一番の親友やて紹介したんよ!?」

怜「うち、竜華の事はほんまに信用してたんやで!?」

竜華「ご、ごめんなさい………」

怜「目的は何なん!?」

怜「うちの彼氏を寝取るつもりでもあったんか!?」

竜華「ちゃ、ちゃうわ!!」

竜華「それだけはちゃうわ!!」

怜「じゃあなんやねん」

怜「なんとなく悪戯したなって、」

怜「偶然彼氏の部屋でしたなんて言い訳は聞きたないで」

竜華「それもちゃう!!」

竜華「うちは……」

怜「うん」

竜華「うちは、あんたの彼氏にあんたを取られたくなかったんよ!!!!」

怜「…」

怜「……」

怜「………」



怜「はっ?」

怜「竜華…あんた熱でもあるんちゃうの?」

竜華「無いわ!!」

竜華「だって、思い返してみ!?」

竜華「うちら、ずっと一緒やったやん!!」

竜華「春も夏も秋も冬もずっと一緒やった!!」

竜華「今までは、うちが、一番怜の隣にいたんやで!?」

竜華「なのに、」

竜華「それがいきなり、ぽっと出てきた男に怜の一番を掻っ攫われるなんて、」

竜華「寂しいなんてもんやないやないかあああああ!!」


怜「竜華…」

怜「竜華は…その、うちの事、そういう目で見てんのん?」


竜華「!?」

竜華「ち、ちゃう!! それはちゃうで!!」

竜華「けどなんちゅーか…」

竜華「やっぱり寂しいんよぉ!!」

竜華「うわああああああん!!」


怜「…説明して貰えるか、船q」

怜「その辺におるんやろ」

ザッ


船q「よくうちがおる事が分かりましたね、園城寺先輩」

怜「うちが彼氏いることカミウングアウトしてから一週間も経ってへん」

怜「家の場所だけやのうて、」

怜「うちですら知らん、彼氏の苦手なもんを竜華は知ってた」

怜「あんたが竜華の参謀として絡んでるのは明白やろ」

船q「お察しの通りですわ」

船q「かくいう先輩も、その読みは流石は我が軍のエースですねぇ」

怜「やめぇや」

怜「今、真面目な話しかしとないんや」

船q「すみません」

船q「部長は、今まで園城寺先輩のフォローをしてきました」

船q「言うまでもなく、他の誰よりもです」

怜「せや」

怜「…せやから、うちはそれから一歩前に進みたかったんや」

怜「何時までも、竜華の世話になりっぱなりやと申し訳たたん」

怜「一人の女として自立出来るようにならんとと思ってた」

ザッザッ

泉「部長も、心の底ではそれ分かってたと思うんですよ」

怜「泉!?」

船q「なんですか、今頃来て」

セーラ「ええやろー、別に。硬いこと言うなや」

怜「セーラも!?」

セーラ「まあ、つまりや、」

セーラ「竜華は自分の元から怜が巣立っていくのが寂しかったんやと思う」

怜「寂しいて…」

怜「うちと竜華はいつまでも、未来永劫友達やで!!」

怜「別に彼氏が出来たからて、竜華を蔑ろにするつもりは無いわ!!」


船q「部長は友情に加えて、親心みたいなもんも持ってたんですよ」

泉「よく自分で保護者言うてますしね」

セーラ「親離れ出来ない子はおるけど、子離れ出来ん親もおるっちゅーしな」

怜「竜華………」


竜華「うわあああああああああああん!!」


怜(なんやそれ…)

怜(怒るに怒れんやないか…)


竜華「うおおおおおおおおおおおお…!!」


怜(…)

怜(しゃーないなぁ…)

ぎゅっ


怜「竜華」

竜華「…」

竜華「怜…!?」

竜華「怜ぃぃぃ!!」


ぎゅううう!!


怜「痛い、痛いて!!」

怜「強く抱きしめるのやめぇや!!」

竜華「あっ、ごめん…」


怜「ええかな、竜華」

竜華「…うん」

怜「竜華がうちの事大事に思てくれんのは凄い嬉しいんよ」

怜「竜華が本気でうちのことを心配してくれてんのも分かる」

竜華「…」

怜「けど、いつまでもうちらも、このままやったらあかんやろ?」

怜「うちら、もう高校三年生や」

怜「もうすぐ大学生、もう大人やねんで」

怜「自分で責任持って生きてかなあかんようになる」

怜「なのに、何時までもうちが竜華に頼っとったら前に進まれへんやろ?」



怜「彼氏に告白したのは、当たり前やけど彼の事が好きになったからやけど、」

怜「いい機会かも知れんと思たんや」

怜「これからの進路ちゅーか、人生を考えるのにな…」

竜華「人生…」

怜「具体的な中身まではまだ決めてへん」

怜「けど、仕事して、結婚して、家庭作って、歳食ってってな、」

怜「その度に自分の世界はどんどん広くなっていくはずなんよ」

怜「竜華とは、そんな一生の中でずっと友達でいたいけど、」

怜「いつも高校時代の仲間でつるんどる訳にはいかんやないか…」

怜「うちは一回、竜華から卒業したいんや」

怜「そんでちゃんと一人の女として立つ事が出来た後で、」

怜「頼りっぱなりやない、竜華との友達を続けていきたいと思うてる」

怜「竜華には、これからのうちが一人で歩けるて信じて欲しいんや」

竜華「怜………」

セーラ「良い言うなあ」

セーラ「うん、うん」

セーラ「流石は三年生やわ」

泉「先輩も三年生ですやん!」

船q「けど説得力はありますね」

船q「今日の園城寺先輩、凄い大人びて見えます」

泉「恋して人生について色々考え始めはったんですかねぇ」

竜華「ご……、ごめんな…!!」

竜華「うちは、怜の気持ちに、薄々気付いとったんかもしれん…」

竜華「けどうちから離れてく怜に寂しさを覚えて…」

竜華「…!」

竜華「セーラが言うとった…」

竜華「悪いのは怜から卒業出来てへん、うちの方かもしれんてな…」

竜華「けど」

竜華「うちにかて、自分の人生を自分で生きてく義務があるんやな…」

竜華「分かったで、怜…」


竜華「怜、彼氏の人と、仲良うやってくんよ」

怜「ありがとな、竜華」

怜「ほな、うち行くわ」

怜「彼待たせっぱなしやし」

怜「またな、竜華」

竜華「うん、また月曜日な」

――怜が去った。


竜華「…怜、見えんようなった?」

セーラ「おお。彼氏ん部屋に消えてったで」

船q「けどここで泣いたらあきませんよ」

船q「絶対聞こえます」

泉「どっか、24時間の店入りましょう」

泉「明日は日曜ですし、」

泉「部長にはうちらのおごりで」

竜華「皆、ありがとう…」

――そして、季節が巡って春。

部長の座は三年生になった船qが就いていた。



泉「部長、携帯鳴ってますよ」

船q「ああ、牌譜見てて気付かんかったわ」

船q「メールやな」

船q「…」


ピッ

船q「清水谷先輩からやったわ」

泉「またですか」

泉「大学の彼氏と付きおうてから、度々来ますね」


船q「ほんまや」

船q「今日は一緒に何処に行った、何を食べたとか、」

船q「惚気話も大概にせぇっちゅうねん」

泉「けど幸せそうでええやないですか」

船q「限度ってモンがあるわ」

船q「あんたんとこにも来てたら、この鬱陶しさが分かるはずや」

泉「まあそうでしょうねぇ」

泉「部長は彼氏作らへんのですか?」

船q「うちはあんまり興味無いな」

船q「研究してる方が楽しいわ」

泉「はは、部長らしい」

船q「ふう」

船q「さあ、アホな話はこのくらいにして、練習始めるで」

船q「今年こそは白糸台を叩き潰さなあかん!」

泉「はい」



――高校三年生って色々考える時期だよね、というそんな話。

完。

一応完結ー。
応援してくれたくれた方にありがとう。
じゃーね。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom