幼馴染「馬鹿とはなんだ!」男「落ち着け」(69)

幼「失礼だろう、男!」

幼「親しき仲にも礼儀あり、だ!」

幼「幼馴染の私に向かって、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは!」

男「…あ、あのさ幼…」

幼「何だ?言ってみろ!」

幼「容姿端麗!冷静沈着!」

幼「成績は常に学年1位!」

幼「運動神経は抜群!」

幼「人望も厚く、常にクラス委員!」

幼「そんな私を捕まえて、馬鹿だと?」

幼「まったく!幼馴染じゃなければ、蹴りの一つもくれてやる所だ!」

男「…」

幼「何だ、本当の事を言われて、絶句か?」

男「…まぁ、何ていうかさ」

幼「何だ?」

男「落ち着けよ、幼」

幼「私は落ち着いている!」

幼「冷静沈着と言っただろう!」

男「今、結構熱くなってるよ、幼」

幼「男が急に変な事を言うからだろう!」

男「まぁ、突然馬鹿って言ったのは悪かったよ」

幼「わかれば良いんだ、わかれば」

男(…でもなぁ)

男(歩くの面倒だからって、市内の歩道を全自動にする)

男(って言うのは、ちょっとお馬鹿な子供の考える事だよなぁ…)




友「今日は暑いなー」

男「そうだなー」

友「しかし次の体育の授業、マラソンらしいぜ?」

男「あー。勘弁して欲しいなー」

友「何の拷問だよって感じだよなー」

幼「それなら!」

友「お、幼さん?」

幼「高校全部をドームで覆えば良いのではないだろうか?」

幼「そうすれば、雨の日でも運動場で体育が出来るし」

幼「炎天下でもエアコンが効いた中、マラソンでも何でも出来るだろう!」

友「え?」

男「…」

幼「何だ、友君」

友「幼さん、今、何て…?」

幼「だから…高校全体をドームで覆えば、全て解決するのではないか?」

友「えっ?」

幼「ん?私は何かおかしな事を言ったかな?」

友「…」

幼「男、私はおかしいか?」

男「いつも通りだよ、幼」

友「…」

男「…友、言いたい事はわかるが、今は言わない方が良い」

幼「何だ?二人とも。言いたい事があるなら…」

男「ほらほら、幼。体育始まるよ。女子更衣室に行かないと」

男「男子が着替えられないよ?」

幼「む。男、後でちゃんと話を聞くからな?」

友「…幼ちゃんてさぁ」

男「うん」

友「色々凄いんだけど、何かが決定的にズレてるよな?」

男「まあズレてるね…」

男「本人は割と本気なんだけどね」




友「それにしてもお前、ホント幼さんと仲良いよな」

男「まあねー。生まれた時からお隣さんだし」

友「羨ましいぜ、男」

男「そう?」

友「美人の幼馴染なんて都市伝説だぜ?」

男「都市伝説?」

友「口裂け女と同じくらい?」

男「大げさだなぁ」

幼「だれが都市伝説だと?」

友「!」

男「クラス委員の仕事、終わった?」

幼「あぁ、片付いた」

男「じゃ、帰ろうか」

幼「うん」

友「たまには俺も一緒に…」

男「家の方向、逆だろ?」

友「そうだけどさ」

幼「悪いが友君。私は男と2人で帰りたいんだ」

友「あ、あぁ、そっすか」

男「友、悪いな。また明日」

友「おう、また明日な」

幼「ふん」




男「幼、さっきみたいな態度、良くないよ」

幼「ん?友君の事か?」

男「そうだよ」

幼「ふん。人を都市伝説呼ばわりしたんだ」

幼「あれくらいの仕返しはあっても良いだろう」

男「まぁ、口裂け女は酷いけどさ」

幼「…明日、ちゃんと謝るさ」

男「うん。そうした方が良いよ」

幼「…いくらくらい包めばいいんだろうか?」

男「は?」

幼「こう言った場合、いくら位、包むのが相場だろうか?」

男「はぁ…幼。包まなくていいから」

幼「む。それでは詫びにならんのではないか?」

男「ただ、一言『昨日はごめんね』で済む話だよ」

幼「むぅ。そうか…」

男「難しく考える事じゃないよ、幼」

幼「そうか。では明日、謝罪するだけにしよう」

男「うん、それで良いと思うよ」

幼「っと、部屋に着いたな」

男「それじゃ、後で、ご飯持っていくから」

幼「うん。宜しく頼むよ、男」




男「しかしアレだよね」

幼「何だ?」

男「幼、何でも出来るのに、料理だけは全然出来ないよね」

幼「うむ…気にしてはいるんだがな」

男「まぁ、実家ではやらせて貰えなかったもんね」

幼「過保護なのだ、ウチの親は」

男「ウチは小さい頃から母さんが、教えてくれたからね」

幼「うん。男の作るご飯は凄く美味しい」

男「ありがと、幼」

幼「これならいつでも嫁に出せるな」

男「ははっ。嫁って?俺、一応性別は男なんだぜ?」

幼「ふふっ。そんな事は分かっているさ」

幼「なにせ、小4の頃まで一緒に風呂に入っていたんだからな」

男「そ、そうだね」

幼「ふふ…また一緒に入るか?」

男「ちょ、そう言うのは…」

幼「ふふふ…まぁ、あと2年もすれば、な?」

男「まぁね」

幼「ごちそうさま!」

男「はい、お粗末様でした」

幼「では私は風呂に入ってくるとしよう」

男「俺も自分の部屋に戻るよ」

幼「ではまた明日な、男」

男「うん、おやすみ、幼」




男「ん?校門の前、何か人だかりが出来てるね」

幼「む。何かあるのかな?」

男「ちょっと覗いてみようか」



イケメン「や、すまないね皆。ちょっと通してくれないかな」

男「あれ?誰だろう…転校生かな?」

幼「ふむ」

男「ていうか、リムジンで登校って凄いね」

幼「成金の臭いがするな」

男「幼、思ってても言っちゃ駄目な事があるよ」

幼「む、歯に衣着せぬ性格なのだ」

男「知ってるけどさ」

イケメン「ん?ちょっと、そこの君!」

幼「…」

イケメン「ちょ!君だよ、君!」

幼「…」

男「…幼、呼んでるみたいだけど?」

幼「ん?私の事を呼んでいたのか?」

イケメン「…やあ、美しい人」

幼「私は世辞は嫌いだ」

イケメン「いやいや、お世辞じゃありませんよ」

イケメン「僕の名前はイケメン。今日この学校に転校して来たんだ」

イケメン「よろしければ、お名前をお教えいただけますか?」

幼「幼と言う」

イケメン「…幼さん、名前もお美しい」

幼「名乗られたから、名乗り返しただけだ。他意は無い」

幼「では行こうか、男」

男「あ、うん」

イケメン「ちょ、待ってくれたまえよ」

幼「…何かな?」

イケメン「良ければ、僕とお付き合いして貰えないだろうか?」

幼「薮から棒に何を言う」

イケメン「一目惚れという奴ですよ、幼さん」

幼「断る!」

イケメン「え?」

幼「君は名前と性別以外に、私の何を知っているんだ?」

イケメン「あなたは美しい。それ以外に理由が必要ですか?」

幼「私はそのような考え方の人間を好きにはなれん!」

イケメン「ひょっとして、そのお隣にいらっしゃる」

イケメン「…冴えない男子とお付き合いされているので?」

男「…」

幼「君は自分の容姿に自信があるのか?」

イケメン「まぁ、人並み以上と自負してますが?」

幼「実に馬鹿だな、君は」

イケメン「なっ!」

幼「人の価値は、外見などでは何も測れない」

幼「君などより、男の方が1億倍も良い男だ!」

幼「さぁ、男。もう行こう」

幼「こんな人間の相手をしても、時間の無駄だ」

イケメン「ま、待て!」

幼「何だ?まだ何か言いたい事があるのか?」

イケメン「ぼ、僕はあの××産業の御曹司だぞ?」

イケメン「顔も良いし、将来性もある!」

イケメン「そんなショボイ男と比べられたくない!」

幼「…救いようがない馬鹿者だな、君は」

幼「大体、××産業と言えば…」

男「幼、ストップ。もう止めよう」

幼「む、すまない。ちょっと熱くなってしまったか」

イケメン「…覚えておきたまえよ!」

幼「断る!」

イケメン「必ず後悔させてやる!」

男「…さぁ、幼。授業遅れちゃうよ」

男「君も、職員室に行かなきゃ。初日から遅刻になっちゃうよ」

男「…あと、変な事、考えない方が良いよ?」ボソッ

イケメン「…」




友「うぃーす」

男「おはよう、友」

幼「おはよう、友君」

幼「昨日は変な態度とっちゃって、ごめんなさいね」

友「え、あぁ気にしてないよ、幼さん」

幼「良かった」

友「ところでお前ら、朝から派手にやってたなぁ」

男「ん?」

友「あの金持ちそうな奴とやらかしてたろ?」

男「あぁ、あの人ね」

友「大丈夫なん?」

男「何が?」

友「××産業の御曹司って聞こえたぞ?」

幼「ははは。金持ちを敵に回したからって、何がどうなるものか!」

友「そ、そう?」

男「そんな漫画みたいな事にはならないよ、大丈夫」

友「まぁ、それもそうか」




イケメン「何故ですか!」

教師「何故も何もないだろう」

イケメン「金なら払うと言ってるんです!」

教師「だから、そんな事されても無理なもんは無理だ!」

教師「金を積むから、クラスを自分で決めさせろ!なんて」

教師「お前は馬鹿なのか?」

イケメン「なっ!し、失礼な!」

イケメン「僕は××産業の会長の孫、社長の息子ですよ?」

教師「…だからどうした」

イケメン「一教師の首くらい、どうとでも…」

教師「やれる物ならやってみろ!この馬鹿者が!」

イケメン「ひいっ」


友「あいつ、c組らしいな」

男「ふーん」

イケメン「そんな訳で、君たちにお願いしたいんだが」

ヤンキーa「はぁ?」

ヤンキーb「馬鹿か、コイツ」

イケメン「なっ…なんだと?」

イケメン「君達は不良なんだろう?」

イケメン「金は払うと言ってるんだ!」

ヤンキーc「金貰って、人襲うとか…漫画かよ!」

イケメン「な、なぜだ…」

ヤンキーa「俺たちゃ確かに不良のレッテルを貼られてるけどよぉ…」

ヤンキーb「やって良い事と悪い事はわかってるぜ」

ヤンキーc「てめえが言ってるのは、悪い事だぜ?」

ヤンキーa「吐き気がするくれぇ悪い事なんだぜ?」

イケメン「くっ!不良ごときが、この僕に…」

ヤンキーb「…なあ、殴られてぇみたいだぜ、コイツ」

ヤンキーa「やっちまうか…」

イケメン「なっ!や、やめ…」


イケメン「くっ…い、痛い…何故こうなるんだ…」

イケメン「こうなったら、自分の力で…」




男「今日もクラス委員の仕事?」

幼「うん。担任に頼まれている」

男「手伝おうか?」

幼「いや、申し出はありがたいが」

幼「これはクラス委員の私が頼まれた事だから」

男「じゃ、待ってるから」

幼「いつも待たせてしまってすまないな」

男「気にしないで、幼」

幼「小一時間程で戻る」



イケメン「やあ」

男「ん?やあ、君は…イケメン君」

男「…どうしたの、その顔」

イケメン「気にしないでくれたまえ」

男「俺に何か用事?」

イケメン「まぁ…そうだね」

イケメン「君は幼さんと仲が良さそうだね?」

男「…まぁ、俺と幼は幼馴染ですよ」

イケメン「なるほど、幼馴染ね」

男「ん?」

イケメン「君に金をやろう」

男「突然、何ですか?」

イケメン「僕が自由に使える金が300万ある」

イケメン「それを全部、君にやろう」

男「は?」

イケメン「だから幼さんの傍から消えてくれ」

男「…」

イケメン「僕が見たところ、幼さんは」

イケメン「ずっと傍に居た君の事しか見えていないと思うんだ」

イケメン「まぁ幼馴染なら、それも仕方ないかもしれないね」

イケメン「そんな君さえ居なくなれば…」

イケメン「幼さんは僕の良さに気付くと思うんだ」

イケメン「君の様な冴えない人間よりも」

イケメン「僕の方が幼さんを幸せに出来ると思うんだ」

イケメン「幼さんの幸せを願うなら、君は身を引くべきだ」

イケメン「そう思わないかい?」

男「…」

イケメン「どうだろう?300万だぞ?」

男「…あー、ちょっと落ち着いた方が良いと思うんだけど」

イケメン「僕は冷静だよ?」

幼「…とことん、腐った奴だな、貴様は」

イケメン「!」

幼「例えばだ」

幼「男が私の傍から居なくなったとして」

幼「元々の考え方が腐っている貴様の事を」

幼「何故私が好意を持つ事になるのだ?」

幼「言ったはずだぞ、はっきりと」

幼「私は貴様の様な人間が嫌いなのだ!」

イケメン「ぐぐ…」

幼「金を持っている事を自慢したいようだが」

幼「私と男は…」

男「幼、ストップ!」

幼「構う物か、男。こう言う馬鹿には言ってやらねば!」

イケメン「な、何だ!」

幼「私の実家は○○財閥だ」

イケメン「え?」

幼「貴様が自慢そうに名乗った、××産業は」

幼「○○財閥の一企業だと言う事をわかっているか?」

イケメン「あ、あの…」

幼「さらに、この男の実家は…」

幼「◎◎財閥だぞ?」

イケメン「え!」

男「…あぁ、言っちゃった」

幼「私達は、個人的な事情の為」

幼「自分達が金持ちである事を隠して生活している」

幼「だが、貴様が金持ちである事を利用して」

幼「私達の生活を乱そうと言うなら…」

幼「…私は容赦しないぞ」

イケメン「…す、すみませんでした」

幼「さっさと去れ!二度と顔を見せるな!」

幼「ふぅ…やっと溜飲が下がった」

男「幼、言い過ぎだし、やり過ぎだよ」

幼「金の事もそうだが」

幼「あいつは、決して聞き流せない事を言った」

幼「男の事を冴えない男だと」

男「まぁ、冴えないのは本当だし」

幼「良く知りもしない人間の事を、悪し様に言う」

幼「私が最も嫌いで許せんタイプだ」

男「まぁ、彼も幼の事を好きになっての暴走だし」

男「許してあげようよ」

幼「…男がそう言うなら、まぁ」

男「彼が今の事を他人に話す事はないだろうし」

男「平穏に暮らせれば、それで良いじゃん」

幼「そうか」

男「それじゃ、そろそろ帰りますか」

幼「そうだな、帰るとするか」




男「今日も朝から暑いなぁ」

幼「だから最初からハイヤー登校にしようと言ったのだ」

男「そう言うのは駄目だって、入学前に話したろ?」

幼「それはそうだが…」

幼「この暑さはいかんともし難い!」

男「猛暑日だなぁ、今日は…」

幼「そうだ!歩道にエアコン機能を付ければ良いのではないか?」

男「エアコン?」

幼「足元から、夏はひんやり、冬はあったか…どうだろか、男?」

男「何ていうかさぁ」

幼「うむ」

男「幼はたまに馬鹿だよね」

幼「馬鹿とはなんだ!」

男「落ち着け」

幼「男がまた突然変な事を言うからだろう!」

幼「容姿端麗!冷静沈着!」

幼「成績は常に学年1位!」

幼「運動神経は…」

男「ストップ!」

幼「何だ?私の口上を邪魔するのか?」

幼「随分と偉くなったものだな、男」

男「あのー、そう言うのいいから」

幼「む?」

男「言わなくても、幼が凄いってのはさ」

男「俺が世界で一番わかってるからさ」

幼「む、その言い方、含みがあるようにも聞こえるな」

男「含ませてる訳じゃないんだけどね」

幼「む?」

男「まぁお互いの家のしきたりとは言えさ」

男「生まれた時からの許嫁で」

男「ずっと一緒に育ってきたんだ」

男「幼の事は何でも知ってるさ」

男「高校生活の3年間だけ、実家から出て、アパート暮らし」

男「急にそんな事言い出した理由もわかってるつもりだよ」

幼「…」

男「親が決めた許嫁としてじゃなくて」

男「普通の男女として、過ごしたかったんだよね」

幼「男、一つはっきり言っておくぞ」

男「何?」

幼「私は、家のしきたりとか全然関係なく」

幼「男の事が好きだぞ?」

男「…俺だってそうだよ」

幼「ふふ。こう言う事は言葉にすると、存外照れくさい物だな」

男「そうだね。卒業するまでのあと2年、宜しくね」

幼「まぁ、2年後には結婚するから」

幼「正確にはこれからもずっと、だがな」

男「…うん、こちらこそ、幼」

幼「でも、男」

男「何?」

幼「…市内全域の歩道を全自動アンドエアコン装備」

幼「いつか実現させるわよ」

男「ホント、幼はたまに馬鹿だよね」

幼「なんだと?」

男「そんなちょっとズレてる所も含めて」

男「愛してるよ、幼」

幼「そ、そう言う事を不意に言うのは卑怯だ!」

幼「あと、馬鹿と言われた事を許してはないぞ!」


おわり

これで終わりです
読んでくれた人が居たら嬉しいです

次スレは
幼馴染「ペロッ…これは…青酸カリ?」男「違うよ」
ってタイトルで立てたいと思います

見かけたら読んでくれると嬉しいです
では。

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