和「vsさそり座の女」(54)

放課後 清澄高校麻雀部部室

和「全国大会が終わり季節は秋。10月も半ばを過ぎました」

和「もうすぐです…。もうすぐ、全国大会よりもっと大事なイベントが…!」

和「10月27日……。そう、さそり座のあの人の誕生日……!」

和「二人きりでお祝いをして、一気に距離を縮めるチャンスです!」

和「……よし! がんばれ私!」

和「大丈夫です……。きっとうまくいくはずです」

和「今の私には心強い味方があります…!」

和「てんびん座の私はさそり座の女性と相性最高!ってこの本に書いてあったんですから!!」


【原村和(10月4日)てんびん座】

ガチャッ

和(! 誰か来た!)コソコソッ

まこ「おーす」

優希「じょー」

和「あ、あらお二人、お疲れ様です」

優希「ん、まだのどちゃんだけか?」

和「はい」

優希「んじゃ、メンツ揃うまで待ってるじぇ!」

和「そ、そうですね」コソコソッ

まこ「ん? なんじゃその後ろに隠したんは」

和「うっ」

優希「んー?」

優希「何を隠したんだじぇ?」

まこ「……本かいの?」

和「な、なんでもないですよ!」

優希「隠し事はよくないじぇ、とりゃっ!」

ヒョイッ

和「あっ!」

優希「じょ?」

まこ「こりゃあ…」

本『絶対当たる!恋の星座占い』

まこ「占いの…本……?」

和「うう……」

まこ「しっかし、和がこがーなもん好きとはのう」

優希「そんなキャラと違うじぇ」

和「べ、別にいいじゃないですか!」

まこ「いやまあ否定はせんが…」

優希「星座占いなんてオカルトもいいとこだじぇ?」

和「そうでしょうか。私はそうは思いません」

優希「じょ?」

和「少なくとも、血液型占いより全然説得力があると思いますよ」

和「人間の性格形成には、胎児のときに母体から受ける刺激の影響が強いといわれています」

和「妊娠中の体調や感情などの変化がおなかの子にも伝わり、その成長に影響を及ぼすということです」

和「良い音楽を聞くといいとされる胎教というのも、結局は母親の精神状態をよくするためのものという説もあります」

和「更に、その刺激をおなかの子が何か月のときに受けたのか? 成長時期との関連性も大事です」

和「特に脳や神経が形成される時期の影響は重要ですね。月齢によって胎児の発達は異なりますからね」

和「そして日本には四季があります。寒暖の差や気候の変化、季節で異なる諸々の年中行事があります」

和「蒸し暑い日ばかりでイライラしたり、穏やかな気候で安らかに過ごせたり、楽しい行事が多かったり少なかったり」

和「そうした影響で、母親の受けるストレスや体調変化がどうであったかも季節によって違ってきます」

和「ですから子供への影響も、時期が同じなら共通で違えば異なる、という差異のパターンができるのは当然のこと」

和「これらを踏まえれば、生まれた時期によって人間の行動や思考に一定の傾向差が見られたとしても、全く不思議な話ではありません」

和「生まれた日の区間で分類をつけ特徴を考察するという考え方は、なんら不自然なことではないですよ」

まこ「お、おう」

優希(のどちゃんがいつになく熱く語ってるじぇ…)

和「…………というわけですから」

優希(物凄くいっぱい言い訳したようにしか聞こえなかったじぇ……)

まこ(占いの本に書いてあることなんぞ、本によって全然違うじゃろうに……)

優希「……どう思うじぇ、染谷先輩?」

まこ「まあ、おおかたその隠しとった本にでも影響されたんじゃろ」

優希「これかー」スッ

まこ「お、ご丁寧に付箋が付いとるな」

優希「読んでみるじぇ!」

パラパラッ

優希「あっ、ここ赤線ひいてあるじょ」

まこ「マメじゃのう和……」

優希「なになに……」

本『てんびん座の恋するあなた! あなたと相性最高のお相手はさそり座の女性です!!』

まこ「…………」

優希「…………」

まこ「さそり座……」

優希「やっぱそんなことかじょ……」

優希「やーれやれだじぇ……」

まこ「おかしいと思うたわ……」

和「なっ、なんですか!」

優希「残念だったなのどちゃん! 私は花も恥じらうおとめ座だじぇ!!」

まこ「どこが乙女じゃ」

和「わっ、わかってますよゆーきの星座くらい!」

優希「こっちだって、のどちゃんの考えくらいお見通しだじぇ!」

和「うっ」


【片岡優希(9月16日)おとめ座】
【染谷まこ(5月5日)おうし座】

優希「どーせたまたま、のどちゃんに都合のいいこと書いてあった本を見つけただけだじぇ」

和「ぐっ……」

まこ「おう、さそり座のあいつと仲良うしたいだけじゃよな?」

和「あ、あいつって何ですか! さそり座の人なんてたくさんいます!」

優希「そんなのバレバレだじぇ、のどちゃん」

まこ「アンタが気にしとるさそり座言うたら、そらぁなあ」

和「ううぅ……」

優希「…………」

まこ「…………」

和「…………」

久「私よね?」

和「!?」

和「ぶ、部長!!居たんですか!!」

まこ「……おったんかい」

久「もう部長じゃないわよー」ウフフ

まこ「…なら、ええかげん毎日一番に来て部室で寝るんはやめたらどうじゃ」

久「はやく来ないとベッドとられちゃうもーん」

まこ「そういう事じゃのうてな」

久「でも嬉しいわねー、和がそんなに私のことをー」

和「いや……ちが……」


【竹井久(11月13日)さそり座】

久「すかーれっとにーどるぅー、とーうっ」

ぷにゅっ

和「…………」

久「…………」ニコニコ

和「…………なにしてるんですか」

久「おもちつっついたんだけど?」ぷにぷに

和「…………それは把握しています、なぜそのような行動をしたのかを」

久「和のおもちさわりたくって」ぷにぷに

和「…………やめてもらえます?」ハァ

久「その生ゴミを見るような目つきも最近わりと好きよ?」ぷにぷに

和「見るようなといいますか、生ゴミを見ている気持ちなんですが」

美穂子「ほう……。てんびん座とさそり座の相性ですか」

久「!」ビクッ

優希「あっ、風越のおねーさんだじぇ」

まこ「いつの間に…」

美穂子「いつの間に? 何もおかしなことはありませんよ」ウフフ

まこ「?」

久(……まずい)

美穂子「わざわざ言われるまでもなく! てんびん座とさそり座は相性最高! ですよね!!」

久(あの顔……。冗談が通じないときの美穂子だわ……)


【福路美穂子(9月24日)てんびん座】

久「美穂子さん? ちょっと落ち着いて話しましょうか」

美穂子「落ち着いて? どうあれ話す内容は同じですよ?」ウフフフフ

久(……ちょーやべー)

美穂子「さあ上埜さん! いえ、久!! あなたのスカーレットニードルを私のアンタレスにカタケオ! カタケオ!!」

久「何言ってるか全然わからないわよ!!」

美穂子「15発でもそれ以上でも耐えてみせますから!!」

久「知らないわよ! 退却っ!」ダダダッ

美穂子「待ってー!」タッタッタッ

優希「二人とも行っちゃったじぇ」

まこ「放っといたらええわ」

和「付き合ってられません」

まこ「……ほんで、本命のさそり座姫はどこ行ったんじゃ」

優希「今日はまだ見てないじょ」

まこ「……ほうか」

和「…………」

まこ「んじゃ、和よ。ちいっと探してきてくれんか?」

和「!?」

まこ「このままじゃメンツが揃わんからの。頼むわ」

和「染谷先輩……」

優希「行ってこいだじぇ!」

まこ「多少遅くなってもええけえの」

和「いいんですか……?」

まこ「別に止めもバカにもせんわ」

優希「まあ、あれだけ熱く語られたらな!」

和「優希も……。ありがとうございます」

タッタッタッ

校門前

和(さて……。とは言うものの、どうしましょうか)

和(まだ当日まで日はあります、とりあえず二人きりのお祝いを段取りして……)

マホ「あっ、和せんぱーい!」

和「えっ」

マホ「お久しぶりです!」

和「マホ……。わざわざ清澄まで、どうしたんですか?」

マホ「今日は先輩に、お誕生日パーティーの相談に来たんです!」

和「……誕生日?」ドキッ

マホ「はい! もうすぐあのさそり座の先輩のお誕生日なのです!」

和「!」

マホ「和先輩も参加してほしいのです!」

和(うう……どうしましょう……。マホに先を越されるとは……)

マホ「先輩?」

和(二人きりがよかったんですが……。せっかくの後輩からの申し出……)

マホ「ダメ…ですか…?」ウルウル

和(……仕方ないですね……)

和「ええ、もちろんいいですよ」ニコッ

マホ「やったぁ!」

和「……それでマホ、その人って」

マホ「はい! ムロ先輩がもうすぐお誕生日なんですよー!!」

和「」(♯^ω^) ビキッ


【夢乃マホ(12月20日)いて座】
【室橋裕子(11月14日)さそり座】

和(……いけませんよ和、冷静に)

マホ「さそり座の人ってかっこいいですー! さそり座パーティーしたいのです!」

和(マホに悪気はありません……。ありませんから……)

マホ「内緒で準備して、ムロ先輩をびっくりさせたいのです!」

和「……なるほど、だから一人で来たんですね」

マホ「はい! がんばりました!!」

和「…………ええ、そうですね。それよりマホ」

マホ「?」

和「さそり座パーティーというのなら、他にも当てはまる人がいるんじゃないですか?」

マホ「はい! もちろんです! なんともう一人さそり座の人がいて!」

和(……そう! そっちですよマホ!!)

マホ「花田先輩のことも一緒にお祝いしたいと思ってるんです!」

和「」(♯^ω^) ビキビキッ


【花田煌(10月24日)さそり座】

和「……はい……そうですね……」(遠い目)

マホ「あの、今日来たのはそのことでお願いがあって…」

和「?」

マホ「和先輩…、花田先輩の連絡先って知ってますか?」

和「連絡先?」

マホ「花田先輩の電話番号、ムロ先輩しか知らないのです! マホ、連絡取れないです!」

和「それくらい聞いて教えてもらえば……」

マホ「ムロ先輩のパーティーなのに……本人にそんなの聞けないです……」

和(誰のパーティーかはさておき……マホなりに気は遣ってるんですね)

マホ「うぅ~…」グスン

和「…………わかりましたよ、私が代わりに電話します」

マホ「ありがとうございます!!」

ピッ ピッ

プルルル プルルル

煌「ほほう、さそり座パーティー! それはすばらですね!」

和「……ええ、ですが無理にとは」

煌「しかし申し訳ありません、残念ながらその頃に帰省するのはちょっと難しいですね…」

和「ですよね、わかってますので」

煌「すばらなその気持ちだけ、ありがたくいただいておきますよ!」

和「はい、それでは」

煌「そうそう、さそり座と言えば! 私この間びっくりしてしまいまして!」

和「はい?」

煌「新道寺に江崎先輩という方がいらっしゃるんですけどね、失礼ですがあの方ずっとおひつじ座だと思ってたんですけど、私と同じさそり座だったんですって!」

和「……はあ」

煌「あっ、江崎先輩とは私がいつもお世話になっているすばらな先輩なのですけど、なぜおひつじ座かと言いますと……」

ペチャクチャペチャクチャ

煌「…………で、…………から…………。あっ、話は変わりますけど…………」

和(し、しまった……。切るタイミングが……)

数十分後

煌「…………では! 出席できなくて残念ですが、パーティーの成功をお祈りしてますよ!」

和「……はい、それでは」ゲッソリ

ピッ

和「やっと……切れました……」

マホ「どうでしたか?」

和「はい、ちょっと都合がつきませんと」

マホ「そうですか…」

和「仕方ないですよ、福岡ですからね」

マホ「はい…」

和(花田先輩はいい方なのですが… それだけに話を切りにくかったですね…)

マホ「それじゃ、ムロ先輩だけのパーティーにするのです」

和「……そうですね、それがいいです」

マホ「今日は帰るのです! また詳しいこと決めたら連絡します!」

和「……ええ」

マホ「さよーならです、和先輩!」バイバイ

和「はい、さようなら」

和「…………」

和「……まあ、これはこれでいいでしょう……」

和「しかし、こんなに時間を取られるとは思いませんでした……」

和「なんもかも……なんもかも政治が悪い……」

和「…………はっ!? 私、今何を!?」


【江崎仁美(11月2日)さそり座】

菫「こら照! 一人でどんどん先に行くな!」

照「来るならちゃんとついてきて。私は急いでるの」

菫「お前一人じゃ迷子になるだろうが!」

和「あれは…」

菫「おっ、原村和」

照「…………お邪魔虫」

和「お義姉さんと……保護者の方」

菫「誰が保護者だ」

和「何をしに清澄まで…」

照「当然のこと、誕生パーティーの準備」

和「!」

照「あなたの企みくらいわかってる。好きにはさせない」

和「何のことでしょう」

照「とぼけないで、あなたがてんびん座なのも読んだ本の事も聞いてきた」

和「!」

照「さっきパーティーの話をしてたのも知っている。あの子のお祝いは私がやる、諦めて」

和「くっ……」


【宮永照(2月18日)みずがめ座】
【弘世菫(4月25日)おうし座】

和「みずがめ座のあなたなんてお呼びじゃありませんよ、引っ込んでいてくださいお義姉さん」

照「その呼び方はやめて、あなたに義姉と呼ばれる筋合いはない」

和「私だって本意じゃありません! あの人が悲しむからと思って、最低限の礼儀を通しているだけですが?」

照「さそり座はみずがめ座と結ばれる運命。ミロとカミュの仲は言うまでもない、カルディアとデジェルも一緒だった」

和「そんなの恋愛感情じゃありませんし、あなたは実の姉じゃないですか」

照「てんびん座なんか滝の前で200年座っていればいい」

和「243年です、適当に言ってバカにしないでください」

照「てんびん座は敵ばっかり。有珠山の一年生もてんびん座だと聞いた」

和「興味ありません」

照「そんなにその無駄な脂肪を天秤に乗せたいとでも言うの」

菫「何言ってんだお前」

照「そんなに左右のお皿に片方ずつ乗せたところを見せびらかしたいの」

菫「落ち着け、意味わからんぞ」

照「そんな天秤、乗せた脂肪が重すぎて壊れてしまえばいい」

菫「よくわからんが物に当たるな、なんだ無駄な脂肪って」

照「…………菫にこの気持ちはわからない。この件では菫も敵」

菫「えっ」


【真屋由暉子(10月9日)てんびん座】

菫「ほ、ほらもう行くぞ照!」グイッ

照「……そう、あなたにかまっている暇はない」

和「こちらこそです、ごきげんよう」

照「でもこれだけは覚えておくといい」

和「?」

照「さそり座はみずがめ座と結ばれる運命。これはあなたがどう足掻こうと変わらない」

和「最後までその戯言ですか」

ドダダダダッ

和「……あっ、部長」

久「美穂子! 落ち着きなさいってば!」

美穂子「待ってー!」

菫「……なんだあれは」

久「あっ、和! ちょっと助けて!」ダダダッ

和「こっちに来ないでください」ヒョイッ

久「えっ」

照「あっ」

ドシン

グラッ

ドンガラガッシャン


ちゅっ

和「あ……」

菫「これは……」

和「私が避けた先にお義姉さんが……」

菫「ふたりがぶつかり合って体勢を崩して……」

和「部長が… お義姉さんを押し倒した形に……」

久「あ…」

照「キス… しちゃった…」

照「…………」

久「…………」

照「…………」

久「……えっと、あの」

和「あら、お似合いのさそり座とみずがめ座じゃないですか」クスクス

久「いや和、これは違うって」

照「……キス……」

久「いやいや、ただの事故よ事故!」

菫「てぇるぅ~?」ゴゴゴゴゴ

美穂子「ひぃさぁ~?」ゴゴゴゴゴ

久「げっ」

照「……キス……した……」

菫「おい清澄の! 今のはどういうことだ!」

美穂子「久! また違う人に手を出すつもりですか!?」

久「いやいやいやいや」

照「……ちゅー……」

和「…………」

久「と、とにかく逃げるわよ! あなたも!」グイッ

照「えっ」

ダダダッ

菫「待てー!!」

美穂子「私はこの際一緒にイチャイチャでもいいですけどー!!」

ダダダダダッ

和「…………」

和「……行ってしまいました」

和「…………」

和「よくわかりませんが、邪魔される危機は去りました。そう思いましょう」

和「あの人たちがこの騒ぎで動けない間に……」

和「誰か他に余計な事を吹き込まれないうちに! 早く見つけないと!」

タッタッタッ

??「ちょっとそこ行くおねいさん、おねいさん!」

和(? ……なんですかもう……忙しいときに!)

??「そこのかわいいおねいさーん! ちょっと寄ってってー!」

和「……私のことですか?」

??「そうそう、あなた!」

和「……何かご用でしょうか」

??「私は流浪の占い師! 悩める方々に幸せを届けに来たんです」

和「?」

占い師「あなた、いま恋人を探していますね!?」

和「!」

和「こ、恋人なんて…いきなりそんな…」

占い師「それなら、恋人になりたい人! そうでしょう!?」

和「!」ドキッ

占い師「やっぱり! 今なら私が間を取り持ってさしあげますよ!」

和「なっ……何を言ってるんですか」

占い師「ええわかってます、てんびん座のあなたにピッタリの、さそり座のお相手を!」

和(……どうしてそのこと……)

占い師「ズバリ! 意中のその人を言い当ててみせましょう!」

和「…………」

占い師「その彼女は…麻雀がとても強くって…」

和「…………」

占い師「あなたも麻雀強いから、ライバルってとこかしら?」

和「!」

占い師「おもちはちょっと残念だけど……麻雀がちょー強くって……」

和(……なんなんですかこの人は……)ドキドキ

占い師「引っ込み思案で奥手でぽやっとした感じで、でもそんなところが可愛くて……あと麻雀が強くて……」

和(やけに麻雀強いを推してますけど……特徴はその通りですね……)ドキドキ

占い師「……そんな、麻雀が強いさそり座の女性!」

和(まさか……本当に……)ドキドキ

占い師「じゃーん! 小鍛治健夜さんですね!」

和「」(♯^ω^) ビキビキビキッ

健夜「こーこちゃん!! 何してるの!!」

恒子(占い師)「ちっ、見つかった」

和「小鍛治プロ……」

健夜「私の写真勝手に使って! どういうこと!」

恒子「ちょっと遊んだだけだってー!」

健夜「他人を巻き込んでまで私の面白動画作ろうとしないで!」

恒子「面白じゃないよ、真面目に取材したもん! 原村さんの好きな人!」

和「!」ドキッ

恒子「それでこれ絶対すこやんだ!って思ったから!」

健夜「どうして真面目に取材してそんな結論になるの!」

恒子「さっき清澄の子たちに聞いたの! さそり座で麻雀最強でライバルでおもちぺったんこで!」

健夜「おもちぺったんこは余計だよ!」

和「小鍛治プロはライバルなんて対象じゃありません! 私のその人は高校一年生ですし、もっと髪が短いです!」

恒子「えぇー」

健夜「ほら! 今日こそちゃんと反省して!」

恒子「逃亡っ!!」ダダダッ

健夜「待てー!!」ダダダッ

和「…………やれやれですね」


【小鍛治健夜(11月7日)さそり座】
【福与恒子(1月17日)やぎ座】

和「まったくもう……。余計な時間を……」

トシ「あっ、いたいた。原村さん!」

和「はい?」

トシ「よかったわー、手間取らずに会えて」

和「えっと、あなたは……?」

トシ「おや、覚えてないかい? ちょっと前に一度会ったことあるんだよ」

和「?」

トシ「四年くらい前かしら。阿知賀の麻雀クラブで、晴絵ちゃんを実業団に勧誘したとき…」

和「…あっ、あのときの…」

トシ「大好きな先生を連れて行っちゃった悪いオバサンなんて、覚えてないかしら?」ウフフッ

和「赤土先生の…スカウトの人…」

トシ「熊倉トシよ。今は宮守女子高校で麻雀部の顧問をやってるわ」

和「宮守女子って…」

トシ「今年のインハイ岩手代表だよ。2回戦であなたたちと打ったんだけど」

和「そうでしたっけ…? その顧問さんがなぜここに…」

トシ「仕事は高校の部活顧問だけど、今でも昔のツテでいろいろあってね」

和「?」

トシ「今日はね、あなたにとってもいい話を持ってきたんだよ」

和「!」ピクッ

和(いまさらそんな……。今日のこの流れで、騙されないですよ……!)

トシ「すぐに決めなくてもいいからね、ぜひともいい返事を聞かせてほしいわ」

和「その前に失礼ですが、お誕生日はいつでしょうか?」

トシ「私のかい? 11月21日だよ?」

和(やっぱりさそり座…!)

トシ「あなた、プロには興味ない? 実はね、あなたと育成選手の契約をしたいっていうプロチームがあるの」

和「お断りします。失礼します」タッタッタッ

トシ「在学のままでプロの試合に出られるという、高校一年生には破格の待遇……って、あれ?」


トシ「…………いない」

トシ「原村さん?」キョロキョロ

トシ「…………」


ヒュゥゥ……


トシ「…………」

トシ「……このくらいじゃ泣かないよ」フフッ


【熊倉トシ(11月21日)さそり座】

菜月(学生議会書記)「あっ、原村さん! 会長が助けてほしいって!」

和「いま取り込み中です」

……

ソフィア「お、有名人の原村じゃないか。どうよ私のドレッドヘア?」

和「知りません」

……

紀子「あんたが阿知賀女子を焚きつけたっていうあいつらの昔馴染か。まったく余計なことを」

和「事実無根です」

……

健太(県大会実況)「さあ原村選手、軽快な走りです! まるで何かから逃げているかのようだ!」タッタッタッ

和「あなたから逃げてるんです! 追いかけてこないでください!!」ダダダッ

……


【紫芝菜月(11月10日)さそり座】
【新井ソフィア(11月16日)さそり座】
【丸瀬紀子(11月14日)さそり座】
【三科健太(11月16日)さそり座】

…………

……

和「ハァ……ハァ……。疲れた……」

和「…………」

和「もう…! なんなんですか! なんなんですかっ!!」

和「私は…、私はただ、さそり座のあの人と…」

和「…………」

和「それだけ、なのに……」

和「今日は一体何やってるんでしょう、私……」

和「やっぱり……慣れないことをして……」

和「ありえないオカルトなんかに頼ろうとしたのが間違いだったんでしょうか…」

和「…………」グスン

咲「どうしたの、和ちゃん?」

和「!!」ビビクン

和「えっ…、あっ、さ、咲さん!?」グシグシッ

咲「ひどい顔色だよ……、泣いてるの?」

和「あ……えっと……、咲さん……」

咲「はい、ハンカチだよ。涙拭いて」

和「私を…… 心配してくれるんですか……?」

咲「何言ってるの、当たり前だよ」

和「あ……」

和「咲さん……、咲さん!」ヒックエック

咲「ほら、泣かないで」ヨシヨシ

和(やさしい……こんな私に……)

咲「大丈夫だよ和ちゃん、私いつでもそばにいるよ」

和(やっぱり、私たちは相性ばっちり! 何も心配しなくたって――)

咲「和ちゃんは、私の大切なお友達だから!」

和「…………は?」

京太郎「おーい咲、どうしたんだー?」

和「!」

咲「あっ、京ちゃん! 今ちょっと和ちゃんがね…」

京太郎「ふーん? どうした和?」

和「あ、いえ、おかまいなく」

京太郎「いいのか?」

和「大丈夫ですから。なんでもありません」

咲「そっか。よかった」

京太郎「じゃ、行くぞ咲」

咲「うん!」ギュッ

和「えっ」

京太郎「おいおい、そんなにくっつくなよー」

咲「いいじゃない! 京ちゃんと私の仲だもん!」

京太郎「はっはっは、こやつめー」

イチャイチャウフフ

和「えっ」

和「あの二人、腕を組んでぴったりくっついて…」

和「えっ、これは… 一体…」

和「…………」

   ――「さそり座はみずがめ座と結ばれる運命」

和「…………」

和「……ええと……」

和「…………」

   【須賀京太郎(2月2日)みずがめ座】

和「…………」

和「…………」

和「…………」

   【須賀京太郎(2月2日)みずがめ座】


ブチッ


和「ぁんのタコス職人がぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!!」

ぁぁぁーー ぁー ぁー…

………

ガバッ

和「……はっ!?」

和「…………ここは……私の部屋……」キョロキョロ

和「……夢……ですか……」

和「…………」

和「……そう、ですよね! 当然です!」

和「星座占いなんて、そんなオカルト…」

泉「おう、目ぇ覚めたか」

和「!?」

泉「随分うなされとったな」

和「…………すみません、どちらさまでしょう?」

泉「オイオイ何言うとんねん、お前の相性最高の恋人やないかー」

和「…………誰ですって?」

泉「お前のお望み通りの、高一最強(自称)の麻雀打ちで」

和「…………」

泉「ショートヘアの高校一年生のおもちぺったんこのお前の最大のライバル(自称)の」

和「…………」

泉「お前の嫁のさそり座の女やで、マイハニー」

和「そんなオカルト天地がひっくり返ってもありえません。帰ってください」


カン

【二条泉(11月8日)さそり座】
【宮永咲(10月27日)さそり座】

誕生日出典:dreamscape(公式)


おわり

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