幼馴染「ペロッ…これは…青酸カリ?」男「違うよ」(54)

男「だいたいさ…」

男「青酸カリだと思うなら、舐めちゃダメだろ!」

男「匂い嗅ぐとか、そう言うのだろ!」

男「舐めたら、死んじゃうだろ!」

男「自分が死んで、青酸カリって実証ってか?」

男「って、やかましいわ!」

男「ていうか一般家庭に青酸カリとか、あるか!」

男「俺、普通の男子高校生だぞ!」

幼「ツッコミが長い。ノリ切れてない」

幼「男、調子悪いの?」

男「別に調子は悪くねーよ!」

男「機嫌はちょっと悪いけど!」

男「ていうか、素手で食うのをやめろ、幼!」

幼「えー。いいじゃんか、ちょっとくらい」

男「箸を使え!未開の土地の住人か!」

幼「寿司を食べる時に素手で食べるのと同じだよ」

男「全然同じじゃねーよ!」

男「麻婆豆腐丼を素手で食べるなよ!」

幼「男の作る麻婆豆腐丼、マジ美味しい」

幼「これ、神様が作ったんじゃないかな」

男「おい!つい3秒前に俺が作ったって言ったよな?」

男「ていうか、俺の晩飯なんだよ!食うな!」

幼「まぁまぁ、落ち着いてよ、男」

男「幼が食べるのをやめたら、落ち着くよ!」

幼「えー、ではここで落ち着いて、一言」

男「何だよ」

幼「…ここらで一膳、お箸が怖い」

男「怖かったら何だよ!お箸なんか、出さないよ?」

幼「え?マジで?」

男「え?なんで驚いてるの?」

幼「しょうがないなぁ、男は」

男「え?なんで俺が悪いみたいな感じ?」

幼「まんじゅう怖いくらい知らないと」

幼「社会に出た時、困るよ?」

男「まんじゅう怖いは知ってるよ!」

男「だから箸出さないって言っただろ?」

男「て言うか、落語の一席知らない位で」

男「社会は困るように出来てないだろ!」

幼「知ってたのかー。じゃあここらで一杯、中華スープが怖い?」

男「作ってねーよ?何で中華スープなんだよ!」

幼「え?もちろん中華料理縛りだから?」

男「そんな縛りで晩飯考えてねーから!」

男「ていうか、箸は出さない」

男「だから食べるのを止めろ!」

幼「フフフ、甘いよ、男!」

男「何がだ?」

幼「こんな事もあろうかと…」

幼「じゃーん!マイ箸!」

男「どんな事があろうかと思ってたの?」

幼「男が箸を出さないって言う展開?」

男「まぁ、普通は出さないよな?」

幼「まぁ、そんな事もあろうかと思ってたわけだよ」

幼「マイ箸、持ってて良かったー」

幼「エコロジー大切だもんね」

幼「地球環境に優しい、ただ1人の幼馴染。それが私!」

幼「それじゃ、改めて、いただき…」

男「言わせねぇよ?」

幼「まーす!」

男「言っちゃった!俺、今、止めたよね?」

幼「男の手料理、美味しいなぁ」

男「…」

幼「ガツ!ガツガツ!!」

男「…」

幼「コレ、私だけのフルコースの一品に入れても宜しくってよ?」

男「…何で上から目線?」

幼「お客さんの方が立場が上だから?」

男「…」

幼「あら?それともここは初期の美食倶楽部的な感じなの?」

男「…」

幼「味のわからん客は帰れ!的な?」

男「…喋りながらも食べるのを止めないんだな、幼」

男「器用だな」

幼「いや、ホント美味しいね、コレ」

男「そうかい」

幼「っと、ごちそうさまでした!」

男「…お粗末様でした」

幼「お粗末なんて、謙遜しなくて良いよ、男」

幼「もう、高校辞めて、レストランでも開いたら?」

男「それは褒めすぎだろう」

幼「いやいや、ホント。マジホントだyo!」

男「その言い方でわかった。ふざけてるんだな、幼」

幼「テヘペロッ」

男「…」

幼「あ、じゃあ私帰るね!ご馳走様でした!」
バタバタ

男「ホント、何しに来んだよ…」

男「はぁ…晩飯どうしようか…」

男「白米は炊いてあるから、いいけど…」

男「麻婆は一人分しか作って無かったからなぁ」

男「今日はカップ麺かな…」

男「…ん?このタッパーなんだ?」

男「…筑前煮?」

男「…これ、持ってきてくれたのか」

男「…」

男「晩飯は麻婆豆腐丼から変更だな」

男「…いただきます」

男「…」

男「普通に美味しいな」

男「ていうか、コレ、2人分だな」


幼「はーぁ。せっかく一緒に食べようと思って作ってきたのに」

幼「大体、男は晩御飯が早いんだよ!」

幼「日曜日、晩御飯の時間が5時半って!」

幼「まったく…はぁ…」

この一気に読ませるテンポ感が凄いな




幼「…これは…し、死んでる!」

男「…」

幼「部屋の入口には鍵がかかっている…」

幼「これは…密室殺人だ!」

幼「いや、注意深く観察するんだ…」

幼「何か、あるはずだ…」

幼「動け、私の灰色の脳細胞!」

幼「キィィィィィン!」

幼「わかった!謎は全て解けた!」

幼「犯人はとんでもないヘマをやらかしてやがった!」

幼「この窓際のすり減った様な傷…」

幼「犯人はきっと、この窓から侵入し」

幼「男が就寝するのを待って、殺害」

幼「その後、窓の鍵に糸を引っ掛けて」

幼「窓から外に出る」

幼「そして、窓を閉めた後、糸を下に引っ張って、鍵をかけた…」

幼「密室トリックの謎は全て解けた!」

幼「そして…」

幼「ズバリ、犯人はこの中に居る!」

幼「それは…私!」

男「…そうだな、幼」

幼「…おそよう、男」

男「月曜の朝から、お元気ですね」

幼「月曜の朝だから、元気なんだよ!」

幼「昨日たっぷり寝たからね!」

男「…あのな、幼」

幼「何?」

男「窓から勝手に入ってくるのはな」

男「不法侵入って言うんだぞ…」

幼「知ってるよ、ワトソン君」

男「あぁ、知ってたのか、ホームズ君」

幼「基本だよ、き・ほ・ん!」

男「知っているなら、日本国の法律を守る努力をしろよ!」

幼「お。やっとちゃんと起きたね!」

男「いや起きてたよ!」

幼「え?いつから?」

男「幼が俺の部屋の窓をガタガタいわせながら開けてる時からだよ!」

幼「え?じゃあ男は最初から死んでなかったの?」

男「部屋に入って来た時、目、合ったよね?」

男「俺の目が開いてたの、しっかり見てたよね?」

男「死んでないってわかってたよね?」

幼「えー。じゃあ何で私の推理劇に付き合ってくれなかったの?」

幼「見事な推理だったでしょ?」

男「起きてもいない、殺人事件の推理に…」

男「俺はツッコミ以外の何をすればいいの?」

幼「適当に頷いとけばいいと思うよ」

男「適当で良いのかよ!」

幼「…男と、軽妙なトークを繰り広げるのは楽しいけど」

幼「そろそろ準備しないと、時間が…ね?」

男「言っておくけど、9割、お前のせいだからな?」

男「あと、時間って言っても、まだ六時前だからな?」

幼「テヘペロッ」

男「あのさぁ…」

男「起こしに来てくれるのはありがたいんだけどさぁ」

幼「うん」

男「…玄関の鍵、預かってるんだろ…?」

男「普通に入って来てくれよ…」

幼「普通なんて、クソ喰らえ!だよ」

幼「秩序の無い現代にドロップキックだよ!」

男「…そうか…」

男「とりあえず、着替えるから、外出てくれる?」

幼「朝ごはん作って待っててあげるから!」

男「…あ、昨日はありがとな」

幼「え?何が?」

男「筑前煮。美味しかったよ」

幼「…ふんっ」
バタバタ


男「照れてた…?」


幼「…しまった、昨日の筑前煮、多すぎたんだ…」

幼「これを温めよう…」




幼「ねぇ、男」

男「なんだ、幼」

幼「事件って、なかなか身近で起こらないよねぇ」

男「そうだな」

幼「事件なんて、ねぇ?」

男「そうだな」

幼「事件、なんて、ねぇ?」

男「…あぁ、そうだな」

幼「殺人、事件、なんて、ねぇ?」

男「…なんで物騒な単語足しちゃった?」

幼「起きないよねぇ?」

男「何、幼。何か起きて欲しいの?」

幼「そ、そんな事、言ってナイヨ?」

幼「別にフリとかじゃないよ?」

男「当たり前だ!何も起きねぇよ!」

幼「…団長、毎日ヒマですねぇ」

男「急に何の話しだ!」

男「俺が何の団体の長なんだ?」

幼「探偵団の団長だよ」

男「いつ就任したんだ?」

幼「今朝?」

男「何で疑問形なんだ?」

支援

幼「殺人事件を一つ解決したじゃん?」

男「殺人事件なんて、起きてない!」

男「物騒な事を言うな!」

男「それに、色々言ってたのは、お前だ!」

幼「そうかー?」

男「だから、何で疑問形?」

幼「自分自身の事を本当に解っている人間なんて…」

幼「この世には居ないのよ、男…」

男「何をいい感じに話しまとめようとしてるんだよ!」

幼「フフフ…それはね、ワトソン君…」

男「もうすぐ学校に着くから、だろ?」

幼「エーーー?ここにきて、男の真の力が覚醒?」

男「は?覚醒?」

幼「きっと、銀髪になって、iqが300くらいになるんでしょ?」

男「俺、今、銀髪になってるの?」

男「iqが上がったようにも思えないけど…?」

幼「…ネタバレ最低!男のアホー!」
バタバタ


男「そのまま聞いておいた方が良かったかな…」




幼「…こ、これは…し、死んでる!」

男「死んでねーよ!」

幼「ですよねー」

男「俺、幼が委員会の仕事終わるの待ってたんだよ?」

男「不謹慎過ぎるだろ!」

幼「それじゃ、帰ろうか、男」

男「ん?いやにあっさりと引き下がったな?」

幼「今日は早く帰りたいんだよー」

男「ん?今日、何かあるのか?」

幼「だって、明日には…」

男「ん?明日?今、今日の話しをしてたんじゃなかったの?」

幼「もう!そう言うのはいいから!」

幼「早く早く!お家に帰ろうよ!」

男「はいはい…」




幼「ペロッ…これは…青酸カリ?」

男「そうだよ」

幼「ま、マジで!?」

男「アーモンドの匂いと味がしただろ?」

幼「た、確かに…」

男「引っかかったね、幼!」

幼「ま、まさか男が、こんな、こ、と、を…」
バタッ

男「フフフ、甘いねホームズ先生」

幼「な、何が?」
ムクリ

男「本物の青酸カリはアーモンドの臭いなんて、しないんだぜ?」

幼「マジで!?」

男「ネットで調べた」

幼「やっべー…インターネット、おっかねー…」

男「で?俺が作った鳥肉とブロッコリーのアーモンド炒めの味はどうだった?」

幼「…美味しかったです」

男「今日はちゃんと2人分あるからな」

幼「え?」

男「箸もちゃんと出すぞ」

幼「ええ?」

幼「男、どうしちゃったの?」

男「今日と明日、何があるのか、考えてみたんだ」

男「昨日の夜と今朝、幼があんなにはしゃいでた事も」

男「色々考えてみた」

幼「…」

男「ズバリ、ウチの両親が、明日旅行から帰ってくる事に関係ある?」

幼「なななな、何言ってんの?」

幼「おじさんとおばさんが帰ってくる前に」

幼「男と一線超えちゃおうとか、考えてる訳ないじゃん!」

男「雄弁だな、幼」

幼「…ぅ」

男「な?」

幼「…」

男「…なー?」

幼「もう!そうだよ!その通りだよ!」

幼「昨日、一緒に晩御飯を食べようと思ってたよ!」

幼「…でも、男はすっごい早い時間から晩御飯食べようとしてたから」

幼「麻婆豆腐丼、私が食べたの!」

幼「今朝だって、窓からこっそり入ろうと思ったよ!」

幼「でも、まさか男が部屋の鍵掛けて寝てると思わなかったんだよ!」

幼「やっと開いたと思ったら、男、起きちゃってるし…」

幼「だ、だから今夜は…今夜は!」

男「一緒に晩飯食べよう、幼」

男「おかず、持ってきてくれたんだろ?」

幼「!」

男「まぁ、長い付き合いだ」

男「推理するのはそんなに大変じゃなかったよ」

幼「…ぅう」

男「ていうか、別に推理でも何でもないな、これは」

幼「これ…作ってきた…」

男「お!唐揚げじゃん!美味そう!」

男「てか、この短時間で、よく出来たな?」

幼「昨日の晩、仕込んで置いたの…」

男「マジか?凄いなー、幼!」

幼「それでも、男は色んな事を考えて」

幼「おかずを一品作って…」

幼「私を…待っててくれたんだよね?」

男「あぁ、待ってた」

幼「…」

男「なぁ、幼」

幼「なに?」

男「長い事一緒に居てさ」

男「わかってるもんだと思ってたけどさ」

男「こう言うのは、ちゃんと言葉にしないとな」

男「想いだけでは伝わらないもんな」

幼「な、何が?」

男「俺は、幼の事が好きだぞ」

幼「!」

男「もちろん、一緒に育ってきた兄妹的な意味じゃなくて」

男「健全な男女としてだぞ?」

幼「マジで?」

男「マジです」

幼「ぅ、あ…あの…その…」

男「マジですよ?」

男「別に今すぐ返事くれなんて、言わないよ絶対」

幼「え?」

男「とりあえず、ご飯食べよう」

幼「う、うん」



幼「そこはかとない、敗北感」

男「幼の作った唐揚げ、美味しかったよ?」

幼「今『幼の作った唐揚げ、惜しかったよ?』って聞こえた」

男「卑屈過ぎるだろ!」

男「美味しかったって褒めたのに!」

幼「男の作ったアーモンド炒めの方が美味しかった…」

男「そんな事ないよ」

男「別々の料理なんだから、比べるのがおかしいよ」

幼「…そ、そうだよね」

幼「食べ物の話しをする時に、別の食べ物で例えるのは」

幼「バカのする事だって、雄山先生も言ってたもんね!」

男「そうそう」

幼「でもいつか!」

男「いつか?」

幼「男の料理の腕前を超えて見せる!」

男「え?」

幼「じっちゃんの名にかけて!」

男「幼、最初とキャラ違ってない?」

幼「あと、いつか男のハートを逆に盗んでみせる!」

男「探偵から、泥棒になっちゃった?」

幼「もう!恋泥棒なのは、男の方でしょ?」

男「あと、ってついでみたいに返事するなよ!」


おわり

これで終わりです
読んでくれた人、ありがとうございます

次スレは
幼馴染「…だれ?」男「…」
ってタイトルで立てたいと思います

見かけたら読んでくれると嬉しいです
では。

乙!途中に余計な言葉挟んですまんかった。

乙!

乙!

乙!

乙!

ほんとに毎度面白いなこの作者の作品!

バーローネタできたか


次回作も期待

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