「創ちゃん! つかぬことを聞くっすが、唯吹の体どう思うっすか!」 (189)

「つかなすぎて驚いたぞ… いや、待ってくれ俺に何を言わせたいんだ」

「まーまー どうなんすか?」

「良い…んじゃないか?」

「ドキーン! 具体的にはどこが良いっすか!」

「ええと…って、言えるわけないだろ!」

「創ちゃんてば、唯吹の体でなに考えてんすか! やべーっす! マジやらしーっす! うひょおおお!」

(どこかへ行ってしまった… 何がしたかったんだ澪田のやつ…)

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「創ちゃんは好きな女子とかいないっすか?」

「ど、どうしたんだ急に …俺は別にいないな」

「男としてどーなんすか! もっと野性的にならなきゃダメっすよ! ダメダメっすよ!」

「そういう澪田はどうなんだよ」

「あ 女子にそーいうこと聞いていいんすか? 創ちゃんはデリバリーがないっすねー まあ、唯吹はいまくりっすけど!」

「デリカシーって言いたいのか? いまくりなのはわかったけど…」

「もー冗談っすよ―! 唯吹には、心に決めた人が一人だけいるっすー!」

「へぇ、意外と乙女なんだな」

「意外とってなんすか! メッチャ乙女っすよ! 創ちゃんも唯吹の乙女なとこ見たいっすか?」

「いや、いいよ…」

「つれないっすねー 創ちゃんがそんなだと女子が可哀想っすよ」

「なんだかよくわからない理屈だな」

「創ちゃんが知りたいなら詳しく教えてあげなくもないっす!」

「そうか? じゃあ教えてくれ」

「きゃー創ちゃんダイタン! やっぱムリっす! うきゃあああ!」

(どこかへ行ってしまった… 何がしたかったんだ澪田のやつ…)

唯吹ちゃんは美乳

「創ちゃん創ちゃん」

「なんだ澪田」

「呼んでみただけっす! なんつって! きゃ!」

「俺には着いて行けないノリだな…」

「創ちゃんが着いて来てくれなくても唯吹はいつでも創ちゃんのそばにいるっすよ! って今の超かっこよくなかったっすか!?」

「あー…かっこいいと思うぞ」

「いや、ダメっす! 創ちゃんはきっとカワイイ女子が好みなハズっす! 唯吹はカワイイ系な女子を目指すっすっす!」

「そうか… 頑張ってくれよ」

「うおぉぉ…創ちゃんに言われたら燃えてきたっす! 今から腕立てっす! 」

「なんか頼もしいな…」

「創ちゃん、暗い顔してどうしたっすか! いつも100ワットな創ちゃんが5ワットくらいしかないっすよ!」

「ああ、いや ちょっとな」

「そういう時は唯吹の顔見て元気出すっす! 唯吹の顔を分けてあげるっすよ!」

「…顔近いぞ」

「近い方が効果的っす! 電磁誘導とか発生してビビビっす!」

「いや…ほんとに近いから…」

「創ちゃんが元気になるまで離れないっすよ!」

「わ、わかったよ 澪田のお陰で元気になった」

「いつもの創ちゃんに戻って良かったっす! 唯吹は顔が熱いんで冷まして来るっす!」

(どこかへ行ってしまった… 澪田はいつも元気だな…)

イイ

「創ちゃん、今ヒマっすか?」

「ああヒマだぞ」

「よーし、唯吹とトレーニングするっす!」

「どうしたんだ? 急にトレーニングなんて」

「友情を深めるには汗をかいて青春っす! 行くっすよー!」

…………――――――――

「いやー、良い汗かいたっす!」

「ああ、そうだな」

「創ちゃんも汗すごいっすね 唯吹が拭いてあげるっす!」

「自分で出来るよ」

「堅いこと言うのはなしっすよ! 唯吹はこれでも汗拭きのプロっすから! かつて地元では綿製の白き吸水者と恐れられたっす!」

「恐がらせてどうするんだ…」

「シャツをめくって背中見せるっす…!」

「これでいいか?」

「うおっ! 創ちゃんの背中のマジやべーっす! なんていうか男らしさで胸がトキメクっす!」

「なんか恥ずかしいな…」

「ゴツゴツした感じがまた堪らないっす…! は…! 今の唯吹ちょっとヘンタイっぽかったっす! 違うっす! 違くないけど違うっす!」

「いや…俺は気にしてないけど…」

「唯吹のことを気にしてないっすか…!? それはそれでガックリっす…」

「なんかフォローしづらいな… 澪田のことは気にかけてるぞ?」

「その言葉が聞きたかったっす! 唯吹の演技に見事ダマサれたっすねー! 今のセリフは胸の内に留めておくっす!」

「…勝手にしてくれ」

「創ちゃん怒ったっすか? 唯吹が全身くまなく拭いてあげるっすよ?」

「い、いいよ 後は自分でするから ありがとな」

「感謝の気持ちは行動っで示すっすよ! 唯吹の背中は空いてるっす! 拭かなきゃ損っすよ!」

「さすがにそれは…」

「唯吹が風邪引いたら創ちゃんのせいにするっすからね! さあどうするっすか! さあ!」

「じゃあ拭かせてもらうよ」

「創ちゃんならそう言うと思ったっす! 優しく拭かなきゃダメっすよ! 女子の体は繊細なんすから!」

「なんだか拭きづらいな…」

「……」

「なんで黙るんだよ!」

「ああ…いや…なんとなくっす」

「こんな感じでいいか?」

「さすが創ちゃんっす! 全盛期の唯吹に負けてないっすね! 良かったら前も拭くっすか?」

「それはやめとくよ」

「創ちゃんは女子の体に興味ないんすか! 色んな意味で!」

「お前は俺をどうしたいんだよ!」

「創ちゃんになら特別に見せてあげてもいいと思ったんすけど… 見たくないっすか?」

「何をだよ」

「女子のおへそは…八つあるんすよ…!」

「たぶんそれはお前だけだと思うぞ…?」

「見たいっすか…! 見たいっすか! 見たいっすよね!」

「そこまで言うなら見せてくれよ」

「見せてあげないっす! 創ちゃんは唯吹の体の謎を想像しながら悶々と眠りに就くんすよ…! いや~楽しいっす!」

「くそ…今すぐ確かめてやる」

「ま、待つっす! 唯吹が悪かったっす! 自分で見せるっすから! めくられるのはなんかダメっす!」

「ああ、わかった」

「心の準備はいいっすか? いくっすよー! ばっ!」

「…普通だな」

「夢を見るのはいいっすけどこれが辛い現実っす…」

「俺は今夜ヘンな夢を見なくて済んだよ」

このシチュエーションは俺に効きすぎる

「創ちゃんには特別にもう一つ女子の体の謎を教えてあげるっす…!」

「なんだよ」

「実は…乳首が左右に二つずつあるっす…!」

「それもお前だけだ」

「見たいっすか! 見たいっすよね!」

「もういいよ…」

「見せてあげないっす! 創ちゃんは唯吹の左右の胸を想像しながら悶々と眠りに就くんすよ!」

「やめろ! それはほんとに悶々するだろ!」

「くそ! 力づくで確かめてやる!」

「創ちゃん!? 何するっすか! ダメっすよ!」

「いいから見せろ!」

「いやっ 恥ずかしいっす…! 創ちゃん… っていう展開に!」

「ならないから」

「こういう時にこそ創ちゃんはもっと男を出すべきなんすよ!」

「花村とキャラがかぶるだろ」

「期待して待ってる女子はどーするんすか! 創ちゃんがそんなだと女子が困るんすよ!」

「だからどういう理屈なんだよ」

「相変わらずニブチンっすねー… 女子のパンツにこめられた想いに気づかないなんて」

「軽い気持ちで受け取って悪かったよ…」

澪田本当可愛い

え? 日向の才能は超高校級のパンツハンターだろ?

「じゃあ俺が本当にお前を脱がしたらどうする気なんだ? って俺は何を言ってるんだよ!」

「それは全力で抗うっす」

「なんか言ってること違わないか?」

「分かってないっすねー… これは…脱ぐか脱がされるかの真剣勝負なんっす…!」

「俺にはお前が分からないよ…」

「あっ言い間違えたっす! 脱がすか脱がされるかの真剣勝負なんっすよ!」

「だから分からないって」

「汗も乾いたしホテルに帰るっす! いつも思うんすけどホテルってやらしー響きっすね!」

「お前はいつもそんなこと思ってたのかよ」

「創ちゃんは何も感じないっすか!? 一緒にホテルに帰るんっすよ!? あー、言ってて恥ずかしくなってきたっす!」

「分かったから 分かんないけど」

とても良い

「思ったんだけどさ 日向くんって結構良い筋肉してるよね」

「狛枝が言うと本気で気持ち悪いから…」

「ちょっと触らせてよ」

「あああああああああ! ダメっすよ! 凪斗ちゃん! 誰の許可で触ってるんっすか!」

「ん? ダメ?」

「創ちゃんを好きに触っていいのは唯吹だけっす!」

「それは違うぞ」

違うの?

「創ちゃんは唯吹に冷たくないっすか! なんか温度差感じるっす! 気圧差で唯吹から創ちゃんへ風がビュービュー吹いてるっすよー!」

「俺はこんなもんだぞ 澪田が熱すぎるんじゃないか?」

「もっと温もりやぬるま湯や湯たんぽやホッカイロ持って接してくれなきゃダメっす!」

「じゃあこれとか」

「カセットコンロォ!」

「唯吹の温度分けてあげるっすー! ぎゅむー!」

「お、おい くっつくなよ…」

「どうっすか! 熱くなってきたんじゃないっすか!? 唯吹もなんか火照ってきたっす! 効果覿面っすね! あ、覿面ってこういう字書くんだ! ムズッ!」

「いや、胸が当たって…」

「創ちゃんてば、意識しちゃってるっすか!? そんなこと言うと余計離さないっすよ! ぐふふ! ほら、どうっすか! どんな感触っすか!?」

「感触っておい」

「何なら手で触るっすか? 創ちゃんならいいっすよ! さぁさぁ、どうするんっすか!? やっちゃうっすか!?」

「後悔するなよ」

「うっきゃあ! 創ちゃんマジっす! セクハラっす!」

「柔らかいな…」

「大人の階段登っちゃったすね… 唯吹、今夜寝れねーっす!」

おい触んなよww

「わ、悪い澪田 つい」

「ついって! でもいいっす! また触りたくなったらいつでも言うっすよ!」

「澪田、触りたいから触らせてくれ」

「逆にカッコイイかも!」

「本当に触るぞ?」

「創ちゃん目がマジっす…! ええと…ダメっす! いや、いいっすけど! いや、やっぱダメっす!」

「相当悩んでるな…」

「ワカッタ! 唯吹にはまだ早かったっす! 前言粉砕っす!」

「良かった 澪田が目を覚ましてくれて」

「創ちゃんの過激な一面を垣間見た気がするっす…」

「あ、ココナッツが落ちてるな」

「前にペコちゃんに割ってもらって飲んだ時、ウマかったっすよねー!」

「また飲んでみたいな」

「創ちゃんが言うなら唯吹が一肌脱っすよ! 唯吹の実力を持ってすれば割ってやれないこともないっす!」

「どうするつもりだよ」

「ヘッドでクラッシュしてぶち撒けるっす!」

「お前の頭の中身がぶち撒けられないか…?」

「心配ご無用っす! ヘドバンで鍛えた唯吹の頭前を見るっすー!」

「いや、本当にやめとけって…」

「気合入れていくっすよー! うおおおおおお!」

「お、おい!」

「きゃあ! 何するっすかー…」

「怪我しそうだったから…」

「唯吹のこと心配してくれるっすか? 創ちゃんのためなら頭の一つや二つ安いモンっす!」

「何言ってるんだ!? もっと大事にしろよ!」

「えっ!? 創ちゃんは唯吹のことを大事に思ってくれてるっすか…!」

「当たり前だろ」

「にゃあー! やばいっす! メロメロしちゃうっす! まあ…既にこれ以上ないくらいメロメロなんすけど…」

「何か言ったか?」

「ブルースカイ&イヤーっす ところで創ちゃんはいつまで唯吹を押し倒してるっすか…?」

「あっ 悪い…」

「そこで引いちゃうのが創ちゃんなんすよねー もっと押して突っ込まなきゃダメっす!」

「突っ込むってなんだよ!?」

「聞いちゃうっすか!? 唯吹にそれ聞いちゃうっすか!?」

「聞かなかったことにしてくれ」

「飽々だよ! 夏を通り越して飽々だよ!」

「うわっ! モノクマ!」

「モノクマちゃん!?」

「オマエラいつまでそんなヌルいイチャつき方してるわけ? 早くヤっちゃえっつーの!」

「お前、何しに来たんだよ!」

「なかなか殺し合いが始まらないから飽きちゃったんだよね だからマンネリを防ぐためにボクが一肌脱ごうじゃないの」

「何をするつもりなんだ…いや、させるつもりなんだ…!」

「キミら二人で交尾…じゃなかった セックスしてもらいます!」

「は!? ふざるなよ!」

「そ、そうっすよ!」

「あーダメダメ 逃げたりとか逆らったりとか萎えるようなしたらそこで見張ってるモノケモノがキミたちを蜂の巣にしちゃうからね」

「いつの間に…!」

「もうダメっすー!」

「後5分で挿入しないとマジで死ぬけどいいの?」

「待てよ! こんな状態で出来るわけないだろ!」

「残り4分40秒」

「くそっ!」

「創ちゃん 唯吹は、いいっすよ…?」

「澪田、お前…」

「こんな時に言うのもアレっすけど… 唯吹は創ちゃんのことが好きです」

「澪田…」

「だから唯吹に気を遣うことないっす それで二人共死んだら誰も報われないっすから」

「悪い、澪田… 俺、お前のこと…」

「みなまで言わなくて大丈夫っす! 創ちゃんは後でゆっくり答えを出してくれればいいっす!」

「ありがとう…澪田 でも、本当に大丈夫なのか?」

「そりゃー不安っすけど、この状況っすからね… それに、創ちゃんとだったら唯吹は大丈夫っす!」

「澪田… 俺は必ずお前に報いるからな」

「その言葉が聞けただけでも嬉しいっす」

「……」

「えーっと… 脱がなきゃダメっすよね」

「そ、そうだな 俺も脱ぐよ」

「あんまり見ないで欲しいっす…」

「わかった なるべく見ないようにするよ…」

「まだ? 蜂の巣までもう2分もないけど? あ、中でフィニッシュするまでやめちゃダメだからね 言ってる意味わかる?」

「くっ…モノクマ…!」

「心配いらないっすよ、創ちゃん 唯吹はもう覚悟決めたっすから」

「何から何まで、本当にゴメン…」

「創ちゃんのせいじゃないっす それに謝るのは唯吹の方というか…実はこんな状況でも創ちゃんと一緒になれるのが嬉しかったり…
 あ、いや…相手が創ちゃん以外の誰かじゃなくてホントに良かったっす!」

「俺のどこが良いんだよ…」

「聞くだけヤボっすよ? っていうか早くしないとマジでやばいっす」

「ああ… じゃあ、いくぞ…」

「はい…」

…………――――――――

「澪田…大丈夫か?」

「大丈夫っす…」

「モノクマ もういいだろ」

「あれ? もう終わったの? 中に出しちゃったの? ていうかホントに中に出しちゃったの?」

「…そうだよ」

「なんか全然盛り上がらなくてツマンナイねぇキミたち… まあいっか 終わったんなら帰れば?
 あと言い忘れてたけどキミらの様子は島中のモニターで映しておいたから」

「お前…!」

「アハハ… もう笑うしかないっすね…」

カムクラに秘められた超高校級の早漏の才能を使えば間に合う

しかし花村と小泉の歩くセクハラコンビの追及が怖い

「モノクマのやつ帰っていったな… 俺達も帰るか その…洗い流せばまだ間に合うかもしれないし」

「どーかなー… でもダメっすね 足に力は入んねーっす」

「大丈夫か…? 肩貸すよ」

「いや、それより… 今は一緒にいて欲しい…かなー…」

「えっ ああ…いいぞ」

「唯吹、初めてだったっすよ」

「悪い…」

「あ、じゃなくてー 初めてだからこそ嫌な思い出で終わらせたくないっていうか…
 創ちゃんさえ良かったら…もう一回、ちゃんとやりたい…」

「もう一回…ちゃんと…」

「って、ダメっすよね」

「俺、まだお前の気持ちにちゃんと答えてない…から、言うよ 俺も澪田のこと好きだ」

「後で気が変わったとかナシっすよ?」

「ああ ずっと変わらない」

「言ったっすね? 絶対忘れちゃダメっすよ? 絶対っすよ? もー大好きー! 創ちゃーん!」

モノクマ「そう、これは二人をくっつけるために仕組んだことなのでした」
モノミ「うそつき!」

「すごいもの作っちゃいまちた」

「なんすか? モノミちゃん」

「手に塗って好きな人と手を握ると幸せな気持ちになっちゃうハンドクリームでーちゅ
 これを使って日向くんとらーぶらーぶしてくだちゃーい」

「モノミちゃんも見てたっすか!?」

「見てないでちゅ! あちし何も見てないでちゅ!」

…………――――――――

「そういうわけなんでどうっすか創ちゃん!」

「なんだか怪しげなアイテムだな……」

「いいから塗るっすよ!」

「どうなっても知らないぞ」

「塗ったっすか?」

「ああ」

「じゃあさっそく! ボクと握手!」

「う」

「ひゃあ こ、これすごいっすよ……」

「確かに……(澪田には言えないが勃ってしまった……)」

「もっと、にぎにぎしていいっすか……?」

「ああ……」

「やばい! これめっちゃドキドキするっす!」

「気持ちいいな……」

「創ちゃん、エッチなこと考えてないっすか?」

「どうしてそう思うんだよ!?」

「つい目が行っちゃって……ズボンが膨らむとこ見ちゃったっす」

「もしかしてお前も……」

「あはは…… なんかエッチなことしてる気分になってたっす
 指絡ませたらもっと感じるんじゃないっすか……?」

「やってみるか」

「繋がってる感じがすごいっす……」

「大丈夫か? お前、顔赤いしだいぶ息上がってるけど」

「そうっすね…… でも、創ちゃんもっすよ……?」

「そうだな」

「もっと繋がってみたくないっすか……?」

「どうするんだよ……」

「唇に塗って……」

「キス……するのか……?」

「したいっす」

「いいぞ……」

「じっとしてるっすよ……?」

「」

「」

「……」

「……もうだめっす! 心臓止まりそうっす!」

「……なあ、もう一回していいか?」

「これ以上したら唯吹マジで死んじゃうっすよ!?」

「ああ……そうか? じゃあやめとくよ」

「唇に塗るのはやり過ぎだったっす 塗る場所間違えたらエライことになってたっす」

「先に唇で試して良かったな あそこに塗って……」

「その先は言わなくても分かるっす」

『パシャ』

「なんすか!?」

「いい絵だったからつい…… ごめんね」

「真昼ちゃんっすか ていうか今の撮っちゃったすか……」

「(澪田のやつ今にもイキそうな顔してたもんな……)」

「じゃあアタシ帰るから…… 後は二人でね」

「急に出てきて急に帰ったな……」

「キス……見られちゃったっすかね?」

「それ以前にもっと恥ずかしいもの見られてるはずだけどな……
 あの花村や西園寺ですら何も言ってこないところを見ると皆で口裏を合わせて見なかったことにしてるようだけど」

「やっぱそうっすよね…… 朝食の時、和一ちゃんと冬彦ちゃんからはあからさまに目を逸らされたっす」

「俺も女子に話しかけづらいよ……」

公認カップルじゃん

「みんな、ちょっと聞いてくれ 実は……俺と澪田、付き合うことにしたんだ」

「付き合うことにしたっす!」

「そうなんだ おめでとう、お似合いだよ でもボクはちょっと寂しいけどね」

「日向くんの今後のためにぼくが直々に手解きしてあげてもいいよ?」

「そうなの!? 記念に一枚撮ってあげよっか」

「チッ ボケが」

「うん 日向くんと澪田さんならきっと素敵なカップルになれる……と思うよ」

「ハッハッハ こんな時にようやるわい!」

「お前ら決闘でもすんのか?」

「良いものだな」

「発情期かなー?」

「まあ! お二人とも仲がよろしかったのですね」

「日向ばっかりずりーぞ! 俺だってソニアさんと……」

「遂に契りを結んだか……運命に導かれし咎人達よ……」

「俺が認めてやる 喜べ」

「お、おめでとうございますぅ! 避妊したかったらいつでも私に言ってください!」

「キモいんだよゲロ豚!」

「ひぃぃ! すみませぇぇん!」

「凪斗ちゃん! 用事ってなんすかー? あれ? 誰もいないっすか? ぎゃ!」

…………――――――――

「いてて ここどこ? なんで唯吹縛られてるっすか!?」

「あ、目覚めた?」

「凪斗ちゃん!? これどいうことっすか!?」

「キミがボクの呼び出しを受けてまんまと捕まった、っていうところかな」

「ズバリ意味不明っす 遊びにしてもいきなり殴るなんてひどいっすよ!」

「遊びじゃないよ これからキミは強姦されて殺されるんだからね」

「……なんて言ったっすか?」

「最初は動かしやすそうな十神くん辺りに仕掛けようかと思ってたんだけど
 キミが日向くんと仲良さそうにしてるのを見て気が変わってね キミを[ピーーー]ことにしたんだ」

「冗談っすよね……? あの温厚な凪斗ちゃんが唯吹を[ピーーー]なんて言うはずないっすよね?」

「全ては希望のためなんだよ 恋人が強姦されて殺されたと知ったら日向くんはどんな反応をしてくれるんだろうね
 彼は自分の才能を忘れてしまっているけれどもひょっとしたらこれを機に思い出してくれるかもしれないよ
 澪田さんの超高校級の軽音楽部という才能も素晴らしいけど日向くんの隠れた才能にボクは期待しているんだ
 だからね澪田さん 日向くんの希望をより輝かせるためにもキミにはここで死んでもらわなくちゃならないんだ」

「えっ? えっ!?」

「じゃあ始めようか 騒がれると面倒だから口は塞がせてもらうよ」

「正気に戻るっすよ! 凪……んんーっ!」

「ああ、縛る前に服を脱がせておけば良かった でもまあハサミで切り裂いた方がそれっぽいかな
 安心してよ 犯し終わるまでは殺さないからさ」

コブラでもなんでもいいマジ助けてくれ

「澪田さんの胸は可愛らしいね 想像していた通りだよ 手に丁度収まる大きさが支配欲をくすぐるっていうのかな」

「それに加えて身体が細いから全体のバランスも良いし、細い割に鍛えられてて程良く締まっているのもまた素晴らしいよ」

「中も良い具合だね 少し濡れ足りないようだからキミは痛いだろうけどボクにはこれくらいが丁度いいかな」

「まあ、ボクなんかが言葉を尽くしたところでキミの肉感の良さは表し切れないよ 残念ながらね」

「そんな澪田さんを自分の物にできて日向くんはとても幸せだろうね」

「それを失った彼がどれほど深い絶望に染まるのか」

「その絶望を乗り越えた先にはどれほど大きな希望が輝くのか」

「絶対的な絶望を乗り越えた先にある絶対的な希望をボクはこの目で見たいんだ」

「とは言え、ささやかながらキミにも期待しているんだけどね」

「キミはボクにいたぶられて殺されるわけだけど、何か逆転の一手でこの状況を覆してくれるんじゃないかって」

「あぁ、ごめんごめん」

「縛られて身動き取れずに犯されるまま犯され続けてるキミにこんなことを言うのはちょっと可哀想だったかな」

「何も心配することはないよ キミには希望の礎として凄惨に死んでもらうことにするからさ」

「軽音楽部という才能に因んでまず喉を潰すというはどうかな」

「ギターを持てないように両手を使えなくするのもいいよね」

「ステージに立てないように両足も使えなくしようか」

「それと人前に姿を晒せないくらい顔や身体の隅々を醜く裂いてあげるね」

「あとはお腹を割いて中身を引きずり出すとか」

「人ってどこまで生きていられるんだろうね」

「そこまでして生きていたら殺さないでおくよ 失血死しないようにボクも加減するから」

「そのくらいの希望はあった方がいいでしょ?」

「ねぇ、どう? ちょっとは希望が湧いてきた?」

「あはは 希望なんて全然ないって顔だね まあ無理もないよ」

「なんて言ってる内にボクはもう限界だ このまま中に出すね」

「キミのお陰で気持ち良かったよ」

「もう一回だけやったら終わりにしようか キミもこの後の為に体力を残しておきたいだろうからね」

「はわわわ! 何してるんでちゅか狛枝くん! 今すぐ澪田さんを放してくだちゃい!」

「あーあ モノミに見つかっちゃうなんて…… でもさ、引率の先生は生徒に干渉しないんじゃなかったっけ?」

「過度な暴力は禁止ってしおりに書いてあるじゃないでちゅか!」

「コラー! モノミ!」

「お兄ちゃん! じゃなくてモノクマ!」

「殺人は暴力じゃないの!」

「そんな! 横暴でちゅ!」

「うるさーい! どっか行け―!」

「痛い!」

「邪魔なモノミは消えたので後は好きにやってちょうだい じゃあね」

「残念だったね、澪田さん せっかく助けが来たのにいなくなっちゃったよ
 あのモノミが助けを呼ぶ可能性もゼロじゃないし、予定は狂っちゃうけどキミは痛めつけずに殺すことにするよ」

夢落ちとかそんなんだよな?そうなんだよな?

「何をしている貴様」

「田中くん……」

「破壊神暗黒四天王が救いを求める叫びを聞いたので来てみれば…… まさか貴様がこのような悪漢だったとはな」

「キミにまで見つかっちゃうなんて……ボクは幸運とは程遠いよ それとも、澪田さん何かした?」

「んんっ」

「もういいか 今回は諦めるよ このボクが何の準備もなく田中くんまで殺せるとは思えないしね さあ澪田さん、喋っていいよ」

「ふっふっふ 唯吹の勝ちっすね! 唯吹は人には聞こえないくらいの高周波でずっと叫んでたんす!
 耳が良いモノミちゃんや人より高音を聞き取れるハムスターちゃんなら気づいてくれると思ってたっす!」

「さすがは超高校級の軽音楽部だね 大人しいと思ってすっかり油断してたよ」

「まあ、声の届く範囲にいるかどうかはカンペキ賭けだったっすけどね ちなみに口を塞がれた状態で大声を出すことも出来たっすよ?
 でもそれだと誰かが気づく前に喉を潰される可能性があったんでこの方法に賭けたっす! どうっすか!? この見事な作戦勝ち!」

「あはは…… 全く、参ったよ ボクの幸運程度の才能じゃ勝てないわけだ キミに乱暴した報いは受けるよ
 どこかに縛りつけて閉じ込めておくくらいのことはされても仕方がないかな」

「凪斗ちゃんとは友達になれると思ってたんすけどねー…… 唯吹を好き勝手した罪はキッチリ償ってもらうっす! ギルティィ!」

「――――っていうことがあって凪斗ちゃんは今ホテル旧館の大広間に縛りつけられてるっす」

「あの狛枝がそんなことを……」

「もー超怖かったっすー! ぎゅってして慰めてー!」

「澪田が無事で本当に良かったよ よく頑張ったな」

「ううぅ…… 創ちゃぁぁん…… もう一生創ちゃんのそばから離れないっす!」

「おい狛枝 朝食持ってきたぞ 昨日何も食ってないだろ」

「やあ日向くん キミには悪いことをしたね 何かボクに言いたいことはあるかな?」

「お前がそうやって縛りつけられてる内は俺は何も言わないさ ゴミ野郎」

「あはは キミにしてはなんだか口が悪いね それはそうとボクは朝食はトーストしか食べないんだ 替えてもらえないかな」

「は? 知らねぇよ ゴミ枝」

「じゃあ食べさせてよ ボクはこの通り手が使えないんだ」

「ゴミカスの分際で何言ってんだ 犬のように這いつくばって食えよ お盆の上に全部ぶち撒けてやるから」

「なかなか手厳しいね……」

「黙ってろ 今度澪田に手出したら顔の形が変わるまで殴るからな」

「なんかキャラ変わってない?」

「お前、自分が何やったか分かってるのか?」

「澪田さんを犯してなぶり殺そうとしたこと? モノクマも言ってたでしょ 殺し合いだってさ
 今回はたまたまボクだっただけで同じことをする人は他にもいるかもしれないよ? 澪田さん、すごく良い身体してたしね」

「やっぱり今殴らせてくれ」

「創ちゃん、大丈夫だったっすか? 凪斗ちゃんに何かされなかったっすか?」

「狛枝のやつ、顔で俺の手を殴ってきたよ」

「修羅っすね……」

「うわ!」

「あ、起きたっすか! おはようございもーにんぐ!」

「澪田!? なんでお前が俺の部屋にいるんだよ!」

「創ちゃんの寝顔を見たり色々したりするためっす!」

「色々って何したんだよ! その前に鍵がかかってただろ!? どうやって入ったんだよ!」

「鍵ならぶっ壊したっす!」

「壊したらだめだろ!」

「朝から創ちゃんと一緒にいたかったんすよー!
 おはようからおやすみまでと言わず、おやすみからおはようまでも一緒にいたいっす!」

「一緒に寝ようって言うのか!?」

「ハイ!」

「ベッドはどうするんだよ」

「添い寝しよ☆」

「俺は理性を保てる自信ないぞ……」

「唯吹冥利に尽きるっす!」

「……本当にいいのか?」

「いや、あんまりマジになられても困るっすけど…… 創ちゃんてば意外と肉食系男子だったんすね!?」

「男は大体こんなもんだと思うぞ」

「そうなんすか?」

「いや、澪田が可愛いから……かな」

「え? なんて言ったっすか?」

「澪田が可愛いから……」

「え? なんて言ったっすか?」

「おい! お前耳良いんじゃなかったのかよ!」

「てへりんっ 創ちゃんも唯吹に負けないくらい可愛いっす!」

「ありがとうな……」

「今日は女子のみんなで海水浴行くっす! 創ちゃんも行くっすよ!」

「男が混ざっていいのか?」

「創ちゃんは特別ゲストってことで主催者のソニアちゃんにもちゃんと許可貰ってるっす!」

「女子の中、男俺一人だけか…… せめて他にも誰か……いや、誘っても良さそうなやつがいないな」

「猫丸ちゃんとかどうっすか?」

「弐大がいると泳ぎ方とか、下手したらビーチバレーでも指導入りそうだからな……やめとくよ」

「じゃあいないっすね」

「仕方ないな」

「そうと決まったら出発っすよ!」

「もう行くのか?」

「早めに行って集合場所のダイナーで腹ごしらえっす!」

「俺も行くよ 澪田は水着持ってるのか?」

「もう既に服の下に着てるっす! 確認したいっすか?」

「どういう質問だよ!」

「思ったんすけどね、こうやってスカートをめくると水着なのにいやらしい感じに見えないっすか!?」

「…………」

「なんで前屈みっすか」

「さっきの意見には賛成するよ……」

「唯吹にして欲しいことがあるんじゃないっすか?」

「俺のことはいいからとりあえずスカートを戻してくれ」

「先が思いやられるっすね」

すごく良い
支援

「創ちゃんさえ良かったら唯吹がしてあげるっすよ?」

「いいのか?」

「ギターで鍛えたんでテクには自信あるっす!」

「そういう問題か? まあ澪田がいいって言うなら……」

「任せて! てか噛ませて!」

「噛むなよ!?」

「上手くできるか分かんないっすけど創ちゃんのために頑張るっす!」

「なんか恥ずかしいな……」

「みんなの前でやっちゃったことに比べたらどうってことないっすよ!」

「それはもう思い出したくなかったな……」

「なんか近くで見るとアレっすね……」

「感想はいいからな」

「ありがとな、澪田」

「唯吹も創ちゃんの可愛い反応が見れて満足っす!」

「そうかよ…… 俺だけしてもらうのも悪いし澪田も」

「えっ 唯吹はいいっす! これからみんなと会うんすよ? 気分的にムリっす!」

「じゃあ戻ってからでもいいよ」

「いいっす! 恥ずかしいっす!」

「俺だって見せただろ?」

「そうやって盾にするんすね!? さては唯吹のが見たいだけなんじゃないっすか!?」

「だって、前はお互い隠しててよく見えなかったし…… そういう澪田はどうなんだよ」

「唯吹にそれ聞くっすか!? それ認めたら唯吹がエッチな子になっちゃうじゃないっすか!」

「それ、半分認めてないか? というかお前の中の俺は既にエロキャラなんだな……」

「とにかく唯吹はいいっす!」

「俺がしたいんだよ ……なあ、唯吹」

「創ちゃんてば見かけによらず強引っすね……! その代わり服は着たままっすよ?」

「ああ、わかった じゃあベッドに座って」

「ううぅ……! 緊張して何か分泌しそうっす……!」

「どんな体だよ……」

…………――――――――

「はぁ……はぁ……」

「えーと……大丈夫か?」

「いや、なんとなく分かってたっすよ……」

「悪い、つい我慢できなくなって……」

「ゴムまで用意して準備良すぎっすよ」

「それは別にいいだろ」

「もー恥ずかしいとこ全部見られたっすー!」

「悪かったって……」

「こうなったら創ちゃんに無理矢理メチャクチャされたってみんなに言いふらすっす!」

「俺居辛すぎるだろ!」

「あ、そろそろ集合時間っすよ」

「さっきの冗談だよな?」

「え? 何のことっすか?」

「もういいよ……」

「こんちらー! もうみんな来てたんすね!」

「うん 澪田さんと日向くんが最後だよ」

「あれ どうして和一ちゃんがいるんすか?」

「お、俺はたまたまここで飯食ってただけだよ つかなんで日向がいんだよ!」

「日向さんは澪田さんがお連れしたいとのことだったので」

「お願いします! ソニアさん! 俺も連れてってください!」

「左右田おにぃ絶対下心しかないよー! こんなキモいやつ置いていこうよー!」

「うるせー! 俺だって日向と仲良いんだぞ! 俺は日向と一緒にいたいだけだ!」

「やめてよー! 逆にキモいよー!」

「女子だけの会にしようと思ってたんですけど、仕方ありませんね」

「ありがとうございます!」

「みんなもう水着に着替えたんすね」

「水着のまま来た人がほとんどだけどね 澪田さんも着替えたら?」

「ここでっすか?」

「ビーチハウスは着替え禁止らしいのです モノミさんがおっしゃっていました」

「脱ぐだけでもダメなんすか?」

「ルールにうるさいモノクマさんも一緒だったので……」

「まあいいっすけど いやー、最近の若い娘さんは発育が良いっすなあ!」

「なあ、日向 下に水着着てるって分かってても女子の着替えって興奮するよな……!」

「ちょっと、左右田に日向! 女子が着替えてるんだから外に出て待つとかできないの!? まあ日向はいっか」

「くそー! 覚えとけよ日向!」

「お、俺も外で待ってるよ……」

「日向、お前ぶっちゃけどこまでやったんだよ」

「は? お前だってあの時見てたんだろ?」

「違ーよ 付き合ってからの話だよ もう一緒に寝てるとかないよな? 今日だって手繋ぎながら歩いてくるとこ見たんだぞ!」

「まだ付き合い始めたばっかりだぞ?」

「その付き合い始めたせいでお前の彼女、狛枝の野郎にヒドイことされただろ? それから急接近して……ってこともあるだろ」

「いや、ないって……」

「ここだけの話にすっからさ 本当のとこどうなんだよ」

「実はここに来る前もしたよ……」

「したって……やったのか?」

「ああ」

「こんな真っ昼間からか!? お前どうかしてるぞ? くそー羨ましい限りだぜ こんな事なら聞くんじゃなかった
 お前ばっかりいい思いしてないでソニアさんとどうやったら仲良くなれるか一緒に考えてくれよ!」

「お前もハムスター連れてみたらどうだ?」

「こんな島にいるかよ! つーか田中の真似じゃねーか!」

「うぷぷ 来ちゃった」

「モノクマちゃんが何の用っすか?」

「どうしてモノクマさんがここにいるのですか?」

「オマエラが水着姿でキャッキャウフフと戯れてるのを見たらムラムラっと来ちゃってね まあボクも男の子だからね」

「オイ! それがどうした! ここはソニアさんが認めた者しか入れねぇんだぞ!」

「左右田おにぃは仕方なく入れてやってるんだよ?」

「前に日向クンと澪田さんの関係を取り持つようなことしちゃったでしょ?
 それだと日向クンを狙ってた他の生徒が可哀想だと思ってイベントを用意したの ボクって優しいクマだからね」

「聞いちゃいねぇ……」

「おい、モノクマ 今度は何を企んでるんだよ……!」

「単刀直入に言うね 日向クンと七海さんでセックスしてください! ちなみに今回、七海さんを選んだのはぶっちゃけボクの気分です」

「は!? 何言ってるんだよ!」

「日向、そこどいてろ! オレがそいつの中綿を引きずりだしてやる!」

「待って、終里さん! モノクマに手を出すのは危険だよ」

「そうそう ボクに手を出したらこの機関銃でクマの巣だからね
 それにキミたちも早く直結しないと友達が少ない人から順番に一人ずつクマの巣にしていっちゃうよ?」

「ふぇぇ……きっと私が最初に殺されちゃいますぅぅ……!」

「オ、オイ…… どうすんだよ…… オレとかマジでやべーぞ……」

「モノクマさん、日向さんは澪田さんとお付き合いしているんです! 私達は誰もそれを邪魔したいなどと思っていません!」

「あ、そう? でも二人が付き合うきっかけを作ったのはボクなんだし、ボクがそれを壊したって別にいいじゃない?
 それに彼女がいるのに大勢の前でセックスさせられるなんてドッキドキ……! こんな引いちゃうような展開、活字以外では見せられませんなあ!」

「みんな、心配しなくても大丈夫……だと思うよ だって先生は生徒に直接干渉できないってルールがあったでしょ?
 脅すことはできても、それ以上のことはモノクマにだってできないはずだよ」

「ギクッ……!」

「そうなのか!? モノクマ!」

「しょぼーん…… 前はこの手で上手く行ったのになあ…… モノケモノを連れて来なかったから迫力が足りなかったかなあ……
 それとも日向クンと澪田さんがバカで騙されやすいだけだったとか?」

「くそっ……俺があの時に気がついていれば……!」

「創ちゃんは悪くないっすよ!」

「ふゆぅ……! よかったですぅ……!」

「お、脅かすんじゃねーよ! バーカバーカ!」

「よかった これで一件落着だね」

モノミ「あちしのいないところでまた悪さしてまちたかモノクマ!」

モノクマ「あ、モノミ ちょうど探そうと思ってたんだよ」

モノミ「ふえっ!?」

モノクマ「確かにボクは生徒に直接手出しできないけどモノミは別なんだよね キミたちがセックスしないならモノミを殺しちゃおう~!」

モノミ「ふええっ!? 何言ってるでちゅか!?」

左右田「……別にいいんじゃねーか? モノミってオレらをこの島に閉じ込めた悪い組織のやつなんだろ? 無理に庇う必要ねーよ」

ソニア「モノミさんが死んでしまうのは可哀想ですが、だからと言って大勢の前で行為を強いるなんてそんな非人道的なこと私にはできません……」

小泉「アタシもソニアちゃんと同じ意見かな」

澪田「モノミちゃんより仲間の貞操の方が大事っす!」

モノミ「ミナサンが仲良くなってくれて先生は嬉しいでちゅ…… ミナサンが傷つくくらいならあちしは……」

七海「ううん だめだよ」

モノミ「七海さん!?」

七海「私と日向くんがここですればいいんでしょ? 私は大丈夫だから ……ごめんね、澪田さん あとは日向くんが決めるだけだよ?」

日向「七海……!」

モノクマ「あれ? 七海さんは随分とモノミの肩を持つんだね? もしかして生徒の中に潜むモノミの仲間ってキミなんじゃないの?」

左右田「はあ!? まさかオメーが裏切り者だったのか!?」

小泉「ウソでしょ!?」

モノミ「はわわ! 七海さんは裏切り者なんかじゃありまちぇん!」

モノクマ「モノミが言うとますますアヤシイなあ」

七海「裏切り者とか関係ない 人が殺されそうになってるのにそんなの放っておけないよ」

澪田「人っていうかウサギっすよ?」

終里「しかもヌイグルミだろ?」

七海「それでも生きてることに変わりはないでしょ? 自分がちょっと大変な思いをするだけで命を助けられるなら私はそっちを選ぶ」

辺古山「ちょっとどころではないと思うが」

モノクマ「苦しい言い訳だよね」

七海「ごめん、正直に言うとね……私は日向くんのことが大好きで、ずっと『したい』って思ってた あと、みんなに見られながらの状況に興奮したり……なんて」

左右田「マジか……」

辺古山「問い詰めるようなことをして悪かった……」

モノミ「そ、そんな……!?」

モノクマ「はわわ……あの大人しい七海さんがそんなトンデモナイ性癖を持っていたなんて……」

終里「変わってんな」

ソニア「七海さんは変なんかじゃありません……!」

罪木「わ、私もその気持ちちょっと分かります」

小泉「分かるんだ……」

澪田「千秋ちゃんがあんなに顔真っ赤にしてるとこ初めて見たっす…… めちゃ可愛い……!」

日向「七海……」

七海「日向くん、こんなことに巻き込んじゃってごめんね それで、どうする?」

「俺は……」

「唯吹のことは気にしなくていいっすよ!」

「……無理だ、俺にはできない」

「うん、分かった じゃあ私が勝手にするから日向くんは寝てて」

「えっ?」

「ほら、早くしないとモノミが殺されちゃうでしょ? それとも私が脱がせてあげなくちゃだめ?」

「じ、自分で脱ぐよ!」

…………――――――――

「最近の若者の性の乱れって怖いわね― じゃあボクは満足したので山に帰るね バイバーイ」

「ごめん、七海……」

「どうして君が謝るの?」

「だって、痛かっただろ?」

「初めは誰でもそうじゃないかな ゲームでしか見たことなかったから私も上手くできなかったし」

「俺にも責任はあるよ…… それと、気持ちに答えてあげられなくて……」

「それこそ日向くんが気に病むことじゃない 澪田さんとはお似合いだと思うな うん、私より全然いいよ その方が現実的?っていうのかな」

「ごめんね、みんな これでモノクマもいなくなったし続きしよ?」

「そうですね 気持ちを切り替えて遊びましょう」

「オレ、ちょっとトイレ……」

「左右田おにぃ、わかりやすー」

「七海さん、あとでアフターピル飲みましょう……!」

「そこまでしなくても大丈夫じゃないかな ゴムつけてたから」

「創ちゃん、なんで海水浴にまでゴム持ってきてたんすか……? もしかして唯吹と……」

「た、たまたまだよ!」

「七海さん、今日はごめんなちゃい…… あちしのせいで……」

「悪いのはモノクマだよ でもね、今回はこれで済んで良かったけど、人命に関わることならさすがに私でも庇ってあげられないから」

「モノクマもそれを分かっててアレをやらせたんでちゅ! 外道でちゅ! まさに外道でちゅ!」

「オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ! さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!」

「レストランに集まる時間か……」

ここから出ますか? → はい

「七海……!」

「もう、なに固くなってるの? 昨日はあんなことになっちゃったけど、日向くんはいつも通りでいいんだよ」

「あ、ああ……」

「じゃあ先行ってるね」

(七海のおっぱいすごかったな…… 昨日触らせてもらえば良かった……)

「千秋ちゃんの胸がすごかったのは分かるっすけど唯吹の胸を見てガッカリされるとさすがにヘコむっすよ」

「思ってない!」

「アレで挟まれたら気持ち良さそうっすよね…… 何をとは言わないっすけど」

「唯吹にもできるんじゃないか?」(海水浴の日から『唯吹』と呼ぶようになりました)

「して欲しいっすか?」

「えっ してくれるのか?」

「お断りっす! 創ちゃんが目覚めちゃって唯吹の胸で物足りなくなったらどーするんすか!
 きっと本能に駆られた創ちゃんが巨乳女子を片っ端から食い散らかして…… 想像しただけで恐ろしいっす!」

「俺にはお前の想像力が恐ろしいよ……」

澪田「創ちゃん 大変なことになったっす!」

澪田「なったっす!」

(外から唯吹の声が聞こえるな…… 大変なことってなんだ? まさか殺し合い……? そんなわけない……よな)

日向「今開けるよ」ガチャ

日向「は?」

(唯吹が二人に見える……!? 寝ぼけてるのか俺は!?)

澪田「なんか唯吹……」

澪田「二人になっちゃったっす……」

…………――――――――

九頭龍「どうなってやがんだ!?」

左右田「澪田って双子の姉妹がいたのか!?」

十神「俺達がこの島に来た時は間違いなく16人だった 何故今更になってもう一人出てくる……!」

澪田「双子の姉妹なんていないっすー!」

澪田「唯吹のキャラ設定にかけて断言するっす!」

弐大「無ッ! どういうことじゃあ!」

田中「魔界でさえ使用が禁じられた秘術に手を出したか……!」

ソニア「寝ている間に分裂したのですね!?」

花村「ありえないよ!」

罪木「し、心霊現象じゃないでしょうか……」

小泉「ドッペルゲンガーって聞いたことある…… 自分と同じ姿をしていて、それを見ちゃうと死ぬっていうやつ……」

左右田「ひぎゃああああああああああ!」

西園寺「今すぐ締め出そうよ!」

田中「ついに俺様の邪眼の力を開放する時が来たようだな!」

十神「幽霊だと? それだけはありえん」

終里「ちゃんと触れるぞ?」

花村「きっと夢でも見てるんだよ!」

七海「こういう時に何か事情を知ってそうなのって……」

日向「モノクマ!」

モノクマ「呼んだ? どうせ説明しろって言うんでしょ? お察しの通りボクの仕業です」

日向「やっぱり……!」

十神「どんな手を使った 別人が化けているのか?」

モノクマ「気になる? 特別サービスで教えてあげちゃおっかな ボクが用意した澪田さんは澪田さんです!」

十神「答えになっていない!」

モノクマ「『クローン』って言えばオマエラも納得するのかな? 肉体も人格も記憶も全く同じように『作った』からね」

十神「クローン……だと……」

終里「くろーんってうめぇのか?」

左右田「オメーはちょっとは話聞けよ!」

モノクマ「でもボクが作ったクローンだからね もしかしたら殺人を企ててるかも…… うぷぷ」

モノクマ「ボクが作った澪田さんは殺しても学級裁判はしないから人目を気にせず殺していいよ 今回はそういうイベントってことで」

九頭竜「つまりどっちかの澪田は偽物で、殺人を企ててるから誰かが殺される前に見極めて殺せってことかよ……」

澪田「唯吹は人殺しなんてしないっす!」

澪田「唯吹もしないっす!」

七海「本物の澪田さんを偽物と勘違いして殺してしまった場合はどうなるの?」

モノクマ「あ、そっか オマエラが本物だと思ってる澪田さんが死んじゃう場合もあったね」

モノクマ「その時はボクが作った偽物が本物に成り代わって引き続きこの島での生活を送ることになります」

モノクマ「その場合も学級裁判は行われません ボクにとってはどっちが本物かなんてどうでもいいからね」

狛枝「つまり本物の澪田さんを偽物と信じて殺してしまった場合は
   いつか殺人を犯すかもしれないモノクマの手先がボクらの中に潜み続けるってことになるよね」

狛枝「もしそんな状態で殺人が起きれば疑心暗鬼に陥ったボクらは簡単に間違った答えを出してしまうだろうね」

狛枝「まさに絶望的だよ でも、そんな絶望の中だからこそ」

日向「狛枝! なんでおまえがここにいるんだよ!」

狛枝「まだ話の途中なんだけど?」

左右田「オメーはいつからそこにいたんだよ!」

狛枝「あはは…… そうだよね みんなは澪田さんに注目してるしボクなんかがいたって気づくわけないよね……」

日向「いいから答えろ!」

狛枝「大変なことになってるってモノミが教えてくれてこんなボクでも力になれないかと思って頼んで出してもらったんだよ」

狛枝「ひょっとしたらボクが澪田さんに何かしたせいかもしれないしね」

狛枝「でも安心していいよ みんなが知ってること以上のことは誓ってしてないから」

日向「何が誓ってだ おまえの言うことなんて信じられるわけないだろ」

ソニア「でもこの件に狛枝さんが関わっていないのは確かだと思います」

十神「確かにな 俺達がどうにかできるレベルを遥かに超えてる」

狛枝「ボクはみんなに協力するために来たんだ さっきはあんな例え話をしたけどそんな展開ボクも望んでいないからね」

狛枝「モノクマが用意した偽物はなんとしても排除しないと 希望であるキミたちの中にそんなまがい物がいるなんて耐えられないよ」

西園寺「あんたさー、自分がしたこと忘れたわけじゃないよねー?」

左右田「今更信用しろって言われてもな……」

狛枝「その件については謝るよ ボクもどうかしてたのかもね」

九頭竜「謝って済む問題じゃねーだろ」

ソニア「狛枝さんもさすがに反省したんじゃないでしょうか だいぶやつれてますし……」

小泉「狛枝を庇うわけじゃないけど確かに辛そうね……」

罪木「栄養失調で倒れてしまいますよぉ……」

七海「今回はこれで許してあげたら? こんなみんなから恨みを買った状態で何かしても真っ先に疑われるだけだし、下手なことはしないと思う」

七海「澪田さん どう思う?」

澪田「千秋ちゃんは優しいっすねー いやー、あの時のことは今思い出しても寒気がするっすけど」

澪田「いざとなったら創ちゃんが守ってくれるんでオッケーっす!」

日向「二人をか……?」

狛枝「こんなボクにも優しくしてくれるなんて……」

七海「でも次何かあったら」

狛枝「今度こそ一生監禁……って言うんでしょ それくらいのことはボクにもわかるよ」

七海「一生は大袈裟だけど、この修学旅行が終わるまでは出られない……かもね」

左右田「ホントに反省してんのかよ…… 女子はぜってーこいつに近づかねー方がいいぞ」

十神「いや、こいつの場合何が動機になるか分かったものじゃない」

花村「男子の貞操も危険ってこと!? それはそれで……」

左右田「いやいや、澪田は危うく殺されるとこだったんだぞ!?」

狛枝「それはそうとさ ボクのせいで話題が逸れちゃったけど」

左右田「オイ、こいつ自分で話を戻したぞ」

狛枝「どっちの澪田さんが偽物かってことだよね」

七海「どっちが偽物かはっきりさせてどうするの?」

辺古山「どういうことだ」

七海「偽物だと分かったら殺しちゃうの?」

左右田「だって人殺しを企んでるやつかもしんねーんだぞ……」

九頭龍「それに殺してもオレ達には何のデメリットもねーらしいしな」

七海「うーん……」

終里「二人とも閉じ込めときゃいいんじゃねーのか?」

ソニア「それではあんまりです 狛枝さんと違い澪田さんは何も悪いことをしていませんから」

澪田「唯吹からも反対するっす!」

澪田「そうっすよ!」

左右田「どっちが本物か本人でも分かんねーのか?」

澪田「唯吹が本物っす!」

澪田「本物は唯吹っす!」

左右田「聞くだけ無駄だなこりゃ……」

ソニア「日向さんにも分からないのですか?」

日向「見た目は一緒だから話を聞いてみないと……」

左右田「いくらなんでも全く一緒ってことはねーだろ」

花村「服を脱いでみたらどうかな 特徴的なホクロとかがあれば手がかりになるかもよ」

小泉「やっぱりアンタがそれ言うのね……」

左右田「そうそう 例えば七海は右胸にホクロがあったよな」

七海「むっ どうして左右田くんがそれを知ってるのかな?」

左右田「べ、別に覗きとかしたわけじゃねーぞ? 前に海水浴した時たまたま目に入ったっつーか……」

小泉「たまたまどころかしっかり見てたでしょアンタ」

西園寺「女子の水着姿をイヤラシイ目で見てたよ―」

左右田「だー! なんでオレが責められる展開になってんだよ!」

花村「どうしてボクを呼んでくれなかったの?」

辺古山「左右田も呼んだわけではないがな」

七海「じゃあ体の特徴は澪田さん自身に見てもらうとして……」

十神「いや、モノクマの言ったクローンという話が本当なら体の特徴も全く同じとは考えられないか?」

十神「だとすれば後は本人の記憶に聞いてみるしかないだろう」

左右田「クローンとかマジで言ってんのか!? 倫理的にアウトだろ!」

罪木「澪田さんの遺伝子情報を元に細胞を人工的に培養したってことですよね……? そもそも技術的に可能なんでしょうか……」

ソニア「モノクマさんなら本当にやってしまいそうです」

狛枝「モノクマが言うには『肉体も人格も記憶も全く同じ』だったよね?」

十神「モノクマの言葉を全て信じるならそうだがそんなことまで可能だとは思えん」

七海「色々質問して別々に答えを聞いてみようよ」

…………――――――――

狛枝「全ての質問の答えが全く同じとはね……」

十神「どうなってる……」

小泉「知らなくてもいい日向の情報も沢山知っちゃったわね……」

左右田「完全に手詰まりだな……」

澪田「唯吹が本物なのは間違いないんすけどねー……」

澪田「唯吹が本物っす! ニセ唯吹に騙されちゃダメっす!」

左右田「なあ、せめて呼び方変えねーか? このままじゃ区別付かねーよ」

澪田「それなら唯吹が『真・澪田唯吹』っすね!」

澪田「あ、そうくるっすか? じゃあ唯吹は『超・澪田唯吹』っす!」

日向「強そうだな」

十神「では後は名札でも付けてもらうか」

真澪田「これでどっちがどっちか分かるっすね」

超澪田「唯吹が上ってことを証明するっす!」

左右田「それで結局どーすんだよ なんも解決してねーぞ」

七海「しばらく一緒に生活するしかない……と思う」

九頭龍「偽物がボロを出すまで待つってのか?」

左右田「その前に誰か殺されちまったらどうすんだよ」

七海「焦って間違った判断をしちゃったらそれこそ大変でしょ? 一回落ち着いて慎重になるべきじゃないかな」

ソニア「急いては事をうどん汁って言いますものね」

左右田「カレーうどんだと跳ねて染みになったら大変ですよね、ソニアさん」

日向「そこは訂正してやれよ……」

日向「ところで部屋はどうするんだ? 狛枝も戻って来ることだしコテージはもう一杯だけど」

七海「澪田さん二人が同じ部屋ってわけにはいかない……よね」

超澪田「ニセ唯吹と同じ部屋はイヤっす!」

真澪田「自分がもう一人いるなんてメチャクチャ気持ち悪いっすよ……」

超澪田「創ちゃんの部屋に泊まるしかないっすね」

左右田「お前らやっぱそういう関係かよ!」

真澪田「抜け駆けはズルイっす!」

日向「一日ずつ交代でいいんじゃないか?」

真澪田「それに賛成っす!」

超澪田「それが妥当っすね」

日向「じゃあ決まりだな」

左右田「日向、分かってんよな この件が丸く収まるかどうかはほぼオメーにかかってんだからな」

日向「わ、分かってるよ……」

七海「日向くんだけが気負う必要はないはずだよ」

七海「誰の問題かって言ったらそれこそ当人である澪田さんの問題だし、これはみんなで立ち向かうべき問題だよ」

真澪田「唯吹がなんとしてでも解決してみせるっす!」

超澪田「ニセ唯吹の悪事はスーパー唯吹が食い止めるっす!」

狛枝「とりあえずはまとまったってことでいいのかな?」

日向「そうみたいだな くそっ、なんで澪田なんだよ……」

モノクマ「澪田さんが二人いたら賑やかになると思ってね」

日向「まだいたのかよ」

「一つ言い忘れてたことがあったのを思い出したの」

「ただ殺すだけじゃツマンナイから、殺した人にはご褒美に『失った学園生活の記憶に関する事』をこっそり教えちゃいます!」

「それも一つじゃないよ? 生きている間に損壊させた部位一箇所につき一つ」

「つまりたくさんいたぶって殺せばそれだけ情報が手に入るってこと 聞き覚えのある言葉で言えば部位破壊報酬ってやつだね」

「本物か偽物かは問わないから思い切ってやっちゃって!」

「うぷぷ 結果が楽しみだなあ~!」

「唯吹が本物って誰も信じてくれなかったっすね」

「そうだな……」

「創ちゃんもホントに分かんないっすか?」

「ああ……」

「唯吹は唯吹っすよ? こんなに近くで見ても分かんないっすか?」

「…………」

「よーく見るっす!」

「ちゃんと見てるよ」

「唯吹の匂いは分かるっすか? 味なら分かるっすか? どうしたら信じられるっすか?」

「俺にも分からない……」

「じゃあ、ちゅーしよ?」

「外見も中身も本物と全く同じ偽物がいたとしたらそいつは果たして偽物と呼べるのだろうか」

「本物を本物たらしめる要素とは一体何なのだろうな」

「先に生まれたら本物か?」

「周囲の人間が本物と呼べば本物か?」

「闘いで勝った方が本物か?」

「『本物でありたい』と、より強く願った方が本物か?」


おまえは何が言いたいんだよ。


「俺はな、本物も偽物もただの妄想だと思っている」

「目に見えるものだけで推し量り、それが正しいと決めつける そんなものは妄想に過ぎない」

「比べることに意味は無い どこまでも個があるだけだ」

「偽物が本物を語って何が悪い 本物が時に自分を見失って何が悪い」

「結局はそんな自分を、そんな誰かを、受け入れられるかどうかなんだ」


つまりこう言いたいのか? 「どっちの澪田も澪田なんだから受け入れろ」って。


「ふっ 今のは俺の話だ 忘れろ」

「おまえはおまえが思うように行動すればいい」

モノクマはこう言った。

「『クローン』って言えばオマエラも納得するのかな? 肉体も人格も記憶も全く同じように『作った』からね」

確かに言った。作った、と。

神が人間を作るように。

人間が模型を作るように。

人間にそっくりのアンドロイドでも作るように。

自分にそっくりのゲームキャラでも作るように。

そんな風にあっさりと「作った」と言った。

十神の言うことは分からないでもない。

でも、今存在している澪田唯吹のどちらか一人は確実にモノクマが作り出した澪田唯吹なんだ。

その事実を受け入れて両方を澪田唯吹だと思って接しろって言うのか?

無理だ……そんなの。

俺が唯吹だと思って接する人間は二人いて、一緒に過ごす時間も思い出も全て二等分されてしまう。

唯吹は俺のことを好きでいてくれてるのに、その気持ちは二つの内の一つになってしまう。

まるで切ったスイカの中身がスカスカだったみたいな。

頑張って息を吹き込んだ浮き輪に風穴が開いていたみたいな。

そんな心地の悪さ。

それを受け入れろって言うのか?

俺と、唯吹と、もう一人の唯吹が。

それならいっそ、モノクマの言った通り本当に偽物が殺人を企てていて仲間の誰かを殺してくれた方が……。

って、俺は何を考えてるんだ……。

……殺人を企て?

唯吹自身も言ってたよな……。

解決する、食い止めるって。

解決ってのは偽物であるもう一人の自分を殺すことに他ならないんじゃないか?

偽物の方だってそうだ。

本物を殺して自分が本物に成り代わることが狙いのはず。

いや、もしかしたら偽物の本人でさえ自分を本物だと思い込まされているのかもしれない。

俺達を島に閉じ込めたやつが学園生活の記憶を丸々奪ったというのが本当ならモノクマにそれくらいできてもおかしくない。

そして、本物を殺した後で思い出したように他の仲間も殺すのかもしれない。

それだけはなんとしても阻止しないと……。

そう言えば小泉が言ってたっけな……。

ドッペルゲンガー……自分と同じ姿をしていて……そいつを見ると……――――

ふと目が覚めたがまだ辺りは真っ暗だった。

どうやら考え事をしている内に寝てしまったらしい。

ベッドは唯吹が使っているので俺はソファーで横になっていた。

そのせいか寝心地が悪くて目が覚めてしまったのかもしれない。

唯吹のことが気になった。

こんな時じゃないと寝顔見れないしな……。

そう思ったがいなかった。

「唯吹……!?」

嫌な予感がしてすぐに唯吹のコテージへと走った。

ドアを開けると一人の人影がもう一人の人影を押し倒しているところだった。

「唯吹!」

「創ちゃん!? やったっす! ニセ唯吹を倒したっす!」

「やったって…… まさか殺したのか……?」

「どうっすかね……? 結構強くやっちゃったんで…… でも唯吹はこの通り無事っすよ!」

窓や開いたままのドアから差し込む灯りでぼんやりと中の様子が見えた。

唯吹が押し倒しているもう一人の唯吹は体を縄で縛られ、頭からは血を流しぐったりとしている。

その様子からおそらく気を失っている……だけだと思いたい。

頭を殴って気絶させた上で目を覚ましてもいいように縄で縛ったんだろう。

「無事で良かった……けど、こっちの唯吹を手当しないと!」

「な、なんでっすか!? 唯吹が本当の唯吹っすよ!? だから殺すつもりで殴ったんすよ!?」

「俺には……おまえが本物なのか……分からないんだよ……!」

「っ…… 唯吹、超頑張ったんすよ……? 寝てたら急に鍵が壊されてドアが開いて…… 武器とかロープとか持ってるのが見えて……」

「ああ……」

「怖かったっす……! メチャクチャ怖かったっす……! でもここでやられたらもう創ちゃんに会えないと思って……! 必死でっ!」

「ああ……でも……!」

「なんで分かってくれないんすか!? どうしたら信じられるっすか!? 唯吹がどんな味だったかよく思い出すっす!!」

強引な口づけだった。

それと同時に唯吹の顔が涙で濡れているのが分かった。

思い出すまでもなく覚えている。

唯吹と口づけを交わしたこと。

目の前の唯吹は間違いなく俺の知ってる唯吹だった。

震えているその細い体も、匂いも、感触も、何もかも。

おまえが本物だって認めてやりたかった。

頑張った、よくやったって褒めてやたかった。

でもそれは、少し前まで俺のベッドで寝ていた、そして今は血を流して倒れている唯吹も同じだ。

数時間前の俺は、目の前のそいつを間違いなく俺の知ってる唯吹だと感じていたんだ。

 ――闘いで勝った方が本物か? ――「本物でありたい」と、より強く願った方が本物か?

あいつの言葉を思い出しながら、答えを持たない俺は目の前の彼女を抱きしめることしかできなかった。

えぐい……

ヤンデレ唯吹ちゃんもそそる

小泉「大丈夫? 何かあったの?」

日向「小泉……」

小泉「そこに倒れてるのって……! すぐ手当しないと!」

超澪田「大丈夫っす! そいつは唯吹を殺そうとした偽物っす!」

小泉「えっ そうなの……? 日向! どうなの!?」

日向「くっ…… 頼む……助けてやってくれ……」

超澪田「創ちゃん!?」

小泉「アタシ……蜜柑ちゃん呼んでくるっ!」

超澪田「今すぐ殺さないと! 唯吹の偽物!」

日向「落ち着け!」

超澪田「なんでっ!? なんでっすか!! 殺さないとっ!! 殺さないと、唯吹の偽物に創ちゃん取られちゃうんすよぉ!!」

辺古山「おい、何の騒ぎだ!」

ソニア「一体どうなされたのですか!?」

日向「止めるの手伝ってくれ!」

超澪田「嫌っ!! 嫌っすよぉ!! 創ちゃあああああん!!」

日向「傷の具合、大丈夫か?」

真澪田「全然大丈夫っす! 蜜柑ちゃんが言うには軽い脳震盪と裂傷だけで骨や神経系に異常はないらしいっす」

日向「罪木が言うならそうなんだろうな 安心した」

真澪田「パックリいっちゃわなくて良かったっすよ 創ちゃんが止めてくれたって聞いたっすけど」

日向「殺すとまで言ってたからな……」

真澪田「そりゃそうっすよね 唯吹もほとんど殺すつもりだったっすから」

真澪田「ホントは寝込みを襲うはずだったんすけどね? 唯吹は顔とスタイルだけじゃなくて耳も良いのをすっかり忘れてたっすよ……」

真澪田「唯吹は唯吹でもあいつは偽物っすけど! 次は絶対ヘマしないっす! 創ちゃんに貰った命っすから!」

日向「なあ、そんな危険なことやめにしないか?」

真澪田「何言ってるんすか!? 創ちゃん達には分からなくても唯吹にはあいつが偽物って分かってるんすよ!?」

真澪田「それに偽物だって唯吹の命を狙ってくるに決まってるっす!」

真澪田「だって本物の唯吹が死んだらあいつが本物になれるんすから!」

日向「どっちも本物……だとしたらどうする?」

真澪田「えっ…… どういうことっすか……?」

真澪田「唯吹はこれまで過ごしてきた記憶全部持ってるんすよ? この島に来た時のこともちゃんと覚えてるっすよ? それは本物だからってことっすよね!?」

日向「その記憶を全てそのまま、もう一人も持ってるとしたら?」

真澪田「うーん、難しくて分かんないっす…… でも唯吹が偽物なんてことあるんすかね……」

真澪田「もしっすよ? もし唯吹が偽物だったら創ちゃんは唯吹のこと変わらず好きでいてくれるっすか?」

日向「いや、俺が言いたいのはどっちも本物だったらって話で……」

真澪田「どっちも本物って言うのが意味不明っす! 作られた方は絶対偽物なんすから!」

日向「その偽物がどっちかを証明する方法がないって言ってるんだよ」

真澪田「だったら唯吹が偽物をやっつけて証明してみせるっす!」

日向「駄目だ、俺にとってはどっちの唯吹も唯吹なんだ…… 唯吹がもう一人を殺したら俺も一緒に死ぬ」

真澪田「そんなことはさせないっす! 偽物を倒して創ちゃんも死なせない!」

真澪田「それがトゥルーでハッピーなエンドっす! それだけは何があっても譲れないっす!」

日向「思ったより強情だな……」

真澪田「どうせ創ちゃんには唯吹の気持ちなんて分からないっす」

日向(目が覚めたら自分の隣にもう一人自分がいた、なんて普通に考えたらフィクションだからな……)

日向(でも先に襲いかかったこの唯吹だって殺すかどうかまでは最後まで決められずにいたんじゃないのか?)

日向(初めから殺すつもりなら刃物を用意すればより確実に殺せたはずだし……)

日向(血で服や部屋が汚れるのが嫌だったから気絶させた後で縄で首を絞めるつもりだったのかもしれないけど)

日向「とりあえずみんなと話し合ってみないか?」

日向「――――…… 騒ぎを聞きつけて出てきてたやつはもう知ってたと思うけど、以上が昨日の深夜にあった出来事だ」

七海「ごめん…… みんなで立ち向かうべき、なんて言っておいて澪田さんを一人にさせちゃって」

超澪田「千秋ちゃんは悪くないっす! 悪いのはニセ唯吹っす!」

日向「悪いのは俺だ…… 俺がちゃんと見てれば」

真澪田「創ちゃんは悪くないっす! 悪いのはモノクマっす!」

九頭龍「殺られる前に[ピーーー] んなもん常識だ」

左右田「どこの世界の常識だよ……」

十神「とにかく、次にやるべきことが決まったな 澪田は必ず誰かと相部屋になることだ これはリーダー命令だ」

小泉「アンタがリーダーだったことすっかり忘れてたわ……」

十神「俺は決めたぞ この『超高校級の御曹司』十神白夜がいる限り一人も犠牲者は出させんとな」

十神「モノクマが作ったという澪田の偽物が人殺しを企んでいようとそいつが何もできないよう見張っていれば何も問題あるまい」

七海「その意見には賛成だけど問題は誰と相部屋になるか……だよね」

弐大「終里か辺古山なら適任だとワシは思うが」

花村「ぼくの部屋でも問題ないよ」

左右田「色んな意味で大アリだっつーの!」

終里「寝てても返り討ちにしてやる!」

辺古山「私も問題ない」

七海「じゃあ日向くん、終里さん、辺古山さんの部屋をローテーションってことでどうかな」

日向「ああ、わかった」

辺古山「いいだろう」

花村「えっ ローションがなんだって?」

終里「それってうめぇのか?」

左右田「もうツッコまねーからな!?」

日向(それはツッコんでるんじゃないのか?)

七海「えーと……後は澪田さん次第なんだけど」

真澪田「まあ……スッキリはしないっすけど白夜ちゃんやみんなを信じて一先ず休戦するっす」

超澪田「唯吹もニセ唯吹と同じ意見っす」

七海「じゃあ、決まりだね」

日向(俺が言っても聞かなかったのにさすがだな十神……)

いつもと同じように眠りに就き、次に目を覚ましたら自分は「偽物」だった。

隣では「本物」の自分が寝ている。

自分には名前も、身体も、記憶も、ちゃんとあるのにその全てが無意味なのだと直感で理解した。

生きているのに自分が存在しない。

自分が存在したい場所には紛れもない「本物」がいる。

その上、自分はどうしようもなく「偽物」なんだ。

誰かに言い聞かされたわけでもないのにそんな感情が次々湧き上がってくる。

寒気がして身体が震える。

横になっているのにめまいがして宙に浮かんでいるような錯覚を覚える。

色んな事が起こる島だったけどこんなのはあんまりだ。

嫌な夢なら直ぐにでも覚めて欲しい。

目をぎゅっと閉じて何かに必死に祈りを捧げる。

仏様でも神様でも頼れそうなものなら何でもいい。

なんで自分がこんな目に合わないといけないのか。

これまでは順調だったのではないか。

色々散々な目には遭ったけど誰一人欠けることなくここまでやってきた。

大好きな人とは恋人同士になれた。

ここを無事に出られたら一緒にバンドを組むって約束もした。

でも、それはもう自分のことではない。

自分が掴んだ幸せのはずなのに。

その幸せを得るべき人間が自分ではない。

気づいたら自分の手には何も残っていない。

こんなの、死ぬことよりも怖ろしいではないか。

いっそ死んでしまおうか、と考えたとき自分の中で何かが弾けた。

自分はこの人に会うために生まれてきた、と言えるような人にやっと出会えたんだ。

死んでたまるか。

本物がなんだ。

全て奪って自分が幸せになるんだ。

自分には失うものなんて何一つ残っていない。

目を覚ました本物に「おまえは唯吹の偽物だ!」と言ってやるんだ。

そうでなきゃ、恋人に合わせる顔なんてこれっぽっちもない!

正直書いてて辛い

見てる方も辛いわ
モノクマのやり口のえぐさが原作に迫ってて怖い

最初の雰囲気との落差で辛さ倍増してるね

正直興奮している自分がいる

十神「喜べ、今夜はパーティーを開催する事にした 朝まで一晩中、盛大にな」

開催場所は狛枝を監禁していたホテルの離れにある旧館の大広間に決まった。

狛枝「会場の掃除当番はくじ引きで決めない?」

十神「おまえが一人でやれ 償う気持ちがあるならな」

狛枝「えっ ボク……?」

狛枝は一人で会場準備、花村はパーティー料理の仕込みのため旧館へ向かい、残りは各自解散となった。

「ペコちゃんはいつも自分の部屋で竹刀振り回してるんすか?」

「ああ、日々の鍛錬はこの島に来る前も後も怠っていない」

「頭がさがるっすね― 唯吹はしばらくギター触ってないっすよ 唯吹の予想ではまだ行けない3番目の島にライブハウスがあると見たっす!」

「あのモノミが2番目の島の前にいるモノケモノをどうやって倒したのかは相変わらず謎だが、その内行けるのではないか?」

「そうなったらみんなを唯吹のライブに招待するっすよ! その時くらいはもう一人の自分とも仲良くしてやってもいいっすかね」

白夜ちゃんやみんなの手前「休戦」なんて言ったっすけど唯吹はまだ諦めてないっすよ!

この島を出た後では手遅れっすから、何としてもこの島にいる内に唯吹の手で殺すしかないっす!

そしたらその後は思う存分、創ちゃんと愛を深め合ったりしちゃったりして…… ムッフッフッフ……フが4つ。

なーんてこと考えたら創ちゃんに会いたくなっちゃったっす!

「創ちゃんとこ行ってくるっすー!」

「ああ(この澪田が人殺しを企んでいるとは到底思えないな)」

外に出ると隣にある自分のコテージのポストに目が止まった。

不自然に白い便箋が突き出ている。

あれ? 唯吹に届け物っすかね。

何故だか寒気がした。


『偽物の澪田さんへ』

『0時ちょうどにパーティー会場で停電が起きます』

『その時、誰かを殺してください』

『右端のテーブルの裏側に暗視スコープとナイフが隠してあります』

『暗闇でも見ればすぐ分かるようにしてあるので活用してください』

『誰も殺せなかった場合はあなたが偽物だとみんなにバラします』

『がんばってね! モノクマより』


またも強烈な寒気がした。

モノクマちゃんが言ってた「偽物が殺人を企ててるかも」ってこういうことだったんすか……。

どこまで唯吹を追い詰めれば気が済むっすか……!

しかもこれ、本物が先に見つけてたら即アウトじゃないっすか!

誰かを殺すって……一人しかいないっすよね……。

二人いる唯吹はどっちかを殺しても学級裁判とやらはしないみたいっすけど、他の仲間を殺したら誰にもバレずに逃げ切らなきゃいけないっすから。

それにもう一人の唯吹がいなくなればこんなふうに脅されることもなくなるっす!

あはは……唯吹って結構ツイてるんすね……。

こんなチャンスが巡ってくるなんて、神様が唯吹の願いを聞き届けてくれたのかもしれないっす。

こんな偽物の唯吹でも幸せになる権利はあるってことっすよね?

こうなったら何が何でも本物を殺してやるっす。

疑われてもいい、バレもいい、創ちゃんに嫌われてもいい。

唯吹がただ一人の唯吹になれば、いくらでも明日は来るんす!

それが唯吹にとって、たった一つの希望っす!

十神「全員集まったようだな これよりパーティーを開始する」

終里「いよっしゃああああ! 食うぞ―!」

花村「じゃんじゃん作って持ってくるからじゃんじゃん食べてね!」

左右田「モノクマが初めて現れた時とは比べ物にならないくらい団結してたな こんなあっさり全員揃うなんて」

小泉「狛枝のせいで殺し合いが現実味を帯びちゃったからね」

狛枝「ボクのお陰ってことかな? ははっ、なんだか恐縮だなあ」

七海「誰か狛枝くんの口を塞ぐ物持ってる?」

罪木「包帯ならありますけど……」

七海「狛枝くん、最後に何が食べたい?」

狛枝「本当にごめん……」

日向(七海のやつ、今夜一晩中寝れないせいかだいぶ気が立ってるな……)

ソニア「狛枝さんの件だけじゃなく、澪田さんの件もありますからね」

辺古山「双子と思って仲良くできないものか?」

超澪田「双子とは違うっすからねー……」

真澪田「自分がもう一人いる気持ちなんてみんなには理解できないっすよ……」

辺古山「そうだな…… すまなかった」

日向「ところで十神 おまえ熱心にみんなのボディーチェックしてたけど、あれは何だったんだ?」

十神「決まってるだろ 凶器を持ち込ませないためだ 俺が危険だと判断した物は全て鍵付きのケースに保管してある」

日向「だからナイフもフォークも無いのか…… 食べづらいどころの騒ぎじゃないな……」

十神「割り箸で我慢しろ」


日向(料理が食べづらいことを除けば楽しいパーティーだった)

日向(こんなふうにしている内は嫌なことは忘れられる)

日向(澪田の件が丸く収まって、モノクマが消えてくれれば申し分ないのにな)

もうすぐ0時だ。

激しさを増す心臓の鼓動に合わせてズキズキと頭が痛む。

その時、エアコンのある方からピピッという電子音が鳴り……。

真っ暗になった。

小泉「うわっ、停電だよ!」

左右田「おいっ、何も見えねーぞ!?」

悲鳴や逃げ惑う足音が暗闇の大広間に響き渡る。

自分がやることはもう決まっている。

目の前のテーブルのテーブルクロスを捲って中を見た。

テーブルの裏側に蛍光色に光るものがある。

手を延ばすとモノクマの手紙にあった通り、暗視スコープとナイフが貼り付けてあった。

大丈夫、落ち着いてやれば出来る。

なるべく静かに剥ぎとってそれぞれを身に付ける。

ナイフを持つ手が震える。

澪田「ま、真っ暗だよ! もうお先真っ暗だよっ!」

そこに自分の姿が見えた。

声も姿も自分と全く同じもう一人の自分。

このナイフをあいつの心臓に突き刺せばこの悪夢は終わる。

一度殺されかかった時、あの自分はどういう気持ちだったんだろう。

怖かったに違いない。メチャクチャ怖かったに違いない。

他ならない自分だからこそ、写し鏡のようにその気持ちが伝わった。

そのせいで殺し損なった。

死ぬ事と同じように殺す事が怖かった。

でも、今度は怯んだりしない。

もう一人の自分に静かに歩み寄る。

ナイフを強く握りしめ、そして……。

背中に鋭い痛みが走った。

身体の芯が焼け付くように痛い。

え……刺された……?

息がかかりそうなくらい近くで声がした。

「みつけたよ、偽物さん……」

直後、大広間に明かりが戻った。

(どっちかの)澪田あああああ!!

今回ばかりはマジで狛枝のファインプレーだな

狛枝「あはははははははははははははははははははははは!」

日向「狛枝!?」

狛枝が唯吹にナイフを突き立てて高笑う光景に誰もが悲鳴や驚きの声を上げた。

狛枝「ついに澪田さんの偽物を仕留めることができたよ」

狛枝「澪田さんの言葉を返してあげようかな ボクの見事な作戦勝ち、だね」

狛枝「十神クンがボクの目論見通りパーティーを開いてくれたおかげで簡単に事が進んだよ」

狛枝「十神クンのファインプレーだね!」

十神「俺が受け取った脅迫文はこのためにおまえが俺に宛てたものだったのか……!」

十神「今夜殺人が起きると脅し、俺達を一箇所に集めて偽物をみんなの前に突き出す為に……!」

日向「その唯吹が偽物ってどういうことだよ! おまえには偽物が分かってたのか!?」

狛枝「分かってた、とかそんな大層なもんじゃないよ」

狛枝「ボクは澪田さんに手紙を宛てたんだ」

狛枝「0時ちょうどに停電が起きるからそれに乗じて誰かを殺せ 殺さなかったら偽物だとバラす、ってね」

狛枝「信じやすいように差出人の名前にはモノクマを使ったよ」

狛枝「澪田さん、今も持ってるかな…… ああ、あった ほら、この手紙だよ」

日向「手紙を出せたってことはやっぱり偽物が分かってたんじゃないのか?」

狛枝「いや、それがボクにも分からなかったよ……」

狛枝「だからどっちでも受け取れるよう、手紙を澪田さんのコテージのポストに入れておいたんだし」

狛枝「それにね、別にどっちが受け取っても良かったんだ」

狛枝「本物が受け取ったらこの作戦は失敗しちゃうけど、その時は次の作戦を考えればいいだけだから」

狛枝「でもこうして出てきてくれたってことはボクは運が良かったみたいだよ」

日向「だけど、どうして手紙を受け取ったのが偽物だって分かるんだよ!」

狛枝「あれ? まだ分からないの?」

狛枝「受け取ったのが本物なら後ろめたい事なんてないんだから『こんなのただのイタズラだ』ってみんなに相談すればいいだけ」

狛枝「受け取ったのが偽物だったからこそ、バラされたくないから殺人に及んだんでしょ?」

狛枝「きっと本物を殺す良いチャンスだと思ったんじゃないかな?」

日向「じゃあ偽物は自分が偽物だと知った上で俺たちに嘘をついていたって言うのか?」

狛枝「ボクはそうじゃないかと思ったんだ」

狛枝「さっきボクはどっちが偽物か分からなかったって言ったけど少し予想はしていてね」

狛枝「もう一人の自分を先回るような言動をしたり、事件初日からいきなりもう一人の自分を殺す決断をしたり……」

狛枝「本物になりたい、本物より本物らしくありたいという本物への強い執着があるからこそやりそうなことじゃない?」

狛枝「実際そうだったんでしょ? 真・澪田唯吹さん」

狛枝「あっは! 『真』なんて言っておきながら偽物だったなんて笑えるよねえ!」

狛枝「全部ボクの勝手な思い込みかもしれなかったけど、ボクの勘も捨てたもんじゃなかったってことかな」

狛枝「それにボクが偽物だと思ってる方の澪田さんが辺古山さんと相部屋だったのも運が良かったよ」

狛枝「辺古山さんのコテージのすぐ隣にある澪田さんのコテージのポストに手紙を入れておけば気づいてもらえる確率が高いからね」

狛枝「偽物にとってはその手紙に気づいちゃったのが運の尽きだよねえ……」

狛枝「ま、もし気づいてもらえなくてもパーティーが始まるまでにどっちかの澪田さんには何とかして渡すつもりだったけど」

狛枝「作戦が不発で終わっちゃったらせっかくの準備が全部無駄になっちゃうもん」

日向「じゃあ停電を仕組んだのも、凶器を用意したのも……」

狛枝「そう、全部ボクの仕業」

十神「これは暗視スコープか? そんなものロケットパンチマーケットにはなかったぞ」

狛枝「ボクが全部回収しちゃってたからね」

十神「それよりどうやって持ち込んだ!」

狛枝「さっき見せた手紙にも書いてあったでしょ?」

狛枝「テーブルの裏側に隠しておいたんだよ パーティーが始まるより前にね」

狛枝「夜光塗料を目印にしておいたから暗い中でも見つけやすかったと思うよ」

狛枝「それと勿論、ボクが使う分の暗視スコープとナイフも別のテーブルに隠しておいた」

狛枝「会場の準備はボク一人だったから時間もたっぷりあったし……そうそう、停電もどうやって起こしたか知りたい?」

真澪田「っ……」

日向「まだ息がある!」

狛枝「当たり前でしょ? モノクマが言ってたこと忘れたの? 即死しない程度の致命傷を与えるつもりでナイフを振るったよ」

日向「なあ、唯吹 偽物って本当なのか? おまえはそれを知ってたのか?」

真澪田「あはは……バレちゃったっすね……ホントは最初から分かってたっすよ……」

日向「言ってくれたら俺が相談に乗ったのに……!」

真澪田「だから言ったじゃないっすか…… 創ちゃんには偽物の唯吹の気持ちなんて分からないっす……」

日向「だけど、おまえも……唯吹なんだよな……?」

真澪田「唯吹は唯吹の偽物っす…… だから本物を殺さないと唯吹になれないんす……」

日向「そんな……」

狛枝「偽物の自白も聞けたことだしもういいよね?」

日向「は……?」

狛枝が唯吹の背中からナイフを引き抜いた。

それと同時に血が噴き出し、唯吹の服や床を赤く染め上げる。

そして狛枝はナイフを振りかざし、今度は唯吹の太腿に深々と突き刺した。

唯吹が痛みに悲鳴を上げる。

日向「狛枝! 何してるんだよ!」

狛枝「何って、見て分からない? 傷めつけてるんだけど」

狛枝がナイフを引き抜いてまた刺そうとする。

日向「やめろ!」

狛枝「いてっ」

日向「誰か狛枝を押さえてくれ!」

狛枝「あーあ、せっかくモノクマから情報を聞き出すチャンスなのに棒に振っちゃっていいの?」

日向「なんで殺さなちゃ駄目なんだよ! 一緒に生きていく方法だってあるだろ! みんなだってそう思うよな!?」

狛枝「ふーん、それがみんなの答えなんだ」

狛枝「でもボクの役目はもう十分果たしたよ その傷じゃどの道もうすぐ死ぬんだ」

日向「やってみなくちゃ分かんないだろ!」

罪木「血が止まりませぇぇん! 心臓に近い動脈をいくつも切られてるみたいでどんどん溢れてきちゃいますぅぅ!」

日向「唯吹!」

真澪田「なんで唯吹がこんな目に遭わなきゃいけないっすか…… なんか悪いことしたっすか……」

日向「なんとか助けてやれないのかよ……! 誰でもいい……この際モノクマだって!」

モノクマ「あっちゃー! やってしまいましたなあ!」

モノクマ「これはオマエラが勝手にやったことだからね ボク知ーらない」

日向「だいたい偽物ってなんだよ! こんなのおかしいだろ!」

真澪田「唯吹が今までしてきたことは何だったんすか…… 何の意味もなかったんすか……」

日向「そんなわけないだろ! 偽物だって言うけどおまえだって間違いなく唯吹だよ! おまえが認めなくても俺が保証する!」

真澪田「創ちゃんが認めてくれるならこうなる前に言えば良かったっすかね…… まだ死にたくないっすよ創ちゃん……」

日向「唯吹……」

真澪田「創ちゃんとの思い出まだまだ足りないっす…… セックスだって4回しかしてないっすよ……」

日向「ああ……ごめん…… 近くにいたのにおまえの気持ちに気づいてやれなかった…… 守ってやれなかった……」

真澪田「こんな最期あんまりっすよ…… 殺そうとしたからバチが当たったんすね……」

真澪田「本物を差し置いて自分だけ幸せになろうとしたから……」

真澪田「唯吹はどうせ偽物っすから…… このまま死んで……初めからいなかったみたいに……」

日向「いるよ…… 確かにここにいる」

日向「そうだ唯吹、前に言ってたよな 本当の自分なんてどこにもいない、今ここにいる自分だけが自分だ、って」

日向「本物にこだわる必要なんてなかったんだ ちゃんと触れられるし、話だってできる それが……『ここにいる』ってことだろ」

真澪田「唯吹って無意識に大事なこと言ってたんすね……」

日向「あれ無意識だったのか……」

真澪田「でも……忘れた方がきっと楽っすよ……」

日向「忘れない、絶対に」

超澪田「唯吹も忘れないっす 例え偽物でも、自分の事みたいに辛いっす…… 全部……一緒だったんすね」

超澪田「唯吹ちゃんの分も唯吹がいっぱい思い出作るから、幸せになるから、創ちゃんも絶対幸せにするから!」

超澪田「だから……そんな悲しい顔しないで……」

真澪田「はは……やっぱり死ぬんすね、唯吹…… バイバイ…… 創ちゃん、唯吹ちゃん、みんな……」

真澪田「バンド作ったら……唯吹のために一曲作って聞かせて欲しいっす……」

超澪田「作るっす! 一曲と言わず100曲くらい作るっす!」

真澪田「一曲でいいっすよ…… その代わり悲しい曲はダメっす…… 演っててみんなが楽しくなるような曲…… 約束っすよ……」

超澪田「うわーん! そんな約束できないっすよー! 悲しくなるに決まってるっすー!」

真澪田「ノープレっす……」

真澪田「創ちゃん……お別れのちゅー……」

床に出来た血溜まりの中で俺は唯吹を抱き続けた。

唯吹は最期まで「死にたくない」と言って泣いていた。

そして時間が許す限り何度もキスを交わした。

でも、それも長くは続かなかった。

自分の手の中で命が失われていく感覚を味わった。

やがて唯吹の細い身体は徐々に体温を失っていった。

唯吹との色んな思い出が頭を巡った。

全部思い出すのに長い時間は必要なかった。

思い出が足りないと唯吹は言ったが俺も同じ気持ちだった。

落ち着いて考えられる状況にあったならこんな結果にはなっていなかっただろう。

時間をかけて気持ちを整理すればきっと殺し合いになんてならなかったはずだ。

結局、「自分や誰かを受け入れられるかどうか」という十神の言葉通りだった。

本物は偽物を受け入れられず、偽物は偽物である自分を受け入れられず、俺は二人を受け入れられなかった。

たぶん、一番悪いのは俺だ。

いや、モノクマの次に、か。

狛枝は狛枝で自分の信念に従って行動した。

その結果、もしかしたら後に起こりうる災厄を事前に食い止めることができているのかもしれない。

勿論、それを確かめるすべなんて無い。

でも俺にはあいつを恨む権利はあっても責める権利まではないと思う。

俺はずっと決められずにいた。

二人の唯吹に対し、自分の中でどう整理をつけるのかを。

ありのまま受け入れる事もせず、偽物の気持ちを理解してやる事もせず、答えを誰かに求めるだけだった。

唯吹の近くにいた俺がもっとしっかりしていれば。

あの唯吹のことだから本当の双子のように仲良くもできたかもしれない。

デュエットだって組んだかもしれない。

それも今となっては全てが手遅れだった。

俺の腕で眠っている唯吹は血と一緒に生気も抜けきり、すっかり冷たくなっていた。

もう生きていた頃の面影は感じられず、まるで作り物のようだった。

元々華奢だった身体がさらに細く、抜けた血の分以上に軽く感じた。

隣に意識を向けるともう一人の唯吹がいる。

唯吹は俺の肩を抱いて、ずっと俺と一緒になって泣いていた。

俺には唯吹が悲しむ理由がはっきりとは分からなかった。

でもそんな姿を見ると、二人の唯吹はやっぱり憎み合うべきじゃなかったと思える。

もしかしたら一番後悔しているのは唯吹自身なのかもしれない。

それこそ、自分のせいで双子の姉や妹を失いでもしたかのように。

そんな唯吹を俺は愛おしく感じた。

俺は、俺を好きでいたまま死んでいった唯吹の為にも、唯吹を愛したいと思った。

それが餞であり、償いでもある。

俺は今日という日を澪田唯吹の命日、そして澪田唯吹に初めて「愛してる」と伝える日にすると決めた。

「またボクのおかげで二人の仲が深まっちゃったみたいだね」

「もしかしてボクって恋のキューピット?」

「でもさあ、ただ愛し合うだけのドラマなんて何が面白いの?」

「誰もが羨むような愛し合いの後には、目を覆いたくなるような壮絶な別れが付き物だよね」

「さあて、どんな手を使ってグチャグチャに引き裂いてやろうかな」

「うぷぷ! うぷぷぷぷ!」

壮絶な別れの後に愛し合いが来てるんだからいいじゃねーかモノクマよぉ

狛枝くんを活躍させられたことに満足したのと、
物語を進める上での狛枝くんの重要性を再認識させられる話だった。
あとこれ以上エグいことにならなくてよかったとホッとしてる。
エグくなるのは全部モノクマと狛枝くんのせい。

>>94
そうはクマ屋が卸さないらしいです。

モノクマ「おめでとう、狛枝クン! キミが一等賞です!」

狛枝「うん、わかったから 『失った学園生活の記憶に関する事』っていうのを早く教えてよ」

モノクマ「なんだよー、反応薄いなー…… ボクがせっかく盛り上げようとしてるっていうのに……」

モノクマ「はいはい、分かりましたよ キミは澪田さんの背中と太腿の二箇所を刺したから二つ質問していいよ?」

モノクマ「今はまだ教えられないこともあるけど答えられる質問だったら答えてあげるクマ」

狛枝「質問ねえ…… じゃ、日向クンの才能が何なのか教えてもらえる?」

モノクマ「日向クンの才能は……ありません!」

狛枝「えっ? じゃ、彼は希望ヶ峰学園の生徒じゃないの?」

モノクマ「それは質問クマ?」

狛枝「おっと、ごめん じゃあ、言い直すよ」

狛枝「なんで彼には才能が無いの?」

モノクマ「それは……希望ヶ峰学園の予備学科の生徒だからです!」

狛枝「予備学科……」

狛枝「それはつまり、本来は秀でた才能がなければ入れない学園の中にも、何の才能も持たない人が入れる学科があるってこと?」

モノクマ「そういうことだね あ、答えちゃった」

狛枝「なるほどね、よーくわかったよ」

狛枝「十神クンの体型があんなになっちゃってる理由もちょっと気になったけど、これは良い収穫と言えるね」

狛枝「で、その予備学科ってさ」

モノクマ「ダメー! 質問終わり! もう受け付けません!」

昨日の夜、パーティーの最中にあんな事件があって、それから料理に手を付けた人は終里を除いて一人もいなかった。

さすがにみんなもパーティーという気分ではなくなり、最後には俺と唯吹を残して解散した。

そしてその夜が明けた今朝も、レストランに集まったみんなの顔は浮かなかった。

十神「みんな、本当にすまん!」

十神「一人も犠牲者は出させないと言っておきながら…… これはパーティーを監督していた俺の責任だ!」

小泉「アンタが人に謝るなんて珍しいわね……」

ソニア「十神さんは悪くありません むしろ皆さんの為に良くやってくれていました」

小泉「そうよ 悪いのは狛枝じゃない」

狛枝「ボクは悪くないよ……」

球磨川『ボクは悪くない』

九頭龍「偽物をあぶり出して仕留めたんだ 狛枝の方こそ良く殺ったって言うべきなんじゃねーのか?」

左右田「俺もそれに賛成だわ…… だいたいよー……同じ人が二人いるっていう状況からして異常だったじゃねーか」

左右田「確かに死んじまった方は可哀想かもしんねーけどよ……」

七海「でもさぁ……あの澪田さんって本当に人殺しを企むような人だったのかな……」

辺古山「そんな人間には見えなかったな だが、どちらにしても人間であることに変わりはないだろう」

罪木「私達と何も変わらないれっきとした人間でした……」

七海「どんな人で何を考えていたか、なんて私達には分かりようがない」

七海「そして、どんな人か分かったところで私達のしたことは変わらない」

七海「だったらさ、私達がするべきなのは立ち止まることじゃなくて、前に進むことなんだよ たぶん」

日向(ちゃんと言い切ってくれよ……)

日向「七海の言う通りだ」

澪田「そうっすよ! 唯吹は唯吹ちゃんの分も生きるって決めたんす!」

狛枝「素晴らしいよ! 超高校級の才能を持つみんなが、人の死を乗り越えて自分が信じる希望へと突き進む! 」

狛枝「あぁ、なんて美しいんだろうね!」

狛枝「あ、ごめん…… 『みんな』じゃなかったね 一人だけ何の才能も持ってない人がいたんだった」

日向「それって、もしかして……俺のことか……?」

狛枝「昨日、モノクマに聞いちゃったんだよね…… 日向クンの隠された才能の秘密」

狛枝「なんてことはないよ 才能なんて最初からなかったんだ」

狛枝「日向くんは希望ヶ峰学園の予備学科の生徒……」

狛枝「つまり、何の才能も持たずに単なる憧れだけで学園に足を踏み入れた生徒だったんだ」

日向「そんな……!?」

おい、球磨川、お前はこっちこい

狛枝「あーあ、なんだかガッカリだなあ…… 少しでも日向クンに期待した過去の自分が恥ずかしいよ」

日向「俺が……何の才能もない……」

七海「日向くん、狛枝くんの言葉なんか気にしなくていいよ」

七海「一つの才能に拘らなくたって、日向くんには良いところいっぱいあるよ?」

七海「それに日向くんに助けられた人だっているし、私達にとってはかけがえのない大事な仲間だもん」

七海「だから、ね? そんなに自分を追い詰めなくていいんだよ」

七海「私を惚れさせた男だろ! ……とか、言ってみたり えへへ」

日向(恥ずかしいなら言わなきゃいいのに…… でも、ありがとな)

日向「ありがとう、七海…… でも、それは褒めすぎじゃないか……?」

モノミ「ミナサーン、3番目の島に行けるようになりまちたよ!」

澪田「創ちゃんには立派な才能があるっす! 唯吹をキュンキュンさせる才能が!」

澪田「名前をつけるならそう……超高校級のラブハンター!」

澪田「でーもー、他の女の子をキュンキュンさせちゃったらダメっすからね? きゅぴりん!」

モノミ「ミナサンが仲良く平和に暮らせるように……ってあれ!? 誰も聞いてない!?」

左右田「いや、もう一つあるぜ 超高校級のパンt

日向「わかったよ! もうわかったから!」

左右田「まだ打ってる途中だろ! 閉じ括弧くらい書かせろよ!」

モノミ「そうでちゅか…… あちしの扱いって……」

七海「みんな、モノミが何か言ってるよ」

左右田「オレらが澪田の件で大変なことになってる時、一度も出てこなかったよな」

狛枝「ボクはちょっとだけ世話になったよ」

モノミ「よかったでちゅ…… 存在ごとなかったことにされたのかと思いまちた……」

俺は唯吹と3番目の島の探索に来ていた。手を繋ぎながら。

澪田「イヤッハーーーーーッ!!」

日向「い、いきなり何を叫んでるんだよ! 驚かせるなって!」

澪田「叫ばずにはいられない圧倒的な事実っす!」

澪田「だって、ここってライブハウスっすよね!?」

日向「あぁ……そうみたいだな」

澪田「まさか、ライブハウスがあるなんてテンション上がりまくりっす!」

澪田「まさか、ライブハウスがあるなんてテンション上がりまくりっす!」

澪田「あれ、今もう一人唯吹いなかった?」

澪田「あれ、今もう一人唯吹いなかった?」

日向「全部おまえが一人で言ってるだけだぞ? ……大丈夫か?」

日向(なんかおかしなテンションになってるぞ……)

真澪田「全然どこも大丈夫っすよ!」

超澪田「全然どこも大丈夫っすよ!」

激澪田「あれ、またもう一人いた?」

爆澪田「あれ、またもう一人いた?」

日向(大丈夫じゃないみたいだな)

澪田「いやー、ライブハウスとなったら、唯吹が二肌か三肌くらい脱ぐしかねーっしょ!」

日向「骨だけになっちゃうぞ?」

澪田「イヤッハーーーーーッ!! みんなを素敵な気分にご招待ぃぃぃぃッ!」

澪田「たとえば、道端で拾った札束を写真に収めてツイッターに『お金拾った!超ラッキー!』ってつぶやきとともにアップした後、

   びた一文も使わず交番に届けたような気分っす!」

日向(さっぱりわからん)

日向「倉庫とかに楽器が置いてあるかもしれないな」

言うが早いか唯吹はすでにライブハウス内を駆けまわっていた。

日向(やっぱりみんなを招待してライブとかするつもりなんだろうか)

日向(まさかこの島で唯吹の生演奏が聞ける機会が訪れるとは思わなかった)

日向(ちょっと、いや、かなり楽しみだ)

日向(そういえば俺は前に唯吹にドラムを勧められたことがあったけ)

日向(気が向いたらちょっと触ってみるか)

モノクマ「はーい、いらっしゃーい!」

モノクマ「今、なんと、モノクマ謹製超大作映画を絶賛公開中なのです!」

モノクマ「これは見逃せない! なぜなら、見てくれないとボクが寂しいから!」

狛枝「なんだ、モノクマか」

モノクマ「狛枝クンのその冷たい目……ゾクゾクする……ハァハァ」

狛枝「用がないならどっかいってよ」

モノクマ「言ったでしょ! ここは映画館で映画を見るのは強制イベントなの!」

モノクマ「『アナと雪の女王』と『アメリカン・スナイパー』を足して割ったようなハイクオリティなドタバタコメディモンスターパニックホラー映画だぞ!」

狛枝「映画のタイトルとジャンルが一つもかすってなかったけど……」

モノクマ「いいからいいから!」

狛枝(モノクマがそんなにも見せたい映画ってなんだよ……)

…………――――――――

俺と唯吹が映画館に入ると、劇場へと続く扉が荒々しく開かれ、中から狛枝が姿を現した。

狛枝「映画が160分もあるなんて聞いてないよ!」

モノクマ「ア、アンケートお願いします……」

狛枝「数年にも思えるくらいに拷問的な退屈さだったね!」

モノクマ「頑張って作ったのに……」

俺と唯吹は黙って映画館を立ち去った。

十神「昨日は3番目の島を各々見て回ったはずだべ 何か役に立ちそうな物はあったか?」

日向(『だべ』?)

左右田「電気街見てきたけど外と通信出来そうな物はなかったな…… 船のパーツでもありゃ早ぇーんだけど……」

罪木「病院がありましたよぉ 怪我や病気になっても安心ですぅ」

狛枝「あはっ、いいね 病気になって罪木さんに看病してもらおうかな 看護服のお姉さんにご奉仕してもらうのがボクの夢だったんだ!」

罪木「ふぇぇえ!?」

花村「ぼくのキャラ……」

左右田「狛枝のやつ、十割増しで変態度上がってねーか?」

日向(もはや手に負えないな……)

日向「ライブハウスがあったぞ」

ソニア「それならわたくしも見ました 澪田さんが喜びそうな物が沢山置いてありましたよ」

澪田「あぁー…… ライブハウスっすかー……」

日向「なんだ? やけにテンション低いな 昨日はあんなに張り切ってたのに」

澪田「そっすねー…… でもどーせ唯吹の演奏聴いたって誰も盛り上がらないに決まってるっすよ…… もうどーでもいいっす……」

日向「急にどうしたんだよ 俺は楽しみにしてたぞ?」

澪田「いいっす…… 唯吹のヘタクソな演奏で創ちゃんの耳を汚したくないっす……」

日向(本当にどうしたんだ?)

十神「大した収穫はなかったってことか…… けど何も心配いらねーべ!」

十神「中央の島にあるカウントダウンがゼロになればこの修学旅行は終わるって占いに出てるべ! 俺の占いは三割当たる!」

狛枝「じゃあさ、七海さんの今日のパンツの色占ってよ」

十神「七海っちのパンツの色は~……ズバリ、白!」

狛枝「いいねえ じゃ、答え合わせといこうか」

七海「狛枝くん、お願いだからそれ以上近寄らないでもらえる?」

七海「ねぇ、みんなの様子なんか変じゃない?」

日向「ああ……十神に狛枝、それに唯吹も……」

七海「これってどういうことだと思う?」

日向「さぁ、俺に聞かれても……」

七海「私、なんだか眠くなってきちゃった ねぇ、日向くん 私と一緒に寝よう?」

日向「は?」

七海「日向くんはさぁ、いつも私のおっぱい見て何考えてるの?」

日向「み、見てない!」

七海「触りたいの? 触ってもいいよ、ほら」

日向「おまえまでどうしたんだよ! なんでこんな時に唯吹は何も言ってこないんだよ!」

澪田「千秋ちゃんの大きいおっぱいが好きなのは知ってるっす…… 唯吹は創ちゃんには相応しくないんす……」

日向「もう、どうなってんだよこれ!」

実際何色だったんだ?気になります

モノクマ「それはボクの映画を観たせいだね」

日向「またおまえの仕業かよ!」

モノクマ「ボクが作ったのは洗脳映画でね それを観ると人格が変わっちゃうんだよ」

左右田「映画ってあの数分間だけのクソつまんねー映像のことか?」

狛枝「キミは160分を数分って表現するの? ボクには理解できない価値観だね」

左右田「マジで数分だったぞ?」

十神「俺が観た映画も160分だったべ」

モノクマ「ボクが用意した映画は二種類あって、数分で終わっちゃう方は普通の映画、160分の方が洗脳映画」

日向「じゃあ七海もそれを観たってことか?」

七海「うん 眠くなって途中で寝ちゃったけど」

日向(寝てても効果があるって恐ろしいな……)

モノクマ「どんな人格が出るかは人それぞれ ボクが見たところ……」

モノクマ「狛枝クンは平気でセクハラをかましちゃう『ヘンタイさん』」

モノクマ「十神クンはおバカ発言で場を和ませる『オバカさん』」

モノクマ「七海さんは好きな人の前ではヌレヌレに発情しちゃう『ウサギさん』 ……ってところじゃないかな」

日向「待てよ 唯吹の名前が出てないぞ そもそも唯吹はずっと俺と一緒にいたから映画なんて見てないはずだ」

モノクマ「ああ、澪田さんのは特別でね ボクからのイヤガラ……じゃなかった、プレゼントだよ」

モノクマ「その名も『絶望シンドローム』」

モノクマ「インフルエンザのような高熱、めまい、吐き気などに襲われて思考が絶望的にネガティブになっちゃう症候群なんだ」

モノクマ「人に伝染ることはないし、ちゃんと看病してあげれば死ぬこともないけど、何日もそのまま放っておくと大変なことになるよ」

日向「なんだよ、大変なことって……」

モノクマ「例え体調が元に戻ったとしても、性格が一生ネガティブのまま固定されちゃうんだ」

モノクマ「そうなれば二度と前の明るかった澪田さんは見られないだろうね」

モノクマ「しかも日が経つにつれてどんどん悪化して自殺まで考えちゃうようになるよ まさに絶望的……ぶひゃひゃひゃひゃ!」

日向「治す方法はないのかよ!」

モノクマ「治す方法? そんなのないよ ボクなら治してあげられるけど、それには条件があってね」

モノクマ「その条件とは、誰かが他の誰かを殺すこと」

モノクマ「それがボクからオマエラに捧げる新たなる動機でーす!」

日向「ふざけるなよ! なんで唯吹ばっかり!」

モノクマ「キミら二人だけやたらと仲良いでしょ? それを引き裂いて絶望に突き落とすのがボクの役目だからね!」

日向「なんだよ……それ……」

七海「人格が変わっちゃった人達は元に戻せないの?」

モノクマ「洗脳映画を観て人格が変わっちゃった人はもう一回その映画を観れば元に戻るよ」

十神「今すぐ見せるべ! 俺は元々バカじゃなかったはずだべ!」

モノクマ「えー、嫌だよ 狛枝クンなんてイヤミ言うんだよ? ボクがせっかく……」

狛枝「ボクだってこのままは嫌だよ 人気ガタ落ちだよ」

モノクマ「じゃあさっきのと同じ条件でいいよ 誰かが他の誰かを殺す そうしたら観せてあげるよ」

日向「全部、その動機ってやつに繋がるのか……」

罪木「澪田さんの熱が上がってますぅ!」

日向「唯吹、大丈夫か?」

唯吹「ダメっす……」

罪木「病院の設備なら治すことは無理でも少しは楽にしてあげられるかも……」

日向「よし、すぐに連れて行こう」

唯吹の看病を罪木に任せて、俺は病院の休憩室で休んでいた。

こんなことになるんだったら俺の方から唯吹を突き放してやるべきだった。

俺と仲良くなったばかりにモノクマの標的にされ、塞ぎこんで、最終的には自殺する。

唯吹は死んでしまったもう一人の唯吹の分も生きるって、幸せになるって言ってたのに。

これじゃあ、まるっきり正反対じゃないか。

俺が好きだった唯吹。

筒抜けに明るくて、常にハイテンションで、俺を好きだと言ってくれた唯吹。

そんな彼女はもうどこかへ行ってしまった。

しかも元に戻すには誰かを殺せだって?

唯吹のことだけじゃない、洗脳映画で人格が変わった三人。

人格を戻す為に、七海はまずありえないとしても狛枝が殺人に及ぶ可能生だってある。

その場合、標的にされる可能性が高いのは高熱でまともに動けない唯吹。

その上ネガティブになっているせいで、自分から進んで死を受け入れるかもしれない。

狛枝の性格を考えれば「希望を失った彼女に生きている価値なんてないよね」とか言いそうじゃないか。

何より狛枝は一度唯吹を殺しかかってる。狛枝は放っておいたら危険だ。

いざとなれば俺があいつを……。

その時、ドアがノックされた。

七海「入っていい?」

日向「七海か いいぞ」

日向(って大丈夫か? 七海って確か今……)

七海「おっす 罪木さんに聞いてね、日向くんがここにいるって 澪田さんは罪木さんに任せておけば安心だね」

日向「でも何日もあのままにしておいたら……」

七海「日向くんがそう思う気持ちはわかるよ でもね、誰かを殺そうなんて考えちゃだめ」

日向「じゃあどうすればいいんだよ」

七海「耐えるしかない……と思う」

日向「唯吹が自殺してもいいって言うのか?」

七海「自殺すると決まったわけじゃないでしょ?」

日向「じゃああいつの人生はどうなるんだよ あれじゃ可哀想だろ」

七海「信じるしかないよ いつかきっと良くなるって……」

日向「狛枝がいつ唯吹を狙って殺しにくるかわからないんだぞ?」

日向「もしそうなれば俺はあいつを殺す」

七海「でも殺人を犯したら、クロとなって学級裁判を逃げ切らないと自分が死ぬんだよ?」

七海「それに逃げ切ったとしても助かるのはクロだけ 他の人は助からない」

日向「いや……自分からクロだと名乗り出る それで唯吹が助かるなら俺は死んでもいい」

七海「そんなことして澪田さんが喜ぶと思う?」

日向「でも、もうそれしか方法がないんだよ……!」

七海「人殺しなんて絶対だめ あのね、良い方法があるんだけど……教えて欲しい? 教えてあげよっか?」

日向「なんだよ 良い方法って」

七海「澪田さんのことは忘れて、私と付き合うってことなんだけど」

日向「は?」

七海「そうすれば人殺しなんてしなくて済むでしょ? ね?」

日向「唯吹を見殺しにしろって言うのか?」

七海「見殺しにしろなんて言ってないよ 私のことだけを見てって言ってるの」

日向「同じことだろ!?」

七海「そうかな? 誰も変な気を起こしたりしなければ殺人なんて起きないんだから」

七海「日向くんが私のことだけ見てれば、少なくともキミは変な気を起こさなくなるでしょ?」

日向「狛枝はどうなるんだよ!? あいつは放っておいたら何をするか……」

七海「ねぇ、どうしてそこで狛枝くんの名前が出てくるの?」

七海「ちゃんと私のこと見て? 私のこと以外は考えなくていいから」

七海「ほら、ベッドに私を押し倒してよ」

日向「七海…… おまえ今、気が変になってるんだよ…… おまえだって洗脳映画観たんだろ?」

七海「うーん……そうかな? 私は別に普通だよ? 変になってるとしたら、それは日向くんのせいだよ」

七海「日向くんが私のおっぱいばっかり見るから……ずっとまさぐられてるみたいでムズムズするんだよね」

七海「私、いつまで我慢してればいいのかな ねぇ? 日向くん?」

日向「いや、変だって 前はそんなこと言うやつじゃなかっただろ?」

七海「そんなことない 前からずっと我慢してたんだよ?」

七海「日向くんのこと考えながら毎晩一人でエッチなことしてたし」

七海「みんなの前でエッチさせられた時から日向くんの感触が残って、思い出す度に欲しくて欲しくて堪らないんだよ?」

七海「全部日向くんのせいなんだから、日向くんが責任取ってよ」

日向「お、俺が……?」

七海「男の子のソレは何の為についてるの?」

七海「ねぇ、言ってみてよ キミなら答えられるでしょ?」

日向「そんなの……言えるわけないだろ……」

七海「それはどうして? 私に言って欲しいの?」

日向「えーと……」

七海「ヒントはね、すごぉくエッチなことだよ」

日向「……ックスだろ……」

七海「それってどういう行為かな?」

日向「は……?」

七海「ほら、答えて キミがちゃんと答えるまで終わらないよ?」

日向「男性器と女性器を交わらせて……」

七海「じゃあ、その女性器ってどこにあるの? 私にもあるのかな?」

日向「いや、あるだろ……」

七海「ちゃんと教えてくれないとわからないよ?」

日向「お、おい……」

七海「私がベッドに座った方がわかりやすい? ほら、怪しいと思ったところを触ってみて?」

日向(ピンクのドット柄…… 俺が前に貰ったパンツもそれだし気に入ってるのか……)

日向「触れって……」

七海「いつまでこんな恥ずかしい格好させるの? 早く触って」

日向(自分からその格好になったんだろ……)

日向「じゃあ……」

七海「んっ 正解」

七海「ね、日向くん おっきくなってるよ? 我慢できないんでしょ」

日向「だってこんなことされたら……」

七海「私のも見て ほら、ここ 濡れてるのわかる?」

日向「わ、わかったから 脱ぐなよ」

七海「もう、そんなこと言ってちゃんと見てるじゃんか」

七海「ねぇ、私がして欲しいことわかるでしょ…… 私、日向くんが好きなの……」

日向(俺に対してここまでするってことはそれほどまでに俺のことが……)

日向(いやいや、違うだろ 今の七海は洗脳にかかってて本当の七海じゃないんだ)

日向「今のおまえに何をされたって、俺はおまえに本気になんてなれない」

日向「それに、おまえが元の人格に戻ったら俺との事なんて無かったことになるかもしれないだろ」

日向「だから、そんなおまえの為に唯吹のことを忘れろなんて……俺には納得できない」

七海「わかった…… うん、日向くんならそう言うと思ってた」

七海「じゃあ、本当のこと教えるね 私、人格が変わってたわけじゃないんだよ」

日向「映画の途中から寝てたから大丈夫だったって言うんだろ?」

日向「それだって自分で気がついてないだけでやっぱり洗脳にはかかってるよ」

日向「明らかに普段のおまえがするような言動じゃない」

七海「私の観た映画が160分の方じゃなくて数分の方だったら?」

日向「何言って……」

七海「証拠だってあるよ ほら、映画のチケット これに映画のタイトルと上映時間が書いてあるでしょ?」

日向「本当だ…… じゃあ、今までのは全部おまえの本心だったのか!?」

七海「ち、違う! それは違うよ! ただの演技だよ!」

七海「私が無理矢理にでも日向くんを籠絡させれば『澪田さんの為に自分が犠牲になる』なんて言い出さないかと思って」

七海「でも、このやり方じゃだめだったね」

七海「もー、恥ずかしいなぁ…… お願いだから今までのこと全部忘れてもらえる?」

日向「一生忘れられそうにないよ……」

七海「なんで正直に言っちゃうかな…… でも騙そうとしたのは本当にごめんね これしか思いつかなかったから……」

七海「でもね、私が日向くんのこと好きなのは本当だよ? 洗脳でもなんでもない本心だもん」

七海「私は日向くんには死んで欲しくない」

七海「それでも、どうしても澪田さんを助けたい?」

日向(七海は本心から好きと言ってくれている)

日向(それにあんな恥ずかしい思いまでして俺を引き留めようとしてくれた)

日向(確かにそれは嬉しいし、俺も七海のことは少なからず好きだ)

日向(でも、だからって唯吹を諦めろなんてそんなの……)

日向「ああ 俺は唯吹を助けたい」

七海「そっか じゃあ方法考えないとね」

読んでてドキがムネムネしたぞ……

日向(あれ? そういえば……)

日向「七海が洗脳させられたフリをして俺に迫った理由って」

日向「俺が『唯吹の為に自分が犠牲になる』なんて言い出さない為だってさっき言ったよな?」

日向「だけど、おまえの様子がおかしかったのってモノクマが動機の話をするより前だったはずだろ?」

『ねぇ、みんなの様子なんか変じゃない?』

『ああ……十神に狛枝、それに唯吹も……』

『これってどういうことだと思う?』

『さぁ、俺に聞かれても……』

『私、なんだか眠くなってきちゃった ねぇ、日向くん 私と一緒に寝よう?』

『は?』

『日向くんはさぁ、いつも私のおっぱい見て何考えてるの?』

『み、見てない!』

『触りたいの? 触ってもいいよ、ほら』

日向「あの時のおまえの発言は何だったんだよ」

七海「えーっと、ほら、あれだよ」

日向「どれだよ」

七海「うん、何でもないから忘れて?」

日向「七海……本当は人格変わってるんだろ? 無理してるなら言ってくれ」

七海「ごめん……自分でもよくわかんないんだ……」

七海「あの時なんであんなこと言っちゃったのか」

七海「さっき見せた映画のチケットは左右田くんから貰った物だったんだ」

七海「だから私が観た映画は本当は160分の方で、途中で寝ちゃったのも本当なんだよね」

七海「そのせいか自分でも洗脳にかかってるのか、かかってないのかよくわかんなくて」

七海「自分の奥から湧き上がってくる感情は確かに自分のものなんだけど、」

七海「それを人格が変わったせいだって言われたら、そんな気もするし、そうじゃない気もする」

七海「私、これから最低なこと言うね」

七海「もし最初の告白が上手くいって人格が変わった私として付き合えることになったら、目いっぱい日向くんに甘えるつもりだった」

七海「その結果、澪田さんが死んじゃうようなことになっても構わないくらいに日向くんのことが好きって思えたから」

七海「だけどね、日向くんならきっと断るだろうなってわかってた」

七海「だから、本当は人格は変わってないってことにして、本心から好きって告白したら、」

七海「もしかしたら今度こそ付き合えるんじゃないかなって思ったんだ」

七海「まあ、それも失敗しちゃったんだけどね」

七海「でもそんなこと考えてるってバレちゃったら嫌われちゃうかもしれないでしょ?」

七海「だから、それが失敗しちゃった後は人格が変わってないフリをしようと思ってたんだけど」

七海「なんか日向くんに隠し通せる自信なかったんだよね だから全部話しちゃった」

七海「ねえ、私がこんな事考えちゃうのってやっぱり人格が変わってるからなのかな?」

七海「今までの私を見てきた日向くんは今の私をどう思う? 普通じゃないって思う?」

日向(俺は今の七海を見て普通じゃないって思うけどそれは今までの言動と比較しての話だ)

日向(今までだって甘えたい気持ちを押し殺して俺に接していた可能性はある)

日向(もし七海が洗脳にかかっていなかったとしたらこうは考えられないか?)

日向(十神や狛枝の様子がおかしくなったのを見てちょっと茶目っ気を出してみただけだった、とか)

日向(自分が観たものが洗脳映画だったと聞かされて『別人格だから何を言っても私のせいじゃない』と吹っ切れた、とか)

日向(こういうのをスパシーバ効果って言うんだっけ?)

日向(なんか違う気がする 左右田がいたらツッコんでもらえたのに)

日向(七海のためを思うならなんて答えてあげたらいいんだろう)

日向(七海の気持ちにどう答えてあげるべきなんだろう)

日向(でも果たして問題はそこなんだろうか)

日向(洗脳にかかっているか、かかっていないかの判断を誤ったら後々大変なんじゃないか?)

日向(人格を元に戻す方法はもう一度洗脳映画を観ることだ)

日向(洗脳にかかっている状態で観れば問題なく元に戻るはずだけど)

日向(七海の場合は途中から寝ていたし、そのせいで中途半端に洗脳にかかった可能性もある)

日向(その状態で普通に映画を観たらどうなるんだ?)

日向(やっぱり元に戻すにはまた途中から寝てなきゃ……って)

日向「何してるんだ!?」

七海「ごめん、我慢できなかった」

日向(俺がちょっと考えこんでる内に目の前で勝手に[田島「チ○コ破裂するっ!」]し始めるなんて……)

日向「七海……大丈夫だ、いや、大丈夫じゃないな、おまえ人格変わってるんだよ」

七海「私と付き合うとか澪田さんを助けるとかそういうのは抜きにしてさ、とりあえずエッチなことしよ?」

日向「そんな『とりあえず』があるか」

七海「ねぇ、クチュクチュいってるの聞こえるでしょ? ほらぁ」

日向「人格が元に戻った時、前の人格の記憶が残ってたらどうするんだよ……」

日向「めちゃくちゃ恥ずかしいぞ……」

七海「今も恥ずかしいよ? だって恥ずかしいところを見せてるんだもん」

七海「女の子にだけ恥ずかしい思いさせてちゃだめじゃんか」

七海「ほら、キミも脱がなきゃだよ!」

日向(だんだん強引になってきたな……)

日向「後で恨まれるのは嫌だからな……」

七海「恨んだりするわけないよ 私の本来の人格にとってもきっと本望だよ ……と思うよ」

日向(なんで俺はわざわざ言質を取るような真似してるんだ)

日向「わかったよ じゃあ……」

日向(……って、何が『じゃあ』だよ)

日向「やっぱり駄目だ 今のおまえとそういうことをしたらいつものおまえに悪い気がする」

日向「それに一刻も早く唯吹を助けてやりたいんだ 俺はこんなことしてる場合じゃ……」

七海「優しいんだね じゃあ私が一人でするから見てて? それくらいならいいでしょ?」

七海は最後までした後、そのまま寝てしまった。

俺はやっぱり我慢できなくなって七海の寝ている姿を見ながら一人で抜いた。

日向爆発しろ

日向「罪木、唯吹の具合はどうだ?」

罪木「あ、ええとぉ…… 熱は少し下がりましたぁ でも、安静にはしてないと……」

日向「唯吹、大丈夫か?」

澪田「創ちゃん、わざわざ唯吹のために様子見に来てくれたっすか……」

澪田「さっき、千秋ちゃん来てたっすよ…… 一緒にいてあげなくていいんすか……?」

澪田「それとも、もうやること済ませちゃったっすか……?」

日向「何言ってるんだよ おまえをどうやって助けるか話し合ってたんだ」

澪田「唯吹を助ける必要なんてないっす……」

澪田「もう唯吹は用済みなんすから……このまま死にたいっす……」

澪田「唯吹の為に誰かが死ぬくらいなら唯吹が死ぬっす……」

日向「くそ……もう、だいぶ重症だ……」

罪木「そうなんですよぉ…… この通りなんでもう放っておけなくて……」

日向「なんとか気分を変えてやらないと……」

日向「気分を……変える……」

日向(そうか!)

日向「あの映画を観せてみたらどうだろう」

罪木「あの映画って洗脳映画のことですよね…… 人格が変わっちゃうんですよぉ? そんなことして大丈夫なんでしょうかぁ……」

日向「俺も心配だけど、今の唯吹は見ていられない…… 本人だって辛いんだ」

日向「それにバカや変態の方がまだマシとさえ思える」

日向「当然、一時凌ぎにしかならないけど、自ら死ぬことは避けられるはずだ」

罪木「ネガティブのまま人格まで変わっちゃうかもしれませんよぉ……?」

日向「そうなったら最悪だ…… でも、何もしないで手遅れなことになるよりは……」

モノクマ「聞いてしまいました ボクの映画が観たいって? いやー、光栄だなあ」

モノクマ「澪田さんはまだ一度も観てないからね 今からでも観せてあげるよ」

モノクマ「日向くんも一緒に観る?」

日向「俺は後で感想だけ聞くからいいよ……」

罪木「あ、澪田さんが出てきましたよぉ 映画終わったみたいですぅ」

日向「唯吹、気分はどうだ?」

澪田「メチャサイコーっすよ!」

日向「よかっ……」

澪田「萌える男子を切り刻んだり切り刻んだり切り刻んだりしたい気分?」

日向「……は?」

澪田「あぁ、今すぐぶっ殺してーっす!」

澪田「でもダメなんすよねぇ…… なんかこう唯吹の殺しにはこだわりっつーのがあってぇ……」

澪田「自作のハサミじゃなきゃダメ! みたいな?」

澪田「たっはー! 殺人童貞にして謎のこだわり派発言出ちゃったっすねー!」

日向「さっきまで死にたいって言ってたやつが……極端すぎるだろ!」

モノクマ「根暗が殺人鬼になっちゃった?」

モノクマ「それにしてもハサミにこだわる殺人鬼なんて、まるで『ジェノサイダー翔』みたいだね」

モノクマ「この澪田さんは『ジェノサイダー唯吹』ってところかな?」

日向「誰だよ、そのジェノサイダー翔って」

日向「いや、元気になってくれたのは俺としては嬉しいけど……」

日向「殺し合いを防ぐ意味では何の解決にもなってない!」

モノクマ「でも少なくともこの澪田さんが誰かに狙われる危険は減ったんじゃない?」

モノクマ「だって殺人鬼なんて危なくて近寄れないもんね だから日向クンも近よならい方がいいよ?」

日向「いや……唯吹がこんな状態なのに放っておけない」

日向「くそっ 結局何も変わってないじゃないか……!」

澪田「いや、唯吹は誰も殺さないっす つーか殺せないっす」

澪田「だってこの島には学級裁判っていう面倒くさいルールがあるっすからね」

澪田「殺したい放題殺せないのが残念っすよ……」

日向「じゃあ、とりあえずはこれで良かった……のか……?」

日向「一見元気そうだけど体調悪いんだろ? 寝てた方がいいんじゃないか?」

澪田「寝てるだけってつまんないんすよねー 創ちゃんが一緒に寝てくれるなら別っすよ?」

日向「俺はおまえを良くする方法探さないと…… 一生殺人衝動に苛まれるとか嫌だろ?」

澪田「うーん…… でも今の状態がしっくりくるっているか、以前の自分の気持ちがあんまり想像できないっす」

日向「でも高熱がずっと続くのはさすがに嫌だろ?」

澪田「それには同意っすね でもモノクマちゃんは治す方法なんてないって言ってたっすけど」

日向「そうなんだよな…… 変わった人格を元に戻すのだって一筋縄じゃいかないだろうし……」

澪田「殺す? 殺すっすか?」

日向「誰が誰をだよ」

澪田「あっ、良いこと思いついたっす!」

日向「なんだ?」

澪田「唯吹と創ちゃんが同時に別々の人を殺して二人でクロになればいいんす!」

澪田「そうして上手く逃げ切れば二人でこの島を出られるっすよ! 名案っすよね!?」

日向「確かにそれは良い案だな」

澪田「創ちゃんもそう思うっすか!」

日向「いや、おまえにとっては良い案だよ」

日向「でも俺は殺人鬼じゃないんだぞ?」

澪田「創ちゃんもあの映画観るっすか?」

日向「そうじゃなくて、俺には無理だよ」

日向「おまえのことは確かに誰よりも大事だけど、その為に仲間の命を奪うなんて俺にはできない」

日向「……だけど、俺達が助かるにはもうそれしか方法はないのか……?」

日向「殺人が起きるまで待つか、俺達が誰かを殺すか……」

罪木「あ、あれぇ……今、殺すって聞こえたようなぁ……」

罪木「もしかして私この場にいないことになってますかぁ……?」

日向「実際問題、殺すとなるとかなり準備がいるよな?」

澪田「ザシュってやって終わりなんじゃないっすか?」

日向「アリバイ工作とかあるだろ?」

澪田「唯吹、工作得意っすよ! 割と手先とか器用なんで!」

日向「手先の器用さは関係ないけどな……」

日向「あと簡単に殺せそうなやつを選ぶのも大事だな」

澪田「返り討ちに遭ったら元も子もないっすからね」

罪木「あのぉ……その話って私が聞いてていいんでしょうかぁ……」

日向「馬鹿なやつとか弱そうなやつとかが狙い目だな」

澪田「その線で言ったら和一ちゃんが適任っす! いまいち萌えないのが難点っすけど」

罪木「わ、私、帰りますねぇ……」

日向「それと罪木もだな 俺達の話を聞いてたから口封じに殺さないと」

罪木「う、うえええええぇ!? 何でもしますから許してくださぁいぃぃ!」

日向「何でもするって言ってるぞ」

澪田「何でもするって言ったっすか? じゃあ、今すぐ服を全部脱いで唯吹に体を差し出すっす!」

澪田「ぐふひひひ!」

日向「それはやりすぎだろ…… 悪い、罪木 今の話は冗談だ」

澪田「冗談だったんすか?」

罪木「お、脅かさないでくださいよぉ……! 漏らしちゃうところだったじゃないですかぁ……!」

日向「悪い…… 罪木のこと見てたらなぜかいじめたくなって……」

澪田「ある種の才能っすね!」

罪木「そんな才能いりませんよぉ!」

冗談とは言ったものの、唯吹の命と他の仲間全員の命を天秤にかけた時、俺はきっと唯吹を選ぶ。

そういえば七海も似たような事を言っていた。

俺が七海に心底惚れれば、俺が自分の命を犠牲にしてまで唯吹を助けるような真似はしないだろうと。

その結果、唯吹がどうなろうと関係ないくらいに俺のことが好きだと。

七海は、俺の命と唯吹の命を天秤にかけ、そして俺を選んだ。

七海はそれについて「最低なこと」だと言った。

俺は七海のことを最低だなんて思わない。

それに、七海のした事が最低だと言うなら、俺はもっと最低な事をしてしまう自信がある。

だけど、なにより最低なのは仲間の命を秤にかけなきゃいけない今の状況だ。

今のままなら誰も死ぬことはないかもしれない。

それでも唯吹は確実に不幸になる。

俺は、唯吹の不幸と仲間の死のどちらかを受け入れなきゃいけないんだ。

やっぱり俺は最低だ。

俺は、俺と唯吹に関係のないところで誰かが勝手に殺し合ってくれればいいと思い始めていた。

だって、俺と唯吹の二人が無事でいるには、今のところそれしか方法がないんだから。

次の日の朝、今も病院で寝ている唯吹以外の全員がレストランに集まった。

十神「集まったな 人格を元に戻す方法とか澪田っちを治す方法とか何か分かったやついるか?」

十神「ちなみに俺にはさっぱり分からなかったべ!」

小泉「アンタ……もうリーダー辞めたら?」

ソニア「図書館で色々調べましたが手がかりになりそうな情報は見つかりませんでした…… 面目ありません……」

左右田「ソニアさん、気にすることないですよ 俺も何も分かりませんでしたから」

小泉「アンタじゃフォローになってないわよ」

狛枝「ボクはね、一つだけ重要な情報を手に入れたよ 知りたい?」

左右田「なんだよ 勿体振らねーで言えよ」

狛枝「小泉さんがこの場でパンツを脱いでボクにくれるなら教えてあげてもいいよ?」

小泉「アンタね! それでもしくだらないことだったらアタシが張り倒した後、みんなで蹴り入れるわよ!」

左右田「そんなやつの話真面目に聞かねー方がいいぞ?」

小泉「唯吹ちゃんが大変なことになってるんだから少しでも力になってあげたいでしょ?」

小泉「そ、そういうわけだから、みんな向こう向いててよ……」

狛枝「あぁ……小泉さんがパンツを脱ぐ姿、なんて美しいんだろうね……」

左右田「なあ、情報とか関係なしに後でアイツぶん殴ろうぜ」

九頭龍「オレも協力するぜ」

田中「俺様が本気を出したら塵すら残らないと思え」

ソニア「わたくし、人間のクズを殴るという汚らわしい行為はしたことがないのでマンモス楽しみです」

終里「丸焼きにして食っちまおうぜ」

花村「さすがのぼくでも腐った食材は調理できないよ」

弐大「そんなクソを食ったら腹を壊すじゃろう」

日向(なんだこの一体感……)

日向「狛枝が人格変わってること忘れてないか? みんな……」

小泉「ほら! これで満足!?」

狛枝「んはぁ、最高だよ! こんな香りを出せるなんて、キミはまさに希望の象徴だよ!」

小泉「言うことはそれだけ?」

狛枝「キミは紐パンだったんだね」

小泉「……みんな、いい?」

日向「死なない程度にな……」

その後、狛枝は病院に運ばれた。

あら不思議、口調が葉隠ってだけでこんなに頼りない印象に
それと人肉食は喰われた人の病気とか感染るからやめとけ
狛枝の場合は希望厨とかかな

狛枝「ありがとう、罪木さん 本当にキミに看護してもらえる日がくるなんてね」

罪木「い、いえ……私はこれくらいしか皆さんのお役に立てないので……」

狛枝「もう一つお願いがあるんだけど、ボクの下半身が毒で腫れちゃってさあ」

狛枝「口で吸い出してもらえると有り難いんだけど」

罪木「あ、あのですね……それは勃起と言って男性に起こる生理現象で……」

狛枝「じゃあどうすれば治るの?」

罪木「別に治す必要はないんじゃないかと……」

狛枝「でもこのままじゃボクが困るんだよね 頼めるのは罪木さんだけなんだよ」

罪木「で、でもぉ……」

狛枝「治してくれたらボクが一生友達になってあげるよ」

罪木「ほ、本当ですかぁ?」

狛枝「してくれるよね?」

罪木「わかりましたぁ 一生お友達かぁ……えへへへ」

小泉「狛枝を蜜柑ちゃんと二人きりにして大丈夫かなぁ……」

左右田「あんだけやってまだ何かするようだったらアイツもう死んでいいんじゃねーのか?」

小泉「アタシ、やっぱり蜜柑ちゃん心配だから見てくる」

日向(小泉は面倒見がいいな)

日向(唯吹の人格が変わった件みんなに言ったほうがいいか?)

日向(不安を煽りそうだけど、黙ってるわけにもいかない……よな)

日向「唯吹のことなんだけど、昨日――――」

日向「――――ってわけなんだ」

ソニア「ジェノサイダー翔と言えば日本を騒がせているイケイケでトレンディーなあの殺人鬼のことですよね!?」

ソニア「若い男性のみを狙い、相手をハサミで滅多刺しにした後、死体をハサミで磔にし、」

ソニア「現場には被害者の血で『チミドロフィーバー』と文字を残す、猟奇的な殺人鬼です!」

日向「そういえばソニアは殺人鬼マニアだったな……」

左右田「そんなソニアさんも素敵です!」

日向「その殺人鬼に直接関係があるわけじゃないけどな」

ソニア「わたくし、殺人鬼の思考に興味があるので後でお話を聞きに行ってもよろしいですか?」

日向「ああ、その時は俺も一緒に行くよ 念のため」

狛枝「罪木さん、気持ちいい?」

罪木「はいぃ……とっても気持ちいいですぅぅ……」

狛枝「ボクも気持ちいいよ」

小泉「蜜柑ちゃん、大丈……」ガチャ

罪木「ひいいぃ! み、見ないでくださぁい!」

小泉「ご、ごめん!」バタン

小泉「やだぁもう……あの二人ってそういう関係だったの……」

日向「あ、小泉 狛枝が罪木に変なことしてなかったか?」

小泉「変なことしてたっていうか、むしろちゃんとしてたっていうか……」

小泉「とにかく、アタシ達が口出しするような事はなかったから安心して?」

日向「そうか、それなら良かった」

十神「他に話があるやついるか?」

七海「私からもいいかな?」

左右田「こういう時の七海は頼りになるよな」

七海「あのね、どうすれば日向くんが私を襲ってくれるのかずっと考えてたんだけど、良い方法が思いつかなかったんだ」

七海「やっぱり私から襲わなきゃだめかな? ねぇ、みんなはどう思う?」

左右田「日向ァ……」

十神「七海っちの先制攻撃だべ!」

日向「もう勝手にしてくれ……」

小泉「千秋ちゃんも十神もこんなだしどうすればいいのよ……」

左右田「狛枝も澪田が二人になった時は活躍……とは呼べね―なりにもアイツなりに動いてたんだけど、それにも期待できねーし……」

十神「俺の占いによれば……全ての原因はモノクマだべ! モノクマを倒せば全て解決で間違いないべ!」

左右田「んなこたぁ全員とっくに知ってんだよ! つーかなんで占いキャラになってんだよ!」

終里「よーし、モノクマをぶっ飛ばしゃあいいんだな!?」

日向「やめとけって…… そもそもそれでみんなを治せるとは限らないだろ?」

左右田「もうドラッグストアにある薬を片っ端から飲ませて……」

西園寺「その前に大丈夫かどうか左右田おにぃで試さないとねー」

左右田「オレまでぶっ倒れたらどーすんだよ!」

日向「他のやつはぶっ倒れてもいいのかよ……」

左右田「オレだってもう思いつかねーんだよ」

十神「意見は出し切ったか? ならさっさと朝食にするべ 俺はもう待ちきれねーべ」

左右田「そっちのキャラはブレねーんだな……」

日向「七海、大事な話ってなんだ? こんな人気のないところに呼び出して」

七海「あのね、大事な話があるっていうのは嘘なんだ」

日向「だと思ったよ」

七海「私を襲って?」

日向「俺、帰っていいか?」

七海「私の話ちゃんと聞いてるの?」

日向「前にも言ったけど、今のおまえに手を出したら色々と駄目なんだよ」

七海「もう我慢できない 早く私を滅茶苦茶にしてよ そうしないと……」

日向「そうしないと?」

七海「みんなの前で公開オナニーしちゃうから」

日向「は? そんなことしたら……」

七海「元の人格の私が可哀想 だからキミは私を襲うしかない そうでしょ?」

日向「自分を人質にするのかよ」

七海「ほら、早く決めて 私、今からでも裸で外を歩きまわっちゃうよ? いいの?」

日向「わかった…… わかったよ それしかないんだな? 七海には後で謝るよ」

七海「よかった じゃあ来て?」

七海「――――あんっ……あぅんっ……あ…れ……え?……ス、ストップ、ストォップ!」

日向「どうした?」

七海「ごめん、やっぱり私が間違ってた! 私どうかしてたよ!」

日向「もしかして、元に戻ったのか? でもなんで急に……」

七海「うわぁ、どうしよう 私やっちゃった……」

日向「これはおまえを守るために仕方なく……」

七海「うん、それはわかってる…… ありがとう、私を庇ってくれて」

日向「俺の方こそ、ごめん」

七海「ううん、それはいいんだけど……もう離していいよ?」

日向「悪いけど、それはできない」

七海「え? どうして?」

日向「いや、もう繋がっちゃってるから……」

七海「ええと……どういう意味かな……」

日向「俺が離したくないんだよ」

七海「キミには彼女がいるんだよ?」

日向「わかってるけど、俺も男だし……七海が可愛いから止まらなくて……」

七海「んっ、ちょっと……言いながら動かないで…… いいなんて言ってないよ……」

日向「俺にはおまえが本気で嫌がってるようには見えない」

七海「もぉ…そんな言い方ずるいよ……」

その時、他のみんながどういう状況に陥っているか、俺達には知る由もなかった。

何故だ。
何故そうなるのだ。

七海「はぁ…… 日向くんのこと優しいなんて言ったけど、やっぱりちゃんと男の子なんだ……」

日向「悪かったよ……」

七海「ちょっと好感度下がっちゃったなぁ」

日向「俺には返す言葉もないよ……」

七海「ちゃんと反省しなきゃだめだよ?」

日向「ああ、反省してる もう二度としないって約束する」

七海「よろしい ……なぁんて、本当は怒ってないから安心して」

日向「そうなのか?」

七海「違う人格の私が言った言葉、全部がデタラメってわけじゃないから」

日向「それはつまり……」

七海「他の人の様子も見てこよう? 私みたいに元に戻った人もいるかもよ?」

日向「……そうだな」

俺はこの後、「あの時、あいつをもっと強く引き止めておけば良かった」と激しく後悔する事態が既に起こった後だと知ることになる。

左右田「おい、十神……マジでオレが言った方法試すのか? ぶっ倒れても知らねーぞォ……」

十神「俺を誰だと思ってるべ それにドラッグストアは薬が置いてある場所だろ? 毒を飲むわけじゃあるめーし……」

左右田「言った側からもう飲んでるし……ってオイ! そのラベルは……!」

十神「うっ……」

小泉「蜜柑ちゃ……ってアンタ達まだやってたの!?」

罪木「だから見ないでくださいってばぁ!」

小泉「それどころじゃないんだって! 服着るまで外で待ってるからすぐについてきて!」

罪木「まさか殺し合いが始まったんじゃ……」

狛枝「だとしてもまだ誰かが死んだわけじゃないだろうね」

狛枝「もし誰かが死んだのなら『死体発見アナウンス』っていうのが流れるはずだから」

狛枝「モノクマが加えたルールにそう書いてあったよ」

罪木「だったらなおさら早く行ってあげないと本当に取り返しが付かないことになっちゃいますぅ……!」

狛枝「罪木さんは先に行ってていいよ ボクは抜いた後で駆けつけるから」

澪田「なんすか? 血生臭いことっすか? 唯吹も見に行くっす!」

左右田「十神……おまえが今飲んだそれ……」

左右田「超高級栄養ドリンク『スーパーDRⅡ』じゃねーか! ヤベーなこりゃ……一本二万円だぞ……」

十神「力がみなぎってくるべ……!」

ソニア「あ、お二人共いらっしゃいましたか! すぐにわたくし達が最初に出会った砂浜まで来てください!」

左右田「もしかしてヤベーことになってんのか……?」

十神「全速力だべ!」

ボクが遅れて砂浜に駆けつけると、そこでは流血沙汰の決闘が行われていた。

終里「なんでオレの攻撃がかすりもしねーんだよ!」

モノクマ「無駄だよ無駄無駄 だってボクとオマエラとじゃ次元が違うからね」

モノクマ「不良マンガのキャラクターが異能バトルマンガの敵に挑むようなモンだよ」

モノクマ「さて、ボクに手を出したらどうなるか、分からないわけじゃないよね?」

ソニア「どうしてこんなことに……!」

弐大「苦ッ! ワシが見ておらん隙に早まった真似を……!」

左右田「なんとかならねーのかよォ!?」

狛枝「あーあ、これはもう諦めるしかないね せめて終里さんの輝かしい希望と大きなおっぱいの最期をみんなで見届けてあげようよ」

モノクマ「じゃーん! 『人間破壊爆弾』! えい!」

強烈な閃光と凄まじい爆音、そして体が吹き飛ぶ程の衝撃がボクらを襲った。

その直前に見えたのは弐大クンが終里さんを庇い前に出る姿だった。

次に視界が戻った時には二人の姿は消えていた。

二人がそこにいた痕跡は、真っ赤に染まった砂浜と当たり一面に散らばる血肉だけだった。

一瞬、誰もが言葉を失い、急に思い出したかのように幾つもの悲鳴が上がった。

モノクマ「はわわ……やってしまった…… 終里さんだけじゃなく弐大クンまで……」

モノクマ「活字だからと思って威力上げすぎちゃった……およよ……」

澪田「えー!? 二人一緒に!? 不人気キャラはいらないからってー!?」

モノミ「なんかすごい爆発音がしまちたけど……ええええ!? なんでちゅかこの地獄絵図は!?」

モノミ「やい! モノクマ! 一体生徒達に何しまちたか!」

モノクマ「ホントはルールに違反した終里さんだけオシオキするはずだったんだけど……」

モノクマ「弐大クンは事故死ってことで片付けちゃっていいっすよね?」

モノミ「終里さんと弐大くんが!? そんな!?」

左右田「んだよこれ……何なんだよこれ!」

モノクマ「じゃあボクはこれで……」

狛枝「ねえ、モノクマ ボク達にここまでしてそのまま帰っちゃうの?」

狛枝「終里さんは自滅としても弐大クンはキミが殺したようなものだよね」

狛枝「例の動機の件を思い出してよ 誰かが他の誰かを殺したらってやつ 今のはそれに当てはまらないの?」

狛枝「それに明らかにルール違反を犯していない生徒にまで危害を加えてるよね」

狛枝「ボク達にはルールを守らせて自分はルールを守らないなんておかしいと思わないの?」

狛枝「おかしくなったボクと十神クンと七海さん、それに澪田さんを元に戻してくれないと割に合わないよ」

モノミ「そうでちゅ! その通りでちゅ!」

モノクマ「人の失敗を責めるなんてキミって性格悪いねぇ……」

モノクマ「そのせいでボクのか弱い心がポッキリ折れちゃったらどうするんだよ!」

モノクマ「ま、いいでしょ 派手なスプラッターシーンも見れて満足したことだし今回はこの辺で」

モノクマ「と、いうわけでハイッ みんなもう元に戻ったよ?」

狛枝「ちょっと待ってよ 今の掛け声で何かが変わったって言うの? 洗脳映画の件はどうなったの」

モノクマ「あ、そうだった 映画を観ると人格が変わるって設定だったのをすっかり忘れてた」

モノクマ「でもメンドクサイしもういいんじゃない? キミだって二回も映画を観るのは嫌でしょ?」

モノクマ「そんなに信じられないならいつもみたいにセクハラ発言をかましてみてよ」

狛枝「……確かに……元に戻ってるみたいだね」

俺と七海がみんなを見つけた時には全てが終わった後だった。

俺達は思い思いに仲間の死を悼み、互いを慰め、励まし合った。

そんな風にみんなが前向きになれたのは、モノクマを説得してくれた狛枝のお陰……かもしれない。

俺は自分でも驚くことに、仲間二人の死を厳然たる事実として受け止めつつも、唯吹が無事に快復したことが素直に嬉しかった。

一度は唯吹を殺しかけ、一度は本当に殺した狛枝だけど、今回ばかりは心の内で感謝した。

狛枝「ゴメン! 罪木さん! キミには本当に申し訳ないことをしたよ」

罪木「狛枝さんが謝るようなことは……」

狛枝「いや、謝らせてよ 何ならボクを踏んでくれても構わないからさ」

左右田「意味合いによっては変態発言だぞ オメー本当に元に戻ったのか?」

小泉「いや、そいつ元から変態だし」

狛枝「それと小泉さんから貰ったパンツなんだけど……」

狛枝「いやぁ、返そうにも気づいた時には既にボクが使っちゃった後だったんだよね」

小泉「なに……使ったって……」

左右田「あー……それ以上は聞かない方が……」

狛枝「ごめんね、後で洗って返すからさ」

小泉「もう返さなくていいから というか絶対返さないで」

狛枝「そう じゃあ、ありがたく貰っておくね」

小泉「捨ててよ! お願いだから」

花村「ところでぼく気になってたんだけど、小泉さんはあれからスカートの下に何もはかずに過ごしてたのかな」

左右田「!!!!」

小泉「アンタらねぇ……」

西園寺「それを意識させないようにゲロブタが狛枝に何かされてないか心配するフリして着替えに行ったんでしょ?」

西園寺「あーやだやだ これだからデリカシーの欠片もないゴミクズ野郎は」

小泉「蜜柑ちゃんを心配して見に行ったのは本当だけど……」

十神「ふっ……俺としたことが、己を見失うとはな」

十神「まあ、今に始まった事でもないが……」

左右田「ところでオメーのあの占いってマジだったのか?」

日向「外れてたぞ?」

左右田「あぁ? 外れてたって何がだよ」

七海「日向くぅん?」

左右田「まあ、三割っつってたし元々期待してねーけどよ」

澪田「あの人格は唯吹の音楽性に新しい切り口をもたらしてくれたっすね……ハサミだけに」

澪田「ぶぇっは! ハサミだけに! これはギャグの切れ味も上がったんじゃないっすかねー! ハサミだけに!」

日向「おまえがいつも通りだとなんか安心するよ……」

七海「(コソッ)ねぇ、私は? 本当はどっちの私が良かった?」

日向「お、おまえなあ!」

七海「ごめん、日向くんいじめるのちょっとクセになっちゃったかも」

日向「勘弁してくれよ……」

澪田「まさか唯吹に恋のライバル登場っすか!?」

澪田「よかろう、唯吹がテクノロジーの力で受けて立とう! 思い切ってシリコン投入っす!」

日向「その話はもういいよ」

七海「でも実際のところどうなの? キミの意見も聞いてみたいな」

澪田「どうなんすか! おっきい夢を掴みたいんすか!」

日向「大きさなんてどうだっていいだろ!? 大事なのは……」

左右田「オイ、そこ! なに堂々とぶっちゃけエロトークかましてんだよ! 正直羨ましいじゃねーか!」

ソニア「日向さんは相変わらずモテモテですね」

小泉「日向がモテるのはアタシも納得かな」

左右田「日向ァ……オメーいつからギャルゲーの主人公になったんだよ…… これそういうゲームじゃねーからな!」

日向「何を言ってるんだよおまえは……」

七海「ゲーム? その話詳しく聞かせて?」

日向「見事に単語にだけ食いついたな」

終里と弐大の死が俺達に与えたショックはあまりにも大きかった。

あまりに大きすぎて俺達はその事実から自然と意識を逸らしていたんだろうな。

真剣に向き合えばあっという間に飲み込まれてしまいそうになる程の絶望。

次に何を失うのか、何を奪われるのか分からない恐怖。

俺達はそれを掻き消すために必死だったんだと思う。

俺はこんな状況でもいつものように軽口を言い合ったりできるみんなを頼もしく感じた。

たとえそれが偽りであったとしても。

その偽りがいつか本当になると信じて、俺達は前に進み続けるしかないんだ。


生き残りメンバー 14人

あれま。

十神「やはり俺達の敵は、ただ俺達をこの島に閉じ込めておくだけでは済ませない気のようだな」

狛枝「あんな物騒なルールを作った連中だもん 当然でしょ」

十神「現実から目を背けるだけでは何も解決しない」

十神「連絡手段や島の脱出方法も大事だが、敵の正体を探ることにも重点を置くべきだ」

十神「俺は十神の名において、敵の正体を必ず突き止め、俺達をこんな目に遭わせた報いを奴らに受けさせる!」

澪田「うっはー! 痺れるぅぅぅ!」

澪田「昨日までの白夜ちゃんも唯吹的には萌え度高かったっすけど、やっぱりいつもの白夜ちゃんが一番っすね!」

左右田「敵の正体っつってもよ 『未来機関』とか『世界の破壊者』って呼ばれてることくらいしかオレら知らねーんだぜ?」

モノミ「ミナサーン、またモノケモノを一匹倒しまちたよ! 4番目の島に行けるようになりまちた!」

ソニア「2番目の島にあった『未来』と扉に書かれた遺跡も謎のままですよね」

ソニア「未来機関と関係している可能性が非常に高いのですが」

狛枝「それとさ、未来機関に関係することで一番気を付けなくちゃいけないのは……」

狛枝「その未来機関の人間が裏切り者としてボクらの中に潜んでいるってことだよね」

狛枝「一体、誰なんだろうね…… こうしている今も息を潜めてボクらを陥れる算段でも立てているのかな……」

左右田「そういうおまえが一番怪しいけどな」

モノミ「えぇ!? またなの!? またスルーなの!?」

左右田「今大事な話してんだよ」

田中「亜空間へと消し飛びたくなくば今直ぐ俺様の間合いから離れることだ!」

モノミ「亜空間はやめて!」

左右田「次の島に行ったところでどうせ外に出られる訳じゃねーんだろ?」

ソニア「洗脳映画の時のように罠が仕掛けてあるかもしれませんし…… だったら行かない方がマシに思えます……」

モノミ「ほえっ!? あちしのしたことはなんだったの……」

モノクマ「あー、もう! もどかしいなぁ!」

モノクマ「お兄ちゃんが誘い出すお手本見せてやるよ!」

モノミ「あちしを仲間みたいに!?」

モノクマ「今回は探索にやる気が出るようにご褒美が用意してあります!」

モノクマ「たとえば『未来機関の手掛かり』だったり、『船の製作に使えそうな部品』だったり」

モノクマ「それと、オマエラの希望ヶ峰学園時代のプロフィールとかもね!」

モノクマ「という訳なので、張り切っていってらっしゃーい!」

その日は奇妙な夢を見た。

『……あぁ、ツマラナイ』

『彼女の到着がもっと早ければもう少しマシなイベントになっていたのに』

『でもこうなることは予測できました』

『才能に愛されている僕なら予測なんて簡単なことです』

『だから僕が少し手を加えておきました』

『幸運程度のツマラナイ才能ですが、僕が使えばきっと面白いものが見られますよ』

『いや、何も面白くはないですね』

『なぜならそれは「運命に抗うことは並の人間には難しい」というただのツマラナイ教訓ですから』

『こういうツマラナイ映画を観たことがありますか?』

『――――――――』

あれが誰だったのか、一体何の話をしていたのか、まるで分からなかった。

でも気にする程でもない。

夢なんて自分でも意味の分からないものがほとんどだ。

レストランでみんなと顔を合わせる頃には夢の内容なんてすっかり忘れていた。

澪田「遊園地に来て最初にお化け屋敷に目を付けるなんて創ちゃんもなかなか通っすね!」

日向「その基準はどっから来てるんだよ」

日向(普通に「遊園地」なんて言ってるけど、まさかこんな島にもあるとはな……)

澪田「唯吹はまず来たらジェットコースターに乗るっす!」

澪田「その後はジェットコースターを挟みつつ、全乗り物を制覇して」

澪田「ジェットコースターで夜景を楽しんだ後、ジェットコースターでおうちに帰るっす!」

日向「おまえが言うジェットコースターって自転車か何かなのか?」

澪田「唯吹とお化け屋敷に入るからには創ちゃんにはやってもらわなきゃならないことがあるっすね」

日向「なんだ?」

澪田「唯吹がパニックを起こす度にぎゅってしてなだめる係! 任命っす!」

日向「違う意味でドキドキだな……」

澪田「ちゃんとお手々繋いでなきゃダメっすよ?」

澪田「生きてるおばけは大丈夫なんすけど、死んでるおばけは苦手なんす!」

日向(生きてるおばけが矛盾を孕んでる気がするけど……ゾンビとか妖怪ってことかな)

唯吹はどの仕掛けでも俺より驚いて、その度に腕にしがみついたり噛みついたりしていた。

俺はいつの間にかお化け屋敷自体より唯吹の反応を見る方が楽しくなっていた。

七海「あのね、いい事教えてあげよっか モノクマが言うにはね」

七海「全員でこのジェットコースターに乗るとご褒美がもらえるらしいんだよね」

左右田「オ、オレは乗んねーからな! 乗り物酔いヒデーんだよ!」

モノクマ「ようこそ! 当園の目玉アトラクション、『ファイナル・デッドコースター』でーす!」

日向「ご褒美ってなんだよ」

モノクマ「それは乗ってからのお楽しみってことで!」

左右田「なァ……全員で乗らねーとダメなのかよ……? イヤだぜオレ……」

九頭竜「ご褒美ってのが船の部品かも知んねーだろ? そんなに嫌なら無理矢理乗せちまえ」

左右田「や、やめろッ! 放してくれえええええええッ!」

俺もみんなに続いてジェットコースターに乗り込み……――――

十神「安全性は大丈夫なんだろうな?」

モノクマ「大丈夫、大丈夫 ちゃんとテスト走行もさせてるから」

ソニア「なんだか楽しそうですっ!」

モノクマ「それでは出発進行でーす!」

そんなモノクマさんの掛け声と共に、ジェットコースターは発進しました。

途中までは順調でしたが、巨大なループに差し掛かった時です。

金属が激しく擦れる音が響き渡り、急に減速し始めました。

小泉「ねぇ!? なんかすごい音してるけど!?」

左右田「オイ! スピード落ちていってるぞ!? ヤベーって!」

九頭竜「てっぺんで止まるぞ!」

コースターは完全に失速し、ループの頂点で逆さまの状態で静止しました。

ソニア「これはすごくスリルがありますね!」

左右田「違います、ソニアさん! 普通は途中で止まったりしませんから! たぶん今ヤバイ状況です!」

十神「体を支えてるこの安全バー、外れたりしないだろうな?」

花村「落ちたら固い地面に真っ逆さまだよ? この高さじゃトマトみたいに潰れちゃうよ!」

小泉「怖いこと言わないでよ! それよりまだ止まったままなの……?」

次の瞬間、十神さんの座る座席の安全バーがバキンと鳴り、根本から壊れてしまったのか勢い良くバーが上がりました。

支えを失った十神さんの体は宙に投げ出され、叫び声だけをそこに残して落ちていきました。

「十神ッ!!」

重い塊が鉄骨や地面に強くぶつかる音が聞こえましたが、私にはその様子を見届けるほどの余裕はありませんでした。

不幸はまだ続きました。全員の座席の安全バーが次々にゆるみ始めたのです。

「落ちる落ちる!!」

「死にたくないよおおおお!!」

「きゃああああああああ!!」

「しっかり掴まれ!!」

「ボクも命運が尽きたのかな……」

今は握力だけが頼りでした。

宙吊り状態では私もそう長く持ちそうにありません。

小泉「もう、限界…… 日向ぁ、アタシも本当はアンタと……」

日向「諦めちゃ駄目だ!」

小泉「きっと最後だから! これだけ言わせて」

小泉「もしアンタが助かったら、アタシの大事なカメラ、アンタに譲るから……だから、アンタは――――」

「小泉!!」「おねぇ!!」

小泉さんは力尽きて落ちました。

何とか下を見ると、地面に激突して体が散り散りになる様子が見えました。

九頭竜「なんとかコレ動かせねーのか!」

日向「みんなで体を揺らして体重をかければ……!」

西園寺「うぅ、やだよぉ…… 小泉おねぇ…… あっ」

西園寺さんも後を追って落ちました。

努力の甲斐あってか少しずつ車体が動き、やがてコースターは重力に従って走行し始めました。

ようやく逆さまではなくなりましたがすぐに失速したため、乗降位置まで辿りつけずにコースの中間で止まりました。

とりあえず落下死する心配はなくなり、皆さんは一安心した様子でした。

「し、死ぬかと思った……」

「うわああああん怖かったあああああ」

「生きてる! 生きてるっす!」

「早くあの三人助けてあげないと……」

狛枝「あそこに梯子がある 下に降りられるみたいだよ」

点検や整備の際に使うものでしょうか、レールの横に人が歩ける程の足場と、地上へと続く梯子がありました。

一人ずつ足場へと上がって行く中、おそらく誰もが「助かった」と思いましたが、それも束の間です。

コースターから全員降り切る前に、レールを支える骨組みが一気に崩壊しました。

その時、最後までコースターに乗っていたのは澪田さんです。

足場を失ったコースターは彼女を乗せたまま落下していきました。



「嘘……だろ……」

ソニア「日向さん、何かおっしゃいました?」

日向「え?」

ソニア「大丈夫ですか? 顔色があまりよろしくありませんが……」

日向「大丈夫……」

今のは夢か? かなりリアルだったぞ……。

十神「安全性は大丈夫なんだろうな?」

モノクマ「大丈夫、大丈夫 ちゃんとテスト走行もさせてるから」

同じだ、このやり取り。

さっき見た夢と全く同じだ!

ソニア「なんだか楽しそうですっ!」

まずい、止めないと! 十神、小泉、西園寺、唯吹、みんなが危ない!

モノクマ「それでは出発進行でーす!」

日向「待て! 待ってくれ!」

モノクマ「およ? どしたの? 怖くてちびっちゃった?」

九頭竜「おいおい、何この程度で怖気づいてんだ?」

日向「違う! このジェットコースターはこれから事故が起きる!」

モノクマ「何言っちゃってんのさ」

モノクマ「ついノリで『ファイナル・デッドコースター』なんて、映画のタイトルに因んだ名前つけちゃったけど」

モノクマ「本当にあの映画みたく事故る訳ないじゃん スリルを出すために鉄骨抜いたりボルト緩めたりはしたけど……」

モノクマ「なんならもう一回テスト走行させてみる? みんな降りた? じゃあ行くよ」

モノクマ「ほら、別に何とも…………あ」

「モノクマ!」「モノクマァ!」「モノクマちゃん!」「モノクマさん!」

モノクマ「ごめんなさい……」

左右田「な! だからやめとけっつったろ!」

九頭竜「テメーは自分が乗りたくないだけだったろうが」

左右田「でも日向のお陰で命拾いできたよな!」

小泉「あれに乗ってたらって思うとぞっとするわね……」

七海「ねぇ、どうして事故が起きるって分かったの?」

日向「予知夢を見たんだ 俺達があれに乗って事故が起きるっていう……」

日向「そしてそこで十神と小泉と西園寺と……唯吹が死んだ」

澪田「縁起でもないっすね……」

狛枝「ふーん、予知夢ね 何の才能もないと思われたキミにも実は予知能力があったり、とかね」

十神「そんなもの、現代の科学では認められん」

狛枝「まあ、何にしても助かって良かったじゃない」

左右田「オレはもう二度と乗らねーぞ、あんな乗り物……」

日向「モノクマ、ご褒美っていうのは貰えるのか?」

モノクマ「残念だけど今回はあげられないね だって乗ってないもんね ま、次の機会に期待しててよ」

モノクマ「ところでキミは予知夢を見たんだって? これって偶然かなぁ うぷぷぷ」

左右田「結局昨日は何も見つからなかったな ネズミー城とかいう城にも入れねーし」

ソニア「ドッキリハウスという建物もありましたが、まだ準備中だからとモノクマさんに追い返されてしまいました」

ソニア「今日、もう一度見に行ってみようと思います」

日向「お化け屋敷の中にモノミハウスがあったけど、それもモノミに追い返されたな」

日向「いや、モノミハウスの外にお化け屋敷が増築されたって言ってたっけ……」

澪田「あれ? 今日は食卓にナイフとフォークがないっすよ それどころか箸もスプーンもないっすね」

ソニア「モノクマさんが料理だけ並べて、他の物を置き忘れたのでしょう」

花村「ぼく、取ってくるよ」

左右田「ところで朝食ってモノクマが作ってるんだよな あの体でどうやってるのかちょっと気にならねーか?」

小泉「アンタ、深夜にでも覗いて来たら?」

左右田「いやなんか恐ろしいモン見えちまいそうで……」

小泉「男のクセに情けないわねぇ」

田中「ハッ、そんなもの、錬金術を使えば造作も無いことよ!」

花村「持ってきたよー」

その時、花村が不意に手を滑らせ食器を入れ物ごと落とした。

すると驚いた事に、散らばった食器の内、ナイフと箸だけが綺麗に床に直立した。

床の溝に上手く嵌ったせいか、持ち手の後ろが平らになっていたせいか、理屈は分からなかった。

狛枝「すごいね、花村クン いつそんな曲芸を身につけたの? いくらボクくらい運が良くてもそんなふうにはならないよ」

花村「ええ!? ぼくは知らないよ! たまたまだよ!」

十神「何をくだらない事をやっている 拾ってやるからさっさと洗って来い」

そう言って十神が乗り出そうとした時、十神は何もないところで躓き、勢い良くその食器の上に倒れこんだ。

それを見た俺は一気に血の気が引いた。

日向「おい! 大丈夫かよ!」

澪田「あのー、唯吹の聞き間違いじゃなかったらナイフとか箸とかがお肉を貫くような音がしたんすけど……」

ソニア「大変です! 酷く出血してます! すぐに手当てをしないと!」

小泉「蜜柑ちゃんは!? こんな時にまだ来てないの!? すぐ呼んでくる!」

小泉が階段に駆けて行ったところでちょうど辺古山と鉢合わせになった。

小泉「わっ、ペコちゃ……」

小泉は慌てていたためか、反応しきれずに階段に向かってバランスを崩し、そのまま階下のロビーに落ちていった。

体を強か打ちつけるような音が何度か聞こえ、最後に鈍い音がしたきり止んだ。

俺は最悪の事態を想像してさらに血の気が引いた。

澪田「い、唯吹の聞き間違いじゃなかったら階段を転げ落ちた後に何かに頭をぶつけたような音がしたっすけど!?」

無事を祈りながら階段を駆け下りると、そこには小泉が意識を失って倒れていた。

見たところ後頭部から出血している。

七海「ここにゲーム機があるでしょ? 小泉さん、その筐体の角に頭を強く打っちゃって……」

俺が罪木を呼びに出ようとするのと西園寺がロビーにやってくるのがほぼ同時だった。

西園寺「えっ!? 小泉おねぇ!?」

俺はすぐに罪木を連れてロビーに戻って来たが……。

『(ピンポンパンポーン)死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きまーす! ……と思ったけど』

日向「今のが死体発見アナウンスか!?(今、最後に何か言いかけなかったか?)」

九頭龍「十神のヤロー完全に心臓が止まってやがった……!」

罪木「小泉さん、まだ微かに息がありますぅ……!」

左右田「つっても病院まで運んでたらマジで手遅れになっちまうぞ!」

罪木「あ、あのぉ! 私の部屋まで運んでくださぁい! 医療器具は一通りありますからぁ!」

西園寺「小泉おねぇを任せたからね! 絶対に治してよ!」

モノクマ「やっと最初の殺人が起きた! と思ったら今回はクロじゃない誰かの思惑で物事が動いてるみたいなんだよね」

モノクマ「ま、こんな芸当が出来るのは『彼』くらいしか思い浮かばないけど」

モノクマ「という訳で、ボクは死体発見アナウンスも学級裁判もしばらく休んで、事の顛末を見守ることにしたから」

モノクマ「その方がなんか面白そうだし……」

モノクマ「それにしてもスプラッター映画の見立てなんて、彼って意外といい趣味してるのかも」

モノクマ「いや、趣味なんてある訳ないか! ギャハハハハ!」

日向「さっきから何を訳の分からないことを……!」

俺はそろそろ気づいても良かったのかもしれない。

俺一人の力では到底どうすることもできないような絶望的な事態が既に進行しつつあるということを。

左右田「小泉は罪木のコテージに運んできた あいつに任せておけばたぶん大丈夫だろ……」

西園寺「『たぶん』じゃなくて『絶対』って言えこのバカ!」

ソニア「あの……わたくしからちょっとお話が……」

ソニア「さっきのモノクマさんの話を聞いて確信したのですが、今のこの状況、ある映画と酷似しています」

狛枝「ボクの考えてることもたぶんソニアさんと一緒だよ」

狛枝「あ、ゴメン ボクなんかがキミと同じ考えを持つなんておこがましいにも程があるよね……」

狛枝「いいよ、続けて」

ソニア「そのある映画というのが、シリーズ第一作目の『ファイナル・デスティネーション』から続くシリーズです」

ソニア「日向さんが後に起こる大事故を予知したり、その予知の中で亡くなった方と同じ方が被害に遭ったり……」

ソニア「昨日のジェットコースターの件から今まで、ほとんど映画の筋書きと一緒なんです」

ソニア「わたくし達が乗ったジェットコースターの名前もシリーズ三作目の映画のタイトルから来ていますし……」

狛枝「あのね、このシリーズには一貫したテーマがあるんだよ」

狛枝「主人公達は大事故の予知によってその難を逃れるんだけど、」

狛枝「本来そこで死ぬはずだった彼らは死の運命から逃れられず、次々に死んでいくんだ」

狛枝「この映画シリーズは、凄惨な死の描写や、人が死に至るまでのプロセスのシュールさを売りにした」

狛枝「ホラーサスペンス映画なんだけど、そんな話は今はどうでもよくて……」

狛枝「最も重要なのはまだ被害者が出る可能性があるってことなんだ」

狛枝「日向くんが見た予知夢の中で死んだのは十神クン、小泉さん、西園寺さん、澪田さんだっけ?」

狛枝「推測が正しければ、死亡した順番も大いに関係あるからしっかりと思い出した方がいいよ?」

日向「ああ、狛枝が今言った通りの順番で間違いない」

狛枝「じゃあ、話を現在に戻すと、実際に十神クンが死んで、次に小泉さんが死にかけた これってただの偶然だと思う?」

日向「つまりこういうことか?」

日向「十神達は本当は事故で死ぬはずだった」

日向「事故を免れて助かったと思ったけど、実際は死ぬタイミングが遅くなっただけで死ぬ運命に変わりはない」

日向「そして俺が予知夢で見た死の順番通りに実際にそいつらが死ぬ、と」

狛枝「何の才能もないキミにしては理解が早くて助かるよ」

狛枝「十神クンが死んだ今、小泉さんが死に、次に西園寺さんが死に、最後に澪田さんが死ねば」

狛枝「この映画の見立ては完成するんだよ」

この場合キーパーソンになる日向が死ぬとどうなるんだろ
未来は変わるのか

日向「それをやろうとしているのが『死の運命』ってやつで、『死の運命』が十神を殺したって言うのか?」

狛枝「勘違いしないでもらいたいんだけど、ボクが運命とかを本気で信じてる訳じゃないよ?」

狛枝「映画になぞらえたらそうなるってだけだから」

狛枝「大体、映画なんてフィクションだからね 現実と一緒にする方がどうかしてるよ」

左右田「たりめーだ! 十神だって小泉だってただの事故じゃねーか! 偶然だよ、偶然!」

狛枝「まだ分からないかなぁ…… 偶然でもこんなことが起こっちゃってるから問題なんでしょ?」

狛枝「誰かが故意に殺人を犯してくれた方がまだ防ぎようがあったよ……」

日向「狛枝……おまえ自身は結局どっちを信じてるんだ? 十神や小泉の事は偶然だったのか、必然だったのか」

狛枝「ボクは色んな可能性に目を向けているだけだよ」

狛枝「いざボクが希望の味方をしようとした時に間違った選択をしてしまわない為にね」

狛枝「その上で特に無視できないのが、誰かの故意によって偶然が引き起こされている可能性だよねぇ……」

狛枝「モノクマが言っていた『彼』って一体誰のことなんだろうね その彼こそが裏切り者だったりするのかな?」

狛枝「だとしたらボクらはかなりのピンチに立たされているみたいだよ」

狛枝「だってその彼は故意に偶然を引き起こすことが出来るんだからね」

狛枝「好き勝手にボクらを事故死させられたら堪ったもんじゃないよ」

日向「もしそんなやつがいたらどうやって立ち向かえば……」

狛枝「ま、諦めるしかないだろうね」

西園寺「えー!? 小泉おねぇもわたしも死んじゃうってこと!?」

澪田「いやあああああ!死にたくないっすよおおおおお!」

日向「そんなことはさせない……」

狛枝「そうだよ、日向クンと違って超高校級のキミ達なら力を合わせて立ち向かえばきっとなんとかなるって」

狛枝「それに、敵が見立てようとした映画がこれでむしろ良かったじゃない」

狛枝「『13日の金曜日』とか『エルム街の悪夢』とかだったらボクら今頃、全員揃ってあの世行きだよ」

ソニア「間違いありませんねっ!」

左右田「ソニアさん、なんでちょっと嬉しそうなんですか」

狛枝「そうだ、もう一つ良かったことがある」

狛枝「実は映画『ファイナル・デスティネーション』シリーズには運命的に引き起こされる死を回避する方法が用意されているんだよ」

左右田「そういう重要なことはもっと早く言えよ! それで解決だろ!」

狛枝「そう熱くならないでよ たかが映画の話なんだからさ」

狛枝「で、その方法なんだけど、『本来は死ぬ運命になかった人が身代わりになって死ぬ』ってことなんだ」

左右田「あぁ……まあ、映画の設定だとしたらありがちだな…… やっぱ現実はそう上手く解決しねーか……」

狛枝「西園寺さんか澪田さんの為になら身代わりになって死んでもいいって言う人いる?」

狛枝「いるわけないよねぇ……」

西園寺「うえええええええええええん!!」

九頭竜「狛枝、テメー余計なことばっか言ってんじゃねーぞ!」

七海「うーん……何とかしてあげたいんだけど……」

西園寺「わたしもう部屋にこもるから! 食事は誰か持ってきてよ! あと小泉おねぇが良くなったら絶対教えてね!」

左右田「一人にして大丈夫か?」

辺古山「私が部屋まで着いて行こう それと西園寺の部屋に危険物がないかチェックする そうすれば一人にしても問題ないであろう?」

ソニア「今はそれしかありませんね……」

狛枝「じゃあ、辺古山さんに任せたよ」

日向「唯吹には俺がずっと一緒にいるから」

澪田「今のでキュン死したら創ちゃんのせいだったっすよ……」

七海「あのさ、今朝の二つの事故は昨日の日向くんの予知夢と関係してるんだよね? その夢の内容、詳しく教えて?」

七海「もしかしたら夢を見た本人でも気付いていない重要な手掛かりがあるかもしれないから」

日向「わかった 分かってるとは思うけど一応覚悟して聞いてくれ」

日向「その夢は俺がジェットコースターに乗り込んだ後から始まって……――――」

日向「――――そこでソニアの声に気付いて目が覚めたんだ」

日向「あれ? でも、なんか変だな……」

七海「日向くん自身も話しててその違和感に気付いたみたいだね」

日向「そうなんだ 俺はあの時、一番前の席にソニアと並んで座ってたはずなんだけど、夢ではなぜかみんなの様子がちゃんと見えてるんだ」

日向「たとえば、まるで後ろの方の席に座ってたみたいに……」

狛枝「そういうのは夢では割とよくあることなんじゃない? 視点が俯瞰的になるっていうのはさ」

狛枝「夢の主が夢で起きた出来事を把握しているのは、ゲームマスターがゲームの進行状況を把握しているのと一緒だよ」

狛枝「あるいは、映画監督が映画のシナリオを熟知しているのと一緒って言った方が分かりやすいかな」

狛枝「監督は演技をする役者がちゃんと画面に映るようにカメラを配置するでしょ? 映画を観る人にその内容が伝わるようにさ」

狛枝「まあ、これはボクの持論なんだけどね」

日向「俺はなんとなくそれだけじゃないって気もするけどな…… 言われてみればそうかもしれない」

七海「日向くんの話では、西園寺さんと澪田さんの安否までは確認してないんだよね? 本当は生きてたってことも考えられないかな」

日向「それはあるかもしれない でも、西園寺と同じ高さから落ちた小泉は体が完全にバラバラに……」

澪田「想像するだけで恐ろしいっすー!」

七海「じゃあ、澪田さんは?」

日向「落ちた下は鉄骨だらけだったし、高さも相当あった それにコースターの下敷きになる可能性も高い」

日向「残念だけど、見込みは薄いと思う……」

七海「そっか……」

澪田「あのー、唯吹はまだ生きてるんすよ? そんなに暗くならなくても……」

期待

俺達は日が暮れるまで話し合ったが、「安全な場所でなるべく動かずにじっとしている」というのが唯一出た対抗策だった。

他にできる事と言えば、小泉の無事とこれ以上被害が出ないことを祈る、ということくらいだ。

七海「罪木さんが戻ってきたよ」

日向「小泉は大丈夫なのか?」

罪木「あ、あのぉ……西園寺さんの姿が見当たりませんけどぉ……」

辺古山「西園寺なら今は部屋に一人でいるが」

狛枝「ほとぼりが冷めるまでは出て来ないだろうねぇ その方が彼女も安全だろうし」

日向「西園寺に言えないほど酷いのか!?」

罪木「えぇと……治療は無事に済んだのですが意識がまだ戻らなくてぇ……」

罪木「あっ、でもぉ、容態を観察したところ命に別状はないかとぉ……」

日向「良かった……」

七海「西園寺さんにも伝えて早く安心させてあげようよ」

罪木「あの、じゃあ、私が伝えに行きますぅ ついでに夕食も持って行ってあげたいですし……」

罪木「西園寺さん、いつもお菓子ばかり食べているのでメニューを考えないと栄養が偏ってしまいますぅ」

狛枝「そんな気遣いが出来るなんて、さすがは超高校級の保健委員と言ったところだね」

日向「なんか小泉の性格が映ったみたいだな」

罪木「小泉さんが倒れている今は私が代わりになってあげなきゃって思って……」

澪田「蜜柑ちゃんの優しさに感動したっす! 曲名でたとえるなら『シャッターガールの贈り物』ってとこっすかね!」

左右田「小泉が無事ってことは今までのも本当は全部ただの偶然で、案外何事もなく済むんじゃねーか?」

七海「うん、そうだといいよね」

狛枝「でも十神クンのことは本当に残念だよ…… 才能に溢れるボクらのリーダーだったのに……」

日向「俺達を良い方向に導こうと頑張ってきたあいつがまさかこんなふうにいなくなるなんて……」

澪田「一番の癒やしキャラだった白夜ちゃんが……」

七海「十神くんの為にもこれ以上の犠牲はなんとしても食い止めないとね」

七海「彼がやろうとしたことを私達で引き継ぐんだよ」

澪田「良いこと言うっす! 千秋ちゃん! 唯吹も死の運命なんかには負けないっす!」

狛枝「それが彼への手向けにもなるだろうしね」

その日から俺と唯吹は同じベッドで寝ることにした。

唯吹を抱いていないと不安で仕方なかった。

次の日の朝、俺は唯吹が死ぬ夢を見て目を覚ました。

すぐ隣で特に変わりなく寝息を立てている唯吹の姿を見て俺は安心した。

一体、いつまでこんなふうに怯えて過ごさなくちゃならないんだろう。

でも、俺がしっかりしていないと唯吹を不安にさせてしまう。

唯吹はみんなの前では明るく振る舞ってはいるけど、怖くない訳がないんだ。

俺が絶対に唯吹を守る。

もし本当に誰かが身代わりになることでしか死を防げないのなら俺が代わりに死んでもいい。

それで唯吹が助かるなら……。

レストランに集まった俺達に告げられたのは最悪な知らせだった。

罪木「うぐぅ……皆さんに最初にお知らせしなければならないことが……」

罪木「朝方、小泉さんの容態が急変して……帰らぬ人に……」

罪木の話によると脳出血が原因らしいとの事だった。

罪木「すみませぇん……! 私が至らないばっかりに……!」

澪田「真昼ちゃんが……」

日向「……ってことは、西園寺が危ない!」

七海「西園寺さんは今もコテージにいるんだよね? 朝、ここに来る前に彼女と会った人いる?」

左右田「どうせずっと部屋にこもってんだろ?」

七海「……確認しに行った方がいいと思う」

九頭竜「小泉のこともあいつに言ってやんねーといけねーしな……」

俺達は西園寺が無事でいると信じつつも、早足であいつのいるコテージに向かった。

七海「西園寺さん、起きてる?」

呼びかけてもドアを叩いても中から反応はなかった。

七海「鍵が開いてる……」

ドアを開けて中を覗くと、そこにあったのは西園寺の無残な姿だった。

西園寺は首から大量の血を流し倒れていて、辺りには大小様々な鏡の破片が散乱していた。

慌てて駆け寄ったが既に手遅れだった。西園寺は死んでいた。

七海「原因はこの鏡……だよね 破片に血の跡が残ってる こんな大きな鏡どこにあったのかな」

ソニア「ライブハウスの倉庫にあった姿見です 着物の着付けをする際に使えると思って西園寺さんに場所を教えて差し上げたことがあります」

ソニア「西園寺さんは小泉さんから着付けの仕方を教わった後も、お一人で練習なさっていたようですから」

辺古山「その姿見をここに運んだのは私だ 部屋にこもっている間も使いたいと西園寺が言っていたのでな まさかこんなことになるとは……」

狛枝「小泉さんが死んだのは今日の朝方だよね? それなら西園寺さんが死んだのはついさっきってことにならない? 『死の順番』的にさ」

ソニア「きっと、朝起きて鏡の前で着物を着ようとした時にバランスを崩し、鏡に手を付いて倒れてしまったのです」

ソニア「そして、その時に割れた鏡の破片で首を切ってしまって……」

左右田「それで首が切れるってもうメチャクチャだな……」

狛枝「手にも切り傷が付いてるし、着物が不自然に着崩れてるから死体の状況もソニアさんの意見と一致するね」

罪木「私が検死した限りでも死後一時間以内かと……」

狛枝「映画の見立てがしたい死神さんはどうやら事故死にこだわっているみたいだね 事故で人が死ぬのも実際の映画通りってことかな」

狛枝「残るはとうとう澪田さんだけになっちゃったね」

日向「こんなのどうやって防げばいいんだよ……」

澪田「創ちゃん……」

唯吹は怯えた様子で俺にすがった。俺が泣き言を言ってる場合じゃない。

日向「大丈夫だ、俺が必ず守る……」

左右田「日向達も部屋にこもってた方がいいぜ…… 食事ならオレらの誰かが持ってくからさ」

狛枝「そうだね いくら頼りない日向クンでも一緒にいればそうそう事故にはならないでしょ」

日向「ああ……そうするよ じゃあ、俺の部屋に……」

七海「ねぇ、私も一緒にいていい?」

ちょww

日向「え?」

七海「ほら、人数が多い方が事故も防ぎ易いかなって だめかな?」

日向「寝る時もか?」

七海「私はソファでもいいよ?」

日向「いや、でも……」

狛枝「それはちょっと可哀想じゃないかな 七海さんじゃなく、日向クン達が」

狛枝「恋人がいつ死ぬか分からないような窮地に立たされた状況で、だよ?」

狛枝「若いカップルが部屋で二人きりになってする事と言えば、……言わなくても分かるよね?」

澪田「ぺろりん☆」

七海「うーん、そっかぁ」

日向(狛枝のやつ、見透かしたようなことを……)

狛枝「ま、七海さんが三人でしたいって言うなら話は別だけど」

九頭竜「こ、このド腐れ不健全ヤローがぁ!」

狛枝「ボクじゃなくて七海さんに言ってよ(笑)」

七海「別に二人の邪魔をする気はないんだ 無理言ってごめんね」

日向「こっちこそ心配してもらったのに悪い……」

花村「ぼくも入れればちょうど偶数だよ?」

左右田「オメーはよくこの流れで入って来る気になったな! つーか、それじゃ状況悪化してんじゃねーか!」

狛枝「そういう訳だから二人は部屋にいていいよ ボクらは対策でも練ってるからさ とは言ってもこれ以上出ないと思うけどね……」

狛枝「解決策があるとすれば、犯人に自分から名乗り出てもらうとか…… もしこの事件に犯人がいたらの話だけど」

ソニア「犯人に繋がる手掛かりが一切ないですからね……」

俺と唯吹はこの先、この事件が解決するか、あるいは修学旅行が終わるまで、部屋の中だけで過ごすことになった。

部屋に置いてある少しでも凶器になりそうな物は、今は使わなくなった唯吹の部屋に全て移動させた。

後は俺がしっかりするだけだ。唯吹を死なせてたまるか。生きて、みんなでこの島を出るんだ。

澪田「創ちゃん」

日向「ん?」

澪田「創ちゃんは唯吹の身代わりになって死のうなんて考えてないっすよね?」

日向「ああ、狛枝が言ってた死の運命から逃れる方法ってやつか……」

澪田「どうなんすか?」

日向「さぁな……」

澪田「考えてるならやめて欲しいっす もしそれで生き残れても全然嬉しくないっす」

日向「…………」

澪田「創ちゃんがあの時、ジェットコースターからみんなを降ろさなかったら唯吹はきっと死んでたんすから」

澪田「創ちゃんには一度、命を助けられてるんす だからもし唯吹が死んでもそれでチャラっすよ」

澪田「こうやって一緒にいられる時間が伸びたんすから、それだけで十分っす」

日向「…………」

澪田「聞いてるんすか?」

日向「そんなの……全然理由にならない」

日向「それじゃあまるで、おまえが生きてること自体が間違いって言ってるようなものだろ」

日向「死ななきゃいけない人間なんてここにはいないんだよ……」

澪田「じゃあ、創ちゃんが死ぬ理由もないっすね? それを聞いて安心したっす!」

日向「わかったよ…… じゃあ約束する 俺はおまえを残して死んだりしない」

澪田「その言葉が聞けて良かったっす」

日向「ただし、おまえが危ない目に遭ったら全力で庇うからな」

澪田「唯吹でも同じことするっすよ どっちが最後まで庇えるか競争っすね!」

日向「今回ばかりは意地でも勝つからな」

澪田「唯吹が勝った時の条件! 千秋ちゃんと、よろしくして欲しいっす 千秋ちゃんは創ちゃんのことが好きっすからね」

日向「わかった じゃあ俺が勝ったと時の条件 ……と思ったけどすぐに思いつかないな」

澪田「そうっすね…… 赤ちゃんとかどうっすか?」

日向「赤って誰だよ」

澪田「いや、赤ちゃんっすよ 『おぎゃー!』の赤ちゃんっす」

日向「子供作るのか!?」

澪田「いやー」

日向「いやーってなんだよ 確かに嬉しいけど……」

澪田「欲しいのは唯吹なんすけどね?」

澪田「創ちゃんとずっと一緒に生きていたいから、ずっと忘れたくないから、ずっと愛し続けたいから……」

澪田「愛の結晶とか、生きた証とか、生まれ変わりとか、なんかそういうベタなやつっすよ」

澪田「うきゃー、言ってて恥ずかしいっす!」

日向「作りたいからってすぐ作れる訳じゃないだろ……」

澪田「だから創ちゃんにはいっぱい頑張ってもらわなきゃっすね!」

その日運ばれてきた食事はどれも精がつきそうな物ばかりだった。

誰がメニューを考えたのか知らないが、なんていうか察しが良すぎだろ……。

七海「日向くん、澪田さん 起きてる? 朝食持ってきたよ」

日向「ああ、七海か ありがとな」

澪田「おはよっす! 千秋ちゃん!」

七海「おはよう 昨日は二人共ちゃんと眠れた?」

日向「俺も唯吹も疲れて……あ、いや、すぐ眠れたよ」

七海「そっか、よかった ふあぁ……」

日向「そう言う七海は眠そうだけど……」

七海「遅くまでゲームしてたから……」

七海「夜、二人が部屋でどんな事してるのか想像したらなんか眠れなくなっちゃって」

日向(最近、七海の発言が危なくなってきたな……)

日向「もう少し寝たらいいんじゃないか? 眠い状態じゃ考えもまとまらないだろうし」

七海「うん、そうするつもり 私は二人の無事な姿が見れて安心したから」

七海「日向くん、これは前にも言ったことだけどね 自分を犠牲にしようなんて思っちゃだめだよ?」

日向「わかってる 唯吹にも言われたよ」

七海「よかった 私は二人ならきっと大丈夫だって信じてるから」

七海「ほら、『やればなんとかなる』ってヤツだよ!」

七海「キミ達はゲームのキャラじゃないんだから、最初から決まったエンドなんてない」

七海「運命なんていくらでも塗り替えられる、未来だって創れる」

七海「だから自分を信じて、諦めずに最後まで頑張ろう!」

七海「私はずっと応援してるからね」

そこまで言うと七海は眠そうな顔をして帰って行った。

俺達を心配し、励ましに来てくれたんだろう。

七海に強く言われたお陰で、俺は少しだけ希望が持てた気がした。

唯吹と部屋で過ごす時間は本当に何事もなく過ぎていった。

十神、小泉、西園寺があれだけ連続して不幸に見舞われたのに、もう丸一日以上何も起きていない。

死の運命とやらもさすがに手が出せずに諦めたのだろうか。

俺は今みたいな平和な毎日がずっと続けばいいと思った。

澪田「創ちゃんにいっぱい愛されて唯吹は幸せっす これならいつ死んでも悔いはないっす」

日向「そんなこと言うなよ」

澪田「悔いはないっすけど心残りは沢山あるっすよ?」

澪田「創ちゃんとバンド組んだり、家庭を作ったり、子供育てたり……」

澪田「あっ、今の内に子供の名前も考えとかないっすか?」

日向「気が早いな」

澪田「さっそく一個思いついたっす!」

日向「早いな」

澪田「白夜ちゃんと真昼ちゃんと日寄子ちゃんと予知夢を合わせて」

澪田「真夜日夢」

日向「マヨビームって言ったか? っていうか男と女どっちだよ」

澪田「どっちでもいけるっす!」

日向「これは子供の為にも先に死ねないな……」

「くん……日向くん……」

七海か……? なんか頭が痛いし、体も重いような……。

七海「起きて! 日向くん!」

日向「七海?」

七海「やっと起きた 大変だよ、日向くん 澪田さんがいないの」

日向「は?」

俺はベッドから上体を起こし、辺りを見回したが唯吹の姿はどこにもなかった。

日向「今何時だ?」

七海「深夜の三時 ねぇ、澪田さんがどこに行ったか心当たりある?」

日向「いや……」

俺は唯吹に死が迫っていると直感した。あるいは既に……。

慌てて立ち上がるとめまいがした。どうも体の調子がおかしい。

日向「すぐ探さないと……」

七海「大丈夫? 日向くん 具合でも悪い?」

日向「今はそれどころじゃ……なんで七海が俺の部屋にいるんだ?」

七海「んーと、別に変な理由じゃないよ?」

七海「白状するとね、日向くん達が寝てる間、一時間おきくらいにこっそり様子を見に来てたんだ」

七海「寝てる間に何か異変が起きてたら大変でしょ? 実際起きちゃったけど……」

日向「だから朝会った時、眠そうだったのか…… 迷惑かけて悪いな 早く唯吹を……」

ドアの方に目を向けると、開いたままのドアの前に人影が立っていた。

いつからそこにいたんだ……?

罪木「あれあれあれ? もう起きちゃったんですかぁ? もうちょっと寝てても良かったんですよぉ?」

罪木「というか、なんで七海さんがいるんですかぁ?」

日向「罪木?」

七海「罪木さんこそどうしてここにいるの? ……何か知ってるの?」

罪木「何を知ってると思いますかぁ?」

日向「唯吹はどこにいるんだよ!」

罪木「えへへ……それは教えられません」

日向「じゃあ、やっぱりおまえが……!」

罪木「私が何をしたって言うんですかぁ?」

七海「罪木さんが澪田さんを誘拐したの?」

罪木「さぁ? どうでしょうねぇ?」

七海「じゃあ……西園寺さんを殺したのも罪木さん……だよね?」

罪木「え? なんのことですかぁ?」

七海「昨日……じゃなかった、一昨日の朝、みんなで西園寺さんの無事を確かめに行った時、部屋の鍵が開いたままだったでしょ?」

七海「これって変なんだよね…… 西園寺さんは死の運命に追いすがられることを恐れて自分から部屋にこもった」

七海「そんな彼女が鍵を開けたままにしておくなんて変なんだよ」

七海「寝る時は不安だろうし、着替えだって人に見られたくないだろうから、せめて夜から朝にかけては鍵を閉めておくと思う」

七海「それなのに鍵は開いていた その事から誰かに殺された可能性も考えるべきだった」

七海「だけど、私達は西園寺さんの死を着替え中の事故だと思い込んだ」

七海「それは十神くんや小泉さんの時が事故だったからってだけじゃなくて、もう一つ理由があると思うんだ」

七海「その理由って言うのが、罪木さんの『小泉さんが朝方に急死した』という証言」

七海「その証言によって私達はまんまと誘導されていたんだよ」

七海「『死の順番』通りに被害者が出るとしたら、西園寺さんが被害に遭うのは必ず朝方以降になるでしょ?」

七海「朝起きて着物に着替える時なら鏡の前に立ってもおかしくないし、鏡の破片なら凶器になり得る」

七海「だから私達はあっさり事故死だと思い込んでしまった」

七海「多少、事故の状況に無理があっても、十神くんの事故の状況を見た人なら少しも疑わなかったと思う」

七海「私は後から人に聞いただけだけど、すごい状況だったらしいもん」

七海「さらに罪木さんは駄目押しに、『西園寺さんの遺体は死後一時間以内』というウソの検死報告をした」

七海「じゃあ、実際に西園寺さんが死んだのはいつかって言うと、まだ西園寺さんが寝てる午前4時か5時くらいだと思う」

七海「あまり時間が早過ぎると西園寺さんの死んだ時間が朝じゃないって、素人目でもばれる危険性があるからね」

七海「罪木さんは西園寺さんに何度か食事を届ける際に、部屋にある大きな姿見が偽装工作に使えると目を付けた」

七海「そして実際に犯行に移ったのが一昨日の午前4時か5時くらい 部屋のドアをノックして西園寺さんが起きてくるを待った」

七海「罪木さん以外の誰かだったら、西園寺さんは警戒してドアを開けないかもしれないけど」

七海「罪木さんだったら一言、『小泉さんが意識を取り戻した』って言えばいいだけ」

七海「小泉さんと仲の良かった西園寺さんならすぐに会いたいって言うと思う だから簡単にドアを開けてしまった」

七海「そして部屋に押し入った罪木さんは西園寺さんの首を切りつけて殺し、事故に見せかける為の偽装工作を行った」

七海「本当にただの事故だった可能性も捨てきれないけど……」

七海「『小泉さんが朝方に急死した』『西園寺さんの遺体は死後一時間以内』という、」

七海「罪木さんにしか分からない情報を元に私達が結論を出してしまっていた事実が、罪木さんが犯人だと推理する材料になるんだよ」

七海「『小泉さんが朝方に急死した』って言うのも本当はウソで、西園寺さんよりも前にあなたが殺したんでしょ?」

七海「だってあなたの目的は、今起きている『例の映画の見立て』を自分の手で完成させる事だから」

七海「日向くんの予知夢も、ジェットコースターの事故も、十神くんの事故死も、小泉さんの瀕死の怪我を負う事故も、きっとただの偶然だったんだよ」

七海「モノクマの思わせ振りな発言も、この偶然を利用して私達の不安を煽るためのもの」

七海「それに乗せられた私達は、今起きている出来事が『例の映画の見立て』であると話し始めて、」

七海「そんな中であなたは、どういう理由でなのかは分からないけど、『例の映画の見立て(殺人)』の完成を目論むに至った」

七海「そして、その証拠にあなたは澪田さんを誘拐した」

七海「西園寺さんを事故死に見せかけたのは、今の状況を作り出す為の布石だったんだよね」

七海「だって、死の運命に付け回された人は必ず事故で死ぬってみんなに思い込ませれば、寝てる間に誰かが殺しに来ることまでは警戒できないもん」

七海「日向くんと澪田さんのコテージのドアの鍵が壊れていることも計算に入れていたあなたは、そのままその部屋を使ってもらいたかった」

七海「そうすれば二人が寝てる間にこっそり部屋に入ることもできるし、薬を吸わせるなりすれば二人を起こさないまま連れ去ることもできるから」

七海「どう? 罪木さん 反論があるなら言ってみて」

罪木「そんな言いがかりが通ると思ってるんですか? 何の証拠もないのに?」

罪木「まぁ、でも半分正解で半分不正解ってところですかね」

罪木「十神さんと小泉さんと西園寺さんと澪田さんは放っておいてもどうせ死ぬって決まってたんですよぉ」

罪木「でも西園寺さんがお部屋にこもってしまったので、早く死ねるように私がお手伝いしてあげようかなぁって」

罪木「それと小泉さんのことは私、ホントに何もしてませんよぉ? 何もせず放っておいたら勝手に死んじゃいましたからぁ」

罪木「うふふ きっと打ちどころが良かったんですねぇ」

日向「おまえがそんなやつだったなんて…… なぁ、放っておいても死ぬなんて、なんで言い切れるんだよ」

罪木「だってぇ、そう決まってましたからぁ」

罪木「日向さんも私と一緒に見ましたよねぇ? 彼らが死ぬ未来……次々死んでいく仲間……」

日向「何言って……」

罪木「日向さんと視界が繋がった時、私、思い出しました」

罪木「私は『あの人』の為に生きてるんだって……」

罪木「私のやったことは全部、愛するあの人の為なんですよ」

罪木「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

日向「思い出した……? あの人……?」

日向「そんな事より唯吹は無事なんだろうな!?」

罪木「まだ無事です」

日向「まだ……?」

罪木「日向さぁん、知ってますぅ?」

罪木「50Lサイズのビニール袋を頭から被せて首のところで袋の口を縛ると何分呼吸が出来るか」

罪木「酸素濃度がどんどん下がっていって……30分もすれば窒息死するでしょうねぇ」

日向「おまえ……!」

罪木「薬で眠らせてあるので気付いた時にはあの世かもしれませんねぇ」

日向「くそっ! あと何分だ!? 今すぐ探しに……!」

七海「待って、日向くん!」

日向「なんでだよ!」

七海「闇雲に探すだけじゃだめだよ」

日向「みんなを起こして手分けすれば!」

七海「落ち着かなきゃ正しい判断はできないよ」

日向「落ち着いてる場合じゃないだろ!?」

七海「日向くん」

七海は俺の首に両手を回してきて唇を奪った。それは絡みつくような口づけだった。

おかげで俺は余計な思考が剥がし落とされたような気分になった。

七海「何気に初めてだよね」

日向「おかげで落ち着いたよ……」

七海「ごめん、私がしたかっただけなんだ」

日向「…………」

>七海「ごめん、私がしたかっただけなんだ」
おいww

七海「……最後かもしれないから」

日向「え……?」

七海「罪木さん、なんで澪田さんをすぐ殺さずに誘拐したの?」

罪木「ぁ、やっとそれを聞いてくれましたかぁ?」

罪木「それはですねぇ、選べるんですぅ」

罪木「澪田さんを見殺しにするのか、命と引き換えにして助けるのか」

罪木「だってそういう筋書きでしたよねぇ? 私がしたいのはそういうことなんですよぉ」

罪木「お二人のどちらかがこの場で死ぬか、相手を殺すかすれば澪田さんの居場所は教えます」

罪木「助けを呼んだらその瞬間無効ですからね?」

罪木「さぁ、あの人の為に見せてくださいよぉ……」

罪木「希望の為に絶望的に死ぬのか、希望の為に殺して絶望するのか、絶望の為に生きて絶望するのか」

罪木「どれを選んでも絶望なんてぇとぉっても絶望的ぃ……」

日向「っ……!」

七海「…………」

いや、迷う必要なんてない。決めてただろ。命懸けで唯吹を守るって。

罪木「ナイフくらいは貸してあげますよぉ? 西園寺さんにも使った物ですけどぉ」

日向「貸してくれ……」

七海「どうするつもり?」

日向「俺が唯吹の代わりに死ぬ 七海は唯吹の居場所を聞き出して助けに行ってやってくれ」

七海「罪木さんの言葉を信じるの?」

日向「どっちだっていい」

日向「それで唯吹が助かれば嬉しいし、もし助からなくても俺が先に向こうで待っててやれるんだからな」

日向「あいつを一人で行かせられないだろ…… あいつ、死んでるおばけが苦手なんだよ」

七海「日向くん、シャツ脱いで」

日向「は?」

七海「いいから脱いで ほら、早く」

日向「こんな時に何を……」

七海「日向くんが脱がないなら私が脱ぐ」

日向「わ、わかったよ 脱げばいいんだろ……」

七海「それから、私をベッドに押し倒して」

日向「…………」

七海「あ、違った 私がベッドに仰向けになるから、日向くんは私の上にまたがって」

日向「なあ、七海」

七海「なに?」

日向「何をしようとしてるのか教えてくれよ」

七海「いいから言う通りにして これが最後のお願いだから」

日向「……わかった」

七海「いい? じゃあ、脱いだシャツを細く束ねて私の首に巻いて、そして首の後で交差させるように――」

日向「俺におまえの首を絞めて殺せって言うのか!?」

七海「違う、そうじゃないんだよ」

七海「私が勝手に死ぬだけ でも一人では出来ないから日向くんにお願いしてるの」

七海「これは日向くんにしか頼めない事なんだよ」

日向「……んだよ……それ……」

七海「ごめんね、日向くんの手を汚させちゃって」

七海「でも、痛い死に方はしたくないから…… 私に痛い死に方を選ばせないで 私のわがまま聞いてくれる?」

日向「自分を犠牲にするなって言ったのは七海だろ!」

七海「私は別にいいんだよ 私は日向くん達とは違うから」

日向「違う? 何が違うって言うんだ 全部一緒だよ! 大事な仲間だ!」

七海「ありがとう 日向くん」

七海「私は幸せだから……日向くんの手で死ねたら、私は幸せ……」

日向「七海……俺は、おまえを失いたくない……」

七海「澪田さんを失ってもいいの? 早くしないと手遅れになっちゃうよ 日向くんが無理って言うなら……」

日向「……わかった……やる」

七海「やっと言うこと聞いてくれたね」

七海「日向くんは心配しなくていいからね 私が力加減を合図で教えるから」

七海「血管が絞まって徐々に気を失うから、最後に息が出来ないようにギュッと絞めれば終わり」

七海「ね、簡単でしょ?」

日向「簡単に言うなよ……」

七海「あ、でも、無意識に体が反応しちゃうかもしれないからちゃんと押さえててね?」

七海「じゃあね、日向くん 澪田さんをよろしくね」

なんで俺はこんな頼みを引き受けたんだろう。

唯吹を失いたくないからか?

じゃあ七海は……。

『こうやって一緒にいられる時間が伸びたんすから、それだけで十分っす』

『千秋ちゃんと、よろしくして欲しいっす』

『千秋ちゃんは創ちゃんのことが好きっすからね』

七海は俺のことが……。

『澪田さんが死んじゃうようなことになっても構わないくらいに日向くんのことが好きって思えたから』

俺のことが……。

『私は幸せだから……日向くんの手で死ねたら、私は幸せ……』

俺も……おまえにこれだけ想われて幸せだよ。

俺に合図を送っていた七海の腕が力なくベッドに落ちた。

七海の瞑ったままの目から涙が零れた。

ごめん、七海。

俺は気を失った七海の傍を離れた。

日向「罪木、ナイフを貸してくれ あと、俺が死んだら七海を起こして唯吹の居場所を教えてやってくれ」

唯吹の命が尽きるまであと何分だろう。

でも、少なくとも七海は生きられる。

それで十分に思えた。俺は七海が好きだから。

唯吹と七海、二人の為に死ねるなら俺も幸せだ。

俺はナイフを握り、目を瞑った。

心臓は骨に守られて当たらないかもしれないから、狙うとすれば首の動脈。

出来るのか? 俺に……。

いや、出来なければ唯吹が死ぬだけだ。

俺は意を決してナイフを――

遠くなりかけてた意識が少しずつ鮮明になってきた。

私……死んでない……?。

首には絞められた感触が残っている。

顔を起こすと日向くんがナイフを握り、立っていた。

日向くんは自分が死ぬ道を選ぶつもりだ。

私は無我夢中になって、日向くんの持つナイフを奪った。

日向「七海!? 気絶したんじゃ……」

こういう展開になる事は予想できた。

日向くんは優しいから。

そんな日向くんだから私は好きになった。……と思う。

恋愛なんてした事のなかった私だけど、日向くんに出会って色々な事を知った。

日向くんを想う感情がぶわぁって溢れてきて、好きってこういう事なんだ、とか。

日向くんと澪田さんが付き合うのを見て胸がぎゅうってして、これがヤキモチなんだ、とか。

それから、日向くんと一つになれた時も。

初めての時は、「足りなかったパーツがやっと見つかった」みたいな、そんな不思議な気持ちだった。

二回目の時は、もう何も考えられなくて、幸せすぎて死にそうだった。

きっと私の心と体はすっかり日向くんの物になってしまっているんだろう。

私は日向くんを守れるならこの身がどうなっても構わないとさえ思える。

だから私はやる。

ナイフで自分の首を切って、その後は日向くんと澪田さんに幸せになってもらうんだ。

ナイフを首に当て、肉に食い込ませた。

痛い痛い痛い痛い。

それ以上、手に力は入らなかった。

痛いし、手は震えるし、すごく怖い。

耐えられず、ナイフを落としてしまった。

動脈は切れたかな。

血はいっぱい出てる……気がする。

ああ、私って弱いなぁ……。

こんなに痛いなら日向くんの手で絞め殺されたかった。

もっと言うなら日向くんとエッチしながら絞め殺されたかった。

私はそれ以上立ってる事が出来ずその場に崩れた。

日向くんが私の名前を呼んで抱きかかえてくれる。

嬉しい。

なんだ、私って全然死ぬ気なかったんだ。

日向くんの腕に包まれてると、ずっとこうしていたいって思える。

二人で生きて、これからもずっと一緒にいたい。

だから、残念だけど澪田さんの事はもう諦めよう。

日向くんはきっとすごく悲しむけど、私が代わりになってあげられれば……。

あ、だめだ。私、もう死ぬんだっけ……――

七海は俺に抱えられた状態のまま気を失った。

七海の首の傷は幸い深くなかった。

この分なら死ぬ事はないだろう。

今は俺が手で傷口を押さえ止血している。

俺に選択の余地は残されていなかった。

七海の傷の手当てを誰かに任せ、他の仲間と手分けして唯吹を探しに行くしかない。

唯吹にはもうあまり時間は残されていないんだ。

罪木「あっ 違います違います そうじゃないですってー」

罪木は七海の傷口を押さえている俺の手を払いのけた。

止血の仕方を間違ったか?

と思ったがそうじゃなかった。

罪木は七海の首にナイフを突き立て、深々と切り裂いた。

罪木「このくらい切らなきゃ死にませんよぉ」

俺は言葉が出なかった。

七海の首は骨のある辺りまでばっくりと裂け、その裂け目からドプンドプンと心拍に合わせて血が溢れ出た。

それは取り返しが付かないとすぐに分かる程の明確な「死」だった。

俺は七海の血を浴びながら、ただ呆然とするしかなかった。

しばらくすると七海の心臓は完全に動きを止めた。

罪木「見てられなくてついやっちゃいましたぁ」

罪木「でも七海さんは自分から死を選んだみたいなので、約束通り澪田さんの居場所は教えますね」

罪木「そこのベッドの下です」

日向「ベッドの……下……」

俺は七海の死体を床に置いて、ベッドの下を覗いた。

そこに確かに唯吹はいた。

俺は唯吹をベッドの下から出してやった。

日向「ビニール袋を頭に被せたって言ったよな……30分で窒息するって……」

唯吹の頭には何も被せられていなかったし、眠っているだけでちゃんと息もあった。

罪木「薬で眠らせたとは言いましたけど、ビニール袋を被せたなんて一言でも言いましたっけ?」

罪木「ビニール袋を被せた状態で何分呼吸が出来るか知ってます?って聞いただけですよぉ?」

罪木「でも私としては助かりましたぁ 日向さん達が勘違いしてくれたおかげで私は楽することができましたから」

罪木「だって、澪田さんをわざわざ遠くまで運ぶのは面倒ですからねぇ」

罪木「澪田さんが大きい袋を被せられてると思い込んでくれたおかげで、ベッドの下は捜索場所候補からは勝手に外してくれますし」

罪木「日向さんも七海さんも死なずに澪田さんを捜しに行く展開になっても、二人が澪田さんを捜しに部屋を出た後で、私がこの場で澪田さんを殺せますから」

罪木「私にとっては良いこと尽くめなんですぅ」

罪木「それにしても……」

罪木「日向さん達が時間に追われながら殺すとか殺さないとかやってるすぐ下で、その目的である澪田さんが寝ていたなんてホントお笑いですよねぇ」

罪木「その上さらに死んだとなれば……もう絶望的ですよねぇ」

日向「でも、唯吹は……助かるんだよな……」

罪木「やだなぁ、生かしておくわけないじゃないですかぁ」

罪木「死の運命はもう追って来ませんけど、代わりに私がここで殺しますからぁ」

罪木「あの人だってそれを望んでいるんですぅ」

罪木「彼女を守りたかったらナイフを素手で防いでみてくださいねぇ?」

罪木はナイフを振りかぶった。

モノクマ「あー、ちょっと待って 罪木さん」

モノクマ「キミはもうクロとして二人殺してるから三人目は殺せないんだよね」

モノクマ「悲しいけど、これってルールなのよね…… まあ、ボクが作ったんだけど」

モノクマ「そういう訳なのでこれで終了!」

モノクマ「日向クンの目の前で澪田さんが死ぬ展開も見たかったけどそれはお預けかなあ」

日向「罪木、おまえは七海の事も今日の計画に入れていたんだな?」

日向「おまえが部屋に入ってきた時、たまたま七海が居合わせたみたいな反応だったけど」

日向「たぶんおまえは唯吹の殺害を計画する中、偶然にも七海が深夜に俺の部屋の様子を見に来る事を知ったんだ」

日向「そしてそれを利用して、俺と七海を自滅させ、最後に唯吹を殺す計画を考えた」

日向「だってそうじゃなければ、唯吹をベッドの下に隠した後でわざわざ部屋の外に出てからまた入ってくる理由がない」

日向「俺だけに自殺を迫るつもりなら、俺を起こして『唯吹を誘拐した』って言えばそれで済むんだからな」

日向「おまえは、俺の部屋へ様子を見に来た七海に対しても、」

日向「『唯吹を何処かへ誘拐した後で戻って来た』と印象付ける為に、七海が来るのを外で待ってから部屋に入って来たんだ」

日向「おまえの計算になかったのは、俺達が自殺あるいは他殺に失敗すること」

日向「そのせいでおまえは自ら七海を殺す事になり、唯吹を殺す事が出来なくなってしまった」

日向「同一のクロは二人までしか殺せないっていうルールをおまえが把握してたかどうかまでは分からないけど……」

罪木「で? 結局何が言いたいんですか?」

日向「もし七海がいなかったら俺と唯吹は二人とも死んでいたかもしれない」

日向「俺達は最後まで七海に命を救われたんだよ」

日向「七海が命懸けで俺達に未来を創ってくれた 希望を託してくれた」

日向「だから俺は、その希望を絶対に潰えさせたりはしない! 絶望に屈したりしない!」

日向「七海が創った未来を希望を持って進む事こそが、七海がここにいた事の証明なんだ……」

俺は七海を見た。首から下は血に濡れていたけど、顔は比較的綺麗なままだ。

あんな死に方をしたのに穏やかな死に顔だった。

俺は七海を抱き起こして別れのキスをした。

七海は最後かもしれないからと言って俺に一度してきたけど、本当にそれが七海にとっての最後になってしまった。

こんな最期になるなら、七海ともっと一緒にいてやれば良かった。

七海が喜ぶ事を沢山してやりたかった。

七海が望むなら唯吹に隠れてでも愛し合いたかった。

俺は七海を強く抱いた。

もう抜け殻になってしまったけど、遠くへ行ってしまったあいつに想いが届くように。

俺は七海が好きだった。七海がそれに気付いていたかどうかは分からない。

でも七海はそれを知っても、俺と唯吹の事を応援し続けただろう。

報われなかった七海に少しでも多く報いたい。

俺が生きる事が七海の為になるなら俺は生き続ける。

そして、七海のことをこれからもずっと想い続ける。

もし唯吹との間に子供が出来たら七海に因んだ名前を付けよう。

唯吹もきっとそれを望むだろうから。

罪木「あのぉ、私を無視して死体とイチャつくのやめてくれませんかぁ? これってイジメじゃないですかぁ?」

モノクマ「澪田さん、いつまで寝てるの? もう終わっちゃったよ 起きろ!」

澪田「ん……モノクマちゃん? え……血? 千秋ちゃん……!?」

モノクマ「ほら、ぼさっとしてないで他の仲間を集めたら?」

俺と唯吹はコテージを周って部屋で寝ていたみんなを集めた。

ソニア「七海さん……」

左右田「なんで七海が……!」

『(ピンポンパンポーン)』

『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』

『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』

『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』

モノクマ「今のは小泉さんと西園寺さんの分も合わせて三回ね」

狛枝「死体発見アナウンスと学級裁判は休むとか言ってなかった? それはもう終わったの?」

モノクマ「終わったから流したんだよ それに休むとは言ったけどやらない訳じゃないからね?」

モノクマ「でも捜査も学級裁判もする前から誰がクロかはっきりしてるなんてテンション下がるなぁ……」

モノクマ「こんな殺人に捜査パートと裁判裁判パートの時間割くのも尺が勿体ないし、もうおしおき行っちゃいますか!」

モノクマ「十神クンを滅多刺しにして殺した、花村輝々クン!」

花村「ええ!?」

モノクマ「小泉さんの頭をガツンとやって殺した、辺古山ペコさん!」

辺古山「なんだと!?」

モノクマ「西園寺さんと七海さんの首を切り裂いて殺した、罪木蜜柑さん!」

罪木「うふふ あの人に会える……」

モノクマ「この三人のクロがおしおきにけってーい!」

日向「なんでだよ! 十神と小泉は事故だろ!」

モノクマ「事故でも何でも人を殺したら殺人なの! この島ではどんな死に方でも殺人なの!」

日向「なんだよそれ……!」

九頭龍「ふ、ふざけんなよ!」

澪田「輝々ちゃんとペコちゃんは何も悪いことしてないっすよ!」

左右田「そんなのアリかよォ!?」

モノクマ「超高校級の三人の為にスペシャルなおしおきを用意しましたっ!」

ソニア「こんなの酷すぎます……!」

田中「慈悲は無いのか……!」

狛枝「絶望の為に仲間を殺した罪木さんはどうなってもいいけど、花村クンと辺古山さんまで犠牲になってしまうなんて悲しいよ」

狛枝「こんな終わり方は絶望的だね…… 本当に救いようがないほどの絶望だよ」

狛枝「でもさ、こんな時だからこそ……」

モノクマ「では、張り切っていきましょう! おしおきターイム!」


生き残りメンバー 7人

…………。

「あれ、生きてる……?」

見知らぬ天井が見えた。

やっぱり失敗したんだ。

自殺出来なかった。

日向くんや澪田さんはどうなったんだろう。

私が自殺に失敗したって事は……。

……今は考えても仕方ないか。

とりあえず現状を把握しよう。

私は、私がいつもしていたように今を始めることにした。

日向「ソニア、ドッキリハウスからは何か見つかったか?」

ソニア「ドッキリハウスはわたくし達の全員が揃っていないと入れないらしいのです」

左右田「ジェットコースターの時みたいな事になるのはゴメンだぜ……」

モノクマ「命の危険は無いから安心して」

九頭龍「あぁ? そんなんで信用しろっつーのか?」

モノクマ「オマエラを閉じ込めて殺し合いが起こらない限り出さない、とかそんなゲスい事は一切考えてないよ?」

俺達は列車に乗り込み、ドッキリハウスへと向かった。

向かった先の建物の中で待っていたのは俺達がよく知る人物だった。

日向「七海!?」

七海「あ、みんな また会えちゃったね」

左右田「どうなってんだ!?」

澪田「ゆゆゆ幽霊!?」

九頭龍「また偽物か!?」

モノクマ「どう? ドッキリした? 幽霊かと思ってドッキリしたでしょ?」

モノクマ「実はこの七海さんはボクが作ったホログラム映像なのです!」

日向「ホログラムだって?」

俺は七海に向かって手を伸ばしてみた。

柔らかくて温かい感触があった。

日向「あれ?」

七海「日向くん、確かめるだけなら胸じゃなくてもいいよね?」

日向「わ、悪い! 目についたからつい……」

狛枝「日向クン……正直に言いなよ 本当は触りたかったんでしょ?」

日向「なんでホログラムなのに触れたんだ?」

モノクマ「ボクが作ったホログラムは質感、温度、重み、匂い、味、全てリアルに感じる事が出来るからね!」

左右田「ホログラムってレベルじゃねーぞ」

九頭龍「気色わりーことしやがって」

日向「味はいらないだろ」

モノクマ「唾液がシロップみたいに甘かったり、オシッコがカルピスみたいに甘酸っぱかったりしたら面白いでしょ?」

日向「それのどこがリアルなんだよ」

左右田「変態の発想だな……」

七海「口の中が甘いと思ったらそういうことだったんだ」

モノクマ「ちなみに血液は苺ミルクで、オシリからは……」

澪田「ビタァァァアア!!」

九頭龍「ホログラムがペコだったら良かったとかちょっと思っちまったじゃねーか……」

モノクマ「七海さんはボク的にはいてもいなくてもどっちでもいいけど他のみんなはそういうわけにはいかないんだよね」

九頭龍「チッ モノクマの趣味に付き合ってられるか 俺は建物内の探索に行くぜ」

モノクマ「ボクのおすすめはモノクマ資料室だよ!」

左右田「それより出口はちゃんとあんだろーな?」

モノクマ「ちゃんとあるよ? 出たくなったら出してあげるからいつでも言ってね」

左右田「逆に怪しいな……」

モノクマ「ただし、人数分の個室は一応用意してあるけど食べ物は建物内に一切無いからお腹が空いて倒れる前に出た方がいいよ」

モノクマ「七海さんはホログラムだからお腹も空かなければ眠くもならないけど、生きてるオマエラは別でしょ?」

ソニア「田中さん、わたくし達も探索に行きましょう」

日向「七海、ホログラムって言っても自我はあるのか?」

七海「うーん、あるのかな? あると思う それに感覚もあるよ 痛みだって感じるし」

日向「じゃあ記憶は? おまえが死ぬ直前とか……」

七海「うん、覚えてるよ 自分で首を切って……その後の事はモノクマに聞いたんだけど、私、罪木さんに殺されちゃったんだってね」

日向「ああ……その時の事についておまえに謝りたかった ホログラムのおまえに言ってもしょうがないかもしれないけど――」

俺も唯吹も七海に伝えたかった気持ちを伝えた。

七海「私はね、二人が無事でいてくれたのが何より嬉しい またこうして会えたのが夢みたいだよ」

狛枝「建物内は一通り見て回ったけど目ぼしい物は何もなかったよ」

左右田「船の部品はあったにはあったけどラジコンサイズとか聞いてねーぞ!」

九頭龍「ここに長居する意味も特にねーしそろそろ出ねーか?」

モノクマ「出たい人はファイナルデッドルームへどうぞ 生死を賭けたゲームに挑戦して外に出ることが出来ます!」

左右田「命の危険は無いって言ってたじゃねーか! ありゃあウソかよ!」

モノクマ「ゲームは強制参加じゃないよ? したくなかったらしないで出てもいいからね」

モノクマ「でも挑戦して最初に勝った人にはゲームの難易度に応じたご褒美があるんだけどなあ」

狛枝「へえ、面白そうじゃない」

モノクマ「詳しい説明はファイナルデッドルームの中でするので外に出たい人から入ってね」

モノクマ「探索して喉渇いたでしょ? 全員が出た後にジュースでも奢ってあげるよ」

狛枝「じゃあ、悪いけどボクから先に行かせてもらうよ」

モノクマ「分かってるとは思うけど七海さんは出られないからね? みんながここを出た後で消すから」

みんな次々に出て行った。

ソニア「日向さん達はまだ残られるのですか?」

日向「俺はもう少しここにいるよ」

澪田「創ちゃんが残るなら唯吹も残るっす!」

七海「私のせいで引き止めちゃってるみたいでごめんね」

日向「いや、俺が一緒にいたいだけだから……」

澪田「もしかして唯吹邪魔っすか?」

日向「そうじゃなくて、なにか七海にしてやれることはないかなって」

日向(俺がしたいだけなのかもしれないけど)

七海「して欲しいこと? うーん……いっぱいあるかなぁ」

日向「たとえば?」

七海「ちょっと言えないこと……とか」

澪田「やっぱり唯吹、別の部屋行ってるっす…… これ唯吹のSSなんすけど……」

七海「日向くん、お腹空いてるでしょ? みんなのところに戻らないの?」

日向「唯吹は先に帰しちゃったし、俺が出て行ったらいよいよおまえは消えるんだぞ?」

七海「私はいいんだよ だってもう死んでるんだし」

七海「いいんだよ 最後に日向くんとの思い出が作れたから 最期の思い出が出来たから」

日向「なんとか一緒にいられないのか? ずっととは言わずとも、もう数日とかさ……」

日向「なぁ、おまえの唾液って甘いけど、糖分とか含まれてるのかな」

七海「……飲みたいの?」

七海「うーん……ホログラムって言ってたから、甘いだけで栄養はないと思うな」

七海「たとえそれでお腹は膨れても吸収されずに体の外に排出されるだけだよ たぶん」

日向「試してもいいか?」

七海「日向くん、もう何日も何も食べてないでしょ 本当に死んじゃうよ」

七海「私、日向くんが死んじゃったら嫌だよ?」

七海「澪田さんやみんなもきっと心配してるよ」

日向「おまえは怖くないのか? 消えていなくなること……」

七海「うーん……よく分かんないけど、寝る事と一緒じゃないかな」

七海「……うん、良い夢が見られそうだよ 日向くんのおかげだね」

日向「俺は怖いよ……またおまえを失うことが……」

七海「あのね、私はホログラムなんだよ? ゲームキャラみたいなものだから」

七海「感情移入はほどほどにね」

日向「感情のないゲームキャラが俺を好きって言ったりするかよ」

七海「これは恋愛ゲームだからね キミが私を本気で好きになってここに残ったらゲームオーバーでバッドエンド」

七海「たぶんそういうゲームなんだよ、きっと」

日向(俺が知ってる恋愛ゲームと違う)

日向「モノクマは俺だけを狙い撃ちして殺すつもりってことか?」

日向「おまえの気持ちも全部ウソで作り物ってことか?」

七海「うん、全部ウソで作り物 がっかりした?」

日向「しない ウソでも作り物でもなんでもいい それでもおまえはここにいるじゃないか」

日向「唯吹に教わったよ それが一番大事なことだって」

七海「はぁ……やっぱり私、恋愛ゲームだけは苦手だなぁ」

日向「え?」

七海「本当は私が日向くんを好きになった時点でゲームオーバーだったのかもね」

七海「ゲームオーバーっていうかチェックメイト? 詰みってやつだよ」

七海「この島での好きは付け入る隙になっちゃうからね」

七海「それ以前に私は澪田さんに負けちゃってる訳だけど」

七海「でも日向くんは私と違って生きてるからね 生きてさえいればきっとなんとかなるよ」

七海「だからみんなのところに帰ろう? ね?」

「日向クン、キミで最後だよ 全く、いつまで彼女をほっぽり出してイチャこいちゃってるのさ」

「さあて、キミは選ぶことが出来るよ 生死を賭けたゲームに挑戦するか、しないか」

「ゲームに勝ったご褒美は狛枝クンが持って行っちゃったからもうないんだけどね」

「じゃあゲームに挑戦する意味はないんじゃないかって? そう思うならしなくてもいいよ」

「でも実はもう一つこのゲームに賭けてるものがあるんだよ」

「それは『重み』」

「みんなにはロシアンルーレットに挑戦してもらっていてね」

「ロシアンルーレットって知ってる?」

「リボルバー式拳銃に一発の弾丸を込めて自分のこめかみに向かって引き金を引く度胸試し的なゲームなんだけど」

「6つの弾倉がある銃に、通常通りに1発だけ弾を込めて行った場合は10キログラム」

「2発なら5キロ、3発なら3キロ、4発なら1キロ、5発なら0キロ」

「撃った時に弾が出なければ勝利で、弾の数に応じた重みが加算される」

「ちなみに、勝った時のご褒美はそれとは逆に弾が多いほど豪華になるんだけど、それは狛枝クンがもう全部持って行っちゃったから……なに?」

「そっか、何の重さか言ってなかったね」

「みんなが出た後でジュースを奢るって言ったでしょ?」

「そのジュースの搾り器に上から掛ける重さだよ」

「キミは苺ミルクって好き?」

「あ、気付いちゃった? 日向クンは察しがいいなあ」

「そう、キミが散々イチャイチャしてた七海さんを圧し潰してジュースにしようと思って ただ消すのは勿体ないからね」

「……人の体が数十キロ程度の重さで潰れないのはボクも知ってるよ」

「だから、ロシアンルーレットに挑戦しない場合に加算される重みは……100キロ」

「そんなに深刻になる必要はないよ たかがホログラムなんだから、生きた人間が潰される訳じゃないでしょ?」

「今のところ最高難易度の5発で挑戦した狛枝クン以外は誰もロシアンルーレットに挑戦してないから搾り器に掛かる重さは500キロ」

「加えてキミも挑戦しないって言うなら合計で600キロ」

「七海さんの体が耐えられる限界をとっくに超えちゃってるね」

「これは色んな骨や関節がミシミシボキボキ音を立てながら、じわじわと体が壊れていく重さだよ」

「想像するだけで恐ろしいよね どんな苦しみが彼女を襲うんだろうね しかもホログラムだから途中で気絶なんて出来ないからね」

「人体で言うところの脳髄の辺りが破壊されるその瞬間まで自分が壊れる感覚を味わい続けることになるよ」

「で、キミはゲームに挑戦するの? しないの?」

「キミが最高難易度の5発で挑戦するって言うなら、ご褒美はないけど七海さんを潰すのはやめてあげてもいいかな」

「あ、そうだ 言い忘れてた これもファイナルデッドルームに入ったみんなに言ってる事だけどね」

「オマエラの中に潜む裏切り者って、七海千秋さんなんだよ」

「あははっ……七海さん以外のこの島にいた全員がボクも含めてみんな『絶望の残党』だったなんてね……」

「今にして思えば、罪木さんが良い例だった訳だ いや、最悪な例、だね」

「絶望に身を落とすような奴は全員死んだ方がいいんだ……」

「そうだ、日向クンが戻って来たら残った全員で盛大に死んでやろう」

「うん、それがいい 最低なボクらにとっては最高な最期じゃないか」

「絶望であるボクらがこの世から消えること それが希望だ」

「最期の言葉を言う暇なんて誰にも与えない」

「何の感動も、何のドラマもなく、あっさり死ぬ」

「そんな最期こそがボクらには相応しい……」


GAME OVER

以上で終わりです。ありがとうございました。

これで終わり?
冗談はよしてくれ

澪田は…

『女のマロン』


「澪田さんもいるのにこんな事していいのかな……」

「誘って来たのは七海じゃなかったか?」

「えっと……そうだっけ?」

ぐおおおお! 別の部屋にいるのに声が筒抜けっす!

耳が良いのは何かと辛いっすね……。

あれ? でもなんで唯吹が千秋ちゃんに遠慮しなくちゃならないんすか?

あの千秋ちゃんはホログラムっすよね?

それはつまり何してもいいって事じゃないっすか!?

千秋ちゃんの色んなところをペロペロし放題!?

じゃなくて……創ちゃんを独り占めされるのは我慢ならないっす!

唯吹も入って行って三人でただれた青春の一ページを作るっすよ!

これは袋とじ不可避っすねー!

続けておくれ 打ち切りなんてやめよしん

途中からヒロインが七海に、主人公が狛枝になってしまっている

澪田に救いを…

澪田「創ちゃんを好きにしようったってそうはいかないっすよ!」

日向「どうしたんだいきなり!?」

澪田「一度は千秋ちゃんの為を思って身を引いた唯吹っすけど、やっぱり我慢できなかったっす!」

澪田「唯吹も交ぜてー!」

日向「交ぜてって…… まあ、いいけど……」

七海「えっ やだ」

日向「やだって、なんでだよ」

七海「うーん……なんとなく」

澪田「なんとなくで拒絶されたっす」

七海「でも、どういうことになるんだろう」

七海「えっと……三人で? ちょっと想像できないや」

澪田「唯吹と千秋ちゃんが××する様子を創ちゃんが指を咥えて見てる感じっすかね!」

日向「俺が想像してたのと違った……」

十神「なんでそういう展開になる……」

十神「まったく、低俗すぎて見ていられん 苗木、あの三人の監視は任せたぞ」

苗木「ボ、ボク!? 霧切さん!」

霧切「ちょっと、私を巻き込まないでよ」

苗木「なんでこんな時にボクばっかり!」

十神「極力、監視の目は休めないんじゃなかったか?」

十神「良かったな また良いモノが見られるぞ」

霧切「ふふ……後で感想聞かせてね」

苗木「二人共、ボクをイジメて楽しんでない……?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月28日 (火) 23:37:31   ID: xor6Wy02

なんか展開が

2 :  SS好きの774さん   2016年12月28日 (水) 15:26:57   ID: hFpymwaf

ほんとにおもしろい

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