オリss注意 ころしあいの果てに (9)

少女「終わりにしましょう、精霊王。これ以上の争いは無意味です」

精霊王「ほざくなよ、汚らわしい化けものめ。

人間に殺された私の赤ん坊がどれほどいる?

貴様は私の子供たちを何人殺めたのだ?

もはや、共存の道は閉ざされた!」

少女「精霊王、貴方が変われば、殺し合いは終わるでしょう」

精霊王「くっくっ、はっははっははは

貴様は人間の王にでもなったつもりか?

人間の家畜である貴様にそんな力はない!

もはや、儂を殺せば次に殺されるのは貴様であろうが!

滑稽だぞ、化けもの。道化にでもなった方がよっぽど似合っている」


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少女「精霊は他より力を持ちすぎています。その自覚を持ってください」

精霊王「だから、人をみだりに殺してはいけないというのか?

手足をもいで、木々に吊り下げるのが悪いと?」

少女「はい」

精霊王「馬鹿な!

儂は知っておるぞ、化け物

奴らは、同じことを、いやそれ以上のことをしている

おぞましくも、森や草原にすむ豚や牛を狭く汚らしい籠へ閉じ込めた

貴様は一度でも彼らの声を聴いたことがあるか」

少女「いいえ」

精霊王「なかろうな

彼らは助けを求める言葉すらも失ったのだ

もはや今では、儂であっても聞き取れぬほどの囁きよ」

少女「生きる為です。個体数が増加した彼らにそれ以外の道はなかった」

精霊王「なれば、儂らはその数を減らしてやったのだ!」

少女「その結果、人間という種が絶滅の危機に瀕しています」

精霊王「ふふふ、それこそ、奴らが好きな言葉が当てはまるだろう。

『自然淘汰』の結果というやつだ。

儂らが人間という種に憎しみを持って生まれたのもその結果であろう

やつらは滅ぶ運命なのだ」

少女「高度に発展した種全体がここまでひとつの種を滅ぼそうとするなんて、例がありません」

精霊王「貴様と話していると、人と話している気分になるな

傲慢で、すべて自分の思った通りになると思っている。

貴様も所詮は蛙の子か」

少女「私は人からつくられました。

それでは、もう一度問います

『もう、人に危害を加えないと約束してください。

さもなければ、精霊の源である貴方を殺し、精霊という種が滅ぶことになるでしょう』」

精霊王「誓おうぞ、儂と儂がこれから産む子供たちはその命尽きるまで

憎しみを溢れさせ、人を殺し続けると。

貴様とて例外ではない」

ピピッ、ザシュ

グチャア

ターゲットが死んだことをAIが告げた。

同時に体内に仕込まれたタイマーが起動する。

少女はすばやく、人がいないことを確認し

その場に寝そべる。

残された時間で何をしようかと、ぼんやりとし始めた少女は

ふと精霊王の言葉を思い出した。

初めて言われたわ、道化に向いてるって。

少女はゆっくりと右手を目の前に持ってきた。

精霊王との闘いで、ところどころ橙色の皮膚は剥がれ落ち、濃い緑色のボディが覗いていた。

もし、私の体がメンテナンスを受けたらどうだろう。

少女の皮を被った鋼鉄のボディに

AIが埋め込まれた、精霊を殺す為のロボット。

それがピエロの格好をして

ぎごちなく踊る姿をシミュレーションする。


ふふっ、やっぱり向いてないわね、だってその為に作られていないもの。

こんな想像、無意味だわ。

だが、その結果

最期の瞬間まで、彼女はある希望を抱くことになった。

自分がピエロの衣装を着て、精霊を殺せば

人は笑ってくれるだろうではないかという

歪んだ希望を。





おわり

ああ、最後に間違えた…
正しくは



最期の瞬間まで、彼女はある希望を抱くことになった。

自分がピエロの衣装を着て、精霊を殺せば

人は笑ってくれるのではないかという

歪んだ希望を。

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