春雨「レベル99になりまして」 (45)


春雨「この鎮守府の中では古参でなければ新参でもないという」

春雨「中途半端な立ち位置ですが、振り返ってみれば色んなことがありました」

春雨「着任して早々に司令官に目をかけて頂いて、鎮守府に慣れ始めてからリランカ島への航路に潜む潜水艦隊を駆逐するという任に着きました」

春雨「対潜警戒は駆逐艦の重要な役割なのもあり、全力で臨まさせて頂きました」

春雨「でもレベル1なのに任されてしまった時は不安を通り越して無になってたと思います。一緒の艦隊にいた同じくレベル1の雲龍さんは真顔でした」


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春雨「ともあれ、ひたすら出撃や演習を続けた甲斐もあって、既に着任していた村雨姉さんや白露姉さんらのレベルを追い抜いてしまいました」

春雨「だけど、そんなことで恨み妬みを連ねる姉さん達ではありません」

春雨「負けていられない、すぐに追い付くからと言って艦隊業務に励んでいました」

春雨「あの姿と言葉があったからこそ、私も怠惰にかまけることなく常に上を目指す姿勢でいられたのだと思います」

春雨「それに、上には上がいましたから」


春雨「冬の気配を感じ始め、秋も終わろうとしていた頃に大本営から渾作戦の発表がありましたね」

春雨「そして私は白露姉さん、村雨姉さんと共に第2次渾作戦攻略艦隊旗艦として選ばれました」

春雨「渾作戦は私にとっていいとは言えない最期の記憶があります」

春雨「姉さん達も無理しなくていいと言ってくれましたが、だからこそ私が出るべきだと、あの時とは違うということを証明してみせる、とちょっとだけ見栄を張りました」

春雨「本当は恐怖と不安に押し潰されそうでしたし」

春雨「けども、震えてるのは武者震いだ、ここで逃げてしまっては私は今後も最期の時の想いを脳裏に刻み込んだまま過ごさなければならないんだ、って言い聞かせました」

春雨「そのお陰かはわかりませんが、私達は順調に歩を進めることが出来ましたが、ある意味で運命の相手とも因縁の相手と出会いました」

春雨「覚えてますよね? そう、駆逐棲姫です」


春雨「初めに見た時は目を疑いました、ドッペルゲンガーだなんて都市伝説だろうとも思いましたし」

春雨「でも違うんですよね、今でも確証はありませんがあれは私」

春雨「以前の私に蓄積された恨みや悲しみといった負の感情が形を成した……そんな風に思えました」

春雨「そして彼女は私達に牙を剥く。募り募った感情を爆発させるかの如く苛烈な攻撃でしたね」

春雨「だけども私はそれが悲しかった。なんでだろう、上手く言い表せないんですけど、何処に向けていいかわからない怒りの矛先を思いに任せて私達に向けていたようで……」

春雨「それでも戦わなければならないのが私達、艦娘です。私個人の心の揺らぎを理由に作戦を無為にするわけにもいきませんし」

春雨「彼女に対してそれが正しかったのかどうかはわかりませんけど、私達はそれしかないんですよね」

春雨「ちなみに私のトラウマ云々はすっかり頭から抜け落ちていました。眼前にトラウマその物のような彼女がいたからでしょうか?」


春雨「その後暫くして発令されたトラック泊地急襲作戦は私も出撃しましたし記憶に新しい方ですが、いい思い出がないですよね」

春雨「私は見てませんが戦艦棲姫が二人もいたみたいですし、最後の最後で資源の備蓄が尽きちゃいましたし」

春雨「司令官なんか、執務室の真ん中で打ち上げられたマグロみたいになってましたね」

春雨「流石にイワシは言い過ぎだと思います、せめてスズキにしてあげましょうよ」


春雨「そしてこの間の第十一号作戦。この作戦の数日前に私はレベル99になったんですが、いずれの作戦段階でも私は主力艦隊に選ばれることはありませんでした」

春雨「砲撃支援艦隊の護衛が主で、重要な役目を任されていたのは理解しています」

春雨「しかし、こうも思ってしまったんです」

春雨「司令官はレベル99になってしまった艦娘に用はないのだと」

春雨「こんなのは私の思い込みです、偏見です」

春雨「けれども、艦隊の攻撃翌力として重要所を任される戦艦である金剛さん、同じく空母の加賀さん」

春雨「改二として他の駆逐艦を凌駕する夕立姉さんや時雨姉さんはここぞという場面で頼りにされていました」

春雨「同じレベル99で期待のされ方に差があるなんて、思っちゃったんですよ」


春雨「ケッコンカッコカリ?ありましたね、練度が最大まで極まった艦娘にのみ許される限界突破改修、その許可証である指輪が名称の由来なんでしたっけ?」

春雨「それはおいといて、確かにケッコンカッコカリさえすればお呼びがかかるようにはなると思います」

春雨「現に島風さんと曙さんはケッコンされてるだけあってか、大規模作戦の時は必ずと言っていいほど出撃していますからね」

春雨「尤も、非現実的な望みですけどね。ケッコンカッコカリ普及用お試しの1回はともかく、それ以降は各提督らの自費でのことですし、許可証も安くはないので司令官に頼みに行くのは気が引けます」

春雨「というか、別に望んでなかったりするんです、またあの視線に晒されるかと思うと」

春雨「これまで一通り喋ってましたけど、金剛さんと加賀さんがレベル99になるまでの間ずーっと私に飢えた狼(足柄さん)のような視線を浴びせ続けて来たせいで色んな思い出が霞んでます!」

曙「今まで黙って聞いてた私が馬鹿だったわ、私のしんみりを返して」


書き溜めが終わったのでここまで。投下してみると思った以上に少ないですね。
初投稿なので色々とgdgdになりそうです。気の抜けた炭酸のような話が書けたらなあって思う所存。
ではおやすみなさい。


曙「というか飢えた狼のようなってどんなよ……アンタその二人に何かしたの?」

春雨「いえ、気に障るようなことは何もしてないんですが……」

曙「何に気もなしに誰かに突っかかる程陰湿ってわけじゃないんだし、何かなきゃあの二人がそんなこと……見つめられてる?だけなのかあんたが何をされていたのかはよくわからないけど」

曙「そこんとこもう少し具体的に話してくれる?」

春雨「曙さんって意外と親身というか親切ですよね」

曙「意外とは余計よ」

春雨「自分で言っちゃうんですか」

曙「あんたは意外とストレートよね、少しはオブラートに包みなさいな」

春雨「クソ提督呼びのどこにオブラートがあるんですか?」

曙「ホントにぶっこんでくるわね……いいから続けて」


春雨「具体的に……そうですね」

春雨「金剛さんと同じ艦隊で出撃した時のことなんですが」

春雨「敵空母の放った艦載機の迎撃を私が迎撃しようとした分まで殲滅しちゃいまして」

曙「偶然じゃないの? それに、味方をカバーし合うのはよくある話だし」

春雨「初めはそう思ったんですけど、同じことが何度もありまして……」

曙「……戦艦のあの人たちからしたら私ら駆逐艦なんてヒヨコみたいなもんだから、見ていて不安になる、とか」

春雨「その線も考えましたけど違うみたいで」

曙「まだあるんだ?」

春雨「戦闘関連じゃないんですけどね。司令官のお夕飯作ってる時、それを見た金剛さんも張り合うようにお夕飯作り始めたんです」

曙「ちなみにメニューは」

春雨「麻婆春雨です」

曙「その春雨とは違うって言ってた割りに自分からネタにして行くわよね、あんた」

春雨「金剛さんも同じものを作ろうとしてたみたいですけど、目も当てられない品が出来てました」

曙「でしょうね、けど金剛がそんな大人気ない真似するなんてねえ……」

曙「……あり得なくもないだけに何とも言えない」


春雨「加賀さんは加賀さんで大変でした」

曙「艦載機の的にでもされた?」

春雨「麻婆春雨を一日に何十回も作らされました」

曙「何やってんのあの人」

春雨「そしてその後日に、加賀さんが司令官に麻婆春雨をご馳走していたのを見ちゃいました」

曙「舌と胃でレシピを覚えるタイプ」

春雨「まあ、司令官は私の作った方が美味しいって言ってくれてたんですけどね」エッヘン

曙「もう一方では一航戦の誇りが粉砕骨折してそうね」

春雨「偶然お風呂場で居合わせた時、私のことを見回してから静かにガッツポーズしてたので、よくわからないけど大丈夫だと思いますよ」

曙「それでいいのか一航戦」


春雨「他にも色々ありましたけど……なんで私がお二人から何かをぶつける対象のようにされていたのかは今でもわからないままです」

曙「最近は特に何もされてないの?」

春雨「そうですね、私がレベル99になり、お二人もレベル99になってからはピタリと止みました」

曙「……あんたがレベル98になった頃ってその二人もレベル98だったわよね」

春雨「そうでしたけど……いやまさかそんな」

曙「次にレベル99になるのは自分だ、的な」

曙「二人で次期レベル99争いをしていたところに急速にレベルを上げてくる春雨」

曙「時雨、夕立というレベル99の先駆者は皆駆逐艦なこともあり先を越される可能性が高いと踏んだ二人はこれ見よがしに春雨より優れてるアピールをし始めた……」

春雨「…………」

曙「…………ぷっ」

曙「くふふふ、バカみたい。いくらなんでもそんなしょうもない真似するわけないわよね」

春雨「そうですよね、早くレベル99になったからって特別だとは限らないよね、なんて時雨姉さんも言ってましたし」

曙「その言葉に憂いを覚えるのは私だけかしら」


曙「ところで、なんで相談相手が私なわけ? 白露型のお姉様方がいるじゃないの」

春雨「部屋で逆立ちするほど暇そうにしてましたから」

曙「……そう言えばそうだったわね」

春雨「うさg」

曙「ドラム缶に縛り付けてサーモン海域に放り込むわよ」

春雨「わー、曙さんが優しい人で良かったなあ」

曙「あんたねえ……」

春雨「そろそろお昼ですよ、一緒に行きましょう?」

曙「……仕方ない、お昼の後はお姉様が間宮を奢ってあげよう」

春雨「太っ腹ですね曙姉さん、どういう風の吹き回しですか?」

曙「私は優しいからね。では行きましょうか」

春雨「はい、お姉様とならどこまでも」

曙「うん、変な誤解招きそうだからやっぱそれ無しで」

春雨「自分から振ったんじゃないですか」

曙「なんのことかな、と。ほら、急がないと席が埋まっちゃう。行くわよ」


-空母寮・一航戦室-

金剛「事態は深刻ネー……」

赤城「」モシャモシャ

飛龍(なんで部屋の明かり消してるんだろう)ヒソヒソ

雲龍(灯火管制じゃないかしら)ヒソヒソ

ローマ(金剛に連れられて来たから高速戦艦の会かと思ったけど、ナニコレ)

加賀「ではこれより、ケッコンカッコカリ候補艦お呼び予備候補艦による定例会議を開始します」

最上(すごく帰りたい)


今回はここまで。短い書き溜めを投下するスタイルになりそうです。
早ければ今夜も投下するかもしれない。
それでは。


ローマ「あの」

加賀「なんでしょうか」

ローマ「何の集まりなんです、これ? 説明不十分なまま連れて来られて状況がよく飲み込めないのですが」

加賀「今言った通りですが」

金剛「カガーリン、それじゃ要領を得ないデース、ローマも説明しないまま連れてきてしまってソーリィね」

飛龍(カガーリンて)

赤城(私、トーストはマーガリンよりもバター派です)

ローマ「ええまあ……それで、ケッコン?がどうのというこの集まりについて説明して貰えれば別に」

金剛「ローマの他にもニュービーな方もいますからネー、集まってから説明するつもりでシタ」

金剛「このサミットはケッコンカッコカリが許される練度に達した艦娘、またはそのレベルにあとワンステップな艦娘達によるものなのデース」

飛龍「あれ、ちょっと質問してもいい? レベルがーって言うなら北上や大井はなんでここにいないの?」

加賀「北上さんはこういったことには限りなく無頓着だと判断し声をかけませんでした。大井さんは北上さんがいないこの場に来るはずもないので同じように」

雲龍「では時雨ら白露型の子達がいないのはどうして? こういう仲間外れはあまり好ましくないわね」

加賀「それについても理由があります。いえ、寧ろ彼女達そのものが今回の議題であり趣旨とも呼べるでしょう」

加賀「では、本題に入らせてもらいます」

最上(あ、爪割れてる)


加賀「先日、春雨さんに続いて村雨さんもレベル99に到達しました、これは由々しき事態です、私達は早急に事を進めなければなりません」

ローマ「いやあの、遮って悪いけど趣旨の説明をして欲しいのだけど」

加賀「……そうでした、少し気分が昂ぶり過ぎていたようです。私としたことが」

赤城「カステラ、食べます?」

加賀「いただきます」

赤城「お茶もありますからね」

金剛「では代わりに私が説明するネー、イージーに言うと私達がテートクに振り向いて貰うために何が出来るか? 何をすべきか? それについてディスカッションするのデース」

飛龍「要はケッコンして貰うためにってこと?」

ローマ「けっけけけ結婚だなんてそんな気が早すぎるというかそんな過程をすっ飛ばしていきなりそんな何言ってるのホントそもそも私別に付きつ付き合いたいとか思ってるわけじゃないしというかこんなことこんな人数集まってする話じゃ」

飛龍(ものの見事に勘違いしていらっしゃる)

雲龍「ケッコンというのはケッコンカッコカリの略で」カクカクシカジカ

ローマ「……紛らわしい言い方しないで、取り乱した私が馬鹿じゃないの」

飛龍「ゴメンね」テヘペロ

ローマ「それで? 加賀の言い方からするに駆逐艦の子達が何か関係あるみたいだけど」

加賀「ほのままれふとわはひはひふぁ」モグモグ

ローマ「訊いといて悪いけど、食べるか喋るかどっちかにして」

加賀「」モグモグ

ローマ(そっちを優先するのね……)

最上(今日のお昼ご飯なんだったかなあ)


加賀「ふう。 さて、なんの話でしたか……駆逐艦の子達の話でしたね。 今私達が所属している司令部でレベル99の駆逐艦は4人となりました」

加賀「このままですと私達が怠惰を貪っている間にこの4人の中から次にケッコンする子が現れるでしょう」

ローマ「その根拠は?」

加賀「ケッコン済の艦娘は2人、そしてその2人ともが駆逐艦であるということ。 となれば同じ駆逐艦の子が選ばれる可能性が高いと考えていいでしょう」

ローマ「それだけでは根拠としては弱いと思うのだけど。 提督の気まぐれの一言で片付いてしまうんじゃないの?」

加賀「勿論これだけではありません、他にーー」


飛龍「私達、いつの間にか蚊帳の外だね」

雲龍「そうね。 というか別にいなくても良さそうだし食事にでも行こうかしら」

最上「あ、じゃ僕も」

金剛「ダメデース! テートクを真人間に戻すにはオトナのフェロモンを漂わせるレディである私達の団結が不可欠なのデース!」

最上(許されなかった)

飛龍「フェロモンだとか変な括りしないでよ……てかさ、真人間に戻すってどういうこと? 話に脈絡なさ過ぎでしょ」

加賀「そちらについても纏めて説明がつきます」

飛龍「あ、聞こえてたんだ」

ローマ「金剛が騒いでたから、嫌でも聞こえてしまったのよ」

加賀「駆逐艦の子達がケッコンの座を争う障害になり得ることと、提督を真人間に戻すということの理由は同じあり、また最大の障害でもあります」

加賀「これを解決しない限り、私達の薬指に白銀の誓いが添えられることはないでしょう」

ローマ「で、その障害って何です?」

加賀「提督がロリコンだということです」

ローマ「」

飛龍「」

雲龍「美味しいわねこのお茶」

赤城「間宮さんからどこのお茶が美味しいか教えていただいたんです、他にも色々ありまして」

最上(ブレないなあこの2人)


今回はここまで。何度も書き直したりE風に振り回されたりしてたら遅くなりました。
かなり短いですが取り敢えず的な投下を。
需要がどこにあるかわかりませんが細々とやっていきます。


飛龍「いやあの、うん、ちょっと待って、それは流石に」

加賀「ないと言い切れるのなら私が説明していただきたいくらいです」

飛龍「否定し切れないや、ごめんなさい提督」

ローマ「あの、そのロリコンって年端も行かないような子に劣情を催すとかそういう」

加賀「そういうソレです、そして提督がソレであるなら納得のいくことだらけです」

ローマ「と言うと?」

加賀「まず、駆逐艦というのは彼女達には悪いですが、その多くが非力です。 必殺の魚雷こそ備えていますが魚雷を放つまでにやられてしまえば意味もなさず、加えて防御力も低めであり艦隊の主力を担うには不安が残ります」

加賀「しかし、それでも彼女達は必要不可欠な存在であることも確かです。 なので練度の高い駆逐艦の子が何人かいるのは不自然ではないでしょう」

ローマ「それはわかるわ、普段遠征に行っているような子でも熟達した子が何人もいるもの」

加賀「そうでなくとも改二になれば出撃の機会が増えた子もいますからね。時雨さんや夕立さんもその結果としてレベル99に達しましたから」

加賀「島風さんも元々のポテンシャルが高く、ケッコンカッコカリ制度が導入された時に条件を満たしていたのが彼女だけでしたから、この司令部のケッコン済艦娘の第1号となることに特に疑問は抱きませんでした」

加賀「私達も練度さえ高めれば機会はあるだろうとしか思っていませんでしたが、今にしてみれば慢心そのものです」

ローマ「戦艦や空母というスポットに就けているのだから、胡座かいて座っているだけでも出撃の機会は多くなって自然と練度が高まるでしょう?」

加賀「着任して一週間程でレベル99となった方は言うことが違うわね。けれども事はそう単純ではなかった、ということです」

加賀「島風さんがケッコンしてそう月日も経たないうちにレベル99となった艦娘が現れました」

加賀「艦隊の主戦力を担う戦艦の方でもなければ私達空母の誰かでもない、それどころか着任して一月経ったかどうかという状態の子でした」

加賀「さてここで問題です、その子とは誰でしょうか」

ローマ「……問題になってないわ、ケッコン制度のことはさっき理解したし、その問題の答えに該当する子は1人しかあり得ない」

ローマ「だけど話を盛るのは良くないわね? いくらなんでも着任して日の浅い子がケッコンだなんて……」

加賀「事実です」

ローマ「冗談が」

加賀「なんならその時のモノマネでもしてみましょうか、確か……」

加賀「こっこんなことなんかに予算を使うくらいならドックの拡張とかに回しなさいよって言うかなんで私なのよ馬鹿なんじゃないのホント、このクソ提督ー」

ローマ「」

加賀「事実です」

最上(ここら辺は僕ら皆知ってることなんだけどね)ヒソヒソ

飛龍(ローマは知らないからね、ってか加賀さんさ、ローマの反応を楽しんでるよね)ヒソヒソ

金剛(カガーリンがヒートアップしてるせいで出番がないデース)

雲龍「曙の真似なのかしら、物凄く棒読みね」

赤城「あ、お茶請けがなくなってしまったので貰ってきますね」


加賀「ケッコンカッコカリというのはその名もあって、カッコカリではない方の結婚を嫌でも意識させられます」

加賀「私達は艦娘である以前に女であり、私達の提督は男性ですので単なる一つの制度として受け入れろというのは蓬莱の玉の枝を持ってこいと言うようなものです。 提督としても同じ考えだとは思いますが」

加賀「そんな契りを提督は2人と交わしたのです、それもまだ未成熟な子達と」

加賀「更に、改二である時雨さんと夕立さんはともかく、敢えて言いますが抜きん出た能力がある訳でもない村雨さんと春雨さんまでもがレベル99です」

加賀「村雨さんと春雨さんは、主に大規模作戦の中で練度を高めていった主力組とは違い、平時の中で積極的に艦隊の中に加えられていました」

加賀「戦う中で練度を高めていった私達と違い、育てられるべくして育てられた2人。 後者は提督の趣味によるものと置き換えてしまってもいいかもしれません」

加賀「提督は私達のことなど眼中にない、というほど無情な方ではないですが、提督がもし仮に更に誰かとケッコンしようとした時に趣味に走られた場合、私達には到底為す術がないということです」

ローマ「……ケッコンという言葉の響きはともかく、自分の限界を越えた練度向上の芽を摘み取られるのはいい気がしないわね」

金剛「何言ってるデスかー! ケッコンデスよ!? 夫婦の契り! 永遠の誓い! ゼクシィ! 女の子のハートをこれ以上鷲掴みにするワードがこの世の何処に存在するネ!?」

ローマ「いきなり大声出さないでくれる?」

金剛「そんな凄くコールドめいてあしらわれるとつらい」

飛龍「金剛、色々と崩壊してるよ」

加賀「悲観する必要はないわ、対策のしようが無ければこうやって招集などしないもの」

ローマ「どういうこと?」

加賀「提督も筋金入りではないということよ」


最上(ところで、赤城さんは戻って来ると思う?)ヒソヒソ

雲龍(戻って来るわよ、約束は必ず守る人だもの。 胃袋を満たしてからだろうけれど)ヒソヒソ

最上(ですよねー)


加賀「提督は駆逐艦の子達を意識して育てているけれど、それとは別に欲望の矛先は意外と誰にでも向けているわ」

ローマ「もっと他に言い様はなかったのかしら」

加賀「私が実際に聞いただけでもその矛先は様々よ。他の方達にも聞き込みを行ったから、それをこの通り資料に纏めたから目を通してくれるかしら。 他の方の分もあるので」

雲龍「それなら部屋の電気を点けましょうか、薄暗いと見えないし」パチ

飛龍「そもそもなんで薄暗くしてたの?」

金剛「雰囲気作りは大事デスよ?」

飛龍「怪談じゃないんだから」

ローマ「えーと、『あたごんの胸部装甲に飛び込みたい』、『能代の太ももスベスベしたい』……これ、ただのセクハラ発言集じゃないの!」

加賀「全てがそうでないにしろ、概ねそんな感じです」

飛龍「うわー、『飛龍の太ももに挟まれたい』だって。 どんな顔すればいいんだろうね私」

最上「凄く微妙な顔してるよ。 僕なんて『もがみんが剣山持って追っかけてきて怖い』だよ? そっちの方がマシな気もするよ、色々と」

ローマ(えっなにそれこの子怖い)

雲龍「この、ちーちちっちーおっぱーい、ぼいんぼいーんというのは? 特に誰が対象というわけでもなさそうだけど」

加賀「口ずさんでいたのを聞きました、愛宕さんに限らず胸の大きい艦娘も多いのでその方達のことでも考えていたのではと思い連ねました」

ローマ(それよりもその歌詞の一節らしきものを表情一つ変えずに言い切れる精神力はなんなの!?)プルプル

飛龍「『浦風ってお母さんみたい』だって。 ちょっとわかる気もするなー、あの子駆逐艦皆のお母さんみたいな感じするし」

最上「それだけに曙のクソ提督呼びが気になるみたいだけどね、たまに口論してるよあの2人」

雲龍「曙と言えば『曙ちゃんにハイタッチしようとしてスルーされたい』というのがあるわね。 提督は一体何を望んでいるのかしら」

金剛「……私についての言及が皆無なのは何故なのデスか」

加賀「ここにあるわよ」ユビサシー

金剛「Really!? 『金剛を嫁にすると毎日紅茶飲まされて水太りしそうだよな』……ってなんで私だけベクトルが違うんデース!」

加賀「私が直接訊いたことだもの。 私と金剛さん、嫁に迎えるならどっちがいいかって」

飛龍(目的がケッコンカッコカリじゃなくてケッコンカッコガチになってない? その質問)

金剛「カガーリン……いつの間にそんな先手を取っていたというのデスか」

加賀「先手は先に取るから先手なのよ。 因みにこの質問への返事、私についてのことは秘密にさせてもらうわ」

加賀(『加賀だと家計が破綻しそうだけどな』だなんて、流石に気分が沈滞します)ショボン


飛龍「ところでさ、定例会議って最初に言ってたけど、もしかして加賀さんと金剛の2人だけでこれまでやってたりとかは」

加賀「ええ、金剛さんと私は次のレベル99の座を競い、争う立場だったのだけど時雨さん、夕立さんの2人に先を越された上に春雨さんまでもが追い上げて来たとなると無益で不毛な小競り合いをしている場合ではないと悟りました」

金剛「デスので休戦とは違いますが、互いに情報をトレードし合い、駆逐艦の子達から私達に目を向けてもらうには何をすればいいかをディスカッションするようになりましたネ」

加賀「それでも私達2人だけでは限界を感じまして。 なので更に人数を揃えて知恵を結集させようということになりました」

金剛「何人も寄ればモンジャの知恵袋デース!」

飛龍(文殊)

最上(文殊)

雲龍(文殊)

加賀(文殊)

ローマ(モンジャの知恵袋って何かしら、賢者の石的な?)

飛龍「知恵袋はともかく、これまでは何をしていたの?」

金剛「そうですネー、レベル99になった子は言わばテートクのフェイバリットネ、だからその子の真似やその子よりもスゴイアピールをすればテートクのハートも掴めると考えましたネ!」

最上「具体的には?」

加賀「そうですね、すぐに思い出せるのは麻婆春雨の味……ではなく、春雨さんの模倣、及び春雨さんを越えようとすることでしょうか」

金剛「リザルトは全然バッドでしたけどネー……麻婆春雨、底が見えないデース……」

加賀「スタイルだけは確実に勝っていると確信しましたが……全てで上回らないと意味がありませんね」

最上(春雨が一時期狙われてる小動物みたいになってた理由はコレかあ……)

飛龍(大人気ない)

加賀「他にも、試しに曙さんの真似をしてクソ提督と呼んでみましたが、とても驚かれて、終いには謝られてしまいました」

最上(節操がないというか必死というか)

ローマ(一航戦の誇りってなんなのかしら)

金剛「それを見ていた私はやりませんでしたけどネー、代わりにゼカマシちゃんの服を着て大胆にアタックを仕掛けようと試みました」

飛龍「アレを着たの!?」

雲龍「正気の沙汰とは思えない狂行ね」

加賀「流石の私も頭を抱えました」

金剛「特注のサイズで用意して着替えて、いざカマクーラ! とその格好で執務室に飛び込んだはいいのデスが、テートクがいなくて代わりにいたゼカマシちゃんに心底蔑まれるような目で見られまシタ……」

最上「…………」

雲龍「…………」

ローマ「…………」

飛龍「なんというか……そのうちいいことあるよ、たぶん」

金剛「同情するなら指輪をくれデース……」


加賀「私達の暗黒失敗談は程々にして、この提督の発言集を見て矛先は誰にでも向けられ得ることをわかっていただけたかしら」

ローマ「向けられた側はたまったもんじゃないでしょうけど」

加賀「それはそれとして、提督の目さえ覚ますことが出来れば、改心させることが出来たならば、いい歳して駆逐艦の服を着るような真似をせずとも私達が提督の目に留まることが出来るということです」

金剛「さり気無く私のコトをディスリスペクトしましたネ」

加賀「何のことかしらね」

飛龍「で、目を覚まさせるって言うけど方法は?」

加賀「それをこれから考えます。 三人……何人も寄ればモンジャの知恵袋ですからね」

金剛「イエース! モンジャの知恵袋ネ! 皆で力を合わせれば恐れるものはナッスィングネー!」

飛龍(後でからかうつもりなんだろうなあ)

最上(加賀さん、金剛さんに容赦ないねホント)

雲龍(近いうちに加賀さんを責め立てる金剛さんが見れそう)

ローマ(かつてモンジャの知恵袋というものがあり、その袋の中には当時の水準を超越した物が納められていて正に智慧の結晶とも言うべき袋……とかそういう逸話がことわざになったのかしら)


今回はここまで。一日に二回投下する自由。
一節が長くなり始めました、読み辛くなければいいのですが…
それにしてもスレタイ詐欺感が拭えない。何か別のにすれば良かったですね。
それでは。


スマホで見てるが読みづらくはなかった


金剛「ハイ! ではまずモンジャの知恵袋言い出しっぺの私からサジェストしマース!」

金剛「駆逐艦のガールズにはないアッダールトな魅力とフェロモンでテートクを骨抜きにしてついでにハートもゲット大作戦ネー!」

飛龍「まーたフェロモンとか言っちゃって」

最上「早いとこが色仕掛けってこと? どうしようもなくなった時の最終手段でしょそれ」

ローマ「そこまで身を切りたくはないわね……」

金剛「ちょっと考えが先走りし過ぎじゃないデスかー? 少しオーバーなボディタッチや官能的なポーズ、モーションなどでアタックするってコトデスネー!」

雲龍「アダルトとか言うから紛らわしく……いえ、なんでもないわ」

加賀「ふむ、確かに私達には駆逐艦の子達にはない色香というものを備え……ていると言えるでしょう」

最上「ねえ、なんで今こっち見たの、ねえ」

金剛「プロポーションはバッチリ……デース、テートクも男性デスし反応しないワケがありませんネ、私達の魅力にイチコロされればテートクもロリコンから目が覚めるデショ、フフフ……」

最上「だからなんで僕の方見るのさ、ねえってば」

飛龍「悪いけど、それ駄目だと思うよ」

加賀「何故です?」

飛龍「いや、しばらく前に提督が言ってたんだけどね、スレンダーな体型の子の方が好きなんだって」

加賀「スレンダーな……」チッチチッチ

金剛「ボディの方が……」オッパーイ

ローマ「好み……」ボインボイーン

雲龍「へえ、そうなの」ボインボイーン

五人「…………」チラ

最上「…………」チョインチョイーン

最上「何か言ってくれた方がマシだよ」

金剛「ま、まあ好みなんてのはいくらでも改竄出来るとして、別のアイデアを考えまショーカ……」


飛龍「うーん、こんなのはどうだろう……でもなあ」

金剛「何か思い付いたんデスか?」

加賀「どうぞ、遠慮なさらずに」

飛龍「いや、古典的なんだけどね? 敢えて提督に素っ気なく振る舞うとか……」

加賀「素っ気なく、ですか」

金剛「バット、それでは駆逐艦ガールズに遅れを、というかロリコンを治すどころかテートクの気を惹くコトすら敵わないような気が……」

飛龍「いいのよそれで」

金剛「Why?」

飛龍「2人とも、これまで散々アピールしてきたんでしょ? 押して押して、それでも駄目だった」

飛龍「押して駄目なら引いてみろって言うじゃない? 例えばさ、比叡は金剛のことを慕ってるでしょ? それなのに急に金剛に対して冷たくなったら、金剛はどう思うかな」

金剛「ウーム……比叡に何か悪いコトしてしまったかな、って考えますネ」

飛龍「そう、それなのよ、押して駄目なら引いてみるのキモはそこにある!」

飛龍「どういう意図であれ理由であれ、興味を持ってもらう、自分のことについて考えてもらえるのよ!」

雲龍(何かエンジン入っちゃったのかしら)

金剛「アメイジン……目からスケイル、ネ」

加賀「しかし、それで提督に嫌われてしまったら逆効果だと思うのですが」

飛龍「好きの反対は嫌いであって、無関心ではないですよ。 嫌われろと言うわけじゃないけれど」

飛龍「もし喧嘩になったって、相手と仲直りしたくない人なんていないでしょ? 仲直りするために何とかしようとする筈です」

飛龍「加賀さんだって瑞鶴としょっちゅう口喧嘩してもわだかまりは残さないじゃない?」

加賀「……艦隊指揮に支障が出るといけないから程々にしているだけよ」

飛龍「はいはい。 とまあ、私からはこんな感じだけど、どう?」

ローマ「素晴らしいわ……金剛も言ったけど目からウロコが出るようだわ、これがモンジャの知恵袋の真髄なのね……」

飛龍(感染してる……)

加賀(手遅れになる前に治すべきでしょうか)

最上「金剛さんの案よりはいいと思うよ」

金剛「モガミン、言葉にトゲがありまセン?」

最上「金剛さんのよりはいいと思うなー」

金剛「Oh……」

雲龍「私としては決め手に欠けるような、そんな感じがするわね」

飛龍「決め手、かあ。 確かに相手の、提督の行動に依存する策だし一撃必殺の極意というわけでもないけど」

雲龍「案自体はいいと思うの。 だけど提督自身がどう動くかを想定しないとチャンスを最大限活かせないわ」

加賀「一理あるわね。 想定外のことも起こり得るでしょうが、対策をするに越したことはない……」

金剛「ならば、シミュレーションデスネ! Let's role playing!!」


ローマ「それでどうして私が提督に冷たくする役なのかしら?」

加賀「貴女がこの中で一番ぶっきらぼうですし、着任して日も浅いので冷たくあしらうことに抵抗はないでしょう」

ローマ「喧嘩なら言い値で買うわよ」

最上「まあまあ……それで、僕が提督役なのは?」

加賀「この中で一番提督との付き合いが長いのが貴女だからです。 提督を再現する上で重要なアドバンテージですから。 飛龍さんでも良いと思ったのですが」

飛龍「えー? 私が考えたんだし? それに自分で見てみたいのよー。 ほら早く早くぅ」パチパチ

加賀「アレですので」

最上「まあいいさ、保証はしないけど努力はするよ」

金剛「合意と見てよろしいデスネー!? r」

加賀「それでは始めてください」

金剛「ちょ、今のタイミングは私が言うアトモスフィアでは……」

加賀「余計なことを言いそうでしたので」


最上(以下提督)「……あー、今日の艦隊運用はどうしたもんだかねえ、とりあえずはデイリーを一通り終わらせてーの、と。 そっからどうしようかなあ」

ローマ「提督、頼まれていた装備の開発が終了したわ」

提督「ん? そう、ご苦労様。 結果は?」

ローマ「3回とも失敗に終わったわ」

提督「んーまあそんなもんか。 りょーかい、なんかあるまで好きにしといて構わんよ」

ローマ「言われなくとも勝手にそうさせてもらうつもり」

提督「なんか冷たくない? まあいいけど。 そうだ、腹減ったし昼ご飯食べに行かない? 給料出たばっかだしなんなら奢っちゃうぜ」

ローマ「結構です」

提督「わーおなんか嫌われてる? ってーよりいつにも増してツンドラっぽくね? 俺何かした? えー? 俺が悪いなら何か言ってくれよー、エスパーじゃないんだから言われないとわからないんだけど」

ローマ「しつこいわよ、これ以上無為に詮索するのはやめてください」スタスタ

提督「いや何もねえって絶対嘘だろ……なんなのあの完全シャットアウト、リットリオ……じゃなかった、イタリアに相談してみよ……」

提督「はあ……綾波のほっぺツンツンしたい」


ローマ「一応、必要以上に冷たくしたつもりだけど」

加賀「……そうね、押して引くを実行するためには前歴が必要不可欠だというのがよくわかったわ」

金剛「そうデスネー、冷たさに奥がないというか、裏返してもサバンナが広がってそうなツンドラでしたし」

加賀「新人に大役を任せるのは采配ミスでした、そもそも素っ気ないことと冷たくすることは同義ではないわね」

ローマ「冷たくしろってのは貴女が言ったんでしょうが、今なら大特価で喧嘩の買い取りしてるわよ」

ローマ「というか、私の役が凄くふわっとしたものでしかなったからどうしようもなかったのだけど」

金剛「モガミンテートクは……」

ローマ「目を逸らしてんじゃないわよ」

雲龍「凄く浮ついた感じがしたわね、提督ってあそこまで地から足が離れてたかしら」

加賀「威厳が皆無でした、最上さん、貴女提督の何を見てきたのですか」

最上「僕なりに普段の提督を再現したつもりなんだけど……ほら、誰に対してだってフランクじゃない?」

金剛「出来損ないのホストを見てるかの様だったネ」

ローマ「イタリアの伊達男でももう少しちゃんとしてるわよ」

最上「男の人の真似なんてそう上手く出来ないって……」

加賀「ですが、最後のぼやきは見事でした。 あの脈絡の無さ、まるでそこに提督の背後霊がいるかのようだったわ」

金剛「提督はまだ生きてマスよ」

最上「素直に喜べないなあ」

ローマ「ただ、あの直後でぼやいたということは興味を惹き切ることが出来なかったということになるわね……」

雲龍「飛龍からは何か……思ってたのと全然違うみたいな顔して白くなってるわね」

飛龍「」

ローマ「流石に言い訳のしようがないわ」

最上「まだ僕は提督のことをわかっていなかったのかなあ」

加賀「やはりここは、私達自身がやらねばなりませんね。 行きますよ金剛さん。 本物の提督とそれに付き従う艦娘のあるべき姿を見せてやりましょう」

金剛「OK、私達の実力を見せてあげるネー!」

加賀「一航戦、加賀。 出撃します」


雲龍(元々の趣旨から離れつつある気がするけれど、まあいいか)


今回はここまで。
本当は今回の投下でこの一編を終わらせたかったのですがイマイチ筆が進まない。
それでは。


>>37
見辛さに関しては問題ないようで安心しました。

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