八幡「本物がホスィ」士郎「偽物でもいいだろ?」 (74)

八幡「はぁ…」

士郎「なんだよ溜息ついて?」

八幡「あのな、衛宮、そりゃお前みたいに友達沢山、彼女持ち、おまけに学校の人気者、つまりリア充には俺のこの願いは全く理解できないだろうが、さすがにその返しは人としてどうなんだよ?」

士郎「いや、どうって言われてもなぁ、実際そういうもんだぞ?人間関係なんて?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432732145

八幡(衛宮とは出会ったきっかけは同じ奉仕部の由比ヶ浜の犬が同じく奉仕部の雪ノ下の犬に轢かれかけたのを俺が助けたとこから始まった)

八幡(当時その犬を俺が助けた後菓子折り付きで見舞いに来たのがこいつだ、見舞いの理由を聞くと「俺が助けようとしたらお前が先に助けてたから、なんか申し訳なくてな」なんて頭のおかしな事をほざく変な奴だった)

八幡(「帰れ、あと二度と来んな」一目でわかった、こいつは俺の天敵だ、だから初見から拒絶してやったのに、「そうか、今日は日が悪かったんだな、また来る、ゴメンな」なんてすまなそうな顔をして帰って行った)

八幡(それからと言うもの俺が入院してる間ほぼ毎日見舞いにこいつは来た。
そのうち俺はどんなに拒絶しても無駄だと理解した、というより根負けした。)

八幡「以来こいつとは今現在高校二年生になるまで腐れ縁と呼べる関係が続いてる」

士郎「どうしたんだ八幡?いつもの妄想か?」

うわあ、これはクソなのが約束されてるようなSSだなあ

八幡「違う、ていうかさ、なんで毎日お前は俺の席で弁当食うわけ?邪魔なんだけど、あと男と二人で昼メシ食うってなんの罰ゲームだよ」

士郎「なんだよ、お前が前に『一人で飯食うのは嫌だ』みたいなこと言ってたからだろ?あっ、こら勝手におかず取るな!」

八幡「ちっげぇよ!!俺は『食う相手がいないんだから仕方ねーだろ』って言ったんだよ、あぐ、ふぁふぁら、ほっはいけ」

士郎「どっかいけって言いながら絶えず俺の弁当に箸突っ込むな!」

八幡「うっへー、ふぉんなうまほうな、んぐ、弁当毎日持ってくるお前が悪い」

士郎「はぁ。これでもさっき三浦や慎二に取られてきた後なんだぞ?これじゃ、今日も購買パンだな」

ガラッ

雪ノ下「衛宮君いる?」

>>3
正直3レス目でやる気無くなってきてるんだ、うんせめてクソになれるよう頑張るよ

士郎「ん?雪乃か、どうしたんだ?」

雪ノ下「いえ、この前の生徒会からの依頼内容だけど、終わってる?」

士郎「あぁ、スポンサーとかゲストとかの依頼か?あぁ、もう済ませて生徒会のほうに書類渡してあるはずだけど」

雪ノ下「あいかわらず仕事が速いのね、それに比べてそこの男ときたら…」

八幡「い、いや、お、俺だってちゃんと仕事してたぞ!」

八幡(してたというより連れまわされただけなんだが)

八幡(てか最初から葉山や遠坂やタイガーから話が回ってるのを衛宮と一緒に確認するだけの作業だったから、ぶっちゃけ二人とも仕事してないと言えばしてないんだし)

八幡(まぁ、その話を回すのは衛宮が一人でやったことだからつまり俺は、実質ただついて行ってただけの金魚の糞でしかないわけで、つまり…)

衛宮「そんなに睨んでやるなよ雪乃、八幡だっていろいろ頑張ってた」

八幡(おぉー、さすが衛宮、俺が雪ノ下に睨まれたらいつも助けてくれるんですね!そこに痺れる憧れるぅー!)

雪ノ下「例えば?」

衛宮「例えば、、その、なんだ…すまん八幡!」

八幡「ちょ!そこで諦めたら試合しゅ」

雪ノ下「思った通り、結局あなたは何もせずただ衛宮くんの後ろについて行ってただけなのね、気持ち悪い」

八幡「なんでただ何もしなかったら気持ち悪いになるんだよ!?」

八幡(奉仕部、簡単に言えばボランティアだの、お手伝いさんだの、万事屋だの、ちょっとエッチなご奉仕だの、いろいろな解釈ができるが部長兼生徒会長の雪ノ下雪乃が言うには違うんだそうだ)

八幡(部員は四名、俺、雪ノ下、由比ヶ浜、そんで衛宮だ)

八幡(初期は平塚先生がコミュ障気味な俺と雪ノ下の隔離所みたいな目的だったらしいが、それから由比ヶ浜の依頼をこなしたら由比ヶ浜が、衛宮が入ったのは、なんだっけな)

八幡(たしか平塚「すまん、衛宮、この部に入ってくれ!さすがに3人じゃ部としては認められないんだ!頼む!」藤村「ちょ!いくら平塚先生でも士郎は渡しません!いつもこき使ってるのだって大目に見てるんですからね〜!」平塚「そこをなんとか!あ、ほらこの前オープンしたラーメン屋今度おごりますから!!」藤村「よ〜し士郎!!ご奉仕頑張りなさい!!」)

八幡(ラーメンで売られたんだったな衛宮は…。それからと言うもの肉体労働は大半は由比ヶ浜と衛宮が、頭脳労働は俺と雪ノ下で依頼を片付けるのがデフォになってきていた)

八幡(のだが、やはり肉体労働で頑張る奴はいつも印象的に映るようで、おまけにクラスでも良い人なこいつと俺はよく比較の的になるのだが、不思議と嫌でもなかった)

由比ヶ浜「そんでさー、その後買いに行ったら売り切れててさー、もうなんか、あ、ヒッキー、衛宮くん、無視しないでよー!」

八幡「いや、無視っていうか、その話」

衛宮「機能も聞いたな、ちなみに続きはセイバーがその猫のぬいぐるみを買っててるのを目撃して、尾行したら俺の家で、そのままセイバーに尾行ばれて、捕縛されて部屋の中に連行されたらぬいぐるみだらけで興奮した結衣が雪ノ下に写メしてメールしたら三十分で来て雪乃が壊れたんだっけ?」

雪乃「ち、違うわ!!あ、あれはセイバーさんのお部屋があまりにも、その、あれだったからつい我を忘れてしまったというか!」

八幡「そんでそのセイバーちゃんが『人形はあげますから、帰ってください』って言うまで一方的に猫トークぶつけてたんだよな?隣でモンハンやってた俺らにも聞こえたし」

由比ヶ浜「そーなの!あ、録音してあるけど見る?」

雪乃「ちょっ!由比ヶ浜さん!!?」

衛宮「はは、あの後八幡と二人で替わりのぬいぐるみ探して三つくらい県まわったっけ?」

八幡「結局移動費で底ついて、俺らで一から作ったな、あれはひどい出来だった」

八幡(なんかツギハギでしかも猫じゃなくて熊だったし、どうしてああなった!)

士郎「まぁ、でも気持ちが伝わったから許してくれたよ、セイバーも八幡のおかげだな」

八幡(どこがだよ)

コン、コンッ

ガラッ

凛「失礼しまーす、雪ノ下さんいるかしら?」

雪ノ下「はい、あら遠坂さん、久しぶりね」

凛「えぇ、お久しぶりね?現生徒会長さん?」

由比ヶ浜「げっ!ひ、ヒッキー!!」

凛「そんなに怖がらないでよ由比ヶ浜さん、取って食ったりしないわよ」

雪ノ下「あなたが精神的にボコボコにしたのは事実でしょう?遠坂さん?」

八幡(遠坂凛、この学園の深窓の令嬢二人のうち紅いほう、雪ノ下が雪の女王なら、遠坂は炎の魔女、雪ノ下とは毎回テスト上位争いを行いながらも冷戦状態を維持していた、だが先月は生徒会長争いに出馬し正面からぶつかり合う寸前までいった)

八幡(だが、結果は遠坂が自主的に退場して幕を引いた、というか初めから生徒会長争いに興味はなかったらしく、本当の理由は彼女の後輩の間桐桜が葉山グループの戸部含む馬鹿三人に告白されたのを虐めだと勘違いし、さらに葉山グループの由比ヶ浜と関係のある雪ノ下も敵と勘違いして叩き潰しに来たらしかった)

八幡(どっかの古びた洋館に住んでるくせにどういうわけか影響力が強いらしく、葉山や雪ノ下の家庭が危機に瀕して、さらに由比ヶ浜含む葉山のグループの学校での立場を最悪になるまでした)

八幡(ということになっている、ぶっちゃけ手段はわからなかったが、十中八九遠坂のせいだと確信した俺が説得して話は収束した……はず)

八幡(以来、遠坂を由比ヶ浜が恐れるようになったのは言うまでもない)

士郎「遠坂!この部室には来ちゃダメだって言ったろ?」

凛「わかってるわよ、私だって好きで人のトラウマほじくり返したりしないわよ」

八幡「お前が姿見せるだけでガクガク震える人間をこの学校に7人も作ったんだから、よっぽど器用に校内移動する必要があるな」

凛「前に頭を下げて謝罪した相手をいつまでも怖がるほうに問題があるんじゃないかしら?」

雪ノ下「同感ね、たかがあれくらいで小動物みたいになるほうが悪いのよ」

士郎「遠坂!」

由比ヶ浜「ゆきのん……」

凛「ちょ、そんなに怒鳴らないでよ衛宮くん!」

雪ノ下「ち、ちがうのよ?由比ヶ浜さん!あなたは別よ?正面から遠坂さんに立ち向かったんだから他の人とは別よ!!」

八幡(まぁ、今となっちゃ深窓の令嬢(笑)であるが)

誤字は許してや、久しぶりのssやけん
批判コメは受け取るよ〜
ごめんな〜

八幡(ひとしきり、雪ノ下と遠坂のダブル令嬢()の必死な弁明を見て楽しんだ後、唐突に話始めた)

凛「最近ね、この近くの中高生を狙って大学生がやんちゃしてるみたいなのよ」

雪ノ下「やんちゃと言うと、その下世話な話?」

凛「ええ、下世話も下世話、最低の話よ、近隣の中学生や高校生の女の子を強引に連れ込んで文字通り暴行してるみたいでね、うちの学校からも三人病院送り、うち1人は、まぁ、その、将来的な問題も抱えさせられてね」

由比ヶ浜「将来的な問題?」

士郎「まさか、それで退学なんてことには!」

凛「しないわよ!さすがに暴行された痕跡は身体中にあるし、そこまで理不尽な判断はうちの学校はしないわよ」

雪ノ下「そんな話なら生徒会に少しくらい話が届いていると思うのだけど?なんで届いていないのかしら?」

凛「隠してあげてるのよ、ちょっとした手段でね、その娘ちょっとした知り合いでね」

雪ノ下「話はわかったわ、それで?」

士郎「それでって、雪乃!」

由比ヶ浜「話に全くついていけない、けど、なんか酷いことになってるのはわかった気がする」

雪ノ下「そんなに怒らないで衛宮くん、そういう段階では無くてね」

八幡「なんでここに持ってきた、ってことだよ」

士郎「え?」

八幡(え?じゃねーよ、なんだよその顔は?こえーよ!)

八幡「そこまで行ったならそれはもう俺らただの高校生の出る幕じゃない、警察の仕事だ。そういうことだろ?雪ノ下?」

雪ノ下「ええ、そういうこと、正直私はそんな話があったことと同じくらいに『その話が持ち込まれた』ことに驚いているわ、それは明らかに私たちで対処する仕事を逸脱してる」

士郎「逸脱している、そうかそうだな」

凛「ええ、そうね、ごめんなさい、少し端折りすぎたわ」

八幡「端折りすぎた?」

凛「ええ、実はね、その大学生、というより強姦魔ね、ターゲットになる女の子に最初にその娘の写真を送りつけるの」

由比ヶ浜「なにそれ、怖い…」

凛「その気持ちも楽しんでるんでしょうね」

士郎「随分と悪質だな…!!」

雪ノ下「ええ、悪質ね、それで?」

八幡(なんだ…?衛宮、どうしたんだ?)

凛「まず、最初に私はあなた達を巻き込みたくなかった、そう言えば私がこの部室に来た意味がわかるかしら?」

雪ノ下「つまり」

八幡「もう巻き込まれたんだな、俺たちは」

八幡(コクン、と首肯した遠坂は鞄から写真を一枚取り出す、そこに写っていたのは雪ノ下雪乃、つまり彼女だった)

士郎「っ…………!!」

八幡(多分この時、衛宮の顔を見てしまったのは偶然だ、いや衛宮本人が何か声を出そうとした音は聞こえたから、おそらく全員が見たかも知れない、だけどその中でこいつの何かに気付いたのは、おそらく俺だけだった)

雪ノ下「ターゲット本人に送られるのよね?なんで遠坂さんが持っているのかしら?」

凛「…一つ前のターゲットが私だったからよ」

由比ヶ浜「え?」

士郎「!!」

八幡「あっさり、言うなよ」

凛「別に、実際の被害はゼロだしね、ほらこれ送られた私の写真、そういう話は聞いていたから、その日のうちに無防備装って公園にいたら即効で釣れたわよ」

雪ノ下「あら、ということは…お気の毒ね?」

凛「ええ、ボッコボコのギッタンギッタンのボロクソの腐れ雑巾みたいになるまでしたわよ?」

八幡(いや、なんで二人して満面の笑顔だよ!てか俺の中のお嬢様とか女の子のイメージがコナゴナになっていくんですが、ねぇ、何したの、何されたの!?)

士郎「そうか…」

凛「だけどね、私がバカどもをボコボコにしてる間ね、多分数人に逃げられちゃったのよ」

由比ヶ浜「多分?」

凛「多分ね、だから私の学校を獲物に絞ってるのはわかったから、あとは目ぼしいレベルの高い女子のポストをしばらく張ってただけ、そしたら雪ノ下さんがターゲットになっちゃったってわけよ。納得した?」

雪ノ下「ええ、納得したわ」

八幡「いや全然納得できねないし、てか結局何して欲しいの?戦うとか無理だぞ?そんな犯罪者まがいの奴らと!」

雪ノ下「犯罪者まがいじゃなくてもう犯罪者よ、そして私にやってもらいたいのは、おそらく『囮』ね?」

遠坂「比企谷君と違って話が速くて助かるわ、と言っても雪ノ下さんなら必要ないかもだけど」

八幡(そんなこんなで、ノリノリなお嬢様二人は犯人をさっさと捕まえる方向で話を纏めた、心配する由比ヶ浜、なんで警察呼ばないんだと考える俺、そして沈黙し何か歯車が動いたような、あるいはスイッチを押してしまったような、そんな印象を俺に与える衛宮)

八幡(思えばこの時いくらこのお嬢様二人がハイスペックでも止めた方が良かったのかもしれない、だってそうすれば、少なくとも俺は衛宮士郎を知らずに済んだのだから)

寝る

士郎「なぁ、八幡進路決めたか?」

八幡「んあ?あぁ、とりあえず近くの大学かな、その後専業主夫で紐ルートだ」

士郎「専業主夫になるくらいならまず俺か雪乃くらい料理できないとな、捨てられるぞ?」

八幡「うぐっ、そ、そーいうお前はどうなんだよ!?法学部からの警官だっけか?」

士郎「….….そうだな、うんそういう道を目指そうと思ってる」

八幡(…….だから、なんなんだよその顔は、なんで見てるこっちが不安にならなくちゃいけないんだ?)

八幡(あの依頼から一週間と少しが経過した、俺はあの日以降、こうして衛宮の細かい表情を窺う日々を送っている)

八幡(別に雪ノ下の身が心配じゃないわけじゃない、ただ、ここ一週間夜中に雪ノ下を一人で出歩かせても全く釣れないのだ、遠坂の話だとあちらも臆病になっているとのこと、おそらくこちらの警戒が緩くなった期間に一気に襲いかかると予想していた)

八幡(だから暇な脳みそをこうして目の前のハイレベル専業主夫の分析に使用しているわけである)

八幡「てかお前だってなろうと思えば専業主夫なれるだろ、料理洗濯掃除完璧じゃん」

士郎「いや、そーいう、家でじっとしてるの苦手だから俺」

八幡(…やっぱりだ、おそらく衛宮が『その仕草』つまり俺がなぜか不安になる仕草をするのは、おそらく平穏だとか、幸福な選択肢を選ぶ瞬間だと思う)

八幡(『その仕草』がなぜか俺を不安にさせるだけで、具体的になぜかはわからないが)

士郎「どうした?最近俺を凝視したまま固まってばかりな気がするが?」

八幡「….….、いやなんでもねぇよ、あ、あのさ衛」

海老名「エミハチキター!!」

八幡・士郎「「うぉ!?」」

士郎「え、海老名、驚かせるなよ!」

海老名「あーごめんごめん、二人の視線があまりにもエロすぎてつい…ぐへへ」

三浦「ぐへへじゃないでしょ、はいヨダレ拭く!あっ、そーだ、衛宮あーしのお弁当は?」

士郎「えーと、優美子のは、あったこれだな」

三浦「おー、昨日から衛宮メシ楽しみにしてたから、あーし」

士郎「だからって夜中に『明日弁当作って』なんていきなり言うなよ、あぁ、そうだ優美子バタークッキー好きだったよな?ほら作ってきた」

三浦「おー、さすが衛宮心得てるじゃん!、あっ、あーしの作ってきた」

由比ヶ浜「あ、ヒッキー!衛宮くん!やっはろー、お弁当ちょーだい!」

ノシッ

士郎「のわっ!?こら結衣、いきなり人に覆いかぶさるな!」

八幡(な、んだと、由比ヶ浜のやつ、あの巨乳を惜しげも無く衛宮の頭に乗せやがった!!おまけに当の衛宮は慣れてるようにそのまま由比ヶ浜の口にせっせとおかずを入れていく、クソゥ、羨ましくない、羨ましくないんだからね!)

葉山「ははっ、こら優美子、結衣、姫奈、衛宮をからかいすぎだ困ってるじゃないか」

衛宮「いいよ、こーいうのには慣れっこだ」

三浦「んー!!やっぱ衛宮メシ美味いし!あっ、その唐翌揚げちょーだい」

由比ヶ浜「あっ!それ私が食べさせてもらおうと!」

衛宮「はぁ、二つあるから一つずつな?」

葉山「というか慣れすぎじゃないか?」

衛宮「家の中に比べたらまだ軽い軽い」

八幡・葉山((どんな家だよ!?!))

八幡「あ、稲荷いただき」

士郎「あ、あー、最後の一つが……ん?八幡ちょいこっち向いてくれ」

八幡「んぐ?ん?」

士郎「頬っぺたついてるぞ?、ほら取れた」

八幡「んぐ、おう、悪い」パクッ

三浦・由比ヶ浜・葉山「「「あっ」」」

士郎「ん?どうした?」

八幡(あっ、しまった、この時、別に・についていた米粒を衛宮にとってもらい俺が食べたとかはこの際大した問題ではなく、問題は…!!)

士郎「あ、しまっ!!」

海老名「んはぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」

八幡(謎の嬌声とともに海老名さんは大量の鼻血を天井に噴出しながら倒れた、10分後到着した救急車に搬送された海老名さんの顔はもはや仏とか聖母とかそんな感じのアルカイックスマイルを浮かべていたという)

凛「多分そろそろね、ほらあそこの五人、コンビニの中の雪ノ下さんをチラチラ覗いてる」

由比ヶ浜「うん、どうするの?遠坂さん?」

凛「別にどうもしないわよ、多分最初に2〜3人で囲むでしょうが雪ノ下さんなら問題はないでしょ、あんだけ人を綺麗に投げ飛ばせるなら心配無用よ、それより衛宮くん?」

士郎「ああ、わかってる」

凛「その警棒を使って手加減、ちゃんとするのよ?」

八幡(その日の夜、いつもどおり集合して雪ノ下を餌にコンビニに寄らせてみた)

八幡(運がいいのか悪いのか、どうやら今日が奴らにとっての決行日だったらしい)

凛「にしても雪ノ下さん、なんか立ち読みの時間長くない?何読んでるのかしら」

由比ヶ浜「……あー、多分あんなウキウキして読むのなんて一つしか無いかも」

八幡(猫特集本に千ペリカ!)

士郎「…動いた」

八幡(おそらく雪ノ下が完全に一人でいると判断したんだろう、男二人がコンビニに入りまっすぐ雪ノ下のところに歩み出す)

八幡(しばらく話をした後、男の一人が雪ノ下に掴みかかり、そのまま雪ノ下は美しく、且つ相手が地面に叩きつけられるダメージをできるだけ高く受けるように投げ飛ばす)

八幡(そしてその一部始終を外から見ていた三人の男が走り出し、コンビニに向かおうとすると)

凛「衛宮君!!」

士郎「おい!お前らぁ!!」

八幡(遠坂が何か言うより前に衛宮は走り出して片手に持つ警棒でコンビニに向かう三人組のうち一人を一撃で昏倒させる)

八幡(驚く二人の大学生二人は一瞬で衛宮に懐に入られて、あっけなく気絶させられた)

八幡(そうこうしてる間、店内に入った大学生二人も雪ノ下が地に叩きつけられ気絶させられていた)

凛「比企谷くん?録画ちゃんとしてる?」

八幡「ああ、ここ数日の中にもあいつらちゃんと写ってるな、おそらくローテーション組んでたんだろう」

凛「そう、これでようやく一件落着ね?」

由比ヶ浜「やっと終わったー、もう毎日夜中見張りとかやだー!」

凛「その間一番楽しんでたの由比ヶ浜さんなんだけど」

八幡「多分ここ数日で遠坂に一万円以上奢らせてるのお前だけだぞ?」

八幡(俺もコーヒーくらい奢ってもらったが、てか意外と良いやつだな遠坂)

凛「別に良いわよ、前に酷いことしたからね、それよりもここ数日コンビニ限定プリンばかり食べてたみたいだけど、体重、大丈夫?」

由比ヶ浜「////すいません、2キロ、太りました」

八幡(その後警察が来る間、猫特集本を一心に立ち読みする雪ノ下と、ずっと何かを考え、棒立ちする衛宮をカメラごしに見ていた、警察署にはお偉い遠坂さんから話が回っており、俺たちは事情聴取も手早く済み、一時間もせず解放され、学校からも特に呼び出しは無く、何事も無く幕を閉じた)











八幡(その一週間後だった、学校宛に三浦優美子の強姦の瞬間を撮影したデータが入ったUSBが届けられ、どこの教員から漏れたのか、遠坂が気づいた時には隠蔽も間に合わず校内中に噂は広まっていた)

三浦「…」

葉山「なぁ、優美子?今度どこかみんなで行かないか?」

戸部「おっ!?隼人くんってばだいたーん??それってデートのお・さ・そ・い!?」

海老名「こら、そんな茶化すと怒るよ〜?」

八幡(他愛の無い会話に見えるが、実際は出入り口の無い砦の入り口を探して必死に探索を続けてるのだろう。もしくは死人を生き返らせる作業に没頭する科学者集団か?)

八幡(USBが学校に送られてから2週間たった、今日になってようやく三浦が学校に登校してきた、予想通りというか、三浦はやはり変わり果てていた、髪は手入れが行き届いておらず、化粧のノリも男の俺から見ても悪い)

八幡(何より変わっているのは身体中の至る箇所に貼られたガーゼや包帯からはみ出ている切り傷や痣である、右目に大きく貼られたガーゼの下から一本の大きな赤い傷痕も見える、葉山が言うには眼自体に被害は無いそうだ)

八幡(さすがに俺も他のクラスメートも空気を読んだのか昼休みは葉山達に任せて教室を出た、俺と衛宮が屋上にいるのはそのためだった)

士郎「…っ!」

八幡「どうしたんだよ衛宮、なんでお前がそんな顔してんだよ?」

士郎「俺が、俺が…」

八幡「お前がどうのできた問題じゃねーよ、ほっとけ」

士郎「いや違う、俺があの時あいつらを気絶させないで話を聞き出していれば!」

八幡「だから、それでも無駄だって、遠坂から聞いただろ、あいつらはただ口車に乗せられた奴らだった。尋問してたとしても何も出てきやしねーよ」

士郎「…けど!」

八幡「けども、糞も最初から防げなかったんだって、そもそも前提からして『写真を送りつけてから犯行に及ぶ』なんてルール、犯人側が守る必要無いからな」

士郎「……」

八幡「どうしたんだよ、いきなり立ち上っ、ああ、三浦に直接聞いても無駄だぞ?犯人は三浦に目隠ししたあげく自分たちは被り物に手袋だ、それ以前に本人がキツイだろうからやめてやれ」

士郎「…やけに詳しいな八幡」

八幡「うちの学校の教師のうち誰かが動画サイトに流してる、いくら消しても保存した誰かがまたアップしてきりが無いんだそうだ。って掲示板で話題になってた」

士郎「うちの学校の教師が?」

八幡「まぁ、うちの高校の令嬢二人とは対極の美少女だからな、ここだって進学校だ教師もかなりいる、誰か日頃から最悪なこと考えてるやつだっているさ」

士郎「そうか、なら、どうしようも、?………いや待て」

八幡「ん?どした?弁当のハンバーグを取ったのは1限の休み時間に来たワカメで、卵焼きとハムカツは3限の休み時間に三浦が取ってたぞ?」

士郎「いや、おかずは毎日盗難にあってるから今さらどうでも良い、というより三浦が取っていったのか…」

八幡「んで?どうしたんだ?」

士郎「話の流れがさ、不自然じゃないか?」

八幡「は?不自然て言うと?」

士郎「だからさ、不自然なんだよ、あくまで雪ノ下を狙うのが囮で、本命は三浦だった、ここまでは良い」

八幡「?…………ああ、その後か?」

士郎「そう、遠坂は家系由来のウッカリ者だがここまで簡単なミスはしない」

八幡「『犯人グループは雪ノ下をターゲットに設定した、けど二人目、あるいは三人目複数のターゲットを新たに同時に設定するかもしれない』だから少なくとも目ぼしい女子のポストや家の巡回はしてるはずだ。ってことか?」

士郎「そう、今やっとメールが来た…相変わらず電気機器だと誤字脱字ばかりだが間違い無く三浦の家も巡回してたらしいな、にも関わらず」

八幡「噂は広まった、たしか三浦の場合は写真送付は無かった、けどその状態で帰宅して見張ってた遠坂が気づかないわけが無い、あるいは注意を張り巡らしてた遠坂が気づいて話が漏れる前に止められなかった」

士郎「まだあるな、この前の生徒会選挙から察するに遠坂の影響力はこの高校にまで届いてる、にも関わらず、届いたUSBについて遠坂の家に報告する必要がある、その間厳重保管は当たり前だ、なのに動画をこの学校で流した奴がいる、どうやってデータを入手した?」

八幡「データがどこから流れたかは辿ればすぐだからな、犯人グループの家からではまずありえない、だから辿ったらこの学校の視聴覚室のPCからだったってわけなんだが」

士郎「協力者、あるいは共犯者がいるな、教員か生徒か」

八幡「おいおい、そんなどこかの少年探偵が主役の推理モノじゃ無いんだから、犯人はこの中にいますなんて偶然あるわけないだろ、今回の話は『近くの大学生が犯行して、偶然それに乗っかった教員がいた、遠坂の力が及ぶ前に露呈してしまった』って話の方が現実的じゃないか?」

士郎「…かもな、けどそうじゃないかもしれない」

八幡「っておい、どこに行こうってんだよ?」

士郎「いや、なんか知ってそうな奴思い出したからちょっと話してくるだけだ」

八幡(その時だ、二年間の付き合いの中で初めて、俺は衛宮のその無表情の裏にある表情が全く読み取れなかった)

八幡(いや、違う、わかってる、あれは喜んでいるんだ、『倒さねばならない悪』が目の前に生まれたことに)

八幡(だから俺はどうしても認めてはいけない、なぜならそれが真実だとしたら俺はあいつとは居られなくなる、なぜだかわからない)

八幡(ただ、漠然とそれは嫌だと思ってしまっていた)

八幡(…話が進んだのは三週間後だった)

八幡(その間、写真が送付されることも、中高生が襲われるなんて事件も無かった)

八幡(三浦もだんだんと普段の調子を取り戻し、遠坂が言うにはあっちも目立ちすぎたから控えてるんだろうと推測していた)

八幡(だが、一つだけ異常があるとすれば衛宮がここ一週間ほど学校を休んでいることだろう、衛宮の家に電話してもセイバーちゃんが言うには「家にも帰ってきてなくて、私も探してはいるのですが」ということらしい)

八幡(それから気になる話を雪ノ下が、言っていた、どうも最近捕まった近隣の暴力団の一人が気になる話をしていたらしい)

雪ノ下「なんでも、その男、銃器を密輸して売りさばくことをしていたのだけど、最近違法な動画を取って売らせる小間使い?下っ端?ともかく末端の大学のサークルのメンバーが全身血だらけにして所持金を全部渡すから、いえ、それどころか金を借りてでも払うからありったけの武器をください。と泣きながら懇願してきたそうよ?残念ながら担当じゃないから大学名もサークル名もわからなかったらしいけどね」

八幡「何かそれ、よく海外映画でありそうなシーンだな」

雪ノ下「残念だけど本当らしいわ、それとね、その暴力団のうち、まともに会話をできたのはその男だけだったそうよ?」

八幡「えっと、つまりなんだ?暴力団同士の抗争で潰された暴力団の末端にその犯行グループがあったけど、どういうわけかそのサークルの奴らも潰されたから、もう安心てことか?」

雪ノ下「抗争なんて無かったわ、その暴力団はたった一人に潰されたんだそうよ?その暴力団員さんの話だとね」

八幡「そうか、なんかこえーな」

雪ノ下「ええ、衛宮君も巻き込まれてないと良いのだけど」

八幡「…」

八幡(その日の夜だった妹の小町が誘拐されたと電話で衛宮に聞かされたのは)

八幡「なんとなくはわかってたんだけどな…」

八幡(俺はなんとなくわかってしまった)

八幡(妹は絶対に助かる)

八幡(だけど、その代償に、俺は知りたくなかった何かを知ることになるのだと)

八幡(電話で衛宮が言うには、小町とあったのは小町の塾の帰りだという)

八幡(以前に衛宮がウチに遊びに来た時小町が料理で勝負を挑んだわけだが)

八幡(結果はことごとく惨敗、いまだ中学に伝説を残す男に最初から勝てるわけないんだが….)

八幡(以来師匠だの、士郎お兄様などと適当ながらも尊敬してるみたいだった)

八幡(塾の帰りに出会い、そのまま衛宮に奢らせまくって、別れたすぐ後に悲鳴が聞こえ、駆け付けると拉致された後だったと言う)

八幡(『なぜ、お前とすぐ別れた小町が襲われた?』普通にありえないのだ、拉致するなら彼氏や父親、男がいない女のほうが拉致しやすいはずだ)

八幡(だが衛宮は沈黙を選択した)

八幡(だから、それが全てを物語っている)

八幡(士郎『指定場所は…にある…って使われてない建物だ?八幡わかるか?』、だてに千葉県マニアやってないっての、それからさらに警察、親への連絡もしてはいけないらしい)

八幡(一時間程度だろうか、途中スマホのマップ機能にも頼ったが、どうにかその場所についた)

八幡(おそらく昔はボーリング場やいくつかの遊戯場を集めて作られた三階建ての建物だったらしいが)

八幡(今となっちゃそこらに捨ててあるカップ麺やMAXコーヒーのゴミや落書きでそうだと思う奴はいねーよな、誰だよMAXコーヒー飲む奴に悪い奴はいないとか言ったのは)

八幡(あ、俺か)

八幡(そのまましばらく歩くと階段の前に貼り付けた真新しい紙に電話番号のような数字の羅列が書いてある)

八幡(ここに連絡しろってことかね?)

八幡(ぶっちゃけこの建物に入った時点で漏らしそうなのに、さらに犯人に電話って…)

八幡(こんなことならあいつと関わるんじゃなかったかなぁ)

八幡(それでも小町の安否と本当のことが知りたい俺は震える指で番号を押した、途中何度も番号を間違えたが、それでもなんとか繋げることに成功した)

八幡(その時は犯人からの大音量の恐喝、または罵詈雑言から高圧的な命令、およそ、ドラマやアニメで見たありきたりな態度を期待していた、いや、そんなものきたら真っ先に泣くけど)

八幡(だからこそ俺はそれを聞いた時、今度こそ身体の震えが止められず地面に膝をついた)

八幡(それほどまでに誘拐犯から必死の『命乞い』は俺の心の均衡を完全に破壊した)

「助けて、助けてください!!ごめんなさいゴメンナザイ!!」

八幡「な、なんだよあ、あんたな、何に謝ってんだよ!!さ、さっさと小町、い、いもうと返せよ!」

八幡(ああ…)

後ろから足音が聞こえた。

「あ、あんたあいつの知り合いなのか!?そんなんだな!?たのむ、いやお願いします!!こいつも返す!なんでもする!!お金だって払う!!お願いします!!お願いします!!」

八幡「だ、だから、あんたらが誘拐犯なんだろ!?速く妹返せよ!?い、いったい何に怯えてんだよ!!?」

八幡(違う、違う、違う、違う違う断じてあいつはこんなことしない)

だんだんと近くなってくる、上の階で銃を錯乱して乱射している音よりもはるかに強く。

「ごめんなさい許してくださいこれしか無かったんです!!お願いします、あんたあいつの知り合いだってなら、あ、あいつを…!」

八幡「だから!!お前らが返せば終わる話だろうが!!速く返して勝手に逃げろよ!!」

八幡(俺も泣いていた、解るのだ理解できるのだ、今から俺の背後からくる男からは逃げられないと)

足音が俺のすぐ後ろで止まった。

「あ、あのば、バケモノを!!」

士郎「俺のことか?」

自然な動作でスマホを奪われた、相手の呼吸が止まる。

士郎「すぐそっちに行く、その子に手を出してみろ、確実に[ピーーー]ぞ!」

電話を強引に切る。

熱い、衛宮は熱い、思えば奉仕部で活動してる時も熱かった、それは人の熱さだと思っていた。

だからそれは違うと今ならわかる、これは機械の熱だ。

士郎「ごめんな、八幡、場所がわからなかったからどうしてもお前に聞かないとわからなかったからさ」

いつもと何も変わらない。眼差しも表情も。

八幡「お、おい、衛宮は知らないだろうがあっちは銃をヤクザから買ったんだ、だからお前じゃ無理だ、絶対に勝てないし、死ぬ!」

士郎「大丈夫だって、小町ちゃんを助けてくるだけだ」

衛宮の身体を見る、全身に隈なく痣や、切創、さらには

八幡「じ、銃で撃たれたのか?」

士郎「少しだけな」

なんで笑ってるんだ?これはお前にとって笑うべきことか?

八幡「む、無理だってあいつら、まだ、何十人もいるかもしれないんだぞ!?」

士郎「そうだな」

八幡「階段上がってっていきなり囲まれて撃たれるかも、そしたら死ぬんだぞ!?」

士郎「死ぬな、間違いなく」

八幡「し、死ぬってどういうことか解ってるのかよ!?確実に殺されるからな!?あいつらよくわかんないけど錯乱してるから!お前なんかが行っても死人が増えるだけで…!!」

士郎「うん、死ぬことはわかるんだが、よくわからないことがあるんだが、教えてくれるか?」

ああ、理解したくない理解できない。

士郎「それがどうして行ってあの子を助けたらダメな理由になるんだ?」

まるでいつもと変わらない熱さを込めた表情でこいつは答えた

八幡(……何分経っただろう、あいつが上の階に上がって何分経っただろう)

八幡(最初に響いた音は既に無い、おそらく勝ったのだろう、アレが負けるわけが無い)

八幡(そもそも前提からして違う、アレは人じゃ無い)

八幡(人間は生きることを目的に幸せを定義する、そのために金を稼ぎ、コミュニティに入ったり、あるいは金を使い、孤独になろうとする)

八幡(ようは生きやすくなるように調節するんだ)

八幡(だからアレは違う、アレは死に向かうように調節してる)

八幡(友達を作るのも、食事を作るのも、奉仕部で活動するのも、俺と会話するのさえ、ホントの所は感情をほとんど動かしてなかったんじゃないだろうか?)

八幡(あの時俺が不安だったのはそれだ)

八幡(今まで『人間』として接してきた何かが、実は全く違う何かだったような、例えばそう)

八幡(人のフリをしながら自壊を求める機械の怪物とか)

八幡「あっ」

気づいたら『衛宮士郎』は全身に傷を負いながら寝ている小町を抱えて降りてきていた。

士郎「わりっ、何もされて無かったようだけど、巻き込んで悪かった」

八幡「………」

士郎「八幡、お前の方は大丈夫か?」

八幡「……」

士郎「八幡?っ!まさかお前何かされたんじゃ!?」

八幡「あっ、ああぁぁぁぁぁ!!」

士郎「えっ!?」

『衛宮士郎』が手を引く、今の俺はどんな表情でコレを見ているんだろうか?
怖がっているだろうか?
それとも、妹を守るために威嚇でもしているのだろうか?


あるいは、裏切られたと思って、怒って、泣いているんだろうか?
だって今まで一度だって声に出していったことは無かったけどアイツを

『親友』

だと比企谷八幡は信じていたんだから。

八幡(気がついたらアレは消えていた)

八幡(俺はそのまま小町を背負って家に帰った。起きると小町は特に何も覚えていなかった)

小町「衛宮師匠と一緒にデートしたんだけど…あれ?最後どうしたんだっけ?」

小町「はっ、もしや衛宮師匠とホテルに泊まって、大人の階段を登ったショックで!」

八幡「いいからもう寝ろ」

八幡(という風に小町は特に何もない)

八幡(アレは次の日には包帯まみれのゾンビ男みたいな格好をして登校してきた、車に連続して撥ねられたらしい)

八幡(どういうわけか、はたまた何か異能が覚醒したのか三浦だけがアレに抱きついて泣きながら感謝の言葉を述べていた、それからと言うもの三浦はあれが完治するまで面倒を見ると自主的に宣言した)

八幡(俺はあの日以降アレには話しかけて無い)

八幡(理由?そんなものよく漫画であるじゃねーか)

八幡(『お前はモノに話しかけるのか?』)

八幡(つまり気味が悪いのだ、馬鹿馬鹿しいのだ、今も三浦が頬を赤らめてアレに燃料を放り込む姿は酷く滑稽に映る)

八幡(その感情はあいつには届かない、そんな感情の受け入れ口なぞアレには不必要だからだ)

八幡(これから、俺はあいつとは一切関係を持たず生きていくんだろう)






八幡「だって言うのになんで俺は弓道場に来てるわけ?」

タンッ

と音がした、そういえば既に桜の季節だったか?
弓道場に桜の花びらが舞う中、その男子生徒は言った。

慎二「あーもう!邪魔だなぁ花びら!!事前に伐採しとけよ馬鹿衛宮!!」

八幡「ってポニテにしたワカメかよ!?」

慎二「なんだと!?誰がワカメだ!?」

八幡(間桐慎二、隣のクラスのモテ男でリーダーだが、正直どこが良いのかわからない、親友と呼べるモノはアレだけだし、学力は毎回令嬢二人に負けるが高いが、言動は毎回アホらしく、偉そうで空気読まないし、嫌味はお決まり、だと言うのに取り巻き女子はいつもいる、金で雇ってるんじゃないだろうか?)

八幡(だが、嫌味な野郎だが何故か俺が戸塚、材木座と並んで普通に話せる他人だ、いや、やっぱ戸塚は俺の守護天使で別枠だな)

慎二「あーん?何?誰かと思ったらヒキガエル君じゃん、どうしたの?いきなり弓道場なんて?止めときなよ?入部なんて、お前見ただけでセンス無いの丸分かりだし」

八幡「ちっげぇよ!もうすぐ三年で入試あんのに誰がワカメ臭い道場で時間を無為にするなんて馬鹿げたことするか!」

慎二「あー、そう、負け犬の遠吠えは聴くに堪えないね、じゃあさっさと出てけば?……あーいやちょっと待て」

ギギッ シュッ タン!

八幡「なんだよワカメの押し売りならいらねーよ、アレにくれてやれ、多分メチャクチャ喜ぶぞ?」

八幡(ちなみに、そのままワカメ単品だけで軽く5品くらいおかずを作りそうではある)

慎二「それそれ、ちょっと聴きたいんだけどさ?なんでお前、衛宮避けてんの?」

八幡「っ!?」

慎二「ちょっと話してけよ、ひ〜き〜が〜や〜くぅ〜ん?」

タンッ

そうして的を見ると慎二の矢は全部ど真ん中に命中していた

慎二「ほーん、衛宮の奴そんなことしてたのか?」

八幡「ってか、なんで俺が弓道場の雑巾掛けしなきゃなんねーんだよ!」

慎二「うるっさいなぁ、衛宮ならそれに加えて弓の整備や外の掃除までやるぞ?…ていうかさ、それ別に衛宮悪くなく無いか?」

八幡「いや、悪い、悪くないのレベルじゃないんだよ!!気持ち悪いか、悪くないか、そーいう問題だ!」

慎二「ふーん、ならしょうがないな」

八幡「ああ、やっとわかったか?なら、もう帰って…」

慎二「そら、次は矢の整備だ速くしろよ、僕が帰るの遅れちゃうだろ、まぁ…衛宮と比企谷なら間違いなく衛宮のが気持ち悪くないね、性格的にも顔的にもさ?」

八幡「はぁ?いや、今は衛宮の気持ち悪さを話してるのであって俺の話は関係ない」

慎二「関係あるだろ?僕からしたらお前も衛宮もどっちも気持ち悪いさ、むしろ校内でワーストランキング2年間一位を守った比企谷のが気持ち悪いのは明白だろ?」

八幡「だから何が言いたいんだよこのワカ」

慎二「でも僕は毎回お前らに話しかけてやってるぜ?」

八幡「そーかよ、だから?」

慎二「だからさ、結局人の内面程度の気持ち悪さでそこまで嫌いになることはありえないって言ってんの」

八幡「……人それぞれだろ?俺が衛宮を気持ち悪いと感じることと、お前が俺や衛宮を気持ち悪いと感じるのは=じゃない」

慎二「そりゃそうだろ、だって僕はあいつとは中学からの仲だぜ?比企谷より何倍も何倍もあいつの気持ち悪い部分を知ってるよ」

八幡「じゃあ、なんだよ!?お前は俺の主治医かなんかか?ふざけんなよ!他人が俺の気持ちをわかった風なこと言ってんじゃ」

慎二「だからさぁ、ハッキリ言わないとわからない?お前は衛宮が気持ち悪いから避けてるんじゃない、衛宮との関係が偽物だったから嫌ってるふりして衛宮に当てつけしてるんだろ?」

八幡「……は?いや、ちょっと待て、慎二お前妄想癖でもあったか?いやいやナイナイ、あいつとは初めから他人だったし」

慎二「はぁ?あんだけ一緒にいて柳洞や僕との時間を割いてもお前と一緒にいたのに、 親しくない関係なわけないでしょ?」

八幡「いや、なんだよ、それ?なんで俺と衛宮が、まるで、その、友達だったみたいな話になってるわけ?」

慎二「…はぁ、お前、ぼっち拗らせすぎて頭おかしくなってんじゃねーの?僕にはそんなものいないけどさぁ?
一緒に飯食ったり、遊びに行ったり、勉強したり、話したり、笑ったり、助け合ったり?」

慎二「そーいうのが友達とかそー言うんじゃないのか?」

八幡「え…?」

慎二「えっ、じゃねーよ、僕にここまで言わせてなんでわからないんだよ!?
あー、もうメンドクセェ!!」

慎二「あのな?衛宮がいつか言ってたよ、『比企谷は友達がいなくて寂しくて、それで一人ぼっちは嫌だ、みたいなこと言ってたから俺が助ける、それがあの時、俺の代わりに助けたお礼だ』とかなんとかね!」

慎二「意味わかんねーし、頭打っただろこいつとか思ったけどさぁ!?
あー、そうだよ偽物だよ、お前と衛宮の友情は丸っきり偽物だよ!衛宮が意図的に作為的に友達になろうとしたんだから偽物しかないよなぁ!!」

八幡「……っ!」

八幡(あれ?なんだこれ?目眩か?なんだこれなんだこれなんで前向けないんだよ?!)

慎二「けどさぁ!?じゃあお前がこの2年間一緒にくだらねぇこと言い合って助け合ったのは軽い偽物なんかよ!?」

八幡(偽物だ、偽物だ、偽物だ、偽物でしか無いんだ!あいつに本物は無い!)

慎二「あのバカが原因で妹をパクられたんだっけ?お前の言う偽物はこういう時無視して見捨てる奴じゃないのかよ?!」

八幡(そうだ、見捨てる、どいつもこいつも俺を見捨ててきた、そうだ、だから、でも、あいつは?どうした?)

慎二「見捨てなかったんだろうが!?全身傷だらけでも見捨てなかったんだろうが!!それでもお前はあのバカが偽物だって言うのか!!?」

八幡「うるっせぇよ!!そんなこととっくの昔にわかってんだよ!!だから俺とあいつの偽物(ホンモノ)に触んじゃねーよ!!この赤ワカメ!!!」

体が自然と走り出していた、目の前で羞恥で真っ赤になった慎二を置き去りに俺はまっすぐ校舎を目指す。
いるはずだ、今ならまだ、あの部室に!!

八幡「ぜぇ、ぜぇ、はぁはぁ」

呼吸がキツイ、なんでこんなに汗かいてんだ俺?
夕日が差し込む廊下にたたずみ俺はドアに手をかける

あれ?これ、こんなに重かったか?
ゆっくりとゆっくりとドアを開く。
すると

士郎「おー、どうした八幡?そんなに汗かいて?」

あいつがいた、全くいつも通りの顔で何やら工具箱を開けて色々と学校の機材を修理してる

八幡「なにしてんだよ?」

士郎「ん?ああ、平塚先生と藤ねぇが飲み会の会場決めで肉弾戦を職員室内で繰り広げてな、おかげでここにあるの全部修理依頼だ」

八幡「雪ノ下と由比ヶ浜は?」

士郎「部品を買いに電気屋にな、今からなら間に合うだろ」

八幡「そ、そか」

そのままいつもの定位置に辿り着き、読書をしようとする。
だがあいにくと鞄を弓道場に忘れてきたようだ。

八幡「っ!ぼっち専用防護結界が展開不能…っだと!?」

士郎「いや、手伝ってくれよ、とりあえず、そこの黒いケーブル取ってくれ」

八幡「あ?こっちの?」

士郎「いや、それより細いの、あぁ、それだ」

そのまま衛宮のペースに流され、部品を手渡すだけの存在になりかけた時にハッと目的を思い出す。
いや、いかんだろ。
大丈夫だ、たった数秒言うだけだ、恐れることは無い!

八幡「あ、あのさぁ、え、衛宮!?」

士郎「んどうした?あ、ちょっとそこのネジ頼む」

八幡「こ、この前は悪かった、あと最近無視してすまん!こ、今度め、飯食いに行こう」

ピタっと、衛宮の動きが止まった。
一瞬世界が止まって自分が魔法少女かスタンド使いになったのかと錯覚する。

士郎「ど、どうした八幡頭打ったか?どこだ!?見せてみろ!?」

八幡「いたっ!ち、ちげーよ、普通に謝ってるだけだっての!」

士郎「いや、そのお前って追い詰められないと謝らないし、ましてや自分から飯食いに行こうとか、大丈夫か?なにか洗脳とか暗示とかされてるんじゃ?」

八幡「…ちげーよバーカ、その、前にお前と友情?はなんか本物が欲しいって言ったじゃん?」

士郎「……?そんな話したか?」

八幡「した!絶対にしたからな!?んで!!なんか、そのお前の言ってた偽物でも良いというか、友情に偽物も本物も無かったと言うか…、そのだな」

士郎「……とりあえず八幡と俺の知り合い誘ってどこか食いに行くか?」

八幡「ちがっ、だから、俺はその本物っていうか、偽物のダチと一緒に食いに行きたいのであって、だから」

士郎「なんだ、知らなかったのか?お前のダチは意外と多いんだぞ?八幡」

まぁ、なんていうか、その時ウジウジ下を向きながら話してた俺はなんとなく顔を上げた。

その時のこいつの顔を見て、なんかもうどうでもよくなった

八幡「そんじゃ、あいつら誘ってサイゼで良いか?士郎」

士郎「サイゼはちょっと…」

結局本物も偽物も関係無いのだ

まぁ、つまりなんてか

俺の、 、は間違っている

休日使って何やってたんだ俺、
てことで終わりです


すいませんお疲れ様でした!

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