安価で勇者決めてSS(377)

勇者の
>>2能力
>>3性別
>>4武器

視界にある隠れてる通貨が光る

倒した敵を武装として纏う事が出来る
纏う部位で性能も変化する

~最初の街~

勇者「さあ冒険が始まるぞ!!」

勇者「おぉ……この黄金の輝き、こりゃそこらじゅうに金が落ちてるってことだよな」

勇者「王様からもらった資金じゃ心細いって思ってたんだよなぁ」

勇者「よし、この能力を駆使して金を集めよう」

勇者「では手始めにこのでかいツボ共の隙間を」ゴソゴソ

勇者「1Gとかシケてんなぁ……大方落としちまったけどこのくらいどうでもいいやとか思ったんだろうな」

勇者「いやくじけるな、金があるのはここだけじゃない……街中ギラギラ光ってやがるもんなぁ」

勇者「立ち上がれ勇者!そこに光がある限り希望は捨てるな!!!」

勇者「」チマチマ

勇者「飽きるわこんなん!ヴォケ!!1Gとか2Gばっかじゃねーか!!」

勇者「そういや今気づいたがそこらにある光のどれも大きさがおんなじなんだよ……つまり金額もその程度」

勇者「眩しいのは武器屋のカウンター奥ぐらいのもんだぜ……」

勇者「お?」

男「や、やめてくれぇ……金をとられちゃ家族が困っちまうよ」

悪人面「けけけ、いいじゃねぇかよちょっとくらい」

勇者「(うっわ眩しッ!あの男めちゃくちゃ金持ってやがるじゃねぇか)」

勇者「(助けたら金くれそう、というかもらおう)」

勇者「おい、そこの悪人面!その人に金をせがむのはやめたまへ!!」

悪人面「あぁん?」

男「あ、貴方はたしか……勇者様ではないですか!!」

勇者「いかにも、私は勇者だ!!」

悪人面「勇者だと?おもしれぇ、勇者に選ばれるような奴はどのくらい強いのか試してみたかったんだ」コキッコキッ

勇者「(あれ、名前聞いたら逃げるかと思ったのに……予定狂ったわ)」

悪人面「勇者さんよぉ、もしこのヘナチョコを助けてぇんなら俺を倒してみな!!」

勇者「(魔王討伐の命を受け早々にあれを使うことになるとは思わなかったがやむを得まい!)」

悪人面「おらぁ!右ストレート!!」

勇者「」シャキン

悪人面「(ククク……剣か、俺は剣士ともよく闘り慣れてるしこの勝負もらっ)」

勇者「催涙スプレーーー!!!」プシャー

悪人面「いてぇ!!!目がぁ!!目がぁ!!」

勇者「ついでにチンポにももらっときな!!」プシュー

悪人面「いてぇ!!くっそいてぇ!!!」

勇者「油断したな、ちなみにこれは模造剣で木すら切れないなまくら剣」

勇者「しかしこの紐をひくとスプレーを噴射でき、かかった部分は激痛が走るという代物だ」

勇者「ちなみに殺傷能力はない、ただの防犯グッズだ安心しろ」

勇者「今のうちに逃げますよ!!」

男「は、はい!」

男「ハァッ……ハァッ」

勇者「ここまでくれば安心でしょう、奴は今頃痛み悶え苦しんでいる事でしょう」

男「助けてくれてありがとうございます!なんとお礼を言ったらいいのやら…」

勇者「い、いえ……礼の言葉などいりません……わ、私が欲しいのはですねぇ」チラッチラッ

男「勇者様が欲しいもの……と言いますと旅のお供ですよね!?」

勇者「え、いや……マネ……」

男「でしたらいい知り合いがいます!多分酒場にいるでしょうから紹介します!」

勇者「いえ結構ですよ、そんな……」

男「遠慮しないでください、ささやかなお礼ですので!!」

勇者「(くっそ、パーティーなんて増やしたら金の減りが早くなっちまうじゃねぇか……)」イライラ

~酒場~

男「さぁこちらです」

勇者「(とりあえず勇者らしく丁重に断らないとな、勇者ってのは社会性が大事なんだ)」

勇者「にしたってこの能力のせいであちこち眩しいったらありゃしねぇな……んぉ?」

魔法使い「」

勇者「なんだあいつ、微塵も輝いてやがらねぇぜ」

男「魔法使いさん!!」

魔法使い「はいなんでしょう!!」ガタッ

男「いきなりおしかけてすいませんねぇ、忙しかったですか?」

魔法使い「いえいえそんなことはありませんよ!ここ最近イメトレに丸一日時間を費やすくらいですから!」

男「そ、そうですか……それはよかった」

勇者「あの、もしかして紹介してくださる方って……」

男「えぇ、この人ですよ」

勇者「(この一文無し女が仲間だと!?冗談じゃねぇんだが!?)」

魔法使い「あのぉ……そちらの方ってもしかして」

男「勇者様ですよ」

魔法使い「ゆ、勇者様!?勇者様が何故ここに……」

ザワ……

勇者「(やっぱ酒場に勇者ってのが珍しいのかちょっとざわつき始めやがったな、無理もないが)」

勇者「初めまして、魔王討伐の命を受け勇者の称号を授かった勇者です」ペコリ

魔法使い「あ、頭をあげてください!」アセアセ

魔法使い「あのぉ男さん……勇者様がこんな私に何の御用で……」

男「実は頼みがあるんだ、勇者様のお供をしてあげてくれないか?」

魔法使い「えぇっ!?」

   「おいおいマジかよ、あの魔法使いに仕事だぞ……」
   「正気かよ……もしかして体目当てなのか?」
   「いやいや勇者のお供だぞ?さすがにそんな事はよォ」
 ザワザワザワザワザワ

勇者「(俺がここに入ってきた時よりザワついてるんだが……それと大丈夫なのかよこの魔法使い)」

魔法使い「い、いいんですか……?私みたいな者が勇者様のお供など」

男「大丈夫自信もってくれ、あんたは俺が見込んだ女なんだからさ……」

勇者「ちょっと待ってくれ、俺は別に許可してないんだが……」

魔法使い「私頑張ります……ここ最近依頼も何も来なくて困ってたんです」

勇者「(いや、みんなのあの反応は最近どころの話じゃねぇだろ)」

魔法使い「酒場に来ると仕事が見つかると思い毎日入り浸ってはいましたが仕事は来ずただ酒の匂いを嗅ぐばかり」

魔法使い「腹も減り日を重ねるにつれこの酒場に運ぶ足もだんだんと重くなっていました」

魔法使い「ですが!めげずに通い続けた結果こんな名誉のある立派な仕事をもらえるなんて夢にも思いませんでした!」

魔法使い「勇者様!私精一杯頑張ります、足手纏いにならないように精一杯頑張ります!!」

男「魔法使いさん……俺紹介してよかったと本気で思うよ」ジーン

  「なんだよ、なんか俺感動しちまった……」
  「なんかダメ息子の就職先がやっとの思いで決まった時の事思い出したわ…」
  「でもあの魔法使い仕事を成功させたことがないってh
  「バカヤロウ!そんな事言うな!黙って背中を押してやるんだよ!!」
  
 ガンバレ!シゴトキマッテオメデトウ!ガンバッテマオウヲタオシテキテネ!

魔法使い「うぅ……私今幸せです」

勇者「(この空気すげぇ断りづれぇじゃねぇかよ……)」

男「では健闘を祈りますよ勇者様!!」

勇者「(なんだよこいつ、すげぇいい事しましたよみたいな顔してババ引かせやがって……助けなきゃよかったわ)」

魔法使い「」チヤホヤチヤホヤ

勇者「嬉しそうな顔しやがって……立ちワリィ」ポリポリ

勇者「(民衆は災害に怯えるだけで適切な対処はしようとはしない)」

勇者「(対処しようとする人は役を割り当てられ決められた人数で対処法を考えたり行動を起こしたりする)」

勇者「(危機感ない奴らばっかボケばっか、だからこんなのを救世主に押し付けやがるんだ)」

勇者「(魔王がもっとド派手なアクション起こさねぇからあいつら平和ボケ起こすんだ……ちくしょっ)」

勇者「こんなどこの馬の骨かもわからねぇような奴押し付けてきやがってよぉ……」

魔法使い「?」

勇者「(顔は整ってる、金にはなりそうだがわずかな評判を聞くと戦力にはならなさそう)」

んー、もっと安価とか取った方がいいかな?

じゃあ安価は投下の区切りでとる。
話の構成は>>1自身が考えてキャラの能力とかは安価とったりする。
けど話が破錠するようなものは取らないって方針で行くね。

勇者「くじけるな勇者……結果は見て嘆くんじゃないんだ、どう受け入れるかが問題なんだ」

勇者「(それにこいつも一端の魔法使い、いくらどんくさかろうが全く役に立たないなんて事はあるまい)」

勇者「そうだ……長所と短所を見極め成長を促し仲間としての価値を高めればいいだけじゃないか……うん、俺ならできる」

勇者「」ジロジロ

魔法使い「どうしたんですか勇者さん」

勇者「勇者でいい、俺はプライベートじゃそんな堅苦しい呼び方は好まねぇし」

魔法使い「け、けどこれって一応しg……」

勇者「一応任務だ、けどいつまでも事務的な関係ばかり続ける気か?それじゃストレス溜まるったらありゃしねーし」

魔法使い「で、でも……」

勇者「えーいそんな堅くなるなっつーの、その呼び方じゃ気に障るつってんの」

魔法使い「それじゃ……勇者」

勇者「おう、俺はお前を魔法使いって呼ぶからな」

魔法使い「はい!」

勇者「(とりあえずこいつを軽く面接してどういう人間か見よう)」

勇者「魔法使いよ、正直あの男にいきなり紹介されただけでお前の事をまだよくわかってない」

勇者「そしてお前も俺の事をよく知らないはずだわな?」

魔法使い「そう……ですね

勇者「敬語もやめろ!!なんか事務的で癪に障る!!!」

魔法使い「は、はい!!」

勇者「そして返事ははいじゃない!わかったよとか砕けた言い方しろ!『りょ』とかでもいいくらいだ!」

魔法使い「わ、わかったよ勇者……これでいいかな」

勇者「うむ」

勇者「お互いの事を知るためにまず自己紹介でもしたい」

魔法使い「うん」

勇者「まずステータス表と実績表を提示してくれ」

魔法使い「え、自己紹介ってそんな……」

勇者「仲間の力をかt……いや、能力を把握することはリーダーとして当然の役目だからな」

魔法使い「わかったよ……でも今もってない、口頭でもいいの?」

勇者「こっちの二枚のシートに記述しろ」パラ

魔法使い「わかった……」カキカキ

魔法使い「書けたよ」

勇者「うむ、見せてみろ」パラ
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しょくぎょう:魔法使い            |
せいべつ:女                 |
 レベル:8                  

 HP10
 MP20
ちから:19
すばやさ:18
たいりょく:20
かしこさ:10
うんのよさ:6
さいだいHP:32
さいだいMP:20
こうげき力:40
しゅび力:24

そうび1:ひのきのぼう
そうび2:布の服

勇者「なんか魔法使いっぽくないステータスというか……好ましくない成長の仕方だな」

勇者「傭兵とかやってた時期あるんだろ?どんな戦い方してたんだ」

魔法使い「えーっと……ちょっと待って、今思い出すから」

勇者「(そんな前の話かよ)」

魔法使い「MPが勿体ないから物理攻撃主体で闘ってたかな……こう杖でベシベシと」

勇者「……もしかしてずっとか?」

魔法使い「だって……いざという時に魔法使えなくなったら困るし」

勇者「……あのな、そんなだから仕事来なくなるしステータスも変になるんだよ」

魔法使い「えぇっ!?なんで、ちゃんとモンスターは倒してたよ?」

勇者「その棒っきれでか?倒せるかもしれねぇが時間がかかるし体力も消費するし効率が悪い、しかも倒しゃいいってもんでもねぇし」

魔法使い「そうかな……?仲間が危機的状態になったら思う存分援助できると思うけど」

勇者「どうせあれだろ?そんな機会はなかったんだろ」

魔法使い「えー……あー」ズボシ

勇者「あの人材豊富な酒場でだ、魔法のエキスパートか」

勇者「ロクに魔法も使わない、かといって力に特化してるわけでもない魔法使い」

勇者「みんな取るなら前者に決まってるだろうが」

魔法使い「そ、そうなんだ……原因は節約だったんだ」

勇者「そういうのは節約って言わないんだよ、出し惜しみって言うの」

勇者「あとは実績表も魔法系の資格以外は栄えるものは特にない……と」ペラ

魔法使い「こ、こういう事言うのもなんだけど過剰な仲間のダメ出しは士気を下げる原因になるんじゃないかな……?」ショボン

勇者「んなこたねぇ、落ち込んでるだけだからダメなだけでこれは反省材料」

勇者「安心しろ、これを見たからと言って落胆する気はねぇよ」

魔法使い「え……こんなにダメダメなのに……?」

勇者「えぇい劣等感を出すな、お前には期待してるんだぞ」

魔法使い「で、でも本当に足手まといになるかもだし……はぁ、なんか急に不安が」

勇者「お前、この勇者が直々に育ててやるっつてんだぞ?これから強くなるんだよ」

魔法使い「え…なれるの!?」

勇者「もちろんだ、もし俺をガッカリさせたいんならお前の未来を今ここで俺に見せてみな」

魔法使い「それは無理だけど……」

勇者「ってことはお前の伸びしろは未知数だ、正しい方向へ努力すれば作戦思考も変わるしステータスも矯正される」

勇者「でもお前のやる気次第でこれは0にもなるし100にもなる」

勇者「つーかやる気ないんならここに置いていくけどな、そうなると本当に足手まといだし」

魔法使い「わ、私魔法使いとして強くなれるんだ……そうだよね、天下の勇者の下で修業するんだもんね」

魔法使い「強くなれるんだよね!?みんなに頼られる魔法使いになれるんだよね!?」

勇者「そうだ、この俺が一人前に育ててやる!だからやる気取戻しやがれ!!」

魔法使い「よーし、がんばるぞぉ!!」

勇者「」サッ

魔法使い「え、何この小袋は……」

チャリーン

魔法使い「1G……」

勇者「今のお前の価値」

魔法使い「えぇっ!!?」ガーン

勇者「お前が成長するたびにそこに俺が金を入れてやる」

魔法使い「で、でも1G……」ガーンガーン

勇者「なんでも価値を金に置き換えちまうのは俺の性分でな、許せ」

魔法使い「むむむ……」

勇者「悔しいかよ?ならせめてどうのつるぎの値段ぐらいは超えて見せやがれよ三流」ケケケ

魔法使い「いくら勇者だからってこれは腹立つよ!!!」ムカーーー

魔法使い「よーし、やってやろうじゃない!!」ボォォォ

勇者「(よしよし、少しは負け腰が改善されたかな)」ウンウン

魔法使い「そういえば勇者の自己紹介まだだよね?」

勇者「あぁ俺か」

勇者「この国で選ばれた勇者、勇者やるまでは農家やってた」

勇者「防具はおふくろに仕立ててもらった、あえて名前をつけるならおふくろ防具シリーズ」

勇者「武器はこいつ」シャキン

魔法使い「こ、これって選ばれた勇者に贈られるって噂の聖剣……」ドキドキ

勇者「違う、催涙スプレーだ」

魔法使い「へ?」

勇者「これは不審者の顔などに噴射すると相手に激痛を与えるということが出来る……」ペラペラ

魔法使い「し、知ってるよ?スラム街からの流れ者が犯罪起こしたのがきっかけで作られた防犯グッズだよね?」

勇者「そうだ」

魔法使い「なんで剣の形なの?」

勇者「見栄えもあるがカモフラージュという効果もある、接近戦だと相手は油断しやすい」

魔法使い「そ、そうなんだ……」

勇者「そんなんで敵倒せると思ってんのかよこいつ、とか思ってるだろ」

魔法使い「お、思ってないよ!!」

勇者「いや全くな話だと思う、ほんとに倒せんのかよっていう」

魔法使い「えーーーーーーーっ!?」

勇者「王に支給されたのがこれだからな……何を血迷ったかこんなのを渡してきやがった」

魔法使い「それじゃどうするのこの先……」

勇者「さすがに防犯グッズだけじゃどっかで詰むと思うので強い武器を手に入れようと思う」

魔法使い「そうなんだ……あてはあるの?」

勇者「特にねぇ、これから情報を集めていく」

勇者「武器が手に入るまではこいつを使っていく」シャカシャカ

魔法使い「なんか頭痛くなってきた……大丈夫かな」

勇者「俺一人で闘う訳じゃねぇんだぞ?おめーも闘うんだぞ?」

魔法使い「あ、そっか……それじゃ本気で私がんばらないと」

勇者「期待してるんだぜ1G」

魔法使い「なんか勇者に期待されて嬉しいのかバカにされてるようで悔しいのか複雑……」ムムム

魔法使い「じゃあ早速この街を出るんだね?」

勇者「いいや、まだやる事がある」

魔法使い「やる事?」

勇者「金集めだ」ウッ

魔法使い「ど、どうしたの眩しそうに……」

勇者「実はな、勇者の能力として俺が持っているもの」

勇者「……隠れた金が黄金に輝いて見えるというもの」

魔法使い「へ、へぇ……」

魔法使い「(自己紹介もそうだったけどなんかこの人全然勇者っぽくないような……)」

勇者「実はな、さっきマップに印をつけておいたんだ」ペラ

魔法使い「もしかしてお金がある場所?」

勇者「そうだ、だがこれらの印ひとつひとつはすべて細かい金……」

勇者「俺も全部集めようと思ったがソロだと過酷すぎて挫折したんだ……」

勇者「でもな、今回は二人だから話が違う」

魔法使い「えーっと」

魔法使い「つまりこのマップに書かれている金を集めるまで街を出ないという事……?」

勇者「そう、落ちてる金集めるまで出れま10」

魔法使い「……あはは」

勇者「なんだその苦笑いは」

勇者「力とはすなわち金だ!」

勇者「現在俺達の血肉となる食料が手に入るのも金があるからだ!」

勇者「敵を倒せるのも強い武器を買って使えるから、つまり金があるからだ!」

勇者「つまり金がなければ強くなれない!金があって初めて強くなれるんだ!」

魔法使い「そんなぁ……酒場で仕事をもらうとかじゃないんだ」

勇者「あーいうとこでもらう仕事は雇用期間とかがあって面倒臭いからな、こういうやり方のほうが俺はいい!」

魔法使い「……えぇ」ダルーン

勇者「いつまでもダルそうにしてんじゃねー!自分を鍛錬すると思って精進しやがれ!!」

勇者「まずはこのドブさらうぞ!!ここは何と3Gも落ちてやがるからな!漁るからここ持っとけ!」

魔法使い「ゆ、勇者たちの初仕事は金目当てのドブさらい……なんか期待していたのと違うような」

こうして勇者たちの冒険は始まった!

金に目ざとい勇者に欠陥のある魔法使い!

二人は打ち解けあい早くもチームワークなるものができようとしている!

勇者は配られたカードで闘うと決意した!勇者は悲しかろうと嘆かない!

さぁ自信を奮い立たせ旅立て勇者!お前はまだスタートラインに立ったばかりだ!

安価 
次の仲間候補の
職業>>39
武器>>40
能力>>41

医者

毒薬(液体タイプと噴射タイプ)

~平原~

魔法使い「やっと街を出られるのね……」

勇者「結局日が暮れちまったから石タイルの上で寝ることになっちまったな」

魔法使い「おかげであちこち痛い!宿屋に泊ってもよかったじゃない!」

勇者「金集めるために時間掛けたのに宿屋如きに使っちまったら勿体ねーだろうが!」

魔法使い「何か本当に意地汚いというかケチというか……これが勇者の本性なのね……」

勇者「建設的といいなさい」

魔法使い「それで、いくら溜まったんだっけ」

勇者「ざっと160Gくらいだ」

魔法使い「結構溜まったんだね」

勇者「もうキラッキラだ、眩しいったらありゃしねぇ」

勇者「とりあえず次行く村で何枚か札束に変えてまたドブさらいでも……」ブツブツ

魔法使い「そんな事より早く行こうよー」グイー

勇者「おいおいせっかちだな、こういうのは計画的に進めないとダメなんだよ」

魔法使い「行く先は決まってるんじゃないの?」

勇者「金に目が眩んで決まってなかったんだぜ……」

魔法使い「えー……」

勇者「というわけで今決める!!ワールドマップ展開!おらおら、下に敷くからどきやがれ!」スルスルスル

魔法使い「え、このマップ長くない?縦幅も横幅も10mくらいある気が……」

勇者「臨場感を出すためにあえてでかくしてあるビッグワールドマップ、ちなこれは支給品、税込1080G」

魔法使い「(縮図の意味ないじゃん……)」

勇者「魔王城はずっと北の方にあると言われている」

魔法使い「曖昧だね…」

勇者「仕方ない、地図を描く奴がそこにたどり着けないんだからな」

魔法使い「だとすれば、まだ魔王城がある場所は正確に特定できてないんだ」

勇者「でも範囲は限られてる、なんせその周辺は魔物が牛耳ってるせいか人も少ないし荒れ果ててるからな」

魔法使い「あー、そういえば新聞で大規模な避難が行われてたね」

勇者「そうそう、避難した人々は最寄りの街を通じて南南へと歩を進めている最中だろう」

魔法使い「じゃあ北に向かって進もうよ!」

勇者「待て待て、遠い目的地にただ歩いて行こうとするバカがいるかよ」

勇者「船の手配、強いアイテムの入手、ステータス強化なんかも色々考えなきゃいけねぇ」

勇者「つっても情報不足で曖昧にしか決められないんだけどね!」テヘペロ

魔法使い「それじゃ最寄り最寄りの村や町を経由してそこらの情報集めて計画を地道に立てるしかないね」

勇者「そうだな、行き当たりばったりだが」

勇者「でーもだ、ステータスに関係ある作戦は俺が決定させてもらうからな」

魔法使い「うん、そこは勇者に従うよ」

スライム「ピキー!」

勇者「お、ちょうどいいサンドバックが出てきたな」

魔法使い「でやーー!」タタタ

勇者「こらこらぁ、魔法使いがいきなり棍棒をふりかぶるな!!」

魔法使い「え、なんで止めるの?」

勇者「お前できるだけ物理攻撃はあんまり行うなって言っただろうが、ステータスおかしくなるから」

魔法使い「そっか……そういえば」

勇者「いやまぁな?スライム如きに魔法なんてMP勿体ないって気持ちはわからんでもない」

スライム「」イラッ

勇者「けどな、今はお前の出し惜しみ癖を直そうとしてるんだぜ?前と同じ事やってちゃ意味ねーだろう?」

魔法使い「うん、それじゃ魔法使うね!」

勇者「そうそう、相手がいくら雑魚でクソだろうと自分の職業に合った戦いをしなきゃ……」

スライム「ビギーーーーーー!!!」ドガッ

勇者「あだっ!何しやがるこのクソがっ!!」ゲシッゲシッ

スライムをたおした▼

魔法使い「え、あんたが倒すんかい……」

  ~数時間後~

勇者「魔法はイメージが大事だぞ、何も考えず出した魔法はゴミみたいなもんだ」

魔法使い「メラ!!」テレレレン

魔法使い「ど、どうかな?」

勇者「うんうん、最初のメラはボヤかな?ってほどしょぼかったが今は安定してきてやがるぜ」

魔法使い「あんまり魔法使ってなかったからね……けど勘を取り戻してきた気がするよ」

勇者「ステータスも魔法使いのステータスに徐々に近づいて来てるぞー、いい兆候ねー」

勇者「お前の武器とかもレベルに合わせて新調しねぇとなー」カタログペラペラ

魔法使い「……」ジーッ

勇者「あ、どうした?俺の顔がイケメンすぎたか?」

魔法使い「いやそれはないよ」

勇者「ストレートォ……」

勇者「樹海があそこに見えるからもうすぐ村か……」ワールドマップペラー

魔法使い「それいちいち広げるんだ……」

勇者「今晩はそこで夜を明かすか」

魔法使い「てことは宿屋……」

勇者「寝袋買うんだよ!!そっちの方が安くつくだろうが常識的に考えて!」

魔法使い「でも睡眠の質が違うよ?寝袋だと何が起こるかわかんないし安全じゃないっていうか……」

勇者「大丈夫大丈夫、宿屋のロビーに寝袋しけばいいんだよ」ヘラヘラ

魔法使い「それダメなんじゃ……」

勇者「いけるいける、勇者つったらなんぼか負けてくれるて……」

さつじんき「ばぁっ!!いいねその驚いた顔!これだから不意打ちはやめられないぜ!」

さつじんきが あらわれた!▼

勇者「うおっ!?」

魔法使い「これって結構強いモンスターなんじゃ……!」

さつじんき「斧をブンブンブブブン!!」ブンブン

魔法使い「きゃぁっ!!」

勇者「魔法使い!!」

勇者「催涙スプレーでもくらいやがれこの不審者め!!」プシャー

さつじんき「ぶルァァァァァァ!!」モダエテルー

勇者「今だ!!村まで急ぐぞ魔法使い!!」タタタタ

………………

~村~

勇者「腕をやられちまったか……結構傷も深い」

魔法使い「ごめん……私が油断してたばかりに……」

勇者「気にするな、俺も油断してたんだからよ」

魔法使い「うぅ……やっぱ私足手纏いなのかなぁ」

勇者「そう自暴自棄になるなってのに、ヤなことあったらそうなるのはお前の悪い癖だぞ」

勇者「とりあえずすぐ教会に連れて行ってやるからな」

女「だから、しつこいっつってんでしょうが!!」

医者「この薬を服用してみてください、きっと体調がよくなります!お金はいらないのでぜひ!」

女「薬ぃ?あんたの作った得体のしれないものなんて飲めないわよ!」

女「病気なら教会で治す!!あんたに世話される筋合いなんてないの!!!」

女「ほんと、何が医療技術よ胡散臭い……どこかへ消えて頂戴」ツン

医者「また逃げられてしまったか……仕方ないが」

医者「む?君すごい怪我じゃないか!!!」

勇者「えっと、貴方は……?」

医者「あー……医者というものだが」

医者「とにかくその子の治療をさせてくれないか!?金はとらない!」

勇者「金はとらない!?……じゃない!すぐお願いします!」

医者「あぁ、それじゃウチに案内するからすぐ来てくれ!」

~診療所~

勇者「(すっげぇ怪しい部屋……ベッドとかも汚れてるし変な器具置いてあるし)」

医者「……ひとまず治療は済んだかな」

魔法使い「ありがとうございます」

勇者「いやー助かりました医者さん」

医者「いいや礼には及ばないよ、患者を助けれて僕も満足さ」

医者「それにしても災難だったね、モンスターに襲われるだなんて」

勇者「はぁ……ですが、俺達職業柄そんなことも言ってられないっていうか」

医者「ん?君たちって討伐隊か何かかい?」

勇者「俺、勇者なんです」

医者「ゆ、勇者?勇者ってあの勇者なのかい?」

勇者「そうですよ、一応紋章もあります」

医者「驚いた……勇者ってのは結構素朴な少年なんだね」

勇者「んで、こっちが魔法使いっす」

魔法使い「よろしくお願いします」

勇者「旅の仲間なんですよ、一応俺の弟子でもあるんっす」

医者「あぁ、こちらこそよろしくね」

医者「にしたって勇者と話せるなんて何だか感動しちゃうなぁ」

勇者「医者さんって仕事は何をしてらっしゃるんですか?」

医者「僕かい?村人の容態を見たり病気の治療を行ったりしてるよ」

勇者「えーっと、つまり教会の方なんですか?」

医者「いや違うよ、僕は魔法が使えない人間だからね」

医者「医療技術というものを用いてるんだよ」

魔法使い「そういえば私魔法で治療されなかった……なんか変な器具とか使って傷口をいじられてたし」

勇者「医者さん、その医療技術というのは?」

医者「魔法技術を伴わない違う切り口の治療法さ」

医者「人間の体の仕組みと自然界の原理を分析し、それを応用して魔法を使わず治療器具や薬を作るんだ」

医者「医者と言うのはそういう技術を巧みに扱える人間の事を言うのさ」

勇者「すごいんですね医者さんって……」ハヘェー

医者「いや、実はそうでもないんだ……」

医者「医者っていう人間は国家にちゃんと認められていない非公式な職業だからね」

勇者「それってつまり……」

医者「うん、今は魔法文明で魔法による技術が盛んになってるだろう?」

医者「そのおかげで教会は治療機関として高度な存在だ、治す仕事はすべて教会が請けている」

医者「それに対して医療技術っていうのは研究してる人も少ないので技術の進歩も遅い」

医者「だから民衆に信用されないんだよ、みんな魔法の方に重きを置いているからね」

勇者「たしかに、身体の具合が悪くなれば教会へ足を運ばせるのが普通ですもんね……」

医者「でも着実に技術は追いついてきているんだ、だが民衆にイマイチ信用されない」

医者「やはり、医者というのは必要とされない存在なのだろうか……」

勇者「医者さん……」

医者「でもあきらめきれない、魔法が使えない僕でも何とか人を助ける術を身につけたんだ」

医者「……困っている患者を救いたいんだ僕は」

勇者「素晴らしい技術じゃないですか、俺いいと思いますよ!」

勇者「魔法が使えない人も勉強してその技術を身につければ人を治せる人間になれるんでしょう?」

医者「あ、ああ……正しい知識を理解しさえすれば特別な力はいらないが」

勇者「ていうことは救う人間が増えると言う事じゃないですか、それって素晴らしいっすよ!」

魔法使い「そういう治療魔法が使える人間って生まれながらに特別な人ばかりですもんね」

魔法使い「だから病気とかそういう普通の人に手に負えないものを治すのは教会の人間でしか無理…」

勇者「これは便利が良くなりますよ!もっと広めるべきです!!」

医者「僕もみんなに知ってほしいのだが……」

勇者「俺達も協力します!!」

医者「えぇ!?けどそんな悪いよ……君だって他にやるべきことがあるだろうし」

勇者「今は落ち着いていますが、いつ魔王が人間に大きな危害を加えるかわかりません」

勇者「その時に少ない教会の人間だけで手を回すのは困難でしょうし」

勇者「だからあなたのような人間、その技術が必要になってくると思うんです」

勇者「勇者として、この技術は日が当たるようになってほしい」

勇者「それに……医者さんの人を助けたいって想いは無為にはしたくないっすし……」グッ

魔法使い「勇者……うん、そうだよね」

魔法使い「私も協力させてください!!」

医者「あ、ありがとう……気持ちだけでも嬉しいよ」

安価
敵キャラ
職業<<62
武器<<63
能力<<64

勇者「まだ病気の患者を治した事ってないんですか?」

医者「うーん、そうだね……カルテを見る限り一般人でも市販の治療具で治せるものばかりの傷を治したくらい」

医者「それもほんの2、3人あまりだし……」

勇者「んー、やっぱ病気ともなると信用できる教会の方へ行ってしまうよな…」

魔法使い「モルモットを使って実験する事は信頼を得る事はできないんですか?」

医者「あぁ、それはタメしてみたよ……」

勇者「あー……」

医者「察しの通りさ。そんな動物と人間を一緒にするなとさ」

勇者「という事はやっぱり人を治すことでしか信頼を得られないと言う事か……」

勇者「なら尚の事俺が立ち上がらないわけにはいかねぇな……」

勇者「勇者の名を使えば医療の事を信じてもらえるきっかけにならないでしょうか」

医者「うん、たしかに勇者が説得すると幾分か皆も信じてくれるかもしれないが」

医者「いいのかい?こんなことに名を……」

勇者「いやいや減るもんじゃありませんしww、それに魔法使いを治してもらったお礼もしたいですし」

勇者「地道に信頼を得ていきましょう」

勇者「じゃあ早速身近に患者を探すところから始めていきましょうよ」

医者「ほんとに助かるよ……」

魔法使い「では行きましょう医者さん!」

医者「あー医者でいいよ、僕堅苦しいのは少し苦手でね……」

勇者「さすがの俺も年上に対して呼び捨ては抵抗があるな……」

医者「はっはっは、かまわんよ…歳ばかり取っていても君の方が地位は上だからね」

勇者「じゃあ……医者」

医者「ではこちらも勇者君と呼ばせてもらおうかな」

魔法使い「えーっと、えーっと……」

勇者「(めちゃくちゃ地位って言葉に戸惑ってる、おもろッ)」

医者「あー、位とか気にしなくていいから、ね?」

魔法使い「い、医者!」

医者「魔法使い君」ニコニコ

勇者「さて外に出てみたはいいが……」

勇者「病気罹ってる奴なんてそう簡単に見つけられるもんじゃねぇっていうか……」

魔法使い「教会の前で待ってるのはどう?」

勇者「いいねそれ!君サイコー!」

医者「いや……さすがにそれは教会へ訪れる人間を横取りしているようで何だか気が引けるよ……」

勇者「それじゃむしろ相談してみりゃいいんじゃねぇか?」

勇者「あいつらも人を治すのが仕事だし、通じるところもあるかもしれん」

勇者「上手く行ったら医療技術も取り入れてくれるかもしれん」

魔法使い「いいよそれ!ナイスアイデア!」

医者「そういえば試したことなかったな……うん、それじゃ話してみよう」

~教会~

  ギィ……

テーテーテーレレレーレー

神父「む?」

勇者「こんにちは、神父さん」

魔法使い「こんにちは~」

医者「ご無沙汰しております神父」

神父「……」

勇者「(こいつ医者の顔見るなりすっげー嫌そうな顔してやがったような……)」

神父「何だね、君たちは」

勇者「俺は勇者です」

神父「勇者?もしかして魔王を打倒するために選ばれたあの勇者か?」

勇者「はい」

魔法使い「それでわt」

神父「医者君、勇者なんか引き連れて教会に何の用かね」

医者「今日は少しお話があってきました」

神父「ほう、話ねぇ……いいでしょう、迷える子羊の悩みを聞くのは神父として当然の義務ですからな」

神父「ついてきなさい、客間に通そう」

魔法使い「無視された……無視された」ガーンガーン

神父「それで、話とは?」

医者「はい……それなんですが」

医者「医療技術を教会にも取り入れてもらえないでしょうか?」

神父「……」シュッシュッ

神父「」シュボッ

神父「」スパー

勇者「(くっせ……こいつ神父のクセしてタバコなんて吸いやがって)」

神父「医療技術ねぇ……発展途上の魔法のまがい物か」

神父「悪いがそんな得体のしれないものを取り入れるほど教会の経済事情は深刻ではないのでね」

神父「断らせてもらう」

勇者「そ、そこを何とか!医療技術が取り入れられれば多くの人を教会に迎え入れられるし
   その分多くの人を救えるようになるじゃないですか!」

神父「だからそんな信用ならんエセ技術を取り入れられんというとるのだよ」

勇者「そこです、医療技術によって病気の人間を救えるという証明する手助けをしてもらえませんか?」

神父「何?」

勇者「今は他の人にもイマイチ信用されてない医療技術ですけど、教会側が手伝ってくれれば……」

神父「患者をモルモットにする気か!それでも勇者か!!この無礼者!」

勇者「なっ……」

神父「おぉ神よ……勇者は悪しき心に惑わされた……本来のあるべき姿へ戻したまへ」

勇者「なんでだよ!医療技術ってのは理論上は人を治せるものなんだろ!?」

神父「そんなのもの机上の空論に過ぎんよ、治癒術が使えるのだからそれを今まで通り使えばいい」

勇者「そんなことを言っていてはいつまでも技術が発展しないし」

勇者「何より誰でも修得すれば人を治せるようになる素晴らしい技術が埋もれたままになってしまうじゃないか!」

医者「勇者君……」

神父「ふん、何と言われようが取り入れる理由にはならない」

神父「それに今は魔法技術による治癒術の発展が最優先である。別の技術が出てくれば前者の発展が妨げられることにも繋がるかもしれんだろう」

神父「そういうのは他所でやってくれ、国としても流れを急に変えられるのは迷惑だ」

神父「医者君、勇者を後ろ盾にすればこんな話が通じると思ったのかね?」

医者「いえ、そんな事はッ……!」

神父「魔法が使えないからと言ってこんなモノを寄越してこられるのはハッキリ言って迷惑なのだよ」

神父「信者や患者も医者に脅かされてると聞く」

神父「まったく困ったものだ、技術を伝えるものがこれではその技術も底が知れるというものだろう」

勇者「……ちくしょう、好き勝手いいやがって」

  「モンスターが来やがったぞ!!」

  「逃げろ、避難するんだ!!」

医者「ッッ!?」

医者「虫たちが……」

医者「勇者君、この村にモンスターが来る!!」

勇者「えっ?」

神父「ふむ、君たちは帰りたまえ」

神父「私は患者を受け入れる準備をする」

キャーーーー
「モンスターがきやがった!」
「助けてー!!」

勇者「外でモンスターが人を襲ってやがるのか!?」

勇者「おい魔法使い!!行くぞ!!」

魔法使い「(´・ω・`)」ショボーン

勇者「何しょげてんだよ!!早く行くぞ!!」ユサユサ

魔法使い「はっ、何!?なんで私手を引っ張られてるの!?」

勇者「いいから来やがれ!」

医者「私も行く!」

ワーワー

魔獣使い「ヒャッハー!!!!」

勇者「人間がモンスターの上に乗って暴れてやがる……!」

魔法使い「あいつが村を荒らしに来たの?」

勇者「理由はわからねぇが違いねぇ」

医者「モンスターが村を襲う事は何度かあったが……こういうケースは初めてだな」

魔獣使い「あぁん?なるほどてめーらがいるから俺まで呼ばれたのか……」

勇者「……?」

魔獣使い「全力で殺してやるよ……」

 ボウォォォォォォォォォ!

勇者「角笛!?」

魔法使い「モンスターがいっぱい……」

魔獣使い「おめーたち、そいつら食っちまっていいぜ」

魔獣使い「骨の一本も残してやるなよ!!!」

医者「そこまでにしておけ」

魔獣使い「あぁん?」

魔獣使い「……んだてめぇは」

更新ここまでです。今回の安価はナシです

医者「どういう理由でこの村を荒らしに来たのかは知らないが、これ以上の悪行は許さない」

魔獣使い「あーあー!その白衣、聞いた通りだ」

魔獣使い「お前が医者って奴か……知り合いから噂聞いてるぜ」

魔獣使い「何でも?僧侶の二番煎じな職業らしいじゃねぇか」

魔獣使い「だがロクに機能してないんだってなwww」

医者「……」

勇者「やいやいやい止まりやがれ!!てめぇ!俺は勇者だぞ!この紋章を見てわからねぇか!」

魔法使い「大人しくお縄につきなさい!」ヒョコッ

魔獣使い「あぁ?知ってるよ勇者だろ、だから俺様が直々に来てやったんじゃーねーか」

魔獣使い「俺はお前を殺すように頼まれたからな……」

勇者「(んだと……魔王の手先かこいつ!!)」

魔獣使い「そういうわけだ。まぁもっとも目的はそれだけじゃねぇんだがな」

魔獣使い「村人を傷つけるのも俺様の仕事の一つさ」

勇者「傷つける……?」

勇者「(なんか変な話だな……)」

医者「……何度か魔物が襲ってきたのも貴様が裏で糸を引いていたというわけか?」

魔獣使い「そうだな。俺が送り込んだ」

医者「ならば諸悪の根源を断つまで……」カチャン

魔獣使い「おいおい別におめーを殺すつもりはないぜ?いたぶるくらいはしてやるが」

魔獣使い「それに、俺を野放しにしておいた方が何かとお前には都合がいいんじゃねぇか?」

魔獣使い「患者も増えりゃ利益も名誉も手に入るじゃねぇかwwww」

医者「……貴様は、患者が増えればいいと思っているのか?」

医者「死にゆこうとしている者が増えればいいと言っているのか?」

医者「……僕は患者が増えればいいと思っているわけではない!!!」ゴォッ

勇者「(や、やべぇ……温和だった医者がガチギレしてやがる)」

魔獣使い「ほう……お前、いい目をしてやがるな」

魔獣使い「そうだ、本能や無意識が剥きだしになったその目……何かを断たんとするその目」

魔獣使い「間違いねぇ。俺と同じ目をしてやがるもんなぁ」ヒヒッ

医者「」ダッ

勇者「医者!!」

魔獣使い「おめーら!!そいつと遊んでやれ!!」

魔獣使い「(キキ……久しぶりに楽しくなってきやがった)」

魔獣使い「血がたぎってきたぜ……」

医者「」ブンッ

ジュゥゥゥゥ

魔物達「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」

魔獣使い「何!?」

医者「毒薬だ、触れれば侵され器官や皮膚の本来の機能は死ぬ」

医者「この魔物達の目は光を失った……」

魔獣使い「ふーん……見込んだ通りだ、やるじゃねぇかよお前」

勇者「隙アリ!!催涙スプレートルネードダイブ!!」クルクルクル

魔獣使い「ぐあっ!!!なんだこれ!いでっ!!いでぇ!」

魔獣使い「ちくしょう……小癪な真似しやがってぇ……」

魔獣使い「ククク……覚えたぜ医者よォ……俺はまたここに来る、お前に会いに来るからなぁ……」

ブ~~~~~~ン……ピタッ

ドドドドドドド

勇者「待ちやがれ歩くサファリパーク!!!」

医者「……いかん、つい奴をしとめることばかり」

医者「勇者君!奴を追うのはあとだ!怪我人を救助せねば!」

勇者「あ、あぁそうだった……!」

医者「大丈夫ですか!?」

僧侶女「ちょっと、どいてくださる?邪魔なので」

僧侶男「あんたがいじって患者の容態が悪くなったらどうすんだよ」

僧侶女「お得意の毒薬でも作っていてはいかがですか」ニヤ

勇者「こんにゃろ……!」

医者「あ、いや……すまない」

勇者「医者!ここで食い下がってどうするんだよ!!」

僧侶男「」ジャラ

魔法使い「あれ……なんだろうあの袋」

勇者「おいおいその袋超眩しいんですけど何入ってるんですかぁ?」

僧侶男「治療費だが?」

勇者「……ふーん」

僧侶男「何だ、用が済んだなら早く……」

勇者「随分手際がいいんだな、急患で治療費をもらう準備をしているだなんて」

僧侶男「……」

僧侶女「本当に邪魔です、これ以上の妨害は許されません」

医者「行こう勇者君、魔法使い君、ここにいては彼らの邪魔になるのは本当だ」

勇者「気にいらねぇなぁ……」

~診療所・夜~

勇者「くっそぉ!!なんだあいつら!!」

医者「彼らは悪くない、自分の仕事を真っ当にしているだけなのだから」

勇者「んなのわかっちゃいるけどよぉ……」

魔法使い「ねぇ、あの教会なんか怪しくない……?」

勇者「それは俺も思った」

医者「ふむ……やはり思うところは皆同じか」

勇者「医者もそう思うか?んじゃあ話合おう……」

医者「待ってくれないか、少し僕の能力について話す事がある」

勇者「能力?」

医者「僕は虫の声が聞ける」

勇者「……マジで?」

医者「あぁ、虫は本来言葉も話さないし人間より思考が単調だが」

医者「虫の体の動き、それの触角が得た外部の情報を総合してそれは僕の理解できる言語へ変換され」

医者「僕の脳に伝わる」

勇者「……は?」

魔法使い「?」

医者「すまない、例えを出そう」

医者「人間がやかんを触ったとき熱いと手をひっこめるだろう?」

勇者「おう」

勇者「あぁなるほど、手を引っ込めたのは熱いから」

勇者「つまり言葉にしなくともその人間は熱いと思ってるとわか……あれ?」

魔法使い「おかしいじゃん……」

医者「それだけだとわからない、だから虫の節足の微細な動きや様々な機関の動きを読み取って」

医者「今虫が何を思っているのかを感じ取れる」

医者「人がやかんに手を触り、触った手の部分が急激な高い温度を感じ取ったならば」

医者「さっきの例も熱いから手をひっこめたと断定できるだろう」

勇者「なるほど、つまり医者は虫の身体の状況の色々な情報を読み取れるって事か?」

医者「情報は読み取れない、僕の脳に伝わるときにはすでにその情報は統合され思考という言語に置き換えられるからね」

医者「つまり読み取れるのは虫が想っている事だけさ」

勇者「な、なんかすげぇ」

医者「虫の声が聞こえる範囲は僕を軸として半径1km以内……」

医者「遠ければ遠いほど声は聞こえなくなる」

医者「僕は魔法は使えないが、この能力だけは持っているんだ」

勇者「そういえば騒ぎが起きる前に虫がどうとか言ってたな……」

勇者「あの神父、悲鳴が聞こえる前に患者を受け入れる準備をしてやがらなかったか?」

医者「うん……」

魔法使い「それだったらあの魔物を引き連れていた奴と神父はグルって事なのかな……?」

勇者「そう考えるのが自然だな、僧侶達も金をもらう準備してやがったし……」

勇者「って事は……あいつに村人を襲わせて教会が治療費で儲けるって魂胆か」

医者「さっきね、あの男に虫をひっつけたのさ」

医者「その虫の思っていることがね……よく聞こえるんだ」

勇者「ってことは……あいつこの近くにいやがるのか」

医者「そうだと思う」

魔法使い「でもどうするの?どうやって悪事を暴くつもり?」

勇者「そうだな……あいつを倒すのか」

勇者「それとも教会にカマかけてやるか……」

医者「後者の方が好ましいね……」

医者「疑いがかかったのならば僕も調べないわけにはいかない」

勇者「上手くいけばよぉ!これを弱味にして医療技術を取り入れてもらえるんじゃないか!?」

医者「んー……あんまりいい気分じゃないけどね」

医者「でもやめるわけにはいかない、まだ仮定だが教会の不正だからね」

魔法使い「では、明日に調査をしますか?」

勇者「そうだな決定的証拠をつかまないと……」

魔法使い「虫の事言ったらダメなのかな?」

勇者「バカかてめぇはぁよォ?僕虫の声が聞こえるんでちゅーつって証拠になると思ってんのか?ただのバカじゃねぇか」

魔法使い「そりゃそうだけどなんかムカつく……」イライラ

医者「明日教会を調べよう、きっと何か隠しているものがあるはずだ」

勇者「おう!」

……………
…………
………
……

医者「泊まるところはあるのかい?よかったら泊まっていきなよ」

勇者「え、いいのか!?ヒャッホー!」

医者「あぁ、ベッドも余っているしね」

魔法使い「け、けどここのベッド所々血痕がついてるんだけど……」

医者「あぁ、実験の時に少し血が飛散してしまってね」

医者「でも大丈夫、虫たちはここは寝心地がいいと言っているからね」

勇者「それよくねぇんじゃ……」

魔法使い「う、うぅ……怖いぃ」

勇者「おい!くっつくな!!!」

魔法使い「だって怖いんだもん……なんか出そうだし」

勇者「はぁ?別に寝たらそんなことも感じなくなるって」

魔法使い「素気な!師匠なら弟子を宥めてくれてもいいじゃない!!」

勇者「はいはい、どーどー」

魔法使い「バカにしてんのくぁ!」パカーン!

勇者「ぶぽぉ!」

医者「ははは……」

医者「(賑やかだな……助かる、一人だとどうしても雑念が湧いてしまうからな)」

医者「(今日は危なかった……、次はもっと落ち着くようにしないと……)」

医者「(疲れた…今日は早く休むとしよう)」

………………

「おかあさん!!!」

母「あぁ……待っていてくれたんだね」

「体……大丈夫だったの?」

母「うん……もう教会に通わなくてもいいよ」

「ほんと!?それじゃお母さんの病気は治ったんだ!!!」

母「さぁ帰ろう?こんな場所にいちゃ蚊に噛まれちゃう」

母「家に帰ったらハンバーグ作ってあげるからね」

「わーーーい!!!」

ガッシャーーーーン!!

母「くっ、はぁっはぁっ!!」

「お母さん!!!」

「教会、教会へ行かないと!!!」

母「うぅ……」

「なんで、病気治ったって言ってたのに……」

「ちくしょう!!」

ズル……ズル……

ギィ……

僧侶「あっ……」

「母が倒れたんです!!診てください!」

僧侶「……」

「聞いてるんですか!!?」

僧侶「すまない……君のお母さんは、もう治らないんだ」

「えっ……?」

僧侶「お母さんにもそう伝えたはずなんだけどね……そうか、君には話していなかったのか」

「何それ……」グッ

バキィッ!!

僧侶「ぐっ!!」

「無理!?それが尽くさねぇ理由になるのかよ!!!」バキッバキッ

僧侶「今の技術では治せない病気なんだ……!仕方ないが……」

「だからってあきらめんなよ!これで死んだら俺の気持ちがおさまらねぇぞ!!」

「万策尽きるまで頑張れよ!!頑張ってくれよ!お前ら僧侶は病気を治すのが仕事なんだろう!?」

ガシッ

「なっ……」

母「もう……もういいから、やめなさい……」

母「伝えなかった私が悪かったの……本当にごめん、だからもうやめて……」ウッウッ

「……」




母「」ゲホッゲホッ

「母さん、シーツ変えるからね……」

母「ごめんねぇ……」

「俺が魔法使えたらお母さんを治してやれるのに……」

「僧侶になれたのなら……」

ギュッ

母「ありがとう……お前は本当に優しい子だねぇ……」

「……うぅ」




母「がっ、あぁぁぁぁっ!!うぅ、あぁああぁぁぁぁ!!!」

「母さん!!母さん!!」

母「ぐぅっ!!ぐあぁあぁぁぁ!!」

「どうしたら……どうしたらいいんだよ」

母「うぅ、がぁぁぁあああああああああ!!!」

「俺はただ傍観するしかないのかよ……」

「くそっ!発動しやがれ!!なんで俺は魔法が使えないんだよ!!ちくしょう!!」

「あぁああああああああああああああああ!!!」

母は来る日も来る日も病魔に蝕まれ、回復も空しくただ単に胸の痛みに

悲鳴を上げ続けた。無力な俺はただそれを傍観する事しかできず、母を

救う事は叶わなかった。


アァアアアアアアアアア

グゥッ!アァアアアアアアアアアアア!!

ドンドンドンドン!

金髪「うっせぇぞこらぁ!!夜中に騒いでんじゃねぇ!!」

「……」キィ…

金髪「おいガキンチョ!!ありゃてめぇの親か!?ちぃと黙らせやがれ!!」

「我慢しろよ……」

金髪「んだとてめっ!!!」ブンッ

ザシュッ

金髪「ひ」

金髪「ひあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

「訪ねてきてはお前みたいに殴る奴ばっかりだ……」

「もううんざりだ……お前を殺して家の前に吊るす」

ザシュッザクッザクッ…

金髪「」

「……」

「動かなくなった」

母「あぁっ、ぐぁああああああああああああ!!!」

 「……」

人って死ねばどうなるの?

この金髪の男の胸には包丁が突き立っているのに、男はピクリとも動かない。

試しに自分の腕に包丁を刺してみた。

痛い……転んで傷を負ったなんてものは比にならない。

時間が経つことに痛みは増して、それが広がるように血も床に池を作り広がる。

死ぬほど痛いじゃないか……この男はこんなものを胸に刺して悲鳴の一つもあげてない。

……それって死んだら痛くなくなるって事なの?

母「うぐっ!がぁぁああああああああああああああああ!!」

 それだったら死っていうのは人の救いではないか?

痛みも負の葛藤からも逃れることができる、唯一の逃げ場所。

人類の最果ての地にして、無である場所。

何も思えない、笑えない、嬉々とする感情が存在しえない場所。

だが、それが虚しいと思う感情も、悲しいと言う感情も存在しえない場所。

「……」

「そうか、簡単な事じゃないか」

 母ヲ、コノ世カラ解放シテアゲレバヨカッタンジャナイカ

 オレハムリョクデハナカッタ。マホウガツカエナクトモハハヲスクエル。
  


ザクッ




医者……医者!!!

勇者「医者!!!!」

医者「はっ……」

勇者「お前すげぇ汗だぞ……大丈夫か?」

医者「……い、今何時だい?」

勇者「深夜の2時過ぎたあたりだが……」

勇者「どうしたんだ、何やらうなされていたようだけど……」

医者「少し悪い夢を見てしまったようでね……」

医者「勇者君……」

勇者「どうした?」

医者「やはり僕は人を救う資格などないのかもしれない……」

勇者「どうしたんだよいきなり……」

医者「僕ね、母親を殺したんだよ……」

勇者「えっ……!?」

医者「いや、母親だけじゃないよ……他の人たちも殺した」

医者「もう両手の指じゃ足りないほどに殺した……殺した殺した殺した殺した」

勇者「落ち着け医者!!!」ガシッ

医者「っぐぅ……」

勇者「……ちょっと表出ようぜ、俺も目が覚めちまった」

勇者「」ズズズ

勇者「いやー、やっぱコーヒーは豆だよなぁ」

医者「……」

勇者「神父じゃねぇけどよ、悩みがあるんなら聞くぜ?」

勇者「どうもお前は医者としての悩み以外にも悩みがありそうだからよ……、ほらコーヒー」

医者「……ありがとう」

医者「僕ね、病気を患ってる母親がいたんだ」

医者「父は早くに亡くなって、母親とここから北の大陸にある家で二人暮らししてたんだ」

医者「楽しかったよ……とても優しい母でね、僕の事をよく可愛がってくれた」

医者「誰よりも傷つきやすくて脆くて……けど、母は自分が傷つく事より他人が傷つくことを最も恐れる人だった」

勇者「へー、いい母ちゃんだったんだ…」

医者「うん…」

医者「母は病気を患ってたために教会に通ってた……なんでも重病をかかえていたらしい」

医者「僕はただ教会へ行く母を見守る事しかできなかった……待つしかなかった、母が完治する日を」

医者「それでね、ある日母が治ったと言ったんだ」

医者「その日は機嫌が良さそうにごちそうのハンバーグを作ってくれてね、本当に治ったんだと僕も喜んだんだ」

医者「けど違った、自分の性格のためか僕に嘘をついていたんだ……」

医者「そして数日後くらいに母の容態は悪化してね、教会へ運んだんだけど診察を断られた」

医者「すでに不治の病と宣告されていたんだ、その頃の魔法技術では治せなかったらしくてね」

医者「あっさりあきらめた僧侶が憎かった、ついカッとなって殴り飛ばしてしまった」

医者「まぁ母に泣きながら止められてしまったけどね……」ハハ

勇者「……」

医者「そして母は寝たっきりになり、だんだんと言葉も話さなくなっていった」

医者「けど、夜は痛みのせいかすごくうなされていた……ただその悲痛な声を聴く事しかできない自分に腹が立った」

医者「そして僕は……母を殺した」

勇者「……そりゃなんでだ?」

医者「……思ったよりリアクションが薄いんだね」

勇者「さっき驚いた……」

勇者「人を殺すって事はとんでもねぇ重罪だ……しかし、理由を聞かずにはいられねぇ」

医者「……人は死ねば痛みから解放されるだろう、子供だった僕はそんなことを思いついて」

医者「母の胸を刺してしまった」

医者「母を救いたかったから……」

医者「それから何度も、何度も病気を患っている者を殺した」

医者「ある時は家に入り込み、ある時は教会から拉致した」

医者「子供だって殺した……」

医者「嬉しかった、治癒術が使えない僕でも人を救えるという事g

勇者「違う」

勇者「お前はただ悲痛な叫びを聞きたくない想い、僧侶達への劣等感を消すために殺していただけだ」

医者「!!」

医者「……そ、そうかもしれないね」

勇者「……なぁ、そんな奴がなんで医者になったんだ?」

医者「……」

医者「ある日ね、病人を殺そうと教会の一室に忍び込もうとしたんだけどね」

医者「女の子がいたんだ、その子入院していたらしくて」

医者「お見舞いでたくさん友達が来たり、その子の両親も来て」

医者「花束とかもらってすごくうれしそうにして……」

医者「その子は泣いてみんなに言ったんだよ、みんなと一緒に生きていたいって」

医者「僕は、とんでもない勘違いをしていたと気付いた」

医者「僕が殺した人たちはただ痛みに逃れたいから必死に闘病していたんじゃないって」

医者「その先の未来を……歩んでいきたかったからだって」

医者「汚れてしまった自分だが……医者として勉強を始めた」

医者「今も昔も……患者を救いたいという気持ちは変わらなかったから」

医者「だがそんな都合のいい話があるわけないんだ……」

医者「僕は皆の生きる希望を断ったのだ……この醜い血に濡れた禍々しい手で」

医者「命を絶つことが救いだなんて偽善よりも醜悪だ……」

勇者「お前は」

勇者「ならお前はここで人を救う道をあきらめるのか」

医者「仕方じゃないか……殺人を犯しておいて平気な顔で治療なんてできないよ」

医者「医者として生きるために心のどこかで過去を隠していた……僕は最低だ」

医者「皆の無念を、忘れようとしていたのだ……!」

医者「僕なんて、今ここでいなくなるべき存在なんだ……」

勇者「ばっきゃろーーーーー!!!!」バキッ

医者「うぐっ!!!」

勇者「笑わせんな!それでお前はここで命でも断つつもりかヴォケが!!!」

勇者「お前のその手は人を殺すしかできない手なのか?人を無に還すためだけの手なのか?」

勇者「違う!!違う違う違う違う!!!」

勇者「お前は自力で、本当の意味で救える手を手に入れたじゃないか!!!」

医者「……!」

勇者「お前が過去に罪を感じ、ここで命を絶って逃げたのなら」

勇者「それこそ罪だ!殺した人間の思いは本当に無に還る!」

医者「勇者君……」

勇者「お前はその技術を伝え、発展させる義務がある!過去のお前のような奴を生み出さないためにも!」

勇者「逃げることは、許されないんだよ!!!」

医者「……」

勇者「お前の手は何G……いや、金なんかで価値をつけていいもんじゃねぇんだよ」

勇者「だが罪は絶対に赦されない」

勇者「本来なら国が裁くところだが、俺が直々にさばいてヤラぁ!」グッ

勇者「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドゴドゴドゴドゴッ!!

医者「っはぁ!!」バタッ

勇者「これが本来国が裁く分……」

勇者「残りの罪滅ぼしは、この先何十人と続く人を救っていくことだ」

勇者「お前の罪は一生償えねぇ、だから自分の一生かけて償いやがれ!!」

医者「……ありがとう、目が覚めたよ……勇者君」

勇者「なんだ……やっぱり寝ぼけてやがったか、僧侶にもやけにあっさり引き下がるし変と思ってたんだぜ」

医者「僕はこの手で、医療技術で人を救うと誓うよ」

勇者「あぁ、拒否権はねぇ!!」

チュンチュン

魔法使い「おはよぉ……勇s

勇者「起きろヴォケが!!教会行くぞ!!!」

魔法使い「えぇっ!?いきなり何!?」

勇者「あいつらの悪事暴きにいくんだよ!!」

医者「……」サッサッ

魔法使い「えぇ……なんでこんな二人とも張り切ってるの」

教会・地下

魔獣使い「」ウズウズ

魔獣使い「キキキ……暗示がとけてきやがったぜ」

魔獣使い「人を殺すなって神父に暗示をかけられてたからなぁ……キキッ」

魔獣使い「あいつがよォ……あんな目をするからダメなんだぜぇ?俺は悪くねぇよなぁ」

僧侶男「おい、メシを持って来てやったぞ」

僧侶男「……あれ、檻の中にいない」

ガブッ

僧侶男「ひっ」

僧侶男「ひああああああああああああああああああああああ!!!」

バグッガブバグバグ

魔獣使い「ダメだもう抑えらんねーや……殺しちゃお」ジュルリ



テーテーテーレレレーレー

神父「おお神よ……この者たちに救いがあらんことを」

老婆「ありがとうございますじゃ神父殿……」

僧侶女「ん、何か騒がしい……」

ごうけつぐま「ぐぁぁぁぁ!!!」
キャアアアアアアアアア!ナ、ナンダアレハ!

僧侶女「ま、魔物が!?」

神父「むっ……?」

神父「何事だ!!」

魔獣使い「よう神父さんよォ」

神父「お前ッ、指示があるまで出るなと言っただろうが!」

僧侶女「神父様、この者には暗示をかけたはずでは……?」

魔獣使い「暗示?とけちまったよそんなもん……」

神父「バカな……狂気は魔法でカギをかけたハズ……!」

魔獣使い「残念だったなぁ……もう止めらんねぇんだよ」

魔獣使い「野郎ども!堂内にいる奴らを全員食い殺しちまいな!!!」

ガァァァァアァァ!!

僧侶女「きゃぁっ!!」

神父「何という事だ……神は私に罰を与えたというのか!」

神父「ブレーキがなくなった奴は加減をせず人を殺してしまう……!」

魔法使い「ふあぁあ」アクビー

「やっべぇ、血の匂いがプンプンしやがるぜぇ!」

医者「ンッ……!?」

勇者「どうしたよ、医者」

医者「いや……虫が」

ドゴォン!
魔物達「がぁ!!!」

魔法使い「わぁっ!!?」

医者「何!?」

勇者「あれって昨日の……!!」

医者「一体中で何がッ……!!」

タタタタ

勇者「でりゃ、催涙スプレー!散[スプレッド]の舞!!」シパパパパ

魔物「ガァァァァァァ!」

魔獣使い「ほう、来やがったか……」

魔獣使い「昨日は悪かったな、殺しそびれてよォ……」

神父「くっ……」

魔法使い「神父……すごいケガ!こいつとグルじゃなかったの!?」

魔獣使い「いいや、グルだったぜぇ……?」

魔獣使い「こいつな、俺に暗示かけてこの村の人間を襲わせていたのさ」

魔獣使い「重傷を負わせて金を巻き上げる……きたねぇ奴だろ?」

医者「やはりそうだったのか……」

魔獣使い「医者よぅ、感謝するぜぇ……お前が暗示を解いてくれたんだ」

魔獣使い「お前の、その殺人鬼なる目が俺の目を覚まさせてくれたんだゼェ!!」

医者「……何だと」

魔法使い「えっ……?」

魔獣使い「なぁ、一緒に殺しあおうぜぇ?俺達仲間だろう?」

魔獣使い「お前ならわかるはずさ……お前は殺しで自分を満足させていたんだろう……?」

医者「ちが……チガッ!」

魔獣使い「ほらほらぁ、お前の武器を持ちやがれよォ……モンスターたちもウズウズしてやがんだぜぇ」

医者「ぐっ……」カチャ…

ごうけつぐま「がぁっ!」
勇者「医者ァ!!!!」カンカンカン

医者「!」

勇者「そいつは俺がやる!!お前は怪我人を救え!!」

医者「だ、だがッ……」

勇者「お前のその手はなんのためにある手だァァァァァァァァァ!!!!!」

医者「!」

医者「ぐっ……」

勇者「魔法使い!!医者の護衛を頼むぞゴルァ!!!!」

魔法使い「わかった!!!」

魔獣使い「てめぇ……何余計な事してくれちゃってんの?」

魔獣使い「そうかそうか、お前があいつに暗示をかけているんだな……?」

魔獣使い「やめてくれよォ、あいつは俺と同族なんだからさァ……!」

魔獣使い「人を殺したくてたまらない、殺すことで快感を得れる人種なんだからよォ!!」

勇者「」スッ

魔獣使い「えっ」

ドゴォッッッッッッ!!

魔獣使い「ブッ!!!」ダンダンダン

魔獣使い「ぐっ……」ヨロ

魔獣使い「(こいつ今……一瞬で間合いを詰めなかったか?)」ブルッ

勇者「お前なんかとは違うんだよ……」

勇者「あいつは、常に他人の救いを想ってるんだよ……」

勇者「過ちだって犯しやがったが……それでも人を救う道を探し続けてきたんだよ」

勇者「おめーみたいに動物本能で……快楽だけを求める殺人者なんかと一緒にすんじゃねぇ!!!」

勇者「てめぇなんて1G以下のクソッカスだ!!!」

魔獣使い「へぇ……言ってくれるじゃねぇの」

医者「大丈夫ですか!?」

子供「うぅ……」

女「……僧侶、僧侶を呼んできて!」

女「この子額に深い傷を負っているの!ねぇ、誰か!!誰か!!」

医者「代わりに僕が治療します!」

女「どっかに行って!!あんたなんかにこの子を任せられないわよ!!」

女「ねぇ!生きてる僧侶はいないの!?ねぇったら!!!」

魔法使い「いい加減にしてください!!」

女「」ビクッ

魔法使い「今はそんな事言ってられる場合じゃないってわかってるでしょう!」

魔法使い「いつまでも来ない者を待っていてはその子の心臓が止まってしまうじゃないですか!!」

女「……ッ」

子供「ママァ……」

医者「お願いします、必ず助けます……」

医者「僕は、患者を救うためにいるのです」

医者「どうかその子を、僕にまかせてください!!」

女「……お願いするわ」

医者「はいッ!」

コッチモ…、コッチニモキテクレ……
コイツテツノボウガササッテルンダ!チリョウタノム!

医者「わかりました!!!」

魔法使い「……よし、私も頑張って手伝わなきゃ!」

魔獣使い「……へぇ」

魔獣使い「拳だけで魔物をこんだけも倒しちまいやがったか……」

魔獣使い「その剣は使わねぇのかい……?いや、使うまでもねぇってか?」

勇者「こいつはただの模造剣、兼催涙スプレー」

勇者「つまりただの防犯グッズ……こんなのでブッ倒されるのがお好みかい?」

魔獣使い「ははっ、そいつはお笑いだなぁ……天下の勇者が防犯グッズなんてよォ」

魔獣使い「だが実力はけた違いじゃねぇか……気にいったぜ……」

ボウォォォォォォォォォ!

勇者「角笛……ッ!モンスターをよび、操る魔笛……!」

魔獣使い「俺のとっておきの相棒を紹介してやるぜ……」

ボストロール「ケケケ、こんな奴に手こずってるのかよ兄貴ィ!」

魔獣使い「ボストロール、すぐ見かけで判断するのはお前の悪い癖だぜぇ?」

ポォォォ…

魔獣使い「強化、ステータス改変」

魔獣使い「魔力パラメーターマイナス分、力へ」ニッ

ボストロール「キャハハハハハ!!力がみなぎってくるぜ!!!」

勇者「……」

ボストロール「くたばりやがれぇ!!!」ブン

勇者「このままじゃ頭がぶっ飛ぶこと請け合いだな……」




勇者「解放せよ、ラプラス」

勇者の眼はこの言葉がスイッチとなって新たな視神経を作り出す。

魔力で構成された視神経は視覚情報を捉えその相手の運動状態から動きを予測するデータに変換し脳へ送る。

相手の筋肉の振動、攻撃の軌道を概算し、予測する眼。

はっきりとした数字が出るわけではない、悪魔で視覚情報、感覚として捉える。

巨視的な範囲でのみ物理的状態を見極める事ができる。

勇者「てめぇの動きはまるわかりだ……!!」スッ

勇者「(軌道は見切った……隙があるとすればここ!)」

勇者「(腰を深く落とし、限界まで力を溜め込む……)」

勇者「(拳を突き上げた瞬間相手はぶっ飛ぶ拳を突き上げた瞬間あいてはぶっ飛ぶ!!!)」ドゴォォォ!

ボストロール「ぐ、ぼぉ……」フワッ

ガッシャーーーーーン!!!

ボストロールを たおした▼

勇者「ちくしょう……これはやっぱ疲れる」クラッ

勇者「(5秒が限界か……)」

魔獣使い「なん……だと、一発で倒しちまいやがった!!」

勇者「残念だったな……おめーの切り札吹っ飛ばしちまったよ」

勇者「おらっ!!!」バキッ

魔獣使い「ぐぼぉっ!!!」バタンキュー

勇者「やっと……終わったかぁ」ヘタ

医者「仰向けにします、少し痛みますが我慢してくださいね」ペタペタ

勇者「……」

勇者「俺も座り込んでる場合じゃねぇか」

 


神父「ん」

神父「はっ!?」

勇者「あっ、目を覚ましやがったなこのヤロッ!!」

勇者「こんな事態になったのもてめぇのせいだ……きっちりカタをつけないとなぁ?」コキッポキッ

神父「ひぃい!!」

医者「勇者君」

勇者「ちっ、わーってらぁ」

医者「神父」

神父「は、はいぃ!!」

医者「貴方はとんでもない重罪を犯しましたね、神父の身で」

神父「ゆ、許してくださいぃ……殺すのだけは」

医者「殺すなんてとんでもない」

神父「へっ?」

医者「貴方は人を救える優秀な人材だ、殺す事なんてありえない」

神父「」ホッ

医者「だがその身が悪事を働く事だけにあるのならば話は別ですがね」

神父「ひぃぃぃいい!!!もうしません!しませんからぁ!!」

医者「……では、これからは神父として真っ当に職務を果たしてくれますね?」

神父「はいぃ、神に誓って!」

医者「そうですか」ニコッ

勇者「ふぅ…なんとか一件落着か」

~数日後~

勇者「あれから、もう数日か」

魔法使い「あれ、医者は?」

勇者「あいつなら教会で医療技術の教えを説いているはずだぜ」

魔法使い「そっかぁ……取り入れられるようになったんだ」

勇者「あぁ、みんな医療技術の大切さが身に染みるほどにわかったらしいからな」

勇者「この村のローカルルールで医療技術の習得は必須になったらしい、自分でも処置できるよう、助け合えるようにってな」

魔法使い「そうなんだぁ……よかったねぇ医者」

勇者「うんうん。なんか俺も鼻が高いぜ」

魔法使い「神父も足を洗ってちゃんと職務真っ当してるしね!」

勇者「あの魔獣使いもよぉww角笛壊してやったから何にも出来なくなってみんなのいう事ホイホイ聞いてやがるwww」

勇者「何にせよよかったぜ……これで医療技術が広まればいいな」

魔法使い「勇者も学んだらいいじゃん」

勇者「無理無理あんなん理解できねぇわ、魔法とはまるで理論が違うし」

魔法使い「私もちょっと無理かも……」アハハ

勇者「さぁ買うもん買ったし、金も両替しt……」

勇者「いや待てよ、ドブさらいまだやってなかったな」

魔法使い「もう別にいいじゃんそれ……」

医者「おーーーーーーい!!!」

勇者「あれ、医者どうしたんだよ」

医者「いやね、よかったら僕も仲間にしてもらえないかって思って」

魔法使い「えぇっ!?」

医者「危険な地帯に赴くんだろう?ならば技術も広めなければならないし、私の手も必要になってくると思うんだ」

勇者「いや、いいのかよ……」

医者「あぁ、ちゃんと別れも告げてきたし今すぐにでも……」

イシャサーーン

勇者「うわっ!なんだよあの人数は!!村中の奴ほぼ全員じゃねぇか!」

医者「あらら……」

子供「行っちゃうの医者さん!」

医者「あぁ、僕はまだやらなければならないことがあるからね」

子供「俺、頑張って医療技術を勉強して医者目指す!」

医者「こらこら、君は魔法を使えるだろう?」

子供「僧侶なんて恰好悪い!医者になるのーーーー!!!」

女「この子こう言って聞かなくて……」

医者「あはは……嬉しいけど複雑な気分だな」

医者「子供君、知識は偏っちゃダメだよ」

医者「ちゃんと魔法も医療も勉強するんだ」

子供「うん!!!」

医者「いい子だ」

神父「その……すまなかったな」

医者「もう聞き飽きましたよ、謝るのはよしてください」

神父「償いになるかわからんが、不正はせず患者を守っていこうと思う」

医者「はい」

神父「君にもらった技術も無駄にはしない、後世に伝え研究を重ね技術を発展させていく」

医者「はい、よろしくお願いします」

神父「正当な知識として、認められるといいな」

医者「はい」

神父「君なら……きっとできると思うよ」

医者「……精進します」

勇者「じゃあそろそろ行くか」

神父「勇者殿もすまなかったな」

勇者「あぁいいよ、俺謝られるのとかうざったくて聞いてらんねぇタイプだからよ」

勇者「行くぞ魔法使い」

魔法使い「あ、ちょっと待って!!」

医者「それでは、行ってきます」

マタモドッテキテクレヨナーー!!ゴチソウツクッテムカエルゼーー!
キュウセイシュバンザーイ!ユウシャナンテクソクラエー!

勇者「なんか今聞き捨てならん言葉が聞こえたんだが」ムカッ

魔法使い「すっかり人気者だね医者も」

勇者「数日前とは随分違った対応だな、チョロい奴らだぜ」ヘヘッ

勇者「にしてもあんたが仲間になるとは思わなかったよ」

魔法使い「私嬉しいですよ、医者が仲間になってくれて!」

勇者「俺もうれしいわー、こいつより全然役に立ってくれそうだし」

魔法使い「な、何ォ!反論できないじゃない!」

医者「僕も一応戦える、足手纏いにならないよう頑張るよ」

勇者「あぁ、期待してるぜー!」

医者「罪の償いも……しなくちゃならないからね、監視役は傍にいてもらわないと」

勇者「へへ、俺の監視の目は厳しいぜ」

魔法使い「?」

魔法使い「ねぇねぇ勇者、医者ってGに換算するといくらぐらいの価値なの?」

勇者「俺人に価値なんてつけない性格なんで、そういうのサイテーだと思うタイプなんで」ツーン

魔法使い「えぇっ!?私にはつけるクセに!」

勇者「どうせつけたとしてもけた違いだからやるだけむーだ、余計な張り合いすんな」

魔法使い「そんなぁ!!」

医者「ははっ……楽しい旅になりそうだな」

医者「……」

医者「母さん、俺頑張るよ」

医者が なかまにくわわった▼

医者編はこれで終了ですお。安価取るお。

>>140次の仲間候補の職業
>>141武器
>>142能力

盗賊

触れている物の数を増やす。精神力次第ではいくらでも

>>1っす。喧嘩はよし子さん。一応僕フェイト知ってるから理解できんことはない
能力については>>1がアレンジしてSSに溶け込ませるから心配しないでいいお。

んなことより感想とか批判とかのコメが欲しいお。

いや数の問題じゃないんだがな…
レス見てるとどうもあんまり読まれてる気がしなくて。
このまま書いて需要あるのか?

すまんな、失礼なことをした。黙って書くわ

~草原~

バシュッドグシュッ

魔法使い「メラ!!」テレレレン

勇者「おらぁっ!火の魔術は気合が大事だ!自分の心を炎に見立てそのイメージを魔法に乗せるのだ!」

魔法使い「メラー!!!」

シュボゥ!!!

魔法使い「今一瞬火柱立ったよね!?立ったよね!?」

勇者「おぉ!だが、まだまだだぁ!!」

医者「すごいね、僕は魔法が使えないから尊敬するよ……」

魔法使い「いやいや、そんな褒められても照れちゃうっていうかー…」

勇者「黙れ1G!!貴様はまだ薬草にも劣る雑草だ!!キビキビ修業しやがれ!!!」

魔法使い「ちょっとくらい褒めてくれてもいいじゃん」ブゥーブゥー

医者「ご飯ができたよ」

勇者「やったー!!すげー腹が減っていたんだぜー!!!」

魔法使い「待って勇者!!勇者いっつも私の分まで余分に食うからフライング禁止!!」

勇者「診療所に泊ったときもご馳走されたが医者の作るメシは結構うめーからなぁ」

医者「今日はね、少し違う風味のものにしてみたんだ」

勇者「マジで!?すっげー楽しみ!早く早く!!」

魔法使い「私も魔法使いすぎてお腹ペコペコー、お肉食べたいー」グギュルルル

勇者「大したことしてないくせにエネルギー消費は激しいのなwwww」

魔法使い「何おぅ!!?」カッ

医者「さぁ召し上がれ」コロッ…

勇者「……なんだこの小さいの」

魔法使い「カプセル……?」

医者「カプセル型食品さ!!」

勇者「は?」

医者「医療で用いる薬の形状にカプセル薬というものがあるんだが」

医者「何と、そのカプセルに食事で得るべき栄養が詰め込まれているのさ!!」

医者「滋養はもちろん、必要なタンパク質、炭水化物なども不足もなくかといって多すぎるほど詰め込まれているわけでもない」

医者「非常に栄養バランスの取れた医用食品なのさ!!」

勇者「え、これだけ?ほんとにこれだけ?」

医者「噛まずに水か白湯と一緒に呑み込んでくれればいいよ」

勇者「」コポポポポ

勇者「ほら、魔法使い……白湯」

魔法使い「あ、うん……ありがと」

勇者「」ゴクン

魔法使い「」ゴクン

勇者「……」

魔法使い「……」

医者「どうだい?食べてみた感想は、非常に無駄がないだろう?」

勇者「いや……違う、なんか違う」

魔法使い「食った気がしない……味気ない……」

医者「空腹なら後々なくなっていくはずさ、消化されるからね」

医者「いやー、これを作り出すのに苦労したよ何せ半年かかったからね」

医者「君たちが泊まった時にこれを食べさせられなかったのは非常に残念だけど」

勇者「違うぞ医者ァッ!」バンッ

医者「え……?どうしたんだい勇者君」

勇者「食事っていうのはこんなんじゃねぇ!!お前は何もわかってないぞ!!」ビシッ

医者「なんでだい?非常に合理的でいいじゃないか……」

勇者「俺達は機関車じゃねーんだぞ!燃料いれられりゃ満足するってもんじゃねぇ!」

勇者「お前は人間を研究しているくせにまるで人間の事をわかっていないな!」

医者「な、何がいけないんだい……?」

勇者「まず一つ味付け!!」

勇者「料理という文化が確立したのは何故だ!?おいしく食べるためだ!」

勇者「ただ単に体に取り入れるだけなら食材かじるだけでいいんだよ!」

医者「胃で味わえばいいんじゃないかな?」

勇者「ねぇよ!!」バンッ

勇者「のど越しだってそうだ!喉を通過してゆっくりと胃にうまいものが入っていく、これがねぇ!」

勇者「あと一つコミニュケーション!」

勇者「せっかく仲間がいるんだ!食事は楽しく優雅にするもんだ!いくらなんでも素っ気なさすぎる!」

勇者「白湯のやり取りだけで食事終わったんだぞ!!」

勇者「人の体に必要な栄養を取り入れただけで、欲望は何一つ満たされてないんだよォ!!」

医者「そ、そうだったのか……」ガーン

魔法使い「あはは……」

魔法使い「でもさ勇者、私たちのために一生懸命考えてくれたんだしそんなに言ったら医者に悪いよ」

勇者「いや……そりゃまぁ好意は受け取るがな」

医者「僕は君たちを満足させようと努力したが結局要望に応えられず」

医者「求めできたものは効率とバランスだけが考えられた欠陥品……出来損ないの食品」

勇者「……医者」

医者「ごめんね……やはり僕は食事当番に向いていないみたいだ、他と変わってやってくれ」

医者「いっそのこと魔法使い君に……

勇者「いやそれはダメだ、食卓にゾンビが呻くという絵面が出来上がってしまう」

魔法使い「おい」ムカッ

勇者「俺達を満足させようとしてくれたんだよな、気持ちは嬉しいよ」

勇者「けど変な工夫はいらねぇ、ありのままのお前が作る料理が食べたいんだ」

勇者「これからも食事当番頼む!!お前しかいないんだ!」

医者「勇者君……、また君に励まされてしまったようだね、僕は情けない大人だ」

勇者「わかってくれたならいいんだ」コクッ

医者「次はいろんな味の、消化の悪いカプセルを開発するよ!!」

勇者「全然わかってねぇや!」

勇者「さてと、行く先決めるか」ワールドマップペラー

魔法使い「港町近いね!!北の大陸に行けるじゃん!」

勇者「あぁ、だいぶ歩いたからなぁ……あとは山を越えれば港町にすぐ着く」

魔法使い「そういえばこの山にも街があるねー」

勇者「んー、すげー住みにくそうだけどなぁ……他の街との連絡もとりづらいだろうし」

医者「聞いたことがあるね、その街は……たしか発展途上の街というか」

勇者「発展途上?」

医者「時代に取り残されてるというか……まぁ僕もそんなに詳しくはないが」

勇者「ほんとに他国と交流がねぇ街なのかもしれねぇな?独立してんのかねぇ」

勇者「だとしたら余所者とかすげぇ嫌う街なのかもなぁ」

勇者「まぁ俺勇者だし大丈夫だろ!この紋章見せるだけでみんな頭があがらねぇレベルよ」

魔法使い「すごい自信だね」

医者「僕もその街で医療技術を広める努力をするよ」

勇者「決まりだな、この街を中継地点としよう」

勇者「山はモンスターのナワバリだ、アイテムの消費が激しくなるだろうしこの判断が妥当だろう」

魔法使い「……」

勇者「どうした魔法使い?」

魔法使い「いや、なんでもないよ!!」

勇者「お、おうそれならいいんだが」

魔法使い「(時代に取り残された街……独立、なんだか変な感じがする)」

魔法使い「……気のせいだよね」

今日はここまで。

盗賊「ねぇねぇ……山に誰か入ってきたよ」

剣士「どうやらそのようだな」

盗賊「隣町まで何かかっさらいに行こうと思ったけど中断、そいつら襲撃しようよ」

戦士「んー……白衣を着てる奴とローブを着てる魔法使い、あとアホそうな顔の奴が……」

戦士「お、あれって勇者の紋章じゃ…」

盗賊「えっ!どれどれ!?ちょっと双眼鏡オレにも貸して!!」

戦士「ほらよ」

盗賊「へー……本当だ、生で見るのは初めてだねぇ」マジマジ

盗賊「きっといいもの持ってるよね、勇者だもんね!!」

戦士「違いねぇ、色んなダンジョンとかにも潜っているはずだしきっと歩く宝庫だぜぇありゃ」

盗賊「是非持ってるもの全部かっさらいたいんだけどねぇー……」

剣士「奪う事しか能がないのかお前は、拝借して複製すればいいじゃないか」

盗賊「ダメダメ、無理矢理奪い取らなきゃ盗賊の名が廃るってもんだよ」

盗賊「くぅ~!久々にスリルがあるねぇ!早く襲いに行こうよ!!」

戦士「おっしゃ行くぞー!!」

剣士「ふん、本当に考えなしの子供だな……」フゥ

盗賊「ほら剣士~!早く早く!置いてくぞー!!」

剣士「待て、すぐ行く」



魔法使い「道が坂になるだけで旅ってこんなに辛くなるもんなんだね……」

医者「僕も疲れてきたよ……何分体力にはあまり自信がなくて」

勇者「だらしねぇなー、そんなんじゃこの先もたねぇぞ?」

勇者「奥まで行けばな、モンスターだっていっぱい出てくるんだぞ?歩くぐらいでそんなん言ってらんねぇって」

魔法使い「そんな事言ったって……疲れるものは疲れるよぉ」

魔法使い「そうだ、馬車買おうよ馬車!!!」

勇者「はぁ?んな高いもの俺が買う訳ないだろうがよ」

医者「僕もそれには賛成したいなぁ……馬があるとすごく楽になりそうだ」

勇者「えぇ……医者までそんな事言うのかよ」

医者「僕が物を作って売るというのはどうだい?一応手先が器用な方なんでね」

医者「それで馬車代を稼ぐ」

魔法使い「それいい!」

勇者「こらこら、培ったものを汚い金稼ぎに利用しようとするのはやめろ」

医者「だ、だが……旅を円滑に進めるためにはこのくらいの費用が掛かるのは当たり前だと思うんだ」ハァハァ

勇者「お前なぁ……俺は無駄な金は使いたくねぇんだよ」ポリポリ

勇者「それに俺達は闘うのが本業、医者だって例外じゃないし…だから体力作りは避けちゃダメなんだよ」

魔法使い「やだやだー!!買ってくれないと歩かないーー!!」ジタバター

勇者「子供かよ!買っても歩かねぇだろうが!!」

勇者「ったく仕方ねぇな……ほら、乗れよ」

魔法使い「えっ?」

勇者「おぶってやるつってんだよ……ほら」

魔法使い「ほんとにドケチだよね勇者って……そんなに馬車買いたくないんだ」

勇者「うるせぇよ!早く乗りやがれ!!」

魔法使い「はい」ポフッ

魔法使い「まぁケチでも優しいっていうか頼りがいがあるというか……さすが勇者というか」

勇者「っしゃいい錘だ……いいトレーニングになるぜ」ポタポタ

魔法使い「やっぱ下ろせーーー!!!汗垂らすほど私は重いんかーい!!」ジタバタ

勇者「おわっ!暴れるなって!!」

医者「勇者君、僕もおぶってもらっていいかな?」ポフッ

勇者「お前もかよ!!つーかもう乗ってるじゃねーか!!」

魔法使い「ぐ、ぐるじい……」

盗賊「何やってんのあいつら、バカなの?」

戦士「いかにもマヌケそうだな、あんなんで勇者が務まんのかよ」

剣士「いや……案外侮れない奴らなのかもしれん、油断するな」

戦士「おめーはホントビビりだな?そんなんで剣士が務まるワケぇ?」

剣士「お前と違って用心深いんだ私は」

戦士「あぁん?てめー俺の鋼の拳で顔面潰されてぇようだな?お?」

盗賊「おめーらー、今からあの野郎どもに毒矢打つからなーちゃんと見とけよー」

戦士「おう、わかったわかった」プチッ

戦士「うわきたねぇ、虫踏んじまったぜぇ……」

「うぎゃあああああああああおうす!!いでぇぇぇえぇぇ!!踏まれたぁ!!」

医者「!!!」ビグッ

医者「虫の断末魔……勇者君、この近くに何かいるようだよ」

勇者「何、モンスターか?」

医者「わからない……が、警戒はしたほうがいい」

魔法使い「……」ゴクリ

ヒュッ

勇者「矢!?」

医者「メスッ!」カンッ

勇者「助かったぜ医者……間一髪だったな」

魔法使い「これ、矢じりに毒が塗ってあるよ」

医者「におい、色から判断して麻痺毒の類か……致死性はないが当たれば動けない事必至だったね」

医者「恐らくこの攻撃を仕掛けてきたものはある程度知能の高い魔物、もしくは人間」

勇者「二回目があるかもしれねぇ……な」

勇者「ん……?」

魔法使い「どうしたの?勇者」

勇者「いや……金だ、金の光が見える」

医者「あぁ、旅の途中で聞いたが勇者君はお金が光り輝いて見えるんだったね」

勇者「そうだ……しかもこの光動いてやがる」

勇者「矢の飛んできた方向からして、ありゃ間違いねぇ……人間が放った矢だ」

医者「ゴロツキか……きっと勇者君の紋章か何かに目をつけて金目の物を奪おうとでもしているんだろう」

盗賊「チッ……外したか、あの白衣の奴変な形のナイフで弾きやがった」

戦士「あいつらこっちに向かってきやがるぜ?感づいたんじゃねぇか?」

剣士「どうやらその様だな」

戦士「やっぱりこんなチマチマしたやり方じゃつまんねーよな!直接手をくわえねーと!」

剣士「おい……無暗に出ていくなと」

盗賊「よーし!迎え撃つぞ!!」

剣士「……困ったな、リーダーまであれでは手に負えん」

医者「何か来るぞ……!」

戦士「おらおらおら!!」

魔法使い「斧振り回してる人がこっちに向かってくるよ!!」

盗賊「てりゃてりゃてりゃー!!」

勇者「何かガキンちょもナイフ振り回してこっちに向かってきてるな……」

医者「奴らに敵意はある……油断は禁物だ!」

勇者「」スッ

盗賊「へ?」ガシッ

勇者「ほらお前ら大人しくしやがれー、このガキんちょがどうなってもいいのかー」

剣士「(あの動きッ……私でも見切れないとはあの勇者、相当の手だれか……)」

盗賊「ぎゃー!!離せ離せ!!オレをどうするつもりだー!!」

勇者「は?お前男なのかよ……」キョトン

盗賊「オレのどこが男だよ!オレは女だ!!」

勇者「あ、あぁ……だよな」

勇者「いや、そうじゃねぇよ!!おめー俺らの事その弓で狙いやがったな!?」

盗賊「ワリぃかよ、盗賊が人を襲うなんて不思議な事じゃねぇだろうが!!」ジタバタ

勇者「盗賊だとォ…?そのナリでか?」

盗賊「あぁー!?てめー今ガキ扱いしやがったな!!今に見てやがれ!ボコボコにしてやらぁ!」

戦士「おい盗賊!何捕まってやがんだよ!」

盗賊「うっせー!ちょっと油断しただけだろうがよ!!こっから反撃するんだよ!」

魔法使い「なんか……緊迫感ないね、警戒した分拍子抜けっていうか」

医者「……そうですね、同意です」

盗賊「」ジタバタ

剣士「すまなかった……その子を解放してやってくれないか?頼む」

盗賊「おい剣士何言ってやがんだ!オレはまだあきらめてねぇぞぉ!!」

盗賊「よしわかった!もう思い切ってオレごとこいつを斬りやがれ!!」ジタバタ

剣士「いい加減にしろ盗賊!!!」

盗賊「ひっ……」ピタッ

勇者「ふぅ…安心してくれ、元よりこのガキを殺すつもりなんざさらさらねぇよ」パッ

盗賊「おわっと」

剣士「本当に失礼なことをした。何分こやつらは人というものを軽視しがちのようで…」

戦士「お前盗賊団の一味のクセしてまーだそんな偽善張ってやがんのかぁ?」

剣士「私は盗賊が無茶をしないようにと見張っているだけだ、別に偽善を張っているわけではない」

剣士「いつだってお前らが無謀なことをしないように監督するものがいないと心配で心配で仕方ないからな」フゥ

勇者「盗賊団?お前達揃いも揃って盗人かよ」

戦士「あぁそうだぜー!狙った獲物は逃さない!!」

盗賊「あったりめーよ!この目が捉え、欲しいと思ったのは必ず手中に収める!」

盗賊「それが団の信念であり生きざまよ!どうだ、ワッハッハッハッハ!!」

勇者「えーっと…俺はどうすりゃいいんだ?勇者としてお前らを裁けばいいのか?」

盗賊「裁けるもんなら裁いてみやがれ!!おめーなんてもうちっとも怖くなんかねーやい!」

ゴチン

盗賊「いってー!何すんだよ剣士!」
剣士「いいから少し黙っていろ」

剣士「どうか見逃してくれないか?都合のいいことを言っているのは承知の上だが」

戦士「はぁっ!?正気かよお前!プライドってもんがねーのか!?」

剣士「お前も頭を下げろ、力の差がわかっている以上こちらが頭を下げ穏便にすませようと言うのが賢明な判断だろう」ボソッ

戦士「ちぃー、気にくわねーなあ」

魔法使い「どうするの?勇者……」

医者「勇者君に任せる、元より僕にこの者たちを裁く権利などないからね……」

勇者「ふむ…」

勇者「わぁーったわぁーった、見逃してやるからとっとと行きやがれ」

剣士「恩に着る、行くぞ」

戦士「はいはい…んじゃ気を取り直してどっか別のとこ行くかぁ?」

盗賊「……」

盗賊「おいお前!!」

勇者「え、俺か?」

盗賊「次会ったとき覚えとけよ!容赦しねーからな!!」

盗賊「ギッタンギッタンにして!顔なんて蜂に刺されたみたいにボコボコに腫らしてやるんだからな!」

盗賊「オレがこう言ったら絶対そうなるんだからな!」

剣士「早く行くぞ」ズルズル

盗賊「この大馬鹿野郎めがぁー!!勇者だからって調子にのってんじゃねーぞぉ!!」

……オボエテヤガレー!

勇者「なんなんだよまったく……脱力しちまうよ」

魔法使い「私もなんか疲れた……」

勇者「……」スタスタ

魔法使い「ねぇ勇者、なんでさっきの人たちに手加減したの?」

勇者「…全然危機感を感じなかったし、そこまで悪質じゃないと見切ったからだよ」

魔法使い「え、そうなの?」

医者「僕もそこまで彼らに嫌悪感は抱かなかったね…矢だって急所は避けた場所を狙っていたし」

勇者「殺しなんかはしねぇ、要はただのイタズラだけの悪ガキ集団ってトコかねぇ…」

勇者「あの剣士はちげぇようだがな、あいつはチーム全体の子守りしてるみたいな雰囲気あったし」

魔法使い「たしかに一人だけ盗賊っぽくなかったよねー、一人だけ大人って感じ?まぁもう一人の男の人も成人してるかもだけど」

勇者「何にせよ、もう関わりたくねーなぁ…正直あーいうのといると精神的にどっと疲れるんだよ」

医者「でも勇者君、彼らこんな辺鄙な山にいる所を見ると塒は近くにあるんじゃないかい?」

勇者「どうだろうなぁ、そんな可能性は考えたくないんだが」

魔法使い「やっぱり盗賊団のアジトって洞窟とかにあるのかな!?」

勇者「お前はなんでそんなに嬉しそうなんだよ」

魔法使い「だってアジトって響きかっこいいんだもん!他にも団の幹部だけが入れる裏アジトとか…」

勇者「はいはいかっこいいでちゅねー、しゅごいしゅごい」パチパチ

魔法使い「キーーッ!!」バリバリ

勇者「いでぇっ!俺の髪むしんじゃねぇ!!」

医者「勇者君、例の街が見えてきたよ」

勇者「お、マジか……つーことはもう山の中腹あたりまで来たんだな」

~中腹にある街~

勇者「ふーん……」

勇者「なるほど、周りに街がないだけあって文化が独立……技術の共有はほぼないのかな?」

勇者「見たこともねぇ出し物に、建造物の質も独特だな…やっぱり貿易はあまりないのか」

医者「ふむ、中々興味深いね……見たこともない作物などがあって飽きない」

魔法使い「それで今晩はここに泊るの?」

勇者「一応そのつもりだが……快く住民が受け入れてくれるかが問題なんだよなぁ」

医者「たしかに、あまり友好的な感じはしないからね」

勇者「でもまぁ、俺は避けて通る気はないぜ?」

勇者「医者の本望を遂げさせるために、俺達がひと肌ぬがなくちゃなんねぇからな」

魔法使い「そうだね!」

医者「ありがとう、僕も頑張るよ」

ジロ…ジロ

勇者「あはは…やはり警戒されてらっしゃいますか?」

医者「というよりかは……珍しいものを見る目で見られてるような」

盗賊「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

勇者「うおぉっ!!」ビグッ

魔法使い「あれって、さっきの子じゃない?」

盗賊「てめー!よくぬけぬけとオレの街に入ってきやがったな!!!」

勇者「え、お前ここ住みなの?」

盗賊「そうだ!オレの故郷だ!!」

勇者「うわぁ……」

盗賊「忠告通りに八つ裂きにしてやらぁこの野郎!!!」タッタッタッタ

勇者「それ忠告っていわねぇだろぉ!」

ゴンッ

剣士「コラッ!客人に何たる無礼を働いてるんだ!」

盗賊「いっでぇーーー!!だってこいつらさっき俺達を辱めた奴だぜ!?」

剣士「だってもクソもないだろ、それに悪いのは私達のほうだ、この者たちに罪はない」

剣士「勇者殿、さきほどはすまなかった」

勇者「あ、あぁ別にいいってことよ……」

勇者「あのさ、この街で宿泊してもいいかな?少し雰囲気的に居づらくて許可が欲しいっつーか…」

剣士「すまない、外から人が来るのは珍しい事でな…気にしないでくれ、何も勇者殿達に嫌悪感を抱いているわけではないさ」

勇者「そうなのか、ならいいんだが……」

盗賊「このやろー!!頭真っ二つにして脳汁吸い出すぞコラー!!」ガブー

勇者「このガキには全然歓迎されてないようなんだが」イライラ

剣士「申し訳ない、私の躾が行き届いていないようでな」ゴンッ

盗賊「あいだぁっ!!」

カランカラン

勇者「いいのか?メシなんてごちそうしてもらって…なんか悪いぜ」

剣士「気にしないでくれ、せめてもの詫びだ」

魔法使い「お腹ペコペコー」

医者「ありがたい」

盗賊「勇者!おめーのメシはねーからな!!やらねーからな!!」

おばちゃん「こらこら、客になんてこと抜かしてんだい盗賊」

盗賊「だっておばちゃん!!こいつオレの事バカにしやがったんだぜ!?そんな奴にメシなんて食わせたくねぇよ!」

おばちゃん「あんたの我儘な言い分なんて知るかい、どんな奴だろうが腹減ってここに来たらみんな同じ客さ!」

おばちゃん「さぁどんどん食って行ってくれよ、ウチの自慢の料理を披露するからね!」

勇者一行「ありがとうございまーす!」

魔法使い「おいしい!」バグッ

農家「それはなー」ペチャクチャ

医者「なるほど……品種改良ですか、それにしても素材の良さを無くさずによくここまで」ペチャクチャ

勇者「なんだ、思ったより人見知りしてるわけじゃないんだなここの奴らは」モグモグ

剣士「まぁな、たまに狩りなどで来る旅人もここに泊りに来たりするが快く受け入れているよ」

勇者「ふーん…じゃあますます疑問だ、何故他の国との交流をもたないんだこの街は」

勇者「噂によると貿易だって疎かにしているらしいじゃないか」

勇者「ここで生産されている作物、商品は珍しく品質がいいものも多い……きっと輸出すればもっとこの国は豊かになれるはずだが」

剣士「……この街の人間は他国と外部交渉をしない」

勇者「は?」バグッモグッ

勇者「そりゃなんで……」

剣士「……すまない、明確な理由はないんだが」

剣士「他国の関係者、使者には何故か話せない……話そうとすると体が拒むのだ」

勇者「なんだそれ…」

剣士「やはり皆、過去にトラウマがあるのかもしれないな」

勇者「過去?」

剣士「この街は再建されたもので、私たちの国は一度攻め落とされている」

勇者「攻め…ッ!?」

剣士「」コクッ

勇者「続けてくれ」

剣士「私たちの国は規模は標準、山菜や農作物の輸出や他国の輸入物を取り入れ貿易も盛んだった」

剣士「だが戦力には乏しくてな…屈強な他国に力を貸してもらおうと同盟を結んでいたわけだ」

剣士「しかしその同盟国は脅かされた…魔王軍によって」

勇者「何……被害の規模は小さいと思っていたがそんなことが」

剣士「同盟国は魔王の支配下に落ち、魔王の命令か我が国に宣戦布告をした……裏切られたのだ」

剣士「その国に頼りっきりだった私達に勝ち目はなかった…街は全焼、畑は荒らされた」

剣士「あれは利益獲得などという目的で攻め落としたのではない……ただ国を潰す、そのようなものだった」

勇者「……」

勇者「その、ここにいる奴らはその生存者か……?」

剣士「あぁ……皆虐殺されたと思ったが、生きていたのだ一人残らず」

勇者「何、死者はいなかった?そんなことがあるのか……!?」

勇者「いや…幸運な事だったと喜ぶべきだな、すまん」

剣士「驚くのも無理はない、争いを起こしてそんな奇跡のような結果は確実にないからな」

剣士「だが…盗賊が救ってくれたんだ、国民を」

勇者「あのガキが?」

剣士「あぁ、なけなしの治療器具、治癒術の知識で僧侶から救い……国民を次々と救っていった」

剣士「建物に下敷きにされ身動きができなくなったもの、火で喉と目を焼かれた者の無き救いの声に耳を傾け救出した」

剣士「街は損壊したまま、元には戻せなかったが……盗賊のおかげで皆一命をとりとめたのだ」

勇者「マジかよ……あいつすげぇな、まるで英雄じゃないか」

剣士「そうだ…私たちは感謝しなければいけない」

剣士「その後は街を新たに復興した。国という主体はなくなったがな…」

剣士「この街は亡国の亡骸のようなものだ…律する法律もない、ただ難民だけが住む集落と言っても語弊はあるまい」

剣士「国としては機能していないのだ、長もいないこのような街は皆に意志があろうとも契約の一つもできはせぬよ」

勇者「……すまん、俺のせいだ」

勇者「いち早く魔王の悪事を止めに行けばこのような事にはならずに済んだものを……」

剣士「よしてくれ、勇者殿がいくら勇者に任命されたからといって私達はすべての責任を背負わせる気はない」

剣士「それに勇者殿のせいではない……」

勇者「……」

勇者「悔しいよ…勇者だなんて言って威張っていた自分が情けなくてしょうがねぇ」

勇者「報いになるかはわからねぇ……だが魔王は確実に倒す、絶対に……」

勇者「こんなことでしか、お前らに詫びることができねぇよ…」

剣士「そんな言い方をしないでくれ、偉大な任務であり人類に対する大きな問題だ」

剣士「それを果たそうとする勇者殿は間違いなく英雄であり私たちの希望だ、もっと誇りを持ってほしい」

勇者「……そうだな、弱気のまま魔王退治なんていけねぇや」

勇者「……一つ質問があるんだが」

剣士「何だ?」

勇者「何故盗賊団なんてものにあんたは入ってるんだ、盗賊も含めての話だが…」

剣士「それは……」

勇者「……」ゴクリ

剣士「ただのあいつの遊びだ……」

勇者「……」

勇者「はぁ?」

剣士「あいつは小さい頃から悪戯好きでな……盗みは働く、人の衣服を汚すで世話がかかったものだ」

剣士「ん、今でも変わらないか」

勇者「え、それじゃお遊びでやってるってわけ?それで生計を立ててるとかじゃなくて?」

剣士「何を言う勇者殿、私たちは基本自給自足で暮らしているのだぞ」

剣士「それに私はあいつの悪事が度が過ぎないように見張っているだけであり、私は盗みを興じてなどない」

勇者「だったらなんで……」

剣士「……恩返しなのだろうか、これも自身の心に強いられている感覚なのだ」

剣士「小さいながらも皆の命を背負わせるという事を課してしまったのだ……それに負い目を感じてるのか」

剣士「できるだけあの子の気持ちを尊重したいという気持ち……それがある」

剣士「私だけではない、例外なく戦士も…この街にいる皆もあの子の気持ちを尊重したいと思っている」

剣士「一度は滅びかけたわが身……できる限り尽くしたいと思っているのか」

剣士「私は今大人として子供を律っさなければという責任感、盗賊のために尽くしてやりたいという気持ちが混ざり合って複雑な心境なのだ」

剣士「悪事なのはわかっている……、だが止める気にもならぬ」

剣士「私はせめてその度合いを抑えることくらいしかできないのだ……」

剣士「笑ってくれ、情けない奴だと……」フッ

勇者「いや、いいんじゃないか?そういう事ならさ……」

盗賊「頭グリグリすんのやめろォ~!!子供扱いしやがってぇ~!!」

おばちゃん「なにいってんだい、あんたはまだまだチビスケだろうが!」

ワハハハハハ!

勇者「もし盗賊のために皆尽くしたいと考えているならば、あいつらの生活は安定するだろうし」

勇者「何よりここまで裏切ろうとする奴、街で大規模な犯罪を起こそうとする奴は出てこなかったわけだろ?」

勇者「ならそのスタイルのまま進んでいけばいい、何も不具合はないじゃないか」

勇者「まぁせいぜいでかい犯罪は起こさないよう見張っといてくれよ?そうすると俺の出番が来るかもしんねぇから」

勇者「悪戯程度なら目を瞑ってやるよ、俺はそんなお堅い奴じゃないんでね」ニッ

剣士「感謝する…」

勇者「(気持ちが統一されてる……国ではなくなったとはいえある程度社会が出来上がっている場所では珍しい事だがな)」

勇者「……まぁ、いいことだよな」

勇者「ふぅ食った食った」

魔法使い「あれ、医者は??」

勇者「今無料で講義を開いてるらしいぜ、邪魔しちゃ悪いから俺は行かなかったけど」

魔法使い「大丈夫かな……みんな素直に呑み込んでくれればいいけど」

勇者「一応前に行った村の神父がいただろ?あいつの認定証付きの手紙を渡されたらしいから皆信じてくれるんじゃないか?」

勇者「医療は教会が認定した技術ってなってる、まぁ一個人が認定したにすぎないんだがな……」

魔法使い「ってことは二人っきりって事か……」

魔法使い「ねぇ勇者、買い出しと情報収集が終わったら修業の手伝いを……」モジモジ

勇者「お、盗賊の奴がいやがるぜ!じゃあ今からそれぞれ個人で行動なー!!」

魔法使い「む、無視ィ?」ムカッ

盗賊「ムムム……」シュインシュイン

盗賊「くっ……はぁっ、はぁ」

勇者「おーい盗賊ーーー!!」

皆「」ギロッ

勇者「えっ?俺っちなんか悪い事したっけ……?」

農家「静かにしてやってくれ……今邪魔してはダメなんだよ」

ボンッ

勇者「何、一本の大根が二つに……」

勇者「おいなんだよありゃ」

農家「盗賊の特技だよ」

勇者「力ァ?」

農家「盗賊は同じものを作ることができるのさ」

勇者「え、すげぇなそれ!」

農家「あぁ収穫が悪いときにゃーさ、無事な作物を複数作ってもらってカバーしてもらってるんだよ」

農家「だから食料に関してあいつがいるから困らねぇのさ、態々輸入なんかに頼らなくともな」

盗賊「終わったぞ、これくらいでいいか?」

農家「あぁご苦労だ盗賊、褒美に作りたての野菜ジュースをやらぁ」

盗賊「わぁーい!!」

勇者「」ニヤニヤ

盗賊「うわっ……何だよてめっ」

勇者「いやー、野菜ジュースもらってよろこんじゃう盗賊ちゃんは可愛いなって思って」

盗賊「ば、バカにしやがってぇ~~!!!」

農家「あんたも飲むかい?あまっちまってるからよ」

勇者「いいのか?サンキュー」ズチュー

盗賊「あぁ!オレが汗水垂らして作った野菜がぁっ!!」

勇者「あーおいしっ、盗賊ちゃんの汗水溶け込んだ野菜ジュースおいしいわーwwwww」

盗賊「キモちわるい言い方してんじゃねー!!寒気するわ!」

農家「じゃあまた頼むぜー」

盗賊「あぁ、いつでも呼んでくれー」

勇者「お前ってただのコソ泥じゃねーんだな?仕事に貢献してるなんてえらいじゃねーか」グワシグワシ

盗賊「やめろ!!髪長いんだからぐちゃくちゃにしたらカッコ悪くなるだろうがっ!!」

盗賊「この髪うっとぉしいんだよなぁ……走ってる時顔にかかるし、切ろうかな」カミノケイジイジ

勇者「なんで、可愛いと思うが?」

盗賊「なっ……」カァァァァ

盗賊「お、お前……ッ人に可愛いとかよくそんな恥ずかしい事言えるな!」

勇者「なんでだ?事実じゃねーか」

勇者「ついでに言っておくとその男っぽい発言はよしたほうがいいんじゃねぇか?」

勇者「せっかく可愛い容姿してんのに台無しだぜ?」

盗賊「う、うるせー!!これはオレの口調なんだよ、お前に咎められる筋合いなんてねぇ!!」

勇者「ちょっと一遍だけ試してみ?自分でも驚くほどしっくりくると思うから」

勇者「ほら街の女の人のマネしてみ、それで自己紹介してみ」

盗賊「……」

盗賊「わ、私……は盗賊です」

勇者「わ、私wwwwww」

盗賊「あーーーーーっ!!あーーーーっ!!笑った!笑ったなお前!!!!」

盗賊「最初っからからかうのが目的だったんだなお前!!ちっくしょー!!!」

盗賊「やっぱここで殴り飛ばしてやる!本気だしたらお前の顔面なんてなくなるんだからな!」バシッバシッ

勇者「悪かった悪かった、そう怒るなってww」

盗賊「じゃあ笑うのやめやがれーーーーー!!!」バシバシバシバシバシッ

盗賊「」スタスタ

勇者「なぁ、今からどこ行くんだー?」

盗賊「ついてくんな、気持ち悪い」

勇者「いいじゃんかよー。教えろよー」

盗賊「……教会」

勇者「ん?何しに?教会に仕事あんのか?」

盗賊「ねぇよ……ただ見舞いしに行くだけ」

勇者「え、見舞い……?」

盗賊「だからお前には関係ねーっつってんだよ」

勇者「……」

~教会の一室~

盗賊「結局ついてきやがって……」

勇者「すまん…俺気になったらとことん気になっちゃうタイプで……」

盗賊「…別にいてもいいけど、うるさくはしやがんなよ」

勇者「わかってるさ」

勇者「それで…これらの病人はなんだ?」

盗賊「……」

僧侶A「戦争で後遺症が残ったものたちさ」

勇者「後遺症……」

僧侶A「一応僕達元国民でね、その国で戦争があったんだ……」

僧侶A「ここにいる盗賊のおかげもあって全員生存できたんだけど…やはり全員無傷ってわけにもいかなくてね」

僧侶A「こうして後遺症を残したままの人もいるってわけさ…症状が軽い人もいるがしゃべれないほどに重傷の患者もいる」

盗賊「……」ギリッ

勇者「そっか……そうだよな、全員無事だなんて都合のいい話あるわけないもんな」

盗賊「……」

勇者「な、なんだその……」ポリポリ

勇者「お前の責任じゃねーと思うんだ…だからお前が気に病む必要は」

盗賊「うるさい!!余所者に何がわかる!!!」

勇者「」ビグッ

勇者「すまねぇ。余計な世話だったよな」

勇者「……俺、席外すわ失礼した」ガチャ

バタン

僧侶A「盗賊……」

盗賊「わかってる。わかってるよ」

盗賊「でも自分の心の中にあるモヤモヤは行き場所がねぇんだよ……ああいう余所者に吐き出すほか…ねぇんだよ」

僧侶A「……じゃあ僕も席を外す、いつも通り見舞いが済んだら好きな時間に出ていい」

盗賊「…あぁ」

盗賊「……」

「フフ、また落ち込んでいるのかい?」

盗賊「な……またお前か!!」

「そんな事言わないでよ……私だって貴方の一部じゃない」

盗賊「う……うるさい!!」

「貴方の負い目が……心が、私を作り出した」

「ストレスの捌け口にするために……後ろ髪を引かれる感覚を和らげさせるため」

盗賊「オレの頭の中でしゃべるんじゃねぇ……やめてくれ、やめろぉ!!」

「話し相手になってあげる、辛い事は全部私に言いなさい」

盗賊「消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!」

患者「うっ……うぉお、盗賊」

盗賊「ひっ」

盗賊「嘘だろ…お前しゃべれないはずだろ、なんで……」

「治る事はありえない……か、ふふ」

盗賊「お、お前!こいつに何かしやがったな!?」

「してないしてない、よく考えてみてよ」

「私は貴方の心の中に存在するんだよ?あなたの身体を動かすなんてできるわけないよ」

盗賊「じゃあなんで……」

「さぁ…作り出しちゃったんじゃない?貴方の脳が」

「ストレスを感じすぎて幻覚を見てるんだよ……呼吸は乱れ、心は不安に満ちている」

盗賊「そ、そんなわけあるか!!そんなわけ!!」

患者「盗賊……盗賊……」

盗賊「ひっ!!」

盗賊「いやだ!」

盗賊「消えろ消えろ消えろ消えろ!!」

「フフ……」

盗賊「ここにいたらおかしくなりそうだよ……!」

盗賊「外に出なきゃ……!!」

バンッ

僧侶A「盗賊…?いつもより帰る時間が早いな」

ハァッハァッ……

「辛いから逃げたのかい?賢明なんじゃないかしら」

「山にあるせいか空気は澄んで気持ちいいしね、気分転換するにはもってこいだよね」

盗賊「いい加減黙りやがれ!!」

ヒソヒソ

「いきなり大声出しちゃダメじゃない、周りが心配するよ?何せ私は貴方の中に存在しないんだよ?」

「みんな貴方の事大事にしてるんだよ?頼りにしてるんだよ?」

盗賊「うるさい!!」

「親切に言ってあげてるのに、でもいいよ私は貴方に罵られるためにいるんだもの」フフ

盗賊「……っくぅ!!」

ドンッ!

盗賊「いだっ!!」

剣士「盗賊……一体どうしたんだ、どこかに急いでいるのか?」

盗賊「剣士……」

シーン

盗賊「あれ、聞こえなくなった……」

剣士「聞いているか?」

盗賊「あ、あぁ……」

盗賊「剣士、戦士を呼んで隣町まで行こう」

剣士「ん?また盗みか……別にいいが」

盗賊「(たしかに周りの奴はあの声は聞こえてやがらねぇようだし……やっぱオレが生み出してるのか?)」

盗賊「(……忘れよう、気分入れ替えて盗みでもやりゃ悩みなんて吹っ飛ぶよな)」

勇者「悪い事しちまったなあいつに……」

勇者「浮かれてた、現実がそんな甘い訳ねーんだ……」

勇者「どうしようか……下手に謝るのもなんだしなぁ」

医者「勇者君」

勇者「おぉ医者か、どうだったよ手ごたえは」

医者「皆熱心に聞いてくれている、どうやら街で魔法を使えるのはごく少数の者たちだけらしくてね」

医者「自給自足、狩りもよくするらしいから医療は重宝してくれるらしい」

勇者「なるほど森の奥深くに僧侶がいくわけにもいかねぇしな、重傷を負ったとき使える奴がいりゃ便利だよな」

医者「嬉しいよ、前までと違って一歩一歩前進している感じがするんだ……」ニコニコ

勇者「……あぁ、そいつはよかったな」

医者「さっきからどうしたんだい勇者君、浮かない顔をしているようだが」

勇者「いや……あのさ医者」

勇者「少し相談があるんだけどな」

医者「どうぞ」

勇者「この街の過去の出来事は聞いているか?」

医者「うん、聞いたよ……」

勇者「戦争で後遺症が残ったものがいるんだが……」

医者「……やはり無傷で済んでいなかったのか」

勇者「今教会に収容されているんだ……けど」

勇者「って何言ってんだ……俺医者にこんなこと言ったって」

医者「診て欲しいって事だね?」

勇者「そうなんだが……」

医者「魔法でも治せないのに医療なんかじゃとても無理と?」

勇者「いやいやいやいや!そんな事言ってないぜ!!誤解だ!!」

医者「ふむ、この街の教会の治癒術が古い型なだけかもしれないが」

医者「その可能性があったとしても、魔法で治せる病気は多い」

医者「治せるかはわからない……何せ医療は魔法に遅れを取っている」

医者「しかし勇者君、僕が診ると言う事はまったく無駄な事ではないのだよ」

勇者「というと?」

医者「治せる病気の数、万能さはもしかしたら魔法の方が上かもしれない」

医者「だが原因を詳しく探ることで言えば医療の方が上だと言う自信があるよ」

医者「魔法は毒、石化、マヒ……色々な状態異常を治す事ができるが」

医者「体の異常を大まかに種類分けして、それに適した魔法をかける」

医者「大まかに病名をわけてるため、身体異常の原因は何かという詳細はないんだよ」

勇者「ほう」

医者「だから魔法で治せなかったとしたら、もっと深い何か原因があるはずなんだ」

医者「医療はたとえそれを治せなくとも、分析はできる」

勇者「なら教会に許可を取ってすぐ診察を頼めないか?」

医者「承った」




医者「……」

勇者「どうだ、医者」

医者「もっと詳しく調べなければいけないね……」

僧侶A「ずっと治癒術を試していても回復の兆候が見られないんです……」

医者「毒の類ではない……とすれば、ホイミ系の呪文をかけているんだね?」

僧侶A「はい」

医者「ホイミ系は体に備わっている自然治癒力をを最大限まで引き出し、回復させるという魔法……」

医者「何だ……何が原因なんだ」ブツブツ

勇者「医者、時間がかかりそうか?」

医者「……すまない」

勇者「いや、大丈夫さ……時間を掛けてくれればいい」

僧侶A「僕もできる限りの手伝いをします」

僧侶A「何故治せないのか、気になりますから」

医者「頼むよ」

勇者「じゃあ俺は宿屋に行ってるからな、区切りがついたら来てくれ」

医者「わかった」

~宿屋~

勇者「なんでだよ!ロビー借りるくらいいいだろうがよ!!」

親父「ダメダメ、いくら勇者だからってそりゃ無茶な注文だ」

魔法使い「もうあきらめようよ勇者……みっともないよ」

勇者「くそぅ……ついに勇者歴2か月、宿代を払う日が来てしまうというのか」

魔法使い「(むしろ今まで払わなかったのが驚きだよ……)」

ガチャ

盗賊「親父ー、羊の毛盗ってきてやったぜー!!」

戦士「お前なんでいっつも金を置いていくんだよ、盗った意味ねーだろうがよ!!」

剣士「せめてもの詫びだと言っているだろう……タダで盗るのはいくらなんでも気にくわん」ムム

戦士「ほんとお前って盗賊として半端だよな……ん?」

戦士「あーーーっ!来てるって聞いたがホントに来てやがったな勇者共!?」

勇者「あ、どうもっす」

盗賊「……」

勇者「あーっ……」

親父「なぁ聞いてくれや盗賊、こいつらタダだからってロビーで寝かせろーっつーんだぜ?」

親父「いくら勇者だからって図々しいにもほどがあらぁ」

盗賊「……こいつらの始末はオレがやっとく、それとこれとっといていいぜ」

親父「サンキュー、盗賊」

盗賊「……」

勇者「あ、あははは……」

魔法使い「何やら険悪なムード……」

盗賊「オレたちの家来い、泊めさせてやる」

勇者「えっ……いいのか?」

盗賊「……おう」

戦士「はぁ、盗賊!?おめー正気かよ、こいつらを泊めさせるなんて」

盗賊「うるせー、オレが決めるんだよ」

盗賊「さっきは、その……ひでぇこと言って悪かった」

勇者「……大丈夫、全然気にしてねーよ」ヘヘッ

魔法使い「?」

剣士「ふむ歓迎する、私も勇者殿達に何かできぬものかと考えていた所であったからな」

戦士「えぇ……マジかよ」

盗賊「ここが家だ」

魔法使い「アジト……アジト!」キラキラ

戦士「なぁ勇者さんよ、この嬢ちゃんはなんでさっきから目を輝かせてやがんだ?」

勇者「そういう病気なんです」

魔法使い「シャーーーッ!」ガブッ

勇者「お前は獣かーー!いでーーーー!!」

剣士「料理を披露しよう、昼間の店ほどおいしいものは作れる自信はないがな」

勇者「あー、ちょっと待ってくれ」

勇者「もう一人の仲間と宿屋で落ち合う事になってたんだよ」

勇者「そいつ待ちぼうけくらってるかもしんねーから、迎えにいかねーと」

盗賊「ふーん、じゃあおめーの分も食っちまおう」

戦士「俺にもわけろよー盗賊ー!」

ゴンッゴンッ

剣士「分けるもクソもあるか!人のメシを取るのに熱を入れるな!」

盗賊「いっで~」

戦士「くっそぉ……」

魔法使い「私も行こうか?」

勇者「いんや、すぐ戻ってくるから問題ねぇよ、先に入っておいてくれ」

勇者「じゃあ行ってくる」

盗賊「…」

勇者「暗いなぁ……山奥だからよけいに暗く感じちまうっていうか」

勇者「つーか宿屋に医者いなかったな……やっぱり時間掛かるもんなんだな」

勇者「……」

ギィッ

勇者「僧侶もいねーや」

勇者「そろそろあいつも腹減りだすころだし……」

勇者「もしかして腹減るの忘れるくらい集中してんのか?ありがたいけど心配だわ…」

勇者「たしかこの部屋だったよな」

コンコンッ

医者「勇者君か……」

僧侶A「……」

勇者「ちょっと宿変更になっちまったからよ、心配になって迎えに来たんだが」

勇者「どうした医者、手つかずってとこか……?」

医者「……」

医者「違う、わかったんだ……原因が」

勇者「マジか!?」

勇者「一体原因は何だったんだ」

医者「……ここの患者は人間に備わっているはずの機能が一部なくなっているんだよ」

勇者「えっ……」

医者「治癒能力が欠如してるのはほぼ全員共通」

医者「……実験を通して調べたが、人間としての仕組みに欠陥があるみたいなんだ」

勇者「どういう事だよそれ……」

勇者「なぁ僧侶!こいつらは昔からそうだったのか!?」

僧侶A「それは……ありません、もし最初からこんな状態ならば」

僧侶A「まず僕の技量を疑われます、僕の僧侶としての地位はなくなっているでしょう……」

勇者「病気……原因不明の病とかじゃないのか」

医者「多分違う……それならば機能に異常が起こっているのが見られるか、形跡がみられる」

医者「最初からなかったかのように……抜け落ちてるんだよ」

医者「もしこれが病だとしたら」

医者「……手つかずだ、どうすればいいのかわからない……」

勇者「そんなッ……」

僧侶A「……」

医者「……まるで」

医者「無知な人間が作り出した肉塊……」

勇者「えっ、今なんて……」

医者「……なんでもない忘れてくれ、どうやら疲れているようだ」

勇者「……」

勇者「(まさか……そんなわけねぇよな)」

今日の投下終わりです。盗賊編は医者の倍ぐらいの量になるかも……
安価とりたいけど、正直仲間ももう4人でこれ以上増やすのもなんかなぁ…
というわけで盗賊編終わってから何か考えて安価取ります。

~盗賊の家~

コンコン

剣士「勇者殿、やっと戻られたか」

勇者「悪い。遅くなった」

戦士「早く入って来いよーお前をずっと待っていたんだぞー」チンチン

剣士「今日は山菜の天ぷらを作ってみたんだが……勇者殿の口に合うかな」

勇者「俺は好き嫌いもねぇし、出されたら食うぜ!」

剣士「よかった、では一行共々召し上がっていってくれ」

魔法使い「わーい!!」

医者「ではいただこう」

盗賊「ゆ、勇者……これやるよ」

勇者「んお、マジでくれるのか!?」

盗賊「あぁ……昼間は悪い事しちまったんで、お詫びというかなんというか」

盗賊「もう何も言うな!とにかくありがたく食え!」ヒョイッ

勇者「別に気にしなくていいっていってるのによぉー」ニコニコ

剣士「こら盗賊!!嫌いなものを勇者殿に押し付けるな!!」

盗賊「ちっ、バレたか」

勇者「はぁ嫌いなものかよ……もしかしてこれやるために俺を泊めたんじゃねぇだろうな」

勇者「つーか俺の好きなものが取られてるんだが!?てめっ盗賊!!」

盗賊「うっせーな!!勇者が好物とられたくらいでピーピー騒ぐな!底が知れるぞまったく!!」イラッ

勇者「えっ……なんで?なんで逆ギレされなきゃいけねぇわけ…ガキだからって容赦しねぇぞコラッ!!」

盗賊「あぁんやんのか!?」

剣士「コラ盗賊!行儀が悪いぞ!!」

盗賊「ふーんだ」

剣士「すまない勇者殿……こいつはどうも落ち着きがなくて」

勇者「大丈夫っすよ、子守りは慣れてますんでー」チラッ

盗賊「あぁん!?テメー今チラって見たろ!?またガキ扱いしただろ!!」

勇者「ガキじゃん、身長も言動も行動も」

盗賊「んだとコラっ!どうせそんな大口叩いてチ○ポはちっせーんだろクソガキ!!」

勇者「は、はぁっ!?べべべべ、別に皮かぶってねーし!しかも今チ○ポの話してねーし!!」

盗賊「何涙目になってんだよ、図星かよ!!」ギャハハ

勇者「このクソチビがーーーー!!!」

盗賊「んだと包茎野郎!!」

戦士「メシ中にきたねぇ話すんじゃねーよ」

剣士「むむ……どう躾けたらよいものか」

魔法使い「(どっちも子供……)」パクパク



勇者「ふい~、食った食った」

魔法使い「ご馳走様でしたー」

医者「美味しかったですよ」

剣士「それはよかった、後始末は私がしておくので適当にくつろいでおいてくれ」

勇者「盗賊ー遊ぼうぜー……って見当たらねーや、どこ行ったんだ?」キョロキョロ

戦士「あいつなら頼まれ事があったそうでさっき外を出て行ったぜ」

勇者「ふーん……」

勇者「なぁ戦士、あいつの事について聞きたいんだが……」

戦士「ん?」

勇者「あいつとの付き合いは長いのか?」

戦士「そうだなー……俺はずっとあいつといたな」

戦士「昔もよく一緒に悪戯してたんだ、あいつやることなす事結構エグくてよ」ニシシ

勇者「剣士は一緒にいなかったのか?」

戦士「んー…あいつはどっちかっていうと盗賊の保護者みたいな感じだったな」

戦士「弓や教養、初歩的だが魔法を教えたのも剣士だしな」

戦士「……この街の過去は聞いてるか?」

勇者「あぁ」

戦士「あいつ盗賊のイタズラに否定的だったんだが、戦争が終わってからというもの一緒に盗みをするようになった」

戦士「そうして俺達3人盗賊団としてつるむようになったってわけよ」

戦士「命を救われた恩……なんだろうな、あいつ見た目通り義理堅いからよ」

戦士「つってもあいつ一緒に盗み働いてるくせにいい顔しようとしやがるんだ」

戦士「正直未だに何がやりたいのかわからん、まぁあいつの事は嫌いじゃないがな」

勇者「そういう思い出話もいいんだがよ。あいつの力について聞きたいんだ」

戦士「能力……っつーとモノをコピーする奴か?」

勇者「そうだ、あいつは昔からあんな能力を使えたのか?」

戦士「おう、矢が足りなくなったら増やしたりしてたぜ」

戦士「ガキの頃から見てて何とも思ってなかったんだが、今思うと不思議な能力だなーって思うぜ」

勇者「……そうなのか」

戦士「でも勢力のある他国の奴らには見せるなって剣士に躾けられてたなー、特に軍事関係にある奴ら」

戦士「何でも珍しい系統の魔法らしく、兵器を作る際などに利用されかねないらしいからだ」

勇者「……こういうのも悪いが、昔の国では盗賊を売りとばそうだなんて思う奴が出てこなかったのか?」

戦士「いんや、無暗に人前で使わなかったからなぁ……しかも増やすつってもモーションもわからねぇほどだしバレなかったんだろ」

勇者「……?人前で使わなかったのか」

勇者「俺は今日ここに始めて来たが、あいつ自分の能力を人前でよく使ってるように見えるぞ」

戦士「あー……そういやそうだな」

戦士「剣士が許可したんじゃね?」

勇者「にしても変だ……ここの奴らには邪念がなく盗賊の力を悪用しようと企む奴が出てこない」

勇者「いくら好かれているからとはいえ不自然な気が」

戦士「なんだ、おめーは随分この街から悪者を仕立てあげたいみてーだな?」

勇者「いやそうじゃなくてだな……」

勇者「わかった、もうこの話はやめよう」

勇者「俺ちょっと外出てくるわ」

戦士「……あいつ何を疑ってやがんだ」



盗賊「」スゥゥ…

盗賊「ほら複製完了したぞ」

親父「悪いな、夜遅くによ」

盗賊「気にすんなよ、オレたち伊達に長い付き合いしてねーだろ?」

親父「それもそうだな、遠慮なんてする必要ねーか」ガハハハ

親父「にしてもすげぇよな……お前の力、物を完璧に複製できちまうんだからな」

盗賊「そんな事ねぇよ……」

親父「へ?」

盗賊「いやなんでもねぇ……オレ疲れちまった、今日は帰るわ」

親父「お、おうまた明日な」

~森・湖の畔~

クラッ…

盗賊「今日は力を使い過ぎちまったか……」



『完璧に同じものがつくれる』



盗賊「……」

盗賊「完璧なんかじゃ……ない、オレは神様なんかじゃないんだ」ガチガチ…

「また悩んでいるのかい?そんなんじゃ身がもたないよ」

盗賊「!!?」バッ

盗賊「またテメーか……!!」

「大丈夫落ち着いて」

盗賊「うるさい!!お前が出てくるとイライラするんだよ!!」

「それは……なんで?私が貴方のストレスの象徴だからかな」

「過去に犯した罪をはっきりと自覚してしまう……からなのかな?」

盗賊「!!」

盗賊「テメェ……いい加減にしやがれよ」

「……言っておくけど、私は貴方の無意識が作り出したものであって」

「私が貴方の前に出ようという意志はないのよ?自我があるように見えるけれどこれは貴方が

盗賊「うるさいっつってんだよ!!黙ってくれ!!」

ア……ア、ア

盗賊「え」

盗賊「な、何……何の声」

「……何も考えない方が楽になれるよ、今の君はひどく動揺している」

盗賊「黙れ!誰のせいだと思ってるんだ!!」

「さぁ……?もしかして自分が生み出したもののせいなんじゃないかな」

ア……クルシイ、タスケテ

盗賊「近づいてきやがる……くんな、くんな!!」

患者1「盗賊……」

患者2「苦しいよ……」ヨタヨタ

盗賊「な、なんでお前ら……動けないはずじゃ」

患者1「苦しいよ……なんでこんなに苦しいんだよ」

患者2「……体が思うように動かない、頭が思うように働かない」

患者1「お前と同じ人間のはずなのに、何故俺らとは違いお前は元気に動けているのか」

患者「……それは」






患者「お前が俺達を上手く作れなかったからだ」








盗賊「あぁぁああああああああああああああああああああ!!!!」




勇者「」ビクッ

勇者「なんだ……今の盗賊の声か?」

農家「おいおいなんだよ今の声は……」

勇者「農家、盗賊お前の所にいかなかったか?」

農家「いや来てねーが……そういやお前会う約束してなかったか親父」

親父「おう……そんで頼みごとが終わってあいつ俺ん家を出て帰ったと思ったんだが」

親父「なんだあいつ帰ってやがらなかったのか…」

勇者「俺が探してくる!松明を貸してくれ!!」

親父「おう!俺はもっと多く人呼んでくらぁ!!」

農家「俺も探しに行く!!」

ザッザッザッザッザッザッザ

勇者「おーい!!盗賊!!いたら返事しろ!!」

勇者「盗賊ーーー!!」

医者「勇者君、盗賊君は……」

勇者「わかんねー…戦士、あいつ一人で夜遊びとかすんのか?」

戦士「いや……それなら俺達にも声が掛かるハズだ」

勇者「……まぁあの叫び声は夜遊びなんて穏やかなもんじゃねぇのはハッキリわかるんだがな」

魔法使い「どこか行きそうな場所とかないの!?」

剣士「ムゥ……わからん、あいつが行きそうな場所」

剣士「もしかしたら森の中にある湖の畔にいるかもしれない、一人で行くとしたらそこだ」

勇者「行ってみる!」

チャポン……

盗賊「……完全に主導権は私のモノになったか」

ザッザッ

勇者「盗賊!!」

医者「無事のようだね……よかった」

魔法使い「一件落着だね」

勇者「驚かせるなよ……なんだ、湖にデケー魚でも現れたかよ?」ヘヘ

盗賊「こんばんは、勇者」

勇者「……」

勇者「……違う」

勇者「こいついつもの盗賊じゃない」

盗賊「すごい直感だね、さすが勇者というべきなのかな」フフ

勇者「……演技じゃないのか、まさか」

盗賊「何かが憑依したとでも思った?残念ハズレ」

盗賊「私はこの子の中で生まれたモノであり決して外部的な要因から成っているものではないよ」

盗賊「……いや、ストレスから身を守るためにこの子が作りあげたのだからあながち外部にも関わりがあるのかも」

医者「……ストレス」

医者「もしかして君は盗賊君の第二の人格とでもいうんじゃないだろうね」

盗賊「……今となってはそうかな、さっきまではただのこの子に対する幻聴でしかなかったけど」

魔法使い「二重人格……盗賊が」

医者「多重人格は過去のトラウマ、人間関係での悩みなどから引き起こされ防衛機制が働き現れる症状だが、意外だ」

医者「あんなにも人望がある盗賊君がそんなものを抱えていたなんて予想していなかった」

盗賊「……今日初めて会ったのによくそんな事が言えるね?」

盗賊「人を癒すものとしてその見解はあまりにも浅はかすぎるんじゃないかな医者さん」

医者「……」

盗賊「ねぇ」

盗賊「生命ってすごいと思わない?」

盗賊「木、魚、豚、猿、鳥……」

盗賊「普通の人はあれが生えるもの、泳ぐもの、飛ぶものなんて簡単な認識しかしてないけど」

盗賊「どれだけ小さな生き物だって体の中の情報量は多く、かつ構造は安定したものが多い」

盗賊「そして生物の個体の状態だけが安定してるだけでなく個体間での関係も安定」

盗賊「バランスは常に保たれているわけではないけどお互い生命を維持するために必要なものをわけあっている」

盗賊「これは生命の神秘だよ……神の存在を認知する錯覚さえ感じる」

盗賊「……その中でも極めて知能が高く複雑なアクションを起こせるのが人間という生命体」

盗賊「神の作った完璧なバランスさえも壊してしまう可能性を孕んでいる……現時点私たちが認知できる中で」

盗賊「神に匹敵するのではないかと思えるほど高度な知的生命体」

盗賊「生命維持の情報だけではない……思考、感情などの変幻自在の情報を持っている」

盗賊「いわば無限の可能性を秘めているんだよ……人間と言うのは」

勇者「何が言いたいんだ……」

盗賊「もしも、そんなものを作るとなれば……どうなるのか」

勇者「……!」

盗賊「この子の力は知ってる?物質を複製する能力」

勇者「まさか……」

盗賊「そう、この子は禁忌を犯した」

盗賊「人間を作ろうとしたのよ……最もできたものは人間なんて呼べない代物だけど」

魔法使い「嘘……!!」

盗賊「この子の能力を複製能力……って名づけるけど」

盗賊「複製能力は発動第一段階、複製する対象となる物質に手で触れて情報を読み取る」

盗賊「読み取った情報を元に魔力を練って構成を開始する」

盗賊「魔力が粘土のように変幻自在で無形なものって知ってる?そして万能の元素であることを」

魔法使い「知ってる……魔力だけの構造でダイヤモンドの硬度さえも再現してしまうほどに万能」

勇者「だからこそ人間はそれに頼り、魔法による技術が急速に発展した……」

盗賊「この子の能力は理論上人間を作れるのよ……」

勇者「そんなバカな……人間を複製するなんて」

盗賊「そう、愚かな行為だった」

盗賊「だからこの子は情報を読み取る段階で闇に飲まれた」

盗賊「膨大な情報量……生命維持に必要な情報、感情、それはとてもじゃないけど一介の人間が短時間で把握しきれる量ではない」

盗賊「模するように魔力を練ったけれど、できる人体のバランスは欠陥的」

盗賊「でもこの子は造り上げた」

盗賊「同じ人間を自分の力で複製することは不可能とこの子もわかっていた」

盗賊「それでも尚不完全な複製を成し遂げた理由……」

盗賊「戦争によって瀕死に陥った者たちを救いたいという願いから出たもの」

勇者「何ッ……!?」

盗賊「多くの機能を失った瀕死者は動くこともままならない状態」

盗賊「その多くは体の重要なモノを失っており持ち合わせている魔法での回復は望めない」

盗賊「……助けなければ死んでしまうという焦燥感から新しい体を作るという発想に至った」

勇者「同じものを作る能力でそんな事が可能なのか……?」

盗賊「同じ構造のものを作る、すなわち物質の状態をそのまま移さなくても問題はないのよ」

盗賊「子供故の無邪気な発想、それは残酷」

盗賊「できたのは同一人物なんかじゃない偽物…人間と言うにはあまりにも稚拙な構造をもった贋作」

医者「待ってくれ!だとしたら教会のあの患者達は……!!」

盗賊「その中でもとびきりの失敗作というわけね…だって通常時の自身の生命維持さえできない体だもの」

勇者「そんな……!!」

盗賊「でも運よく生命維持できるくらいのものの複製に成功したものもある……半数以上成功したのだからこの子はすごいわ」

盗賊「でも所詮機械のような者たちよ……成長はしない、感情の起こり方も単純」

盗賊「今いる現状に疑問も浮かばないし、他国との外部交渉を持たない」

盗賊「これは……この子が、複製途中で強い想い入れをしたことが原因」

盗賊「魔力を練る際情報を魔力に伝え対象の複製物を作るのだけど」

盗賊「自分の願いという感情が情報として入り、それはその作られた者を束縛する」

盗賊「戦争を起こしたくない……自分から遠ざかるようなことはしてほしくない」

盗賊「その願いは作られた街の者たちにプログラムされている」

勇者「違和感の正体はそれだったのか…愛情という理由じゃ片付けられない不自然な統率のされ方」

勇者「だが……それを贋作なんて呼ぶのはあんまりだ!!」

盗賊「……たしかに、アレらも生きているからね……」

盗賊「でも教会にいる患者達は人間以外の生物にも劣るモノだ、なにせ自身のの生命維持もできないからね」

盗賊「むしろ生物と呼んでは神もお怒りになると思うよ」フフ

勇者「テメェ……!!」

盗賊「勇者……怒るのはわかる、だけど私はこの子から生まれた存在」

盗賊「あれを作り出したこの子の言い分でもあるんだよ……まぁ本人は一生口に出せないだろうけど」

勇者「お前が盗賊の黒い部分だってんならもういいだろ!散々愚痴は吐いた!さっさと盗賊と代わりやがれ!!」

盗賊「……今は無理かな、この子は自分の殻に閉じこもっているから」

盗賊「それで自我を受け持った私が代わりに出ているというわけ……だからあの子はここに出たくないんだと思うよ」

盗賊「でも大丈夫……安心して、貴方達の求めるこの子はすぐ返してあげるから」スッ

勇者「……?お前胸に手なんて当てて何をするつもりだ」

盗賊「この子の人格を閉じた、意志を決定する主導権を私が握ったもう一人のこの子を作る」バチチ…

勇者「なっ…!!」

盗賊「人体の構造理解はほぼ完了している……あとは丁寧に、精密に魔力を練るだけ」

バァン!!!

黒盗賊「……」シュゥゥゥ

黒盗賊「神経も異常なし……ほぼオールクリアといってもいい出来」

勇者「盗賊が二人に……!」

盗賊「これでこの体はいらないわ、後は貴方達の好きにすればいい」フッ

バタッ

医者「盗賊君!!」

勇者「お前、自分をもう一度作ってどうするつもりだ!!」

黒盗賊「この子が作った者たちを私が再複製する……」

勇者「なっ……!!」

黒盗賊「完全な人間に作り直す……それがこの子が叶えたくても叶えられない願い」

黒盗賊「でも私は作り直す…もとよりこの人格は盗賊の、自己の問題を解決するために生まれた存在」

勇者「……ダメだ!そんなの間違ってる!!」

黒盗賊「間違っている……中身のない否定ね」

黒盗賊「比較的健康な、機械のように意志を組み込まれていても生命維持をできるものたちはいい」

黒盗賊「でもどう?それ以外の者たちは……一生あのままにして殺すの?」

勇者「ぐっ」

勇者「……そうだ、修復はできないのか!?欠陥のある場所を能力で直せば…」

黒盗賊「あれ自体が欠陥品なのに?」クスクス

勇者「なっ…」

黒盗賊「止めたい気持ちはわかる……けれどね、中身のない否定をされても私は止まらない」

黒盗賊「私が使命を成し遂げることはこの子を救う事にも繋がるから」

黒盗賊「さて……与太話はこれくらいにして、さっさと私は使命を……」

勇者「」バッ

勇者「行かせねぇぞ……行かせねぇ!!」

魔法使い「ダメ!貴方のやろうとしてることは今存在してるあの人たちを殺そうとしてるってことよ!」

黒盗賊「……モノは言い様、言い方を変えれば私が悪にもなるし善にもなる」

黒盗賊「……でも私は自分のやることを善だと信じてるから」ザッザッ

勇者「魔法使い!こいつを力づくでも止めるぞ!!」

勇者「医者は盗賊の面倒を頼む!!」

医者「わかった!!」

魔法使い「メラミ!!」テレレレン

黒盗賊「」バチチ…

ドゴォン!!

勇者「なっ……地面から壁を」

黒盗賊「」ドゴッ

魔法使い「キャッ!!」ズササ

勇者「魔法使い!!」

勇者「てめっ!!」ブンッ

黒盗賊「早い……けど動きが直線的すぎる、見切るのは容易だよ」

黒盗賊「あなたの身体を借りるね……」バチチ

黒勇者「……」

勇者「なっ!!」

黒勇者「」バギッドゴォッ

勇者「がぁっ!!」

黒勇者「」ボロボロ

黒盗賊「新しい構成情報があったか……時間がロスするためにスキップしてしまったけど」

黒盗賊「間違いだったわ。これは欠陥品ね、もう立ってることすらできない」

黒勇者「」バタッ

勇者「」

魔法使い「」

医者「」ギリッ…

黒盗賊「貴方もやる気?」

医者「……」

黒盗賊「賢明な判断だと思う、ではさようなら」ザッザッ

医者「……クソッ!!」

ザッザッ

黒盗賊「くっ……」

黒盗賊「危なかった……あの医者と闘っては確実に負けていた」

黒盗賊「さすがに魔力の消費が激しすぎる……」

黒盗賊「体内の魔力を増やす事すらできないか…」

黒盗賊「しばらく回復を待たなければ……」

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー




勇者「はっ……!」

医者「気が付いたかい勇者君」

勇者「あいつは、盗賊は!」

医者「盗賊君ならそこのベッドに寝ているけれど…」

勇者「違う!もう一人のほうだ!もしかしてもう街を襲いやがったんじゃねーだろうな!」

医者「ごめん…勇者君が気を失った後逃してしまった、でも幸いまだ街には現れていないんだ」

勇者「そうなのか……」

勇者「他の奴らは?」

医者「皆それぞれの場所に戻ったよ、剣士と戦士は暫くここにいたけど家に戻った」

医者「宿屋のオーナーがベッドを貸してくれるといったのでね、君たちをここに運んだんだ」

勇者「……あいつが言ったことは話してないのか」

医者「勇者君、彼らが盗賊君に作られたと言うのは事実かもしれない」

医者「けれどあの者たちに面と向かってそんな事が言えるかい?僕にはそんな勇気はないよ…」

勇者「……お前の気持ちはわかる」

勇者「だけどな、知れ渡るのは時間の問題だ…奴が出てくるとしたらイヤでもあいつらは知ることになるだろう」

医者「そうなんだけどね……」

勇者「…まぁかくいう俺もどう切り出せばいいのかわからんがな」

勇者「だが避けて通れない以上は打ち明けなければならないと思う」

勇者「でもその前に、盗賊と一度話がしたい…」

勇者「こいつが何を想っていたのか…来るべき事態に立ち向かうためには知らなければならないと思うから」

医者「そういうと思って宿を借りたんだ」コクッ

盗賊「ん…」

勇者「気が付いたか盗賊!?」

盗賊「な、なんだ……どうしたんだよ3人とも、剣士と戦士は?」

医者「少し外してもらっている、二人とも家に戻っているよ」

盗賊「ここは…宿屋か」

勇者「お前本当に盗賊だよな!?」ガシッ

盗賊「えっ、えっ!?」

勇者「盗賊だよな!?」ブンブンッ

盗賊「な、何を、言ってやがるんだ、こいつはー!!」

勇者「クソチビ!!」

盗賊「はぁ!?人の寝起きに暴言たぁ随分な挨拶じゃねぇかおい!!」

勇者「よかった…こりゃ本当の盗賊だ」

魔法使い「(その確かめ方はどうかと思うけど……)」

勇者「盗賊、お前気を失う前の事を覚えているか?」

盗賊「……!」



『お前が俺達を上手く作れなかった』
ジジッ



盗賊「うっ、あああああああああああああああああ!!!」バッ

勇者「うおっ!?盗賊落ち着け!!」

盗賊「あいつらが俺を恨んで…報復しに来たんだ……」ガチガチ

魔法使い「大丈夫?」サスサス

医者「盗賊君、これを飲むんだ…気休めにしかならないかもしれないが落ち着く」

盗賊「はぁっ…はぁっ!」…ゴクン

盗賊「……」

勇者「ふぅ…助かったぜ医者」

医者「(……本当は飲ませたものにそんな薬用はないんだけどね)」

医者「盗賊君、君は精神に強い負担がかかったために幻覚を見たのだと思う」

盗賊「…あれは、幻覚だったのか」

盗賊「そっか……そうだよな、あいつらが教会から出てくるはずねぇじゃん…」

勇者「それでだ、盗賊…気を失ったお前と入れ替わりでお前の別の人格が出てきやがったんだ」

勇者「幻聴だっただの何だの言っていたが…心当たりはあるか?」

盗賊「あぁ……一人になると聞こえていたあの声か…」

盗賊「その声のモトの奴が、俺が気を失っている間に出て来たってのか?」

勇者「」コクッ

盗賊「そいつは何を言ってやがったんだ?」

勇者「過去の事…お前しか知らないはずの事実」

勇者「亡国の民の復活、能力を使った複製」

盗賊「!!」

盗賊「……全部ゲロっちまったのかよ」

盗賊「ははっ…よりによって余所者なんかに知られるなんてな…」

勇者「本当なんだな、その話は」

盗賊「……」

盗賊「本当だ…俺はあいつらを作ったよ」

魔法使い「本当だったんだ…」

盗賊「仕方なかった…この能力に頼って別の身体を作る他…な」

勇者「なら」

勇者「あいつらを作ったことも後悔しているというわけだな?」

盗賊「…!それは」

医者「君の中にできた人格は、君が後悔してると言っていた」

医者「だがすべて鵜呑みにしているわけではないから……

盗賊「本当だ……後悔に押しつぶされそうな思いをしてる」

勇者「お前…」

盗賊「完璧に同一人物を作れたと思った……」

盗賊「体の情報を解析し、身体が正常な状態に作り替えることに成功したと思った」

盗賊「でも違った、私が作ったのは自分に都合のいいあいつらに似た人形」

盗賊「しかもその半数以上は……自分の力じゃ生きられない生命というにはあまりにも出来が悪いものだ」

盗賊「申し訳ないんだよ…仲がいいように見えて結局あいつらは俺がかけた呪いにしばられてるだけなんだ…」

盗賊「本当のあいつらは、もう戦争の時に死んでしまっているんだ…」

勇者「……」

勇者「作り変えたい、お前はそう思っているのか?」

盗賊「……!」

盗賊「そいつそんな事までゲロったのかよ…!」

勇者「実はな、お前の人格はお前の身体を複製した」

盗賊「何ッ!?」

勇者「しかもお前の本当の人格を閉じ、自分が主導権を握り単独行動をしやすくするためのもの」

勇者「あいつは言っていた、私の使命は後悔を晴らすためと」

盗賊「う、嘘だろ…あいつは何をするつもりだ!!」

勇者「作り直し……今いる街の人間をこの世から消し新たな者を作る」

盗賊「そんな無茶な……元のあいつらを複製することは不可能なんじゃ」

勇者「……かもな、だとしたら殺す事だけが目的なのかもしれねぇ」

盗賊「!!」

盗賊「……」

勇者「止めようって気には、ならねぇのか?」

盗賊「……ッ」

勇者「お前それ本当に自分の本音なのかよ!!!」ガシッ

魔法使い「勇者!!やめなよ!!」

勇者「あいつらだって生きてるんだぞ!!それを自分のおもちゃみたいに!」

勇者「出来が悪いから壊すってなんだ!!胸糞ワリぃんだよ!!」

盗賊「じゃあお前ならどうするんだよ!!あいつらを救えるのかよ!!」

勇者「ッ…!」

盗賊「くだらねぇ偽善振りかざして怒鳴り散らしやがって!!それこそ胸糞ワリぃんだよ!」

盗賊「自分で生きられる奴はまだいいよ…!けど、自分だけで生きられない奴はどうするんだよ!」

盗賊「あれで生きているだなんて……あんまりだッ!!」

盗賊「俺だって心の中でずっと悩んでた、だからこそ吐き気を催すほどに追いつめられた」

盗賊「挙句にオレの身体が耐えられなかったのかヒョコヒョコ我儘だけがあるきだしやがったけどな!!」

医者「だからと言って、開き直るのもお門違いと思うよ」

盗賊「なんだとテメェ!!」ガシッ

医者「事態は予測できたはずだ、一から五体満足な体なんて神でもない限り作れるわけがない」

盗賊「他人だからそんな事が言えるんだろ!!無事に救える方法が自分にあったのならとっくにそれを使ってる!」

医者「その方法しかなかったのなら、延命させようなんて事が間違いだったんじゃないかい」

盗賊「テメェッ……それでも医者かよ!魔法も使えないような奴はやっぱりひねくれてやがるぜ!」

盗賊「ならテメェならどうする……無責任な事ばっかり言いやがって!!」

医者「自分の持てる力で、その者を救ってみせる」

盗賊「……はぁ!?」

医者「君とは違った術が僕にはある……僕ならそれを使う」

盗賊「なら救って見せろよ!できるもんならな!」

盗賊「っざけんなよ!言うなら易い。だが僧侶にも劣るお前ができるわけねぇだろうが!!」

医者「やってみせる!!」

盗賊「……!」

医者「正直難しすぎる問題だよ…最初容態を見たとき暗い闇の中へ堕ちたような気分だった」

医者「……本来医療は人間の持つ機能に合わせて適切な治療を進めていく」

医者「しかしその人間の機能が欠損しているならば手つかず……初めての経験だった」

医者「だけど、未知という事はまだ救える可能性があるんだ!!」

盗賊「お前……」

医者「絶対に救ってみせる!苦から逃れさせるために殺すなんて間違っているから!医者として最善を尽くす!」

勇者「医者…!」

盗賊「……」

盗賊「本当…」グスッ

盗賊「本当に……救えるんだな、嘘じゃねぇだろうな」ボロボロ

医者「……嘘は得意じゃない、すぐ顔に出てしまう性分でね」

勇者「こいつは俺が認める腕だ、安心しやがれ」

盗賊「……頼む、あいつらを救ってやってくれ」

医者「うん。もとより僕は患者を救うために旅に出た、喜んで引き受ける」

盗賊「……絶対、助けろよな」

魔法使い「よかった…」

勇者「…言っておくが、安心するのはまだ早いぞ」

勇者「事態はまだ悪いままだ、話をつけなくちゃいけない奴らもいっぱいいる」

盗賊「…わかってる」

ザワザワ

農家「なんだよ、こんな夜中に話ってよォ」

親父「子供は早くねるもんだぜ盗賊、身長止まっちまうぜ?」ガハハ

おばちゃん「まったく、肌が荒れちまうよ」

盗賊「……」

剣士「(盗賊のあの真剣な顔…一体どんな話をするというのだ)」

盗賊「悪いみんな。どっちにしろ寝てる暇なんてない」

盗賊「何故なら、この街を襲おうとしている奴がここに来ようとしてるからだ」

ザワザワ…!

戦士「何だと!?モンスターか」

盗賊「違う、恐らく人間だ」

盗賊「そして、それは俺とそっくりの外見をしている」

戦士「……は?」

ドッペルゲンガー!?コワーイ!

盗賊「それは、俺が無意識の間に作っちまったものだ」

シーン

おばちゃん「……どういうことだい盗賊」

盗賊「…みんな俺の力は知ってるよな」

戦士「そりゃな…それがどうしたってんだよ」

盗賊「それでもう一人の自分を作った、人を作った」

戦士「……そりゃなんで」

盗賊「精神的に追い詰められちまったからだ……体の異常か、別の人格ができちまって」

盗賊「その人格が、もう一人のオレを作った」

戦士「…まぁ理由はよくわっかんねぇけど、精神的に追い詰められてるってお前」

農家「何か悩みでもあるのか?相談なら聞くぞ?」

親父「寝てねぇからそんな不安がよぎんだよ、いつでもベッド空いてっから暇があったら寝にきな」

おばちゃん「バーカ、子供がそんな寝てばっかでどうすんだい、ご飯を食わせな。そうじゃないと元気が出ないよ」

ダイジョウブカー!?ナヤミゴトナラオレタチトイッショニカイケツシヨウ

盗賊「…!」ギリッ

盗賊「じつは、お前らを作ったのはオレなんだ」

シーン…

おばちゃん「バッカだねぇ、作るってアンタ…」

おばちゃん「おい親父、これって……その、子供の作り方とか教える場面なのかねぇ?」

親父「は、俺に聞くなよ…子供持った事ねぇからタイミングなんてわかるわけねぇだろうが」

勇者「みんな、真剣に聞いてくれ!」

勇者「こいつは……自分の力を持ってお前らを作ったんだ」

ザワザワ

盗賊「……戦争があったのはみんなの頭の中にもあるだろう」

盗賊「みんな復帰できないくらいに負傷していた……、だから新しい体を作ったんだ」

盗賊「でも完全に、同一に複製することは叶わなかった…」

盗賊「教会にいる負傷者は俺が複製に失敗した奴らだ……年を重ねるにつれ容態はどんどん悪くなっていった」

盗賊「ここに集まってくれてるお前らの身体を作る事は無事成功した」

盗賊「だけどな……お前らには呪いをかけちまった」

盗賊「…他国の奴らとの接触を極端に減らし、ずっと俺から離れないようにって」

盗賊「……そうしたらこの街は他の国と交流もなく孤立してしまった」

盗賊「オレは都合のいいようにお前らを作り変えただけなんだ……最低だ!」

剣士「お前は……私達を偽物だといいたいのか?」

盗賊「そ、そんな事は言ってないだろ!!ただ…」

剣士「お前と一緒にいたいという思いまでもがすべて嘘だとでも言いたいのか?」

剣士「お前は私達を作ったといいながら私たちの事を何もわかっていないのだな、疑わしくもなる」

剣士「お前の言った事が事実であり、第三者が私たちの事を贋作と呼ぶならそれまでだ。元の身体とは別の個体であることに間違いない」

剣士「しかしな、この思いだけはお前がいいように作り変えたとは言わせないぞ」

盗賊「…!!」

おばちゃん「本当だよ、何をバカな事を悩んでるのかと思えば」

盗賊「なんで…俺はお前らをいいように作り変えた悪人だぞ!意志すらも操作したクズだぞ!」

おばちゃん「作り変える事が目的だったのかい?違うんだろう」

おばちゃん「お前は悪戯好きの生意気なガキだけど、教育者に似て人情があってとってもいい子さ」

おばちゃん「私らを、助けるために力を作ってくれたんだろ?ならそれでいいじゃないか」

農家「そうだぜ盗賊、俺達は助けてもらって逆恨みするようなひねくれ者じゃねぇぜ!!そんならお前みたいな子供はとっくに売りとばしてラァ!」

親父「ったく…悩みがあるときは溜め込まずウチに来いって言ってんのによ」

親父「オメーは案外心がよえェんだ、遠慮せず腹にたまってるもん吐き出しに来い」

盗賊「みんな…」

盗賊「(でも違うんだ……みんながこう俺に気遣ってくれているのは俺が複製過程で感情を入れ込んだせいで…)」

ポンッ

勇者「盗賊……これでも、お前は失敗作だなんて言うのか」

勇者「たしかに……お前の力の影響もあるかもしれねぇ」

勇者「でもな、こいつらは同じ空気を吸って同じものを見て言葉で気持ちを共有できる」

勇者「立派な人間だ、これを贋作だなんて言うのはあんまりだ」

盗賊「でもっ…でも」

勇者「お前はこいつらを作ったんじゃない、救ったんだ」

勇者「少なくともこいつらはお前をずっと昔から好きだった、その思いは健在」

勇者「例えその思いを作り直したとしても、過去と変わらずに今もある」

勇者「この世に実在してる……決して都合のいい虚像なんかじゃないんだ」

勇者「こいつらの思いは、本物だ」

盗賊「……」

盗賊「オレは、救ったなんて言ってどこかで責任を放棄してた……」

盗賊「こいつらの思いが嘘であるのが怖くて……ずっと逃げて、罪を感じて」

盗賊「……違うんだ、オレがやるべきことは今のこいつらの存在をどう受け止めるかなんだ」

今日の投下は終わり。盗賊編も終盤だから次回の投下で終わるかもしれんね
リクエスト通り多分ライバル編も短編(サブイベント)もやるつもりっす。
ではお疲れ様ですー。

剣士「それで、この街にもう一人のお前が向かっていると聞いたが」

剣士「目的は……私たちなのだな」

盗賊「……ごめん、オレのせいだ……オレがウジウジしてたから変なモンを生み出しちまったんだ」

剣士「……要は、それと決着をつければ済む話なのだろう?」

盗賊「ま、まぁそうなんだけど…」

剣士「もしや、まだ心の中で葛藤があるか……?」

戦士「……」

盗賊「……心配すんな、オレにもう迷いはねぇよ」

盗賊「造っただの呪いだのどうだっていいんだ、今オレがやるべきことは」

盗賊「仲間を守る事だ、そして独り歩きした自分との決着をつける」

剣士「……どうやら、本当に迷いはなくなったようだな」

農家「俺達も闘うぞ!!」

おばちゃん「あんたは私たちの子供みたいなもんさ、子供の不始末は親がとらないとね!!」

親父「っしゃ、腕が鳴るぜ!!」

盗賊「……バカヤロウ、嬉しいけど足手纏いだよ」

勇者「そいつの始末は俺と勇者と魔法使いが……」

盗賊「俺も闘う」

勇者「えっ」

盗賊「オレの闘いだっつってんだろ、お前らだけで闘っちゃ意味ねーんだよ」

勇者「……仕方ねぇな」ポリポリ

盗賊「それに自分の力の事はオレが一番よく分かってるんだ、足手纏いには絶対ならねぇ」

盗賊「とりあえずこいつらを奥の方へ避難させてやってくれ、まだ時間はあると思う」

勇者「おう……でもなんで時間があるだなんて思うんだ?」

盗賊「もう一人の俺と闘ったんだろ?」

勇者「まぁ……あいつが俺を複製して、その複製された奴にやられた…」

盗賊「MPは大幅に減少してるはずで複製する力はその時なかったはずだ、その時多人数ならそいつを抑え込めてただろうな」

医者「あれはハッタリだったのか…」

盗賊「そんで街に出向くとなれば勇者が待ち構えると警戒して、魔力の回復も兼ねてどこかに身を潜めてるんだろうな」

盗賊「もっとも時間をかけているあたり……魔力を複製して溜め込んでるのかもしれないな」

勇者「オリジナルは考えなしに突っ込んでくる馬鹿なのにえらい違いだな…」

盗賊「とりあえずこいつら避難させてから俺らは街の入り口で待ちうけるぞ」

親父「よっこらせ…」

親父「おい僧侶!!教会に残ってる奴らはこれで全部か!?」

僧侶A「全部です!!次は寝具の移動を頼みます!!」

農家「わかった!おら、女子供は先に移動させて俺らは必要なモン運ぶぞ!!」

オーー!!

患者「」

盗賊「……」

勇者「心配すんな。医者が治してくれるつったろ?」

盗賊「……言ったけどさ」

勇者「……多分あいつさ、お前と自分を重ねたんだと思うんだ」

盗賊「えっ?」

勇者「あいつは人を救いたいという思いだけが空回りしてよ、間違いを犯しやがったんだ」

勇者「でもな、あいつは間違っただけの奴で終わらなかった」

勇者「自分のダメなところ、罪も全部受け入れて」

勇者「正しい方向へ歩き始めた、本当の意味で人を救う道に」

盗賊「……」

勇者「だからあいつは本気でお前を説得しようとしたんだと思う」

勇者「そして、本気であの患者達を救いたいんだと思うぜ」

盗賊「……」

盗賊「似てるかもしんねぇが、ちょっとちげぇな」プイッ

勇者「おい、ちょっと待てよ」ダッ

盗賊「(だってオレがやるべき事は、自分の中で間違いと思っていたことを間違いでなくすことなんだからな)」

親父「これで全員行ったな」

盗賊「あれお前らなんで残ってるんだよ」

戦士「はぁ?水臭すぎるだろお前……団員なんだから当たり前だろうがよ」

盗賊「ってことはお前も……」

剣士「無論だ、敵とはいえお前と同じだ……喝を入れねばならぬ」

盗賊「ったく仕方ねー野郎どもだな……」

親父「頼んだぞお前ら!!盗賊を守らなかったら承知しねーからな!!」

戦士「けっ、非力なおっさんは向こうにひっこんでな!!」

勇者「さてと……」

勇者「前衛は俺と剣士と戦士、後衛は魔法使いと盗賊」

勇者「医者、お前は街の奴らの護衛を頼む…できる限り敵を通さねぇようにする」

医者「わかった」

勇者「さてどう迎え討つか……」

勇者「そもそも生きてるかどうかさえも怪しいな」

盗賊「……複製は完全に成功してる、絶対に来る」

あばれザル「キキィーーーーー!!」ザザザザ

勇者「げっ、あばれザルの軍団!?」

盗賊「本体はこっちに向かってこないつもり……あいつらを捕まえて自分の下へ連れて行こうって魂胆か」

勇者「おらっ!催涙スプレー!!」プシャー

戦士「真面目にやりやがれ勇者!!!」

勇者「大真面目だよ!!」

魔法使い「数多いって……!!」

盗賊「複製過程で暗示を入れやがったか……まるで操り人形だ」

勇者「キリがねぇぞ!!」

戦士「クソがっ!!!」

剣士「盗賊」

盗賊「なんだ、剣士……」

剣士「このあばれザル達は街の皆、もとい私と戦士を狙っているのだな?」

盗賊「あぁ……十中八九そうだと思うが」

剣士「ならば私が捕まろう」

盗賊「バッ、お前!!!」

剣士「いつまでもここで闘っていても体力を消耗していずれ劣勢になる」

剣士「親玉の下へと一刻も早く向かわねばならない」

剣士「私を信じて、任せてくれないか」

盗賊「……」

盗賊「わかった、お前のその話に乗ろう」

剣士「……うむ」チャッ

戦士「お前何剣を収めてんだよ!!」

あばれザル「キキー!!」ドゴッ

剣士「ぐっ…」グッタリ

剣士「(追尾を頼んだぞ)」クイッ

戦士「あいつ捕まっちまったじゃねーか!!」

盗賊「オレは剣士を追う!!お前らはここで待ち応えてくれ!!」

勇者「……そういうことかよ!」

勇者「わかった!!行って来い!!」

戦士「はぁどういうことだよ!!」

勇者「お前は目の前の敵に集中してやがれ!!」

勇者「ここを任されたといえ、このままじゃ分が悪いぜ…!」

勇者「うおらっ!!」

盗賊「」ハァッハァッ

キキーーーーッ!キャーーーー!!

盗賊「尋常じゃない魔物の数だな…オレの事を襲わないあたりあいつの造ったものか」

盗賊「」ザッザッ

盗賊「あっ…」

盗賊「こんな所に居やがったか…」

黒盗賊「なるほど……やっぱり来たのね」

黒盗賊「ここに来たって事は……何かを決意したのかしら」

盗賊「……そうだな」

ズシャ!!

剣士「ふっ……汚らわしい返り血だ」

黒盗賊「とんだピエロね剣士、気絶のフリなんて君らしくないよ」

剣士「抜かせ」

黒盗賊「で、何をしに来たのかしら?」

盗賊「決まってるだろ、お前を止めに来たんだよ……!」

黒盗賊「何故?」

盗賊「お前がやろうとしてる事は大事な仲間を殺すってことだ!!」

盗賊「そんな事はさせるかよ!!」

黒盗賊「仲間……ね、随分と妥協したようだけど」

黒盗賊「本当に納得が行ってるの?君はこの世の理不尽さに負けただけなんじゃない?」

盗賊「……」

黒盗賊「何もできない自分はただ現実を受け入れるしかなかった…そうなんだよね?」

盗賊「違う」

黒盗賊「……何が違うの?」

盗賊「何故ならオレは今いる仲間が大好きだからだ」

黒盗賊「…は?」

盗賊「昔と変わらず俺の事を好きでいてくれていると言ってくれる仲間の事が大好きだからだ!」

黒盗賊「プッ」

黒盗賊「あははははは!!自分で呪いをかけてその呪いに踊らされてるなんてね、中々マヌケなんだね」

盗賊「お前に何を言われようがオレはもう惑わされない……お前を止める!!」

黒盗賊「……私は納得行かない」

盗賊「……」

黒盗賊「あのままだなんて納得行かない……あまりにも可哀想すぎる」

黒盗賊「人間の意志は自由であるべきなのに……一つの生命として自立すべきなのに縛られているから」

盗賊「お前はオレのためを思って事を起こそうとしてたんだろ、だったらもうやめに……」

黒盗賊「うるさい!!!!」

盗賊「…!」

盗賊「へぇ……幻聴の頃とは全然気性が違うな」

黒盗賊「私の仲間が……あんなんでいいはずないんだよ、不完全でいいはずないんだよ!!」

黒盗賊「仲間といるはずなのにずっと独りの気分だった!!不安で押しつぶされそうだった!!」

黒盗賊「君のやってる事は妥協なんかじゃない……我慢なんだよ」

黒盗賊「そして惨めな葛藤をこれからも繰り返し苦しんでいくんだ……」

盗賊「……可哀想な奴だなお前は」

黒盗賊「何ッ……!」

盗賊「お前は今いるあいつらから逃げてるだけだ」

黒盗賊「君はあんな出来の悪いモノを見て吐き気がしないのか?あれを仲間だなんて言うのはあんまりだよ…」

盗賊「大事なのは過去の者を完全に再現する事じゃない」

盗賊「今いる者を仲間として認める事なんだ」

黒盗賊「なんで……なんで君も私のクセにそれで納得してんのさ」

黒盗賊「そうか……勇者か、あの勇者共が何か吹き込んだんだね、ククク」

黒盗賊「それじゃ今のキミってニセモノなんじゃない?」

黒盗賊「誰かに言い負かされた、ニセモノ」

黒盗賊「そうだよね……私の中の閉じた人格は後悔していて、その後悔は私の自我となって存在している」

黒盗賊「それじゃキミはナニ?あいつらと同じお人形さんになっちゃったのカナ?」

盗賊「こいつ……複製に失敗してやがるのか、感情が混同してやがる」

黒盗賊「ならキミが存在してる理由はないよね…だって本当の私は私の中にあるんだもの」バチチ…

盗賊「なんだよその肉壺はよ…」

黒盗賊「魔物が入ってるの……そして魔力の貯蔵庫でもある」

黒盗賊「自身が持てる魔力は少ないからこれで戦力を補ってるんだよ……」

黒盗賊「さて……何を呼び出そうかな」

盗賊「くっ…」

ライオンヘッド「がぁぁぁ!!」

盗賊「でけぇのが三匹……ちとやべぇな」

黒盗賊「行け!!その偽物を殺してしまえ!!」

ズシャズシャ!

パラパラ…



盗賊「剣…士」

剣士「……私がお前たちの話に入いる隙はない」

剣士「しかし…敵が牙を向けてきたのなら別だ、この剣を持ってお前を守る」

盗賊「……助かる」

黒盗賊「そうやって偽りの愛に溺れながら死ぬがいいわ」

ズシャ!

剣士「……どうした、この程度か」

黒盗賊「そうやって強がってられるのも今のうちだけよ贋作…」

剣士「贋作……たしかにこの身は偽物なのかもしれない」

剣士「しかし盗賊が私と一緒にいることを望むのならば消えるわけにはいかん」

黒盗賊「ふん」

黒盗賊「死になさい!!!」



戦士「一向に片付かねぇじゃねぇかよ!!」

勇者「(畜生……無事なんだろうな盗賊の奴!)」

魔法使い「ゆ、勇者……あれ」

ドラゴン「」グルル…

勇者「嘘だろ?」

ドラゴン「」ボォォォォ!!

戦士「ぐあああああああああ!!」

勇者「くっそ…なんでこんな場所にドラゴンがっ!」

あばれザル「キキーーーーッ!」ダダダダ

魔法使い「あっ!待って!!そっちへは絶対に行かせない!!」テレレレン!

ドラゴン「」ドガッ!

魔法使い「キャーーーーー!!」

勇者「魔法使い!!!」

勇者「あばれザルの大群だけでも精一杯だってのによ……!!」

ドラゴン「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」

勇者「……」

勇者「すまねぇ医者、頼んだぞ」

勇者「こいつは全力で闘わねぇとやべぇな……」

僧侶A「水が欲しい人はいませんか?」

農家「なぁ僧侶よ…ここ大丈夫なのかよ」

僧侶A「一応地下にありますし早々見つからないと思いますよ」

   「ちょっ、なんだよこの猿の大群はよォ~~~~!!!」

医者「……昆虫が!!」

医者「まさか…敵の差し金?」

バンッ!

親父「ひぃぃぃぃ!!入ってきやがったぞ!!!」

あばれザル「キキーーーーーー!!!!」

キャーーーーー!!

医者「皆さん下がってください!!!」キュポッ

医者「毒薬!!!」ジャバァ!

あばれザル「キャーーーーー!!!!!」バタッ

親父「やべぇぞ医者さん!患者のいる部屋へ猿がいきやがった!!」

医者「何ですって…!!」

医者「」ダッ

患者「」

あばれザル「キャキャッ!」

ズシャ

医者「その雑菌だらけの手で……触れるな」

あばれザル「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

あばれザル「キャキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

医者「数が多すぎる…盗賊君の話を元に推測するとここへ逃げることを予想して向かわせたのか…」

あばれザル「キャーーーーー!!」

医者「だがッ」

医者「この者たちは僕の患者だ……絶対に指一本触れさせない!!」

医者「治すと約束したんだ!!」

あばれザル「」バキッ

医者「ぐっ…」

農家「くらえ!!俺の自慢の農具!!!」

ズシャーーー

あばれザル「キャーーーーーーー!!」

医者「農家さん…なんで!!」

農家「あんただけが闘うのなんて見てらんねぇよ」

おばちゃん「私らも闘うよ!自分の身は自分で守るさ!!」

医者「皆さん…」

親父「聞いたぜ医者さんよ、あんたこいつらを治療してくれるんだってな?」

医者「……ええ」

親父「ならここで死なれたら困る、あんたは俺達の希望だ」

医者「…!」

医者「すいません……僕が不甲斐ないばかりに皆さんの手を煩わせてしまって」

親父「医者が強くても困るっつーの、その代わりといっちゃなんだがこの戦いが終わったらぜってー治療を成功させてくれよ」

医者「わかっています!」

ーー
ーーーーーー



盗賊「」バチチ…

剣士「……」ハァッハァッ

盗賊「剣士、大丈夫か!?」

剣士「問題ない、剣士たる者この程度では倒れんよ…!」

黒盗賊「…くっ、もう魔力の貯蔵が」

黒盗賊「(予想外だった…十数をも超える強力なモンスターをぶつけたっていうのに倒れないなんて…)」

剣士「ぐっ…」

盗賊「剣士!…もう無理すんな!!お前は休んでろ」

盗賊「あとは…オレが決着をつける」

黒盗賊「弱い君が私と一対一で勝てるとでも?」

盗賊「……」グイッ

黒盗賊「へぇ…弓ね」

盗賊「その様子だともう魔力はないんだろ」

黒盗賊「……」

黒盗賊「」バッ

ピシュッ

ザクッ


黒盗賊「ぐぁっあああ!!!」ガクッ

盗賊「遅かったな…もう少し距離が近ければ何か策はあったのかもしれねぇが」

黒盗賊「くぅっ!!」

ピシュッピシュッ

ザクザク

黒盗賊「-------ッ!!!」

盗賊「無駄だ、もうお前に勝ち目はねぇよ…」

黒盗賊「体が…痺れて」

盗賊「麻痺毒だ」

黒盗賊「……殺すの?」

盗賊「……そのつもりはねぇよ」

盗賊「もういいんだよ……やめにしよう」

黒盗賊「なんで!君は納得できて私は納得できないの!!」

黒盗賊「私が後悔だけだから……?私が後悔だけの存在だから?」

盗賊「……」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー

~×年前~




盗賊「なんだよこれ……」

盗賊「あいつら味方じゃなかったのかよ……!」

盗賊「剣士!あんなやつらブッ倒してくれよ!!なぁ!!」

剣士「」

盗賊「剣士……ひっ!!」

盗賊「お前…腸がッ」

オエェェェ

盗賊「戦士!!大変だ!!剣士がッ!」

戦士「」

盗賊「嘘だろ…、お前まで」

兵士「」

兵士「」ギロッ

盗賊「ひっ……」

盗賊「こいつら……なんだよ、まるで操られてるみたいに」

兵士「」カシャンカシャン

盗賊「う」

盗賊「うわああああ!!」ダッ

兵士「」カシャンカシャン

おばちゃん「」

盗賊「みんなっ…!」

盗賊「なんでみんな倒れてやがんだよ……!」

盗賊「体をぐちゃくちゃにしやがって…みんなをこんなにしやがって!」

盗賊「あいつら何が目的なんだよ……!」

盗賊「僧侶……!」

僧侶A「」

盗賊「お前が倒れててどうすんだよ!みんなを助けなきゃ!!」

盗賊「……どうすればいいんだ」

     敵討ち?あの軍団にチビのオレ一人で?

盗賊「…」

盗賊「今助けてやるからな……!!」

      この時は無我夢中で

盗賊「俺は特殊なんだ…俺の持ってる力なら」

      後先なんて考えなかった

盗賊「へへっ…お前らにこれ見せるのはじめてだよな」

盗賊「ごめんな……使ったら悪用されかねないからって剣士がしつこかったんだよ…」

     ただ自分の力を使えば助かると思って

盗賊「今は剣士も怒らないだろうからさ……」

シュイイン

盗賊「ぐっ!!」

身体の力をすべて搾取され、全てが空白の場へと流れていく感覚。

触れた仲間の身体からはそいつの思い出やら感情やらが色々と流れ込んできて

膨大な情報量に押しつぶされそうで、これを一から作るなんて不可能だと思う。


けど、助けたい。


また一緒にご飯食って、笑いあって…この先ずっと一緒に生きていたい。


いやだよ…俺の前から、消えないでくれよみんな…!!

ーー
ーーーー

黒盗賊「あの時は一心不乱だったね、でも幼子の考えにしても残酷すぎる」

黒盗賊「人間を再現できるわけないんだよ…」

黒盗賊「体の原型があまりにも崩れていたものなんてとても手に負えなかったよね…」

黒盗賊「情報を読み損ねてあんな者ができてしまって…」

黒盗賊「一瞬でも救ったなんて思った自分を殴りたいと…その先で思ってしまったよね」

盗賊「……」

黒盗賊「自分で生きれるものは…ま、だいい…け、どそいつらは…」

盗賊「医者って奴がいるだろ?」

盗賊「あいつが助けてくれるらしい」

黒盗賊「あ、れが?そ、んなの無理だ、よ…」

盗賊「勇者が凄腕って言ってたから大丈夫だろ…」

盗賊「もし救えなかったとしても、俺は文句を言うつもりはねぇ」

盗賊「現実を受け入れるって決めたんだ」

黒盗賊「……」

黒盗賊「大人に、なったんだ、ね、自分に、追い越され、ちゃった」

黒盗賊「全員、救うなんて…バカな、話なんだ、そんなのはただの、我儘」

黒盗賊「それは生命を、玩具として使って、いるよね…あいつらは仲間であって、私の、玩具じゃ、ないもん」ボロボロ

盗賊「」ギュッ

盗賊「さようなら。弱かったオレ」

盗賊「お前はお前なりに俺を支えようとしてくれてたんだよな」

盗賊「でも安心しろよ、オレは妥協なんてしてない」

盗賊「あいつらを、心の底から仲間だって思ってるんだからよ」

シュイ…イン

黒盗賊「う、ん…触れるとわかる、よ…君も、救われた、んだね…」

黒盗賊「…よかっ、た…安心し、…た」

ボロボロボロボロ

盗賊「……ありがとよ、お前は耳障りな幻聴じゃなかったぜ」





勇者「」ハァッ…ハァッ

ドラゴン「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

勇者「ははっ…体が思うように動かねーや」

勇者「盗賊は決着をつけたのかな……」

勇者「いや…そんなことは今はいいんだ」

勇者「俺は俺の役目を果たさなきゃならねぇっ……!!」

ドラゴン「」シュバァッ!

勇者「!!!!」

勇者「能力を発動する他ねぇ……!!」

勇者「あいつを倒せるのは…どのレベルの俺だ?」

勇者「そして倒せるのは何秒の世界なんだ!」

ドラゴン「オォォォォォォォォォォォォ!!」

勇者「厚く鋼鉄よりも固い皮膚…攻撃が通ったとしても軟なものじゃ倒せない…!」

勇者「だとすれば…」

勇者「レベルを限界まで上げ…持続時間を極限まで短くするッ!」

ドラゴン「」ブオン

勇者「ぐっぁ!!!」

勇者「はぁっ…」

勇者「こんな速い攻撃を…避けれるのか…?」


勇者「…違う、避けるんだ!!」

ブオンブオン!!

ゴォォォォォォ!

勇者「可能な限り攻撃を回避し、命中しても怯まず突き進み!!!」

勇者「脳天に剣を振り下ろし、当たる寸前で能力を発動する!!!」

勇者「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」バシュン!!

勇者「今だ!解放!!!」


ドラゴン「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」ズシャアアアアアア

盗賊「大丈夫か、剣士…」

剣士「問題ないと、言っているだろう…ぐっ」

盗賊「ったく意地っ張りな野郎だな…」

盗賊「ん…」

盗賊「勇者!!勇者!!」

盗賊「お前らこんな傷で…ってドラゴン!?」

勇者「ははは…倒すのに苦労したわー…」フラフラ

勇者「お、盗賊よぉ…お前の後ろに後光が差してるんだが…」

盗賊「それ幻覚だって!!死ぬな、生きろ!!!」ペチペチ

勇者「」スピースピー

盗賊「……ったく、驚かせやがって寝てるだけかよ」


盗賊「ありがとな」

~数日後~

盗賊「……」

勇者「変な話だよな、自分の墓参りするなんて」

盗賊「うるせー。黙ってろ」

盗賊「それにしてもお前、身体の方は大丈夫なのかよ」

勇者「おう、まぁ丸二日寝てたしな……」

盗賊「そういえばあのドラゴン、あれ能力で作られたもんじゃねぇぞ」

勇者「はぁっ!!?じゃああれ何なんだよ!!」

盗賊「さぁ…興奮してて街を襲いに来た野生の竜なんじゃねぇの」

勇者「…なんか気が抜けるわ」

ガヤガヤ

勇者「いや貿易再開するだけでこんなにも人が増えるもんなのかね」

盗賊「余所者は臭くて嫌いだ…」

勇者「まぁそういうなよ…」

勇者「外と関わらなきゃいけねぇんだ、資材も人材も足りなかったんだからな」

勇者「……でもオレ尊敬するわ、医者が本当に手術を成功させたんだからな」

勇者「新聞にも載ってる、これからの治療は医療がメインになるのか!?みたいな」ケケッ

盗賊「……」

勇者「まさか人口物を体に入れるなんて言ったときはびっくりしたぜ…異物を中に入れるなんて何言ってんだこいつと」

勇者「でもそれが人間の機能の役割を担って人体の状態を安定させることに成功したんだからすげぇよな…」

盗賊「……」

勇者「んだよ。まだ恥ずかしがってんのかよ」

キィィィ

僧侶A「来たんだね」


盗賊「う、うるせー!!どんな顔して会ったらいいのか…わかんねぇだろうがよ」

勇者「シャイな盗賊ちゃんマジ可愛いわーーーwwwwwwww」

盗賊「うるせぇキモいっつってんだろうがこのボケ!!」バキッ

勇者「いっでぇ!!」

僧侶A「あはは…仲がいいのは結構だけど教会の中だから静かにしてもらえるかな」

ギッギッ

盗賊「」ドキドキ

ガチャ

医者「あっ、勇者君と盗賊君」

魔法使い「遅いよー、どこ行ってたの!」

勇者「いやーこいつがグズ
ドゴッ


盗賊「ちょっと野暮用がよ…」アハハ

盗賊「それで…あいつら、どんな感じ?」モジモジ

医者「最終検査は終わったよ、あとは安静にしていたら健康に生活ができるはず」

盗賊「そ、そうか…」

盗賊「医者…」

盗賊「ありがとな。オレ、お前が失敗しても受け入れるだなんて変な覚悟してた」

盗賊「ごめん!!」

医者「いやいや、そりゃ不安だって起きるよ。むしろそんな楽観的じゃ人間ダメだと思うよ」

勇者「あっテメッ俺の悪口か!!」

盗賊「いちいちうっせぇんだよお前!外に出てろ!!」

勇者「はい」ショボン

医者「それで…面会するんだろう?」

盗賊「……」

ガチャ

盗賊「失礼…します」

患者「……」

患者2「ほらっ、お前の番じゃぞ…早く駒を動かさ…」

患者3「もしかしておんめー…盗賊か?」

盗賊「そ、そうだよ…」

患者「おっきくなったなおんめー!!!」ワシワシ

盗賊「か、髪ぐちゃぐちゃにすんなよ……」

患者2「でも乳は全然でかくなっとらんべ」

盗賊「うるせー!!」

患者3「あの…白衣着てる奴らや教会のお偉いさんがいっぺぇ来て俺らを治したんじゃろ?」

患者「すっげぇな?なんか俺ら治せねぇもん抱えてたらしいでねぇか、あいつらすっげぇなぁ」

患者2「……」

患者2「あの白衣着てる兄ちゃんに聞いたべ、俺ら助けるために他の街まで飛んでいったんだってな」

患者2「それにみんなも俺らのために頑張ってくれて…俺ら幸せもんだなぁ…」

盗賊「……」

盗賊「その、実はお前らが意識を失ってたのは……」

ギュッ

患者「ありがとなぁ……おめーのおかげでまたお日さん拝めらぁ」ポンポン

盗賊「……!だ、抱き付くなよ…」ポロポロ

患者2「あんれま、おめー泣いてんのかよ」

盗賊「な、泣いてねーよ!!!」

患者3「オレそんな愛されてんのか、将来盗賊と結婚すんべ」

患者「いやいやワシが」

盗賊「お、おまえら、勝手な事言ってんなよな……」

魔法使い「よかったぁ……」グスッ

患者「っしゃ、ワシら復活記念に酒でも飲むべ!!」

患者2「いい!!」

医者「ちょ、ダメですダメです!!あと数日は安静にしててくださいって!!」

盗賊「……」クスッ

勇者「けっ、幸せそうな顔しやがって」ニシシ

~夜~

盗賊「何だよ話って…」

勇者「お前が欲しい」

盗賊「えっ!?いやっ、え、その、えっ!?」カァァ

魔法使い「言葉足らず!!」バシィッ

勇者「あべしっ!!」

剣士「盗賊、勇者殿が是非お前の力を貸してほしいのだそうだ」

盗賊「俺の力を…?」

勇者「あぁ…」

勇者「お前の力はまだ色んな可能性があって強大だ」

盗賊「……」

盗賊「オレだって……魔王を倒したい、俺の国をめちゃくちゃにしやがったそいつをぶん殴りてぇよ」

盗賊「けど…この街から離れるなんて」

ポンッ

剣士「もしかして、自分がいないと私たちが生きていけないなどと思っていないか?」

戦士「見くびんなよ、お前が作ったんだがなんだか知らねーが俺らだって一介の人間なんだぜ」

戦士「お前がいなくたって生きていけらぁ」

戦士「おめーの思ってる以上に俺らは人間できてんの、何が心配なのかしんねーけどもっと自信もてや」

盗賊「……」

剣士「また、過去のような悲劇が起こるかもしれない」

剣士「そのような事を起こさないためにも…勇者殿にお仕えするんだ」

盗賊「……できるかな、オレ」

剣士「自信を持て、お前は強い子だ」

盗賊「口先だけじゃねぇだろうな」

剣士「私が一番お前の面倒を見てきたのだぞ?もしかしたらお前の事をお前以上にわかってるかもしれん」

戦士「行って来いよ。そんでサクッと終わらして来いや」

戦士「帰ってきたらまた一緒に遊んでやるよ、なぁ剣士」

剣士「……そうだな、いろんな場所を旅してきて…色んな話を持って帰って来い」

剣士「またお前と話せる日が来るのを楽しみにしている」

勇者「どうするんだ、盗賊」

盗賊「オレは   ーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーー

チュンチュン

患者「いっちまうのか…盗賊」

患者2「悲しいなぁ…悲しいなぁ」

盗賊「泣くなよお前ら」アセアセ

おばちゃん「そうだよ。男がメソメソすんない!」バシッ

患者「お、おばちゃん…病人に対して扱いひどいべ…」

おばちゃん「また帰ってくるんだから、あたしらは迎える準備をしてたらいいのさ!」

農家「おめーこの野菜もってけ、とれたてだかんな」

勇者「っしゃ朝飯!」

魔法使い「成敗」ズベシッ

親父「ホラ…寝袋だ、そんな安物じゃなくてこれ使え」

盗賊「お前ら……」

おばちゃん「絶対生きて帰ってくんだよ、ウチは席空けて待ってるんだからね!」

剣士「勇者殿……盗賊を頼むぞ」

戦士「……お前なんで背を向けてるの」

剣士「そういう気分なんだ」

戦士「……ほんとこいついみわっかんねーわぁ」

盗賊「剣士、この街の代表として街を守ってくれよ」

剣士「わかっている。だから心配せずに行って来い」

剣士「それと、お守りだ…」

剣士「これはみんなで編んだんだ…みんなの想いが詰まっている」グスッ

盗賊「な、泣いてるのかよ?」

剣士「泣いてなどいない!」

剣士「さっさと行け!勇者殿を待たせてはならん!」

盗賊「…わかってるよ」

おばちゃん「気をつけて行ってくるんだよ!!!」

農家「そのお守りの巾着見て俺らの事思い出してくれよーー!!」

患者「じゃあのーーー!!」

盗賊「……よし」

盗賊「お前らも元気でな!!帰ってきたら一緒に朝まで飲み明かそうぜ!!」

オーーーーーー!!

医者「教会の人員が追加されたから彼らのケアは心配ないよ盗賊君」

盗賊「何から何まですまねぇな…礼をできればいいんだが」

医者「いや、僕はやりたいからやってるだけ…見返りなんて求めていないさ」

医者「そうだね。礼をしてくれるというなら是非精一杯彼を支えてくれ」

盗賊「……まぁアンタの頼みなら仕方ねぇな」

勇者「おーーーーーい!!置いてくぞお前ら!!」

魔法使い「ほら、盗賊はやくはやく!!」

盗賊「あっ、ちょっと待てよ!!」

医者「さて僕も走らなきゃおいて行かれちゃうね」


盗賊が なかまにくわわった!!▼

盗賊編勢いで書いちゃったぜ、にしてもこのSS誤字大杉ですねすいません。
物語的にも峠は越えたと思います。
あとはコメディ短編いくつかとライバル編やってから最終章という形にしたいです。
読んでくれてる人本当にありがとうございます!あともう少し付き合ってください。

ライバル安価
>>346職業
>>347武器
>>348能力

錬金術師

宿屋の主人

スタンガン

この場合どれを取るべきなのか…
宿屋の主人が武器なのはやばそうよね

わかったよーそうするべ。

ライバルの前に短編(サブイベ)書くんでそれも安価取っとくか。

見たい掛け合いとか話とかあるならどうぞやで。

安価↓







        [盗賊と魔法使いの恋バナ]



盗賊が仲間になって数日が経った。

勇者「」グーグー

盗賊「んー……」

盗賊「家じゃ…ない、そうだ街を出たんだっけ……いい加減慣れないと」

盗賊「にしてもなんか重ぇんだが…って、なっ!!?」

盗賊「お前何抱き付いてやがんだ!!!!」バキッドゴッ

勇者「いっでぇ!!!」

勇者「朝から暴力たぁご挨拶だなぁ盗賊…」

盗賊「なぁ魔法使い!こいつの横イヤだよ!寝袋出て俺のとこくんだもん!!」

魔法使い「勇者……」

勇者「えっ、何?」

魔法使い「いや…別に何もないんだけどね」

医者「朝は食事を摂る前に体操をしますよーー!!」

盗賊「えー…先にメシ食おうよ、オレお腹ペコペコ」

魔法使い「すぐ終わるから頑張ろうよ」

盗賊「…まぁ別にいいんだけどよ」

勇者「いやー、それにしても医者の健康志向には感心するなー」HAHAHA

盗賊「って、何でお前横に来るんだよ!!」

勇者「は、なんか不都合でもあるか?」

盗賊「いやねぇけどさ……」

魔法使い「……」

カチャカチャ

魔法使い「おいしい!」パクパク

魔法使い「ねぇ医者、この黒いの何?今まで見た事ないけど」

勇者「たしかにうめぇ!!」

医者「ん、それはイナゴだけど」

魔法使い「」

盗賊「んー、イナゴは俺の近くで捕れる奴のがうめぇんだけどなー」

勇者「そうなのかよ、んじゃ旅が終わったら食わせてもらおっかな」

魔法使い「」

勇者「……こいつ、イッちゃってませんか?」

医者「あー…今度から魔法使い君の所には入れないようにしよう」

盗賊「」バクバク

勇者「おいおい、お前食い散らかしすぎ」

盗賊「いいんだよ、うるせー奴が一人いねーから自由に食えらぁ」

勇者「せめて頬は綺麗にしろよ」フキフキ

盗賊「!!!?!!??」カァァァァ

バチン

勇者「いっでぇ!!なんだよ、頬をナフキンで拭ったくらいで怒るなよ!」

盗賊「自分でできるわ!!いちいち俺にかまうなバカ!」フキフキ

医者「ふふ、朝からにぎやかだね」

魔法使い「……」

盗賊「人体の構造ってのはさ…」ペラペラ

医者「ふむ…そんな仕組みがあるとは」

勇者「ダメだわ、あいつらの話マニアックすぎてついていけねー…」

魔法使い「ねぇ勇者」

勇者「どうした我が弟子よ」

魔法使い「勇者ってロリコンなの?」

勇者「……は?」

魔法使い「正式名称はロリータコンプレッk

勇者「いやそこじゃねぇよ?俺はなんでそう思ったかに対して疑問を抱いてるわけよ」

魔法使い「だってさー…何かにつけて盗賊にボディタッチしてるっていうか」

魔法使い「もしかしてそういう目で見てるんじゃない…のかなって」チラッ

勇者「弟子よ…お前のその歳を重ねることにより歪んでしまう見解に師匠は頭を抱えてしまうぞ」

魔法使い「じゃあなんであんなにベタベタ…」

勇者「妹みたいで可愛いからだ!!!!」ドンッ

魔法使い「……はぁ」

勇者「何かからかいたくなるっていうか…反応がまた可愛いと言うか」

勇者「いやほんと妹ができたみたいで嬉しいんですはい」

魔法使い「…たしかに、妹ができたみたいで可愛いってのはわからなくもないかな」

勇者「だろ、だろっ!?」

魔法使い「いやだからって勇者が小さい子をベタベタさわってると見てるこっちとしては気持ち悪い訳です」

勇者「やっべ。すっげぇ傷ついた」

~夜~

ザッザッ

魔法使い「どうしたの、盗賊」

盗賊「」キョロキョロ

盗賊「誰かにつけられなかっただろうな?」

魔法使い「つけられてないと思うけど…」

盗賊「誰もいねーだろうな!」

魔法使い「多分ここにいるのは盗賊と私の二人だけだと思うよ」

盗賊「……」

盗賊「その…」

盗賊「勇者ってさ……私の事どう思ってるのかなって」

魔法使い「……へ?」

盗賊「いやいやいや!別に変な話じゃねーよ!?」

魔法使い「な、なんでそんな事思ったのかな」

盗賊「だって最初会った時からそうだけどさ……」

盗賊「大した関係でもない俺の私情につっかかってくるし」

盗賊「それに……なんか体をベタベタ触ってくるっていうか」ドキドキ

魔法使い「(…あちゃー、年頃の女の子はこういう事考えちゃうよねー…)」

盗賊「魔法使いは……どう思う、勇者はその…俺の事が好きだと思うか?」

魔法使い「んー」

魔法使い「(参ったな……この子が言ってる好きは多分LOVEのほうだろうなぁ)」

魔法使い「好きだと思うよ」

盗賊「ほ、ホントなのか!?」

魔法使い「(嘘は言ってない、嘘は言ってない。うん)」

盗賊「参った……そ、そんな事言われてもな」

盗賊「てことはあの接触の数々は愛の表現ってことで私もそれに応えないといけないのか…」ドキドキ

盗賊「ハグって愛の表現の主格だよな……って、ことは…」

魔法使い「(この子って…本当に他人がどう思ってるか考えちゃうんだな……)」

魔法使い「クスッ」

盗賊「な、何笑ってんだよ」

魔法使い「別になんでもないよ」

盗賊「魔法使いは勇者の事好きなんだろ?」

魔法使い「えっ!?」

盗賊「な、なんだよ…そんなに驚く事か?」

魔法使い「いや…どうして?」

盗賊「だっていっつも目で追ってるじゃん……」

魔法使い「あー……」

魔法使い「多分盗賊が思ってるものと違うと思うけど」

魔法使い「私は憧れの対象として勇者を見てるんだと思う」

盗賊「憧れ……あいつに?」

魔法使い「うん」

魔法使い「勇者ってすごいよ。すぐ人と打ち解けるし、強いし」

魔法使い「あーいう才能を持ってる人に憧れちゃうなーって…」

魔法使い「私何やっても中途半端でさ、魔法使いとして半人前だし」

魔法使い「どうして勇者に仲間にしてもらえたのかなって思うくらいに」

盗賊「なんで?魔法使いは才能を持ってると思うよ?」

魔法使い「へ?」

盗賊「医者なんて見てみろよ、魔法を使えないのにすげぇことを成し遂げたんだぜ?」

盗賊「魔法を使えるお前なら医者にはできないもっとすげぇことができるかもしんねぇんだぜ?」

盗賊「オレだってそうだよ、特殊な力はあるけど魔法はちっとしか使えないし」

盗賊「お前にはお前しかできない事があると思ってるから勇者もお前と仲間でいるんだと思うぜ?」

魔法使い「そ、そうかな…」エヘヘ

魔法使い「私と勇者は師弟関係みたいなもので……」

魔法使い「だから認められようって頑張ってるんだ」ニコッ

魔法使い「勇者ったら私の価値を金で換算しようとするんだよ?ひどくない?」

盗賊「」ホッ

魔法使い「どうしたの?」

盗賊「いや……そういう関係なら気を遣わなくて済むなーと思って」

魔法使い「へ?」

盗賊「そ、その……勇者とオレが…恋人関係になっても」

魔法使い「ま、待って……ちょっと話がぶっ飛び過ぎっていうか…」

盗賊「いてもたってもいられねぇや!あいつにちょっと気持ち聞いてくる!!」

魔法使い「ちょっと待って~~~!!行っちゃダメーーー!!」

~朝~

勇者「……」

盗賊「……」

勇者「なぁ盗賊、さっきから俺の事チラチラ見てなんだよ」

盗賊「…」チラチラッ

勇者「なんでなんもいわねぇんだよ…ほっといてメシ食べよ」パクッ

盗賊「お前は何でこういう時だけ鈍いんだよ!!!!」パカーン

勇者「いっでぇ!!!」

魔法使い「アハハ…」

魔法使い『盗賊、恋ってのは急いで追うとすぐ逃げられちゃうんだよ』

盗賊『なに、そうなのか!?』

魔法使い『そ、そうだよ……恋愛経験豊富な私が言うんだから間違いないよ』

魔法使い『(まぁ一度も付き合った事なんてないけど……)』

魔法使い『だからじっくり様子を見て、少しずつアピールしていくのがいいと思うよ』

盗賊『そうなのか……焦っちゃダメなんだな』

盗賊『説得力あるな…これが噂に聞くびっちって奴か…』

魔法使い『その呼び方はやめて』
ーーーーーー
ーーーー
ーー

魔法使い「(なんで私あんな事言っちゃったんだろ…)」

魔法使い「盗賊が振られて傷つかないように気遣ったから……」

魔法使い「」チラッ

勇者「お前の好物もらい!」

盗賊「あっ!返せこの野郎!!」

魔法使い「……」

魔法使い「そう…だよね、私が勇者に特別な想いなんて持ってるわけないよね…」

魔法使い「よし!早く強くなって勇者に認めてもらうように今日も頑張るぞーーー!」パクパクパクパク




       【盗賊と魔法使いの恋バナ・完】

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