◇死ネタ・鬱展開注意
◆最初からにこが死んでいます
◇ほのにこですが恋愛展開は無しです
◆穂乃果とにこの両視点で話が進みます
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ーーーーー彼女は。
最後まで自分の力で歌いたい、踊りたいと言っていた。
最後まで、笑顔のアイドルでいたいと願っていた。
止めることは……ーー出来なかった。
とある病室の一角で。
私ーー高坂穂乃果と、西木野真姫ちゃんは、互の目線を合わさないまま、ぼそぼそと聞こえるか聞こえないかの声で話をしていた。
「本当に、それでいいの穂乃果」
「……うん」
「本当に、それはにこちゃんの願いなの」
「……うん」
「……なんで、何も教えてくれなかったの」
「…………うん」
「うん、じゃ分かんないわよ!!!!」
それまで潜めていた声と打って変わった金切り声と手のひらを力任せに机に叩きつけた音が静寂を破った。
「なんで、なんで穂乃果しか知らなかったのよ!なんで穂乃果は今まで黙ってたの!!!!」
「……それが、にこちゃんのお願いだったから」
「だからってこんなことってある!?私たちは……穂乃果とにこちゃん以外のμ’sのみんなは、にこちゃんが病気だったことさえ知らなかったのよ!?
こんな、こんな!!
ねぇ…っ、こんなことってある……?!
私たちは、にこちゃんが死んでから……穂乃果が、にこちゃんの日記を私たちが見てから、にこちゃんがもうこの世にいないことを知ったのよ……?」
ーーーー彼女は。
声を、瞼を、口を、手を。
ありとあらゆる所を震わせながら私を責めた。
分かってる。
行き場をなくした怒りがあることも。
どうしようもないくらいの悲しみがあることも。
それでも、私にはそうしなきゃいけない理由があった。
それは、あの本を読んだ真姫ちゃんーーううん、真姫だけじゃない。
μ’sのメンバーみんな、それは分かってるはずだ。
「ずるいわよ、穂乃果ばっかり……っ」
「……分かってる」
謝ったところで何の意味もない。
謝ったところでにこちゃんが帰ってくるわけでもない。
行き場のない思いだけが、ぐるぐる。ぐるぐる。
白い壁に薄汚れた床。
どこからか香る消毒液の匂い。
コツコツと響く足音。
ーーあぁ、もう何度目だろう。
全てが彼女を思い出させる。
私はメンバーの誰より彼女のそばにいた。
なのに、それなのに、記憶の中の彼女はいつだって笑顔だった。
『にっこにっこにー。…笑顔の魔法よ』
一番近くにいた私ですら笑顔の印象が強いんだから、他の人なんて尚更だろう。
……いつのまにか辺りは再び静寂に包まれて、ただただ真姫ちゃんの啜り泣く音だけがやけに大きく響いていた。
「……なんで、っ」
なんで、どうして。
なんで、穂乃果だけ。
どうして、私には言ってくれなかったの。
うわ言のように何度も繰り返される真姫ちゃんの言葉を聞きながら、私は手に持っている真っ白な……表紙に小さく"ありがとう"と書かれているノートをめくった。
とりあえずここまで
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