やすな「あぎりさん!」 (58)




やすな「ぎゃあああああああああああああ!」バリバリバリ






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432304572


やすな「」ビクビクッ

ソーニャ「……スタンガン機能付きボイスレコーダー、か」

あぎり「スタンガンと録音のボタンを間違えて押しちゃったようですねぇ」

ソーニャ「見ればわかる」

ソーニャ「……百歩譲って録音機にスタンガン機能を付けるのはいい」

やすな「あばあばば」ピクピク

ソーニャ「でも持ち手側が痺れるのはおかしいだろ」

あぎり「さあ、何ででしょうね」

ソーニャ「何でって……おまえが作ったんじゃないのかよ」

あぎり「作ったのはただの女子高生の女の子ですしー」

ソーニャ「じょしこっ……!作ったの素人!?」


ソーニャ「し、素人に作らせたのか!?」

あぎり「でも科学部ですし」

ソーニャ「ですし、じゃねーよ!何考えてんだ!」

ソーニャ「ったく……とにかく、そんな余計な機能はいらない」

あぎり「そうですか、残念」

ソーニャ「普通のボイスレコーダーでいい」

あぎり「わかりました。用意しておきますね」

ソーニャ「頼んだ」

あぎり「それじゃあ、そろそろ時間なので失礼しますね」

ソーニャ「ああ」

あぎり「何か申し訳ないんでその録音機はやすなさんにあげてください」

ソーニャ「……このスタンガンをか?」

あぎり「多分もう電力は残ってませんよ」

ソーニャ「多分?」

カガクチョップとのコラボかな?


やすな「う、うぅーん……」

ソーニャ「目が覚めたか」

やすな「わ、私は一体……」

ソーニャ「気を失っていたんだ」

やすな「ソーニャちゃんが仕事で録音機を使うとか言って組織から支給して貰えばいいのにまさか普通の電気屋さんの広告を見ていたから経費~経費~とか言っていつも通り煽っていた

所にあぎりさんが窓から入って来て、巻物型録音機やらデータ消去機能(自爆)付の録音機とか案の定はちゃめちゃな忍者風録音機を持ち出して話をややこしくしたところまでは覚えて

いる」

ソーニャ「……おまえにしては正確な記憶だな」

ソーニャ(電気ショックで頭よくなったか?)

やすな「あれ?あぎりさんは?」

ソーニャ「先に帰った」

やすな「あ、これ、あぎりさんのスタンガン機能付き録音機……」

ソーニャ「あぎりがおまえにくれるそうだ」

やすな「え」

やすな「……電気出る?」

ソーニャ「出ないだろう。多分」

やすな「多分……」


やすな「あ、そうだ。録音機。何か面白いの録れてないかな」

ソーニャ「何かって何だよ」

やすな「それを今から聞くんだよ。せっかちさんでちゅねー」

ソーニャ「…………」イラッ

やすな「再生ボタン」ポチッ

ソーニャ「録音されているとしてもおまえの悲鳴くらいだと思うが」

やすな「んー」

録音機『』ジー

やすな「……ダメ、ジーって音しかしないや」

ソーニャ「ジー……?それって再生されてるんじゃ……」


録音機『爆発マデ、アト五秒』


やすな「」

ソーニャ「」

録音機『四――』

やすな「え、何で……」

ソーニャ「す、捨てろ!早く!」

やすな「う、うわー!」ブン

ソーニャ「!」パスッ

録音機『二――』

ソーニャ「ちょ……!な、何でこっちに!窓から捨てろっつってんだ!」ブン

やすな「トース!」

ソーニャ「」ポスッ


ソーニャ「おま……!ふざけん――」

録音機『ピーッ』

ソーニャ「ふ、伏せろォォォ!」

やすな「ひぃぃ!」


やすな「…………」

ソーニャ「……?」

やすな「あ、あれ、爆発しない……」

録音機『ナンチャッテ』

やすな「」

ソーニャ「」


ソーニャ「殺す!この録音機殺す!」

やすな「やめて!私がもらった物なのに!」

ソーニャ「ハァ、ハァ……」

やすな「もー、落ち着いて、興奮しないでよ!」

ソーニャ「一番パニクってたくせに……」

やすな「いや焦り具合はどっこいどっこいだったと思うよ」

ソーニャ「……わ、私は冷静だった。冷静に身の安全を……」

やすな「ナンデコッチニー!フ、フセロー!フエェー!」

ソーニャ「オラ伏せろ!」ゲシ

やすな「あふん!ローキック!」

ソーニャ「ったく、あぎりめ。変なことをしやがって」

やすな「ソーニャちゃんは反応が過剰すぎだよ」

やすな「大体さ、あぎりさんがそんな爆発するものを寄越さ――」

やすな「…………」

ソーニャ「そんなもの寄越さない……なんてこともないと自分で言い切る前に悟ったな」



録音機『ビックリしたー?』

ソーニャ「再生が続いてる」

録音機『どうもー』

やすな「あれ、この声って……」

録音機『私ですー、あぎりですー』

ソーニャ「…………」

録音機『驚かせちゃいました?』

やすな「ホントビックリしたよ……これも忍法?」

録音機『名付けて忍法、音遁の術です』

やすな「あぎりさんって結構お茶目だよね」

録音機『うふふふー』

ソーニャ「……くそ、あぎりめ……この場から消えてまで空気をかき乱すか……!」

録音機『ごめんねー』

やすな「あれ、会話してる?」

録音機『録音なのに会話なんてできるわけないじゃないですか~』

やすな「だよねー」

ソーニャ「……ん?」


録音機『そういえばソーニャ、この間レンタルしたアレ、そろそろ返しといてね』

やすな「アレって?」

ソーニャ「秘密」

やすな「……人に言えないようなアレなの?」

ソーニャ「秘密」

やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「……はっ!」

やすな「わかった!アレが何なのか!」

ソーニャ「……言ってみろ」

やすな「うへへ、えっちなヤツでしょー、もう、ソーニャちゃんってばイヤらしー、スケベ!エロ金髪!」

ソーニャ「ふん!」ドスッ

やすな「えろすっ!」


録音機『では、ソーニャ。新しい物が用意できたら電話します』

やすな「新しい物?」

ソーニャ「仕事で使う録音機を用意してもらうんだ。もう忘れたのか、バカめ」

ソーニャ「しかし、さっきまでいたんだから録音なんてしないでそう言っておけば……」

録音機『全くですよね。二度手間』

ソーニャ「おまえに言ってんだよ!」

やすな「ソーニャちゃんが機械とお話してる……可哀想な子」

ソーニャ「ぬん!」ブン

やすな「だから投げないでよ!」ベチン

やすな「うわーん!私の録音機ー!今ので壊れたー!?」

ソーニャ「ふん」

録音機『ちなみに投げたりしても壊れません』

やすな「おお、流石日本製。ちょっとやそっとじゃ壊れないぜニヤリ」

録音機『いやあ、ただの忍具ですがな』

ソーニャ(作ったのは素人の女子高生だがな)


録音機『それではソーニャ、また後ほど』

ソーニャ「ああ」

録音機『よろしくお伝えください』

ソーニャ「ああ」

やすな「…………」

ソーニャ「……!」

ソーニャ(しまった。録音の音声があまりにナチュラルなもので、電話と間違えて返事をしてしまった。またバカにされる)

やすな「…………」

ソーニャ「ああ……えっと、ああ……」

やすな「…………」

ソーニャ「ああ……あ、何か、疲れたな」

やすな「…………」

やすな「ズルイ」

ソーニャ「は?」


やすな「ソーニャちゃんズルイ!」

ソーニャ「何だよいきなり」

やすな「前々からそう言えば私、あぎりさんに呼んでもらったことない!」

ソーニャ「前々から思ってたのか、今思ったのかどっちだよ」

ソーニャ「……ん?何、あぎりに呼んで……?」

やすな「私、今まであぎりさん、私のこと名前なり苗字なり、呼んでもらったことない!」

やすな「それではソーニャ、だって!」

やすな「フレンドリー!」

ソーニャ「…………」

やすな「だとしても、私、あぎりさんと知り合って結構経ってると思うんだけど……未だに呼んでもらったことない」

やすな「私、あぎりさんに嫌われてるのかな……?」

ソーニャ「…………」

ソーニャ「いや、あの……」


ソーニャ「つまり、おまえの名前を言っているところを見たことがない……ってことか」

やすな「え、誰が?」

ソーニャ「わかれよ。だから、あぎりが、おまえをだ」

やすな「イエス」

ソーニャ「……いや、割と言ってるぞ」

やすな「えー!?いつ?いつから?」

ソーニャ「具体的には七巻……」

やすな「は?何言ってんの?」

ソーニャ「……何を言ってるんだろうな。私は」

やすな「バカなの?」

ソーニャ「フン!」ゴス

やすな「きゃん!」

やすな「わ、わかった……ソーニャちゃんに殴られてその記憶が奪われてたんだ……」

やすな「そんなに私とあぎりさんの仲を裂きたいか!このヤンデレめ!」

ソーニャ「……話戻していいか?」

やすな「あ、うん」


ソーニャ「おまえのことなら何度か呼んでるぞ」

やすな「えー、覚えがないよ。本当に呼んでるの?適当言ってない?」

ソーニャ「……言われてみれば、おまえがいない時や気絶してる時でしか聞かないような」

やすな「…………」

ソーニャ「別に二人の時でもおまえの陰口とか言わないし、嫌ってはいないと思うが」

やすな「忍者だけに?」

ソーニャ「何が言いたい」

やすな「そっか、じゃあ、あぎりさん、私のこと嫌いじゃないんだね」

ソーニャ「……まあ、多分」

やすな「もちろんソーニャちゃんは私のこと」

ソーニャ「嫌い」

やすな「ツンデレ乙!」

へぇ、大人気漫画キルミーベイベーの7巻が発売されたんですね
これは買わなくては、明日書店に向かいます


やすな「あぎりさん、私のこと何て呼んでる?」

ソーニャ「何て?」

やすな「うん」

ソーニャ「別に一般人のおまえにコードネームとか隠語は用意してないぞ」

やすな「いやそうじゃなくて」

やすな「折部さんとか、やすなちゃんとか」

ソーニャ「……ああ、呼称の方か」

やすな「やすな殿とか、ヤスナ=サンとか」

ソーニャ「どこの忍者イメージだ?」

ソーニャ「あぎりはおまえのことを……」

やすな「隠語って何か卑猥」

ソーニャ「聞け」


ソーニャ「あぎりはおまえのことをだな……」

やすな「うんうん」

ソーニャ「や――」

ソーニャ(――ハッ!待てよ)

ソーニャ(やすなの手には録音機……)

ソーニャ(あいつがカメラを持った時のことを考えろ)

ソーニャ(恥ずかしいポーズや無様な姿を何度撮られたことか)

ソーニャ(もしここで「やすなさん」と言ってみろ)

ソーニャ(その手の録音機で録音してまたいつものように……)

ソーニャ(オウムの時だってそうだ。私の声の「やすなさん」をどうしたものか、想像に難くない!)

やすな「……どうしたの?ソーニャちゃん」

ソーニャ「……言わん」

やすな「ええー!?」


やすな「ちょ、何で言ってくれないの!?」

ソーニャ「言いたくない」

やすな「言いたくない!?」

やすな「言いたくないような呼び方って……」

やすな「――はっ!ま、まさか!」


あぎり『やすな君、ご機嫌麗しゅう』

あぎり『今日はやすなちゃんにどんな忍法見せようかなー』

あぎり『やすな、また来ましたよ』

あぎり『やすニャン、遊びましょう』


やすな「うへ、うへへへ……」

やすな(ど、どんなのでも萌えますなぁ!)クネクネ

ソーニャ「うわきもっ。何を想像してんだ?」


やすな(キモい……?)

やすな(もし、あぎりさんが私のことそう思っていたら……)

やすな(ソーニャちゃんが私の呼び方を言えない理由が、その辺のことだったら……!)


あぎり『今日もキモいのがいるんですね……萎えます』

あぎり『ソーニャ、いつもあのお馬鹿さんのとこに行って大変ですねぇ』

あぎり『またあのクソガキですかー?』

あぎり『今日もクマムシカモ女に忍法道具を買ってもらおー』

あぎり『ヤスナ=サン。カワイイヤッター!激しく前後する。wasshoi!』


やすな「あわわわわ……」ガクガク

ソーニャ「何を想像している?」

やすな「あ、よく考えたらソーニャちゃんがそんな気遣いするわけないから、そんな呼び方はしないか」

ソーニャ「……何かよくわからんがムカツク」イラッ


やすな「ねーねー、ソーニャちゃん。何て呼んでるのー?ねーねー」

ソーニャ「ああもううるさいな」

やすな「教えてくれてもいいじゃん!ケチ!」

やすな「じゃあいいもん。自分で調べる!」

やすな「手始めにこの録音機をあぎりさんの席に……」

ソーニャ「……おまえな」

やすな「でも私、あぎりさんの席の場所知らないや」

ソーニャ「それ以前に、バッテリーも容量も足りねえよ」

やすな「うーん、惜しいなあ。そこさえ何とかなれば……」

ソーニャ「そんなガバガバな作戦で問題がそこだけと思えるのが逆にすごい」


やすな「ソーニャちゃん、盗聴器ある?」

ソーニャ「ねえよ」

やすな「え、まさか私につけて……!?」

ソーニャ「つけるか!最初から持ってねえよ!」

やすな「なんだ、残念」

ソーニャ「その前に、あぎりに付けられるのか?」

やすな「…………」

やすな「何か無理な気がしてきた」

ソーニャ「ついさっきまで盗聴器さえあれば上手くいくと思っていたのか」

やすな「もー!文句ばっか言ってないでソーニャちゃんも何か案を出してよ!」

ソーニャ「なんで私が。イヤだ。面倒くさい」


やすな「そもそもソーニャちゃんが白状すれば済む話なのに」

ソーニャ「うるせえ」

やすな「じゃーいいよ!もう、自分で聞くから」

ソーニャ「ああそうしろよ。勝手にしろ」

やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

ソーニャ「……なんだ?人の顔見て」

やすな「いや……いつものパターンならそろそろマスクを剥ぎ取ってソーニャちゃんの中からあぎりさん出てくるかなと」

ソーニャ「……想像できてしまうのが恐ろしい」


やすな「あ、そうだ。ソーニャちゃん。あぎりさんに電話してみて」

ソーニャ「電話?」

やすな「うん」

ソーニャ「あぎりも暇じゃないんだが……」

やすな「ね、お願い。じゃないとあぎりさんの私の呼称が確定するまで何度も言う。毎日言う。朝から晩まで言う。一日千秋言い続けるー」

ソーニャ「四字熟語の使い方違うぞ」

ソーニャ「ハァ、仕方ない……」

やすな「やったー、どれどれ」

ソーニャ「コラ、人のケータイを覗くな。プライベートな番号も入っているんだぞ」

やすな「あ、私とあぎりさん以外にもアドレス帳に載ってるんだね」

ソーニャ「いるわ!色々と!」

ソーニャ「ったく……出るかな。あぎりも暇じゃないんだが」


やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

ソーニャ「…………」

ソーニャ「……でないな」

やすな「……今だ!」バッ

ソーニャ「何っ!?」


やすな「ふはは!隙あり!」

ソーニャ「こら!ケータイ返せ!」

やすな「これであぎりさんは……」


あぎり『もしもし、ソーニャ?』

『…………』

あぎり『もしもーし、ソーニャ、どうしたんですかぁ?』

『私ですあぎりさん!』

あぎり『え!?やすなたそ!?』

あぎり『――はっ!』


やすな「……と言った具合に、咄嗟に私の名前を呼んでしまうという算段です」

ソーニャ「いや、別にやすなの呼び方を隠しているわけじゃないんだが……」


やすな「おまけに、あわよくばあぎりさんをビックリさせることができる」

ソーニャ「させてどうする」

やすな「いつも驚かされて、何だか悔しいじゃん」

ソーニャ「…………」

ソーニャ(……確かに、そうだな)

やすな「そういうわけだから、ケータイ借りるよ」

ソーニャ(……あぎりの驚いた姿、新鮮だな)

ソーニャ(気にならないでもない……いや、気になる。あぎりのそういうところ)

ソーニャ「……仕方ないな」

ソーニャ「べ、別にあぎりの驚いた声が聞いてみたいとか、そういうわけじゃなくて、おまえが鬱陶しいから適当に付き合って満足させるってだけであって……」

やすな(ふ、チョロい)


やすな「…………」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

ソーニャ「……でないな」

やすな「あれー?」

ソーニャ「立て込んでるんじゃないか?」

やすな「今仕事中?」

ソーニャ「いや、普通に買い物だと思うが……」

やすな「買い物?ご飯?」

ソーニャ「いや、ボイスレコーダー……まあ、何でもいいや」

やすな「うーん、でないなー」

ソーニャ「またかけ直すか?」

やすな「んー……」


『もしもし』

やすな「!」

ソーニャ「!」

やすな(あ、でた!)

『もしもし?』

やすな(ふふふ、あぎりさん、電話の向こうでは困ってるかな?)

やすな(ここでソーニャちゃんのケータイからソーニャちゃんでなく私が出てきて、あぎりさんは咄嗟に私の名前を……)

やすな(さあ、あぎりさん、私のことを何て呼んでらっしゃるの!?)

『やすなさんどうしたの?』

やすな「私です!やすな――」

やすな「……あれ?」

ソーニャ「…………」

やすな「あっれええええ!?」


やすな「あ、あぎりさん!?」

『どうもー。何かありましたかー?』

やすな「な、何でソーニャちゃんのケータイなのに、私ってわかったんですか!?」

『うふふ、わかりますよー。忍者ですからー』

やすな「いや理由になってないし……」

やすな「あー……もう、ビックリした。逆にビックリしたー……驚かせるつもりだったのに」

ソーニャ「……おい」

やすな「うん?」

ソーニャ「…………」

やすな「あ、代わる?」

ソーニャ「……おまえ、今あぎり何て言ったか聞いてたか?」

やすな「え、忍者ですからー」

ソーニャ「もっと前だ」

やすな「どうもー初めまして。呉識あぎりです」

ソーニャ「どこまで遡るつもりだ」


やすな「…………」

やすな「――ハッ!」

やすな「あ、あぎりさん!」

『はいー?』

やすな「今、私のこと、呼びましたか!?」

『はい?ええ、呼びましたよ』

やすな「何て?」

『やすなさん』

やすな「フゥー!」

やすな「フゥッ!フゥッ!フゥー!」

『?』

ソーニャ「うるさい」

ソーニャ「ケータイ返せ」バッ

やすな「あっ」

かわええ


ソーニャ「もしもし、私だ」

『ソーニャ』

ソーニャ「悪いな、変なことに付き合わせて」

『いいえー』

ソーニャ「それで、録音機の件だが……」

『はい、用意しましたよ』

ソーニャ「ああ、助かる。なら明日にでも……」

『いえ、これからお渡しします』

ソーニャ「え、今?」


ガタッ

やすな「!?」

ソーニャ「!?」


ソーニャ「い、今ロッカーから音が……」

やすな「ま、まさか……いつものパターンなら……」

ソーニャ「……いるん、だろうなぁ」

やすな「……あ、あぎりさーん」ガタン


やすな「……あれ?」

ソーニャ「い、いない?」

あぎり「何がですか?」

やすな「あぎゃあああああ!?」

ソーニャ「い、いつの間に後ろに!?」

やすな「で、でもこのパターンもあり得た!考えられた!」

ソーニャ「何でいちいちホラーめいた登場の仕方するんだよ!」


やすな「じゃあ今のロッカーの音は……」

ソーニャ「……気にしないことにしよう」

やすな「……うん」

あぎり「それはそうと、ソーニャ。はい、これ」

あぎり「新品の録音機です」

ソーニャ「あ、ああ……すまない」

ソーニャ「領収書は?」

あぎり「もちろん貰ってますよ」

やすな「領収書とるんだ……」

あぎり「経費ですからね」

ソーニャ「社会人として当たり前だろ」

やすな「忍者と殺し屋に言われた!」


やすな「そ、それはそうと、あぎりさん!」

あぎり「はい、何でしょう?」

やすな「ありがとうございます!」

あぎり「えー、どうしたの?」

やすな「私のこと、名前で呼んでくれて……」

やすな「やすなさん、かぁ……よかったー。ホッとしたー」

あぎり「……?」

あぎり「えっと、どうしたのー?」

ソーニャ「やすなの言うことだ。気にするな。いちいち気にしていたら気が持たないぞ」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「はい」


やすな「もっと私の名前を呼んでください!」

あぎり「えー、本当にどうしたの?」

ソーニャ「……いつもの思いつきだ。付き合ってやってくれ」

やすな「コールミー!プリーズ!」

あぎり「えっとぉ……」

やすな「わさわさっ」

あぎり「うーん……」

やすな「わさわさっ」

あぎり「…………」

やすな「あぎりさん?」

あぎり「……改めて呼べと言われると、何だか恥ずかしいですねー」

やすな「――!」


やすな「ソーニャちゃん!ソーニャちゃん!」

ソーニャ「え、この期に及んでまだ私に絡むのか?」

やすな「今のあぎりさん可愛かった!」

ソーニャ「……は?」

やすな「照れてる!あぎりさん照れてるよ!新鮮!」

ソーニャ「……ある意味ポーカーフェイスなもんで、恥ずかしがってるのかよくわからんが」

やすな「恥ずかしいって言ったもん!」

ソーニャ「……ああ、そう」

あぎり「仲良しさんですねぇ」

やすな「そこです!」

あぎり「えー?」

やすな「私とソーニャちゃんは仲良しさんって言われるような、それをあぎりさんともなりたいんです!」


ソーニャ「……あぎりが、呼んでくれないって言ったのが発端だ」

あぎり「えー、そうでしたっけ?」

ソーニャ「人の名前を呼べって言われて言うのにはちょっと恥ずかしいだろうが……」

ソーニャ「まあ、適当に付き合ってやれ。どうせすぐ飽きる」

あぎり「……私の無意識な行動が、やすなさんを傷つけていたんですね」

ソーニャ「いやそんなシリアスなことじゃないが」

あぎり「やすなさんの気持ち、伝わりました……この心に」」

ソーニャ「……あぎり?」

あぎり「彼女の愛を、熱意を、友情を、この一身に受け止めます」

ソーニャ「お、おい、あぎり?キャラがブレてるぞ?」

あぎり「……やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」


あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」

やすな「あぎりさん!」

あぎり「やすなさん」


ソーニャ「何だこれ」




やすな「う、うぅーん……」

ソーニャ「目が覚めたか」

 
 


やすな「あれ……わ、私は一体……」

ソーニャ「気を失っていたんだ」

やすな「ソーニャちゃんが仕事で録音機を使うとか言って組織から支給して貰えばいいのにまさか普通の電気屋さんの広告を見ていたから経費~経費~とか言っていつも通り煽っていた

所にあぎりさんが窓から入って来て、巻物型録音機やらデータ消去機能(自爆)付の録音機とか案の定はちゃめちゃな忍者風録音機を持ち出して話をややこしくしたところでスタンガン機能付の録音機でバリバリして気を失ったところまでは覚えて

いる」

ソーニャ「……おまえにしては正確な記憶だな」

ソーニャ(電気ショックで頭よくなったか?)

やすな「あれ?あぎりさんは?」

ソーニャ「先に帰った」

やすな「あ、これ、あぎりさんのスタンガン機能付き録音機……」

ソーニャ「あぎりがおまえにくれるそうだ」

やすな「え」

やすな「……電気出る?」

ソーニャ「出ないだろう。多分」

やすな「多分……」


やすな「…………」

ソーニャ「やすな?」

やすな「そう言えばソーニャちゃん。私、前々から思ってたんだけど、あぎりさんに呼んでもらったことない」

ソーニャ「前々から思ってたのか、今思ったのかどっちだよ……何、あぎりに呼んで……?」

やすな「私、今まであぎりさん、私のこと名前なり苗字なり、呼んでもらったことない!」

やすな「でもソーニャちゃんはあぎりさんに、ソーニャ、だって!フレンドリー!」

ソーニャ「…………」

やすな「……あぎりさんと知り合って結構経ってるのに……未だに呼んでくれない」

ソーニャ「……いや、割と言ってるぞ。呼んでいるかは知らないが」

やすな「えー!?いつ?いつから?」

ソーニャ「いや、いつからって言われても……」


ソーニャ「おまえのことなら何度か呼んでるぞ」

やすな「えー、覚えがないよ。本当に呼んでるの?適当言ってない?」

ソーニャ「……言われてみれば、おまえがいない時や気絶してる時でしか聞かないな」

やすな「……だよね。覚えないもん」

やすな「それで、あぎりさん、私のこと何て呼んでる?」

ソーニャ「何てって……何で」

やすな「何でってこともないんだけど。ね、ね、教えてよ」

ソーニャ「それはまあ、普通にさん付けだな」

やすな「え、なんて?」

ソーニャ「だから、普通にやすなさんって呼んでる」

やすな「へ、パードゥン?」

ソーニャ「やすなさんだっつってんだろ」

やすな「……ふふ」

ソーニャ「あ?」


録音機『やすなさん』

録音機『やすなさん』

録音機『やすなさん』

録音機『やすなさん』

録音機『やすなさん』

録音機『やすなさん』


ソーニャ「…………」

やすな「ふふふ」

ソーニャ「て、てんめぇ……!」


ソーニャ「消せ!」

やすな「やだぁー!」

ソーニャ「オラ、貸せ!」

やすな「返してくださいやすな様と言ったら渡す!」

ソーニャ「ふざけんな!」バッ

やすな「ひゃあ!いきなり抱きついてくるなんて、大胆ねぇんっ!」

ソーニャ「うるせえ!寄越せ!」

やすな「ああ!ちょ、離してよ!」

ピッ




やすな・ソーニャ「まだ電気残ってた!」バリバリバリ



―完―

乙!

やキ神


オチまでついて大変よろしかった

それにしても7巻発売してたのかへー
って先月やんけ!

     「 ̄|                               __,,
   [ ̄   ̄| ____ r‐┐ .「二二l ___  /`○○.r一'" _| ./`○○___
   [ ̄   ̄| | ||  L, !ニニi |___|.'′   \└┐ 「/   \.|___|
.     ̄|_「´└ ┘|__」 「二二l    \/\  ,> . |_| \/\  ,>
                           `          `'′

        .....-─-....._                 > `ー───‐- .  ___/|
      ..::::::::::::::::::::::::::::::::::::...            /  /           ` くノ\ノ}
    /::::::::::::::/::: ィ::::::::::::::::| ::≧=-        ∠/ /  / ィ   ∧ ii|     ヾ::: \
.    /:::::::::::::::::::i:::/⌒:::ハ:::::/、::::::\        /  i/  |i / |  / /、 ト、   i|ハ:::  \
   /:::::::::::::::::::/|ム=ミ、 }:/⌒:::::|::ハ      / / | /レ\|i /  xニニミ、  i| :::ト、:::   ゙
.、 /::::::::::::::::::/fんiハ   ィラミ |::: |:::i::ト、       |/ / | ハ ィ''弐|/  " r'ミハ j}  リ :::| ヽ:;ィ:i:i
ii\:::::::::γヽハ弋辷ノ    r'゚j } :::/:: |::| j}      |/Nii| ゙ Vリ     ゞ.シ /〆ヽ:/ /i:i:i:i
i:i:i:i:\::::{ ζi | ''  _  ' `¨,,∨:::: |/          /| ,,  ¨ ´     ''' / ζ丿/i:i:i:i:i:i:i
i:i:i:i:i:i:i:\ゞ _lリ  {::::::::::::::ア   爿::/               爪       _   /  r"/i:i:i:i:i:i:i/
丶i:i:i:i:i:i:i:i\>、. ゝ ::::::ノ  イリ:|/               / /` .         以 ̄i:i:i:i:i:i:i:i:/
.  \i:i:i:i:i:i:i}i:Y}\≧r‐ f升ハ/            / /   ` =‐r <://i:i:i:i:i:i:i:i:i/
.    \i:i:i:i:i:i:|:>ハイ≧..、                   ′     , ィf´Уi斗{:i:i:i:i:i:i:i/
      V/i:i:リi\i:i:Y⌒Ki:ヽ               | .′ γi刋7 /:i:i>i:iゞi:i:i:iィ
       ∨/:i:i:i:i:i\’, |i:i〉i:ト              | |  r‐i:/i/ /:/:i:i:i:i:i:iУ/
.      Yi:i:i:i:i:i:i:i:i\_|:/ii|i:i:i\            i 以'"i:iハ /:/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i′
.         |:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:Уi:i:|:i:i:i:i:i:\        У:i:i:i:i:i:|:i:iУ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i′
      !i:i:i:i:i:/:0:i:i:i:i:i! 、:i:i:i:i:i:\      /i:i:i:i:i:i>|i:i:i:i:i:i:i:i0:i:i:i:{:i:i/ij
         ゞi:i/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i0:|  \i:i:i:i:i:i〉  rくi:i:i:i:i:i イ   }:0:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∨ツ
.      {:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:う   \〆⌒y'⌒vi:/\\fi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\

オチが完全にキルミー

あぎりさんがやすなの名前呼んでたの知らんかった
俺の妄想が捗る

久しぶりにいいのを見た
遅めだけど乙やで

乙 面白かったしいい構成だ

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org331121.jpg
これ読んで思い出して7巻買ってきちまったぜ
良作執筆&宣伝乙(良い意味で)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom