貴方の私と私の貴方 (22)

タイトルミスやらかしたので建て直し。

地の文あり(練習中なので少なめ低クオリティ)

シリアス系だと思うので合わないと思った人はブラウザバックでお願いします。

短いので数日で完結します。長くとも今月中には終わる予定。

1つのシーンを2人の視点で進める感じの予定。あくまでも予定

暖かい目で見て頂ければ幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432202457

-提督の決断-

「大淀、敵の進行状況は」

「依然として進行中です」

深海棲艦との戦いが始まってはや5年が経った今日、遂に深海棲艦が陸へと攻めて来た。
いつか攻めてくるだろうとは思っていたが、それを迎え撃つには戦力も資材も足りなかった。

「第七艦隊、反応ロスト」

「他の艦隊は」

「撤退戦を強いられています。あと30分も続ければここまで辿り着くでしょう」

「ここを破られるわけにはいかない。俺達が守る存在のためにも」

「…わかっています」

「できるだけ時間を稼げ、他の鎮守府に応援は要請してある」

「了解しました」

「あと45分、横須賀の主力がやってくるまで耐えてくれよ」

「提督、姫級の反応を確認しました」

「数は」

「7です」

「多いな」

「ええ、どうしましょうか」

勝てるはずも無いような戦いに焦っているのがわかる、しかしここで焦っては全て無駄になる。沈んだ艦娘の犠牲も、それだけは避けたい。

『提督』

「どうした榛名」

『姫級は榛名達第三艦隊に任せてください』

「しかし数は多いぞ」

『関係ありません。やってみせます』

「しかし」

『提督、提督は一言言ってくださればいいんです。必ず帰ってこい、と。そうすれば榛名達は必ず提督の元に戻ります』

「…榛名、必ず帰ってこい。第三艦隊全員連れて」

『榛名、了解しました』

「…必ずだ」

『私が提督との約束を破ったことがありましたか?』

「そうだな…あぁ…」

『では、第三艦隊。参ります』

榛名も、俺も、第三艦隊も、わかっていただろう。姫級7体を相手に取るとどうなるか。
俺はあいつらに死にに行けと言ったようなものだ。全く、本当に救いようのないクズだ

「提督、第四艦隊、第五艦隊の反応もロスト。第六艦隊も孤立し、囲まれています」

「第二艦隊を第六艦隊の支援に回せ。第一艦隊を含め全艦隊後退だ」

「しかし、これ以上は」

「今下がらなければ残りの艦隊全て失いかねん」

「わかりました、ではそのように」

「あぁ、頼む」

敵の数は圧倒的。こちらの5倍程度はいるか。そんな相手に俺は戦い抜けるのか

「提督、第二艦隊より報告。第六艦隊の救援に失敗。第六艦隊の反応ロストです」

「第二艦隊と第一艦隊を合流させろ」

「了解」

九あった艦隊とその他遊撃隊は第一、第二艦隊を含め全て全滅。酷い戦いだ。

「提督、私も出ます」

「……大淀」

「提督、言ってください。俺の為に死ねと、守るべきものの為に戦って死ねと」

大淀は出撃すれば死ぬ事をわかっている。それなのに、出撃をしようとする。守るべきものの為に、執務室に籠って指揮をするだけの俺とは違う、力を持っているから。心底羨ましい

「早くしてください。私の決心を鈍らせないで」

「……大淀、俺の為に、守るべきものの為に死んでくれるか」

「…喜んで。軽巡洋艦大淀、出撃いたします」

「武運を祈る」

「また、会える機会があれば飲みに行きましょう」

「ああ、楽しみにしている」

思えば大淀とは誰より長い付き合いだった。鎮守府設立当初から今に至るまで、俺の秘書は常に大淀だった。そんな奴に死ねと告げるなど思ってもみなかった

「全く…救いようのないクズだな」

『提督、大淀さんと合流しましたがもう持ちそうにないわ』

「そうか、もう持ちそうにないか」

『ええ、もう無理ね』

「…済まなかったな」

『私達は貴方の為に、守るべきものの為に戦って死ねる。こんなに幸せな事はないわ、でしょう?』

「死ぬ事が幸せなもんか、お前らには平和な時代で本物の幸せを掴ませてやりたかったがな」

『いいのよ。これが私達の運命だから』

「そうか」

『これより第一艦隊及び第二艦隊は敵に対し特攻を行います。許可を』

「…許可する。今迄ご苦労だった。向こうで会おう」

『ええ、先に逝って待ってるわ』

「…すぐに行くよ」

「…第一艦隊、第二艦隊ロスト、か」

遂に鎮守府の全戦力は壊滅。後は上陸を許すのみになった。






「ここに来い。俺はここにいるぞ。」






続きは今日の夜か明日にでも。
やっぱり地の文難しいですね

-堕ちた旗艦-

「作戦の方はどうですか」

「手筈通りに進んでいますよ、神通さん」

「そうですか。ならいいです」

「…しかし、何故こちら側に付いたのですか」

「軽巡棲鬼、あの子はきっと沈んだ那珂ちゃんなんです」

そう、トラック島周辺で見た軽巡棲鬼には沈んだ那珂の面影があった。実際に戦ってわかった。あれは那珂だと

「違うという可能性は」

「有り得ません。それとも貴女は私を敵に回したいと?」

「いえ…純粋な興味です。私がこうして喋れるようになり、感情についても学びましたが何しろ感情を持つ深海棲艦など少ないものですから理解したとは言えないのです」

「そう、ですか。感情と言うの邪魔なものですよ。兵器には、不要な代物です」

心底思う。感情は時に自分の行動を鈍らせる。その結果、死を招く事もある。ならば、無い方がいっそいい、と。

「貴女は自分を兵器だと?」

「ええ、私は兵器としてしか生きる方法を知らないので」

「貴女の提督と言うものはそんなに酷かったんですか」

「…逆ですよ」

提督、私達の提督。私達を人間として扱ってくれて、私達と一緒に笑ってくれた人、泣いてくれた人、怒ってくれた人。

「では、何故兵器としての生き方しか知らないのですか」

「…知りたくなかった。兵器として以外の生き方を知って、提督の優しさに触れて自分が弱くなるのが、守りたかったものを守る力を無くすのが怖かった」

我ながらこんな事を言っている時点でもう弱くなってしまったと思う。けれど、これ以上弱くなる訳には行かないのだ、次こそ妹を守るために

「…そうですか」

「空母棲姫さん、そろそろ出て頂けますか」

「わかりました」

「提督を見つけたとしても殺さないでくださいね」

「わかっています。では」

「戦果を期待しています」

ああ、提督。貴方はきっと執務室にいるんでしょう。いつもと変わらぬように。そこで待っていてくださいね。




「私が、私の手で貴方は殺します」


難しいですね。
まぁ完結まで頑張ります。

これで一場面を2人の視点から見て、次の場面に移ることになります。ややこしいですかね

意見等聞かせていただけると幸いです。
では次回更新で

-死と愛と-

「久しぶりだな、神通」

目の前には見慣れた、予想していた人物がいる、本当はいて欲しくはなかったが

「ええ、お久しぶりです提督」

「俺を殺しに来たか」

「えぇ、貴方だけは、私の手で殺したかったので」

「そうだろうな」

今自分は笑っているだろう。死の恐怖に苛まれながらも、死を望んでいる。神通に殺されることを望んでいる

「何を笑っているのですか」

「やっと死ねると思うと嬉しくてな、それも神通の手で」

「私の手で殺されるのが嬉しいんですか」

「ああ、他の誰でもない、神通の手で殺されるのが誰に殺されるより嬉しい」

「それで貴方の罪が精算出来るとでも?」

「まさか、そんな訳がないだろう」

そう、今迄の自分の罪は死などでは精算出来ない。償うことすらできない大きな罪。
多くの艦娘を沈めた罪、そして神通をこのようにしてしまった罪。とても償いきれるものではない。

「では、何故私の手で殺されるのが嬉しいのですか」

「神通、お前が俺が唯一愛した相手だからだよ」

「奇遇ですね。私もそうでした」

「過去形、か」

「ええ」

「ならなぜそんなに悲しそうな顔をする」

自分の目の前にいる相手の顔は悲しそうな顔をしている。まるで那珂が沈んだ時のような。

「そんなことはありません」

「いいや、そうだね。俺にはわかるよ」

そう、神通を見てきた俺ならわかる。表情の変化、感情の変化が。

「…貴方に何がわかるんですか。那珂を沈めた貴方に何がわかるんですか!」

「俺も、那珂を沈めたくはなかった」

「今更言い訳なんて必要ありません。死んでください」

そう言って銃を構えた彼女の手は震えていて、一筋の涙が頬を伝っていた。

「…済まなかった、神通」

「私は、貴方を殺したい。なのに…貴方はまた私を鈍らせる」

「神通、俺はお前の事を愛している。心の底から」

最初で最後の本音。嘘に塗れた人生の中で唯一の誠。

「何をまたっ!」

「どうせ俺はお前に殺される。だから返事を聞かせてくれ、冥土のみやげに」

「そうやって、貴方は私達艦娘を惑わせた!」

「俺が想いを伝えるのはお前にだけだ神通」

そう、愛したのはお前だけだよ

「そんなこと、信じられるわけがない!そうやって命乞いですか!情けない!」


「ああ、確かに情けない。だが命乞いをしているつもりはない」

「なら!」

「お前の答えを聞かせてくれ。でないと俺は死ぬにも死ねないからな」

静寂な時がしばらく流れる。今すぐに殺すことだってできる、なのに神通は俺を殺さない。それには理由があるのか、それとも、違うのか。

「…愛しています」

「そうか」

これで、那珂や他の艦娘達への土産話は出来た。もう、いいだろう。しかし、最後はせめて…

「笑ってくれ、神通。そんなに哀しい顔をしていないでくれ」

そう言って神通の頬の涙を拭う。

「…それが望みなら」

手は払い除けられなかった。那珂が沈んだ時に同じことをした時にはすぐに手を払い除けられたが、今回はそうではなかった

「ああ、最後の望みだ」

「…わかりました」

そう言って、笑った彼女にはまだ涙の跡が残っていたけれど、俺にはとても綺麗に見えた。

「さようなら、私が愛した人」

「さようなら、俺が愛した人」

響きわたる銃声。ああ、愛した人の笑顔を見ながら死ねるなら幸せだ。意識が遠のいて行く。向こうに逝ったらあいつらに話をしてやろう、俺の初恋は叶ったと…

スレタイに【艦これ】って入れるの忘れてた…

やっぱシリアスに地の文は難しいけどいい練習にもなるかな、と思います。

意見感想良ければお願いいたします。
あと数日もすれば完結すると思います。

我ながら超短篇だなぁ…と思いつつ。
では

-憎悪と愛と-

「久しぶりだな、神通」

提督は、やはりいつもと同じ様に執務室のデスクに座っていた。

「ええ、お久しぶりです提督」

「俺を殺しに来たか」

「えぇ、貴方だけは、私の手で殺したかったので」

私の妹を殺した相手。復讐を願った相手。

「そうだろうな」

そう言って提督は少し笑った。何故この人は笑ったんだろうか。

「何を笑っているんですか」

「やっと死ねると思うと嬉しくてな、それも神通の手で」

「私の手で殺されるのが嬉しいんですか」

「ああ、他の誰でもない、神通の手で殺されるのが誰に殺されるより嬉しい」

「それで貴方の罪が精算出来るとでも?」

そう、死ぬ程度で精算出来る罪ではない。しかし、殺さなければ私はまた弱くなってしまう。

「まさか、そんな訳がないだろう」

「では、何故私の手で殺されるのが嬉しいのですか」

「神通、お前が俺が唯一愛した相手だからだよ」

「奇遇ですね。私もそうでした」

そう、昔この人を愛してしまった。そして弱くなってしまった

「過去形、か」

「ええ」

そう、私が提督を愛してしまったのは昔の話。今は憎悪と復讐の対象であり、最も殺したい相手。

「ならなぜそんなに悲しそうな顔をする」

一瞬目の前の提督が何を言っているかわからなかった。悲しそうな顔をしている?私が?

「そんなことはありません」

そう自分で言って気付いた。声が震えていることに

「いいや、そうだね。俺にはわかる」

何故、貴方に私の事がわかる。那珂は貴方の指揮の下、沈んだ。那珂は見捨てられた、救う手立てはあった筈なのに。

「…貴方に何がわかるんですか。那珂を沈めた貴方に何がわかるんですか!」

分かるわけがない、分かる筈がない

「俺も那珂を沈めたくはなかった」

今更言い訳を並べるな、本当に今更…

「今更そんな言い訳は必要ありません。死んでください」

そう言って銃を構えた私の手と声は震えていて、とても弾が当たるとは思えなかった。

「…済まなかった、神通」

何故今更謝る。何故、那珂が沈んだ時に言い訳も謝る事もしなかったのに、今更何故

「私は貴方を殺したい。なのに…貴方はまた私を鈍らせる」

そう、最初に引鉄を引けなかったあの時の様に

「神通、俺はお前の事を愛している。心の底から」

何を。そんなことは他の艦娘達にも言ってきたことだろう。


「何をまたっ!」

「どうせ俺はお前に殺される。だから返事を聞かせてくれ。冥土のみやげに」

言われるまでもなく私は殺す。今度こそ必ず。他の艦娘達のためにも、誰より那珂のためにも。

「そうやって、貴方は艦娘を惑わせた!」

私は惑わされない、今度こそ

「想いを伝えるのはお前にだけだよ神通」

そうやって、艦娘を惑わせて来たのか。そうして、殺したのか

「そんなこと、信じられるわけがない!そうやって命乞いですか!情けない!」

「ああ、確かに情けない。しかし、命乞いをしているつもりはない」

「なら!」

「お前の答えを聞かせてくれ。でないと俺は死ぬにも死ねない」

初めて見る提督の表情。戦闘中とも、そうでない時とも違う。初めての表情。
狡い人、そうやってまた私を惑わせるのか。
私の答えは出ている。昔から、変わらず。

「…愛しています」

ああ、また惑わされて弱くなってしまった…

「そうか」

そう言って浮かべた笑みはとても優しい物で、満ち足りているようだった

「笑ってくれ、神通。そんなに哀しい顔をしないでくれ」

そう言って提督は私の頬の涙を拭った。ああ、こんな事、前にもされた。その時には私はこの手を払い除けた。でも、今は払い除けることなんて出来ない

「…それが望みなら」

「ああ、最後の望みだ」

それが提督の望みなら、最後ぐらいは

「…わかりました」

そう言って笑った私の顔はきっと醜いだろう。笑えているかもわからない。
けれど提督は満足げな笑顔を浮かべた。
ああ、私は笑えているのか。

「さようなら、私が愛した人」

「さようなら、俺が愛した人」

銃声が響きわたり提督は血を流しながら地面に横たわる。殺した。私が、今度こそ。私が愛した人を、自分の手で。

「さようなら、提督」

もう動かない提督やなそう告げて私は執務室を、鎮守府から去った。

レスがついていなくても淡々と投下するスタイル

ではまた次回

-それがレゾンデートル-

「おや、目が覚めたかな」

「…どこだ此処は」

どうやらあの世ではないみたいだ。

「横須賀鎮守府だよ」

「…何故、俺は生きている」

俺はあの時神通に撃たれて死んだはずだ

「増援として駆けつけた時に、鎮守府を捜索していて倒れているのを見つけたんだよ」

増援、間に合わなかった増援か。

「…何故助けた」

「貴方には聞きたいことがあったからね。神通の事とか」

神通、俺の愛した相手。

「…話さないと言ったら」

「それならそれでもいいよ。でも、姉としては妹の事は知っておきたいかな」

姉、その単語を聞いて意識が覚醒していくのがわかる。

「川内、か」

「そう、横須賀鎮守府第一艦隊旗艦、川内型1番艦川内」

神通の姉、そして那珂の姉

「…済まなかった、那珂も神通も。俺には救えなかった」

「那珂の時の話は聞いたよ。あれは仕方ないと思うよ。むしろ最善を尽くしてくれてありがとう」

なぜ、礼を言われたのかわからない

「しかし救えなかった」

「でも最善は尽くしてくれた。それだけで充分だよ」

「…そうか」

「それと、今回、増援が間に合わず本当に申し訳ありませんでした」

「…いや、いいんだ。そちらはそちらで最善を尽くしてくれただろう。ありがとう」

自分で言ってわかった。先程川内が言っていたことがわかった気がした

「報告をすると、貴官の鎮守府の艦娘は神通以外全滅。神通は行方不明となっており、生き残ったのは実質貴官のみとなっています」

「…俺は多くの艦娘を沈めた。処分は何だ。死刑か、終身刑か」

生き残ってしまった。自分だけ、自分だけ。ただ一人だけ。

「処分はありません。代わりに鎮守府が再建された時にはもう一度提督になって頂きます」

「…また提督に、なぜだ?俺は多くの艦娘を沈めたんだぞ?」

「貴方の指揮能力はとても高く、平和を実現するためには必要との判断です。よってもう一度提督になって頂き、平和への道を歩いて頂きます」

艦娘を全員沈めた俺が指揮能力がとても高い?とんだ皮肉だ。

「断ると言えば」

「断ることはできません」

「それが貴方の贖罪です。私に対しての、世界に対しての」

世界に対しての贖罪とは川内もまた大きく出たものだ。しかし、川内への贖罪と言うならば受けなければならないだろう。悪いなお前ら、そっちに逝くのはまだ後になりそうだ。

「わかった、引き受けよう」

「ありがとうございます。あとこれは神通の姉としての頼み。あの子を、救ってあげて。どんな方法でもいいから」

「ああ、そのつもりだよ」

「ありがとう、じゃあ私は執務室に戻るけど何かあったら呼んでね」

「何から何まで済まないな、ありがとう」

「いいんだよ、じゃあね」

そう言うと川内は手を振りながら部屋を後にした。

「神通を救ってあげて、か」

どうやって救うか、自分の中でもう答えは出ていた。






「神通、俺がお前は殺す。他の誰でもない、俺が。そうして、救ってみせる」

そう、どんなに狂っていると言われようと、それが俺にとって神通を助けること。

神通の為ならなんでもやろう。どこまででも狂おう。






次回で完結。

レスがついてたことに何より驚いた。では次回

-叶うはずはない願い-

「提督…」

提督を殺してから、私は弱くなってしまったと思う。何故だろう。何にも身が入らない。

「神通さん」

「空母棲姫さん」

「貴女が貴女の提督を殺した日、何があったんですか」

私が提督を殺した日。復讐を達成した日。
想いを初めて伝えた日。

「私は、弱くなりました。提督を殺してから」

「何故ですか?貴女は提督を殺す事で弱くなることを避けていたはずでしょう?」

「ええ、でも、実際そうではなかった」

「常に予測不可能の事態は起こるものですよ、空母棲姫さん」

「その予測不可能な事態は、貴女の感情によるものですか?」

「えぇ、やっぱり、感情なんて必要ない。こんなに苦しいなら、ない方がよっぽどいい」

そう、この苦しみ。これが提督の残した傷跡、最後の抵抗だったのかもしれない、ふとそんなことを思う。

「…すみません、私には理解出来そうにありません」

「いいんですよ、私達にも感情は完全に理解することはできませんから」

そう、自分ですら、自分を完全に理解することすら出来ていない。

「…私から見て1つ、わかることがあります」

「何ですか?」

「貴女は悲しそうな、虚ろな目をしているように見えます」

「…確かに、そうかもしれません」

復讐は果たした。その代償に愛した人を失った。自分で選んだ選択。でも…

「こんな時には1人で考えてみる事も大切だと本には書いてありました」

「そうですね」

「だから、私は自室に戻っていますね」

「…気を使わせてしまってすみません」

「いえ、いいんです。貴女も私達の仲間なんですから」

仲間、もう私は艦娘ではない。深海棲艦。体こそ艦娘のままだが、もう私は深海棲艦。

「提督…」

もう、叶わない想い。叶わない願い。けれど、もし奇蹟が起きているとするなら

「私を、殺してください。貴方の手で、私が愛した貴方の手で、私を自由にしてください」

以上で完結です。
読んでいただいた方ありがとうございました。
機会があればまた違う物を書こうかと思います、その時はよろしくお願いいたします。

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