クリスタ「私が女神って風潮?」 (83)

エレン「俺が鈍感だという風潮」
エレン「俺が鈍感だという風潮」 - SSまとめ速報
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の続きです

読むのがかったるい人用に、大まかなあらすじ

エレンがコニー、サシャと仲良くなった

では投下します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1370130931


アルミン(わからない。なんだよこの状況は……)

アルミン(僕とミカサは馬の飲み水を交換するために、ほんの一時馬小屋から離れただけだ)

アルミン(で、戻って来たら——)

クリスタ「アルミンのせいなんだからなんとかしてよぉ!」

アルミン(困惑の表情を浮かべながら目尻に涙を浮かべるクリスタ、マジ女神)

アルミン(そんな彼女に向いて、祈るように顔の前で手を組み、片膝をついてるエレンとコニーとサシャ)

アルミン(馬たちもクリスタに頭を垂れているし、本当になんだよ、この状況)

アルミン(もっと言うと、なんで僕のせいになってるの?)

少し前の食堂


エレン「夕飯も食ったし、久しぶりにあいつらの世話をするか」

アルミン「久しぶりっていうほど間を空けてないけどね」

ミカサ「今日は訓練でも顔を合わせていない。エレンの顔を見れば、きっとあの子たちも喜ぶ」

エレン「あいつらが喜ぶかぁ?」

コニー「あいつらって誰だ?」

サシャ「今日、訓練を休んだ人っていましたっけ?」

エレン「人じゃねぇよ。馬だ馬」

サシャ「世話ってそういう事ですか」

コニー「なんでエレンたちがんな事するんだ? 今の世話係は別のやつらだろ?」

エレン「あいつらは足として俺たちに協力してくれてるんだ。少しでも労わってやりたいだろ」

アルミン「って、初めて馬術の訓練があった日にもエレンが言ってね。時々やってるんだよ」

コニー「めんどくせぇ事してるな。飯食ったばっかなんだから、のんびりしようぜ」

エレン「無理に誘ったりはしねぇよ。俺らが勝手にやってるだけなんだ」

サシャ「そんなわけで、コニーは男子の兵舎に戻って、一人でゴロゴロしてて下さいね」

コニー「俺だけ仲間外れかよ! ってか、サシャは嫌じゃねぇのか?」

サシャ「むしろ、なんで嫌がるんですか? エレンの言った事はもっともだと思いましたけど」

コニー「そりゃそうだろうけど……」

エレン「そんなわけで俺らは行くな。生活リズム合わせてんだから、先に寝るなよ、コニー」

アルミン「また後でね」

ミカサ「私は多分、また明日、になると思う」

サシャ「一人ぼっちで寂しく丸まっていて下さい」

コニー「行くよ! 行くから俺をぼっちにすんなよ!」


馬小屋


アルミン「今回は僕とミカサは飲み水交換の担当だね」

エレン「ん。俺たちはブラッシングしてるな」

サシャ「藁の交換はいいのですか?」

ミカサ「水を入れ替え終わったらみんなでする」

エレン「アルミン、ミカサ、そっちは頼んだぞ」

アルミン「うん」

ミカサ「任せて」

エレン「さて、ミカサたちが終わらせる前にこっちもやるか」

コニー「つっても、この数全部か? 流石に無理だろ、時間的に」

エレン「日を跨ぎながら順番にやってるんだよ。前はそこの馬までやったから、今日はその隣からだな」

サシャ「わかりました。では私はこの馬から」

コニー「俺はこいつにするか」

エレン「なら、俺はお前だな。ジッとしてろ——うわっ、やめろ! 顔舐めんな! のしかかるな!」

サシャ「エレンは馬に好かれてるんですね」

コニー「馬に押し倒されて、しかもあんなに顔を舐められたくはないけどな」

エレン「やめろって! お前らも助けろ!」

サシャ「そう言われましてもね」

コニー「俺らは俺らの馬の相手で忙しいし。おー、よしよし。お前は大人しくて良いやつだな」

エレン「裏切りもんがぁぁああ!」

クリスタ「騒がしいと思ったらやっぱりエレンだったね。今日はサシャとコニーもいるんだ」

サシャ「あれ? クリスタも世話係の当番じゃありませんよね? どうしてここに?」

クリスタ「この子たちのお世話をちょっと。いつも訓練で助けて貰ってるから」

コニー「エレンたちと同じ理由なんだな」

クリスタ「うん」

エレン「暢気に世間話してねぇで、助けてくれよ!」

クリスタ「ご、ごめんなさい。すぐに止めさせるから」

サシャ「……クリスタが指笛を吹いた途端、大人しくなりましたね」

コニー「ちゃんと飼い慣らしてるご主人様って風格があるな」

クリスタ「そ、そんな事ないよ」

サシャ「こっちは情けないご主人様ですね」

コニー「好かれ具合だったら負けてなさそうだけどな」

エレン「……てめぇら、あとで覚えてろよ」

コニー「サシャ、お前は覚えてられるか?」

サシャ「パァンを恵んでくれれば少しだけ」

エレン「お前らの記憶力を頼った俺が馬鹿だった……」

サシャ「とうとうエレンにも私たち側って自覚が芽生えたようですね」

コニー「遅ぇよ、馬鹿」

エレン「次の格闘訓練、楽しみにしてやがれ……」

クリスタ「エレン、いつもの事だけど大丈夫? はい、タオル」

エレン「悪い。助かったよ、クリスタ」

クリスタ「どういたしまして。ミカサとアルミンは?」

エレン「飲み水の交換に行ってる」

クリスタ「なら、始めたばかりだね。ここからは私もお手伝いするよ」

エレン「よろしくな……っと、そうだ」

クリスタ「どうかしたの? ……えっ? な、なにやってるの?」

サシャ「エレン、なんでクリスタに向かって祈ってるんですか?」

エレン「アルミンから聞いたけど、クリスタって女神らしい」

コニー「そうなのか?」

クリスタ「なんの事!? 私、神様じゃないよ!」

サシャ「やっぱりそうでしたか。私も前々からそう思っていました」

コニー「うーん。言われてみれば、ライナーも似たような事言ってたような」

エレン「他にも何人かが同じ話をしててな、クリスタに祈れば願い事が叶うんじゃないかと」

コニー「じゃあ俺も」

サシャ「折角ですから私も」

クリスタ「私、そんなんじゃないから! 本当に止めてよ!」

エレン「馬、お前らもなんか頼んどけ」

コニー「そもそも女神様に対して頭が高いぞ、馬」

サシャ「もしかしたら美味しい物が食べれるかもしれませんよ」

クリスタ「あなたたちまで、なんで本当にエレンたちの言う事聞いちゃうの!?」

クリスタ「もー、そんな事しても意味ないってば!」

エレン「……」

コニー「……」

サシャ「……」

クリスタ「無言で祈らないで! 私はなにも叶えてあげられないから!」

ミカサ「……」

アルミン「……」

クリスタ「あっ、ミカサ、アルミン! 戻って来たなら、エレンたちの行為を止めさせて!」

ミカサ「状況が掴めない」

アルミン「僕もだよ」

クリスタ「アルミンのせいなんだからなんとかしてよぉ!」

エレン「……こんなもんかな」

コニー「俺も終わった」

サシャ「私なんか、十回も同じ事をお願いしちゃいました」

ミカサ「お願い?」

エレン「ほら、前にアルミンが言ってただろ? クリスタは女神だとか何とか」

アルミン「エ、エレン! なんでそれを本人に言っちゃったの!」

エレン「ダメだったのか?」

アルミン「ダメに決まってるじゃないか!」

エレン「でも、口止めされてなかったしなぁ」

アルミン(迂闊だった……。思わず呟いたところを聞かれたせいで、テンパって忘れてた)

アルミン(でもまさか、こんな事になるなんて想像もしてなかったよ)

ミカサ「エレンはどんなお願い事をしたの?」

エレン「願い事って口に出してもいいのか?」

ミカサ「私たちは家族。だから問題ない」

エレン「なら問題ないな」

アルミン(家族って便利な言葉だね。初めて知ったよ、そんな事)

エレン「今すぐ巨人どもが駆逐されますように、って」

クリスタ「無理だよぉ……」

アルミン(心中、お察しします)

エレン「コニーとサシャは?」

コニー「俺らはエレンたちの家族じゃないぞ?」

エレン「でも、仲間だろ?」

サシャ「仲間なら話すべきですね」

コニー「そうだな」

アルミン(仲間も便利な言葉だね。魔法の言葉ってこんなに身近にあったんだ……)


コニー「俺は背が伸びますように、だ」

クリスタ「出来るならやってあげるけど、出来ないってばぁ……」

アルミン(本当にね)

サシャ「私は、美味しい物をお腹いっぱいに食べられますように、と」

クリスタ「それなら叶えてあげられるかも。今度の休暇、一緒に街に出て、美味しいお店を探してみない?」

サシャ「私の心臓、クリスタに捧げます!」

アルミン(芋を握ってた時とは比べ物にならないほど綺麗な姿勢だね。でも安いね。食べ物と交換できるんだ、サシャの心臓)

クリスタ「うん、楽しみにしてて」

アルミン(満面の笑みを浮かべてるけど、別にクリスタが叶える必要なんて、霧散したガスの一粒ほどもないんだよ?)

エレン「大丈夫か? クリスタ」

クリスタ「ん?」

コニー「サシャのやつ、お前に奢って貰う気満々だぜ」

クリスタ「多分平気。少しだけど、兵として貰えるお金を溜めてるから」

ミカサ「サシャの胃袋は、侮らない方がいい」

エレン「……仕方ねぇ。俺のも分けてやるよ」

クリスタ「わ、悪いよ、そんなの」

エレン「いいって。どうせ金なんて持ってても使わねぇし。サシャと一緒にいっぱい食って来いよ」

クリスタ「エレンは来ないの?」

エレン「俺はトレーニングで一日使う予定だから」

ミカサ「私も一緒」

アルミン「僕もだね」

クリスタ「そうなんだ。みんな、すごいね」

コニー「ほんと、エレンたちは真面目だよな」

サシャ「エレンが残るって事は、コニーも残る事になるんじゃありませんか?」

コニー「って事は、一蓮托生のサシャも休暇返上トレーニングだな」

サシャ「しまった! 墓穴を掘ってしまいました!」

エレン「コニーとサシャは気にせず行けよ。ミカサやアルミンだって、無理に付き合わなくてもいいんだからな」

ミカサ「無理なんてしてない」

アルミン「そうだよ。僕たちはいつも一緒だったじゃないか」

ミカサ「エレンがするなら私たちもする」

アルミン(まぁ、僕かミカサが見てないと、エレンは倒れても続けそうだからね)

アルミン(心配だからストッパー役で付いているってのが理由の一つかな)

アルミン(それを差し引いても、エレンと一緒に壁の向こうを目指したいって気持ちは本当だけど)

サシャ「いい絆ですね……ぐすっ」

コニー「へっ、歳を食うと涙脆くなって仕方ねぇや」

クリスタ「今のやり取りを見ても、涙が出て来ない私って、おかしいのかな……?」

アルミン「コニーとサシャがおかしいだけだから大丈夫だよ、クリスタ」

クリスタ「そうなの?」

アルミン「うん」

クリスタ「よかったぁ……。そうそう、話は変わるけど」

アルミン「なに?」

クリスタ「私が女神って話、あとで詳しく教えてね」

アルミン「……」

アルミン(これは腹をくくれという事なんだろうか)

アルミン(いやいや、落ち着けアルミン・アルレルト。ここで今まで蓄えた知識を駆使しなくてどうする!)

アルミン(……よし、ライナーも巻き添えにしよう。うん、そうしよう)

エレン「なんだかんだ、結構中断しちまったけど、作業に戻ろうぜ」

サシャ「そうですね」

コニー「明日も朝早ぇしな」

ミカサ「持って来た水と交換して来る」

エレン「任せた」

ミカサ「うん」

クリスタ「ミカサ、手伝うね」

ミカサ「ありがとう」

アルミン(そして普通に作業を再開したエレンと愉快な仲間たち)

アルミン(どっと疲れが押し寄せてきたよ……)

馬のお世話終了


エレン「今日はこんなもんだな」

コニー「こういうのって、訓練とは違う疲れが出て来るよなぁ」

サシャ「走っているだけの時より、何倍もいい気分ですけどね」

コニー「それは言えてる」

アルミン「じゃあ、道具を片付けて、兵舎に戻ろうか」

クリスタ「それは私がやるから、みんなは先に戻ってて」

エレン「なんでだ? みんなでやった方が早いだろ?」

クリスタ「今日は遅れて来ちゃったから、そのお詫び」

ミカサ「別に約束していたわけじゃない」

クリスタ「それでも、なんか落ち着かないの。ねっ、お願い」

エレン「厄介事押し付けるわけだし、お願いするのは俺らの方だけど、本当に良いのか?」

クリスタ「うん。このくらいなら私もすぐ兵舎に行けるよ」

エレン「悪いな。なら頼む」

アルミン「ごめんね」

コニー「ありがとな」

クリスタ「エレンとアルミンとコニーはまた明日。ミカサとサシャは、また後でね」

ミカサ「待ってる」

サシャ「よろしくお願いしますね」

道具保管庫


クリスタ「よいしょ。これで終わりかな?」

ユミル「いないと思ったら、また馬の世話なんかしてたのかよ」

クリスタ「ユミル。私を探してたの?」

ユミル「クリスタが傍にいないと、涙で目が腫れてゆっくり寝てられないからな」

クリスタ「嘘ばっかり」

ユミル「嘘だけどな。にしても、本当に物好きなやつだな。わざわざ汚れ仕事を進んでやるなんて」

クリスタ「物好きだからね。それよりユミル、ちょっと相談があるの」

ユミル「どんな相談だ? 好きな男が出来たなんて言ったら、相手を削ぎに行くぞ」


クリスタ「もう、そうじゃないって」

ユミル「わかってる。それで、なんの相談だ?」

クリスタ「えっとね、私もエレンたちに協力したいの」

クリスタ「すごいんだよ。休暇も返上してトレーニングしてるんだって」

クリスタ「でね、私もなにか力になってあげたいなぁ、と思ったの」

ユミル「……」

クリスタ「それで、なにか私に出来る事を一緒に考えて貰おうと思って——ユミル?」

ユミル「……」

クリスタ「? どうしたの? 急に黙っちゃって」

ユミル「……また、いい事しようとしているのか?」

クリスタ「え?」

ユミル「ダメだ。私はクリスタの事は嫌いじゃない。けど、その考え方だけは、どうしてもダメだ。イラついてしょうがない」

クリスタ「な、なに?」

ユミル「なぁ、クリスタ。お前とあいつらとの関係って何だ?」

クリスタ「仲間だよ。同じご飯を食べて、苦しい特訓を一緒に乗り越える仲間」

ユミル「そこから違うんだよ」

クリスタ「……どういう事?」

ユミル「私たちはな、別に仲良しこよしの集まりじゃない。憲兵団、しいては内地って餌をぶら下げられて走る馬だ」

ユミル「しかも、その餌を食べられるのは十人って決まってる。その意味がわかるよな?」

クリスタ「……わかってる。けど、エレンたちは仲間だよ。仲間が望んでる事に手を差し出したらダメなの? 間違ってるの?」

ユミル「ああ、ダメだし、間違ってるな。まぁ、クリスタは女神様だから慈善行為もお手のものだろうけどな」

クリスタ「私は、私はそんなんじゃない……」

ユミル「今度は私が聞くぞ。……なんでクリスタは馬術の訓練で一位になってるんだ?」

クリスタ「兵士になるため。私はみんなほど優秀じゃないから」

クリスタ「だから、出来る事を精一杯やったら、一位になってた」

ユミル「おーおー、それは素晴らしい。でも、そのせいで落ちるやつだっている」

ユミル「仮にだ。私たちがここを卒業した時、十一位のやつは、馬術の順位が後一つ上だったら内地に行けたとする」

ユミル「そんなやつは思うだろうよ。お人好しのクリスタちゃんが手を抜いてくれればよかったのに、ってな」

クリスタ「私は、ただ自分の事で精一杯で……」

ユミル「なるほどな。なんにも考えずに競争相手を蹴落として、気まぐれで助けてるわけだ」

ユミル「男どもが女神って呼んでる女は、実の所、芋女以上に能天気ってか。笑いが止まらないな」

クリスタ「……」

ユミル「まっ、女神様は、せいぜいお馬さんのお世話でもしながら他人の夢を潰してな。私は先に戻って寝る」

クリスタ「……」

馬小屋


クリスタ「……ねぇ、私って間違えてたのかな? 私なんかがなにかをしたらダメなのかな?」

馬「……」

クリスタ(馬が答えてくれるわけがないよね……なにやってるんだろ、私)

エレン「あっ、やっぱりまだクリスタがいた」

クリスタ「エレン? それにみんなもどうしたの?」

コニー「こいつが大事な鍵をなくしたんだと。だから戻って来たんだよ」

サシャ「エレンも抜けてますよね」

エレン「俺のせいじゃねぇよ」

ミカサ「エレンは悪くない」

アルミン「ほら、前にもあったでしょ? エレンを気に入ってる馬が隠しちゃった事」

クリスタ「あの時、エレンはすごく慌ててたよね」

ミカサ「……?」

エレン「そりゃ、大事なもんなんだから慌てるだろ。ほれ、馬。黙って口を開けろ」

コニー「おっ、本当に馬の口の中にあった」

サシャ「よく飲み込みませんでしたね」

エレン「口ん中に入れて満足なんじゃないか? 舌触り的な意味で」

クリスタ「きっと、その鍵を盗んだら、エレンが遊んでくれるって覚えちゃったんじゃないかな」

エレン「嫌な愛情表現だな、それ。おい、馬。暇な時は相手してやるからもう盗むんじゃねぇぞ」

エレン「冗談抜きで大切な物なんだからな」

ミカサ「……クリスタ」

クリスタ「うん?」

ミカサ「なにかあった?」

クリスタ「なにが?」

ミカサ「さっきより表情が少し固い。気のせいかもしれないけど、無理をしているように見える」

クリスタ「そ、そんな事ないよ」

アルミン(言われてみれば確かに。本当に気のせいかもしれないって程度だけど)

アルミン「……ユミルと途中ですれ違ったよ。彼女となにかあった?」

クリスタ「ほ、本当になんでもないって!」

エレン「……」

コニー「……」

サシャ「……」

クリスタ「さ、三人とも私の顔を凝視しないで……」

エレン「頬が引きつってるな」

コニー「ユミルのやつがなにかしたって顔だ」

サシャ「間違いありませんね」

アルミン「いや、それは三人がクリスタに顔を近づけてるせいだよ」

エレン「ユミルになんて言われたんだ?」

コニー「仲間なんだから隠し事はなしにしようぜ」

サシャ「絶対にクリスタが言ったって言いませんから」

アルミン(なんだよ、三人のこの一体感は)

クリスタ「……じゃあ、ミカサに聞きたいんだけど」

アルミン(あっ、こんなのでも話してくれるんだ、クリスタ)

ミカサ「なに?」

クリスタ「ミカサは今の時点で主席確実って言われてるよね?」

ミカサ「そうみたい。あまり興味はないけれど」

コニー「言われてるっつうか、確定してるだろ」

サシャ「ミカサに一番近いライナーでも、追いつけそうにありませんしね」

エレン「俺はいつか追いつくけどな」

アルミン「いい子だから、エレンは黙ってようね」

エレン「わかった」


クリスタ「それでね、他の人に悪いとか、思った事ってある?」

ミカサ「……少し考えてみたけど、言っている意味がわからない」

クリスタ「その、ミカサは卒業時、上位十人に入るでしょ?」

クリスタ「そうすると、席は一つ埋まって、十人に入れない人が必ず一人出て来るから……」

アルミン「つまりクリスタは、ミカサがいなければ十位以内に誰か一人が入れる。その誰かに悪いと思う事があるのか、って聞きたいんだね」

クリスタ「うん」

ミカサ「なるほど。理解した」

クリスタ「それで、どう?」

ミカサ「問いに答えるなら、『どうでもいい』。それが私の答え」

コニー「実際どうでもいいよな。十位以内に入れないやつは、純粋に実力不足なんだから」

サシャ「最悪、開拓地でも最低限のご飯はありますからね」

アルミン「流石サシャ。最優先事項はご飯なんだね」

クリスタ「そう、なんだ……エレン。エレンにもちょっと聞きたいの」

エレン「……」

クリスタ「エレン?」

アルミン「……エレン、もう喋ってもいいよ」

エレン「よかった。このまま無視しなきゃいけないかと思って焦った」

エレン「で、俺に聞きたい事って?」

クリスタ「前にジャンと喧嘩してた時の事、覚えてる?」

エレン「どの日の事だ?」

サシャ「毎日ってわけじゃありませんけど、しょっちゅう喧嘩していますからね」

コニー「静かな日と半々だな」

クリスタ「ジャンを投げて、教官が来て、サシャが、その……」

サシャ「私はあの時放屁なんてしてませんから!」

コニー「くせぇんだよ、サシャ。近寄んな」

サシャ「ぶっ飛ばしますよ!」

エレン「あの時か」

クリスタ「うん。それで、私の記憶が正しければ、巨人殺しの技術が高い人ほど内地に行けるのはおかしい、的な事言ってたよね?」

エレン「そんな気がするな」

クリスタ「エレンのその意見には私も同感。もちろん、立体起動の技術を廃らせないようにするって理由は知っているし、納得もしてる」

クリスタ「でも、どうしてエレンは納得出来たの?」

クリスタ「ここにいる兵士の誰よりもエレンは向上心が高くて、巨人討伐に強い意識を持ってるのに」

クリスタ「空論に過ぎないけど、私がエレンだったら、心から受け入れる事は出来ないと思うの」

エレン「今でも納得はしてねぇけど、あの時ほど固執はしてないな」

エレン「ミカサと同じ答えになるけど、どうでもいい、が正直なところだ」

ミカサ「エレンとお揃い……」

アルミン「ミカサもいい子だから黙っててね」

ミカサ「うん」

エレン「でも、あれ? 俺はあの時、どんな風に納得したんだっけ?」

サシャ「welcome to this fool team♪」

コニー「この俺たちの元へようこそ♪」

サシャ「君は」

二人「fool boy.fool boy.fool boy.fool boy」

二人「いえーい!」

エレン「うるせぇ! ……あっ、思い出した」

サシャ「ちっ」

コニー「つまんねぇの」

エレン「オイコラ、両方聞こえてんぞ」

アルミン「コニー、サシャ。二人は馬鹿じゃないよね? だから口を閉じてようか」

コニー「しかたねぇな」

サシャ「わかりました」

クリスタ「エレンはあの時、どう思ったの?」

エレン「誰がどんな考えを持って、どんな事をやってても関係ねぇ。俺は巨人を駆逐するために強くなる」

エレン「だから、俺は怠けないし、得られる技術は全部自分のものにする。そんな感じだったはずだ」

クリスタ「そうなんだ。エレンらしいね」

エレン「それに、俺らは兵士だからな。感情任せに我儘吠えるガキじゃない」

エレン「そう思って、もう深く考えないようにしてる。実際、調査兵団に入る俺には関係ないしな」

クリスタ「深く考えないように、か。私は考え過ぎてるのかな」

エレン「それは知らねぇよ。俺はクリスタじゃないんだ」

クリスタ「もし、エレンが上位十人に入って、あぶれた人が、譲ってほしい、って頼んだらどうするの?」

エレン「そんなやつがいたら、開拓地に行け、ってぶん殴ってやる」

エレン「俺に順位を変更できる権利なんて、あるわけないけどな」

クリスタ「エレンもミカサも本当に凄いね。それに、とても強い」

エレン「そりゃ、俺もミカサも、クリスタよりは強いぞ」

アルミン「そういう意味じゃないよ、エレン」

エレン「?」

アルミン「うん、そんな反応するだろうなぁ、って思ってた」

クリスタ「ふふっ、本当にエレンらしい」

アルミン「話を戻すけど、僕たちは、クリスタがなにに悩んでいるのか、教えて貰わない限り、想像する事しか出来ないよ」

アルミン「ただ言える事があるとするなら、訓練で手を抜く事だけはしないで欲しい」

アルミン「立体起動も、対人格闘も、座学も。そしてなにより、クリスタが最も得意な馬術も」

クリスタ「……アルミン、どこまで気付いたの?」

アルミン「どこまでだろうね。僕は勝手にクリスタの質問の意図を推測して、妄想しているだけだから」

クリスタ「むぅ……今日のアルミンは意地悪だね」

アルミン(膨らませているほっぺにちゅーしたい……)

エレン「クリスタは訓練サボるつもりだったのか?」

クリスタ「そ、そんなことしないよ! ただ、私なんかが頑張ると、本当なら憲兵団に行ける人の邪魔をしちゃうんじゃないかって」

エレン「はぁ? お前、そんなこと考えてたのか?」

クリスタ「う、うん……」

エレン「んな事気にするなよ。お前が頑張って得をするやつはいるけど、損するやつなんていないんだからな」

クリスタ「得をする人がいるの?」

エレン「俺ら」

クリスタ「エレンたちが? どうして?」

エレン「時々、俺らに馬術を教えてくれてるだろ? クリスタがもっと上手くなったら、それを俺らがクリスタから吸収できるんだ」

エレン「ほら、得してるやつがいる」

アルミン「エレンの言う通りだよ。僕らは足を引っ張り合うために同じ場所にいるわけじゃない」

アルミン「助け合って、競い合って、そして立派な兵士になるためにここにいるんだ」

アルミン「結果、到達点は違うかもしれないけど、それを仲間って言うんじゃないのかな?」

クリスタ「……そうだね。うん、そうだよね」

クリスタ「私、頑張る。頑張って、馬術の一位だけは、誰にも譲らない」

クリスタ「ずっと一番にいて、みんなに色んな事を教えてあげられるように技術を磨き続ける」

アルミン「それがいいよ。僕も座学はなるべく教えてあげるから」

エレン「ミカサやアニには劣るけど、格闘なら俺も役に立つと思うぞ」

クリスタ「うん、ありがとう」

エレン「礼なんていらねぇよ。いつかは馬術でクリスタに追いついてみせるからな」

クリスタ「私だって、追いつかれないように努力するからね」

アルミン(うん、これでクリスタは大丈夫そうだね)

アルミン(あとはユミルの方か……まぁ、時間はあるから、なんとかなるかな)

アルミン(……ん?)

ミカサ「……」

コニー「……」

サシャ「……」

アルミン(忘れてた……)

アルミン(というか、黙ってて欲しいとは言ったけど、直立不動を維持してて、とは言ってないんだけどなぁ)


翌日 馬術の訓練後


コニー「あー、昨日は無言で立たされたから、肩がこって訓練に集中できなかったなぁ」

サシャ「話に入れない時間って、退屈だからすごく長いように感じましたよねぇ」

アルミン「本当にごめん!」

エレン「あいつら、まだアルミンの事責めてやがるのか」

ミカサ「実力で大人しくさせよう」

エレン「いいな。昔、近所にいた悪ガキどもみたいにヒネるか」

アルミン「お願いだから、それだけは本気でやめて……」

クリスタ「みんな、こんなところにいたんだ」

エレン「お疲れ。いつも通り、調子が良かったみたいだな」

アルミン「今日の成績も一位だったね、クリスタ」

クリスタ「みんなのおかげだよ。ありがとう」

エレン「なにもやってねぇぞ?」

アルミン「うん。クリスタの実力だよ」

クリスタ「お礼が言いたかっただけだから、あまり気にしないで」

コニー「まーた俺らはハブられてるぜ」

サシャ「どーせ私たちは、無言で突っ立ってるのがお似合いの人間ですから」

ミカサ「それ以上アルミンを苛めると、二人の体の一部がなくなるかも知れない」

コニー「ハハっ、俺たちがアルミンさんを苛めるですって? まさかまさか」

サシャ「えぇ、えぇ。私たちはアルミンさんを非常に尊敬している次第ですので」

エレン「あいつら、膝と声が震えまくってるぞ」

アルミン「触れないであげよう。——ん?」

エレン「なにか見つけたのか?」

アルミン「まぁね。エレン、ミカサ、そろそろ行こう。コニーとサシャも」

コニー「行くってどこにだ? 夕食まで、まだ時間はあるぞ」

サシャ「訓練機材も片付け終わって、今は完全に自由時間ですしね」

アルミン「いいから。じゃあ、クリスタ、また夕食の時にね」

クリスタ「えっ? 私は残されちゃうの? みんなとお喋りしたかったのに……」

アルミン(クッ、負けるなボクの精神……ッ! これはクリスタのためなんだ!)

エレン「あとでゆっくり話そうぜ」

クリスタ「絶対だよ。約束だからね」

エレン「ああ。んじゃ——って、どうやって真っ赤な涙を流してるんだ? アルミン」

アルミン「エレン、僕は耐え抜いたよ……」

エレン「? そっか」

クリスタ「一人になっちゃったけど、する事ないなぁ……」

ユミル「……よう」

クリスタ「ユミル……」

ユミル「今日も一位だったみたいだな」

クリスタ「うん。私、馬術の一位だけは、誰にも譲らないって決めたから」

ユミル「そのせいで、憲兵団に行けなくなるやつがいても、か?」

クリスタ「……まだ申し訳ない気持ちはあるよ。でも、だからといって、手を抜いて良い理由にはならない」

クリスタ「そう教えて貰って、私も深く考えない事にしたの。私は、なんでも叶えられる女神様じゃないから」

ユミル「そうか」

クリスタ「ユミルはこんな私じゃダメかな? 昨日までのように、仲良く出来ないの?」

ユミル「……」

クリスタ「……そっか。ごめんね、我儘言って」

ユミル「いや、違うからな。クリスタは勘違いしてる」

クリスタ「勘違い?」

ユミル「その……昨日はきつい言い方をして、えっと……ごめん」

クリスタ「……」

ユミル「……目を見開いて絶句するなよ」

クリスタ「だって、ユミルが人に謝るなんて……」

ユミル「お前、私の事をどう思ってるんだよ」

クリスタ「ごめんなさい」

ユミル「謝られた方が傷つくっての」

クリスタ「でも、なんでそんな心境になったの?」

ユミル「今朝——」


回想(明け方前)


エレン「よう、ユミル」

アルミン「おはよう」

ユミル「……なんでお前らが、女の兵舎の前にいるんだ?」

アルミン「ちょっと話があってね」

エレン「アルミンがお前に会うって言うから、なんとなくついて来た」

アルミン「うん。だから、エレンは静かにしててね」

エレン「わかった」

アルミン(だから、なんで指先まで伸ばして直立するのかな?)

ユミル「それで、話ってのはなんだ?」

アルミン「昨晩、クリスタと喧嘩したよね? いや、喧嘩って言うより、ユミルが一方的に、なにかを言ったのかな?」

ユミル「なるほど、クリスタはお前らにチクったってわけか」

アルミン「信じて貰えないかもしれないけど、クリスタからはなにも聞いてないよ」

ユミル「どっちでもいい。で、アンタは私にお説教でもしに来たのか?」

アルミン「ううん。ユミルって実は優しいんだなと思って」

ユミル「……は? 私が優しい? なに言ってんだ、お前」

アルミン「僕の推測だけど、ユミルはお人好しなクリスタの心配をしてたんだね」

アルミン「だから、他人より、クリスタ自身を優先させるような事を言ったはずだ」

アルミン「言い方が不器用過ぎてクリスタは落ち込んじゃったけど、もう大丈夫だよ」

ユミル「いや、ちょっと待て。本当に待て」

アルミン「早く仲直りするんだよ。僕が言いたかったのはこれだけ」

ユミル「こっちの話も少しは聞け!」

アルミン「そうそう、クリスタは今日の馬術の特訓も一位になると思うから、夕食前が狙い目だね」

アルミン「エレン、もう喋ってもいいし、動いてもいいから僕らの兵舎に戻ろうか。コニーも起きてると思うよ」

エレン「じゃ、着替えたらトレーニングを始めるか」

アルミン「うん」

ユミル「頼むから本当にちょっと待て!」

回想終わり


クリスタ「今朝、なにかあったの?」

ユミル「なんでもない」

ユミル(わざわざ言う事もないよな)

ユミル(にしても、あの野郎。人の心情を根っこを削いだらすぐ逃げやがって……くそっ)

ユミル(謝って仲直りしないと、私は無意味な道化になるだろうが)

クリスタ「?」

ユミル「とにかくだ。まぁ、これからも、頼む」

クリスタ「うん!」

物陰


アルミン「仲直りできたみたいだね」

エレン「あぁ」

サシャ「いい絆ですね……ぐすっ」

コニー「へっ、歳を食うと涙脆くなって仕方ねぇや」

アルミン(昨日も全く同じ事言ってたよね?)

ミカサ「私は涙が出て来ない。私がおかしいの?」

エレン「俺も」

アルミン「個人差だから気にしなくていいよ」

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