女神「どうやら魔獣の封印が解けてしますようです」(45)

占い師「そ、そういえばもう一つお聞きしたい事がありまして」

占い師「以前現れた際に、なんらかの術を用いて封印されたとあるのですが……」

占い師「現在、お世辞にも魔法学が発達しているとは言えないのに、魔獣を封印した術とは一体……」

戦士「ああ、それか……昔は大気や大地、自然が持つ魔力を元に力を得る魔方陣用いた術が発達していたんだ」

戦士「と言っても、魔方陣さえあればいい訳ではないし、書物だけで扱えるようになる奴は天才の域だ」

戦士「多くの優秀な術者は魔獣封印でその命と引き換えに役目を全うしたんだ」

占い師「それで今の時代ではその術が残っていないと……」

戦士「もしかしたら何処かに書物くらいはあるかもしれないが……焚き火の為の火一つでも相当な努力が必要だからな」

戦士「才能がなきゃコストパフォーマンスが悪すぎるし、敷居も高いってのが廃れた理由なのかもしれないな」



占い師「なるほど……歴史を調べると昔は今の魔法学以前に、魔力を物に込めて扱う研究が盛んだったのに」

戦士(ああ、俺らが潰したあれか)

占い師「それもピタリと消えてしまったので、神々が人間には不要な力であると全て排除しているのかと邪推してしまっていたので……」

戦士(ごめんなさいっ)

占い師「どうかなさいましたか?」

戦士「いや、何でもない」

戦士(そういえば今の魔法学は認めてるって事は人間が魔法を使う事を認めたって事かな)

占い師「それにしてもこれからどうなさるのですか?」

戦士「一般人と兵士が組んで戦う事になれば、何かしらのアクションがあるだろう」

戦士「その時に占い師が俺を軍のお偉方に紹介して欲しい」

戦士「後はまあ……適当に誤魔化すよ」

占い師「だ、大丈夫なのでしょうか?」

戦士「成るように成るさ」

……一ヵ月後
「やーーー!」ガンガン
「たーーー!」ガガガッ

戦士(だいぶ様になってきたかなぁ)

戦士(熟練度で言えば二百年前とは比べ物にならない)

戦士(が、今回は封印という事態の先送りは使えない。ここで全ての決着をつけないといけない)

弓兵「おー精がでるねぇ」

衛生兵「調練、順調?」

戦士「おう、見ての通りさ」

弓兵「しっかしこんな作戦で上手くいくのかい?」

戦士「封印中を襲うんだ。寝ぼけ頭に前回のダメージが残ったままだ」

戦士「十分に勝機はある……が半数は死ぬかもしれないな」

占い師「ええ?! そんな……!」

戦士「こればかりはどうにもならない……」

衛生兵「戦士、魔獣について詳しい?」

戦士「……前回の戦いで死んだからね」

弓兵「ああ……だからこんなに具体的な訓練だったのか」

弓兵「出撃が一週間後との事だが大丈夫なのか?」

戦士「もう基礎はマスターしているし、残すは本番かな」

占い師「なんか皆さん勝手に調練していますが」

戦士「いや、彼らは彼らなりに考えてやっているよ。攻め側があの手のこの手で攻撃している」

戦士「ぶっつけ本番に向けて、想定外の事態に対処できるよう予想外に慣れようとしているんだ」

占い師「意味があるのでしょうか? 相手は何倍も大きい魔獣なのですよ?」

戦士「正直無いだろうね。だが……前向いて歩くという事は大きな力になるんだよ」

「前衛部隊を六組に分ける。一組には7:3で盾と攻撃の役を分ける」

「攻撃は長槍に限る。剣が届く範囲に近づくのはただの自殺行為だ」

「三組ずつに別れて魔獣の両脇を挟み、一方が始めに攻撃する」

「魔獣は攻撃した方に爪で裂いてくるだろう。そこをすかさず盾役が受け止める」

「そこへもう一方が後ろ足や横っ腹を見せている魔獣に攻撃。今度はそちらに攻撃がいくだろうから盾役が受け止める」

「その間、絶えず弓部隊は攻撃し続ける事。味方への誤射に細心の注意を払え」

「氷のブレスを吐く際には必ず距離をとる。バックステップで引いたら魔法部隊を前面に押したて、魔力や火炎の壁でブレス受け止める」

「ブレス後、魔獣は突進をしてくるだろう。それを全組の盾が受け止めろ」

戦士「これを繰り返して魔獣の体力を奪い、倒すしかない」

占い師「……それを言った時、もう馬鹿にするレベルであしらわれましたよね」

弓兵「だろうなぁ……どうやって納得させたんだ?」

戦士「氷の塔の遣いだ、と言ってやったんだ」

衛生兵「氷の塔?」クビカシゲ

占い師「昔から言い伝えとしてあるのですよ。このシルバースノウの何処かに賢者が住まう塔がある」

占い師「そしてそこから世界を見守り、有事の際は人々に知恵や力を与える、と」

戦士「今でも残っていたおかげで面倒が減って助かった」

ザッザッザッ
弓兵「道はこっちで間違いないのかい?」

戦士「のはずだ」

「や、やってやるぞ!」
「震えてるじゃねーか」
「まあ気持ちは分かるけどな」

占い師「それにしても……なんで両側で三組なんですか? 全員であたった方が……」

戦士「確実に攻撃を止められる訳じゃないし、壊滅するか防げるかの二択って訳でもないからな」

戦士「基本、魔獣に攻撃が届かない、盾役で魔獣の攻撃に間に合わない者は支援に入ってもらう事にしてある」

衛生兵「負傷者の避難?」

戦士「他にも盾が損傷してしまった際には予備を前に出したりと大忙しさ」

「あんたらが討伐部隊か」ザッ

弓兵「ああ。周辺の狼は?」

「何とか片付いたぜ」
「しっかし大所帯だな」
「ま、あんだけでかいのが相手だ……これでやっと渡り合えるってもんなんだろ」クイ

占い師「ゆ、雪が盆地状に……あ」

氷狼「」ズウゥゥン

衛生兵「おっきい……」

「マジかよ……あれ」
「俺オワタ」
「何言ってやがるんだ……俺はあれを盾で受け止めるんだぞ」

戦士「ここから先は自分は兵士と共に行きますので後をお願いします」

騎士「うむ、すまないな」

騎士「お前達! 今日まで調練してきた内容はなんだ!」

騎士「俺達が帰るべき場所を守る為、家族や愛する人を守る為……」

騎士「二百年前の災厄の終止符を我々の手で討つ為にここまできたのだ!」

騎士「臆するな! 我々の未来はこの先にあるのだ!!」

「お、おおーー!」
「そうだ! 俺は……俺達は英雄になるんだ!」
「やってやる……絶対に生きて帰ってやる!」

弓兵「中々な激励だね」

戦士「あの時の玉砕ムードに比べたら屁でもないさ」

騎士「総員、配置につけ!」

弓兵「弓部隊、配置完了」

衛生兵「魔法部隊、配置完了」

戦士「……」キョロキョロ

戦士「前衛、全六班配置完了」

騎士「総員の配置完了を確認。合図を」

戦士「衛生兵、火の手を空に」

衛生兵「火炎魔法・弱」ボオオォォ

「始まるのか」ゴクリ
「魔法部隊、爆破魔法撃ち方始めーー!」

ドドドド

氷狼「」ビシビシビシ

「まだだ! 撃ち続けろ!!」
「あの巨大な氷が割れたら……あいつが襲い掛かってくるのか」
「巨大な盾を数人がかり……どんな攻撃でも受け止めてやるって思っていたが」
「ああ……なんかもうこれがただの金属の板に見えてくる……だが、やるしかないんだ!」

氷狼「」ビキビキバキン

氷狼「」ガラガラガラ

騎士「盾を構えろ! 臆するな! 我々は勝てる! 我々が勝つ!!」

氷狼「……」キョロキョロ

氷狼「オオオォォォォォン!!」

「ひぃっ!」ビリビリ
「なんて咆哮……」ビリビリ

戦士「……」ブル

戦士「っ! 盾を持てっ!! 来るぞ!!」グッ

「走っ、来た、来たぁっ!」
「や、やってやる! やってやるぅ!」

氷狼「ガウ! ガウ!」ドドドドド

……
「二班、五班、六班壊滅! 離脱します!」
「右側、四班! 持ち堪えられません!」

騎士「……三班、1から4組は四班の援護に入れ!」

弓兵「これほどかっ」ギリギリ ビュン

衛生兵「救護隊、半数の魔力が底を尽きました」

「攻撃隊も全員の魔力が尽きるまで後十数分です」

騎士「十数分……? ハッ、それまで生きていられるか!」

戦士(……やはり、強いな)ギリ

戦士「……精鋭隊! 背後に回れ!」

騎士「な、おい……止めろ! まだ!」

「野郎ども! 特攻命令だ! 行くぞぉ!」
「どうせ全滅だ! 男上げてやるぜ!」
「へっへへ、いいのかい? どうしようもなくなったら、じゃないのか?」

戦士「このままではジリ貧になって全滅するだろう」

戦士「戦力が少しでも残っている今、俺達が捨て身になってでも魔獣の体力を奪う他無い!」

弓兵「本当に勝てるのか……戦士」ギリギリ ビュン

「ブレス来ます!」

弓兵「撃ち方止め! ……既に四半は回復が追いつかず戦闘不能。頼むよ……」


衛生兵「攻撃隊前へ! 負傷者は退避、早く!」

衛生兵「……戦士? あ、魔獣の……逃げて」


「は、はは……どーするんですこれ」コソコソ
「右手目の前に見えますのがブレスを吐く直前の魔獣でございまぁす」ガクガク

氷狼「ォォォォン」コオオォォ

戦士「隠密だ隠密……横向かれたらブレス直撃だぞ」

戦士(参ったな……ようやく回りこめると思ったら、バックステップで追いつかれるだなんて)

戦士(気づかれたら最後だ……ただでさえブレス吐かれたらタジタジなのに、こんな至近距離とか……)

戦士「うん? 待てよ? どうせ玉砕覚悟なら」

「ちょ近い近いっすwwwww」
「何近づいているんですかwwww」
「俺らオワタwwwwww」

戦士「総員、長槍構え」スッ

氷狼「ォォォォォオオオオ」ォォォオオ

氷狼「オオオオオオ!!」ゴオォォ

戦士「今だ顎を突き上げろ!!」ドッ

「どうにでもなれ!」ドッ
「さようなら俺の短かった人生ー!」ドッ

氷狼「ガッウウッ! グルゥゥ!」ギロ

戦士「やっべ、口が完全に閉まってない!」

「ひいいい! 退避! 退避ぃ!!」
「オワタwwwwwオワッタったwwwwwww」

氷狼「ゥゥゥオオオオォォ!!」

衛生兵「爆破魔法、照準、魔獣顔部、撃て!」ドドドド


戦士「右に行け!」

「はひぃぃぃぃぃ!」
「死ぬ! 死ぬ!」

氷狼「ぎゃいん!」ドゴォン

氷狼「きゃぅん!」ゴオオオオオ

「ブレス! 来た! ブレうひぃ!」
「顔が逸れたけど拡散してぇぇぇぇ!」

氷狼「ガウ! ガウ! ウウウ!」バタバタ

戦士「ぜえ……はあ」

「ひぃぃなんで生きてるんだ俺ら!」
「我らの主、水の神よ感謝いたしますっ!」

戦士(完全に塞げなかったとは言え、半開きの口からのブレス……)

戦士(原理こそ分からないが、大量の空気と共にブレスを吐く)

戦士(出口が少しは詰まっていたんだ。呼吸器系にダメージを与えられたはずだ……ここで何とか畳み掛ければ)

戦士「総員、攻撃開始!」

……
氷狼「クゥーン……」グッタリ

戦士「はあ……はあ……精鋭隊、状況」ドクドク

「三名負傷……移動に問題無し。二名……」フルフル

戦士「そうか……。騎士様、魔獣に止めを」

騎士「私がか? 君の方が……」

戦士「シルバースノウの代表としてここにおられる貴方がすべきです」

騎士「……分かった」シャラン

騎士「……許せとは言わんぞ」ヒュン

「おい、お前……大丈夫か?」
「勝ったんだな……俺ら」
「むしろ、生き残れたが正しいだろうな」

衛生兵「c班は前衛四班五班の回復を優先」

「a,b班全員魔力尽きました!」
「d班、残り僅か!」

衛生兵「d班は一斑を。a,b班は応急処置を三班、六班に」

騎士「……」

戦士「浮かない顔ですね」

騎士「勝利を喜ぶには……あまりにも失った命が多すぎる」ツゥ

戦士(それでも死者は四割未満に抑えたんだ……大勝利だよ、間違いなく)

占い師「せ、戦士さん……大丈夫でしたか?」

戦士「何とかな……」ブルル

弓兵「お疲れ様……本当にな」

衛生兵「よくできました」ナデナデ

戦士「いや、怖かったとかそういうんじゃないんだ……確かに怖くはあったけども」

戦士「叫びたいんだ……やっと……やっと皆の仇を……家族の仇を討てたんだ」

戦士「はは……こんな日が来るとはな」

弓兵「言い過ぎない程度だったら……叫んでもいいんじゃないか?」

衛生兵「誰も咎めないよ?」

戦士「おいおい……いくらこんな成りでももう二百年の時を越しているんだぞ」

戦士「少しくらいは……成長くらい」ブル

戦士「……」グッ

「あの人、凄かったな……」
「ああ……きっとあの魔獣の眷属に恋人か家族をやられたんだろうな」
「うぐっひぐぅ、やっだよぉ、俺ら、がっだんだぁ」
「貰い泣きしてんじゃねーよ」


弓兵「まだ耳鳴りがするのだが」キンキン

衛生兵「すっごい大声」キンキン

戦士「すまんな」スッキリ

ザッザッザッ
「必ずお前達も国に連れて行ってやるからな……」
「ああ……早く準備を整えて戻ってこないとな」
「ウォッカを持ってきてやるからなぁ……」


占い師「……あの、皆さんはこれからどうなさるのですか?」

戦士「……衛生兵達は?」

衛生兵「ロックケイブが難攻中」

弓兵「西に援軍だな」

戦士「そうか……俺は南、グリーングランドに援軍だ」

占い師「と、遠いですね」

戦士「いやそれよりも大変な事がある」ゴクリ

「戦士殿はどちらに?!」バタバタ
「一体何時から宿屋以外で寝泊りを?!」
「おい! 新兵が何人かいないんだが見なかったか?!」


戦士「急げ急げ! とっ捕まる前に逃げ出せ!」

占い師「そんな犯罪者みたいなっ」

弓兵「戦士、早く頼むよ」

衛生兵「急いでー」

占い師「あのー差し支えないようでしたらグリーングランドもお供していいでしょうか?」

戦士「ああ! えっ」

弓兵「なんだかんだで許可するんだな」

戦士「ちょ」

占い師「どうしました? 神々の遣いともあろう方が、まさか一度許可した事を覆すような事なさりませんよね?」

弓兵(何気に怖い子だね)

衛生兵(言質取った)

戦士「あぁ! クソっ! 来たきゃあ来い! 南の魔獣は俺も知らん! 巻き添えで死んでも責任持てないからな!」

弓兵「あーあー……ノリで返事したからに」

衛生兵「やけっぱち」

戦士「……」ガタゴト

占い師「わー! 私、シルバースノウから出るの初めてなんですよー!」

戦士「それはいいが本当に大丈夫なのか? 店もそうだが長期的になるんだぞ」

占い師「いいですいいです。私にはこちらの方がよっぽど大事です」

戦士「そ、そうか……」

占い師「そういえば……戦士さんは以前にも神の遣いとしてこちらの世界に来られたのですか?」

戦士「八十年前くらいだな」

占い師「……」

占い師「乱世一歩手前の時代ですよね……? あ、それを防いだっ?」

戦士「そーゆーこと」

戦士(……今のは喋りすぎだったな)ウーン

占い師「それにしても……グリーングランドの魔獣はどういったのかご存知ないんですよね?」

戦士「他の国の魔獣までは気にしていなかったからなぁ」

占い師「えっと……その、それで向かわれても、魔獣を倒す事ができないのでは?」

戦士「え? 倒すって?」

占い師「え? 倒さないんですか?」

戦士「いや……というか君は俺をなんだと思っているんだ?」

占い師「え? えーと……魔獣を倒せる方、的な」

戦士「あのなぁ……俺は娯楽の主人公じゃないんだ」

戦士「俺に出来ない事なんて山のようにあるし、何よりこちらに降りて来た神々に遣える者の一人でしかないんだ」

戦士「俺が行くのは飽くまでちょっとした援軍だ。それこそ魔獣討伐から雑用までだ」

占い師「えぇ?! そんなぱっとしない内容……」

戦士「ぶちまかしていいんだったら、シルバースノウの魔獣も俺達で処理していたさ」

占い師「あー……」

「魔獣? 巨大な大蛇だ」
「眷属は毒蛇なんだがやたらと数が多くてな」
「魔法部隊と弓部隊で大蛇を攻撃中だ。正直、俺達前衛の兵士は居住地の防衛だよ」

戦士「そんなもんさ」

占い師「うーわー」

戦士「……」トンテンカン

戦士「……」カンカンカン

占い師「せ、戦士さん……そんな柵作りに精を出されても」

戦士「いやいや、必要な仕事だからな」

戦士「なあ、この周りは堀作っておかないか?」

「作ってどうするんだよ」

戦士「落ちた蛇放置して弱ったところを毒抜けば食えるんじゃね」

「ちょ」

占い師「えっ」

戦士「蛇うめぇ」ムシムシ

「魔獣様様wwwww」
「魔獣封印しておけば飢饉時の食料問題解決するんじゃね」
「鬼才現るwwwwww」

占い師「えー……」

戦士「蛇はいやか?」

占い師「すみません……流石に狩人とかではないので」

戦士「そいつは残念だが食わず嫌いも良くないぞ」ムシムシ

占い師「あの……グリーングランドへは何しに来たんですか?」

「魔獣が最後の抵抗してるらしいぞ!」
「毒蛇の群れがこっちに!!」

戦士「バトルフォーク持ってこーい」

「突いてからめ取っちまえ!」
「侵攻を許すなよ!」

戦士「取った奴はこっちの穴に放り込んどけー!」

「今日は蛇パーティだーーー!」
「そろそろ漬けてた酒もいい塩梅だぞ」

占い師「……なんだろう。シルバースノウと比べてこの凋落っぷりは」

戦士「かんぱーい!!」カチャン

「「かんぱーい!!」」カチャーン

占い師「……」カチン

戦士「不満そうだな」

占い師「当たり前じゃないですか……何なんですかこのお祭り騒ぎ」

戦士「どうも魔獣自体は倒せたみたいだ。きっと首都も祭りをやっている最中だろうな」

占い師「今回は逃げ出さないのですね」

戦士「大した功績がないからな。最も、魔獣討伐に向かっていた仲間達はとんずらしたみたいだが」

占い師「はあ……」

戦士「もっと神の遣いの活躍見たかった、てか?」

占い師「それはまあ……当然じゃないですか」

戦士「活躍するのは人間達だよ。俺達はほんの手助けしかしないさ」

占い師「……」

戦士「まあ人間の尺度からしたらよく分からない話だろうな」

戦士「……ああそうだ。俺は後一時間しか居られないから」

占い師「へ?」

戦士「どうも魔獣討伐はここが最後だったみたいだな」

占い師「え? え? どういう事ですか?」

戦士「帰るのさ。その時にこの体は塵となるから跡も残らない」

占い師「そう……ですか……」

戦士「……今まで付き合ってくれてありがとう」

戦士「なんだかんだで君と過ごした時間は楽しかったよ」

占い師「いえ……こちらこそ貴重な体験をさせて頂きありがとうございます」

戦士「ここら辺でいいかな」キョロキョロ

占い師「他に誰もいらっしゃいませんね」

戦士「……おっと」ボロ

占い師「戦士さん……」グス

戦士「そんな顔をしないでくれ」

占い師「ですが、やはり寂しいものです」

戦士「仕方が無いさ……その為の俺達だ」ボロロ

占い師「また……何処かでお会い出来る事を願っています」

戦士「……願うだけならいいが、そんな事の為に自分の人生を蔑ろにしてはいけないよ」

占い師「はい……大丈夫ですよ。そんな戦士さんに顔向け出来ないような事はしません」

戦士「……」コク

戦士「あー……できればシルバースノウに送ってあげてからこうなりたかったが……そこは本当に申し訳ない」ボコボロロ

占い師「ふふ、そんな事はお気になさらないで下さい」

占い師「今までありがとうございました」ペコリ


兵;`;,;` . ブァ


;':'.` ;', ' . `


占い師「また……何時か何処かで……」グズ

……
女神「お疲れ様です」

従者「いやー……グリーングランドは気ままに暮らしただけでしたので何とも」

女神「え? 何かする事はなかったのですか?」

従者「眷属の毒蛇退治と居住区の防衛でしたので、基本は蛇を食べる生活でした」

女神「……蛇」

従者a「蛇っ?!」

従者b「や、野蛮人っ」

従者c「い、行こう皆。乱暴されるっ」

女神「あ、ちょ貴女達っ」

従者「わーぼっちが加速するー」

女神「貴方は間が悪いですね」

従者「俺の所為ですか?」

女神「全く貴方という人は」

従者「帰還のタイミング分かっているんですから人払いぐらいして下さいよ!」

従者「あれ? そういえば月の女神様に送ってもらったのに、戻ってくるのはこっちなんですか?」

女神「帰還先はこっちに定めておいてもらいました」

女神「帰還早々、向こうからこっちに来るのも疲れるでしょう?」

従者「ありがとうございます」

女神「それで、貴方としては今回の一件はどうでした?」

従者「叶わない清算ができたので……胸の支えがが取れましたよ」

女神「それなら良かったです」

女神「しばらくはお休みなさい。どんな内容であったにせよ、人間界に降臨するというのは心身共に負担になっているはずです」

従者「……前回もそうでしたがこのだるさは、魔法の副作用ではないのですね」

女神「当たり前です」

女神「もう人間の時とは違うのですよ……故郷であれなんであれ、人間界は異世界なのです」

従者「気遣っていただけるのはありがたいですが、死んで200年も経っていて人間である事への執着がある人はいませんよ」

女神「あら? 心配損ですか……それでしたら、休む前に一つ頼みたい事がありまして」

従者「はあ……」

女神「ロックケイブにとても珍しい花が自生しているとの話です。その種を……」

従者「それでは休ませていただきますねっ」バッ

女神「あ、こらっ」


   女神「どうやら魔獣の封印が解けてしまうようです」  終

乙乙
こちらに来てたか

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