モバP「桜吹雪と蝉時雨」 (38)

モバマスSSです。

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こんばんは。
お久しぶりです。

待ってたよ。

ロケ地

夕美「……ふぅ」

P「溜息を吐くと幸せが逃げるぞ」

夕美「幸せってなんだろうね」

P「哲学的だな…」

夕美「いやそんなに深い話じゃないんだけど」

P「ただ、断言出来るのは」

夕美「うん?」

P「杏が一番溜息を吐いてるってことくらいか」

夕美「それじゃ、その話は嘘ってことになるね」

P「そうか?」

夕美「だって楽しそうじゃん杏ちゃん」

>>3
古典シリーズです。

P「それにしても……」チラ

夕美「ん?」

P「…似合うと思う」

夕美「ふふっ♪ありがと」

P「あぁ、なんだか学生っぽい」

夕美「そりゃ、花も恥じらう学生ですから」

P「意外と言うな」

夕美「まっ、こんな時しか言えないしね」アハハ

P「そんなことないとは思うけどな」

夕美「さぁね」

夕美「んー。それにしても良い気候だよねぇ…程よい気温に心地よい風。それに桜」

P「なんか春って感じだな」

夕美「そうだね。私はさ、春が一番季節の中で好きなんだ」

P「いいよなー」

夕美「分かる?」

P「あぁ」

夕美「そっかそっか。あ、でも、Pさんのことだから夏も秋も冬も好きって言いそうだけどね」

P「まぁ、四季折々良い所があるからな」

夕美「そんなことだろうと思った」

P「毎日が楽しいぞ」

夕美「確かにそれはそうかもだけどね…」アハハ

夕美「……」ジー

P「ん?」

夕美「こうやってるとさ、生徒と先生みたいじゃない?」

P「確かに見えなくもない」

夕美「Pさんがスーツじゃなきゃなぁ…」

P「流石にスーツじゃないとな」

夕美「周子ちゃんの時とかは仮装したのに?」

P「…聞いたのか」

夕美「写メ付きでね」

P「悪いな」

夕美「流石にそこまでは言わないよ」

夕美「あ、それでさっきの話なんだけどね」

P「おう」

夕美「私のイメージだとね、生徒と先生だけど、まだ教室で顔合わせする前に会う感じなんだけど分かる?」

P「どういうことだ?」

夕美「なんか妄想を話してるみたいなんだけどね。おほん。Pさんは新しく赴任した先生です」

P「あぁ」

夕美「私は普通の学生です」

P「うんうん」

夕美「たまたま。そこはなんでもいいんだけど顔をお互い認識するの」

P「パンを咥えて曲がり角でぶつかったか」

夕美「…なんかとっても陳腐になった気がするけど…」ムー

P「悪い悪い」

夕美「まぁいいけど。それで――」

P「俺が赴任してきた時にお互い気づいてその後に二人だけでその時のことを話しているみたいな感じか?」

夕美「そうそう。さすがっ♪」

P「そこまで言ってくれたら分かるさ」

夕美「察しが良いのか、想像力が豊かなのか…」

P「夕美がそんなこと話すなんて珍しいな」

夕美「ま。この状況が非日常だからね」

P「確かにな」

夕美「さてと…撮影に戻らなくちゃだね」

P「そうだな。そろそろ休憩も終わる時間だ」

夕美「うん。頑張ってくるねっ!」



P(しかし、桜が綺麗だなぁ…)

P「志希の時も見てて思ったけど桜って何だか特別な感じがするな」

P「日本人の心なのかな?」

夕美「あっ、こんな所にいたんだ」

P「ん?休憩か?」

夕美「うん。次は衣装変えるみたいで今は私服だけど」

P「そういえばそうだね」

夕美「うん。そう言えばなにしてたの?」

P「一人で花見をしてた」

夕美「一人で?」

P「あぁ、邪魔しても悪いなと思ってな」

夕美「まぁ、今誰もいないしね…」

夕美(スタッフさんと見てたらそれはそれで変だし)

夕美「折角だし、一緒に見よっか」

P「そうだな。一人で何かブツブツ言ってると怪しい人だし」

夕美「独り言は不気味だから止めて欲しいんだけど…」

P「普段はしないぞ?」

夕美「ならいいけど…」

夕美「今まで物心ついてから毎年と言っていいくらいお花見してたんだけどね」

「あぁ」

夕美「Pさんと見る桜はいつもと違って見えるんだ」

P「なんでだろうな」

夕美「なんでだろうね。見てるものは一緒なのに。まぁ、場所とか種類が違うかもしれないけど」

P「そうだな。もしかして…いや違うか」

夕美「心当たりでも?」

P「いや、昔そんなことを言った人がいたなと」

夕美「誰?美嘉?」

P「ん。いや、泰葉」

夕美「ふーん。そうなんだ」

P「まぁ色々あった時にな」

夕美「あぁ、なるほどね」

P「それがどうしたんだ?」

夕美「別に?なんとなく思ったことがあってね」

P「どうした?」

夕美「アイドルも花も一緒だなぁって」

P「どういうことだ?」

夕美「綺麗に咲くためには太陽みたいな存在が必要だってことかな」

P「なるほど?」

夕美「まっ、分からないなら分からないでいいって」

P「悪いな。なんとなく言わんとしてることは伝わるんだが」

夕美「いいって。言ってること全部察されちゃっても困る時もあるしね」

P「そういうならいいけども…」

夕美「そうそう。ま。分かり易く言うとPさんは私にとっての太陽だってことかな」

P「なるほど…。分かった。夕美が綺麗に咲けるように頑張るな」

夕美「…ふふっ。ありがと」

夕美「あっ、太陽ってことは、近づき過ぎちゃうと火傷しちゃうからそんなに近づかないでね」

P「適切な距離はどこらへんなんだ」

夕美「んー、今ならまだ火傷してないからこれくらいがいいなぁって」

P[なるほどな」

夕美「そーいうこと」

夕美(今のままならそのままでいれるしね)

P「そういや夕美さ」

夕美「ん?」

P「月が出てる夜は別なのか?」

夕美「ん?」

P「ほら、満月だと吸血鬼に…」

夕美「なっ…!」カァァ

夕美「だ、だって…夜は太陽出てないじゃん!」

P「そらそうだ」

夕美「あ、あんまり遠すぎても意味がないんだって!」

P「そうかもな」

夕美「な、なんかちょっと癪だなぁ…」ムー

P「悪い悪い」

夕美「ま。桜が綺麗だから許してあげるけどね」

P「桜に感謝だな」

夕美「なんか座ってゆっくりしたくなってきたね」

P「言いたいことは分かるけどな」

夕美「あ、そうだ。今度皆でお花見しようよ。シート持っていって場所取って」

P「そうだな。少しなら時間合わせられるかもしれないしな」

夕美「だよね。それじゃ楽しみにしてる♪」

P「菜々さんとか楓さんがテンションあがってお酒とか飲み過ぎないといいなぁ」

夕美「さ、流石に平気じゃないかな…」アハハ

P「最初は遠慮してた菜々さんがあるタイミングで抑えが外れて…みたいなことがありそうな気もするけど」

夕美「ひ、否定は出来ないけど…」

P「なんにせよ考えとくよ」

夕美「ありがとね」

P「あ、でもなぁ…」

夕美「どうしたの?」

P「桜まだ咲いてるかなぁって」

夕美「あー……」

P「今が丁度満開ってことは一週間もしたらさ」

夕美「そうだね。ちょっと葉桜と言うか花が散っちゃうかも」

P「そう考えると短いな。桜って」

夕美「主役になれるのは一年で一週間って考えると寂しいね」

P「だから綺麗なのかもな」

夕美「というと?」

P「ほら、一年のパワーをこの一週間で使ってるって考えるとさ」

夕美「あ、なるほどね」

P「ほら、セミだってそんな感じじゃないか」

夕美「た、多分そんな感じな気もする」

P「どっちも咲いてたり、鳴いてたりする時はさ、まさかそんな一週間でそれが聞こえなくなるなんて思わないよな」

夕美「確かにずっと咲いてそうな気もするね」

P「諸行無常だな」

夕美「変わらないものはないって意味だっけ?」

P「そんな感じだった気がする」

夕美「折角だし、あっちの方も行ってみない?」

P「時間は?」

夕美「平気だって。他の事務所の子も撮影やってるみたいだし」

P「確かに…他の所のプロデューサーもいたなぁ」

夕美「他の事務所の子をスカウトするなんていくらPさんでもあり得ないだろうしね」

P「…そうだな」

夕美「…気持ち答えるまでに間があった気がするのは気のせい?」

P「気のせい気のせい」

夕美「そっか。それじゃ、この歩道に沿って歩いてみよっか」

夕美「~♪」

P「ご機嫌だな」

夕美「まぁね。こうやって花を見ながら歩くのは好きだし」

P「なんだか長閑だよなぁ」

夕美「こういう時は時間がゆっくり動いてる気がするよ」

P「不思議だよなぁ。時計とかないからか」

夕美「かもね」

P「なんだか、ちょっと曇ってきたな」

夕美「そうだね。ちょっと戻ろっか」

P「そうだな」

ポツポツ

夕美「あ、雨……」

P「そこの売店でちょっと雨宿りして、止まなかったら傘買うか」

夕美「そうだね」

売店

P「雨降ってるとさ」

夕美「うん」

P「アイスとか食べたくならないか?」

夕美「いや、別にそんなことはないけど…」

P「そっか。俺だけか」

夕美「今食べるなら一緒に食べたいけどね」

P「そうか。なら二つ買っておくな」

夕美「ん。ありがと」

P「ほれ」

夕美「ありがとー」

P「やっぱり美味いな」

夕美「なんかいいね~」

P「雨止みそうか?」

夕美「晴れ間は見えてるんだけどねぇ」

P「それならすぐ止みそうだな」

夕美「だといいね」

P「ま。アイス食べ終わってから考えよう」

夕美「うん。そうしよう」

P「こうやって雨宿りしてるとさ」

夕美「うんうん」

P「山の時のことを思い出すよな」

夕美「山の…?」

P「あれだ。夕美じゃない夕美が事務所来たって奴」

夕美「あ、あーっ…あの時はご迷惑を」ペコリ

P「そういう訳で言った訳じゃないんだけどな」

夕美「でも結果的に助けに来てくれたわけだし」

P「助けなくてもじきに雨は止んだと思うけどな」

夕美「あの時は割と心細かったので助かったよ。本当にありがとね」

P「さて、そろそろ傘買って行くかな」

夕美「そうだね。一本でいいよ勿体ないし」

P「そうか?」

夕美「うん。別にどうって訳じゃないし」

P「いや、太陽と…」

夕美「あ、雨の日は近くにいないとだからっ」

夕美(なんかやけにPさんに茶かされる気がする…)

夕美「それじゃ、ま。撮影頑張ってくるねっ」

P「あぁ、行ってらっしゃい」

夕美「……」ジー

P「ん?」

夕美「折角だし、撮影見ていってよ。他に見なきゃいけないアイドルの子居る訳でもないんだから」

P「そうだな。そうしよう」

夕美「えぇ、そうしてください」

ロケ地

夕美「この衣装どうかな?私としてはすっごく可愛いなぁって思うけど」

P「似合ってると思うぞ」

夕美「ありがと。あ、夕陽だー。綺麗…」

P「おぉ、綺麗だなぁ」

夕美「露に濡れた桜もいいねっ」

P「夕陽で露が光って見えるな」

夕美「なんか幻想的な感じ…」

P「そうだな」

夕美「多分、こんな感じの雰囲気で撮影なんてきっとないよね。それじゃ、この一瞬も逃さないように撮って貰わないと!」

P「あぁ、頑張ってこい」

夕美「折角だから、Pさんの目にもこの光景にいる私を焼き付けて置いてね」

P「お…分かった」

夕美「ふふっ。それじゃ行ってくる」



車内

夕美「お疲れ様」

P「おつかれ」

夕美「いやー、今日は本当に景色が良かったよね」

P「あぁ、晴れてる時も雨が上がった時も」

夕美「うんうん。そうだよね」

夕美「楽しかったなぁ…くぁ」

P「疲れたら寝ててもいいぞ」

夕美「ん。ごめんね…」

P「別にいいって」

P「今日の桜は綺麗だったなぁ」

P「最近仕事で桜を見る機会が多かったけど、全部違った趣があった気がする」

P(桜と言えば…木の下には死体が埋まってるとかって夕美に言ったら怒られそうな気がする)

夕美「……」スゥ

車内

夕美「……ん」

P「起きたか」

夕美「もう着くくらい?」

P「それくらいかな」

夕美「ごめん…」

P「疲れてるだろうし別にいいって」

夕美「…ありがと」

夕美「お昼にさ」

P「うん」

夕美「蝉と桜の話をしたじゃん」

P「したな」

夕美「アイドルも一緒なのかなぁとか寝ながら考えてたよ」

P「ん?」

夕美「一線で長く活躍するのが一番だと思うけど、一瞬ものすごく輝いてそれで終わりって言うのも悪くないのかなって」

P「アイドル辞めたいのか?」

夕美「あ、そう言う訳じゃないよ。まぁ、始まりはあんなのだったけど。今は楽しいから」

P「そうか。良かった」

夕美「ただね。アイドルだったらシンデレラに選ばれた時に引退したら見てた人の記憶にはずっと綺麗なままの自分がいるのかなって」

P「まぁ、桜は花が開いている時以外は誰の目にも止まらないだろうし、セミに至っては土の中だしな」

夕美「うん。ま。私がなれるかどうかはおいといてそういうものなのかなぁってちょっと思っただけ」

夕美「今まで溜めてた力をそこで一気に使い切って…みたいなね」

夕美「ちょっと寝惚けてるかも…忘れていいよ」

P「記憶の中で輝き続けるか。それも悪くないのかもな」

P「正直な話、アイドルだってなんだって流行り廃りがあるし、常にアイドルとして絶頂期を続けることは不可能だしな」

P「ずっとキャピキャピしたようなことが出来る訳じゃないし」

夕美「Pさんから見てさ」

P「うん」

夕美「私達…というか私だね。アイドルとしての相葉夕美は何分咲きくらい?それともまだつぼみ?」

P「つぼみってことはないさ…そうだな。2分咲きくらいじゃないか」

夕美「ってことはまだまだ耐え忍ぶ時期なんだね」

P「少しは花は開いたけどな」

夕美「7部8部咲きまでいきたいなぁ」

P「まぁ地道に頑張ろう」

夕美「そうだね」

P「どれくらいのレベルを夕美が想像してるか分からないけどさ」

P「誰かの中で輝き続けたら、アイドルだった相葉夕美さんを見てアイドルになりたいと思いましたって人が現れるかもな」

夕美「それはなんかアイドル冥利につきるね。花が種を落とす感じで」

P「そうは言ってもまだまだ夕美には辞めて貰っちゃ困るけどな」

夕美「そうなの?」

P「ファンだってついて来たんだし、俺は相葉夕美って花が満開になるところを見てみたい」

夕美「なるほどね。Pさんは面白いねやっぱり」クスクス

P「そ、そうか…?」

夕美「そうだって。あ、そうそう。花を綺麗に咲かせるには何が必要か知ってる?」

P「太陽だろ?」

夕美「今、太陽はないじゃん」

P「ありゃ、さっきと答えは違うのか」

夕美「今は私が求めてる答えは違うんだよねー」クスクス

夕美「正解はさー、愛情なんだ」

P「愛情?」

夕美「うん。花は愛情に応えて綺麗に咲いてくれるの」

夕美「つまり…そういうことっ♪」

終わりです。

読んで下さった方ありがとうございました。

次回からは普通に戻ります。

お恥ずかしい話で最近原稿を書いている関係上、更新が遅れてしまい申し訳ございません。

内容も期待に沿えるように努力したいと思います。失礼致しました。

簡単な解説です。

御存知の方も多いと思いますが桜をテーマにした俳句や短歌は非常に多いです。

桜は綺麗だなぁとか桜と同じように貴方を恋しく思っていますという内容もありますが、

桜が散るようにあなたは去っていってしまった、乱れ散る様は私の心も乱す。など反対の俳句や短歌もあります。

個人的にも使い易い題材だと思います。

蝉の方ですが、個人的には松尾芭蕉のイメージが強いです。

閑さや 岩に染み入る 蝉の声



やがて死ぬ 景色は見えず 蝉の声

など蝉を詠んだものがありますので。

それでは、失礼いたしました。

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