八幡「たとえばそんなメルヘン」 (77)

一.再び、比企谷八幡は独り立ち上がる



思えば去年は激動の年だった。

平塚先生の手引きで一人の少女と出会い、さらにそこから派生しもう一人の少女と出会った。

今まで登校時のあいさつすら交わさなかったようなやつらと多くの言葉を交わした。

二人の少女に勝手に夢を見て、二人の少女に勝手に失望した。

絶対に相容れるはずのない、唾棄すべき存在だったはずの人たちの想いを知ってしまい、それを否定することができなかった。

己の信念に従い行動した結果多くの人を傷つけてしまった。

多くの人たちに支え、助けられた。

自分という存在の矮小さを、歪みを、汚さをこれでもかと見せつけられた一年だった。

ただまぁ。

その、悪くはない一年だったとは思う。

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生徒からのさまざまな依頼に応え、一色いろはからのとんでもない生徒会案件を助け、平塚先生の職権濫用に付き合い。

年が明けてもやることは同じだ。

一人の少女の淡くも力強い恋心に応えた。

一人の少女の経費横領の片棒を担いだ。

それ以外にも数件の依頼をこなした。

今の俺たちが、俺たちの夢見る『本物』なにかどうかわからない。

わからないが、それでも一仕事終えたあとのお疲れ様の紅茶は美味しかった。

一仕事終えたあとの、下校時間までの部室の静かな空気が心地よかった。

ふとした時にひずみのようなものを感じることはある。言いようのない不安に襲われることもある。

それでも、俺は今の生活をそれなりに気に入っている。

だが、それは一体どんな理屈なのか。

平穏な毎日がまたも脅かされようとしていた。

誤:今の俺たちが、俺たちの夢見る『本物』なにかどうかわからない。
正:今の俺たちが、俺たちの夢見る『本物』なのかどうかわからない。

「おい」

俺個人からしてみれば激動の連続だった毎日もクラスの連中からしてみればそうでもないらしく、俺は変わらず一人だった。

世界の罪を贖い、世界の不幸を救済するという大天使トツカエルという奇跡との出逢いもあったが、大天使様は俺だけのものではないらしく今日はまだ声をかけられていない。

「おい」

戸塚のいない教室とはすなわち炭酸の抜けたコーラであり、チーズを抜いたチーズバーガーであり、おち○ち○のついてない美形ショタっ子なのである。

つまり、あれだ。つらい。

「ちょっと、無視すんなし」

「寝たフリして無視してんじゃねーよヒキオ」

椅子の脚に伝わる衝撃。

え?なに?もしかして今俺蹴られたの??

……えー俺を呼んでたのー?

はからずも呼びかけに無視をしてしまったため、机に突っ伏した顔をあげることに非常に抵抗を感じる。

いやだってしょうがないでしょ、三浦だよ?あの三浦由美子が俺に声かけてんだよ?

そんなわけないじゃんって思うでしょ普通?無視するつもりはなかったんだよ?本当に気付かなかっただけなんだってば!

「ヒキオ」

脚に伝わる衝撃。今度は椅子じゃなくて俺の。

あぁやだもう怖いなぁ。

「……なんだよ」

せめてもの無視してないよアピールとして寝起きの不機嫌な感じをアピール。俺なりの心遣い。やだ俺ってば小粋。

「いやそういう小芝居はいいから」

ソッコーで看破。顔を上げて2秒で看破。出会って2秒で合体かっつーの。

「ん」

「ん?」

いやいや、俺たちそんな仲良くないでしょ。

ツーカーの仲でもないし阿吽の呼吸を感じる仲でもないでしょうに。

そんな一言じゃなにも伝わらないよ。もっと積極的に言葉のキャッチボールしないと。

「あんたを呼んでくれってさ」

「……は?誰が?」

「あーしが知るわけないじゃん。本牧って名乗ってたけど」

本……牧……?誰だっけ?

「呼ばれてんだからさっさと行ってくれば」

「お、おう……」

にしても、伝令役によりにもよって三浦を選ぶのかよ本牧とやら。いい根性してんなお前。

「あー、あと」

「なんだ?」

「呼び出されたこと、結衣と雪ノ下さんには秘密にしといてくれってさ」

「……はぁ?」

「悪いな、寝てるところ呼び出しちゃって」

蓋をあけてみればなんてことはない。

「いや、別に構わんさ」

一色いろはを筆頭に運営される総武高校生徒会。その副会長だった。

……本牧牧人っていうのね。全然覚えてなかったよ。ごめんな。

「それで?なにか用があったんだろ?」

「ああ、そのことなんだが……今日の昼休み時間もらえるか?」

「?別に大丈夫だけど……」

「そうか、じゃあすまないが生徒会室に来てくれないか?」

「アポ取りに来たってことか?」

「そういうことになるね。じゃあ頼むよ」

「お、おおう……」

やだこれランチの誘い?人生初めてなんですけど。八幡ドキドキが止まらない。

「ちょっと相談というか……、その……聞いてほしいことがあるんだ」

ですよね。

「奉仕部に関する依頼ってことか?」

「いや、今回は君とだけ話がしたい。詳しくは後で話すからさ」

「……」

もうね、わかった。わかっちゃった。

顔がね、物語ってるのよ。

あれでしょ。面倒事なんでしょ。ハッチー知ってるよ。

「そういうわけだから、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんには気付かれないように頼む」

しかも超めんどいやつだわコレ。

……で、だ。

「悪かったね。わざわざ来てもらって」

副会長→わかる。

「じゃあちゃっちゃと説明しちゃいましょうかー」

一色いろは→わからない。

「待って、ちょっと待って。わからない。俺全然わからない」

「だからそれを今から説明するって言ってるじゃないですかー」

フグのように頬をふくらませて可愛く怒る一色。あざとい。

反射的に膨らんだ頬を指で潰しそうになるが、それは小町専用コマンドだということに気付き己を律する。

「いや、そういうことじゃなくてだな……」

「とにかく!本題に入りますよ先輩!」

戸部「隼人くーんww」
バニィD「隼人センパーイww」

八幡「人の評価なんて当てにならねえ」に通ずる痛々しさだあるな
読者の「なんでそうなるの???」感置き去りで突っ走ってるところとか

もしかして被害妄想系勘違い大袈裟SSってのが流行り始めてるのか?

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