提督「……」比叡「……」 (70)

比叡「……」

提督「……」

比叡「……」

提督「比叡」

比叡「」ビクッ

提督「どうして、執務室で正座させられてるか、わかるな」

比叡「……ハイ」

提督「……」

比叡「……」

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提督「……お前はたまにドジをする、それは知ってる」

提督「でもそれは一生懸命やった結果、そうなってしまった……だから、注意こそすれど、俺は怒りはしなかった」

提督「それに、比叡はいつも、頑張ってくれている。敵艦隊との戦いでは身を呈して空母や駆逐艦を守ってくれるし、そな火力で敵を打ち崩したのは一度や二度じゃあない」

提督「でもな、さすがに、今回は見逃すわけにはいかないんだ」

比叡「……」

提督「黙ってちゃ何もわからんぞ」

比叡「ヒエッ」

提督「なあ比叡、教えてくれ。なんであんなことをした……」

提督「お前のことを俺は良く知ってるつもりだった。この鎮守府に一番最初に来た戦艦として、ずっと、お互いをフォローしあってきた」

提督「俺の指揮ミスをお前がカバーして、お前の書類のミスを俺が直して……理想的な関係を築けていたと思った!でも、それは違ったんだな……」

比叡「ち、ちがいます!そんなことは!」

提督「だったらぁ!!」バン!!

比叡「っ」

提督「だったら……だったらなんで……なんで……!!!」ワナワナ

提督「なんで……よりによって……」



提督「お前が磯風に……料理を教えてしまったんだ……」

比叡「い、いや、その」

提督「お前がお召し艦だったことは知ってるよ!そりゃ知ってるさ!!料理の基礎はしっかり出来てることも知ってたよ!!ていうか普通にうまいよ!」

提督「で、変な隠し味で致命的なものを作ってしまうことも最近は抑えられるようになったのも知ってる!!なのに何故!!!磯風に教えてる時にそれを抑えられなかったんだ……!!!」

比叡「オ、オリジナリティーの追求というか~」

提督「だまらっしゃい!!」

比叡「ひええ!」

提督「せめて、せめて一言……磯風の頼みごとを聞いた時に、それを俺に教えてくれていれば……!!」

比叡「ご、ごめんなさい……」

提督「……最近磯風が、練習した料理を、俺に食べてくれって言ってくるのは知ってるよな……」

比叡「は……はい……」

提督「何も知らなかった俺は、前磯風の料理の練習に付き合うって、軽い気持ちで言っちまった……それからの惨劇はお前も知っているだろう……」

比叡「……はい」

提督「確かに磯風はいまいちだって自分で言ってたさ!でもあれはイマイチですらねえよ!!てか料理じゃねえじゃん!!何を血迷ってどこからか手に入れたかわからない深海棲艦の目玉を入れるんだよ!!あいつの作った焼きそばのような何かに水色に輝く瞳が転がってた時の俺の気持ちがわかるか!?」

比叡「あ、あれは焼きそばじゃなくてラーメンで」

提督「より悪いわ!!」

提督「しかもあいつ!不安そうな顔で『ど、どうだろうか……?』とか聞いてくるんだぞ!?」

比叡(声真似似てる……)

提督「まず!味見をしろ!そんでもってその仕草をやめろ!食べざるをえんだろうが!!そのせいで最近俺の味覚は11種類もの新たな味覚を開拓されたんだぞ!!」

比叡「す、すごい」

提督「いってる場合かーーーーッッッ!!これを見てみろお前!!」バッ

川内「」ピクピク

提督「夜戦明けで疲れて帰ってきた川内が磯風が調理中の台所に甘味を探し求めて入った結果がこれだ!!入っただけだぞ!?同じ空間に入っただけで頑強な体を持つ艦娘がぶっ倒れたんだぞ!?顔色真っ青だぞ!?」

比叡「それが原因でソファでずっとうつ伏せだったんですか……」

提督「その臭いの発生源の磯風料理を生身の人間の俺が食えってか!?死ぬわ!!」

提督「てかこんなこと言ってる場合じゃねえんだよ本当は!!この執務室の外から聞こえる絶叫がなんだかわかるか!?」

ウギャーーーー
アイエーーーー
タスケテーーー
カエレーーーー

提督「すでに料理の臭いが蔓延してて全員死屍累々なんだよ!!倒れてた川内を拾い上げて執務室に向かった俺と青ざめた顔で入ってきたお前以外全滅だぞ!?これから先俺らどうすりゃいーんだよ!!」

比叡「……」

提督「はぁ、はぁ、はぁ……」

提督「……俺も、鬼じゃない」

提督「この致命的ミスにより地に落ちたお前の評価を挽回するチャンスをやる」

比叡「そ、それは……?」

提督「……近いうちに磯風が俺に運んでくる、料理……」

提督「お 前 が 食 え」

比叡「」

比叡「ま、ままままま待って!!死んじゃう!死んじゃいます!」

提督「うるせぇ!自業自得だ!」

比叡「待って!やめて!アレ食べたら獣になっちゃいます!!」

提督「なんで上位者の血液精製してんだよ!?しらん!そんなことは俺の管轄外だ!!そのまま名状しがたいものになってしまえ!骨があったら拾ってやる!!」

比叡「いやぁーーーーー提督の鬼!悪魔!ちひろ!竹井!!」

提督「てめえ鬼さんと悪魔さんに謝ーーーーー」

コンコン……





提督「」

比叡「」

提督「……ど、どーぞ~……(震え声」

ガチャ

磯風「し、失礼する」

提督(あっ……目が……痛……)

比叡(さっきよりやばくなってる!?)ヒエエエエエエエ

川内「」ガクガク

磯風「あ、比叡さんもいたか……なら話は聞いているか?その、料理を教わってな……」

提督「お、おう、料理を……な……」

磯風「そ、それで、ぜひ提督に味見を……」

提督「」

比叡(姿が、姿が視認できない!!一体あの皿の上に何がのっているのか私には見えません!)ヒエエエエエエエ

川内「アイエエエエエエエエ」ガクガクガクガク

提督「い、いやじつはな、さっき比叡が今回指導した身としてぜひ試食役を譲ってくれと……」

比叡(ぎゃああああああああああああ!!!!)

磯風「そ、そうなのか?じゃあ……」

提督「……」



提督「いっていた、が、すまんな比叡。やっぱり俺に試食役をやらせてくれ」

比叡「え?」

磯風「え?」

提督(俺には、俺には無理だ……あんな絆創膏だらけの指で差し出された料理を拒否するのは、な……)スッ

提督「それでは、いただこうか」チャキ

磯風「あ、あぁ!召し上がれ!」ドキドキ

比叡(提督、貴方って人は……!!)ウルウル

提督「……」ヌチ

提督(ぬちって感触がしたな、未だ嘗てこんなに粘り気のあるものをスプーンですくったのは初めてだ)

スプーンの上のもの『ググググググ……』

提督(唸り声も聞こえる、ははは、イキがいいなぁ~)

提督(……匂いはもうわからんな、嗅覚が有休を取ったようだ)

提督(何よりこれがなんなのか未だに理解できん、スプーンの上のこれはなんなんだ、一体)

提督(……未練はある、だから未練はない。さよならだ、みんな……)



パクッ

比叡「てぇぇぇぇぇぇぇぇとくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

川内「アイエエエエエエエエエエエエエ!?」

提督「……」モグモグモグモグ

提督「……」ゴックン

比叡「あ、あ、あぁぁぁぁぁ……」

川内「」ガクッ

磯風「ど、どうだろう……」

提督「……」

提督「」ヌチッパクッ

比叡「えっ」

提督「……美味いな、これ」

比叡「ひえっ!?」

磯風「ほ、本当か!?」

提督「お世辞にも見た目は褒められんが、味は結構……うん……」パクパク

比叡「えええええええええ!?!?」

磯風「や、やった……!」

比叡(嘘を言っているような顔じゃないってことは……本当に美味しい?あんな殺人的な匂いで?あんな見かけで?)

比叡「……心配しすぎだったのかなぁ」ボソッ

磯風「何か?」

比叡「あ、いえ。提督、わ、私も一口いいですか?」

提督「だ、そうだが」

磯風「あ、あぁもちろん!」

比叡「では……」スッパク

比叡「」



ヒエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ
ェェェェェェェェェェェェェェェェ……………………



戦艦比叡、執務室に、没する

磯風「た、食べた途端動かなくなってしまった」

提督「うますぎて気絶したんだろう」モキュモキュ

磯風「そうなのか?」

提督「そうさ。ところでこれなんて料理だ?」モキュモキュ

磯風「あぁ、これはボルシチだ」

提督「……そうか」

提督(その後、比叡を連れて検査をしてもらった。比叡は三ヶ月は動いてはいけない重体らしい……特に毒が入っていたわけではなく、純粋に不味すぎて精神がトランスしたそうだ)

提督(何故俺は平気だったのか……妖精さんが言うには人類が感じえないはずの味覚があの料理を美味しいものと感じ取ったかららしい)

提督(そう、俺の舌は、磯風の料理で通常の五味とは全く別の11種類もの味覚を開発されていた。磯風が作った料理は、まさに俺だけが美味いと感じることのできる料理だったのだ)

提督(俺は、生き残ることができた……それも、すべては磯風が心を込めて作ってくれた料理のおかげなのかもしれない)

提督(そして……)



提督「磯風、どうか俺に毎朝、ボルシチを作ってくれないか」スッ

磯風「……勿論っ」

提督(俺と磯風はケッコンした。もしあの時、あのボルシチを食べる勇気を出していなかったら、また違う未来になっていただろう……)

提督「必ず、幸せにする……」ギュッ

磯風「はいっ……」

提督(俺は……幸せだ)

その後二人は、復帰した艦娘たちとともに怒涛の進撃を開始、瞬く間に多くの深海棲艦を撃滅する。
さらに、艦隊の中に紛れ込んでいたスパイをとらえ、情報を聞き出すといった功績もあった。この際尋問に使われたのは磯風の料理らしい。

戦争が終わった後は、山の上の小さな家で、余生を過ごしたそうだ……

嫁の料理の匂いで、被害が出ないように……



しかし……あの日ボルシチ事件以来、川内の姿を見たものは、誰もいなかった。
忽然と姿を消した川内の行方は、誰も知らない……










???「メシマズ、轟沈すべし」チャキ

前描いたやつ

刹那「エクシアとセクシアしたい」

次回作
グラハム「抱きしめたいなぁ!島風!」
乞うご期待(大嘘

じゃあ依頼してきまつ

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