提督「心が読めるインカム?」 (66)

提督「机の上に何かあると思えば……」

提督「くだらん。誰のいたずらだ?」

提督「こんなもので人の内面を知ることなど、できるはずが……」

提督「……」ソワソワ

提督「ま、まあ、試してみて損はないだろう」

提督「これを耳につけて、と」スチャ

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提督「さて、何が聞こえるか……」

大和「失礼します」カチャ

提督「ああ、大和」

提督「ちょうどいいところに」

大和(んああああああ!! 裸になりたああああああああい!!)

提督「……え?」

大和「はい、頼まれていた資料をお持ちしました」

大和(今日暑ぅぅぅぅぅい!! 蒸し暑ぅぅぅい!)

大和「本部からの手紙も添えております。目を通しておいてくださいね?」

大和(提督と海で泳ぎたーい!)

大和(もちろん全裸で!!)

提督「な、な、な……!?」

大和「提督? どうかしましたか?」キョトン

提督「い、いや、何でもないんだ……」

大和「はあ……」

提督(い、今のは何だ!? あの破廉恥な叫び声は!)

提督(声こそ大和のものだったが……この子はそんな子じゃないだろう!?)

提督(……いや、待てよ? 普段、禁欲的な人ほど、内に秘めた情欲は激しいと聞く)

提督(さてはそういうことなのだろうか……)

大和(んひー! 胸の谷間が蒸れてきたー! 気持ち悪ー!)

提督(ううむ……)

提督「なあ、大和。疲れているなら風呂に入ってきてもいいんだぞ?」

提督「今日は暑いだろう。汗を流してさっぱりしてこい」

大和「え? あ、染みとかできてました!?」アセアセ

提督「そういうことではないが……」

大和(じゃあ匂いの方か! 恥ずかしー!)

大和「ちょ、ちょっと失礼しますね」タタッ

提督「あっ、大和」

提督「……」

提督「うーむ」

提督「大和には悪いことをしてしまったな」

提督「人の秘密を盗み聞きするなど……」

提督「悪趣味に過ぎたな。これは封印しておこう」

??(んっふふっふっふ~♪)

提督「ん?」

提督「これは……誰の声だ?」

長門(にゃんにゃにゃんにゃにゃ~ん♪)

長門(いやあ、駆逐艦はやっぱり可愛いなあ。いっしょに出撃できてよかった)

長門(うむ、胸が熱くなるというものだ)

提督「……」

長門「失礼します」ガチャ

提督「あ、ああ」

長門「作戦海域の攻略、完了しました」

長門「褒章として、後日、本部から新装備が送られてくるそうです」

長門「何でも、イタリア製の超長距離砲だとか……頼もしいですね」

提督「そ、そうだな」

提督「ちょ、超長距離砲なあ。お前に装備させるか」ハハハ

長門(いやあああああああ!!!!)

提督「っ!?」ビクッ

長門「私に、ですか」

長門(もう大口径砲はやなのー!)

長門「そうですね。フィッティング次第ですが、試してみましょう」

長門(もっと可愛いのがいいー!)

長門「イタリア製は始めてですが……使いこなしてみせます」

長門(駆逐艦ばっかりズルイー! 長門も連装砲ちゃんがほしいー!)

長門(いやああああ! もう可愛くないのいやああああ!!)

提督「……」

提督「……い、いや」

提督「少し、考えさせてくれ」

長門「む? そうですか」

長門「それでは、私はこれで」

長門「失礼します」ガチャ

提督「……」

提督「も、もしかして、私が思う以上に」

提督「艦娘たちは闇を抱えているのかもしれない……」

提督「せっかくだ」

提督「このインカムを使って、艦娘たちのカウンセリングをするか」

提督「できる範囲でも、負担を減らすことができるかもしれないし……」

提督「とりあえずは明石に、戦艦用の三連装砲ちゃんの作成を頼んでみるか……」

~翌日~

提督「さて、食堂や寮の廊下に張り紙をしてみたが」

提督「果たして、どんな子がやってくるのか……」

??「失礼するでち」

提督「おっ、この声は」

提督「鍵は開いている。入ってくれ」

伊58「『不平、不満、お聞きします』の張り紙を見て来たでち」

伊58「不平? 不満? あるに決まってるでしょ!?」

伊58「潜水艦に人権をー! 潜水艦を休ませろー!」ウオー!

提督「そう来ると思った」

提督「まあ、潜水艦のハードワークは私も心苦しく思っていたのだ」

提督「新人も増えたし、哨戒任務のシフトの見直しをしよう」

伊58「えっ! うそっ!?」

伊58「ダメもとで言ってみたのに……」ワナワナ

伊58「やったー! やったよー!!」ウオー!

提督「ハハハ……」

提督(ふむ、他に悩み事はなさそうだな)

提督(いいことだ。いかにも心に闇がない)

提督(この調子で、ほどよく頑張ってもらいたいものだが……)

伊58(あ、あ、あ……)

提督「っ!?」ビクッ

伊58(これで……これ、で、休める……)

提督「ひっ!」

伊58「てーとく?」

伊19(……おおおん……おおおん)

伊8(ひ、ひ、ひひひひ……)

伊401(うええええん……)

伊168(もう、オリョクルしなくていいの……?)

提督(ひいい……! ドアの外からも恨めしげな声が!)

提督(こ、こんなにも負担になっていたとは……!)

提督「ゴーヤ! い、今まですまなかった!」

提督「さぞ疲れていることだろう。みんなといっしょに甘いものでも食べてくれ!」

提督「さ、さあ、間宮券だ。これで……」

伊58「え? え? え?」

提督「ゆっくりするんだぞ」ニ、ニコッ

伊58「えええええ……!?」

パタン

提督「……」

提督「く、ふっ……」

提督「私は何と罪深いことを……」ハラハラ

提督「提督業に慣れてしまうと、自分では気づかないものだな」

提督「この調子で、どうにか艦娘の不満を見つけたいものだ」

提督「ふー……さて、気を取り直して、次は」

??「私だ」ドンドン

提督「武蔵か」

提督「入ってくれ」

武蔵「提督よ、聞いたぞ」

武蔵「何でも、願い事を聞いてくれるのだとか」

提督「ん? 少し違うが……まあ、いいだろう」

提督「現状への不満があれば言ってみてくれ」

武蔵「そうか」

武蔵「なら、遠慮なく言わせてもらうが」

武蔵(ああ、今日もいいケツしてるなあ)

提督「……ん?」ゾワッ

武蔵(ズボンをむいてやって、主砲をぶちこんでやりたいぜ)

武蔵(きっといい声で鳴くんだろうな……ああ、やりてえ)

武蔵(逆でもいい。くそっ、この場で押し倒してやろうか)

武蔵「……とく? 提督!」

提督「ハッ!?」

提督「な、なんだ!」

武蔵「おいおい、ボーっとするんじゃないぜ」

武蔵(隙を見せられたら、襲いたくなるだろうが)

提督(ひいっ!)ゾワゾワ

武蔵「だから、先ほど言ったように、私も戦に出たいのだ」

武蔵「演習や大規模作戦だけでは物足りない。通常作戦でも、威風堂々と艦隊を率いて……」

武蔵「って、おい。やはり聞いていないだろう」

提督「そ、そんなことはないぞ! 出撃だな!?」

提督「私が許可する! 深海棲艦に、我が軍の力を見せつけてやるといい!」

提督「さ、さあ、そうと決まれば……」

武蔵「わっ、なんだ、押すな」

武蔵「話が早いのは助かるが……わ、わわっ!」

パタン

提督「……」

提督「その闇は、私にとっては深すぎる……!」ハラハラ

提督「日本が誇る46cm三連装砲で、私の尻をどうしようというのだ」

提督「めちゃくちゃになってしまう……そもそも、私にそんな趣味はない」

提督「夜のお相手ならやぶさかでもなかったが、少し特殊すぎたな」

提督「うむ……気を取り直して、次にいってみよう」

??「うちやー。入るでー」ガチャ

提督「おお」

龍驤「なんや、けったいなサービスを始めたみたいやなぁ」

龍驤「ようやくうちらの鎮守府も福利厚生に目ぇが向いたんやね」ウンウン

提督「そういうことになるのかな?」

提督「まあ、いいだろう」

提督「龍驤。お前、何か悩みがあるのか?」

龍驤「ああ、そのことなんやけどね」

龍驤「艦載機の数を増やしてほしいねん」

龍驤(艦載機の数を増やしてほしいな)

提督「……んん?」

龍驤「いやな、うち、ちょっと艦載数がしょぼいやろ?」

龍驤(えっと、私、少し艦載数が頼りないですよね?)

提督「……んんん?」

龍驤「ややわー、みなまで言わせんといてや」バンバン

龍驤(いやです、察してください)

提督「むう」

提督(そういえば、こいつは……)

提督(関 東 生 ま れ の 関 東 育 ち)

提督(だったな)

提督(エセ関西弁を使うのはどうしてかと思っていたが……)

提督(なるほど、キャラ付けだったのか)

提督(艦娘も大変なのだな……)ウンウン

提督「分かった、お前も練度を高めていることだし」

提督「近いうちに、改二改装を実行しよう」

龍驤「え! ほんま!?」

龍驤(え! 本当!?)

龍驤「なんや話が分かるやないの。どしたん? なんかええことでもあったん?」ウリウリ

龍驤(昇進したのかな? それとも昇給?)

提督(横須賀生まれのお嬢様、か)

提督(鎮守府デビューでキャラ付けして、そのまま通していると見た)

提督(まあ、害があるわけでもなし……そっとしておいてやろう)

龍驤「ほな、うちはこれで!」

龍驤「改二改装、約束やで~♪」

パタン

提督「……」

提督「ふむ」

提督「よかった。まともな悩み相談で」

提督「次もこうあって欲しいものだ」

??「失礼するわ」トントン

提督「どうぞ」

ビスマルク「こんにちは」

プリンツ「失礼します!」

レーベ「おはよう、提督」

マックス「失礼するわ」

ユー「あ、あの、入ります」

提督「む、ドイツ艦勢ぞろいだな」

提督「どうした? 何の悩みだ?」

ビスマルク「どうしたもこうしたもないわよ」

ビスマルク「もう我慢の限界よ。返答次第では母国に帰らせてもらうわ」

提督「な、なんだ。藪から棒に」

提督「まあ、まずは話してみてくれ」

ビスマルク「ええ。はっきり言うわよ?」

提督「ああ」ゴクリ

ビスマルク「鎮守府の生活に不満はないわ」

ビスマルク「みんな優しいし、ベッドもふかふか」

ビスマルク「でも!」

ドイツ艦「「「ドイツ料理が足りなーい!」」」

提督「ええっ!?」

プリンツ「洋食用の素材を使って工夫はしてるんですけどぉ」

マックス「やっぱり、何か違うのよね」

レーベ「あまり贅沢は言いたくないんだけど……」

ユー「お漬物とザワークラウトは、やっぱり違うかなって」

提督「そりゃまあ、そうだが」

提督「しかし、そこまで深刻な問題なのか?」

ビスマルク「考えてみなさい。米と醤油と味噌がない生活を」

提督「むっ?」

プリンツ「ウメーボシやナットゥーもないんですよ?」

レーベ「提督はそんな生活に耐えられる?」

提督「多分、一月と持たないな……」

マックス「でしょう?」

ユー「ゆーも頑張るから、ドイツからの輸送物資、増やしてもいい?」

ビスマルク「保存が利かない食品は、鎮守府で作ってみるわ」

レーベ「だから、そのための施設や許可が欲しいんだ」

マックス「ダメかしら?」

提督「うーむ」

提督「みんなよくやってくれているから、それぐらいはいいだろう」

提督「よし、私が許可を出そう。要望書を後で提出してくれ」

ドイツ艦「「「やったー!」」」

提督(食は士気に関わるからな)

提督(多少の出費とはいえ、構わないだろう)

提督(これから海外艦も増えることだし、先行投資だと思えば……)

~~~♪

提督(……ん?)

ビスマルク(Deutschland erwache aus deinem bösen Traum!)

プリンツ(Gib fremden Juden in deinem Reich nicht Raum!)

レーベ(Wir wollen kämpfen für dein Auferstehn!)

マックス(Arisches Blut darf nicht untergehn!)

提督(な、なんだこれ!?)

ユー(All diese Heuchler, wir werfen sie hinaus,Juda entweiche aus unserm deutschen Haus! Ist erst die Scholle gesäubert und rein,Werden wir einig und glücklich sein!)

提督(う、歌? 軍歌か?)

提督(でも、放逐とか背信者とか浄化とか、物騒な単語が飛び交ってるぞ!?)

ドイツ艦(Wir sind die Kämpfer der N.S.D.A.P.Treudeutsch im Herzen, im Kampfe fest und zäh.Dem Hakenkreuze ergeben sind wir.Heil unserm Führer, Heil Hitler dir!)

提督(ハイルヒトラーの大合唱だ! ひ、ひええ!)

提督(なんだ、なんなんだ?)

提督(ドイツ艦ってみんなこうなのか!?)ガクブル

ビスマルク「それじゃ、失礼するわね」

プリンツ「例の件、お願いしますね♪」

パタン

提督「……」

提督「は、はああ……!」

提督「恐ろしい時間だった……! 侵略を受けた気分だ」

提督「ううむ、ドイツ艦の動向には気をつけた方がいいのかもしれん……」

提督「……って、いくらなんでもおかしくないか?」

提督「口に出しているならともかく……心の中で合唱できるわけがないだろう」

提督「そもそも、あの大和があんなことを考えている時点でおかしかったんだ」

提督「このインカム……」

提督「怪しい……」

インカム「ギクッ!」

提督「そもそも、なぜインカムなのか?」

提督「電波の発信源はどこだ? まさか、艦娘の心の中ではあるまい」

提督「この電探を使って……」

提督「……見つけた」

提督「やはり、お前らの仕業か……」

提督「さて、吐いてもらおうか」

提督「なぜ、このようなことをした?」

提督「『声帯の妖精さん』!」

妖精A「ピャー!」

妖精B「わ、悪気はなかったんです!」

妖精C「た、ただ、提督さんに、みんなの声をもっと聞いてもらおうと……」

提督「それで、声真似で私を騙した、と?」

提督「それにしてはやり過ぎだったな」

妖精D「と、途中で面白くなっちゃって……」

提督「初めから無茶苦茶だったろうに」ポカリ

妖精E「で、でも、提督さんもいけないんですよ?」

妖精F「心が読めるインカムだなんて……」

妖精G「信じても使ってはいけません。そう、貴方は試されていたのです」

提督「む。それもそうか」

提督「釈然としないが……まあ、今回の件はお互い、水に流そう」

提督「他言無用で頼むぞ」

妖精A「はい!」

妖精B「そ、それでは、私らはこれで……」イソイソ

妖精C「あっ、そうだ。提督さーん」

提督「ん? なんだ?」

妖精D「心の声なんですけどね」

妖精E「私たち、声真似ばっかりだったんですけど」

妖精F「一つだけ、本当のことが混ざってますよ」

提督「え゛?」

妖精G「それでは、これで」ピュー!

提督「ど、どれだ?」

提督「どれが本当のことだったんだ?」

提督「いや、その前に、その話自体が本当か?」

提督「む、むむむ」

提督「うううむむむむ」

提督「どれだ? ど、どれなんだ?」

提督「どれなんだー!?」

以後、提督は疑心暗鬼にかられることになるのだが――。

それはまた、別のお話である。

おしまい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月13日 (水) 20:47:11   ID: 44tPV15b

ヒトラー万歳よりホルストヴェッセルリートの方が良かったかも?
まあ乙

2 :  SS好きの774さん   2015年09月01日 (火) 11:00:16   ID: Kgt8OugL

ドイツ艦のところでヒトラーのmadを思い出した。
コーラ噴いたわ。

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