斉木楠雄(なんで僕が聖凪高校に) 九澄「1年ぶりに帰ってきたら変な奴がいた」 (244)

【斉木楠雄のΨ難】×【エム×ゼロ】

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431454182

斉木(僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ)

斉木(テレパシー、サイコキネシス、パイロキネシス、テレポート、透視に空中浮翌遊……。
  これらの能力は、僕の使える能力の一部にすぎない)

斉木(超能力を使えば大抵のことは何でもできる。
  やろうと思えば世界征服も世界一の金持ちになることも簡単なことだ)

斉木(だが僕は、そうしない。目立つことが嫌いだからだ。
  僕を超能力者と知っているのは、家族とほんの一部に限られる)

斉木(僕が通っているPK学園の生徒の中に約1名僕の正体を知っているバカがいるが、
  それ以外の生徒は、僕が超能力を使えるどころか超能力者がこの世にいるとも思っていないだろう)

斉木(そしてここはそのいつものPK学園……ではない)

校長「半年間ですけど、よろしくお願いしますね。斉木くん。
   聖凪高校も悪いところではありませんから」

前校長「超能力もいいが魔法もなかなか面白いぞ、くくく」

斉木(くそ…こいつとあのバカさえいなければこんなことにならなかったものを)

――――
――

――1か月前。

斉木(断る)

鳥束「斉木さん! しゃーっす! しゃすしゃすあーす!
   ヨシミちゃんとの仲を取り持ってくださいよ! オナシャスシャァース!
   好感度カンストついでにオレのパラメータもカンストでおなしゃす!」

斉木(しゃすしゃすうるさい。不快度のパラメータならとっくにカンストしてるぞ)

鳥束「こ、こんなに頼み込んでもダメなんすか!
   もう頭下げすぎて股すらも通り越してるんスよ!?」

斉木(誰がどう見たって馬鹿にしてるだろ)

斉木(このバカの名前は鳥束零太。霊能力者だ。
   生まれつき霊が見える体質の寺生まれらしい)

斉木(やれやれ、コンビニまで買い物に来ただけだっていうのに
    なんでコイツに絡まれないといけないんだ)

鳥束「く、くぅ~……! オレだって超能力が使えれば斉木さんにこんなこと頼まないっスよぉ!」

斉木(頼まれても、手伝うわけないだろう)

鳥束(こうなったら斉木さんに勝てる霊を口寄せして、力ずくで言うことをきかせるしか…)

斉木(そんな幽霊がいるなら見てみたいものだな。
    いたとしてもそんなすごい霊をお前が口寄せできるとも思わないが)

鳥束「あ、その顔! 今心の中でバカにしたっスね!?」

斉木(よかったな。テレパシーが使えるようになったじゃないか)

鳥束「ば、馬鹿にして。
   絶対口寄せしてみせるっスよ! むむむ……!」

鳥束(ヨシミちゃんのために何としても協力してもらうっスよ、斉木さん!)

鳥束(ヨシミちゃんヨシミちゃんヨシミちゃんケイコヨシミちゃんショウコヨシミちゃんミドリヨシミちゃん

    ヨシミちゃんアキコヨシミちゃんヨシミちゃんミチコリョウコヨシミちゃんヨシミちゃんヨシミちゃん
    ヨシミちゃんヨシコヨシミちゃんヨシミちゃんヨシミちゃんヨウコメイコマリコモモコヨシミちゃん)

斉木(ヨシミちゃん以外にも混ざりすぎだろ。あと○○コ多いな)

鳥束「うおおおっ!」

バシュッ!

シュウゥウゥウ――……。

斉木(いかにもなスモークで演出しなくていい)

鳥束(?)『……なんだここは』

斉木(やれやれ、またろくでもない霊を口寄せしたのか)

鳥束(?)『おい、お前。ここはどこだ。それにこの肉体はなんだ』

斉木(この口ぶり。強制的に憑依させているのか。
   以前は霊とコミュニケーションをとらなければ憑依できなかったはずだが。
   もしくは一方的に憑依されるだけの力しかなかったはずだ。こいつの霊能力、強化されてないか?)

鳥束(?)『おい、応えろ』

斉木(……態度のでかい霊だな。コイツの顔で上からものを言われると流石の僕でも腹が立つぞ。
    どうせ鳥束の身体だし少しくらいダメージを与えても平気だろう)

鳥束「ちょ、ちょっとオレにも喋らせろって!
    斉木さん、拳おさめて!! お願いっスから!」

鳥束(?)『お前か。ボクを勝手にここまで連れてきたのは』

鳥束「そっス!
    斉木さんをどうにかできる霊をひたすら思い浮かべたらアンタがきたっス!」

斉木(ひたすら思い浮かべてたのは女の子だろ)

鳥束「ってことで、やっちゃってください!」

鳥束(?)『ふざけるな。いますぐ元の場所に戻せ。
      こっちは頭を抱える案件が多くて困っているんだ。
      お前の相手をしている暇などない』

鳥束「えぇ~ッ!?」

斉木(そんなオチだとは思った)

斉木(そろそろこの一人芝居をみるのも飽きてきたな。帰るか)

鳥束「も、戻せって言われても、オレができるのは身体から出すことだけで……ほら」

???「身体からだせと誰が言った。ボクは元の場所に戻せといってるんだ」

鳥束「さ、斉木さぁん……助けてくださいよぉ」

斉木(幽霊は専門外だ。第一基本的に僕には幽霊をみることも……!?)

???「どうした。幽霊にでもあったような顔をして」

斉木(ど、どういうことだ。鳥束をサイコメトリーで介さないと霊の姿は視えないはず。
   そういえば声も……)

鳥束「さ、斉木さん。も、もしかしてこの霊、視えてるんスか……?」

斉木(不本意ながらな)

鳥束「だからずりーっスよぉ!
   オレの守護霊が視えるだけじゃ飽き足らずあっちにもこっちにも手ェだして!」

斉木(女をとっかえひっかえみたいに言うな)

鳥束「いよいよもってオレの必要ないじゃないっスかぁ!
   霊能力者のアイデンティティー奪うのもいい加減にしてくださいよ!」

???「おい、ボクを放っておいて話をするな」

鳥束「あ、あー……そうだった」

???「さっさと元の場所に返せ」

鳥束「って言っても、どこから来たかオレにはわからないし……」

???「聖凪山だ。そこまで戻せばあとは勝手に帰る」

鳥束「あ、ああ。昔神社が立ってたっていう霊山」

斉木(知ってるのか。僕は全く聞いたことがないが)

鳥束「まあ、これでも寺生まれで坊さんの息子っスからね。
   寺社仏閣に関してはちょっとだけ他人より知ってるんスよ。
   それに今は学校になってるらしくて、ちょっと珍しい経緯だから印象に残ってるんス」

???「知ってるなら話が早い。さっさと連れていけ」

鳥束「えぇ!? 今からっスか!? 無理無理!
   ここからどれだけ離れていると思って――」

ゴンッ!

鳥束「ったぁ~っ! な、なにも殴ることないじゃないっスかぁ!」

???「こっちは勝手に呼び出されて迷惑をしているんだが?」

鳥束「そ、そんなこと言われたって……!?
   え? ゆ、幽霊に殴られた……!?」

斉木(そういえば、幽霊はこっちからさわることも向こうから触れることもできないんだったな)

鳥束「え、ええぇぇぇえええぇえぇっ!?
   どどどど、どうなってるんっスかぁあぁあぁ!?」

???「煩いぞ。ボクは幽霊じゃない。
     それにボクは花先音弥という名前がある」

――
――――

――現在、聖凪高校、校長室。

8月某日。

コンコン。

ガチャ。

九澄「ちーっす」

校長「お久しぶりね。九澄くん。夏休み中に呼び出してごめんなさいね。
    相変わらず元気そうで何よりです」

九澄「校長センセ! いいっていいって。
    しっかしこの校長室にくると聖凪に戻ってきたって感じがするな~!
    それに変わらないっても、1年弱かけて魔法の実力は大分つけてきたんだぜ?」

校長「ふふ、そうですね。
    まさか本当に1年たたずにゼロからシルバープレートにまでなってくるとは思いませんでした」

九澄「だろ~? その代りものすごい大変な毎日だったけどな……。
    それに結局本命のゴールドにまでは届かなかったわけだし」

九澄「それにしても、ホント校長センセの顔見るとほっとするな~!
    本当に聖凪に戻れるか不安だったからさ」

校長「ふふふ」

前校長「貴様、音芽に馴れ馴れしいクチをきくな」

九澄「ゲッ! 柊父! いたのか!?」

前校長「今は柊ではなくボクだ。身体を借りている。
     ボクを忘れたわけではないだろう?」

ヴゥン――。

九澄「うわっ、そのハンマー……ってことは前校長先生!?
   なんでここに!?」

前校長「すこしお前に話しておかなければならないことができたからな」

九澄「話しておかなければならないこと?」

前校長「ああ。その話をする前に協力者の紹介をしよう」

九澄「協力者……?」

斉木(一方的に利用する関係のどこが協力だ)

前校長「くくく。ボクとお前は契約を結んだ仲だろ?
     どうでもいいがウチの制服似合わないな、斉木」

校長「お父様」

前校長「ああ。今からコイツも聖凪高校の愛すべき生徒の一人だからな。
     これ以上の悪口も言うまいよ」

九澄「ん? 転校生なのか? じゃあ、よろしくな! んじゃ、記念に握手っつーことで。
   (熊本とここ以外にも魔法高校があったのか? そんな話きいたことねーケド)」

斉木(僕はよろしくしたくないのだが握手くらい返しておくか)

九澄「俺は九澄大賀。よろしくな。えーと……」

斉木(斉木楠雄だ)

九澄「おう。よろしくな、斉木」

斉木(ほう。なかなか引き締まった筋肉をしているな。
  窪谷須あたりとでもいい勝負ができるんじゃないか?)

斉木(……誤解しないでほしいのだが、僕は一つの対象を見続けてしまうと透視により透けて見えてしまうだけだ。
  服が透け、下着が透け、皮膚が透け、筋肉が透け、骨まで見えるのが日常茶飯事だ)

斉木(ここの制服は魔法による透視をさせないために防御処理がされているらしいが、超能力者の僕には無意味だったようだな)

前校長「話っていうのは、お前とお前の以前持っていたプレートに関することだ」

九澄「プレート? じゃあ……」

校長「ええ、彼は九澄くんとエムゼロプレートについて知っています」

九澄「ど、どうして。ってゆーか今の俺にエムゼロプレートは必要ねーんじゃ」

前校長「それを今からはなすってわけだ。焦るな。
    その話に、コイツも必要になってくる」

九澄「はあ(話が見えてこないぞ……?)」

斉木(……あのあと、鳥束にこの幽霊を憑依させてテレポートをしたのがまずかった)

斉木(聖凪山の場所を聞いて、その付近までは昔旅行で行ったことがあったため、
  テレポートで跳ぶことはできたのだが……)

斉木(こんなことになるのなら、やはり鳥束のことなんか放っておくべきだったな)

――――
――

斉木(断る)

鳥束「斉木さん! しゃーっす! しゃすしゃすあーす!
   行ったことあるならいいじゃないっスか!
   ぱっといってぱっと帰ってくるだけなんスから!」

斉木(この光景さっきもみたぞ)

鳥束「こ、こんなに頼み込んでもダメなんすか!
   もう頭下げすぎて股すらも通り越してるんスよ!?」

斉木(そのセリフもさっき聴いた)

鳥束「じゃあ、地面に額こすり付けるっスよ!」

斉木(知ってるか?
   土下座は立場が上のものが下のものにやらないと意味がないんだぞ)

鳥束「ひ、ひどいっス……」

花先「友達のお願いなんだ。きいてやれ」

斉木(いやですけど)

鳥束「おお、なんていい幽霊なんだ! その調子で説得してくれ!」

斉木(コイツのせいでお前が土下座するハメになっているんだが?)

斉木(それにそもそも友達じゃない)

花先「お、お前薄情な奴だな……」

鳥束「でしょお!? もっといってやってほしいっス!」

斉木(場所を知っているなら新幹線でもなんでもつかっていけばいいだろ)

鳥束「そんな金があると思ってるんスか!?」

斉木(たしかに学生には厳しい金額かもしれないがお前の責任だ)

鳥束「そんな金があるならエロ本に使うに決まってるでしょうが!
   オレの所持金は500円しかないっス! 食費すら削ってるんスからね!」

花先「……」

斉木(幽霊すらも呆れ返っているぞ)

鳥束「っつーわけで、斉木さん、オナシャス!
   テレポートでぱぱっといって帰ってくればいいだけっスから!」

花先「テレポート?」

鳥束「ああ、ここらへんの幽霊じゃないから知らないんスね。
   ここらへんの霊界じゃ斉木さんはちょっとした有名人なんスよ。
   なにせ超能力者っスから! サイコキネシスでパンチラ起こし放題なお人っス!」

斉木(サイコキネシスでみぞおちあたりにパンチしてやろうか)

花先「ちょうの……うりょく!?」

斉木(そこで切るな。変なイリュージョニストが思い浮かぶ)

斉木(だいたい人の正体をあっさり喋るな)

鳥束「いいじゃないっスか。どうせ相手は幽霊なんだし」

花先「超能力ってどういうことだ。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ」

斉木(やれやれ、めんどうだな。いちいち説明してやる義理もないのだが)

斉木(それに僕は、さっさと買い物を済ませて帰りた――)

斉木(……ん?)

コンビニ『本日新発売! とろける高級コーヒーゼリー!
     新感覚にアナタもビックリ! \500(税抜)』

斉木(……ほう。なかなか嫌いじゃないキャッチコピーだ)

鳥束「斉木さんお願いしますよ~この通りですぅ~」

斉木(コイツの不快な声もこれ以上聴きたくないからな)

斉木(さっさと憑依させろ。送ってやる)

鳥束「さ、さすがっス! よ、千両役者!」

斉木(その代わり、帰ってきたらアレをよこせ)

鳥束「あれって……? お、オレの全財産が消し飛ぶじゃないっスかぁー!?」

斉木(そうか。なら知らん)

花先「お前そんなにコーヒーゼリー好きなのか」

斉木(別に嫌いではない)

花先「素直じゃねーやつ……」

斉木(それで? どうするんだ?)

鳥束「わ、わかりました! わかりましたって!
   だからテレポートお願いしますって!」

斉木(契約成立だ)

鳥束「斉木さんときどきものすごくゲスい笑いしますよね……」

斉木(お前ほどじゃない)

鳥束「じゃあちょっとアンタ。またオレの身体に入るっスよ」

花先「こうか……?」

鳥束「ばっちしっス! 斉木さん、準備できたっス」

斉木(さっさと行ってさっさと帰るぞ)

鳥束(花先)『さっさと? どうやって? まさか本当にテレポートなんて馬鹿げた――』

ヒュンッ!!

――某市、聖凪山付近。

ヒュンッ!!

斉木(ついたぞ)

鳥束「はじめてテレポート経験しましたけど、反則にもほどがあるっスよ……。
    あー! オレも超能力者に生まれたかった!」

斉木(その聖凪山とかいうのはどこだ。さっさとその幽霊を置いて帰るぞ)

鳥束「そっスね。あ、もう出ていいっスよ」

鳥束(花先)「な、な!? ど、どうなってやがる!?
        (転移魔法か!? いや、そんな規模の魔法はボクでさえ聞いたことがないぞ!?
        馬鹿な、それに魔法磁波がなければ魔法なんて使えないはず……あそこに魔法磁波は感じなかったぞ!?)」

鳥束「やだなぁ。言ったでしょ、斉木さんは超能力者だって」

斉木(幽霊も超能力に出会うとこんな風に取り乱すんだな)

鳥束「幽霊っても生前は普通の人間っスからね~」

鳥束「さあ、ここまできたら帰れるっスよね?」

鳥束(花先)「……ダメだ。ボクは肉体がなければ長距離を移動できない。
        聖凪山にある学校、聖凪高校まで連れていけ」

鳥束「贅沢な幽霊っスね~…」

斉木(じゃあ、僕は先に帰ってるぞ)

鳥束「ダメっスよ!? そうしたらどうやってオレ帰ればいいんスか!?」

斉木(立派な二本の足があるだろ?)

鳥束「徒歩!? ここからどんだけ距離あると思ってるんスか!?」

鳥束(花先)「なんでもいいからさっさとしろ。
      さっきも言ったがボクだって暇じゃないんだ」

鳥束「それに斉木さんも、オレを置いて行ったらコーヒーゼリー食べられないんスからね!」

斉木(っち。さっさと行くぞ。帰ったら往復分であのコーヒーゼリーを2つ用意しろ)

鳥束「片道500円っスか……」

斉木(十分安いだろ)

鳥束「んで、聖凪山ってどっちスか?」

鳥束(花先)「あっちの方向だ」

鳥束「じゃあ行きますかね~」

ザッザッザッザ…。

鳥束(花先)「……? 徒歩か? テレポートはどうした(もう一度みてどうなってるか確かめてやる)」

鳥束「あーそれがっスねぇ……」

斉木(テレポートは一度行ったことがある場所じゃないと使えない。
  ここらへんは昔旅行できたことがあるから来られただけだ)

鳥束(花先)「ふぅん……(超能力も万能じゃねーってわけだ。実はたいしたことない能力か……?)」

斉木(ちなみに憑りついてるときならテレパシーで幽霊の思考だって読めるんだからな)

斉木(確かにたいしたことない能力だが、その身体を消滅させてしまうことくらい簡単にできる)

鳥束(花先)「!?」

鳥束「なんでさらっとオレの身体を抹殺しようとしてるんスか!?」

鳥束(花先)「ボクの思考が読めるってわけか(ははは、本当なら魔法以上だな……)」

斉木(ふう。別に幽霊に信じられようが信じられまいがどうでもいいことだが
  さっきから魔法とかいうわけのわからない単語よりは信憑性があると思うぞ)

鳥束「魔法?」

鳥束(花先)「ホンモノってわけか……(ボクは一言も口にだしてねぇ、間違いない)」

斉木(そんなことより、まだつかないのか)

鳥束(花先)「あと少しだ」

斉木(こっちはコーヒーゼリーが4個待っているから早く帰りたいんだ)

鳥束「さらに増えてる!?
   って、さっきから幽霊もすごい増えているんスけどもしかしてこの山が聖凪山?」

鳥束(花先)「ああ、この山が聖凪山だ」

斉木(ようやくついたか)

鳥束「じゃあここまでで……」

鳥束(花先)「ダメだ。学校まで連れていけ」

鳥束「えぇ!? ここまで来たらあとは自分で帰るって言ってたじゃないスか!?
   それに山登りなんて疲れることしたくないし……」

鳥束(花先)「いいから登れ」

鳥束「うう……」

……


鳥束「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ」

鳥束(花先)「体力なさすぎるだろう……」

鳥束「な、なんでこんなところに学校なんて立てたんスか……」

斉木(サンタクロースの有無に思いをはせながら登校すれば、ライトノベルの主人公になれそうな坂だな)

鳥束「あ、建物が見えてきたっスね、あれが聖凪高校?」

斉木(PK学園より立派な学校だな)

鳥束(花先)「そうだ。着いたぞ。ここが聖凪高校だ」

鳥束「じゃあ、やっとこれで……」

鳥束(花先)「まあ、そう急くな。ボクの縄張りは北エリアだ。
      そこまで頼んだぞ(他の生徒に姿を見せるわけにはいかないからな)」

斉木(他の生徒? 幽霊が何を言ってるんだ?)

斉木(それに、テレパシーを聴く分にはこの近くに生徒はもういないみたいだぞ)

鳥束「えぇええぇ!? もう終わりじゃないの!?」


鳥束(花先)「あと少しなんだからオマケだと思っていけ」

鳥束「もう! わかったスよ!」

鳥束「(せっかくならかわいい女の子のパンツのひとつでも拝まないと割に合わな――)」

バウンッ!

鳥束「あだっ! な、なんだこれェ!?」

鳥束(花先)「そうか、いつも敷地内からでないから障壁のことすっかり忘れてたな……。
      部外者だからダミープレートがないと入れないか」

鳥束「さ、斉木さん、この学校なんか変っスよ!? 入口に見えない壁があるみたいで……」

鳥束(花先)「とりあえず事務所に向かえ。
      そこで来客用ダミープレートを受け取らないと入ることもできんぞ」

斉木(なにをやってるんだ。入ればいいだろう?)

ボゥン。

斉木(……ふむ)

鳥束「入ればいいって、オレの話聞いて――」ガシャアァン!!

斉木(あ)

鳥束「ガシャン?」

鳥束(花先)「しょ、障壁が、破れてやがる」

斉木(ここにあった視えない壁を殴ったら壊れた。チカラ加減マチガエタ)

鳥束(花先)「おいおい……マジかよ……。
      外からの衝撃は設定上は大半のものなら弾き返す障壁なんだが…」

斉木(結構簡単に壊れたぞ)

鳥束(花先)「(コイツのパワーが規格外すぎる、ということか)」

斉木(普通に殴れば前方7kmは更地になる程度には消し去るレベルなんだ。誇っていい)

鳥束(花先)「……心を読まれるってのは、気分がいいもんじゃないな」

斉木(僕だって、こんな能力欲しくてもっているんじゃない)

斉木(その北エリアとかいうところにさっさと行くぞ)

鳥束「ま、待ってくださいよォ! 斉木さぁん!」

……


――聖凪高校、北エリア。

鳥束(花先)「ここだ」

鳥束「女子生徒と誰一人会わなかった……」

斉木(だからほとんど生徒の声はしないといっただろ)

鳥束「石碑以外なんもないっスけど」

斉木(地下に大きい空間があるな。それに下に誰かいる)

鳥束(花先)「そうだ。なんでもお見通しなんだな、お前。
        それも超能力者の力ってわけか」

斉木(どうでもいい。終わったならさっさと帰るぞ)

鳥束「そっスね。ほら、アンタももうでていいっスよ」

鳥束(花先)「まあ、待て。焦るな。今石碑を動かす」

ゴゴゴゴゴゴゴ……。

鳥束「うお。地下へ伸びる階段……っスね。結構深いっスね」

鳥束(花先)「ここを降りれば、それで終わりだ」

斉木(面倒だがここまできたなら最後まで付き合うか)


――最下層。

斉木(階段はここで終わりか)

花先「ここなら、もう出ても大丈夫だな」

鳥束「あ、やっとでていったっス」

???「お父様! お話の最中に突然いなくなってしまったので心配していたのですよ!」

花先「ああ、今戻った。心配かけたな」

斉木(さっきのテレパシーの声の主か)

鳥束「えぇ!? 幽霊視えるんスか!? もしかしてアンタも霊能力者!?
   オレのアイデンティティーがどんどん薄まっていくっス…」

斉木(もともとお前のアイデンティティーは、
  読者アンケートで順位をありえないくらい低くすることくらいだ)

???「あら、この方たちは……?」

花先「ボクをここから強制的に連れ出した張本人たちだ」

斉木(一括りにするな。コイツが原因だ)

???「まあ、そうなのですか。しかし、お父様。
    この場所にまで連れてくるというのは…」

花先「ちゃんと考えがあってここまで連れてきたんだ。
   音芽、さっきの話だがな。いい解決策がみつかった」

???「そうなのですか?」

斉木(……込み入った話をするのはいいが、僕は帰らせてもらう) スタスタ

鳥束「あ、待ってくださいよぉ!」 タッタッタ

花先「コイツを聖凪に入学させる。それですべては解決だ」

斉木(!?)

鳥束「お、オレっスかぁ!?」

花先「お前じゃない。後ろの超能力者だ」

鳥束「なーんだ」

???「ちょう……?」

斉木(なっ!? こ、コイツ……!?)

鳥束「おー、斉木さんの驚き顔とかなかなかレアっスねぇ」

花先「くくっ。おっと。話されたら困るんだったか?」

斉木(……しかたない。記憶消去術を使うか。
   悪く思わないでくれ、おばあさん)

???「え、え!?」

花先「ほう。そんなこともできるのか。
   だが生憎、ボクは誰にでも視えて誰とでも話せる幽霊でね。
   たとえ音芽の記憶を消しても他に言いふらせばいいだけだ」

斉木(くっ。コイツ自体を消し去らないとダメってわけか。
    ならば)

スゥ……ドサッ。

???「!? だ、大丈夫ですか!」

斉木(幽体離脱だ)

鳥束「あー、大丈夫っスよ。斉木さんならそこにいるっスから」

???「な、なにをいっているんですか?」

花先「そんなこともできるのか、超能力者ってのは」

???「お、お父様? 何をおっしゃっているのですか?」

斉木(悪いが、僕の正体をベラベラ話す幽霊にはこの世から退場してもらう)

花先「へぇ」

斉木(ゴーストにゴーストの攻撃をする結果は、こうかはばつぐんと相場が決まっているんだ)

花先「じゃあ、ボクを消滅させるってわけか」

斉木(そういうことだ)

ブンッ!

斉木(な、なっ!? 空ぶった!?)

花先「やはりな……残念ながらボクは正確には幽霊じゃないからな。
   肉体を捨てただけの人間だ。魔法体とでもいえばいいかな」

斉木(く、霊体では干渉できないのか)

花先「ボク自身は幽霊でもないのに、お前のテレパシーは憑依しているとき以外発動していなかったからな。
   それで、もしやと思ったんだが。予想は正解だったみたいだな」

花先「ボクに超能力では干渉できない、というワケだ」

鳥束「え、え? じゃあ、マジで斉木さんをどうにかできる幽霊をオレ呼んでたってことっスか?」

斉木(く、マズイぞ。僕の正体をベラベラ喋る存在をこのまま放置しておくわけには…)

花先「だが、ボクも他人が嫌がることを進んでやるほど鬼じゃない」

花先「協力をしてくれたのなら、ここあたりで一番うまいと評判のコーヒーゼリーを毎日好きなだけくれてやる」

斉木(ま、毎日、好きなだけだと……?)

花先「ああ。10個でも20個でも構わんぞ」

斉木(……くっ、汚いぞ。コーヒーゼリーを交渉の材料にするなんて)

花先「さあ。どうする?」

斉木(……ちなみにホイップはかけ放題なのか?)

花先「ああ、かけ放題だ」

斉木(……話をまず聞いてやる)

花先「賢明な判断に感謝するよ」

花先「というわけだ。音芽。
   こいつを半年間入学させることにする。それで万事解決だ」

???「は、はあ。わたくしにはまだ話が見えてきていないのですが。
    お父様がそうおっしゃるのでしたら」

校長「まずは自己紹介をしておきますね。
   わたくしは、私立聖凪高校現学校長を務めております、花先音芽と申します」

花先改め前校長「そしてボクは、音芽の父。聖凪高校の前学校長、花先音弥だ」


――

――現在、聖凪高校、校長室。

斉木(そして僕は今ここにいる)

斉木(聖凪高校の交換留学という名目でこちらに呼ばれたわけだ。PK学園ではないがな。
    僕は尾輪哩高校というところからの交換留学生としてここに来た設定だ)

斉木(まあ、障壁を壊して機能させなくさせてしまったという借りもある。僕は他人に借りは絶対に作らないタイプだ。
    これでその借りを返すことにする。コーヒーゼリーに釣られたわけでは決してない)

斉木(PK学園を離れる際に、海藤や燃堂がなぜか大号泣をしていたが、まあどうでもいい)

斉木(ちなみに鳥束は、魔法に関する記憶を全部消されてPK学園に戻された。
    こういうところは僕の超能力より魔法は便利だな。というか僕にもその魔法教えてくれ)

斉木(そして、どうして僕がここに呼ばれたかというと)

九澄「いいいいいっ!? 俺こっちでシルバープレートつかえねーの!?」

前校長「使えないわけじゃない。ただ向こうの学校のデータを引き継ぐのが困るという話だ」

校長「九澄くんは、聖凪高校ではゴールドプレートの生徒として認識されています。
   しかし、熊本の高校――尾輪哩高校の生徒データを引き継いで戻してしまうと
   聖凪高校でもシルバープレートになってしまいます」

校長「すると『留学して戻ってきたらプレートのランクが落ちている』という奇妙な事態になってしまうのですよ」

前校長「もし、そんな状態が教頭に知られてみろ。間違いなく根掘り葉掘り調査が行われる。
    そうすればいずれお前の入学当初のゴールドが偽物だと足がつく。お前も柊も一発で退校処分だな」

校長「わたくし自身も辞任を免れないでしょうね」

九澄「そ、それはそうだがよ~……せっかく手に入れた魔法を手放すってのも……。
   それになんにしてもオワ高のデータ調べられたら終わりなんじゃ」

校長「尾輪哩高校の生徒データはこちらでは調べることができません。
   個人情報の観点から基本的にその学校の者でないとみることができませんので。外部からの調査はほぼ不可能です。
   例外的にみることができるのが、転校先の学校長とその生徒の所属する学年主任だけ」

校長「つまりわたくしと柊先生だけなのですよ」

九澄「そ、そうかぁ。ならそっちは安心したけど…」

前校長「それにな。学校から出ても魔法という存在を記憶しておけるのはブラックプレート所持者だけだ。
    それは聖凪高校だけでなく尾輪哩高校も同様だ。
    お前のシルバープレートはブラックプレート化してないだろ?」

九澄「そりゃあ、向こうにはそんな施設なかったし。
   そもそもシルバー程度じゃ受けられる試験じゃないってわかったしよ……」

前校長「つまりだ。なんにせよ、お前はもう一度ブラックプレート化したエムゼロプレートを持たなければならないということだ」

九澄「わ、わかったよ。
   で、でもくそ~……せっかく向こうでやってきた1年間が水の泡かよぉ~……」

校長「たしかに、プレートの2重所持はできません。
   2重登録になる場合は、どちらかのプレートを消去しなければいけません」

九澄「も、もういいっす。聞けば聞くほど悲しくなってくる……。
   おとなしくシルバーを消して……」

校長「ふふ、九澄くんの努力を無駄にしたいためにこんな話をしているのではありませんよ。
   こういうことは初めてなので、こちらの準備不足もありましたしね。
   ごめんなさい、九澄くん」

九澄「え?」

前校長「お前のシルバープレートを消さずに、エムゼロを持つことができる方法をボクたちは考えていた」

九澄「そ、そんなことできるのかよ~! 2人とも性格悪すぎるぜ…」

校長「……実は、かなり手詰まりの状態だったんです」

前校長「本当はどちらかを捨ててもらう予定だったんだがな。
    尾輪哩でゴールドになるまでいてもらうか、シルバーを放棄するか」

九澄「えぇっ!?」

前校長「だがな。コイツのおかげでそうしなくて済む」

九澄「……斉木の? どういう意味だ?」

前校長「おい、斉木。おまえチカラをみせてやれ」

斉木(……もう一度確認しておくぞ。コイツで知るのは最後なんだろうな)

前校長「ああ。コイツで間違いなく最後だ。
    もしこいつがお前の正体について喋ったのなら一発退学、そして煮るなり焼くなりすればいい」

九澄「すげー不穏な単語だらけだったんだけど……」

斉木(やれやれ。仕方ないな)

フワッ。

九澄「……空を飛ぶのがどうしたんだ?」

斉木(こういう反応のなかなか新鮮だな)

前校長「こいつはな。プレートを持っていない」

九澄「は?」

校長「斉木くん、もっと他のものを」

斉木(曲芸師じゃないんだがな)

斉木(パイロキネシス)

ボウッ!

九澄「熱っ! 掌から炎だす魔法なんてあったか‥…?」

斉木(サイコビット)

ヴォン!

九澄「うお、突然岩の塊が!?」

斉木(アポート)

ヒュッ!

九澄「なんで味噌?」

斉木(500円で変えられるものがこれしかなかったんだ)

校長「斉木くんはね。私たちと違って、超能力者なんです」

九澄「…………は?」

斉木(おい。目が点になってるぞ)

九澄「いやいや。校長センセ。
   熊本帰りだからって、俺を馬鹿にしちゃ……」

斉木(瞬間移動)

ヒュンッ!

ヒュンッ!

斉木(ほら、熊本名物のからしれんこんだ)

九澄「うおぉおぉおっ!?」

前校長「こんな魔法は存在しない。わかるだろ? 斉木の異質さが」

九澄「ちょ、ちょっと待ってくれ。頭が追いついていないんだ……」

前校長「追いつかなくてもいい。そういうものだと思っとけ」

斉木(扱いがぞんざいすぎるぞ)

校長「いいですか? 九澄くんはエムゼロを持ってもらいます。
   そして九澄くんのシルバープレートを斉木くんに持ってもらおうと考えているんです」

九澄「え、えーと?」

前校長「登録上の話だ。お前のプレートの登録状態はそのままにして、
    管理データ上だけで斉木のものとして書き換える」

校長「そうすればプレートを消去する必要がなくなります」

九澄「で、でも! 他人のプレートじゃ魔法は使えないはずじゃ。
   斉木が魔法が使えないってことになったらそれはそれで厄介なことになるんじゃ……」

前校長「斉木には、お前がたった今見た超能力がある。
     つまり超能力を使って、魔法が使えるようにみせかけてもらうってわけだ」

斉木(言っておくが、魔法と思われるからと言って人前ではめったに使わないからな)

校長「同時に、九澄くんが魔法を使えるように見せかけるためにサポートをしてもらいます」

九澄「!!」

校長「そうすれば、九澄くんのシルバープレートを消さずに、
    且つエムゼロも持てるというわけなのです」

前校長「こっちでゴールドになれるだけ魔法ポイントがたまったらシルバーをゴールドに引き上げて、
     ブラックプレート化したのちに今度こそ、堂々とゴールド保持者を名乗ればいい」

九澄「な、なるほど。……でも、今まで通りハッタリでシルバープレートつかってゴールドに見せかけるんじゃダメなのか?」

前校長「……ふう。あのな。お前が1年間で成長したように周りの連中も成長してるんだ。
     2年ももう半ばになれば、シルバーを持っている奴もいる。
     そんな中でお前がばかすか魔法を使ったらどうなる」

前校長「『あれ? 魔法の威力も種類も自分たちと同じ程度じゃ?』と思うだろ」

九澄「う……」

前校長「お前が今まで、ゴールドだとハッタリがきかせられたのは
    魔法を覚えて間もない1年だったからというのと、お前が無駄に魔法を使わなかったからだ」

九澄「使わなかったというか使えなかったっつーか」

前校長「そんなことはどうでもいい。
     なんにせよ、お前が尾輪哩高校でやってきたことと同じようにこちらでもふるまっていたら
     一発でゴールドじゃないとバレる」

九澄「だ、大丈夫だって! こっちにいた半年は隠し通せたんだから」

前校長「甘いッ!!」

九澄(ビクッ!!)

前校長「大体お前は向こうで魔法漬けだったわけだろう。
    そんな生活をしていて、いきなり魔法抜きの生活に切り替えられるわけがねぇ。
    我慢できなくなって使い始め、いずれ歯止めがきかなくなりボロを出す絵が簡単に浮かぶんだよ」

前校長「それなら、最初から魔法を取り上げておいた方がいい」

九澄「うぐ……(そんなことねーってすぐに反論できないとこが悔しいぜ……)」

九澄「(俺はもう、魔法を使うことの楽しさを覚えちまった……。
   確実に我慢できるって保証はどこにもねぇ)」

九澄「わ、わかった。エムゼロを持つよ」

前校長「それともう一つ話しておくことがある。もし半年以内にゴールドに上がれずブラックプレート化できなかった場合だ。
     シルバープレートをもって尾輪哩高校に戻るか、シルバープレートを使ってブラックプレート化に挑むか、
     シルバーを捨ててエムゼロだけでこちらで過ごすか決めてもらう」

九澄「ど、どうして!?」

校長「実は、斉木くんにはかなり無理をいってこちらに来てもらっているんです」

斉木(そうだな。今すぐにでも帰りたい)

校長「だから、斉木くんには期限をつけて協力してもらうことにしているんです。
   斉木くんがくれた時間は半年、つまり3年生にあがるまでがタイムリミットになってきます」

九澄「は、半年でゴールド……は、はは。笑えてくるぜ」

前校長「このことは、柊も知っている。
     今後のことは斉木を交えて3人でよく話しておくんだな」

斉木(さらっと僕を混ぜるな。話が終わったなら僕は帰るぞ)

ヒュン!

九澄「消えちまいやがった……どーすんだよ」

長いプロローグ的なものオワリ
のんびり不定期更新

>>2
>斉木(テレパシー、サイコキネシス、パイロキネシス、テレポート、透視に空中浮翌遊……。

空中浮遊

>>28
>斉木(こういう反応のなかなか新鮮だな)

こういう反応は、

誤字訂正
本編はまた後で

校長「九澄くん」

九澄「あ、う、うん?」

校長「とりあえず、シルバープレートを預かっていいかしら?」

九澄「あ、ああ……ううっ(さらば、俺の努力の結晶……)」

校長「ま、まあ無くなるわけじゃありませんから」

前校長「ゴールドになったら半年待たずにすぐに返してやるぞ」

九澄「……そっか! 試験はあと2回あるんだった」

校長「ええ。ですからチャンスは2回」

九澄「2学期の魔法試験と3学期の魔法試験、か」

九澄「(なにがなんでも、もぎとらねーとな……)」

校長「では、こちらをお渡ししますね」

九澄「エムゼロかー……懐かしいな~」

前校長「お前が転校する前と同じ、レベル1のブラックマジックプロセスが施してある。
    だから完全に魔法が使えないわけじゃない。使える魔法の程度はたかが知れているがな。
    斉木がいないときはその記憶した魔法とお得意のハッタリでなんとかするんだな」

九澄「あ、ああ」

前校長「使い方は忘れていないな?」

九澄「もちろん。あんな苦労して手に入れたプレートなんだ。
   忘れようもないぜ」

前校長「一応おさらいだ。ブラックプレートの使い方を応えてみろ」

九澄「魔法をプレートで受けるときに、『チャージ』で魔法を記憶。
  『チャージ』した魔法を使うときは、『オープン』だろ?
   んで、一度『オープン』で使ったら、記憶された魔法は消えると」

前校長「よし」

校長「エムゼロプレートの使い方も覚えていますか?」

九澄「半年間とはいえ、俺の相棒だったわけだからトーゼン覚えてるって。
  『エムゼロ』を唱えたら魔法を打ち消すことができる空間を作り出す、だったよな。
   エムゼロの形状変化だって感覚のこっているから、たぶんまだできるし」

校長「ふふ、それならよかったです」

九澄「でも、シルバーに引き上げちまったから結局魔法ポイントほとんどないんだよなぁ。
   結局エムゼロは当面使えねー」

前校長「わかっていると思うが、軽々にエムゼロを使うとゴールドへの道はその分遠のく。
    エムゼロの発動は魔法ポイントの使用が不可欠だからな」

九澄「わかってるって。打ち消す魔法も使用ポイントに応じた分しか消せないしなぁ」

前校長「斉木に協力してもらって、うまくポイントを溜めることだな」

九澄「斉木、ね……ひとつ聞いていいすか?」

前校長「なんだ」

九澄「あの斉木ってやつ…信頼できんのか?
    エムゼロのことをベラベラ喋ったりなんて…」

前校長「斉木なら大丈夫だ。
     あいつの目的はひたすらに目立たないことだけのようだからな。
     自分が超能力者だということを吹聴しないのがいい証拠だ」

九澄「超能力者ねぇ……さすがにあれ見たら信じるっきゃねーけど。
    超能力者が本当にいるなんて、夢でも見てるみてーだ」

校長「魔法が存在しているのですから。超能力者が存在していても不思議じゃないですよ」

前校長「斉木も、自分が超能力者だとバレないように行動している。
     お前の秘密をベラベラ喋るようなことはしないはずだ。
     お前がやけくそになって喋られたら困るのは斉木も同じだしな」
     
前校長「そもそも、こちらから話しかけなければずっと黙っているような男だからな」

校長「本当に彼には、なんとお礼を言ったらいいか」

前校長「柊に頼っていたころよりは、誤魔化しやすいはずだ。
     斉木に魔法がどういうものかちゃんと話して、連携とれるようにしておけ」

九澄「そりゃ、やるけど……しまった。斉木の連絡先きいとくんだった」

前校長「……斉木に話しかけるように強く念じながら頭の中で話しかけると
    テレパシーとして、斉木は心の声を聴けるらしいぞ。
    長距離になると拾えなくなるらしいがな」

校長「お父様?」

九澄「へぇー、便利なもんだな。超能力者って」

校長「……一応、九澄くんと斉木くんが一緒のクラスになるように
   取り計らうつもりではいるんですが」

九澄「え、一緒になれない可能性も!?」

校長「斉木くんもシルバーで入ってもらう予定なのは先ほど話したのですが、
   2年生の中盤とはいえ、2年生の初期を過ぎた段階でシルバーは優秀な部類に入るのです」

九澄「? それが?」

校長「そして九澄くんはゴールドということになっています。
   つまり、九澄くんと斉木くんが同じクラスに入ってしまうと
   クラス間の魔法の成績バランスがかなり崩れてしまうのですよ」

九澄「あ、ああー。学校のセンセってそういうことも考えないといけないのか……」

校長「我が校は魔法を取り扱っている学校ではありますが、魔法の特進クラスなどは設けていませんから。
   その分学業と魔法のクラス間でのバランスを重視しているのです。
   クラスマッチなどの魔法行事もあることですし、偏っていては盛り上がらないでしょう?」

九澄「へ、へぇー」

前校長「どうでもよさそうな顔をするな」

九澄「だってなぁ……ベンキョーも魔法も実際のところ、
    ほぼほぼ『ゼロ』な俺からすると縁遠い話というか」

前校長「やれやれ、こいつは」

校長「なんとか学年主任の柊先生と相談をして、同じクラスになれるように努めてみます」

九澄「ウ、ウッス。お願いしまっす」

前校長「とりあえず、一旦ボクも帰るぞ。柊に身体を返さないといけないからな」

校長「お父様、ありがとうございました」

前校長「ああ。またいつでも遊びに来い、音芽」

前校長「≪インスタントワープ≫!」

シュルルルル――……。

九澄「い、インスタントワープの欠点って、完了まで時間かかることじゃなかったっけ……。
   それをこの早さで、移動しきっちまうとは」

校長「ふふ、あの人は、少し規格外なところがありますから」

九澄「魔法使えるようになってわかるけど、実際柊父も前校長センセもバケモンだよなぁ……。
    そりゃ、1年で柊父レベルの魔法が使えたら恐れられるワケだ。実際の俺は無能だったわけだケド。
    ……振り返ってみれば本当によく魔法なしで半年もったもんだぜ」

校長「(斉木くんは、それに匹敵する――いえそれ以上のチカラの持ち主と知ったら
   九澄くんはどうするでしょうね……?)」

続きは夜に

シュルルルル――……。

九澄「お? またインスタントワープ?」

校長「お帰りなさい、柊先生」

柊父「校長。それに……」

九澄「うわ、久しぶりだな! 柊父!」

柊父「九澄か……ちっ」

九澄「1年ぶりくらいに会ったってのにいきなり舌打ちかよ…」

柊父「……滝からお前のことは逐一報告が入っているからな。
   別段、久しいという感慨はうかばん」

九澄「そっか。滝センセとは仲いいんだったな」

柊父「あ゛? なんで滝には先生をつけて俺にはつけないんだ?」

九澄「こ、こえー顔すんなって。クセみたいなもんだからよー、ははは……」

校長「柊先生、お父様はなにかおっしゃっていましたか?」

柊父「ええ。『九澄をいじめすぎるなよ』と」

九澄「2人してひでーなぁ……」

柊父「それと『くれぐれも斉木を頼むぞ』とも」

校長「……そうですか」

柊父「その斉木は?」

九澄「もうテレポートで帰っちまったよ」

柊父「超能力者、斉木楠雄か……」

――――
――

前校長「では、身体は返したぞ」

柊父「ええ。では、私は戻ります。
   ……九澄とも話をしなければならないですから」

前校長「校長室でいいならボクのインスタントワープで送ってやる」

柊父「ありがとうございます」

前校長「あー、その前に。言っておくことがある。
    斉木についてだ」

柊父「斉木…あの超能力者ですか」

前校長「アイツの超能力は、ボクらの使う魔法とは次元が違う」

柊父「次元……?」

前校長「ボクたちが使う魔法は、あくまで技術だ。訓練次第で誰でも使える。
    だが、斉木の使う超能力は正真正銘の超常現象だ」

柊父「見た限り、手品や魔法のたぐいではなさそうでしたね」

前校長「ボクがみたのはヤツの能力の一端にすぎないがほぼ魔法の上位互換だ」

柊父「それは、いいすぎなのでは?」

前校長「言いすぎじゃない。まず使う場所を選ばないというのが大きい。
    それに規模が魔法とはケタ違いだ」

柊父「ケタ違い、ですか。
   私がみた限りでは、サイコキネシスは魔手≪マジックハンド≫のようなものでしたし、
   透視も透過視線≪クリアレイ≫を使えば我々でもできるわけですし、そこまでの違いは感じませんが」

柊父「まあ、もっともテレパシーだけは、魔法でもどうにもならないですが」

前校長「そうか。お前はテレポートを見ていないんだったな」

柊父「空間移転魔法なら――」

前校長「柊は魔法磁場がどこにでもあるとして、数百キロの距離を空間移転魔法で移動できるか?」

柊父「難しいでしょうね……それを斉木はできるのですか?」

前校長「ああ。ボクがみた空間移転は数百キロ程度だが、あの様子ならどこまで転移できても不思議じゃない。
    実際聖凪と斉木の実家は数百キロ離れている。それを呼吸をするようにやり遂げるようなやつだ」

柊父「そ、そうなのですか」

前校長「サイコキネシスにしても、あいつが全力でやっていてマジックハンド程度で済めばいいが。
     ただでさえ、この学校の魔法障壁を外部から破壊する力の持ち主といことはわかっているんだ。
     下手をしたら、小島くらいなら破壊できてもおかしくない」

柊父「もはや、一個人が兵器並みの力を持っていると考えたほうが良いと?」

前校長「斉木自身には、超能力を兵器のように使うつもりはないようだがな。
     それだけの力を持っている可能性があるということだけは心しておいた方がいい」

柊父「ふむ……」

前校長「だが、斉木に媚びる必要はないぞ。
    お前は教師、斉木は生徒だ。特別扱いはしなくていい。
    斉木も、そんなこと望んでいないだろうからな」

柊父「言われずとも元よりそのつもりですよ」

前校長「ただ、ヤツの協力がなくては九澄のことが解決しなかったことも事実だ。
    だから、困ったことがあれば助けてやってくれ。斉木が困るようなことがあればだが」

柊父「ええ」

前校長「くれぐれも、斉木のことを頼んだぞ」

柊父「わかりました」

前校長「それと、九澄のことをあまりいじめすぎるなよ、くく」

――
――――

柊父「……」

九澄「どーしたんだ? ただでさえこえー顔が余計に怖くなってんぞ?」

柊父「またキサマのお守りをしなきゃいけないかと考えていたら頭痛がしてきただけだ」

九澄「こ、このやろ…まだクビになる危機は過ぎ去ってねーんだぞ…。
   それにプレートさえあれば、俺だってもう魔法使えんだからな」

柊父「あ゛? 記憶消されて学外にほっぽりだされてーか?」

校長「ま、まあまあ。1年ぶりの再会ですし、そんなにトゲトゲしなくてもいいじゃないですか」

柊父「こ、校長」

柊父「(コイツがいると娘にどんなちょっかい出すかわからんからな……
    今のうちにできる限り釘を刺しておかないと……)」

九澄「俺だって突っかかりたくて突っかかってるわけじゃ……」

校長「とりあえず九澄くんは今日はこれで帰っていいですよ。
    また後日斉木くんに連絡を取って、夏休み中には九澄くんと打ち合わせをする機会を設けますから。
    そのときは九澄くんにも連絡を入れますね」

九澄「わーったっす」

校長「柊先生は、これから私とクラス編成についての話し合いをお願いします」

柊父「わかりました」

柊父「……!(そうだ。ふふふ、九澄め……見ていろよ)」

……

――斉木家

ヒュンッ!

斉木(やれやれ。せっかくの貴重な夏休みがこんなことで潰されてしまうとは)

久留美「おかえり、くーちゃん」

斉木(知らない人に紹介しておくと、彼女の名前は斉木久留美。僕の母だ)

國春「誰に向かって話しかけているんだ、楠雄?」

斉木(この人は……知らないおじさんだな)

國春「うぉい!? パパだよ! 斉木楠雄の父、斉木國春だよ!
   僕も誰か知らない人に紹介してよ!?」

斉木(誰か知らない人って、まったく頭のおかしいおじさんだな)

國春「楠雄が話しかけ始めたんだよね!?
   ほら! 知らない人からすると本当に知らないおじさんと思われちゃうだろ!?」

久留美「そういえばくーちゃん、聖凪の校長先生から贈り物が来てたわよ」

斉木(む。やっと届いたか)

斉木(コーヒーゼリーの詰め合わせセットを送ったらしい。律儀な校長先生だ)

斉木(学費もタダになるらしい。まあ、母さんたちにも悪くはない選択かもしれないな)

國春「む、無視しないでくれませんか。ママからもなんとかいってよ」

久留美「すっごく高そうなコーヒーゼリーだったから味わって食べないとね~」

斉木(ふむ)

知らないおじさん「ママまで無視!?」

知らないおじさん「って、名前まで変わってるーっ!?」

久留美「くーちゃん、冷蔵庫に入れておいたから好きに食べてね」

斉木(わかった)

知らないおじさん「戻してぇー! 戻してくれクスえも~ん!!」

斉木(うるさいな、まったく) ピッ

國春「あ、戻った。よかったぁ……」

斉木(今日は聖凪までいって疲れているんだ。面倒な手間を増やすな)

國春「聖凪って、今度から楠雄が国内留学する学校か。
   それにしても楠雄がこんな思い切ったことするとはなぁ」

國春「『父さん! 僕国内留学したい! 今度はやれそうな気がするんだ!』なんていうとはねー」

斉木(今度ってなんだ。そんな進研ゼミのようなノリで言った覚えはない)

あとでもっかい投下すると思いま

國春「それにしてもよかったのか? PK学園は」

斉木(別にどこの高校に通っても同じだからな)

久留美「せっかくくーちゃんにお友達ができたのに…」

斉木(友達じゃないんだがな……)

國春「学校が遠くなるんだから通学だって大変になるし」

斉木(瞬間移動で通学するから変わらない)

國春「勉強の進度だって違うかもしれないし」

斉木(高校の勉強程度ならいつでも満点とれる)

斉木(目立ちたくないから真ん中を狙ってるだけだ)

國春「新しく人間関係を築くのだって大変だし」

斉木(もともとできるかぎり他人と関わらないようにしているんだが)

國春「それに遠い地での新生活は思った以上に疲れるんだぞ!
   新天地の暮らしなんてものは、昔僕も経験しているけど大変で……」

斉木(戻ってくるのはここだからPK学園にいくのと変わらない)

斉木(だいたい半年だけなんだ。PK学園にだって半年後には戻るんだぞ)

國春「なんだ」

斉木(急に冷めるな)

國春「だって楠雄に人生の先輩としてアドバイスできるチャンスだと思ったらさぁ!?」

斉木(一回も人生の先輩として有用なアドバイスをもらったことなんてないんだが?)

國春「く、くそぅ」

久留美「そういえば……まだ国内留学を決めた理由は教えてもらえないの?
    わざわざあんな遠い学校に行くんだからなにかの理由があるんでしょうけど」

斉木(……魔法のことは家族であろうと口外厳禁らしいからな。
    さすがに僕から一方的に契約を違えるわけにもいかない)

斉木(申し訳ないが、母さんでも話すことはできないな)

久留美「そう…でも、くーちゃんが決めたことなんだからママはちゃんと見守ってるからね」

國春「大丈夫だよママ。楠雄は僕たちの息子なんだ。道を間違うはずがないよ」 キラキラキラキラ

久留美「そうね、パパ」 キラキラキラキラ

斉木(やれやれ、二人でラブコメ空間に入ってしまったか。擬音が鬱陶しいな)

斉木(それにしても、魔法か。どんなものか教えてもらわないとサポートなんてできないぞ)

斉木(夏休み中に、もう一度聖凪にいって魔法を見ておく必要がありそうだな)

寝落ちしてたのでここまでで
余裕があったらまた

――数日後、聖凪高校、屋上。

斉木(ふむ。ここなら人目につかなさそうだな。登校するならここに瞬間移動しよう)

九澄「入道雲みると、いかにも夏って感じがするな~」

斉木(別に僕は思わない)

柊父「さて、九澄に斉木。今日はお前たちのサポート関係を整えるために集まってもらった」

九澄「っても、俺は一方的にサポートされる側だけどな、ははは……はぁ」

斉木(わかりやすく落ち込んでるな)

九澄「だってよ~……本来なら魔法使えてたんだぜ~……」

柊父「嘆いても仕方がない。
   できる限り早くゴールドに上がるためにも斉木とのコンビネーションを盤石にするんだな」

柊父「まず、斉木に魔法とはどういうものか知ってもらう」

斉木(テレパシーで勝手に読み取るから、頭の中に思い浮かべてくれればそれでいい)

柊父「そ、そうか(便利なのか恐ろしいのか……)」

斉木(少なくとも便利ではないな。常時罵詈雑言が溢れる騒音だらけの世界だぞ)

柊父「(テレパシーで脳内に直接送ることもできるのか。コイツの前では嘘はつけないな……)」

九澄「そういや、テレパシー使えるんだってな。前校長先生から聞いたぜ」

斉木(そうか。まだ九澄には話していなかった)

九澄「斉木に話しかけたいときには、心の中で念じればいいんだろ?」

斉木(そんなことをしなくても――ん?)

九澄「(なんでもかんでも聞かれるなら困るケド、それくらいなら便利だよな)」

斉木(……)

九澄「(おーい、斉木ー、聞こえてるか~……なんつって)」

斉木(聞こえてるぞ)

九澄「うおっ!? マジだ!」

斉木(前校長に『念じたときだけ伝えられる』と吹き込まれたようだな)

斉木(まあ、そう思っているならそれでいい)

柊父「いいか? 話を進めるぞ。
   斉木は、魔法について思い浮かべるから読み取れ」

斉木(ふむ。なになに)

斉木(なるほど。大体分かった)

九澄「はえーな!?」

斉木(魔法を使うにはプレートが必要で、プレートのランクに応じて種類と威力が決まる)

斉木(魔法使用にはMP≪マジックポイント≫が必要であり、各プレートにMPの上限が設定されている)

斉木(よって1日に使用できる魔法は上限が存在する)

斉木(魔法には強化系、操作系、放出系、視覚系、性質変化系などがあり、
  それぞれの魔法を使用するためには事前に基本書、魔法書からプレートへ声紋入力詠唱しなければ使えない)

斉木(入力した後は魔法名で魔法を呼び出すことができる)

斉木(こんなところか)

柊父「……」

九澄「す、すげー……」

斉木(そして九澄はここではゴールドプレート、つまり教師レベルの魔法を使えると思われている)

斉木(つまり僕が九澄が魔法を使うときはゴールドプレートレベルの魔法を再現し、
   僕自身が使うときはシルバープレートレベルの魔法を再現しろということか)

九澄「いいっ!? そんなことまでわかんのかよ!?」

斉木(柊先生がそう考えていただけだ)

柊父「そ、そういうことだ(凄まじいな……)」

九澄「超能力って反則だな……」

柊父「長々説明する手間が省けて助かった。
   今から俺がゴールドプレートレベルの魔法を見せる」

柊父「それをみて、どの程度のものか感覚をつかんでくれ」

斉木(やれやれ。超能力は細かい調整に向かないんだがな)

柊父「基本的にゴールドプレートは魔法の威力、魔法入力の容量のバランスをとったタイプのプレートだ」

柊父「つまり魔法の威力もそこそこ高く、魔法の種類もそれなりに多いということだ」

柊父「強化系など各系統の魔法を一通り見せる。
   できそうなもの、できそうにないものは言ってくれ」

斉木(ふむ)

柊父「まずは……これだ。身体強化系魔法、≪カートゥン・ハンド≫!」

斉木(ほお、手だけが巨大化したのか)

柊父「一応見た目だけでなく殴る力や握力なども強化されている。
   できそうか?」

斉木(……力が上がったように見せかけることはできるが、見た目を変えるのは難しいな)

斉木(見た目を変えず、火事場のバカ力を発揮しているように見せかけることはできる)

柊父「そうか、魔法解除≪マジックアウト≫」 シュン

柊父「まあ、身体強化だけをするような魔法もあるからな。大丈夫だろう」

柊父「ちなみに強化系魔法は肉体だけでなく物質を強化することもできる。
   たとえば、こんな風に」 パアア

斉木(おお。おたまが大きくなった)

九澄「うへぇ、1年前の悪夢が思い返される気分だぜ……」

柊父「これはおたまを大きくしただけだが、
   応用すれば魔法特区内の物質を魔法使用中だけ削り取るようなこともできる。
   マジックアウトすれば元に戻るといった具合にな」

斉木(なるほど。こうしてみると魔法と超能力は違う部分が多いな)

斉木(僕の超能力はその巨大化のように物体構造を変化させることはできないからな)

柊父「そうか。では強化系の魔法を再現することは難しそうか」

斉木(たしかに物を巨大化させることは難しいが、削ったものを元に戻すことはできるぞ)

柊父「な、なに!?」

斉木(一度壊したものを復元能力を使って1日前の状態に戻せばいいだけだ。ただし1日1回しか使えないがな)

柊父「ふ、復元能力……(反則染みてるな……)」

九澄「……(反則すぎんな……)」

斉木(悪かったな、反則で)

柊父「!! あ、あーいや。つ、続けよう」

九澄「?」

柊父「次に操作系だが……九澄髪の毛もらうぞ」プチン

九澄「ってぇ! なにすんだ!」

柊父「一髪操作小≪ワンヘアーマペットミニ≫!」

グギィ!

九澄「い、いでででででっ!」

柊父「とまあ、こんな形で対象者を操作したり、物質を操作したりする能力だな」

斉木(こういう系のものならサイコキネシスの応用で大抵何とかなりそうだな)

柊父「そうか。それならこれは心配することなさそうだ。よかったな九澄」

九澄「俺で実演すんな!」

柊父「ふふふ、みているだけでは暇だろう?」

九澄「て、てめー……(くそぉ、あとで覚えてろよー……)」

斉木(そんなことよりさっさと進めてくれ)

柊父「そうだな。次は放出系だ。
   そうだな、空中に向かって撃つから見ていてくれ」

柊父「放出系とはこういうタイプのものだ。声震砲≪ボイスワープ≫!」

ボッ……ドォォオォン!!

九澄「……!!(で、でけぇ…! 柊のよりも何倍も……!!)」

柊父「ふう。どうだ?」

斉木(こういうタイプのほうが再現しやすいな)

九澄「いいっ!?(あ、あのデカさの衝撃波を撃てるっていうのかよ……!?)」

柊父「威力もゴールドとなるとあれくらいは欲しいがいけそうか?」

斉木(むしろ思ったより高威力で助かるな。あまりに弱いと調節が難しい)

九澄「ちょ、ちょちょ! ちょっと待ってくれよ! あれが撃てるってマジかよ?
  (あんなのそう簡単にほいほい撃ててたまるかよ!)」

斉木(ふう。見せたほうが早いな)

九澄「え……?」

柊父「ほう(ようやくコイツの真価がみられるのか)」

スッ……。

斉木(みていろ)

九澄「手を上空に向けてどうすんだ?」

ズッ……ドォオォオンッ!!

柊父「な、にぃいぃっ!?(校長クラス!? いやそれよりもっと大きいぞ!?)」

九澄「だああぁっ!? な、なな……! 入道雲が消し飛んでるうぅうう!?」

柊父「な、なにをしたんだ、斉木!」

斉木(サイコキネシスを手のひらから撃ちだしただけだ。
   ただここら辺一帯の雲が吹き飛んでしまったな)

斉木(まあ、これくらいなら問題なく出せる。放出系は大丈夫だ)

九澄「!? だめだめだめ! こんな威力のもの間違っても人に撃つなよ!?」

斉木(だからそもそも基本的に人前で使う気はない)

柊父「(な、なるほど。前校長が仰っていた意味がようやく分かったぞ……)」

またあとで

九澄「ちっ(それでもやっぱり、くやしいぜ)」

柊父「? どうした、九澄」

九澄「なーんも」

斉木(それで次はどうするんだ?)

柊父「あ、ああ……次はだな――」

……


柊父「これで一通りだ」

斉木(ふむ。物体の巨大化や変質以外は何とかなりそうだな)

斉木(大半はサイコキネシスとテレポート/アポートで誤魔化せるはずだ)

九澄「しっかしまさか視覚系の魔法までカバーできるとは思わなかったぜ……」

柊父「千里眼に透明化……まったく超能力は優秀すぎて嫌になるな」

斉木(何度も言うが、こんな能力はあっても困るだけだ。それに条件もあるしデメリットもある)

九澄「でも時間さえかければ魔化粧≪リアルフェイス≫っぽいのだって使えんだろ?」

斉木(トランスフォーメーションのことなら完了まで2時間かかる。実用的じゃない)

柊父「その代り、体格や性別、はては種族の壁さえ容易く超えられるんだろう?」

斉木(あまり人間以外にはなりたくはないがな)

斉木(もっとも九澄がほかの者になる魔法にみせかけるだけなら、催眠で事足りる)ピッ

九澄「え? なに?」

柊父「な゛!? 俺!?」

斉木(身長もよっぽど離れてないなければ誤魔化せるぞ)

九澄「え、え? なになに? どうなってんの?」

柊父「お前は、どうなってるかわからんのか」

九澄「どうなってるもなにも別になにもかわってないしよー」

柊父「鏡を見せても意味はないのか?」

斉木(あくまで姿かたちが変わってるわけじゃないからな)

斉木(まわりにそう思い込ませているだけだ)

柊父「なるほどな……(ということは写真やビデオでも取られたらやっかいか?)」

斉木(……ちなみに写真やビデオを介しても催眠の効果は持続するから安心していい)

斉木(みている周囲にかけるのではなく、みられる人物にかけるモノだからな)

柊父「そ、そうか(わかっているとはいえ心臓に悪い……)」

斉木(大丈夫だ、心臓病の気はない)

>>80はミス
訂正は以下

九澄「(にしてもさっきの柊父のボイスワープ……)」

九澄「(1年前に俺が『チャージ』した時よりも数段威力があるじゃねーか。
    手加減してやがったな……くそっ。そりゃあんなの喰らったら身体もたねーケドよ)」

九澄「ちっ(それでもやっぱり、くやしいぜ)」

柊父「? どうした、九澄」

九澄「なーんも」

斉木(それで次はどうするんだ?)

柊父「あ、ああ……次はだな――」

……


柊父「これで一通りだ」

斉木(ふむ。物体の巨大化や変質以外は何とかなりそうだな)

斉木(大半はサイコキネシスとテレポート/アポートで誤魔化せるはずだ)

九澄「しっかしまさか視覚系の魔法までカバーできるとは思わなかったぜ……」

柊父「千里眼に透明化……まったく超能力は優秀すぎて嫌になるな」

斉木(何度も言うが、こんな能力はあっても困るだけだ。それに条件もあるしデメリットもある)

訂正了

>>81

柊父「それはよかったよ……」

九澄「よー、だから俺どうなってるんだ?」

斉木(九澄は今柊先生と同じ姿になっている)

九澄「え? 身長けっこーちがうぜ?」

斉木(さっきもいったがある程度までなら誤魔化せる。
   ちなみに声も催眠状態なら同じだと認識されている)

九澄「ほーん。便利なもんだなー。リアルフェイスは声まで真似できねーもんな。
   でもかけられても自分じゃ確認できねーんじゃなぁ。それもそれで困るカモ…」

斉木(催眠を使ったときは、テレパシーでどんな催眠をかけたか教えてやる)

九澄「あ、そか。テレパシーがあるんだったな。オッケーオッケー!」

柊父「超能力者一人で本当に大半の問題が解決してしまうな……」

九澄「んー、ってことは……あれ?(柊の夢もこれで叶うんじゃ……?)」

斉木(……)

九澄「(柊の、お母さんに会いたいって夢を……)」

斉木(……なるほど。聖凪高校では卒業時にプレートのレベルに見合った願いがかなえられるのか)

斉木(僕のこの超能力の呪いを外せるなら本格的に聖凪への入学を考えてもいいのだが)

斉木(どうなんだ? 柊先生)

柊父「(九澄の思考を読み取ったのか……まあ、結論から言うと難しいだろうな)」

斉木(ふむ。そうだろうな)

柊父「(はっきり言って願いと言ってもたかが知れている。大金持ちになりたいとかそんな願いは叶えられん)」

柊父「(斉木、お前のチカラはその願い以上のシロモノだ。
    それをどうこうしようとなるとゴールドプレートが100枚あっても無理だろうな)」

柊父「(つまり、悪いが聖凪ではお前の願いはかなえられん)」

斉木(最初から期待していないから、大丈夫だ)

柊父「(……まあ、夢のようなコーヒーゼリーが食べたいとかなら叶うかもな)」

斉木(よし、今すぐ国内留学から転入手続きに変えろ)

柊父「!?」

斉木(冗談だ。別に魔法で願いを叶えてもらわなくても、至高のコーヒーゼリーならいつか僕が見つけ出す)

柊父「(そ、そうか……)」

斉木(ただでさえ超能力のせいで喜びも楽しさも達成感も奪われている人生なんだ)

斉木(それくらいの楽しみがなければな。それを魔法で叶えてしまっては味気がない)

柊父「(……そうか、彼は、奪われているのか。我々のごく当たり前の幸福を)」

柊父「超能力者も、大変だな」

斉木(やれやれ。同情してくれなくていいのだがな)

九澄「(……)」

斉木(ふむ。こっちもこっちでなにか悩んでるみたいだな)

九澄「(斉木の力があれば……柊の願いを叶えてやることも……)」

九澄「な、なあ。斉木……(もし、おめーさえよければ、その催眠を……)」

斉木(……)

柊父「九澄?」

九澄「(……いいのか? それで)」

九澄「(確かに、柊父に写真を見せてもらえば斉木の催眠で柊はお母さんに会えるかもしれねぇ)」

九澄「(柊父に催眠をかけてのお母さんに成りすましてもらえば、それなりに振る舞ってもくれるにも違いない)」

九澄「(でも、でもそれじゃあ……柊を騙していることになっちまう! それに……そんなの柊が会いたかったお母さんじゃねぇ!)」

九澄「(ただの、柊のお母さんの皮をかぶっただけのニセモノを会すわけにはいかねーだろーが!)」

九澄「(柊が会いたいのは、本物の柊のお母さんであって……って魔法でも本物じゃねーケド……)」

九澄「(とにかく、そういうことじゃねーんだよ! それに無関係な斉木になに頼もうとしてんだ! 寝ぼけてんなよ、俺!)」

ゴチィッ!

柊父「!? 九澄いきなり自分を殴りつけてどうした!?」

九澄「は、ははは……ちょっと昨日睡眠不足で眠くてよー。
   眠気覚ましに一発、ね!」

柊父「にしても、そんな思いきり殴らんでもいいだろうに……」

斉木(……それで? 僕に用があったんじゃなかったのか?)

九澄「あ、い、いや! なんでもねぇ!
   と、とにかくきにしねーでくれ、斉木」

斉木(そうか)

できれば今日のうちにもう一回投稿したい(願望)

>>88
>九澄「(柊父に催眠をかけてのお母さんに成りすましてもらえば

柊父に催眠をかけて柊のお母さんに成りすましてもらえば、ということで

柊父「?」

斉木(あのまま僕を頼ってくるようなら、有無を言わさずPK学園に戻るつもりだったが)

斉木(僕はお人好しでここにいるわけじゃない。あの幽霊との契約と僕のきまぐれでいるだけだ)

斉木(そんなつまらない人物の協力をするつもりはないからな)

斉木(とりあえず、しばらくは様子を見てもいいかもしれないな)

斉木(とりあえず、九澄にかかっている催眠を解いておくか)ピッ

柊父「ああ、戻ったか」

九澄「あ? ああ、そうか催眠かけられてたんだったな」

九澄「俺はなんもわからねーから実感ねーんだけど」

斉木(なら柊先生に催眠をかけよう)ピッ

柊父「うん?」

九澄「うおおっ!? お、俺がもう一人!?」

柊父「俺は今、九澄になっているのか……(複雑な気分だ……)

>>92
最後鍵かっこ外れた

斉木(こういうことだ。もういいだろ)ピッ

九澄「よーく理解できた(ほんとスゲーな、超能力って)」

柊父「まあ、みる限りゴールドレベルの魔法を偽装するのは大丈夫そうだな」

九澄「ああ」

斉木(ひとつ言っておくが、超能力を乱発する気はないからな)

九澄「わーってるよ。できる限りハッタリで通せるように頑張るさ」

九澄「(くそぉ~。聖凪にいるとハッタリばっかりだぜ……)」

柊父「斉木が乱発する気がないのはわかったが、動きを合わせる練習だけしておけ」

柊父「俺は、仕事があるから職員室に戻る。何かあったら職員室まで来い」

九澄「へーへー」

柊父「いいか。くれぐれもボロを出さないように練習しておけ。
   お前のためにも俺のためにもな」

バタン。

九澄「柊父め……1年経って少しは丸くなってるかと思ったら……」

斉木(たしかに年齢の割に子供っぽいかもしれないな)

九澄「ま、いいや。とりあえず練習しよーぜ」

斉木(練習はいいがどんな魔法を使えるようにする予定なんだ)

九澄「そーだなぁ……じゃあ――」

……


――そうして2学期始業式を迎える。

中途半端になるので今日はここまで
続きは後日

エムゼロで斉木のエスパーって無力化できないのかな?

>>101
エムゼロはあくまで魔法磁波を打ち消す空間を作るプレートでしかないので無理です
魔法が魔法磁波を用いて発動する事象であるためエムゼロで魔法を無効化できるだけであって
魔法磁波を介さない斉木の超能力は打ち消せません

――聖凪高校、校長室。

校長「――ということにしておいてください」

九澄「おっけ。斉木には俺から話しておくよ」

校長「ええ、助かります。
   私もこのあとすぐに始業式の打ち合わせに行かなければなりませんから」

九澄「にしても。うおー…キンチョーするううぅ……」

校長「おやおや。九澄くんらしくないですね」

九澄「ってもみんなに会うのも1年ぶりだしよー……。
   結局コッチに正月帰ってきても、みんなに会えなかったし」

校長「あら。そうだったのですね」

九澄「(そ、それに、柊と会うのだって1年ぶりなわけだし……)」

九澄「あれ? そういや斉木は――」

ヒュンッ!

九澄「うおっ!(マジでキスする5cm前!?)」

校長「来たみたいですね」

斉木(……登校した瞬間MK5は勘弁してほしいな。千里眼で確認しておくべきだったか)

斉木(しかし瞬間移動で登校ができる日が来るとは)

九澄「び、ビックリさせんなよ!」

斉木(わるかったな)

校長「九澄くん、斉木くん。お二人揃ったところでお話があります」

九澄「話?」

斉木(ああ。クラスのことか)

校長「まずクラスのことなのですが、無事二人を同じクラスにいれることができました」

九澄「おー! サンキュな!」

校長「一応、二人とも尾輪哩高校での顔なじみであり、
   斉木くんを円滑に当校へなじませるという名目で一緒にすることになっています」

校長「本来はやはり、ゴールドとシルバーを同じクラスに入れてしまうのは好ましくありませんから」

斉木(僕はここでも友達を作る気はないぞ)

校長「ま、まあまあ。そうおっしゃらずに。せっかくの新生活なんですから」

九澄「は、はは……ま、まあ、積極的に話しかけるタイプには見えないな。
  (気難しいやつってことで斉木のフォローを俺がするって建前で)」

斉木(実際フォローするのは僕だがな)

作者だったよ
ネタ書いてる本人じゃんごめんなさい

九澄「うおっ!? テレパシー!?(あれ? でも俺今斉木に呼びかけてないんだケド…)」

斉木(……僕のことを考えながら話しかけるとテレパシーとして拾うんだ)

九澄「ああ、なるほどな」

斉木(…ということにしておこう)

校長「さて、私は始業式に出なければなりませんので」

校長「二人は、始業式が終わったら柊先生がここまで迎えにきますので。
   それまで、クラスでどう振る舞うかあたりをお話ししていてください。
   それでは」

バタン。

九澄「どう振る舞うってもなぁ」

斉木(僕は目立たないようにしていれば、それでいい)

九澄「そーいや、俺と斉木の尾輪哩高校での関係の設定とか作ってないよな?」

九澄「なんで知り合ったとか、どうして斉木がこっちに留学してきただとか」

斉木(適当に作ってくれ。僕は目立ちさえしなければそれでいい)

九澄「ブン投げかよ……(まー、尾輪哩高校での俺のライバルとかでいいか)」

斉木(テレパシーでわかっている分聞くのも馬鹿らしいが……)

斉木(九澄、ちなみにどんな候補が頭に浮かんでいるのか聞いておこう)

九澄「え? ライバル関係だったとかで」

斉木(……却下だ。九澄とライバル関係なんて目立つことこの上ない設定すぎるだろ)

斉木(第一ゴールドとライバル関係になれるシルバープレートっているのか?)

九澄「そ、それもそうだな……」

九澄「じゃあ、向こうの魔法執行部の仲間ってことで……」

斉木(魔法執行部? ……ああ、魔法で生徒間のいざこざを解決する組織か)

斉木(ならそれも却下だな)

九澄「えぇ? なんでだ?」

斉木(魔法執行部であるというだけで目立つ要因が多すぎる)

斉木(何度も言うが、僕は目立ちたくないんだ)

九澄「ってもよー。2年のこの時期にシルバーってだけでもかなり目立つぜ?」

斉木(……ちっ。ある程度は妥協するしかないか)

九澄「それに、国内留学してくるってところでも特別優秀者の括りだしな。
   本来ならブラックプレートじゃないと、転校や退学時は記憶消されるんだけどよ。
   斉木は特別留学生として、ブラックプレートでもなくこっちに来た初めての優秀な生徒って設定、だってよ」

斉木(!? なんだその話は!? 初めて聞いたぞ!?)
   
九澄「俺だって、斉木が来るちっとばかし前に校長センセから聞いただけだしな」

九澄「俺はブラックプレートだから学籍をそのまま尾輪哩に移したんだけど。
   斉木は俺の場合と違って学籍は尾輪哩にあることになってる設定らしい。
   だから転校扱いじゃなくて、記憶も消されることなく聖凪に来られた、ってことにしているみたいだぜ」

九澄「聖凪も尾輪哩も、同じ魔法学校だからこその特例らしーけどな」

斉木(冗談じゃない。特別、特例なんて僕が忌み嫌っている単語だらけじゃないか……)

九澄「まあ、ブラックプレートは今のところ3年の一部と教師しかしらねーみてーだが。
   なんにせよ、教師からは相当優秀な生徒だと思われるってこった」

九澄「だから中途半端な設定にすると、かえって目立っちまうぜ?」

斉木(くそっ。どうしてこんなことに…)

ガチャ。

柊父「おい。二人とも教室にいくぞ」

九澄「いいっ!? もう始業式終わり!?」

斉木(なんとか目立たない理由を見つけなければ……)

柊父「何を焦っているんだ、お前たち。いいからいくぞ」

>>106
おきになさらず

――2年C組前廊下。

九澄「(やべー……まだ思いつかねー!)」

斉木(どうすれば目立たないように回避できる…?)

柊父「二人して、なんだその難しい顔は。
   俺が先に入るから俺が呼んだら入ってこい」 ニヤッ

ガララッ。

九澄「なんだ、あのおっさん……ニヤついて気持ち悪ィな……」

斉木(……柊先生の考えていることはわかったが、僕には関係のないことだな)

九澄「(いや、今はそれどころじゃねぇ! どーするよ、斉木!)」

斉木(…仕方ない、訊かれるまでこちらから応えなければいい)

斉木(男女の馴れ初めじゃないんだ。そもそも男同士の知り合ったきっかけを聞きたがるやつもいないだろ)

九澄「(そーだといいがよ~…)」

斉木(やれやれ、転校初日から厄介な問題を抱えたものだ)

ガラッ。

柊父「二人とも入ってきなさい」

九澄「どーやら、タイムリミットみたいだぜ……」

斉木(とりあえず、魔法執行部にいたということにしておく)

九澄「だな……」

――2年C組。

柊父「今学期から、この二人がこのクラスのメンバーに加わる」

ガラッ。

九澄「ち、ちーっす」

全員『く、くく、九澄ぃいいぃいぃいぃぃ!?』

九澄「も、戻ってきたぜー、なんつって…」

生徒1(なんで九澄がこのクラスに?)

生徒2(九澄くんが、戻ってきた!?)

生徒3(うおおおおっ! ゴールドプレートの九澄が加わったなら魔法イベント総なめできるぞ!)

生徒4(九澄、また一緒のクラスになれて嬉しいよ)

生徒5(な、ななな、なんでく、九澄がここに!? まだ1年経ってないじゃないのよ!?)

生徒5(や、やばっ! か、顔がどんどん熱く……心臓もバクバクいって……一緒のクラス、九澄と一緒のクラスになれたのよね!?)

生徒5(だ、ダメ……まっすぐ顔見られない…だ、大体アイツ! お正月も結局顔見せなかったし!)

生徒5(って、あたし忘れられてないわよね……? やだ、不安になって――)

全員『うおおおお!! 九澄ぃいぃい!!』

九澄「うひーーーっ!?」

斉木(ほう。たいした人気だな。これがゴールドプレートの力……いや、これは九澄自身の人望か)

斉木(生徒の関心は全部九澄に向いている。これなら、僕が目立つこともないだろう。一安心だ)

ザワザワザワ……。

柊父「静かにしろ。九澄のほうは、ほとんど知っていると思うが、一応自己紹介をしておけ」

九澄「う、うっす。九澄大賀っす。尾輪哩高校への国内留学が終わって戻ってきたっす。
   またみんなよろしくな! ……って、あれ?」

柊父「どうした? 九澄」

九澄「あ、あれぇえぇぇ!? クラスのメンバー変わってねーか!?」

柊父「当たり前だろう? 2年に上がる時にクラス替えがあったんだからな」

九澄「って……(ひ、柊がいねえぇえぇえぇぇぇ!!)」

柊父「フフフ(馬鹿め、せっかくのクラス替えのチャンスだ。キサマと娘と一緒のクラスにするわけがないだろう!)」

九澄「て、テメ~! 謀りやがったなぁ!?」

柊父「さて、なんのことだかわからんな」ニヤリ

九澄「その薄ら笑いがいい証拠じゃねーか!」

生徒6「おー! 入学当初みたいに柊先生と九澄の魔法バトルっすか!」

生徒7「ひゅーひゅー! ゴールド同士のバトルみてーぜ!」

ざわざわざわ……。

斉木(ずいぶんと騒がしいな)

柊父「馬鹿なことを言うな。減点するぞ。
   九澄もこれ以上文句を言うなら、どうなるかわからんぞ? フフフ」

九澄「ぐ、ぐぬ…(お、覚えてやがれよ~!)」

生徒6「う、すみません……」

生徒7「はい……」

柊父「それに、もう一人の自己紹介が終わってないんだからな」

生徒7(あ、いたんだっけ)

生徒3(九澄にばかり気を取られて全然気が付かなかった)

生徒4(なんとなくここまで無視されているのをみると親近感がわくな……)

斉木(いいぞ、九澄。その調子でどんどん目立て)

九澄「(なにもしてねーんだけど……)」

柊父「ほら、斉木も自己紹介をしろ」

斉木(まあ、無難な自己紹介をしておこう)

生徒1(ふむ。自己紹介を聞く限りフツーかな? ちょっと暗め? それにしてもシルバープレートかぁ)

生徒2(尾輪哩高校の執行部にいたんだ。向こうでの九澄くんの生活とか後できいてみよーかな?)

斉木(休み時間は即エスケープさせてもらおう)

中途半端だけどここまで
また後日

柊父「お前たちの席はそことそこだ。あとはテキトーによろしくやれ」

九澄「くそぉ……(しゃーねぇ。休み時間にでも柊のクラスを探しておくか……)」

九澄「えーと? 廊下側の席の後ろ二つか」

斉木(僕は逃げやすいように一番廊下に近いところを選ばせてもらう)スタスタ

九澄「大概斉木もマイペースだなー……どっちでもいいけどよ」スタスタ

生徒5(わっ、わっ! く、九澄が、こっちにくる…! どど、ど~しよ!)

九澄「ん、おお!? 観月じゃねーか!」

生徒5改め観月「はうっ! ひ、ひひ、ひさしぶりね!」

九澄「はは、久しぶりだな! 元気してたか? って、この間電話したばっかだったよな。
   ちょっとテンパってて全然クラスメイトの顔見てなかったけど、顔見知りがいてよかったよ」

観月「あ、あたしで悪かったわね(や、やば~っ! 顔全然直視できないっ!)」

九澄「? 何が悪いんだ? お前だからいいんじゃねーか。
   このクラスに観月がいてくれて、本当にウレシーんだぜ?(知り合い一人もいねーんじゃ戻ってきてもせつねーしな)」

観月「~~~~~~~~っ!(かかか、顔が熱いぃぃ~~~!!)」

斉木(きみ、ラブコメの主人公かなにか?)

九澄「(なにいってんだ?)」

観月「うぅ~……」

九澄「なあ、観月。さっきから顔そらしてどうしたんだ?」

観月「な、なんでもないわよっ!」

九澄「は、はあ。何怒ってんだ?(相変わらずわかんねーやつだな~)」

観月「怒ってない!」

斉木(ラブコメの主人公だな)

観月「い、いい、1年C組の人も何人かいるから後であいさつしときなさいよっ!」

九澄「んー、おお、そうだな! なんだ、けっこー元C組いるじゃねーか!」

九澄「次原、またよろしくな! おお、堤本もいるじゃねーか! 桃瀬も!」

生徒4(人気者だな、九澄は)

生徒4(ま、九澄は自分のことは覚えていないだろうケド――)

九澄「それに、影沼も! またよろしくな!」

生徒4改め影沼「! あ、ああ」

九澄「? なに不思議そーな顔してんだ?」

影沼「いや、覚えていたことに驚いて……忘れられているとばかり」

九澄「なにいってんだ。同じクラスで執行部員だったんだから覚えてるっての。
   つか半年も一緒にいたんだから忘れるほうが難しいだろ」

影沼「九澄……ありがとう」

九澄「ありがとう? 変なこと言うやつだな」

影沼「……ああ。すまない。変なことを言った。
   それと、言い忘れてたよ。おかえり」

九澄「おう! ただいま」

影沼「あと、斉木くん、だったかな。よろしく」

斉木(僕はよろしくするつもりはないんだが)

斉木(しかし、ここで無視をすれば反対に目立つな。挨拶くらい返しておくか)

影沼「(あっさりしてるな……同じタイプの匂いがする、仲良くできそうだ)」

斉木(どうしてそうなった)

九澄「あ、アハハ! 斉木は人見知りでよー……。
   ちょっと気難しいやつだけど、悪いやつじゃねーから許してやってくれ」

影沼「そうか(人見知り……やっぱり気が合うかもしれないな……)」

斉木(僕に変な設定を付け加えるな。僕は別に人見知りじゃないぞ)

九澄「(そうでもいっとかねーと、あっさりしすぎだっての!)」

生徒2「(気難しいんだー…話しかけるのはちょっと様子みてからかなー)」

生徒3「(まあ見るからに無口そーだしな。誰かとつるむってタイプじゃなさそーだ)

斉木(いや、グッジョブだ、九澄)

九澄「(?)」

柊父「再会で騒ぎたい気持ちもわかるが、そこらへんにしておけ。
   ホームルーム始めるぞ」

九澄「ういーっす」

柊父「では、本日の連絡事項を――」

――――
――

――昼休み。

ワイワイ……。

斉木(やれやれ、休み時間はひっきりなしに九澄のところへ人が来ていたな)

斉木(おかげで僕まで質問攻めのとばっちりをくったぞ)

九澄「わ、わりぃって。俺だってまさかこんなに揉みくちゃにされるとは思ってなかったからよー」

九澄「おかげで柊のクラスを調べるどころじゃなかったし……」

斉木(それだけ九澄の人気があったということか)

九澄「っと! ようやく昼休みなんだ。柊のクラスを――」

ガララッ!

???「九澄ぃ~~~~っ!!」

九澄「いいっ!?」

斉木(またか)

九澄「って、津川! うわ、なつかしっ!」

津川「はは、久しぶりだな!」

九澄「ああ、クラスは代わっちまったけど、またよろしくな」

津川「って、ことは――おお! お前が転校生か!」

斉木(なんだ、このスケボーバンダナは)

九澄「ああ、津川駿っつって1年のときのクラスメイトだ」

津川「クラスメイトだなんて、さびしーこというなよ。俺ら友達だろ?」

九澄「なんかハズいだろ、そういうの」

津川「はは、まーな。んで、転校生くんの名前は?」

九澄「ああ、斉木楠雄っていうんだ。尾輪哩からの留学生だ」

津川「へぇ。留学生ってことは、優秀なんだな」

九澄「ああ。2年のこの時期でシルバープレートだ」

津川「へぇ。じゃあ学年トップクラスではあるんだな。
   今2年でシルバーもってるのは、4人しかいねーんだし」

斉木(……トップクラスだと? 思ったより厄介なシロモノじゃないか)

九澄「へぇ! 4人か!」

津川「つってもシルバーブラックプレートも何人かいるから2学期末には、
   もちっとシルバーも増えるかもしれねーケド」

津川「ま、ゴールドのおめーが帰ってきたからトップの座は九澄のモンだな!」

九澄「は、ははは(いまだにこっちじゃ自分の魔法一個もつかえねーんだよ……)」

津川「って、そうそう。九澄メシはもう食ったか?」

九澄「いんや。ってか、オメーが昼休み早々来たんじゃねーか」

津川「はは、そうだな。んならよ、一緒に飯食わねーか?
   何人か元1-Cのやつ誘っとくから」

九澄「ああ。それは、別にいいケドよ……ひい――(柊のクラスを調べてからだな)」

津川「よっしゃ、じゃあすぐ屋上こいよ! あ、転校生……斉木も一緒にな! じゃあなっ」

だだだだっ!

九澄「あっ、ちょ、まっ!」

九澄「だああああっ! 行っちまいやがった!」

九澄「(どうしてこんなに柊を探すのを邪魔されるんだ!? 見えない悪意を感じるぞ!?)」

斉木(さて、昼食にするか)

九澄「斉木もなに普通に飯食おうとしてんだよ!?」

斉木(いっとくが僕は屋上になんていかないからな)

九澄「そりゃ、目立ちたくねーのはわかるがよ……」

斉木(昼食の後には、スイーツタイムが待っているんだ)

斉木(それを邪魔するなら、相応の覚悟をしてもらおう)

九澄「い、いままでで一番コエー顔してんぞ……」

斉木(わかったなら――)ズキッ

斉木(く、頭痛か。……これは)

九澄「斉木?」

斉木(……やれやれ。面倒だが、僕も行かないといけないみたいだな)

九澄「あ、あれ? 行くのか?」

斉木(それが僕と幽霊の契約だからな)

九澄「? ま、来てくれるならそれでいーや」

ガララッ。

観月「(……屋上)」

……

――聖凪高校、屋上前。

九澄「しっかし、なんで津川も屋上なんてメンドーなトコで飯食おうなんて言ってんだ。
   別にメシくらいそこらへんの空き教室だっていいだろうに」

斉木(それはだな)

ガチャ。

九澄「よーっす――」

パンパンパンパンッ!

元1-C全員『『九澄大賀、おかえりなさーい!』』

九澄「…………へ?」

斉木(こういうことだ)

津川「待ってたぜ! 九澄!」

九澄「え、なんだこれ?」

伊勢「歓迎会だよ、歓迎会! オメーが帰ってきたな!」

九澄「お、おお! 伊勢! かわんねーな!」

三国「クラッカー探すのけっこー大変だったんだからなー」

乾「去年の文化祭でつかった残りを頑張って休み時間の間にかき集めてね」

九澄「三国、乾!」

柊「おかえり、九澄くん」

九澄「ひ、柊……!」

柊「ど、どうしたの、九澄くん?」

九澄「い、いや、なんでもねぇ!(やべー、泣きそうになっちまった)」

津川「ってーことで! 今日の昼休みは九澄の帰校祝いだ!」

元1-C組『『おーっ!』』

九澄「み、みんな……(耐えろ~、俺の涙腺)」

柊「といっても、簡単なお菓子と飲み物しかないけどね」

三国「それ以上に、九澄の土産話が聴きたいからな~」

伊勢「なあなあ向こうで、可愛い女の子はいたか!?」

堤本「あ、伊勢、テメ! 抜け駆けずりーぞ!
   同じクラスの俺だって昼休みまで九澄に訊くの待ってたんだからな!」

次原「俺だって我慢してたんだぞ! 九澄、尾輪哩ってどんなトコだったんだ!?」

影沼「あ、俺も……」

出雲「ちょっと男子! がっつきすぎ!
   ねね、九澄、新しい魔法何か覚えた?」

堤本「あ、ずりーぞ!」

出雲「最初に抜け駆けしたのそっちでしょ!」

ギャーギャー!

九澄「ちょ、そんな一遍に言われても答えられねーよ!」

三国「はいはーい、九澄が困ってるよー」

柊「みんな一旦落ちつこ、ね?」

津川「そーだぜ。それに九澄だけじゃなくて紹介しないといけないやつもいるしな」

伊勢「紹介?」

津川「ほら、九澄と一緒にきたっていう転校生、つーか留学生?」

伊勢「あ、ああ(いたのか)」

三国「(いたんだ)」

乾「(気づかなかった)」

影沼「(やはり親近感を感じるな…)」

斉木(温度差がありすぎるぞ、全く)

津川「尾輪哩高校からの留学生! 斉木楠雄だ!
   ほら、みんなも自己紹介しろよー」

柊「よろしくね、斉木くん、でいいかな? 柊愛花です。
  (どうやったら早く学校に馴染めるかな。手助けしてあげたい)」

斉木(ふむ。僕にとっては余計なお節介だが、なかなか純粋な純粋な心の持ち主のようだ)

斉木(ここまで悪意ゼロパーセントに心配されるなんて、母さん以外だと初めてだな)

斉木(しかし、柊先生の娘さんとは思えないな……)

柊「はい、次の人! 伊勢くん!」

伊勢「え!? 俺!? え、えーと俺は――」

斉木(長くなるからカットの超能力を使おう)ピッ

津川「よーし、一通り自己紹介終わったな」

斉木(はい、終わり)

伊勢「なんか、スゲーぞんざいに扱われた気がするんだけど……」

津川「そうか?」

斉木(気のせいだ)

津川「ああ、そうそう。斉木はシルバープレートらしいからな。
   みんなもナメてかかっと返り討ちにされっぞ」

伊勢「し、シルバー…(羨ましいぜ)」

斉木(僕は全然羨ましくない)

三国「へぇ、シルバー! 優秀なんだ。人は見かけによらないんだね。
   ま、でも、優秀じゃなければ留学生になんてなれないか」

三国「(何が得意魔法なんだろうな。もし強化魔法系ならシルバーなんだし、ぜひ手合せしてみたい)」

斉木(この人は、ずいぶん武闘派で明け透けな性格だな)

斉木(かといって攻撃的な性格というわけでもなさそうだ)

斉木(まあ、テレパシーを使って逃げ回っていれば手合せしたいなんて願望もなくなるだろう)

九澄「さて、自己紹介も終わったことだしメシにでもすっかー」

津川「ククク……なにを言ってるんだ、九澄?」

九澄「はぁ? なにってメシを」

津川「帰ってきて、そんなことが許されると思うなよ!
   みんな、待たせたな! 九澄大賀魔法ショーの開幕だーっ!」

ひゅーひゅーっ!

九澄「いいぃいぃいぃっ!? 何言ってんだテメーら!?(俺、今魔法つかえねーんだぞ!?)」

津川「だって、九澄よー。オメー1年前になんていったか覚えてっか?」

九澄「え、え?」

津川「『帰ってきたら山ほど魔法みせてやる』だぞ?」

九澄「そんなこと俺いいましたっけ……?」

津川「ここにいる全員が証人だっつーの」

伊勢「大体、最後に逃げるようにいっちまったじゃねーか」

九澄「あ、アハハ……(お、思い出したぁ)」

九澄「だけど、みんなも知ってっけど俺は本当に必要なときにしか――」

乾「九澄くん、約束やぶるの?」

九澄「うっ」グサッ

影沼「最後、あんな別れ方、さびしかったな」

九澄「うっ、うっ」グサッグサッ

柊「私も、九澄くんの魔法。みたいな」

九澄「う、うひぃいぃぃいいぃっ!!」

柊「あ、ご、ごめんね! 無理にとは――」

三国「こんな時くらいいいっていいって。
   第一、九澄が言ったことなんだしさ」

柊「そ、そうだけど」

九澄「(さ、斉木~っ! た、頼む~っ!)」

斉木(まあ、ギリギリまで粘ったからな。最初から僕を頼らなかったからいいだろう)

九澄「(ホントか! た、助かる!)」

斉木(それに、こうなることが分かっていたからついてきたんだ)

九澄「(な、なに!?)」

斉木(予知だ。偶然このシーンが引っかかった)

九澄「(そんな能力もあるのか……羨ましいぜ)」

斉木(まったくよくない。能動的に発動できないゴミ能力だ)

斉木(それに九澄にはいわないが、さっき教室に津川が来たとき、こうなることはテレパシーで察していたからな)

九澄「わ、わーったよ。みせる、見せてやるって」

オー! パチパチパチパチ!

???「(くそぉ…扉が厚くて思ったよりなに話してるか聞こえないじゃないっ!)」

九澄「よ、よーし。それじゃあ――」

斉木(その前に)クイッ

ギィ――。

観月「え、わっ、ちょ、ちょっ!(なんで扉が勝手に!?)」

九澄「観月?」

柊「あれ? 尚っち? どうしたの?」

観月「あ、アハハハ。なんか上から騒ぎ声が聞こえるなーとおもって……」

観月「(我ながら苦し言い訳~っ……! かといって九澄が気になるからついてきたなんて言えないし……)」

三国「あちゃー、ちょっと騒ぎすぎたか」

津川「もちっと静かにしないと先生たちに注意受けるかもしれないな」

観月「(あ、あれ? 誤魔化せたみたい?)」

柊「あ、そうだ。尚っちも一緒にみてく?」

観月「みてくって何を?」

柊「九澄くんが、今から魔法みせてくれるんだって」

観月「九澄が?(そーいえば九澄の魔法をしっかり見る機会ってあまりなかったわね)」

津川「みてけみてけ! 先生以外のゴールドプレートの魔法をみられる機会なんて早々ないからな!」

観月「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

柊「いいよね? 九澄くん」

九澄「ああ、もちろんだぜ(みせるのは俺の魔法じゃなくて斉木の超能力だけどな、あははは)」

斉木(九澄)

九澄「(なんだ?)」

斉木(今回はいいが、今後人前で能力を見せびらかすようなことには手を貸さないからな)

九澄「(わかってる。こんなこと今回限りだ。俺だってこんなの本意じゃねー)」

斉木(わかっているならいい。始めるぞ)

九澄「よーし。じゃあ気を改めて……なにからみせっかな」

出雲「あ、私あれみたい! 九澄が1年の最初にやった大爆発魔法!」

九澄「いぃ!? あ、あれ!?(できるか斉木!?)」

斉木(大爆発を起こすのなら簡単だぞ。ただし半径数キロが荒野になり替わるが)

九澄「(きゃ、却下却下! んなもんやれるか!)」

斉木(なら、どうにか回避しろ)

伊勢「ああ、そういや、最初以来一回もやってねーな」

九澄「そりゃ、あれアブネー魔法だしな、はは」

観月「あ、ブレイブストーンだっけ? 1年のときのクラスマッチでブラフに使ったわよね?
   発動後5秒後に半径20メートル圏内に爆風を引き起こす石を作る魔法だったかしら」

九澄「(記憶力のいいことですこと!?)」

九澄「そ、そうなんだよ。
   だから、石がなくちゃできねーし、なによりここじゃみんな巻き込んじまうだろ?」

出雲「そっか、じゃあやめといたほうがいいね」

津川「じゃーまた今度ってことで」

九澄「今度!?(できねーんだよ~!)」

九澄「あ、じゃあ。こんなのはどうだ?
   大岩を高速で操る魔法!(斉木、サイコビット頼む!)」

斉木(それくらいなら、楽だな)

三国「へぇ、そんな魔法あるんだ。なんて名前?」

九澄「名前? え、えーと、魔法名は、転げゆく大岩≪ローリングストーンズ≫だ!」

斉木(ダサい上に読み方がパクりだ)

九澄「(うるせーよ!)」

九澄「じゃあ、やるぞ?」

伊勢「やるっても、岩もなにもねーけど」

九澄「そうだな……(どうするよ?)」

斉木(たしかに土や砂だらけで岩はないな。
   かといって僕の手元に引き寄せるアポートをここで使うわけにもいかない)

斉木(よし。マジックプレートを校庭に投げろ)
  
斉木(まずサイコキネシスでプレートが発動したように高速で移動させて、みんなの視界から外す)
  
斉木(そのあとに校庭から土を切り出し、圧力をかけて岩にする)

九澄「(そんなこともできんのか……おっけ)」

九澄「校庭のほう見ててくれ」

柊「校庭?」

九澄「はっ!」

ヒュン!

津川「……? なにも起こらねーぞ、九澄」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

三国「やだ!? 地震!?」

影沼「大きい……!」

ボゴォ!

伊勢「どうなって……!? なぁあぁあぁぁ!?」

堤本「バカでけー岩石が浮かんでる!?」

観月「み、みてよ! 校庭が!」

柊「クレーターみたいにえぐれて…!」

九澄「(いぃぃいぃいぃいぃ!?)」

三国「こ、これ九澄が!?」

九澄「ま、まあな」

斉木(ヤリスギチャッタ)

九澄「(ひぃぃいぃい!? どーすんだよ!)」

斉木(とりあえず宣言通り高速で動かすか)

ビュンビュンビュンビュンッ!

乾「きゃあっ!」

桃瀬「きゃっ!」

九澄「(やりすぎやりすぎ!)」

斉木(じゃあ、戻すぞ)

九澄「うぇっ!? ま、マジックアウト!」

ズゥン……――。

斉木(ほらプレートだ)

ヒュンッ!

九澄「っと」

出雲「すっごぉい……先生でもこんなのできる人いるかわかんないよ」 

伊勢「あれだけ高速で動かしてるのに、チリ一つとんでこねーってことは
   カンペキにコントロールしてんだな。やっぱりすげーよ、九澄は」

津川「もともとバケモン染みてたけど、1年かけてさらにバケモンに磨きがかかったな……。
   しっかし、また差を広げられちまった気がするぜ」

九澄「は、ははは……(やりすぎだって、斉木!)」

斉木(……どうやら、ここは僕の超能力を増幅させるチカラを持っているらしい)

九澄「(うん? どういうことだ?)」

斉木(この学校の障壁を破壊したときからオカシイと思っていたんだ)

斉木(いまだにうまくコントロールできない能力があるとはいえ、
   あそこまで大きく見誤ることはしない)

斉木(可能性として、この辺りで発生する魔法磁波が影響を与えていると考えられる)

九澄「(じゃあ、細かいコトはできないってことか?)」

斉木(いや、コントロールが狂うのは大きく力を使うモノで、且つ細かい調整が必要になるものだけのようだ)

斉木(九澄や柊先生と夏休みにデモンストレーションをしたときには、こんなことならなかったからな)

九澄「(そういや、そうだな)」

斉木(慣れればできるだろうが、少し時間がかかるかもしれない)

斉木(だから、大型のハッタリ魔法を使うことは控えろ。僕が調整できない可能性がある)

九澄「(ああ、わかった)」

柊「九澄くん、ぼーっとしてたけど大丈夫?」

九澄「あ、ああ。ダイジョーブ、ダイジョーブ!」

※ちなみにブラックプレートとシルバーブラックプレートは別モノのです

また夜or後日に

津川「にしてもいきなり度胆抜かしてくれるな~!
   さあ! 次も頼むぜー」

九澄「へ……次?」

津川「は? おめー山のように見せてくれるっつただろ?」

伊勢「九澄~まだ1つしかみせてくれてねーじゃねーか」

三国「九澄ってこんな機会でもないと滅多に魔法使ってくれないからねー。
   ショージキかなり楽しみにしてたんだ」

九澄「……山のような魔法じゃダメ?」

津川「あ゛? ダメに決まってんだろっ!?」

九澄「で、デスヨネー……」

柊「私もみたいなーって。
  やっぱり九澄くんの魔法って勉強になるし」

九澄「ひ、柊……(みても超能力の勉強にしかならないだがよ~……)」

九澄「な、なら次はー……」

伊勢「さっきほどじゃなくても、派手なの頼むぜ!」

堤本「そーだそーだ! 余興は派手じゃねーとな!」

九澄「お、おう。任せとけって(ざけんな! 勝手に決めんじゃねー!)」

斉木(泣いているのはいいが、どうするんだ?)

九澄「(えーと、えーと……あ、んならこんなのできるか? サイコキネシスで――)」

斉木(ふむ。それくらいなら難しいことじゃないな)

九澄「うっし! 決めた!」

観月「何するのよ?」

九澄「ふっふっふー魔手≪マジックハンド≫を見せてやる」

津川「マジックハンドぉ? あの離れているものをつかむ魔法か?」

九澄「そ」

三国「あれ派手ってより、地味じゃない?
   マジックハンド自体は見えない不可視の魔法だし」

伊勢「おいおい……今更そんなのやられても
   九澄なら100メートルくらい離れたもの掴んだところで驚かねーぞ?
   確かに、正確にモノを掴むのはムズかしー魔法だけど」

九澄「まーまー。確かにフツーのマジックハンドじゃ地味かもしれねーけどよ。
   ここにいる全員を、掴んで空に浮かべたらどうよ?」

津川「マジックハンドって自分の手とリンクして精度あげる魔法だろ?
   2つ以上のモノつかめねーんじゃ? それにマジックハンドは浮かせる魔法じゃ――」

九澄「ふっふっふ。みてろって。尾輪哩で修行した俺の成果をなっ!」

九澄「百人一手≪アダム・スミス≫!」

斉木(相変わらずネーミングだせぇ)ピッ

フワッ――。

観月「わ、わわわ……!」

柊「うう、浮かんでるよ!」

津川「う、おおぉおっ!?」

ワーワー!

九澄「ははっ、どーだ?(斉木すげぇー……)」

斉木(正直、人をサイコキネシスで持ち上げるのは
   初めてだから潰してしまわないか心配だったが)

九澄「(うぉい!?)」

伊勢「ま、マジで全員持ち上げちまいやがった」 フワフワ

津川「き、規格外すぎるぜ」 フワフワ

九澄「ははは、これくらい朝飯前ってトコよ」

伊勢「(にしても、もうちょい女子もちあげてくれりゃーみえるんだが……)」 フワフワ

三国「しかも女子は男子より低い位置で止めててスカートの中見えないようにしてるしねー」 フワフワ

出雲「さすが九澄くんよねー。どこかの誰かとは大違い」 フワフワ

伊勢「は、はは。この状況でノゾキしてーなんて誰も思わねーって」 フワフワ

三国「伊勢が一番信用ならないんだよ……」 フワフワ

斉木(少年誌的にはパンチラがあった方がウケるかもしれんがな)

九澄「(さ、斉木、女子のスカートは捲れないようにしてやってくれ~)」

斉木(安心しろ、パンツが描写されることはない)

九澄「(? 何言ってるんだ?)」

斉木(それよりいつまでこうしていればいいんだ)

九澄「(あ、ああ。そうだな、もう少し魅せてやってほしいんだが)」

九澄「いちおー持ち上げるだけじゃなくて自在に動かすこともできるぜ」

九澄「(斉木、頼んだぜ)」

斉木(やれやれ)ピッ

ヒュウウゥウウン!

観月「ゆ、ゆっくり! ゆっくりオネガイ~~!」

九澄「わ、わかったって」

斉木(なかなか面倒だな)ピッピッ

津川「はははっ! すげー! 九澄ー! 俺のはもっと速くしてくれー!」

九澄「あいよ」

斉木(やれやれ)ピッ

三国「たのし~! そこらへんの遊園地よりよっぽど楽しいよこれ!」

ヒュンヒュンヒュン!

柊「すっごぉい……全員違う動きと速さをあんなに早く――って、あれ?」

九澄「ん? どうした、柊」

柊「九澄くん、斉木くんを上げ忘れてるよー!」

斉木(あ)

http://i.imgur.com/5Dtxbdn.jpg
http://i.imgur.com/LKSpgjx.jpg

今更だけどエムゼロのキャラを忘れた方は、これ二つで大体補完できるのでよければ

九澄「そ、そうだったな!」

柊「斉木くんだけ仲間外れにしちゃカワイソーだよ」

九澄「じゃあ斉木も持ち上げるぞー(斉木が自分で浮くんだけどな……)」

斉木(空中浮遊しながら精密なサイコキネシスは疲れるんだが)フワッ

斉木(……!)

津川「にしてもホントスゲーな」

九澄「俺も向こうで遊んでたってワケじゃねーってこ――」

ビュォォオォン!!

三国「……へ?」

乾「ものすごい勢いで何かが上に…」

津川「見えなくなっちまったぞ」

柊「今の…斉木、くん?」

……

――成層圏

ヒュオォオオオォ……。

斉木(しまったな。まさか成層圏まで飛ぶとは思わなかった)

斉木(想像以上に超能力の加減を狂わされているみたいだな)

斉木(やはり一定の負荷がかかる超能力は僕からコントロールを外れてしまう)

斉木(だが、この程度で狂うのは想定外だ)

斉木(強力な超能力もしくは2つ以上同時に発動するだけで狂うとなると
   普段使っている超能力の半分程度しか使えないことになる)

斉木(ふむ…やっかいな制限がついたものだ)

斉木(おっと。そろそろ戻らなければここに来てもう3秒くらい経ってしまった)

斉木(サイコキネシスも射程からはずれてそろそろ切れてしまう。戻らないとな)

……

九澄「(どこまでとんでいったんだ、斉木。おーい)」

九澄「(斉木……? 反応がな――)」

ガクンッ!

観月「!? きゃああっ! お、落ちてる!」

津川「うおおっ!?」

柊「きゃああぁあっ!!」

九澄「(なっ…! やばっ!?)」

ヒュンッ!

伊勢「うお、おぉお……。も、戻った」 フワフワ

斉木(何とか間に合ったか)

九澄「(斉木、どーしたんだ!? っていうかどこだ!?)」

斉木(屋上と校内を繋ぐドアの後ろだ)

斉木(どうやら2つ同時にチカラを使うとコントロールが利かなくなるらしい)

九澄「(いいっ!? マジかよ!?)」

斉木(僕はこのままここで操る。あとは任せたぞ)

九澄「(任せたっつってもよ~っ!)」

津川「九澄ィ~~! 脅かすんじゃねーよ!」 フワフワ

九澄「あ、アハハ。悪い悪い! つい力んじまって。
   みんな怪我してねーか?」

三国「ガクンと落ちたからホントびっくりしたよ」 フワフワ

津川「驚いたが、別に怪我するってほどのことじゃないしな」 フワフワ

九澄「ま、まーまー、ジェットコースターみたいな余興と思ってくれよ」

観月「それならやるならやるって言いなさいよ!(九澄のことだから心配してなかったけど……)」 フワフワ

柊「確かにびっくりしたけど、でも九澄くんが魔法の操作誤るはずないもんね」 フワフワ

九澄「は、ははは……」

斉木(そろそろ降ろすぞ)

九澄「じゃあ、みんな降ろすからなー」

ヒュウゥン――スタッ。

津川「っと」

九澄「みんなちゃんと降りられたかー?」

柊「ん。ダイジョーブみたい」

観月「あれ? 斉木は?」

九澄「え、えーと」

斉木(僕ならここにいるぞ)

津川「あれ? いつの間に戻ったんだ?」

斉木(みんなが急降下で騒いでいるときに戻してもらったとでも言っておこう)

伊勢「ふぅん。九澄のやつ、見えないとこですげー複雑な操作してんのな」

三国「あたしには、ちょっと到底できそうにないかなー」

観月「精密な遠隔操作だけでも難しいのに、全員を別々の動きをさせて……」

柊「それでいて緩急を持たせる激しい動きまで加えちゃうんだから、ホントすごいね!」

九澄「(それだけ斉木がすごいって話だなー、ははは……)」

斉木(ふう。思ったより疲れたな。慣れないことはするものじゃない)

斉木(偶然、空中浮遊のほうが狂ったからよかったものの、
    サイコキネシスが狂っていたら今頃屋上一面にケチャップぶちまけパーティになっていたぞ)

九澄「(こえーよ!?)」

短いですがここまで。
空き時間にできる限り更新予定

津川「盛り上がったところで、じゃあ次を――」

九澄「待て待て待て!」

津川「なんだよー、もう終わりってことねーよな?」

九澄「ま、魔法みせるのはいいけどよ。
   いい加減メシくおーぜ? 昼休み終わっちまうって」

三国「そーいえばそーだね」

柊「せっかくお菓子とかも用意したんだし」

九澄「そうそう! せっかく用意してもらったのに何も手をつけねーのもワリィしさ」

津川「……ま、そだな。
   九澄とは、まだ1年半も時間あるんだしな。じっくり見せてもらえればいーや」

九澄「あ、ああ。いずれな。いずれ」

柊「じゃ、みんなでおヒルにしよっか! 尚っちもほら!」

観月「……あの、あたしもここにいていーの?」

九澄「うん? あたりまえじゃねーか、なあ」

柊「そうだよ。尚っちも一緒に食べよーよ」

観月「んー、元C組の懇親会みたいなのするなら邪魔かなーって」

津川「そんなこといったら、斉木だって――あれ? 斉木は?」

柊「斉木くん?」

九澄「(おーい、斉木~?)」

斉木(僕は先に、教室に戻らせてもらうぞ)

九澄「(い゛? なんでだよ!?)」

斉木(大勢と一緒に食事を囲む趣味はないからな)

柊「斉木くーん!」

三国「斉木ー!」

津川「さーいーきー! まさか九澄……斉木を落としたんじゃ……」

九澄「んなことするワケねーだろ!?」

九澄「(みんな探してるからよ~! 頼むっ!)」

柊「せっかくみんなで食べようと思ってプリン作ってきたのに…」

九澄「えっ、柊が作ったプリン?」

柊「うん、ほらこれなんだケド」

九澄「(うほ~! うまそ~)」

斉木(九澄、さっさと座れ。はやくしろグズグズするな)

九澄「うお!? 斉木!?」

柊「わっ!」

観月「ええ…どっから湧いて出たのよ……全然気が付かなかった」

三国「いつの間に……(誰にも気づかれない体運び……やるね)」

津川「斉木もわけわかんねーやつだな……」

斉木(心外だな)

九澄「は、はは。斉木は向こうでもこんな感じだからあんまし気にしねーでやってくれ」

三国「聖凪にもヘンなヤツはいっぱいいるから気にならないけどさ」

影沼「(僕もよく、人に気付かれないで驚かれるから斉木くんの気持ちはよくわかるよ)」

斉木(なんで僕はさっきからこの男のフラグを立てているんだ?)

津川「ま、いーや。斉木も来たことだしさっそく九澄の帰還祝いすっぞー!」

全員「「おー!」」

斉木(うむ。このプリンなかなか悪くない味だ。卵の濃厚な味わいと牛乳の風味がベストマッチしている)モニュモニュ

九澄「あ、こら! 柊の作ったプリン勝手に喰ってるんじゃねー!」

柊「ま、まあまあ。いっぱいあるんだから、ね? はい! 九澄くんの分!」

九澄「さ、サンキュー(うおおおお! 柊の手づくりプリン!!)」

観月「く、九澄はプリン好きなの?」

九澄「ん、あ、まーな(これは柊の手作りだから特別だけどな~)」

観月「そ、そう(九澄はプリン好きなんだ。そっか。そっか)」

観月「(あ、あたしも今度作ってきたら食べてもらえるかな……?)」

観月「(で、でもでも、別に九澄のためだけに作るんじゃなくてみんなの分も作るんだから!)」

観月「(って、あたしってば誰に言い訳してんのよ~!)」

斉木(グッジョブだ、九澄)

九澄「(?)」

斉木(さて、食べ終わったし教室に戻るとするか)

柊「あ、斉木くん。もしよかったら私の分も食べて?」

斉木(な、なに…?)

柊「だって(あんなにおいしそうに食べてくれるんだもん。嬉しいな)」

斉木(……そこまで言うなら食べてやらないこともない)

伊勢「お? プリン余ってるのか? じゃあ俺が――」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

斉木(……俺が、なんだって?)

伊勢「お、俺が斉木に食べさせてあげよっかなぁ……ハハ(こ、コエー!!)」

斉木(結構だ)

津川「伊勢、横取りしようなんて意地きたねーなぁ」

伊勢「うっせーよ!」

柊「あ、アハハ……」

斉木(では、いただくとしよう。うむ、やはり嫌いじゃない味だな)モニュモニュ

柊「ふふ」

九澄(まあ。この分なら斉木もなんとかやっていけそうかな?)

斉木(心配してもらわなくて結構だ)

九澄「(うおっ! 斉木のこと考えてたからテレパシーで読まれたか……)」

斉木(……それよりもう一度念押しで言っておくぞ)

斉木(僕は基本的に超能力を使うつもりはない。いいな)

九澄「(わーってるよ)」

斉木(特にこんな見世物のようなことは二度とごめんだ)モニュモニュ

九澄「(……そのニヤケ面で言われても説得力ねーぞ)」

斉木(うるさいぞ)

……

久しぶりの更新ですが相も変わらず「これ面白いか?」病にかかっていたのでのろのろ進行です
申し訳ないです

>>198
――放課後。

九澄「さーてっと」

観月「ね、ねえ九澄」

九澄「おー? どしたよ」

観月「そ、その、この後どうするのかなって(も、もしよかったら2人で……)」

九澄「ん、校長センセのところにちょっとな。斉木も一緒にって。
   たぶん今日1日の報告をする感じだな」

観月「そ、そうなんだ」

九澄「(ルーシーもそろそろ滝センセとこっちに来てる頃だろうからな。
   行ってやらねーと拗ねるだろうし)」

斉木(さっさと用を済ませるぞ。僕は早く帰りたいんだ)

九澄「(ま、待ってくれよ!)」

九澄「あ、そうだ。そのあといちおー魔法執行部のほうに顔出すつもりだからさ。
   用があるならワリィけどそっちで待っててくれねーか?」

観月「! う、うん! 待ってる! 待ってるから!」

斉木(先に言っておくが、僕は行かないからな)

九澄「わーってるよ」

観月「え、わかってる?」

九澄「や、あ、いやー……あ、アハハ!
   観月なら、なにも言わなくても待っててくれるだろうなって」

九澄「み、観月ともまだ話足りないからな! い、一年分の積もる話もまだまだあるだろーし」

九澄「(やべ~! 思わず声に出てた!)」

斉木(何をやっているんだ)

観月「う、うん……(それって、九澄がもっとあたしと話したいってこと……?)」

観月「(やや、やば……なんでこんなにドキドキするのよ! ただ九澄は思い出話がしたいだけなんだから~!)」

斉木(この娘も大概惚れっぽいな)

九澄「じゃ、じゃあいってくっから」

観月「い、いってらっしゃい(んも~! これじゃまるで新婚夫婦みたいなやり取りじゃないの!)」

斉木(トレンディドラマを目の前で繰り広げるのはもう終わったか?)

九澄「わ、ワリ! じゃあ斉木いこうぜ(トレンディドラマ?)」

斉木(いいから行くぞ)

九澄「ま、待ってくれよ~!」

………
……

――校長室

九澄「って、カンジかな。今日は」

校長「……ふむ。わかりました」

校長「生活面は問題なさそうですね。斉木くんも九澄くんも」

九澄「まーなんとかやっていけそうかな」

校長「ですが。今日の昼のようなことはあまり感心しませんね?」

九澄「う゛……」

校長「今日1日くらいは規定時間外の魔法も大目に見ようと思っていましたけど
   流石にあれは派手すぎです。あの教頭先生も目を丸くしていましたよ」

斉木(それについては謝ろう。だが、そのおかげでわかったことがある)

校長「わかったこと、ですか」

斉木(どうやら、魔法磁波の発生するところでは僕の超能力に関する感覚が変わるらしい)

校長「変わる?」

斉木(強力な超能力や複雑な操作を要する超能力を同時に使用すると出力をよく見誤る)

校長「その結果がお昼のアレというわけですか」

斉木(この場になれれば問題なくできるようになるだろうが、少し時間がかかるかもしれないな)

九澄「実際、やってみるまで斉木もそうなるってわからなかったわけだからな。
   違和感なんてほとんどないんだろーし。難しいのかもな」

校長「……斉木くん。具体的にはどのくらいですか?」

斉木(正直はっきりとはわからないが、普段の僕のチカラの10分の1程度の力を超えると狂うな)

校長「そうですか。私には普段の斉木くんがどのように過ごしているかわかりませんが
   抑えながら生活をすることはできそうですか?」

斉木(それは問題ない。普段10分の1も出すことなんてないからな)

斉木(だが、超能力で魔法を誤魔化すとなると別だ)

斉木(超能力を使うだけならともかく、それを魔法っぽくみせるとなるとそれなりに能力を使わないといけないことが分かった)

斉木(もちろん全部が全部ではないが)

校長「生活に問題がないのならばよかったです」

校長「しかし九澄くん。あなたにはやはり魔法の使用は極力控えてもらわなければいけないみたいですね」

九澄「ダイジョーブっすよ。斉木とももともとそういう約束なんで」

校長「大変でしょうけどお願いしますね」

九澄「うっす」

校長「あ、それとお昼の件の反省文は書いてもらいますから。
   あれでは誤魔化しようがないですし、さすがに庇うこともできません」

九澄「う、うっす……」

斉木(頑張ってくれ)

九澄「あ、あれ? オメーはかかねーのかよ!?」

校長「魔法を行使したのは九澄くんということになっていますから」

九澄「く、くそぉ……」

校長「まあ、来客までの暇つぶしと思ってください。はい、反省文の用紙です」

校長「九澄くんが反省文を書いてもらう間に、斉木くんからもう少し詳しくお話をきこうかしらね」

斉木(面倒だが、仕方ないな)

……


九澄「できたぁ!」

斉木(何回ダメだしもらったんだ)

校長「じ、時間がかかりましたね」

九澄「だってこーゆーの書きなれてねーしよー」

斉木(だからって『僕がグラウンドを削りました。ごめんなさい』はないだろう)

斉木(今時、小学生でももっとマシなもの書くぞ)

九澄「だー! もう書き終わったんだからいいだろ!?」

コンコン

九澄「っと、きたみてーだな」

校長「ふふ、どうぞ」

ガチャ

???「失礼しま――」

???「大賀ぁあぁあーっ!」

九澄「うわっぷ! やめ、ルーシー! 顔に、うわ、張り付くな!」

ルーシー「だってさみしかったんだもーん! 1か月だよ1か月! 会いたかったよー!」

九澄「それはしょーがねーだろ?
   魔法素材の運搬は魔法磁場から外に持ち出す場合、かなり慎重にしねーといけないみてーだし」

九澄「ルーシーだってタダの植物になるのもいやだろ?」

ルーシー「それはそうだケド……」

斉木(これが斉木のイメージにあったルーシーか)

斉木(ふむ、確かに一見小さな人間のように見えるが透視が発動するとまるっきり植物だな)

ルーシー「……」

斉木(僕の方をみてどうした)

ルーシー「……」フイ

斉木(なんなんだ)

???「ごほん、いいか?」

九澄「あ、滝センセ。お久しぶりっすね」

滝「ああ。久しぶりだな、九澄」

滝「どうだ、こっちでの生活は」

九澄「まだ初日っすけどね。まあボチボチってところで」

滝「ま、九澄のことだから心配はしていないが」

滝「ところで……こっちの生徒は?(九澄のことを知っているのか?)」

斉木(僕のことは気にしてもらわなくて結構だ)

九澄(あれ、滝センセ斉木のこと知らねーのな)

斉木(そんなに話されていたら僕が黙っていないぞ)

校長「すこし、九澄くんに反省文を書いてもらっていまして。
   斉木くんには証人として来てもらったんですよ」

滝「九澄。お前初日からなにをやってるんだ?」

九澄「あ、アハハ。ちょっと……」

校長「ふふ、そんな風に睨まないであげてください。大したことじゃないですから」

校長「さて、九澄くん。斉木くん。あなたたちはもう帰っていいですよ」

滝「花咲校長先生、柊は?」

校長「もうすぐ来ると思いますから。それからお話ししましょう」

九澄「んじゃ、俺たちはこれで帰っていいんすね?」

校長「ええ。ご苦労様でした」

……


九澄「さてっと。魔法執行部に顔出すかね」

ルーシー「あ、私は山のみんな(マンドレイク達)に挨拶してくるから!」

九澄「おう」

ルーシー「私が戻ってくるまで帰っちゃだめだからね!」

九澄「お、おう」

ルーシー「絶対の絶対だからね!」

九澄「わかったわかった! 早くいけって!」

ルーシー「うんっ!」

ヒュー……

九澄「行ったか」

ピロン

九澄「ん? メール? えっと……」

斉木(僕は帰るぞ)

九澄「だー! 待て待て! 斉木も一緒に魔法執行部きてくれ!」

斉木(断る)

九澄「た、頼むってー! 今日だけ! 今日だけでいいから!(今のメールで柊からお願いされたんだよー!)」

斉木(柊さん……あのプリンをくれた娘か)

斉木(ち、仕方ない。僕は恩知らずではない。彼女の頼みなら今日だけ顔を出そう。プリンの礼の代わりだ)

九澄「き、来てくれるのか!」

斉木(それならさっさと済ませるぞ)

……

――魔法執行部2年支部部室前。

九澄「……(あ~、ガラにもなく緊張してきたぜ)」

九澄「(ドア開けるのがなんとなく躊躇われるというか)」

九澄「(魔法執行部のみんなと会うのも久しぶりだし――)」

斉木(九澄の緊張なんてどうでもいいから開けるぞ)

ガラッ

九澄「わ、ちょ!」

柊「あ、九澄くん! 斉木くん!」

観月「九澄!」

九澄「よ、よう……ってあれ? 柊と観月だけか?」

柊「ちょっとみんな出払っちゃってて。私たちがお留守番なの」

九澄「そうか……(緊張してなんか損したな……)」

柊「ね、立ち話もあれだし入ってこっち座ろ? ほら、斉木くんも!」

斉木(やれやれ)

――魔法執行部部室。

柊「それでちょうど九澄くんの話してたんだ」

九澄「俺の?」

柊「うん。この1年でもっとすごくなっちゃったねって」

観月「む、向こうでサボってたわけじゃないみたいね」

九澄「まーなぁ……(毎日ボロボロになるほど修行してたからな)」

柊「もともとゴールドですごいのに、もっとすごくなっちゃって。
  どうしたらあんな風に努力を続けられるのかなってお話してて」

九澄「あ、アハハ……(胸がいてーぜ)」

観月「お昼に見せてもらったものも規格外だったし。
   どうしてそこまで貪欲になれるのかしらってね」

九澄「お、男なら頂点極めてみたくなるものだからな。
   自己鍛錬っつーの? 自分がどこまで行けるか試したいってやつ?」

九澄「(だ~~! 何言ってんだ俺!)」

柊「すごいなあ」

観月「へぇ……」

九澄「そ、そんなことより柊! お昼のプリンありがとうな!」

観月「あ、そうだった。すっごくおいしかったよ。愛花お菓子作り得意なんだね」

柊「えへへ、いっぱい練習したんだ。喜んでもらえたなら嬉しいな」

九澄「すっげぇうまかったよアレ。……って、あれ?」

九澄「そういや、なんで柊は俺が戻ってくるって知ってたんだ?」

観月「あ、そういえばそうだね。ああいうコトあるのも知ってたみたいだし」

柊「あ、実はね。お父さんから聞いてたんだ。
  だから久美とみっちょんと相談して、ちょっとしたパーティじゃないけどサプライズしようって」

観月「だからお菓子とかも用意してあったんだ」

柊「ふふ、そーゆーこと」

九澄「(ひ、柊が俺のために企画をしてくれたのか。や、やべー泣きそう)」

柊「あ、そうそう。尚っちごめんね。
  九澄くんが尚っちのクラスに入るってわかってたんだけど、
  当日わかった方がびっくりして楽しいし嬉しいかなって思って話してなかったんだケド……」

観月「い、いいってば! そんなこと!(たしかにものすごくびっくりしてものすごく嬉しかったけど!)」

斉木(僕はまだこのラブコメ空間にいないとダメなのか?)

というわけで新年あけましておめでとうございます。
のろすぎる更新ですが落ちない限りは書いていきます。
よろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月03日 (水) 08:37:31   ID: l-Q_wmew

カテゴリおかしいやろ! なんでや!

2 :  SS好きの774さん   2015年09月09日 (水) 22:07:08   ID: lLESszmn

まさかの更新キターー!!
続き楽しみだべ!

3 :  SS好きの774さん   2018年08月25日 (土) 22:29:25   ID: 02XVba49

早く早く、!

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