【ラブライブ】 うちの心は百合なのか。希望は、ばららいか。にゃ!?? (177)


嘘つきは、、、何の始まりやったけ?……恋泥棒?さようなら?


気付けば、いつも眺めていたような気がする

にこっちや真姫ちゃん程のわかりやすさ、なんてないけれど
うちは、いつも見つめていた
それだけで満足

でも、それはうちだけやない
みんなが見惚れてしまう華、生真面目そうにみえて、器用に何でもこなす

それでいて、危なかっしいところ
みんなにも知ってほしかった

張り詰めた心のあやふやさ
奥底のかわいらしさ

それが、今ではあんな、あんな……いい感じになってしもうて
、、、また口開けてる

変化を微笑ましく、風景として映し出す

今日も、明日も、ずっと、この景色はつづくものと

響きあうことがないと知りつつも
僅かな希望を残せば

勇気が証明の後押しで

運命の女神さまが、いつかこたえてくれるなんて、想いも露知らず



凛「あーー、みんなーーごめんー先に上行ってて~。」ダッ


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希「ん?何か荷物を忘れたん?」

希「ってもう行ってしもたね。じゃ、みんな先に上がっといて。」

希「うちが凛ちゃんと一緒に行くから。」


――うん。わかったよー。じゃ先にいっとくね。


――わかったわ、上で待ってる。凛のこと、よろしく頼むわね


そうやって、お姉さんぶって変に自信をもったような笑顔、それに微笑み返す当たり前の風景


希「他の人も乗ってたし、待たせて迷惑はかけられへんよね……。」


他の乗客の視線を感じてしまい、誰も聞いていないのに言い訳してみる。


凛「ごめん!!希ちゃん、待っててくれたの?」

希「ううん、別にうちは待ってないよ、みんなエレベーターに乗ってしまってただけ。」

希「うちがゆっくり最後に乗ろうかなと思ってただけやよ。」

凛「えへ、希ちゃん、優しいな。」

希「いつもは凛ちゃん、なんでも真っ先に行動するもんね。」

凛「えーー?そうかなー?体はすぐに動いちゃうけどね。」

希「今やって、エレベーター奥の方に乗ってたのに飛び出して行ったやん。」

凛「そうだったにゃ。あはは。」


希「うちは、いっつも最後で、みんなを後ろから見てるからね。」

希「だから凛ちゃんが、最初にうごくのをよー見てるんよ?」

凛「あは、なんか照れるにゃ。」

凛「じゃ、穂乃果ちゃんが最初にみんなを引っ張る役割かな。」

希「そうやね、みんな知らないうちに、どこかへ連れていかれてるもんね。」

希「それやと、花陽ちゃんはみんなを心配する役割?」

凛「うん、かよちんはみんなのことをいっつも心配してくれてるんだよ。」

凛「凛のことも沢山、心配しててくれるんだ。」

希「花陽ちゃんは、気苦労が多そうやね。笑」

凛「あーーそうじゃないよ、かよちんは優しいからみんなのことを考えてくれてるの!」

希「わかってるよ、凛ちゃん。」

凛「むー、かよちんは本当に優しいんだよ!!」


希「さてと、エレベーターも来たみたいやし行こっか。」

凛「うん。」



希「そういや、さっきは何で戻ったん?」

凛「それはねーー!」

凛「じゃーーん!」

凛「って、あれ??ないよ。」

希「うん?」

凛「あれーー?おかしいなー。」ゴソゴソ

希「何か失くしたん?」

凛「あれ、あれ、本当にないよー。」

希「ん?大事なものみたいやね。」

凛「ほんとにーーないーーーにゃーーー!!!」


希「もう一度、戻ってみる?」

凛「ん、、、ちょっと待って、まだ探してみるよ。」ゴソゴソ

希「もしかして、さっきトイレに行くとか言ってたけど、そこで?」

凛「凛、トイレ行こうとしたんだけど。」

凛「清掃中だったから、手だけ洗って結局しなかったんだよ。」

希「うん?」

凛「結局トイレ入れなかったのー。」

希「それは災難やったね。」

凛「にゃーー!そんな人事みたいにいって。」

凛「って本当にないにゃ。」


希「別に人事なんて思ってないし、一度みんなに会って説明してからもう一度戻ろっか?」

凛「うん、ごめん、希ちゃん、、、。」

凛「ないから少し腹がたっちゃって、、、。」

希「で、結局何がないん?」

凛「ハンカチなんだけど、、、ちょっと特別なハンカチなんだよ。」

希「へーー大切な人から貰ったとか。」

凛「そうだよ、かよちんがプレゼントしてくれたんだ。」

希「大事なもんやね。」

凛「うん、だから失くすわけにもいかないよ。」

凛「あーー本当に何やってるんだろー。」

凛「トイレには行けないし、ハンカチなくしたのに気付いて見つけたのに、またないし、、、」

希「うん、うちも一緒に探すから、とりあえず、みんなに説明してからにしよ。」

凛「……うん。ありがと希ちゃん。」




ガタッ

ガタガタ


凛「にゃっ!」
希「え??」

ガタガタガタタ
  ガタガタガタガタタ
    ガタガタガタガタタ
     ビシッ ミシッ



―――地震だ。
それだけは、咄嗟にわかった。

揺れているのは間違いないが、この揺れがどの程度かわからない。
エレベーターという不安定な場所だから、
揺れが大きく感じるのか。


希「凛ちゃん、気をつけてっ。」


何を気をつけていいのかわからないが、それでも何かおこるかもしれない、
その声をかけたかった。


凛「うんっ。」

希「えと、、、こういう時は、エレベーターの全ての階のボタンを押すんやったね。」


すぐさまボタンを各階押す。


凛「止まった……よ。」


エレベーター自体が、途中で止まってしまった。


希「凛ちゃん、大丈夫やった?」

凛「うん、平気だよ。さすが希ちゃんだね。冷静に判断して。」

希「さて、、止まったみたいやね。」

凛「思ったより、揺れなかったけど、、、止まっちゃったね……。」


エレベーターにいるからか、特に悲鳴のようなものも聞こえはしなかった。
揺れた時間も、そこまでは長くなかった。

楽観視できる情報が多いように感じるが、不安要素はただ一点
止まったままの箱の中にいることだ


希「とりあえず、余震があるかもしれんから、何があっても注意だけは怠らんようにね。」

凛「うん、希ちゃんもね。」

希「ふふ、うちは大丈夫。」


安心させようとしたのか、自分も安心したいのか
いつも通りの自信をみせる
余裕はみせればみせるほど、平常心を培ってくれる


希「後は……。」


エレベーター内の非常ボタン
これを見かけることはあっても、押すことなんて考えもしなかった。
普段できないことをする

それにちょっとしたワクワクを感じ、不謹慎かもしれない状況だけに、
そんな自分に戸惑う

ツーツー

―――はい。エレベーター管理担当のものです。
―――大丈夫ですか?慌てずに、まずは落ち着いてくださいね。


希「はい。ありがとうございます」


通じた。
ホッと一安心


―――今の地震によりエレベーターが停止した模様です。
―――大変、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。


やっぱり、そういう理由やし、仕方ないといえば仕方ないよね


―――お怪我などはされていませんでしょうか?


希「はい、大丈夫です。それで、地震の状況はどんな感じですか?」


ここで、自分のエレベーターの状況よりも、外の地震の程度のほうが気になった。

助けてほしいのはやまやまだが、被害が甚大ならそっちのほうが心配だ。
その程度によりけりで救出に差がでると考える。


―――今現在のところ、地震による被害状況は報告されていませんので、ご安心を。


うん。よかった。
安心は多いほうがいい。
多い日は安心やったけ?


―――ただ安全装置の関係上、エレベーターが停止してしまい……


これも仕方ないよね、、、


―――それでは、確認のため、今現在のエレベーターの中にいる人数と年齢層を教えて頂けませんでしょうか?
―――あ、10代とか20代とか年代だけで構いませんので。


質問の意図がわかりかねたが素直に答える。


希「ん?10代。10代の高校生が二人です。」


―――はい、ありがとうございま


ガタッ
ガタガタ


軽く微振動が走る


希「……。」


もう一度非常ボタンを押してみたが反応はなかった
会話が終了したのか、地震により切断されたのか
理由がわからない。

軽い不安を覚えたが、こういう状況でそれを持ち越すというのは危険だ
たまたま、タイミングが悪かっただけかもしれない。
それに連絡そのものは通じた。


凛「……。」


救助にきてくれるのは間違いないだろう。
周囲の地震の状況もわからないままに、自分達だけの助けを喚くのは、自分勝手だと
こんな時も、他人に配慮してしまう。

他人を、いや凛ちゃんを安心させるため、何でもないふりをする
不安は不安や恐怖を呼び寄せるからだ


希「うーん、地震そのものは大したことなかったみたいだけど、待つしかなさそうやね。」


凛「そうだね、思ったよりもよかったのかな?」

凛「今もちょっとだけ揺れたけど、最初に比べたら大したことなかったしね。」


携帯で連絡してみたが通じなかった。
やはり一時的に混雑しているのだろうか、メールで無事の知らせをしておく。

ラブライブ会場の下見。

ステージの大きさはどれくらいかと把握しようと、軽い気持ちで訪れただけなのに
その気持ちとは裏腹に重いものがのしかかる




凛「希ちゃんがいてくれて、よかったな。」

凛「凛ひとりだったら、絶対パニックになってたよ。」

凛「ごめんね、凛を待たせたせいで。」

希「そんなことないよ、うちも凛ちゃんがいてくれたから安心よ。」


それは嘘でもない。
ひとりでいるよりかは、ただ人が側にいるだけで安心できることも多い
そしてその側にいる人が自分に近ければ近いほど


凛「エレベーターの中に、こんなに長いこといたの初めてだよ。」

希「そうやね、普段は気にもせずに通り過ぎてしまうもんね。」

凛「こうしてずっと中にいると、密室って感じなんだね……。」

凛「思ったより狭い。」


意識すれば閉鎖空間
圧迫感を感じる場所なんだと思い知らされる


希「凛ちゃんは狭いの苦手?」

凛「そうじゃないけど、ちょっと怖いなって……。」

希「ふふ、凛ちゃんはまだ大丈夫よ。」

希「エリチがおったら、エリチは泣いてるかもしれないんよ。」

凛「絵里ちゃんはそうなの?」

希「エリチ、暗いところ苦手みたいやから。笑」


普段は人の弱みを笑ったりはしないが
今は自分たちの状況を少しでも明るくさせる話題をだしたい
ごめん、エリチネタにして。


凛「絵里ちゃん、そーなんだ。凛みてみたいな、怖がってる絵里ちゃん。笑」


希「あー見えて、エリチもかわいいところ、いっぱいあるからね。笑」


普段は、しっかりしてそうな年上の人の意外な弱点
自分と同じなんだと親近感が湧く


希「おうちにかえる!って泣いてるかもしれんよ。笑」

凛「あはは!絵里ちゃんはそこまで怖がりじゃないと思うにゃ。笑」

希「いやいや、ほんとよ。笑」

凛「希ちゃんは何をしても怖くないって感じだよね。」

凛「うらやましいなー、凛は勇気が足りないなーって思うこと多いからなー。」

希「……。」

希「そんなことないんよ、、、。」

希「そんなことない……。」

凛「にゃっ!!?ごめん、凛へんなこといった?」


希「ううん、別にそんなこといってないよ、うちは本当は臆病やから、、、何も見せないだけやよ?」

凛「うーん?臆病?」


臆病……
これは本当だ。
うちは、大事なことは隠す。だから、大丈夫になってから見せることも多い。
穂乃果ちゃんのように、いつでも開放した心はもてない


希「そうやね、ほんまのうちは怖がりさん。」


自分のこころを安心した相手にしか見せない
相手が信頼できる人かどうか
それを確認できてから、少しずつ、わたしをさらけだす


凛「うーん?よくわかんないよ。」

希「そうやねー例えば、、」

希「うちの関西弁は、実はわたしのエセ関西弁でした!」

凛「にゃっ!!?」


凛「そうだったの?希ちゃん?」

希「なーんて、さてどっちやと思う?笑」

凛「もーーー冗談だったの?」

凛「凛、本気にしちゃったよーー。」


本当のことをいうときにも、冗談とも嘘とも言えないことをいう
昔は、うちのことを、うちなんて言わなかった、
こころのなかでも。

私は私

だけど、、、私からうちに言葉をかえることで
かえ続けることで
心のなかでも、

うちはうち

そう言うようにもなった

嘘から出たまこと、、、やったけ?ふふ、これは合ってた?


希「人によって、臆病や怖いの基準が違うからね。」

希「凛ちゃんも、元気いっぱいに見えて、注意深かったりするよね?」

凛「……うん。希ちゃんはすごいな。」

凛「凛は悩みなさそうに見られがちだけど、、、悩んでることだって多いんだよ。」

凛「かよちんに、言えない悩みだってあるし。」

希「……。」

凛「凛も、怖がりなのかも。」

希「……。」

希「人は大切にしたいものがあると、臆病になってしまう時があるからね。」

希「それを壊したくないが故に、こころにそっと閉じ込める。」

凛「……。」

希「で、うちらは、エレベーターに閉じ込められる。」

凛「にゃ!せっかく、いい話みたいだったのに!台無しにゃ!!!」


希「ごめん、凛ちゃん、場を和まそうと思ったんやけど、」

希「怒らせちゃったね。ごめんね。」

凛「……怒ってはないよ、ただホントだなーって。」

希「ん?」

凛「大切にしたいものがあると、臆病になるってこと。」


なんとなくだが、凛ちゃんもそうなんだと思っていた。

けど、だからといって、そういった自分でも秘め事にしている気持ちは
はっきりと表にだしてもいいのかわからないだけに
最良の方法が先延ばしになる

気付けば、意識すれば、ただの今の状態ではいられないからだ


希「……。」


確信はないからこそ、こういう時ぐらいそういう話をするのも悪くないのかもしれない
なぜかそう思ってしまった

異常な事態を紛らわす為だったのか、銃爪が他にあったのか
一度、放たれた矢は着地点が見つかるまで、良かれ悪かれ彷徨い続ける


希「自分の気持ちをごまかして嘘ついているうちに、その気持ちがわからんようになるしね。」

凛「うーん、嘘はついてないとは思うけど……。」

希「けど?」

凛「凛、このままで幸せなのかなーって思うんだけどね、」

凛「それでも、もっと幸せになれるんじゃないかなーとか思ったりしてるの。」

希「もっと幸せにはなれないの?」

凛「なれるかもしれないし、逆に、今の幸せもなくなっちゃうかなーって。」

希「だから、臆病になってしまうんやね……。」

凛「うん……。」


おそらくだが、よく似たような想いを抱えている
その推測はより近くなった


希「せつないよね……。」


凛「……にゃ。」


とても小さな声で返事をする。
エレベーターにずっと立ちっぱなしだったが
背中をずるずると擦らせて、体操座りになる凛


希「好きの気持ちが大きくなればなるほど、幸せになれたらいいのにね。」


そういいながら
自分も同じように擦らせながら、そっと隣に肩寄せる
密着が心地よい距離感


凛「その気持ちが大きくなればなるほど、相手にしてあげたいことがかわってきちゃうよ。」

凛「だから、それは、しちゃいけないのかなーって。」

希「……凛ちゃん。」


同じような気持ちを抱えつつ、それでいて出口がわからない
ただただ、それを受け入れてあげるのが精一杯なのか

その気持ちわかるんよ、、、

ほんとうに、ほんとうに、すごくわかるんよ、、、
そういいながら、体をこころを撫でてあげたかった

そうすることで心が少しでも軽くなるのなら

いや、でも、もっと正確に言えば
相手に、その気持ちの共感をしているが、
自分も同じように撫でてほしい想いがある、
それが強くなる

カタチをかえたナルシシズム
自己憐憫にもにている

でも、、、これは自分の気持ちに向けているのではないから、やはりただのナルシシズムではない

相手への、優しい憐憫


凛「なんだか疲れちゃったにゃ。」


ここに来て30分程度だろうか
無理もない。
望みもしない閉鎖空間にいれば、精神的圧迫も非常に強くなる
酸欠まではいかないが、頭も鈍くなる

救いは、明るい電灯と連絡はとれたこと。
あとはどれだけ待てばいいかだけ
ただ、今の様子だと、すぐというわけにはいかなそうだ


希「凛ちゃん……。」


そういいながら、優しく撫でる


凛「ふふ、気持ちいいにゃ。」


そういうことぐらいで、気持ちが楽になるのなら、撫でてあげたいと思うばかり


希「人を好きになるのって難しいよね。」

凛「うん。昔は好きだから、相手のことを考えてたらそれだけで幸せだったけど、」

凛「気持ちが大きくなればなるほど、相手には重いのかなって考えちゃうと……。」

希「そうやね、臆病になって躊躇しちゃうよね。」

凛「凛、こんなこと考えもしなかったなー。」

希「……。」

希「だったら、その気持ちをぶつけたら、相手は迷惑やと思う?ぶつけたら何かかわる?」


この質問は、まるで自分に問いかけているようだった
だから、この答えで勇気が出るようにと

うちは臆病で少しずるいんかな
確認してから、相手を見てから、自分をうちあけようとする
ずるいのか、用心深さなのか、

でも、多くの人は、想いやりがあって思慮深いからというだろう


凛「……。迷惑かどうかは凛にはわからないよ。」

凛「でも、何かかわっちゃうのは間違いないと思う……。」

希「…………。」

希「……花陽ちゃん。」

凛「にゃっ!!?」

希「かわいいよね、いじらしい優しさがあるというか。」


相手を想定して、それとなく会話を匂わせる
別に、うちは、凛ちゃんが花陽ちゃんを好きなんて言ってないよ

……うーん?臆病かな?用意周到?
でも、うちは女の子が女の子を好きになる気持ちが知りたかったのかも

うちだけが、変なのかどうか、
どれくらいまでが、通常の範囲内なのか


凛「にゃ~……/////」


嘘をつけない正直さ
身体がすぐに反応する凛ちゃんらしい態度
みるみるうちに、顔が赤くなっていく


凛「やっぱり、変かにゃ?////」


羞恥心
自分の心が他人に悟られていた恥ずかしさ


希「ううん、全然そんなことないと思うよ。」

希「花陽ちゃんは、優しくていいこやから好きになる気持ちもわかるんよ。」

凛「……うん、かよちんはとっても優しいんだよ。」

凛「今も、すごく心配かけてるかもしれないにゃ。」

凛「……かよちん。」グス

希「凛ちゃん。」


凛「凛ね、かよちんのことは昔から好きだったんだけど、、、」

凛「ある日ね、かよちんの柔らかそうな唇を見てたら……」

希「……キスしたいと思ったん?」

凛「うん////やっぱり変かにゃ?////」


ああ、やっぱりうちと同じように、そういうことを思ってしまうのか
他の女の子も一緒だったのだと安心する

なぜだか知らないけれども、同姓に惹かれてしまう

その理由を説明してくれる相手もなく、誰かに話せるでもない
だから、同じような気持ちをもっている少女がいるだけで、今は心強い


希「ううん、全然そんなことないと思うよ。」


本当にこころからそう思うし、そう思いたい


凛「よかった、ホッとしちゃった。。。こんなこと誰にもいえないにゃ。」

凛「聞いてもらえたのが、希ちゃんでよかった。」

希「ありがと凛ちゃん。うちも凛ちゃんの秘密を知れてよかったよ。」

凛「にゃ!絶対言っちゃだめだよ!」

希「わかってるよ、うちがそんなおしゃべりに見える?」

凛「あーそうだね、希ちゃんは、そんな人じゃないよね、失礼なこといってごめんにゃさい。」

希「ふふ、別にいいんよ。」


特別な空間がもたらす特別な秘密
望んだこととはいえないが、
こんな時でしか、絶対に聞くことはなかっただろうと


凛「希ちゃんは好きな人いないの?」

凛「絵里ちゃんとか?」

希「え?」




好きな人の打ち明け話
誰かがいえば、必然的に誰かがいう
修学旅行の夜

あれも特別な時間がもたらす効果なのだろうか
それでも、臆病な子は聞き耳をたてるだけ


凛「だから、絵里ちゃんのことを好きじゃないの?」


凛の顔を見る。
これは、うちのように確信があって尋ねてきている顔じゃない
自分の恥ずかしさを打ち明けて、それに同調する何かが
欲しいから


希「うーん?」


うちはあくまで、自分の心にも確信がもてないことを口にだせないだけ
その言い訳は間違ってはいない
用心深さなのか、臆病なのか、思慮深いのか


凛「わかった!にこちゃんが好きなんだ!」

希「え?」


凛「だって、にこちゃんの胸をいちばん揉んでるよ?」


わしわしMAX?笑
見当外れすぎる予想に思わず笑みがこぼれる


希「そうやねーにこっちの胸は揉みがいがあるからね。」

凛「にゃ!全くないにゃ!!!」

希「だから、あるんやん。笑」


胸を揉む行為
これは相手を意識していないからこそ逆にできる

エリチ、海未ちゃん、真姫ちゃん
相手の性格にもよるけれど、これをしすぎると下手にうちを意識させてしまう
そういう場合は躊躇してしまう


凛「そっかー、そうだよね。。。普通は女の子なんて好きにならないもんね……。」

希「凛ちゃん……。」


自分のこころをあけすけにしなかったこと
少し罪悪感

でも、うちは知っている
いつでもなんでも正直でいれば、いいわけではないのだと

自分の生き方が教えてくれる


凛「でも聞いてもらえて、凛はすっごく嬉しかったよ!」

凛「気持ちが軽くなるっていうか、、、誰にもいえなかったことだし。。。」

希「……。」

凛「また、話きいてほしいにゃ、希ちゃん。」

希「うちでよかったら、いつでも聞くよ。」

凛「希ちゃん優しいにゃ。」


ここで、普通は会話がどこかへいったり
じゃあね、また今度

普段の外出先なら、そうなるところ
この箱の中
いつでもが今になる


凛「凛が気になっているのは、凛が好きなのは、かよちんなのか。」

凛「それとも、凛が女の子を好きだから、かよちんを好きなのかってことなの。」

凛「わかるかにゃ?」

希「うん。わかるよ。凛ちゃんが言いたいのは、」

希「人として相手を好きなのか、自分が女の子を好きになるタイプだから女の子を好きなのか?」

希「こういうことかな?」

凛「うん……。」

凛「凛ねー、考えたらあんまり男の子を好きになったことないんだぁ。」

凛「ずっと男の子みたいな恰好をしてきたし、、、」

凛「それに、スカート履いた時もすごくからかわれて、、、それで悔しかったし恥ずかしかったし、、、」

凛「あんまり男の子にいい思い出がないから……。」

希「……。」


異性にたいしていい思い出がない
うちの場合は
振り返れば異性だけでなく同姓に対しても、あまりいい思い出がないのかもしれない

だから、距離をあけたくなる気持ちはよぅわかるんよ
でも、素敵な人はきっとどこかにいるって
そう信じていた
だから出会えたのかな……


凛「一度キスしてみたら、よくも悪くも何かが、変わるのかなーとか思っちゃって。」

凛「でも、それで悪くなって、かよちんとギクシャクするなんて絶対いやだにゃ!!!」

希「考えだすと、頭の中だけで終わるから、ススメへんよね……。」

凛「なんとかしたいにゃーって考えれば考えるほど、頭の中が爆発しそうになるの。」


答えをきいてしまえば
本当に拒絶があるかもしれない
それは避けたい

側にいるだけで満足

でも……



希「……うちとしてみる?」


凛「え?」

凛「本気でいってるの?」


何も言わず凛ちゃんの顔を見ている


凛「……。」

凛「……ダメだよ…………。」

凛「凛は希ちゃんのことも好きだけど、、、」

凛「キスをしたいって、かよちんみたいに考えたことないよ。」


当然の反応だろう


凛「それに希ちゃんはキスしなれているのかもしれないけど、」

凛「凛は初めてだし、、、ファーストキスだよ!!」


そういう風に見られていたのか
とも思う


希「ふーん?」


凛「にゃっ!!?希ちゃんなんか怖いにゃ。」

希「気のせい?やよ?」

凛「凛の本能がそういってるにゃ。」

希「凛ちゃんの本能が何を言ってるん?」

凛「身の危険を感じるにゃ!!」


希「そういうこというと、、、」
凛「わしわしは嫌だにゃーーーーー!!!」


希「プッ笑」

凛「え?」

希「もーそんなんするわけないやん。」

希「無理やり相手の嫌がることなんて、うちはせえへんよ?」

凛「ほんと?」

希「ほんとやって、もーただの冗談やん。」


そう、ただの冗談
何かが変わるかもしれないと思ったのは、凛ちゃんだけやない
うちも一緒


凛「うん、ごめんね希ちゃん。」

希「ん?」

凛「希ちゃんなりに、凛を励ましてくれたんでしょ?」


好意的解釈


希「さぁどうやろ?笑」

凛「ありがとうね、希ちゃん。」

凛「冗談でも、女の子同士でキスをしてもおかしくないって言ってくれたんでしょ?」

希「……。」

凛「だから、もし凛がいっぱい傷ついたら、その時はキスしてね!希ちゃん。」

希「凛ちゃん……。」


いいこなんだな
ふと、切なさを感じる
邪な気持ちで、自分も確かめたかったのかもしれないのにと


凛「ふふ、凛、少し気が楽になったよ。」

希「それはよかった。」

凛「あーーでも、もう一時間ぐらいたってるでしょー。」

希「それぐらい経ってるんかな。」

凛「……うう。」

希「?」

希「どうかしたん?」

凛「なんでも、ないにゃ。」


ん?花陽ちゃんのこと、まだ聞いてほしかったのかな?
落ち着いたと思ったら、同じような態度


凛「みんな大丈夫かな?」


希「うん、地震自体は大丈夫みたいやったけど。」

希「それでも、やっぱり何かしらの影響が出てるんかもしれんね。」

凛「うん……。」

希「うちらよりかは、心配せんでいいと思うよ?笑」


そうだ
状況的には、エレベーターに閉じ込められた方が遥かに辛い
最初の揺れに感じる程ではないが
今も、たまに揺れを感じるのは箱にいるせいなのだろうか


凛「あ。かよちんから返信きてたにゃ。」

希「ん?なんて?」

凛「みんな大丈夫だよ。って。みんな凛ちゃんと希ちゃんを待ってるから心配しないでって。」

希「そっか、少し安心やね。」


同じように確認。内容はさほど変わらないメールが何件か

災害時
辛いのは悲劇の主人公は、自分だけじゃない
優先順位を捉え違えると大変なことになる

大げさにしすぎる人もいれば
我慢強い人もいる
ただ、不安にかられると行動がおかしくなる
だからあくまで冷静に務めることが肝心

今は助けがくるのだから、慌てずに、じっと待つことだけを考えよう


凛「頭がぼっーとして、少し寒いにゃ。」


体調がおかしくなってきているのだろうか
いや、誰だって、狭い空間に閉じ込められれば変調をきたす

もう一時間もたっているからだ
ただ、できることはほんの僅かなことしかない


希「うん。大丈夫?寒かったらうちの服を一緒に肩にかけよっか。」

凛「うん、ありがとう、希ちゃん。」


エレベーターの端っこで体操座りになりながら
じっとしている
少しずつ精神や体力が消耗していくのが目に見えてわかる


凛の頭が、希の肩にもたれかかるときもしばし
相手の重さがここちよく感じるのは包容力のある証拠?


凛「希ちゃん、とっても気持ちいいな。」


優しく微笑み返す


凛「凛、戻ったら、絶対にかよちんとキスするんだぁ。」



希「凛ちゃん……。」


あかん、あかんて、その言葉はあかん
うそ臭い関西弁で、あかんと言いたくなってしまった

疲労と、秘密を打ち明けた安心感
それらが混濁して、思わず口走ってしまったのだろう


希「それやと、死亡フラグになっちゃうんやない?」


死亡ということば、今の状況だと、ほんの少しだけ可能性もあるから
洒落にならない
言うのも躊躇ったが、冗談めかしていえば大丈夫かなと


凛「はは、ほんとだにゃ。」


力なく相槌がかえる


凛「でも、本当にそうなりそうだよ。」

希「ん?そんなに、しんどいん?」

凛「しんどいのもあるけど……。」

希「あるけど?」

凛「もう、かよちんに嫌われちゃうにゃ……。」

希「??」

希「どうしたん?」

希「花陽ちゃんが急に凛ちゃんのことを嫌いになるなんてありえへんよ。」

凛「……うん。」

希「?」


なんだろう、この会話のもどかしさ
花陽ちゃんが、凛ちゃんのことを嫌いになるとは思えない

確かに、同姓として好きだということを打ち明けると、距離をとられる可能性はある
でも、今は言ってないでしょ?
言うの?


希「ん?花陽ちゃんに告白するの?」

凛「……そうじゃないの。」

凛「…………あのね。。。」

凛「……。」

希「?」


察しがいいほうだとは思う
それは、聡いということでもあるのかもしれないけれど
どちらかというと、色々と細かいコトを気配りしているうちに
身につけたもの

なのに、なんだろ?


凛「あのね、、、ゴニョゴニョ~~。」/////


聞こえない。。。
ふと、ここに入る最初を思いだした

!!!!

そうか、凛ちゃんトイレいってないんだ。
ここに来て一時間近く、我慢してたとしても限界がある


希「もしかして、、、トイレ?」


二人きりで誰にも遠慮する必要がないのに、小声で耳元に囁く


凛「;ω;/////」コクン


恥ずかしがっているが、これは照れとかじゃない
羞恥心そのまま
泣きそうな顔をしているように見える

ええっと、、
多い日も安心……

って多くない日だった、
もしあれがあれば、だいぶかわったかもしれないのに


袋もなにもない。。。
そうか、震災時やこういう災害時は、よく食べ物や飲み物の食糧のことを言われるが
それよりももっと切実なのが、、、排泄行為だ

ないものは手に入れられないが、出るものは処理しなければならない


希「袋とかもってる?」


持っていたら最初から、ここまで動揺しないだろうが
一応確認してみる


凛「そういうのが何もないにゃ……。」

希「そっか、うちも自分の確認してみるけど、、、多分ないと思うんよ。」

凛「うん;;」

凛「ごめんにゃ、希ちゃんにも嫌われちゃうよ。」

希「ううん、そんなことない。仕方ないだけやよ。」

希「こんな時やし、みんなもわかってくれると思うんよ。」


少なくとも、うちは凛ちゃんのことを嫌いにはならない。
ましてや自分と同じ想いを抱えている女の子だ
それを、打ち明けてくれた

もしかすると、うちより勇気があるのかもとも思う
あ、あとこれは大事なことだ
確認しているほうがいい


希「凛ちゃん、恥ずかしがらんと答えてね。」

希「……えと、、、」


大きいほうか小さいほうか
尋ねようとして、自分が躊躇してしまった
別のことばが口をでる


希「もし、もう我慢できないんやったら、下着だけ脱いどくほうがいいかな?」


立ち上がり、凛ちゃんがいつでも立てるように手を差し出す。


凛「うん。」


やはり、口にだすまでに、相当な我慢をし続けていたのだろう
そういうことに気付けなかった自分に内省する


差し伸べられた手を掴み
立ち上がって、下着をずらそうとする凛
長時間座ってた姿勢のせいか、足が痺れてしまったのか

足をあげた瞬間にふらついた
咄嗟に危ないと思って、手を差し出すが勢いあまって
転倒してしまう


ドンッ!!


結果、うちが下敷き。うん、それは別にいいんよ
凛ちゃんが馬乗りの体勢になる。うん、それも別にいいんよ
人の重みって気持ちいいんよ。

困ったのは、うちじゃなかった



凛「…………ぁ;」





下半身に生暖かいものを感じる
ジワーッと広がる

顔を逸らしながら
凛ちゃんが声にならない声をだしているようだ

呆然と、羞恥と、混乱と、
うちが無理やり立たせたせいかなとも考えた




うちも声をかけられない




終わったようだ……


凛ちゃんが前のめりに倒れこんできて顔を逸らしながら
小さな声で


凛「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。」


何度も何度も繰り返す
声も半分泣いて、しゃっくり混じりの、、、何度も


希「うん、うん、大丈夫やから、、、うん、、、凛ちゃん、、、」


そういって背中を優しくなでる
身体が震えている
横目でチラリみた顔も真っ赤になっているだろう


冷静に状況を確認し直す
おそらく凛ちゃんは、ちいさいほうだけをした。

平たくいえば、我慢の果てにおしっこをさっきのショックで漏らしてしまった
うちやと、お小水って言い方が似合うよね
ご不浄なんていい方も
雫?

馬乗り、マウントポジションの状態で

凛ちゃんのスカートとうちのスカート
重なるようにして
お互いの下半身が濡れている


凛「うわぁぁあぁあああああ。」


それでも、耐え切れずに泣きだしてしまった


肩がしゃっくりで上下しつつ、喚いている、、、
冷静になれ、というほうが無理だろう

だから、もう仕方ないと凛ちゃんが落ち着くまで背中を優しくなでつづける


大丈夫やから
そう耳元で囁く、

凛ちゃんの真っ赤になった顔が見える

うちも何かしてあげたいと思ったけれど
思いつかない


このときは、ものを考えてなかったのかなぁ

ただ、自分がしたかったのかなぁ


頬が涙で濡れている
それを手で拭う

その乾いた頬に軽く触れるように接吻をした
もしかすると、この時、何度かふれている時に唇にも少しだけあたっていたかもしれない

それぐらいの、フレンチにも満たない薄膜のキス



キョトンとした顔と安堵が見え隠れ

凛ちゃんは自分のしたことを、
うちが受け入れてくれているとハッキリ認識したのだろう

自分の恥ずかしい失敗を優しく許容してくれるほど、嬉しいものはない

少しずつ平静さを取り戻す


凛「……ごめんなさい、希ちゃん。」

希「ふふ、もう今日、何回目?笑」

凛「だって、それ以外に言葉が出てこないんだもん。」

希「ええよ、気にしんとき。」

凛「希ちゃん。」

凛「、、、凛、おしっこ漏らしちゃったよ。。。」


今の状況を受け入れて貰えているから、冷静になって言葉にできた


希「そうやね。ふふ。」

凛「もーーやっぱり、凛のこと馬鹿にしてるんじゃないのー。」

希「もー凛ちゃん、疑り深いなー。」

希「気にしてないから、大丈夫やよ。」


凛「希ちゃんはそういってくれても、μ'sの他のメンバーや学校のみんなにも……。」

凛「かよちんにも知られたくないにゃー。」

希「……。」

凛「かよちんに軽蔑されたら、凛生きていけないよ。」

希「花陽ちゃんは、そんなことせぇへんよ。」

凛「にこちゃんとか穂乃果ちゃんとか、絶対に馬鹿にしてくるにゃ!!」

希「う~ん。」


おそらく、あの二人は本気で凛が傷つくと思ったら絶対に言わないだろう
だけど、わざと多少のからかいをしたり、いずれ、するかもしれない

それのほうが、イイ時もあるけれど、凛ちゃんのメンタルやと……

また、学校の誰かが知ることだってある
μ'sの誰もが言わなくても、こういうことは何故か広まるときだってある


希「そんなに心配?」

凛「うん、、、やっぱり恥ずかしいよ。」

凛「漏らしちゃったのは事実だし……。」

希「じゃあ……。」

凛「じゃあ?」

希「あのね、凛ちゃん、そのお小水は、うちがしたことにするよ。」

凛「お小水?」

希「あ、おしっこのことね。」

凛「え???そんなのダメだよ!!したのは凛だし、、、責任は……。」

希「うん、あのね、うちやと、みんなからツッコまれてもうまくかわせるから大丈夫。」

凛「でも……。」

希「大丈夫!うちにまかしとき。嘘も方便っていうから大丈夫。」

凛「でも、、、」

希「もー、聞き分けの悪いこは、おしおきやよ??笑」

凛「んーーー、、、うん、、、ごめんね希ちゃんごめん希ちゃん。」グス


また凛ちゃんが泣きだした。
でも今度のは嬉し泣きに近いかもしれない

大切な人から貰ったハンカチ
濡れた身体を拭くのに、うちのハンカチを使ってお互いの身体へ

特別なものでも、流石にどうかと思い
捨てる気だったのに、何故か、そのハンカチを凛が貰うと言い出した

よくわからないが、自分の体液だから恥ずかしいのか
自分で処分したかったのか

だいぶ濡れたところがなくなり
スッキリとホッとしていた

閉じ込められて、一時間半ぐらいといったところか



その後、会話をあまりしなくなった。
疲労が重なったせいかも
その後、お互いを正面にして抱き合ったりして
落ち着かせあう

無言

先ほどの頬にキスしながら唇にふれたキス
それを思いだす


正面にしている相手の顔
疲れと愛おしさと、
意識の混濁


希「…………。」

凛「……。」


もう一度、自然に軽く唇が触れ合った
先ほどの希からイニシアチブを取ったという訳でもなく

二人が考えていたのは、女の子同士だから誰々に申し訳ないからダメとかではなく
ただ
女の子の唇は柔らかい
そして
気持ちいい

だから、ふれあいたい
それだけだった


疲労が生み出した幻覚か

軽くついばんだ相手の唇
そのうちに
舌で相手の唇を求める

絡めた舌が、相手も差し出すことで
舌同士のやりとり

こんなにも気持ちいいなんて

舌を絡めた舐め合いが、何も考えることをよしとせず、求め合う
ただ夢中で

こころと身体を癒やすためのおまじない

全身の意識が顔に集中している。もっと言えば唇と舌に、それぐらい全てがそこに
いままでキスをしなかったのが不自然なくらいに
無我夢中で相手を求める


とても、とても、きもちいい



この状態を打ち破ったのは、停止していたエレベーターが少し動いた時だった


希「あ……」
凛「にゃ!!」


しばらく下降し、扉が本来の位置とはかなりズレた位置だが、その状態で声が聞こえた


―――すいません、やっと動かせました。あともう少しお待ちくださいね。


やっと救出してくれる
開放感に似た感覚と、何故だが名残惜しさが募る

時間にして二時間ぐらい
丁度、映画をみたのと同じ時間

でも、その内容は、いままで見たきたどの映画より刺激的で、、、今後の人生もかえかねないだろう

その瞬間、今までのことが、異常な自体が招き起こしたことだとも我に返る


希「…………。」

凛「……」

希「ふふ、嬉しいような、残念なような。」

凛「うん。」

希「いっぱい内緒ができてしもたね。」

凛「……にゃー////」

凛「本当に上手だったよね。」

希「ん?」

凛「やっぱり希ちゃんは、キスなれてたんだね。」

希「……。」

希「今日のことは、なんやろ、お互いなかったことにして忘れたほうがいいんやろね……。」

凛「わからないにゃ……。」

希「…………。」

希「早く家に帰って眠りたいかな。」

凛「うん、そうしたいにゃ。」

希「でも、その前に、花陽ちゃんが待ってるよ。」



こうして無事救出された


希「ごめん、うちのお腹の調子が悪くて、、、凛ちゃんに迷惑かけてしもたんよ、、、」


その言葉を、仕方ないと自然に受け止めるメンバー
ホッとする凛ちゃんとそれに微笑むうち


――そんなのわかってるわよ、あんたたち、さっさと帰ったほうがいいんじゃない。

――うん。ふたりとも無事でよかったよーー。とにかく、今日はおうちに帰ろうよ。

――凛ちゃん、長い間つらかったよね。本当に大丈夫なのかな。


この様子をみて、何か気付いた人はおったんかな
もしかすると、にこっちはなんとなく何かあったとか勘付いたんかな、ぐらいを感じた
でも、何かないほうがおかしいぐらい

だけど、そんな詮索は働かない
悪意をもって接してきている人たちとは程遠いのだから


――希、あなたがいてくれてよかったわ。もう、ゆっくり休みなさい。

――してほしいことがあるなら、いいなさいよ。今日は特別よ、ふふ。


ただ少し、、、後ろめたいせいか、やっぱり顔をまともにみれんかった
最初にエレベーターに登る前の、あの笑顔に微笑み返す自分
それとは程遠い今の自分


結果的にいえば
地震の被害は大したことはなかったが、揺れが一瞬だけ大きかったので
それなりの動揺があったらしい

救出に遅れたのも、実は、もう一台エレベーターが止まっていたそうだ
そちらは多人数で高齢者もいた
その為、そちらを優先的に救出していた模様

それを考えれば、知人の二人だけで乗り合わせ
起こった出来事ぐらいかわいいものだったのかと、反芻し直す





翌日

学校を休む。思った以上に疲労がたまっていたようだ。
頭に思い浮かぶのはあのコト
あれでよかったのかなと


先人はいう
やってしまった後悔よりも、やらなかった後悔のほうが重くのしかかる


だからあれでよかったのか
でも、自分の気持ちは、やっぱり、いつもの想い人、

あの時の接吻は、同じキモチをかかえた別人のうちへ

好きは好きだが、色々な好きがある


どうなのだろう

女神「どれでしょう。」

試したかったのだろうか

女神「どれでしょう。」

きもちよかったな

女神「どれでしょう。」

こころとからだ

女神「どれでしょう。」

あいしてる、ありがとう、さようなら

女神「どれでしょう。」



チャイム
いつもの練習が終わった時間じゃない
それより少し早め

来ていたのは


――やっぱり今日は休んだわね。体調悪いなら、明日も無理するんじゃないわよ。

――そうね、わかってはいたことだけど疲れていたのね。


家でお茶でも、それに断りをいれられる


――いいわよ、今度、希がよくなったらね、その時は、たっぷり頂くわ。


そうやって微笑む。ああ、やっぱり、この笑顔ステキだな。胸が痛い。
目を逸らしがちなのが、バレないだろうか


――希、そういえば昨日、凛は何か変だった?

――絵里、あんたは言い方が直接的すぎるのよ!


希「……凛ちゃん?」


二人とも黙る。

ご不浄の雫のこと?まさかキスのこと?
どちらにしろ、こんなこと凛ちゃんは言うことないだろうし、二人も詮索はしないだろう。
一体何のことだろう?


話を聞けば、凛ちゃんは、今日も学校に行ったらしい。

なんというか、そこらへんはうちとタイプが真逆だ。
うちは表に感情をすぐに出さない分、内へ内へと溜め込む

凛ちゃんは素直に出す、だからあまり鬱積したものはたまらない

だから、昨日のことを考えればダメージがあったのは凛ちゃんのように見えるが
それを昨日のうちに全部出しきったのかもしれない。
うちは表に出さない分、それも考えこむ。

で、結局、学校で何かがあったんやろうけど、その時は何かはよくわからなかった。


――あの、これ希ちゃんに。


家でお茶でも、それに断りをいれられる
手渡されたのは、レトルトのおかゆ。

今こんなのまであるんだなと感慨深い
だけど、ひとり?


――料理も上手そうだから迷ったんだけど、せっかくだし、よかったらと思っちゃって。


聞いた方がいいのか、聞かないほうがいいのか
それでも、いないのは変だ


希「今日は珍しいね、いつも一緒なのに。うちと一緒で凛ちゃんも、学校休んだん?」


学校に行ってるのは知っているが、何故一緒にいないかなんてすぐに問えない
だから知らないふりをする。
どう答えるのだろう




チャイム
いつもの練習が終わった時間よりかなり遅め
意外な人がいた

来ていたのは



>>74ミス


――あの、これ希ちゃんに。


家でお茶でも、それに断りをいれられる
手渡されたのは、レトルトのおかゆ。

今こんなのまであるんだなと感慨深い
だけど、ひとり?


――料理も上手そうだから迷ったんだけど、せっかくだし、よかったらと思っちゃって。


聞いた方がいいのか、聞かないほうがいいのか
それでも、いないのは変だ


希「今日は珍しいね、いつも一緒なのに。うちと一緒で凛ちゃんも、学校休んだん?」


学校に行ってるのは知っているが、何故一緒にいないかなんてすぐに問えない
だから知らないふりをする。
どう答えるのだろう

>>75

>>76

>>74ミス


――ううん。凛ちゃん、学校には来てたよ。

――だけど、やっぱり、凛ちゃん体調まだ悪かったみたいで、いつもと違って……


ん?なんだろう。やっぱり何かあったんだろう


――希ちゃん、これからも、私と仲良くしてくださいね。


当然やよ。とは言ったものの

……。勿論そのつもりだが、何だろう。
うちは、これからも、いつもどおりに、しておこう。
あの日は、自分のこころを確認しただけと。


希「凛ちゃんと喧嘩とかしてないよね?」


――……。うん、むしろ逆かな……。

――希ちゃん、これからも、私とも凛ちゃんとも仲良くしてくださいね。


念押しのように二度繰り返す。だが後日、その理由は、すぐにわかる。




次の日も体調が戻らなかったせいか休んでしまった
思った以上に、ダメージを受けていたのか

それは肉体と精神、どちらのほうだったのだろう

この疲労
前より強くなる
回復に向かう超回復だと信じたい



チャイム
いつもの練習が終わった時間よりちょっと遅め
今日は誰だろう

来ていたのは


凛「へへ、少し早いけどこーんばんわっ。」

希「おー元気そうでよかった、凛ちゃん、とりあえず入る?」

凛「うん!」


こんばんわには少し早い時間
前より元気そうにみえる凛ちゃん

洗濯したよ、この前のハンカチといって返してくれた

ひとりか
聞いてみるほうがよさげかと


希「お茶でええかな。今日は一人できたんやね。」

凛「お茶でー。今日はひとりだし、今度もまたひとりでくるにゃ!」


なんだろう。
喧嘩じゃないんだよね。


希「ふふ、ええけど、今度も?花陽ちゃんは?」

凛「凛ねー、色々気付いちゃったかもしれないんだ。」


いいのか悪いのか、心臓にはよくなさそうな話にかんじる
でも、なんとなく予想はついた。
覚悟をきめた


話を聞けば
エレベーターの件の翌日
つまり昨日

部室に一年生組の三人でいた時のこと

――エレベーターの中、大丈夫だったの?

そういう話になった
ツッコマれたくない内容の話になりそうだったのか

すると、凛ちゃんはトイレの件と接吻を同時に思い出して
テンパちゃったみたい


凛「そんなことより、かよちんキスしてみない?」

――ええっぇ!!?

凛「ほらほら。」

――ちょっと、ダメだよー凛ちゃんー。強引だよぉ。

――えっ?ちょ凛?

――どうしたの突然?本当にしちゃうのぉ?

――ちょっと!凛!

凛「かよちーん。」

――え?え?ダメだよぉ。ダメだってばぁ。凛ちゃん。

――やめなさいってば!!

凛「だいじょぶだよってーほらー。」

――離れなさいって!!!!

――凛ちゃん、怖いよ。

――だから、凛!!!何やってるの!!

――怒るわよっ!!!


その怒声で
少し冷静になって状況を再確認
制止する真姫

花陽は本当に怯えた顔をしていたかのように見えた
何故、急に強引にしてしまったか
自分でもわからず


凛「ごめんっ、かよちん。」


そのまま、部室をとびだす


――え?ちょっと待って凛ちゃん。


追いかける花陽


おそらく残った真姫ちゃんが、事情を三年生に説明したのだろう


もしかすると凛ちゃんは、
パニック障害に近い状態を、引き起こしていたのかもしれない
あの箱の出来事

ご不浄の件の不安から、うちがした接吻の安堵

だから、箱のコトを想起して不安が一気に押し寄せた
それを解消するために
花陽ちゃんにキスを求めてしまった

もしそうならば、合点がいく
でも
人のこころなんてわからない
絶対なんてありえない

好きのキモチの大きさが違う
カタチも違う
方法も違う

それぞれ十人十色

だから、うちは、今の好きのキモチを大切にしたいと考える

非難されないよう、様子を伺いながら
華を好きでいながら、猫を受け入れ好きになる

何かを確認するように


凛ちゃん自身が語るには


もしかして自分は
女の子が好きなのかな?

そうだよ
花陽ちゃんが好きじゃないか。

もしかして
レズなのかな?
そうだ
百合じゃないか。

ビアンなのかな?
同性愛じゃないか。

レズビアンなのかな?
薔薇じゃないか。


悩むぐらいだから、ある程度、そういった類のことばを勉強していたようだ


希「どういうこと?」

凛「色々なことばの違いがあるんだよ。」

希「うーん。」

凛「でも、ほとんど意味は一緒だと思うにゃ。」

凛「大切なのはキモチにゃ。」

希「それは、わかるんよ。」

希「でも、これ全部、この言葉あってるん?」

凛「うん。」

希「全部、女の子が女の子を好きってことなんやね?」

凛「多分だけど、あってるとおもうよ。」

希「うーん。どうなんやろ。」

凛「あー疑ってるにゃ、凛は今までずっと一生懸命調べてたんだよ!」

希「それは、すごいよぅわかるんやけど。」

凛「大丈夫!自信あるにゃ!」


凛ちゃんがいうのは
女の子には二種類の女の子がいるらしい。

ふつうの凛ちゃんと、レズの凛ちゃん
ふつうの希ちゃんと、百合の希ちゃん
ふつうの花陽ちゃんと、薔薇の花陽ちゃん

ふつうの凛ちゃんは、ふつうの希ちゃんも花陽ちゃんが大好き。

だけど
レズの凛ちゃんは、ちょっと違う。大好きなのは違いない。いや、もっと好きなのかも。

だから
レズの凛ちゃんは、ふつうじゃ物足りない。

ようするに
レズの凛ちゃんは、百合の希ちゃんと薔薇の花陽ちゃんがとても大好き。

おさらいすると
レズの凛ちゃんは、ふつうの希ちゃんも花陽ちゃんも物足りない。
したがって
レズの凛ちゃんは、百合の希ちゃんはいるから好きになれるけれども
レズの凛ちゃんは、薔薇の花陽ちゃんはいないから好きになることができない。

わかった?

わからないなら、もう一度、アルキメデスのように証明してみせると力説してくれた



凛ちゃんの数式証明~~ふたりのリン~~

――――――――――
ふつうの凛=レズ凛
――――――――――
とするならば
――――――――――――――――――――
ふつう凛≧ふつう希 ふつう凛≧ふつう花陽
――――――――――――――――――――
が成り立つ。
――――――――――――――――――――――――――――――
≧は開いている方向が、好きの大きさの関係を示す
また不等号の下部イコールに関すれば、人間関係が成立するラインとする。
つまり
>の場合、好きは左の方が大きくても、人間関係が成立しないとする
また、この場合=のイコールは、不等号式≧の下部イコールとは別のものとする。
――――――――――――――――――――――――――――――
つまり
――――――――――――――――――――
レズ凛>ふつう希 レズ凛>ふつう花陽
――――――――――――――――――――
となるので
この関係は成立しない

すなわち
――――――――――――――――――――
レズ凛≧百合希 レズ凛≧薔薇花陽
――――――――――――――――――――
このように仮定すれば
この関係は成立する

とすれば
――――――――――――――――――――
レズ凛≧百合希    (A)百合
レズ凛>ふつう希   (B)
――――――――――――――――――――
この場合、
(A)の存在が立証されれば成立する

同じように
――――――――――――――――――――

レズ凛≧薔薇花陽    (A)薔薇
レズ凛>ふつう花陽   (B)
――――――――――――――――――――

この場合、
(A)の存在が立証されれば成立する

したがって
――――――――――――――――――――
(A)百合の存在は接吻可により立証されたが
(A)薔薇の存在は接吻不可により立証されない
――――――――――――――――――――
これで
レズの凛を埋め合わせるのは
(A)薔薇ではなく(A)百合となることが証明されたのである

証明終了Q.E.D.



凛「完璧に立証しちゃったにゃ!」

凛「でも、とても哀しい事実だにゃ。」

希「……。」

希「なんだか、三段論法みたいやね。」

希「あんまり正しくないほうの。」

凛「あってるにゃ!!」

凛「あってる!あってる!あってる!!!」

凛「なーんで、希ちゃんまでそんなこというの!!!」

凛「凛、希ちゃんだけは理解してくれると思ったのに!!」

凛「希ちゃんは、百合じゃないの!」

凛「希は、バカらいか!」

希「……。」

希「凛ちゃん、無理してない?」

凛「……そ、そんなことないにゃーーー!!」

凛「そんなことない!」

凛「そんなこと……。」グス

凛「……うう。」

凛「……………ぅぅぅうう。」

凛「うわあああぁあぁ。」


また、あの時と同じように泣きだしてしまった。
ショックの強すぎることが
この二、三日でおきすぎている

花陽ちゃんを好きな事実

それを、やっぱり拒絶されるかもしれない事実

認められなくて、自分から拒否しようとしている
そんなように見える。

相手を手に入れられないので、
自分から、フッてやったんだと強がる人のように

でも、そんなキモチを馬鹿にできない
むしろ、そういう哀しいフルマイは、愛おしさを倍加させる

うちも同じなのかもしれないんよ

そう、こころのどこかで告げている


だから、うちは、あの時と同じように優しく接吻をした




次の日は体調が戻ったのに休んだ
思った以上に、ダメージを受けていたのか

それは精神が、休んだほうがいいと告げていたのだろうか

この心
前より美しくなる
薔薇に向かう百合だと寄り添いたい



チャイム
いつもの練習が終わった時間
今日は誰だろう

来ていたのは


――三日も学校休んじゃったねー、早くきてほしいなー。これ、お土産のほむまんだよー、希ちゃん。

――まだ体調よくなってないかもしれないんだよぉ、穂乃果ちゃん!

――そうですよ、悪い時は体をゆっくり休めるのが一番ですので、気にしないでください希。


家でお茶でも、今日は部屋の片付けが間に合っていないので、言わないことば


――だってー、早く学校来て欲しいんだもんー!

――それは私もそうですが、、、しかし、本当に大丈夫ですか、希?


賑やかな三人組

この三人がいれば
どんなことがあっても、いつもの空気に戻してくれる
そんな優しさを運んできてくれる

今日は用心して学校を休んだだけと告げておく
だから
明日はいつもの通り、学校にいくからと




久しぶりの学校
教室で、みんなにエレベーターの件
尋ねられる
うちは平気で答えようとするのに

まだ、あのことを聞くのは、やめときなさい
三日も休んだのよ

そうやって、皆を制止して、得意気な顔でウィンクしてみせる華のある元生徒会長

ご不浄の件を庇ってくれて
助けてくれたのだろう。
そうやって、振る舞う姿がとてもかわいい

でも、本当に大丈夫なのに、それをわからずに助けてくれようとする
金髪のあの人は
なんで、あんなに愛おしいのだろうと再確認



久しぶりのμ's
スクールアイドル生活
三日の間に何か変化があったようで、行ってみればいつも通り

みんな、何事もなかったかのように話している

凛ちゃんもいつも通り、花陽ちゃんと真姫ちゃんと
二年生組も

やっぱり、目で追い出したのは、あの人かもしれない
でも、目が遭いそうになると逸らしてしまうようにもなった

凛ちゃんの話のように、一度、身体を女性として意識してみれば
こころだけでは、やはり物足りないのかもしれない
彼女を見つめなおすだけで

気付かされた未熟な、うちという名のわたし





それから
いつも通りの日常がつづく

何も変わらない楽しい日々

ただ変化したのは、うちの家に猫ちゃんがよくひとりで遊びにくるようになった

正直な話、相性はいいのかもしれない
感情や身体を素直にうごかす猫

その反応に受け返すうち

だから、相手の行動に対して動けばいい
迷わずに動ける
でも、猫ちゃんはたまに呟く

花が薔薇にならないのかなと

それを聞くと、心のなかでうちも

薔薇の華が落ちてないのかなと
そしたら、その華ともこんなことができるのに、なんて邪な考え



レズの凛は、百合の希を求める
ふつうの凛は、ふつうの花陽を求める

ふたつにわかれた凛は、ふたつの愛し方をしている
だから変じゃない


咎めるつもり?
だったら、薔薇の花陽になれるの?
あの時、接吻しなかったのがQ.E.D.?答えがわかるの?




百合の希は、レズの凛に応える
ふつうの希は、ふつうの絵里を求める

未分化のまま希は、ひとつのかたちを保っている
だからどうしよう


留めるつもり?
だったら、薔薇の絵里を求めるの?
これから接吻できればQ.E.D.?答えがかわるの?



凛「凛ねーエレベーターのことで希ちゃんのこと、もっともっと大好きになったよ。」

希「ありがと、うちもあの時に、かわいい凛ちゃんを、いっぱい見れて好きになったよ。」

凛「もー凛なんか恰好わるいところばっかりじゃない。」

希「そういうところ含めてかわいいんやない?」

凛「ぶー。」

希「本当よ。」

凛「凛は、あの時の希ちゃんの好きなところ、いっぱい言えるよ。」

凛「えとね、かよちんを好きなこと理解してくれたでしょ。」

凛「それから、服が水浸しになっちゃったことでしょ。」

希「ご不浄の件、お小水かな、雫かな、○○○○かな。笑。」

凛「○○○○?」

希「おしっこ。」

凛「ぶー。」


今では、そのこともからかうことができる。


凛「でも、結局それも、庇ってくれたところでしょ……。」


希「ねぇ凛ちゃん。」

凛「ん?」

希「金のオノ、銀のオノって話知ってる?」

凛「あーもーバカにしてー、それぐらい知ってるにゃ。」

凛「斧を落とす話でしょ?」

希「うん、そうやね。」

希「どういう話か、意味がわかる?」

凛「もーー!」

凛「それぐらいわかるよー。」

凛「凛がお話してあげるにゃ!」


凛「木こりが泉にオノを落としちゃうの。」

凛「すると泉の女神様が、落としたのは金のオノ?」

凛「では、この銀のオノ?」

凛「それとも、この鉄のオノ?」

凛「そうやって聞くんだよ。」

凛「だから木こりは鉄のオノです。正直に答えたの。」

凛「すると女神様は、正直者の貴方には、金のオノも銀のオノも二つ与えましょう。」

凛「そうやって二つとも、あげて3つになったんだよ。」

凛「正直者は、得をするって話だにゃ。」

希「ふふ、よ~知ってるね。」

凛「へへーん、これくらい当然だよ。きれいなジャイアンの話もできるよ!」

希「じゃあ続きは?」

凛「へ?」


希「ん?この話はあとちょっとだけ続きがあるんよ。」

凛「凛知ってるよ。」

希「じゃあ、凛ちゃん教えてくれる?」

凛「うーん、希ちゃんから聞きたいかな。」

希「ふふ、ええよ。そのかわり本当に知ってるんやね?」

凛「……ごめんにゃ。嘘ついちゃった。」

希「よろしい。素直に謝った正直者の貴方には、続きを教えてあげましょう。」

希「後日、この話を聞いた別の木こりが、同じようにわざとオノを落としたんよ。」

希「同じように女神様に3つのうちどれですか?と聞かれて、木こりは金のオノです。と答えた。」

凛「嘘ついたんだね。」

希「そうやね。すると、女神様はそのまま姿を消しました、とさ。」

凛「普通のオノは?」

希「なくなってしまったの。」

希「神は正直な者を助け、不正直な者には罰を与える。っていう教訓らしいんやけどね。」


凛「嘘つくとご褒美なくなっちゃうどころか、罰まであたるの?」

希「この話はそうみたい、どうなんやろうね。」

希「嘘をつくことは悪いことなんかなぁ。こころを隠すのは悪いことなんかなぁって思って」

凛「嘘は、あまりいいことではないけど、、、」

凛「凛は、おしっ……ご不浄のことを、希ちゃんが嘘ついて庇ってくれて、すごく嬉しかったよ!」

希「……。」

凛「わかんないよ、いい嘘と悪い嘘があるのかな。」

希「どうなんやろうね、うちも知りたいなー。」

凛「少なくとも、希ちゃんがついてくれた優しい嘘は、凛にとっては嬉しかったよ。」

希「それでも、罰あたるんかなー?」

凛「だったら、失った分、希ちゃんに三倍返しだよ!!」

凛「やられてないけど、やり返す!」

希「ふふ、ありがと。じゃあ、凛ちゃん以外から、どっかで何か失ってしまったんかな?」

凛「じゃあ凛は六倍返しにゃ!!!」

凛「やられてないけど、倍倍倍返しにゃ!」

希「2^3 かな?笑」

希「ちょっと多めやね。」

凛「にゃ?」

希「ありがと、凛ちゃん。優しいいい子やね。」



臆病なうちは、こころを隠す
それは表に出さない

嘘なのかな

だけど、正直にいえば失うものも
凛が花陽にしたように

だけど、うちは少なくとも
凛ちゃんの為を思って、嘘をついた

別に得や見返りを期待したわけでもない
結果、凛ちゃんからは本当に信頼を得ただろうし、好かれもしている


うちは……
いまだに、じぶんの好きな人

百合の希ではない、ふつうの希が好きな人を
誰にも打ち明けていない
そのタイミングを逃し続けていた

レズのエリチがどこかに落ちていないかなと夢想する
そんなデタラメなことよりも

これを打ち明けないことは、いずれ、凛ちゃんを失うことになるのかな

いや、それ以上に、ふつうの希が好きな人にキモチを伝えたい想いが強くなる



うちと猫ちゃんの関係
これが異性間ならわかりやすい

セフレの関係

有り体に言えばそうなる。
ネックグリップ
お互いにとって、あまりデメリットはない

こころはもっと別の好きな人がいるけども、身体は違う
ペルヴィックスラスト

一人で自分を慰めるから
オナニー

二人で慰めるから
フタニー

勝手にフタニー呼ばわりしてセフレの関係を続ける
マウンティング

でも、猫ちゃんと身体だけの関係じゃない。
お互いに心も
大好きなのは間違いない
アフターリアクション

ただ、いちばんのあの人と比べたらお互い負けてしまうだけ
いちばんとにばん、たった一人だけなのに、その差は
哀しい程遠い。

今日も体は気持ちよく、心は少し痛い
アフターケア





自分でもレズビアンのコミュニティに興味がわく
まさかこんな夜の街に参加するとは

気付けばビアンイベントに潜り込む
色んな人がいる。
所謂、お堅い職業の人から、表舞台の華、はたまた水が流れるような商売の人まで

人によれば理論武装
レズビアンと全文字呼称する人もいれば

ビアン呼び
冗談めかして、あちきレズやしー
バイはどっちでもいいわよとも

ここにあるのは、二つのこころやひとつの自分
それに真剣に悩む人もいれば
ただ快楽を求めるだけ、かわいい子を探す人もいる

楽しい時間を過ごすため、辛さを忘れるため、つきあいで
理由はそれぞれ

この場にいれば好かれる自分
価値のあるかもしれない私を気付かされる。

好きな人に好きと言いたい、純粋なキモチが更に昂ぶる





普段の日常が流れ
みんなでいるときの二人は仮面の時間
それがあたりまえ

ある日のこと
花陽ちゃんと二人で話す機会

おかゆのレトルトを持ってきた日の話になる
凛ちゃんの話で、部室から逃げた
それまでは聞いていた

実は、あの後、花陽は凛を追いかけて
二人で話し合いをしたらしい

花陽ちゃんは、キスを求められたこと自体を気にはしていなかった
ただ、それを寛容するか、拒否するかはまた別の話

凛は、花陽にハッキリと告白をしたそうだ


人としてかよちんが好きだよ
女の子としても大好きだよ

いつも一緒にいたくてたまらない

もっと言えば、こころもからだも好きになりたい
だから、キスしたいと。
本当に本当に、まっすぐなキモチで打ち明けた

花陽は、泣きながら断ったそうだ。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

でも、好きなのは一緒だよ。
その好きの種類が違うんだね。

凛ちゃんが辛くないのなら、今まで通り一緒にいたいな

凛はそれを理解したようだ。


花陽ちゃんは
その言葉の後に、うちに来たそうだ。

今思い返せば、納得できる。
―――――――――――――――――――――――――
――希ちゃん、これからも、私と仲良くしてくださいね。

希「凛ちゃんと喧嘩とかしてないよね?」

――……。うん、むしろ逆かな……。

――希ちゃん、これからも、私とも凛ちゃんとも仲良くしてくださいね。
―――――――――――――――――――――――――
……。
大人ぶっていたようで、臆病なうちは思い知らされる。
凛ちゃんは、きちんと勇気をもって向き合った結果、うちといることに

少し情けなくもあった。

不覚にも涙が流れている

だから、泣きおわれば、自分のすることはしっかりしようと決めた。
凛ちゃんのように





今日は、作詞日和

あの時、無理やり連れていかされ泣いていたのは

迷子の迷子の子猫ちゃん

あなたのお家は

どこですか?


わたしの、うちは

どこですか?



絵里「こうやって、希と二人で出かけるのも久しぶりね。」

希「ほんとやね。」

希「誰かさんが、自分のことにかまけてばっかりやからと違う?」

絵里「何いってるのよ、お互い必要なことをしてるだけでしょ。」


チクリさしても
心地よい返し


希「そうやね、将来のこと、大切にしなきゃいけない時期やしね。」

絵里「そう、だからいい気分転換よ。」

希「ね。」

絵里「いい天気でよかったわ。たまには遠出するものね。」

絵里「で、ここからどこへ行くのかしら?」

希「海未ちゃんの好きな山頂アタック日和やない?笑」

絵里「希、あなたまさか?」

希「海未ちゃんは、海やけど山が好き。」

希「うちは、希望は高いけれども、のぞみが叶う場所は低いところかな。」


絵里「山ではない?」

絵里「……謎ね。」

希「ふふ、ミステリアスやろ?」

絵里「貴方は最初に、会った時からそうね。」

希「何が?」

絵里「何をやっても、驚かされることばかりだわ。」

希「それは、エリチも一緒やん。」


ふと、最初のキスを想い出す。
凛ちゃんに上手、キスしなれているといわれたが
あれは、うちも初めての接吻

臆病だけど余裕をみせているから
いつも誰にも気付かせない
目の前の人ですら

驚かせてきたことは、それの積み重ね


絵里「ここでも充分に遠いのに、本当に日帰りできるのかしら?」


希「うーん、そうやねー。」

希「うちのプランでは、その予定やけど……。」

絵里「……。」

希「まぁなんとかなるんやない?」

絵里「ちょっとー、本当に確認しとかないと危険な気がしてきたわ。」

希「それに、ここは前にも来たことあるし。」

絵里「それはそうだけど、あの時は……」

希「『ドクトル・トマト』先生がいてくれたからね。」

絵里「今回は先生に頼ることができないんでしょ?」

希「場所はわかってるし、いざとなれば……。」

絵里「それが不安なんじゃない。」

希「大丈夫、うちと一緒やったら野宿でも平気よ?」

絵里「希がこういう人ってわかってたけど、頭痛くなってきたわ。」

希「どうせなら、頭より胸を痛めてほしいんよ。」

絵里「何故?」

希「うちは、いっぱい痛めてきたんやし。」

絵里「?」



うちのために切ない想い
抱いてくれないかな

そんな希望


希「山頂アタックしてしまうと、泣く子がいるからね。」

絵里「私は泣かないわよ。」

希「エリチやないよ、泣いた子は。」

絵里「ああ、凛のことね、海未もしっかりしているように見えて抜けているんだから。」

希「そういう人って、かわいいよねエリチ、うちは好きやよ。」

絵里「あら、海未のこと好きだったの。笑」


かしこいようにみえて抜けているよね。そういう人って、本当に
かわいい

エリチ

うちは好き

間接的にものを言う
やっぱり気付かないんやね


希「山で一番大切なのは、なにか知ってる?」

絵里「ん?登らないんでしょ?」

希「これは質問よ。」

絵里「んー、準備とか?それに、ふさわしい体力や知識は必要よね。」

絵里「何事も意識を高めることは必要かしら。」

希「チャレンジする勇気じゃなくて、諦める勇気。」

希「わかる?だから今日は、山には行かないんよ。」



どうなのだろう

女神「どれでしょう。」

山と川

女神「どれでしょう。」

チャレンジと諦める

女神「どれでしょう。」

こころとからだ

女神「どれでしょう。」

のぞみと希望と希

女神「どれでしょう。」



絵里「ふーん?」

絵里「じゃあ、行くのは私達がいたところかしら?」

希「それやと、うちが楽しくても、エリチがつまらないんと違う?」

絵里「どうかしら、確かに得意気に案内できるほど詳しくはないわね。」

希「だから、間をとって、二人が行ってないところがいいんかなって。」

絵里「なるほど。」

希「そこで、うちは革命を起こそうかなって。」

絵里「……革命。」

絵里「穏やかじゃないわね。」

希「それは、革命やもん。何かがおこるかもしれんよね。」

絵里「……。」

希「どうしたん?エリチ。」

絵里「革命を起こせば幸せになれるのかなと、考えてしまったのよ。」


絵里「『革命は人類の進歩と幸福に必ずしも寄与しない。』」

希「うん?」

絵里「とある有名な文学に対しての批評の一部よ。」

希「どうせロシア文学やろ?」

絵里「そこは、どこの国でもいいじゃない。」

希「ふふ、ロシアやね。笑」

絵里「もー希、言ってるのはそこじゃないの。」

希「『革命は人類の進歩と幸福に必ずしも寄与しない。』」

希「つまり、エリチは、」

希「変化することは、必ずしも成長と幸福につながらない。」

希「そういうこと言いたいんやね。」

絵里「そうよ、わかってるのに、ホント希は、、、もう。」

希「確かに、そういう部分もあるやろね。」

絵里「変わったと思っていても、成長していなかった、幸せにもなっていなかった。」

希「……残酷なことかもしれへんよね。」

絵里「変化がもたらすのは、恩恵ばかりじゃないわ。」

希「…………。」


絵里「でも、本来の意味は真逆で、まだ続きがあるの。」

絵里「批評では、『~~ことを証明しようとした無謀な試み。』と非難したそうよ。」

希「変化は必ず成長と幸福をもたらす、か……。確かに真逆やね。」

絵里「そう、これは極論でもあるわ。」

絵里「ただし、こう言わざるを得ない状況でもあったのかもしれない。」

絵里「当時は、国の体制が大きく変化しようとしていたの。」

希「だからロシアやろ?」

絵里「社会制度の革命を元にしたお話だから、当時の情勢はピリピリしていたのね。」

希「あっスルーした。」

絵里「今は資本主義が正しくて、共産主義が正しくなかったなんて言われているけど……」

希「完全にロシアやん。」

絵里「どちらの体制が幸福と進歩をもたらしているのか、それもわからないわ。」

希「エリチ……。」

絵里「王朝から主義制度が変化した国と、個人の革命を同列には扱ってはいけないんでしょうけどね。」

希「だから、それロシア革命やん。」



独白を毒吐く
ペレストロイカやらないか

hopeが豊富で、ありがとう

desireで罪悪、あいしてる

wishが薄いと、さようなら

希望の英単語は良いタンゴ
会話は踊る、されど
wordが違えばわーっと希望に進む?



絵里「希ーー、ロシア、ロシアって私がロシアを常日頃から日常会話にぶっこんでるみたいじゃない。」

希「それは事実やと思うんやけど。」

絵里「……。」

絵里「それに、あなたが革命の話をするから、私は、」

希「いやー、それより、うちはエリチとイチャイチャお話したいなって。」

絵里「希のせいで話がムチャクチャじゃないの!」

希「そう?」

絵里「どう考えてもそうじゃない。」

希「面白いのは大事よ。」

絵里「そう屈託もなくいわれると、こっちがバカみたい。」

希「……エリチはおバカさんやないよ。」

絵里「じゃ何よ。」

希「……薔薇みたいやよ。」

絵里「??」

絵里「薔薇みたいって、薔薇じゃないのね。かしこい褒め言葉?」

希「ふふ、ちょっと言ってみただけやん。」

希「でも、素敵な人っていう意味やよ。」

絵里「あら。」

希「うちはエリチに薔薇になってほしいんよ。」

絵里「もー、なによそれ。笑」


希「ゆりの花が愛するのは、薔薇の華なんよ。」

絵里「?」

絵里「ゆりは、ゆりの花じゃなくて?」

希「ゆりは、ゆりを愛することもできるけれど……。」

絵里「けれど?」

希「百合が憧れるのは、薔薇なんよ。」

絵里「ふーん?」

希「高嶺のflower。」

絵里「それって褒め言葉?笑」

希「そうよ、でもゆりは、薔薇が薔薇の華になってくれないと、愛せないの。」

絵里「まだ蕾だってことかしら?」

希「……そうなんかもしれないね。」

絵里「じゃあ、私は未熟だってことじゃないの!もー希ったら。」

希「ふふ、どうやろね?笑」



エリチが、薔薇になってくれますように
うちは心のなかで願いました


わたしの望みは……



絵里「薔薇のように、赤くなるか……。」

絵里「赤色には、色々な意味があるものね。」

希「……。」

希「そんな国とかの大きな革命じゃなくても……。」

希「偶然の出来事があって、運命がかわってしまうのは仕方ないんかな、エリチ?」

絵里「そういうこともあるでしょうね。」

絵里「大きな流れで何かがかわるとき、それに人は流されるしかないもの。」

希「……。」

絵里「μ'sという大きな流れがなかったら、また別の流れに沿っていたのかもしれない。」

絵里「私は変わることの素晴らしさを、自分の経験なりには知っているつもりよ。」

絵里「希はずっと支え続けてくれたし、μ'sや穂乃果にも感謝しているわ。」

絵里「ありがとう、希。」

希「エリチ……。」



うちはエリチが変化していくのを、目の当たりにしていた
プライドの高い華も魅力的だけど
その中にある、弱みを見せたくなくて強がっている
そんな、意地っ張りなかわいさ

好きは好きだったけど
女の子として好きになることを意識しなかった

きっかけは凛ちゃん
あの箱の雫

二律背反といっていいのかわからないけれど
体は凛ちゃん
心はエリチ

あれ以降
女の子を好きになることを意識しだす
ずっとそのまま
求められるがままに応じている

迷いが、臆病が、判断を保留させていた

想い人
側にいるだけで幸福を感じた、革命当日

うちは進歩できるのだろうか



希「穂乃果ちゃんに聞いた通りやったかも。」

絵里「ん?」

希「ここらは、河川で景色が綺麗だよ-って。」

絵里「たしかに素敵な所ね。」

希「もうすこししたら湖畔もあるみたいよ。」

絵里「朝から動きっぱなしだから、少し疲れたわね。」

希「ここで休憩にしよっか。」

絵里「それもいいわね。」

希「そこで、差し入れがあります。」

絵里「んー?何かしら?」

希「はい、のんたん特製おにぎり、お米は花陽ちゃん直々の推薦。」

絵里「いいわね、美味しそう。」

絵里「あら?この包み紙、私があげたハンカチ……じゃないわね。」



おにぎりを包むホイル
それを風呂敷のように包むハンカチ

花陽が凛にあげたハンカチ
どこかへ落とした

エリチがうちにくれたハンカチ
凛を拭ってあげた

凛ちゃんがうちに返したハンカチ
あれは洗濯したものじゃない

よく似たのを買ってプレゼント

自分の雫のついたハンカチ
自分のものにした

恥ずかしいからか、使えないと思ったのか
理由は教えてくれないが、
自分のものにした

凛は花陽のハンカチを失くし罪悪感

何故か、うちにくれたのと同じハンカチを花陽ちゃんへ
お米のことを聞いた時、たまたま、知る偶然

凛ちゃん、今は誰のハンカチを使っているのだろう



絵里「考えたら、希とこうやって出かけるのも、あと何回ぐらいできるのかしらね。」

希「んー。」

絵里「長いようで、あっという間の高校生活ね。」

希「もうエリチは卒業式モードに入ってるー。」

絵里「感傷に浸ってるっていってよ。」

希「色々なことがあったよね。」

絵里「そうね、どれもかけがえのない想い出ばかりだわ。」

希「エリチの昔は、お堅い生徒会長やったもんね。」

絵里「そう見えてたのかしら。」

絵里「なったからには、一生懸命やらなくちゃいけない。」

絵里「そう、急き立てられていたのかもしれないわ。」

絵里「希は、いつもおおらかで、私を受け入れてくれてた。」

希「……それは、エリチが好きやからよ。」


たまに言ってみるこんな台詞
どんな言葉が返るのか
期待をせずに


絵里「ありがと、希は私だけでなく、みんなを受け入れてくれてたもの。」


絵里「これは、とある有名な文学のことばなんだけど。」

希「エリチ、これもロシアやろ?」

絵里「……」

希「うん、そうみたいやな。」

絵里「……」

絵里「……そうよ、ロシアよ。」

希「ひゃー認めた。スピリチュアルやね。」

絵里「だから希っ!あなたがロシア、ロシアって私にいうから、」

絵里「私はロシアのことを直接言うのはやめたんじゃない!」

希「そうやったけ?」

絵里「それに、私が認めたこと自体がスピリチュアルって、スピリチュアルの敷居低すぎない?」

絵里「せっかくのスピリチュアルの価値下がるわよ。」

希「いや、ほら、今のはうちにとって充分な神秘体験やったし。」

絵里「……主観は便利ね。」

希「人は自分の見た世界で生きているからね、うちのフィルターから見えるエリチは……。」

絵里「なによ?」

希「なんやろね?笑」

希「おバカさん?笑」

絵里「もーさっきは薔薇っていったじゃない!」

希「冗談、ごめん、今のはほんとうにごめん。冗談です。エリチは高嶺の薔薇です。」

希「だから、本当の本当に素敵な人よ。うちの大事な人です。」

絵里「……希のいじわる。最初から、そう言ってよ。」



自分を大切にするあまり、周りと距離をおいて、
皆と上手く溶け込めない。

ずるが出来ない

まるで自分と同じような人

ずっと臆病でずるいと、そう言ってきたけど
少し意味が違う

何ていえばいいんだろうか、

自分のこころにずるが出来ない。
嘘をつけない。
だから不器用になるエリチと臆病になるうち

こころの中で、ずるはできないのに
生き方はずるくもできるのかもしれない

これは何ていえばいいんだろう

ことばが出てこない



絵里「だから、そのとある文学作品で、こういう言葉があるの。」

絵里「『男には二通りある。』

絵里「『高潔で純粋、表向きは賞賛されているが、じつは軽蔑されている。』」

絵里「『もう一方は高潔ではないが、生きる術を心得ている』」


これは何ていえばいいんだろう
出てきたことば
エリチがいったことなのかもしれない


絵里「これは男性に当てはまるから、女性とは違うのかもしれないけれど、」

絵里「私は、高潔で純潔、賞賛もされてたけど、軽蔑のような畏怖を生徒会長の時に与えていたのかなって。」

希「うん、なんとなく言いたいことはわかるよ。」

絵里「その時から希は私をずっと受け入れてくれてたから、変われたのかもね。」

希「……。」

希「それやと、うちは、もう一方の高潔ではない。」

絵里「うん?希が生きる術を心得ているというのは、当たっているような気がするわね。」

希「ふふ、だからずるくて嘘つきなんよ。」

絵里「うーん?そう?」

絵里「貴方は冗談をよく言っても、ずるいも嘘もどっちも当てはまらないわ。」

希「……ありがとエリチ。」

希「ホントウのことか……。」



エリチ好きです

エリチ愛しています


接吻してもいいですか




絵里「湖畔についたわね、ボート借りられるのかしら。」

希「どうやろ。」

絵里「ここが希の目的地?」

希「そうやね。そして、」

希「のぞみが叶う場所かな?」

絵里「希望の高いあなたが望むものだから、さぞや素敵なものなんでしょうね。」

希「ええ、とっても。」

希「でも、残念ながら手に入れられない可能性の方が高いんよ。」

絵里「そんなに、ハラショーなものなのね。」

希「……当ててみる?無理やと思うけど。」

絵里「……月を手に入れるとか?」

絵里「夜景がきれい。」

絵里「月が綺麗ですねって言えるまで、ここで待った甲斐があったわね。」

絵里「……って駄目よ!野宿はしないんだから。」

希「何をひとりでノリツッコミ。」

希「そういうのは、にこっちに任せておいて。」

絵里「別に今のはわざとじゃないし、そういう事でにこに勝てないのは知っているわ。」

希「……たまに、エリチは勝ち負けで考えるときがあるね。」


絵里「そうかしら。」

希「ふと、そう感じることもあるんよ。」

絵里「それは、幼いときからやってきたバレエの影響なのかもしれないわ。」

希「ふーん?」

絵里「バレエでプロになるには、誰もが努力だけでは到達できないの。」

絵里「海外だと身体や骨格だけで、入学の選抜あったりもするのよ。」

希「誰もが、それを手に入れられる訳やないんやね。」

絵里「そうね、得ようとして手を伸ばしても、限界がくるときはあるわね。」

希「限界……。」


だから、素直に自分より優れている人から学ぶ。自分より勝っている人から素直に学ぶ。
そうやって努力してきたのを、うちは知っている

頑張って相手を振り向かせる努力
どうなんだろう

でも、ずっと見守ってきた
できうる限りのことはしてきたと


絵里「でも、だからって、結果がでなくたって、それまでの努力は無駄じゃないと思うわ。」

絵里「だからこそ、私はスクールアイドルとして今までの過去をいかせていると思っている。」

希「頑張った過去は、報われなくても、どこかで返ってくるん?」

絵里「少なくとも私はそう思ってるわ。」

希「……その言葉を聞けてよかったな。」



いま
かたちにならなくとも

どこかでかえってくる
そう

いってくれました
わたしのだいすきなひと



希「エリチ、今日は付き合ってくれてありがとう。」

絵里「何よ、急に改まって、また変なこと考えてるでしょ。」

希「……。」


うちは臆病やから、冗談でごまかしてきたのかな
真剣に向き合うと恥ずかしいから、嘘をついてるようにみせてきたんかな


ずるい、嘘、薔薇

のぞみがかなう場所、希望はあいしてる?

臆病、ほんと、百合


希「文学に詳しいエリチは当然、金のオノ銀のオノの童話を知ってるよね?」

絵里「なんだか、刺を感じる言い方だけど知ってるわ。」

希「ふふ、それで安心。」





呼吸を整え、いうことば、決まっている

あとは、タイミング




希「あーあー。マイクテス、マイクテス。」


立ってもいないマイクスタンド
その前で音響調整
やらないか

エリチを正面に見据えて声を出す

文学のように
ことばは伝わるのだろうか

弦楽器のように
こころは響くのだろうか


希「本日はめでたい日にふさわしく、爽やかな晴天に恵まれ、」

希「身も心も晴れやかな気持ちでいっぱいです。」

絵里「結婚式!?」

希「知らんかったん?」

絵里「そんなの今、知ったわよ!」

希「私、東條希が絢瀬絵里さんと知り合いになったのは、スクールアイドルでも有名な音ノ木坂学院。」

絵里「友人挨拶?笑」

希「そこで、共に生徒会活動に励み、またμ'sとしても廃校騒ぎから学校を救うという偉業を成し遂げました。」

絵里「懐かしいわね。」


希「学生時代やスクールアイドル生活を振り返ると、たくさんの懐かしい思い出が次々に思い起こされます。」

絵里「うん。まだ終わってないけどね。」

希「とくに印象に残っているのは、絢瀬絵里さんが、A-RISEに言ったセリフです。」

絵里「素人にしか見えないね。うん、あとで海未になんて言っておきましょうかしらね。」

希「それだけではなく、西木野真姫さんの別荘を強請った時のセリフも忘れられません。」

絵里「合宿よぉおおーー!ね。ドクトル・トマト先生いないのに、なんか、またここに来ちゃったわね。」

希「そんなノリがいい、お茶目な面も兼ね備えています。」

希「それでは景気付けに、もう一度、○○○○○ーー!はい、皆さんご一緒に、今日は泊まるつもりでいいましょう。」

絵里「いうわけないでしょうが!」

絵里「それから、野宿よぉおお!これもしないでね、希。」

絵里「それするんなら、私は一人、電車で帰るから。」

希「また印象的だった、私と絢瀬絵里さんがμ'sに入る前の一言。」

絵里「何かいったかしら?」

希「何よ……何とかしなくちゃいけないんだから、しょうがないじゃない!」

希「この言葉の信念があれば、野宿はできますね。」

絵里「そんなに、何とかしなくちゃいけないの?ね?希!?」


希「そんな絢瀬絵里さんは、真面目で一生懸命に生徒会長としても励み、」

絵里「たまに、いいこと言われると照れるわね。」

希「μ'sでもダンスレッスンを行うなど、天性のリーダーの資質を持ちあわせています。」

絵里「普通は、こういうのが新婦友人の言葉よ。にしても私の相手は?」

希「μ'sでも後輩のことを想いやり、いつでも親身に相談に乗る姿を何度も見かけました。」

絵里「そんな、普通よ。」

希「彼女ぐらい華がある人でありながらも、メンバーを影で支える姿、私、東條希は、ずっと眺めつづけていました。」

絵里「ん……。」

希「μ'sという奇跡のようなグループ、その中でも特に彼女に、私は何度も救われました。」

絵里「……。」

希「ラブソングを作る、こんな提案にも、私の心を見抜きメンバーを説得までしてくれました。」

絵里「……。」

希「そんな彼女に対して、ありがとう、感謝の念に堪えません。」

絵里「……。」

希「私の望みは、かなってしまったのでしょうか。それとも、私の希望は……。」

希「………………私の希望は……。」

絵里「……どうしたの?」


希「………………。」

希「……当たり前のように側にいる人、当たり前のように微笑みかけてくれる人、そんな大きな存在。」

絵里「……。」

希「いつも、何かをしているときに、目を奪われて気になってしまう存在。」

絵里「……。」

希「とても、とても愛おしくて、いつか彼女の体を抱きしめてしまわないか、思い悩んでしまう日々を過ごしています。」

絵里「……。」

希「彼女の人の目を引く金髪、長身、スタイル、全て同じ女性なら憧れるものでもあります。」

絵里「……。」

希「誰もが、一度ぐらいは接吻をしてみたいと考えたこともあるのではないでしょうか。」


絵里「……」

希「そう夢想することで、ハッピーな幸せを手にいれたりしたものです。」

絵里「……」

希「柔らかそうな美しい肌、少しでも触れるとドキドキがとまりません。」

絵里「……」

希「こんなことを考える自分が変なのだろうか、そうさせる相手が悪いんだろうか。

絵里「……」

希「心を痛めてずっと悩んでいました。」

絵里「……」

希「…………」

絵里「??」

希「……私」

絵里「……」

希「……私、、、東條希は……。」

絵里「…………」

希「うちこと、東條希は、ここで女性を愛する百合であり、レズビアンであることを告白します。」

絵里「…………希。」




希「……もう、気付いているとは思うけど…………。」

絵里「……。」

希「うちは……。」

絵里「やめて、」

希「……うちは……。」

絵里「やめて、」

希「……」

絵里「お願いやめて、希、、、今のままじゃいけないの?」

希「……」

絵里「私は、希が好きよ。でも、それは穂乃果や海未、そういった他の人に向ける感情と同じ好きよ。」

希「……」

絵里「私も側にいたい、一緒にいてこんな素敵な人はいないと思うわ。」

希「……」

絵里「その関係を続けたいだけなの……。」

絵里「貴方がしようとしていることは、それを壊そうとしているかもしれないのよ?」


希「…………。」

希「……ねぇエリチ。」

絵里「ん。」

希「うちも、エリチと側にいられるだけで満足やったんよ……。」

絵里「だったら、、、」

希「でもね、うちは気付いてしもたんよ。」

希「そうならざるを得ないようになってしまった。」

絵里「……。」

希「これは、とあるロシア文学愛好家のことばなんだけど。」

絵里「ちょ。」

希「『大きな流れで何かがかわるとき、それに人は流されるしかないもの。』」

希「うちはμ'sとはまた別に、その大きな流れに導かれてしまった……。」

絵里「……。」

希「何がきっかけでとか、理解してほしいまでは言わないけれど……。」

希「そうなってしまったから、としか言いようが、、」

絵里「……。」

絵里「それでも、私は……。」


希「そうやろうね、そう簡単には理解なんて絶対にしてくれないやろうなって……。」

希「わかってたことやけど、、、」

希「改めて、エリチの口から言われると、、、せつないね……。」

絵里「……。」

絵里「頬に。」

希「……気のせいやよ。」

絵里「……。」

絵里「スピリチュアル……か。」

希「……」

絵里「希の泣き顔なんて、滅多にみれないもの。」

希「泣いてなんかないよ……。」

希「そんなエリチの神秘体験、誰も信じひんよ。」

絵里「……。」



そんなに泣いていたとは思いませんでした
エリチが拒絶するのも
辛そうな顔

でも、これは、きっと本当に大切な通過儀礼



希「昔、告白されて断ったときに、想い出にしたいからキスさせて。」

希「なんてことをいってきた人がいて、」

希「その時は、なんでそんなこというんかなって思ってたんやけど……。」

希「今はちょっとだけ、キモチがわかるような気がする。」

絵里「……。」

希「なんやろうね……。」


そう言いながら、状況は違うけれど
ああ凛ちゃんの時は接吻したなと思い直しました
相手との距離間なのかとも

凛ちゃんに向けた憐憫とエリチに向けている慕情

愛情の大きさ等しくとも
それよりもカタチが違うのかな

エリチはうちに何を向けてくれてたんだろう


希「……これは、うちの勇気の証明。」


希「エリチ……。聞きたくないかもしれませんが、うちのワガママです。」

絵里「…………。」

希「言わせてください。」


ゆっくりと深呼吸をしました
とても空気のきれいなところなんだと今更ながら

黙って聴いてくれている
私の大好きな人




希「うちこと、東條希は病める時も健やかなる時も……。」


希「……エリチが、ずっと好きでした。」



黙ってきいています
時間が流れていきます

拒絶も嫌悪もありません

諦めなのか、困惑なのか、
キモチを整理しているのでしょうか

だから、うちも真っ直ぐに見つめる

このあとのことも
うちの思うがままに

していいんだなと
そう感じてしまいました






――――誓いのキスを





誰かが、どこかでそういっている
都合のいい解釈をしながら

うちはエリチにキスを……



エリチの睫毛が、こんなに長くてきれいだなんて
見とれてしまいました

近づけば、目をとじてくれている
少し震えているような
かわいいエリチ

あれだけ言っていたのに
行動に移せば、変化している

凛ちゃんの数式想い出す

『私は変わることの素晴らしさを、自分の経験なりには知っているつもりよ。』

そうなってくれればと
うちは心の中で思いました


くちびるが触れる
その寸前

ドンッ

ああ、うちは突き飛ばされたんだなと
冷静に考えました

本能的な反応だったのかもしれません

うちはそのまま、湖に落ちてしまいました



絵里「えっ!!?嘘でしょ???」

絵里「希!!」

絵里「私は、そんなに強く押してないわよ。」



軽くついただけなのに、
うちが湖に落ちてしまうとは思っていなかったようです

エリチがうちを探します


絵里「のぞみっーー。」

絵里「え?ほんとに冗談でしょ?」

絵里「何処なの??」

絵里「ねぇ希。」

絵里「本当にどこなの??」

絵里「でてきなさいよ、希。」


絵里「のぞみっーーーー!!!」

絵里「わたしだって、わたしだって、」

絵里「私だって、希のことが好きなのよ。」

絵里「だけど、!!だけど!!そんな急にいわれても。」

絵里「何故?何故?今なの?」

絵里「ねぇ?」

絵里「のぞみっーーー!!!」


うちは自分のキモチをどこに向けるか
ハッキリさせたかった

これは、人から見れば勝手な行為だったのでしょうか
ずっと大好きな人へ

自分のこころがうつろう前に


絵里「……のぞみ。」

絵里「のぞみっーーーー!!!」



呼ばれた気がしました
いえ、ずっと確認してくれていました

だから、うちの出番です

いえ、そんな言い方をしません
もっと、おしとやかに、理想を具現化した姿で

ここから

希は希です
のぞみは望みです
のぞみは希望です

そう聴こえてくるでしょう





湖の中から現れました
いまから登場するのは希望の女神さま





絵里「希?何やってるの?」

絵里「早くでてきなさいよ」


希「……」


絵里「心配させないでよ」


希「私は、泉の女神です。」


絵里「え?泉?何をいってるの?」

絵里「冗談はいいから。」


希「……」


希「私は、女神です。」


絵里「え?何?希よ?」

絵里「あなたじゃない。」

絵里「早く、そんなところからでてきなさいよ。」


希「私は、女神です。」

希「あなたが湖に落としたのは……」


絵里「ねぇ風邪ひくわよ。」


希「……」


希「あなたが湖に落とした……いえ、」


絵里「何?あなたは女神さまなの?」


希「……」


絵里「ええ、確かにそうかもしれないわ。」


希「……」


絵里「あなたはμ'sの女神さまじゃない。」


希「……私は、女神です。」


絵里「だから、早く見守って導きなさいよ……ねぇ希。」


希「……」


希「あなたが、、、湖に、恋に、落とさせたのは、、、」


絵里「何をいってるの?」

絵里「ねぇお願いよ、希……」


希「あなたが恋に……。」



やっぱり
臆病なのかもしれません

冗談とも本気ともつかない
こんなやり方で

生きる術を発揮しているのでしょうか

でも、、、これが女神さまの精一杯



希「あなたが恋に落としたのは……。」

希「薔薇の絢瀬絵里のことを心も体も愛している、百合の東條希ですか?」


絵里「……。」

絵里「ねぇ今、答えなくちゃいけないの?」

絵里「希……私はあなたを好きよ。」

絵里「だけど……。」

絵里「それ以上の言葉は……。」


希「……」


絵里「……希。」

絵里「ねぇ、もう、お願いだから、やめて……。」

絵里「考えさせる時間もくれないの?」


希「……」


希「では、薔薇のようなエリチのことを大好きな、レズの東條希ですか?」


絵里「あなたも泣いてるんじゃないの……。」

絵里「濡れてるだけとは言わせないわよ。」


希「……」


絵里「なぜ、こんなことを、今、急に聞く必要があるの。」

絵里「答えなくちゃいけないの?」


希「……」


絵里「おねがい、、希、、、」

絵里「もうやめて……。」

絵里「せめて、時間を……。」

絵里「……希。」



希「それでは、ふつうの東條希ですか?」




どんなキモチで、女神さまは質問したのだろう

さようなら
ありがとう
あいしてる

女神さまは、どんな返事を待っていたのだろう




絵里「どれなのか選べ……ってことなの……?。」


希「……」


絵里「私は…………。」


希「……」


女神さま黙ってきいています
これから何がおこっても
きいています


絵里「私は……私が……薔薇に……。」


希「……」


きいています
じっと耳をすませて

どんな結果であっても






……………………






絵里「私が……。」


絵里「私こと絢瀬絵里が……。」



絵里「絢瀬絵里が……愛しているのは百合の東條希よ。」






……………………






希「………………」


希「初めて……」


絵里「……」


希「愛してるって言ってくれたんやね。」


絵里「……」


希「本当に優しいな、エリチは。」


絵里「……」


希「うちも大好きやよ、愛してるよ。」


絵里「……」


希「……」


絵里「…………あなたの……」


希「……」


絵里「……」


希「……」


絵里「……」


絵里「のぞみは薔薇なの……?」






……………………





希「…………」



絵里「……」



希「……」



希「薔薇やないよ、、、うちは百合やよ。」



絵里「……」



希「……」



絵里「…………希。」



希「……」



絵里「……」



希「ありがとう、エリチ。」



希「そんな優しいエリチには…………きれいなうちを……」










うちの心は百合なのか

希望はばららいか

わたしの

のぞみは

あいしてる、そして、、、、、






                             fin







読んで頂き、ありがとうございます。



独白を毒吐くペレストロイカやらないか
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穂乃果 わかってるよ、雪穂のいじわる~~~!




レスありがとうございます。いつも感謝してます。励みになります。
批評されるのも好きなので、お気軽に感想やダメ出しでも、よかったらお願いします。いつも参考にさせて頂いています。

前半と後半、そのギャップ、文体の指摘、ここがどうたらこうたら等

前半と後半で好みがわかれるようなので、これは何故なのかなぁ?と、カプ?独白?展開?会話?
原因はなんだろうと、考えたりしながら次にいかせたらと思っています。ご意見あれば、聞いてみたくもあります。

呪いの枷でシリアルになるver
悶々としながらかしこくない、ぐだぐだなお菓子たべちゃう感じになっちゃう、ゆるーいver
どっちもいいなぁと未来を想像


希「好きの気持ちが大きくなればなるほど、幸せになれたらいいのにね。」
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