椋「もうすぐチャイム鳴りますよ。教室に戻らないと」 (47)

どうして、こんな状況になっているのだろうか。

椋「………っ」

朋也「………」

時刻はもうそろそろ今日最後の授業が終わるかという頃。

朋也「………なあ、委員長」

椋「なっ、なんでしょうかっ、岡崎くんっ?」

場所は部室棟の空き教室。

朋也「そろそろ、教室に戻ったほうがいいんじゃないのか?」

椋「も、戻るなら岡崎くんも一緒にです。じゃないと、わたしも戻りません」

妙に緊張感漂うここには、俺と、何故か委員長……藤林椋がいた。

朋也「いや、だから俺は……」

椋「岡崎くんが戻らないのなら、わたしも戻りません」

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朋也「………」

椋「………っ」

最後の授業の終了を告げるチャイムが、校舎内に鳴り響く。

椋「あ……うぅ……」

とうとう丸一時間分の授業をサボったことを後悔しているのか、委員長が涙目になる。

朋也「無理すんな。教室に戻ろうぜ」

椋「だっ、だから……え?」

朋也「ほら、早くしろ委員長。帰りのホームルームまでバックれるわけにはいかないだろ」

椋「あ、ま、待ってください、岡崎くん!」

俺の後について、委員長も空き教室を出る。

~~~~

遡ること一時間前。

授業を受けるのがかったるくなった俺は、最後の授業はバックれることにして休み時間のうちに教室を出て、人気のない部室棟の方へ足を向けていた。

どこで時間を潰そうかと考えながら歩いていると、ソイツと出くわした。

椋「お、岡崎くんっ?」

朋也(げっ……)

藤林椋。俺のクラスの委員長だった。

椋「こんなところで、どうかしたんですか?」

朋也「……いや、別に」

見ると、委員長は次の授業で使うものなのか、資料らしきものを両手に抱えていた。

椋「もうすぐチャイム鳴りますよ。教室に戻らないと」

朋也「ほら、あれだ。委員長の手伝いでもしてやろうかな、と思ってな」

まさかクラス委員長に向かってサボるつもりだったと答えるわけにもいかず、咄嗟にそんな嘘を吐く。

椋「………え」

朋也「ほら、運ぶの大変だろ?半分持ってやるよ」

椋「あ、ありがとうございます……?」

半ば強引に、委員長から資料の半分を受け取る。

椋「………」

朋也「………」

それっきり、お互い無言で廊下を歩き続ける。

朋也(つーかこれじゃダメじゃん……)

このペースだと、教室につくと同時にチャイムが鳴ってしまいそうだ。

バックれる為に部室棟へ行ったのに、これでは意味がない。

朋也「ちょっと急ごうぜ、委員長」

椋「え、えっ?あ、待ってください岡崎くん!」

歩く速度をあげると、少しずつ委員長との距離が出始める。

それも気にせずに、俺は教室へと歩き続けた。

教室に着く頃には、委員長はかなりヘバッていた。

朋也(こいつ、本当に杏の双子の妹なのか……?)

いくらなんでも体力なさすぎだろ、と心の中で呟く。

椋「あ、ありがとう、ございます……岡崎くん……」

肩で息をしながら、なんとかそれだけ言い切る。

朋也「あ、ああ……大丈夫か、委員長?」

椋「だ、大丈夫……です……岡崎くんの歩く速度が早かったので、ちょっと疲れただけですから」

朋也「別に無理して俺に合わせなくても良かったんだぞ?」

椋「そういうわけにはいきません。手伝ってもらっているのに、遅れるわけにはいかないです」

実際遅れてただろ、と心の中で突っ込む。

朋也「まあ、いいや。んじゃ、俺行くところあるから」

椋「えっ?もう授業始りますよ?」

朋也「平気平気!んじゃ!」

それだけ言い残し、早歩きで廊下を歩いていく。

部室棟へ足を踏み入れたあたりで、6限目の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。

朋也(危なかった……不用意な発言はするもんじゃないな)

適当に空き教室のドアを開け、無遠慮に中へと入る。

朋也(さて、寝るか)

窓際に置いてある椅子に座り、腕を組んで目を瞑るとそのまま眠りにつく。



寝付いてからどれくらい経っただろうか。

ふと目が覚めた俺は、腕時計に視線を落とす。

朋也(……まだ授業終わるまで20分以上あんのか……)

もう少しだけ寝ようかと再度目を瞑る。

椋「あ、あの……お、岡崎くん……?」

朋也「………」

椋「お、起きてくださーい……」

………誰かの声がするが、多分気のせいだろう。

椋「…………」

ほら、聞こえなくなった。うんうん気のせい気のせい。

椋「……………」

朋也「………いや、黙るなよ」

椋「ふえっ!?おおおお起きてたんですかっ!?」

つい突っ込んでしまった。俺の負けか。

朋也「………」

椋「あの……?」

朋也「……なんでここにいるんだ」

色々聞きたいことはあったが、まずはこれを聞かなきゃ始まらなかった。

椋「もうすぐ授業始まるのに、岡崎くん、教室から出ていっちゃうから……えっと、追いかけてきました」

朋也「………」

どうしよう。どこから突っ込めばいいんだ。

朋也「……あのな、委員長」

椋「は、はい」

朋也「今俺が呼んだ通り、お前はクラス委員長だよな?」

椋「はい、そうです」

朋也「んで、今って授業中の時間だよな?」

椋「そ、そうですね」

朋也「つまり今のこの状況は、クラス委員長が授業をサボってるってことだよな?」

椋「………そ、そうなりますね」

朋也「他の模範となるべき委員長がそんなんでいいのか?」

椋「………」

ものすごく委縮する委員長を見て、なんだか説教してるような気分になってきた。

朋也「いや、違うぞ?別に怒ってるわけじゃなくてだな」

椋「えっ、怒っていないんですか?」

朋也「なぜそこで意外そうにする」

椋「あ、あの……」

朋也「……まあ、いいや。途中からでも戻った方がいいんじゃないのか?」

椋「お、岡崎くんも一緒に戻りましょう」

朋也「え」

椋「わ、わたしは、委員長として岡崎くんを連れ戻す為に来たんです」

とても頼りない様子でそう言い切られても、なんというか、説得力がない。

朋也「……なんでまたそんなことを」

椋「岡崎くんが不良なのは知っていますけど、だからと言って授業をサボっていいという理由にはなりません。それに、わたし、委員長ですから」

朋也「いやだって言ったら?」

椋「も、戻る気になるまでわたしもここにいます」

朋也「そもそも連れ戻す気があるんだったらなんで寝てる俺の隣に座ってたんだ?」

椋「気持ち良さそうに寝ていたので、起こすのは気が引けてしまって……」

朋也「………」

寝顔、ばっちり見られてたわけですか。

ちょっと恥ずかしくなってきた。

椋「で、では、岡崎くんも起きたことだし、教室に戻りましょう」

朋也「いやだ」

椋「……じゃあ、わたしもここに残ります」

朋也「好きにしろよ」

椋「………」

朋也「………」

さて、この状況どうしたものか。

とりあえず話は終わった。委員長は俺を連れ戻すまでここにいるつもりで、俺は戻る気はない。

時刻を確認すると、まだ10分以上も時間がある。

俺としては寝たいわけだが………。

椋「………」

何故か俺を凝視している委員長を傍らに寝るのは、なんとなく負けな気がする。

………。

朋也「そろそろ戻った方がいいんじゃないか?」

椋「なら、岡崎くんも一緒に……」

朋也「そっか、じゃあ無しだな」

椋「うう……」

何故泣きそうな顔をする……そんなに嫌なら一人で戻ればいいだろうに……。

………。

朋也「……すー……」

椋「お、岡崎くん……?」

朋也「んっ……」

椋「ね、寝ちゃったんですか……?」

朋也「……いや、起きてる。起きてるぞ俺は」

いかんいかん、寝そうになっていた。

椋「そ、そうですか。じゃあ……」

朋也「戻らんぞ」

椋「……はい」

そんなにしょんぼりするなよ、俺が悪いことをしてるみたいじゃないか……いや、確かに悪いことはしてるけどさ。

~~~

そんなこんなで今に至る。

放課後となった廊下を歩く俺に、その後ろを申し訳なさそうについてくる委員長。

なかなかシュールな状況だ。

椋「あ、あの、岡崎くん?」

唐突に、委員長が声をかけてくる。

朋也「あー?なんだ?」

椋「ど、どうして授業をサボったりなんかするんですか?」

朋也「………」

いきなりドストレートな質問だな。どんな答えを期待しているんだこいつは。

朋也「別に……サボりたくてサボってるわけじゃない」

椋「え、そうなんですか?」

素直に答えるつもりもないし、ちょっとからかってやろう。

朋也「実はな、春原に脅されてるんだ」

椋「す、春原くんにっ?」

朋也「ああ。『僕と一緒に授業をサボらなきゃ、お前をいじめるぞ!』……てな」

椋「お二人はとても仲が良さそうに見えていたんですが……」

朋也「それも脅されて仕方なく演じてるんだ」

椋「ええっ!?」

朋也「あいつ、友達いなくて寂しいんだろ。それで、俺が目をつけられたってわけだ」

椋「そんな……」

朋也「俺は授業に出たくて出たくて仕方ないんだけどなー」

椋「………あれ?でも、あの空き教室に春原くんはいませんでしたよね?」

朋也「あいつだけ先に教室に戻ってるんだ」

椋「えぇぇっ!?」

朋也「要は俺を落第させたいんだろ、あいつは」

椋「そ、そんな……最低です、春原くん……」

声のトーンが幾分か落ちた。それに心なしか震えてる。

チラリと委員長を一瞥すると、涙目になっていた。

朋也「………すまん、冗談だ」

椋「……え?」

朋也「今の全部冗談だ」

椋「………」

ちょっとだけこいつがどういう奴なのかわかった。

とりあえず冗談は通じない。

椋「ど、どうしてそんな嘘をついたんですか……?」

朋也「ちょっとからかっただけだよ」

椋「………」

朋也「これはホントだぞ?」

椋「……ぷっ」

朋也「委員長?」

椋「ふふっ……よかった、安心しました」

少しだけ潤んだ瞳でそう言い、委員長は笑った。

朋也「……すまん」

椋「? どうして謝るんですか?」

朋也「いや……なんとなく、な」

クラナドのSSです。以下注意点

・見切り発進なので更新不定期で遅め
・椋メインになる予定。杏好きにはちょっとつらい内容になるかも?
>>1は杏が一番好きです。あしからず

以上です。よろしければお付き合いくださいな



HRが終わると、委員長が担任と一緒に教室から出て行った。

恐らく、6限目の授業にいなかったことについてだろう。

だから戻った方がいいと言ったんだ。

春原「おい、岡崎。帰ろうぜ」

朋也「ん……いや、俺はちょっと急用ができたから先に帰ってろ」

春原「はぁ?なんだよ、急用って」

朋也「気にするな、野暮用だ」

無理に俺に付き合ってサボったんだ、俺にも責任の一端はある……と思う。

まあ、俺は戻れと言ったんだし、関係ないとも言えるが。

春原「なんかそうぼかされると余計気になるだろ、教えろよ岡崎。僕と岡崎の仲じゃないか」

朋也「俺とお前の間にそういう風に表現されるべき仲は存在しない」

春原「ふん、じゃあ勝手に想像させてもらうぞ」

朋也「好きにすりゃいいが帰り道でやれ」

いちいち付き合ってられない。

春原「ちっ、しょうがねえな……」

春原はぶつぶつ言いながら、カバンを持って教室から出て行く。

朋也「………」

そんな春原を見送ると、頬杖をついて教室の外に視線を移した。

~~~~

委員長が戻ってこないまま、10分が経過してしまった。

朋也(遅いな……もしかして、がっつり怒られたりしてんのかな……)

そう思うと、少しだけ罪悪感を覚えた。

杏「………朋也?」

朋也「ん?」

名前を呼ばれ、声のした方に視線を移す。

朋也「杏?おまえまだいたのか」

杏「それはこっちのセリフよ。なにしてんの、あんた?」

朋也「待ち人だ」

杏「はぁ?」

朋也「とある人物がここに現れるのを待ってる」

杏「何をバカみたいなこと言ってるのよ」

朋也「失敬な、俺は本当のことしか言ってないぞ」

まあ、多少なり突っ込みどころのある言い回しをしたのは認めるが。

杏「まあ、別にあんたのことなんてどうでもいいわ。それより、椋どこに行ったのか知らない?」

朋也「藤林なら、帰りのホームルーム終了と同時に担任に連れてかれたぞ」

杏「えっ、椋が?何かあったのかしら……」

朋也「さあな。俺、6限目はバックれてたから知らねえ」

杏「……相変わらずね、あんたは」

朋也「ほっとけ」

杏「しょうがない、椋が戻って来るまで待ってることにするわ」

朋也「え」

杏「? 何よ、『え』って」

朋也「い、いや……」

春原を巻いたと思ったら今度はこいつか。

さて、どうするか……。

こいつと一緒に教室で待つのもなんだかおかしな状況な気がする。

朋也(もう帰っちまおうかな……)

面倒くさくなり、そう思い始めた頃、

椋「……あれ、岡崎くんにお姉ちゃん?」

当事者が戻ってきた。

杏「椋!待ってたのよ、今朋也から話聞いて心配してたんだから」

椋「岡崎くんから?」

朋也「あー……まあ、お前、担任に連れてかれてっただろ?それでちょっと心配してた……というか、そんな感じだ」

杏の前でサボったことを言うわけにもいかないから、こういう言い回しをする他なかった。

杏「なにかあったの、椋?」

椋「えーっと……」

杏に詰め寄られ、困惑した様子で俺に視線を向けてくる。

俺は首を横に振り、黙っててくれと意志表示。

椋「ちょっと、具合が悪くて、6限目はお手洗いにこもってて……そのことで、呼び出されてただけだよ、そう」

朋也「………」

まあ話の筋は通ってるが、女の子ともあろうものがお手洗いにこもっていたなんて言うのはいかがなものだろうか。

杏「……なんか怪しい」

杏からの視線を、咄嗟にかわす。

杏「あんたたち、なんか隠してない?」

朋也「隠してない」

椋「か、隠してないよっ?」

藤林の声が詰まる。

動揺したら怪しまれるってわかってるだろうに……。

杏「……どうせ朋也に聞いてもしらを切りとおすだろうし、椋に聞くわ。どうしたの、椋?この馬鹿になんかされた?」

朋也「馬鹿ってなんだよ」

椋「ううん、本当になんでもないから」

杏「こいつを庇ってるのならそんな気遣いはいらないわよ?お姉ちゃんに正直に言いなさい」

椋「う、うぅ……」

またもチラリとこちらに視線を移してくる。

この状況じゃ俺にもどうしようもない。

杏「………っ?」

ふと杏が目を見開いて、俺の顔を一瞥すると何やら考え始めた。

まさか……感付かれた……?だとしたら俺の命が危うい。

杏「……もしかして朋也」

朋也「あー、悪い、杏!ちょっと妹借りて行くぞ!」

椋「え」

そういって藤林の手を強引に握り、半ば逃げ出す形でその場を離れる。

椋「え、えぇっ?」

杏「あ、ちょっと……」

杏が何かを言いかけるが、それも気に留めずに速足で歩き続ける。

杏「………」

杏は俺達の姿が見えなくなるまで、その場で立ち尽くしていた。

~~~

椋「お、岡崎くんっ?どこまで行くんですかっ?」

人気のない部室棟まで来たところで、藤林の手を離す。

椋「え、あの……?」

朋也「ふう……助かった」

椋「え?ええ?」

朋也「ああ、悪いな。あのままあの場に留まってたら俺の身が危うかったんだ」

椋「な、なんの話ですか?」

朋也「いいか、お前が俺と一緒に授業をバックれてたなんて杏に知られてみろ。俺が何されるかわかったもんじゃないだろ」

というか殺される。あいつ妹のこと大好きだからな。

椋「………」

朋也「ついでに、藤林にも言いたいことがある」

椋「な、なんでしょうか」

朋也「今日のことは他言無用な。つーか、担任に連れてかれたのもその件だろ?担任にはなんて言ったんだ?」

椋「大丈夫です。岡崎くんのことは言ってませんから」

朋也「………もう一度聞くが、なんであんなことしたんだ?」

椋「岡崎くんが授業をサボるからいけないんです。わたしと一緒に戻っていればこんなことにはなりませんでした」

心なしか、少し不機嫌になってる。

朋也「……まぁ、なんとか逃げられたからいいけど。もう俺の後を追っかけたりするなよ?」

椋「そうはいきません。岡崎くんが真面目に授業を受けてくれるようになるまで、わたしは岡崎くんを追いかけます」

朋也「お、脅しかっ?そんなものは俺には効かないぞ」

椋「脅しじゃありません、本気です」

藤林は俺の目を真っ直ぐ見つめ、きっぱりとそう言い切った。

朋也「………っ……」

その姿に、何も言えなくなってしまう。

椋「お話はそれだけですか?」

朋也「……あ、ああ」

椋「それじゃ、わたしは帰ります。今日は迷惑をかけて、すみませんでした。でも、今後も授業をサボるつもりなら、わたしが連れ戻しに行きますので」

朋也「………」

椋「では」

ぺこりとお辞儀をすると、藤林は歩いていってしまった。

その後ろ姿を追う気にもなれず、ただただ俺は見送るだけだった。



その日の晩方。

いつも通り春原の部屋で時間を潰していた俺は、ふと放課後のことを思い出していた。

朋也「……なあ、春原」

春原「あー?なんだよ、岡崎」

朋也「藤林ってどういう奴か知ってるか?」

春原「なんだよ急に?どうかしたのか?」

朋也「ちょっとな」

春原「………そういや、今日の6限目はお前と、何故か委員長がいなかったな。もしかして、授業バックれて委員長と逢引きでもしてたのか?」

朋也「まあ、そんなところだ」

突っ込みどころは色々あったが、訂正するのも面倒だから肯定する。

春原「えっ」

朋也「で、どうなんだよ。藤林のこと、なんか知ってるか?」

春原「ま、まさかお前……委員長に気があるのか!?正気か岡崎、委員長はあいつの妹なんだぞ!?」

朋也「なんでそういうことになるんだよ。別に藤林に気なんて持ってねーよ」

春原「じゃあなんでそんなことしたんだよ!納得のいく説明をしろ!」

……仕方ない、面倒だが説明しないと話が先に進まなそうだ。

朋也「6限目をバックれて空き教室で寝てたら、何故か藤林が俺のところに来たんだ。なんでも、俺を連れ戻す為に追ってきたとかなんとか」

春原「………すげー意味不明なんですけど」

朋也「俺も大概意味不明だから気にするな。なんでそんなことをしたと聞いても委員長としてだとかなんとか言ってて、わけわかんねえんだ」

春原「ふーん……」

朋也「んで、今日の放課後、藤林が担任に連れてかれただろ?それで戻ってくるのを待って、今日のことは誰にも言うなと釘をさしておいたんだ。杏に知られたら俺の身が危ういしな」

春原「あー、それが野暮用か、なるほどねぇ……」

朋也「んで、ついでにもう俺の後を追って授業サボるなとも言ってやったんだけど、そしたらあいつ今後も連れ戻しに来るとか言ってくるんだよ」

春原「………」

朋也「俺、あいつに恨まれるようなことなんかしたかな」

俺の方には特に心当たりはなかった。

春原「さあねえ……まあ、委員長も杏の妹だってのがよくわかる一件だな」

朋也「……だな」

有無を言わさぬ強引さとか、謎の行動力なんかは杏に似てるとも思う。

春原「ははっ、やっかいな奴に目をつけられたな岡崎」

朋也「考えようによっては杏以上にやっかいかも知れねえな……」

杏相手なら多少強い物言いをしても問題ないが、藤林となるとそうもいかない。

杏とは違って気弱だから強い物言いをしたら、ともすれば泣いてしまうんじゃないかって気もする。それに、藤林の背後には杏がいる。

藤林を泣かせたなんてことになったら、これまた俺の身が危うくなってしまう。

春原「まあ、頑張れよな岡崎。なんとか委員長を泣かさずに見逃してもらえる方法を考えてみるんだな」

朋也「他人事のように言ってくれるよな……」

春原「ふふん、普段僕に酷いことをしてる報いが来たのさ!」

朋也「失敬な、普段のあれは俺なりの友情の印のつもりなんだぞ」

春原「どうだかね」

そんな話をしながら、夜は更けて行く。

まあ……なるようになるだろ。

*   *   *

SIDE‐椋

岡崎くんと分かれたわたしは、カバンを取りに教室に向けて歩いていた。

多分、お姉ちゃんも待っているだろう。

椋「………はぁ……」

少しだけ、さっきのことを後悔していた。わたしが不機嫌になっているの、多分岡崎くんも気付いていただろう。

でも、悪いのは岡崎くんだよ。わたしが岡崎くんの後を追って授業をサボるのに、どれだけの勇気を振り絞ったのかちっとも考えてくれないんだもん。

椋(まあ、無理もないのかな……)

わたしの気持ちなんて、岡崎くんは知ってるわけもないし。

なんであんなことをしてしまったのか、自分自身よくわからない。

自分に、そんなことを出来る勇気があるなんて思いもしなかった。

わかることと言えば、ひとつだけ。

椋「やっぱり……わたし、岡崎くんのこと……」

好きなんだ。この気持ちだけは、間違いなかった。

お姉ちゃんは、教室のなかで待っていた。

椋「ごめんね、お姉ちゃん。待たせちゃって」

杏「あっ、椋!大丈夫、朋也になんかされなかった?」

お姉ちゃんはすぐにわたしの側に駆けよって、そう言ってくれる。

椋「うん、大丈夫だよ。ちょっと、今日のことで話をしてただけだから」

杏「……今日のこと、って?」

椋「………」

どう答えるべきかなと少し悩んで、お姉ちゃんには正直に言おうと思った。

岡崎くんはああ言っていたけど、お姉ちゃんは優しいんだから、大丈夫だと思うし。

それに……お姉ちゃんは、わたしの気持ちを知っているし。

椋「とりあえず、帰りながら話そう?もう日が落ち始めてるし」

杏「ん、そうね。下校時間過ぎちゃいそうだし」

そうして、お姉ちゃんと二人、学校を後にする。



校門を抜けたところで、話し始める。

椋「今日の6限目ね……さっきはお手洗いにこもってたって言ったけど、ごめん。あれ嘘なの」

杏「……朋也と一緒に、授業をサボったっていうこと?」

椋「正確には違うけど、そんなところ。それで、そのことは誰にも言うなって岡崎くんに言われただけ」

杏「あんの馬鹿……椋を不良の道に引きずり込むつもりかしら……」

椋「あはは、違うよお姉ちゃん、逆だよ」

杏「え、逆?って、どういうこと?」

椋「わたしが、岡崎くんを真面目な人にしてあげようと思ったの」

杏「はぁ?つまり、どういうことよ?」

椋「岡崎くん、授業をサボりがちだから……わたしが連れ戻そうと思って、教室を出た岡崎くんの後を追ったんだ。だけど、岡崎くんは戻る気はないの一点張りで……結局、一時間丸々サボる形になっちゃったの」

杏「……へぇ……」

なんとなく、お姉ちゃんの声のトーンが下がった気がする。

椋「もしかして、怒ってる?お姉ちゃん」

杏「当たり前じゃない……朋也のやつ、今度会ったらただじゃおかないわよ……」

椋「大丈夫だよ、お姉ちゃん。これは、わたしが勝手にやったことなんだから。岡崎くんは悪くないよ」

杏「朋也が悪いとか悪くないとかはどうでもいいのよ。あたしが朋也を許さないってだけ」

椋「岡崎くんはわたしの……そ、その、好きな人だから……あんまり迷惑はかけないで欲しいなって……」

杏「っ……それを言われちゃ何も出来ないでしょ、ったくもう……」

そう言って、お姉ちゃんはギュッとわたしの肩を抱き寄せてくる。

杏「わかったわ。椋に免じて、今回は見逃したげる。ただし、次はないからね?あんたも、朋也のことが好きなんだったらもっと別の方法を考えなさいよ」

椋「うん……考えてみるね」

なんて言ってみるけど、もう決めちゃったことだ。しばらくは、岡崎くんの行動を観察してみることにしよう。

少しでも、岡崎くんのことを知りたいという気持ちもあるし……それに、私のことも岡崎くんに知ってもらいたい。

これが、わたしの行動力の源になってくれるだろうって思った。

本日の投下、以上
基本的に一週間に一回の投下で進行しようと思います

では

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