提督「臆病で愚図」 (460)

・投稿童貞.稚拙.

・憲兵を掘りたい.

・R18? エロくない.

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431113189


━━━━臆病の愚図め


目が覚める.

やわらかい感覚が私の身体にかぶさっていた.

提督(妙高か…)

一糸纏わぬ姿の妙高が私の身体に覆いかぶさっていた.

うつ伏せに眠るのは良くないと聞くが,艦娘には関係ないのだろうか.

自分の一物がぐじゅりとした感触を伝える.

朝立ちしたそれが妙高の膣内に入っているらしい.

腰を小刻みに動かしながら,周りを見渡す.妙高が小さく喘ぐ.

妙高と同じく,裸体の那智,足柄,羽黒が寝ていた.

全員疲れているのか,ぐっすりと寝ているようだ.

提督(…)

とりあえず,勃起したままでは困るので,一回射精することにしよう.


その前に妙高と体制を逆にすることにする.

周りを起こさないように,ゆっくりと,慎重に,行う.

妙高,重いぞ.

女性に「重い」という言葉は失礼に当たるそうだが,重いものは重い.少しは軽くなれ.

妙高と体制を逆にした.妙高が下,私が上だ.

妙高がぼんやりと,薄く目を開けている.起きたのだろうか.・・・まあ,あれだけ動けばな.

その顔は,艶やかで,美しい.

だが関係ない.腰を動かす.

突くというよりは,こするように.

妙高の目が覚める.

妙高「て,提と,っん・・・」

黙らせるために,唇を奪う.舌を挿れ,からませる.

身体を押し付け,妙高を押さえつける.

妙高の表情が蕩ける.

私に抱きつき,足をからめる.

だいしゅきほーるどという体位らしい,曙が同じようなことをしたとき,漣が傍らでそう言っていた.最近の子はよくわからん.

そういえば,霞や満潮もやっていたな.流行なのだろうか,

動きにくいから,普通に股を開いててほしいのだが.


振り向くと,まだ息の整っていない妙高が私の腕を掴んでいた.寝てればいいものを・・・

重巡というだけあって力が強い,振りほどくことはできなさそうだ.

提督「シャワーを浴びにいくだけ「私もいきます」

即答.

提督「・・・二人は狭いぞ」

妙高「浴室の前でお待ちします」

提督「それじゃ意味がないだろう」

妙高「提督を一人にはできません」

頑として聞かない.

提督「・・・ちゃんと部屋には戻ってくる」

諭すように,言う.

妙高「・・・嘘です」

私の手を掴む力が,強くなる.

妙高「嘘です嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘ウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソそうやって提督は私たちを置いていきました私たちを捨てました嫌です嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌イイコデイマスカラナンデモシマスカラソバニイテクダサイオイテカナイデステナイデ━━━━」


「ソバニイテ・・・」


提督「・・・」


私の腕を掴んだまま,妙高は俯く.

その姿は,はじめて怒られた子供のようで,弱々しく,抱きしめれば折れてしまいそうだった.

細く,緊張をほぐすように,息を吐いた.

私をこの鎮守府に縛りつけ,常に誰かが私を監視するようになっても,彼女たちの心はいまだ不安定なままだ.

一線を越えてからは落ち着いてきたように見えたが,一人になろうとすると今のように決壊する.

・・・不安と恐怖によるものか,妙高の手が,震えて,冷たくなっているのを感じた.

というか,腕が痛い.妙高,力入れすぎ.

このままでは腕が千切れかねないので,妙高を落ち着かせることにしよう.

古今東西,泣きそうな女の子は男が黙って抱きしめてやるというのが相場だ.今回もそれに倣うとしよう.

ちなみに,それとなく同じようなことを言ったとき,漣に「イケメンにかぎる,ワロスwww」とか言われた.不細工でもいいだろ・・・

妙高の傍まで近づき,空いている手で妙高を抱きしめる.

妙高が顔を上げる.その顔には不安がありありと表れていた.

そしてその目は,海の底のように暗く,濁っていた.

妙高の手の力が弱まる.掴まれていた手で髪を梳き,頭を優しくなでる.柔らかく,艶のある髪を指で味わう.

なでる間,妙高の表情が変わる.不安な表情が少しずつ薄れ,眠りにつくような安らいだ顔へと変わっていく.

妙高が私の胸に顔を埋める.そのまま眠りについてくれるといいのだが.

抱きしめ,なで続ける.

しばらくすると,妙高が再び顔を上げた.残念ながら,眠ってはくれなかったらしい.

妙高の顔は,なにかもの欲しそうな,期待を含んだ表情になっていた.

胸の鼓動が,柔らかな二つの乳房を伝って,心臓に流れてくる.

期待に応えるように唇を近づける.妙高は目を閉じ,口付けを抵抗することなく受け入れた.


キスをし,妙高が目を閉じている間,横目で周りを見回す.

いい加減そろそろ起きるのではないかと思ったが,那智たちは変わらず安らかな寝息を立てている.

図太いな,こいつら.こちらとしてはありがたいが.

視線を戻し,息苦しくなる前にそっと唇を離す.

提督「・・・落ち着いたか」

妙高「・・・はい」

提督「シャワーを浴びた後は散策に出る.お前もついてこい」

妙高は小さく頷く.

肩を抱き寄せたままベットを降り,そのまま個室に備え付けられた浴室へと向かう.

浴室の前の更衣室に着くと,妙高が口を開いた.

妙高「・・・それでは,提督,わたしはここで」

提督「時間の無駄だ.一緒に入るぞ」

女のみそぎなど待ってられない.妙高を抱き寄せたまま,私は浴室に入った.


さて,シャワーの水も適温になったようなので,さっそく体の前面の汗を水で流す.

背中もやろうとしたところで,妙高に声を掛けられた.

妙高「提督,お背中のほうは,私が」

返答はせず,黙ってシャワーヘッドを手渡す.

妙高が背中を洗う間,私は体前面を洗剤を使って洗う.

本当は汗を流す程度でいいのだが,体に匂いが残っているといちいちうるさい娘が多いのだ.

体全体に洗剤を適量付け,洗う.

提督「妙高,シャワーを」

体をシャワーですすぐため,シャワーヘッドを要求し,後ろにいる妙高に手を差し出す.

しかし,いつまで待っても一向に手渡されない上に,返答が一切ない.

提督「妙高━━━」

妙高「提督,傷,残ってしまいましたね・・・」

またそれか.


私の体にはいくつか弾痕がある.

といっても,過去に戦場で銃撃を受けたとか,深海棲艦の砲撃がかすめたとか,そういった誉れあるものではない.

初代のバカに後先考えずに突撃して,結果としてつけられたものだ.

本来なら,妙高達が気にすることではない.

そう,気にすることではないはず・・・なのだが,こうやって浴室で一緒になるなど,お互いの身体をじっくり見るようになると,毎回のように気にする娘が出るのだ.

時雨は言い聞かせないといつまでも傷痕を触り続けるし,電は見るたびに泣きそうになる.

綾波は・・・なぜか笑顔で「おそろいですね」とか言ってくる.こんなお揃いあってたまるか.

とにかく,毎回毎回傷痕のことを掘り返されるのだ.正直,うんざりしている.

なにより,過去の思い出すようなことは,彼女たちの精神に良くない.

本土の主治医に頼んで,瘢痕の専門医でも紹介してもらうか.まあ,本土に行けるチャンスがあるのかどうか不明だが.

そもそもあの主治医,いまでもあの病院にいるのか・・・?


妙高が私の傷痕を指先で優しくさする.

海軍所属の者には似つかわしくない,滑らかで,柔らかな感触だった.

彼女は何を考えているのだろうか,私には見当もつかないことだ.

提督「気にしてはいない,お前も気にするな」

妙高「はい・・・」

シャワーヘッドを妙高から受け取り,自分の体についた洗剤を流す.

提督「散策の時間がなくなる.さっさと身体を洗え」

妙高「はい,あっ」

突如,妙高が声を上げた.

提督「どうした」

妙高「・・・提督に,注いでいただいたものが・・・垂れてしまいました・・・♡」

シャワーをぶっかける.

妙高「きゃっ,て,提督!」

・・・まったく.


声が聞こえた瞬間,妙高に伸ばした手を戻し,声がした方向に顔を向ける.ついでに手を戻す際,股間に寄せていた妙高の手を妙高の膝に返す.

手を戻した際,妙高が眉間に皺を寄せて非常に不満そうな表情をしていたが,知ったことではない.

「やっと,会えた・・・」

提督「おはよう,陽炎」

陽炎は膝に手をつき,荒い息継ぎをしている.本館からそれなりに離れた距離とはいえ,こいつにしては珍しい.

陽炎は呼吸を整えたあと,乱れた髪を直し,整容を行う.身だしなみを整える余裕があるところをみると,急用ではなさそうだ.

身なりを整えた陽炎は私に柔らかな微笑みを向ける.

陽炎「おはよう! 司令.今一人かしら?」

遠目から見ても妙高が傍にいるのは明らかなはずだが,どういった意図でその質問をしたのだろうか.

凛々しい顔立ちから見せる,名前から想像するものとは逆の,明るい表情を見せる陽炎.

疑念を抱く余地のない,彼女らしい表情だ.先ほどの質問も深い意味はないだろう.

返答代わりに,マナー違反ではあるが,人差し指の指先を妙高に向け,机を叩くように指を二回動かす.

私の指の動きを見て,妙高に視線を向ける陽炎.

視線が妙高に移動した途端,表情が抜け落ち,目が半眼になる.

陽炎「・・・おはようございます.妙高さん」


陽炎がゆっくりと口を開く.

陽炎「妙高さん,そんなべたべたべたべたべたべたべたべたべたべたべたべた司令にくっついたら迷惑じゃないですか.動きにくいし,汗がつくと不愉快だろうし.まるで血を吸って這いずる蛭みたいですよ」

その言葉を聞いた妙高は,一転,三日月を並べたような表情になり,返す.

妙高「秘書艦を任された以上,常に提督のお傍に身を置くのは当然でしょう? 陽炎さんこそ,こんなところまで提督を追いかけてくるなんて,汚物に突然湧いた蛆みたいでびっくりしましたよ」

その言葉を聞ききながら陽炎は,表情はそのまま,左手で右上腕の肘前窩付近を掴み,右手で頬杖をついて,返す.

陽炎「こんなことで一々驚いていて秘書艦が務まるんですか? べたべたくっつくだけで ・・・ああ,そういえば蛭って,火を近づけると熱さに耐えきれずに血を吸うのをやめて地面に落ちるそうですよ.やっぱり害虫は火で焼き殺すが一番ですね,火で」

妙高「ああそうですか,また一つ賢くなりました,ありがとう.お返しにとは言いませんが,蛆も虫が近寄らないよう清潔に保ってさえいれば湧くことはないそうですよ.常に清潔しておかないといけませんね.虫一匹近寄らないように綺麗に,綺麗にね」

陽炎の表情が,目を除いて,笑顔になる.

陽炎「そうですね,清潔って大事ですよね.せっかくだから掃除でもします?」

妙高「あら,なにを掃除するつもりですか?」

陽炎「もう,わかっているくせに,からかわないでくださいよ」

妙高「あら,そう,ごめんなさい・・・ふふ」

陽炎「ほんとですよ,ふふふ」

妙高・陽炎「「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」」





提督(・・・・・・・・・)





何なんだ,これは.どうしろというんだ.

・本日 ここまで

・口調がむずかしい・・・


妙高「・・・・・・・・・」

陽炎「・・・・・・・・・」

先ほどの笑い声はどこへ行ったのか,能面のような表情でお互いを見合って沈黙する二人.

おかしい.川内と大鯨から,娘たち同士で仲違いをしているという話はなかったはずだ.

大鯨の話は参考程度に留めるにしても,川内の情報が誤っているとは考えづらい.おべっかを言うようなやつでもないし.

だとすると最近関係が悪化したということだろうか?



妙高の瞳の色が,黒色から藍色へ変わる.

陽炎の瞳の色が,狐色から深緑へ変わる.



最近のことで,彼女たちの間に亀裂が入るような出来事があっただろうか.

日常生活,訓練,任務・・・知る限りの彼女たちに関する記憶を探ってみても,思い当たる節がない.

仮に私が把握していなくとも,聡い足柄が妙高の様子に気がつかないとは思えないし,陽炎なら不知火か黒潮あたりが気に掛けるはずだ.

周りの娘たちが把握していれば,指導係か大鯨の耳に入る.そうでなくとも川内が見逃すとは思えない.

個々人の私生活を覗く趣味も口を出す権利もないが,艦隊の士気に関わる内容はできる限り伝えるように言っているのだが.

川内たちからしてみれば,この程度は士気に影響しないとの判断だろうか.

だが,陽炎と妙高だぞ? 見過ごせる二人ではないはずだが.



妙高からミシミシとナニカが食い破るような音を感じた.

陽炎からザワザワとナニカが這い出るような音を感じた.



・・・まさかとは思うが,私が原因ではないよな?

私のことで妙高と陽炎が不安定になるのはわかるが,飽くまで私が関わったときだけだったし,その矛先もほぼ間違いなく私自身に向けられていた.

振り返ってみても,娘たち同士で諍いが起こることはなかったし,むしろ協力しあって仲は良かったはずだ.

仮に私が原因だとしたら,妙高と陽炎の心境に何か変化があったということだろうか.だとしてもなぜここまで険悪なのか.

だめだ,原因がまったくわからない.









妙高の瞳の色が,藍色から輝く青へ変わる.

陽炎の瞳の色が,深緑から輝く青へ変わる.



まずい.


提督「陽炎,私に用事はないのか」

とにかくこの状況はまずい.根本的な問題の解決は後にして,一時的にでも矛先を変えなければ.

今のこの二人に通じるかどうか不明だが,まずは話を逸らしてみる.

私の言葉に反応し,妙高と陽炎が私のほうを見る.

二人の瞳の色が元の色合いを少しだけ取り戻す.うまくいったか?

提督「時間が惜しいのだが・・・」

散策に出ておいて言うことではないが,この場をうやむやにするため陽炎を急かす.


陽炎「ごめんね,司令.すぐ終わるから.そのあといっぱいお話しようね」

申し訳なさそうな笑顔でニッコリと私に言葉を返す.

にべも無く返され,陽炎と妙高は再び睨みあいになる.陽炎は両腕を下げ,リラックスした態勢になる.妙高は私にくっついたままだ.

駄目だったか・・・仕方ない,少し強引な手段に出よう.この娘たちが喧嘩するよりましだ.

というか,今のこいつらが喧嘩しようものなら,辺り一帯がクレーターだらけになりかねない.

提督「おい」

敢えて怒気を孕んだ声を挙げる.妙高と陽炎がビクリと肩を震わせる.

引いて駄目なら押してみろ.こちらから攻める.

提督「私は時間が惜しいと言ったんだ,陽炎.言っている意味がわからなかったか」

間髪いれず,気分を害したという体裁を装い,毒が潜む言葉を吐く.

妙高と陽炎が恐る恐る私のほうを見る.瞳の色が戻り始めていた.

提督「お前らのせいで最悪の気分だ.不愉快極まりない」

火に油を注ぐような発言だが,今までの彼女たちの反応を顧みればこれでいいはずだ.

陽炎は何が起きたのかわからない顔をし,妙高は困った笑顔をしていた.

第三者がいきなり口をはさんできて,しかも嫌悪感を露わにしているとなれば,そんな表情にもなる.

妙高「あの,ていと「離れろ」

妙高の発言を遮り,左腕を挙げて妙高の拘束から逃れる.

先ほどの陽炎のように,あしらわれてしまってはいけない.多少強引でも主導権を維持しなければ.

提督「妙高,離れろ,黙れ.これ以上私を不快にさせるつもりか」

妙高の張り付いた笑顔が一変する.

目が見開き,瞳孔が拡大収縮を繰返し,口は金魚のように無意味に開閉を続け,顔面が蒼白になる.いかん,やりすぎた.

陽炎「し,司令・・・?」

提督「なんだ,くだらない口喧嘩について,なにか弁明でもあるのか」

陽炎の表情が強張る.右手首を左手が掴む.

陽炎「く,口喧嘩なんてしてないわ」

提督「口喧嘩でなければなんだ,なにが違う?」

なんでさらに責めるような台詞を言っているんだ,私は.

陽炎「あっ,えっ,えっと・・・そ,そうっ! ちょっとからかっただけなの! 朝から二人きりでうらやましいな~,なんて! そしたらちょっと過熱しちゃったていうか,その・・・えっと・・・」

今にも泣きそうな表情をなる陽炎.そろそろ落とし所を考えて,彼女たちを慰めなければ.

提督「だとしても他でやれ.貴重な時間を潰しやがって」

だからなんでさらに責めるような台詞を言っているんだ,この口は.陽炎が涙目になってんじゃねえか.

陽炎「・・・ごめんなさい」

普段の向日葵のような明るさは鳴りを潜め,俯き,軽く握った手の指先をあてどなく触れ合わせる陽炎.

妙高は口を阿呆のように空けたまま,うつろな目でどこを見ているのかわからない顔していた.洒落になってないぞ.

提督「まあ・・・いい.私も言いすぎた.・・・すまなかったな,陽炎,妙高」

早くフォローしなければ.妙高もそうだが,このままでは陽炎もリピートし続けるラジカセになってしまう.

どうするもこうするもない.

いいからスキンシップだ!!

・午前はここまで

・話が進まない orz

・sageないほうがいいでしょうか?

・要望 改善等 ありますか?


呆然としている妙高を引き寄せ,首筋に歯形が残るよう噛みつき,気つけをしてやる.

妙高「あっ♡」

妙高の首を甘噛みしている間,逃げないよう左腕で妙高の身体全体を抱きしめる.

ズズズッと首筋の肌を吸い,唾液をべっとりと残して唇を離す.

虫刺されのような赤い跡,そして歯形が残っていることを確認し,顔を上げて妙高の表情を見る.

私の視線からそっぽを向いた状態だが,目と閉じ,少し悔しそうな顔をしている.

むしろ,運動後の息が上がったときの表情と言ったほうが正しいか.

なにせ,抱きしめた左腕からは,妙高の心臓が早鐘を打っているのがはっきりと確認できるのだから.

妙高が横目で私を見る.

妙高「てい,とく・・・」

潤んだ瞳と,瑞々しい唇.

提督「妙高,いいぞ」

私が言葉を言い終えるや否や,私の両肩を掴み,体重を預け,私の首筋に顔を当てる.

お返しとばかりに首筋を思い切り噛まれ,吸われ,舐められる.痛い.

所有者であることを主張するかのように何度も噛まれ,飲み干すように何度も吸われ,慰めるように何度も舐められる.

唇を離した後,ミルクを飲む猫のように首筋を舐められる.

鏡がないからわからないが,おそらく噛んだ際にできた傷とそこから出る血を舐め取っているのだろう.

妙高は,獲物を捕らえ,久々のご馳走にありつく飢えた獣のように,延々と私の傷を舐め続けた.





陽炎に視線を移すと,妙高と私の行為に反応したのか,面を上げて,驚いた表情をしていた.

私と視線が合うと,胸の前で手を組み,少し怯えた顔をする.

子猫のように私を舐め続ける妙高はこれでいい,次は陽炎だ.

提督「陽炎,こっちに来なさい」

できる限り,優しく,暖かく,陽炎を呼ぶ.

陽炎の唇が,嬉しそうに歪んだ


陽炎は,灯りに誘われる蝶のように,私に近づく.

そのまま私の右膝に跨り,シーソーに乗る子供のように私の足の付け根部分に両手を置く.

陽炎「んっ♡」

私の膝に座った瞬間,陽炎は口に手を当て,片目を閉じ,何かに耐える表情をする.閉じた口から声が漏れてしまってはいるが.

提督(どこか怪我でも・・・ん?)

陽炎が膝に跨ってから,膝に堅い感触を感じる.ちょうど陽炎の股の部分からだ.

タンポンかナプキンでも着けているのだろうか? いや,だとしても堅すぎる.

まさか,悪性の腫瘍でもできたのか.

提督「陽炎,大丈夫か」

右腕で陽炎の左肩を掴み,身体を起こさせる.

陽炎「えっ? 大丈夫よ? どうして?」

陽炎は少し顔を赤くし,息を荒くしながら不思議そうに私の顔を見る.おかしい.

提督「熱はないのか? 身体に腫れ物は?」

陽炎「? ないわよ? 健康診断の結果は司令も目を通しているでしょ?」

提督「・・・まあ,そうだが」

確かに,先ほど声が漏れた時も痛そうな様子ではなかった.

堅い感触も,自分のズボンの皺部分か,陽炎のスパッツの縫い目部分を勘違いしたのだろうか.

だとしても,頬の紅潮や荒い息遣いの説明ができないのだが.

陽炎「大丈夫だって,そんなことより・・・」

陽炎は左肩を掴んでいた私の右腕を両手で包み,優しく握る.

陽炎「さっきはごめんね.司令,いつも忙しいのに.大切な時間,潰しちゃって・・・お詫びに私,なんでもするから.司令が望むなら,なんだって・・・」

そう言って上目遣いに,私に暗い瞳を向けながら,妖しく微笑む陽炎.

私は掴まれたままの右手を陽炎の左頬に寄せ,優しく頬を撫でた.

提督「気にするな,私も言いすぎた.お互い様だよ,そうだろう,陽炎?」

そう言いながら,右手を頬から喉元になぞるように移動させ,猫をあやすように撫でる.

陽炎の両手が私の右手から離れ,再び右足の付け根部分に陽炎の両手が置かれる.

陽炎「・・・うん」

ぼんやりとした表情になった陽炎は,股を私の膝にぺったりとくっ付け,両手を軸にして身体を前後に動かす.

自然と,私の膝で陽炎の股間が擦れる形になる.おいこら.


陽炎「んっ♡ あっ♡ しれぇ♡」

目を瞑り,一心不乱に股間を擦る陽炎.駄目だ,こいつ,もう自分の世界に入ってやがる.

陽炎「しれぇ♡ しれぇ♡ あっ,んっ,しれぇ♡」

いきなりオナニーを始めた陽炎の股間にひざ蹴りをぶっ放してやりたい気分だが,やむをえない.

こういう場合,放置するより協力して,さっさといかせてやるのが一番だ.

提督「いけない娘だな,陽炎.私に黙ってそんなことを始めるなんて」

右手を喉元から首筋へ,首筋から鎖骨へと陽炎の肌に触れながら移動させる.

陽炎は顔を上げ,私を見る.

だらしなく開いた口,恍惚とした顔色を私に向ける.

陽炎「だってぇ♡ あっ♡ しれぇがぁ♡」

提督「だって,なんだ? 若いころからこんなことを覚えてしまって・・・陽炎,お前の将来が不安になってしまうよ」

鎖骨から胸へと右手を移動させ,親指と人差し指で陽炎の左胸を挟み上げる.陽炎が「んっ」と声を上げる.

突然,首筋を舐めていた妙高が私に再び噛みつく.痛みで顔が少し引きつる.

先ほどまで私と陽炎の行為を無視していたくせに,どうしたんだこいつは.

陽炎「いいのぉ♡ んっ♡ こんなことするのはぁ♡ しれぇだけだもんっ♡ 」

嬉しい半面,悲しいことを言う陽炎.

提督「そうか,では,一生私のものにしておかないといけないな.どこにも,だれにも渡さないように,ずっと,な」

陽炎「うん♡♡♡ ずっとぉ,ずっといっしょぉ♡♡♡」

陽炎の動きが,息遣いが激しくなる.

陽炎「しれぇっ♡♡♡♡♡しれぇっ♡♡♡♡♡しれぇっ♡♡♡♡♡しれぇっ♡♡♡♡♡」

提督「陽炎,いいぞ,見ていてやる・・・・・・逝け」

瞬間,陽炎の目が見開き,背筋が反り,顔が空を見上げた.

陽炎「ああああああああああああぁっ!♡」

ビクビクと身体を震わせ,啄ばむように舌を出し,絶頂の声をあげる.

膝にじんわりと湿った感触が現れる.後で洗濯だな.

絶頂の余韻に浸りながら,息を整える陽炎.

その状態でしばらくぼんやりしていた陽炎は,突如私に身体を預ける.

私は右手を陽炎の背中に回し,息が整うまでやさしく背中をさすり続けた.



陽炎の息が整い始め,妙高が首筋から顔を離した頃になって,ふと気になっていたことを思い出した.

提督「陽炎,私に用があるのだろう?」

・本日 ここまで

・えろ は むずいね・・・

・今回から sageなしにしました

・要望 改善等 あれば どうぞ


私がそう言うと,陽炎はゆっくり顔を上げる.

息は整ったようだが,彼女の顔にはまだ赤みが残っていた.

今の陽炎は,少女というより女のようだ.

左肩に重さを感じた.大方,姿勢を戻した妙高が私の肩に体重でも掛けているのだろう.相変わらず重い娘だ.

陽炎「ん……そうだった」

陽炎はそう言うと,私にもたれかかったまま,顔を少し右に向け,ベストの右ポケットに手を伸ばす.

まだ身体に力が入りにくいのか,たどたどしく右手を動かし,ポケットの位置を探る.

ポケットを見つけた陽炎は,透明で厚みの薄い四角の筺体を取り出すと,私の右肩を支えに起き上がった.

それに伴い,私も陽炎の背中に回していた右腕を自分の体に戻し,右腿の上に置く.

陽炎「はい,司令」

陽炎は両手で筺体を掴み,私に差し出す.

私は右手でその筺体を受け取り,中身を見る.同時に左肩からこする感触があったので,妙高も顔を動かして見ているのだろう.

筺体の中には円盤状の記憶媒体が入っているようだ.というかディスクだな,これ.

提督「これは?」

陽炎を見ながら,私は筺体の端を親指と人差し指で掴み,顎下の位置で前後に揺らしながら,尋ねる.

陽炎「ふふ」

陽炎が,網を張る蜘蛛のように,薄く笑う.

目は下弦の月,口は三日月に,猫手を唇左下に付ける,

餌を捕らえた女郎のようだ.嫌な予感しかしない.

陽炎は,私の膝に跨ったまま地面に足裏を着け,立ち上がる.

そして,スカートの下から手を入れると,スパッツをスカートより下,大腿直筋までゆっくり降ろす.

スカート内部から粘性のある液体が糸のように垂れて,スパッツの内側,陽炎の陰部が当たる部分に繋がっていた.おい,下着はどうした.

陽炎は太腿真上のスカートを両手でそれぞれ摘むと,手を上へと移動させ,スカートの裾をたくし上げた.

陽炎の陰部が露わになる.毛,剃ったんだな.

涎を垂らすように濡れている陽炎の陰部に,異物がある.

その異物は円筒形の物体であり,陽炎の体内に,陰唇を押し広げ,突き刺さっていた.

入りきらなかった異物の底の部分が,陽炎の陰部から顔を覗かせるように出ている.

どう見てもディルドです.というか,さっきの膝の堅い感触はそれか.

おまけに,張形と陰唇の隙間から一本のコードが伸びている.それはベルト部分を廻り,スカートの内側に取り付けられているロータリスイッチにまで伸びていた.

どう見てもローターです.もうやだこの娘.

陽炎は再び頬を上気させ,ねぶるような視線で私を見る.

美しい海,青い空,穏やかな朝の陽ざしを背景に,一人の娘が恥部を晒している.なんとも不気味な光景か.

陽炎「司令,どうかな?」

提督「なにがだ」

陽炎「これ,大変だったのよ? さっきだって,走っているときに膣内がこすれて……ちょっとイッちゃったんだから♡」

知るか.というか,珍しく息が上がっていると思ったらそれが原因か.

提督「……陽炎,はしたないから,下を履きなさい.そもそもお前のそれと,私のこれに,何の関係がある」

手に持った筺体を見せ,陽炎の行動を咎める.

私を挑発するにしても唐突すぎる.それに今はそんな気分ではない.

陽炎「私ね,これを着けて昨日一日過ごしたの.それには,その様子を撮影した映像が入っているから♡」

……うわぁ……いらねえ.


いま気づいたが,さっき妙高と睨み合いしている時も,陽炎はそれらの性具を着けていたということになる.

そのことに気づいたら,なんというか,こいつら相手に肝を冷やしていた自分がひどく滑稽に思えてきた.

そんな私の気も知らず,陽炎はスカートから手を離し,私の腰を支えに前傾姿勢になって顔を近づけ,言葉を続ける.

陽炎の顔を見ると,瞳孔が開いており,興奮しているのがわかる.脳内麻薬でも出てんのか.

陽炎「それね,すっっっごいんだからっ! 周りからの蔑んだ視線とか,露出とか,オナニーとかもばっちり映っているからっ! きっときっと司令も満足してくれるわっ!」

非番の日になにしてんの,この娘.そして満足って何をだ.おまけに周り視線ってなんだ,他の娘がいるところでやったのか.

提督「……黒潮は何も言わなかったのか」

私がそう言うと,陽炎は何かを達成したかのように右手で拳を作り,狙い澄ましたかのような表情になる.

陽炎「撮影してくれたわ!」

黒潮,お前もか.

比較的まともな黒潮まで悪乗りしたら,だれが陽炎の暴走を止めるというのか.

陽炎「そうそう,黒潮で思い出したけど,あの子とのレズセックスの映像も入っているから!」

もう駄目だな.

陽炎「司令,それでいっぱいしこしこオナニーしてね♡」

すごい良い笑顔で何を言っているんだお前は.実の父親がいたら卒倒しているぞ.それと妙高,殺気を出すな.

提督「……こういうのは感心しない.休みに何をするかは勝手だが,迷惑行為はご法度だぞ.あといい加減履きなさい」

私が言えた義理ではないが,鎮守府の雰囲気が悪くなるようなことだけは避けてほしい.

しかし,昨日娘たちから訴えがなかったということは,疑いの眼差しはあっても,陽炎の行為がばれることはなかったということか.

それとも皆,見て見ぬふりをしただけか.どちらにしろ,後始末のために調査は必要だな.

陽炎「むう……べとべとする」

陽炎は,ノリの悪い親友に気分が削がれたような表情で,スパッツを履く.

膣液がスパッツの股布部分についているためか,履いた際に不快感を露わにした.自業自得だ.

提督「ところで,陽炎」

陽炎がスパッツを履き終わったところで,尋ねる.

陽炎「ん? なに?」

スパッツとスカートとベルトの位置を調整していた陽炎は,腰に手を当てたまま,私のほうを向く.

私は下に降ろしていた右手を掲げ,掴んでいた筺体を再び陽炎に見せる.

提督「不知火を,これに巻き込んではいないだろうな?」

なぜか,空気が,凍りついた気がした.


陽炎から冷気を感じる.

冷却された砲塔の牙が向けられている,と錯覚してしまうほどに.

陽炎の表情は私が尋ねた瞬間から変わっていない.何一つ.

そして陽炎はまるで時間を止めたかのように動かない.

なんだ? 私は何かよくないことでも言ったのか.

提督「陽炎?」

私の言葉に反応して,陽炎が動き出す.

陽炎「あっ? ああっ! 不知火のこと!? もう~司令ったら! 大丈夫よ,司令のお気に入りに手を出したりなんてしないって!」

陽炎は,仕方ないなあといった表情で私の質問に答えた.

・・・お気に入り,ねえ.鈴谷も同じことを言っていたが,どういう意味なんだか.

提督「ならいい.とにかく,今後こういうのは控えることだ.なにかあったら困るのはお前たちだぞ?」

陽炎は左肘を右手で掴むと,顔を私からそむける.

陽炎「だって,司令に喜んでほしかったし・・・」

提督「その気持ちだけで十分だ.余計なことはしなくていい」

すると陽炎は顔をそむけたまま,目線だけ私に向け,睨みつけてきた.

陽炎「なによ司令こそ,感心しないなんて言っておいて,以前私たちにもっといかがわしいことをさせたじゃない」

おい,やめろ馬鹿.私の左腕に触れている妙高の力ががががっ痛い痛い痛い

提督「・・・なんのことだ」

私の言葉を聞いた途端,陽炎は目を釣り上げ,前屈みになり,猫が威嚇するかのように両手を出して,私を正面から睨む.

陽炎「司令ってば! もう! 忘れるなんてひどいじゃない! 私なんて思い出すだけで濡れちゃうのに!」

お前の股の具合など聞いちゃいない.妙高,抓るな.

提督「悪いが,思い出せんな」

陽炎「なんでっ!? このベンチよ! このベンチ! 司令,わかっていてここに来たんじゃないの!?」

こんなところにあるベンチなど,気まぐれでジョギングしたときにしか見ないだろうに.

陽炎「吹雪なんて『素敵なことをした場所だから』って毎日このベンチを掃除しているのに!」

ここの掃除をしてくれていたのは吹雪だったのか.どおりできれいなわけだ.

それにしても,吹雪だと? それに素敵なこと? 一体何の・・・まさか.

提督「お前と・・・吹雪が秘書艦だった時か?」

私が覚えていたことを知って機嫌が直ったのか,陽炎の表情が喜色に染まる.

陽炎「そうそう! 時雨と夕立も一緒だったときよ.なんだぁ,覚えているじゃない」

提督「ああ・・・うん,なんとなく思い出した」

夜だったから景色が違ってわからなかったが,そうか,このベンチだったか.

妙高「提督・・・いったい,いつ,どこで,だれと,なにを,どう,なされたのですか」

今度は妙高から冷気を感じる.生半可な釈明を許さないその威圧感に思わず答えそうになる.

だが言えない,中学生にしか見えない娘たちと青姦放尿露出犬プレイをしましたなんて,口が裂けても言えない.

おまけに,このベンチに手をつかせて,尻を向かせ,娘たちの体内に後ろから種をしこたま仕込んだなんて,なおさら言えない.

言った途端,たぶん首が落ちる.


私が妙高にどう弁解しようか思考していると,陽炎がからかうような表情で妙高に向く.

陽炎「妙高さん.もしかして知りたいんですか?」

妙高「えっ?」

意外なところからの申し出だったのか,妙高は一瞬呆気に取られる.

そんな妙高を尻目に,陽炎は畳みかけるように言葉を続ける.

陽炎「でしたら,ここであの夜のこと,実演してあげますよ」

そういって陽炎は左腕を私の右肩に掛け,右手で胸元のリボンに手を掛ける.

気を取り直した妙高は,陽炎を左手で制止する.

妙高「ま,まってください」

陽炎「なんですか? 私と司令がしたこと,知りたいんですよね?」

陽炎は妙高の揚げ足を取り,さらに責める.

それに対し妙高は,唇を結んで陽炎を睨みながら,私の左腕を引っ張り,陽炎から私を引き離す.

妙高「駄目なものは,駄目です. それは秘書艦の,私の役目です」

私の右肩で身体を支えていた陽炎は,重心を後ろに移動させ,私の肩から手を離す.

身体を直立にした陽炎は右手人差し指を唇に当て,見定めるような視線で妙高を見る.

陽炎「ふーん,でもそれって「陽炎」

これ以上こいつらのイタチごっこには付き合っていられない.いい加減切りをつけよう

提督「みんなで決めたことだろう? それは守ってくれ」

陽炎は一瞬眉間にしわを寄せるが,すぐにやれやれとわざとらしく溜息をついた.

陽炎「・・・司令が,そう言うなら」

妙高が睨む中,陽炎は胸元のリボンを結びなおす.

リボンが結び終わった後,陽炎は私の持っている筺体に指を差す.

陽炎「それじゃ,司令,ちゃんとそれ見といてね♡」

引出しの肥やしにでもしておくよ.

念押しをした陽炎は再び顔を私に近ける.妙高が私の左上腕を強く抱きしめたので,肘を曲げて妙高に触れてやる.

陽炎「今度の秘書艦のときは,それよりもーーーとすごいことして,司令を満足させてあげるから♡ 他じゃ味わえない,ここでしか味わえないことを,毎日,どこでも,好きなだけ経験させてあげるから,だから━━━━━」












陽炎「ドコニモ イッチャ ダメヨ?」













耳元でそう囁いた陽炎の瞳は,暗く,濁っていた.

・本日 ここまで

・句読点の位置が ところどころ おかしいですかね orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


ジョギングコースに沿って本館に戻る陽炎を見送った後、私はこれからどうするかを考えあぐねていた。

書置きに示した時刻までまだある。もう少し海を眺めていたいが、右手にある筺体を早く何とかしたいという気持ちもあった。

思い切って「バカヤロー!」と叫びながら海に投げ捨ててやろうか。深海の連中に見つかったら、ただでは済まないだろうが。

そんな考えが一時頭を過ったが、馬鹿げていると斬り捨て、筺体を胸ポケットに仕舞う。



かげろう の すけべぇなどうが を てにいれた!! <ゴマダレ~



・・・夕張や漣の真似をしてみたが、駄目だな。どうやら私に冗句の才能は無いようだ。

そもそもなぜごまだれなのだろうか。・・・いけない、頭が混乱している。

息をゆっくり吐きながら周りを見渡し、頭を冷やす。

穏やかで美しい景色を見ながら、その景色にそぐわないものを見つけた。

提督「どうした妙高、神妙な顔をして」

目線を左下に向けて顎を引き、軽く握った右手の人差し指第二関節を唇下に当て、左手を腿の上に乗せた態勢になっている妙高。

妙高は、大規模作戦決行前夜に内地の家族へ思いを馳せる一兵卒のような表情をしていた。

妙高「提督は、なぜ、ロリコンなのでしょうか・・・」

真面目な顔から出てきた台詞がそれか貴様。しかもその言葉、小児性愛の意味で使っているだろ。

妙高「私は、なぜ、駆逐艦ではないのでしょうか・・・」

妙高は自らの存在を確認するように自分の胸を両手で触りながら、うわごとのように呟いた。

触られた妙高の胸は、つきたてのお餅のように形を変える。電に謝れ。

考え込む妙高を見ながら感じたが、朝からこいつの様子がおかしい。

いつもだったらスキンシップはもっと控え目で、陽炎の挑発にも簡単には応じなかったはずだ。

こういう不安定な状態は今まで経験がない。私が気づいてないだけかもしれないが。

とりあえず、いくつか質問をするか。原因が見つからなくても、その糸口は掴みたい。

そう考え、まず――



「おっ、司令はんに妙高はんやぁ~」



今度は誰だ。まあ、こんな特徴的な話し方をする娘はすぐわかるが。

それにしてもこのベンチ、厄介事を呼ぶ呪いでも掛かっているのか。

一か月近くこのベンチに座っている気分なんだが・・・


提督「おはよう、黒潮」

私と妙高が通った砂利道から来た黒潮に挨拶をする。

黒潮「おはようさん、司令はん、それと妙高はんも」

妙高「おはようございます、黒潮さん」

妙高も姿勢を正して黒潮に挨拶する。先ほどの変な雰囲気がなくなっている。

黒潮か、ちょうどいい、一旦元に戻った妙高のことは後にして、昨日の陽炎について聴くか。

「黒潮、見つかりましたか?」

不知火も来ていたのか・・・どうやら陽炎のことも後回しになりそうだ。

不知火「! 司令、妙高さん、おはようございます」

不知火は私たちに気づくとすぐに姿勢を正し、綺麗に敬礼をした。

目線も、肘の角度も、姿勢その他も、素人目にもわかるほど立派な敬礼だ。

私もそんな風に敬礼できたら、霞を落胆させずに済むのだろうか。

提督「ああ、おはよう、不知火」

それはともかく、不知火の調子だが、悪くはなさそうだ。よかった。

あと、妙高はともかく、私相手にそこまで畏まらなくてもいいのだが、まあ不知火らしくていいか。

妙高「・・・おはようございます、不知火さん」

陽炎のときと同じように、含みのある挨拶を不知火に返す妙高。変なことをするなよ。

不知火「妙高さん、陽炎を見ていませんか」

不知火は、敬礼をやめ、しかし気をつけの姿勢のまま、妙高に陽炎の居場所を尋ねる。本当に真面目だな。

妙高「先刻までここで話していました。つい先ほど本館に戻ったようですが」

妙高は陽炎が戻っていった方向を指差す。

黒潮「あちゃー、すれ違いになってもうたか」

黒潮は上を向いて頭を抱え、大袈裟な反応をした。お前が気づかないとは思えないがな。

提督「なにか用があったのかい?」

不知火が私のほうに向き直る。青天を詰め込んだような彼女の瞳を視ると、なぜか後ろめたい気持ちになる。

不知火「はっ、本日陽炎と朝食をとる予定でいたのですが、食堂におりませんでしたので、こちらまで探しに参りました」

あいつ、妹たちを放ってここに来たのか。

妙高「態々探しにいらっしゃらなくても・・・食堂で待つなり、先に食事を済ませるなりしても良かったと思いますが?」

なんだか険のある言い方をするな、妙高。不知火のストレスにならなければいいが。

不知火「間宮さんから、陽炎が急にこちらへ走っていった、とお聞きしましたので」

黒潮「心配になってなぁ~」

不知火は変わらず真顔で、黒潮は飄々として妙高の言葉に応じる。

提督「なるほど。陽炎についてだが、別に大した用事ではなかったよ、少しからかわれたぐらいだ・・・朝から大変だったろう、陽炎には後で私から言っておくよ」

昨日のことも含め、気になることが一つ増えたしな。誰が陽炎を手引きしたんだか。

不知火「お気遣いありがとうございます。しかし、司令にそこまでしていただくわけには・・・」

黒潮「せや、気にせんといてぇ~」

黒潮は変わらずだが、不知火の雰囲気が少し変わる。財布を忘れて年下に奢られてしまったお姉さんみたいだ。

提督「そうか? まあ、お前達がそう言うのだったらな。ただ、何かあったら言って欲しい」

私の言葉が終ると、不知火は「はい」といって小さく頷いた。


陽炎の件は終わりか。そう私が思った直後、黒潮が不知火の肩を指でつついた。

黒潮「不知火」

呼び掛けに応じて、不知火の顔が黒潮のほうを向く。

不知火「どうしました、黒潮?」

黒潮「うち、陽炎追いかけて食堂で引き止めておくから、不知火は司令はんとの用を済ましいな」

黒潮は不知火に近づいて小声で言う。不知火も私に用があるのか。

それを聴いた不知火は一瞬黙るが、すぐに答えた。

不知火「・・・わかりました。ありがとう、黒潮」

その言葉を聴いて黒潮の顔がほころぶ。

黒潮「かまへんかまへん、ほななぁ~司令はん、妙高はん」

黒潮はほころんだ顔をそのまま私と妙高に向けた。

妙高「はい、また後ほど」

提督「点呼に遅れるなよ」

黒潮「はいなぁ~」

そうして、後ろを振り向いた黒潮は本館に向かって駆け出す。

しかしすぐ止まって、身体を少し傾け私のほうに振り向いた。

黒潮「あっ、そや司令はん」

面白いことをいま思い出したと言わんばかりの口ぶり。

提督「なんだ」

嫌な感覚。

黒潮「陽炎からもらったもの、ちゃんと見といてなぁ~」

目も口も薄く笑って、黒潮は楽しそうに私を見た。

・・・やはりすれ違ったのはわざとか、黒潮。

そう思いながら、本館に戻る黒潮を私は見送った。

・深夜は ここまで

・句読点を 点と丸に しました 読みやすく なったかな?

・行数制限を また受けた orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「不知火、用があるのなら座ったらどうだい? 少し狭いかもしれないけど」

黒潮がいなくなった後、残った不知火に対し、私は手のひらを上に向けて、ベンチの空きに座るよう提案する。

不知火「ありがとうございます。ですがすぐ終わりますので」

丁重に断られてしまった。少し残念だ。

不知火「ところで、司令はなぜここに?」

相変わらずの無表情で私に尋ねる不知火。

提督「朝早くに目が覚めてしまってね、せっかくだから散策に出ていたんだ」

不知火「そうですか・・・」

私の返答を聞くと、不知火は私の隣にいる妙高に不思議そうな視線を送る。

提督「妙高とは途中で会った。一人だけで歩くのもあれだから、せっかくだからと思ってね。そうだったな、妙高?」

不知火に、私と彼女たちの関係は知ってほしくない。疑われている可能性はあるのだろうが、せめて表に出すことはしたくない。

だから敢えて、偶然に見せかける。不知火とは、このままの関係でいたい。

妙高「・・・はい、私も、提督を一人にさせるのは危なっかしいと思っていましたので」

ねめつけるような視線で私を見る妙高。なんだ、嫌味か?

不知火「そうですか・・・ところで、司令」

不知火は、表情を変えぬまま妙高の言葉を聞いた後、改めて私に尋ねる。

提督「どうした?」

不知火「左の首筋が赤くなっておりますが、お怪我を? それに妙高さんも・・・」

冷や汗が、出た。心臓が、飛び出しそうになる。

しまった、さっき妙高につけられた傷をすっかり忘れていた。

提督「へえ、それは気付かなかった。虫に刺されたのか、それとも枝葉にでも掠ったのかもしれないね」

平静を装って、はぐらかす。不知火に訝しまれたくはない。

妙高「・・・」

なにか言えよ妙高。

不知火「虫、ですか・・・しかしその傷は・・・」

駄目だ、完全に怪しまれている。いや待て、まだ疑われている段階だ。だから、ここで言い訳を重ねるのは失策だ。ならば・・・

提督「なんだ、気になるのかい不知火? なんだったらもっと間近で見るなり、触るなりして確かめてみるかい?」

私はそう言ってベンチから立ち上がろうとする。さあ、どう来る?

不知火「えっ!? いっ、いえ、そこまでは」

不知火は目を見開き、顔を朱に染め、両手で私の行動を制する。

提督「ん? そうか? まあ、気にするほどの傷じゃないよ。教えてくれてありがとう、不知火」

なんというか、初々しいな。

だが良い、この男慣れしてない乙女な感じが、良い。

おまけに、いつも表情の変化が少ない不知火だから、新鮮さがあってなお良い。

不知火「は、はい。そ、それより司令、陽炎からなにか貰ったようですが?」

また地雷が来た。おのれ陽炎、黒潮。

・本日 ここまで

・次が長すぎて 今日中に 書けない すまぬ・・・すまぬ・・・

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「ただの甘味の要望だよ。詳細はまだ見てないけどね」

これなら違和感はない、はずだ。いや、甘味の要望を私に出す時点でおかしいが、甘いもの好きの陽炎なら上官相手に直訴しても変ではない、はず。

まあ、食事内容の良し悪しは士気や体調にも直結するので、どんどん出していってもらいたいところではある。新作が出るたび、廊下で競争するのはいただけないが。

不知火「新しい甘味ですか?」

食いついてきた。そういえば不知火も甘いものは好きだったな。

提督「新作が出るかどうかは間宮さん次第だよ、それに取り寄せられる食材にも限りがあるからね」

不知火「そうですか・・・」

目に見えて落ち込んでいる。後で間宮さんに頼みこもう。

それにしても色々話がそれてしまったが、不知火の用とはなんなのだろうか、一向に話が出てこないのだが。

ただ、このまま落ち込んでいる不知火に話を急かすのは冷たい気がする。

提督「それより不知火、最近の調子はどうだい? 昨日はしっかり眠れたかい?」

不知火は再び私を真っ直ぐに見る。

不知火「はい、昨晩は2200に就寝、本日0600に起床しました」

睡眠時間は問題ないか。だとすると起床時が気になるな。

提督「しっかり眠れているようだね。夢は見たかい? それと起きた時、身体がだるいとか、気分が悪いとかは?」

不知火「体調については問題ありません。夢は・・・見ていないかと思います」

提督「そうか、夢は覚えてないことも多いからね、気になるようであれば陽炎か黒潮に後で聞いてみるといい、夢の内容で自分の意識や不安がわかることもある。

不知火「はい」

私もあとで妙高に尋ねてみるか。薬の数も確認しないとな。

提督「訓練のほうはどうだい、那珂はしっかりやっているかい?」

不知火「はっ、那珂教官からは日々渾身のご指導をいただいております。正直なところ、訓練では自分の力不足を痛感するばかりです」

提督「卑下することはないさ。むしろ訓練で力不足を感じられるのなら良いほうだよ。実戦ではそんなことも言っていられないしね。那珂を手本に、よく学ぶといい。訓練に関して、ほかに何かあるかい?」

不知火「他には特に・・・いえ、一つだけ」

提督「構わないよ、言ってくれ」

不知火「その・・・那珂教官のあの、気質というのでしょうか、常時高揚状態というようなあの調子には、時々付いていけなくなります」

提督「・・・・・・・・・ああ、うん、まあ、あれは仕様みたいなものだからね・・・一応私から言ってみるよ。まあ、先に謝っておくけど、期待はしないで欲しい」

不知火「・・・はい」

確かに、那珂の気勢は周りに活気を与えてくれるものだが、不知火のような冷静な気質の娘には合わないかもしれない。

ただ、不知火は感情が表に出にくいので、雰囲気を暗くせず、かつ機微に敏い那珂をつけたつもりだったのだが、失敗だったか。

あとで熊野に様子を聞いてみて、その後那珂に相談だな。

提督「他には?」

不知火「それ以外は特にありません」

提督「そうか、よろしい。生憎、那珂から許しが出てない以上、まだ不知火を任務に付けることはできない。仮にできたとして、まずは警備や哨戒任務がほとんどになるだろう。それについてはどう思っている」

不知火「不満がないといえば、嘘になります」

正直な娘だ。

不知火「ですが、司令の、鎮守府の為であれば、ゴミ処理から便所掃除まで、全力を尽くす次第です」

提督「冥利に尽きる言葉だ、嬉しい限りだよ。よろしい、私からは以上だ・・・そういえば、私に用があるんだったね、時間を取らせてしまってすまなかったね」

不知火「不知火こそ、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます」

・本日 これだけ

・まだ 次が 書けない orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


不知火は軽く会釈をした後、今までの仏頂面が嘘のように少し顔を赤らめ、顔を少し俯かせて上目遣いになり、胸の前で蕾を作るように両手の指を合わせる。

不知火「それで、その、用事なのですが・・・司令、その、声のほうを・・・」

・・・・・・それだったか・・・・・・

提督「・・・ああ、耳を貸しなさい、不知火」

私が許可を出すと、不知火は耳を向けて私の正面に立ち、目を閉じて、祈るように胸の前で手を握る。

私はベンチから立ち上がり、中腰になって口を不知火の耳に近付ける。

口と不知火の耳の間に、右手の手のひらを垂直に添えて、声を通す片側だけのトンネルを作る。

私の息が不知火の耳に掛かったのか、不知火は手を強く握り、唇を強く結ぶ。



提督『不知火、今日も、頑張ってくれ』



私が囁くと、不知火は寒さに耐えるように身体を震わせ、熱に浮かされたように小さな吐息を口から出す。

私は不知火から顔と手を離し、中腰をやめ、直立姿勢になる。

その間も不知火は、余韻に浸るように、祈りの姿勢を崩さない。

しばし後、不知火は目をゆっくり開けて姿勢を正すと、私から二歩三歩と下がる。

不知火「・・・ありがとうございます」

そういって、不知火は深々と私にお辞儀をした。

提督「・・・ああ」

・・・・・・・・・・・・・・・感謝されるようなことなど、なにもしていない。

むしろ、後遺症のようなものを残してしまったことを、後悔している。

不知火は、私の声を聴くと、とても落ち着くらしい。

長い間聴かないでいると、体調を崩してしまうほどに。

これが、いつから発症しているものか、何をやって残ったものか、おおよそ目星はついている。

だか、不知火のこの後遺症のようなものが、どんなものなのか、どうすれば、治るのか、私には、まったくわからない、わからなかった。

調べても、調べても、調べても、調べても、出てこない。出てくるのは、インチキな催眠術や、架空の魔法や、お伽噺や気色悪く気味悪い妄想ぐらい。

どうすればいいのか、わからない。どうしたらいいのか、わからない。

不知火はいつか、普通の女の子になるのに。戦争が終わったら、普通の、普通の、普通の女の子に、なるのに。

このままでは、いけないのに。



不知火が私を、真っ直ぐに見つめている。

不知火の青天を詰め込んだような瞳を視ると、後ろめたい気持ちになる。なぜか、などと付けて言い訳したくなるほどに。

あの時、どうしたらよかったのだろうか。これから、どうすればいいのだろうか。

ただ、不知火にこれをする度に、いつもこう思う。








素人が、医者の真似ごとなど、するべきではなかった、と。








不知火「━━━━━司令?」


提督「ん? ああ」

不知火「司令、大丈夫ですか? 何度か呼び掛けたのですが」

不知火が憂いを帯びた表情で私を見ていた。

どうやら、少々もの思いにふけっていたようだ。

提督「・・・そうか、すまない、少し考え事をしていてね。大したことじゃない」

不知火「・・・そうでしたか」

不知火は私の返答に納得しなかった様子だったが、すぐにいつもの表情に戻る。

元の表情に戻った不知火は、一旦何かを言おうと口を少し開いて、しかし、ためらうように口を閉じた。

不知火は一度目を閉じ、そしてすぐに開いて、私を視る。

不知火「あの、司令、少しお伺いしたいことが・・・」

提督「ん、なんだい?」

不知火の用は終わったと思うが、まだ何かあるのだろうか。

不知火「司令は朝食をこれからどちらで?」

提督「まだ決めていないが、どうして?」

朝食のことを聞かれて、拍子抜けしたとともに、安堵した。なにか重要なことでも聞かれるのかと思って、一瞬身構えてしまった。

不知火は私の言葉を聞くと、視線と表情はそのまま、下腹部の前で両手を組み、親指をせわしなく動かす。

不知火「その・・・もしよろしければ、ご一緒にいかがでしょうか」

・・・まさか不知火からお誘いを頂けるとはな。


提督「それは」

妙高「申し訳ありませんが、提督はやるべき事がありますので、朝食は私室でお召し上がりになります。そうですね、提督?」

妙高が、私と不知火の傍らに立ち、会話に割って入った。

不知火「そうなのですか?」

提督「いや、それは」

妙高「提督」

妙高が私の言葉を妨げる。傍から見れば、仕事をすっぽかそうとする上司を諌めているようにしか見えないだろう。

妙高が何を考えているのかはわからないが、私と不知火の食事を阻止したいようだ。

不知火からのお誘いは、正直、とても嬉しい。

だけど、今は不知火から少しでも離れたい気分でもあった。

それに、部屋には那智たちを待たせているのだ。不知火と食事をしていたら、きっと書置きに示した時間を過ぎてしまうだろう。

そんな私の逡巡をどう感じ取ったのだろうか、妙高が不知火を鋭く睨む。

その眼差しは、子を盗られた鬼子母神のような、忠告では済まない何かを含むものだった。

妙高、なぜそんな目つきを不知火に向ける。不知火がいったい何をしたというのだ。ただ食事のお誘いをしただけではないか。それは仲間に向けていいものではない。

それともお前にとって、不知火は仲間ではないのか。私の娘を、お前は蔑ろにするのか。

不知火はまだ、気づいていない。

不知火の視線はまだ私に向いている。しかし、このままでは気づくのは時間の問題だろう。

提督「すまないね、不知火、妙高の言うとおり、この後も用があるのでね。また機会があったとき、誘ってくれるかい」

不知火の親指が動きを、止める。

私の言葉を聞いた不知火は、顔を伏し目がちにしながら頭を少し下げる。

そしてすぐ、瞼を開きながら再び顔を上げ、姿勢を正し、私を視る。

不知火「はい、不知火こそ、差し出がましい真似をいたしました」

そう言うと、不知火は再び私に敬礼をした。

不知火「それでは、司令、失礼いたします」

提督「ああ、点呼に遅れないようにね」

そう言って、去っていく不知火を私は見送った。


提督「妙高、先ほどの視線はなんだ」

不知火に向けた眼差しについて、妙高に問い詰める。

妙高「? 何のことでしょうか?」

シラを切っているのか、それとも無意識か、妙高は首をかしげる。

女性らしいたおやかな仕草、不知火に向けていたものとはまるで逆の、優しく暖かみすら感じられるような仕草。

だけど今の私には、それが上辺だけの、媚びた態度にしか見えなかった。

そう感じた途端、私の中で、何かが切れた。

妙高の髪の毛を、右手でわし掴む。

妙高「あっ!?」

妙高は痛みで一瞬左目を閉じ、私の右手首を左手で掴む。

提督「いい加減にしろ、ふざけているのか」

妙高「一体なんの」

妙高の右頬を左手で叩く。

妙高「てい、とく・・・?」

妙高は呆然とした表情で私を見て、右頬に庇うように右手を添える。

提督「私がなにも気づいていないと思ったか、お飾りの提督には何もできないと思ったか」

妙高が困惑と怯えを含んだ表情を私に向ける。

提督「私に対してなにをしようが構わない、暴行しようが、強姦しようが好きにすればいい。だが仲間を、私の娘を虐げることは許さん。お前の不知火に対するあの態度はなんだ。殺すと言わんばかりのあの目線はなんだ!」

私の発言は滅茶苦茶だ。根拠なんてない。思い込みだけで妙高を責めている。正気じゃない。

妙高の顔は恐怖に震えていた。顔が青ざめ、唇が震える。

仲間を虐げるなと言っておきながら、私は妙高を傷つけている。

妙高「わ、わた、わた、わた、わた、私、そ、そ、そ、そんな、そ、そんなことは、わ、わたし」

妙高は壊れた録音機のように口ごもる。それがさらに私の神経を逆撫でした。

妙高の頭をベンチの座面に叩きつける。妙高が痛みでうめく。


妙高はベンチにもたれかかる形になり、右頬が座面でへこむ。

提督「・・・妙高」

低く、暗く、重く、名を呼ぶ。

妙高は体罰に怯える赤子のように両手で頭を抱え、顔ごと隠す。

妙高「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

妙高は座面に頭を着けたまま、壊れたスピーカのように謝り続ける。煩い。

私は妙高の頭をベンチの座面にさらに押しつける。

提督「謝るのをやめろ、耳障りだ。私はお前の謝罪を聴きたいのではない。お前がなぜ不知火にあんな視線を向けたのか、その理由を聴きたいんだ。わかるか、妙高」

妙高が嗚咽をあげて、身体を震わせて、泣き始める。

提督「泣く余裕があるのならさっさと話せ、その位も出来んのか、役立たずめ」

妙高は抱えていた右手で顔に触れる。涙で濡れ、怯えた顔が現れる。

妙高「だ、だって、だって・・・ひぐっ・・・て、提督、提督と、ふたり、二人きりになれたのに」

二人きりだと、なにをいっている。これだから狂った女は。こういう壊れた奴は叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて直してやらねばならない。

妙高「な、なのに、し、不知火さんたちに、て、ていとく、提督、盗られちゃうって、そんなの、いやで」

涙でかすれた声で、叫ぶ。

妙高「提督と、二人きりでいたいのに!」

提督(・・・)

妙高から、手を、離した。

私は、なにを、しているのか。

彼女たちが不安定になるのは私のせいだ、それなのに私がおかしくなってどうするのか。

妙高だって、大事な私の娘なのに。



妙高はベンチで泣き続けている。


二人きり、か。そういえば、妙高と二人きりになる機会は久しくなかった気がする。

非番や休日における護衛の指定も、妙高には最近してなかったし、秘書艦になったときは大体他の娘が傍にいる。

そうやって二人きりになれずに積もったもの・・・独占欲とでもいうのだろうか。ベンチに座った時、誘ってきたのも、陽炎が来たとき、らしくもなく警戒していたのも、それが原因かもしれない。

妙高は、まだ、ベンチで泣き続けている。

なぜ、この娘の気持ちに気づいてやれなかったのか。もう何度も娘たちを泣かせているのに。

私は妙高の背後から手をまわして抱きしめる。

抱きしめるぐらいしか、私にはできない。

妙高の顔を覆っていた両手が下がる。

妙高「・・・てい、とく?」

提督「すまない、妙高。お前がそんなさびしい思いをしているとは気づかなかった。私はお前にひどいことをしてしまった」

妙高が小さく嗚咽を漏らす。彼女の身体は震えて、冷たくなっていた。

妙高「おこって、ないですか?」

提督「怒ってなどいない。むしろ怒られるのは私だ。すまない、妙高」

妙高がほんの少し、顔を私のほうに向ける。

妙高「みょうこうのこと、きらいになって、いませんか?」

提督「嫌いになど、ならない」

妙高が私に振り向き、私に抱きつき、私の唇を奪う。

唇から、妙高の冷たくなった体温を感じる。

しばらく唇を重ねて、息苦しさで一度唇を離す。妙高が私に迫り、息苦しくなるまでまた唇を重ねる。また離して、また触れ合う。

ベンチの前、その地面に座り込んで、抱きしめ合って、唇を重ねて。

そうやって再び唇を離したころには、妙高と私の間に唾液の橋が出来上がっていた。

妙高「私、怖かったです。提督に、また、捨てられてしまうのではないかと、そう思って、ただただ怖かったです」

提督「お前たちを捨てたりなどしない」

妙高「でも、でも、提督、私がお誘いしても全然なびいてくれなくて、私、自分に魅力がなくなってしまったのだと思って、何の価値もなくなったら、きっと、提督に捨てられてしまうって」

提督「馬鹿を言うな」

妙高の右頬に左手で触れる。妙高の涙を左指で拭う。右頬は赤くなっているが、顔に傷が残ることはないだろう。

提督「お前みたいな美人、見れただけでも儲けものだ。魅力がない、などということはない」

妙高「でも・・・提督は」

提督「他に気懸りなことがあっただけさ。さっき部屋でお前を抱いたのを忘れたのか」

妙高「忘れておりません。提督との契りは一時たりとも忘れません」

妙高はより強く私を抱きしめ、私の胸元に顔をうずめる。私は妙高の背中に手をまわし、再び抱きしめる。

どうして私は妙高を傷つけたのか。

提督「妙高、すまなかった。許してほしい」

妙高「許しません」

妙高が胸元から顔を離し、俯いたまま、そう言葉を投げる。

提督「・・・どうしたらいい」

妙高が顔を上げる。涙の跡が残る顔で、意を決したような表情を私に向ける。

妙高「陽炎さんにしたことを、私にもしてください」

黒真珠のような瞳で、私を視る。

妙高「贔屓なんてずるいです。私も、思い出すだけで身体が疼くような、そんな想い出が欲しいです」

私は「わかった」と答えた。

・本日 ここまで

・誤字脱字が ひどい orz

・まとめて 投下するほうが いいかな?

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


さて、妙高に陽炎と同じことをしてやることになったわけだが、

妙高「あの、提督・・・」

現在、妙高はタイトスカート、ストッキング、そしてパンツを脱ぎ、股を開いて屈んでいる。

提督「どうした、妙高」

下半身に何も着けず屈んでいるためか、妙高の大陰唇が開き、小陰唇が花のように広がっている。

妙高「その、陽炎さん達が具体的に何をしたのか聞いていなかったので・・・それにこの格好は・・・」

ちなみに陰核周りの毛は彼岸花のように生えていて、それ以外のIライン、Oラインとか呼ばれる部分は処理をしてあるようだ。

提督「おしっこだ」

妙高「え?」

提督「おしっこ、排尿だよ。ここでするんだ、妙高」

妙高は口を横に伸ばして開き、目を見開く。

妙高「ほ、本当にそんなことを陽炎さんたちにさせたのですか!?」

提督「そうだ。実際は服など着ていなかったが」

妙高「裸で!?」

妙高が顔を赤らめる。

提督「さあ、妙高、青い空に美しい海、輝く太陽、見渡す限りの地平線、絶好の放尿日和だぞ。さあ」

妙高は口をパクパクと動かし、肩をわなわなと震わせる。

妙高「む、無理です! いくらなんでもこんな場所で! しかも、て、提督の前で・・・」

恥部まで晒しておいて、今更何を言うのか。

提督「無理じゃない、これでも譲歩しているほうだぞ? 陽炎たちは四つん這いになって、それこそ犬がするようにさせたからな」

妙高「でもっ、でもっ!」

提督「でもも、くそもない。吹雪も陽炎も時雨も夕立も、みんな綺麗な黄淡色のおしっこを見せてくれたんだ。重巡のお前ができないことはない。さあ」

妙高はあうあうと呻く。じれったい。

提督「妙高」

出来るだけ冷酷に、重く、妙高の名を呼ぶ。

提督「さっさと出せ」

妙高が私の声で背筋を硬直させる。

妙高「あっ」

蛇口につながったホースの水が地面で跳ねる音、それと同時に透明の尿が妙高の股から現れる。

提督「無色か。昨日は酒でも飲んだか、妙高」

妙高に尿の色を指摘する。

昨日と言えば、私は昨晩の記憶がないが、一体何をしていたのだろう。

妙高「い、いやぁ」

恥ずかしさからか、妙高は両手で顔を隠す。その間も尿はお構いなしに流れ、アンモニア臭が鼻をつく。

提督「酒の飲み過ぎは注意だぞ、妙高」

妙高の顔から鼻水を啜る音が聞こえた、どうやらまた泣いてしまったようだ。意地悪をし過ぎてしまったか。


尿の勢いが治まり、妙高に股から小さな滴が垂れるようになった頃、

提督「すまない、妙高。お前が余りにも可愛らしかったもんでな」

そういって私は妙高の頭を優しく撫でる。

妙高は鼻を啜りながら、私を睨む。

妙高「提督の、ばか」

反論できない。

提督「悪かったよ、妙高。でも、陽炎と同じことをしてくれと言ったのはお前だぞ」

妙高「そうですけど・・・」

妙高は決まりの悪そうな顔になり、目を背ける。

提督「それにだ・・・」

妙高の前に移動し、屈んで目線を合わせる。

妙高「提督・・・?」

不思議そうな顔をする妙高の目線が私に移った瞬間、妙高の膣内に右手の中指を入れる。尿道口近くに残っている滴が手に掛かる。

予想通り、膣内は濡れていた。

妙高「! あっ、やっ! 提督、だめ、駄目です!」

右手首を掴む妙高の制止を振り切り、中指の腹を手前の膣壁に当てる。

妙高「んっ・・・提督、だめっ・・・」

手首を妙高の左手に掴まれているため、中指の関節を曲げて膣壁を擦る。

炊きたての米粒を潰さないように優しく、爪で傷つけないようゆっくりと、探るように指先で円を描く。

妙高「あっ、だめっ・・・です、んっ、きたな、んっ・・・きたない、あっ・・・きたない、です、から」

そう言いながら、妙高の左手は私の右手を引っ張り、指先を膣の奥へと誘導する。

妙高は目を瞑り、口を開いて涎を垂らしながら荒い息を吐く。

脚が身体を支えられなくなったのか、私の左肩を右手で掴み、身体を支える。

妙高「ていとく・・・てい、とく・・」

制止する気も失せたのか、今や妙高の左手は、逃さない、と言わんばかりに私の右手を強く掴んでいる。

そんな妙高の気持ちなどお構いなしに、私は右手を引き、妙高の膣内から指を抜く。

妙高「あっ・・・」

切ない顔をする妙高を尻目に立ち上がる。私の左肩に乗っていた妙高の右手が、立ち上がる私の体に引き摺られ、置いて行かれて、肩、左胸、左腹、左腿と未練がましく触れていく。

立ち上がった私は、妙高を見下げる。

妙高「ていと、く・・・?」

提督「さて、陽炎にしたことはまだあるんだぞ、妙高」

妙高の表情は、目は薄く、口を小さく開け、夢の続きを望んでいるかのような、ぼんやりとしたものになっている。

提督「妙高、ベンチに手をつけて、尻をこちらに向けろ」

ご馳走を目にした獣のように、妙高の唇が、涎を垂らしながら、歪んだ。


ベンチの座面に手をついた妙高は、お尻を上げて私のほうに向ける。妙高の膣口から粘液が溢れ、少し黒ずんだ花弁を濡らす。

妙高がこちらに振り向き、口をだらしなく開いて涎を垂らし、蕩けた顔を向ける。妙高は私を見て取ると、おねだりするようにお尻を振り始めた。

私はその左尻を左手で叩く、小気味良い音が鳴る。

妙高「あっ!」

提督「急かすな、妙高」

私はズボンから自分の陰茎を出す。まだ半勃ちではあるが、膣内に挿入するには問題ないだろう。

妙高の視線が私の陰茎に釘付けになる。もう一度、今度は右手で右尻を叩く。

妙高「ひゅいぅっ!」

提督「前を向いてろ、妙高。陽炎たちもそうやって待っていたんだぞ」

妙高「ひゃい、いいこにしますから、はやくぅ」

尻を叩く。

妙高「いひぃっ!♡」

提督「急かすなと私は言ったはずだぞ、妙高。ワンワン吠えやがって・・・お前は犬か何かか?」

妙高「ごめんなひゃいっごめんなひゃいっ、おとなひゅくひみゃふからぁ」

そう言って妙高は前を向く。妙高の膣口から蜜が更に垂れる。なぜだか、先ほどより濡れていた。

陰茎を持ち上げ、妙高の膣口にあてがう。

妙高「あ♡」

亀頭部分を膣口が咥え込み、膣内から溢れる膣液で亀頭が濡らされ、潤滑油となって陰茎を膣内へと呑み込もうとする。

だがそれ以上陰茎を前には進めさせず、上下に動かして小陰唇を亀頭で擦る。

そうして暫く亀頭部分で妙高の恥部の感触を味わっていると、妙高が恐る恐る顔を私のほうに向ける。

妙高「ていひょく、なんで?」

このまま挿入してしまったら、陽炎たちと同じではなくなってしまうからだよ。

提督「そういえば、陽炎たちとこのベンチで何をしたのか教えてなかったな・・・そこで問題だ、妙高。私と陽炎はこの状態から一体何をしたと思う?」

妙高「ひょ、ひょんなの・・・」

妙高は恥ずかしいのか、俯き、私から顔を背ける。恥じらう表情は良い、下半身に血が集まる。

提督「そんなの、なんだ? わかっているのなら早く答えろ。私のが萎えてしまうぞ?」

妙高「・・・しぇ」

提督「ん?」

妙高「しぇっくしゅ、しぇっくしゅです!」

提督「セックスか、セックスとは具体的にどうするんだったかな?」

妙高「わ、わらひのにゃかに、てぃとくのをひれみゃひゅ!」

提督「お前のどこに、私の何を入れるんだ?」

妙高「・・・・・・・・・んこ」

提督「聞こえないぞ、妙高」

妙高「わたしのおみゃんこに、てぃとくのおひんぽをいれるんです!! にゃかにいれて、かきみゃぁして、ひかせてくだひゃい!!」

提督「大正解」

陰茎を膣奥まで一気に挿れる。

妙高「おっ!? お゛お゛っ! ん゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ♡」

膣内に挿れた瞬間、妙高はがくがくと震えて仰け反り、白目を剥き、吐く出すように口を窄め、獣のように喘ぎ声を挙げて逝った。

それに伴って妙高の膣が一気に収縮し、鈴口に子宮口が吸いつく。

急激な膣内の締まりによる刺激と、精液を吸いとるような子宮口の予想外の動きに耐え切れず、私は膣奥に射精した。


・・・挿入した瞬間射精するとは・・・我ながら情けない・・・


絶頂で気をやったのか、妙高はベンチに虚ろな目で顔を擦りつけてもたれ掛かっていた。

射精による陰茎の脈動に合わせて、時折妙高の身体が小刻みに震える。

情けなく射精し続けながら、精を吐き出したおかげが、少しずつ頭がはっきりとしていく。

それとは対照的に、部屋でした時と違い、陰茎は射精しながら、しかし射精前よりも更に張り詰めていく。

じっとしているのも勿体無いので、妙高の腰を掴み、自分の腰を前後に振って、未だに射精し続ける陰茎を動かし、膣内を掻き回すことにする。

妙高「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

妙高の意識が飛んでしまっているためか、筋肉が弛緩しており、膣内の締まりはそれ程良くはない。

しかし私の動きに合わせて、妙高が喘ぎ声を奏でる様は中々面白い。暫くこのままでいいだろう。射精はまだ収まらないが。



妙高「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ・・・お゛っ!? ・・・あっあっ、あっ、あっあっあっ」



陰茎が前後に出し入れされる度、膣内に出した精液が掻き出され、妙高の陰核へと伝って行く。

それにしても挿入した瞬間の射精か・・・綾波と初めてした時のことを思い出すな。

今は笑い話で済むが、当時は挿入する場所がわからなかったり、挿入する前に萎えてしまったり、「大丈夫です! 綾波も初めてですから!」といって気遣われたり、「7.7mm機銃みたいで可愛いですね!」とか「速射砲ですか?」とか言われたり・・・

前言撤回、やっぱ今でも酷い思い出だ。精神が旋盤加工の如く削れていくのがわかる。



妙高「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ」



改造のおかげで大きさは変わったが、早漏は変わらずだ。元々そういった改造ではないのだが。

むしろなぜ大きさが変わったのだろうか・・・夕張は「素材が原因」と言っていたが。

まあいい、大きさが変わったのは寧ろ嬉しい位だ。それより問題なのは明石の趣味のほうだ。



妙高「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ、お゛お゛っ!? お゛あっ・・・てぃひょく・・・?」

腰を動かしている最中、少し深めに入れた一撃が子宮頸部を揺らしたのか、呻き声を挙げて妙高が意識を取り戻す。

妙高はベンチに頬をつけ、涎を垂らしながら、呂律の回っていない声で私を呼んだ。


提督「おはよう、妙高。気分はどうだ?」

妙高は目を細め、口の端を嬉しそうに吊り上げる。

妙高「・・・きほちひぃ♡」

荒い息を上げながら、赤子のように応える。

提督「そうか、そろそろ出すが、どこがいい?」

妙高「にゃかっ!」

提督「わかった」

もう一度深く突き入れる。

妙高「おほぉっ!♡」

腰を再び前後に振る。先ほどより激しく。

膣液と精液が陰茎で掻き回される音と肌と肌が打ち合う音が混ざる。それが私の耳にまで届く。おそらく妙高の耳にも。

妙高「お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡」

液体と肌の音に、妙高の気持ち良さそうな汚い喘ぎ声が更に混ざる。

粘膜をこれだけ擦って痛がらないあたり、さすが艦娘といったところか。

妙高「お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ イクっ♡ イぎみゃひゃっ!!♡」

提督「わかった。ちょうど私も限界だ」

膣内を抉りながら、限界が来たところで妙高の腰を掴んでいた腕に力を入れ、自分の腰を打ちつけると同時に引く。

提督「出すぞ」

妙高「いくっ、いぐううううううううううううううううっ♡♡♡♡♡」

膣壁がうねりながら陰茎を締め付け、子宮口が再び鈴口から精液を絞りとりに来る。

陰茎が膣内に引っ張られ、妙高の尻が私の腰で平らに凹む。

長い長い射精をさせられる。

本日で三回目の膣内射精であった。

・本日 ここまで

・今まで通り 出来上がり次第 投下します

・エロくない orz

・他の R18 ss は すごいなぁ

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「ふぅ・・・」

陰嚢の中身を絞り取るような射精が終わり、腰を少し引いて一息つく。

陰茎を少し引いただけにも関わらず、妙高の膣口から、瓶から蜜が零れたかのように精子が溢れてくる。

妙高「・・・」

妙高は再びベンチの座面に顔を着けている。涙と鼻水と涎で汚れた顔は何とも幸せそうだ。というか、また気絶してんのか、こいつ。

萎れるように身体をベンチに預ける妙高とは対照的に、私の陰茎はまだ萎える様子がない。

このままもう一度攻めてもいいが、腰が疲れた。ベンチに座らせてもらおう。

提督「よっ・・・っと」

猫が伏せるような姿勢になっている妙高に覆いかぶさり、その両肘を引っ張り、上半身を起こす。重たい。

妙高「あっ♡」

妙高の身体を引き起こした際、私の陰茎が再び膣奥へと侵入する。

提督「妙高、向きを変えるぞ」

項垂れている妙高から返事はなかったが、お構いなしに実行する。

妙高「あっ♡ ・・・あぁっ♡ ・・・んっ♡ ・・・」

一歩一歩よちよちと向きを変える度に、陰茎が左右の膣壁を少し押し、その度に妙高が小さく喘ぐ。重い。

後ろにベンチが来たところで、妙高を思いっきり引っ張りながら一気に座る。

妙高「ん゛お゛っ♡」

座った勢いで陰茎が子宮を突き上げ、妙高の喉から音が漏れる。

膣が陰茎の上になったことで、膣口から垂れる精液が陰嚢を伝っていく。

妙高「てい、とく・・・?」

妙高が首を後ろに向ける。起きたか。

提督「三度目のおはようだな、妙高」

妙高の両肘から手を離し、お腹部分を優しく抱きしめ、身体を密着させる。

妙高「はい・・・あの、この状態は・・・」

妙高は自分の下腹部を視て、私に尋ねる。膣口が先ほどより締まる。

提督「疲れたから座った」

妙高「・・・そうですか・・・んっ♡」

妙高の身体が小さく跳ねるように震え、表情が少し強張る。

提督「苦しいか?」

妙高「いえ・・・その・・・提督のものが、まだ堅いので・・・ん♡」

妙高の右手が下腹部を撫でて、膣壁から陰茎の裏スジ部分に優しい圧を感じる。

提督「・・・ああ、それな、身体には倦怠感があるんだが、こいつだけは元気でな」

妙高の腰に手を当て、左右に少し動かし、陰茎で膣内を揺らす。

妙高「んんっ!♡ 提督、動かさないで、ください・・・♡」

妙高が左手で私の左手首に触れる。


提督「悪い悪い、お前の膣内の感触を思い出したら、ついな」

妙高「・・・気持ち良かった、ですか?」

妙高が再び私のほうに振り向く、乱れた髪から汗が流れ、耳の付け根部分から首筋へと滴が伝っていく。

提督「まあな、挿入した途端射精してしまったからな」

妙高が頬を朱に染め、少しはにかむ。

提督「それにしても、今日のお前は凄いな。逝った途端子宮口が精子を絞り取りに来たぞ」

妙高の腰を下に押し、陰茎で子宮口を押す。

妙高「んぅ♡ 奥、グリグリしちゃ、駄目ぇ♡♡」

陰茎からの刺激を受けてか、精を獲ようと膣内が再びうねり始める。

提督「すまんすまん、お前のいやらしいマンコを思い出したらついな・・・そういや、他の妙高もこんな膣内をしてるんかね」

独り言のように、くだらない疑問を投げかける。

妙高「そんなの、知らないですぅ♡」

妙高はM字に脚を開いてベンチに両足を着け、腰を少し上げて私からの刺激から逃れようとする。

私は両手に力を入れ、妙高の腰を更に下へと押し込む。

妙高「んああぁっ♡」

妙高の口から熱い吐息が漏れる。

提督「そうか、ならもし新しい妙高が来たら、試しに比べてみるか」

妙高「駄目です!」

急な大声と共に妙高がベンチに立ち上がり、膣内から陰茎が現れる。

膣から精液を零しながら、妙高は私と対面になる位置に向きを変える。

私を見下げる妙高の目尻に涙が溜まり、表情は怒りと不安に彩られている。

妙高「提督と、提督のこれとしていい妙高は私だけです!」

妙高は私の陰茎を左手で掴むと、そのまま腰を降ろして、膣内に挿入する。

妙高「んんっ!!♡」

目を瞑り、口を噤み、声を漏らし、私を正面から抱きしめる。

胸で体をベンチに押しつけられる。汗とシャンプーの香りがする。

妙高「んっ♡ 絶対・・・渡さない・・・」

そのまま強引に唇を奪われる。口の中に舌が入ってきて、私の舌に甘えてくる。

相変わらず重く、しかし柔らかい。嫌いじゃない。

互いの唾液を十分に交換し合った後、唇を離す。

提督「・・・おいおい、自分に嫉妬しているのか。我儘だな、お前は」

妙高「提督が、あっ♡、節操なしだからいけないのです!」

激しく腰を動かす。

妙高「だから、提督の節操なしおチンポが他の娘に手を出さないように、私のおマンコで精子を全部絞り取ります!♡」

妙高の背中に手を回し、抱き合う。

提督「そうか、期待しているぞ、妙高」

妙高を撫でる。

妙高「・・・はい♡」

再び、唇を重ねた。


━━━━━数十分後

妙高「~っ!♡、♡♡♡♡~♡、♡、♡♡、♡」

現在、妙高は私の右肩に顔を付けており、口から涎を垂れ流している。その涎で私の服に染みができている。汚ねえ。

あれから妙高と対面座位でしていたわけだが、七、八発目辺りで飛んだのか、それから糸が切れた人形のように反応がない。

いや、反応はあるにはあるのだが、声を掛ける度に身体を震わせるのを反応と言っていいのだろうか。

抱きしめる力も殆どなく、妙高の身体全体が私の体にもたれ掛かっている状態だ。

精液も垂れ流し状態で、膣から流れ、ベンチから垂れた精液が私の足元で水溜りを作っている。因みにズボンは途中で脱いだ。

まあ、心臓の鼓動と息遣いは感じられるので、死んではいないだろう。

提督「妙高・・・妙高、聞こえてるか」

妙高「♡」

駄目だこれ。

ただの肉穴に成り下がった妙高で陰茎を扱きながら、時間を確認する。

提督「そろそろ時間か・・・妙高、これで最後にするからな」

妙高「♡♡♡」

妙高の身体が震えるのと同時に膣が締まり、精液が更に溢れる。せめて言葉で返答してくれないか。

提督「・・・ほれ」

妙高「~~!!!!♡♡♡♡♡」

何度目かの射精かは忘れたが、とりあえず出す。

・・・疲れた。


精液を妙高の肉穴に吐き出しながら、妙高と共にそのままゆっくり横に倒れ、ベンチに寝そべる。

妙高の頭をベンチに擦らないように後頭部を手で支え、態勢を変えて妙高を仰向けに寝かせる。

寝かせたところで尿道に残った精子が妙高の肉袋に出し終わる。

半勃ち状態まで落ち着いた陰茎を引く抜く際、妙高の顔を覗うことができた。

・・・・・・・・・見なかったことにしよう。

それより後始末のほうが問題だ。兎に角拭く物が欲しい。

膣内から引き抜いた私の陰茎は、鈴口から妙高の膣口と精液の橋を作っており、竿の部分はふやけ、精液と膣液が混ぜ合わさったものでぬらぬらと輝き、汚れている。

陰茎は自分の下着で拭くことにしよう、ズボンを直接履くことになるが、部屋に戻って着替えればいい。

妙高はどうするか。

ベンチの傍らに立ち、妙高の様子を確認する。

逆さになったヒキガエルのような格好の妙高は、布袋からヨーグルトが漏れるかのように膣口から止め処なく精液を垂れ流している。

妙高の下腹部、陰毛より少し上部分に左の手のひらを当て、少し強めに押す。

妙高「んっ!♡」

妙高の足が浅いくの字を描き、膣内から精液が噴出する。

お腹が張っているように見えたので試しに押してみたが、案の定膣内に溜まっていた精液が出た。

出せるだけ出しておこう、そうしたほうが後始末も楽だ。

もう一度押す。

妙高「ああっ♡」

今度は泥汚れを洗い流すように出る。それでも結構な量だ。

妙高「・・・あっ・・・提督の、赤ちゃんが」

妙高が目を覚まし、顔を上げてお腹のほうを薄目で見た。赤ちゃんてなんだ。

提督「妙高、部屋に戻るぞ、準備をしろ」

寂しそうな顔をする妙高のお腹を更にもう一度押す。

妙高「あっ?!♡」

垂らすように精液が出てくるのと同時に、妙高の身体が小刻みに震えた。

瞬間、妙高の膣口より上の部分から、黄色い液体が虹を描くように放出される。

妙高が股を閉じようとしたので、内側から足の付け根部分を押さえて股を開かせておく。手に飛沫が掛かるが、妙高の脚が汚れるよりは良い。

妙高「やだ・・・見ないで」

林檎のように赤くなった顔を妙高は両手で覆い隠す。そう言うなら、股を閉じるのを止めてくれ。



放尿が終わり、妙高の方を向くと、恍惚とした表情が目に入った。

手を顔の横に添え、頬は上気し、端が釣り上がった口は半開きになり、半分開いた瞼には虚ろな瞳が宿っている。

妙高「・・・あはっ♡・・・また、見られちゃった♡・・・」

・本日 ここまで

・次から エロは 短めにします

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ



その後、恍惚と放心する妙高を何とか起こして身体を拭き、スカートを履かせることができた。

スカートを着用している間、妙高が「責任を・・・」とか「提督のも」とか「大きいほうも・・・」とか言いながら、電波状況の悪い無線機のように時々小さく笑っていたが、聞かなかったことにしよう。

汚れたベンチは、吹雪には悪いが、そのままにしておいた。正直、今の状況ではどうしようもない。

身体を拭くのに使ったそれぞれの下着についてだが、余りにも汚れていてどうしようか困っていたところ、妙高が私のも含めて自分のストッキングに包んでしまった。それでいいのか。

私の下着を掴んだ際、妙高は無表情で暫く下着を見つめていたが、何を考えていたのだろう。それと、ストッキングに包んだ後、ストッキングの上から混ぜ合わせるように私と妙高のものを揉んでいたが、どんな意味があったのだろう。知りたくないが。

妙高「提督、お待たせ致しました」

妙高が執務をこなしている時と同じ表情で私に告げる。

提督「ああ」

再び、砂利道を踏み締め歩いて行く。


提督「妙高、先程は済まなかった」

歩きながら、隣に歩く妙高に謝る。

妙高「? 何のことでしょうか」

妙高が足を止め、不思議そうに首を傾げる。今度は嫌悪感はなかった。

提督「暴力を振るったことだ。本当に済まなかった」

妙高に対し、頭を下げる。

妙高「もう気になさらないでください。それに、償いは既に頂きましたから・・・」

妙高は愛おしそうに下腹部を擦る。まるで胎児を慈しむ母親のような表情だ。

胎児と言っても、解体後ならばともかく、艤装に寄生されている状態で受精は不可能なはずなので、そういう気分に浸っているように見えただけだが。

提督「・・・そうか」

妙高「・・・やはり、不知火さんのことが心配ですか」

どうしてそこで不知火の名前が出る。

妙高「差し出がましいかもしれませんが、不安になることはないと思います」

提督「・・・なぜ、そう思う」

妙高の瞳を視る。

妙高「以前に比べて、頻度は下がっておりますから。それに、不知火さんの様子も落ち着いてきています」

提督「そうなのか・・・?」

余り変わっていないような気がするが。

妙高「はい、提督がここに帰っていらしたころに比べれば、格段に。当時は毎日のように不知火さんに会われておりましたから」

そんなに会っていたのか。思い出してみれば、再任当時は泣いたり暴れたりする娘たちをあやすのに精一杯だったから、日付の感覚なんてほとんどなかったな。

そう考えると、確かに今の不知火が訪ねてくる頻度はその頃に比べれば格段に減っていると言える。

提督「・・・そうか、良くなっていたんだな・・・」

抜本的解決にはなっていないのだろうが、少しだけ体の重みが取れた感じがした。

妙高「はい、ですから、提督、一人で思い悩まないでください、常に私たちが傍におりますから・・・」

そう言うと妙高は私の右手を優しく握り、身体が触れそうな距離まで近づいてくる。

提督「・・・ありがとう、妙高」

妙高「はい、あっ」

妙高は私の手を掴んでいた自分の腕を見て、驚いたように少し目を開く。

妙高「私ったら・・・失礼しました」

手を離そうとする妙高の左手を逃がさないように掴み返す。

妙高「あの、提督?」

妙高が困惑した顔で私の顔を視る。

提督「駄目か?」

妙高が首を振る。

手を繋いだまま、再び歩き始める。


提督「そうだ、妙高」

妙高「・・・はい、何でしょうか?」

頬を桜の花弁で染めていた妙高が、私の方を向く。

提督「少し先の話になるが、どこかの休み、護衛をお前に任せたいと思う」

妙高「提督、それは・・・」

提督「嫌か?」

妙高は首を横に振る。

握っていた手の力が少し強くなる。

妙高「そんなこと、ありません・・・嬉しいです」

妙高の瞳が潤む。泣かないでくれよ。

提督「そうか。それまで、待っていてくれるか?」

妙高「はい・・・一日千秋の思いで、お待ちしております」

それは言い過ぎだよ、妙高。

幸せを含んだ妙高と共に、部屋へと戻っていく。


何とか他の娘たちに会わず、私室の前に辿り着くことができた。

書置きの時間も問題ない。この調子なら朝食も摂ることができるだろう。

早速扉を開けようと右手を伸ばすと、妙高が左手でそれを制した。

提督「ど」

「どうした」と言い終わらない内に、妙高が左人差し指を唇の前に立てたのを見て、口を噤んだ。何だ。

妙高はストッキングを床に置くと、私の代わりに右手で扉を開いた。

内開きの扉が開く。





真左から、拳大の黒い箱。

右上から、開いた銀輪。



妙高は突き出され、振り下ろされるそれらの凶器、スタンガンと手錠を一歩下がって避ける。

そしてスタンガンを突き出した手と、手錠を振り下ろした手をそれぞれ掴み、捻る。

羽黒「っ!」

足柄「いたたたっ」

羽黒と足柄が痛みで顔を引き攣らせる。

それと同時に、痛みによるものか、羽黒の左手からスタンガンが、足柄の右手から手錠が離れ、床へと落ちていく。

床に落ちた二つの物体に妙高の視線が移動する。

瞬間、羽黒が投擲するように右手を振り下ろす。手にはペンが握られており、軌道からして妙高の目を狙っているようだ。姉にすることじゃない。

妙高は掴んでいた羽黒の左手を離すと、腰を捻って軸をずらし、ペン先を避け、そのまま羽黒の右腹に左爪先蹴りを放つ。妹にすることじゃない。

羽黒は後方に飛び、壁に激突し、咳込む。

姿勢を戻した妙高は、足柄の手を掴んだまま、穏やかな表情で羽黒に顔を向ける。

妙高「もう、羽黒ったら、危ないじゃないですか」

足柄「おごごごご」

妙高は足柄の手を更に捻りながら、羽黒を諌める。足柄が捻られた右手を庇いながら更に呻く。

羽黒は背を壁に付け、俯いたまま、上目遣いに妙高を見つめる。

羽黒「ごめんなさい、妙高姉さん・・・姉さんが司令官さんを一人占めしていると思ったら、つい」

つい、でお前は姉を刺すのか羽黒。

妙高「・・・もう、仕方ない娘ですね羽黒は。今回だけですよ?」

そしてお前は許すのか、妙高。そして今回だけってなんだ。次もあるのか。

左頬に手を添え、柔やかな笑顔をしていた妙高は「おおおおぉ」と呻いている足柄の方に顔を向ける。足柄煩い。


妙高「さてと、足柄・・・これは一旦何ですか?」

そう言うと妙高は右手の捻りを直し、右足爪先で手錠をつつく。

痛みから解放された足柄は息を整え、顔を上げて妙高の方に向く。

足柄「えっと、その・・・手錠です」

妙高「そんなものは見ればわかります」

まったくだ。

妙高「私は、何故、こんなものを貴女が使ったのかを聞いているのですよ、足柄」

妙高は目を細め、笑顔のまま、さらに足柄に問い詰める。

足柄は愛想笑いを浮かべながら、妙高から目を逸らす。

足柄「い、いや~、その、ほら、朝起きたら提督居なかったでしょ?」

妙高「私と一緒に散歩をしていましたからね、それで?」

散歩、という単語を妙高が言った途端、羽黒から歯軋りする音が聞こえた。

足柄「それで、その、提督が傍に居なかったものだから『ああ、やっぱりちゃんと傍に置いておかないといけないのね・・・』って思って」

なんだその理屈。書置きしただろうに。

妙高「それでこんな玩具を取り出した、というわけですか」

足柄は妙高に笑顔を向け、左手を開いて掌を妙高に向ける。

足柄「そ、そうなのよ~、ほら私と提督は夫婦なわけだし、一緒にいるのは当ぜぇええええ痛い痛いっ姉さん痛いっ! 腕がっ! 勝利を掴む私の腕がぁああああっ!」

妙高は張り付いた笑顔のまま、先ほどより更に強く足柄の右手を捻る。足柄は呻き声を挙げるが、台詞からしてまだまだ余裕だろお前。羽黒もさっきから白い目で見ているし。

妙高は暫く手を捻って足柄の呻き声を聞いていたが、やがて溜飲が下がったのか、足柄から手を離し、溜息をついた。

足柄「折れてないわよねっ?! 折れてないわよねっ、私の腕っ!?」

そう言って足柄は私と羽黒を交互に見る。知るか。

足柄が泣きべそを掻いている間、妙高は足元にあった手錠を拾うと、開口部分の両端を両手でそれぞれ掴む。



妙高「・・・貴方達は・・・」



足柄「えっと・・・妙高姉さん?」

羽黒「・・・」

妙高からの異様な雰囲気を感じてか、足柄と羽黒の視線が妙高に集まる。

次の瞬間、妙高は左足でスタンガンを踏み潰し、両手で手錠をへの字に伸ばす。

スタンガンの破片が床に散らばり、その一部が羽黒の足元まで転がる。

妙高はもう片方の手錠の輪を輪ゴムを捩じるかのように曲げ、銀色のゴミを作る。

妙高「・・・この玩具で、提督に万一・・・万一なにかあったらどうするつもり? ねえ、足柄、羽黒?」

無表情のまま、妙高は足柄と羽黒に語りかける。

足柄は作り笑いを浮かべながら目を逸らし、右手を背に隠し、左人差し指で頬を掻く。

羽黒は口を閉じて、伏し目がちにしたまま、妙高から顔を逸らす。



・・・提督ですが、私室の空気が最悪です。



「なんだ? 騒がしいな?」

・本日 ここまで

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


羽黒の後ろ、寝室と浴室に続く通路の角から、黒刃のような髪を垂らし、切れ長の目をした女性が顔を出す。

誰だ、こいつ……那智か。

毎度思うことだが、側頭上部から帯のように垂れ下がる髪型を解くと何故こいつは別人になるのだろうか。

那智「貴様、戻っていたのか、書置きの時間通りだな」

先程まで浴室に居たのだろう、黒刃のような髪に艶が宿り、妖刀と紛う輝きを放っている。

足柄「書置き? なにそれ、知らないわよ?」

羽黒「司令官さん……?」

二人が不思議そうな顔で私を見る。私だってわからん。

妙高「私たちが出て行く際、枕元にメモ用紙があったはずよ。二人とも見てないの?」

足柄と羽黒は首を横に振る。

那智「見ていないのは当然だ」

那智は角から羽黒の隣に移動する。

……何故裸なんだ。

円錐形の二つ乳房が惜し気もなく披露され、斜め上に勃った乳首が視線を他に奪られまいと自己主張している。

谷間から臍にかけて縦に一本の筋が入り、かつ肩幅が少し広くなっていることから、体幹を含んだ各所の筋肉が鍛えられていることが見て取れる。

それでいて、胴体にはエネルギー貯蔵庫となる脂肪が適度についており、女性らしい、と言うのは失礼に当りそうだが、柔らかな感覚が失われていない。

そして下腹部の陰毛は総て取り除かれ、隠れ蓑の無くなった大陰唇が陰裂を作る様を曝している。

提督「……捨てたのか?」

だとしても、足柄と羽黒に伝えておいて欲しかったのだが。

那智「捨てる訳ないだろう? その書置きは私が食べた」

……何言ってんだ、こいつ。

那智はまるでそれが当然の行為だろうといった表情で淡々と言葉を続ける。

那智「あれは貴様が私に綴ってくれたものだろう? そんな大事なメモを私が捨てると思うか? 貴様の一文字一文字が身体に染み渡るよう、ゆっくり味わわせて貰ったぞ」

お前は山羊か。

那智「貴様が私の一部となっていく……素晴らしいと思わんか」

思いません。

羽黒「姉さん……ずるい」

羽黒が羨ましそうな目で那智を見ている。紙をモシャモシャ食べたことを誇らしげに語る姉のどこに羨望の要素があるんだ。あと全裸だし。

足柄「那智、せめて何が書いてあったのか、私たちに教えてくれたって良かったじゃない」

誇大妄想に浸る那智に慣れているのか、その妄言を無視して、足柄が至極真っ当なことを聞く。そうだ、そこが大事だ。

足柄「妻が夫のことを把握するのは大事なのよ!」

そこは大事じゃない。ついでにお前の夫になったつもりはない。

足柄を除くほか三名は、足柄を白い目で見る。

足柄「な、なによ」

狼狽する足柄が抗議の声を挙げると、しばし微妙な沈黙が流れる。


その沈黙を破るように、妙高が呆れを含んだ溜息をつく。

妙高「……ともかく、状況はわかりました。那智のうっかりで二人は提督が心配になり、これらの玩具で提督を保護しようとした、と」

那智「うっかりとはなんだ」

那智の発言を無視して羽黒が頷いて返すが、足柄は小声で独り言を呟いて聞いていないようだ。あと妙高、保護じゃなくて拘束の間違いだろう。

妙高「貴方達の気持ちは理解できます。ですが、羽黒」

羽黒「……はい」

妙高と羽黒が向き合う。

妙高「これ、対艦娘鎮圧用のスタンガンですね? 扉を開けたのが私だから良かったですが、人間だったら即死ですよ?」

羽黒「姉さんに当てるつもりだったから……それに仮に司令官さんに当たっても、すぐに後を追えばあっちでずっと二人きりになれますから……えへへ」

妙高「もう……本当に仕方のない娘ですね、羽黒は。ですが、残念なことを言いますけど、仮に提督が亡くなっても、私もすぐに後を追いますから、ずっと二人きりは無理だと思いますよ?」

羽黒「あっ……そっか……」

妙高「また別の方法を考えましょうね。私も一緒に考えてあげますから」

羽黒「うん……ありがとう、妙高姉さん」

そう言って妙高と羽黒はお互いに良い笑顔で微笑み合う。なにこれ。

妙高「さて、足柄」

足柄は俯いて独り言を続けている。

妙高「あっ、しっ、がっ、らっ!」

足柄「ひゃい!? にゃんでしょふ!?」

噛んだ。

妙高「あなた、提督をこれで保護した後、どうするつもりだったの?」

足柄「そ、そりゃあ、バカンスとか……」

妙高「どこで?」

足柄「えっ? えっと、さすがに鎮守府は難しいから、どっか遠くの土地とかで……」

妙高「提督を外に連れ出すの?」

足柄「あっ」

妙高「……もう少し計画的にね。私たちも協力するから」

足柄「……はい」

足柄は肩を落とし、俯いてしまった。

……こいつら、私が聞いているのをわかっていて話しているんだよな……?

那智「うむ、一件落着だな」

いつの間にか隣に来ていた那智が、右手を腰に当てて納得したように頷く。

大体お前が原因だがな。あと服着ろよ。


那智「さて」

提督「ん?」

那智は私に一瞬微笑むと、体を密着させ、私の脇から背中に腕を回す。

見た目以上の強靭さを背面の腕から感じ、見た目以上の豊満さを前面の双丘から感じる。

那智が私を抱き締めたのを見て、羽黒は驚いたように目を開き、足柄は頬を膨らませ、妙高は目を細める。

那智「貴様に聞きたいことがある」

提督「なんだ」

眼前から来る熱い吐息を皮膚で感じ、顔正面からの洗剤の香りが鼻を刺激する。

那智「何故私ではなく、妙高を連れていった?」

万力を締めるように那智の腕に力が入った。

提督「……どういう意味だ」

那智「惚けるな」

那智の指が背中に食い込む。

那智「私は貴様の護衛だぞ。いや、そうでなくても私と貴様は一心同体、互いに血を分け合った一つの存在だ。その半身たる私を置いて他に現を抜かすとはどういう了見だ? 秘書艦でない時は仕方ない、それは皆で決めた取り決めだ。だが私が秘書艦になり、同じ時間を共有するようになったのに、何故私を置いて言った。本来なら髪の毛一本から血の一滴まで、手も足も頭も胴も、目も耳も口も舌も皮膚も、時間も場所も、過去未来現在森羅万象三千世界ありとあらゆるものが一つである私を置いていくなど正気ではない、そうだあんな取り決めなど本当は必要ない。貴様は誑かされているのだ、あの書置きも本当は貴様が書いたものではなく妙高に書かされたものだろう? そうだ、そうだろう、そのはずだ、それしかない、許せない許せない許せない、そうだ今すぐ貴様を惑わすあの鉄屑共を海の底に沈めてやろう。安心しろ、貴様には指一本触れさせん。いや、今回だけではなくこれから先も貴様は誰にも触れさせん、私だけに触れて、私だけを見て、私の言葉だけを聴き、私の作ったものだけを食べ、私の心だけを感じればいい、そうだ、そうしよう、何故私は今までこれを思いつかなかったのか、ああきっと今まで私も毒されていたのだ。だが、もう大丈夫だ、私は正気に戻った。これからは私と二人きりで生きていこう。そうだ、これからは私が、いや私と貴様が料理を作ることになるわけだが、私はそれほど料理が上手いわけではなくてな? 仕方ないだろう、私は元々戦う兵器として産まれたのだ、料理なんてからっきしだ。勿論、これからは貴様の味覚に合うような手料理を作れるよう努力していくつもりだ。そういえば貴様は料理は出来るほうなのか? もし出来るのならば教えて欲しい、仮に出来なくても気にはしないぞ? これからは二人で腕を高め合えばいいのだからな。それにしても、これはなんだか夫婦みたいだな。いや夫婦になることは確定事項なのだが、まだそういう実感が湧かなくてな。別に嫌ではないぞ? 寧ろ貴様とならきっといい夫婦になれると思うんだ私は。そういえば私は貴様の妻になるのだから、何時までも呼び方が『貴様』ではいけないな。やはり貴様のことは『あなた』と呼んだほうがいいのだろうか? いや強制するつもりはない。勿論、今までの呼び方でいいのならそれで良いと私は思っている。まあ、それはまた今後の楽しみとしてとっておこうか。ところで話は変わるのだが子供は何人欲しい? 性急だとはわかっているが、私だって女だ、そういう話題に興味が無い訳でない。私としては男の子二人に女の子一人が良いと思っているんだ。今は戦時中なわけだからなやはり男児は多く必要だと思うんだ。それにこれは私の我儘なのだが、四人姉妹だったから男の兄弟というものに憧れていてな。将来は立派な皇国男児に育て上げるつもりだ。女の子のほうは、ほら、私がこんなんだろう? だから大和撫子とはいかなくてもお淑やかな子に育って欲しいと思うんだ。勿論こういう教育方針というのは夫婦で話し合って決めなければいけないのはわかっている。だけどしっかり意見は伝えておかなければいけないと思ってな。男だから女だからと変な先入観にとらわれて、本来なら永遠に愛し合えるはずの私たちが別れる事になるなんて、そんなことは有ってはならないんだ。だからお互いに意見や考え、不安や悩みがあったら共有し、助け合って生きていかなければいけないと私は思っている。貴様もそう思うだろう?」

……うんっ! そうだなっ!

などと言うと思うか。





……とにかく、那智を説得しなければ。





……腹減ったなぁ。

・本日 ここまで

・時間の流れが おかしい orz

・ヤンデレとか メンヘラとか 依存とか 難しい もっと 学ばなければ

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


瞳を青々と輝かせる那智の様子に気づいたのか、妙高が那智の肩に手を掛けようとする。

羽黒は艤装を展開、連装砲を那智の後頭部に向ける。貫通したら私にも当たるぞ。

そんな二人を足柄が食い止める。妙高の伸ばした腕を押さえ、羽黒の連装砲を下げさせる。

足柄が流し目で私に目配せする。助かる。

今妙高に出張られたら、最悪、姉妹で砲口を向け合うことになる。

……もう羽黒は向けているけど。

ともかく、足柄が二人を抑えている間に、なんとか那智を落ち着かせよう。

先ほどの妙高と羽黒のときと違い、今度は冗句で現実逃避する余裕は無い。

那智「どうした? 何故答えてくれない? 鉄屑どもに口封じをされているのか?」

提督「違うよ」

額と額を合わせる。

提督「おまえがとても嬉しいことを言ってくれるから、我を忘れてしまったんだ」

那智の背中に腕を廻し、出来る限り動きを拘束する。触れれば切り落とされそうな濡れ羽色の髪が、絹のように指先を擽る。

那智は童のように瞳を爛々と輝かせ、笑みを零す。

那智「そうか! やはり貴様もそう思ってくれていたか! なら待っていろ、今すぐこの那智の戦を見せてやる!」

提督「まあ待て」

離れようとする那智の身体を抱き留める。

那智の言葉で妙高も艤装を展開、三式弾を装填した砲塔を下段に構える。

足柄だけが、静観をしている。


提督「私ばかり聞くのも不公平だ。おまえも私の意見を聞いてくれないか。お互い共有するためにも、な?」

はたと気づいた那智は、嬉しそうに目を細める。

那智「あ……ああっ! もちろんだ! 何でも言ってくれ!」

提督「そうだな……まず子供のことなんだが」

那智「何だ!? もしやもっと欲しいのか!? 安心しろ、貴様のためなら何人でも産むぞ!」

提督「落ち着け」

額を強く押し付ける。

提督「急いでは事を仕損じるぞ……最後まで聞いてくれるな?」

上目遣いに、那智は小さく頷く。

提督「私が気に掛けているのは子供の将来、特に社会環境についてだ。おまえは戦時ということを前提にしているが、私は平和な時代に子供を産みたい。そのためにも深海凄艦の殲滅は急務だ」

羽黒が足柄の制止を振り切り、砲口を上げようとする。

足柄は更に腕に力を入れ、羽黒の凶行を押し留める。足柄、耐えてくれ。

提督「少しでも早く平穏な時代が訪れるようにするためには、仲間と協力するのが最も手っ取り早い。数は力、おまえもそれは身に染みてわかっているはずだ。今は猫の手も……いや、働いてくれるのならば、姿形は問わない。それが例え、お前の言う鉄屑でもな」

誇大妄想に囚われ、妄言を吐き、奇行をするようになっても、本気で仲間を傷つけるほど那智は耄碌していない。

でなければ、漣や曙が今でも那智を慕わないはずが無い。

今の那智は私が原因で不安定になり、勢いに任せて言葉を吐いただけだ。

だから、逃げ道を作ってやらなければいけない。

那智「……私一人でも、十分だ」

那智は目線を下げて、私の目を見なかった。

「他の奴等は不要だ」とは言わなかった。

言外に含ませているが、言葉にしなかった、その事実だけで充分だ。

提督「わかっているよ。でも、おまえとの未来が少しでも早く訪れるためには必要なんだ。なにより、おまえ一人に背負わせるなんてこと、私には辛過ぎる」

堪え切れなくなったのか、歯を噛み締め、憤怒を込めた目線の羽黒がとうとう足柄の制止を振り切る。

砲身が上がり、砲口が私たちに照準を向ける。

砲撃音が響くかと思われた瞬間、妙高が羽黒の前に立ち、私たちの壁になる。

提督「子供たちと、穏やかな海で過ごしたいんだ……そんな私の身勝手な夢を叶えてくれないか、那智」

私の言葉が終わって、しばらくの間、那智は下を向いたまま黙っていた。

どんな気持ちが渦巻いているのだろうか。

妙高と同じような気持ちを、那智も抱えているのだろうか。

那智「……わかった」

ほろ苦い顔をしながらも、那智は答えてくれた。


那智「だがせめて、傍に置いてほしい。それは駄目なのか?」

提督「……一人だけ贔屓は出来ない。皆のためだ」

那智の抱き締める力が再び強くなる。答えるように私も那智を強く抱く。

提督「私としては、理解ある人が傍にいてくれたら嬉しい。おまえは……どうだ?」

那智の刀のような双眸が、じっと私を見つめる。

刀に雨露が滴る。

那智「寂しい思いをさせたら……許さないぞ」

わかっているよ。それで何度も痛い目を見た。

刀に着いた雨露を舌で救い取る。

舌の上で露を転がし、飲み込む。

海の味がした。

提督「その時はどこか遠くの土地へ行こうか、家族計画でも立てながらな……」

その言葉で那智は私の首元に顔を埋めた。



髪を梳きながら、慰める。











……いつか後ろから刺されるんだろうなぁ、私は……


那智の説得が終わり、私は足柄たちのほうに視線を向ける。

足柄と目が合う。


妙高と羽黒が対峙しているためか、足柄はずっと私たちの様子を窺っていたらしい。

妙高は私たちに背を向け、羽黒の表情は妙高の影で見えない。


足柄に目配せをする。

足柄は私の目配せに気付くと、疑うような、心配するような目線を送ってくる。

私は小さく頷く。

足柄は私に頷き返すと、妙高に向けて片目を瞑って微笑み、手のひらを扇のように振る。

妙高はこちらに振り向くことなく艤装を格納し、そのまま横へとずれる。



阿修羅のような羽黒がそこに居た。



羽黒は妙高から私たちに視線を移すと、瞳孔を開いて牙を見せるよう唇を裂かせる。

そして、此れ見よがしにと那智の後頭部に砲口を向ける。


私は、那智の後頭部を庇うように右手を添えた。

羽黒が信じられないといった表情で私に訴えかける。

私はただ、羽黒を睨んだ。



出来得る限りの怒りと殺意を込めて。



羽黒がどうしてそんな凶行に出るかはわからない。睨んでないで羽黒を説得しなければとも思う。妙高と足柄に頼んで力ずくで押さえつける方法もある。

ただ、今は、那智を静かに抱き締めていたかった。

私はただ、羽黒を睨んだ。

羽黒の顔が青褪める。

私はただ、羽黒を睨んだ。

羽黒は首を横に振る。

私はただ、羽黒を睨んだ。

羽黒の瞳が潤んでくる。

私はただ、羽黒を睨んだ。

羽黒の瞳孔が揺れる。

私はただ、羽黒を睨んだ。

羽黒の瞳孔が揺れて、揺れて揺れて揺れて、揺れて揺れて揺れて揺れて揺れて、揺れて揺れて揺れて揺れて揺れて揺れて揺れて━━━━━
















━━━━━羽黒は、砲身を下してくれた。

・本日 ここまで

・ギャグパート……

・更新を 分かり易くするため age ております

・コメントなどは sage ております

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「那智、そろそろ服を着たらどうだ。風邪をひくぞ」

那智は顔を離し、首元を薄眼で見つめたまま、ゆっくり口を開く。

那智「……ああ、そうだな」

瞳は黒色に、表情も一本筋が通ったいつもの状態に戻る。

那智は私から身体を離すと、抱き締めていた腕を解き、振り返る。

那智は、振り返った先にいた足柄、妙高に視線を移動させた後、羽黒に目を止める。

羽黒は項垂れたまま床に座り込んでおり、その羽黒の両肩に妙高が手を置いて付き添っている。

那智はそんな妹の様子に何も言わず、寝室に続く通路へ消えていった。恐らく、羽黒の行動を把握していたのだろう。

那智がその場から居なくなり、私と足柄は同時に溜息をついた。

提督「そういえば、お前たちはもう食事を済ませたのか?」

羽黒のことは一旦妙高に任せ、足柄たちに朝食を済ませたかどうか確認する。まあ、那智が裸だったので、まだ食べていないだろうが。

足柄「まだ食べてないわよ。ずっと待っていたもの」

そうだろうな。

足柄「那智の着替えが終わったら、一緒に食堂に行きましょう」

提督「それなんだが……」

足柄が首を傾げて、左人差指で頬を突く。

提督「食事はそっちで済ませたいんだが」

寝室の通路とは反対側、足柄の後ろを指で差す。足柄の後ろの通路の先には居間兼客間と台所があり、私室での食事はそこで普段済ませている。

足柄「えっ?! もしかして」

提督「言っておくが手料理はなしだ。間宮さんの所から食事を取って来てくれ」

足柄が不機嫌な顔になる。

「手料理」の言葉で羽黒が顎を少し上げて反応したが、私の言葉が言い終わるとすぐにまた俯いてしまった。

足柄「む~、なによそれ~」

提督「色々とあってな」

妙高たちの様子を一瞬だけ窺う、艤装を格納した羽黒を妙高が胸元に抱き寄せ、乳児を寝かしつけるよう優しく背中を叩いている。

二人の姿を見て、羽黒の治療に付き合った時のことを思い出す。フラッシュバックはほとんどなくなったはずだが、時折妙高があのように介抱をしている。

今でも、羽黒が部屋に来る時は、粉末や錠剤などは目に映らないところに隠している。

羽黒の行動に対してはもっと上手くやるべきだったか……胸が締め付けられる。

足柄「ふ~ん」

足柄から厭味ったらしい相槌を返される。

那智「それで私たちを小間使いにするとはな」

はえーよ、那智。

島風ならともかく、お前らの制服は着替えるのに時間掛かるよな。

一体どんな速さで着替えたんだ。化粧も完璧に決めてやがるし。

提督「そういうつもりではないんだが」

・本日 ここまで

・朝の点呼のシーンまでが 遠い orz

・このssに 需要は あるの だろうか?

・お知らせですが 9月下旬まで 更新できません 申し訳ございません

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


那智「ふっ、わかっているさ」

那智はからかい気味に微笑むと、私の左隣まで近づいてくる。

隣に来たところで腕を組み、肩を寄せ、私に顔を向ける。

那智「足柄たちが戻ってくるまで、外で何をしていたか、じっくり聞かせてもらうぞ」

那智の言葉を聞き、足柄が目をしばたかせる。

足柄「あれ? 那智は行かないの?」

那智は、干からびた花でも見るような目つきで、足柄を見る。

那智「護衛が傍にいなくてどうする」

足柄に返答すると、私の肩に頭を預け、視線を戻す。

那智「なぁ?」

同意を求める呼びかけとともに、那智の左手人差し指が、右の胸板に縦一文字を描く。こそばゆい。

提督(困ったな)

羽黒と話をしたいのだが。

足柄「……」

もう一度、羽黒に視線を向ける。

羽黒は未だ俯いたままで、妙高は困った表情をしている。

今の羽黒を食堂に向かわせるのは、妙高も好くないと思っているようだ。

そう考えた瞬間、胸板に指が喰い込んだ。

視線を那智に戻すと、鋭い目つきで睨みつけられる。

那智「貴様……」

足柄「はいはいはいはい」

那智が何かを言い掛けようとした瞬間、足柄が割って入る。

私と那智が同時に足柄に顔を向ける。

足柄「那智の言うとおり、私たちは朝食を取りに行ってくるから、二人は部屋で待っていて頂戴」

……仕方ないか。羽黒のことについては、後ほど妙高から話を聞こう。

足柄は、那智の訝しげな視線を無視し、私の正面まで近づいてくる。


正面まで来た足柄は、妖しげな笑みを浮かべると、私の下唇に指を当て、左端から右端へとその指を這わせる。

手袋をまだ着けていないため、細くしなやかな指の感触が唇に広がる。

足柄「待っていてね、提督。あなたの御口に入る食事を、私が、持ってきてあげる」

含みのある言い方に、那智の表情が更に険しくなる。

足柄はそんな那智を気にも留めず、今度は右端から左端に指を這わせる。

足柄「ここに戻ってくるまでに、私の愛を、たっぷりと、籠めておくからね♡」

込めるのは別に構わない、髪の毛や唾液ぐらいなら見逃してやる。だが血液は駄目だぞ、手料理禁止はそれが原因なのだから。

那智「……待て、足柄」

那智が、抜き身の刀のような気配を足柄に向ける。

足柄「あら? どうしたの、那智? 私の愛を籠めた料理が提督と一つになることに何かご不満かしら?」

なんだ、そのあからさまな挑発は。

那智「ああ、不満だとも」

その言葉を聞き、足柄は目を細めて微笑み、私の唇から指を離す。

那智は私から腕を放すと、扉の前に立ち、取っ手を左手で掴む。

那智は私と足柄のほうに振り向くと、鋭い表情をしたまま、右手で私の顔に指をさす。

那智「貴様の口に入る食事は、足柄ではなく、私が持ってくる!」

餓鬼かお前は。

足柄「うふふ」

那智「ふんっ」

那智が部屋の外に出ると、足柄は妙高と羽黒のほうに向く。

足柄「姉さん、行きましょう」

妙高「……ええ……でも」

不安を隠さず、妙高は羽黒を見る。

羽黒は、未だ俯いたままだ。

足柄「大丈夫よ、姉さん。ねっ、提督?」

足柄は片目を閉じ、左手人差し指を顔の傍に立てて、私に微笑む。

良い娘だよ、お前は。霞が信頼するだけのことはある。夫だ何だのという妄言が無ければだが。

提督「ああ」

妙高に向き直る。

提督「妙高……」

妙高「……かしこまりました」

妙高は羽黒から優しく手を離す。

それを見た足柄は、那智と同様、部屋の外へ出た。

妙高は扉の前に来ると、不安な顔を私に向ける。

妙高「提督、羽黒のこと、お願いします」

返答代わりに頷く。

妙高が取っ手に手を掛けたところで、ふと気になっていたことを思い出した。


提督「妙高」

妙高「はい、なんでしょう?」

妙高は、取っ手に手を掛けたまま、振り向く。

提督「昨晩のことだが、私は夢を見ていたか? 寝言でも言っていたら、教えて欲しいのだが」

妙高は、目を細めた。

妙高「……よく寝ていらっしゃいましたよ」

提督「……そうか」

まあいいさ。

提督「それとだが」

妙高「はい」

提督「食堂に行く前に、お前は着替えたほうがいいぞ」

妙高が不思議そうに顔を傾げる。

提督「さっきの蹴り……いい尻だったぞ」

妙高は一瞬目を点にすると、すぐに目を見開いて顔を赤らめ、両手で前と後ろのスカートを押さえた。

妙高「あっ、あの」

提督「たぶん……丸見えだ」

現在、妙高と私は下穿きを履いていない。ノーパンである。

妙高「すぐに着替えてきます!!」

提督「おう」

妙高はすぐ様部屋の外に出た。

廊下から声がする。

「妙高、どこへ行くんだ?」

「あなたたちは先に食堂に行っていください! 私も後で行きますから!!」

妙高のものと思われる足音が、駆け足でこの部屋から離れていく。

「……どうしたんだ?」

「……さぁ?」



それからしばらくして、那智と足柄の足音も、無くなった。

・本日 ここまで

・再開

・艦娘の 勤務表が 難しい

・設定に 無茶が 出てきた orz

・提督の 性格が 滅茶苦茶に なってきた

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


妙高たちが居なくなったのを確認し、羽黒へ近づく。

妙高たちがこちらに戻ってくるまで、そんなに時間はない。

食堂が混んでいれば別だが、生憎今日は伊良湖も出番だし、大鯨と鳳翔も手伝っているだろう。

提督(食堂が混む、か)

皆が食堂に会するようになったのは、ここが穏やかになったということなのだろうか。


項垂れ、座り込んでいる羽黒の前に片膝を着けて屈む。

提督「羽黒」

羽黒「……あ」

羽黒が顔を上げる。

先ほど砲口を向けてきた時とはまるで別人だ。生気が感じられず、目も焦点が合っていない。

その目が私に焦点を当てる。

顔が青褪め、唇がわななく。

羽黒「あっ、あっあっあっ」

提督「羽黒、落ち着「ごめんなさい!」

羽黒は後頭部を手で隠し、身体を伏せる。

ダンゴムシのように縮こまり、爆撃に怯える子供のように震えている。

羽黒「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

さすが姉妹だ、同じ言葉で謝ってくる。姉同様、耳障りで、五月蠅い。

それにしても、この反応はどっちに関してのものなのだろうか、私が睨んだことに関してか、それともフラッシュバックか。

前者ならば声を掛けてゆっくりと言い聞かせれば良いが、後者だと妙高が居ないと厳しい。また左足を折られるのは勘弁したい。

数秒、様子を見る。


羽黒「……」

羽黒の言葉が止んだ。しかし、身体は震えたままで、歯がぶつかり合う音が響く。

……これ以上様子を見ても無駄だな。折られること覚悟で声を掛けるか。

まあ、折られたら折られたで、また島風と一緒にリハビリに励めばいいだけのことだ。今度は摩耶に杖を壊されることも無いだろうし。


羽黒に声を掛ける前に上着を脱ぎ、それを羽黒に被せる。

羽黒「……」

歯がぶつかり合う音と身体の震えが止まる。

羽黒が顔を上げて、いつもの不安そうな表情を向けてくる。

羽黒「司令官さん……」

羽黒の頭に右手を伸ばし、頭に乗せる。

手を伸ばした瞬間は身体を強張らせたものの、羽黒は私の手を受け入れた。

上手くいってよかった。以前だったら、ここで右腕が明後日の方向を向き、最悪使い物にならなくなっていたところだ。

頭を優しく撫でてやると、羽黒は目を細めて穏やかな表情になる。

しばらく撫でる。


提督「羽黒、落ち着いたか?」

羽黒「……はい」

羽黒は頬を染めながら私の上着で身を隠す。

提督「話がしたい、居間に行こうか」

羽黒「はい」

私と羽黒は立ち上がり、居間へと向かう。


通路を抜け、台所の横を通り過ぎ、居間の壁際に置かれている長いソファーに座る。

通路のほうを向くと、羽黒がソファーの傍で立ち止まっていた。

提督「羽黒」

右隣のソファーを軽くたたき、羽黒の名を呼ぶ。

羽黒は小走りで隣に座ると、私の体にしな垂れかかる。

羽黒「司令官さん」

今にも泣きそうな表情をしながら、上目遣いに見つめられる。

提督「どうした」

羽黒「司令官さんは那智姉さんを選ぶんですか」

提督「? なんのことだ」

羽黒の瞳が潤んでくる。

羽黒「だって、さっき那智姉さんと、一緒に、どこか、と、とお、とおぐで、遠くで……ひくっ……」

泣くなよ、めんどくさい。

提督「羽黒、落ち着け、ゆっくりでいい」

羽黒「……ひぐっ……ぐあず……ぐすっ……どおぐで、ぐらずっで」

そんなことを言った覚えはない。

提督「大丈夫だ、羽黒、お前を置いて行ったりしない」

右手で羽黒の肩を抱き、左手で後頭部を優しく撫でる。

羽黒「でも、どおぐいぐっで、ぞばにいでおしいっで」

鼻水を啜り、胸元で嗚咽を上げる。

『遠くに行く』『傍にいてほしい』確かにそう言ったが、そんな意味で言ったつもりはないのだが。

べそをかく羽黒を慰めながら、那智との会話の流れを思い出す。


『━━━理解ある人が傍にいてくれたら嬉しい』

『━━━寂しい思いをさせたら……許さないぞ』

『━━━どこか遠くの土地へ行こうか』


提督「……」

三流恋愛小説の駆け落ちのワンシーンか何かか? いや、三流のものでも此処までひどくはないな、素人でもこんな台本書かんし。

そもそも「理解ある人が傍にいてほしい」というのは「仕事の邪魔をしないでね」という意味で言ったつもりだったのだが、伝わっているよな?

……ともかく、ともかくだ、私は誰かと添い遂げるつもりはない。今の娘たちの中から誰か一人を選んだりしたら、流血沙汰しか見えないし。

羽黒は恐らく誤解をしている。先ほどの行動もそれが原因か?


羽黒「わだじ、じれいかんさんが、なじねえざんにとられるぐらいだったら、ごのてで!」


それが原因のようです。涙と鼻水で汚れた顔に、再び修羅の如き双眸が宿る。

羽黒の爪が胸板に刺さって痛い。このままでは殺される。


……殺されるのは別にいいか。むしろ、その後の羽黒のことが心配だ。後を追う、みたいなことも言っていたし。

猿もどきが一匹死んだところでどうでもいいことだが、そのせいで娘たちに何かあるのはよろしくない。


羽黒は胸板から右手を離し、中空に手を伸ばすと、艤装を部分的に展開する。妖精の技術は相変わらず恐ろしい。

羽黒「ぎのうは、あんなにあいじでくれだ、んっ!?」

羽黒の唇を強引に奪う。肩に寄せていた右手を後頭部に移動させ、左手を艤装が展開している手に這わせる。

羽黒の左手が私の右肩を押して体を離そうとするが、時計回りに体の軸を少し動かし、そのままソファーに倒れこむ。

手足を動かして抵抗してくるが、いや、唇を奪った時点で、抵抗する力はもうほとんどなかった。

羽黒の右手から艤装が消え、這わした左手に指が絡まっていく。

羽黒の左手は、押す力の替わりに、肩を掴む力が込もっていく。

涙と鼻水が重なる唇の隙間に入り、磯の香りが口に広がる。


唇を離すと、目を細め、口を広げ、もっと欲しいと言わんばかりに舌を伸ばす羽黒の表情が見えた。

提督「羽黒、私の気持ち、理解してもらえたか」

舌を引っ込めた羽黒は、淡い表情で見つめていたが、しばらくして目線を私から外した。

羽黒「それは……」

提督「まだ理解してないようだな」

羽黒が目線を私に戻す。

提督「なら、昨日の夜、私がお前に何をしたか、しっかり思い出してもらおうか」

右手で羽黒の頬を撫でた後、親指を羽黒の口の中に差し出す。

羽黒は赤ん坊のように指に咥え込み、吸着音を奏でながら、舌で指に何度も唾液を塗り付ける。

羽黒の口から指を抜き、唾液の糸を引く手でもう一度、羽黒の頬を撫でる。

提督「さあ、何をしたのかな? 言ってごらん」

羽黒「……はい」

夢現な羽黒はゆっくりと話し始める。

昨日の夜のことは覚えてないので、とても興味がある。

羽黒「昨日は鳳翔さんがお店を開いたので、開店時間になるまで司令官さんの部屋でエ、エッチしていました。司令官さんに目隠しをして、姉さんたちと順番に司令官さんの上に跨って、司令官さんのお、おちんちんをおみゃ、お、おまんこに挿入して、誰が一番気持ち良いのか、どれが誰のおまんこなのか、当てるゲームをしていました」

提督「ちょっと待ってくれるか」

羽黒「えっ?」

やべえ、覚えてねえ。

・本日 ここまで

・改造については まだ先に なりそうです

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


いや、鳳翔の店のことは覚えている。以前から要望があったので、間宮さんから助言していただけるようにお願いしたのだ。

他にも手続きとか本部への説明とか大変だったな。局も省もたらい回しにされるし。

上の連中も、間宮さんや他所の鳳翔の例があるんだから、それと同様の手続きをすればいいのに。なんであんなに時間が掛かったんだろうな。

まあ、苦労したのは加賀なのだが。

羽黒「司令官さん……?」

提督「……この体勢では話しづらいだろう、ほら」

羽黒「あ」

羽黒から手を離して体勢を整えた後、彼女の上体を起き上がらせる。当初ソファーに座っていた時と同じ状態に戻った。

どうやら羽黒の話を聞く限り、記憶は職務を終えた後から無くなっているようだ。

それだけ長時間、しかも昨日の記憶がないというのはやばい。もう少し詳しく聞かないとわからないが、記憶障害も考慮すべきだろうか?

提督「さあ羽黒、続けて」

羽黒「……はい」

羽黒は顔を少し下げて再び話し始める。左手が私の右手を掴む。

羽黒「ゲームでは外した罰として『お詫びの中出し十連発』とか『膣内を覚えるクンニ教室』とか『カリで調べる女の子のアソコ』とか用意していました。でも、司令官さんは一回も私たちのおまんこを外さなくて、結局ゲームを始めて数十分で終わりました。私の時なんて、挿入れた瞬間に『羽黒』って司令官さんが答えてくれて、足柄姉さんが『せっかく頑張って考えたのに』と言って悔しがっていたんですけど、私は、むしろ、司令官さんに、身体の隅々まで覚えてもらえたんだって、それがなんだか恥ずかしくって、嬉しくって、お腹の奥がとても熱くなったのを覚えています」

羽黒は頬を赤らめ、太股を小刻みに擦り合わせる。

……敢えて考えなかったが、そのふざけたゲームはもしや足柄が考えたのか? 死ぬぞ、私が。

羽黒「その後、一番良かったのは誰か聞こうとしたんですけど、司令官さん、いつの間にか寝てしまって。仕方ないので、クジで順番を決めて、誰が一番早く司令官さんを逝かせられるか決めることにしました。時間を計っている間、姉さんたちのセックスをずっと見せつけられて、早く終わってほしいのに『まだ出さないで欲しい』とも思ってしまって、自分の番が来るまでもどかしくて、悔しくて、堪らなくて、ずっと自分を慰めていました」

羽黒の息遣いが荒くなってくる。

あっ、なんか思い出してきた。

そうだ、部屋に着いたらいきなり目の前が真っ暗になって、後ろ手に何かを嵌められたのだ。金属っぽい輪っかの何かを……

……足柄の手錠だ、あれ。というか妙高よ、お前にとって手錠による拘束は万一に入らないんだな。

羽黒「私の番が来たとき、司令官さんのものは精液と姉さんたちの愛液で汚れていました。だから、一生懸命口で綺麗にしたんです。私と司令官さんの間に余計なものが混じらないように、私の匂いだけするように、何度も舌で綺麗にしました」

羽黒は人差指を舐めながら、私に流し眼を送る。

羽黒「綺麗にしている間、司令官さんのものがそそり立ってきて、今にもはち切れそうで、すぐにおまんこの入口に司令官さんのものを当てたんです。そしたら、火傷しそうなくらい熱くて、ゆっくり腰を降ろして司令官さんを膣内に入れると、お腹の奥から頭に電気みたいなのが来て、声が抑えられなくて、真っ白になっちゃったんです。でも司令官さんが私の中でピクピク動いていて、それで目を覚まして、司令官さんを気持ちよくさせるためになんとか身体を動かして、少ししたらまともに身体を動かせるようになったから、腰を上げて向きを変えようとしたんです」

羽黒が私の腰に手を当ててくる。

羽黒「そしたら司令官さんが私の腰を掴んで、思いっきりおちんちんを打ちつけたんです。波が押し寄せるみたいに身体にゾクゾクしたものが来て、声が漏れて、視界にパチパチ火花が散りました。しばらくして身体からフッと力が抜けると、お腹の奥に熱くてドロドロしたものが溢れ出ていたのに気づきました。司令官さんを気持ちよくさせられたんだってわかって、凄く嬉しくて、身体に力が入るまで、お腹の熱さを感じていました」

羽黒が私の大胸筋に触れてくる。

羽黒「司令官さん、寝ぼけておちんちんを打ちつけてたみたいで、まだ起きていませんでした。だから、こっそりもう一回しようとしたんですけど、那智姉さんにばれて怒られてしまいました。中から司令官さんのものが出ていくと、私の中から精液が溢れて、それを見たら顔が変に歪むのが抑えられなくて……幸せ、でした」

羽黒が私のズボンのファスナーに右手をかける。私はその手を左手で抑える。

羽黒「司令官、さん」

息を荒くしながら、切なそうな目を向けてくる。

提督「まだ話が終わっていないだろう、羽黒。さあ、続けて」

艦娘達が壊れてなければただの淫語調教なのに、すぐ目の前にトラックが迫ってるような恐怖しかないな


羽黒「そ、そのあと、三回ずつしたん、ですけど……結局、一番早く逝かせることができたのは、足柄姉さんでした。その後、開店時間が近づいていたので、司令官さんを起こして鳳翔さんのお店に向かいました」

起きたら全員裸で、頭はぼうっとしているし、体がだるいし、しかも汗をかいていたからシャワーを浴びんたんだったな。

起きた時に目隠しと手錠がなかったから、たぶん寝ている途中に外して、足柄がどこかに隠したな。

羽黒「お店に着くと他の娘も何人かいて、鳳翔さんからの挨拶が終わった後、しばらくお店で飲んでいました」

提督「飲む?」

酒をか?

羽黒「えっ?」

しまった。昨日の記憶がないことを羽黒は知らないんだった。

提督「いや、何を飲んでいたか思い出していたところだ」

羽黒「あ、司令官さんはソフトドリンクを飲んでいたんですけど、その、足柄姉さんが『しけた飲み方してんじゃないわよ~』ってお酒を勧めちゃって」

あの馬鹿、私が下戸なのを忘れたか。どおりで昨晩の記憶が無くなっているわけだ。まあ、これで一つ疑問は解決したな。問題はあと一つ。

というか羽黒、さっきも思ったが足柄の真似上手いな。

羽黒「そしたら他の娘もお酒を司令官さんに飲ませ始めちゃって。中には口移しで飲ませようとする娘までいて」

羽黒の語気が荒くなる。私の右手を掴む羽黒の力が潰れそうなほど強くなる。

羽黒「私の司令官さんなのに!」

提督「羽黒」

左手で羽黒の後ろ髪を撫で、人差指と親指で髪一本一本をつまんでなぞる。

提督「大丈夫だ。お前が守ってくれたんだろう?」

羽黒「もちろんです」

提督「そうか、ありがとう羽黒。羽黒は本当に頼りになる」

怒りの表情から一変、酔い心地な表情になる。

羽黒「……はい」

提督「お酒を飲んだ後、私は酔っていたか?」

羽黒「はい。司令官さん、ひどく酔っていて、姉さんたちに跡をお願いして、司令官さんを部屋へ連れていくことにしました」

大方予想通りだな。酔って娘たちに酷いことをしていなければいいが。後で鳳翔に聞いてみるか。

羽黒「そしたら、司令官さん、お酒を飲み過ぎたのかトイレに行くって言い出して、放っておけなくて私も一緒に行きました。トイレで司令官さんが、お、おちんちんの先から透明なお、おしっこを出して、凄く綺麗でうっとり見つめちゃいました」

そこは放っておきなさい。


羽黒「おしっこを出し終わった後、司令官さんが私の頭を掴んで、おちんちんを口の中に入れてきました。おしっこのしょっぱい味がして、口の中でおちんちんが大きくなっていって、私、アソコがムズムズしてきて、司令官さんはおちんちんを抜いた後、私に『脱げ』って言ったんです。きっと、私のいやらしい身体のことがばれてしまったんだって、おちんちんを舐めて喜ぶいけない身体にお仕置きされちゃうんだって思いました。下だけ脱がされた後、壁に押し付けられて、私の中に司令官さんが挿入ってきました。そしたら司令官さん、私を抱っこして、そのままトイレの外に出たんです」

なにやってんだよ、昨日の私。

羽黒「司令官さんに抱っこされたまま、廊下を歩いて、階段を上って、途中で他の娘に見つかったら大変なのに、すごくドキドキして、司令官さんのおちんちん硬くて、素敵で、子宮の入り口、ガンガン突かれて、部屋に向かうまでに何度も中出しされて、司令官さんと繋がったまま鎮守府を歩くなんて、頭が、フットーしそうでした」

羽黒は真っ赤になった顔を右手で隠す。

酔っていたとはいえ、駅弁しながら鎮守府を歩くとか、ひくわ。

羽黒「部屋に着いたら、そのままベッドに押し倒されました。姉さんたちが来るまで、なんどもなんどもおちんちんを叩きつけられて、おっぱいにいくつも噛み痕をつけられて、たくさんキスして、子宮が溺れるくらい精液を注いで貰いました」

提督「……痛くなかったか」

羽黒「痛くなんかないです。中に出されるたびに気持ちよくて、愛されているって感じて、この時間がずっと続けばいいって思いました」

潤んだ瞳で見つめられる。

提督「そうか……続けて」

羽黒「はい。司令官さんのおちんちんをお口でご奉仕しているときに姉さんたちが部屋に来ました。そしたら司令官さん、さっき目隠しされたことに怒りだして『そんなに一番を決めたければ、私が決めてやる』って言い出したんです。司令官さん『最後まで意識が残っていた人を一番にする』って言って、クジを引いて、セックスして、中出しされて、交代して、一周したらまたクジを引いて……そうやって何度も愛されて、繋がってない時も指で慰めてもらって、司令官さん、何回もしているのに全然萎えなくて、逞しいおちんちんで何度も突かれました」

いかれてる。

羽黒「精液を垂らしながらクジを引いて、おまんこが司令官さんの形を覚えるまでエッチして、姉さんたちが涎垂らしながらクジを引いて、おまんこされて、喘ぎ声をあげるのを何度も聞いて、意識が朦朧とする中クジを引いて、おまんこからグチョグチョと音がするのを何度も感じて、顔に精液が掛けられたままクジを引いて、おちんちんが動くたびに意識が飛ぶのと戻されるのを何度も繰り返されて、クジを引いて、エッチしてエッチしてエッチしてエッチしてエッチして、幸せで幸せで幸せで幸せで、シアワセで、シアワセなまま気を失って、朝、シアワセなまま目が覚めて━━━━━」






























羽黒「━━━━━司令官さんが、いませんでした」










・本日 ここまで

・1レスは もっと短くしたほうが いいかな?

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


羽黒「司令官さんがいないことに気づいて、部屋を探しました」

羽黒「トイレもお風呂も台所も居間もベランダもタンスも棚も全部」

羽黒「どこにも居ませんでした、どこにも、どこ、にも」

羽黒「わ、わ、私、捨てられてしまったんじゃないかって、置いていかれたんじゃないかって」

羽黒「足柄姉さんは大丈夫だって、戻ってくるって言ったけど、私、怖くて、怖くて」

羽黒「昨日、私、何か悪いことを、ヒッ、して、ひぐっ、悪いこと、してしまったんじゃ、ないかって」

羽黒「悪い娘になったから、しれ、しれいかんざんに、すでられてしまったって、そう、おもって、そうおもっで」


羽黒「……妙高姉さんも居ないことに気づきました」


羽黒「妙高姉さんが司令官さんを奪ったんだ。早く後を追って始末しなきゃいけない」

羽黒「でも、足柄姉さんは、司令官さんが悲しむからって、お仕置きのために待っていようって言いました。『そのほうが確実で、効くから』って」

羽黒「夕張さんから貰ったスタンガンを持って、扉の前で待っていました」

羽黒「ずっと、ずっとずっと、ずっとずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっと」

羽黒「妙高姉さんが入ってきたとき、苦しめ、痛がれ、って思いました」

羽黒「だけど失敗しました」

羽黒「妙高ねえさんったら『今回だけですよ』って、ふふっ、何様のつもりなんですかね」

羽黒「でも、悪い娘は妙高姉さんだけではありませんでした」

羽黒「那智姉さん」

羽黒「おかしかったんですよね、最初から。でも、メモのことを知って納得しました」

羽黒「しかも、それだけじゃなくて、司令官さんに、迷惑まで掛けて……!」

羽黒「……司令官さんに群がる害虫はちゃんと駆除しなきゃいけません。司令官さんのために」

羽黒「司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため司令官さんのため」

羽黒「なのに……なのに!」


羽黒は、泣きながら、怒りと苦しさを綯い交ぜにした表情を向けてくる。

羽黒の両手が、胸を千切らんばかりに掴んでくる。

羽黒「司令官さんは、那智姉さんを庇いました。まるで恋人を守るみたいに」

羽黒「司令官さんは、妙高姉さんを抱きました。二人から、二人の匂いがするほどに」

羽黒「司令官さんは、足柄姉さんと通い合いました。まるで夫婦みたいに」

今の羽黒は、崩れる、砂のお城。

羽黒「司令官さん、私、私には、何が残っていますか? 私は司令官さんの何になれますか? 私は司令官さんの何ですか?」

羽黒「司令官さん……」





















くだらねえ。


提督「━━━━━『死が二人を分かつまで』」

羽黒が涙目で、私を見る。

提督「何の言葉かわかるか、羽黒?」

鼻水を啜って、羽黒は答える。

羽黒「結婚の……誓いの言葉です」

提督「そうだ。愛し合う二人であっても、死でその繋がりは絶たれる」

羽黒の冷えた身体を温めるように、ゆっくり抱きしめる。

提督「だが、羽黒、お前は私が死んだら、その後を追うと言ったな」

羽黒「はい、どこまでも付いていきます」

暗く濁った瞳で、はっきりと言う。

提督「なら、あっちは全部、お前にやろう。死を超えて愛してくれるお前に。それでは駄目か」

羽黒は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに表情に影が宿り、俯く。

羽黒「他の娘が……すぐに来ます」

提督「全員追い出す」

羽黒「私が先に……沈むかもしれません」

提督「すぐに追いつく」

羽黒「あっちで、司令官さんに、会えないかも、しれません」

提督「会えるまで探す」

顔を上げた羽黒の瞳を真直ぐに見る。

提督「地獄にいれば、鬼を殺し。天国にいれば、蜘蛛の糸をよじ登る。この世に未練を残したならば、閻魔を殴って這いずり回る。来世に行ったというならば、六道を踏み抜き会いに行く」





提督「お前に会いに行く」





まだ顔に幼さを残した、しかし強い娘を真直ぐ見る。


羽黒「司令官さん」

提督「ごめんな、羽黒」

強く抱き締める。やはり私にはこれしかない。

提督「理解できていなかったのは、私のほうだ。もし、今、耐えられないというならば、今、ここで、あっちの世界へ行こうか」

抱きしめる腕を解き、体を離し、羽黒の肩を掴む。

羽黒は右手を膝の上に乗せ、左手を胸の前に置く。

どちらの手も、強く握られている。

羽黒は望むような、怖れるような、嬉しいような、悲しいような、そんな顔をしている。

提督「お前が、決めなさい」

羽黒は、膝から震えた右手を離し、中空に手を伸ばすと、艤装を部分的に展開する。妖精の技術は相変わらず素晴らしい。

羽黒は、右手の指を、さ迷うように動かす。

握って、開いて、捻って、回して、右へ左へ上へ下へ。



艤装が、消える。



羽黒「……できません」

提督「羽黒」

羽黒は私の胸板を掴む。目に光が宿って、涙が灯る。

羽黒「できません、できないです! もっと司令官を見ていたいです! もっと司令官さんの声を聞きたいです! もっと司令官さんの匂いを感じて、もっと司令官さんと触れ合っていたいです!」





羽黒「もっと、司令官さんと……生きていたいです」





羽黒は、震えながら、俯いた。

提督「そうか」

抱きしめる。

提督「なら……そうするか」

羽黒は「はい」と答えた。


足柄「ただいま~」

羽黒と静かにソファーで過ごしてから、少しして、足柄たちが戻ってきた。

羽黒「妙高姉さん、那智姉さん、足柄姉さん、お帰りなさい」

提督「お帰り」

まだ涙の跡を顔に残している羽黒と共に、彼女たちを迎える。

妙高「はい、いま戻りました」

妙高は人数分のコップを乗せたお盆を持ち、那智はプリンを乗せたお盆を、足柄は大きめのバスケットを持っている。

妙高と足柄がテーブルにお盆とバスケットを置き、向かいのソファーに座る。

羽黒「那智姉さん……?」

お盆をテーブルに置いた那智が羽黒の顔をじっと見ている。

那智「貴様、羽黒を泣かせたのか?」

鋭い視線と、強い語気が私に向かってきた。

コップを並べていた妙高と、バスケットからサンドウィッチを小皿に取り分けていた足柄の視線が私に集まる。

提督「……」

那智「……」

しばしの沈黙。

羽黒が口を開こうとする。

提督「……ああ、その通りだ」

羽黒が口を開くのを遮るように、那智に答える。

言い訳も、言い返す気もない。泣かせたのは事実だ。


那智「……」

またしばしの沈黙。

那智は私の目をずっと見ている。

那智「ふむ」

那智が立ち上がる。

羽黒「あの、那智姉さん」

那智「わかっている」

羽黒「……あ」

那智が腰を屈めて羽黒の頭を優しく撫でる。羽黒がくすぐったそうな顔をする。

それを見て、妙高は肩の力を抜いて笑みを浮かべ、足柄は再び、取り分け作業を再開する。

羽黒「あの、那智姉さん」

那智「ん? なんだ、羽黒?」

羽黒は穏やかに俯いて、静かに口を開く。

羽黒「さっきは、ごめんなさい」

何に対して謝っているのだろうか。

那智「気にしてはいないさ」

何に対して許しているのだろうか。

私にはわからないが、姉妹にだけ通じる何かがあるのだろう。

那智「それにだ」

那智は部屋を周って、私の左隣に座る。

那智「大方、この節操なしが原因だろうからな」

那智がおちょくるような視線を私に送る。

那智の言葉で妙高と羽黒は困り顔になり、サンドウィッチを配り終わった足柄が、小さく笑い声をもらす。

提督「……悪かったな」

那智「悪いさ」

左頬に息が掛かるくらいにまで、那智の顔が近づく。綺麗な顔だ。

那智「私たちをこんな風にしたんだ。しっかり責任を取ってもらわないとな」

勘弁してくれ。

足柄「提督、変な顔」

足柄が失笑する。そんなに変か?

助けを求めるように妙高に視線を送る。妙高は微笑むと胸の前で手を合わせる。

妙高「さっ、朝食にしましょう」

妙高の合図で全員が手を合わせる。

提督・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「いただきます」」」」」

・本日 ここまで

・ぐだぐだ orz

・艦これ 何級向けの ss なのだろう これは

>>149
Q.目の前にトラックが迫っています。どうしますか?
A.提督「爆弾で吹き飛ばす」

・妙高型編 ほぼ終了 しました

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


食事が終わった後、諸々の準備を整え、妙高たちと共に執務室に向かう。

執務室で秘書艦の引き継ぎを行い、その後、朝の点呼を終えれば、勤務開始となる。

時間が迫っている。引き継ぎにはそれほど時間は掛からないが、少し急ごう。

雑談に相槌を打ちながら、歩を進める。

提督(……ん?)

「……」

医務室前の廊下を誰かが歩いている。

だが、様子がおかしい。おぼつかない足取りで右へ左へと、傷ついた蝶のように歩いている。

おぼつかない足取りのまま廊下の窓側に寄ると、そのまま身体を預け、へたり込んでしまった。

すぐに傍まで移動する。

妙高「提督?」

「……あ」

妙高の声に気づき、こちらに振り向く。

豊穣な麦畑を思わせる髪色に、イヌ科の動物のような癖毛を持つ娘。

提督「夕立、どうした」

夕立「提督さん!」

夕立は私を認めると、立ち上がるのと同時に飛び付いた。

胸元に飛び付くと、夕立は顔を私の体に擦りつけ、背部に腕を回し抱きつく。

私が夕立に抱きつかれたのを見て、那智が夕立の首根っこを掴もうとする。

左手で那智を制する。

那智「……」

那智に睨まれる。

提督「少しだけだ」

那智が手を引っ込める。

足柄「どうしたの、夕立? どこか悪いの?」

私の右側から、中腰で夕立と同じ視線に立った足柄が声を掛ける。

夕立は顔を少し左に動かして足柄を一瞥すると、再び顔を私の胸元に埋める。

夕立「……」

足柄が眉をひそめて私を見上げる。そんな顔を向けられても困る。那智は那智で眉間にしわを寄せて夕立を睨んでいるし。

妙高「提督……そろそろお時間が」

耳元で妙高に囁かれ、時間が迫っていることを思い出す。

提督「……ああ、ん?」

妙高「どうしました?」

提督「いや、なんでもない」

妙高が近づいた瞬間、夕立の抱き締める力が強くなった気がしたが、気のせいか?

提督(しかしどうしたも、の……ッ)



羽黒が汚物を見るような眼差しで夕立を見ていた。



羽黒は口を開くと小声で呟く。

羽黒「……野良犬」

お、おう……


羽黒は無視して、夕立を何とかしよう。

提督「夕立、何か言ってくれないと困る。そろそろ点呼の時間だろう」

夕立「……ないの」

いつもの明るさも、変な語尾も、彼女らしさもなく、夕立の口から言葉が現れる。

夕立「朝起きたら提督さんが感じられなかったのっ! いつもだったら『ある』のにっ! どこにもいないのっ!」

夕立の指が、私の背中を掻き毟る。

夕立「こわい。こわいよ、提督さん……」

夕立は再び私の胸元に顔を埋める。

夕立の言葉を聞き、妙高、那智、足柄は私に「またお前か……」とでも言いたげな目線を送る。否定できんが、その目はやめてくれ。

それにしても、あれだけ襟巻きに匂い付けをしたのに、もう切れたのか。今度は匂い袋でも作ってみるか?

……兎にも角にも、このままでは動けん。

提督「……夕立、大丈夫だ」

夕立の頭を撫でる。

夕立「……ぽい」

夕立の力が少し弱くなる。

提督「怖かったろう……顔を見たい。少し手を離してくれるか?」

夕立の両肩を優しく掴む。

夕立は拒絶の唸り声を上げる。

提督「……いい子だから、なっ」

右手で耳の付け根を指で撫でながら、左手で腰近くの背中を揉み回す。

夕立「んっ♡」

妙高「……提督」

わかっているから、その眼をやめてくれ。

夕立に触れ続ける。

夕立「あうぅぅ、あっ♡」

妙高「て い と く」

提督「そう睨むな、妙高。那智、お前もだ」

那智は顔の左側をしかめていた。

那智「……面白くないな」

私だってやりたくてやっているわけじゃない。


夕立「ていとく、さん……♡」

息を弾ませながら、夕立が私を見上げる。

甘い瞳に、半開きになった口から、唾液の糸を引く八重歯が見える。

提督「夕立、顔をよく見せてくれ」

夕立の頬を両手で包む。

夕立は抱きしめていた腕を解くと、私の両手首を掴む。

屈み、夕立を引き寄せるように両手を引く。

引いた手に釣られて、夕立の両手が私の首に回る。

すかさず私は左手を夕立の背中に、右手を夕立の膝窩に回す。

提督「夕立、しっかり掴まれ」

夕立「あ」

夕立を横抱きし、立ち上がる。くっ、腰が!

足柄「まぁ」

夕立「提督さん、これっ」

夕立が驚いた表情を私に向ける。

提督「ん? ああ、すまん。嫌だったか?」

漣にこの抱き方をしたら「キタコレ! ……ぐへへへへへ」とか言って喜んで……喜んでいたんだよな? 早まったか?

夕立「い、嫌じゃないっぽい! 嬉しいっぽい!」

提督「そうか」

良かった。

しかし、腰が……! あと腕も……! くそっ、意外と重いな、夕立!

那智「……ちっ」

舌打ちとはらしくないな、那智。

提督「行くぞ」

妙高「えっ? あっ、はい」

呆気に取られていた妙高に声を掛け、夕立を抱きかかえたまま執務室へ向かう。足柄、ニヤニヤするんじゃない。

夕立「……ぽい♪」

羽黒「……」









羽黒「……駆除しなきゃ」

羽黒の沸点、低過ぎぃ……


夕立を横抱きし、冷えた空気を後ろから感じながら、執務室の前に到着する。

廊下に娘たちがいないところを見ると、部屋に居るのだろう。

提督「妙高」

妙高「……はい」

両手が塞がっているため、妙高に扉を開くのを頼む。

妙高が扉をノックする。

「Come in,Please」

「どうぞ~」

この声は……今日はやかましい上に、ややこしい奴が秘書艦のようだ。

妙高が扉を開き、那智、私の順に入る。

「Good Morning! 提督ぅー。待ちくたびれ……た……」

「ぱんぱかぱーんっ! 今日は愛宕が秘書か……ん……」

夕立を見た瞬間、二人は能面のような表情になる。

金剛「……」

愛宕「なにそれ」

・本日 ここまで

・申し訳ありません 姉妹艦ごとに 話が進むわけでは ございません

・点呼前のシーン = 妙高型がメインになる という 考えだったため 誤解を産む 書き込みを してしまいました 申し訳ありません

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


愛宕「ねえ、提督、それはなに? なんなの? なんでそんなものが提督にくっついているの? ねえ?」

愛宕は目を見開き、夕立を指で差しながら、私に詰め寄ってくる。

金剛「……テートクぅ」

金剛は泥と油を混ぜたような眼をしている。

夕立は私に抱きついたまま、金剛たちから顔を背けている。

提督「夕立が体調を崩したから保護した。それだけだ」

実際は違うが、敢えてそう返す。

二人を押しのけ、那智と共に正面の執務机に向かう。

「明石はどうしたんだよ?」

「医務室にいらっしゃらなかったのですか?」

提督「そんなところだ……それとおはよう、摩耶、榛名」

部屋の右側に置かれている応接用のソファー、その近くに立っていた摩耶と榛名に返答する。

榛名「はい、おはようございます」

榛名は挨拶を終えると共に会釈をする。

摩耶「っす」

摩耶は左手を上げて、大雑把に挨拶を返す。お前はもう少し真面目に挨拶しなさい。

執務机の椅子の前に着く。しかし両手が塞がっているため、椅子を引くことができない。

足で椅子を引こうとしたところで、榛名が椅子を引いてくれた。

榛名「どうぞ、提督」

提督「ありがとう」

榛名「いえ……」

椅子に座り、夕立を膝の上に座らせる。

夕立から両手を離した瞬間、金剛が机を叩いた。

金剛「納得できないネ」

愛宕「そうよ。今日は私たちが秘書艦でしょ? なんでそんなものに構うのよ」

眉間に皺を寄せた二人から再び詰め寄られる。

秘書艦であることと、病人、ということにしている夕立、の世話をすることは関係ないはずだが、こいつらには同じことらしい。

夕立「……」

提督「放っておけないからだ」

金剛と愛宕を生返事であしらい、妙高たちに視線を向ける。

妙高、足柄、羽黒は引き継ぎに必要な資料を整理している。


提督「妙高、準備は?」

妙高「私は可能です」

足柄「私も出来たわ」

羽黒「私もできました」

金剛と愛宕に視線を戻す。

提督「だそうだ。早く引き継ぎを済ませろ」

金剛は歯ぎしりをすると、両手で再び机を叩く。

机が軋む。

金剛「My Lord! Please explain to me!」

その呼び方はやめろ。

榛名「お姉さま……」

提督「先ほど説明した以上のことはない。病人を保護し、預かり、連れてきた」

愛宕「でも、提督がお世話する必要はないですよね?」

愛宕は眼を細め、両手を合わせて右頬に添える。

愛宕「貸して? それ、私がヤっておきますから、ね?」

提督「……」

愛宕「ね?」

提督「……預かったのは私だ、最後まで私が面倒を見る」

次の瞬間、目の前の机が消えたかと思うと、天井に突き刺さった。

凹んだ天井から、剥がれた石膏が砂となり、机があったところに落ちてくる。

榛名が私ごと椅子を引いてくれたおかげで、頭に砂が掛からずに済んだ。

眼前に、前蹴上げの姿勢になった愛宕がいる。足が綺麗に180度開いており、黒いストッキングが艶めかしい。

愛宕はゆっくり足を降ろすと、再び両手を合わせて頬に添え、眼を細め、笑顔を私に向ける。

愛宕「ね?」

那智、金剛、妙高、羽黒から砲口を向けられながら、愛宕は笑顔を私に向ける。

提督(……)

厄介な娘だ……

・本日 ここまで

・キャラが プロットから ズレる orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


摩耶「姉貴、やりすぎ」

私から見て左側、榛名と金剛の間にいつの間にか摩耶と足柄がいた。

摩耶「ほれ、提督、摩耶様がお前の書類、避難しといてやったぜ」

そういって摩耶は得意顔で、左手にある書類と右手にある業務用電話を軽く上げて見せつける。

足柄も、執務机にあった業務用電算機 ――と言うよりパソコンと呼ぶべきもの―― と、摩耶が持ち切れなかったのであろうスタンドライトと羽ペンを持っている。

提督「助かる」

よくもまあ、あの一瞬で確保できたものだ。

足柄「これ、どこに置いておけばいいかしら?」

足柄が電算機を団扇のように軽く振る。もう少し丁寧に扱ってくれ。

提督「適当に置いといてくれ」

摩耶「おうよ」

そう返事をすると、摩耶と足柄は金剛の後ろを周り、妙高と羽黒の射線上を横切ると、入口から見て左側にある秘書艦用の机にそれぞれの手に持っていたものを置く。

その際、足柄が電算機を机に置いたとき、硬いものがぶつかり合う音がした。

頼むから丁寧に扱ってくれ。お前の時代にも電算機があっただろ……あったよな?

足柄「ここに置いておくわね」

提督「ああ」

摩耶と足柄が机に物をちょうど置き終わったとき、それを見計らってか、愛宕が振り向き摩耶を睨む。

愛宕「なによ摩耶~、その言い方、私が悪いみたいじゃない」

愛宕は自分に向けられている砲口を歯牙にも掛けず、両手を握り、両腕をペンギンのように少し広げ、頬を膨らませて、子供のように駄々をこねる。

摩耶「だからやりすぎだって、そいつ、今日仕事できねえじゃねえか」

摩耶は左手を腰に当て、顎を使って私を差す。そういう仕草はやめなさい。

愛宕「ん~」

愛宕はそれを聞くと、右手人差指を唇に当て、目線を上にあげて唸る。

愛宕「あっ、それならこれを使えばいいんじゃない?」

そう言うと愛宕は、頭部と心臓部に砲口を向けている金剛の艤装、その艤装の盾のような部分を指で差す。余裕だなお前。

その愛宕の行動に対し、今まで指一本視線一つ動かさず、ただ艤装を展開し、その砲口だけを向けていた金剛が口を開いた。

金剛「Heeey、愛宕、そんなにこれが気になるなら、試しマスカ?」

金剛は首を傾げながらゆっくりと愛宕に顔を向ける。

金剛「Come on, pig」

榛名「お姉さま、お止めください」

摩耶「姉貴、ふざけすぎ」

まったくだ。本当にもう、どうしてこうなった。


愛宕「む~」

摩耶の言葉で脹れっ面になった愛宕は、私に顔を向ける。

愛宕「提督、どう思います?」

知るかよ。

提督「……」

夕立を除く全員が私を見る。

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……」

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……」

胃が痛い。

金剛・榛名・愛宕・摩耶・妙高・那智・足柄・羽黒「「「「「「「「……」」」」」」」」

提督「……愛宕」

愛宕に右手で手招きをする。

愛宕「は~い♪」

執務机があったところにまで、愛宕が弾むように近づく。

提督「帽子を取れ」

そう言うとともに、手で愛宕にしゃがむ様に指示する。

愛宕は両手で帽子を掴み、しゃがんで頭を私に差しだす。

撫でる。

愛宕「♪」

提督「構ってあげられなくて、すまない。あとで埋め合わせするから、もう少しだけ待っていてくれるか?」

愛宕は帽子で口元を隠すと、上目遣いに私を見る。

愛宕「絶対ですよ?」

提督「ああ、約束する」

愛宕はニコリと微笑む。

愛宕「なら、少しだけ我慢してあげます」

愛宕の言葉を聞き、妙高と羽黒が艤装を格納する。

しかし、眉間に皺を寄せた金剛は、未だ艤装を展開したまま、私に詰め寄る。

金剛「テートクー! そういうのはよくないデース! Judge her!」

提督「本音は?」

金剛「ワタシも提督にお姫様抱っこされて、イチャラブしたいデース!」

金剛は両手をバタつかせてごねる。正直でよろしい。

提督「わかった。少し後になるが、二人きりで過ごそうか」

金剛「Really!?」

私の言葉で動きを止めた金剛は、驚いたように眼を開く。

提督「本当だ。何か問題でもあるのか?」

私の言葉で一転、艤装を格納した金剛は破顔し、腰に手を当て、胸を張る。

金剛「No problem! テートクの眼を釘付けにしてあげマース!」

そこは眼じゃなくて視線だろ。眼球に釘でも刺すつもりか。


榛名「……」

提督「榛名、希望があればお前の時間も作るぞ」

榛名「……えっ」

私と金剛の会話を少し俯いて聞いていた榛名に声をかける。

なんだか寂しそうな表情をしていた気がしたが、気のせいだったか?

榛名「いえ……榛名は……」

金剛「榛名、自分を抑え込む必要はありまセーン。そうでしょ、テートクぅ?」

提督「まあな」

夕立の背中をさすりながら答える。

榛名「本当に……よろしいのでしょうか?」

顔に影を落としたまま、榛名は自分に言い聞かせるように呟く。

榛名の美しさは、顔に陰りが見えても、変わらない。

提督「私は一向に構わない。金剛の後にはなるが、それでもいいか?」

榛名「はい……榛名は大丈夫です」

榛名は恥じらうように微笑んだ。

愛宕「じゃあ、摩耶は榛名ちゃんの後ね」

摩耶「は? ……はぁ!? あたしもかよっ!?」

妙高、足柄、羽黒と共に、ソファーで引き継ぎを行っていた摩耶が、口を半開きに驚いた表情を向ける。

提督「希望があれば、だ。嫌ならべ「嫌とは言ってね―し!!」

左様か。


提督「……さて、引き継ぎをいい加減始めてくれ」

愛宕「はーい」

金剛「All right」

金剛、愛宕、摩耶、妙高、足柄、羽黒がソファーに集まる。

榛名「……」

提督「どうした、榛名?」

榛名「……机、どう致しましょうか……」

榛名はソファーに行かず、天井に突き刺さった机を見上げている。

提督「……明石に頼むさ」

すまん、明石。

まあ、みかん箱でもいいけど。



榛名は「かしこまりました」というと、ソファーへと向かった。































那智「……」

仏頂面の那智は、未だ艤装を展開したまま腕を組み、山の如く聳え立っている。

提督「……那智」

那智「……なんだ」

提督「お前にもしようか?」

那智「いらん」

提督「そうか」

那智は艤装を納めた。

・本日 ここまで

・英語が きつい orz

・キャラが 多いと 影が薄くなるキャラが どうしても 出てしまう orz

・地の文 もう少し 削ったほうが いいですか?

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「夕立、気分はどうだ?」

夕立「ん」

妙高たちが引き継ぎをしている間、夕立に調子を聞く。

夕立は私の首元左側で顔を少し擦ると、眠た眼で欠伸をした。

夕立「……眠いっぽい」

口をぼんやりと開き、目を擦りながら、薄らと開いた眼を私に向ける。

さっきからやけに静かだと思ったら、寝ていたのか。

提督「朝礼台のところまで一人で行けるか?」

そろそろ離れて欲しいところだ。このまま点呼に出るわけにもいかないだろうし。

夕立はジッと私を見つめた後、再び私の首元に顔をくっつける。

子供特有の暖かい体温とスベスベプルプルな肌の感触が心地よい。

それなりの手入れは恐らくしているのだろうが、艦娘の肌はなぜいつも新鮮な果実のように瑞々しいのだろう、少し羨ましい。綾波や足柄の肌なんてプニプニだぞプニプニ。寝ぼけて足柄のおっぱいをお餅と間違えて噛み付いたこともあるんだぞ。足柄はなぜか喜んでいたけど。

夕立「もう少し、寝込むっぽい」

夕立の言葉で脱線した思考が戻る。

提督「そうか」

どうやらこのまま点呼に出る以外ないようだ。諦めよう。

提督(……それにしても)

天井に突き刺さった机を見る。

提督(愛宕、手加減したな)

以前だったら、天井は突き抜けて穴が開き、机は粉々になり、執務室は跡形も無くなっていただろうに。

ソファーに座っている愛宕に視線を移す。

溢れる黄金の大河のような髪、宝石のサファイアを埋め込んだような瞳、大海原を写したような服。

そのような広大さを感じさせる容姿をしながら、それでいて、個人的印象ではあるが、雪原の白兎を彷彿させるその雰囲気は、美しいというより可愛らしいという言葉が相応しかった。

今、愛宕はその可愛らしい顔を小難しくしかめて、妙高たちから話を聞いている。

愛宕が私の視線に気づいた。

愛宕は朗らかな顔で、小さく手を振ってくる。

私も右手で小さく手を振って返す。愛宕、仕事しなさい。

かつて私を縊り殺そうとした娘が、今は私に微笑を向ける。なんだか嬉しいような恐ろしいような、複雑な気分になる。

愛宕の様子に気づいたのか、金剛をはじめとした周りの娘が愛宕の視線の先に顔を向ける。

視線の先が私だと気づいた瞬間、娘たちの顔つきが険しくなる。

娘たちから顔を背ける。

背けた先にいた那智が、冷たい目線で私を見下ろしていた。

那智「……」

左に顔を背ける。

背けた先にいた夕立が、恨みがましい目つきで私を見上げていた。

夕立「……ありえないんだけど」

夕立、鈴谷の口調が移っているぞ。

提督(……)

天井を見上げる。

見せしめのように突き刺さっている机に、なぜか親近感を覚えた。


引継ぎを終えた妙高たちが私の前まで移動し、那智も含め横列縦隊で並ぶ。

私から見て左から、妙高、足柄、那智、羽黒で並ぶ。

その後ろに、同様に左から、摩耶、愛宕、金剛、榛名の順で並んでいる。

……気のせいかもしれないが、金剛たちの並び方、おかしくないか?

妙高「提督」

妙高が私に呼びかける。

提督「始めろ」

妙高の合図と共に、私と夕立を除く全員が、気をつけ、敬礼、直れ、をする。

本来なら私も立ってやるべきなのだが、夕立がいるので省略だ。

妙高「妙高以下4名、摩耶以下4名への引継ぎ、完了致しました、以上」

引継ぎ程度で堅苦しい気もするが、規律遵守というやつだ。

まあ、ここら辺は緩いし、適当だが。

提督「引継ぎ完了の旨、了解した。只今を以って、妙高以下4名を秘書艦の任から解く、以上」

妙高「はい、妙高以下4名、只今を以て秘書艦の任を終えます」

妙高、足柄、那智、羽黒が敬礼し、直る。

提督「よろしい、退室せよ」

妙高「はい、退室致します」

妙高たちの秘書艦の任はここまでだ。


妙高「では提督、また後日」

提督「ああ」

後ほど、妙高との予定を調整しないとな。

妙高が退室する。



那智「軽率な行動は慎め、いいな?」

提督「肝に銘じておく」

那智「……ふん」

那智が退室する。



足柄「寂しくなったら、いつでも来て頂戴♡」

提督「……」

足柄「ちょっと、その目はなによ」

足柄が退室する。



羽黒「あの……司令官さん」

提督「ん、どうした?」

羽黒は胸の前で両手を組み、不安そうな表情を見せる。

羽黒「少し、耳をお貸しいただいてもよろしいですか?」

提督「? 構わないが」

引継ぎで何かあったか?

羽黒は私の右耳側によると、腰を曲げて耳に顔を近づける。

羽黒「……失礼します」

提督「ああ」

次の瞬間、







チュッ





金剛「Nooooooooooo!!!」

金剛の絶叫が響く。やかましい。

羽黒「し、失礼しました!」

羽黒は退室した。

私の頬に柔らかい感触を残したまま。



榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「……」」」」

扉を睨む金剛を除き、他の娘たちが私を睨む。

提督「……」

金剛「テートクゥ……」

……私にどうしろと。


金剛・榛名・愛宕・摩耶・夕立「「「「「……」」」」」

そんなに厳つい表情で睨まれると、さすがに怖い。

提督「……後でいくらでもしてやるから、早く始めてくれ」

私の言葉に全員が呆れたと言わんばかりの溜息をついた。何なんだよ、ほんと。

摩耶「あー、とりあえず始めるぜ」

摩耶が後頭部を左手で掻きながら、引き継ぎ開始を告げる。

提督「……お前か?」

摩耶「あ? んだよ、悪ぃかよ」

提督「いや、そういう訳ではないが」

てっきり榛名がやるかと思ったが。

提督「……始めてくれ」

摩耶「おう」

摩耶の合図で、摩耶、愛宕、金剛、榛名が敬礼、気をつけ、直れをする。

先ほどとほぼ同様の応答を行い、金剛たちは秘書艦の任に就く。

摩耶「━━━━━はい、摩耶以下4名、只今を以て秘書艦の任に就きます」

提督「よろしい。行動を開始せよ」

摩耶「了解」

摩耶の言葉で応答を終え、各々の楽な姿勢に戻る。


秘書艦にはそれぞれ役割分担があるので、それを確認することにしよう。

……正直、秘書艦が4人もいるのは人材の無駄使いだと思う。

実際、要員を圧迫しているせいで、毎月加賀がウンウン唸っているし。

提督「で、だ。今日の補佐は……」

この顔ぶれなら、いつもは榛名だが。

摩耶「あたし」

摩耶が左手を挙げる。

薄々感じていたが、やはりか。

提督「……珍しいな、出来るのか?」

いつもなら指導だろうに。

摩耶が私にガンを飛ばす。

摩耶「あっ? お前、あたしを舐めてんのか、それぐらい出来るっつーの」

提督「そうか……指導は?」

愛宕「はーい、私でーす♪」

愛宕が元気よく右手を挙げる。本気か。

提督「……出来るのか?」

私の言葉で、愛宕は口を窄める。

愛宕「む~、できますよ~」

不安だ。

思わず摩耶を見てしまう。

摩耶は私の視線に対して、首を左に傾げて、右手で左肩を揉む。

摩耶「あ~、まあ、あたしから助言はしてるから」

提督「……頼む」

愛宕「もー、提督も摩耶も失礼よー」

提督「悪かったよ……護衛は?」

金剛「ワタシデース! I am your shield!」

金剛は左手をまっすぐ前に出し、美しい手のひらを見せてくる。

提督「心強い。頼りにしているぞ、金剛」

金剛「Yes! ワタシの実力、見せてあげるネー!」

提督「ああ……と、なると」

榛名を見る。

榛名は左を向いて、私と目を合わせようとしない。

榛名「……」

提督「……」

榛名「……」

提督「……」

榛名「……」

提督「……福祉か」

榛名「……はい」

榛名は顔を真っ赤にすると、両手で顔を覆った。

頑張ったんだな。

・本日 ここまで

・寝落ち してました orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


秘書艦の分担を確認し終わった後、夕立の背中に左手を回して抱き寄せる。

摩耶「お前、そのままで出るのかよ?」

膝窩に右手を回そうとしたところで、摩耶から声が飛んだ。

顔を上げると、摩耶が訝むような目つきを私に向けている。

提督「駄目か」

摩耶「当たり前だろ、女抱えて点呼に出るなんて、馬鹿にしてるとしか思えねえぞ」

正論だ。

榛名「仮眠室で休ませておくのは如何ですか?」

提督「……ふむ」

左に目線を向け、入り口から見て右奥にある扉を見る。

扉を少し眺めた後、夕立に目線を移す。

夕立は俯いたまま、右手で私の裾を弄っている。

提督「いや、点呼には夕立と一緒に出る」

摩耶「はあ?」

愛宕「提督、摩耶の言葉聞いてなかったの? それ邪魔なのよ?」

聞いていたよ。


摩耶の言う通り、抱きかかえたままなのは駄目だろが、放って置く訳にはいかない。

提督「夕立、一緒に歩こうか」

夕立に点呼場所まで行けるか尋ねる。

夕立が顔を上げる。先ほどと打って変わって、弱々しく口を結んだ顔が見える。

提督「行けるか?」

夕立の髪を梳く。

先端の桜色の髪が、舞うように揺れる。

夕立「もう少し、このままが良いっぽい」

金剛「夕立ィ、Don't be selfish、テートクが困っているネー」

金剛が腕を組んで夕立を見下ろす。

夕立「提督さん、夕立、迷惑っぽい?」

提督「いや、別に」

何かを訴えるような目つきの夕立に、さっさと返答する。

金剛、摩耶、顔をしかめないでくれるか。

夕立「じゃあ……」

提督「ただ、夕立と一緒におさんぽが出来たら、と思ったんだがな」

夕立の首元を右手で撫でる。

夕立「あ♡」

鎖骨の上から頚動脈の真横をなぞり、顎の下を舐めるように指を這わせる。

ゆっくりと、優しく。

何度も。

夕立の頬が上気し、水飴が垂れるように口が開く。愛宕、目が怖い。

提督「なあ、夕立」

視線が虚空をさ迷い始めた頃、夕立に声を掛ける。

提督「おさんぽ、するか?」

焦点が合わない瞳が、私に照準を定めた。

夕立「……する」


提督「そうか、ならまず、膝から降りないとな」

夕立「うん」

夕立が私の膝から降り、床に足をつける。

床に足をつけた途端、前のめりにふらついた。

榛名が反射的に手を出したのとほぼ同時に、私は椅子から立ち上がり、夕立の肩を掴んでその身体を支える。

夕立をそのまま抱き寄せる。

夕立は私にくっつくと、服の裾を引っ掴んで姿勢を保つ。

愛宕「あら、本当に体調が悪かったのね」

夕立に目を据えていた愛宕が、意外だといわんばかりに呟く。

摩耶「……マジで休ませといたほうがいんじゃねえか」

私もなんだか不安になってきた。

提督「……夕立」

夕立は服の裾を更に強く掴む。

夕立「おさんぽ……する」

金剛「夕立ぃ、無理はよくないデース、Have a rest」

夕立は首を振る。

夕立「おさんぽ、する」

夕立の言葉に全員が口を閉じる。

摩耶、愛宕、金剛、榛名が視線を私に送る。

私は夕立以外の全員に視線を送り返す。

提督「……すまん」

溜息が部屋に満ちた。本当にすまん。

・深夜は ここまで

・ワンパターン…… orz

・もっと バリエーションを 増やさないと

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


金剛たちと共に、夕立に抱きつかれたまま執務室を出る。

本館を出て、しばらく歩くと営庭と朝礼台が見えてきた。

朝礼台の前には、時間が迫っていることもあって、既に娘たちが整列していた。

提督「少ないな」

榛名「遠征や哨戒、明けの娘が今日は多いので」

そういやそうだったか。

朝礼台に向かって歩いていくと、こちらに気づいたのか、何人かの娘たちが視線を向けてくる。

娘たちの視線が、私から夕立に移る。

刹那、強烈な寒気が肌を刺した。

夕立「……」

摩耶「……どうすんだよ、かなりキてるぞ、これ」

提督「さあな」

私が聞きたい。

というより、娘っ子一人抱きついているだけで、よくこれだけ威圧感が放てるものだ。

提督「それと金剛、収めろ」

摩耶の小言に素っ気無く返し、金剛が艤装を展開しようとするのを止める。

寒気を感じながら歩みを進め、朝礼台に向かう。



朝礼台近くに到着し、私は娘たちと対面した状態で、朝礼台の右横に二人分空けて控える。

その後、金剛が私の左後ろに立ち、更に左に榛名、朝礼台の真後ろに摩耶、朝礼台の左側に愛宕と並ぶ。

私は点呼に立ち会うだけなので、進行や挨拶は補佐である摩耶が進めることになる。

摩耶が朝礼台に上がる。

摩耶「あー、始めていいか?」

摩耶の声が響く。

それにも関わらず、娘たちの視線は私と、私の左腕に抱きついている夕立に向かっている。

摩耶が私に、訴えるような視線を向ける。

提督「摩耶、始め「待ちなさいよ」

怒気を含んだ声が飛ぶ。

提督「……どうした、霞」

満潮の後ろに並んでいた霞に視線を向ける。


霞「どうしたじゃないわよ、女侍らせて出てくるとか、馬鹿にしてんの?」

提督「馬鹿にしたわけではない……色々とあったんだ」

霞「へえ、色々、ねえ、ならその色々とやらをご高説願えるかしら?」

提督「ご高説ってほどではないが……夕立が体調を崩したようなんでな。私が預かって面倒を見ているんだ」

霞「はあ!? このクズ、馬鹿じゃないの!? 半病人を連れ回すとか何考えてんのよ!?」

提督「……夕立も出たがっていたんだ。無碍には出来ないだろう」

霞「ああっ!? そういう時は意地でも休ませるべきでしょうが!? そんな常識もないわけ?」

提督「休ませるといっても、な。医務室も開いて無かったし、なにより一人にはしておけなかったんでな」

霞「一人にしておけない? なにあんた、医者にでもなったつもりなの? だったら今すぐその帽子を捨てて医学校にでも行ったらどう?」

提督(……)

霞の言葉で、満潮の左隣に並んでいる、陽炎、不知火、黒潮を横目で見る。

提督「……」

医者にでもなったらどう、ね。

不知火の前で、それを言うのか、糞餓鬼。


誰かの押し殺すような笑い声が聞こえた。

誰のだ?

夕立「提督さん……?」

夕立が不安な顔つきで私を見ていた。他の娘たちも同様の顔つきをしている。

……ああ、笑っていたのは私か。

霞「何よ、いきなり……気持ち悪い」

霞の顔が蜚蠊でも見たかのように嫌悪に染まる。まあ、いきなり笑いだしたらそういう顔にもなる。

提督「霞」

笑い声を殺して、霞に呼び掛ける。

霞「何よ」

提督「お前、部下を見捨てるような上官が欲しいのか?」

霞は一瞬呆気に取られると、服に百足が入り込んだような顔になる。

霞「はあっ!? 何をどうしたら、そう受け取れるのよ!?」

提督「そうか、違うのか」

霞「当り前でしょ! 何考えてんのよ!?」

提督「悪いな、お前が何を言いたいのかさっぱりわからないんだ。私はお前たちの命を預かる身として、大事な部下を保護しているだけに過ぎない」

夕立の頭を優しく撫でる。

提督「明石が医務室に居ない以上、万一何か遭った時のために傍に置いておくのが最善だろう……そう考えたんだが、なにがいけないんだろうな」

霞から夕立に目線を移す。擽ったそうにする夕立の顔が見える。

提督「霞、そのあたり、私にご教授願えないか?」

言葉だけを霞に送る。

霞「用があるなら、目を、見て、言いなさいよ」

提督「目を見て話して貰える立場だと思っているのか、お前は」

野外とは思えないほど、営庭が静かになった。

霞「人としての、当り前の礼儀を言っているのよ、あたしは」

提督「人に恐喝まがいの怒号を飛ばし、暴言とも取れる言葉を吐く娘に、礼儀を問われているのか、私は?」

勘違いを装い、正論を理不尽で返し、揚げ足を取る。

霞、もうお前とまともに話をするつもりは、ない。

霞「なによ、つまらないことに意地張って、恥ずかしくないの?」

提督「礼儀や部下への配慮を『つまらない』扱いか、酷いもんだな。お前がそういう奴だとは思わなかったよ、霞」

霞に視線を向ける。

霞は顔をしかめ、私を鋭く睨んでいる。

霞「なによその言い方、もしかしてこの程度のことで逆ギレしてるわけ?」

提督「お前は私が怒っているように見えるのか。存外怖がりなんだな、霞」

霞「……」

提督(おや?)

霞が、初めて黙った。

もしかして図星だったか? いや、霞に限ってそれはないか。

だとしても、これは好都合だ。こんな下らん押し問答はさっさと終わらせよう。


提督「さて」

娘たち全員に聞こえるように、声を上げる。

提督「お前たちも言いたいことは色々あるのだろうが、私は私なりに判断してこういう行動をしている」

全員の視線が私に集まる。

提督「意見があるなら、後ほど個別に受けよう」

寒気は既に無くなっている。

提督「もちろん、二人きりでな」

愛宕から殺気が飛んできた。

朝礼台が愛宕の殺意で軋む。

すまん愛宕、ちゃんと埋め合わせするから、その殺気を抑えてくれ。間にいる摩耶と榛名がとばっちり喰らって痛そうな顔してるぞ。

霞「……」

霞が口を開こうとする。

提督「霞」

霞「何よ」

提督「悪いがもう時間だ……摩耶、始めろ」

摩耶「あ? ああ」

摩耶が、今目が覚めたかのように反応し、号令を掛ける。

朝の点呼が始まる。


娘たちが営庭からいなくなり、一息つく。

夕立「ていとくさん、おさんぽ、おさんぽ」

しかし一息つくや否や、夕立が左腕の裾を引っ張りながら、私を急かし始めた。

私は夕立に体の正面を向ける。

私は左腕を上に動かして、夕立から腕を離す。

それと共に夕立は腕から手を離し、私の左半身に寄りかかる。

左手で夕立の頭を撫で始める。

耳の部分をくすぐってやると、夕立は眼を瞑り、身体全体から力が抜け、私の手の感触を味わう。

愛宕「提督、先程のはどういうことですか」

肌を差すような空気を放つ愛宕が、腕一本分の距離まで近づいてきた。

目尻が釣り上がり、顔が怒りを表現している。

私の後ろに付いた金剛が、異な気配を携える。

榛名と摩耶は、二歩ほど離れた場所から遠巻きに見ている。

提督「先程というと?」

愛宕「惚けないで」

愛宕が半歩詰め寄る。

詰め寄った瞬間、愛宕の腰に右手を回し抱き寄せる。

眼前に驚いた愛宕の顔が現れる。

胸板に張りのある二つの膨らみが触れ、腹部の柔らかな……

……愛宕、お前、太ったか?

提督「すまない愛宕、先程のはああするしかなかったんだ」

愛宕の目を真直ぐに見る。

すると愛宕は頬を染めて、丸めた右手で唇を隠しながら、目を細めて顔を反らす。なんだその反応は。

……私の口が臭いとかじゃないよな? 歯磨きはしてきたし。

提督「お前とのことを蔑にしたわけではないんだ」

そう言って愛宕を見つめていると、愛宕は顔を反らしたまま、私に目線を送る。

提督「ちゃんと、埋め合わせはするから」

しばらくそうやって見つめていると、愛宕が再び目線を反らす。

愛宕「こんなことじゃ、誤魔化されないんだから……」

提督「そんなことはしない」

そう言って愛宕の言葉を否定すると、愛宕は顔を私に向け、胸元の服を掴み、顎を引いて上目遣いに見てくる。

豊満な二つの膨らみが、私と愛宕の間に挟まれる。

またブラジャーを着けてないのか、こいつは。

愛宕「ほんとですか?」

提督「本当だ」

愛宕「なら、今ここで、証明して貰えますね?」

提督「証明?」

愛宕「こういうことよ」

そう言うと、愛宕は顔を挙げ、瞼を閉じ、唇を軽く窄める。


それを見て、一旦榛名に目線を送る。

榛名「……」

榛名は何も言わず、ただ此方を見ている。

能面を張り付けたような顔で、ただ此方を。

提督(すまん、榛名)

愛宕に口づけを交わす。

交わした直後、夕立が服に噛みつき、引き摺り降ろすように服を掻き毟ってきた。

夕立を宥めるために、左手を夕立の耳の部分から左頬に移動させる。

左手親指の根元、第1中手骨部に硬い痛み。

夕立の歯が、喰い込む。

夕立からの痛みに耐えながら、愛宕と唇を押しつけ合う。

愛宕が私の唇を押しのけ、舌を入れてきた。

愛宕の舌が、私の閉じた歯の表面をなぞり、品定めをするかのように歯茎一本一本を舐め取っていく。

前歯から犬歯、小臼歯から大臼歯、そして親知らずまで、一本も残さず。

右上の歯を舐め終わると、愛宕は一度唇を離す。

愛宕は口を開き、舌を突き出し、犬のように息継ぎをする。

私の上唇から糸が引き、愛宕の舌の先に繋がる。

再び唇を交わす。次は左上。また同様に。

上が終われば、次は下。

愛宕の舌乳頭が私の歯のエナメル質に粘りつくように這う。

愛宕の舌尖が私の歯肉を味見するかのように蹂躙していく。

五度目の口付けで、愛宕の舌が上歯と下歯の隙間を抉じ開けようとする。

歯を少し開いて招き入れる。

愛宕の舌が、蛇の如く私の舌に絡みつく。

ヌルヌルとした硬いゼラチンの塊が、生温かい蜜を纏いながら、口内で融け合う。

愛宕の執拗な舌を、舌先で押し返す。

舌の粘膜と粘膜が舌の表面で乱れながら交り合い、互いの粘液が混ざり合う。

押しては交わり、粘りついては離れ、口と口が一つなったような錯覚。

ぷはぁ、という呼吸音と共に、互いの唇が離れる。

粘液の混合物が、互いの唇の間に残滓を煌めかす。

愛宕がその残滓を啜る。

愛宕は眼を瞑り、口の中で残滓を味わうと、私の鎖骨部に顔を寄せる。

寄せた瞬間、驚愕の顔で私から顔を離した。

私の鎖骨部をじっと見つめる。

提督「愛宕?」

愛宕「ねえ、提督」

愛宕が顔を挙げる。

愛宕「あなたから、雌の匂いがするわ」

濁った瞳が、私を捕捉した。


提督「お前たちと過ごしているんだ。女性の匂いぐらい一人やふ「違うわ」

愛宕「女の匂いじゃないわ。雌の臭いよ」

愛宕は鼻を、私の鎖骨部から首筋へとひくつかせながら移動させる。

愛宕「こびり付いてる」

愛宕は私の襟のフックと第一ボタンを外し、胸元に鼻を当てる。

愛宕「濃さからいって、朝食前ね。それに潮の香りもする。外でヤッたのかしら……ああ、臭い臭い」

朝食前、外、シャワーを浴びた時間、なおかつ、ヤッた娘。

愛宕「私の提督にこんな臭いをつけるなんて、一体どこの雌豚かしら。ねえ、提督」

妙高だな。

提督「気のせいだ」

朝食後にシャワーを浴びなかったのは失策だったか。

服も着替えて、消臭剤まで使ったのにこの様か。

提督「そもそも毎日お前たちと触れ合っているんだ。どんな匂いがついたって不思議じゃあない」

愛宕の腰に回した手を離す。

夕立も既に左手から牙を離して、こちらを睨みつけている。

愛宕は胸元から鼻を離すと、顔を動かさず、濁った眼球をグルンッと動かし、私を視界に捉える。

愛宕「飽くまで知らないふりをするのね」

提督「振りも何も、身に覚えがないんだから当然だろう」

正直に話して私にだけ被害が行くのならばまだしも、妙高になにかあってはいけない。

愛宕「白々しい……」

しばらく愛宕と睨み合いになる。


突如、左襟を掴まれ、体が少し前のめりになる。

耳全体に、濡れた生温かい感触。

摩耶が私の左耳をしゃぶっていた。

摩耶が口を耳から離す。

摩耶「提督、体温が高くなってるぜ。それに……」

再び襟を引っ張られ、今度は頸動脈を舌全体でじっとりと舐められる。

摩耶「脈拍が速くなってるな。おまけにこの汗の塩気……」

鼻先寸前まで、口を歪めた摩耶の顔が近づく。

摩耶「この味は……嘘をついてる味だぜ、提督」

なんでわかるんだよ。

愛宕「へえ……やっぱり嘘を吐いているのね、提督」

愛宕が目を見開いて私を覗き込む。

まるで心の奥底まで見透かされているような気分だ。

榛名「そういえば」

左後ろから榛名の声。いつの間に移動したんだ。

榛名「瞬きの回数が増えておりますね、提督。2秒に一回ほどでしょうか」

榛名が私の左肩に手を載せる。

榛名「呼吸は2.7秒に一回……提督の平均の呼吸数は3.3秒に一回ですから、少々増えておりますね」

榛名の左手が、私の左横腹から左腰をなぞる。

榛名「そういえば、本日は腰部がお疲れのようでしたね」

榛名が私の体に身を寄せたのか、背中に柔らかい感触。

榛名「昨晩の睡眠時間を考えますと、いささか疲労が大きいように思われます」

榛名の左手が腰から左足の太ももをなぞる。

榛名「歩幅のほうも、4 cm狭まっておりましたし、今朝、何かしていらっしゃったのではないですか?」

榛名の息が、首の左後ろに掛かる。

榛名「提督」



榛名「誰と、ナニを、しておられたのですか?」


・本日は ここまで

・矛盾点が 多い orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「もう一度言うが、気のせいだ」

溜息をつく。

提督「さっきから匂いだの、汗だの、歩幅だの……只のこじつけだろう」

愛宕と摩耶に睨み返す。

提督「お前らの戯言には付き合えん。さっさと執務室に戻「妙高さん」

左腕から、声。

夕立「妙高さんの臭い、提督さんに混ざってるっぽい」

逃がさないと言わんばかりに、睨みつけられる。

夕立「さっき嗅いだからわかるっぽい」

廊下でのことか。

夕立「だから、夕立、提督さんに一杯いっぱいイっぱいイッぱいイッパいイッパイ匂い付けしたっぽい」

夕立「でも、全然消えない」

真っ赤な双眸からの、焦げ付くような視線。

夕立「この臭い、嫌い」

愛宕「そう……妙高さんと」

愛宕が値踏みするように目を細める。

愛宕「ああ……『後日』ってそういう……へえ」

榛名「提督」

冷たい声。

榛名「以前、榛名は提督にこう申し上げました」

榛名「『女性に会う時に、他の女性の匂いが付いているのはマナー違反です』と」

榛名の右手が、私の右肩に乗る。

榛名「ですが、私たちと過ごす以上は仕方ありません。だから、こうも申し上げました」

榛名「『せめて、雌の臭いは洗い流して欲しいです』と」

榛名の左手が、私の左肩に乗る。

榛名「そのとき、提督から『わかった』とお答え頂けました」

榛名の右手が、私の右首筋を覆う。

榛名「榛名は『きれい』な提督が好きです」

榛名の左手が、私の左首筋を覆う。

榛名「ですが、提督は今、とても、とてもとてもとてもとてもとてもとてもとても とても」

榛名の両手が、私の首を覆う。

榛名「とても『汚い』です」

少しでも力が入れば、首を絞められるように、覆う。

榛名「『キレイ』ナ テイトク ハ ドコ?」



これは、あれだな。詰みというやつだ。

漣ならこう言うだろう。

「おおごじゅじんさま、しんでしまうとはなさけない」と。

・本日は ここまで

・テンポを もっと よくしたい orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


提督「すまん」

これ以上は何も言えなかった。

言えば言うだけ、墓穴を掘るだけだ。

榛名「……どうしてですか」

少しだけ、首の手が緩む。

榛名「いつもの提督なら、決して榛名たちを裏切ることはしないのに」

一度はお前たちの元を去った者に、それを言うのか、榛名。

榛名「どうして」

しばし、沈黙。

鳥の鳴き声。

目線を空に向ける。

そういえば、今日は晴だったな。

金剛「これ、榛名があげたものネ」

右後ろから、金剛の声。

うなじに息が掛かる。

榛名「……本当です」

榛名の手が首元に下がる。

榛名「榛名が差し上げた物を、使っていただけたのですか?」

詰みから一転、逃げの一手。

自己保身。

吐き気がする。

提督「榛名がくれたものなら大丈夫だと、そう思ってな」

実際は、着替えていたときに、足柄が渡してきたものを使っただけなのだが。

今、それを言うのは得策ではない。

嘘つきめ。

提督「すまない、本当ならば洗い流すべきだったのだが、時間が無くてな」

こうは言うが、匂いも、時間も、妙高との交接がなければ問題にはならなかったことだ。

更に元を辿るなら、私が一人で散策に出ようとしたことに起因する。

陽炎、那智、羽黒、皆を不安にさせてばかりだ。馬鹿者め。

自分の行為に後悔していると、すすり泣く声が聞こえた。


榛名「ごめんなさい、ごめんなさい」

悲痛な声。

逃げの一手は成功。

何が成功だ。大事な娘を泣かせておいて。

榛名「榛名が、榛名が粗末なものをお渡ししたばかりに……」

後ろを見ると、榛名が顔を露で濡らしていた。

榛名「提督は、榛名たちに気を遣ってくださったのに」

榛名は両手で涙を拭う。

榛名「榛名は、提督を、疑うような、ことを」

金剛「榛名……」

すすり泣く榛名を金剛が寄り添う。

愛宕「妙高さんとは、本当に、したのですね」

棘が取れた声。

顔を愛宕に向ける。

提督「ああ」

愛宕「それならそうと、言ってくれればいいのに」

裾を弄りながら、冷めた珈琲のような視線を向けられる。

愛宕「別に提督が誰を抱こうが構いません。でも、臭いを残したままなのはエチケットに反します」

抱くのは良いのか。

いや、それが秘書艦の特権だからか。

その特権を否定することは、今の愛宕にはできないだろう。

提督「臭いは消したつもりだったんだがな」

逃げの一手を、さらに進める。


愛宕の後ろ髪に触れ、指先で弄る。

触れられるのは好きだろう? 愛宕。

提督「そもそも、どうしてそこまで匂いを気にするんだ」

匂いについて、少し踏み込む。

要因がわかれば、後々対策もしやすいというものだ。

触れている間は、愛宕は暴力を振ってこないしな。

摩耶が、愛宕と同様の視線を送ってくる。

愛宕の視線が更に冷める。

愛宕「臭いっていうのは『なわばり』なんです」

まるで獣だな。

愛宕「だから、臭いを受け入れることは『なわばり』を認めること……ここまで言えばわかりますよね」

私は誰のものでもない。

匂い程度で誰かのものになるなど、ありえない。

そんな当たり前のことですら、お前たちにとっては不安の種なのか。

提督「善処する」

愛宕「善処では困ります」

鋭く、強い言葉。

鋭く、強い視線。

提督「約束する」

愛宕「絶対に、ですよ」

その強さは、不安と恐怖の裏返しに見える。

優しく、あやすように髪を撫でてやる。


提督「榛名、もう泣くな」

後ろを振り向く。

罪悪感に苛まれる榛名に優しく声をかける。

榛名は、まだ泣いている。

榛名「ですけど、榛名は……榛名は」

提督「元はと言えば、私が中途半端なことをしたのがいけなかったんだ」

罪悪感の共有。

敢えて責めずに、非を詫びる。

提督「だから、もう泣かないでくれ」

優しく甘く。

提督「それに、お前がくれたもの、良いものだぞ」

堕として、上げる。

いや、上げてさえいない。

今の言葉を言い換えれば「もっと良いものをくれれば、こうはならなかった」と責めているようなものだ。

罪悪感を深めるだけ。

だからこそ、榛名には効く。

最低だな。

榛名「ありがとう、ございます」

榛名は嗚咽に耐えて、答える。

提督「部屋に戻ったら、すぐにシャワーで洗い流す」

全員に、宣言する。

提督「もう少し、待っていてくれ」

反論はなかった。

































夕立「……臭い」




・本日は ここまで

・今回だけ 心理描写を 少し深めに したつもり

・エディタが 壊れてた orz

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


榛名を金剛と共に慰めながら、夕立と愛宕に腕を引かれて本館へ戻る。

道中、摩耶から小言が何度も飛ぶが、適当にはぐらかしたりしながら、しばらく歩く。



摩耶「だから、何度も言うけどよ。体を洗うぐらいならそんなに時間は掛からねえだろ」

何度目かわからない摩耶の小言。

大体言っていることは同じで、要約すると「体を洗い忘れたのは提督の怠慢、しっかりしろ」だ。

提督「わかったわかった、今度から体を洗ってから出てくるから、その話はもう良いだろう」

投げやりに返答する。

摩耶「ぜってーわかってねーし」

拗ねた顔をする摩耶が一睨みする。

愛宕「まあまあ、いいじゃない。次は忘れないって約束したわけだし」

私の右腕に抱きついている愛宕が、朗らかな表情で摩耶を宥める。

愛宕「それに私、寝取られって嫌いじゃないわよ?」

先ほど営庭であれだけ殺気を出しておきながらこの発言である。

摩耶「寝取られって……」

摩耶もさすがにあきれた表情をする。

愛宕は私の腕を抱き寄せ、左手の指を私の手に絡ませる。

柔らかな微笑みを湛えながら、含みのある目線を摩耶に向ける。

愛宕「だって奪い返す楽しみがあるでしょ?」

摩耶「それは姉貴だけだ」

やだ、この娘怖い。



そうこうしているうちに本館へ戻ってきた。

玄関をくぐり、まず執務室へ向かう。

補佐は執務室に常在し、事務手続きや資料整理などの業務を遂行することになっている。

そのため、摩耶は執務室に居てもらわなければいけない。

執務室がある階まで上り、廊下を渡っていく。



執務室の前に、人影。

「遅かったわね」

提督「まあな」

そりゃ危うく殺され掛けたからな。

足柄から渡された消臭剤を使っていなければ、どうなっていたことやら。

提督「それよりどうした、加賀」


加賀は私に引っ付いている愛宕に一瞥をくれた後、夕立に視線を向ける。

夕立を視界に映すと、路傍の石でも見るかのような目つきになる。

数秒、夕立に視線を向けた後、私に目線を戻す。

加賀「両手に花、と言ったところかしら」

無表情な顔からの抑揚のない声。

不知火と似て、感情が読みにくい。

提督「皮肉か?」

加賀「さあ、どうかしら?」

煙に巻かれる。

金剛「加賀ァ~、用がないなら自分の仕事に戻るネ」

金剛が加賀の傍まで近づくと、腰を曲げて下から覗き込む。

金剛「I was wondering if you could do your job」

加賀「書類を一枚、お願いしたいのだけれど」

金剛を無視して、加賀は書類が入ったクリアファイルを掲げる。

計画書か?

だとすれば、補佐の承認が取れれば実施可能になる。

提督「わかった。署名は部屋で行おう、今鍵を開ける」

出ていくときに執務室の鍵を閉めていったので、ポケットから鍵を取り出さなければいけない。

加賀「鍵なら開いていたわよ?」

提督「なに?」

執務室の扉を見る。

提督「お前が開けたのか?」

確かに加賀も鍵は持っているが、補佐か代理でないときは、原則、執務室への出入りは禁じている。

書類の紛失など、万一のことも考えてのことだ。

加賀「私ではないわね」

提督「中は?」

加賀「音で三人いることは確認したわ。ただ、ノックしても返答がなかったので、入らなかったけど」

放置せずに対応して欲しかったのだが、それは後で聞こう。

提督「金剛」

加賀の言葉を聞き、金剛に警戒態勢を取らせる。

大仰かもしれないが、相手がわからない以上、これが最善だろう。

金剛は背を壁に付け、扉をノックする。

反応なし。

金剛がドアノブに手を掛け、私に視線を送る。

ゴーサインを送る。



強烈な殴打音とともに、金剛が部屋に突入する。

金剛は即座に艤装を展開、侵入者三名に砲口を向ける。

「きゃっ!」

「えっ!? なに、なんです!?」

「ん~?」

三名全員の動きが止まったところで、部屋に入る。

提督「……なにやっているんだ、大鯨」

部屋の窓際、私の執務机のあったところに、ビニールシートが敷かれ、その上に脚立が置かれている。

脚立の上では、明石が天井に突き刺さった机の脚を掴んでおり、その脚立を北上が倒れないよう支えている。

そしてその傍に大鯨が見守るように佇んでいた。

三人とも、いや、北上を除いて二人、明石と大鯨が驚愕の表情を顔に浮かべていた。

加賀「随分大げさな入室ね」

加賀が寸劇を批評するかのような台詞を吐く。無論、無表情で。

加賀、お前、わかっていたな。

・本日は ここまで

・感想 要望 改善 矛盾点等 あれば どうぞ


提督「加賀、中の様子がわかっていたなら、言ってくれ」

金剛が艤装を収める間、横にいる加賀に顔を向け、苦言を呈する。

加賀「明石さんの声が聞こえたから、あなたが何か指示をしたのかと思ったので」

加賀も、身体を正面に向けたまま、顔を私に向ける。

加賀「それに、私がいたら邪魔になるわ」

確かに、室内に明石がいるとわかれば、何か修理していると考えるだろうし、明石の仕事に加賀が手伝えることはない。

明石が勝手に執務室に入るとは考えづらいから、私が指示したものだと考えるのが普通か。

ノックをしても反応がなかったという事実も、室内が忙しなかったという判断をする材料になってしまったのだろう。

加賀は日頃の態度に反して繊細な部分があるから、今回はそれが裏目に出たということか。

加賀の眼を見ながら、そう勝手に結論付ける。

提督「そうか、すまない。もう少し話を聞くべきだったな」

加賀は私の顔を静かにみつめると、

加賀「いえ」

と染み入るような声音で答え、顔を正面に戻す。

よくよく考えれば、加賀が不審者を放置するわけがないのだ。

加賀から情報を十分に引き出さず、先走った私の落ち度だな。

大鯨「提督、これは一体何事ですか?」

声がした方に振り向くと、怒り顔の大鯨が、腕を組んで構えていた。

提督「すまん、不審者と勘違いした」

大鯨の眉間にさらに皺がよる。

大鯨「そんなことで砲を向けられたら、修復材がいくつあっても足りませんよ」

提督「悪かったよ。だが、なんの断りもなく部屋に入ったお前たちもお前たちだぞ」

大鯨が顔をキョトンとさせる。

大鯨「あれぇ? わたし、妙高さんから『天井を見てほしい』って言われてここに来たんですが、提督が伝言を頼んだんじゃないんですか?」

提督「……そういうことか」

引き継ぎ時に私が言った「明石に頼む」というのを、妙高が代わりに実行したといったところか。

大鯨はマスターキーを持っているから、明石と北上を部屋に入れるには大鯨に鍵を開けてもらわなければいけない。

しかし、変だな。妙高も鍵は持っているから、直接明石に頼めばよかったのに。なぜ大鯨に頼んだんだ?

大鯨「提督、一人で勝手に納得されても困るんですが」

大鯨が、再び眉間に皺を寄せる。

提督「ああ、いや、私と妙高とで思い違いがあったようでな。ところで妙高は? 一緒に立ち会ってないのか?」

部屋を見渡すが、妙高の姿は見えない。

大鯨「妙高さんは本日非番ですから、お休みしていただいていますよ」

それで代わりに大鯨が立ち会った、ということか。

提督「そうか、朝から悪いな」

大鯨「構いませんよ、もう慣れましたから。次から注意してくださいね?」

提督「ああ」

私と大鯨の話に一区切りついたのを見て、北上は視線を天井に戻す。


大鯨「ところで、提督、先ほどのダイナミック入室は提督のヘマということで納得しましたが、もう一つ聞いてもいいですか?」

提督「どうした」

大鯨「これ、何があったんですか?」

大鯨は未だに天井に突き刺さっている机を指差す。どう説明したものか。

愛宕が癇癪を起こして、机を蹴り上げたと正直に言うべきか?

天井に突き刺さった机を見上げる。

机が刺さっている穴の周囲には粘着テープが貼られ、机を抜いたときにほかの天井板が剥がれないように養生されている。

机から少し下に視線を移動する。

明石は先ほどまで掴んでいた机の脚から手を放し、ただ私たちを見ている。

感情なく私たちを見ている。

まるで録画中のビデオカメラのように、微動だにしない。

その明石を北上は不思議そうに見ていた。

提督「私もよくわからん」

明石から視線を逸らし、大鯨に返答する。

大鯨「はぁ」

大鯨は不思議そうな顔で首を傾げる。

大鯨は榛名、金剛、摩耶と視線を移し、愛宕に一瞥をくれた後、私に視線を戻す。

大鯨「じゃあ、これも提督のヘマということで」

提督「そうしてくれ」

腑に落ちないが、そうした方が処理も楽か。

大鯨「それと」

言葉を綴りながら、大鯨は夕立に視線を移す。

大鯨「今日って夕立ちゃん、秘書艦でしたっけ?」

提督「いや、違うが。妙高から聞いてないか?」

大鯨「特に何も」

提督「そうか」

そうなると、この三人は朝の点呼には参加してないから、事情を知らないことになるか

提督「夕立が体調を崩したようなんでな、預かっていたんだ」

明石の視線がきついものになる。

大鯨「体調が、ですか? 熱があるんですか?」

大鯨は夕立の傍まで寄ると、右手を夕立の額に当てようと伸ばす。

夕立「やっ!」

夕立は頭を振って、大鯨の手を拒む。

大鯨が驚いた顔をして、伸ばした手を引っ込める。

提督「夕立」

語気を強めて諌めると、夕立は私の左手を強く掴む。


大鯨に視線を移すと、困り顔が見えた。

提督「すまん、さっきからこんな調子でな」

大鯨「それはいいですけど、どの辺が悪いとかは……」

提督「熱はない。歩くときにふらつくぐらいだ」

大鯨「重症じゃないですか。なんで明石さんを呼ばなかったんですか」

強い語気で問い詰められる。

提督「医務室に居なかったものでな」

大鯨「それなら、わたしに電話一本くれればよかったのに。そのための寮監室なんですから」

提督「……すまん、そこまで思い至らなかった」

大鯨が溜息をつく。

大鯨「わかりました。取り敢えず仮眠室で休ませましょう」

提督「いや、それなんだが」

明石「北上さん、机をお願いします」

北上「えっ、え~、できっかなぁ」

明石が脚立から降り、北上が代わりに昇る。

明石「提督、お手数お掛けしました。あとは私にお任せください」

明石は夕立に近づき、右腕を伸ばす。

派手な音を立てて、夕立が明石の腕を払い落とした。

明石「……なんだ、元気そうじゃないですか」

右手を左手でさすりながら、腹まで冷え込みそうな声が部屋に響く。

明石「それだけ元気なら、提督のお世話になる必要はもうありませんよね?」

明石の、夕立を見るその視線は、靴の裏についたガムを見るのと同様の視線だった。

脚立に昇った北上が、机の脚を掴む。

夕立「おさんぽするの」

明石「はぁ?」

夕立の呟きに、明石が唾を吐くような声を上げる。

夕立「提督さんと、おさんぽ、するの」

夕立が私の腕に顔をこすりつける。

明石が、見下すような目つきになる。

明石「提督も大変ですね、こんなものに貴重な時間を割かなければいけないんですから」

夕立が顔をゆっくりと明石に向ける。

明石「お散歩に逝きたいなら、私がいってあげますよ。ついでにその手癖の悪さも修理しておきましょうか」

夕立「油臭い女が何か言っているっぽい」

夕立の視線に湿り気が混じる。

夕立「夕立のお散歩は激しいから、そんなに油臭いと引火しちゃうっぽい?」

明石の眼が見開き、口が嗤うように歪んだ。

北上が「う~ん」と唸る。

うまく抜けないのだろう、右へ左へ試行錯誤しながら机の脚を引っ張っている。

その度に、嫌な軋み音が鳴って耳の奥を揺さぶる。なるほど、これではノックの音も聞こえないだろう。


明石「その減らず口、ネジ留めすれば少しはマシになりますかね?」

夕立「ネジの足りない工作艦なんて、笑い話にもならないっぽい?」

明石「大丈夫ですよ」

明石の艤装が展開される。

明石「足りなければ、補充すればいいんですから」

艤装に設置されたクレーンが駆動音をあげる。

明石「ちょうどいいところに、目の前にいい素材があるじゃないですか、ねえ?」

ワイヤーが伸び、クレーン先端のフックが夕立に狙いを定める。

北上「よっ、と」

北上の掛け声とともに、ガコッと低く乾いた音が響き、ひしゃげた机が姿を現す。

明石と夕立を除き、全員の視線が机に集まる。

姿を現したスチール製の両袖机は、中心部分を境にへの字に曲がっており、天板部分は塗装が剥がれて傷だらけになっている。

もう使い物にはならないだろう。引出しの中身が無事だと良いが。

北上「明石、これよろしく~」

四本の脚の内、二本の脚を掴んで支えていた北上は、身体を捻り、空いている別の二本の脚を明石に向ける。

100 kg 近くある机を軽々持ち上げているあたり、艦娘の膂力はやはり人とは違うのだろう。

明石は、未だ夕立を睨んでいる。

北上「明石~」

提督「明石、呼んでるぞ」

明石「……わかってますよ」

明石は踵を返し、北上が降ろした机まで近づく。

そして空いている二本の脚を掴むと、ビニールシートの上に机をゆっくりと置いた。

加賀「買い替え、かしら」

誰に向けるでもなく、加賀が呟いた。

提督「だろうな」

机の買い替え、天井の修理、その他諸々の後始末。

大鯨「提督」

提督「なんだ」

掠れるような声。

大鯨「わたし、なぜか胃が痛くなってきたんですが」

提督「奇遇だな、私もだ」


北上「ん~……おおっ……ほぉ……あ~」

突き刺さった机によってできた穴から頭を突っ込み、天井裏を見ていた北上が感動するような、悩むような、よくわからない声を上げる。

提督「北上、天井の様子はどうだ?」

北上「んぉー?」

北上は穴の縁を掴んで身体を曲げ、頭を出して私の方を向く。

北上「あ、提督、おはよ~」

まずそこから始まるのか。

提督「ああ、おはよう。それで、様子はどうだ?」

北上「ん~、そうねぇ、結構やられちゃってるかな?」

提督「どれくらい掛かりそうだ?」

北上「んと、これの予備ってあるんだっけ?」

明石の方を向いて、部材の確認をする。

明石「見せてもらえますか?」

空かなくなった引出しとマイナスドライバーで格闘していた明石は、工具を床に置き、北上と交替して天井裏を確認する。

提督「明石、どうだ?」

天井裏を確認している明石に尋ねる。

明石「これだと部材を取り寄せる必要がありますね」

提督「そうか、部屋は使っていても大丈夫か?」

脚立から降りた明石は、再び天井を見上げる。

明石「すぐに何かあるわけではないのですが、お勧めはしませんね。しばらく部屋を替えていただいたほうがいいかと」

提督「部屋を替えるのはさすがにな……しばらくは大丈夫なのだろう?」

明石「そうですけど、万一崩落が起きたら危険ですし……」

加賀「私も、替えた方がいいと思うわ」

金剛「ワタシも、ここに提督を置くのは Not good だと思うネ」

明石の心配そうな顔に加え、加賀と金剛の援護射撃をくらう。

提督「しかしだな……」

急に部屋を替えたら他の娘が困るだろうし、貴重な資料を部屋の外に持ち出すと紛失の恐れもある。

他にも鎮守府内全施設への電話回線や本土とのホットラインなど、重要な通信回線もここに引いてあるのだ。

部屋を替えるとは簡単に言うが、現実的にはかなり大掛かりな作業になる。

北上「提督、ちょっといいー?」

提督「北上、悪いが後に……」

北上「妖精たちがさ、ここ、一時間あれば元通りにできるって言ってんだけど」

提督「なに?」

部屋にいた全員が一斉に北上の方を見る。


摩耶「一時間? 一週間とか一箇月の間違いじゃなくてか?」

聞き間違えじゃないかどうか、摩耶が北上に確認する。

私も、部材の取り寄せを含めるとそれぐらい時間が掛かると踏んでいたんだが。

北上「そだよ。あ、机も完璧に直すってさ」

摩耶「マジか」

北上「マジマジ」

摩耶に返答しながら、北上は明石の隣まで近づいてくる。

提督「本当か?」

明石が北上の右肩をじっと見つめる。

明石に合わせて北上の肩を目を凝らして見てみると、確かに蜃気楼のような二頭身の人影が見える。

漣の艤装に輸血してから一時期は見えていたのだが、改造を受けて以降はほぼ見えなくなってしまった。

おまけに、漣曰く「ご主人様がいると、なぜかみんな怯えちゃうんですよねー」と言われる始末。

見えていた時期も言葉で話すことはなかったものの、表情や仕草で意思疎通を図ったものだ。

可能であれば、昔のように、金平糖を美味しそうに頬張る彼女たちを見てみたいものだ。

明石「本当みたいですね」

提督「そうか」

明石「ただ、修復材をいくつか使用したいとのことですけど」

修復材か。

提督「摩耶、資材管理表を出してくれるか」

摩耶「えっと」

榛名「左の棚の真ん中の段のところですよ」

摩耶「これか」

摩耶が私の左隣りまで近づいてくる。

摩耶「ほれよ」

摩耶が私に手渡しする。

夕立「……」

愛宕「……」

だが残念だったな、今両腕が塞がっているんだ。いい加減離れてくれないか。

加賀「借りるわね」

加賀が代わりに摩耶から受け取り、私の前に管理表を広げる。

最新の年月日のページを開くと、燃料や弾薬などの備蓄量が数字として羅列している。

提督「加賀、金剛、どれくらい使えそうだ?」

金剛と加賀が前から表を覗く。

加賀「三つぐらいかしら」

金剛「そのぐらいですネー」

顔を上げ、北上に向く。

提督「だそうだが」

北上が右肩に視線を送る。

北上「十分だってさ」

提督「そうか」

スゴいね、妖精。


提督「部屋の修理は妖精に任せる。摩耶、立ち会ってやれ」

摩耶「りょーかい」

摩耶は妖精を預かるため、北上、明石と打ち合わせを行う。

提督「大鯨、待たせてすまなかったな。後は摩耶と妖精に任せるから、お前は戻っていいぞ」

大鯨「わかりました」

提督「愛宕、ついでにお前も仕事に行け」

指導は寮監と共に、寮の環境や寮生の健康状態を確認する仕事がある。

寮監の大鯨が来ているので、一緒に寮に向かわせることにする。

愛宕「えー、もうちょっと後でもいいですよね?」

駄目に決まっているだろう。

提督「心配しなくも、約束は守る」

その言葉で、愛宕の視線が一時下がり、少し暗い表情になる。

視線が戻る。

愛宕「わかりました。私が戻ってくるまでに、ちゃんとニオイを取っておいてくださいね?」

提督「ああ、わかっている。一度部屋に戻るから、掃除はそれからにしておいてくれるか?」

愛宕はにこりと微笑む。

愛宕「はい。それじゃ、提督」

提督「ん?」

右頬に柔らかい感触と吸着音。それと加賀と金剛からの鋭い視線。

なんか引き継ぎの時もこんなことがあったな。

愛宕「ふふ♡ じゃ、行ってきます♡」

右腕から手を放した愛宕は、大鯨と共に部屋を出ていった。

加賀「すけこまし」

言うな。

提督「それより、加賀、お前も待たせてしまったな。今摩耶に……」

加賀「それだけど、あなたのサインも必要なものなの」

私の署名が必要なもの?

提督「内容は?」

加賀「計画書よ。ただ、実施日は今日だけど」

……緊急案件は先に言ってくれ。

金剛「Hey、加賀ァ、計画書の申請期限、何日前に出さなきゃいけないか、わかっていますカー?」

金剛が目を細め、唇を歪めて加賀に絡む。

加賀「知っているわ。でも、秘書艦一名と提督の承認があれば当日実施は可能なはずよ」

淡々と言いながら、書類を私に差し出す。

金剛「Humph!!」

その書類を金剛が横から奪い取る。

金剛「まったく、一体どんな Mission の……」

金剛が書類をまじまじと眺める。

最初は眉間に寄っていた皺が、段々と無くなっていく。

金剛「Wow! Congratulations! さすが加賀ネー!」

最後にはなぜか笑顔になった。一体どんな計画書なんだ。


金剛は秘書艦用の机にあるペンを取ると、書類に署名をしてしまった。

一応金剛も秘書艦なので問題はないが、こういった書類は通常補佐が署名するものなのだが。

金剛「Hey! あとはテートクのサインだけネー!」

榛名「提督、こちらを」

榛名がペンと私の印鑑を持ってくる。

机を見ると、引出しの前板が破壊されていた。おそらく、そこから出したのだろう。

提督「ああ、ありがとう、ソファーに置いておいてくれ」

榛名「はい」

金剛から書類を受け取り、応接用のソファーに夕立と共に座る。

加賀「すぐ実施できるようにしてあるから、サインだけでいいわ」

右隣に座った加賀から補足説明を受ける。

提督「そうか」

根回しは既に済んでいるということか。

とはいえ、書類には一応目を通しておかなければ。

まあ、加賀は仕事に私情を挟んだりしないから、実際署名だけで十分だとは思うが。

提督(ふむ)

書類を読む。

『_____内容:解体

_______理由:素行不良、協定違反、上官へのわいせつ行為、存在そのもの、その他雑多な事象の原因

_______以上の理由により、以下の艦艇を解体に処する。

_______対象:白露型 四番艦 駆逐艦 『夕立』

____________』

提督「……」

私情混ぜ混ぜじゃねーか。

・本日は ここまで

・書類は テキトーです

・ご都合主義ぇ

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


私が書類を睨みつけていると、加賀が声を掛けてきた。

加賀「どうしたの? 書類に不備はないはずだけど」

不備があるのはお前の頭だ。

提督「榛名」

榛名「どうぞ」

榛名が別の印を私に手渡す。まだ用を言ってないんだが。

提督「ありがとう」

榛名から否認用の印鑑を受け取り、書類の中心に押印する。

提督「ほれ」

押印した書類を加賀に手渡す。

加賀が手渡された書類を凝視していると、横から金剛が書類を覗く。

金剛「テートクゥ、Seal が間違っていませんカー?」

提督「くだらんものを出すなということだ。言っておくが、それは否認通知だからな」

感情のこもっていない加賀の瞳が私に向く。

提督「異議申立てがあるなら、もっとましな理由をつけて出すことだ」

加賀は再び書類に目を落とす。

加賀「そう」

まるで、否認されることがわかっていたかのような口ぶりだな。

提督「書類はそれだけか?」

加賀「ええ」

提督「なら、自分の仕事に戻ることだ」

加賀「あなたは?」

顔を上げて、私の予定を聞いてくる。

提督「用が出来たんでな、午前中は執務室には戻らないかもしれん」

夕立を一瞥して、そう答えた。

加賀「そう……わかったわ」

そう言ってソファーから腰を上げた際、ふと加賀へ用があるのを思い出した。

提督「あっ、と、加賀、すまん、少しいいか? 相談があるんだが」

加賀は腰を上げた中途半端な姿勢で立ち止まる。

加賀「何かしら? 仕事に戻りたいのだけど」

提督「あーと、休みについてなんだが……」

加賀「付添いのことかしら?」

提督「ああ」

付添いというのは、非番や休日の護衛のことだ。娘によっては呼び方がまちまちなので、加賀のように別の呼び方をする娘もいる。鈴谷は「でぇと」とか呼ぶし。

加賀は娘たちの勤務予定を管理しているため、予定の調整はまず彼女に聞くのが手っ取り早い。

加賀「誰とかしら?」

加賀が再びソファーに座り、護衛の相手を尋ねてくる。


提督「ああ、みょ……」

妙高、と言おうとした途端、背筋に悪寒が走った。

左手に触れている夕立の肌がひどく冷たく感じる。

加賀「みょ……?」

提督「いや、なんでもない。それより加賀、今度の補佐はいつだ」

加賀「来週だけれど?」

提督「そうか、相手についてはその時話す。一応、そういう話がある、とだけ知っておいてくれ」

加賀「別に今でもいいはずだけど……あなたがそう言うのなら」

腑に落ちない顔をしながら、加賀はそう答えた。

加賀「それだけかしら? 相談になっていないような気がするけど」

悪寒は、未だ消えない。何か別の話に逸らさないと。

提督「あー、いや、本題はここからでな。数日休みを貰って、本土に」



部屋が軋んだ。



鉄が歪に曲がるような音が聞こえる。

音源は六つ。左腕に一つ、対面のソファーに一つ、眼前から二つ、執務椅子の近くに二つ。

口が、重圧で、動かない。


加賀「本土に、なに?」

眼前にいる、青いたすきをかけた娘が、瞳を灼熱色に輝かせながら、凍えるような声を発した。

加賀「よく、聞こえなかったわ。もう一度、言ってもらえるかしら?」

提督「……」

口をやっとの思いで動かしたが、今度は声が出ない。


榛名「提督」

対面のソファーにいた榛名が、私の後ろに移動し、声を掛ける。

榛名「どうやら、提督はお疲れのようですね。少しお休みになられてはいかがですか?」

榛名が両手で優しく肩を掴む。

掴んだ手が、ひどく冷たい。

榛名「榛名がお世話をいたしますので、どうぞ、仮眠室へ」

提督「がっ……!」

瞬間、肩が潰れそうなほどの力が入り、痛みで呻き声が出る。

金剛「榛名、力を入れすぎネー。提督が痛がっているヨー」

榛名「あっ」

加賀の後ろにいた金剛が榛名に忠告をする。

それに呼応して、肩に掛かっていた力が消え、腰がソファーに沈む。

榛名「て、提督! 申し訳ありません! お怪我は……」

提督「き、ずを……」

やっとのことで言葉を発する。まず、三文字分だけ。

私に視線が集まる。

提督「傷を、なおし、たいん、だ」

加賀「傷? どこの?」

提督「銃創、をだ」

部屋が軋む音が、さらにうるさくなった。

夕立「なんで?」

左腕に指が食い込む。

夕立「なんで、それ、消しちゃうの?」

悲痛な声が耳に響く。

夕立「提督さんが、守ってくれた証なのに、なんで?」





提督「お前たちが……悲しい顔を、するから、だ」





重圧が、消えた。


部屋が、静かだ。

左腕の冷たい感触がなくなっている。

加賀「ここでは、治せないの?」

ひどく落ち着いた声が向けられる。

肺にゆっくりと酸素を取り込み、言葉を発する準備をする。

提督「ここだと、色々足りない」

執務椅子近くにいた明石が、悲しそうな笑顔を浮かべる。

明石はどちらかというと軍医というより看護兵に近い。

施術ができないわけではないが、人間の治療となると本土の専門医には劣る。

加賀は目線を下げて、熟考する。

夕立「やだ」

夕立が腕を離し、体を強く抱きしめてくる。

夕立「提督さん、いっちゃ、やだ」

肩を抱き寄せて、耳の上の髪を梳いてやる。

加賀に目線を戻す。

加賀の黒い瞳には強い光が宿っている。

加賀「悪いけど、駄目よ。あなたをここから出すわけにはいかないわ」

危険なほど、強い光が宿っている。

加賀「『あんなところ』に、あなたをまた行かせるわけにはいかないの」

金剛も。

榛名も。

摩耶も。

明石も。

夕立も。

『知らない』北上を除き、全員が同じ光を宿している。



























提督「……わかったよ」

そう答えるしかなかった。


その後、加賀は「くれぐれも余計なことをしないように」と釘を刺して自分の仕事に戻っていった。

摩耶、明石、北上も打ち合わせに戻る。

自業自得とはいえ、猛獣に囲まれるような空気がなくなり、思わず溜息が漏れる。

榛名「提督、お疲れのようでしたら、少し休んでいかれてはいかがですか?」

と思ったら猛獣の一匹、ではなく榛名が私の右隣に座り、身体を摺り寄せてくる。

右腕に絡まり、胸に実るたわわな果実が「収穫期を迎えたぞ、もげよ」と言わんばかりにその存在を主張してくる。

榛名は顔を寄せ、目を瞑り、私の首回りでくんくんと鼻を可愛らしく動かす。

榛名「においも強くなっておりますね、悪い汗が出てしまっているようです」

榛名は私の右手を掴み、左の太ももに手を招く。

太ももからスカートの内部に連れて行かれると、太ももと鼠蹊部の境がしっとりと湿っているのが感じられた。

榛名「この後シャワーを浴びるのでしたら、良い汗を流してからではいかがでしょうか? は、榛名は、すでに準備、が……」

突然言い淀んだ榛名は、右手で真っ赤になった顔を隠し、顔をそむける。

榛名「すいません……ちょっと待っていただけますか」

ここまでやっておいて、恥ずかしさで中断するとか、何がしたいんだこいつは。というか、なぜこの状況で実行した。

金剛がさっきから、ニコニコ笑顔だぞ。何も話さないのが怖いくらいのニコニコ笑顔だぞ。

夕立はどうしたかって? 悪夢を見そうなので振り向けません。左腕痛い。

明石「提督、お待たせいたしました」

右腕を速攻で引っ込める。

どうやら部屋と机の修理について、明石、北上、摩耶の打ち合わせが終わったらしい。

摩耶と明石が一瞬、養豚場の豚を見るような目をしていた気がするが、気のせいだろう……気のせいだろう。

提督「ああ、いつから始められそうだ?」

摩耶「今すぐにでも可能だってよ。修復材は妖精が持ってくるから、特にやることはねえな。立会いもあたしだけでいいみたいだ」

提督「そうか、了解した」


明石と北上に目配せする。

提督「明石、北上、朝から済まなかったな」

北上「ん~、別に、気にしてないし。それより、提督も大変だねぇ」

あの状況を気にしていない、か。前線を退いたとはいえ、豪胆さは衰えずか。それとも私が小心者なだけか。

前線で思い出したが、今でも転属前の鎮守府や最前線の部隊から、北上の復帰を待ち望む声があるとか聞いたな。

どんな活躍をしたか詳しく知らないで受け入れたから、今度気が向いたら調べてみるか。

明石「お役に立てれば幸いです。それより、提督」

明石の冷ややかな目線が夕立に移動する。

明石「それ、いい加減こちらでお預かりしますよ。ご迷惑でしょう?」

夕立「臭い」

夕立が言葉を吐き捨て、私の服を引っ張る。

夕立「提督さん、ここ、臭いっぽい。早く行こ?」

明石「さっきから臭い臭いって……鼻が壊れてんじゃないですか? なんだったら、役に立たないその鼻を今すぐ切り落としてあげますけど?」

夕立「あ~臭いっぽい、臭い臭い臭い臭い臭いくさ「 ゆ う だ ち 」

怒気を孕んだ声で夕立を呼ぶと、夕立と明石の身体がビクリと震えた。

夕立「あ」

青ざめた顔をした夕立を再び抱き寄せて、頭を撫でてやる。

提督「明石」

明石「あっ……は、はい」

目が覚めたような顔をする明石に声を掛ける。

提督「心配を掛けてすまないな。私は大丈夫だから、お前はもう下がりなさい」

明石「えっ、でも」

提督「おさんぽのお誘いをしたのは私の方なんだ。誤解をさせていたらすまなかったな。何かあったら呼ぶから、そのときは頼めるか? こういうのはお前だけが頼りだからな」

明石「はっ、はい、お任せください! それでは、失礼します!」

明石は、夕立に一瞬ニヤリと笑いかけた後、部屋から退出した。

北上「んじゃ、またね」

提督「ああ」

北上もあっけからんと退室する。

・本日は ここまで

・次から こちらからコメントがなければ 終了宣言は 控えます

・過去編がやばい タイトルだけ晒して誤魔化したい……

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


さて、部屋が直るまで、やれることはやっておこうか。

提督「摩耶、私は一旦部屋に戻る。身体を洗ったら一度顔を出すが、それまでここを頼むぞ」

摩耶「んなもん気にせず、あとはあたしに任せてさっさと行って来いよ。もたもたしてっとまた姉貴に蹴っ飛ばされっぞ」

提督「それは困るな」

摩耶は私の言葉に苦笑すると、秘書艦用の机に座り、そのまま書類業務に入った。

提督「行くか」

夕立「提督さん……」

弱々しい声が耳に届く。

声のした方に振り向くと、今にも泣きそうな顔が視界に入る。

提督「どうした、夕立」

夕立は私の顔を見ると唇を震わせる。

夕立「……ご……さ、い」

何か言葉を発しようとしているが、うまく声が出せていないのだろう、虫食いされた文字が口から零れるだけだった。

とはいえ、唇の動きと表情で大体のことは察することはできた。

左手で肩を抱き寄せたまま、右手で夕立の頬に手を添える。冷たい。

提督「大丈夫だ、夕立。怒っていないから」

「怒っていない」という言葉に、夕立が肩を震わせる。

夕立「あ……で、も」

提督「明石は怖かったな」

夕立の言葉を遮り、暖めるように頬を撫でる。

提督「私も驚いてしまったよ。普段はあんな冷たいことを言う奴ではないんだがな」

夕立に体を向け、胸元に顔を抱き寄せる。右手を後頭部に寄せて髪を撫で、左手を背中に回し、赤子をあやすように背中を優しく、ポンッ……ポンッ……、とたたく。

提督「あのまま夕立と明石が話を続けていたら、もっと酷いことになるんじゃないかと怖くてな。つい語気を荒げてしまった。だが、なんだかお前を叱ったようになってしまったな」

夕立は顔を上げると、潤んだ眼を向けてくる。

提督「夕立、怖がらせて、すまなかったな」

私がそう言うと、夕立は目を瞑って、嬉しそうに胸元に抱きついた。

夕立「ううん……よかった、っぽい」

そして、安心したかのように呟いた。


夕立の気持ちが落ち着くまでしばらく抱き合い、ソファーに腰を預けたまま時間を過ごす。

修復材がまだここに届いていないためか、妖精の作業はまだ始まっておらず、時計の針の音が部屋を支配する。

ついでに、金剛と榛名の不機嫌な視線も。あ、摩耶もだ。

そんな針が刺さるような視線の中、夕立が胸元で「えへへ」と笑みを零す。

提督「しかし、夕立。明石があんなことを言うからって、お前まで汚い言葉を言う必要はなかったんだぞ」

夕立は嬉しそうな表情を変えて顔を上げると、ムッと口を結ぶ。

夕立「明石さんに悪い油がついていたから、いい油を注いであげただけっぽい」

いい油でもっと燃え上がるってか。ハハハ、こやつめ。

金剛「テートクゥ、Shall we?」

提督「ん? ああ、そうだったな。夕立、行けるか?」

夕立「ぽい♪」

行けるな。

榛名「あの、提督、お休みになってからの方が」

夕立「提督さん、早く行くっぽい」

提督「わかっている」

榛名「あの」

夕立「提督さん、早くそのニオイとるっぽい」

提督「わかっているから、急かさないでくれ。榛名、すまないがまた後でな」

私に気を遣う榛名の言葉を遮り、夕立が急かしてくる。

榛名の気遣いは嬉しいが、愛宕のこともあるので急ごう。

榛名「……はい」

提督「摩耶、頼んだ」

私が声を掛けると、摩耶は椅子に座ったまま、犬を追い払うような仕草をして、私たちを急かした。その仕草はさすがにどうなんだ。

私室へ向かうため、執務室を出る。

榛名「……」






























榛名「榛名は大丈夫でス」



部屋に到着し、まず居間に金剛たちを案内する。

居間のテーブルには、朝食時に食堂から持ってきたお盆とバスケットが残っている。後で間宮さんに返却しなければ。

提督「体を洗ってくる。しばらくここで待っていてくれ」

金剛「テートク、ワタシも一緒に入るネ」

やはり金剛はそう言うか。

確かに護衛は四六時中私の傍にいることになっているが、裸になる場所などは範囲外という解釈だったはずだ。

仮にそういう場所で私と二人きりになるのであれば、福祉係の許可が必要になる。

提督「榛名、私は一人で入るからな」

榛名「……はい、榛名は大丈夫デス」

提督(よし)

金剛が榛名に聞く前に、榛名から言質を引き出しておく。

提督「金剛、そういうわけだからな」

金剛「ムゥ」

金剛は不満駄々漏れだったが、渋々同意した。抜け駆け防止の許可制がここで役に立つとは。

ここで愛宕や金剛が福祉係だと、ほぼ確実に一緒に浴室に入って一発犯ることになるからな。

仮に許可を無視して入って来ようものなら、その時はほかの娘からの『私刑』が待っている。

抜け駆けを許さず、皆で平等に『しあわせ』を享受する。まさしく『福祉』係というわけだ。

……その『しあわせ』が私なのはどうかと思うが、まあその辺は気にしないでおこう、うん。

夕立「提督さん」

提督「夕立も、いい子なら待てるな」

夕立の言葉を遮り、頭を撫でる。

夕立「……早く出てきてね」

提督「できる限り早くするさ」

夕立の頭を一頻り撫でた後、金剛たちを置いて浴室へ向かう。

今度こそ久々に一人で過ごせそうだ。



提督(はて?)

……何か大事なことを見落としている気がする。


ポンプに手を乗せたまま振り向くと、そこには産まれたままの肢体を晒す夕立の姿。

夕立は後ろから首元に手を回すと、顎を左肩に乗せ、身体を私の体に密着させた。

必然、背部に夕立の乳房が当たる。硬くなった乳首が背中にあたり、柔らかな乳房が私の背部と夕立の胸部の間に挟まれる。

首元を抱きしめる腕は、牛乳の寒天のような甘い柔らかさを肌に伝えてくる。

提督「夕立、何しに来た」

少しきつめの口調で尋ねる。

夕立「てーとく……さん♡」

私の質問に答えず、身体をこすりつけてくる。

離れてまだ数分しか経っていないのにもかかわらず、腹を空かせた獣のように口から荒い息継ぎが溢れている。

そして荒い息継ぎのまま、後ろから左耳の付け根を舌でなぞり、耳たぶにしゃぶりつく。

温かい軟体生物のような舌が耳たぶに絡み付き、時よりついばむように耳が唇に引っ張られる。

耳を蹂躙し尽くすと、唇を離し、左側頭部で鼻をひくつかせた。

夕立「提督さん、臭い」

においを嗅いだ瞬間、しかめ面になる。今から洗おうとしたんだよ。

提督「夕立、榛名はどうした」

もう一度尋ねる。

しかし夕立は私の言葉に反応せず、洗剤を乗せた左手に視線を注ぐ。

そして身体を移動させ、私の左手首を掴む。手首に力が掛かり、振りほどけない。

そのまま夕立の手に誘われて、私の左手が右の乳房に吸い込まれる。

夕立「あはっ♡」

眼が細くなり、歪んだ唇から嬉々とした声が漏れる。

左手で手首を掴まれ、右手で指を操られ、乳房を揉まされる。

育ち盛りな見た目に反し、厚みのある乳房が指で形を変え、練りこまれる。

手のひらをこする勃起した乳首も、洗剤が潤滑液となって悪戯するようにくすぐってくる。

洗剤を塗りたくったところで、今度は左の乳房に手を招く。

提督「夕立、やめろ」

右手で夕立を押し留める。しかし、私の制止を耳に留めず、夕立は一心不乱に胸を揉ませてくる。

幸せそうな夕立は、結局、洗剤が塗りたくられるまで、私の左手を離さなかった。

頭が痛くなりそうだ。


夕立「てーとくさんっ♡」

洗剤まみれになった夕立が正面から抱きついてきた。

ハッハッと息継ぎを荒くし、だらしなく開いた口から熱を帯びた舌が垂れる。

垂れた舌から、糸を引きながら滴が落ち、胸板で私の体に纏う水と混ざっていく。

提督「夕立、いい加減にしろ。違反行為だぞ」

そもそも金剛と榛名はどうした。まさか見逃したのか。

語気を荒げて咎めるが、言葉届かず。

私の肩に乗っている夕立の手に力が入る。上体が上がり、夕立の顔が私に近づく。

夕立の舌が私の左頬に触れ、じっとりと縦になぞっていく。


夕立「夕立は、スポンジっぽい」

提督「はっ?」


正面に顔を移した夕立が、胸と股を擦り付けながら口を開いた。

その内容に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

夕立「夕立は、てーとくさんの体を洗うスポンジなの♡ だから、まったく問題ないっぽい♡」

そんな阿呆な理屈あるか。

提督「いや、お前な……」

夕立「そもそも」

私の言葉を遮り、夕立は言葉を続ける。

夕立「提督さんが戻ってくるのが遅いのがいけないっぽい。だから」

夕立は、腰を振り、身体を上下に動かしながら、私の体を洗う。

夕立「夕立が、のそのそ亀さんてーとくさんのお手伝いをしてあげるっぽい♡」

まさかとは思いますが、その亀はもしや下半身の亀ではございませんか。


夕立「あっ♡」


夕立は声を上げると、腰を上げて、私の下腹部に視線を送る。

夕立「提督さんの亀さんがおっきくなったっぽい♡」

夕立、それ亀やない、亀頭や。


夕立は私の陰茎の竿を右手で掴むと、陰唇にあてがおうとする。

提督「待て、それは駄目だ」

右手で夕立の腰を押し、亀頭を陰唇からズラす。

夕立の陰部のすじが陰茎の裏筋に当たる。

夕立「てーとくさん、大丈夫っぽい」

桃尻を揺らし、陰茎の竿を陰裂でこすってくる。

夕立「これは、夕立のおまんこスポンジで、てーとくさんのおちんちんをゴシゴシ洗ってあげるだけっぽい♡」

カウパー液が先端から溢れ、粘着質の液体と混ざって竿に塗りこまれていく。

夕立「全然、エッチなことじゃないっぽい♡」

提督「駄目なものは、駄目だ」

そんな理屈通ってたまるか。

夕立「……」

夕立の陰部が陰茎の竿から離れる。

夕立は自分の陰唇を右手の人差し指と中指で開き、ピンク色の花弁を晒す。

蜜を垂らし、ヒクヒクと揺れるそれは、欲情に貫かれるのを待ち望んでいる。

洗剤の匂いと、蜜の、いや雌の匂いが混ざり合って、脳髄を刺激していく。

頭が、締め付けられるように痛い。

夕立「てーとくさん」

夕立は、自分で胸を揉みしごきながら、恥ずかしそうに頬を赤く染め、熱を帯びた視線を送ってくる。

夕立「ゴシゴシ、しよ?」


頭が、痛い。


夕立は嬉しそうに私の竿を再び掴むと、ゆっくりと腰を降ろしていく。

私の鈴口が夕立の膣口と口づけを交わして━━━━━




































━━━━━カランッ、と何かが後ろで落ちる音がした。


怖気が走り、すぐに夕立の肩を引いて、背後にある扉から隠すように抱き寄せる。

幸い、抱き寄せた際に陰茎が外れたため、性行為は回避できた。ただ、外れた際に夕立のお尻の割れ目に陰茎が挟まって、すべすべの肌が竿を撫でることになったが。

音のした方向に視線を送ると、間仕切り錠の取っ手が床に転がっているのが見える。

扉の錠に視線を移す。



角芯を通す穴からこちらを覗く目と視線が交わる。



冷えついた粘着質の視線が、穴から浴室内を覆っていく。

いや、ありえない。小指一本分も通らない大きさの穴だぞ? 浴室内がまともに見えるはずがない。なにより、そこから見えるものがどうして目だとわかった?

いや、だが、この感じは「見られている」としか言いようのない感覚だ。

なにより、あの黄昏時の色をした瞳は……

提督「榛名か……?」

扉の方向に声を掛けると、室内を覆っていた視線が消える。

そのかわり、金属が軋む嫌な音が響く。

鉄でできた蝉が、鳴こうとしては死んでいくような、そんな音が規則的に繰り返される。


突如として、鉄の蝉が捻り潰されて、折られる音が現れた。


それと共に、今度はサムターンが床に転がる。

扉を開けるならば、硬貨を嵌めて開ける非常解錠装置を使えばいいはずだが、何があったというのか。



━━━━━カチャッ、カチャッカチャッ、カッカッカッカッカッカッカッカッ、カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ



━━━━━カチッ



扉が少しだけ開く。

榛名「……提督」

更衣室の床で膝をつき、扉の側面を手で掴んだ榛名が、顔を半分だけ出してこちらを覗く。

別れてまだ数分しか経っていないはずなのに、ひどくやつれて目になっていた。どことなく、雰囲気も暗い。

提督「どうした、榛名」

声を掛けながら、榛名の視線から夕立をできる限り遮る。

榛名「夕立が、そこにいますね?」

気づかれているか。しかし、まだ正直に答えるわけにはいかない。まずは状況を把握してからだ。

提督「なにかあったのか?」

夕立の心臓の鼓動がこちらに伝わる。頬ずりすんじゃない。

榛名「夕立を、お渡しください」

私の質問に榛名は答えない。返答しない私も私だが、今の榛名に夕立は渡せない。

違反行為をしたとはいえ、強く拒絶できなかった私にも非はある。何をするのかだけでも情報を引き出さなければ。

提督「榛名、夕立とは何もしていない。私が身体を洗ってあげていただけだ。だから」

榛名「夕立を、渡せ!」

怨嗟の声と共に、掴んでいる部分が指の形に凹んだ。


榛名「そいつは! そいつはそいつはそいつは! お姉さまと榛名が目を離した隙に、その隙に! こんな、こんなこんなこんなこんなこんな、こんなことを!」

榛名「今日は榛名が! 今日は今日は今日は、榛名が、ハルナが! 最初に! 提督に! 『使っていただける』日なのに!」

榛名「本当なら、榛名が! ここで、提督と、提督を、お世話するはずなのに!」

榛名「なのに、なのになのになのになのになのになのになのに! なのにっ!」

榛名「どいつもこいつも! 好き勝手しやがって!」

榛名は瞳を青色に輝かせながら、怨声を室内に響かせる。

人格に影響が出ているせいか、口調もおかしくなっている。

榛名「許しません。許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません許しません」



榛名「 ユ ル サ ナ イ 」



榛名「提督、そいつをお渡し下さい」

榛名「そうすれば、きット、ハルナ ハ ダイジョウブ ニ ナリマス」

榛名は燃え盛る猛獣のような息継ぎをすると、口を三日月のように歪める。

そして、見開いた目には涙が灯っていた。

提督(駄目だな)

今の榛名に夕立を渡しても、むしろ悪化するだけだろう。仲間を傷つけて、心に平静を取り戻すような娘ではない。

提督「榛名」

榛名「ハイ」

提督「気が変わった、一緒に風呂に入って、私の世話をしろ」

扉を掴む力が弱くなったようにみえる。

榛名は一瞬口を真一文字に結ぶと、ゆっくりと口を開く。

榛名「夕立ヲ、オ渡シ下さい」

提督「私と入るのは嫌か?」

扉を掴む力が少しだけ強くなったようにみえる。

榛名「夕立ヲ、オ渡シ イタダイタ 後ならば、二人きりで、お付き合いできます。だから」

提督「私より夕立を優先か……悲しいもんだ」

榛名の顔が苦痛にゆがむ。

榛名「違イマス! 榛名は、決して提督を蔑ろにしたわけでは……ただ、夕立が「榛名」

言葉を発しながら、徐々に顔を俯かせる榛名に声を掛ける。

提督「私は『世話をしろ』と命じている。提督としてな。そしてお前は私の部下で、はて? お前の今の仕事はなんだったかな」

わざとらしく、いやらしく、言葉を続ける。

提督「ああ、お前は今日は福祉係だったな。福祉係は確か、そう、いろいろ世話をしてくれるんだったな。なのに、命令を無視して職務を放棄するというのなら、今後一切榛名に世話は頼まないことにしようか」

榛名「そんなの……いや」

榛名は声を震わせる。

提督「そうか、なら、もう一度言うぞ。『身に纏った衣類を全て脱いで、ここで私の世話をしろ』」

私の言葉に榛名が顔を上げる。

夕焼け時の瞳が泥水のように濁っていた。

榛名「榛名、奉仕命令、了解です……」

いや、そこまで言っておらんから。

・本日は ここまで

・なんかいろいろごめんなさい 特に榛名

・おかしい…… ちょっと提督への愛が深い艦娘とのほのぼのイチャネチョハートフルコメディを目指していたはずなのに……

・今更ですが キャラ崩壊 注意です

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


榛名は扉から手を離し、扉に細い隙間を残して更衣室へと消え、曇りガラスに人影を写す。

榛名が見えなくなってからすぐに夕立を体から引き剥がそうと、肩を掴んで腕で身体を押す。

しかし、私が引き剥がそうとするのに気付いたのか、夕立は頬を膨らませて不満を表明し、背中に腕を回して離れるのを拒否する。こいつ、さっきの榛名の言葉が聞こえていなかったのか。

何とか夕立を引き剥がそうと悪戦苦闘している内に、扉の隙間越しから衣擦れの音が鼓膜を揺らし、そのたびにガラスの人影が動いて白と赤の色彩が乳白色へと変わっていく。

扉の隙間が大きく開く。

榛名「……失礼致します」

タオルを右手に掛け、夕立と同様に肌を晒した榛名が浴室に入ってきた。

夕立と比べてみると重みのある乳房や少し大きめの乳輪、はっきりとした膨らみを魅せる臀部、色の濃くなった陰部など、成長期と成熟期の違いが見て取れる。

……局部や胸に目が行くのは“さが”というものか。というかタオルがあるのになぜ隠さないのか。

断りの一言を述べた後、鈍色の髪を揺らして浴室の床に足を着け、無言のまま私の後ろについた。

そして腰をゆっくりと曲げ、上から私の前を覗き込む。

浴室内ではあるものの榛名は髪をまとめていないため、覗き込んだ際に髪が垂れて鈍色の帳が表情を隠す。

榛名「へえ……『洗ってあげた』ですか……」

私に抱きついている夕立に顔を向けると、抑揚のない声で呟いた。

榛名「提督はそうやって駆逐艦の娘たち洗ってあげるのですね。榛名、知りませんでした」

左手が私の肩にそっと置かれ、顔が私の方を向く。

榛名「提督、夕立を、どう、洗ってあげたのか教えていただけませんか? ……榛名、気になります」

髪の間から見える橙色の瞳が、炭に燻る炎を連想させた。

夕立「知りたいの?」

夕立が榛名を見上げて、不思議そうな声を掛ける。

榛名「ええ、とっても」

榛名は夕立に答えながら顔を向ける。表情が再び髪で隠れる。

夕立「じゃあ、教えてあげる」

榛名を見上げたまま、私の右肩を掴んで夕立は身体を離す。

夕立「提督さんのおっきな手でね、おっぱいの隅々まで綺麗にしてもらったの。そのあと、こうやって身体をピッタリくっつけて、逞しい胸板で夕立のお腹やおへそやお股を洗ってくれたの」

夕立は説明をしながら、自分の乳房を下から持ち上げ、揉みしごく。その後、再び私に身体をくっ付けてゆっくり上下に動かす。やめろ。

夕立「榛名さんがこなければ、今度は逞しいこれでお腹の中もゴシゴシしてもらうつもりだったの。榛名さんが来なければ」

そういって夕立はお尻に当たっている私の陰茎を、榛名に見せつけるように割れ目で擦る。勃ったままの自分の息子が憎い。

榛名「そう」

そういって髪を掻き上げた瞬間、熱した泥のような瞳が見えた。

榛名「ありがとう。じゃあ、今度は私が夕立の身体を洗ってあげるわ。汚れを全部削り落としてあげる」

榛名はタオルで隠していた右手を出した。

その右手に持っていたのは ━━━━━ 鑢(やすり)。

しかも踵などの角質を落とすものではなく、金属を削るための鉄工ヤスリ。どこから持ってきやがった。

・今年は ここまで

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ




夕立「プッ」



榛名がヤスリを見せてすぐ、気が抜けるような音が漏れる。

夕立「プッ、ププッ、そんなので夕立の肌をキレイにできるっぽい?」

歪んだ笑顔で馬鹿にするように笑う。

確かに、ただのヤスリなら艦娘の肌に傷一つ付けることはできないだろう。

榛名「ええ、できるわ」

嘲笑を圧殺するように、静かに断言する。

榛名「妖精さんたちが艤装の錆を落とすために使っている自慢の一品だもの。艦娘の肌でもしっかり削り落とせるわ」

その言葉で、夕立の歪んだ笑顔が一転して険しく引き攣る。本当にどっから持ってきた。

榛名「さあ、キレイにしてあげるわ」

榛名はタオルを離し、腕を上げてヤスリを眼前に構え、夕立を見下ろす。

ヤスリには多数の突起が備えつけられており、まるで鬼の金棒が如く凶暴な雰囲気を醸し出している。

もはや凶器にしか見えないそれを構え、瞳に強烈な輝きを宿して頭上にそびえるその様は、地獄の獄卒鬼に見えた。

提督「待て、榛名」

右手で引き留める。いくらなんでも猟奇沙汰は勘弁願いたい。

榛名は私に振り向いて微笑む。

榛名「大丈夫です、提督。榛名はただ、汚れを、削るだけです。きたないきたないきたない汚れを」

榛名の左手が私の右手を掴んで引っ張り、力ずくで体を振り向かせる。風呂椅子の床をこする音と共に体を半回転させられ、抱きついていた夕立が榛名の正面に姿をさらす。

榛名「ご存知ないかもしれませんが、ヤスリで角質を落とすと肌がつるつるになるんですよ。このヤスリはそのための物です。だから、そう、決して提督が思っているようなものではありません」

嘘つけ榛名。私が足柄に見せてもらったヤスリはまかり間違ってもそんな禍々しいものではなかったぞ。そもそもさっき錆落とし用と言ってなかったか。

榛名「さあ、いつまでも提督にくっついていないでこっちに来なさい薄汚いフケ犬女。その不清潔な肌を削げないでしょう?」

普段の榛名からは考えられないような残虐な感情と醜悪な言葉をむき出しにし、悪鬼羅刹がごとくおどろおどろしい左手が夕立に肉薄する。

夕立は私から降りるとそのまま背面に素早く隠れる。

夕立「やだ……提督さん!」

助けを求めるように私に抱きつく夕立に対し、榛名はヤスリを逆手にもち、私の体を支えに背部を覗き込む。

榛名「……」

ヤスリを振りかざす。

提督(ああ、もう)

正面に垂れるたわわな果実、そこにぶら下がる生ハム色をした滴。

その滴を摘む。



そして一気に引っ張った。



榛名「ぴゃうっ♡!?」

夕立「ぴょいっ!?」

榛名の敏感乳首は私が育てた。


情けない声が聞こえた瞬間、腰が抜けたのか榛名がのしかかってきた。

すかさず、榛名の尻を指が食い込むほど鷲掴みにし、腰を引きずり落とす。

そして前戯もなにもなしに秘部に肉棒を押し込む。


榛名「ひぅっ!?」

夕立「え?」

滾り付いた陰茎が秘所を守る二つの花弁を押しのけた瞬間、榛名の喉から声が漏れた。


榛名「おっ? お゛ぉお゛おおおっ?! お゛ほおぉっ!」

夕立「ぁっ、あああ……」

にゅプッ、と亀頭が挿入し、ヌプププププゥッ、とひだ肉を押しのけ膣道を陰茎の形に整えながら突き進み、ズンッ、と肉塊を膣奥に叩き付けた。


榛名「あ……? う? あっ……! ああっ! て、提督、挿入って……ますっ……提督のが、挿入って、挿入っちゃってますぅ!」

提督「そうだな……で、なにか問題でもあるのか?」

肉棒が膣内に入ったのに気付いた榛名に対し、膣内をカリでほじり、奥をえぐる。ついでに乳首も弄っておこう。

榛名「んんっ! だ、だって、こんな、いきなりぃ」

抗議の声を上げている割に、榛名の中は溶けそうなほど熱く濡れており、ひだ一枚一枚が肉棒に絡みついてくる。

提督「なんだ、したくないのか?」

榛名「したいですぅ♡♡♡♡♡」

一気に蕩けた顔になった榛名が抱きついてきた。そのまま情欲任せの口づけをされる。ヤスリの刃が背中にちょっと当たって痛い。

舌が絡み合うのと同時に、生殖器も絡み合う。

妙高が羽毛布団のように柔らくてほじくり回したくなる膣内なのに対し、榛名は入口付近が柔らく、中程と奥がキツい。そして一旦陰茎を奥まで挿入れると今度は入口付近もしまりが良くなり、食虫植物が如く獲物を逃さまいと絡みついてくる。

何度か腰を揺すって中を味わっていると、榛名の身体が突如として小刻みに震え、唇が強く押し付けられる。

榛名の手からヤスリが離れ、硬く鈍い音が響く。

震えが止まり、その余韻を十分に堪能した後、唇が名残惜しげに離れる。

唇に糸を残し伏し目がちにほほ笑む様はなんとも淫靡だ。



━━━━━その顔が一転して歪み嗤い、榛名の手が私の背後に伸びる。



夕立「がっ! ぅ……ぁあっ」

榛名「だめよぉ夕立ぃ、今提督が楽しんでるんだからぁ♡」

榛名の手が夕立の頭蓋を掴み、指の力で締め上げる。


夕立の手からヤスリが落ち、再び鈍い音が床に響く。

提督「榛名」

榛名「はいぃ♡ はるなぁ、わかっていますぅ♡」

榛名は夕立から手を放すと、腰を激しく動かし打ち付ける。

榛名「いひひひひひひひひひひひ♡ 夕立よりもお姉様よりも先に、あっ♡ 提督にぃ♡ ひひっ、ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ♡」

榛名の腰の動きで陰茎がしごかれ、睾丸から精液がポンプのように汲み上げられていく。

榛名「ひんっ♡ くるっ、きちゃうっ♡♡ すごいのくるうぅ♡♡♡」

喘ぎ声と笑い声をあげながら、別の生き物のようにうねる膣がさらに搾り上げてくる。膣内に蛸でも飼ってんのか。

榛名「あっ♡ くるっ♡ 提督の主砲から三式弾がぁきてぇ♡ 榛名ぁ、大破しちゃますぅ♡」

なに言ってんだこいつ。

提督(むっ)

睾丸から精液が精管を伝い、尿道を押し広げながら陰茎を膨らませ、膣道と押し合い擦りあいながら亀頭へとせり上がっていく。

榛名「あっ」

榛名の身体が再び震えると、入口から奥へと順に締りつけていく。

提督(つっ……)

膣壁に押し出されるかたちで鈴口から精液が噴射し、溢れ零れるように膣内へと飛び出す。

榛名「あっ♡」

膣内が精液で段々と満たされていくごとに、榛名の顔がふたたびとろけていく。

榛名「あはぁっ……♡ ちゃくだぁん……♡♡ ちょくげき、ですぅ……♡♡♡」

身体をビクッ……ビクッ……と震わせ、脳髄まで溶けきった榛名が力なくのしかかってくる。

射精の余韻に浸りながら、榛名の濡れた生暖かい肌を抱き、浴室内を見渡す。



夕立が、浴室内からいなくなっていた。



浴室の扉が揺れている。

耳障りな金属音を立てながら。



提督「……榛名、起きろ」

榛名「ぁんっ♡」


一通り浴室内を見回し、夕立がいないのを再確認した後、榛名の下腹部を突き上げて起こす。


提督「出るぞ」

榛名「……あっ、ぃやぁっ、んっ♡」


未だに締め付けてくる膣内からヒダがめくり上がるのもお構いなしに強引に陰茎を引き抜く。

引き抜いた後も塞がりきらないままの膣口から白濁した精液が粘りつきながら垂れていき、浴室の床に白いシミを一つ二つと作っていく。

シャワーで陰茎についた精液と膣液を洗い流し、同時に榛名の膣内の精液を指で掻き出す。


榛名「あっ♡ ひっ♡ そんなっ♡ 乱ぼっ、うぅん♡ お゛あぁっ、ひゅっ♡」


シャワーを掛けながら、卵白を泡立てるように中指と薬指の二本の指で膣内を掻き回す。

精液が出てこれるように膣内をほじくり回し、膣道を広げながら精液の溜まり場へ指を進める。


榛名「あっ♡ おっ♡ んんっ♡ おっ!♡ イクっ!!♡♡ イくぅぅぅぅぅっ!!!♡♡♡」


精液が一通り掻き出され排水溝へ吸い込まれた瞬間、突如腰を浮かせて濁声を上げ、陸に上がった魚のように痙攣した。

榛名は再び放心状態になり、壁にもたれかかる。

私はシャワーを手に取って、口を半開きに明けて虚ろな目をしている榛名の身体を洗い流す。


提督「榛名、ほら」

榛名「提督……んっ」

提督「んっ」


榛名の身体を引き上がらせようとした近寄った途端、寄りかかってきた榛名に唇を奪われた。

舌を絡ませる情熱的なものではなく、柔らかく優しい口付けが唇を覆い、そして離れる。


榛名「提督、榛名、幸せです……」

提督「……行くぞ」

榛名「はい♡」


結局まともに身体は洗えなかったが、まあいい。


提督(夕立はどこへ行った?)


そう思って扉に手を掛けようとした時、更衣室からガラスが割れる音がした。


すぐさま扉を開けて更衣室に入ると、床に透明な液体とガラス瓶の破片が散らばり、そこから柑橘類の匂いが発せられていた。

あの瓶は確か━━━━━


榛名「あ……?」


何かを奪われたような声を漏らし、床に散らばった破片へと榛名が近寄る。


榛名「あ? なん……で?」

夕立「それ、臭い」


床に膝を着き項垂れる榛名の前に、赤と白の布切れが降り注ぐ。


夕立「それも、臭い」


夕立の持っているヤスリには榛名の装束の切れ端が残っていた。


夕立「おまえも、臭い」


ヤスリを榛名に目掛けて振り下ろす。


提督「夕だ」

金剛「HEEEY!! テイトクーッ!! 着替え持ってきたヨーッ! Let’s change clothes!」

夕立「うるさいっ!」

金剛「ッ!?」


矛先を変えたヤスリが更衣室に入ってきた金剛に狙いを定める。

金剛が持っていた私の着替えが引き裂かれ、ヤスリにかすったのか金剛の指から血が跳ねる。


夕立「臭い、みんな臭い、臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いっ!!」


噴き出すような声を上げ、振り払うようにヤスリ振り回す。


夕立「こんなに臭いと、提督さんが汚「いい加減にしろ、クソガキ」がっ?!」


夕立の首根っこを掴み、壁に叩き付ける。


夕立「えっ? 提督さん、なんで……?」

提督「なんでじゃねえよ。こんなことしといてよ。てめえ、脳ミソ腐ってんのか?」


夕立は頭を振って訴える。


夕立「だ、だって、だってっ! あいつの香水をつけたら、提督さん臭くなっちゃうっ! こいつが触れた服なんて着たら、提督さん汚くなっちゃうっ!
提督さんが汚いなんてやだっ! 提督さんが臭いなんてやだっ! 綺麗じゃないとだめっ! 提督さんはキレイじゃないとだめなのっ!」

提督「……」


夕立は涙目で訴える。


夕立「だから、ねっ? 提督さん、この手、放して? お掃除するから、お部屋のゴミ、夕立、お掃除するから、ね?」

提督「……なんのために?」


夕立は不思議そうな顔を浮かべて訴える。


夕立「ここは夕立と提督さんのお部屋だよ? お部屋にゴミと虫がいたらお掃除するでしょ? 提督さんと夕立の二人だけのお部屋を、提督さんが快適に過ごせるように、提督さんのために、キレイにするの」

提督「私のために、ね……」


夕立は笑みを浮かべる。


夕立「うん、大好きな提督さんのために」

提督「『私のことが好き』か」

夕立「うん、好き、大好き」

提督「その好きな人のモノを壊すのが、お前の愛情の示し方か」


夕立の表情が、止まった。


提督「その服も、その香水も、私のものだ。香水は、気に入っていた。その好きな人の、好きなモノを、それを壊すのが、お前の好きな人への愛情の示し方か」

夕立「あ……あっ、えっ、あ……」


夕立の顔が怖れ色に染まる。


提督「好きな人の前で、約束を破って。好きな人の前で、平気で人を傷つけて。好きな人の前で、仲間をゴミや虫扱いする。それがお前の愛情の示し方なんだな?」

夕立「あっ、や、いやっ、いやっ!」


夕立が、怯える。


提督「そんな愛情、私には必要ない」

夕立「やだっ、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだっ!」





























提督「お前も、いらない」














夕立「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!」


何もかもを振り払うような慟哭が、部屋に響いた。


崩れかけの瓦礫のように震え、両手で耳を塞ぎ、紙屑のように蹲る夕立。

夕立の傍に落ちていたヤスリを拾い、離れた場所へ投げ捨てる。

静けさで凍りついた部屋に、鈍い金属音が響く。


金剛「テートク」

提督「金剛、怪我は?」

金剛「I’m Okay. それより榛名ガ……」

提督「ああ……夕立を見ていてくれ」

金剛「Aye, aye, sir」


金剛に夕立の監視を指示した後、項垂れる榛名の横に座る。


提督「榛名、怪我はないか?」

榛名「……」

提督「榛名?」


榛名は私の言葉に反応せず、項垂れたまま割れたガラス瓶に視線を固定している。

微動だにしない榛名に不安を覚えるが、よくよく顔を見ると口元をもぞもぞと動かしている。

顔を少し近付けて、榛名の口元に耳を寄せる。


榛名「━━━━━なんでなんでなんで? なんでなくなっちゃたの? なんでわれているの? なんでこんなふうになっているの? どうしようどうしようどうしようなにか別のモノをお渡ししないと、でも提督はこれがお気に入りだと仰ってましたもしお気に召さないものをお渡ししたら怒られる軽蔑される嫌わる捨てられる嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ━━━━━」

提督「……」

榛名「━━━━━大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です。これを直してお渡しすれば嫌われない怒られない捨てられないきっと大丈夫です大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫━━━━━」


榛名が割れたガラスの破片に手を伸ばす。

それを掴んで止める。


榛名「提と……!?」


掴んだ手と反対の手で、破片と液体が飛び散る場所に手を乗せる。

驚愕する榛名を尻目に、液体と破片を手に塗りつける。破片が皮膚を傷つけ滅茶苦茶痛い。

手についた液体の匂いを嗅ぐ。柑橘類と鉄錆の匂いが混じって痛みをさらに刺激する。


提督「これはいいモノだな、榛名。体臭なんて自分では気付かないものなんだが、お前はいつも細かいところまで気遣ってくれる。本当に良い娘だ、榛名は」

榛名「提「怪我はないようだな、榛名」


榛名の言葉を遮り、掴んでいた手で榛名の頬を撫でる。


提督「良かった。お前の綺麗な顔に傷がついたらどうしようかと思ったんだ。本当に良かった」

榛名「……おケガ、を……」

提督「ん? ああ、そうだな、怪我をしてしまったな。綺麗にしてくれるか、榛名?」


傷口から血が垂れる人差し指を榛名の前に差し出す。


提督「さあ、口を開いて。綺麗にしてくれ、榛名」


榛名は驚いた顔をしていたが、赤い糸が絡み伸びる手をしばらく見つめると、段々と息を荒げ始める。

息を荒げながら、見開いた眼を指に注ぎ、舌を差し出してきた。

指から落ちた血の滴を舌で受け止めた後、指にしゃぶりつき、傷ついた手を舐め回してくる。


提督「本当に良い娘だな、榛名は。とても良い娘だ。榛名は良い娘。良い娘、良い娘、良い娘、良い娘、良い娘、良い娘、良い娘、良い娘━━━━━」


「良い娘」と褒めながら、榛名を優しくやさしく撫でる。

一滴一滴体内に入るごとに、一回一回撫でるごとに榛名の身体が震える。

私の声と、榛名が指をしゃぶる音が部屋の中で不気味に木霊する。

・本日は ターンエンド

・前作……? そんなもの ウチにはないよ……_onz

・res ありがとうございます 返信をあまりできなくて 申し訳ありません

・この スレタイで 中身がわかったひとは いるかな?

・見直すと 書き直したいところが ちらほら orz

・えろシーンをもう少し……

・台詞と 地の文の 行間を 少し広くしました 読みやすくなったかな?

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


指から滴る血液が唾液へと変わるころなって、榛名も舐めるのを止め、繋がりを残すかのように糸を引きながら舌を離す。

息を荒げながら呆けた顔をし、次の私の言葉を期待の眼差しを向けながら待っている。


提督「よくできたな、榛名。とてもキレイになったぞ、ほら」

榛名「あ……あっ、あっあっあっあっ」


榛名は、私が声を掛けて手のひらを見せると、目を見開きながら口を震わた。

そして突如として両の手のひらを床につけ、額を擦りつけるように床に当てる。


榛名「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます━━━━━」

提督「なに、気にすることはない。今日は少し残念なことがあったが、せっかくだ、今度一緒に新しいものを買いに行こうか」

榛名「一緒……?」


榛名の顔が上がる。そうであって欲しいという希望と聞き間違いではないかという疑惑、そんな感情が混じった表情と瞳が顔に宿る。


提督「そうだよ榛名。二人で一緒に選んで、二人で一緒に買って、同じものを二人で一緒につけよう」

榛名「榛名と提督が、一緒……ふたり……」

提督「ああ、そうだよ」


榛名は頬を、夢か現かを確かめるように、両手で覆う。


榛名「━━━━━へっ♪」


榛名の喉から声が漏れる。


榛名「へっ、へへっ、へへへっ♪ へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへっ♪ へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ♪♪♪♪♪」


端を吊り上げた唇から壊れた口琴のような音が鳴る。


提督「榛名、私は夕立と少し話があるから、外で待っていてくれるか?」

榛名「へっ、へへっ♪ はぁい♡ へへっ、へへへっ♪」


榛名はそのまま泥水のようにゆったりと更衣室から出て行った。


榛名が出て行ったのを確認したのち、金剛に声をかける。


提督「金剛、夕立と話があるから、榛名と外で待っていてくれるか?」

金剛「Do you want me to take care of Yuudachi?」

提督「必要ない」


背を向けてタオルで水気を取りながら、金剛の提案を、どっちの意味で言ったのかわからないが、断る。


金剛「I’m understand. My L……テートク」

提督「ん?」


金剛の呼びかけで背後に振り向くと、光のない灰色の瞳が呑み込むようにこちらを覗きこんでいた。


金剛「榛名と何をしていたか、後で全て話して下サイネ?」

提督「……ああ」


底なし沼のような雰囲気を放ちながら、金剛は出て行った。

……さて、問題はここからだ。夕立を説得して榛名との溝を少しでも埋めなければ。

本当なら、当人同士が話し合うのが一番良い気がするが、この状態の夕立とあの状態の榛名を引き合わせても改善には至らないだろう。

個人的な意見としては、今回のことは夕立が全面的に悪い。約束事は破るし、娘を傷つけるし、罵詈雑言は吐くし。

いつもの夕立なら……

まて


提督(焦り、か?)


そうだ、なにか見落としていると思ったが、それだ。

足柄の時も、大鯨の時もそうだった。なぜそこまで他の娘を拒絶する? 引き離されることを嫌がったからか?

だとしたら、浴室に入る前、素直に言うことを聞いたのはなぜだ? いやしかし、結局直ぐに浴室に入ってきたしな。

私の勘違いか?

……考えても仕方ない。思考に時間を取られている暇はそれほどないのだ。


提督「夕立」


声を掛けた瞬間、夕立がびくりと身体を震わせた。

恐る恐る顔を上げ、声を掛けたのが私だとわかると、飛び付いて必死に抱き着いた。


夕立「やだ、やだやだやだ、捨てられるのはやだっ! あなたに捨てられたら、あたし、どうすればいいかわかんないっ!」


怯えた声をあげる夕立は、身体を擦りつけ、私の体を掻き毟り、鉤爪のように私を捕える。

その動きが一瞬止まる。

夕立の視線が、割れた瓶と散らばった布切れに集まる。


夕立「部屋、汚れてる……お掃除……お掃除しないと、綺麗にしないと……!」


突如として、なにかに突き動かされるように、自分が汚した場所を掃除しようとし始める。


私は夕立の腕を掴み、その行動を止める。


提督「夕立、待て」

夕立「あっ、ち、違う、違うんです! これは『あの時』にみたいに、あなたを追い出そうとしたわけじゃないんです!」


腕を掴んで動きを止めた瞬間、夕立が訴えるように叫んだ。


夕立「あの時だって、本当は、ただ……ただ怖かっただけなんです! また『あいつ』みたいな人間があたしたちを虐めに来たんだって! 本土の人間も、海軍も、もうあたしたちを助けてくれない! だから、自分たちを守るにはそうするしかなくて……」


声をあげ、息を荒げ、目を見開き、瞳孔を震わせ、懺悔するように過去を吐露していく。


夕立「だけどあなたは優しくて……ずっと、優しくて……とても、暖かい匂いのする人だって……」


私に手を掴まれたまま、項垂れ、か細い声で呟く。


夕立「あなたが、あいつに撃たれて……ベッドで目が覚めなくて……色んなことを謝らなきゃいけないのに……声なんて届かなくて。あなたの目が覚めた後、言おうと思っても、どう言えばいいかわからなくて」


床に膝を着き、顔を逸らし、髪で表情を隠し、もう片方の手は潰れるほど強く握られていて。


夕立「ずっとここにいて欲しいと思ったときには、もう、取り返しがつかないところにまで来てしまって……黒ずんでいくあなたから、もう、冷たい臭いしかしなくて」


涙声で震える唇の上から、透明な滴が流れていく。


夕立「ここに戻ってきてからも、あなたはずっと冷たい臭いをしてて、でも、すぐに明石さんたちが、あなたを直してくれて。暖かい匂いがして」


震える声から、優しい声音に変わる。

だがすぐに、それは嘆きを含んだ声音に取って替わる。


夕立「でも、今朝は感じられなかったの! あなたの暖かい匂いがっ! いつもだったら『ある』のにっ! どこにもないのっ! 冷たい臭いしかしないのっ! あたし、また、あの時みたいにあなたが黒ずんでいってしまうんじゃないかって!」


顔を上げて私を見上げる夕立。その瞳には涙が溢れている。


夕立「こわい……こわいよ……」


夕立は、再び私を抱きしめる。


提督「……『冷たい臭い』?」

夕立「……海の底みたいな、怖くて寂しい臭いなの」

提督(海の底……)

夕立「間宮さんが『もし冷たい臭いを感じたら、抱きしめてあげなさない』って、そう言ってたの。『冷たい臭いは情動が関係するから』って、『傍にいて抱きしめてあげれば抑えられるから』って」


離さないように強く、抱きしめられる。


夕立「言うとおりにしたら、暖かいに匂いが戻ってきたの。あなたの匂いと暖かさが、日向ぼっこしてるみたいに、とても心地よくて」


夕立が埋まる胸元から、冷たい滴が流れていく。


夕立「だけど、霞を怒っているとき、愛宕さんとキスをしているとき、またあなたから冷たい臭いがしたの……あたしたちと一緒にいるのがいけないのかな、って思って。でも一人にしておけなくて」


掴んでいた夕立の腕を離し、抱きしめ返す。


夕立「二人きりになったら、いけないってわかっているのに我慢できなくなって……そしたら、榛名さんが入ってきて、あなたが榛名さんと一つになって」


冷えていく夕立の身体を、抱きしめて暖める。


夕立「また、あなたから冷たい臭いがしたの」


冷えていく身体が暖められない。


夕立「引き剥がさなきゃって思った。そうしないとまたあなたが黒ずんで汚れちゃうかもしれないから」

夕立「でも、あなたは、あたしを、こばむの」

夕立「失いたくないのに、傷ついて欲しくないのに、できることをできるかぎりやっても、なにも届かない」


届かないとわかっていても諦めずに、優しさを、弱々しく、喉元から撃ちだしていく。


夕立「もう、どうすればいいの……?」


それが、止んだ。


提督「……」


……そうだ、この娘はこういう娘だった。時雨のときもそうだったじゃないか。

戦いは勇猛果敢、仲間のことになると一直線、自分の身を顧みずに突き進む娘。

だけど、とても不器用な娘。


提督「夕立、大丈夫だ」


夕立の頭を撫でる。

夕立が顔を上げる。


提督「お前の言う『冷たい臭い』は、決して悪いものではない」

夕立「でも……でも!」

提督「確かに、これは病気による臭いと同じだ。だが、明石たちから受けた改造はな、逆にその病気を利用して、傷ついた内蔵を補完しているんだ」


ゆっくりと、言い聞かせる。優しく。

夕立に感じていた怒りは、もう無くなってしまった。


提督「お前たちで喩えるなら『改修』が近いか? あれと同じように特殊な素材を使って身体を治療しているんだ。それを行った上で、ゆっくりと時間をかけて素材が私の身体を改造していくんだ。
お前たちと違って、私の改造はとても時間が掛かるから、今朝お前が感じた『冷たい臭い』はそれだけ治療が進んだということなんだよ。
だから、決して悪いことじゃないんだ」


思い出してみれば、妙高をベンチに叩き付けた時、頬が少し腫れていた。

人間の攻撃ではほとんど傷を付けられないはずの娘たちに、傷をつけた。

それはつまり


夕立「病気じゃないの……?」

提督「……ああ」

夕立「死んじゃったりしない?」

提督「ああ」

夕立「いなくならない?」

提督「ああ」

夕立「提督さん」

提督「なんだ、夕立」



























夕立「ここに、いてくれますか」

提督「ああ……もちろんだ」





情けないな、私は。


夕立の白い肌を抱きしめて、夕立の綺麗な髪を撫で続ける。


提督(優しい、か)


娘たちはただ、今まで私以上に優しい人に出会ったことがなかった。

ただ、それだけ。

私が優しいわけじゃない。私より優しい人はいくらでもいる。

だから━━━━━


『━━━━━『次』は……?』


突如として甦る記憶、鮮明な映像。

映るのは、雲一つない蒼い空、濁りなき青い海、穏やかな波の音、埠頭、車椅子、包帯、点滴、黒ずんだ右手、指先には赤錆が噴いている。

目の前に居るのは、青い海によく似合う砂色髪の娘。

頭部両側を菊のような形に纏め、そこから時を刻む砂のように髪が垂れて、風で小さく棚引いた。

左手にあるものを穏やかに強く握りしめる。


『━━━━━『次』っていつよ?』

『━━━━━あんたの言う『次』の優しい人間っていつ来るのよ?』

『━━━━━じゃあ、もし、その『次』の提督が、あのゴミ屑よりも、私たちを捨てた連中よりも、ずっとずっと頭が良くて、残酷で、卑怯で、酷い奴だったらどうすればいいのよ!? また耐えろっていうの!?』

『━━━━━耐えて耐えて耐えて、その『次』の提督がいなくなって、でも、その『次の次』の提督がもっともっと恐ろしい奴だったら?』

『━━━━━その『次の次の次』も、さらに『次の次の次の次』の提督がさらにひどい奴だったら? 私たちを使い捨ての道具程度にしか見ないような奴だったら? 上の連中を騙し通せるような人脈も権力も知恵も力もあるような奴だったら?』

『━━━━━鎮守府以外に身寄りも生きる場所もない私たちは、どう生きろっていうの? 耐え続けろっていうの?』

『━━━━━五年、十年、二十年? もっとかしら?』

『━━━━━そうやって耐え続けて、今までのように誰も沈まない保証があるの? だれも壊れない保証があるの?』

『━━━━━それでも、あんたは、その『いつかくる優しい提督』のために、私たちに『待て』っていうの?』

『━━━━━私たちは、もう、一日だって耐えられないのに?』


不機嫌と強さに彩られていた表情が崩れる。

我慢していたものが溢れて、大粒の雨が頬から降ってくる。


『━━━━━たしかにあんたは、普通の人から見れば薄情で臆病で愚図なのかもしれない』

『━━━━━ただ私たちが、世間知らずの箱入り娘なのかもしれない』

『━━━━━ずっとずっとあんたに酷いことをしてきた私たちが、こんなことを言うのは我儘で狡くて卑怯なことだってわかってる』

『━━━━━あんたが、私たちを忌避する理由だって理解してる』

『━━━━━それでも、私たちにとって』

満潮『あんたは━━━━━』


こんな空っぽで、軽薄で、後も先もなにも考えていない、将来すら期待されない、こんな私を、なぜ。


夕立「提督さん」


夕立の呼びかけに意識を戻され、視線を向ける。

膝立ちのまま抱き締め合い、胸板に頬ずりをしていた夕立は涙の跡を残しまま、私を見上げる。


提督「もう大丈夫か、夕立」

夕立「うん……それでね、その……」

提督「ん?」


口を一文字に結び、目を細め、少し俯いて不安そうな表情になる。


夕立「榛名さんに、謝らないといけないな、って思って……」

提督「……ああ」


そうだったな。

あの状態の榛名がどんな反応をするのかは未知数だが、夕立が歩み寄ろうとしている、というのは大きな一歩だ。


夕立「それでね、その……提督さんに……その……」

提督「わかった、手伝おう」


私の言葉で夕立は顔を上げ、拍子抜けしたような表情を向ける。


夕立「……いいの?」

提督「もちろんだ」

夕立「でも、夕立、提督さんに、酷いこと、いっぱいしちゃった、よ?」

提督「あれは、ただの不幸な勘違いだった、それだけだ。それに、反省しているんだろう?」

夕立「うん」

提督「人のモノ、もう勝手に壊したりしないな?」

夕立「うん」

提督「約束やみんなで決めた事も、破ったりしないな?」

夕立「うん」

提督「仲間を傷つけたりしないな?」

夕立「うん」

提督「……夕立の気持ちに気づかず、酷いことを言ってすまなかった。もう、気付かない、なんてことがないようにするからな」

夕立「……うん」

提督「夕立はいつも、皆のことを気遣ってくれるな。不器用なせいで誤解されることも多いかもしれないが、きっと皆もお前の気持ちに気づいてくれるはずだ」

夕立「う゛ん」

提督「怖いことや、不安なことがあったら、ちゃんと言うんだぞ」

夕立「う゛ん゛っ」

提督「……ありがとう、夕立。お前の気持ち、とても嬉しかったよ……」


夕立は私の胸元に顔を埋め、力強く抱き締める。

そして、静かに泣いた。


咽び泣く夕立を抱き締め、数分。

泣き止んだ夕立の涙を拭き取り、顔を洗わせる。

お互い裸のまま、着替えるのは後にして、更衣室を離れる。

榛名に会うため、夕立と共に居間へと向かおうとすると……


提督「ん?」


通り過ぎようとした寝室から音がする。もしかしてこちらにいるのだろうか。


夕立「提督さん?」

提督「こっちに居るかもな。ちょっと見てもいいか?」

夕立「うん」


夕立が同意したところで寝室の扉を開いた。

そこには、


榛名「あっ♥ 提督♥ 提督♥ こんなエッチな匂いを残しているなんて♥ こんなの、榛名、我慢できません♥ アッ♥ アンッ♥ 提督♥ 提督♥♥ 提督♥♥♥ おちんちん♥ 提督のおちんちん欲しいですぅ♥ あの太くてごつごつしたおちんちんで榛名のおまんこをミチミチ虐めて欲しいですぅ♥ あの長くてピンと張ったビンビンおちんちんで子宮の奥までズンズン突いて、赤ちゃんのお部屋にパパちんぽ紹介してくださいっ♥ それでそれであのカリ高エラ張りおちんちんで榛名の膣内をジュボジュボ掻き回して、おちんぽ快楽刻んで欲しいですぅ♥ それで最後にはザーメンミルクをビュービュー出してぇ♥ 榛名の奥に提督パパザーメンの匂いをこびり付けて榛名を孕ませてくださいぃぃぃっ♥」

金剛「んっ♡ あっ♡ テート、テートクゥ♡」


そこにはベッドでうつ伏せになり、シーツに顔を埋めながら腰を浮かしてオナニーをしている榛名と、ベッドに腰掛け、私のパンツを嗅ぎながらこっちも同様にオナニーをしている金剛が寝室にいた。

ひでえ光景だ。


榛名と金剛は、寝室に入った私と夕立に気づかないまま、自分たちを慰み続ける。

こっちが腹をくくってこれから話をしようとしたところでこの状況である。ふざけてんのか。

こいつらのことは放って、夕立と散歩に行くべきだろうか。

そう思っていると、左手薬指を啄むように引っ張られる。


夕立「提督さん」


引っ張られた方向を見ると、淫行に耽る榛名と金剛を見ながら夕立が佇んでいた。


提督「すまない、夕立。榛名たちがこういう状況でな」

夕立「ああいうの、提督さん、嫌い?」


他の音が立ち止まるような静かな声音で、夕立が私に尋ねる。

薬指を掴む力が少しだけ強くなる。

無我夢中で秘所を掻き回す榛名と金剛の、私を呼ぶ声がさらに大きくなる。


夕立「夕立もね、寂しい時とかに提督さんのことを考えたりすると、ああいうことしちゃうの」


憐れんだ視線を榛名と金剛に向けながら、喉から錆を吐くような、自虐めいた言葉を綴る。

榛名は騎乗位で下から突き上げらたことでも思い出しているのか、うつ伏せのまま足を三角形に開き、三角形の頂点にある扁桃状に開いた秘部に人差し指、中指、薬指を重ねて挿入すると、桃尻を小刻みに上下に振り回す。桃尻が上下に動かされるたびに、桜色をした縦長の唇に指が根元まで呑み込まれていき、溢れた粘液で秘部周辺が卵黄を掻き混ぜて塗りたくったように電灯の光を反射する。

金剛は左手で顔を覆うように私の下着を押し当てると、それと同時に黒いスカートをめくり上がらせた右手で良く手入れをされた無地の三角州を荒らし、右手上腕にずり落ちた白地の振袖から汗ばんだ肩が光に照らされながら肢体を揺らす。声を押し殺して無我夢中に快楽を貪るさまは、普段の金剛からは考えられないような姿で、明るい性格や海上での勇ましさはこちらを隠すための演技ではないかと疑うぐらいだ。


夕立「終わったあとは惨めな気持ちになるだけなのに、どうしても止まらくて、提督さんに優しい言葉を掛けてもらった時とか、提督さんに暖かく触れてもらった時とか、提督さんに熱く抱いてもらった時とか、そういうことを思い出して、ああやって脇目も振らずに、浅ましく自分を慰めるの。
気持ち悪いし、見っともないし、アホ面晒しちゃうし、耳障りだし、いい歳した連中が何しているんだって、そう思うかもしれないけど、でも」


へそより下の丹田の部分を鎮めるように優しく撫でると、未だ艶めく白麦色の髪を揺らして、火の粉揺らめく瞳を私に向ける。


夕立「それでも、榛名さんと金剛さんのこと、嫌いにならないであげて……っぽい」


夕立の言葉と共に、榛名が濁流のような雄叫びをあげ、金剛が引き裂き耐える糸のように声を押し殺した。

やれやれ。


混濁し固まった思考を鞣すように頭髪を搔きながら、余韻に浸っている金剛と榛名を一瞥する。


提督「……」


別段私は自慰に耽っていることを責めているわけではないんだがな。

早朝の陽炎の一件でなんというか……あれだ、慣れた。

今回はなんというか……金剛たちが間の悪いことをした、というその一点に尽きる。

まあ、夕立が気にしていないようだからいいだろう。


提督「一回外に出ようか、夕立」

夕立「うん」


自分の思考が一段落したころ、金剛たちが気付く前に寝室を出る。

気付かれないようにそっと扉を閉め、一息間を置く。

そして呼び起こすように拳で扉を叩いた。


提督「金剛、榛名、いるか?」


少々強めの語気で室内にいる金剛と榛名を呼ぶ。

私の呼び声を合図にして、室内が騒ぎ出す。

太鼓を乱打するような足音に木材が波のように擦れる音、そしてベッドの軋み音に……

……今なんかすごい音がしたぞ。どっちかが転んだか?

転倒したと思われるその音が鳴った後、室内が静まり返る。


「はっ、はいっ!」


そして室内から返答が来た。

正直どういう意味の「はい」なのかは知らないが、とりあえず寝室に入ろう。

扉を開ける。


部屋に入ってまず目にしたのはベッドにいる榛名。顔を朱に染めながらシーツで上体を隠し、シーツに収まらなかった生足が人魚のように横たわっている。

……よくよく見ると榛名の額が赤く腫れているように見える。先ほどのは榛名がベッドから落ちた音かもしれない。大丈夫か?

次に視線を動かして窓際を見ると、肘掛椅子にお行儀よく座っている金剛が見えた。


榛名「てっ、提督、なぜ裸のままなのですか……♥」


お前が言うな。

言っておくが、裸といっても下はバスタオルで隠しているからな。夕立だって肩からバスタオルを掛けて胸を隠しているんだし。

着替えを滅茶苦茶にされたからといって、丸裸で部屋を歩く趣味はない。那智じゃあるまいし。

そう思いながら金剛に視線を送っていると、金剛は頬を淡く染めながら露骨に目を逸らした。

先程の状況を知らなければ、異性に恥じらうお淑やかな大和撫子なのに、今はパンツを嗅いで自慰したことがバレないか不安になっている変態淑女にしか見えない。

窓から差し込む光を背景に、その光がそっぽを向いて桃色に染まった表情を際立たせ、金剛の身体と椅子が光の繭に包まれている。というまるで絵画のような美しい情景なだけに残念極まりない。

視線を榛名に戻す。


提督「榛名」

榛名「はっ、はいっ! 榛名はいつでも大丈夫ですっ!」


まだ何も言っていないぞ。


榛名「大丈夫ですっ!!♥」


何故二回言った。

……時々榛名は会話が通じなくなるな。明石に脳の診察でも頼むか。

閑話休題。


提督「夕立から話があるそうなんでな。聞いてもらえるか?」


夕立の話を振った途端、期待を含んだ照れ臭そうな顔が一転、無関心しか感じられない希薄な表情に変化する。


榛名「……提督はもうよろしいのですか」

提督「ああ、話はついた」

榛名「そうですか」


榛名は私の横にいる夕立を横目で一瞥する。


榛名「それで、どうするおつもりですか?」

提督「私か?」

榛名「はい」


金剛と榛名が目を据えて見る中、私は夕立の髪を指で一舐めする。


提督「夕立も反省しているようなんでな。許すことにしたよ」

榛名「そうですか」

夕立「……あの……榛名さん」

榛名「……夕立、こちらに来なさい」


榛名に呼ばれ、夕立はベッドの上に乗る。


榛名と夕立はお互いにシーツとタオルを外し向き合う。

裸の娘二人が正座して対面する姿は中々に面妖である。

……ふむ、やはり榛名のほうが大きいな。どこがとは言わんが。


提督「……席を外そうか?」


肌丸晒しのべっぴん二人のうなじとか向き合う乳首とか腰の括れとか揉みたくなる尻とか艶のある太ももとか擽りたくなる足の裏とかを見ていたいが、真面目な話をするなら二人きりがいいだろう。


夕立「えっ……?」


そう言った途端、夕立が親を見失った子犬のような顔をした。


榛名「……提督も立ち会っていただけると」

提督「……そうか、わかった」


夕立の様子を察したか否か、榛名が私を引き留める。

その言葉で夕立も安堵したのか、再び榛名と対面する。

私と金剛が見守る中、まず榛名が口を開いた。


榛名「夕立、私は怒っています。理由がわかりますか?」

夕立「……夕立がみんなとの約束事を破ったから」

榛名「そうです」


榛名が少し強めの視線で夕立を睨む。


榛名「約束事は皆に不満が出ないようにするため、皆で決めたことです。夕立がそれを破っては約束事の意味がありません。
 今回は“たまたま”体調がよくないとのことでしたが、結果として提督は他の娘から責められることになりました。夕立だけならまだしも、提督にも迷惑を掛けたのです。ここまではわかりますね?」

夕立「はい」

榛名「次にお風呂の件ですが……その前に、夕立、福祉係の役割は何かわかりますか?」

夕立「提督さんと昼間からエッチし放題できる係っぽい」

榛名「半分正解です」

提督「……」

榛名「ですが、もう少し詳しい説明があったはずですが、わかりますか?」

夕立「……えっと、綾波から聞いた話だと、提督さんの性処理で周りの娘が一々エッチしてると課業が進まないから、性処理専用の娘を用意して、一日二十四時間いつでもどこでもヤリ放題ハメ放題できるようにしたって言ってたっぽい」

榛名「そうです。さらに付け加えると提督は福祉係に対し罵倒、虐待、暴行、強姦、凌辱、拷問、切断、解体、撃沈、轟沈、殺害など鬱憤を晴らすためのありとあらゆる行為が認められています。
 福祉係は、提督から優先的に愛していただけるのです」


馬鹿な話だ。


榛名は言葉を続ける。

榛名「本来ならば、お風呂場のようなお互いに肌を晒す場所は福祉係が担当することになっています。
そのことを無視して提督と裸のお突き合いなどをしたら、福祉係の役得……役割の意味がありません。
この係は人気があるから、就くのが大変なんですよ? 夕立だって知っているでしょう?」


榛名の言葉に夕立は同意するように頷く。


夕立「夕立も、時雨と係の奪い合いしたときは大変だったっぽい」

榛名「でしょう?」


なんか話し合いからズレてきてないか?


榛名「セックスしたくてやっと手に入れた役割なのに、それを他の娘に奪われたら嫌でしょ?」

夕立「うん」


そういう判断で仕事を選ばないでくれないか。ついでにそういうことを上司の前で堂々と言わないでくれるか。


榛名「今回のお風呂の件は提督が私に中出しセックスしてくれたから大目に見ますが、次からは勝手なことはしないように。いいですね?」

夕立「うん。夕立、次からはちゃんと順番を守るっぽい」


夕立の言葉に、榛名は満足げにウンウンと頷く。


金剛「へぇ…… Bathroom で MAKE LOVE ですか……」


いつの間にか傍に来ていた金剛が、棘を含んだ声音で黒煙でも吐くように呟いた。

油が撒かれた火薬庫のような雰囲気を纏いながら、金剛は私の隣に仁王の如く佇む。誰か助けてくれ。


私が金剛から微妙に距離をとっていると、榛名が気持ちを入れ替えるように一度咳払いをした。

それに合わせて夕立が背筋をゆっくりと正し、榛名に再び向き合う。


榛名「さてと……これで私から夕立に言うことはもうないわ。辛気臭い説教は、ここで終わりっ」

夕立「……え」


説教、っぽい何か、が終わり、少しばかり堅苦しかった口調を改めて、榛名がさっぱりとした声で話に切りを付ける。

想定外のことに呆気にとられた夕立をそっちのけに、榛名は豊満な乳房を揺らしながら私のほうを向いて口を開く。


榛名「提督、榛名も終わりました」

提督「ん? ああ」


不発弾状態の金剛に気を取られて榛名に生返事をしてしまった。だって不発弾が離れた分だけ距離を詰めてくるんだもの。ナメクジみたいに。


夕立「あの、榛名さん」

榛名「ん? どうしたの、夕立」


不安げな夕立の言葉に応じて、不思議そうな顔を向ける榛名。


夕立「夕立、まだ言わないといけないことが……」

榛名「……わかったわ。なにかしら」


そう言って榛名が夕立と再び向き合う。

不安そうな夕立は、言い出す勇気がまだないのか、口を開こうとしてはまた閉じ、視線を少しさ迷わせる。

その視線の中に私の姿が映ったのか、視線を向けたままゆっくり顔を上げて私の表情を見た。

不安そうな夕立の表情に、勇気づけてあげられるように私はゆっくりと頷いた。金剛に怯えている場合じゃないぞ、私。

夕立は一度俯いて目を瞑り、目を開けて榛名を見る。

いい顔つきだ。


夕立「榛名さんの香水と服、滅茶苦茶にしちゃったこと、色々酷いこと言ったこと、約束を破ったこと、謝ります。本当にごめんなさい」


夕立はしっかりと、頭を下げた。

その姿を、榛名は目を細め、しばらく見つめる。


榛名「夕立」

夕立「はい」

榛名「さっきも言ったけど、約束を破ったことに関しては、もうお終い。反省して、さっきのことを守ってくれればいいわ」


母親のような口調で、はっきりと伝える。


榛名「酷いことに言ったってことに関しては、私もお風呂場でけっこうきついことを言ったから、これはお互いさま。
服は……たぶん、あとで弁償してもらうことになるのかしら? それでいいわね?」

夕立「はい」

榛名「なら服の件もそれでお終い」

夕立「香水は……」

榛名「香水は提督の物よ。そして提督は夕立を許した。だからその件もお終い。はいっ、私の件はもう終わり。それより夕立、謝るというのなら、もう一人いるでしょう?」

夕立「? あっ」


榛名の言葉で何かに気づいた夕立は、体の向きを変える。

正面にいるのは、金剛。

……いや、待て、今の金剛に話しかけて大丈夫か。


夕立「金剛さん、さっきは怪我をさせてごめんなさい」

金剛「Huh? Me?」

夕立「はい」


予想外のことだったのか、金剛が拍子抜けした声を挙げる。

金剛は少しばかり唸った後、毒を抜くように息を吐き、そして一転、夕立に明るい顔を見せた。


金剛「It’s O.K.!! この程度の傷、ワタシにはかすり傷にもならないデース! 傷だってもう塞がっているからネ! 恋する乙女は Very Strong!」


そう言うと金剛は夕立に傷つけられた部分を見せる。見てみると確かに傷が消えている。自己再生機能の範囲内だったか。


金剛「だから、夕立、No need to worry」


夕立のどこか澄んだ態度に中てられたのか、臨界点突破間近のような態度が薄れ、いつもの明るい雰囲気に戻る。


榛名「よかったわね、夕立」

夕立「うん」


助かった……


その後、金剛に榛名の服を取りに行ってもらい、その間に私は夕立とともに更衣室で着替えることとした。


提督「……榛名、なぜここにいる」

榛名「?」


可愛らしく首を傾げないでくれるか。

金剛が着替えを持ってくるまで寝室で待たせていたはずの榛名が、やることなど何もないにもかかわらず、なぜか更衣室に付いてきた。

もちろん真っ裸である。


榛名「♪」


榛名はゆっくりと床に座ると、にこやかな表情で私のパンツを極めて自然な動作で掴み、腰回り部分を輪っか状に広げて私の前に差し出した。


榛名「さあどうぞ、提督」


何がだ。

慈しみの表情を浮かべる榛名に戸惑いを感じざる得ない。

おまけに、パンツを履こうとしていた夕立が動きを止め、こちらをじっと見ていることがなおのこと戸惑いを加速させる。


提督「榛名、着替えは一人でやるから、お前は寝室で待っていなさい」


私がそう忠告すると、榛名はパンツの前部分、履くと陰茎で膨らむ箇所、に鼻をあて臭いを嗅ぎ始めた。


榛名「洗い立てですよ、提督。さあどうぞ」


股部分から鼻を話した榛名は嬉しそうにそう言うと、今嗅いだばかりのパンツを再び広げ、差し出す。話聞けよ。

正直ここまでお世話されたくないが、榛名は聞く耳を持たないし、それにこのままじっとしていては着替えが進まない。

仕方なく、バスタオルで陰部を隠したまま、広げた輪っかの中に両足をいれることにする。


榛名「動かしますね」

提督「ああ」


私が両足を入れ終わると、榛名はパンツをあげて股間部分にパンツを合わせる。

履かせ終わると、榛名は立ち上がって私に身体を密着させて腰に巻いていたバスタオルと外すと、腰部の開口部から手を入れ陰茎と陰嚢を掴んだ。


提督「榛名」

榛名「ご安心ください、位置を整えるだけですから」


そうは言うが、身体全体をくねらせながら誘うような視線で言われてもまったく説得力がない。


榛名「提督の、やっぱり大きいです……♥」


やめろ。夕立が怖い顔をしているだろ。

榛名は熱を帯びた視線を真下に向けると、荒い息継ぎと共に陰嚢を左手で包んでほぐすようにやさしく揉み始め、右手で陰茎を扱き始める。


提督「榛名」

榛名「提督……早くっ、早くおちんちんを硬くして、榛名の生マンコの中にぶち込んでくださいっ♥ 一回だけなんて物足りないです♥ 今日の榛名は提督専用の肉便器なんですから、おちんぽ汁をいつでもどこでも榛名のおまんこ便所に出していいんですよ♥」


正気の失せた表情を顔に浮かべながら、開いた瞳孔を向けて獣のように迫ってくる。硬くなった乳首が胸板に当たり、陰茎に触れる手のひらの温度が少しづつ下腹部を熱くしていく。


榛名「早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 早く♥ 榛名、もう我慢でき「HEEEY! 榛名ぁーッ! 着替え持ってきたヨーッ! Hurry up and get changed!」


榛名が欲望の限界を超え、夕立が殺意の向こう側を突破しようとしたとき、更衣室の扉をぶち破って金剛が出現した。


榛名「……随分とお早い帰還ですね、お姉さま」

金剛「榛名が風邪をひいてはいけませんからネー。最大戦速で戻ってきたヨー」


動きを止めた榛名は氷点下まで下がった視線で金剛を見ると、つららでも投げつけるような声音で金剛を迎えた。

対する金剛は榛名の言葉を屁とも思わず、悠然と言葉を返す。


金剛「榛名、テートクはこの後も用が控えているんだから、早く着替えて準備しないとテートクが困っちゃうネー。Do you understand?」

榛名「……提督」

提督「悪いが榛名、金剛の言うとおりだ。早くしないと愛宕にどやされてしまうんでな」

榛名「……」

提督「榛名」


榛名の頬を右手で撫で、左手を背部に回して腰を撫でる。


提督「いい娘で我慢した分だけ、その分後で可愛がってやるぞ。二人っきりになったときにたっぷりと、な」


私の言葉に榛名は頬を染めると、湿り気のある視線で私を睨みつける。


榛名「……提督はいつもそれです」


馬鹿の一つ覚えを非難すると、陰嚢と陰茎から手を放し、代わりの私の肩を掴んだ。

力ずくで肩を引っ張られ、上体が前に揺れるのと同時に榛名の顔が眼前に近づく。

唇に柔らかい感触が触れ、口内に生暖かい湿った空気が入る。


榛名「んっ……それでは着替えてきますね」

提督「……ああ」


唇を離した榛名は金剛と共に寝室へと向かった。


夕立「……卑しい女ぽい」


なんだその台詞。


提督(よし)


あの後、榛名が再び更衣室に突撃してくる前になんとか着替えを済ませることができた。

といっても、ものの数分のことなので気合を入れるほどのことではないのだが。


提督(さて……ん?)


夕立も着替えが終わっただろうと思い、声を掛けようとおもむろに振り向いた瞬間、頭に疑問符が浮かんだ。

なにせ視線の先には、黒を基調とした制服姿ではなく、未だに素肌を晒したままの夕立がいたのだ。

夕立は自分の下着に視線を落とし、神妙な顔立ちをしていた。


提督「どうした、夕立」


そう声を掛けると、夕立はゆっくりと顔を私に向け、そして突如両腕を伸ばして持っていた下着を見せつける。


夕立「提督さん、着せて」

提督「?」

夕立「 き せ て 」

提督「……」


なんかいきなり子供っぽいことを言い始めた。いや子供か。

先程までいた榛名への対抗心というやつだろうか。


夕立「んっー」


パンツを押し付けるのはやめなさい。私の着替えと違って、脱いだものをもう一度使っているから匂いが残っているんだよ。

このままいくとなにか悪いことが起きかねない。というかナニが起きてイキかねない。なにをいっているんだ私は。


思考が明後日の方向へ行くのを何とか押し留め、このまま行くと夕立とニャンニャンしかねない下半身の野性を上半身の理性で抑えつける。

……イヌっぽい夕立とニャンニャンとはこれいかに。いかん、また思考がおかしなことになっている。時雨もそうだがこの娘たちの匂いはどうもダメだ。

そんな私の気も知らず、未だ夕立はパンツを押し付けながら頬を膨らませて駄々をこねる。まったく……

一度溜息をつき、口で息をしながら夕立のパンツを掴む。


提督「ほれ」


掴んだパンツを、先程榛名がしたように、輪っか状に広げ、夕立の前に差し出す。

そうすると夕立は花が咲いたような明るい笑顔を見せ、艶めいた白い生足を私の両手の間に入れる。

それと同時に目の前に鼠蹊部と下腹部が現れ、下腹部の最下部にある丸みを帯びた二つ桃色の花弁が晒される。もし花弁で守られたこの谷筋を下卑たな感情で荒せば、目の前の無垢な娘から雌の啼き声が聞こえることだろう。


提督「動かすぞ」

夕立「ん」


両側に黒いリボンがあしらわれ、縁を黒で囲っているパンツを上げ、夕立の下腹部を隠す。


夕立「提督さん、次、これ」


夕立は先程のパンツと同じような装飾のブラジャーを差し出す。

私はブラジャーを手に取ると、夕立の後ろに回って肩ひもつけていき、最後にホックで留める。


夕立「提督さん、これじゃブカブカっぽい」


私に調整をしろと。無茶言うな。最上や鈴谷に何度やり直しをくらったと思ってやがる。


夕立「ぶ~か~ぶ~か~っぽ~いー」


夕立は再び駄々をこね始める。このままだんまりを決め込んでも仕方ないか。

あきらめた私は夕立のブラジャーと乳房の間に手を入れ、バストの調整を始めた。


提督「そうだ、夕立。この後の散策だが、どこか行きたいところはあるか?」


バストの調整を行いながら、乳房の柔らかさに意識が向かないように、夕立にこの後の予定を尋ねる。

といっても、散策できるところなど限られてはいるが。

そう思いながら夕立の返答を待つ。






返答が、こない。


提督「夕立?」

夕立「おさんぽは、もういいの」


突如振り向いた夕立が私に抱き着く。まだ調整できていない左の肩ひもが肩からずれ落ちる。


夕立「提督さんが、元気だってわかったから。だから、もういいの」


胸元に顔と声を押し付けて、表情と声音を隠すように語り出す。


夕立「生きてるってわかったから。置いて行かれないってわかったから」




夕立「だから、いいの」




強く強く抱きしめられる。


提督「……本当に、いいのか」

夕立「うん」


私の問いかけに、迷いなく答える。


夕立「それにね」


顔を上げた夕立は、とてもとても、やさしい笑顔を見せる。


夕立「これ以上夕立が傍にいたら、きっと提督さんに迷惑を掛けちゃうから」


振り返り、私に背中を預ける。


夕立「だから、いいっぽい」


どこか憑き物が落ちたような声で、穏やかにそう答えた。


提督「そうか」

夕立「うん。だから」

提督「ん?」


ほんの少しだけ声が小さくなる。恥ずかしそうに、弱そうに。


夕立「だから、もう少しだけ……甘えさせて、ください……っぽい」

提督「……ああ」


提督「━━━━━マフラー、きつくないか?」


着替えを手伝い始めて数分後、最後の襟巻きを首周りに巻き終わった。

私は夕立の正面に立ち、片膝を床につけてつけ心地を尋ねる。

夕立は襟巻きに意識を向けると、首周りで回したり、少し引っ張ったりしてつけ心地を確かめる。


夕立「ちょうどいいっぽい」

提督「そうか……この後はどうするんだ?」

夕立「部屋に戻るっぽい」

提督「送ろうか?」

夕立「一人で大丈夫っぽい」

提督「……もう、寂しくないか?」


夕立が顔を向け、飛びつく。

唇を唇で塞がれ、ぬくもりと共に抱きしめ合う。


夕立「……その言い方は、ずるいっぽい」


名残惜し気に離した唇が、いじわるを咎めるように、苦く微笑む。

言葉を終えた後、匂いを遺すように身体を擦り付け、心臓の鼓動が感じ合えるように体を密着させる。

温かさを分け終わり、からだを離す。


夕立「提督さん」


豊穣な麦畑を思わせる髪色に、イヌ科の動物のような癖毛を持つ、紅玉色の瞳の、私の可愛い娘。


夕立「長生きしてね」


この歳でそれを言われるとはな。


提督「生きるさ、夕立たちがいるからな」


夕立は「えへへ」と笑った。

・本日は ここまで

・夕立 長かった

・もっと うまく 書けるように したい

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


部屋の入り口で夕立を見送った後、金剛と榛名を待たせている寝室へと戻る。


提督(……何やってんだこいつら)


その寝室でまた変な光景が広がっている。


金剛「……」


寝室に入ってまず視界に入ったのは狩りをする獣のように構えている金剛。

金剛は今にも飛び掛からんと身体を前傾にして低く構え、獲物を逃がさんとばかりに両手が猛禽類のような形で添えられている。

ちなみに金剛の左後ろの帯になぜか私のパンツが挟まっている。せめて隠せ。


榛名「……」


次に視界に入ったのは金剛と対面に、これもまた構えている榛名。

下半身は前屈立ち、上体は正拳突きの構えで『寄らば撃つ』と言わんばかりの迎撃態勢である。

ちなみに榛名の胸元には私が先程脱いだ半袖の下着がなぜか挟まっている。だからせめて隠せよ。


金剛・榛名「「……」」


よほど集中しているのだろう、金剛と榛名は私が寝室に入ったことにも気づかず、構えを維持したまま睨み合う。


提督「……」


しばらくして、静寂を破り金剛が口を開く。


金剛「……榛名ぁ~、いい加減それをこっちに明け渡すネ~」

榛名「……たとえお姉様の頼みであろうとも、これはお渡しできません」

金剛「そんな聞き分けのない娘に育てた覚えはありまセーン。いい娘だから渡すネー。そんな汚れた下着を持っていても衛生上よくないデース。ワタシは榛名のことを心配して言っているですヨ?」

榛名「汚くなどありませんっ!」


(パンツさえ持っていなければ)比較的まともな金剛の意見に、榛名は大声で異議を唱える。


榛名「この下着っ! この下着にはっ! 提督の芳しいオス(♂)の匂いが熟成されて染み込んでいますっ! 榛名はっ、この匂いだけでっ、ご飯三杯はいけますっ! それだけじゃありません。この匂いを嗅ぐと、辛くても苦しくても寂しくても、また頑張ろうって気持ちになれるんですっ! だからっ!」


世界を敵に回してでも守り抜く、そんな決意を秘めた魂の叫びが部屋に木霊する。


榛名「提督のっ! 汗がっ! スメルがっ! 染み込んだこの下着はっ! 榛名のっ! 宝物にっ! しますっっっ!!!」


「しますっっっ!!!」じゃないぞ榛名。なんでそんな気合入っているんだ。


榛名「なによりお姉様には提督のパンツがあるではありませんか! これ以上欲しがるなんて……欲深いにもほどがありますっ!」

金剛「No No No わかってませんネー、榛名は」


無知な大衆を鼻で笑う政治家のような言葉遣いで、真実を掲示する教祖様のように言葉を紡ぐ。


金剛「ワタシはお願いしているのではないデース。『渡せ』と命令しているんですヨー、My sister」

榛名「お姉様……!」

金剛「なによりそんな素晴らしいものを見つけて食い下がるなんてワタシらしくありまセーン」


忌々しいといわんばかりの榛名の表情に対し、肉食獣のように歪めた表情を見せる金剛。


金剛「このパンツだけでFinish!? な訳ないデショ! ワタシは喰らいついたら離さないワッ!」


離せや。


榛名「そんな勝手、榛名が許しません! そもそもお姉様、どうせまたパンツを煮出して提督ティーをお作りになるつもりでしょう?」

金剛「それになにか問題がありマスカー?」

榛名「前々から申し上げたかったのですが……お姉様は提督のパンツの扱いが雑すぎます! たしかに提督のパンツを煮出せば香ばしい最高級の提督ティーができるのはわかります! ですが! 熱湯につけることで次から匂いが堪能できなくなり、繊維を痛めてしまうために形や食感まで失われるのは余りにも軽率! せっかく手に入れた提督のパンツを一回で使い物にならなくさせてしまうのはもったないと言わざるおえません!」

金剛「言ってくれじゃない……! それなら榛名こそ、どうせまた手に入れた下着を味わうこともせず、また飾ったり、話しかけたり、抱き枕にするつもりデスネ?」

榛名「なにかおかしいところでも?」

金剛「はっきり言わせて貰うけど、榛名は提督の下着の扱いがケチくさいネー! 確かにやっとのことで手に入れた下着を大事にしたいのはわかるけど、日が経てば経つほど提督のSmellは薄れていきマース。せっかく手に入れた新鮮な下着を堪能しないでチマチマ使うなんて、あんなの匂いが薄れて段々寂しさが募るだけで逆効果ネー。何度も使った出涸らしの紅茶を飲んでいるようで、正直見ていて痛々しかったワ!」

榛名「あれは提督の下着と日々を共にすることで、提督の下着を榛名の匂いで染め上げるという理由もあるのです!」

金剛「それならワタシみたいに提督ティーにして、自分の身体に提督成分を取り込むほうがずっとマシネー!」

榛名「ぐぬぬぬぬぬぬっ」

金剛「GRRRRRRR」

榛名「なんですか!」

金剛「なにヨ!」



































提督「……お前ら」

金剛・榛名「「あ」」


金剛と榛名の変態問答から数分後━━━━━


提督(暑い)


現在、愛宕とすれ違うのを避けるため、私室から少し遠い場所にある直通階段を利用している。


提督(近い)


夕立との予定がなくなったから、その分の空いた時間でバスケットなどを食堂に返却しに行くところだ。


提督(動きにくい)


可能なら、食器返却後に夕張に会いに行きたいところなんだが。


提督(……やわらかい)


右腕と左腕にそれぞれ金剛型の長女と三女(四女か?)が獲物を巻き付ける蜘蛛のようにべったりと絡まっている。

金剛は胸の谷間に挟み込むように両腕で私の右腕を強く抱きしめ、時折嬉しそうな笑顔を私の肩に寄せ、もたれてくる。

榛名は右腕で私の左肘付近を抱き寄せ、まぐわうようにお互いの左指同士を絡み合わせ、陶酔感を湛えた表情で密着している。


提督「金剛、榛名……」

榛名「嫌です」

金剛「No way」


思わず眉間にしわが寄る。


榛名「提督のことですから、どうせ『離れてくれないか』と仰るつもりだったのでしょう?」


なぜわかる。


金剛「You took a pleasure away from us, and beside, are you going to deprive us of this little simple pleasure? How dare you!」

榛名「まったくです。せめて没収された分だけでも堪能させていただけなければ割に合いません」

金剛「Well said」


その言葉で金剛と榛名は抱きしめる力をさらに強め、接着面積をさらに広げる。

金剛が変な閃きさえしなければこうわならなかったのに……

下着没収後、お通夜状態になった寝室で、突如叫んだ金剛の閃きを思い出す。


━━━━━パンツが嗅げなければ、テートクを嗅げばいいじゃない!


その謎の発想により、寝室からここまで延々と引っ付かれることになった。

こんな状態で愛宕とかち合ったら何を言われるかわからないので、わざわざ大鯨から移動経路を聞いて遠回りをしている。

いい迷惑だ。


金剛「……テートクのsmell…… Aah〜That's good〜 (あ^〜いいっすね^〜)」


HA☆NA☆SE!!


……やっと一階まで辿り着いた。歩くだけでなぜこんなに疲れるのか。

まあいい、あとはあそこの角を曲がって渡り廊下を行けばすぐそこに食堂だ。

重石のように引っ付く二人を連れ、廊下を進む。


榛名「ところで、ンッ♥ 提督、食堂の後は、ハァ♥ 執務室へ戻られますか?」


左手の甲を股間に押し付けながら、熱い息を掛けてくる榛名が予定を尋ねてきた。湯で濡らした手拭のような感触が首と手の甲に伝わる。

その感触を無視して、角を曲がる。


提督「ああ、それなん「きゃっ」っと」


胸元に衝撃。出会頭にぶつかったようだ。転ぶようなことはなかったが、ぶつかった反動でお互いに一歩分距離ができる。

驚いた声で相手を判断したのか、金剛と榛名が私から離れ、一歩後ろに下がる。


「ご、ごめんなさい……少々考え事をしていて……」

提督「いや、謝るのは私のほうだ、すまない。それより怪我はないか、鳳翔」


額を手で押さえながら謝る鳳翔に対し、私は自分の非を詫びる。左側通行の廊下を右通行していたのは良くなかった。

その鳳翔が、私の声を聴いた途端、身を強張らせた。やはりどこか怪我をしたのか?

鳳翔は顔から手を離すと、目を見開いて凍り付いた表情をこちらに向ける。

なんだこの表情は。


提督「鳳翔?」

鳳翔「あっ」


もう一度声を掛けた瞬間、鳳翔は怯えるかのように胸の前で両腕を合わせる。なんだこの反応は。


鳳翔「あ、だ、大丈夫です」


そう言うと鳳翔は足を一歩後ろに下げ、目を右下へと逸らす。


提督「……」


なんだこれは。なにがあった。いったいなにがどうなったらこんな反応をされるんだ。

思い出せ。考えろ。迂闊な発言は状況を悪化させるだけだ。


提督(……)


鳳翔は私が解任された後にこの鎮守府に着任した娘だ。だからそれほど面識があるわけではない。

再任時も加賀たちが内情を隠してくれたおかげで、私たちの関係ははっきりとは知らないはずだ。

それからしばらく距離を置かれてはいたが、鳳翔の店の一件で多少は打ち解けられてきた、はずだ。

……店? まさか……


提督(しくじったか……)


昨晩と今日でのこの態度の変わりよう、おそらく開店祝いの酒の席で何かしらの狼藉を鳳翔に働いたに違いない。というより思い当たるのがそれぐらいしかない。

しかもこの態度、かなり酷いことをしでかしたとみえる。

ああっ、クソっ! なぜ酒を飲んだ!


鳳翔「……それでは失礼します」

提督「ま、まってくれ」


この場から去ろうと背中を見せた鳳翔を思わず呼び止める。

鳳翔の身体が再び強張る。小柄で、おっとりとした顔立ちの鳳翔が怯える様に、血液が逆流するような罪悪感を覚える。

しまった。なぜ呼び止めた。ここで謝るか? いや、何をしてしまったのか不明確な場合での謝罪は逆効果だ。

ああっ、クソックソックソッ! 鳳翔から事情を聴けば良いと安易に考えていた自分を殴りたい。まさか鳳翔に手を出していたとは。

とにかく、差し障りのない話でこの場は流して、誰でもいいから事情を確かめなければ。とにかく店や昨晩のことは禁句だ。


鳳翔「……なんでしょうか」


なんてことのない言葉なのに、暗い表情と落ち着き過ぎた声音が心臓を貫き、思考が吹き飛ぶ。和服の紅色が返り血に見える。

……えっと、何を言おうとしたんだったか……そうだ、店のことに、ついて、話せば、いいか……?


提督「ああ、いや、大したことではないのだが、昨ば「あーッ! いたいた!」


横槍で、思考が正常に戻る。


榛名「足柄さん? どうしました?」

足柄「お話の途中ごめんなさいね、ちょっと鳳翔さんに用があって」

鳳翔「……私ですか?」


渡り廊下のほうから足柄がやってきた。

意味深に鳳翔が聞き返す。まさか足柄も関わっているのか?


足柄は鳳翔の背後から両肩を掴み、鳳翔の耳元でなにかを囁く。


鳳翔「……わかりました」


足柄の囁きに目を細めた鳳翔はただただ静かに答えた。


足柄「それじゃ、提督。鳳翔さん、借りてくわね」

提督「……ああ」

足柄「ささっ、行きましょ、鳳翔さん」

鳳翔「……」


軽く会釈をした鳳翔は、ほほ笑む足柄に肩を押されながら私たちとすれ違い、廊下の向こう側へと消えていく。

足柄と鳳翔が消えた廊下を暫く眺めた後、


提督「行くか」


と、意味深な笑みを浮かべながら再び抱き着いてきた金剛と榛名に言い、渡り廊下へ向かう。

鳳翔に関しては、まずは情報収集だ。羽黒あたりからか。


「あっーーー!!」


そう考えながら渡り廊下に出ようとしたところで、先程居た廊下の先から叫び声が聞こえた。

振り向くと、足柄がこちらに向かって走ってきている。

足柄は私たちの前まで再び来ると、一拍して両手を眼前に合わせる。


足柄「ごめんなさい提督っ! 榛名さんも借りていっていいかしらっ!? ちょっと相談があるの!」


相談……ということは福祉係のまともなほうの仕事か。


榛名「……後では駄目ですか」

足柄「できれば早めが良いのだけど……」


足柄の言葉に榛名は目を細める。


提督「榛名、仕事だ。行ってあげなさい」

榛名「……了解です」

足柄「本当っ!? 助かるわ~、朝言おうとしてつい忘れちゃったから」


そう言うと足柄は「てへっ♪」と言いながら、片眼を閉じて小さく舌を出し、猫のように曲げた左腕で額を軽くたたく。

可愛らしいが、凛とした雰囲気のある足柄にその仕草は役不足だな。刀に苺を飾るような違和感がある。


榛名「それでは提督、足柄さんとの用が終わり次第、榛名は執務室に向かいますので」

提督「ああ。部屋に戻ったら摩耶の補助を頼む、やはりまだ慣れてないみたいなんでな」

榛名「了解です。お姉様、提督のことお願いいたします」

金剛「Sure」


榛名と足柄は、鳳翔と同様、廊下の先へと消える。


提督「……」


渡り廊下を歩く。食堂がひどく遠く感じる。足が重い。鳳翔の一件が頭にこびりついているせいか。


金剛「My Lord」


金剛が、ひどく澄んだ瞳で私を呼ぶ。


提督「金剛、前から言っているが、その呼び方は……」

金剛「Why? You’re My Lord, and now we’re alone」

提督「……何というか、その呼び方をされると、お前との間に距離を感じるんだ」


金剛の表情が曇る。


金剛「Distance……? I‘m near My Lord? My Lord go far away?」


俯き、自分に言い聞かせるように呟く。


金剛「No……No,No,No,No,No,No,No,No,No……erase all distance, I let no one come between us」


抱きしめた腕に千切れそうなほどの力を入れ「No」と呟き続ける。

呟きが止まる。


金剛「テートク」


金剛はゆっくりと顔をあげると、光のない流し目を使い、彼岸花のようにほほ笑む。


金剛「榛名とmake love しましたけど、どーでしたカー? しょーじきに答えてクダサーイ」


呼び方が戻った途端、何の脈絡もなく榛名との情事について聞いてきた。


提督「良かったよ」

金剛「Really? それなら良かったデース! もしテートクが満足してなかったら、榛名の脳と心臓を撃ち抜いて、dockに叩き込んでいたところネー」


笑顔のまま、妹への殺害宣言を平然と述べる。いやまあ死なないけど。


提督「やり過ぎだと思うぞ」

金剛「Excuse me? 提督への供物にさせてあげたんだから、それぐらいできて当然ネー。もしできなかったら、榛名なんてカルシウムの棒にタンパク質と脂肪が付いたただの肉の塊と同じデース。金剛型の名を冠しているのなら、このbodyを使いこなして当たり前ヨ」


金剛はポールダンスを踊るストリッパーのように私に抱き着き、その肢体を誇示してくる。


金剛「テートクが一人でbathingするって言ったのに、勝手に入っていったと知ったときは気が気でなかったデース。Make love なんて聞いたときは砲門がFireしないように抑えるのが大変だったんデスヨ?」

提督「そうか」


お前の火薬庫が爆発しなくてよかったよ。本当に。


足柄「━━━━━鳳翔さん、お待たせ~」

榛名「……」

鳳翔「……それで『昨晩のこと』と言うのはっ!?」


足柄が鳳翔の首を絞める。


足柄「何が『それで』よ。私言ったわよね? 『昨晩のことは秘密にしなさい』って」

鳳翔「がっ、あっ」

榛名「足柄さん、鳳翔さんが話せませんよ」

足柄「あら? ごめんなさいね」


足柄が鳳翔から手を放すと同時に、鳳翔は咳き込む。


鳳翔「けほっ、話しかけてきたのは、提督の方ですよ。私は何も……」


破砕音とともに、鳳翔の後ろの壁にヒビが入る。


足柄「あからさまな態度を取るなって言ってんのよ。旧式の空母っていうのは頭までボケるわけ? それとも私たちへの当て付けかしら?」

鳳翔「……あんなことをさせられて、嫌な顔をするなというほうがおかしいです」

足柄「へぇ、そういう態度を取るわけね。昨日あれだけよがっておいて、ねぇ」

鳳翔「なに、を……」


足柄は懐からいくつかの写真を見せる。


足柄「じゃーん! 鳳翔さんの処女喪失、初中出しに初イキ、ファーストキスの写真でーす。すごいわよねー、最初はいやいやだったくせに、最後は自分から腰振っちゃうんだから、やっぱりあれかしら? 日頃から結構溜まっていたとか?」


そこには、複数の艦娘によって机に抑えつけられ、犯され、結合部から血を流している鳳翔の写真があった。

他にも、秘部から赤色が混じった白濁液を垂れ流している写真や、男の上に跨って仰け反っている写真、虚ろな目で口付けを交わしている写真など、痴態を余すことなく捉えた写真が飾られている。


鳳翔「なんでそんなもの……!」

足柄「『記念撮影』はうちの慣習なのよ。あの人に抱かれた女は例外なく、ね。大変だったのよ~? 羽黒をなだめながら撮影するのは。ああそうそう、飽くまでこれは元のデータから作ったサンプルだから。今の時代って便利よね~。私たちの時代とは大違いだわ。この写真なんてほら、お尻の皺までくっきり見え「やめてください!」

鳳翔「あなたたちは……いったい何がしたいのですか」

足柄「だから、黙ってろって言ってんのよ。本当に察しが悪いわね」

鳳翔「……このことを上に言えば、処分は免れませんよ」

足柄「チクるってこと? 言うじゃない、さっきまで自分を慰めていたくせに」

鳳翔「え? あっ、なにを」


足柄は鳳翔の強引に袴をめくり、秘部をまさぐる。


鳳翔「やめっ、あっ♡」


鳳翔の甘い声とともに手が引かれると、足柄は濡れた指を鳳翔の前に出す。

人差し指と親指を少しこすり、そしてゆっくり開くと指の間に白い糸が引く。


足柄「濡れているじゃない。おまけに凄い臭い。もしかしてあの人と話していて興奮しちゃったのかしら?」

鳳翔「っ」


鳳翔は、愛液を嗅ぐ足柄から目を逸らす。

その態度に足柄の表情が喜色に変わる。


足柄「そっかそっか、そっか~、つまり~、さっきの態度は~、あの人と話していて疼いちゃった雌の身体を~、気づかれないようにするためだった~、ってわけね~」


鳳翔は羞恥に頬を染める。


足柄「それなら、素直に『抱いて』って言えばよかったのに。『昨晩酔ったあなたに犯されました、責任を取ってください』って」

榛名「……」

鳳翔「そんなこと……」

足柄「酔った時のあの人の荒々しいセックスも素敵だけど、目覚めているときのネチッこいセックスもいいわよ~、気持ちいいところをグリグリ、って責められて、降りてきた子宮をトントン、って叩かれるの」

鳳翔「……っ」


耳元で足柄がそう囁くと、鳳翔は唾を呑んで喉を鳴らした。


足柄「どうかしら」

鳳翔「……できません」

足柄「そう? まあいいけど。仮に告発したところで、せいぜい鳳翔さんが転属させられるだけだと思うけど。軍の体質っていうのは鳳翔さんもよく知っているでしょう? おまけに証拠は鳳翔さんの身一つ。ましてやこのご時世、世間様の騒がれるようなことは上も避けたいはずでしょうし。それに……」


睨みつける鳳翔の耳に、足柄の口が近づく。


足柄「別に鳳翔さんがいなくなっても、代わりはいくらでもいるもの。駆逐艦の娘や……利根ちゃんとか、ね」

鳳翔「……! 外道……!」

足柄「同期の親友って素敵よね、そうは思わない? 鳳翔さぁん」

鳳翔「………………わかり、ました」


歯ぎしりをしながら、俯く鳳翔。

獣の如く唇を歪めて、喜ぶ足柄。


足柄「わかってくれて何よりだわ~、そういえばこのあと利根ちゃんに会いに行くのよね? 一緒に組むことがあれば『よろしく』っていっておいてね~」


そう言って、足柄と榛名は立ち去る。

残っているのは、小さな空母だけ。

・本日 ここまで

・ガバガバすぎる……

・もっと すっきり 書きたい

・書いてて 胸糞悪く なってきた

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ


榛名(━━━━━意外と御洒落ですね)


部屋に招かれた榛名は、給湯室に向かった足柄を待っていた。


足柄「ごめんなさいねー、年増の股汁なんて汚いものが手に掛かっちゃったから、きれいにするのに手間取っちゃった。アイスティーしかないけどいいかしら?」

榛名「構いません。それより用事はなんですか? 早くあの人の元へ戻りたいのですが」

足柄「まあまあ落ち着いて頂戴。と言っても、戻りたい気持ちは分かるわよ。福祉係は大変よね~、いろんな娘たちからの要望や意見を集約して、制度の改善に努め「御託はいいです」


アイスティーをダイニングテーブルに置き、やんわりと会話を始めた足柄の言葉を、榛名は切り捨てる。


榛名「あの人との時間は一分一秒でも貴重です。本来ならここで呼吸することさえもどかしい。鳳翔さんの一件といい、足柄さんは少々『余計』です」

足柄「あら、そう? 昨晩は上手くいったと思っていたのだけど?」

榛名「……そもそも昨晩あの人を酔わせたのは、手を出さないあの人への不満を『襲われる』ことで解消するのが目的だったはずです。なのに結果としては、無関係な鳳翔さんを襲わせて……あの人が事実を知ったらどれだけ傷つくか……」

足柄「いいことじゃない」

榛名「皮を剥ぎますよ、狼」

足柄「あらいやだ、そんな酷いことをするおばあちゃんはペロリと食べちゃわないと」

榛名「なら猟師に裂いてもらうよう依頼しないといけませんね」

足柄「他の男に触れられるなんていやよ~、あっ、でも、お腹をあの人の弾丸に撃たれるのならありかも♡」


うっとりと妄想に浸る足柄をしり目に、榛名は溜息とともにアイスティーに口を付ける。


榛名「……悪くはないですね」

足柄「ふふっ、榛名さんにそう言ってもらえると自信がつくわ。昨日のカツがあるけど食べる?」

榛名「いりません」

足柄「あの人の食べかけもあるけど?」

榛名「食べます」


榛名が「あの人の唾液付き……ロマンを感じます」と言って食べ始めたのを見計らい、足柄が口を開く。


足柄「それで相談なのだけれどね、福祉係の職務規範を見直して欲しいのよ」


榛名はカツの咀嚼を終え、唾液でクリーム状になったカツを飲み込むと、アイスティーで口の中を流して一言。


榛名「具体的には?」

足柄「あの人とするときの基準についてよ。今の基準だとお誘いはできても、同意がない限りこっちから手を出せないじゃない」

榛名「負担が大きすぎますからね」

足柄「でもそのせいで不満の声があがっているわけ、『せっかく係に就いたのに、全然できなかった』とか『お誘いしたのに断られた』とか、もう耳が痛いくらい聞いたわ」

榛名「あの人の鬱憤解消が目的なのですから当然です。こちらから一々手を出していたら、あの人の課業が進みません」

足柄「でもあの人の仕事なんてほとんどないじゃない。事務処理に艦隊指揮、開発やその他諸々も私たちが担当しているわけだし。せいぜいやるのは上への報告や教育ぐらいでしょ?」

榛名「提督不要論の先駆けとして、そうなるように制度を組みましたからね。『提督』も「兵器が兵器を運用するのは認められない」という人間側の都合に合わせて置いているだけですし」

足柄「でしょ?」

榛名「仮にそうだったとしても、先ほども言いましたが、あの人への負担が大きすぎます」

足柄「その点については問題ないわ。むしろ四人で一日中輪姦していても足りないと思うわよ」

榛名「信じられませんね。時期的にもまだそこまで改造は進行していないはずですが?」

足柄「それがそうでもないの。ねえ、榛名さん、今朝あの人の左の首筋は見たかしら?」

榛名「もちろんです。しゃぶりつきたくなるような首でした」

足柄「その首に、朝、姉さんが咬みついて傷を付けたのだけど、傷跡はあったかしら?」


その言葉に、榛名は訝し気な表情を見せる。


榛名「そんな傷、一つも……いえ、それよりもなぜそんな羨ま、んんっ、妙高さんはなぜそんなことを?」

足柄「さあ? でもまあ、傷は無かったみたいね」

榛名「……それが事実なら、内臓器官はほぼ回復していることになりますね」

足柄「ええ、能力強化は修理後の段階のはずだから、それで間違いないはずよ」


足柄は一息つくと、机に置いてあったカツを一切れ食べる。


足柄「んっ……これであの人の時間も、体力の問題も解決したと思うけど、どうかしら?」

榛名「しかし、かといってあの人がそれを望むとは……」

足柄「も~っ! まどろっこしいわねぇっ」


渋る榛名に、足柄がカツを入れる。


足柄「あの人が私たちに手を出さないのは、一重に『娘たちを自分の慰み者にしたくない』『本当にしていいのか?』という馬鹿馬鹿しい心理的な問題があるからよ。逆に私たちがあの人を慰み者にすることに対してはむしろ無頓着なぐらいだわ。制度さえ整えば嬉々として受け入れるわよ。そもそも榛名さん、今日あの人に何回してもらったわけ?」

榛名「……中出しを一回だけ、キスは三回ほど」

足柄「羽黒はいけいけどんどんであの人に攻めまくって午前中に中出し十回以上、キスは数えきれないぐらいしていたわよ。仕事は全部姉さんに丸投げ、あんまりうるさいから仮眠室に閉じ込めといたわ」

榛名「そんなに……」

足柄「正直違反行為スレスレだったけど……ともかく、こっちが望めばいくらでも相手をしてくれるのよ、あの人は。それともこのままこの制度を続けて、フラストレーションを溜め続けるわけ? あの人だって、そんなことで士気が下がるのは望んでないと思うわよ」


榛名はしばらくカップの水面を見ていたが、意を決したのかカツを一つ一気に食べ、アイスティーを飲み干す。


榛名「……わかりました。正直榛名も、あの人と滅茶苦茶セックスしたいです」

足柄「よし」


足柄は小さくガッツポーズをした。


足柄「━━━━━さてと、次の会議に向けてはこんなところかしら」


ポットのお茶を半分消費したところで、足柄は身体をほぐすように背伸びをする。


榛名「そうですね。しかし日数が足りませんね……」

足柄「今回の見直しに反対する娘は少ないと思うから、最低限、発言力のある娘に根回しできればいいわよ」

榛名「わかりました。先ほど名前の挙がった娘に今回のことを話してみます」

足柄「ええ……ごめなさいね、時間取らせちゃって。久々の秘書艦だったのに」

榛名「構いませんよ。真面目に職務をこなした方が、夜に可愛がってもらえますから……それより、相談はこれだけですか?」

足柄「ええ、次の会議で榛名さんに今回の見直しを提案してもらうのが主だったから、他にはないわ」

榛名「そうですか。それではもう足柄さんは用済みですね」


その瞬間、榛名の足元の影に火のように赤い亀裂が走ったかと思うと、一瞬でその影が部屋を覆った。

椅子からゆっくりと立ち上がる榛名の両側から、黒い鉄の折り紙で作ったような、大きな手が生える。

そんな榛名を、足柄はアイスティーの入ったカップを傾けながら、優雅に見物する。


榛名「足柄さん、先程あの人が傷つくことが良いことだと言いましたね」

足柄「ええ」

榛名「詳しく教えて頂けませんか? 返答次第では苦しまず沈めてあげますので」

足柄「その手で皮を剥ぐつもり?」


足柄の眼前に黒い手が横切ると、陶器が割れる音と木が折れる音が不協和音を奏でた。


榛名「言葉遊びに付き合うのは一度だけですよ、足柄さん。礼儀の知らない若造でも、それぐらい状況は読めますよね?」

足柄「なるほど、榛名さんはおばあちゃんじゃなくて猟師さんだったわけね」


その言葉を言い終えるや否や、足柄の持っていたカップが縦に割れ、中身が零れて靴を汚す。


足柄「暴力で相手を抑えつけるのは幼稚よ?」

榛名「兵器が暴力を振るわず、何を振るうのですか? 私たちの本懐を忘れたわけではないでしょうに」

足柄「人を守ることでしょ?」

榛名「敵を殺すことです」


黒い瞳と青い瞳が交差する。


榛名「人間を守るのは人間です。その人間を守るために敵を脅し、敵を落とし、敵を殺すのが私たちです。それすら忘れましたか、巡洋艦。それとも、あの人に優しくされて自分が人間だとでも勘違いしましたか?」

足柄「……榛名さんの『人間』と『敵』ってなに?」

榛名「『人間』はあの人、『敵』はあの人の敵全て」


黒い手の根元から、ダズル迷彩の主砲が現れる。


榛名「足柄さンハ『敵』デスカ?」


殺意で揺れる静かな波の声が、地獄の海底で踊るような残響を残す。

今だ榛名の足元からは赤い亀裂の影が溢れ、部屋の景色を揺らし続ける。

火種に焦がされ、軋み声をあげながら深海に沈む艦の中のような、そんな部屋で

榛名の青い瞳だけが、雲のような残影を棚引かせて輝いている。


足柄「……敵ではないわね」


足柄は半分になったカップの取っ手に人差し指を入れ、指を軸に回転させる。


榛名「……ヘェ、ソレデ?」

足柄「あの人にここに居てもらうためよ、罪悪感で縛りつけてね」


足柄は脚を組み、左腕を肘掛に置き、頬杖を突く。

カップが風車のように回転する。


足柄「鳳翔さんはお店の一件であの人と距離が縮まっていた。それでいて三代目からの艦娘だから、あの人の過去とは無関係」

足柄「自分の傷に触れない程度の仲になった艦娘。お淑やかで気遣いもできて、料理上手で器量よし。あの人にとって心地よい関係だったでしょうね。気に食わないぐらいに」

足柄「そんな娘をある日突然、自分の過ちで傷物にしてしまった」

足柄「ちょうどいいと思わない? 罪を許し合えるほど仲が良いわけではなく、だからと言って関係を切れるほど浅い仲でもない、っていうのは?」

榛名「余計ナ世話ヲ、ソンナ事ヲセズトモあの人ハ」

足柄「ここに居てくれる? 本当に?」


回転速度を上げたカップは指を登り、指先まで登りつめた瞬間、ふわりと指先から抜けて床へと飛んでいき、無様に砕けた。


足柄「あの人は、解任されて出て行かされた時、私たちに何も言ってくれなかったわ。あの人から別れの言葉はなく、私たちは見送ることさえできなかった」

榛名「アレハ、本土ノ連中ガ 仕組ンダコト」

足柄「そうね、それに私たちはやすやすと乗っかった。『本土で観艦式ができる』って浮かれて、あの人が同行しないことの不自然さに気づかずにね」


榛名の手が強く握られる。自壊してしまいそうなほど強く。


足柄「鎮守府を挙げての観艦式に、海軍への復帰……浮かれるのも無理はないわ」


足柄は床に散らばったカップや皿、机の破片を一瞥する。


足柄「『どうして気づかなかったのだろう』『なぜ、一緒に行こう、と言えなかったのだろう』『今、一番見て欲しい人はあの人だったのに』『私たちにとって、あの人はその程度の人だったの?』」

足柄「そうやって、ずっと後悔した。でもこうも思ったの」

足柄「『どうして相談してくれなかったの?』『なぜ、一緒に行きたい、と言ってくれなかったの?』『私たちの晴れ姿を見たくなかったの?』『あの人にとって、私たちはその程度の存在だったの?』」

足柄「『もし離れられないような関係だったら、少しは違っていたのかな?』」





足柄「『なら、そうなってしまエ』」






足柄「三代目を殺して、この鎮守府の制度を変えて、あの人を取り戻して、病気を治して、簡単に死なないように改造を施して、少し変わってしまったけど、やっと昔のように過ごすことができるようになって」

足柄「でも、まだよ。私たちの傍にずっと居てもらうようにしなきゃいけない」

足柄「手錠や縄を使って縛りつけるべきかしら? でもそんなことをしたらあの人は憔悴してしまうわ。やつれて黒ずんだあの人はもう見たくない」

足柄「手足を切断して逃げられないようにする? 嫌よ、抱きしめたら抱きしめて欲しいもの、手を握ったら握り返してほしい、同じ位置に並んで同じ向きで同じ歩幅で同じ道を歩きたい。犯してほしい、傷つけて欲しい」

足柄「目をくりぬく? 嫌よ、見つめたら見つめて欲しい、この身体を一つ残らず髪の毛一本から目も瞳も瞼も耳も鼓膜も口も歯も舌も頬も首も肩も腕も肘も手も胸も乳首も腹も膣も尻も腿も膝も脛も足の裏も骨も筋も内臓も子宮の奥も心臓も残さず見て欲しい」

足柄「耳や舌を切り落とす? 嫌よ、愛を囁いたら囁き返してほしい、善いことをしたら褒めて欲しい、悲しい時は慰めて欲しい、間違ったことをしたら叱ってほしい、怒った時は鎮めて欲しい、楽しい時は一緒に笑ってほしい。ただ一方的なコミュニケーションなんていらない。私が欲しいのは人形じゃない」

足柄「ならどうやってここに居てもらう? どうやって縛りつける? 常時監視するとしても、監視役の護衛があの人に篭絡されたら? 『他の誰よりもお前を愛している。一緒にここから出よう、二人で暮らそう』なんて言われたら? たとえそれが一時の方便でも、その一時の至福のために堕ちる娘は多いでしょう、私も含めて、ね」

足柄「なら、体がダメなら、心を縛りましょう。ここから居なくなることが悪いことだと心に刻みましょう、逃げることが罪深いことだと刷り込みましょう、私たちを置いていったことを後悔させてあげましょう」

足柄「心がある限り、罪悪感はいつでも付きまとう。海の果てまで逃げたとしても」

足柄「そしてあの人は、罪悪感から逃避できるほど冷淡でもなく、強くもない。程々に甘い考えした、とても優しい人だもの。清算できる可能性があると思ったなら、いつまでもそれに引きずられてくれる」

足柄「そうやってズルズルと引きずられている間に、ここに居るメリットを教え込んで、ストレスの捌け口も用意しなきゃ。縛りつけるだけじゃ壊れちゃうもの」

足柄「国を守れる、名誉が得られる、命令できる、お金が手に入る、美味しいものが食べられる、女を抱ける」

足柄「『提督』ってホント良い職業よね」


右手を膝に乗せ、左手を頬に添えた足柄の顔は、喜色満面。


榛名「ソレハ知ッテイマス。デスガ ソレハ 榛名タチダケデ 充分ノハズ」

足柄「……時間が経てば、罪悪感は薄れるものよ。現に最近、あの人は一人になろうとすることが多いわ。それにローテーションを組んでいるとはいえ、抱ける娘が決まっていればいつかは飽きる。新しい刺激が必要なの」

榛名「一歩間違エバ、あの人ガ潰レマスヨ?」

足柄「だからさっき止めたんでしょ? でも、心配ないと思うわよ? 伊良湖ちゃんと同じで鳳翔さんも素質がありそうだし」


榛名は苦虫を噛み潰したような顔になる。


足柄「本当なら、噂を流してじっくりやるつもりだったのよ? なのにネタばらしなんかされたら、せっかく作った『鳳翔』ってカードを使えなくなっちゃうじゃない。
でもまあ、お陰であの人は何か感づいてくれたみたいだし、噂を流す手間が省けたと思えば結果オーライかしら」

榛名「コレカラモ ソウヤッテ 『女』ヲ増ヤスツモリ?」

足柄「ええ、ずっと私たちの傍に居てもらうためにもね」

榛名「……ソウ」


榛名の砲塔全門が足柄に狙いを定める。


榛名「ヤハリ オ前ハ 『敵』ダ」


足柄に砲を向けた榛名の髪から色素が抜け落ち、死装束のように白くなっていく。

肌には死化粧をした亡骸の如く、生気のない忌避的な美しさが産まれる。

赤い亀裂の影が砲弾を撃ち込まれたように内側に凹み、軋み声と撃音が響く。

撃音と共に足柄が立ち上がった。

足柄が先程まで座っていた椅子は凹みに破壊され、沈むように影に飲み込まれた。


榛名「オ前ハ危険ダ。あの人ガ 娘タチヲ慰ミ者ニ シタクナイコトヲ 知ッテイテ、敢エテ ソレヲ強要シテイル」

足柄「やめたほうがいいわ、榛名さん。後悔するわよ」


対峙。

しかし平行線。


榛名「鶴姉妹ト箱入娘ノ一件デあの人ガ ドレホド傷ツイタカモ忘レ、あの人ノ心ヲ壊ソウト シテイル」

足柄「砲を下ろしなさい榛名さん。もし私をここで沈めたら、あの人は榛名さんを絶対に許さないわ」

榛名「人間ニナッタト思イ込ミ、人ノ心ヲ理解デキタト誤解シテ、分ヲ弁エズ人ノ心ニ付ケ入リ、疲弊シ堕落サセ、私タチノ大事ナ物ヲ弄ブ!」

足柄「私たちがあの人を監視しているように、あの人も私たちをどこかで見ている。最後の一線を越えたらあの人は容赦なく私たちを裁くわ。榛名さんはそれを超えようとしているのよ?」

榛名「オ前ノヤッテイルコトハ アノ人間ドモト同ジダ! 自分ニ都合ノイイコトヲ、耳ザワリノ良イ詭弁デ正当化シテイルダケダ!」

足柄「あの人が大事なのは、所詮『私たち』なのよ」

榛名「歪ンダ ソノ精神! 榛名ガ! 許シマセン!」











足柄「……この気持ちが歪んでいるというのなら、とっくの昔に皆狂っているわよ……」










風切り音。


赤い亀裂の影を破り、風切り音とエンジン音を響かせて、一機の航空機が部屋に突入した。

その航空機は部屋の中で急旋回すると足柄と榛名を分断するように、二人の間を飛び抜ける。


榛名「私ノ“海”ニ……!?」

足柄(川内の水偵じゃない? これは━━━━━)


暗緑色と灰色の迷彩塗装に、スリムな胴体と主翼。

何より特徴的なのは、二つのフロートの支柱にあるハンコ注射痕のような模様。


足柄「━━━━━瑞雲!? そっち!?」

榛名「コノ……!」


榛名が瑞雲に照準を合わせようとするが、蠅もかくやと思わせる狂気じみた軌道を描きながら部屋の中を飛びまわる瑞雲は、高速戦艦を「鈍間」と嘲笑うが如く、悉く照準を避けていく。

鉄の手も蠅叩きのように振るうが、虚しく空を切るばかり。


足柄「……無線通信?」


驚愕する重巡と苛立つ戦艦を他所に、瑞雲から信号が放たれる。

通信内容を聞いた足柄は、榛名に呼びかける。


足柄「……榛名さん、これ以上は……」

榛名「黙レ、オ前ヲ沈メテ、コイツモ撃チ落トセバ……!」

足柄「ここで手を引けば、今回のことは見なかったことにしてくれるわ。幸い外に音は漏れていない。知っているのは私たちだけよ。もう、ここまでにしましょう」


美しい貌を歪めた榛名が、鬼のような双眸で足柄を睨む。


足柄「私も、榛名さんに指摘されて、自分のやり方が軽率だと感じたわ。あの人を押し留めることばかり考えて、榛名さんの言う通り、あの人の気持ちを考えていなかった。反省しているわ」


榛名の動きが止まる。

瑞雲は榛名と足柄の上空で円を描くように廻り続ける。


足柄「このことをあの人に知られたら、きっと見離されてしまう。それは、嫌だもの……」


足柄はそう言うと、右腕を下し、左手で右肘を掴むと、寂しそうに俯いた。

榛名はそんな足柄を睨み続ける。


榛名「……」

足柄「……」


瑞雲が幾度となく円を描き続けた後。


榛名「……ふん」


と、不快さを声と共に吐き出し、艤装を納め、髪と瞳を元に色合いに戻す。

影も足元に収まり、破壊した家具とティーセット以外、部屋の景色が元に戻る。

二人の様子を見てか否か、瑞雲がいつの間にか開かれていた窓の外へと飛び去って行く。


足柄「榛名さん」

榛名「……足柄さんは、あの人と幸せになりたくはないのですか」

足柄「なりたいわよ。だからと言って奪い取るような真似をすれば、鶴の二の舞だもの。それなら、最高でなくとも最大限の幸福を目指すべきじゃない」

榛名「……女が増えれば、その幸福とやらも減っていきます。いつか崩壊しますよ、そのやり方」

足柄「……そうならないように、できる限りのことをしているつもりよ。榛名さんへの相談も、その一環」


榛名は足柄を横目で見つめる。

足柄は、そんな榛名の視線を、穏やかな、それでいてどこか諦観を含んだ表情で返す。

榛名は「……はぁ」と溜息をつく。


榛名「感情的になりすぎました。砲を向けて、すみませんでした」

足柄「いいのよ、結局未遂で終わったわけだし。むしろ、あの人を想う気持ちが感じられて良かったぐらいだわ」

榛名「……ティーセットと家具、後で弁償しますね。あと福祉係の見直しの件ですが、それもやっておきますので」

足柄「ええ、お願いね」


榛名はドアへと向かう。


榛名「……それと」


ドアノブに手を掛けた榛名は、足柄に振り向き言葉を発する。


榛名「相談があれば、また聞きます。やり方は気に入りませんが、興味深いので」

足柄「ありがとう。助かるわ」

榛名「それでは……お茶とカツ、美味しかったです」

足柄「ふふっ、また来て頂戴、歓迎するわ」


榛名は、部屋を出て行った。


足柄「……さてと」


榛名が出て行ったあと、足柄は部屋を見回す。

散乱した木や陶器の破片、お茶の染み、潰れたカツの油。


足柄「那智に怒られるわね……」


部屋の惨状から逃避するように床から目を離し、窓の外へと視線を移す。


足柄「そっか、今日は晴れだったわね」


青い空を見つめながら、一人呟く。


足柄(……それにしても危なかった、まさか研究所の連中が出てくるなんて)


鳥の鳴き声を聞きながら、思い耽る。


足柄(そういえば明日の秘書艦て確か……)


空を、見上げる。


足柄「……まずいことにならなきゃいいのだけど」

・本日 ここまで

・冗長 orz

・特別な瑞雲て何ですか 師匠……

・感想 要望 改善等 あれば どうぞ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月13日 (土) 00:14:45   ID: TlL3Uj8v

妙高姉さんとは珍しい。なかなか無いから嬉しいので期待してます。

2 :  SS好きの774さん   2015年06月14日 (日) 23:49:34   ID: j8zpnpFG

羽黒先生のエロ活躍はまだデスカ、期待しておりまする。

3 :  SS好きの774さん   2015年10月08日 (木) 21:40:43   ID: q6RunVtm

ありがとうございます!!!

4 :  SS好きの28さん   2015年10月22日 (木) 23:21:31   ID: DwY2_Zdv

こえーーーー

更新がんばってください

5 :  SS好きの774さん   2015年10月27日 (火) 19:28:16   ID: tY-oTIlF

福祉?・・・・・ああ、なるほどね。

6 :  SS好きの774さん   2015年11月11日 (水) 20:51:25   ID: YtRLKp0r

摩耶がブチャラティにw

7 :  SS好きの774さん   2015年11月13日 (金) 22:17:39   ID: g5swBtVr

乙です。自分がこの鎮守府にいたら一日ももたないわ…いろんな意味で(笑)。更新頑張って下さい。

8 :  SS好きの774さん   2015年11月14日 (土) 11:17:22   ID: MAMR3khU

素晴らしい
鳩尾を殴られたような最高のヤンデレですね
更新待ってます

9 :  SS好きの774さん   2015年11月20日 (金) 22:05:21   ID: W5c7_rVM

恐ろしいけどトゥバラティ。続きあくしろよ。

10 :  SS好きの774さん   2015年12月06日 (日) 19:38:25   ID: j3s-rvXf

北上が癒しか?

11 :  SS好きの774さん   2015年12月17日 (木) 02:09:12   ID: V9SMwfDH

今一ギャグなのかシリアスなのかわからんな…うーん

12 :  SS好きの774さん   2016年02月09日 (火) 23:01:21   ID: BVjUwfgZ

今までヤンデレモノは色々みてきたけど、面白いが超こえぇ!

13 :  SS好きの774さん   2016年02月12日 (金) 14:29:56   ID: BhBkZWLu

すごく面白い。続きが見られるのが最近の楽しみです。

14 :  SS好きの774さん   2016年02月18日 (木) 08:11:27   ID: OiYcsJl1

まさかこの提督もう人間じゃ……

15 :  SS好きの774さん   2016年02月18日 (木) 19:59:57   ID: D41koFHb

面白いわぁ

16 :  SS好きの774さん   2016年03月13日 (日) 19:11:52   ID: SoN28BgQ

この提督のクズさ嫌いじゃないです

17 :  SS好きの774さん   2016年03月28日 (月) 03:48:12   ID: 6OJtGOAY

おもろいなぁ!?

18 :  SS好きの774さん   2016年04月08日 (金) 22:33:26   ID: pWdOgoNS

更新乙です

19 :  SS好きの774さん   2016年05月07日 (土) 20:20:02   ID: EkRcIXQ1

とうとう”改造”という言葉が・・・w
この提督はナニカサレテイタのか

20 :  SS好きの774さん   2016年05月08日 (日) 18:27:45   ID: Em0x5i_f

これって、前作ありますか?

21 :  SS好きの774さん   2016年06月06日 (月) 01:03:40   ID: W-VhmqN-

確かにヤンデレだ
これもヤンデレの一種だろう

だけど何だよこの胸糞の悪さ

22 :  SS好きの774さん   2016年12月17日 (土) 21:22:15   ID: o2lAV0iO

霞の扱いで全て台無し
提督の過去は知らないが、あのあたりの会話が意味不明すぎる
医者がいない?なら安静にベットで横にさせればいい
不知火の前で云々も、その前の医者の真似事云々など、作者の中で完結しているから話が全く見えてこない。
何故病んでるのかは何と無く推測は付く。だが推測でしかないし
その所為で何で提督が霞に怒っているのか意味が分からん

23 :  SS好きの774さん   2018年09月07日 (金) 17:17:46   ID: SyDnyuNV

続きが気になります

24 :  SS好きの774さん   2020年12月16日 (水) 10:06:39   ID: S:IPuCLX

今更ちゃんと読んだ
これ元ネタのこと考えると凄い量の伏線張ってるっぽいんだよな(それが初めから計算されてるのか場当たり的なのかは分からないしどっちでも良いが)
だからこそめちゃくちゃ惜しいけど趣味の範囲でここまで広げちゃうと負担凄いだろうしなるべくして更新停止になってる感じがする

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom