法子「時子さんお願い!」時子「・・・」 (29)

【モバマスSS】です



――――とあるカフェにて

千奈美「そういえば、時子って法子のことどう思ってるの?」

時子「アァ? 突然なによ」

千奈美「別に? ただ最近一緒にいることが多い気がしてね」

愛結奈「確かにそうね! なんていうか意外?」

時子「なにが意外なのよ。私が誰といても関係ないでしょう」

愛結奈「でも時子のキャラからするとねぇ」

時子「私をなんだと思って……まぁ正直言えば法子が勝手につきまっとてるだけ、それ以上でも以下でもないわ」


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○財前時子様(21歳)
http://i.imgur.com/LKx3rxB.jpg

○浜川愛結奈(22歳)
http://i.imgur.com/K7Bporp.jpg

○小室千奈美(19歳)
http://i.imgur.com/DCoXyUo.jpg


千奈美「でも意外と悪くないと思ってたりするんでしょ」

時子「…………ないわね、ありえないわ。はっきり言ってめいわ――」キーンコーンカーンコーン

千奈美「……チャイム?」

時子(チッ、このタイミングで……あの子狙ってやってるんじゃないでしょうね)

愛結奈「もしかして時子の携帯? 早く出たほうがいいんじゃない」

時子「いいわよ、出なくて」ピッ

千奈美「あ、切っちゃった……誰からか分かったの?」

時子「この着信音になってるのは1人しかいないわよ、しかも――」キーンコーンカーンコーン


愛結奈「あらまた」

千奈美「ねぇ出てあげたら、私達は気にしないから。それとも私達に聞かれるとまずい相手かしら」

時子「ある意味そうね」ピッ

愛結奈「冷たいのねえ。こんなに電話かけてくるなんて急用かもしれないわよ?」

時子「あの子の用事なんて大体なにが理由かは検討がつくのよ。そして私にとっては碌でもないことよ」

愛結奈「ふーん。あの子ねぇ」ニヤニヤ

時子「何よその顔は、叩かれたいの」

愛結奈「それはちょっと勘弁ね。でも、あの子って言い方ってことは年下でしょ!」

千奈美「あっなるほど。しかもこの流れで時子が出たくないってことは、相手は法子ね」


時子「なんでこういう時は妙に察しがいいのよ貴女達……」

愛結奈「それにしても専用着信音なんて可愛いことしてるわねぇ」

時子「うるさい。そもそもこの曲は法子が勝手にせって――」キーンコーン

千奈美「三度目。さすがに出てあげないと可哀想じゃない?」

時子「……本当になによまったく。ちょっと席を外すわね」ガタッ

愛結奈「ワタシ達は別にここでも問題ないわ。むしろ時子がなに話すか興味あるし」

時子「聞いたらお仕置きするわよ」

千奈美「あら怖い怖い。じゃあ私達はここで耳をふさいでてあげるから、早く電話に出てあげたら?」

愛結奈「そうそう。三度も連絡してくるなんて、法子ちゃんかなり大変な目にあってるのかもね」

時子「……チッ」ピッ

法子『もしもし! もしもーし! 時子さん! 繋がった! 繋がってる!?』

○椎名法子(13歳)
http://i.imgur.com/PetM2HJ.jpg


時子「……いきなりうるさいわよ法子。なんの用?」

法子『やった時子さんだ! 良かったぁ! 助けて!』

時子「いつにも増して意味がわからないわ。ちゃんと説明しなさい」

法子『あ、ご、ごめんなさい……えっとね、今、一日限定販売のプレミアドーナツを買いに来てるんだけど』

時子「ああ、この前楽しそうに話してたわね。それで?」

法子『でも列に並んで半分まで来た所でお財布忘れてきたのに気づいちゃって……』シクシク

時子「なるほど、だから?」

法子『時子さんお願い! あたしのお財布持ってきてほしいの!』

時子「…………」

法子『あ、ま、待って! 無言で切ろうとしないで! ちゃんと時子さんにお礼するから!』


時子「まずなぜ私に? 貴女なら他にもいくらでも頼める相手がいるでしょう」

法子『だ、だって……』

時子「だって、何?」

法子『だってゆかゆかはお仕事で、みちるちゃんは新作パン買いに行っちゃってて、プロデューサーはキャンプだし……』

時子「なるほど、つまり私は他に頼れそうな相手がいないから仕方なくってことね」ムスッ

法子『ち、違うよ! そもそも今日この新作ドーナツ買いに行くこと話したの時子さんだけだもん!』

法子『お店の場所とかまでこの前見せたから……だから説明しなくてもここまで来てくれそうなの時子さんしか思いつかなくて……』

時子「でもそれは、私がそのことを覚えてなかったら意味ないわよね?」

法子『……あっ』


時子「しかも仮に覚えていたとしても、貴女がドーナツを買える所まで進む間に合う場所に私がいない場合も意味がないわ」

法子『うぅ……時子さぁん……』シクシク

時子(……チッ)

時子「私はグズが嫌いよ。貴女の願いを聞き届ける理由もない……」

法子『そ、そんなぁ!』

時子「でも腹立たしいことに、今私がいる場所は、貴女の言っていた店に近い」

法子『……えっ?』

時子「貴女の財布を取りに行っていたら間に合わないでしょうけど、私が代わりに支払うのであれば、十分間に合うかもしれない」

法子『い、いいの……? 時子さん、本当に……?』


時子「今日ドーナツ買えなくて鬱陶しいまでに落ち込む貴女に絡まれるのを想像しただけで寒気がするのよ」

時子「だから先に原因を潰しておく気になった。それ以外の理由はないわ」

法子『と、時子さん……!』

時子「言っておくけど、これは多大な貸しよ。調子に乗ったら次は大の男も悲鳴を上げるような躾けを貴女にするから、そこを――」 

法子『分かってる! ありがとう時子さん! あっ、また列が動き出してもうあと1時間くらいでドーナツ買えそうなの!』

法子『だから時子さん、待ってるねっ!』

時子「ちょっと、まだ完全に行くと決めた訳……!」ツーツー

時子(もう切って……相変わらず決めたことの行動が早い。まったくどうしてこの私が)


愛結奈「フフ」ニヤニヤ

千奈美「電話終わった?」ニコニコ

時子「なによその顔は。まさか、話を聞いてたのかしら?」イラッ

愛結奈「それはないわ! ちゃんとこうやって耳を塞いでたわよ♪」ギュッ

千奈美「さすがに盗み聞きする趣味はないもの。それで、法子はなんて?」

時子「別に。ただ少し用事が出来たから、私はここで失礼させてもらうわ」

愛結奈「あら急ね。もう少しゆっくりしていかないの」

時子「私としてもそうしたいわ。でも1秒でも遅れると面倒なことになりそうなのよ」

愛結奈「なるほど……時子はその辺りすごい真面目だものねぇ」


千奈美「本当にね。そういえば響子に聞いたけど、この前待ち合わせに遅れたプロデューサーさんに、時子すごいことしたって」

愛結奈「えっ、なにそれすごい興味あるわ」

時子「……私がいなくなるからって、なにをいきなり勝手に話そうとしてるのかしら?」

千奈美「あらごめんなさい。でもせっかく愉しいおしゃべりだったのに、人が減っちゃうのが寂しくてね」

時子「それなら心配ないわ、そろそろ……」

久美子「お、遅れてごめんねっ! やっぱりレッスンが長引いちゃって……」

時子「ほら来た。あとは遅れてきた罰として久美子の恥ずかしい話でもしてたらどう」

愛結奈「あっ、それいいかもっ!」

久美子「あ、あれ、時子ちゃん帰っちゃうの?」

時子「ちょっと用事が出来たのよ。だから二人の弄られ役を頑張りなさい」

久美子「え」

○松山久美子(21歳)
http://i.imgur.com/fOEk2qb.jpg


千奈美「あら久美子、ちょっと遅かったわね。少し前に来てたら面白いものが見れたのに」

時子「……喋ったら」

千奈美「わかってるわよ。それじゃ、行ってらっしゃい」ヒラヒラ

愛結奈「急いであげてね♪」ニコニコ

時子「……チッ、ともかく失礼するわ。あ、久美子、ついでに私の分の支払いもよろしく」

久美子「なんで!?」

時子「遅れてきた罰と……単純な八つ当たりよ」

久美子「えぇー!?」

---------


――――数時間後 事務所

法子「あぁもう幸せー!」モグモグ

時子「そう、良かったわね……」グッタリ

法子「あれ、元気ないね時子さん。ドーナツ食べないの?」

時子「いらない食べない欲しくない……丸いのはうんざりよ」

時子(結局あの後列の進みが遅くなって買えたのが3時間後とかなんの冗談よ……)

法子「そっかー……時子さんにも喜んでもらいたくていっぱい選んだのにな……」ションボリ

時子「……私に支払わせること分かってていい度胸よ法子、本当に」

法子「ご、ごめんなさい……で、でもちゃんとお金は返したから許して時子さん!」


時子「チッ……許してほしいならせめてコーヒーでも入れなさい。こんな甘ったるい匂いばかりだと気絶しそうよ」

法子「えっと、インスタントでもいいなら」

時子「ハァ……まぁ、それでいいわよ」

法子「じゃあちょっと待っててっ♪」コポコポ

時子(まったく、最近はどうも調子が狂うわね。プロデューサーも下僕の分際で調子に乗っているし……)

時子(けど、あの土下座はなかなか愉快だったわ)フフッ

法子「はい時子さん、コーヒー出来たよ! ……なんだか嬉しそうだね?」

時子「アァン? 法子、冗談はよしなさい」

法子「え、だって、時子さんって表情の変化が分かりやすいし……」


時子「……またみっともなく顔に出てたのね」

法子「時子さんのそういう所、あたしはだい好きなんだけどな」モグモグ

時子(だから嫌なのよ。なんで年下に慈しむ笑みを向けられなきゃいけないのかしら、腹が立つ)

法子「ともかく嬉しい事があったならドーナツ食べてっ! いっぱいあるんだから!」

時子「だからいらないわよ。そもそもなんで貴女は私にこんなにドーナツ勧めるの」

法子「えっ?」

時子「別にいつもみたいに1人でも食べれるじゃない。いらないという人間に勧めるのは嫌がらせよ?」

法子「そ、それは……」ウツムキ

時子(……あら?)


時子「それとも、嫌がる私を見て愉しんでるのかしら? 法子もかなりいい性格してるわね」

法子「ち、違うよ! そういうわけじゃ!」

時子「だったらどういう訳なのかしら」

法子「わ、訳は……うぅ……」

時子(フフッ、いいわ。珍しく弱みにつけ込めそうね。そうよ、私が振り回されてる事自体が可笑しかったのよ)

時子(ここで調子を狂わせている一番の原因である法子に、どちらが上か教えて主従関係を一気にハッキリさせるべきだわ)

時子(そうすれば、私は女王としての威厳をさらに強く他のアイドルにも示すことが出来る!)

時子「さぁ法子、言いなさい。私に無理やりドーナツを食べさせたい訳を!」

法子「…………だって……時子さんと一緒にドーナツ食べると、いつもよりもずっと美味しく感じるんだもん……」

時子「……ア?」


法子「ドーナツは美味しいよ? でも、時子さんと一緒ならもっと美味しいんだもん……だから時子さんにも喜んでほしくて……」

時子「…………」

法子「ごめんなさい……迷惑だったなら謝るから、ドーナツは嫌いにならないで……」グスンッ

時子「自分はどうでもいいのかしら」

法子「あたし、時子さん怒らせちゃったし……」

時子「チッ……ああもう! 腹が立つ! ドーナツ!」

法子「へっ?」

時子「ドーナツなんでもいいからよこしなさい! 食べるわよ、コーヒーもあるから!」

法子「い、いいよ時子さん。無理に食べなくても……」


時子「無理なんかしてないわ。私のために用意された物に口をつけないのは勿体無いから」

法子「時子さん……!」

時子(私、なにしてるのかしら……たかが小娘1人のために、こんな……)

法子「やっぱり時子さんって優しいね! だから、今日だけの限定品だったドーナツ一緒に食べよ!」ニコニコ

時子(……仕方ないから今日は見逃けど、でも次は必ずどっちが上かはっきりさせてやるわ、法子。その時が楽しみね……)フフッ

時子「分かったから、早くよこしなさい」

法子「うん! それじゃ、一緒にいただきまーすっ♪」モグモグ

時子「はいはい、いただきま――」


ガチャ

愛結奈「ただいま♪」

千奈美「結構長くおしゃべりしちゃったわね……あら?」

久美子「私、終始弄られてた記憶しかないんだけど……って、あれ?」

時子「」モグッ

法子「あっ、お帰りっ! ドーナツ食べる?」

愛結奈「あらすごい光景♪」

千奈美「法子、お誘いはありがたいけど、私達はどうやら邪魔みたいだし、すぐに退散させてもらうわね」

法子「えっ、でも帰ってきたばっかりなのに」


千奈美「今また行く場所を思いついたのよ。だから、あとは二人でゆっくりしててね」

愛結奈「というわけでワタシ達は撤収! ぼーっとしてないで、行くわよ久美子♪」

久美子「あっ、わ、分かった! 待って!」

久美子(な、なんだか時子ちゃんのすごい優しそうな姿見ちゃった……!)

バタンッ

法子「い、行っちゃった……なにしに戻ってきたんだろう? ねぇ時子さん」

時子「」

法子「時子さん?」

時子「」ゴクンッ


時子(最悪のメンバーに……最悪のタイミングで、見られた……)

時子「法子」

法子「?」

時子「こうなったらやけ食いするわ、ドーナツ全部よこしなさい。考えるのはそれからにするわ……」

法子「??? よく分かんないけど、いいよ!」

――その後、事務所内で財前時子の弱点は椎名法子とドーナツだという話題が広まるも、時子の必死のお仕置きと調教の結果、
話題はすぐに沈静化するのであった。

〈終〉

時子様をガチャでやっと引けた記念(消えた諭吉の枚数から目を逸らしつつ)
劇場第498話で会話に名前出てたのがフラグだなんて気づきませんよちひろさーん
読んでくださった方ありがとうございました

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