僧侶「少しばかり本業をしてまいります」 勇者「うん?」(191)

女魔法使い「はー、やっと町についたねー!」

女僧侶「ふふっ。あんまりはしゃぎすぎないでくださいよ、まほさん」

戦士「まあ野宿続きだったからな。今日は久しぶりに宿に泊まってゆっくりしようぜ」

勇者「そうだね、そうしようか。それになんだか・・・」

ゆうしゃ は そら を みあげた
そら は どんより くもっている

勇者「なんだか、雨も降ってきそうだしね」

女魔法使い「やったー!今日はなにたべよっかなー」クルクル

戦士「よっしゃ、走るぞまほおおお!」

女魔法使い「いえーい!」

勇者「あ、待ってよ!…僧侶、ぼくらもいこうか?」

女僧侶「……」

勇者「僧侶?」

女僧侶「あ、すいません。……ええ、いきましょうか」

そうりょ は あるきながら そら を みあげた
そら は どんより くもっていた

---------宿・食堂

女魔法使い「――ん!?」

戦士「――ん!!」

女魔法使い・戦士「うまぁい!」ガツガツ

女僧侶「ああもう、二人ともあんまり…がっついたらダメですよ」

戦士「なにいってんだそーちゃん!飯はうまいといって食うのが一番うまいんだよ!」

勇者「でもこれほんとおいしいよ。僧侶もはやく食べなよ」

僧侶「はいはい、もう、勇者様まで…ん」

そうりょ は テーブル にならんだ あたたかな りょうり を たべた
とても おいしい

僧侶「…わあ」

勇者「ね?」

女魔法使い「あー!こら戦士ぃ!それあたしの!」
戦士「うめえええええ」

主人「いやはや気に入っていただけたようでなによりです」

やど の しゅじん が できたて の りょうり を はこんできた

勇者「すみません、騒がしい二人で」

女魔法使い「え!?それわたしもはいってる!?」
戦士「うめえええ」

僧侶「あたりまえです。ほかのお客さんにも迷惑――」

主人「いえいえ、いいんですよ。最近はとんと客がいなくて、料理もふるまう機会が減ってさみしかったんです」

戦士「んー、たしかに…」

しょくどう は しん と している

戦士「俺ら以外客いねえな」
僧侶「戦士さん!」
戦士「あ、す、すまん」

主人「はっは!とんでもない、久々に笑顔が見れてうれしいくらいですよ」

勇者「そういえば、この町自体も人通りが少ないですね」

女魔法使い「そーそー。宿見つけてたくてうろうろしてたのに人が全然歩いてないんだもん」

主人「…そうですね」

勇者「やっぱりここも魔王の影響かな」

女僧侶「でも、商路に影響が出るほど魔物が徘徊してるようには見えませんね」

主人「…」

女魔法使い「なにかあったらいっちゃいなよ。このひと勇者だから」

かのじょ の ことば に しゅじん は たいそう おどろいた ようす だ

主人「おお…なんと、勇者様でございましたか。これは失礼をいたしました」

勇者「こら、魔法使い。あんまり気安くいったらダメだって…」

女魔法使い「えへへ」

主人「…」

主人「…勇者様」

勇者「あ…えと、はい」

主人「おそらく、勇者様が危惧なさっていることはあまりご心配いらないかと思います
    ここらは魔物はそう多くありません」

勇者「そうですか、ならよかった――」

主人「ただ、みなさまがた…どうぞ夜は出歩かないようお気をつけください」

女僧侶「…? 夜、ですか?」

主人「ええ。ここらは夜に【見てはならないもの】が出るのです」

ゆうしゃたち は いっしゅん かんがえこんだ

女僧侶「…魔物のたぐいですか?」

主人「いいえ、違います。【見てはならないもの】です」

勇者「…?」

主人「【見てはならないもの】は夜にでます。町にひとけが少なかったのはそのせいでしょう
    みな、このまちの者は【見てはならないもの】をひどく恐れているのです
    特に…今日のようなよどんだ天気の日には…早く家に帰り、戸を閉めます」

勇者「…もしそれが、魔物の仕業であればぼくらなら解決できるかもしれません」

主人「いいえ、違います。魔物ではないのです」

勇者「では…」

主人「申し訳ありませんが、これ以上はわたしからはなんとも申し上げられません。
    ただ……いえ、すみません、ああ、ああ。
    せっかくの料理が冷めてしまいます。ささ、どうぞ」

しゅじん は そそくさ と ちゅうぼう へ もどっていく
その とちゅう…

主人「ああ、そうだ、大切なことを忘れていました」

女僧侶「…?」

主人「寝るときは必ずランタンの灯りをともしたままにしてください
    また窓は施錠しておりますが、開け放つことは厳禁です
    これらは必ずおまもりください」

勇者「は、はあ…」

主人「夜間の1刻前には鐘がなりますので、この町にいる間は、どうぞ夜は宿にいらっしゃいますよう…それでは」

しゅじん は みせ の おく へ すがた を けした…

勇者「…」

戦士「…」

女僧侶「…」

女魔法使い「――ま、ま、たべよ!! 冷めちゃったらおいしいものがもったいないよ!」

戦士「お…おぉ!そうだな!いただきます!!」

女魔法使い「あー!それあたしが狙ってたの!」

勇者「…た、たべようか」

女僧侶「そう…ですね」

せんし と まほうつかい。ふたり は さわがしい。
しかし どことなく しょくどう は しん と していた。

------女僧侶の部屋

ごぉぉぉぉん―

とおく で かね が なりひびいている

女僧侶「……」

ごぉぉぉん― ごぉぉぉん―

そうりょ は せいしょ を よみふけっている
てもと の ランタン が あかあか と 燃えている

女僧侶「……」

こんこん

女僧侶「? はい」

<< ぼくだけど、少しいい?

女僧侶「勇者様ですか? どうぞお入りください」

勇者「お邪魔するよ…あ、ごめん読書中だった?」

女僧侶「これは聖書…お祈りのようなものです。お気になさらないでください」

勇者「そっか。…ねえ、僧侶」

女僧侶「どうかされましたか?」

勇者「宿の主人の話…どう思う?」

女僧侶「魔物ではないなにか、というあれでしょうか」

勇者「うん。町のひとが困ってるようであれば」
女僧侶「やめたほうがいいと思います」

勇者「え?」

女僧侶「勇者様のことですから、きっと解決してさしあげると…そう言い出すのではと思っていましたが、
     おそらくこの町のそれはきっと、確かに宿のご主人がおっしゃるように、魔物ではないと思います」

勇者「もしかして…僧侶はそれがなにかわかるの?」

そうりょ は くび を よこ に ふった

女僧侶「いいえ。ただ…とてもよくないものが町にいることだけはなんとなく感じます
     それはひとと呼ぶにはおぞましく、魔物とよぶにはとても曖昧で…
     それは神職に仕えるものなら知っている…そうですね、言うなれば」

【悪魔】 と そうりょ は いった

勇者「…ベビーサタンとか?」

女僧侶「あれは魔物です。【悪魔】とは…なんと言えばいいでしょうか。
      もっと抽象的で、概念的で…空が晴れ、淀み、雨がふるような、一種の自然といいましょうか」

勇者「よくわかんないな」

女僧侶「自然界のルールのひとつとしてお考えください。
     この町には、夜間でてはならないというルールがあって、それを破ればなにかが起こる
     【見てはならないもの】とは、おそらくそういうことでしょう」

勇者「それはやっぱり魔物とは違うの?」

女僧侶「違う…と思います。わたしにも、神に仕える者として、
     漠然とした【なにか】を感じる…それだけなのです」

勇者「…ルールか。そうだね。きみがそういうなら、魔物じゃないんだろう。きっと」

女僧侶「勇者様」

勇者「うん?」

女僧侶「…いえ。長旅続きだったのですから、いまはお部屋でどうぞゆっくりお休みください
     ランタンの火だけは忘れずに灯してください
     ランタンは…ルビス聖書にも出てきますが、古来より邪をうちはらう祭具としても用います
     そうでなくともほのかな明かりは安息をもたらしますので…」

勇者「うん。わかった…ありがとう。おやすみなさい」

女僧侶「おやすみなさい」

かね は いつのまにか なりやんでいた

そして よる に なった――

-----女魔法使いの部屋

女魔法使い(んー…)

女魔法使い(気持ち悪い町だなあ…夜に外にでちゃいけないって)

女魔法使い(なんだかんだ言っても、たかが魔物でしょ?退治してあげればいいのに)

女魔法使い(わたしたち…もう魔王を倒せるくらい十分力ついてるのに)

まほうつかい LV79

HP:533   ちから  46
MP:829   すばやさ 129
たいりょく 107

かしこさ 233
       うんのよさ 182

女魔法使い(……)

まほうつかい は まど の そと を みた
やみよ に おおわれて なにも みえない

女魔法使い(…)

まほうつかい は たちあがると

そば に おいていた

つえ を てにした------

-----戦士の部屋
戦士(…)ぐぉぉお…

せんし は ねている

-----勇者の部屋

勇者「そろそろ寝ようかな……」

ゆうしゃ は まど の そと を みた

勇者(あのあともう一度御主人と話したけど…昼間はふつうに出歩いて大丈夫らしいし)

勇者(怖がってはいるけど、みんな慣れてるってことだったな…)

勇者「…まあ、いまはなにか起こってるふうでもないし。僧侶もああいってることだから、町の人が困ってないなら――ん?」

ゆうしゃ は まど の そと を じっと みた
だれか の かげ が みえた き が した

勇者「…魔法使い?」

勇者(ああ…彼女は面白がりそうだもんなあ…)

勇者(――って、だめだめ!僧侶やご主人に怒られるぞ、これは…!)

ゆうしゃ は かんがえた

勇者(…はあ。しょうがないな)

ゆうしゃ は てもと に たてかけていた けん を て に とった

--------女僧侶の部屋


女僧侶(…)

女僧侶(……なんだか寝つきが悪いですね…)

女僧侶(宿…ではなく、やはり町の雰囲気が…ここは神に仕える者にはつらい場所か…)

女僧侶(暖かいお茶でも飲もうかな…給仕のかたはいるのでしょうか?)トコトコ

女僧侶(…)トコトコ

そうりょ は にかい の へや から いっかい へ おりた
かいだん が ぎしぎし と きしむ

ぎし…
ぎし…ぎし……


女僧侶「あ…」

主人「…おや? まだ起きていらっしゃったのですか」

女僧侶「ええ。すこし、寝つきが悪くって」

主人「ベッドがかたかったでしょうか?」

女僧侶「あ、違うんです…ベッドはすごくふかふかです」

主人「ならば暖かい飲み物でもお出ししましょうか。そのあたりにおかけください。すぐにもってこさせます」

女僧侶「あ…えと。ありがとうございます」

主人「いえいえ。神職のかたは寝つきが悪くなるかたが多いですからね――、おーい」

?「はーい」トテトテ

女僧侶(あ…女の子。いくつくらいかな。7か…8か)

主人「ごあいさつなさい。こちらは勇者様のお供をされてらっしゃるそれは高貴なお方だ」

女僧侶「ここ、高貴だなんて、そんな、わたしは一介の僧侶にすぎません」

娘「こんばんわ、おねえさん。娘です」

女僧侶「こんばんわ。娘ちゃんかあ。えらいね、お父さんのお手伝い?」

娘「うん」

主人「こら。うん、じゃないだろ」

娘「あ……はい」

僧侶「ふふっ。いいのよ」

主人「すみませんね、しつけが行き届いていなくて…
    さあ、このかたに暖かいお茶の用意をしてきてくれるかい?」

娘「うん!…あ、はい」タッタッタ

主人「ああもう、まったく」

女僧侶「苦労なさってますね」クスクス

主人「あの子を産んですぐ妻がなくなってですね…いろいろ大変で」

女僧侶「でも、しっかりした娘さんですね。おてつだいまでされて」

主人「たまにああやって手伝ってくれるんですよ
    親としたら寝かしつけたほうがいいんでしょうが…なにぶん夜間は気を使う町ですので
    目のとどくところにおいていたほうがなにかと心配せずにいられるので自然と」

女僧侶「…そうですね」

主人「いえ、すみませんね。僧侶様にこのような世間話」

女僧侶「いえいえ。むしろそういうお話、好きですよ。ふふっ」

主人「あの…ところで僧侶様」

女僧侶「はい?」

主人「わたしからこんな話をいうのはあれなのでしょうが…
    その…僧侶様から見て、この町はやはり…なにかいるのでしょうか?」

女僧侶「………」

主人「わたしからこんな話をするのはいけないとは思うのですが、
    やはり僧侶様でもこの町はお救いすることは…」

女僧侶「……【名前】がわからないので、なんとも申し上げにくいのですが…とても難しいと思います。
     わたしたちは魔王退治の道中ですので、ひところに長くとどまるわけにも…」

主人「そうですか…いえ、すみません」

女僧侶「ただ、これほど警戒なさっているのに、今まで魔除けの神父様はいらっしゃらなかったのでしょうか」

主人「………いえ、実は…。僧侶様は、大神官様をご存じでいらっしゃいますか?」

女僧侶「もちろんです。神職に就いてあのおかたを知らぬものはいないでしょう。
     偉大なおかたでした。残念ながら、彼の力を恐れた魔王により命を絶たれてしまいましたが…」

主人「実は以前、大神官様がこの町にたちよったことがありまして」

女僧侶「それは…知りませんでした」

女僧侶「では、ひょっとして大神官様が魔除けの儀を?」

主人「違います。いえ、と言いますか大神官様はその…『また必ず伺う』とおっしゃっていたのです」

女僧侶(あ…)

主人「『また来るので、それまではこの夜にいかなる魔除けをも近づけてはならぬ』、と。
    あのときはみなが希望を抱いておりましたが…そのすぐあとに大神官様は…」

女僧侶「…そうだったのですか」

女僧侶(それならば、みなの落胆はまた一層のものだったでしょう…)

女僧侶「…先ほども申し上げましたが、どのようなものであれ、おそらく相当に手ごわいものでしょう
     これは…わたしにしかできませんので、勇者様に迷惑はかけられません」

主人「…はい」

女僧侶「ですが、魔王退治が終われば必ずこちらに伺うと約束いたします
     亡き大神官様もそれを望んでおられるでしょう」

主人「おお・・・!なんと、なんとありがたい!」

女僧侶「それまでは、今までどおり夜は出歩かぬようにし、戸締りをしっかりと。
     明日、みなの前で簡単な魔除けだけしていきますので、それで多少は不安を和らげていきましょう」

主人「なんとそこまで、いえ、いえ。ありがとうございます。はい…!」

女僧侶(勇者様もそれくらいの時間はお許しくださるでしょうし)

娘「パパ、持ってきたよー!」

主人「おお、ありがとう。いい子だ」

娘「はい、僧侶様」

女僧侶「ええ、ありがとう……うん、あったかくて美味しいよ」

娘「へへへ」



勇者「あ」

女僧侶「あれ…勇者様」

女僧侶「どうかされましたか?」

勇者「あー…いや、実はね。どうも魔法使いが外に出ちゃったみたいで」

主人「な、なんですって!?どう…わ、わたしはずっとこの受付のところに…」

女僧侶「窓からでしょうね。彼女はトベルーラが使えますし…ああ、そんなことよりどうしましょう」

勇者「…えっと」

女僧侶「ご主人、ランタンをお借りします。あと、塩もありますか?」

主人「そ、外に行かれるのですか!?それはしかし…」

勇者「いいよ、休んでなって、ぼくが」

女僧侶「絶対にだめです」

勇者「えぇ?」

女僧侶「いいですね? 絶対にここを離れないでください」

主人「ランタンはこちらに…し、塩は厨房にはありますが」

女僧侶「お借りします」

勇者「でも、きみ一人じゃ…」

女僧侶「いいえ。むしろわたし一人のほうが安全なのです。
     これに関してだけは、どうぞわたしにお任せください」

勇者「ん…」

女僧侶「お願いします、勇者様」

勇者「わかった、わかったよ」

女僧侶「道具袋から聖水だけお借りします…ああ、なんてこと」

女僧侶(もう、まほさん!!)

主人「塩…はこちらに」

そうりょ は しお を もらった

女僧侶「今から扉を開けますので、その前に魔除けの塩をまきます
     【それ】はこの境界よりこちら来ることはできません」

そうりょ は しお を いりぐち に まいた

女僧侶「偉大なるルビスの加護を…では勇者様、いってまいります」

勇者「うん…気をつけて」

そうりょ は ゆっくり と やど の とびら を あけはなった…

-------

ひゅう…ひゅう…

まち の そと は くらく しずまりかえっている

かすかな かぜ の おと すら とても とても おおきい

女僧侶(ランタンの灯りだけが頼り…まほさんは…)

女僧侶(勇者様が見たっていう方向は…あっちですね)

ひた、ひた…

女僧侶(……足音が響く)

女僧侶(それにこの闇夜の深さ…尋常ならざる黒い濡れ)

女僧侶(なんて恐ろしい…!)

女僧侶(ここには……長くいられない)

女僧侶(ルビス様…どうかわたしたちをお守りください)

☆ そのとき とおく で なにか おおきな おと が きこえた-----

------

【それ】は、見れば不幸が訪れ、口にすれば死に至る病であり、
聞いたものは、未来永劫、呪われる

-------

-------

まほうつかい は かんがえた
やみよ を あるきながら かんがえた

女魔法使い「………」

そして ふっと あゆみ を とめた

女魔法使い(人じゃない…けど、魔物でもない)

女魔法使い(なるほどなあ…)

女魔法使い(町のひとが…怖がるわけだね)

魔法使いは杖を構えた。

【-----】 が あらわれた

------

女僧侶「…爆発音…あっち…!」

そうりょ は かけだした

女僧侶「…あっち…まほさん…だめ…それは戦っちゃダメ…!」

ひたり、ひた

女僧侶(――!?)

ひた、ひたひた

女僧侶「だれ!」

そうりょ は ふりかえった

しかし だれ も いない

女僧侶(……)

そうりょ は あるきだした

ひたり、ひた

女僧侶(……)ゴクリ

女僧侶(大丈夫…ロザリオ…ちゃんとかけてる)

女僧侶「隣人は神に許しを乞い、神はまた隣人に許しを与えたもう…」ブツブツ

ひたり、ひた

女僧侶「隣人に水を分け与えよ、神はまた汝に…」

ひたり、ひた……

女僧侶「……」

ぎぃ…ぎぃ…

ちかっ、ちかちか

女僧侶「……?」

そうりょ の しかい が ちらつく

女僧侶「!!」

そうりょ は ランタン を かざした



【------】 が あらわれた

本日はここまで。いちおうトリップ。
門と玄関がまっすぐになってない家が多いのは
門を通った霊が玄関からはいらないようにするためという日本の伝統だとかなんとか
おやすみなさい

-----宿

主人「……」

勇者「………」

ゆうしゃ は めいそう している

やど の なか に とけい の おと が ひびく

かちっ…こちっ…


かちっ…こちっ…

主人「…皆様、大丈夫でしょうか」

かちっ…こちっ…かちっ…こちっ…

勇者「………大丈夫ですよ。きっと」

かちっ…こちっ…かち…

そのとき とけい の かね が なった

―ぼぉーーーん…
――ぼぉぉーーーん…

ぼぉぉーーーん…

ぼぉぉぉーーーーん…ォォォン…

勇者(…ん?)

勇者(……)

主人「…どうかされましたか?」

勇者「いえ…」

勇者(そういえば…)

勇者(魔法使い…ちゃんと窓は閉めていったのかな…)

――戸締りはしっかり…

勇者「…」

主人「勇者様?ご気分がすぐれませんでしょうか?」

勇者「いえ…あの、すいません、ちょっと気になることがあるので…
    2階へいってきます。戸締りだけ確認したくて」

主人「ああ…なるほど。わかりました…それでは、わたしはその間に暖かいスープでも
    つくってお持ちいたします」

勇者「あまり気を使われずとも…ぼくの仲間が、申し訳ありません」

主人「勇者様がたですとも、心配などしておりません。
    …はやく戻ってきてくださればよいですね」

勇者「ええ」

ゆうしゃ は にかい へ むかった

かいだん が きしむ

ぎし…ぎぃ…ぎし…ぎぃ…

ゆうしゃ は にかい へ たどりついた

ろうか が きしむ

ぎし…ぎぃ…
   ぎし…ぎぃ…

勇者「……」

ちかっ…ちかちかっ…

勇者(…ん…)

しかい が ちらつく

勇者(なんだ…)

…………
 
勇者(…………)

ぎし…ぎぃ…ぎし…ぎぃ…

勇者(……)

ゆうしゃ は まほうつかい の へや の まえ に たどりついた

勇者(…)

勇者(……)

――決して見てはならない

勇者(………)スッ

ゆうしゃ は つるぎ を かまえた
そのまま どあのぶ に て を かけた

どくん…
  どくん…

どくん…どくん…

ゆうしゃ は どあ を あけた


―ビュウ…
――ザアアアアアアアアアアア



へや の まど が あいている

まど は がたがた と おと を たてていた

ふきざらし の へや に あめ が まいこんでいる

勇者(……なにもいない…)

ゆうしゃ は へや に はいり、

まど を しめた


…パタン

勇者「……はあ」

勇者「まったく魔法使いのやつ…かえってきたら僧侶と一緒に説教だな」

ゆうしゃ は ふりかえった

          /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:..:..:..:..:i:i:i:i:i:i:` ゙̄ヽ、
           /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:..:..:,〟──--、_:i:i:i:i:i:..:.
         ノ:i:i:i:i:i:i:i:i,〆´ ̄´         :i:i:i:i:i:i:

        /:i:i:i:i:i:ハ'"´                ヽ:i:i:i:i:i:i:i
       /:i:i:i:i:/                    ゝ:i:i:i:i:i:i:i:
    _,ノ´:i:i:i:i/                      ヾ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ
    {:i:i:i:i:i:i:i:/                        :i:i:i:i:i:i:i:i:i:
   メ:i:i:i:i:i:i〈                    ,,,,,,、     ヽ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ
  〃丿:i:i:i:i:i:i:|                  ,〃""´``     ヽ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i、

 ル':i:i:i:i:i:i:i:i:i:}     ,,,,,,,           "//´ ̄ヾi}.     ヽ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i、
ノ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{    〃"´´`ェ、         (;;( ● ノ;ノ      .V:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iハ.   ii /;;/´●`;;}         ヾニニ"       V:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ
:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ハ.   ゙ヾヽ、__ノノ                     .'、:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
〉:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}    `  ̄ ̄                       1:i:i:i:i:i:i:i:ir-、
:i:i:i:i:i:i:i:

-----

神父『僧侶よ、よく聞きなさい』

幼い女僧侶『はい、しんぷさま』

神父『いいですか?この世には、生きとし生けるもののほか、悪霊や魔物など様々なものがいますが

   それらと【あれ】は、全く異なるものです』

幼い女僧侶『はい、しんぷさま』

神父『もしいつか、あなたが【それら】と対峙しなければならないとき

    必ず覚えておかなくてはならないことがあります』

幼い女僧侶『はい、しんぷさま』

神父『【かれら】はひとの猜疑心、恐怖心などにつけこみ
    ひどく狡猾に人間を【かれら】の世界へ引き込もうとします』

幼い女僧侶『はい』

神父『そのとき、あなたは【それ】から決して目をそむけてはいけません
    ここでいう目をそむけるとは、なにかものを見る見ないということではなく
    恐怖に耐えるということです。では、ここで大切なこととはなんでしょうか?』

幼い女僧侶『はい、しんぷさま。しんこうをわすれないということです』

神父『その通りです。信仰を持ちなさい。たとえ深い淵の底からなにかがのぞきかえしていようとも
   ルビス様のご加護が常にあなたを照らしていることを覚えておきなさい
   そうすれば【あれら】は決してあなたに手を出すことはできないでしょう』

幼い女僧侶『はい、しんぷさま』

……はい、神父様

--------------

女僧侶(……ありがとうございます、神父様)


【-----】 は じっと こちら を みつめている

女僧侶「…なにゆえ現世を彷徨うか」

【-----】 は じっと こちら を みつめている

そうりょ は ロザリオ を にぎりしめた

女僧侶「【おぞましきもの】よ。この場より立ち去るがいい」

【-----】 は じっと こちら を みつめている

女僧侶「しおのかけらほどの信仰ですら、
       汝を我が神のもとにひざまづかせよう」

【-----】 は じっと こちら を みつめている

女僧侶「しりぞけ!」

そうりょ は ランタン を かざした

――ォオオオオオオオオオ

ひかり が あふれる

【-----】 は おそれ おののいている!

女僧侶「聖ルビスの加護よ。邪なる者より我らを守り照らしたまえ――!!」

――アーメン!

そうりょ は いのり、
     じゅうじ を きった !

【-----】 は おそろしい さけびごえ を あげている

【-----】 は もだえ くるしみ じめん に たおれこんだ

【-----】 は おそろしい さけびごえ を あげ のたうちまわっている

女僧侶(効いてる――けど!)

【-----】 は おそろしい ぎょうそう で こちら を みつめている !

女僧侶(【これ】は、こんな程度では倒せない…!!)

【-----】 は もだえ くるしみ ながら たちあがろう と している

そうりょ は にげだした !


……
そうりょ は 【-----】 を ふりきった !


――

女僧侶「はぁっ…はあっ……!!」

女僧侶「ごほ…けほ――はあ…」

女僧侶「……」

女僧侶(汗びっしょり…
     しかし…まさか、あれほどとは)

女僧侶(神に仕えるわたしですら…【あちら】へ引き込まれそうになった)

女僧侶(はやくまほさんを見つけないと…勇者様も…大丈夫かな……)

女僧侶「まほさん…爆発音はたしか…こっちで……」

そうりょ は まほうつかい を さがした

女僧侶「――あれは」

女僧侶「いた!」

そうりょ は まほうつかい を みつけた

まほうつかい は じめん に たおれこんでいる

女僧侶「…!! まほさん!」タタタッ

そうりょ は まほうつかい を だきおこした

女僧侶「まほさん、しっかりしてください!」

女僧侶「まほさん!」

女魔法使い「…う……」

女僧侶(…よかった。気絶してるだけみたい……)ホッ

女僧侶「まほさん、大丈夫ですか?」

女魔法使い「…僧侶ちゃん?……あれ、わたし……」

女僧侶「大丈夫。さあ、戻りましょう?」

女魔法使い「…うー……頭痛い…」

女僧侶「……」

女僧侶(…かすかに…なにか気持ち悪い気配がまとわりついてはいるけど…
     本当に大丈夫みたい…)

女僧侶(わたしが来たせいなのか…ともかく、間一髪でしたね)

女僧侶(……よかった…)

そうりょ は まほうつかい に かた をかした

ふたり は やど へ もどっていった………

……

本日はここまで。
霊柩車を見かけたら親指を隠すと昔教わったことはありませんか?
あれは実は……いいえ、なんでもありません。
おやすみなさい

☆ 【それ】はとても狡猾に、あなたを【あちら】側へ引き込もうとする
     ゆえに祈りなさい。
          信仰こそが【かれら】と立ち向かう唯一にして最大の武器なのだから。

―ルビス聖書・第11節 使徒宣教 より

――


女僧侶「…」

ひゅう…ばたん。

そうりょ は やど の いりぐち を しめた

女僧侶「とりあえず一安心…でしょうか」

女魔法使い「うー…ごめんね…」

女僧侶「まったくです。結果的に無事だったからよかったものの…
      なにかあってからでは遅いんですからね!」

そうりょ は おこっている !

女魔法使い「やー、たかだか魔物退治なら一人でできるかなって」

女僧侶「ですから、【あれ】は魔物ではありません
        …とにかく今日はもう慎んでくださいよ」

女魔法使い「わかってるってー、僧侶ちゃん。くひひっ」

女僧侶「…本当にわかってるんですよね?」

女魔法使い「ところでさー…」

女僧侶「?」

まほうつかい は ふしぎそう に あたり を みまわしている

女魔法使い「…なんか、すっごく静かだね?」

女僧侶「……そういえば」

そうりょ も あたり を みまわした

やど の なか は しずまりかえっている

女僧侶「……あれ…?」

女魔法使い「どうかした?」

女僧侶「いえ……ご主人や勇者様たちがいらっしゃらないな、と」

そうりょ は かんがえこんでいる

女魔法使い「もう寝ちゃったとか?
         はー…そんなことより部屋に戻って休みたいな…疲れちゃった」

女僧侶「……」

女魔法使い「頭も痛いし…ごめん。先に部屋に戻ってるね?」

女僧侶「…」

女魔法使い「僧侶ちゃん?」

女僧侶「…やはりちょっと…気になるので、先に安全を確かめてからでも構いませんか?」

女魔法使い「…ん。なんか気になる?」

女僧侶「勘ですけどね。先にわたしが二階をしらべてきますので…」

女魔法使い「…うん。任せたよ。僧侶ちゃんの言うとおりにする」

女僧侶「……今回はやけに聞き分けがいいですね?」
          
女魔法使い「助けてもらったばっかりで、さすがに勝手はね?」

女僧侶「ふふっ、ありがとうございます。
       それと、念のため、塩が欲しいので食堂へ行きましょう」

女魔法使い「…塩?」

女僧侶「聖職者の必須アイテムなんですよ?」

そうりょたち は しょくどう へ むかった …

――食堂前

あたり は しずまりかえっている

女魔法使い「…食堂前までの廊下、こんなに長かったっけ?」

女僧侶「こんなものだったと思いますよ」

女魔法使い「ふぅん…そっか、気のせいか」

女僧侶「恐怖心はなにかを冗長に見せかける効果がありますからね
         ひょっとしたら、そのせいかもしれません」

女魔法使い「えー…わたし別に怖がってないよぉ」

女僧侶「はいはい…では、開けますので…
        いいですね?わたしから決して離れないようにしてください」

女魔法使い「う、うん…」ギュゥ

女僧侶「そんなにくっつかなくてもいいですけどね?」

そうりょ は しょくどう の とびら を あけた


しつない は ろうか と ちがい、
        くらやみ に おおわれている

女僧侶「…しつないランプを切ってる…まあそうですよね。
         ランタンで照らしながらゆっくり…」

女魔法使い「……」クイクイ
女僧侶「?」

まほうつかい が そうりょ の そで を ひっぱっている
なにか いいたそう だ

女僧侶「…どうかしましたか?」

女魔法使い「真っ暗だね」

女僧侶「ですね…」

女魔法使い「ひょっとしてランタン使うとか考えてる?」

女僧侶「まあ、それは」

女魔法使い「ふっふっふ」

女魔法使い「ここに偉大なる魔法の使い手がいることを忘れてなーい?」

女僧侶「あ」

女魔法使い「昼夜逆転ラナルータ、雨雲呼び込むラナリオン…それに続く超魔法!」

女魔法使い「室内限定、停電のおとも! 室内限定ラナ系魔法!!」

女魔法使い「てーらせ~♪」キュピン

まほうつかい は ラナ を となえた !

女僧侶「す、すごい!」

しかし なに も おこらなかった !

女僧侶「……」

女魔法使い「………」

女僧侶「…偉大な魔法使い…」ボソッ

女魔法使い「あああ…違うよぉ…!なにかの間違いだよぉ」

女魔法使い「ラナ!ラナ!!」

まほうつかい は ラナ を となえた !

しかし なに も おこらなかった !

女僧侶「…つきませんね」

女魔法使い「やっぱりダメかあ…」

女僧侶「やっぱり?」

女魔法使い「いやあ…実は、外で戦ってるときにさ、ラナルータを試したんだよね」

女僧侶「…気軽に言ってますけど、あれ、ものすごい大魔法ですよね?
       なにせ公転をいじるんですから…ものすごく迷惑な古代魔法って銘打たれるくらいの」

女魔法使い「ま、そこは大魔道士のまほさんだから? …で、それとして。
            ラナルータ、効かなかったんだよねー」

女僧侶「効かない…ラナルータがですか?失敗は……」

女魔法使い「わたしに限って?」

女僧侶「ないですよねえ…」

女魔法使い「あのへんなのと戦ってるとき、攻撃魔法が効かないのすぐわかったからさ
         暗闇から引きずり出してやれって思って使ってはみたものの」

女僧侶「そうだったんですね」

女魔法使い「攻撃魔法はちゃんと使えるみたいなんだけど」

女僧侶(まほさん、魔法に関してだけは間違いないからなあ…)

女魔法使い「…だからさ、なんていうのかな」

女僧侶「はい」

女魔法使い「どーも普通の暗闇じゃないみたいなんだよね
          だからどーだこーだってわかるわけじゃないんだけど」

女僧侶「………」

女僧侶「なるほど」

女僧侶(ということは…少なくとも、ここの暗がりは…)

女僧侶(外と同質のもの…ということでしょうか)

女僧侶(……いやな気配は感じないけれど…)

女僧侶「まほさん」

女魔法使い「うん?」

女僧侶「なかにはいりますよ。ぎゅっとしててください」

女魔法使い「さっきと言ってること違うね?別にいいけど」ギュッ

そうりょたち は しょくどう へ あし を ふみいれた

――ぎし…ぎぃ

きのゆか が きしむ

女魔法使い「…僧侶ちゃんってさ」

ぎしり…

女僧侶「?」

ランタン の あかり を たより に ちゅうぼう へ むかう

女魔法使い「怖くないの?こういう暗闇…とか」

女僧侶「怖くないことはないですが…今回はすこし事情が事情ですので。
       恐怖心は持たないように努めています」

ぎし…ぎぃ…
  ぎし…ぎぃ…

女魔法使い「かっこいい…あたし、どうもこういう暗がりって苦手なんだよね」

女僧侶「魔物退治だーって夜に飛び出していったひととは思えないセリフですね」

女魔法使い「それはそれ、これはこれっていう…えへ」

ぎし…ぎぃ…
  ぎし…ぎぃ…

女僧侶「あ、そこでっぱりあるから気をつけてください」

女魔法使い「うん、ありがと」ギュッ

ぎし…ぎぃ…
 ぎし…ぎぃ…

女僧侶「……」

女魔法使い「……」

ぎし…ぎぃ…
 ぎし…ぎぃ…

…ぎし……


女僧侶「…厨房は…ここですね」

女魔法使い「なに探してたんだっけ…塩?」

女僧侶「そうです。でも、どこにあるのか…」

女魔法使い「とりあえず適当にさがしてみよっか」

女僧侶「そうですね…お願いします」

そうりょたち は しお を さがした


しかし しお は みつからなかった …

……
 ……
   ……

というわけで本日はここまで。
おやすみなさい

☆ へんじ が ない 。 ただ の しかばね の ようだ 。

………
……

女魔法使い「…けっきょく、みつからなかったね、塩」

女僧侶「仕方ありません…戻りましょうか。またぎゅっとしててください」

女魔法使い「思うんだけど、わたしって足手まとい?」

女僧侶「違います、とは言いませんよ?」

女魔法使い「ひどいなあ…」

女僧侶「ふふっ、冗談ですよ。さあ、とりあえず入口まで戻って――『ぎゃっ!』」

がしゃーん!!

女僧侶「!?」ビクッ

女魔法使い「いったたたた……」

まほうつかい は しりもち を ついている

しょっき が あたり に さんらん している

女僧侶「ま、まほさん! 大丈夫ですか!?」

女魔法使い「いつつ…うん、へーきへーき。こけただけ」

女僧侶「もう、気を付けてください。そそっかしいんだから」

女魔法使い「ち、違うよぉ僧侶ちゃん。なにかにつまづいて……」

女僧侶「…?」

そうりょ は まほうつかい の あしもと を てらした

女僧侶「…床に扉がついてますね……ここの取っ手に足をひっかけたんですね」

女魔法使い「なんでそんなとこに扉があるのさ…」

女僧侶「ひょっとしたら床下に食糧なんかを貯蔵してるのかも。そうですね、ここ厨房ですもんね
     …塩も、もしかして」

女魔法使い「え、なになに?もしかしてお手柄?」

女僧侶「どうでしょう」


そうりょたち は ゆか の とって に ゆび を かけた
ゆっくり と とびら が ひらく …

ぎぃぃ…ぃ…


女僧侶「これは…」
女魔法使い「………階段?」

かいだん は ちか へ つづいている …

そうりょ は かいだん を ランタン で てらした

おく は くらく さき が みえない

女魔法使い「貯蔵庫…じゃ、なさそうだね…」

女僧侶「……!」

そうりょ は おののいた

女魔法使い「どうしたの?」

いっしゅん かいだん の おく で
  だれか の め
     が ひかった き が した

女僧侶「……なんでもありません」

ぎぃ…
   ばたん

そうりょ は とびら を しめた

女魔法使い「あれ? いかないの、階段」

女僧侶「いまわたしたちがするべきは探検ではありませんので。
      まずは部屋に勇者さまたちが戻っていないかを調べます」

女魔法使い「面白そうなのに」

女僧侶「まほさん…!」

女魔法使い「ご、ごめんってば。勝手はしないって、うん」

女僧侶「……約束ですよ?」

女魔法使い「ランタン顔のしたから照らしてすごまないでえ…」

まほうつかい は おそれ おののいている

そうりょ たち は きたみち を もどっていった …

――宿・入口前・受付所

女魔法使い「はあ…やっぱここが一番明るいね」

女魔法使い「どうしよう、僧侶ちゃん。塩ないなら、わたしも一緒に二階いったほうがいいよね」

女魔法使い「ね、僧侶ちゃん」

女魔法使い「……あれ?」

まほうつかい は あたり を みまわした

しかし だれ も みあたらなかった

女魔法使い「………僧侶ちゃん?」

女魔法使い「おーい、僧侶ちゃん」

女魔法使い「おーいってばあ!!」

まほうつかい は あたり を みまわした
まほうつかい は おおごえ を あげた

しかし だれも いなかった

女魔法使い「…………」

やど は しん と しずまりかえっている

女魔法使い「じょ、冗談きついよ…僧侶ちゃん」

――僧侶『ぎゅっとしててくださいね?』

女魔法使い(い、一瞬…ここで、はなれただけじゃない…なに、いったい……)

女魔法使い(どうしよう…ここで待ってたほうがいいのかな…)

――ぼぉぉーーーん…

女魔法使い「!」ビクッ

――ぼぉぉおーーん…
―ぼぉぉーーん…

とけい の かね が なっている

女魔法使い(………)ドックンドックンドックンドックン…

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そのとき やど の あかり が きえた

女魔法使い(――!?)

あたり は くらやみ に とざされている

女魔法使い「…なによ、なによ!そ、僧侶ちゃん!僧侶ちゃんいないの!!」

…ぎし……

女魔法使い「……!?」

ぎし…ぎぃ…

あたり は くらやみ に とざされている

しかし かすか に
   なにか が ちかづいてくる おと が する

ぎし…ぎぃ…
 ぎし……ぎぃ…ぎし…

ぎし……ぎぃ
  ぎし…ぎぃ

女魔法使い「や…」

女魔法使い(やばいやばいやばいやばい…)ドックンドックンドックンドックン

女魔法使い(かく…隠れないと)ドックンドックンドックンドックン

まほうつかい は うけつけじょ の うら に まわりこんだ

まほうつかい は カウンター の した に もぐりこんだ

女魔法使い(…………)ドックンドックンドックンドックン


ぎし…ぎぃ…
 ぎし……ぎぃ……

女魔法使い(……)ドックンドックンドックンドックン


ぎし…ぎ…ぎし…ぎし…

女魔法使い(……すぐ、そこだ…)ドックドックドックドック

ぎし…ぎし…

女魔法使い(………)ドクドクドクドクドクドクドクドク

【それ】 は あたり を さがしているようだ …

まほうつかい は いき を ひそめている

女魔法使い(……!!!)ドクドクドクドクドクドクドクドク

ぎし……

女魔法使い(…………!!!)ギュゥ ドクドクドクドクドクドクドクドク


ぎし…
 ぎぃ…

女魔法使い(………)ドクドクドクドクドクドクドクドク


ぎし……
 ぎ………………

女魔法使い(………?)ドクドクドクドクドク…ドックンドックンドックン…




【それ】 は どこか に いってしまったようだ …

女魔法使い(………は…はあ…)ドックン…ドックン…ドックン…

女魔法使い(心臓…やば…ひさしぶりに…なんだろ)

女魔法使い(はじめて魔物と戦ったときみたい……汗、すご…)ハァ



そのとき やど の あかり が ついた

女魔法使い「あ…」

女魔法使い「……」ソーッ

まほうつかい は かうんたー から あたり を みまわした

しかし だれも みつからなかった

女魔法使い「……」

女魔法使い「……どうしよう…どうしたらいいんだろ…」

女魔法使い「僧侶ちゃん……どこいったの…僧侶ちゃん」

女魔法使い「……うぐ…」ジワッ

女魔法使い「ひく…うぇ……うぇぇ……ん」ポロポロ

女魔法使い(……ん…)グスッ

女魔法使い(ダメだダメだ…泣いちゃだめ…)ゴシゴシ

女魔法使い(魔王討伐しようなんて…女が…)

女魔法使い(ふつーの女の子みたいに泣いてたまるかってーの…!!)

女魔法使い(……とにかく僧侶ちゃんを探さないと…)

女魔法使い(……)グスッ

まほうつかい は たちあがった





戦士「あれ?おーい、まほぉ…」
魔法使い「せ"ん"し"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"いぃぃぃぃぃぃ!!!!」ガバッ

戦士「うおおおお!?」ガターン

せんし が あらわれた !

まほうつかい は せんし に だきついた

女魔法使い「あああああ…あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?」ブゥワッ

戦士「え、ちょ、怖いやめて、あ、うわあああああ」

<アッー

まほうつかい は せんし と さいかい した !

――


主人「どうぞ。暖かいスープです」

女魔法使い「ありがとうございます…はあ……おいし…」

戦士「ったくよー。お前といい勇者といい、おまけに僧侶までさ。昨夜から姿が見えないだの、かと思ったらお前はいきなり現れるだの」

女魔法使い「ごめん……って、え?」

戦士「んーで?僧侶たちは?」

女魔法使い「そ、僧侶ちゃんたち…いないの?」

戦士「僧侶はお前をさがしにいったきりってさ。勇者は…なんだかよくわからんがいなくなったと」

女魔法使い「……わかんない…わたしもなにがなんだか」

主人「申し訳ありません…。わたしももっときちんと注意すべきでした」

戦士「ま、考えたって仕方ねえさ。とにかく勇者たちを探そうぜ」

女魔法使い「う、うん…でも…どうしたらいいのかな……」

女魔法使い「あれは……ふつうじゃない…わ、わたしは僧侶ちゃんとずっと一緒にいたのに、
         でも、急にいなくなって…そしたら宿の灯りがきえて、なにかがでてきて
           それから…」

戦士「まあまあ落ち着け」

女魔法使い「…ん、ごめん…」

戦士「っても、どうするかな…お前の話が本当だとすると…
    むやみに探したって見つかりっこなさそうだな」

女魔法使い「……」

戦士「じゃあまあ、こういうの詳しそうなひと連れてくるほうがいいよなーやっぱ」

女魔法使い「…?」

戦士「なに不思議そうな顔してんだよ。んなもん一人っきゃいねーだろ」

女魔法使い「……あ、そっか…」

主人「…?」





まほうつかい は うなずいた

せんし は ちからづよい えがお で わらっていた …

本日はここまで。
ところで右側にちらっちら見えるエロ広告が気になってしょうがないんですけど…
おやすみなさい

☆ 必ずしも幸せな結末が訪れるとは限らない

--------
-----

女僧侶「……あれ?」

そうりょ は あたり を みまわした

しかし だれも いない ようだ …

女僧侶「…まほさん?」

女僧侶(…)

女僧侶(たったいままで…目の前にいたはずなのに)

女僧侶(……まさか)

女僧侶(……『引きずり込まれた』……?)

勇者「…僧侶?」

女僧侶「!?」

そうりょ は ふりかえった

勇者「…ああ、やっぱりだ。よかった、無事だったんだね!」

女僧侶「勇者様…?」

勇者「びっくりしたよ…魔法使いを探しにいったっきり戻ってこないし…」

女僧侶「………」

勇者「魔法使いは…見つかったの?」

女僧侶「……」

勇者「僧侶――」

女僧侶「なんて…なんて恐ろしい」

勇者「…?」

女僧侶「……」

そうりょ は ふかぶか と あたま を さげた

勇者「僧侶」

女僧侶「お許しを」

そうりょ は こしもと の たんけん を ひきぬいた

勇者「!!」

そうりょ の こうげき !
たんけん が ゆうしゃ の むなもと に つきささった !

勇者「――!?」

僧侶「……」

ゆうしゃ は ひざ を ついた

勇者「僧侶…なんで…」

女僧侶「愚かな」

勇者「……」

女僧侶「言ったはず。しおのかけらほどの信仰ですら…」

勇者「……」

女僧侶「あなたをひざまずかせてみせよう…と」

勇者「………」


けらけら。
けらけらけらけら。

ゆうしゃ は とつぜん わらいだすと、

  こつぜん と そのすがた を けしてしまった …

女僧侶「……まほさん、お願い……心を強く持って。
     【それ】の恐怖におびえないでいて」

でないと …

--------
-----

戦士「それにしてもよー、まほ」

女魔法使い「ん?」

戦士「お前よく無事だったな?」

女魔法使い「…僧侶ちゃんがいてくれたからね」

戦士「そっか。ま、あいつも必ず助けような」

女魔法使い「うん…待ってて、僧侶ちゃん、勇者…」

【】「それじゃあ、いこうか」

女魔法使い「うん!」



―ぼぉぉーーーん…
 ―ぼおぉぉーーん……


-------------
---------
-----
--
-

短いですが、本日はここまで。
おやすみなさい

女僧侶(……2階を探すとはいったけれど)

そうりょ は へや を みてまわった

しかし だれも みつからない

女僧侶(やはり誰もいないみたいですね…)

そうりょ は かんがえた

女僧侶(…町全体を覆う【彼ら】の気配)

女僧侶(夜…【あれ】が跋扈しているものとして)

女僧侶(なぜこの町なのかしら?)

女僧侶(そこには必ず理由があるはず…【彼ら】がここを棲み家にする理由が)

女僧侶(あるいは……棲み家にしているというより、ここで【あれ】が生まれている?)

女僧侶(どちらにしろ、【あれ】がこの場所に縛りついた理由があるはず)

女僧侶(この場所から抜け出すならば、まずは【あれ】が【なにか】を知る必要がある…か)

僧侶(……次が最後の部屋ですね…)

ぎぃ… ぎし…

女僧侶(……)

そうりょ は どあのぶ に て を かけた…

……がちゃ…

ぎぃ……

女僧侶「…ん」

へや の まど が あいている …

まど の そと は しん と しずまりかえっている

女僧侶「……」

そうりょ は まど に ちかづいた
そうりょ は まど を しめた

…がたんっ…

女僧侶(……?)

そうりょ は あしもと を みつめた
ゆか に なにか おちている …

女僧侶(……手帳?)

そうりょ は てちょう を ひろった

女僧侶(……)

そうりょ は てちょう を めくった

女僧侶(……ルビス歴1387 火の月、8の日…古い。20年以上前の…)

そうりょ は ぺーじ を めくった …


『ルビス歴1387 火の月 8の日
野宿のすえ、ひさしぶりに町にたどり着いた
しかしまあ辛気臭い。町のやつらときたらどいつもこいつも死人みたいなツラしてやがる
こっちは長旅で疲れているっていうのに、冗談じゃない
とはいえ安い宿が見つかったのはよかった。久しぶりにゆっくり休めそうだ』

『だが、ゆっくり休むだけもつまらない。
そう思って女でも買おうかと夜に出かけようとしたら、亭主にすごい剣幕でとめられた
なんでもこの町は夜に出歩くことは禁止されているらしい。
理由を聞いたら『【見てはならないもの】が出るからだと
なんだそりゃ?
強引に出ようとしたら、じゃあ、金は返すから宿には戻るなと言われた。
そりゃ困るってんでおとなしく引き下がったが…
夜に外出禁止ってのはまた、えらいもんだ。この町の客商売は昼間だけで成り立ってるってのかね
もったいない』

『ルビス歴1387 火の月 9の日
朝方、外がやたら騒がしかった
なにかと思って亭主にたずねたところ、えらい高名な神官がやってきたらしいと言われた
これで町が助かるってんでそれで町のやつらが騒いでるんだと。
どいつもこいつも現金なやつらめ。
俺が来たときとはえらい違いだ。
まあ、たしかに俺には関係ないが。』

『ルビス歴1387 火の月 10の日
昨日あれだけ騒いでたのに、今日はまた静まりかえってやがる
今度はどうしたと亭主にたずねたら、例のえらい高名な神官様が逃げ出したらしい
というより、実際は神官ではなかったらしい。偽物ってやつだ。
金だけもらって逃げたんだとさ。
なるほど、それでこの空気。
返す返すも現金なやつらだ
他人を頼って一喜一憂、疲れないのかね。
俺はごめんだ。』

『ルビス歴1387 火の月 11の日
いいことを思いついた。
一儲けできそうだ。』

『ルビス歴1387 火の月 15の日
準備を進めていると、町にまたひとり神官を名乗るやつがやってきた。
今度は女で、まあとんでもない美人だった。しかしこないだのこともあるし、特に名のしれた神官でもないらしく、
町のやつらは慎重だ。
でも俺にはわかる。あいつは本物だ。
このままだと俺の計画に支障がでるかもしれない。
どうするか。』

『ルビス歴1387 火の月 17の日
今日の夜、例の神官が呪いをおこなうらしい。
そのあいだは、ひとりですべてやると。

思った通りだ。

あの女神官、容姿もいいが、からだつきもたまらない。
ついでだ、楽しませてもらうか。
さて、どこから出るか。
入口は亭主がうるさい…となれば、ここからしかないな。』

しゅき は ここ で おわっている

女僧侶「……」

女僧侶「手がかりには…なりませんね」

そうりょ は しゅき を とじた。

女僧侶「……あと、この宿で見ていないところは……」

女僧侶(厨房の、地下ですか)

女僧侶「……」

『いっしゅん かいだん の おく で
  だれか の め
     が ひかった き が した』

女僧侶「…」

女僧侶「行くしかないですね…」ハァ

そうりょ は しゅき を ゆか に おいた

そうりょ は ふりかえった

そこ には なにも ない

そうりょ は へや を あとに しようと …

女僧侶「地下を探してなにもなかったら…ここからどうやって……」

どあのぶ に て を かけた

女僧侶(……?)

――ない

女僧侶(……声?)

どあ の むこう から かすか に こえ が きこえる …

女僧侶(……)

そうりょ は そっと みみ を すませた

――じゃない
ぎぃ…ばたん

女僧侶(……隣…でしょうか。とびら?開け閉めをするような…)

――こじゃない

女僧侶(……女性の声…)

そうりょ は さらに みみ を すませた
こえ に しゅうちゅう する――

女僧侶(…『こ』?)

女僧侶(こ、こ…ここ?『ここ』って言ってるみたいですね…)

女僧侶(『ここ…じゃ、ない』)



≪ こ こ じゃ な い ≫



女僧侶(――っ!!)ゾクッ

――ぎぃ…ばたん

女僧侶(向かい側…?でも、この気配…これは……!)

そうりょ は へや の なか を みまわした

そうりょ は ベッド を みつけた

そうりょ は ベッド の した に もぐりこんだ

女僧侶(……)

そうりょ は いき を ころして、

み を ひそめている ……

女僧侶(……)ドックン、ドックン…

―ぎぃ……

女僧侶(…っ!?)

――ずんっ!

なぞ の けはい が おもく のしかかる !

女僧侶(こ、これは…まさか……!な、なんてこと……!)ドックン、ドックン、ドックン

ぺた…
ぺた…ぺた…

女僧侶(外で見た【あれ】の比じゃない…こ、これは…ひょっとして、これが)

ぺた…ぺた……

ぺた……ぺた…

女僧侶(【見てはならないもの】…!)


【見てはならないもの】 は へや の なか を うろついている !
【見てはならないもの】 が へや の なか を さがしまわっている !

女僧侶(……っ!)ドックンドックンドックンドックン

ぺた、ぺた、ぺた、ぺた

女僧侶(………)ドクドクドクドクドクドク

そうりょ は ロザリオ を にぎりしめた

女僧侶(……!)ギュッ

ぺた、ぺた、ぺた、ぺた

ぺた、ぺた、ぺた…

≪ここじゃない…≫

ぺた、ぺた、ぺた

ぺた…ぺた……ぺた……

あしおと が とおざかっていく …

女僧侶(……)ドクドクドクドクドクドク

女僧侶(……)ドックンドックンドックンドックン

女僧侶(……)ドックン、ドックン、ドックン…

そうりょ は おおきく いき を はいた

女僧侶(……ん。…気持ち悪い…吐きそう。胃が、痙攣してる…)

女僧侶(……あぶなかった)

女僧侶(あれは…対峙してはならない。することもできない。逃げないと…だけど、宿の中をうろついてるとしたら)

女僧侶(……運がよかったですね)ハァ

女僧侶(といっても、現状することが変わるわけでもないのが…ん)

そうりょ は ベッド から はいずりでた
そうりょ は ベッド に こしかけた

女僧侶(…あれほどの気配を持つものであれば、なにか大規模な儀式と…憑代のようなものがあったはず)

女僧侶(それがこの宿に…)

女僧侶(…やはり地下はしらべたほうがよさそうですね)

女僧侶(あまり、気乗りはしないですが)ハァ

女僧侶「……」

女僧侶「……見つからないようにしないと」

そうりょ は みみ を すませながら そっと へや を でた

けはい は ない

そうりょ は ゆっくり と ちゅうぼう へ むかった …

………
……

本日はここまで。
なにがとは言いませんがすみません(迫真)

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