風来のデレマス 鬼襲来、ハル城!! (56)

シレン2×デレマス
デレマス以外のアイマスキャラも出演するかも

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430663564

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 旅の神クロンの導き
 混乱には知恵を
 恐れには勇気を
 印の宿りし剣をつらぬけ
 海の遥か上空へ
 鳥達を運ぶ風のように──


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─森の中─


ハル「……なあ、アスカ」

アスカ「……なんだい、ハル」

ハル「……オレらが最後に飯を食ったのって、いつだったっけ」

アスカ「……さて、どうだったかな。ボクの記憶が確かなら、確か三日くらい前に道端に生えてた草を食べてからこっち、
水以外の物を一切口にしていないような気がするね」

ハル「……道理でこうも腹が減るわけだ。
いい加減、何処かしら人里を見つけて食料にありつかないと、マジで飢え死にしちまうぞ……」

アスカ「……この地図によれば、もう暫くすると小さな渓流があって、
それを越えればナタネ村までもう少しらしいけど……」(耳を済ませる仕草)

アスカ「…………
……微かにだけど、水が流れる音が聞こえるね」

ハル「水……って、事は!」

アスカ「ああ。
……どうやら、あと少しで久方ぶりにまともな食事を取ることが出来るみたいだよ、ハル」

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 風来人、と呼ばれる人間がいる。

 世に溢れる不思議を探し、富や名誉を求め、
自身の知的欲求を満たす為に、危険を顧みず世界を回る旅ガラス。

 旅の神であるクロンの祝福を受け、
彼ら、あるいは彼女らは、今日も終わりの見えぬ旅路を進む。


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─森の中・渓流を越えてすぐの所─


ハル「なあ、アスカ! 確か、ナタネ村にはむみゅうってうどん屋があるんだよな!!」

アスカ「ああ。前の村で聞いた話によると、少なくともこの近辺の人里にあるうどん屋の中では、
ダントツで美味しいって話だよ。本当の所はどうなのか、実際に店に行ってみないと理解らないけどね」

ハル「へえー……。あ、やべ、よだれ出てきた」

アスカ「やれやれ。君も女の子なんだから、もう少し慎みを持った方が良い……ほら、手ぬぐい」

ハル「あ、悪い悪い。……まあ、そういうお前だって、さっきから表情が緩みっぱなしだけどな」

アスカ「え? ……い、一体何を言っているのやら(キリッ」

ハル「……いや、今更いつもの澄まし顔になったって遅いからな(ジトー」

ハル「…………ん?」

アスカ「? どうかしたかい?」

ハル「いや、あそこ……」

少女「……! …………!!」ガチャガチャ

アスカ「……女の子?
何であんな所に蹲って……いや、違う。あれは……罠……トラバサミに引っ掛かっているのか?」

ハル「ッ……助けにいくぞ、アスカ!」

アスカ「言われなくても……!」

少女「キャッ!? ちょ、さわらないでよ、人間のくせに!」ジタバタ

ハル「うおっ!? おいこら、暴れるな!
おい、アスカ! こいつはオレが抑えてるから、その隙に罠を!」(少女を羽交い締めにする)

アスカ「ああ!」

(罠が外れる音)

少女「あ…………」

アスカ「……どうやら足を怪我しているみたいだね。ハル、薬草は持ってるかい?」

ハル「ああ。さっき拾った奴で良ければな」(薬草を投げる)

アスカ「っと……」(薬草を受け取る)

アスカ「もう少しじっとしてて貰えるかい?
パパっと傷の手当を済ませてしまうから」(懐から包帯を取り出す)

アスカ「…………
これでよし……と」

ハル「ほら、立てるか?」(少女に手を差し伸べる)

少女「…………」(ハルの手を取り立ち上がる)

少女「……まさか、このアタシが人間に助けられるだなんてね。
……ま、一応礼は言っておくわ。……ありがとう」

アスカ「どういたしまして。
しかし……」(少女の頭に生えている二本の『角』をチラ見)

『鬼』の少女「…………」

アスカ「……ナタネ村の近くには鬼族が棲む島があるって噂を聞いてはいたけれど、
まさかこうも早くに遭遇出来るとは、ね。
……名前を聞いても良いかな、お嬢さん?」

リサ「……リサ」

アスカ「リサ、か。……良い名前だね。
ボクの名前はアスカ。そしてこっちが相方の……」

ハル「ハル、だ。よろしくな、リサ」

リサ「…………」(ジト目)

ハル「……なんだよ」

リサ「別に。ただ、アンタ達って相当な変わり者なんだなって思っただけよ。
……普通の人間だったら、相手が鬼だとわかってて助けたりはしないんじゃないの?」

ハル「別に……鬼なんて風来人やってりゃ割りと良く見かけるしなぁ」

アスカ「地方によっては普通に人間と共生していたりするからね。
ちょっと気が短くて乱暴な所はあるけど、本質的には人間と殆ど変わらない……と、ボクは思ってるよ」

リサ「人間と共生……」

アスカ「君の仲間は違うのかい?」

リサ「全然。むしろ、人間相手に乱暴を働いてる時の方が多いくらいよ」

ハル「乱暴?
……取って食ったりとか?」

リサ「さすがにそんな事はしないわよ……精々、時々そこの村まで集団で押しかけて、
建物を壊したり畑を荒らしたりするくらいね。
ずっと昔にはアンタが言うように人を食べたりもしてたらしいけど、
アタシのパパがボスになってからは、暴れるにしても人を殺したりはしないようにって言いつけてるみたい」

ハル「ふうん……ってかお前の親父、鬼のボスなんだ」

リサ「うん。強くて格好良くて……アタシの自慢のパパなのよ。
……ちょっと脳筋なのが玉に瑕だけど」

アスカ「……ところで、一つ聞いてもいいかな?」

リサ「ええっと……確か、アスカだったっけ。何?」

アスカ「さっき、そこの村まで……って言ってたけど、
その村っていうのはナタネ村の事かい?」

リサ「そうだけど……それがどうかしたの?」

二人「…………」

リサ「? 何よ、二人して黙り込んじゃって」

ハル「いや……オレら、今からナタネ村に行こうって思っててさ」

アスカ「あの村の近くにはシュテン山を始めとして、
様々な不思議のダンジョンがあるって話だから、当座の拠点にするつもりだったんだけど……」

ハル「鬼がたまに来て暴れて回ってるってんじゃなあ……」

リサ「…………」(思案顔)

リサ「……うん。そういう事なら、アタシがどうにかしてあげるわ」

ハル「と、言うと?」

リサ「アタシも一緒にナタネ村まで付いて行くから、
もしもパパの手下が出てきたらアタシが説得してあげる。
……アンタ達には、さっき助けて貰った借りがあるから、ね」

アスカ「それは願ってもない話だけれど……さっきの話を聞く限りだと、
あの村の人間の大半は、鬼に対して良い感情は抱いてないんじゃないかい?
……そこに君を連れて行くのは、正直気乗りがしないね」

リサ「勿論その辺は抜かりはないわ。
実は、今日もあの村に忍び込んでお買い物をして行くつもりだったから、
ちゃんと角を隠す為の帽子も用意して……」(懐を探る仕草)

リサ「用意……して……」

リサ「…………
あれ……?」(冷や汗タラー)

ハル「はあ……しょうがねえな」(被っていた三度笠を外し、リサの頭に載せる)

リサ「あ……」

ハル「とりあえず村で代わりの帽子を買うまで、それ被ってろ」

リサ「……ありがと。
借りを返すつもりが、また新しく借りを作っちゃったわね」

ハル「別に、この程度貸しだなんて思ってねえよ。
そんじゃ、そろそろ行こうぜ。……いい加減、腹が減って死にそうだ」



つづく

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とりあえず今回はここまで

シレン2最初からやり直したいけど、テレビの入力端子が他のゲーム機で埋まってるせいで64をテレビに繋ぐのが正直面倒臭い
WiiかWiiUの64VCで配信してくれればいいのに

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─ナタネ村─


アスカ「ここがナタネ村か……」

ハル「へぇ、初めて来たけどなかなかいい村(とこ)じゃねえか。
この村にはどんな不思議(ダンジョン)があるのかなぁ」

アスカ「しかし、鬼が度々やって来て暴れ回ってるって割には、
特にそれらしい痕跡は見当たらないようだけど……」

リサ「うーん。
なんでかは知らないけど、この村の大工ってやたらと仕事が早いらしいのよね。
どれだけ徹底的に家を壊しても、次の日には大体元通りになってるって、昔パパの手下が言ってたわ」

ハル「ふーん……」

アスカ「ま、それはさておき。
まずはとりあえず腹ごしらえと洒落込もうか。
リサ。申し訳ないけれど、君の買い物は後回しにして貰えるかい?」

ハル「そうだな……
そろそろ腹に何か入れとかないと、冗談抜きでぶっ倒れそうだ」

リサ「……さっきからなんか変な音が鳴ってると思ったら、アンタ達の腹の音だったのね」

アスカ「……お恥ずかしながら、ね。
ここ三日くらい殆ど何も食べてないんだ、少しは多めに見てもらえると助かるかな」

リサ「三日って……何というか、風来人って大変なのね」

ハル「ところで、リサ。お前、この村には何度か来たことがあるんだよな?」

リサ「え? ああうん、そうだけど。それがなにか?」

ハル「それじゃあさ、『むみゅう』……っていううどん屋は知ってるか?
前にオレらが居た村で、噂をチラっと聞いたことがあるんだけど」

リサ「むみゅう……ああ、それなら……」(川の向こう、橋を渡ってすぐの所にある建物を指さす)

リサ「あの建物よ」

アスカ「ふむ、あれが……ところで、君はあの店に行ったことは?」

リサ「何度かあるわ……というか、村に遊びに来た時はほぼ必ず寄ってるから、殆ど常連みたいなものね」

ハル「ふうん。……つまり、何度も寄りたくなるくらい美味い店なのか?」

リサ「そうね……この村にはここ以外にも食堂や宿屋は幾つかあるけど、その中でもダントツで美味しいのは確かね。
勿論おつゆも美味しいんだけど、特にあのシコシコの麺が絶品で……」

アスカ「ふふ……君がそこまで言うとは、どうやら噂に違わぬ名店のようだ」

ハル「ああくそ、リサの話を聞いてたらますます腹が減ってきた……
ヒャア、もう我慢できねえ!」(叫びながら走りだす)

リサ「あっ! ちょっと、待ちなさいよ!」(ハルに続いて走り出す)

アスカ「……やれやれ。慌てなくてもうどんは逃げやしないというのに」(苦笑しながら首をすくめる)

ハル「おーい、アスカ! 何やってんだ!
早くしないとお前の分まで食っちまうぞー!」

アスカ「ああ、ごめん。今行くよ」


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─むみゅう─


少女店主「いらっしゃいませ。……三名様ですね?
ちょうどお座敷が空いておりますので、そちらにどうぞ」

(案内された席に座る三人)

アスカ「……ふむ。
こういうお店はそれなりに歳の行った人が切り盛りしてるってイメージがあったけれど……(キョロキョロ」

アスカ「……見たところ、他に店員の姿はなし、と。
ボクと歳の頃はそう変わらないようだけど、まさかあの娘が一人で調理から接客までやっているのかい?」

リサ「基本的にはそうね。お昼の忙しい時に先代の店主が出てきて接客の手伝いをする以外は、
ずっと一人で店を回してるみたいよ?」

ハル「ふうん……まだ若いのに随分とご立派なこった……」

少女店主「お待たせしました、注文をどうぞ」(伝票を手にやって来る)

ハル「えっと……オレはきつねうどんで」

アスカ「ボクは月見うどん。ネギは多めでお願いするよ」

リサ「アタシはいつものでー」

少女店主「かしこまりました。……久しぶりね、リサ」

リサ「久しぶり、シズカ」

少女店主→シズカ「何だか見慣れない子達を連れてきてるみたいだけど……
新しいお友達かしら?」

リサ「友達……
……そうね。まあそんな所かしら。
さっき、アタシが村の近くで困ってた所を助けて貰ってね、
その恩返しって事でこの村を案内したげてるのよ」

シズカ「へえ……私はシズカ。この店の店主をやらせて貰ってるわ。
貴方達のお名前、聞かせて貰っても構わないかしら?」

ハル「ああ。オレはハル。そんで、こっちが相棒の……」

アスカ「アスカ、だよ。しばらくこの村に居座るつもりだから、よろしくして貰えると助かるかな」

シズカ「ええ、勿論。こちらこそよろしくね、ハル、アスカ。
それじゃ、うどんが出来上がるまでゆっくりしていってね」(言いながら厨房に引っ込んでいく)

ハル「…………
ああ、ダメだ、もう限界……」(机に突っ伏す)

アスカ「だらしがないよ、ハル。あんまり公共の場でそういう格好をするもんじゃない」

ハル「ンなこと言われてもな……限界なもんは限界なんだから、しょうがないだろー……(ダラーン」

リサ「…………」(ハルのほっぺたをツンツンつつく)

ハル「…………なにすんだよ?」

リサ「いや、何か柔らかそうだったから、つい(ツンツン」

ハル「…………
……まあ、いいや。抵抗するのも面倒くせー……」

アスカ「ふむ……
…………(ツンツン」

ハル「…………」(最早反応するのも億劫なのでされるがまま)

シズカ「お待たせしました。きつねうどんと月見うどんネギ多め、それとたぬきうどんです」(注文の品を載せたお盆を持って来る)

ハル「来たか!!(ガバァッ」

リサ「うわっ……なんか急に元気になったわね。
一体どれだけ楽しみにしてたのよ……」

シズカ「ふふ、そんなに喜んで貰えるとうどん屋冥利に尽きるわね」

シズカ「……それじゃあ、ごゆっくりどうぞ」

アスカ「……はい、割り箸」

ハル「サンキュー」

リサ「ありがとう」

(割り箸を割る音)

三人「いただきます」


####

ハル「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!
……お代わり!!」

シズカ「はい、ただいまー!」

リサ「……幾らお腹が空いてるからって、ちょっとがっつき過ぎでしょ、あんた……」

アスカ「いやはや全く……ガツガツ……キミだって仮にも女の子なんだから……ムシャムシャ……
もっとお淑やかにだね……ハフハフモグモグ……ゴクゴク……
あ、ボクもお代わりを……いや、今度は奮発して天ぷらうどんでも頂こうかな」

リサ「……あんたが言うな。
というか、やっぱあんたも相当お腹空かせてたのね。ずっと澄まし顔でいたから解らなかったけど……」

アスカ「ゴクゴク……」(お冷を一気飲み)

アスカ「ぷはぁ……
まあ、これでもボクはハルよりも少しお姉さんだからね。
あんまりみっともない姿を見せる訳にはいかないから、今までずっと気を張ってたのさ。
でも……これだけの飢餓感に身を蝕まれている所にこれだけ美味しい料理を持って来られたら、
さすがに心の昂ぶりを抑え切れない……!」

リサ「大げさな……って訳でもないか。なんせ、三日間もご飯抜きだったんだものね。
こういうのって、風来人やってると割りとよくあることだったりするの?」

ハル「うーん……まあ、確かに、風来人と食料不足は切っても切れない仲ではあるけど……」

アスカ「ここまで徹底的に食べ物に避けられるのは、中々珍しい気もするね」

ハル「前の村を発った直後にどろぼうハウスに足を踏み入れて、買い込んだ食料とアイテムを全部かっぱらわれる。
ようやくおにぎりを拾えたと思ったら大洪水の罠で台無しになる。
こういう時に限ってにぎりへんげはちっとも出てこない……改めて振り返ってみると、
マジで冗談としか思えないくらい悲惨だよなぁ、これ」

リサ「……本当に大変だったのね、あんた達。
ま、暫くは冒険の事も忘れてこの村でゆっくり過ごしなさいよ。
鬼ヶ島の連中には、暫く村に来ないようアタシから言っておいてあげるから──」

(大きな鐘の音が村中に響き渡る)

ハル「何だ、この音──」

リサ「これは……もしかして……」

男の声「鬼だ──」



男の声「鬼が出たぞおおおおおおおお!」




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─ナタネ村─

(鬼達の襲撃によってボロボロになった村の様子を眺める三人)

ハル「…………」

アスカ「…………」

リサ「…………」

ハル「……『もしもパパの手下が出てきたらアタシが説得してあげる』」

リサ「うっ……(グサッ」

アスカ「……『鬼ヶ島の連中には、暫く村に来ないようアタシから言っておいてあげるから』」

リサ「ううう……(グサグサッ」

ハル「……威勢良くあいつらの前に出て行ったのはいいけど、完全にスルーされてたな」

アスカ「まあ、あれだけのスピードで走って来ていたんだ、
目の前に急に飛び出して来た人の顔を識別する事なんて出来はしないだろうさ」

ハル「ま、それもそうか。
しかし、人には極力手を出さないようにしてるってのは本当なんだな。
正直半信半疑だったんだけど」

アスカ「とはいえ、これだけの被害が出てるんだ……人的被害が殆どないから、
で済ませて良い問題ではないと思うけどね……」

ハル「幾ら大工が頑張れば一晩で直せるっつっても、資源は有限なんだしなぁ」

リサ「…………(ムスッ」

ハル「……リサ?
……あー。悪い。ちょっとからかいすぎた、か?」

リサ「……別に。その事で怒ってるわけじゃない、から」

ハル「……そうか?
なら、いいんだけど……」

アスカ「…………」

ハル「……そういえば。村の人達はどこに行ったんだ?
その辺で伸びてたシズカも、いつの間にか居なくなってるけど……」

アスカ「ああ。何でも、今後の方針について神託を仰ぐために、
神社で集会を行うんだってさ。ほら、あそこ……」(村の片隅にある鳥居の方に視線を向ける)

ハル「……あ、本当だ。村人達が鳥居の下をくぐって行ってる。
……神託……つまり、神頼みって事か? それでどうにかなる問題じゃないと思うけどなぁ、これ」

アスカ「……まあ。こうやって荒廃した村をボーっと眺めてても何も得るものはないだろうし、
折角だから集会の様子でも見学させて貰うとしようか。
ひょっとしたら、何か面白いものでも見せて貰えるかもしれないしね」

ハル「……そうだな。
リサ、お前はどうする?」

リサ「……アタシ?
……そうね。どうせ島に帰っても特にやることがある訳でもないし、
もうちょっとあんた達に付き合うとするわ。
……借りも結局まだ返せてないし、ね」

アスカ「……決まりだね。それじゃ、行こうか」

####

今回はここまで

中古ゲーム屋で買ったきり積みっぱなしのシレン3に手を付けるべきか付けないべきかで悩んでる
クリア後ダンジョンは割りと面白いって話を聞いた事があるけど、実際の所はどうなんだろうか


─神社─


村長(全身真っ黒)「必勝ダルマ様……
鬼どもの悪さから身を守るため、どうかご神託を!」(祀られている片目のダルマに向けて玉串を振っている)

ハル「…………」

アスカ「…………」

リサ「…………」

アスカ(……どうやら、特にこれといって面白いものは見れそうにないね)

ハル(……みたいだな)

リサ(……どうする? このままお祈りしてるのを眺めてても、時間の無駄じゃない?)

アスカ(……とりあえず、外に出ようか)

リサ(……そうしましょう)

####

─神社境内─


アスカ「……ん? これは……」

ハル「どうした?」

アスカ「羽子板と……羽根、だね」

リサ「何で正月でもないのに羽根つきの道具が一式揃って落ちてるのよ……」

ハル「ま、何でもいいじゃん。どうせ暇なんだし、暫くこれで遊んでようぜ」

アスカ「そうだね。たまには童心に帰るのも悪くない……か」

ハル「罰ゲームはどうする?」

リサ「ここはシンプルに、勝った方が負けた方の顔に筆と墨でラクガキ、でいいんじゃない?」

アスカ「うん。ボクはそれで構わないよ」

ハル「オレもオーケーだ」

リサ「それじゃ、まずはアスカとハルで一試合やって、負けた方はアタシと交代ね」

アスカ「了解。……所詮遊びとはいえ、勝負は勝負だ。
容赦はしないよ、ハル」

ハル「それはこっちのセリフだぜ、アスカ。
お前の澄まし顔、さっきの村長みたいに真黒に染めてやる!」


####

─神社─

マルジロウの子ども「(ヒョコッ」(必勝ダルマ様を興味ありげに見つめている」

マルジロウの子ども「…………(キョロキョロ」

マルジロウの子ども「……ぷぅ!」(丸まって必勝ダルマ様に体当たり)

村長「やや、マルえもん!?」

(体当たりの衝撃で必勝ダルマ様が転がり出し、すぐ目の前にいた村長を跳ね飛ばす)

村長「うわぁ! ……必勝ダルマ様が!
誰か、止めてくれえぇ~!」


####

─神社境内─


アスカ「──ふっ!」

ハル「おらァ!」

アスカ「なんのっ!」

ハル「通すかっ!」

アスカ「通してみせるさ! ふふ、中々やるじゃないか、ハル!」

ハル「てりゃ! そっちこそな、アスカァ!」

リサ「やだ……なにこれ……アタシの知ってる羽根つきと全然違うんだけど……
というかアタシ、これで勝った方と戦わなきゃいけないのよね……
……今のうちにこっそり逃げちゃおうかしら」

ハル「!! ……ここだぁ!」

アスカ「ッ……!」(衝撃を受けきれず、羽子板を取り落とす)

ハル「っしゃぁ! オレの勝ちだ!」

アスカ「……ふう。ただのレクリエーションとはいえ、
まさかキミに勝ち星を譲る事になるとは思わなかったな。
……強くなったね、ハル」

リサ(たかが羽根つきで何言ってんのよ、こいつ)

ハル「へへ、そんじゃあ早速罰ゲームを……
リサ、筆を持ってきてくれ」

リサ「はい、どうぞ」

ハル「ん。サンキュー」

アスカ「……お手柔らかに頼むよ」

ハル「解ってるって。まだ一回目だし、
まずはちょっと目の周りに輪っかを描く程度で勘弁……って、うおあっ!?」スッテンコロリン

リサ「ハル!?」

アスカ「全く、何をやっているんだ、キミは……大丈夫かい?」

ハル「いててて……
……あ、ああ……何とか……
……ん?」

必勝ダルマ様「…………」(ハルの持っていた筆の先が丁度ダルマの白目の部分に)

ハル「これ……さっきお祀りされてたダルマだよな。
なんでこんな所に──!?」

(突然まばゆく光り輝く必勝ダルマ様)

リサ「な、なんなのよ、これぇ……!?」

アスカ「っ……!」

ハル「…………
収まった、か?」

アスカ「……みたい、だね。
……あれ? ……このダルマ、手足なんて生えてたっけ──」

必勝ダルマ様「よぉー!」

三人「!?」

(驚く三人の姿をよそに、どこからか聞こえて来る三本締めのリズムに合わせて踊りだす必勝ダルマ様)

(最後まで踊り終えると、紙吹雪と共に元の姿に戻る)

ハル「……何だったんだ、一体……」

リサ「さ、さあ……」

(神社の建物の中から数人の村人達が飛び出してくる)

村長「こ、これは、まさか──!!」

???「どうやら、言い伝えは本当だったのでしてー」

村長「!!
貴方は……」

村人「ヨシノ様!」

村人「ヨシノ様だ……」

ヨシノ「選ばれし者の予言……
『彼方より来たりし 旅人たち
片目を開眼せして 城を築き この地を守るべし……』」

ハル「城……?」

アスカ「『旅人たち』……というのは、ボク達の事だよね」

ハル「……つまり、なんだ?
オレ達に、村を鬼の襲撃を防ぐ為の城を作れ……って言ってんのか?」

ヨシノ「でしてー」

二人「…………」

村長「まさか、君たちのような子どもが選ばれてしまうとは……」

リサ(……これ、ひょっとしてアタシも数に入れられてる?)

村長「……選ばれし者は、村人達の助けを借りることなく城を作らなければならない。
君たちのような年端もいかない子どもに頼むのはとても心苦しいが、どうか私達を……
ナタネ村を助けては貰えないだろうか」

村人「俺達からも頼む!」

村人「どうか……城を、城を……!」

ハル「いや、急にそんな事言われても……」

村長「……勿論、タダでとは言わない。
その格好から察するに、君たちは風来人……つまり、
この村の近くにある不思議のダンジョンに用があるのだろう?」

アスカ「……まあ、その通りだね」

村長「もしも城作りを引き受けてくれるのなら、
この村を暫くの間拠点として自由に使ってくれて構わない。
訓練場や倉庫、宿泊施設など、本来なら有料の施設も無料で開放する。
勿論、城が完成したならば、それ相応の報酬だって支払うつもりだ」

ハル「…………」

アスカ「…………」

村長「…………ダメ、だろうか?」

ハル「……そこまで言われちゃしょうがないか。
仕方がねえから引き受けてやるよ」

アスカ「まあ、正当な報酬が支払われるというなら、断る理由はないかな。
どうせ、この村にはそれなりに長く留まるつもりだったし……
……何より、困っている人を見捨てていくのは、正直目覚めが悪いからね」

村長「おお……ありがとう!
……我々は直接城作りの手伝いは出来ないが、何か必要な事があったら遠慮なく言ってくれたまえ。
出来る限り便宜を図ろう」

村人「さすがに風来人は格が違った!」

村人「すごいなーあこがれちゃうなー」

リサ「…………」

リサ(……村人達の視線はあの二人に集まってる。
逃げ出すなら今のうちね……)

ヨシノ「そなたー、どこへ行くのでしてー?」

リサ「」ビクゥッ

リサ「え、いや、あの……」

ハル「おいおい。何逃げようとしてんだよ、お前……」

リサ(いや、そりゃ逃げるに決まってんでしょ。何が悲しくて、
鬼であるアタシが鬼を追い払う為の城作りの手伝いなんかしなきゃいけないのよ!)

アスカ(まあ、言わんとする事はわからないでもないけれど。
……キミ、ボク達に借りがあること、忘れてないかい?)

リサ(うっ……!)

アスカ(それにキミ……仲間たちの所業について、
実はあまり良い感情を抱いてはいないんだろう?)

リサ(…………)

アスカ(……図星、みたいだね)

リサ(……悔しいけれどその通り、よ。
……アタシが前からこの村に遊びに来てたってのはさっきも言ったでしょ?
だからまあ……アタシにとっては第二の故郷みたいなものだと思ってて……
今までは人伝に聞いただけだったから今一実感が湧かなかったけれど、
こうやって実際に村が荒らされてる所を見てたら……)

アスカ(…………)

ハル(…………)

リサ(…………)

リサ「……はあ、わかったわよ。
……アスカの言うとおり、まだあんた達への借りだって返せてないしね。
こうなったら、最後までとことん付き合ってやるわ。
よろしくね。……ハル、アスカ」


####

今回はここまで

DS版砂漠の魔城の倉庫で祝福された天の恵みの巻物を読むとどういう訳か決まって最初の一回で祝福が解けちゃうんだけど、
ひょっとしてこれは仕様だったりするのだろうか…

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