リツコ「シンジ君。この街の女は全て、あなたのお父様が生み出したサキュバスなのよ」 (32)

ミサト「偉大な黒魔術師だったあなたのお父さんが、この街を残したの」

シンジ「父さんが……?どうして」

ミサト「きっと、奥さん以外にまったくモテなかった人生の鬱憤を、息子であるあなたのムスコに託したのね」

シンジ「帰ります」

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ミサト「え゛。ちょ、ちょっと待ってシンジ君! いきなり帰るなんてどーして!?」

シンジ「3年振りに呼びつけられて、何かと思ったら―――僕は父さんの玩具じゃないんだっ」

ミサト「ええー……リツコ、あなたからも何か言ってよ」

リツコ「シンジ君。私達は、あなたを必要としているの。思いとどまってくれないかしら?」

シンジ「必要ってなにがですか? サキュバスで、男が必要だって言うなら他の誰でもあたって下さい」

ミサト「それが、そうもいかない事情があってね……」

リツコ「私達は、あくまでも黒魔術師碇ゲンドウが生み出した生命体。一般の伝説そのもののサキュバスとイコールの存在ではないのよ」

シンジ「どう違うんですか?」

リツコ「例えば、男性の精無しでも、通常の食物から栄養を摂ることができます」

シンジ「あ、なんだ。じゃあ余計に僕はいらない人間なんだ」

ミサト「なにちょっちガッカリしてんの?」

リツコ「そして、精はシンジ君―――あなたのものしか受け付けないのよ」

シンジ「え」

ミサト「さらに、私達にとってシンジ君のそれは、めっちゃ栄養素高くて美容に最適のゴチソウってわ。まだ実際口にしたこと無いから、本能的に知ってるに過ぎないんだけどね」

シンジ「か……っ、帰ります。今すぐ帰ります!」

ミサト「なんでそうなるのよっ」

シンジ「だってそんなの、怖いじゃないですか!!」

シンジ「っていうか父さんは!? ここに来て、まだ会わせてももらってないっ」

リツコ「……」

ミサト「……」

シンジ「……う。さっきからの言い回しで、なんとなく気づいてなかったわけじゃないけど、やっぱり……?」

ミサト「ここが完成した記念に、自分へのご褒美と称して海外旅行に出かけたわよ」

シンジ「旅行かよっっっなんだよそれ!」

リツコ「ちなみにあなた宛の手紙は、呼びつけるために私達がそれらしく捏造したの」

シンジ「サ、サイテーだ……」

シンジ「……」ガサゴソ

ミサト「ホントに帰り支度始めちゃった……参ったわね」

リツコ「少々強引だったかしら?」

ミサト「シンジ君。それでいいの? 何の為にここまで来たの?」

シンジ「父さんに会うためですよ。でも父さん、いないどころか手紙も嘘なら話にならないじゃないですか」ガサゴソ

リツコ「その通りね」

ミサト「リツコ! あんたどっちの味方なのよっ」

ミサト「ねーシンジくぅん」

シンジ「無駄ですよ、猫なで声出しても……出口どっちだっけ」

ミサト「もうさあ、シンジ君の歓迎会の用意までしちゃってんのよ。みんな楽しみにしてるし」

シンジ「地図ありませんか?」

ミサト「私の立場ってのもあるの。悪いんだけど、ここは助けると思って、お代官様!」

リツコ「はあ……シンジ君。分かったわ、明日、間違いなくあなたを駅まで送り届けると約束します」

ミサト「リツコ!?」

リツコ「でも今日はもう遅いから、一晩だけ我慢してちょうだい」

シンジ「一晩……ヘンなことしないでくださいね?」

リツコ「ええ。それも約束するわ」

シンジ「……分かりました」

カエデ「それでは―――シンジ君来場記念ということで、今日という日を祝して!カンパイ!」

「「「かんぱーい」」」

ガヤガヤガヤ

シンジ「……」

ミサト「なぁに縮こまっちゃってんの、本日の主役が」

シンジ「こういう会自体、中止してくれて良かったのに……僕、明日には出て行くんですから」

ミサト「言ったでしょ、もう用意しちゃってたって。片付けるより無駄にならないわよ。それに、この街にシンジ君が来てくれたことには変わりないんだし」

シンジ「……」

ミサト「大勢人がいるところ、苦手?」

シンジ「え? え、ええ」

ミサト「そんな感じよね。しかもここ、女性オンリーだから」

シンジ「はい……」

ミサト「加えてみーんな美人だから、余計男の子は緊張しちゃうわよね」

シンジ「ここにいる人達、全員サキュバスなんですか? 父さんが創った」

ミサト「そ。ね、シンジ君、中でも誰が好み? おねーさんにそっと教えなさい」

シンジ「……言っときますけど、い、色仕掛けとかしたって無駄ですよ」

ミサト「ぎくっ」

シンジ「僕は絶対、明日には先生の家に帰るんですから」

ミサト「は~。しゃーない、ここは退散してビールでも飲んでくるわ」スッ

シンジ「……」

ミサト(色仕掛けは無駄、か。それはどーかしら? シンちゃん、サキュバスを甘くみないでね)

ミサト「うっひっひ」

リツコ「……ミサト。シンジ君の様子はどう?」

ミサト「警戒してる。案の定、結局色仕掛けで押すつもりってのもバレバレ」

リツコ「そう。ま、当然ね」

ミサト「いつ始めるわけ?」

リツコ「もちろん、この場からよ。警戒されているからと思春期の少年一人堕とせないようでは、サキュバスの巣たるネルフ本部の名が泣くわ」

ミサト「んで、レイ達は? 失敗は許されないんだし、容姿が同年代のあの子らにはいてもらわないと」

リツコ「言われなくても呼んであるわよ。あの子達の到着が、作戦開始の合図」

ミサト「なーるほど」

リツコ「作戦部長……」

ミサト「ぐ。しゃ、しゃーないじゃない、シンジ君の話相手してて、仕切りはリツコに任せるしかなかったんだから」

リツコ「分かってるわ、冗談よ」

ミサト「とにかく。来るべき使徒襲来に備えて、シンジ君には間違いなくここに留まってもらわないとね」

一旦ここまで

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