【TS姉妹百合】アニキと私【R-15】 (22)

短いです。
暴力的シーンがありますがグロではありません。

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6月23日

兄、いや姉と言った方がいいだろうか。

普段2人のときにはアニキと呼んでいるのでここでは兄と呼ぶ。

兄は無口で愛嬌はなかったが、腕っ節もよく学業も優秀な受験生だった。

2週間前、兄は突然女性になった。

反射した光を滑らす銀色の髪、透き通る海色の碧眼、初雪のように白い肌。

それらのパーツを正しく並べた小柄な美少女に違いなかった。

美しくありながら女というにはまだ早い未成熟さを持っている。

兄はそれまでと同様憎いくらいの落ち着きを払っていた。

その佇まいに私は容易に想像できた、その少女は兄であると。

しかし、そうは言ってもその少女然とした姿自体に兄の面影はない。

そうした事情から父母は事態に納得はしなかった。

兄も大した弁明をしなかったが愛娘である私の懇願あってか施設送りを免れた次第だ。

結局、兄は居候と言う宙ぶらりんな位置に納まった。

兄と認める訳にもいかない、非実在的な容姿の少女を独り外に放り出す訳にもいかない、と言う判断の下でだ。

そして今日になって新しい戸籍、身分、名前を与えられた兄は私と同じ進学校に通う2年女子生徒としての人生を与えられたのだった。

7月9日

兄が女性になって1ヵ月が経っていた。

昼休み、教室で友人と昼食をとっているときである。

「D組の銀髪の子いるじゃん?」

「昨日他校の不良に絡まれてるところ見ちゃってさ」

「なんか怖くね?」

どう考えても銀髪の子なんて兄しかいない。

友人の制止を振り切りD組の教室へ向かう。

「ちょっと来て!」

兄の手を掴み人気のない駐輪場まで小走りで引っ張った。

「はあ……はあ……、何だよ……?」

「アニキ、昨日なんで帰りが遅かったの?」

私の問いに兄は答えない。

そんな兄に苛立ちを覚え、怒りを疑問の乗せぶつける。

「なんで昨日不良に絡まれたの? 答えてよ!」

兄の両肩を掴むと、兄は顔を引きつらせながらも辛うじて答える。

「お前には関係ない……」

昼休みの終わりを知らせるチャイムが私から兄を放す。

兄は背を向けると言葉もなく教室へ逃げ帰った。

7月12日

あの口論以来兄の帰りは遅くなり、元々少ない口数はさらに少なくなってた。

女性になってからは友人すらいない兄に外を出歩く由もない。

私は兄を問い質そうと兄の部屋に飛び込む。

明かりが点いておらず物音もしない。

急いで明かりを点け兄のところへ駆け寄る。

兄は下着姿でベッドに腰を下ろしていた。

兄は女性になった訳だが、基本的に男性に対して無防備だ。

あの万能で自慢だった兄は、今や自分の身すらまともに守れない程に落ちぶれた。

「返せよ……、アニキを返せ!!」

私は目の前の少女を押し倒し、懇願する。

しかしそれは懇願と言うより脅迫だった。

この少女が抵抗できるわけもなく私が覆いかぶさる形になる。

「無防備すぎるよアンタ……」

他のクズ共に壊されるくらいなら私が壊してやる。

無理やりに少女の唇を奪う。

すると私の頬に痛みが走る。

この少女はか弱い分際で、ニセモノの分際で私をぶったのだ。

瞳を濡らし息も絶え絶えのコイツが。

ニセモノが。

ニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノ!!

「ニセモノのお前さえ消えればアニキは帰ってくるんだ!」

結局私は父に抑えられ、自分の部屋に抛られた。

7月14日

結局昨日は学校を休んだ。

当然、醜態を晒した私に父母は辟易していた。

これもすべてあのニセモノの所為に違いない。

昼休み、死にかけの様相で学校の敷地を跨いで草むらの中に入っていくアイツの姿を確認する。

私はお茶を買いがてら、5分ほど待ってから気づかれないようにアイツの跡を追っていった。

アイツの声が聞こえる。

しかも、くぐもった卑しいメスの鳴き声だった。

気持ち悪い、こんなクズに兄を重ねていた私がバカだった。

踵を返し校舎に向かおうとするが、聞こえた言葉に足がとまる。

「A組の女がそんなに大事かよ」

クズを犯す他校の制服を着たゴミが抜かした言葉に合点がいった。

アイツにA組の女子の知り合いなんて私しかいない。

私は……。

結局、私はすぐに警察に連絡し少女は保護され少年は補導された。

タオルを羽織りながら去る少女にかける言葉もなく、目で少女を追ったが待ってくれる筈もなかった。

アイツはニセモノなんかじゃなかった。

寧ろ私がアイツにとって妹のニセモノだった。

アイツはニセモノなんかのために……。

7月15日

結果から言うと少女はこの1週間、複数回にわたって少年から性的暴行を受けていたらしい。

その少年は空想の人質を使い脅迫していたのだが、少年は暴力団の使いっぱしりのようで少女が自分を守りきれる道理がなかった。

アイツ……兄は昨日から病院で検査を受けている。

避妊をしておらず、妊娠や性病の検査が必要らしかったがどうやら有事には至らなかったようだ。

そして精神的ダメージが大きくその源詳しく探す必要もあり、寧ろそちらが難しいとの結果だった。

兄は私との面会を拒絶しており、ダメージ源が私に関係していることは火を見るよりも明らかだった。

父母は私を責めることはなかったがいっそ死んで消えてしまいたかった。

7月21日

兄が退院し家に帰ってきた。

男の頃の兄の面影など最早無く、私の顔を見ただけで震えて腰を抜かし泣き出す始末だった。

兄がせめて家の中でだけは安心できるように私は生活のほとんどを自分の部屋で過ごすようになった。

ニセモノに居場所などある訳が無かった。

7月26日

兄は退院して以来1度も外出していない。

ただ家の中では比較的自由に行動していることを母から聞いた。

兄はもう家から出られないのだろうか。

それだけはどうしても避けなければならないが顔すら合わせられない。

私は夜中、兄の部屋のドアの下から手紙を差し込んだ。

手紙の内容は兄にした侮辱の取り消しと謝罪、私がニセモノだったことの告白だ。

7月27日

朝、ベッドから上体を起こすとドアの下に紙切れが落ちていた。

驚くべきか兄からの返事だった。

綺麗な字で書かれていた。

――頼りなくてごめんなさい。

――心配かけてごめんなさい。

――拒絶してしまってごめんなさい。

――弱くてごめんなさい。

――何があっても妹は妹です。

――もしよかったら助けてくれませんか。

――――――兄より。

こんなものを真面目に書いたのだとしたらバカに違いない。

と言うかバカでしょ。

バカじゃないの。

……。

ごめんなさい。

手紙を読んだ後、随分と寝てしまったようでもう西の景色は赤く染まっていた。

そして、気付けば兄の部屋の前まで足を運んでいた。

「アニキ……、ドア開けていい?」

奥にいるであろう兄に私の存在を知らせる。

「ど……、どうぞ」

強張った兄の声に、私はドアをゆっくりと開ける。

兄はベッドに坐っていた。

初めて会った日と同じぶかぶかのジャージを着ていた。

あの日の落ち着きはなく、遠目からも分かる程震えていた。

だが、やはりそこには兄がいた。

「アニキ、そっち行くから。嫌なら嫌って言って」

私は静かに歩を進める。

そして、兄の足元に両膝を置く。

震える兄の両手を束ね握る。

兄の目尻から雫が1滴垂れて道を作ると滴りは留まることを知らずその道を辿って流れ落ちていく。

そしてしばしの沈黙のあと兄が口を開く。

「散歩に行きたい」

全く予想できない反応が返ってきた。

「アニキは全然弱くなんかないじゃん」

「そ、そうなのか」

「アニキはやっぱりアニキだなってこと」

兄は要領を得られなかったようで小首をかしげていた。

気がつけば距離を離さないよう兄の手を握りながらの散歩をしていた。

子供の頃よく遊んだ公園に自然と足が向かっていた。

兄は久しぶりの外出に疲れたのかベンチに腰を下ろす。

「きれいだな」

兄は西日に目を細めながらつぶやく。

兄は更に独白を続ける。

「お前のおかげでここまで戻って来れたよ。」

私はそんな言葉をかけてもらう資格なんてないのに兄は構う様子は無い。

流れるように言葉が次々をこぼれ出る。

――兄として情けない姿を見られたことが一番辛かった。

――力では男どころか妹には適わなかった。

――妹がいなければ家にはいられなかった。

――助けてくれてありがとう。

気がつけば2人して泣いていた。

通り行く人から注目を集めたが兄はそのことすら認識できていないらしかった。

「私、アニキが好き」

思わず言葉にしてしまった。

だが言葉にして初めてそれが真であると確信した。

今を逃したらいけないような気がして兄の華奢な身体を抱き寄せる。

兄からは寸分の抵抗もない。

朱に染まる兄の顔は西日の所為なのか。

であるならば今しかない。

身体が重なればもう唇も重ねるしかない。

唇を重ねたのはいいのだが兄に引き剥がされてしまった。

「帰るぞ」

私は差し出された手を握り立ち上がった。

去る西日に寂しさを覚えつつその場を後にした。

おわり。
姉妹百合には夕陽がよく似合う。

>>11
×――力では男どころか妹には適わなかった。

○――力では男どころか妹にも適わなかった。

こういうミスはいけない。
推敲は大事。

>>11>>16
○――力では男どころか妹にも敵わなかった。

>>6
×そして精神的ダメージが大きくその源詳しく探す必要もあり、寧ろそちらが難しいとの結果だった。
○そして精神的ダメージが大きくその源を詳しく探す必要もあり、寧ろそちらが難しいとの結果だった。

貧乳TS娘好き。
依頼出してくる。

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