シロ「……はぁ」

塞「ちょっとイラッときちゃったよオイ。てか、いきなりどしたの？」

シロ「…ダルい」

塞「それはいつものことでしょ」

シロ「…ので、誰かに養ってもらおうという人生設計を立ててみた」

塞「ダメなパターンだわこれ」

シロ「では誰に？といったところで、塞なら…」

塞「」ﾄﾞｷｯ

シロ「…ちょっと押せばいけるかと」

塞「ふざけんな」

シロ「ダメかな」

塞「ダメでしょ普通に考えて」

シロ「……はぁ」

塞「ため息つきたいのはこっちだっての」

塞「仮にあんたのそばに私がいたとして、まず甘やかしたりしないから」

シロ「…おに、あくま」

塞「人生はそこまでイージーモードじゃないんですー」

胡桃「なんの話？」ﾋｮｺ

シロ「養って」

塞「こらこら」

胡桃「いいよ？」

塞「おいおいおいおい」

シロ「…やったね」v

塞「いいの？シロのことだからほんとになんにもしないよ？」

胡桃「べつにいいよー」ﾆｺﾆｺ

シロ「ありがたい」

塞「……いや」

シロ「…？」

塞「考え直したら？」

胡桃「だからー」

塞「いや、胡桃じゃなくてシロが、ね」

シロ「…なんでさ」

塞「よく考えてみなよ。この胡散臭い笑顔」

胡桃「ちょっと。誰の笑顔が胡散臭いって？」

シロ「……」ｼﾞｰｯ

胡桃「……」ﾆｺﾆｺ

塞「胡桃だよ？口ではいいと言っておきながら、いざその時になったら平気で鞭打つ…なんてやりかねないよ」

胡桃「人のことをなんだと思って」

シロ「一理ある」

胡桃「えーっ」

シロ「なんか一気に怪しく思えてきた…ダル」

塞「というわけだから、諦めて真っ当な人間になんなさいな」

シロ「…となるとエイスリンかトヨネに」

塞「あの二人を引きずり込むのだけはやめろ」

シロ「…ごめんなさい」

胡桃「塞もダメなの？じゃあもう熊倉先生しかいないじゃん」

シロ「先生は…笑顔で諭されそうで、ちょっと…」

塞「想像するに難くないね…笑顔の先生にお説教されてるシロ」

胡桃「うわー」

シロ「……」

塞「ね？土台無理なんだって。だからさー」

シロ「…ならもう、他を探すしか」

塞「はぁ？やめときなって。たぶんうちらだから笑い話で済んでるんだよ？」

胡桃「もし見知らぬ他人がいきなり養ってくれって言ってきたら張っ倒すね」

塞「蔑む目には自信がある」

胡桃「やってやってー」

塞「さすがに友達にはできないでしょー」

　きゃいきゃい

シロ「……はぁ。ダルいけどしょうがないか」ﾎﾞｿﾘ

　翌日

『養ってくれる人を探しにでかけ　　』

塞「あのおバカ…」ﾊｧ

胡桃「しかも途中で文章が切れてるし」

豊音「ダルかったのかなー？」

エイスリン「シロ、イナクナッタ？」ｳﾙｳﾙ

塞「あー泣かないでよエイスリン！もーあのダルダル星人、ダルいダルい行っててこんな時だけアグレッシブなんだから！」

シロ「くしゅっ」

シロ「…風邪？心なしか…ダルい」

シロ「…でも、やっと辿り着いた…東京」

シロ「…ってこんなにのどかな場所だったかな…」

シロ「…なが…の？」

シロ「…ダメだ、もう無理…ダル…動け…な」ｸﾗｯ

　ぽよんっ

シロ「…お」

和「……」

シロ「これは良い枕…」

和「ではありません！なんなんですかいきなり」

シロ「…君は…えっと、清澄の」

和「続けるならせめてどいてください…というか、あなたは宮守の…どうしてこんなところに？」

シロ「養って」

和「えっ？えっと…お断りします？」

シロ「…はぁ」

和「あの…」

シロ「もう…諦めよう…土に埋まっとこう」

和「やめてください」

シロ「だってもう動けない」

和「……(長考)……とりあえずうちの部室に来ますか？」

シロ「動けないってば」

和「……」ｲﾗｯ

シロ「おんぶ」

和「無理でしょう体格的に」

シロ「だっこ」

和「同じようなものですっ！」

シロ「…はぁ」

和「～～～～～～～っ！もうっ！待っててくださいっ！」ﾀﾀﾀｯ

シロ「あ…行っちゃった」ﾎﾟﾂｰﾝ

和「――お待たせしました」ｷｯ

シロ「そんなに待ってない…かも？」

和「なんで疑問形…ではなくてですね。自転車を持ってきたので、後ろに乗ってください」

シロ「えー」

和「…どうして私がここまでしなければ…」

シロ「…じゃあご厚意に甘えて」ｷﾞｯ

和「それでは行きましょう」ｽﾀｽﾀ ｶﾗｶﾗｶﾗ

シロ（乗らずに押してくんだ…）

大変申し訳ないのだが寝ようと思う

和「着くまでの間、どういった経緯でここまでいらしたのか説明してもらえませんか？」

シロ「……」

和「あのー」

シロ「…ダルいので察してください」

和「なに一つ知り得ない状況でなにを察せと言うんですか…」

シロ「…ダルいのでいっそ誰かに養ってほしいと思って」

和「ダメダメですね」

シロ「ダメダメだから」

和「開き直ってる辺りにダメ人間っぽさを感じます」

シロ「…養おうよ」

和「ちょっと角度を変えてきたってダメですよ」

シロ「養ってみない？」

和「みません」

シロ「新感覚育成ゲームみたいなものだと思って」

和「いくらなんでも新感覚すぎでしょうそのゲーム」

シロ「…はぁ」

和「ため息つきたいのはこっちですよ…と、そうこうしてるうちに見えてきましたね。あれが清澄高校です」

シロ「ほう」

和「校舎に入れるのはさすがに問題がありますけど、旧校舎なら大丈夫でしょうきっと」

シロ「ガバガバだね」

和「この旧校舎の最上階に部室があるんですよ」

シロ「……最上、階…？」

和「一番上です、はい」

シロ「…ちょいタンマ。……エレベーターとかは」

和「ありませんね。階段です」

シロ「おんぶ」

和「無理です。だっこも無理」

シロ「ダル…」

和「そんなこと言ってもどうにもならないですから、ぱぱっと昇ってしまいましょう」

シロ「帰りたい…」

和「岩手まで？」

シロ「…はぁ」

和「どれだけですか…」

シロ「……」えっちらおっちら

和「体力がないんですか？」

シロ「気力もないよ」

和「あなたの将来が不安で不安でしかたないです」

シロ「なんなら見守ってみる？」

和「アプローチの角度をまた絶妙に変えてきましたね」

シロ「そう思うなら」

和「あ、もう最上階ですよ。ほら、あと少しです」

シロ「なんと…」

和「なんでそこで座り込むんですか」

シロ「達成感で一杯。もう動けないよ」

和「すぐそこが部室なのに？」

シロ「どうぞ、引きずって行ってください」

和「嫌ですよ…部室にはベッドもありますよ？」

シロ「む……はぁ。よっ、と。…どこ？」

和「はぁ……こちらです」

シロ「おじゃまします」ｶﾞﾁｬ

咲「え？」

シロ「おじゃまします」

咲「えっと…お部屋、間違えてますよ？」

シロ「…間違えました？」

咲「たぶん…？」

シロ「？」

咲「？」

和「早く入ってください！」ﾎﾞﾌｯ

シロ「おうっ…」ﾖﾛｯ

咲「和ちゃん！」

和「咲さん、こんにちは」ﾍﾟｺｯ

咲「こんにちは！えっと、こちらは？」

和「先ほど駅の近くで色々ありまして…こちらはほら、岩手代表宮守女子の…」ﾁﾗｯ

シロ「……」

咲「あっ、宮守の…」

和「えー…」

シロ「……」じーっ

和「…ナントカ…ハセガワ…シロ？さんです…？」

シロ「…どうも、小瀬川白望です」ﾊｧ

和「…だそうです」ｶｧｯ

咲「えっと、こうして直接話すのは初めて…ですよね？小瀬川さん」

シロ「シロでいいよ」

咲「え…と。じゃあ、シロ、さん…」ﾃﾚｯ

シロ「養って」

咲「え…えっ？」

シロ「私を養って」

咲「えっと、はい…？」

シロ「おっ」

和「おっ、じゃないでしょう！今のは明らかに戸惑って聞き返してる『はい？』でしたよ！」

シロ「宮永…咲、だっけ」

咲「あ、名前…」

シロ「よろしく」

咲「えっ、あ、はい。よろしくお願いします」

和「ちょっと！」