モバP「だりうづやすりんみおかれん」 (39)


―――とある公園


凛「――なんだか不思議な感じ。いつもハナコの散歩は、私一人だったから」トコトコ

泰葉「ふふ、そうなの? こうして話しながら歩くのも楽しいよね……」トテトテ


ハナコ「きゃんっきゃんっ」


凛「ふふ……ハナコも楽しそう」

泰葉「いい子ね……繋いでなくても傍で遊んでる……♪」

凛「うん。……自慢の家族、だからね」

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泰葉「ハナコちゃん、やっぱり可愛い?」

凛「もちろんだよ。ハナコなら目に入れても痛くないくらい」

泰葉「あ、凛ちゃんもそんなこと言うんだね……♪」クスクス

凛「っ! い、言わないでね? 特に未央と加蓮には……!」

泰葉「からかわれるから?」

凛「ん……いつまでもネタにしてくるんだもん……」

泰葉「ふふふ♪」

凛「まぁ、でも……」

泰葉「?」

凛「そういうのも……悪くないかな、って。居心地いいよね、うちの事務所」

泰葉「……ええ。私も、あの場所が大好き」

ハナコ「くぅんくぅん」ペロペロ

凛「よしよし……。ねぇ、泰葉は……」

泰葉「なぁに?」

凛「アイドルになって、やりたいことって……見つかったの?」

泰葉「やりたいこと……?」

凛「うん。私、アイドルになって……なにか、見つけたいと思ってる」

凛「夢中になれること……今までなかったから。だから、私は……」

泰葉「…………」

凛「……泰葉?」

泰葉「……私ね。昔は……子役として、芸能界に入っていたの」

凛「そう、だったの?」

泰葉「ええ。といっても、大人たちの着せ替え人形みたいな……そんな役割で」

泰葉「楽しくないわけじゃなかったけど……今みたいに充実はしてなかったかな。ふふ」

凛「……うん」

泰葉「でもね……」

泰葉「今のプロデューサー……Pさんに見つけてもらって。『アイドルに興味あるなら、うちに来ないか?』って」

泰葉「今思うと、怪しげな勧誘だったな……。こんなこと言ったら、Pさん泣いちゃうかもしれないけど」

凛「…………」クスッ

泰葉「それで、李衣菜や加蓮と出会って……色んなことを一緒に経験しているうちに――」


泰葉「『私、今……すごく楽しいんだ』、って気づいたの」


凛「……!」

泰葉「いつの間にか、私も知らないうちに……いつも笑顔を浮かべてる私がいて」

泰葉「……嬉しかった。私はもう、誰かの都合のいい人形なんかじゃないんだ、って思えたの」

泰葉「だから私は、みんなにもらった笑顔を……今度は届けたい。たくさんの人に……!」

凛「泰葉……」

泰葉「って、あっ! ご、ごめんなさい凛ちゃん……私ばっかり話しちゃって」

凛「ううん……泰葉、楽しそうに話してたから。止めるのもアレかなって」

泰葉「と、止めていいからね? はぁ、顔熱い……」

凛「……私も」

泰葉「え?」

凛「私も……泰葉たちみたいに後悔のないように。アイドル、やってみたい」

凛「今の私じゃ、なにが出来るのかまだまだ分からないけど……きっといつか……見つけられるように!」

泰葉「……うん。私たちも協力するね。凛ちゃんの、やりたいこと探しに」

凛「ありがとう……岡崎先輩」

泰葉「…………李衣菜か加蓮ね。凛ちゃんを唆したのは」ゴゴ…

凛「え? でも……先輩って呼ぶと嬉しそうにするって」

泰葉「ふふ、ありがとう凛ちゃん」ニッコリ

凛(……気のせいかな。ハイライトが消えてるような……)


―――


凛「――ハナコ。そろそろ帰るよ」

ハナコ「きゃぅんっ♪」トテテテッ

泰葉「ふふ、本当に凛ちゃんに懐いてる……♪ 凛ちゃんはわんちゃんが好きなの?」

凛「うん、わりと。……あ、でも」

泰葉「?」

ハナコ「?」


凛「最近は猫派かな」

泰葉「え?」

ハナコ「えっ」



やすりん編おわり


―――事務所


未央「もきゅもきゅ♪」

加蓮「はぐはぐ……んぅー、しあわせ……♪」

ちひろ「たまに食べるジャンクフードもいいものですねぇ♪」パクパク

加蓮「私は週7でも全然イケるけど♪」モグモグ

未央「あはは! ほーちゃん、それは食べ過ぎだってー☆」

ちひろ「うふふ♪」

未央「私月見バーガー好きでさー、毎年時期になると食べたくなるんだよねー」

加蓮「あ、分かる! 期間限定ってなんだか惹かれるよね」

未央「通常メニューにされると魅力半減、って感じ?」

加蓮「そうそう、いつでも食べられるならまた今度でいっか、ってさ」

未央「あるあるー☆」

ちひろ(……こ、これが現役JKトークなのね……!)

未央「ところで……」

加蓮「? どしたの?」

ちひろ「はい?」

未央「芸能事務所ってもっと堅苦しいイメージだったんだけど……案外ゆるいんだね?」

加蓮「あぁ、こうしてくつろぎながら、ポテトやハンバーガー食べてるのがってこと?」

未央「うん、なんか放課後に集まって……その、遊んでるって言ったら失礼かもしれないけどさ……」

ちひろ「……ふふふっ♪」

加蓮「ふふ、別に? 多分ここだけだよ、こんなゆるい事務所」

未央「そ、そうなの?」

加蓮「だって、こうしてテーブル囲んで事務員さんまで一緒に駄弁ってるとか、普通あり得ないよ」クスクス

ちひろ「ふふ♪ うちは自由にのびのび、がモットーですから♪」

未央「にしては自由すぎるような……」

加蓮「ちひろさんはのびのびしすぎだよ。コスプレ用のロッカー、いったいいくつ用意すれば気が済むの?」

ちひろ「え、いやっだって、みんなに着てもらいたい衣装を作ってたら自然と……!」

未央「こ、コスプレ? え、ちひろさん作ってるの!?」

加蓮「そうなの……もう、隙あらば着させようとするんだから」

ちひろ「ちひっ☆」キャピ


未央「ひぃっ」ゾワッ

加蓮「うわぁ……」

ちひろ「」

加蓮「と、とにかくね。事務所では『普通の女の子』、ステージに立てば『素敵なアイドル』……」

加蓮「これがPさん――プロデューサーの方針なの。だから私たち、いつも笑っていられるんだ」

未央「そうなんだね……。えへへ、なんかもっと好きになりそう、アイドル♪」

加蓮「ふふ、良かった♪ ……これでも私、ここに来るまではひねくれててさ」

未央「? うん」

加蓮「夢は所詮夢だ、って……諦めてた。でも――」

加蓮「Pさんや、李衣菜、泰葉、ちひろさん……。『ここ』が、私を変えてくれたの」

未央「……うん。ほーちゃん、すっごく楽しそうだもん」

加蓮「うんっ。夢は、きっと叶えられる。私がその証明だから……」

加蓮「それを、大勢の人に伝えたいの。みんなと一緒にね!」

未央「おお……おおおお!」ガタッ

加蓮「きゃ、急にどうしたの未央?」

未央「私! もっと色んな人と仲良くなりたいんだ!」

加蓮「あ……それが未央の『夢』?」

未央「うんっ! 叶えてみせるよ、私! いっぱいいっぱい、楽しんで!」

加蓮「そっか! 私たちと一緒に、頑張ろうねっ!」

未央「うんっ☆☆★」


ちひろ「コスプレ…タノシイノニ…キテホシイノニ…」ブツブツ


未央「ちひろさんは……ほっといていいのかな?」

加蓮「大丈夫、明日になれば元に戻るから」



みおかれん編おわり


―――レッスン場


李衣菜「――はい、もう少し押すよー」グググ

卯月「お願いしま――あううぅ!」

李衣菜「だ、大丈夫? うーん、硬いわけじゃないんだけどなー、体」

卯月「す、すみません……はぁ~、もっと頑張らないと……」

李衣菜「そんな、卯月ちゃん頑張ってるじゃん。養成所でも、アイドル目指してレッスンしてたんでしょ?」

卯月「うぅ、そうなんですけど……。こんなのでついていけるんでしょうか……?」

李衣菜「大丈夫だよ。私は養成所行ってなかったけど、今こうしてアイドルできてるし」

李衣菜「Pさんも言ってたよ? 卯月ちゃんは一番一生懸命だって!」

卯月「……プロデューサーさんが……?」

李衣菜「うんっ。『李衣菜や加蓮よりよっぽど真面目だ』って。……まぁ言い方はアレだったけどさ」ムス

卯月「ふふ、あはは♪」

李衣菜「あ、笑った。ほら、こんなに笑顔が可愛いんだもん。絶対卯月ちゃん人気出るよ!」

卯月「あぅ、恥ずかしいです……」カァ

李衣菜「……ね? そんな難しく考えることないよ。憧れてたんでしょ、アイドル」

卯月「……はい。ずっとずっと、小さな頃からの夢なんです。いつかなれたらいいなって……」

李衣菜「へへ、ちゃんとなれたじゃん。だから一緒に頑張ろ? 私たちでトップアイドルになろうよっ」

卯月「は、……はいっ!」ニパッ

李衣菜「……私はさ。アイドルに成り立ての頃は、自分の理想を追いすぎてて……空回りしてたんだ」

卯月「李衣菜さんが? ……前向きな今と比べると、ちょっと想像が……」

李衣菜「あはは……。分かりもしない、出来もしないことを大口叩いて……迷惑かけちゃった」

李衣菜「だから、変わろうって。一歩ずつ一歩ずつ、出来ることから始めようって」

卯月「一歩ずつ、一歩ずつ……」

李衣菜「うん。出来なくても、分からなくても……好きなものに、嘘はつきたくなかったから」

卯月「李衣菜さんの好きなもの……音楽、でしたよね」

李衣菜「そう。どんな壁にぶつかっても、これだけは諦めるもんか! ってね」

卯月「ずっと、挑戦し続けているんですね……」

李衣菜「うん。だから私は、歌を通じて『好きなことは諦めないで』って気持ちを伝えたいんだ」

李衣菜「――私自身ができたことだからねっ!」

卯月「……すごいですっ。李衣菜さん、すごいですっ!」

李衣菜「え、あ、いや! そんな褒められるようなことは……えへへ」

卯月「私、この事務所来て良かったです! 李衣菜さんみたいな、素敵なアイドルに私もなりたいです! いえっ、なります!」

李衣菜「ああぁ、だから私はそんなに尊敬されるような……!」アタフタ

李衣菜「あ、そうだ!」ティン

卯月「ふえ? どうしました李衣菜さん?」

李衣菜「それ、『李衣菜さん』!」

卯月「え?」

李衣菜「やめやめ、同い年なんだし。李衣菜って呼んでよ?」

卯月「えぇっ、で、でも先輩で……!」

李衣菜「芸歴で言えば泰葉がダントツ先輩だけど、関係なく接してるしさ。ほら、呼んでみてよ!」

卯月「え、えぇと……り」

李衣菜「り?」


卯月「李衣菜……ちゃん!」

李衣菜「あはは、うん。おっけー、卯月! これで友だちで仲間、上下関係はなし!」

卯月「わ、分かりましたよぅ……で、でも敬語は許してくださいね? 養成所からのくせで……」

李衣菜「へへ、いいよいいよ! 言いたいことをはっきり言えないより、ずっとマシだしねっ」

卯月「えへへ♪ それでは改めて……よろs」

李衣菜「柔軟の続きだねー。よいしょー」ググーッ

卯月「しいぃぃ!? いたいいたい痛いですぅぅ~!!」

李衣菜「我慢我慢、頑張れー♪」グググ…

卯月「が、がっ頑張り、ますー! ……うぁぁあああ~!」



だりうづ編おわり


―――その後


卯月「うぅ……筋がぁ」

李衣菜「慣れるまでの辛抱だよ……あ、そろそろかな?」

卯月「へ?」


がちゃ


P「おーす。お、頑張ってるか? 卯月、李衣菜」

卯月「あ、あれ? プロデューサーさん!」

李衣菜「へへへ、頑張って時間稼ぎという名の柔軟してましたよ」

P「はは、お疲れ二人とも」

卯月「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。李衣菜ちゃん、時間稼ぎってどういう……?」

李衣菜「えへへ、ちょっとねー。Pさん、そっちの準備はどうですか?」

P「うん、ばっちり。あとは主賓を連れてくるだけだ」

李衣菜「そうですか! よぉし、じゃあ卯月、行こう行こう!」

卯月「え、ええ? なにがなんだか……準備? 主賓って?」

P「ほら、行くぞ主賓さん?」ポフ

卯月「わ、私が主賓なんですか? も、もう頭が混乱してます~!」

李衣菜「こっちだよ卯月! ほらほらっ」グイッ

卯月「り、李衣菜ちゃん~?」トテテー

李衣菜「はい、一名様ご案内~♪」

卯月「え――」


がちゃっ


凛「――卯月」

未央「しまむーっ!」

泰葉「誕生日、」

加蓮「おめでとう♪」


「「「「「おめでとーっ♪♪♪」」」」」


卯月「あ――!」

P「――ちょっと遅れたけどな。うちでは、どんなに遅れても誕生祝いすることにしてるんだ。びっくりしたか?」


P「なんにせよ――誕生日おめでとう、卯月!」


卯月「あ、……ありがとうございますっ♪ 嬉しいです……えへへへへっ♪♪」ニパーッ!



おわり

というお話だったのさ
これからは後輩なNGが出たり出なかったりするかもしれないけど、コンゴトモヨロシク

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