花田煌「戦犯?」 (30)

花田 煌(新道寺女子高校2年 春季九州大会1回戦 先鋒戦)


アナ『ゴールデンウィーク、今年も九州最強の高校生雀士を決める戦いがやってきました』

アナ『春季九州地区麻雀大会初日、Aブロック第一試合の模様をお送りします』

アナ『解説は守備率5年連続首位などの記録を持ちます、大沼秋一郎プロです、よろしくお願いします』

大沼『……あー、おはよう』

アナ『今大会、参加校は春季選抜大会の出場校4校と各県春季大会優勝校8校、そして、持ち回りで4県かららは準優勝校も加えて、全16校』

アナ『今大会では、長崎、大分、宮崎、沖縄が準優勝校出場の持ち回りになります』

アナ『初戦、準決勝と上位2チームが勝ち抜けとなります。その他は全国大会と同じルールです』


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アナ『ではここで、第1試合に登場する高校を紹介します』

アナ『まずは何と言っても、直近の春季選抜大会で決勝に進出し、あの千里山女子高校を抑えて県勢初の3位となりました、招待校の鹿児島県代表、永水女子高校』

アナ『先鋒の神代選手と薄墨選手の圧倒的な火力に代表される総合力で、今大会でも優勝候補筆頭です』

大沼『……わしらの頃は鹿児島と言えば赤山だったが、変わったもんだ』


アナ『続いて、春季大会こそ逃しましたが、前年度は見事な戦いぶりでインターハイベスト8、福岡県1位校の新道寺女子高校』

アナ『秋季大会では真嘉比の銘苅選手に数え役満を直撃させられて敗退しましたが、その実力は既に全国トップクラス』

アナ『この試合では先を見据えてか、正規メンバーから大幅に交代してのオーダーになります』

大沼『……白水と鶴田のコンビプレーは今回は見えず、か』

アナ『続いて熊本県1位の郡浦高校、秋季大会では永水女子に敗退して全国を逃しました。今日の試合では雪辱なるか』

大沼『……わしの最後の九州大会では、そういや決勝で郡浦としたな』


アナ『そして、今大会、最も話題性に溢れると言っても良いでしょう、長崎県2位校、西彼杵中央高校蛎浦分校!』

アナ『生徒数の減少で来春閉校となる蛎浦分校、直前に行われた長崎大会では大波乱を次々と起こし、見事に県大会準優勝。初の九州大会出場を決めました!』

アナ『部員は新3生年のみの5人、高校の記憶を残したいと意気込む主将の平島叶選手、長崎大会では史上4度目となる緑一色を和了しました!九州でも波乱を起こせるか!』

アナ『なお、メンバーの内、副将を務めますウィン選手がカナダの高校に入学した後転学してきましたので、年齢規約に則り夏は出場できません』

アナ『つまり、この九州大会は蛎浦分校にとっては最初で最後の大会となります』

大沼『……個人的にも、ここは頑張ってほしいの』


アナ『先鋒戦のメンバーは、永水女子が神代、新道寺女子が花田、郡浦が金原、蛎浦分校が平島となります』

アナ『それでは、先鋒戦スタートです!』



鶴田「Bチームとはいえ、花田ば先鋒なんて大躍進とですね」

白水「最近花田ば頑張ってるばい、妥当と」

白水(……ばってん、それ以外の理由も、あっけんちゃう気もすっと)


花田(初めての公式戦、Bチームとはいえ先鋒)

花田(なんとすばらなことでしょう、感激で泣きそうですっ!)

花田(しかし、相手は永水女子の神代さん)

花田(浮足立ってると、すぐにやられてしまいます)

花田(私の仕事は、チームを上位に進出させること)

花田(そのためには、出来るだけ私が稼ぐ必要がありますね)

花田(………とは言え)


小蒔「ツモ」

小蒔「8000オールです」

花田「すばらぁ……」

アナ『な、なんと神代選手、ツモ、混一、ダブ東、白、ドラ2で親の倍満!』

アナ『後半戦、起家としてこれで5本場!他校を削りに削っていきます!』

大沼『……なるほど、こりゃ厄介じゃの』


アナ『新道寺女子の花田は速攻で数度和了っていますが、他校はここまで和了れていません!』

アナ『永水女子206000点、新道寺女子86000点、郡浦62000点、そして蛎浦分校が46000点です!』

アナ『神代選手、空前絶後と言われた現在はプロである元新道寺女子高校、野依選手が作った九州大会での最多得点記録に後5万点と近づきました!』

花田(いくらなんでもこれは防ぎようがない!)

花田(どれだけツモが良ければ手配でそれを作れるんですか!)


花田(うーん、稼ごうと思っていたのですが、どうやら厳しそうですね)

花田(となると、後はどれだけ失点を回避するか)

花田(ここまで降りずに勝負した蛎浦分校の平島さんは、親の満貫と跳満を1回ずつ放銃している)

花田(速攻で神代さんを止めにかかろうかと思いましたが)

花田(どうにも危ないですねぇ、余りにも危険すぎます)


花田(神代さんの親を止めれば、誰かが大量失点することはなくなる)

花田(しかし、それを止めに行って私が大量失点するのはすばらくないです)

花田(このまま蛎浦分校がとべば、私達は2位で準決勝に進出できる)

花田(チームの為にはすばらな判断です、でも、しかし…)


平島「ポン!」

平島「チー!」

アナ『蛎浦分校の平島選手!この点差でも速攻はやめません!』

アナ『そして遂に、緑一色聴牌までこぎつけました!待ちは間張の三索!』


アナ『他校はもちろんこれを警戒して索子を抱えます!しかし!』

大沼『……永水女子が、四暗刻単騎待ちまでこぎつけとるの』

アナ『そうです!永水女子の神代選手も四暗刻単騎待ち』

アナ『どちらが先に役満を和了るか!』


花田(平島さんは、この緑一色を和了れなかったら、きっと)

花田(本当は、私も嫌です、誰かがとぶのは)

花田(誰かがとんで私が2位になるか、勝負を続行させて2位以上を目指すか)

花田(私は、そこまで頭は良くない)

花田(どちらがより良いかの打算は、分からない)


花田(自分の信念に頼るなら、ここで私が安目である郡浦の金原さんに振り込むべきでしょう)

花田(しかし、それはチームの為にならない)

花田(分かっています、このチームでは永水に勝てません)

花田(……確実性を取るしかありませんね)

花田(私は降ります)

花田(可能なことなら郡浦が、安目で和了ることを祈って)


小蒔「ロン」

平島「あ」

小蒔「48000です」

平島「嘘、嘘、嘘、嘘……」

平島「あ、ああ、あぁぁぁ……」カタカタ

アナ『試合終了―!』

アナ『最後は神代選手による役満直撃で、平島選手がとびました!』


アナ『春季九州大会史上初の四暗刻単騎待ち、神代小蒔選手、驚くべき火力です!』

アナ『これで明日の準決勝に進出する高校は、永水女子高校と新道寺女子高校になりました!』

大沼『……おもしろいのう、夏は是非とも鹿児島大会の解説をしたいもんだ』

アナ『そしてこの瞬間、蛎浦分校麻雀部の歴史は終わってしまいました』

アナ『主将の平島選手、嗚咽が止まりません』

アナ『今、新道寺女子の花田選手がそれを慰めにいきます』


花田「お疲れ様です、すばらな闘いぶりでしたよ」

花田「最後まで強気な姿勢、胸を張ってください」

平島「あぁ、私のせいで、学校が、学校の歴史が……」ポロポロ

花田「学校?はて?」

平島「私たち、の、学校、来年の春に、へ、閉校になっちゃうの……」

花田「な、なんと、それは……」


平島「しかもウィンが規約で夏出られない、から」

平島「こ、これが最後の、蛎浦の最後の、大会だったのに」

花田「……ぅあ」

平島「わ、私が、と、とんじゃって、こんな……」

平島「…ぅ、あああああああああぁぁぁ!うわあああああああん


平島「ごめんねぇ…みんなごめんねぇぇぇ…」

平島「みんなの最後の試合、回せなくて、ごめんねぇ……っ!」

平島「うわああああああああああん!」

花田「………」

花田「お、お疲れ様、です…」


花田「……ない」

花田「すばらくない!」

花田「私は、私は何をしているんですか!」

花田「初めての舞台で自分のことに精いっぱいになって」

花田「相手の情報を全く仕入れなかったこと」

花田「そして、誰も、とばせたくないと思っていても」

花田「結局、自身の保全が一番になってしまうこと!」

花田「すばらくない!そんなのすばらくない!」


花田「そんなの納得できない!」

花田「あの後、蛎浦分校の方々は皆さん泣いていた」

花田「涙を流させて、何が信念ですか!」

花田「もう二度と、私の前ではとばさせない!」

花田「たとえ自分が不利になろうとも」

花田「誰も、とばさせません!」


半年後

2年夏 インターハイ準決勝 先鋒戦



花田(このまま宮永照に連荘させてはダメだ)

花田(このままでは誰かがとばされて、試合が終わってしまう)

花田(その時私が2位で終わる確率と)

花田(みんなが巻き返して2位以上で終わる確率)

花田(それを計算して比較できるほど、私の頭はよくない)


花田(でも一つだけ、分かっていることがある)

花田(自分が納得できる方!)

花田(誰も)

花田(とばさせない!)




カン!

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