【ラブライブ】真姫「マキマキ超会議?」 (165)

更新遅め
真姫ちゃんメイン
百合要素あり

以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。

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――――――


真姫「んっ……」

真姫「あれ? ここは……」キョロキョロ

真姫「部室の更衣室、よね?」



??「あら、起きたの?」



真姫「え? あ、あなた……私?」



まき「そうね。私は西木野真姫。あなたと同じ、ね」



真姫「……意味、わかんない」

まき「ま、あなたの気持ちも分からないではないわ」

まき「私もそう言ったし」

真姫「…………」

まき「それにしても、ずいぶん眠っていたわね」

真姫「…………」スタスタ

まき「廊下に出る気? 無駄よ」


―― ガチャッガチャッガチャッ ――


真姫「…………なに、これ」

まき「ね? 開かないでしょ?」

真姫「え、えぇ……」

まき「ほら、早く部室の方に行きましょう。みんなが待っているわ」

真姫「みんな?」



まき「えぇ。あなたで最後だから」

真姫「?」



――――――

――部室


―― ガチャッ ――

まき「待たせたわね」


彼女に続いて、部室に入る。


真姫(凛たちがいるのかしら……って!?)


そう思ってたんだけど、目の前に広がっていたのは、予想外の光景だった。



真姫「な、なっ!?」


まき2「本当よ」

まき3「まったくね」

まき4「はぁ、本当にそれも私なの?」


そこには、何人もの私がいた。
えぇと、1、2、3……7人!?
私を連れてきた彼女と私を入れて、9人の西木野真姫が、そこにはいた。


真姫「………………」

まき5「ほら、早く座りなさいよ」

まき6「あなたの席はそこね」

真姫「え、えぇ」


頭の整理が出来ていないまま、指定された席に座る。


真姫「えぇと……これは、一体なんの冗談なの?」


全員が座ったのを見て、私はそう質問した。
冗談、じゃないとしたら夢でも見てるんでしょうね。
と、私の思考をよんだように、


まき7「夢ではないらしいわ」

まき8「信じられないでしょうけどね」


二人のまきがそう言った。



まき「さて、本題に入りましょうか」


私たちの会話に割って入るように、私を連れてきたまきが口を開いた。


まき「みんなを集めたのは、私よ」


その言葉に驚くものはいない。
もしかしたら、私が寝ている間に、他のまきには話がいっているのかしら?


まき「……みんなに集まってもらったのは、他でもないわ」

真姫「っ」


そこで唾を飲む。
少しだけ間が空いて、



まき「ノロケ話を語り合うためよ!」

真姫「は?」

思わず間抜けな声をあげてしまった。
って、え?


真姫「ノロケ話って?」


そう聞き返すと、


まき2「私は穂乃果」

まき3「私は海未よ」

まき4「私はことりと付き合ってるわ」

まき5「私は凛と」

まき6「私は花陽ね」

まき7「私はエリー」

まき8「私は、にこちゃん……」

まき「そして、私が希よ」


真姫「」


空いた口が塞がらなかった。
ここにいるまきたちは、どうやらμ's のメンバーと付き合っていて……。

え?
つまり?


真姫「自分の恋人自慢を聞かせるために?」

まき「そう。ほら、私たちって人にそう言うこと言えないでしょ?」

まき3「……ま、そうね」


なるほどね。
自分自身になら、それを言えるってわけね。


まき5「それで……ねぇ、私?」


まき2「ん?」

まき3「なによ?」

まき4「え?」

まき6「なに?」

まき7「なに?」

まき8「え?」


真姫「」

まき「……まぁ、こうなるわよね」


これじゃ、ノロケ話をどうこうする場合ではないわね。

どうするのよ?
そんな意味を込めて、隣の彼女に目を向ける。
すると、


まき「それじゃあ、こうしましょう?」

まき「付き合ってる相手の名前をそれぞれの名前の前につけるのよ」

のぞまき「例えば、私なら、のぞまきっていう感じ」

えりまき「なるほどね。じゃあ、私はえりまきってことね」

うみまき「なら、私はうみまき、ね」

にこまき「…………にこまき、か」


なるほどね。
それなら分かりやすいわ。

あら?
でも、それなら……。


真姫「私は?」

ほのまき「え? あなたは……」



真姫「私は誰とも付き合ってないわよ」



まき's「「えっ?」」


りんまき「ちょ、ちょっと待って!」

真姫「なによ?」

ぱなまき「あ、あなた、正気?」


まるで、信じられないものを見るような目で二人にそう聞かれる。
っていうか、のぞまき以外はみんな、同じような目で私を見ていた。

な、なによっ!?
私がまるで、変みたいに……。

そう言うと、


ことまき「そりゃおかしいわよ! あなた、ちゃんとμ's として活動してるの!?」

真姫「え、えぇ……」


ことまきの妙な迫力に気圧されながら、頷く。
それを見たえりまきは、私をじろじろと見ながら、こう言った。


えりまき「あなた、好きな人は?」

真姫「ヴぇぇぇ!? そ、そんなのいないわよっ」


慌てて、えりまきの言葉を否定する。
す、好きな人って……。

と、私の言葉を聞いて食いついてきたのは、ほのまき。


ほのまき「はぁぁ!? 意味わかんない!」

真姫「え、えっ!?」


たじろぐ私に構わず、ほのまきは私に顔をずいっと近づけて、



ほのまき「他の皆はまだしも、穂乃果と一緒に練習してて好きにならないとか、なによそれっ!」



そんなことを言ってくる。
そ、そんなこと言われたって……。


りんまき「むっ、聞き捨てならないわね。それを言うなら凛でしょ? あの天真爛漫さに惹かれないって言うの?」

ことまき「ちょ、ちょっと待ちなさい! 穂乃果? 凛? 確かに可愛いけど、惚れるとしたら、ことりに決まってるでしょ!」

ほのまき「はぁ?」

りんまき「なに言ってるのよ!」

ことまき「そっちこそ!」


そのまま3人はぎゃあぎゃあと騒ぐ。
私の目の前では、穂乃果が、凛が、ことりが一番可愛いと主張しあう自分の姿があって……。



真姫「なにこれ、意味わかんない」



ついそう呟いてしまうのだった。


――――――

こんな感じで
各真姫ちゃんがノロケ話をする話になる予定です。

また少ししたら書きます。
少々お待ちを。

――――――


うみまき「とりあえずこの私は、普通に真姫って呼びましょう」

えりまき「ま、それが無難ね」



3人の私をなんとか抑えた二人がそう言った。
私だけは普通に真姫なのね。
ま、いいけど。


のぞまき「真姫には中立な立場から、私たちの話を聞いてもらうわ。いい?」

ほのまき「分かったわ」

ことまき「……えぇ」

りんまき「はいはい」



ちょっと不貞腐れたみたいに、3人はそう言った。

……なんか、イラッとくるわね。
自分の顔だからかしら。

そんな私の心中を察することなく、のぞまきは高らかに宣言した。



のぞまき「さて、それじゃ、始めましょ?」

のぞまき「マキマキ超会議、開催よ!」



――――――

――――――


のぞまき「ふんっ」

えりまき「ほ、ほら。機嫌直しなさいよっ」


ネーミングをダサいと言われたのぞまきを慰めるえりまき。
そんな二人を遠目に見ながら、私は質問をした。


真姫「ノロケって言ったって、どうするのよ?」


たぶん一人一人が自由に話していたんじゃ、時間が足りない。
相手が違うとは言え、みんな、私自身だから分かるわ。

私は溜め込むタイプだから、こういうのもきっと溜め込むんでしょうね。
……ま、私にはよくわからないけれど。

と、私の質問に答えたのは、


ぱなまき「まずは一人一つ、特定の話題に関して、話をするらしいわ」


のぞまきから事前に話を聞いていたという、ぱなまきだった。

特定の話題?
どういうこと?

そう聞くと、ぱなまきはさらに詳しい説明をしてくれた。


ぱなまき「とりあえず5つ、話題を用意してあるらしいわ」

ぱなまき「話題1つにつき、二人が話をして、最後の1つは皆が話をするって」


真姫「ふぅん」


ぱなまきの話を聞きながら、整理する。
つまり、一人二回話す機会が与えられていて、自分が『これは!』って思った話題に絞って話せばいいってわけね。



ことまき「二回、ね」


ぼそりと呟いたことまき。
他のまきたちも口には出さないだけで、あまりいい表情とは言えない。
……不満そうね。


ぱなまき「ま、これが好評なら第二回もやるって話だから」


皆の表情を見てそう補足するぱなまき。
それを聞いて、


りんまき「ふぅん、そうなのね」

ほのまき「ま、それならいいけど」

にこまき「……そう、ね」


他のまきたちも一先ず納得した様子。


のぞまき「……それに、時間が無限にあるって訳でもないわ」

えりまき「ふぅ……」

真姫「復活したのね」

のぞまき「おかげさまで」


口ではそう言いながらも、じろりと他のまきたちを睨むのぞまき。
そんなにあのネーミング気に入ってたのかしら?


のぞまき「希の力といっても限界があるし」

真姫「ふぅん。じゃ、早めに始めましょ」

まき's「「そうね」」


そうして、第一回マキマキ超会議が始まったのだった。
……気は乗らないけど。


――――――

申し訳ないですが
今日はここまで。

もう少ししたら更新する予定です

――――――


えりまき「さ、早速始めましょ」

にこまき「……そうね。で? 最初の話題は?」


のぞまき「最初の話題は、これよっ!」


8人の視線を受け、のぞまきはどこからかホワイトボードを取り出した。
そこには、


『告白のシチュエーションは?』


まき's「「!?」」

真姫「」


そう書かれていた。
私以外の七人の表情を見て、満足げなのぞまき。
そのまま言葉を続ける。


のぞまき「皆、誰かと付き合ってるなら、もちろん告白はされたのよね?」

ほのまき「ま、そうね」

ぱなまき「えぇ、まぁ」


のぞまきの質問に、皆、首を縦に振った。

……告白は向こうからっていうのは前提なのね。
我ながら情けないけど。


のぞまき「だから、そのシチュエーションを是非語ってほしいのよ」


というか、私も語りたいし。
なぜか得意気にのぞまきは言った。


ほのまき「……しょ、しょうがないわね。ここは私が……」

ことまき「待ちなさいよっ! 私も話したいわ」

りんまき「っ! それなら私だって!」


あぁ、またこの三人。
……この人たち、付き合ってる相手に引っ張られてるんじゃないかしら。
ん?
あ、ことまきは違うだろうけど?

と、言い争いに発展しそうな三人をたしなめてから、のぞまきはくじを取り出した。
それで順番を決めるってことなんでしょうね。

そして、それを順に取っていって。
まず始めに権利を勝ち取ったのは――

――――――



ほのまき「っ! 私よっ!」



――――――

ほのまきだった。
その手には、赤い丸が書かれた紙が握られていた。


ほのまき「ふふっ、幸先いいわね」


そう言って、得意気な顔をする彼女。
それを見て、他のまきたちは次こそは、と呟いている。
……すごい不気味なんだけど。


真姫「……早く話しなさいよ」


進行役ののぞまきも悔しそうに唸っている今のままでは先に進まない。
そう思った私は、そんな風に先を促した。

すると、ほのまきは、



ほのまき「ふんっ! よく聞いてなさい! 私と穂乃果の馴れ初めをっ!」



勢いをつけて立ち上がり、そう言った。


――――――

――――――


あなたたちも、穂乃果に初めて会った日のこと覚えてるわよね?

…………うん。

そうよ。
音楽室に穂乃果がいきなり現れたの。

それで作曲を頼まれて、って感じね。
それをきっかけに徐々に仲良くなっていって……。

諦めかけていた音楽に、また向かうことができたのも、うん。
たぶん、穂乃果のおかげね。

そんなこともあって、私がμ'sに入る頃には、もう私のなかで穂乃果への気持ちは出来上がっていたわ。


…………けれど。
やっぱり私はその想いを口にできなくて。
モヤモヤと悩んでいたわ。

そんなときよ。
作曲している私の所に、穂乃果がいきなり現れたのは――。

……そう。
初めて会ったときみたいにね。


――――――

仕事疲れでダウンしてました
読んでくださってる方、申し訳ない

少しだけ更新します。

――――――


穂乃果「真姫ちゃん、どうしたの?」

ほのまき「どうしたのって……」


それはこっちの台詞なんだけど。
音楽室にひょっこり現れた穂乃果にそんな言葉を返す。


穂乃果「いやぁ、真姫ちゃんは作曲がんばってるかなぁって思って……えへへ」


そう言って、照れたように笑う穂乃果。
好きな相手のそんな表情を見たんだもの。
素直じゃない私は、


ほのまき「……別に大丈夫よ」


素っ気ない言葉を返してしまった。
その上、顔も背ける始末。

ホント、どうしようもないわよね。
素直じゃない、天の邪鬼な私はこんな言い方しかできない。

でも、穂乃果は……。


穂乃果「ねぇ、真姫ちゃん」

ほのまき「……なによ?」


穂乃果「なにか悩んでる?」


普通なら、愛想を尽かしてもいいくらい面倒くさい私の、その本心をズバリ言い当てた。

もちろん、穂乃果のことで悩んでるなんて、言えない。
それに、変な意地もあって



ほのまき「…………悩んでなんてないわ」



穂乃果の問いにそんな風に答えていた。

たぶん、それが嘘だってことはバレバレだったと思う。
間とか、視線とか。
あからさまに嘘ついてますって顔だっただろうし。


ほのまき「作曲は順調だしっ、勉強も完璧よっ! なにも悩むことなんてないわっ」


嘘を取り繕うように、続ける。
その間、穂乃果はじっと私のことを見つめていた。

それから、しばらくそんな嘘を取り繕う言葉が並んだ。
そして、


ほのまき「はぁ……はっ、はぁ」

穂乃果「…………」


沈黙。
聞こえるのは、息切れして荒い私の呼吸だけ。
穂乃果は黙ったまま。

それを見て。
黙ったまま私を見つめる穂乃果を見て。
私はなんだか、無性に腹がたった。

私はこんなに穂乃果のことで悩んでるのにっ!
なんでこんなに穂乃果は落ち着いてるのよっ!

そんな風に。
だから、つい言ってしまったの。



ほのまき「それにっ! 穂乃果には関係ないでしょっ!」


関係ない。
それは、自ら自分と穂乃果を引き裂く言葉。
そんなこと言ったらおしまいなのにね。

でも、頭に血がのぼった私には、自分を止めることはできなかった。

自分気持ちを守るために、好きな相手を攻撃する。
そんな矛盾した行動を止められない。


ほのまき「穂乃果に何がわかるのよっ」

ほのまき「私のこと、何にも知らないでしょっ!」


穂乃果「……うん。知らないよ」


それはそうよ。
だって、私は穂乃果になにも伝えてない。


ほのまき「私の気持ちなんて、分かるわけないわっ!」


穂乃果「……うん。分からないや」


それもそう。
私は気持ちの一欠片も伝えてない。
感謝も、恋慕も。



ほのまき「……なら、私のことなんて、ほっといてよっ!」



暴走した私の心は、ついにそんなことを口走ってしまった。
ホントはそんなこと思ってもないくせに。

本当は、側にいてほしいって思ってるくせに。


穂乃果「…………」

ほのまき「私のことなんてっ――」


そこまでだった。
私が言葉を発することが出来たのは――。

なぜなら、



穂乃果「ちゅっ……んっ、んん」

ほのまき「!?!?!?!?」



私の唇は、穂乃果に奪われていたから。

長い長い口づけ。

最初は驚き。
次は恥ずかしさ。
そして、最後に嬉しさがやってきた。

そんな初めてのキスから解放された私に、穂乃果は言った。



穂乃果「嫌だよ。 真姫ちゃんをほっとくなんて嫌だっ!」



穂乃果の真っ直ぐな瞳を通して、言葉が私の心に入り込んでいく。


穂乃果「ほっといてなんて、言わないでよ……」

穂乃果「穂乃果はね。真姫ちゃんのこと、ほっときたくないよ!」

穂乃果「真姫ちゃんが楽しいなら一緒に笑いたい」

穂乃果「悩んでるなら、一緒に悩みたい」

穂乃果「穂乃果は、真姫ちゃんの側にいたいんだ」


そう言って笑う穂乃果。
その笑顔からは、太陽みたいな穂乃果の熱い想いが伝わってくる。

なんで?
なんで、そこまで言ってくれるの?

穂乃果の熱さに逆上せてしまった私は、ボーッとした頭のまま、そう尋ねる。
そしたら、穂乃果はまた笑顔を浮かべて、こう言った。



穂乃果「だって、穂乃果は真姫ちゃんのこと大好きなんだもんっ♪」



それが、キスより後に聞いた穂乃果からの告白だった。



――――――

――――――


ほのまき「こんな感じよ?」


ほのまきは、その話をそんな風に締めた。

ま、別にどうってことないでしょ?

そんな風に言ってはいるけれど。
正直、表情筋がゆるゆるで見ていられないわ。


ぱなまき「な、なかなかやるわね……」

うみまき「……流石は穂乃果ってところかしら」


相手が積極的ではない二人からしたら、穂乃果の積極性は羨ましいみたい。
そろそろしてるのが、見てて恥ずかしいわよ。


真姫「…………はぁ」


つい、ため息が出てしまう。

……え?
なぜかって?
それは、


ことまき「まだまだね。ことりの方が断然すごいわよ」


そんな風に、ほのまきの話を聞いて、火が着いてしまったことまきが、今か今かと話をしようとしているから。



ことまき「それじゃ、次は私ね?」

ことまき「ことりと私の馴れ初めをよーく、聞きなさいっ!」



――――――

短いですが、今日はここまで。
レス感謝です。
こんな感じでダラダラ書いてきます。
需要があればいいな。
では。

今日の夜に少しだけ更新予定です
寝落ちなければですが…

ちょい更新

――――――


ことまき「ことり?」

ことり「……ん、んんー」


部室の机に突っ伏して眠ることりから返ってきたのは、寝息のような返事だった。


先生に呼び出され、遅れて部室に来た私。
そこには他の皆の姿はなく、眠っていることりと書き置きのメモだけが残されていた。
そのメモによると、


『ことりちゃん、昨日も遅くまで衣装つくってたみたいだから寝かせといてあげよう!』


ということらしいわ。

文字からして、書いたのは穂乃果辺りかしら。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだけど。


ことまき「…………」

ことり「……すぅ、すぅ」


気持ち良さそうに眠ってるわね。
確かに、これは起こすのが忍びないかも……。


ことまき「って、このままじゃ風邪引くわよ?」


答えが返ってこないのをわかっていて、そう言ってみる。


ことり「……すぅ」


案の定返事はなく、寝息だけが聞こえる。


ことまき「……仕方ないわね」


ポツリと小さな声で呟き、近くにあったタオルケットをことりの体にかけた。


ことり「んっ……」

ことまき「あっ」

ことり「…………すぅ」

ことまき「……ふぅ」


ことりが起きなかったことに、とりあえず一安心。

したところで、ここで少しだけ私の頭が働いた。

穂乃果の書き置きを見るに、たぶんことり以外はそのまま屋上に向かったんでしょう。
私も、呼び出されたといってもすごい時間が経ってるわけではない。

つまり、



ことまき「……ふたりきり、ね」



つまり、そういうことよね?


少し前に、ことりの留学騒動があった。
結局、あの時は穂乃果が強引に引き止めて、ことりを連れ戻した訳だけど。

あの時、私は――



ことまき「穂乃果に、嫉妬してたのよ?」



私はいつのまにか、ことりのすぐ隣に座っていて。
そんなことを呟いていた。


元々、私はことりのことが気になってはいた。

私と違うタイプで、周りを癒すことができることり。
あまり自分からは主張せず、誰かを支えるように行動することり。
こんな風に私たちのために、夜遅くまで衣装作りを頑張ってくれることり。

そんな中、留学騒動があって。
ことりが遠くに行ってしまうかもしれないと思って。
そのせいで、私は自分の気持ちを自覚した。



私は、ことりのことが好き、って。



だから、思ってしまったの。

もしあの時、引き止めに行っていたのが、私だったら、どうなっていたのかしら。

そんな風に。
今さらなんだけどね。

ことりは、


『だれかに引き止めて欲しかったんだと思う』


そんなことを言っていた。
μ's の誰が来ても、たぶんことりは行くのを止めてたって。

だけど、やっぱり穂乃果と私じゃたぶん違う。
幼馴染みとただの友達じゃあ、埋められない差がある。

もし、私が引き止めて、ことりが戻ってきたとしても。
ことりはきっとどこかで留学を引きずることになっていただろう。

今のことりがあるのは、穂乃果のおかげ。

それが、悔しい。


ことまき「…………ことり」


小さな声で、ことりの名前を呼ぶ。
返事はない。


ことまき「……ことり」


もう一度。
今度は少しだけ声量を上げる。
でも、やっぱり返事はない。


ことまき「ことり」

ことり「んん……すぅ」


名前を呼んで。
それで、私はなにをしたいのかしら。

………………。

……簡単ね。
私はことりに伝えたいのよ。


貴女の特別になりたいの、って。


けれど、伝えたいその言葉は、勇気のない私には言うことができない。
ただ名前を呼んで、気づいてくれるのを待つだけ。
馬鹿みたい。



ことまき「…………ねぇ、寝てる?」


気づけば、私はそう尋ねていた。
返事は、ない。

だから、魔が差したんだと思う。
今なら、ことりを私だけのものに出来る。
そんなおかしな勘違いをしてしまったの。



ことまき「……大好きよ、ことり」

―― フワッ ――



私らしくない素直な言葉。
それを口にするのと同時に、私はことりの髪を撫でていた。

名前にふさわしいふわふわな、まるで羽毛のような感触で。


ことまき「……んっ、ことり……」


私は、そのままことりの髪に顔をうずめた。
そのときだった。




ことり「……まき、ちゃん?」



最悪のタイミング。
私が妙なテンションになって、ことりの髪の匂いを嗅いでいたそのタイミングで、ことりが目を覚ましたのである。


ことり「くすぐったいよぉ♪」

ことまき「……」


この世に神様っていうのがあるなら、恨んでやりたいくらいのタイミングよ。

で、でも、私は西木野真姫よ!
μ's の中でもクールで賢い私ならこの危機を乗り越えることが――


ことり「ふふふっ、ま~きちゃん♪」

ことまき「ヴぇぇぇぇ!?」


出来ないわよっ!
っていうか、なによ、これ!?
なんで、いきなり抱きついてくるわけ!?
イミワカンナイ!?

混乱する私。
そんな私を尻目に、ことりは私の髪に触ってきた。


ことまき「ちょっ!? 何すんのよっ!」

ことり「? なにって……」


首をかしげることり。
けれど、行為自体を止めるつもりはないらしく。


ことり「んっ」

―― スンスン ――

ことまき「んっ……あぅ……」


そのまま、私の髪に顔をうずめてくる。
って、これって!

そして、私の髪に顔をうずめたまま、ことりはこう言った。



ことり「ことり『も』大好きだよぉ♪」

ことり「真姫ちゃんの髪の匂いを嗅ぎたくなっちゃうくらいには、ね♪」



それから、ことりは私の耳元に口を近づけて――。



ことり「真姫ちゃん」

ことり「だぁいすき・」



――――――

――――――


ことまき「そうして、私たちは付き合うことになったの」


得意気に、ことまきはそう言って、話を終えた。


ことまき「ふふっ、あなたたちには分からないでしょ? ことりに耳元で囁かれるその快感をっ!」

ことまき「きっと脳内麻薬が出てるのよ。依存性もあるしね」


あ、まだ終わってなかったみたい。
……耳元で、ねぇ。
興味はなくはないけど……。


にこまき「ほら! もう終わりよっ!」

えりまき「そうよ! もう告白のくだりは終わったでしょ!」


ことりの声に興味を持ちかけたところで、痺れを切らした二人が止めに入った。
比較的おとなしかった二人だけど、やっぱりそろそろ話をしたいのかしらね?


ことまき「……わかったわ」


とにかく、二人の説得で、どうにかその場は収まって。
まぁ、ことまきは若干、不貞腐れたようではあるけど。
まぁ、脳内麻薬については後で聞いてみてもいいかもね。

と、場が一段落したのを見計らって、



のぞまき「さて、次は話題を変えましょうか?」


のぞまきがそう告げた。

あ、そういえばそんな話だったわね。
ひとつの話題につき、二人とか。

じゃあ、次はどんな話をするわけ?
私がそう尋ねると、のぞまきはこう答えた。



のぞまき「『恋人の一番すきなところは?』でどうかしら?」




まき's「「っ!?」」

真姫「」


その瞬間、空気が変わったのが嫌でも分かった。
恋人の一番好きなところ?だっけ?
そりゃあ、ノロケ話の定番だものね。

この話題を取りに行く気持ち、わからなくも……。



真姫「いや、わからないわよ」



そんな私の冷めたツッコミも虚しく、残りのまきたちはヒートアップしていって。



りんまき「いよっしゃぁぁぁ!!!」



私と同一人物とは思えないテンションの人が、それを勝ち取ったのだった。

…………なんだか憂鬱ね。



――――――

今日はここまで。
次はりんまきエピから開始。

2時頃に更新予定

――――――


とある休日。
私と凛が買い物に行ったときのことよ。
凛の服を買うために入った店で、凛が試着室から出てくるのを待ってたんだけど……。



りんまき「ねぇ、凛まだなの?」

凛「ま、まだっ!」


なかなか出てこない凛。
もう10分くらいは待ってるかしら。

いい加減、店員の視線も気になってきて、私は凛に早くするように言った。
けれど、


凛「うぅぅぅ……」


試着室の中から返ってくるのは、うなり声で。


りんまき「……凛?」

凛「…………」


ついには、返事すら返ってこなくなる。
そのとき、私はなぜかライブで倒れた穂乃果のことを思い出してしまって。


りんまき「凛、大丈夫?」

凛「うぅぅぅ……」


また、うなり声。
ふと不安になった私は、


りんまき「っ! 開けるわよっ!」

凛「っ!?」


一応、そう断って、カーテンを開けた。


凛「ちょっ! まって!」

―― シャーッ ――


という凛の制止はもう遅く、私はカーテンを勢いよく開けていた。
そんな私の目の前に広がっていたのは……。


りんまき「……」

凛「うぅぅぅ……待ってっていったのにぃ」



私が選んだ服に身を包んだ凛の姿だった。

なによ。
ちゃんと着替えてるじゃない。

そんな風に、10分も待たされた文句のひとつでも言ってやろうかと思ったわ。
けれど、私の口はそんな意思に反するように、勝手に言葉を発する。


りんまき「かわいい、わね」

凛「にゃっ///」

りんまき「あっ……うぅぅ///」


つい出てしまった言葉に、私は顔を赤くする。
もちろん、それを言われた凛の顔も赤い。


凛「…………うぅぅ///」

りんまき「……っ///」


お互いに顔を見ることが出来ない。

つい口走ってしまった率直な感想で、凛が照れるのがなんだか恥ずかしかったから。
それに、


凛「かわいい……かぁ、えへへ」


ちらりと凛の方を横目で見ると、そんなことを呟きながら、はにかんだように笑っていて。

だから、余計に凛の顔を見れない。
……かわいすぎて。



結局、凛にその服を買ってあげて、店を出た。
顔はお互いに背けたまま。

それでも、なんだか嬉しいのは、右手があたたかいから、かしらね?


――――――

――――――


デートも終わって。
凛との帰り道。
夕暮れの道を二人で歩く。


凛「真姫ちゃん」

りんまき「なに?」


不意に、凛に名前を呼ばれた。
それから、


凛「買ってもらった服、大事にするねっ!」


凛は笑顔で、そう言った。


りんまき「……えぇ」


どうにか目を合わせて、そう返す。
でも、それもすぐにできなくなって。


凛「ま~きちゃん♪」

真姫「ちょ! なによ、いきなりっ」


だって、凛が急に抱きついてくるから。
勢いよく飛び込んできた凛だったけど、その体は私よりも小さくて、腕のなかにすっぽりと収まった。

そして、私の腕のなかで、凛は


凛「にゃぁぁ!!」

―― スリスリ ――

真姫「く、くすぐったいってばっ!」


いつもみたいに猫の真似で鳴きながら、スリスリと顔を擦り付けてくる。


もうっ!
なにやってるのよ。
ちょっとだけ呆れながらそう尋ねると、凛はご機嫌そうに



凛「マーキング! 真姫ちゃんは、凛のものだよー、って!」



そんなことを言った。
その吐息がくすぐったくて。


りんまき「イミワカンナイっ」


ついそう言ってしまう私。
ほんとは、すごく嬉しいんだけどね。

でも、その本心はきっと凛に届いてる。
だってね?


凛「ま~きちゃん♪」

りんまき「…………なによ?」


私にじゃれつく凛のすぐそばで。
私の心臓はドクンドクンって、高鳴ってるから。
たぶんこの音は、凛にも――



凛「聞こえてるよ?」

りんまき「聞こえないっ!」



――――――

――――――


りんまき「つまり、そういうことよっ!」


話し終え、得意気なりんまき。
いい加減この言いようもない苛立ちにも慣れてきたわね。

けれど、


真姫「で、結局どういうこと?」

のぞまき「……恥じらう姿がかわいいってこと?」

ほのまき「猫っぽくじゃれてくるところじゃないの?」


話の焦点がなんだったか、いまいち理解できない私たちは、互いに顔を見合わせ、首をかしげた。


ことまき「それで、一番好きなところはどこなのよ?」


私たちの疑問を代表して聞くことまき。
それに対して、りんまきはまたドヤ顔を作って、こう言った。



りんまき「凛の一番すきなところ? そんなの全部に決まってるデッショー」



さいですか。

りんまきのなんかどうしようもない発言に、脱力感に包まれる私たち。

本当に、あれは私なのかしら。

なんて、あまり信じたくないものから目を背けようとしていると、突然声があがった。


「それ、よぉぉぉくわかるわ!」


まぁ、もちろんそれは私の声ではあるのだけど。
その声の主は、さらに言葉を続けた。



ぱなまき「花陽も、すべてが可愛いのっ!」



声高にそう主張するぱなまき。

あぁ、今度は彼女の話を聞かなきゃなのね。
……けど、相手は花陽だし。
きっと大人しめのやつよね。

……まぁ。
私のその甘い考えは、さらに甘いエピソードに徹底的に砕かれることになるのだけど。



ぱなまき「じゃ、花陽の好きなところを話させてもらうわね?」



――――――

一旦ここまで。
一年組いいよね。

もうちょいしたら更新します

遅くなったけれど更新

――――――


花陽の好きなところを一言で表すとしたら。

『優しさ』

それがぴったりだと思うわ。

付き合ってなくても、花陽はそういう子よね。
私はもちろん、メンバーにもそれはちゃんと向けられている。

……まぁ。
その優しさが彼女自身を苦しめることにもなるんだけど……。


――――――

――――――


μ's の皆で合宿していた時のこと。
例によって例のごとく、私の家の別荘を使っていたのだけど――



凛「真姫ちゃぁぁぁん!」

穂乃果「真姫ちゃぁぁぁん!」


ぱなまき「ヴぇぇぇぇ!?」


夜だったこともあるんでしょうね。
なぜかテンションが上がった二人が私の名前を叫びながら、抱きついてきたのよ。


ぱなまき「あ、あついっ! 離れなさいよ!」

ほのりん「「はなさないよっ!」」

ぱなまき「変なところで、意気投合しないでっ!」


なんて、バカなやり取りをしていたわ。

ま、私も少なからずテンションが高かったことは認めるわ。
だって――


ぱなまき「…………」

花陽「――――あはは」


3年生と話をしている彼女の横顔を盗み見る。

……うん、そうよ。
恋人とのお泊まりだもの。
気分が上がるのはしょうがないじゃない?

……二人きりではないけど。

ふと、じゃれついてきていた二人が私の視線が自分達に向いてないことに気づいた。


凛「? なに見てるの?」

ぱなまき「っ!? な、なんでもないわよっ!」

穂乃果「……花陽ちゃん?」

ぱなまき「っ!」


油断していたせいね。
二人に私の視線を追われて、その名前が話題に挙がってしまった。

いけないっ!
誤魔化さないと……。
そう思った私は、咄嗟に、


ぱなまき「花陽を見てなんかいないわっ」

花陽「…………っ」


なんてことを言ってしまったの。
大声で、ね。

それはもちろん花陽にも聞こえてたみたい。
あのときの表情は今でも頭にこびりついてるわ。
切なさを押し殺したような……。

え?
なんで、否定するのか?
恥ずかしいから?

…………ううん。
そんなんじゃないわ。

ただ、花陽のことをじっと見てたらおかしいでしょ?
恋人なら普通。
確かにそうだけど、私たちの場合はそうじゃないの。



私と花陽の関係は、みんなには秘密だったんだから。



――――――

――――――


合宿での練習は、海未が妙に張り切っていたせいで結構ハードで。
みんな、日が変わる前には眠っていたわ。
穂乃果の提案で、広間に布団を並べてね。

もちろん、私も例外じゃなく、そこで眠っていたのだけど。


ぱなまき「……んっ」


ふと喉の乾きを覚えて、体を起こした私。


ぱなまき「暑い……」


うんざりと、そうボヤいてから、みんなを起こさないように静かに布団を抜け出す。
キッチンに行けば、確か冷たい飲み物くらいはあったわよね。
そう思いながら、キッチンに向かおうとして、気づいた。



ぱなまき「……花陽?」



凛と私の間で、眠っていた花陽の姿がなかったのだ。


ぱなまき「……どこ行ったのかしら」


昼間のこともあって、言い様のない不安を感じた私は、少し早足で広間を後にした。


――――――

――――――


花陽「はぁぁ……」

花陽「…………はぁ」


ぱなまき「やっと、見つけた」


花陽「……真姫ちゃん?」


10分くらい家の中を探し回って。
やっとのことで見つけた花陽は、外の階段に座ってため息を吐いていた。


花陽「どうしたの?」

ぱなまき「それはこっちの台詞」


そう言って、私は花陽の隣に腰かけた。
二人の距離は少しだけ遠い。


花陽「うーん。なんだか眠れなくて」


そう言って微笑む花陽。
弱々しい笑顔だった。


ぱなまき「……昼間のこと?」

花陽「…………うん」


小さな声でそう尋ねると、花陽は静かに頷いた。
まぁ、流石にわたしでもそのくらいは分かるわ。

あれは、うん。
さすがにひどかったわよね……。
あのときから、そう思ってはいた私だったから、素直に謝ろうとしたのよ。

けれど、


花陽「謝らないでね?」


花陽はまるで私の心の内を読んだように、そんな風に釘を刺した。
そして、こう続ける。



花陽「皆に黙ってるのは、花陽のワガママだから」




みんなには黙っていよう。

そう言ったのは、確かに花陽からだった。
けれど、それをよしとしたのは私。
だから、ワガママだなんて言わないで。

私がそう言っても、花陽は首を横に振った。


花陽「それでも、これは花陽のエゴなの」


エゴ。
そんな言葉を口にして、花陽はさらに言葉を重ねる。


花陽「わたしは、真姫ちゃんのことが好き」

花陽「素直になれない不器用な真姫ちゃんも、花陽を見守ってくれる優しい真姫ちゃんも」


そこで言葉を区切る花陽。
それから、


花陽「けどね?」

花陽「μ's のメンバーのことも好きなの」

花陽「花陽を変えてくれたみんなも、やっぱり大切」


もし、真姫ちゃんとのことを皆に話したら、遠慮されちゃうかもしれない。
下手をしたら、嫌われるかもしれない。
女の子同士で付き合うなんて、変だもんね。

花陽はそう言って。
そして、



花陽「わたしは……選べないよ」



ぱなまき「…………そう」


そう言った。

……えぇ、知ってるわ。
もちろん、その好きは私へのものとは違うことも分かっている。
だけど、あなたの優しさが、心が私だけに向いていないことくらい知っている。


花陽「なのにっ!」

花陽「花陽は、凛ちゃんと穂乃果ちゃんに抱きつかれてる真姫ちゃんを見て、嫌な気持ちになったのっ!」

花陽「真姫ちゃんは花陽のものなのにって……」


おかしいよね?
皆も真姫ちゃんもどっちも大好きなのに。
おかしいよね?
ワガママを言って、勝手に嫉妬して。



花陽「……バカみたい」



自虐的に、花陽はそう吐き捨てた。
それは、付き合う前の花陽からは絶対聞くことのできないであろう言葉だった。



ぱなまき「…………」

花陽「……ごめんね、真姫ちゃん。花陽、めんどくさいよね?」


しばらく黙っていると、花陽はそう聞いてきた。

……そうね、うん。
いい機会だから、ちゃんと言ってあげましょ。

私は意を決して、口を開いた。



ぱなまき「そうね。めんどくさいわ」

ぱなまき「それに、バカみたいよ」


ひとつため息を吐いてから、花陽の言葉を肯定する。
だって、その通りなんですもの。


花陽「……っ、うんっ」

花陽「そう、だよね……こんなめんどくさい花陽なんか……」


それを聞いて、頷く花陽。
そして、目が潤んで……って!?


ぱなまき「ちょっ! 泣くんじゃないわよっ!」

花陽「だ、だって、真姫ちゃんに嫌われて――」


ぱなまき「ないからっ! 嫌ってないっ!」


花陽「…………えっ?」


慌てて否定すると、花陽はポカンとした表情を浮かべた。

私の言い方も悪かったわ。
流石、不器用な真姫ちゃんよね。
…………はぁ。


ぱなまき「だからね? バカみたいとは思ったわよ。ウジウジ悩んでるのみると」

ぱなまき「めんどくさいとも思ったし」

花陽「じゃあっ!」

ぱなまき「でも、それでもいいじゃない」



ぱなまき「そうやって考えてくれるのって、優しい花陽らしいから」



少しだけ優柔不断だけど。
私のこともみんなのことも大好きな花陽らしい。
それに、大切に思ってるからこそ、そこまで悩むわけだしね。

なら――



ぱなまき「そのめんどくさいのも、悩んでるのも」

ぱなまき「愛おしいって思うわ」



花陽「……真姫ちゃん」



と、そこまで言って、なんだか恥ずかしくなった私。
だって、キザな台詞でしょ?
い、愛おしい、とか?


ぱなまき「ま、まぁ? それに、本当にそれが嫌だったら、マッキーのことしか考えられないようにしてあげてもいいけどっ?」

花陽「…………」


だから、そんな風に言って誤魔化したのよ。
照れ隠しね。

……今思い返すと、この台詞も相当恥ずかしいわね。
私らしくないし。

あぁ!
だからなのね。
今、やっと合点がいったわ。
その後、あんなことになったのは、この恥ずかしい台詞のせいだったのね。



花陽「……じゃあ、そうして?」

ぱなまき「……え?」

花陽「真姫ちゃんのことしか考えられないようにして?」

ぱなまき「」



――――――


この後、滅茶苦茶キスしたわ。


――――――

――――――



ぱなまき「結局、キスしてるとこを皆に見られたわ」

真姫「バレたのっ!?」

ぱなまき「ま、し続けたけど?」

真姫「シリアスが台無しよっ!」

ぱなまき「トロトロになった花陽は可愛かったわ」

真姫「……もういや」



途中まで、花陽の葛藤が分かるいい話だったのに……。
結局、ただのノロケになってしまったわ。


りんまき「トロトロになった花陽……」

のぞまき「興味深いわね」

真姫「」


もうやだ、この空間。
……はぁ、凛と希に言いつけてやろうかしら。


うみまき「さて。次の話題に行きましょ?」

えりまき「そうね。時間もないでしょうし」


話を続けたそうなぱなまきの話を遮ったのは、その二人。
相手の影響でしっかりしてるというよりは……。


うみまき「ほらっ! 早くしなさいよ」

えりまき「のぞまき、次の話題はなに?」


ただ単にノロケたいだけね、これ。

と、それを受けて、のぞまきはホワイトボードに次の話題を書いていく。
そして、


のぞまき「次は、これよっ!」


『恋人になって初めての喧嘩は?』



それを提示した。


うみまき「……喧嘩?」

えりまき「……喧嘩ね」

にこまき「……っ」


のぞまき以外の残っている3人はそれぞれに反応を示した。

うみまきはキョトンとした表情。
えりまきは少しだけ思案顔で。
にこまきは……?。


のぞまき「それじゃあ、くじ引くわよ……って、これはどうしようかしら?」


三人の顔を見て、なにか思うところがあったのか、のぞまきがそう言った。

ま、確かに喧嘩しそうにない組もいるし。


うみまき「……?」


それに、なんだか


にこまき「…………」


にこまきの様子が変?
その様子を他の私も感じていたみたい。
代表してそれを指摘したのは、ことまきだった。


ことまき「……にこまき、どうしたの?」

にこまき「あっ……べつに」


口では別にとは言っているけれど。
毛先をいじるその癖で、話したいと思っているのはバレバレで。


真姫「…………はぁ」


その分かりやすさに、我ながら呆れつつ、


真姫「話してみなさいよ」

にこまき「……わ、わかったわよ」


そう促した。


――――――

今日はここまで。
次は、にこまきから。

更新します

――――――



にこ「真面目にやんなさいよっ!」

真姫「はぁ!? やってるでしょっ!」



新曲の練習中のこと。
いきなり、にこちゃんが怒りを露にした。

この新曲は、にこちゃんと私の初めてのデュオ曲で。
私とにこちゃんが恋人になった記念にって、みんなが詞を出しあって、作ってくれた曲だった。
だから、本当に真面目にやっていたつもりなんだけど……。


にこ「は? やってないわよ」


私の言葉を否定して、不機嫌そうな表情を浮かべるにこちゃん。

って!


真姫「いきなりなんなのっ!? 私が真面目にやってないとか……」


言いがかりにも程があるわ。
まず、なにを根拠に……。

私はそう言い返す。


ことり「ふ、二人ともぉ……」

海未「や、やめましょう」

花陽「そうだよぉ」


練習を見ていた3人も、私とにこちゃんに止めるよう言ってくる。
けれど、


にこ「あんたらは黙ってなさいっ」

海未「うっ」

ことり「うぅぅ」


にこちゃんの気迫に皆、怯んでしまった。
花陽なんて、目をつぶってたし。


真姫「ちょっと、にこちゃん!」

にこ「なに?」


私の声に反応して、こちらを睨み付けてくるにこちゃん。


真姫「みんなに、当たらないで。私たちの問題でしょっ!」

にこ「……べつに、当たってないわよ」


私の抗議に顔をそらすにこちゃんは、仏頂面でそう呟いた。
なんだか、私はそれが気に入らなくて……。


真姫「っ! にこちゃんっ!」


つい大声を出してしまう。
でも、にこちゃんは


にこ「…………」


無反応。
その代わりに反応したのは――


花陽「うっ……」

真姫「あ、ご、ごめん……花陽」


花陽が体を震わせた。
って、いけない。
花陽のこと、怖がらせちゃった。


真姫「ほ、ほら……怖くないから」

花陽「う、うん」


不安がる花陽の頭を撫でる。
その甲斐あって、花陽は少し落ち着いた。


真姫「……ことり、お願い」

ことり「うん……。花陽ちゃん、こっちおいで」

花陽「は、はい……」


にこ「…………っ」


にこ「ほら、やっぱり」

真姫「えっ?」


私たちの様子を見ていたにこちゃんは、小さな声で呟いた。

やっぱり?
それ、どういうこと?

そう尋ねても、にこちゃんに無視される。


真姫「ちょっと、にこちゃん!」

にこ「…………」


にこちゃんをきっと睨み付ける。
けれど、にこちゃんは私の声は無視したまま。


にこ「…………」


それから、にこちゃんは黙って、私の方に向き直る。


にこ「…………」

真姫「な、なによ?」


無言で見つめてくるにこちゃん。
その目は真剣で。


真姫「……こっち見ないで、よ」


だから、私はにこちゃんから目を反らしたの。
そんな真面目な眼差しで見られるのなんて、告白以来だったから。

だけど、にこちゃんはそれを許してくれなかった。



―― グイッ ――

にこ「こっち……見なさいよ」



両手で私の顔を、強引に引き寄せた。
その距離は、下手をすると唇がついてしまいそうな距離。


真姫「…………っ、にこちゃん?」

にこ「…………」


花陽「二人ともっ!?」

海未「ハレンチですっ!」

ことり「ひゃぁぁぁ……///」


三人の声が、どこか遠くで聞こえる。
ううん。
遠くなったように聞こえてるだけね。

あぁ、このまま私――。

そう思って、私は目をつぶった。
けれど、いつまでも期待した感触は得られなかった。
その代わりに、



にこ「やればできるじゃない」

真姫「……え?」



そう言われた。

驚いて、目を開ける。
目の前のにこちゃんの表情は、さっきとは比べられないほど優しかった。

それに、


―― ギュッ ――

真姫「あっ……手」


私の手は、いつのまにかにこちゃんに包まれていた。


にこ「真姫ちゃんさ」

にこ「みんなの目を気にして、恥ずかしがってたわよね?」

真姫「え、あっ……うん」


手をニギニギとしながらの質問に、静かに頷く私。

そう。
確かに、にこちゃんの言う通り。
私は、練習を見ててくれた三人の目を気にしてた。
だって、みんなの前で恋人とデュオ歌うとか……。


真姫「は、はずかしいでしょっ」


恥ずかしすぎるわっ!
それに、歌詞も歌詞だし。


にこ「かもしれないわ」


にこも流石に少しだけ気恥ずかしいし。

そう照れたような笑顔で言うにこちゃん。
けれど、すぐ真面目な顔に戻って。


にこ「でもさ」


そこで区切って、にこちゃんは言葉を続けた。
じっと私の目を見ながら。



にこ「せっかく、皆がにこと真姫ちゃんのために作ってくれた曲なのよ?」

にこ「真面目に――お互いのことだけ思いながら、歌わないとさ……」



―― チュッ ――

真姫「っ!? に、にこちゃんっ!?」


唇に一瞬感じた感触に驚いている私を見て。
にこちゃんは、ニコッと笑う。

小悪魔みたいな笑みで――



にこ「もったいないじゃない♪」



笑った。


――――――

――――――



真姫「で、恥ずかしくて、にこちゃんと顔合わせられないって?」

にこまき「……えぇ」


私はどうしたらいいのっ!?

必死な表情で、聞いてくるにこまき。
だから、私はこう言ってあげたわ。



真姫「自分でなんとかしなさいよ」

にこまき「ヴぇぇぇ……」



はぁ。
普通に現在進行形で、喧嘩でもしてて困ってるのかと思ったら。
ただのノロケだったわね。


うみまき「デュオ曲……いいわね」

ぱなまき「……そうよね、あるだけマシよ」

ほのまき「……私もことりとのデュオ欲しいわね」

真姫「……はぁ」


こっちはこっちで落ち込んでるし。


りんまき「ふふんっ♪ 私は勝ち組ね?」

真姫「…………はぁぁぁ」


こっちは得意気だし。
もうなんなのかしら、この人たち。

さて。
この辺の人たちは置いといて。


真姫「次は誰?」


そう尋ねる。
早く終わらせたいし。

すると、


えりまき「私よ!」


手を挙げたのは、えりまき。
どうやら、もうくじを引いてたみたいね。


えりまき「じゃ、いい?」

のぞまき「時間もないし、早くしなさいよ?」

真姫「……はぁ、いいわよ」

にこまき「……手短にね、はぁぁぁ」


憂鬱そうなにこまきにも構わず、えりまきは声高に言う。
……相当、我慢してたんでしょうね。



えりまき「ま、喧嘩といっても?」

えりまき「最終的にはエリーの可愛さを語ることになりそうね、フフッ」



真姫「…………」


あぁ、憂鬱。


――――――

一旦ここまで。
次はえりまき

とりあえず残りは
絵里海未希のエピと最後の話題

希海未は大体話まとまったが
エリーチカが思い浮かばない…
あと段々グダッてくる…

だれか、ネタをください。
エリーチカのネタを。

生徒会長とかの仕事ばっかりでかまってくれなくてーとか?
え?そういうことじゃない?

希曰く似た者同士とか

>>96
レス感謝!
そういうことです
>>97
レス感謝!

参考にさせていただきます。

もう少ししたら更新する予定です

――――――


私とエリーってどっちも冷静だから、喧嘩ってほとんどしないのよ。
自分が悪いところはちゃんと謝るし。

そこがにこちゃんとの付き合い方の差よね。
……なによ?
事実でしょ?
文句ある?

……ま、いいわ。
とにかく、私たちは喧嘩をすることは少ないの。
特に最近はね。


初めての喧嘩は、結構前のこと。
海未と私で新曲について話し合っていたときのことよ。


――――――

――――――


海未「ですから、ここの歌詞はもっと明るいイメージなんです」

えりまき「でも、これ以上明るくしたら、かえって安っぽくなるわよ?」

海未「で、ですがっ!」



絵里「…………むぅ」



えりまき「…………えっと」チラッ

えりまき「なら、こうしてみる?」

海未「……ふむ。悪くないですね」

えりまき「デッショー?」

海未「ふふっ」

えりまき「なによ? なにかおかしい?」

海未「いえ、ただここまで真摯に作曲していただけると、歌詞を書いた甲斐があります」

えりまき「っ、当然でしょっ///」



絵里「……つーん」ムスッ



絵里「ねぇ、真姫?」

えりまき「なに、エリー?」

絵里「ねぇ、こっち向いて?」

えりまき「……はぁ、なに? 今、曲の最終調整している最中なのよ」

絵里「……そう」フフッ

海未「ま、真姫? 曲を作るのは、後でもいいんですよ?」

えりまき「……嫌よ。あと少しでできるんだから」

海未「そ、そうですか……」チラッ



絵里「……ふぅん」ジッ



――――――

――――――


ま、そんなわけで、エリーが不機嫌になっちゃったのよ。

ふふっ。
エリー、あんな大人っぽいのに寂しがり屋なのよ。
それに、その時はすごく子供っぽくなるしね。

ま、そのとき、私は曲の方に意識を向けてたから、エリーの様子を聞いたのは海未からなんだけど。

え?
そのあとどうしたか?

…………。

聞く?
……恥ずかしいからあんまり言いたくはないけど。


――――――

――――――


えりまき「ねぇ、エリー?」

絵里「んー?」

えりまき「……まだ終わらないの?」

絵里「えぇ、少し生徒会の仕事の方をサボってしまっていたから……」

えりまき「……そう」



絵里「ごめんね、真姫。少しだけ静かにしててもらえるかしら?」

えりまき「……うん」シュン



絵里「…………」

えりまき「…………」

絵里「…………」

えりまき「…………」ソワソワ

絵里「…………ふぅ」

えりまき「!! 終わった?」

絵里「……いいえ。まだね」ニコッ

えりまき「そう……」シュン

絵里「…………」

えりまき「…………」

絵里「…………」

えりまき「…………」ソワソワ

絵里「…………よしっ」

えりまき「……終わったの?」

絵里「えぇ」ニコッ

えりまき「っ!」



―― ギュゥゥゥ ――


絵里「って、真姫?」

えりまき「…………」ギュッ



絵里「ふふっ、寂しかったの?」

えりまき「……うん」

絵里「……この間の私の気持ち分かってもらえたかしら?」

えりまき「……うん」

絵里「そ」ナデナデ



えりまき「ちゃんと、エリーのこと見るわ」ギュッ

絵里「えぇ、私もちゃんと真姫のこと見るから」ナデナデ



希(ウチがいるの、忘れてない?)


――――――

――――――


えりまき「……そんな感じ」

真姫「……甘い」


えりまきの話を聞き終わって。
一言、私はそう吐き捨てた。


真姫「いや、どこが喧嘩よ……」

えりまき「? 喧嘩でしょう?」

真姫「うーん?」


正直、喧嘩かと聞かれたら、微妙なところだと思うけど。
まぁ、いいわ。
とにかくこれで6人、あとは……。


うみまき「あとは私たちだけね」

のぞまき「そうね……さっきの希の扱いには物申したいけど」


ほのまき「それで? 次の話題はなんなわけ?」

にこまき「そうね。二人が話す話題はなんなの?」


そう尋ねる二人に、のぞまきはホワイトボードに書いたものを公開した。
そこに書かれていたのは――



『二人だけでのお泊まり会』



真姫「」

まき's「「っ!?」」ガタッ


それが公開されたと同時に、もう話をし終わったまきたちが揺れた。
それを見て、のぞまきは言い放つ。


のぞまき「希が言っていたわ」

のぞまき「のこりものには、福があるってね?」


その表情は、得意気で。
なんだか、軽くイラッとした。


のぞまき「でも、うみまきは、これで大丈夫?」

うみまき「? なんでよ?」

のぞまき「だって、海未と二人でお泊まりなんてしないんじゃないの?」


確かに。
言われてみれば、海未がそれを許すとも思えない。
破廉恥ですっ!
とか言って、拒否しそうなものだけど。

けれど、それに反して、うみまきは言った。



うみまき「二日に一回はしてるけど?」


のぞまき「は?」


予想外の答えだった。
って、二日に一回!?


真姫「ちょ、それ詳しく話しなさいよ!」

のぞまき「ま、待って! まだ順番はっ」

真姫「いいでしょ! 今まで黙って聞いてたのよ? 順番を決めるくらいの権利くらい寄越しなさいっ!」

のぞまき「……わ、わかったわよ」


不貞腐れるのぞまきから、キョトンとするうみまきに向き直り、



真姫「次はあなたよ。ほら、話して!」

うみまき「え、えぇ」



初めて、興味を持てる話になりそうね。
さて。
海未はどんな顔をこの私に見せているのかしら?


――――――

一旦ここまで。
レスしてくださった方、ありがとうございました。

――――――


うみまき「お風呂あがったわよ」

海未「おかえりなさい、真姫」


お風呂からあがり部屋に戻ると、海未はシャーペンを片手に机に向かっていた。


うみまき「なにしてるの?」


そう言って、海未の手元を覗き込む。


海未「あぁ、空いた時間で、勉強をしていたんです」


真姫はいつもお風呂長いですからね。
そう言って笑う海未。


うみまき「もう少しかかりそう?」

海未「あ、いえ。真姫も戻ってきたことですし、もうおしまいにしようかと……」

うみまき「そう」


海未はそのまま勉強道具を片付ける。
ま、別に二人で勉強してもいいんだけどね。

でも、海未はいそいそと片付けて、そのまま私に向き直り、正座をした。


海未「さて、真姫」

うみまき「……ん」


海未の声に頷く。
そして、海未の太ももに寝転がった。
いわゆる膝枕ってやつ。


うみまき「……じゃ、お願いするわ」

海未「はい。お任せください」


私の言葉にそう答えた海未は、優しく微笑んだ。
そのまま用意していた耳かき棒を手にして――。


―― カリカリ ――

うみまき「んっ……」


耳かきをし始めた。

お泊まりの時はいつもこんな感じ。
耳かきだったり、耳のマッサージだったり。
毎回同じではないけど、こうやって私のことを癒してくれる。


海未「気持ちいいですか?」

うみまき「うん……ん」


お風呂上がりということもあって、体がポカポカとしている。
その上、こんな風にしてくれるから、私の瞼はどんどん重くなっていって……。



海未「お休みなさい、真姫」



――――――

――――――



うみまき「ん……んっ?」


ふと喉の乾きを感じて、目を覚ます。

いつのまにか寝てしまってたみたいね。
辺りはもう真っ暗になっていた。


うみまき「いま、何時かしら?」


暗闇のなか、目を凝らして時計を探す。
とはいっても、いつもベッドの側の棚に置いてあるから、手を伸ばせば届くんだけどね。

って、あれ?


うみまき「私、いつベッドに移動したんだっけ?」


ベッドに移動した記憶はない。
覚えている記憶と言えば、


うみまき「あっ、私、海未に耳かきしてもらってて眠っちゃったんだったわ」


それを思い出して。
それから、周りを見渡す。


うみまき「…………あっ」

海未「ん……すぅ」


周り、というよりも、隣に。
海未は穏やかな寝息をたてて眠っていた。


海未「…………んん、ま、き」


ポツリと、寝言。
夢の中でも、私と一緒にいるのかしら?
なんて、考えておかしくなる。


うみまき「ふふっ」


それに、たぶん、私が起きるまで待ってるつもりだったんでしょうね。
海未の手元には文庫本が一冊置いてあって。

そんなところが、たまらなく――



うみまき「…………愛おしい」

―― ナデナデ ――



その綺麗な黒髪を撫でる。
サラサラ。
私のそれとは違う手触りに、前はちょっとだけ嫉妬したものだけど……。


ベッドに運んでくれたのは、きっと海未ね。
それに気付いた私は、ふと海未の腕が気になった。


うみまき「……んしょ」

海未「んっ……」


布団のなかにある海未の腕を軽く触る。

私をここまで連れてきてくれた海未の腕。

私よりは少し太いけれど、それでも決して太いわけではない。
どちらかというと、細い。
細くてしなやかな腕。

日頃から鍛えているのにね。
それでも女の子らしさをなくしてない。


うみまき「…………」


それから、触っていた手を下に下に。
たどり着いたのは、海未の手のひら。


うみまき「……ちょっとだけ、ゴツゴツしてる」


そんな感想を呟いた。
手に伝わる感触は、私の手よりもゴツゴツした感触だ。

前に海未はその手が嫌いだって言っていた。
女の子らしくない。
アイドルらしくない手のひらだからって。

でも、



―― ギュッ ――

うみまき「私は好きよ」



海未の手を包み込みながら、呟いた。
海未を起こさないように、小さな声で。

この手の感触は、海未が頑張ってる証だもの。
自分を律して、高め続けてきた努力の証。

それを嫌いだなんて言ってほしくない。
それでも、貴女は言うんでしょうね。


「私はこの手が好きではないんですよ」


なんて。
苦笑いを浮かべて。

なら、その代わりに。
私が愛してあげないと。



うみまき「…………大好き」

海未「…………はい」

うみまき「……海未?」

海未「すぅ……すぅ……」



私の言葉に答えたその言葉も。
寝言……なのかしらね?


――――――

スレタイ元ネタ的にはにこにこ超会議でもいいな

――――――


うみまき「そんな感じよ」

真姫「……」

うみまき「な、なんで黙ってるのよ?」

真姫「ううん、なんでもないわ」

うみまき「そ、そう?」


言えない。
言えないわ……。
不覚にも、海未とのエピソードにきゅんときてしまったなんて……。


ほのまき「……もしかして、あなた――」

ことまき「海未に……?」

真姫「そ、そんなんじゃないわっ!」

りんまき「本当に?」

真姫「え、えぇ!」


目をそらしつつ、答える。
なんで、こんなときだけ鋭いのよ、この人たちっ!?


真姫「…………」


…………うん。
もとの世界に帰ったら、海未の手のひら触ってみましょ。


のぞまき「……そろそろいい?」

真姫「あっ」


声をかけられて思い出した。
そういえば、まだのぞまきの話が残ってたのよね。
なんだか、もう終わった気でいたけど。


のぞまき「……いいかしら?」

えりまき「ど、どうぞ」

ぱなまき「は、はい」

真姫「ぜ、ぜひ話してください」


希と付き合ってるせいなのか、妙な凄みがあるのぞまきの言葉に、頷く一同。
それを見て満足したのか、のぞまきはひとつ頷いてから、



のぞまき「じゃ、話すわね?」



いい笑顔で話し始めた。


――――――

今日はここまで。
次の更新は少し空いてしまうかも……。
待っていていただけるとありがたいです。

>>112
元々は主役はパイセンの予定でした。
ただパイセンは多数いるとかっこよさが半減するかなと思い、真姫ちゃんになりました。

本日更新予定

――――――



のぞまき「占い?」

希「うん、したいって思ってなぁ」



希とのお泊まり会でのこと。
夜、寝る間際って時に、希からそんな提案を受けた。

突然のことではあったけれど。
別に断る理由もないし。
そう思った私は、机をはさんで希と向かい合う。


のぞまき「私、占いってあんまり信じないけど……」


でも、希の占いは当たるんでしょ?
凛やにこちゃんからよく聞くから。

そう言うと、希はこくりと頷く。


希「もちろん必中なんてことはないんよ?」

のぞまき「そんなのわかってるわよ」

希「ふふっ」


冗談かもわからない会話を交わして。
それから、希はカードを取り出した。

いつも持ち歩いてるのかしら。
なんてことを考える私。
そんな私に、


希「……なにを占う?」


希がそう聞いてきた。


のぞまき「えぇと……」

希「ウチらの運勢とか占ってみる? それとも、相性とか?」

のぞまき「…………」


ウキウキ顔である。


なにを、と言われても。
そんなに急には思い付かないわよ。

いっそのこと、希が挙げたもので、とは思うものの、それを占うことには若干の抵抗がある。

だから、少しだけ悩んで答えた。


のぞまき「……そうね。明日の天気とか?」

希「…………なんだか適当やね」

のぞまき「そう?」


やっとのことで絞り出した答えは、どうやら希のお気に召さなかったみたいね。
希は半目でこちらを睨んでくる。

それに対して、首をかしげる。
だって、適当なつもりはないもの。
……ま、急ごしらえの感は拭えないけど。

晴れなら練習があるから早く寝ないとだし。
雨なら遅くまで起きていても大丈夫じゃない?
ほら?
重要でしょ、明日の天気。

そんな風に天気の重要性を説いてみても……。


希「天気予報でいいやん……」

のぞまき「……それは、まぁ」

希「むぅ」


確かに、天気予報を見ればすむ話ではある。
結局、私の言葉を適当だと捉えた希は、頬を膨らませていじけてしまった。

ん?
珍しい?

……そんなことないわよ?
別に、珍しいことじゃない。
希って大人みたいに達観してるようでいて、中身は子供だったりするから。
特に、人付き合いに関して言えば、ね。

人に深入りすることを避けてきた希らしい。

ま、私が言えた義理ではないのだけど。



のぞまき「はぁ、わかったわよ」


ひとつため息を吐く。
このままでは埒が明かないし。


のぞまき「私と希の運勢でいいわ」

希「真姫ちゃんっ!」

のぞまき「……ほら、早くしなさいよ」

希「ふふふっ、そうやね♪」


いつも折れるのは私。
それを見て、希は嬉しそうにするのよ。
そんな私たちにとっては、いつも通りやりとりをして――


希「さて、それじゃあ、カードを混ぜてもらおうかな?」

のぞまき「……私が?」

希「正確には、真姫ちゃんとウチが。占うのは二人のことやし、二人で混ぜた方がいいんよ」

のぞまき「ふぅん。そんなものなのね」

希「そんなものや♪」



夜は、更けていく。


――――――

――――――



希「イミワカンナイ」



タロットに星座、姓名に水晶。
いくつもの占いで、私たちの運勢を調べた希の一言がそれである。
つまり、


希「なんで、ひとつもいいのがないの……?」

のぞまき「……はぁ」


ま、そういうことよ。
ショックのあまり、標準語になった希を見て嘆息する。
言わんこっちゃないわ。


のぞまき「だから、明日の天気にしましょうって言ったじゃない」

希「うぅぅ」


タロットで止めておけば。
そう呟く希。

まぁ、タロットはまだマシな方だったものね。
なのに、それに満足しなかった希は次々と占いに手を出していき……。


のぞまき「星座はひどかったわね」

希「うっ!?」


追い討ちをかけるように呟いてみる。
たしか――


のぞまき「最悪の相性。近くにいると不運なことが立て続けに起こるかも? 4月までは近づかないのが吉」

のぞまき「……だったかしら?」

希「4月までって……。ウチ卒業してるやん」


という具合に。
あまりの相性とか運勢の悪さに、希はすっかり元気をなくしてしまっていた。



希「もうウチら無理なんかなぁ……」

のぞまき「はいはい、よしよし」


落ち込む希を優しく抱き締める。
それから、なでなでも。


希「ラッキーガールが聞いて呆れるわ……」

のぞまき「そんなことないわよ。希は幸運の星のもとに生まれてるわ」

希「…………そうなん?」

のぞまき「……ほら、真姫ちゃんと出会えてるじゃない?」

希「そう、やけど……」


あら?
いつもの希なら、ここでコロッと表情が変わるんだけど……。


希「……うぅぅ」

のぞまき「よしよし」

希「いいんよ。ウチなんて、ほっといても……」

のぞまき「はいはい。そうねー」

希「ウチなんて……」



口ではそう言っても、希は私に抱きついて離れない。

さて。
どうしたものかしら?
ここまで落ち込んでる希を見るのは、私も初めてね。

…………。

そういえば。
前に賢いエリーがなにか言ってたわね。
恋人がネガティブになったときに、って。
たしか……。


『押し倒せばいいわ』


……いやいやいやいや。
それは流石にダメでしょう。
違う違う。


『違わないわ それで一発よ?』


……本当でしょうね?


『えぇ、保証するわ♪』



……はぁ。
分かった。
やるだけやってみるわよ。



のぞまき「希」

希「なに――って!?」

―― ドサッ ――


あぁ、やってしまったわ。
そそのかされたから、なんて言い訳してもこの状況は変わらない。


希「まき、ちゃん……」


希の顔がこんなに近い。


希「っ」

のぞまき「…………」

希「……真姫、ちゃん?」

のぞまき「…………希」


ポツリと名前を呼ぶ。
それに応じるみたいに、希の少しだけ潤んだ瞳が私だけを捉えた。

うん。
たしかに、一発ね。

これできっと、希はごちゃごちゃ考えない。
私だけを見てる。


のぞまき「ねぇ、希」

希「……なに? 真姫ちゃん?」



のぞまき「好きよ」



陳腐な言葉を口にする。
告白の時の方がよっぽどいいこと言えたわ。

だけど、



希「――ウチも、すき」



それだけで、希には届いてたみたい。


のぞまき「なら、それだけでいいでしょ?」

希「……うん」


運勢とか相性とか。
そんな不確かなものより、今、体に触れる熱さえあればいい。



のぞまき「ねぇ、希」

希「なに?」

のぞまき「明日の天気は晴れみたいよ」

希「調べたん?」

のぞまき「えぇ。午前午後とも快晴だって」

希「練習日和、やね」

のぞまき「…………えぇ」

希「…………」

のぞまき「早く寝ないとダメよね」

希「うん……」

のぞまき「でも、そうね」

のぞまき「今日はもう少しだけ――」



―― ギュッ ――



のぞまき「こうしてましょうか」

希「ふふっ、賛成♪」



――――――

――――――



希「と、こんな感じやね♪」

真姫「ヴぇぇぇ!?」



つい悲鳴をあげてしまった。

いや、しょうがないでしょ?
話を終えた途端に、後ろからいきなり現れるんだもの。


真姫「な、なんでいるのよっ!?」

希「いやぁ、そんなん言われても、ウチが作った空間やし?」


そう言って、イタズラっぽく笑う希。


のぞまき「あ、希」

希「やっほー! 真姫ちゃん」

のぞまき「やっぱり来たのね」

希「そりゃあねぇ? 真姫ちゃんが9人集まるなんて……ふふっ♪」


……流し目するんじゃないわよっ!
背筋がゾクッとしたわ!

そう抗議してもどこ吹く風な希。
さっきの話の中の人物と同じ人間とは思えないわ。

しばらく、希はのぞまきとなにやら話をしていたんだけど。


うみまき「……それで?」

希「ん?」

うみまき「何しに来たのよ?」


のぞまき以外の思いを代表して、うみまきがそう尋ねる。
それに、希はこう答えた。



希「最後の話題は、ウチから発表しようかと思って、ここに来たんよ」

希「というより、ウチがそれを聞きたいからこの場を作ったんやし?」



希曰く。
ノロケ話はそのついでらしく。
今まで現れなかったのは、私たちの口から他の女の子との話を聞きたくなかったからとかなんとか。


…………はぁ、よかった。
とりあえず、終わりが見えたわ。

ひとつ息を吐いて、安堵する。
それから、希に



真姫「じゃあ、さっさと発表でもなんでもしてくれない?」

真姫「もうさすがに疲れたわ……」


そう言った。
早くこれを終わらせたい一心で。



希「んー? でも、最後なんやし、もうちょっと引っ張った方が――」

真姫「は・や・く!!」

希「しゃあないなぁ」


なにがしゃあない、よ。
そう言いたいのはこっちよ……はぁ。


希「それじゃあ、最後の話題を発表しまーす♪」

まき's 「「…………」」


希「最後の話題は――」


――――――




希「『初めて』はいつ?」




――――――


真姫「ぶっ!?」


希「わっ! ビックリしたぁ……」

真姫「ビックリしたはこっちの台詞よっ!!」


ホントにビックリよっ!
いや、今までのも相当だったけど……。

は、は……はじめてって……。


希「そういうことやね♪」

真姫「ちょっ! 悟るなっ!」


なんでそんなこと聞くのよっ!
声に出さずに、目でそう抗議する。
すると、希は、口をパクパクさせているのぞまきの方をチラリと見てからこう答えた。


希「いやぁ、真姫――のぞまきちゃんって、ヘタレさんやから、中々手を出してくれないんよ」

のぞまき「の、のぞみっ!?」

希「だから、他の真姫ちゃんはどうなんかなぁって思ってな?」

真姫「……え、えぇと?」


……え?
そ、それじゃあここに9人の真姫を集めたのって、つまり?



希「ウチらの参考にするため♪」

のぞまき「う、うぅぅぅ……」


真姫「」



言葉が出なかった。

私とのぞまきが落ち着くのを見計らって。



希「というわけで!」

希「ウチとのぞまきちゃんのために、話してほしいんよ!」



希はついに、他のまきたちに話を振った。

あぁ、また……いえ。
さらに、甘くて砂糖吐きそうな話を聞く羽目になるのね。


真姫「……はぁぁぁぁ」


半ば諦めかけていた私。
そして、そのまま事実を拒絶しようとする感情にどうにか抗いながら、まきたちに目を向けた。



ほのまき「い、いけない! 穂乃果にパンをあげる時間だわ」

ことまき「わ、わたしもっ! ことりにマカロンをあげないとっ!」

りんまき「わたしは、ラーメンをっ!」

ぱなまき「お米をっ!」

にこまき「えっ!? 私は……あれよっ! ほら、あれっ!」

えりまき「み、みみ、認められないわっ!」

うみまき「わ、私もそんな感じよっ! さ、早く帰りましょ!!」



希「あ、あれ?」

真姫「」

なんということでしょう。
あれほどノロケ話を意気揚々としていたまきたち。
そんな彼女たちが、この最大のノロケチャンスに、


ほのまき「ま、まったく! 私たちは忙しいのよっ!」

りんまき「作曲しないといけないしっ!!」

ぱなまき「れ、練習だってあるわっ」


揃いも揃って、


にこまき「そうよっ! 新曲も合わせないとっ」

ことまき「わ、私はデュオ曲でも作りましょ」

えりまき「早くエリーにアイタイワー」

うみまき「ソウヨ、私も海未に――」



なんで目を反らしてるのよ。


真姫「しかも、変な汗出てるし」

まき's 「「っ!?」」


え?
なに?
つまり、



真姫「みんな、『まだ』なの?」

まき's 「「うっ!?」」



希「あっちゃぁ……」

のぞまき「ほ、ほら! これがやっぱり普通なのよ! 別に私がヘタレって訳じゃないわ!」



得意気なのぞまきのその声は、いつもより一人だけ人数の多いアイドル研究部の部室に、虚しく響き渡ったのだった。


――――――

今日はここまで
たぶん次かその次で終わるかと思います。
レス下さる方、読んでくださってる方に感謝して。

レス感謝
今のところトリップはつけない予定です
本日少しだけ更新予定

――――――


真姫「それじゃあ、もういいでしょ?」


そう言って、のぞまきを慰めていた希を見ると、


希「ん? なにが?」


キョトンとした表情で返される。
なにがって……。


真姫「もう話も終わったんだし、帰らせなさいよ!」


そう言って、ため息を吐く。
ここまで引っ張った割に、あまりにも呆気ない幕切れで、少し拍子抜けだったのだけど……。

とにかく、希が例の話題を聞くためにこの場を作ったんだから、それが終わった今、まだここにいる意味なんてないでしょ?


希「うーん? でも、このままだと消化不良やない?」

真姫「別に、そんなことないわよ……はぁ」


むしろ胸焼けしてるくらい。
だから、他のまきたちにも、


真姫「ほら、みんなももういいでしょ?」


そう尋ねたのだけど、


まき's「「…………」」

真姫「……なんで黙ってるのよ」


なぜか黙ったままのまきたち。

……え?
なに?
もしかして……


真姫「消化不良、なの?」


その問いへの答えは、まきたちの無言の頷きで。
つまり、


希「まぁ、あんな終わりやったわけやし」

真姫「まぁ、それはそうかもしれないけど……」


締まらないのは分かるわ。
けれど、もう一周なんてありえない。
かといって、誰か一人が話すと不公平なんでしょ?
じゃあ、どうするのよ。

そんな疑問。
それに答えたのは――


ほのまき「じゃあ」

ほのまき「あなたが話したら?」


ほのまきだった。
そして、彼女が言う『あなた』って?


真姫「は? 私?」



9人の視線が私に集まる。
って!


真姫「待ちなさいよ! 別に、私じゃなくても!」


そう抗議する。
それに答えるのは、他のまきたち。


うみまき「いや、だって、私たちの中で話してないの、あなただけだし」

ことまき「それに、付き合ってないことりと私がどんな感じだったか懐かしみたいわ」

りんまき「確かに、そうね」


そんな風に、言う彼女たち。

……勝手な人たちね。
我ながら呆れるわ。
まぁ。
そうは言っても、話すことなんてないわよ?

そう言うと、それには三年生組が答えた。


にこまき「別にいいんじゃない? 普段のことを話せば」

真姫「……普段の?」

のぞまき「えぇ」

えりまき「それが嫌なら、もう一周やる?」

真姫「…………はぁ」


そんな三人のアドバイスと脅しを受けて、私の覚悟はため息と共に決まった。
……ま、そんな大層なものじゃないけれどね。



真姫「じゃ、みんなとの話をするわよ?」

真姫「別に他の人ほど、いい話じゃないわ」

真姫「これからの話は、ただのμ's の日常だから。それを前提に聞きなさい」



――――――

――朝


凛「おはよ、真姫ちゃん!」

真姫「あぁ、凛。おはよ」

凛「ね、ねぇねぇ! 真姫ちゃん?」

真姫「なに? 宿題なら見せないわよ?」

凛「そうじゃなくてっ!」

真姫「?」

凛「今日の放課後は……暇かにゃ?」

真姫「え? 放課後は練習あるでしょ?」

凛「そ、そうじゃなくて! その後! どこか寄って帰りたいなって!」

真姫「私と?」

凛「うん!」

真姫「……ま、別にいいけど」

凛「っ!! ありがとにゃ、真姫ちゃんっ!!」

真姫「ちょっ!? ダキツカナイデッ!!」




花陽「…………」ジーッ



――――――

――休み時間


花陽「真姫ちゃん」

真姫「花陽? どうかした?」

花陽「う、うん……その……」モジモジ

真姫「?」

花陽「今日の、その……帰りなんだけど……」

真姫「あぁ、もしかして、放課後の話?」

花陽「あ、うん。凛ちゃんとどこいくのかなって……」

真姫「え? 花陽も来るんでしょ?」

花陽「っ! う、うんっ! 行きたいっ!」

真姫「ふふっ、三人で行きましょ? 凛もその方が喜ぶし」

花陽「……うん」ニッコリ




ことり「…………」ジー



――――――

――休み時間


ことり「ま~き~ちゃん♪」ギュッ

真姫「ヴぇぇぇ!?」

ことり「ふふふ♪」

真姫「こ、ことりっ! いきなりなにするのよ!」

ことり「なにって、抱きついちゃいました♪」

真姫「……はぁぁぁ。凛といい、ことりにいい、なんでいきなり人に抱きつくのよ……」

ことり「だって、真姫ちゃんのこと大好きだから♪」

真姫「はいはい。冗談もほどほどにしなさいよ?」

ことり「……むぅ」

真姫「それで? なにか用事でもあるの?」

ことり「……あ! えっとね? 今日、衣装合わせを練習が終わったらしたいなって!」

真姫「えぇと、練習終わりは……」

ことり「? なにかあるの?」

真姫「えぇ。凛と花陽と少し遊ぶのよ」

ことり「……じゃあ、それが終わったらでいいから、ね?」

真姫「終わるのいつになるか分からないわよ?」

ことり「それじゃあ、ことりもついていこっかな♪」

真姫「……凛に言っときなさいよ?」

ことり「うんっ♪」




穂乃果「…………」ジーッ



――――――

――昼休み


希「ヤッホー、真姫ちゃん」

にこ「ほら、早くしなさいよ! 待ちくたびれたわ!」

穂乃果「ほらほら、真姫ちゃん早くぅ!」



真姫「…………なんで、ここにいるのよ」



希「いやぁ、真姫ちゃん、いつも体育があった日はここでお昼食べてるやん?」

真姫「まぁ、そうだけど……」

にこ「ま、制汗剤の中で食べるお弁当ほど不味いものはないわよね」

真姫「なんで知ってるのよ……」


穂乃果「……ほら! 真姫ちゃん!」グイッ

真姫「ちょっ!?」

穂乃果「えへへ、穂乃果の隣でどうぞ!」ギュッ

真姫「はぁ、しょうがないわね」


希にこ「「っ!?」」

希「ほのかちゃん?」

にこ「ちょっとこっち来なさい?」ニコニコ

穂乃果「えっ? ……あっ」

にこ「いいから、こっち来なさいっ!」グイッ



「ご、ごめん、二人とも……」コソコソ

「ほんとよっ! 抜け駆けするんじゃないわよっ」コソコソ

「それに、ウチらの目的を忘れたらアカンよ?」コソコソ

「う、うん……」コソコソ



真姫「??」

穂乃果「ごめんね、真姫ちゃん! なんでもないから!」

真姫「そう?」

にこ「そうニコよっ♪ なんでもないニコッ!」

真姫「わ、わかったけど……」

希「ほら、お弁当食べよか」

真姫「うん」


――食事中


希「そういえば……」チラッ

穂乃果「あっ!そうだった!」

にこ「穂乃果っ」コソッ

穂乃果「ご、ごめん」コソッ

真姫「なに? どうしたの?」

穂乃果「ううん! えっと、真姫ちゃん!」

真姫「だから、なによ?」ハァ

穂乃果「トマトソフトクリームとか興味ないっ!?」

真姫「と、とまとのソフトクリーム?」ピクッ

希「そうなんよ。この間、売ってるとこを見つけてなぁ。真姫ちゃんに是非って」

真姫「…………」ソワ

穂乃果「なんか特定の日にしか来ないみたいなんだ! それが今日の放課後に来るんだって!」

真姫「…………」ソワソワ

にこ「と~っても、美味しかったニコ♪」

真姫「……ちょっと待っててくれる?」


――――――


真姫「オッケーよ。凛たちも一緒だけどいい?」

穂乃果「うん! もちろん!」

希「じゃ、放課後な♪」

真姫「えぇ」

にこ「……ふぅ、とりあえず目的は達成ね」ボソッ

真姫「?」

にこ「なんでもないニコ♪」




絵里「…………」ジーッ



――――――

――練習後


海未「…………」

絵里「あ、真姫? 少しいいかしら」

真姫「どうしたの、二人とも? 深刻な顔してるけど」

絵里「……えぇ。実は、海未がね……」チラッ

真姫「海未?」


海未「……お恥ずかしながら、スランプになってしまったようでして」


真姫「……そう」

海未「えぇ。ですから、少し真姫に手伝っていただけたらと思いまして……」

真姫「……別にいいけど」

海未「ありがとうございます、真姫」


海未「…………」チラッ

絵里「…………」ニヤリ


絵里(ふふっ、計画通りね)

絵里(海未のスランプとなれば、優しい真姫のことだもの。それを優先することは目に見るよりも明白だったわ)

絵里(トマトソフトクリームなんかよりも大事なものがここにはあるのよ)

絵里(伊達に賢いと言われていたわけではないわっ!)

絵里(……って、あら?)



真姫「――あ、うん。じゃあ、これから行くから」

絵里「えっと、真姫?」

真姫「ほら、エリーも海未も行くわよ?」

海未「……行くとは、どこにですか?」

真姫「どこにって……」

真姫「スランプの時は無理に頑張らない方がいいでしょ? だから――」



真姫「ソフトクリームを食べに行きましょ?」

真姫「『みんな』で」ニコッ



――――――

――――――



真姫「っていう、みんなでソフトクリームを食べに行った話なのだけど。こんな感じでよかったかしら?」


普段通りでって話だったから、本当に日常の話になってしまったわ。
本当にこれでよかったのかしら?

そう思っての質問だったのだけど……。



まき's「「…………」」

希「……ええと?」


なぜかまきたちは困惑気味で、希ですら微妙な表情を浮かべていた。

……なぜか、ではないか。
理由は明白よね。


真姫「……はぁぁ、ほら。反応に困るでしょ?」


ありふれたことを話したのだ。
面白味なんてない。
第一、面白さを求めるのが間違いなのよ!

そう思って、深いため息を吐いていると、


希「えぇと、真姫ちゃん?」


遠慮気味に、希が話しかけてきた。


真姫「……なに?」


みんなの反応を見てどっと疲れが出た私は、希におざなりな返事を返した。
すると、希は恐る恐ると言った様子で、私にこう尋ねてきた。



希「真姫ちゃん、ホントに誰とも付き合ってないん?」




真姫「は?」


その質問はよく意味がわからないものだった。

……いや、意味は一応分かるのよ?
でも、ほら。
さっきの話を聞いて、なんでその質問が出てくるのかが分からない。


希「……一応聞いとくけど、その話の後はどうなったん?」

真姫「え? 普通に皆でソフトクリームを食べに行ったわよ?」

希「そ、そうじゃなくて! ほ、ほら! 修羅場とか……」

真姫「修羅場?」

真姫「普通に、穂乃果が海未に怒られて、それをことりが側で見てて、凛と花陽が仲良くて、にこちゃんが滑ってて、エリーと希がみんなを見て笑ってたわよ?」

希「そ、そか。それなら――」


うん。
普通のことよね。

…………。

あ、でも……。


真姫「……まぁ、なぜか皆、私の腕とか手とか触ってきたわね」

真姫「それに、みんなして『家に来ないか』って誘ってきたわ。でも、それって――」




真姫「――普通でしょ?」




まき's 「」

希「」


――――――

――――――


結局、私はその後すぐに元の世界に帰された。
なぜか皆に呆れながらだったけれど。

希には、


希「鈍感もホドホドにな?」


とも言われ。

って、私が鈍感?
意味わからないわよね?
私ほど人の気持ちに敏感な人間はいないわよ?

……まぁ、それは言い過ぎかしら。


それにしても。
うん。
やっぱり私の世界は普通よね。


ほのまきみたいに、告白がファーストキスより後だったり。
ことまきみたいに、恥ずかしいところを誰かに見られたわけでもない。

りんまきのように、凛と二人だけで買い物に行くこともないし。
ぱなまきみたいに、誰かの葛藤を見たこともない。

にこまきとは違って、二人だけの曲に特別な意味なんてなくて。
えりまきが感じた寂しさだって分からない。

うみまきの知ってる誰かの手の感触を私は知らなくて。
のぞまきのように、誰かとの相性なんて気にしたこともない。



私の世界は、まだまだ恋愛とは程遠い。

ふふっ。
誰か私を好きになってくれる人はいるのかしらね?



そう思いながら、私はいつものように部室のドアを開けたのだった。




―――――― fin ――――――

以上で
『真姫「マキマキ超会議?」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。

今度はまたシリアスもの書きます。
ことほのうみかほのゆき辺りかと。
またお付き合いいただけると嬉しいです。
では、また。

毎度のことですが過去作を一応貼っておきます。
よろしければどうぞ。

にこまき注意
真姫「私だけの」
真姫「私だけの」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428761231/)

ほのぼの系
【ラブライブ】にこ「にことにこにー」
【ラブライブ】にこ「にことにこにー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424791780/)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月20日 (水) 15:02:57   ID: zyDc1OJc

おもしろい
他のキャラも見て見たかった

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