【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫Ⅱ (266)

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【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫
【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫 - SSまとめ速報
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今日は終わりです。次は月曜日から。

始めます。

――12月25日


ラボを出ると、一面が銀世界になっていた。その中で、一つだけ鈍く輝くものがある。

あの時鈴羽が乗ってきたのと同じ、古い外車....シボルエだ。

そして、その横には――


岡部「鈴羽....」

鈴羽「初めまして、オカリンおじさん。なんであたしの名前を知ってるの?」


どうやら、この鈴羽は俺が今まで会った鈴羽とは違う未来からきているようだ。髪型も雰囲気も違うし、何より、なぜか軍服を着ている。


岡部「俺は、お前とあったことがある。違う世界線のお前とな」

鈴羽「!....すごい。リーディングシュタイナーの力、本当だったんだ」

岡部「そんなことはどうでもいい!未来を変えろ、とはどういうことだ!?」

鈴羽「つまり、オカリンおじさんの力で過去を変えてもらって、それによって未来を――」

岡部「そんなことを聞いてるんじゃない!なぜ未来を変えなければならないんだ!?」

鈴羽「....あたしは2036年から来たんだ。2036年の世界は、第三次世界大戦の影響で人口が10億人にまで減っているの」

岡部「な....に....?第三次世界大戦だと?」

鈴羽「そう。核兵器の使用によって、未来は人間の住めるような世界じゃなくなってるんだ。だから、あたしはタイムマシンで世界を変えるために....おじさん?オカリンおじさん、聞いてるの?」


目の前が真っ暗になった。――なんだ?なんだその未来は?


岡部「なんで、そんなことに....?」

鈴羽「タイムマシンだよ。2010年にタイムマシンの理論が発表されて、世界中の国々がそれを奪い合ったんだ」

岡部「タイムマシンだと....?そんな、そんなはずはない!お前が言ったんだぞ!牧瀬紅莉栖がSERNに移籍しなければ、タイムマシンの理論は確立されないと!未来を変えられると!」

鈴羽「え....?あたし、そんなこと言ってないよ」

岡部「くっ....」

鈴羽「それに、牧瀬紅莉栖がタイムマシンの理論を確立したのは、そのセなんとかってところじゃない」

岡部「なに!?じゃあ、どこだというんだ!?」


鈴羽「中鉢研究所。牧瀬紅莉栖は、父親である中鉢博士と連名の論文でタイムマシン理論を世に発表したんだ」

岡部「な、中鉢研究所?なんだそれは!?そんなもの、なかったはずだ!」

鈴羽「そ、そんなこと言われても....」

岡部「それはどういう研究所なんだ?」

鈴羽「えっと、確か2001年にタイムマシン開発を目的として創られた研究所だよ。所長は中鉢博士だけど、出資者....本当の研究所の持ち主は、秋葉幸高」

岡部「秋葉、幸高だと....?なぜフェイリスの父親が....」

鈴羽「秋葉幸高を知ってるの?彼がタイムマシンを作ろうとした理由は、どうしても変えたい過去があったからみたい。詳しくは知らないけど....」

岡部「そ、そんな....」


どうしても変えたい過去。そんなの、一つしかない。

――娘の死だ。


鈴羽「でも、結局彼はタイムマシンを手にすることはできなかった。研究所は奪われ、破壊されてしまったから」


フェイリスが、自らの命を捨ててまで未来を変えようとしたのに、その結果が第三次世界大戦だと?

そんなバカな....


鈴羽「とにかく、オカリンおじさん!あたしに協力して、未来を――」


岡部「どうすればいいんだ?」

鈴羽「....え?」

岡部「どうすれば未来を変えられるんだ?」


鈴羽「え、ええっと....実は、わからないんだ....」

岡部「わからない、だと!?」


鈴羽「だって....オカリンおじさんも父さんも、その方法を教えてくれないうちに死んじゃったし....もっとも、父さんはそんな方法が本当にあるのかはわからないって言ってたけど」

岡部「な....!?」

方法が分からないだと?それじゃあ....

岡部「....無理だ」

鈴羽「ええっ!?そんな、何もしないうちから!?」


岡部「無理に決まっている!俺が、俺たちがどれだけ未来を変えるために苦しんできたか!それでも、結局未来は悲劇へ収束した!もう、どうあがいても逃れられないんだよ!」

鈴羽「そ、そんな!あきらめちゃダメだよ、オカリンおじさん!」

岡部「フェイリスを犠牲にしても、無理だったんだ....もう無理なんだよ....もう、放っておいてくれ....」

鈴羽「お、おじさん....」


今まで、何とか運命に抗ってこられたのは、フェイリスが助けてくれていたからだ。

今の俺には無理だ。もう、フェイリスはいないから。

鈴羽「うう....」

岡部「........」


鈴羽は、それきり黙ったまま俺を見つめている。....そんな目をしても、無駄だ。俺には、もう無理なんだ。

雪はいまだに降り続けている。このままここにいたら、凍え死ぬだろうか?....それもいい。


岡部「鈴羽。そのタイムマシンは、未来には行けるか?」

鈴羽「えっ?もちろんいけるよ。そうじゃないと、タイムマシンとは言えないでしょ?」

岡部「そうか。この世界線のダルは完成させたんだな」

鈴羽「?....でも、燃料がもうあと一往復分しかないから、あんまり余計なことは――」

岡部「十分だ。鈴羽、未来へ帰れ」

鈴羽「ええ!?いやだよ!なんでそんな!」

岡部「未来は変えられない。あきらめて、元の世界で何とか暮らすんだ」

鈴羽「そんな!....そもそも、タイムマシンで過去を変えるって言い始めたのは、オカリンおじさんだよ!それなのに――」

岡部「じゃあ、その俺にやらせればいい。その、未来の俺にな。今の俺には無理だよ」


鈴羽「....でも、死ぬ直前のオカリンおじさんが言ってた。『2010年12月25日の俺。過去を、そして未来を変えられるのはそいつだけだ』って....」

岡部「今の、俺だけ....?どういうことだ....?」

鈴羽「わかんない。わかんないけど、その言葉だけを頼りにあたしはここに来たんだ」


....今の俺でなければならない理由....わからない。なぜだ?どういうことだ?


鈴羽「それと、もう一つだけ。『白衣のポケット』って」

岡部「白衣の、ポケット....?」

その時、初めて気づいた。白衣のポケットの中に、何かが入っている....




岡部「これは........チョーカー....?」



それは、俺がフェイリスへのクリスマスプレゼントとして買った、あのチョーカーだった。....なぜ、ここにある?

この世界に、フェイリスはいないはずなのに....?

~~~

「私は、完全に消えちゃうわけじゃない」

「ペアリングに魔法をかけたの、覚えてる?どれだけ離れていても、どんなことがあっても、心はずっと一緒、って」

「だから、見えなくても、聞こえなくても、触れられなくても」

「ずっと一緒にいるよ」

~~~


この世界線の俺は、ずっとフェイリスを探していたのだろうか。


それとも....ずっとフェイリスを傍に感じていたのだろうか。

――そうだ。まだ魔法は解けていなかったんだ。ずっと一緒....


それならば、俺は――!



岡部「........」

鈴羽「....おじさん?どうしたの?」


岡部「....鈴羽」

鈴羽「な、なに?」

岡部「俺は、まだこの世界線では何も観測していない。そうだろう?」

鈴羽「そ、そう....なの?」

岡部「そうだ!つまり、俺がまだ観測していないものは、何も確定していない!」

鈴羽「き、急にどうしたの?」


岡部「フ....フフフ....」




岡部「フゥーーーーーハハハハハハハハハハハハ!!!」

鈴羽「!?ええっ、どうしたの?」

岡部「そうだ!単純なことだったんだ!」

鈴羽「な、何か思いついたの!?」


岡部「思い出したのだ!我が名は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!!世界の支配構造を破壊し、世に混沌をもたらす者!!」

鈴羽「えっ、えっ?」


岡部「世界も、運命も、すべてこの俺の前に跪くのみだ!」

鈴羽「???」


岡部「そうだ、まだラグナロクは終わっていない!むしろ、これからが始まりだ!!」

鈴羽「えーっと、つまりどういうこと?」



岡部「これより、“オペレーション・ヴィーザル;新世界の神作戦”を開始する!」


岡部「世界は、この鳳凰院凶真の手の内にある!フゥーハハハ!」

今日は終わりです。続きは水曜日に。

もうまとめられてるのか....荒れないよう投下中以外はsageでお願いします。
前スレ埋めてくれてありがとうございました。>>1000は....

更新します。

――


俺と鈴羽はいったんラボに戻った。いい加減寒かったのだ。


岡部「――というわけで、これより第108回円卓会議を始める!」

鈴羽「どういうわけ?」

岡部「とにかく、これからの計画を綿密に話し合うのだ!」

鈴羽「....そうだね。タイムマシンの燃料は一往復分しかない。だから、失敗は許されない」

岡部「フゥーハハハ、この鳳凰院凶真に失敗などありえん」

鈴羽「それは頼もしいね。で、どう過去を変えるの?」

岡部「単純なことだ。10年前に戻り、秋葉留未穂を救う。....最初から、俺の目的はこれ一つしかない」

鈴羽「秋葉、留未穂?それって、もしかして秋葉幸高の娘?知ってるの?」

岡部「ああ。違う世界線で、な」

鈴羽に、軽くこれまでの経緯を説明する。


鈴羽「....なるほどね。でも、秋葉留未穂を救ったところで秋葉幸高がタイムマシン研究所を作らないとは限らないんじゃない?」

岡部「....いや。あの人がそこまでする理由になりえることは、娘の死以外にはありえない。俺は知っている」

鈴羽「そうなの?....わかった。じゃあ、10年前へ秋葉留未穂を救いに行く、で決定だね」

岡部「ああ。それで未来は変わる」


鈴羽「なら話は簡単だね。その誘拐事件っていうのを防いじゃえばいいんだ」

岡部「いや、それではだめだ」

鈴羽「え?なんで?」

岡部「実際に誘拐事件が発生し、池袋の土地が売られ、さらにIBN5100がFBの手に渡る必要がある」

鈴羽「....それって、かなり難しくない?それじゃ、その子を助けられないよ」

岡部「わずかだが、助けるチャンスはある。誘拐犯であるFBがIBN5100を手に入れてから、留未穂を殺すまでの間のタイムラグだ」

鈴羽「ええっ!?そ、そんな無茶な!」

岡部「無茶でも、やるしかない」

鈴羽「ど、どうやって!?」

岡部「留未穂が誘拐されるのは、4月3日の、閉館後のラジ館であることは分かっている。それまでの間に、留未穂自身に盗聴器と発信機を取り付ける!」

鈴羽「!....そ、そうか。そうすれば、向こうの居場所と状況が分かる」

岡部「そうだ。そして、タイミングを見計らって救出する....今度は、こっちがラウンダーを盗聴してやるのだ!フゥーハハハ!」

鈴羽「今度は?まあ、わかったよ。盗聴器と発信機はもってきてるよ。あと、拳銃とか煙幕、閃光弾に双眼鏡に無線機に――」

岡部「お、おお....助かる。では、俺も武器を用意しよう」


役に立ちそうなもの....タケコプカメラー、モアッドスネーク、それに.......くっ、役立たずばかりじゃないか....!

岡部「....!?トール・サンダーボルトがある!なぜだ?」

トール・サンダーボルトは、桐生萌郁が出没していた時に護身用にダルが開発したもの....なぜこの世界線に?まあいい、助かる。

鈴羽「結構役立ちそうな武器があるんだね。でも、そのプロペラのおもちゃはいらないんじゃない?」

岡部「お、おもちゃだと!?バイト戦士よ、未来ガジェットには見たままの機能しかないと思ったら大間違いだぞ!」

鈴羽「そうなの!?....ごめん。ていうか、バイト戦士ってもしかしてあたしのこと?」

岡部「他にだれがいるんだ....さて、そろそろ行くか」

鈴羽「わかった。いよいよだね」


岡部「....の前に、もう一つ必要なものがあるな」

鈴羽「??」

――


鈴羽「な、なんかスース―するんだけど....」

岡部「我慢しろ。それしかないんだ」


ラボを探し回って見つけた誰か(おそらくまゆり....いや、もしかしたらダル?)のワンピースに、鈴羽を着替えさせた。サイズは....まあ目をつむろう。

鈴羽「絶対おかしいって!なんで下がないの!?」

岡部「下?スカートくらいはいたことがあるだろう?」

鈴羽「ないよ、そんなの....戦いにくそうだし」

岡部「とにかく、2000年にあんな軍服姿でうろつくわけにはいかん!目立ちすぎる!」

鈴羽「じゃ、じゃあオカリンおじさんのほうはどうなの?まさか白衣が2000年では一般的だったなんて言わないよね!?」

岡部「これはマッドサイエンティストの正装だ!だから問題ない!」

鈴羽「なんかずるいなー....」



こうして、やっとすべての準備が済んだ。ラボを出て、あのシボルエに乗り込む。

中には、ダイバージェンスメーターがあった。その数値は、 1.130426。


岡部「....これは、 -1.130426、ということか」


鈴羽「そうだよ。あたしたちがうまく未来を変えられたら、この数値は -1.048596 になるんだって」

岡部「わかるのか?」

鈴羽「うん。オカリンおじさんと父さんが研究の末に割り出したんだ。その世界線は、唯一ほかの世界線の影響を受けないんだって。オカリンおじさんは“裏シュタインズゲート世界線”って呼んでた」

岡部「裏?マイナスだからか?....それにしても、シュタインズゲートとは....未来の俺は相変わらずなんだな」


鈴羽「よーし、出発!」

鈴羽はシボルエのエンジンをかけると、大通りに向かい始めた。

岡部「おいおい、普通に運転してどうする?タイムトラベルは?」

鈴羽「あの道じゃ、スピードが出せないから」

岡部「スピード?」

鈴羽「そう。このタイムマシンはね、時速150kmに達した瞬間タイムトラベルをするんだ」

岡部「な、なんだそれは....まるっきり....いや、なんでもない」

鈴羽「どうかしたの?」

岡部「いや、なんでもない。OKだ、ドク」

鈴羽「???」

――

やがて、雪に覆われた大通りに出る。アキバの街は萌えが消えた電気街となっていた。これを観測してしまったのはまずかったか....?いや、問題ない。


鈴羽「ところで、最後に一つ聞いてもいい?」

岡部「なんだ?」

鈴羽「なんで2010年12月25日の、今のオカリンおじさんじゃなきゃ過去を変えられないのか、わかった?」

岡部「ああ。おそらく、明日には俺は秋葉留未穂がこの世界線にいないということを観測してしまうんだ。どうしてかはわからんが。だが、今なら、まだそれを観測していない。つまりまだ不確定....変えることができる、というわけだ」

鈴羽「なるほど....ありがと」


岡部「それに、今この瞬間の俺だからこそ、フェイリスを、秋葉留未穂を救おうと最も強く想えるからだ!!行くぞ、バイト戦士よ!」

鈴羽「オーキードーキー!」


都合のいいことに、ほかの車は走っていない。鈴羽がアクセルを踏み込むと、シボルエは一気に加速した。

100、110、120、130,140....

その時、轟音と共に凄まじい放電現象が始まり――


岡部「とべえええええええええええええええええええええ!!!」―――


2010年12月25日03:13

     ↓

2000年4月3日03:13

―――


目を開けると、降り積もっていた雪は消え去り、真っ暗な電気街となっていた。

どうやら、うまくいったようだ。


岡部「2000年、か....」

俺はまだ小学校低学年か....どうでもいいことだが。

鈴羽「うまくいったね。まずはどうするの?」

岡部「そうだな....まずはこのシボルエをどこかに止めておこう」

鈴羽「えー、乗ってたほうが移動に便利じゃない?姿も見られないし」

岡部「警察に捕まったら面倒だ。お前、免許は持っているのか?」

鈴羽「めんきょ?なにそれ?」

岡部「....なんでもない」


まあ、持っていたところで未来の免許証が通じるはずはないが。

――

適当な駐車場にシボルエを止め、今度は公衆電話を探す。まだこの時代ならそう難しいことではない。案の定あっさりと見つかった。


鈴羽「何してるの?」

岡部「秋葉家の場所を確認する」

この時期、たしか秋葉氏の会社はうまくいっていなかったはず....あの高級マンションにはいないかもしれない。

....しかし、それは杞憂に終わった。電話番号は俺の知っているものと同じ。10年前からあの家は変わっていないようだ。


岡部「よし!行くぞ、バイト戦士!」

――

秋葉家のあるマンションの入口に到着した時、時間は午前5時前になっていた。


鈴羽「オカリンおじさん、眠くない?」

岡部「俺は大丈夫だ。....ところで、なんでオカリンおじさんなんだ?もしかして、未来で俺と会ったことあるのか?」

鈴羽「あるよ。ていうか、さっきからオカリンおじさんに会った時の話をしてたでしょ」

岡部「そういえばそうだな....」

おじさん、か....仕方ないのか....?

鈴羽「おじさん、あんまり変わってなくてびっくりしたよ」

岡部「....俺は老け顔とよく言われるからな」

鈴羽「見た目もだけど、言動もね。父さんにいつも『厨二病乙』って言われてた」

岡部「そんな年になっても、俺は変わらないんだな」

鈴羽「忘れないためだ、って言ってたよ。何のことかは、わからないけどね」

岡部「....そうか」

――


しばらくたった時、大きな黒い車がマンションの駐車場から出てきた。その運転席にいるのは....

岡部「!黒木さんだ!」

そして、一瞬だけ見えた後部座席には、まだ若いころのフェイリスの父親が乗っていた。


鈴羽「あの人たちは?」

岡部「秋葉幸高だ。今から海外出張に向かうんだろう」


あの人が誘拐のDメールをもらうのはもう少し先か。

――

そこから、さらに時間がたった。もうそろそろフェイリスが、秋葉留未穂が起きるころだろうか。

朝起きて、『誕生日は一緒に過ごす』という約束を父親が破ったことに初めて気付くのだろう。そして、怒って家を飛び出すのだ。



鈴羽「!おじさん、あの子かな?」

小さな女の子が、泣きながらマンションを飛び出してきた。あの泣き顔には見覚えがある。

....ついさっきまで一緒にいたのに、ずいぶん久しぶりに感じる。


岡部「よし、追うぞ!」

フェイリス――今度こそ、お前を救う!

今日はここまでです。続きは金曜日に。

更新します。

――9:00


留未穂「~~♪」

しばらくは泣きながら歩いていた留未穂だったが、しばらくすると鼻歌交じりになっていた。そのあとを、鈴羽と二人で追う。


鈴羽「家出したにしては、なんか機嫌よくない?」

岡部「こういう時、はじめは楽しいんだよ。冒険みたいでな」

鈴羽「へえ~~~。おじさんも経験あるんだ」

岡部「ああ。ちょうどこれくらいの時だったな。まゆりと二人で、世界を救う冒険に――」

鈴羽「すごい!おじさんは、子供のころから世界のために戦ってたんだ!」

岡部「........。まあ、そういうことだ。フゥーハハハ!」

鈴羽「声大きいよ!あの子に見つかっちゃう....ただでさえ小さい女の子をつけまわしてる変質者なんだから」

岡部「男女二人組なら、そこまで変質者には見えん」

鈴羽「じゃあ、何に見えるの?」

岡部「それは....って、そんなことはどうでもいい!」

鈴羽「そうだね。どこに向かってるんだろう?」

岡部「これは....神田川か?」

鈴羽「ま、まさか入水自殺を!?」

岡部「そんなわけがあるか!....ん?」


留未穂は、河原に降りて橋の下に入って行った。


鈴羽「隠れるつもりかな?」

岡部「思い切って、もっと近づいてみよう」

橋の下ぎりぎりまで移動すると、留未穂の声が聞こえてきた。


留未穂「にゃんにゃんだ~!おいでおいで~♪」

どうやら、ポケットの中のお菓子で野良猫を集めているようだ。

ネコ「ニャー」

留未穂「にゃう~♪もふもふ~♪」


鈴羽「もしかして、あの野良猫を食料にするのかな?」

岡部「お前は何を言っているんだ。まあいい、このままチャンスを待とう」

――12:30


留未穂「にゃ~んにゃ~んにゃ~ん♪」


岡部「........長い」

鈴羽「よく飽きないね....」


留未穂「あっ!あのこもかわいい!こっちにおいでにゃ~....」グウーッ

留未穂「....おなかすいた」

留未穂は立ち上がって町へ歩き出した。


岡部「む、食事か?....あいつ、金は持っているのか?」

鈴羽「食事?ご飯は配給で貰うものでしょ?」

岡部「お前、戦時中みたいなことを....」

鈴羽「この時代は違うの?」

岡部「....俺たちも昼飯を買おう」

――

留未穂はちゃんとお金を持ってきていた。コンビニでパンやおにぎり、飲み物を買っている。


岡部「さて、俺たちも――」

鈴羽「オカリンおじさん!すごいよ、ここ!何でもある!」

岡部「コンビニだからな。すぐそこにいるんだから、あまりでかい声は――」

鈴羽「あたし、これがいい!焼肉ハンバーグデラックス弁当!」

岡部「分かったから、静かにしろ!」

鈴羽「ご、ごめん....つい」


留未穂「........?」ジーッ

岡部「........」

鈴羽「........」

完全に見つかっている....仕方ない。


岡部「ふ、ふぅーははは!仕方ないな、好きなものを買ってやろう!お前は金のかかる女だ!フゥーハハハ!」

鈴羽「へ?....あ、あはは~!じゃあ、いっぱい買ってもらおーっと!」

留未穂「おにいさんとおねえさんは、こいびとどおしなの?」

岡部「いや、時空を超え、血の盟約を結んだ戦友だ」

留未穂「???」

岡部「フゥーハハハ!お前にはまだ早かったか?」

留未穂「おねえさんは、おかねのかかるこいびとさんなの?」

岡部「だから、戦友だ!」

留未穂「え~、ちがうの?」

岡部「....いや、もうそれでいい」

留未穂「パパがね、おかねのかかるこいびとはだめだって!」

岡部「そ、そうか。パパは気が早いな」

留未穂「でも、“あい”があればだいじょうぶって、るみほはおもうにゃー♪」

鈴羽「うーん....でも、君のパパの言うことも間違ってないと思うよ」

留未穂「え~?パパは、しんぱいしすぎだとおも....」


留未穂「パパ....うう~....」ダッ

突然、留未穂は走ってコンビニから出て行った。


岡部「いかん、追うぞ!」

――


留未穂「うにゃ~~~....」


岡部「結局、同じ場所に戻ってきたな。当分動かないだろうし....バイト戦士よ。さっきのコンビニで焼肉ハンバーグデラックス弁当を二つ買ってくるんだ」

鈴羽「えっ、二つも食べていいの!?」

岡部「一つは俺の分だ!お前、いい加減にしておけ....」

鈴羽「ご、ごめん....」

――15:00


留未穂「........」


鈴羽「なんか、さっきから静かだね」

岡部「昼飯を食って、一番眠くなるころだ。これはチャンスだな」


留未穂「....むにゃ....うー....」コロン


鈴羽「あ、眠りそう....よーし....」

ネコ「ニャー....」

留未穂「なんか、ねむくなってきちゃったにゃ~....ねえねえ、ちょっとおはなししていい?」

ネコ「ニャー!」


留未穂「えへへ、ありがと。....きょう、るみほのおたんじょうびなんだ。パパと、ママと、みんなでおいわいするってやくそくしてたの」

留未穂「でも、きょうのあさ、きゅうにしゅっちょーだって....パパ、さいきんおしごとばっかり....」

留未穂「パパは、るみほのことなんてどうでもいいんだ....きっと、きらいになっちゃったんだよ....う、うう....」グス

留未穂「だから、るみほももうパパのことなんてきらいなの!」


留未穂「るみほも、ここでみんなといっしょにくらしてもいい?」

ネコ「ニャー、ニャー!」

留未穂「えへへ、るみほもねこになって、パパのことなんてわすれちゃうんだー....」


留未穂「....むにゃ....すー....すー....」


鈴羽「眠ったかな?」

岡部「もう少しだけ様子を見よう」

――16:00


留未穂「むにゃあ....すー....ふにゃ....」


岡部「....よし、もう大丈夫だろう。いくぞ!」

鈴羽「オーキードーキー。慎重にね....」


留未穂が起きてしまわないように忍び足で近づき、発信機と盗聴器を取り出す。これを仕掛けてしまえば、あとは....


岡部「よし、この上着の内側に――」スッ

ネコ「フシャー!」ガブッ

岡部「ぐおおっ!」

ネコ「ニャー、ニャー!」

岡部「な!?おのれこの野良猫....」


留未穂「....んにゃあ?........えっ!?」

岡部「し、しまった!」



留未穂「えっ、えっ!?さっきのおにいさん!?ど、どうして....」


岡部「いや、その....なにも怪しいことはしていないぞ!」

鈴羽「そうそう!寒そうだなって思って!」


留未穂「う、うそだ....うそついてる!たすけて!パパ―!ママ―!くろきー!」ダッ

留未穂は、立ち上がるとあわてて走り出した。


岡部「くそっ!まだ発信機と盗聴器を仕掛けられていない!」

鈴羽「急いで追いかけないと!」

岡部「いや、ダメだ!目立ちすぎて、警察に捕まるぞ!」

鈴羽「じゃ、じゃあどうしたら....」

岡部「こうなったら、ラジ館に先回りして、夜眠っているときに仕掛けるしかない」

鈴羽「うう、ラウンダーと競争になるかもね....」

岡部「これは避けたかったが、やむを得ん」

――17:00


鈴羽「ここがラジ館か。結構人多いね」

岡部「閉館は20時、地下まで完全閉館となるのは23時だ」

鈴羽「ラウンダーが来るのは、多分それ以降だろうね。ラジ館のどのあたりに隠れているかはわからないの?」

岡部「う....わからん。そもそも、まだ留未穂がここにきていない可能性もある。まあ、まだ時間はあるさ」

――20:10


岡部「....くそっ!どこだ?」

鈴羽「さすがにもうどこかにいると思うけど....あ、電気消されちゃった!」

岡部「うっ、警備員が巡回しているな....俺たちもいったん隠れるぞ」

鈴羽「....まずいね、ラウンダーがもうすぐきちゃうよ。例のラウンダーへのDメール、ラジ館のどこに隠れているのかまで書いてあるのかな」

岡部「わからん....だが、18文字という制限がある。伝えられたとしても、何階にいるか、までが限界だろう」

鈴羽「それだけでも、かなり大きいよ。地上10階、地下1階もあるし。....23時までにはなんとかしないと!」

――23:15


岡部「ひ、広すぎる!くそ、まずいぞ!」


鈴羽「うう、真っ暗になっちゃったよ....」

岡部「!鈴羽、そっちはどうだった!?」

鈴羽「こっちはいなかった。オカリンおじさんも?」

岡部「なぜ、どこにもいないんだ!?」


まずい、このままでは....

鈴羽「も、もしかしてラジ館っていうのはウソだったんじゃ....」

岡部「いや、そんなはずは――」


その時、窓から外を覗き込んでいた鈴羽が大きな声を上げた。

鈴羽「お、おじさん!あれって、もしかして!」

岡部「どうした!まさか、留未穂が――」


あわてて窓に駆け寄り、下の道路を見下ろす。

しかし、そこで見えたものは期待とは真逆のものだった。


岡部「あ....あれは....」


閉館を待っていたかのように、白いバンがラジ館の前に止まるところだった。

中から何人もの男たちがおりてくる。そして、最後におりてきたのは見間違えようのない大男だった。


岡部「Mr.ブラウン....」

今日は終わりです。続きは明日に

更新します。

鈴羽「やばいよ、おじさん!7人、8人....結構人数がいる!」

岡部「ぐっ....」


ラウンダーたちは、無理やり扉を破ろうとしている。あれだけの人数で入ってこられたら....


岡部「くそ....もう、だめなのか....」

鈴羽「!ちょっと、オカリンおじさん!?」

岡部「やはり、収束に抗うことはできない....」

鈴羽「あきらめちゃだめだよ!まだ、探してないところはいっぱいある!」

岡部「だ、だが....」

鈴羽「あの子を救いたいんでしょ!おじさん!」


岡部「....そうだな。すまない、鈴羽。ちょっと弱気になっただけだ」

鈴羽「よーし!それでこそオカリンおじさんだよ!じゃあ、とりあえずあっちから――」

岡部「........」

鈴羽「おじさん?」

....このまま闇雲に探していたら、ラウンダーに先を越される。奴らは、留未穂が何階に隠れているか知っている可能性がある。

せめて、どのあたりを探すか絞り込めたらいいのだが。


こういう時、いつもフェイリスが俺に知恵をくれたな....この状況、フェイリスならどう考えるだろうか。フェイリスなら....


岡部「――!最上階だ!」

鈴羽「へっ!?」

岡部「最上階を探すぞ!そこしかない!」

鈴羽「ど、どうして?」


実際に聞いたわけではないが、フェイリスはおそらく高いところが好きだ!家はマンションの最上階、ネコになりたがっている、そして厨二病――

頼む、そうであってくれ!

――23:45


岡部「はあ、はあ....よし、隅々まで探せ!」

鈴羽「オーキードーキー!オカリンおじさんを信じるよ!」


最上階を探していると、階段を上がるいくつもの足音が聞こえてきた。

しかも、それはだんだん近づいてくる。


鈴羽「!!....あいつらも、ここにくる!」

岡部「く、今度こそ....俺は、絶対に――」


その時、物置の隅から小さな息遣いが聞こえた....気がした。

岡部「!!今のは....?」


積み上げられた段ボールをどかして近づくと――



留未穂「すー....むにゃ....」


岡部「!!や、やった....!」

鈴羽「!オカリンおじさん、見つけたの!?」

岡部「ああ!これで――」


天王寺「よし、探せ!」

突然、聞き覚えのある声が響いた。最上階を、いくつもの荒々しい足音が満たす。


ラウンダーA「おい、そっちはどうだ?」

ラウンダーB「いねえな。ホントにこんなところにいるのかよ?」

天王寺「無駄口をたたくなよ。いいから探せ」

ラウンダーC「やれやれ....わかりましたよ、リーダー」


ラウンダーD「!おい、あそこに誰かいるぞ!」

ラウンダーA「本当か?....!おい、FB!」

天王寺「!!ホントにいやがったとはな....」

ラウンダーC「おいおい、俺たち大手柄じゃねえか」

天王寺「よし、運べ」

ラウンダーE「おう!うへへ....よっと」

留未穂「んー....ん....え、ええっ!?だれ!?はなしてぇー!」

ラウンダーB「おい、口をふさいでしばれ!」

ラウンダーE「へいへい、ふへへ....」

留未穂「パパ―!ママ―!だれか、たすけ――むぐっ!?んー、んー!」

ラウンダーA「よし、撤収するぞ!」


天王寺「....すまねえな、嬢ちゃん」

ラウンダーC「?どうかしたのか、FB」

天王寺「なんでもねえ、いくぞ」

――

鈴羽「....行ったみたいだね」


俺たちは、ギリギリのタイミングで段ボールの陰に隠れることができた。足音が、だんだん遠ざかっていく。


岡部「Mr.ブラウン....やはり、あなたは馬鹿だ....!」

鈴羽「オカリンおじさん?」

岡部「....なんでもない。発信機と盗聴器はどうだ?」

鈴羽「大丈夫、ちゃんと反応してる。....ふう、何とか成功したね」

岡部「ああ。俺たちも行こう」

――


シボルエに戻り、盗聴器と発信機で向こうの動向を確認する。


天王寺『これから、例の倉庫に向かう。IBN5100を手に入れるまでは、秋葉留未穂はそこに隠す』

ラウンダーA『秋葉幸高にはいつ連絡を取る?』

天王寺『明日の朝だな。明日中にはIBN5100を手に入れる』

ラウンダーB『引き渡しの方法はどうするんだ?』

天王寺『そんなもん、今から考える。上から何か指示してくるかもしれねえしな』

ラウンダーE『それにしても、この子可愛いな~』

留未穂『んー!んんーーーっ!』

天王寺『おい!変なことするんじゃねえぞ!IBN5100を手に入れるまでは、秋葉留未穂には傷一つつけるんじゃねえ!』

ラウンダーC『じゃあ、そのあとは?』

天王寺『....聞かなくても、わかってんだろ』

ラウンダーE『うへへへ、それは俺に任せとけよ、へへ、へへへ』

ラウンダーD『まったく、好きにすりゃあいいけどよ。ちゃんと息の根は止めろよ』

ラウンダーE『へへ、殺す前にちょっとかわいがるだけだって....うへへ 』

ラウンダーF『やれやれ、変態野郎が』

留未穂『う、うえぇ....』


天王寺『....ちっ』



鈴羽「あ、あいつら、なんてことを....!」

岡部「....奴らの思い通りにはならん。発信機の反応を追うぞ」

――4月4日06:00


Mr.ブラウンの言っていた“例の倉庫”は、東京湾がすぐそこに見える場所にあった。東京にしてはかなりさびれたところで、人はあまり見当たらない。

俺たちは、そこから少し離れた場所にシボルエを止めた。


鈴羽「どうする?多分、まだ時間はあるよね」

岡部「そうだな....バイト戦士よ、やつらに見つからないようにあの倉庫の構造やラウンダーの配置を調べられるか?」

鈴羽「うん、大丈夫」

岡部「じゃあ任せたぞ。無茶はするなよ。俺はここで盗聴器からの情報を聞いている」

鈴羽「オーキードーキー!何かあったら、無線で知らせて」

岡部「ああ。そっちもな」



しばらくすると、倉庫の中の声が聞こえてきた。


天王寺『....どうも、秋葉さん。....ええ、実は、お宅のお嬢さんを預かっていましてね』

天王寺『....では、声を聴いてもらいますよ』

留未穂『え....パパ!?パパ―!たすけてー!もう、あんなこといわないから――むぐっ!んー、んんー!』

天王寺『これで信じていただけますね?....ええ、お返ししますよ。IBN5100と交換でどうです?』

天王寺『....そうですか。持っていないのであればしょうがない。では、お嬢さんは....』

天王寺『お金なんてどうでもいいんですよ。それでは、これで....』

天王寺『....最初からそう言ってくださいよ、フフ....夕方までには用意しておいてください。また電話します。では』


ラウンダーA『なんで夕方なんだ?』

天王寺『こっちも、いろいろと根回しがいるだろ?警察とかな』



岡部「........」

おそらく、チャンスはほんのわずかしかない。IBN5100が引き渡されてから、留未穂が殺されるまでのわずかな時間....だが、やるしかない。

――10:30


鈴羽「おじさん!オカリンおじさん!」

岡部「鈴羽!遅かったな、心配したぞ!」

鈴羽「やばいよ!あたしたち、もう見つかってるかもしれない!」

岡部「な、なんだと!?なにがあった!」

鈴羽「ここに戻る途中、知らない男に声をかけられたんだよ」

岡部「こ、声を!?」

鈴羽「それで、『一緒にお茶でもどう?』って....走って逃げてきたんだけど、あの目、絶対になにかを狙ってた!どうしよう....」


岡部「....それは、ナンパだ」

鈴羽「なんぱ?それ、どういう戦術?」

岡部「はあ....そいつは、お前を、えー.....気に入ったんだ」

鈴羽「気に入った?どういうこと?」

岡部「そいつは関係ないってことだ。それより、ちゃんと調べられたか?」

鈴羽「調べてきたよ。倉庫の中の状況は、扉が閉まってて見えないけど....とりあえず、入り口は一つだけで見張りが二人」

岡部「見張りは二人か....だとしたら、中には6人か?やはり多いな」

鈴羽「見張りはおそらく拳銃を所持している。ほかの建物の陰を利用すれば、ある程度までは近づけそうだけど....」

岡部「正面突破で二人を同時に片づけるのは無理、ということか」

鈴羽「そういうこと。その前に中の連中に知らされちゃう」

岡部「ふむ....」

鈴羽「そっちはどうだった?」

岡部「やつらはIBN5100を夕方以降に受け取るようだ。どう受け取る気かは分からんが、まあそれは関係ない」

鈴羽「夕方....となると、やつらはあの子を殺したあと、夜の東京湾に沈めて事件を隠すつもりなのかな....」


岡部「........」

鈴羽「あ....ご、ごめん....」

岡部「....幸い、まだ時間はある。そうならないよう、留未穂を助け出す作戦を考えよう」

――17:30


夕方までの間、ラウンダーたちは何度も倉庫を出入りした。そして、その根回しもどうやら完了する。


ラウンダーA『FB。警察の方はもうOKだ。IBN5100の引き渡しは邪魔しないそうだ』

天王寺『そうか。秋葉幸高は警察に連絡してるのか?』

ラウンダーA『昨日の夜からな。今は、何も知らない警察の下っ端が見当違いのところを探してるってよ』

天王寺『そりゃあご苦労さんだな。....もう夕方だし、そろそろ仕上げといくか』

天王寺『....どうも、秋葉さん。IBN5100は用意できましたか?....え?またですか。....いいでしょう。おい、起こせ』

留未穂『........ひぃっ!な、なに....?もう、いやだよ....たすけて、パパ....』

天王寺『聞こえましたか?では、IBN5100をもって、車に乗ってください。もちろん、あなた一人でね。では、また電話します』


ラウンダーB『FB、受け取りには誰が行くんだ?』

天王寺『俺が行く』

ラウンダーB『....リーダーだからって、手柄を独り占めする気じゃねえだろうな』

天王寺『....そんなわけねえだろ。じゃあ、いってくる』

ラウンダーA『ああ』

天王寺『IBN5100を受け取ったら連絡する。そうしたら.....そのガキを殺せ』

ラウンダーE『ああ、任せときな....ぐへへ』


天王寺『....ちっ。じゃあな』


岡部「....とうとう、来たか」

鈴羽「うん。でも、あの作戦でうまくいくかな....?」

岡部「不安か?」

鈴羽「はっきり言って、うまくいかない可能性のほうがはるかに高いと思う。でも、やるしかないよね」

岡部「当然だ....だが心配するな。ラグナロクの勝者は、常にこの鳳凰院凶真と決まっているのだ!フゥーハハハ!」


持ってきた未来ガジェットを懐に入れ、俺はシボルエをおりた。鈴羽もそれに続く。


岡部「よし....行くぞ!」

今日はここまでです。続きは明日。GWは一気に行きます。

更新します。

――

俺と鈴羽は二手に分かれ、俺は倉庫の右側、鈴羽は倉庫の左側から近づく。

この角を曲がれば、倉庫の入り口まで15メートルといったところか。


鈴羽の言っていた通り、見張りは二人。二人は何やら談笑している。演技かもしれないが、特別な訓練を受けているようには見えない。

ここで俺は無線を取り出し、鈴羽に連絡を取る。


岡部『....俺だ。配置についたぞ』スチャ

鈴羽『了解。あとは向こうの動きを待つだけだね』

岡部『チャンスはおそらく一瞬....気を抜くなよ』

鈴羽『おじさんのほうこそね。本当に大丈夫?』

岡部『フッ、俺を誰だと思っている?この鳳凰院凶真に任せておけ。機関の妨害など、蹴散らしてやる』

鈴羽『ごめんね、こんな危険なことを任せちゃって。おじさん、死なないでね』

岡部『....全てはシュタインズゲートの選択だ。お前こそ、必ず生き残れよ....エル・プサイ・コングルゥ』

鈴羽『へ?エル――』ブツッ

――18:45


プルルルルル....

プルル――

ガチャッ


ラウンダーA『FBか。終わったのか?』

ラウンダーA『....ああ。了解した』


ラウンダーB『成功したのか?』

ラウンダーA『ああ。こっちもさっさと終わらせるぞ』

ラウンダーE『やっとか!へへへ、任せとけって』

留未穂『!?うー、ううー!』



岡部「――来たか!」

岡部『鈴羽、いくぞ!』スチャ

鈴羽『オーキードーキー!』


とうとうこの時が来た!鈴羽に無線をとばし、そして倉庫の入り口から見えるよう道の真ん中に飛び出した。

岡部「フゥーハハハ!フゥゥーーーハハハハハ!!!」


ラウンダーC「!?」

ラウンダーD「な、なんだあいつは!」


岡部「俺はぁ、世界の支配構造を破壊し、世に混沌をもたらす狂気のメァッドサイエンティスト、鳳凰院....凶真だッ!!」


ラウンダーC「....頭がおかしいのか?」

ラウンダーD「酔っ払いだろ?そろそろいい時間だしな」

岡部「おいぃ!この二人組!今から、俺の開発した未来ガジェットを見せてやるぅ!」

ラウンダーC「お?なんかやんのか?」

ラウンダーD「ちょうど退屈してたんだよ。おもしれえもん見せてくれや」


二人とも、無警戒に俺を見ている。これなら、いける!

懐から“タケコプカメラー”を取り出し、カメラを連写モードにして空に放った。


パシャパシャパシャパシャ........


ラウンダーC「なんだありゃあ?」

ラウンダーD「竹とんぼのおもちゃか?やっぱ、ただのバカ――」バキッ!

ラウンダーD「ぐはっ!」ドサッ


ラウンダーC「ん?どうし――」

鈴羽「おりゃー!」ゴシャ!

ラウンダーC「ぐえっ!」ドサッ


奴らの目をこっちに引き付けているうちに、鈴羽が奴らの背後に迫っていた。二人とも気を失っている。

鈴羽「やった!第一段階はクリアだよ!」

岡部「いいぞ!だが、本番はここからだ!気を抜くなよ」

鈴羽「おじさんこそ!後は任せたよ」

岡部「ああ」


今度は、俺は倉庫の陰に隠れる。入口からは見えない角度だ。

そして、鈴羽は倉庫の鍵を拳銃で破壊し、倉庫の扉を勢いよく開いた。




ラウンダーA「!!だ、だれだてめえ!?」

鈴羽「えーっと....せ、正義の味方だ!悪者め、覚悟―!」

ラウンダーA「ああ!?....とりあえず、捕まえろ!」

鈴羽「へへーん、捕まえられるもんなら、捕まえてみなー!」ダッ


ラウンダーA「な、なに?逃げるのかよ!何しに来たんだ!?」

ラウンダーB「で、でもよー、見られちまったかも....」

ラウンダーA「うっ....ち、追うぞ!誰か一人は残ってろ!」

ラウンダーE「へへ、任せな」

倉庫から、鈴羽を追って男たちが飛び出してきた。

単純な作戦だが、第二段階もうまくいった!あとは、鈴羽が捕まらず、俺が成功するのみだ。


ラウンダーA「!!見張りがやられてやがる!おい、お前は入り口を見張ってろ!」

ラウンダーF「お、おう」


....ちっ、面倒な....!

だが、ほかのラウンダーはいなくなった。倉庫の外に一人、中に一人....トール・サンダーボルトは一発限り....何とかするしかない。

ラウンダーE「へっへっへ....邪魔者はいなくなったし、お嬢ちゃん、俺と遊ぼうぜ~?」

留未穂「うー、ううー!....ぷはっ!ひぃ....た、たすけてぇー!」

ラウンダーF「あーあー、拘束を全部といちまいやがって....大丈夫かよ?」

ラウンダーE「うるせえな、早く扉を閉じろ!外に聞こえちまうだろ!」

ラウンダーF「まったく、変態野郎が」


外にいるラウンダーが、こちらに背を向けて扉に手をかけた。

――今だ!

岡部「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

ラウンダーF「な!?――」バキィ

さっきの鈴羽のように、ラウンダーの後頭部を渾身の力で殴りつけた。

ラウンダーF「うわあ!」ガンッ!


ラウンダーは、さらに扉にも頭を打ち付けて倒れた。気を失っている。

岡部「や、やったぞ!これで――」

ラウンダーE「!?な、なんだ?どうした!?」

くっ、さすがに気付かれたか!

....こうなったら、正面から奴を倒す!トール・サンダーボルトを握りしめ、倉庫の中に踏み込んだ。


岡部「狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真....参上!」

ラウンダーE「うおっ!?だ、だれだてめえは....って、銃をもってやがるのか!?」

留未穂「えっ!?あ、あのひと....!」


岡部「その子を離せ、このHENTAI!さもなくば、怒れる神の雷をその身に浴びることとなるぞ!」

ラウンダーE「ふ、ふざけんじゃねえぞ!」ガシ

奴が手を伸ばした先には、大量の武器が積んであった。


岡部「な、サブマシンガンだと!?くっ!」

幸い、倉庫の中は物であふれていた。物陰に飛び込むと同時に銃声が響く。


ズダダダダダダダダダッ!!



岡部「あ、あぶなかった....」

ラウンダーE「ちっ、かくれてないで出てこい!」

ズダダダダダダダダダッ!!


岡部「くそ、これでは近づけん!」

ラウンダーE「こそこそしてんじゃねえぞ!」


ズダダダダダダダダダッ!!


岡部「く........」

ラウンダーE「オラ、出てこいよ!」


岡部「........?」

近づいてこない....?奴のほうが明らかに強力な武器を持っているのに。

ラウンダーE「てめえ、何とかいえよ!」

あいつ、相当慎重なのか....いや、臆病なんだな。


ラウンダーE「くっそ....」

だとしたら、こいつが次にとる行動は、おそらく....


ラウンダーE「....おい、早く戻ってきてくれ!また変なやつが倉庫の中まで入って来てるんだよ!....そんな女ほっとけよ!」

やはり、仲間を呼んだ!....今しかない!


岡部「うおおおおおおおおおおおおお!!!」ダッ!


ラウンダーE「う、うわっ!」ガチャ

ラウンダーはあわてて携帯電話を放り出し、サブマシンガンを手に取った。


距離はほんの数メートル。お互いの銃口が敵を捉え――




ズドオオオオオオン!


――ドサッ

――


岡部「はあ、はあ....」

ラウンダーは、気を失って床に転がっていた。スタンガンは奴の胸に見事命中したのだ。


岡部「ダル....お前の未来ガジェットが、フェイリスを守ったぞ....」



目の前の敵を倒したとはいえ、まだ油断はできない。他のラウンダーが戻ってくる前に、ここを離脱しなければ!

岡部「....!?留未穂、どこだ!?」


ラウンダーと交戦しているうちに、留未穂はいなくなっていた。外には出ていないはずだが――

その時、無線が鳴った。


鈴羽『オカリンおじさん!聞こえる?』

岡部『どうした!?そっちは無事か?』

鈴羽『やばいよ!あいつら、もう倉庫に戻っていった!シボルエで迎えに行くから、あの子を連れて、とにかく倉庫から離れて!』

岡部『わかった!急いでくれ!』

岡部「くっ、まずい!どこだ、留未穂!」


留未穂「うう....」

岡部「....!!」

倉庫の隅から声がした....気がした。


岡部「そっちか?....留未穂!」

そして、倉庫の隅で震えて縮こまっている留未穂を見つけた。


岡部「そこにいたのか!さあ、こっちに――!?」

留未穂は、ラウンダーが山積みにしていた武器の中から拳銃を持ち出していた。そして、それを――

俺に向けている。


留未穂「こ、こないでぇ....」グスッ

岡部「お、おい、留未穂....そんなものは捨てるんだ。俺は、お前を助けに来たんだ」

留未穂「もういやぁ....こわいよ....パパ、ママ、たすけてぇ....」グスッ

岡部「留未穂!それを捨てて、俺についてきてくれ!俺がお前を助けるから!」

留未穂「また、こわいところにつれていって....グスッ....ひどいことするんでしょ....?」

岡部「そんなことはしない!俺は、ただお前を助けに来たんだよ!」

留未穂「どうして....?どうしてるみほをたすけるの?あなたなんて、しらないよ....?」

岡部「ど、どうしてって....」


岡部「えーっと、俺は警察なんだ。だから、君を助けに――」

留未穂「う、うそだ!」

岡部「ぐっ....そうだ、俺はお前のパパに頼まれて――」スッ

留未穂「うそつき!こ、こないで!」スチャ

岡部「うっ!....くそ、どうすれば....」

このままでは、ラウンダーたちが戻ってきてしまう!早くしなければ....


留未穂「うう....」グスッ

留未穂は、涙目のまま俺を見つめている。....そうか、“チェシャー・ブレイク;チェシャ猫の微笑”....フェイリスには、留未穂には嘘は通用しない。

それなら....

本当のことを....過去に戻ってまで助けに来た本当の理由を、伝えるしかない――




岡部「――いいか、留未穂。俺が、お前を助けに来たのは....どうしても、お前を助けたかったのは....」



岡部「お前が、好きだからだ」

留未穂「........えっ!?」


岡部「お前が好きだから、助けたいんだ!だから銃を捨ててくれ!」

岡部「俺を、信じてくれ」



留未穂「えっ、えっ....すきって....よ、よくわかんないけど....」


留未穂「....うん。あなたのこと、しんじる」

カシャン!

留未穂は、銃を捨てて俺のもとに駆け寄ってきた。


岡部「ありがとう....よし、俺につかまれ!」

留未穂「わ、わわっ!」

留未穂の小さい体を抱え上げ、出口へと駆け出した。早く倉庫を出て、どこかに隠れねば――


ラウンダーA「!!おい、あいつガキを連れて行く気だぞ!」

しかし、倉庫を出たところでラウンダーたちと遭遇してしまった。

ラウンダーB「もういい、殺せ!二人とも殺しちまえ!」

ラウンダーたちは、次々に銃を取り出した。


岡部「くそ!留未穂、しっかりつかまっていろ!」

左手で留未穂を抱え、右手でモアッドスネークを取り出し、起動する。


ラウンダーG「うわ!?なんだこれ!」

ラウンダーH「ま、前がみえねえ!」

ラウンダーA「うて、撃て撃て!」

バン!バン!ズダダダッ!


岡部「――うっ!」

闇雲に放たれた銃弾が頬をかすめて行った。そこから血が噴き出す。

腕の中の留未穂をしっかりと抱え込む。なんとか、留未穂だけでも守らなければ――


その時、銃声を切り裂いてエンジン音が轟いた。

岡部「!!鈴羽!」


鈴羽「おじさん!乗って、早く!」

シボルエが俺の目の前に走りこんできた。急いで後部座席のドアを開く。


ラウンダーB「おい、逃げられるぞ!」

ラウンダーA「またあの女か!チクショウ、まとめて殺せ!」


岡部「よし!鈴羽、出してくれ!」

鈴羽「オーキードーキー!」

俺たちが車に乗り込むと同時に、鈴羽はアクセルを思い切り踏み込んだ。

グオオオオオオオン!!


シボルエは一気に加速し、ラウンダーたちを引き離した。

ラウンダーたちは、みるみる小さくなっていく――


鈴羽「やった........!やったよ、オカリンおじさん!あたしたち、やったよ!」

岡部「やった....のか?今度こそ....」

腕の中では、留未穂がいまだにしっかりとしがみついてきている。



とうとう、俺は....フェイリスを、留未穂を救えたんだ....!!

今日はここまでです。また明日。

更新します。

――


岡部「バイト戦士よ、あのマンションまで行ってくれ」

鈴羽「わかった」

あとは、留未穂を秋葉家まで送り届けるだけだ。


留未穂「あのー....」

岡部「ん?どうした?」

留未穂「おにいさんは、だれなの?」

岡部「ああ、俺は........ ]


岡部「狂気のマッドサイエンティストにして世界の支配構造を破壊する者、鳳凰院凶真だッ!」

留未穂「???ながいおなまえなんだね、えーと....き、きようきの――」

岡部「凶真、と呼ぶがいい」

留未穂「きょうま?」

岡部「そうだ」

留未穂「じゃあ、あのおねえさんは?」

岡部「正義の味方、にゃんこ戦士スズニャンだ」

鈴羽「!?な、なにそれ?」

留未穂「えへへ、ふたりとも、ありがとにゃん♪」

岡部「まあ気にするな。フゥーハハハ!」


留未穂「あ、きょうま、ちがでてるよ」

岡部「ん?....そういえば、銃弾がかすったな」

留未穂「ごめんなさい、るみほのせいで....」

岡部「なあに、この程度の傷など痛くもかゆくもない!」

留未穂「あ、そうだ!きょうま、ちょっとじっとしてて!」

留未穂はポケットをごそごそと探り、中から絆創膏を取り出した。


留未穂「....はい!これで、もうだいじょうぶにゃ♪」

岡部「おお....留未穂、ありがとう」

留未穂「どういたしましてにゃー♪」


鈴羽「あはは、かわいー!その絆創膏、猫が書いてあるよ!」

ミラーを見ると、頬に猫のイラスト付きの絆創膏が貼ってあった。

岡部「ぬおっ!?こ、この鳳凰院凶真が、こんなメルヘンなものを....」

留未穂「あーっ!とっちゃだめ!」

岡部「ぐぬぬ....」


留未穂「えへへー♪さっきのきょうま、とってもかっこよかったにゃー♪きょうまは、るみほの“おうじさま”にゃ♪」

岡部「王子様、か」

留未穂「だれかたすけて、っていのってたら、きょうまがたすけにきてくれたの!だから、きょうまはるみほのおうじさま!」


岡部「お前は変わらんな....フフッ」

留未穂「ねえねえ、これからどこにいくの?るみほは、きょうまといっしょなら、どこへだってついていくにゃ!」

岡部「お前の家だよ。お前のパパとママのところに帰るんだ」


留未穂「え....?....パパ....で、でもぉ....」

岡部「いいか、留未穂。お前のパパは、お前のことが世界で一番大切なんだ」

留未穂「そ、そんなこと――」

岡部「俺には分かるんだ。本当は、お前だって分かってるんだろう?」

留未穂「........うん」

岡部「よし、わかってくれたか。家に帰ったら、ちゃんと仲直りするんだぞ?」

留未穂「....うん」

岡部「なーに、心配するな!これからはパパももっと構ってくれるはずだ」

留未穂「ほんと!?」

岡部「本当だ。俺を信じろ」

留未穂「うん!きょうまをしんじる!やったぁー!」

――


留未穂「すー....すー.....」


鈴羽「あはは、しがみついたまま眠っちゃったね。やっぱり疲れてたのかな」

岡部「ずっと捕まってたんだ。安心して眠くなったんだろう」


鈴羽「....後は、この子を家まで送り届ければ、未来が変わるんだよね?」

岡部「ああ。これでSERNのディストピアも、中鉢研究所のタイムマシン開発も、第三次世界大戦も、なかったことになる」

鈴羽「でも、ラウンダーがこの子をまた殺しに来たら?」

岡部「大丈夫だ。留未穂は、これからはより厳重に守られる。ラウンダーだって、そこまで無理をして口封じをしようとは思わんだろう。Mr.ブラウンだって、本当はこの子を殺したくなかったはずだ」



鈴羽「そっか....じゃあ、あたしたちは本当に未来を変えられたんだ」

岡部「....ああ」

――


秋葉家のマンションが見えてきたころには、アキバはすっかり暗くなっていた。

マンションの入り口には何台ものパトカーが止まっているのが見える。そのそばで、警察官達と、見覚えのある人たちが話し合っていた。

フェイリスの父親の秋葉氏、それに執事の黒木さんだ。


鈴羽「ついたよ、オカリンおじさん」

岡部「ああ。....留未穂、起きてくれ」


留未穂「....ふにゃあ?....んー....どうしたの、きょうま?」

岡部「ほら、お前の家についたんだよ」

留未穂「!!パパがいる!くろきも!」


シボルエをマンションから少し離れた場所に止め、ドアを開く。

岡部「さあ、おりるぞ」

留未穂「うん!」


二人でシボルエからおりると、留未穂がにっこりと笑ってこっちを見た。

留未穂「きょうま、パパたちにごしょーかいするにゃ!このひとが、るみほのおうじさまだって!」


岡部「........」

留未穂「たすけてくれたおれいに、なんだってしてあげるにゃん♪もちろん、すずにゃんも!さあ、いこー♪」


岡部「....留未穂、それはできない。ここでお別れだ」

留未穂「....え?」


岡部「俺たちは、もう行かなければならん。すぐそこでみんな待ってるから、一人で帰るんだ」

留未穂「な、なんで....?いや!いやだ!いっしょにきてよ!」

岡部「それはできないんだよ」

留未穂「やだ、やだぁ!だって、るみほはまだ、きょうまにおれいしてない!」

岡部「そんなことはないさ。俺もお前に何度も何度も助けてもらったからな」

留未穂「そんなの、しらないよ!いやだよ、ずっといっしょにいてよぉ....」


岡部「....ずっと一緒に、か」

留未穂「う、うええええん....グスッ....」


ずっと一緒....その言葉で思い出した。

白衣のポケットからあのチョーカーを取り出し、留未穂の首にかける。

留未穂「グス....なに、これ....?」

岡部「ふむ....誕生日プレゼントといったところだな。一日遅れだが」

留未穂「た、たんじょうび....?」


岡部「いいか、留未穂。このチョーカーには魔法がかかっているんだ。これをつけている限り、どれだけ離れていても、どんなことがあっても、俺はずっと一緒にいる」

留未穂「まほう?」

岡部「そう、魔法だ。その魔法は絶対に解けない。なぜなら、この俺がかけた魔法だからな。だから、安心しろ」

留未穂「ずっと、いっしょに....」


留未穂「ううー....で、でも、るみほはきょうまに、なにもおれいしてないよ....」


鈴羽「おじさん、急いで!」

警察官の一人がようやく俺たちに気付き、こっちを指さしていた。秋葉氏と黒木さん、それに警察官たちが俺たちめがけて走ってくる。


留未穂「う、うう~っ....グスッ」

岡部「........」


岡部「お礼か....わかった。じゃあ留未穂、一つだけ約束してくれないか?」

留未穂「やくそく?」

岡部「そう、約束だ。....いいか、もし、また留未穂が俺と出会ったら――」



岡部「もう一度、俺を好きになってくれ」




留未穂「え....?」

岡部「わかったか?約束だ........さようなら、留未穂」


留未穂「え、まって!まってよ!」

留未穂の声を無視し、俺はシボルエに乗り込んでドアを閉めた。


鈴羽「よし、行くよ!」

グオオオオオオオオン!


鈴羽がアクセルを踏み込むと、シボルエは留未穂を置いて走り出した。

数秒後、バックミラーに留未穂を泣きながら抱きしめる秋葉氏や黒木さんが写った。

――あの人たちがいれば、もう大丈夫だろう。きっと、これからはどんなことがあっても留未穂を守ってくれるはずだ。


俺たちを誘拐犯だと思った警察官たちが、何台ものパトカーでシボルエを追いかけてくる。

だが、もうそんなことは関係ない。


鈴羽「オカリンおじさん、帰ろう。未来へ」

岡部「....ああ」

鈴羽「........?どうしたの?おじさん」

岡部「なにがだ?」

鈴羽「だって、泣いてるよ。何が悲しいの?」

鈴羽に言われて、初めて自分が泣いていることに気が付いた。


岡部「悲しいんじゃない。嬉しいから、泣いているんだ」

鈴羽「嬉しいから?人って、嬉しいときにも泣くの?」

岡部「ああ。きっと、お前にもわかるさ。そんな未来が待っているはずだ」

鈴羽「....そうだね。そうなるよね」


岡部「鈴羽、お前のおかげで留未穂を救えた。ありがとう」

鈴羽「ううん。こちらこそ、未来を変えてくれてありがとう」


110、120、130、140....

そして、放電現象が始まり、視界が光に包まれ――




「....さようなら、オカリンおじさん」



「きっと、また7年後に会おうね」――


-1.130426

     ↓

-1.048596

―――――

――――

―――

――

今日はおしまい。明日完結します。

更新します。

――


目を覚ますと、ラボのソファーの上にいた。

窓の外は、雪に覆われたアキバの街....どうやら無事に2010年12月25日に戻ってきたようだ。


ラボを見渡すと、フェイリスの痕跡は消えたままだ。

予想はしていたが、やはり不安になる。


フェイリスは、この世界でちゃんと生きているだろうか?

――

天王寺「ん?おう、岡部」

ラボを出て下に降りると、Mr.ブラウンがいた。


岡部「Mr.ブラウン....」

思わず警戒してしまう。もう、ラウンダーではないはず....すると、Mr.ブラウンの後ろから誰かが現れた。


萌郁「おはよう、岡部君」

岡部「!?萌郁、なぜここに?」

天王寺「はあ?なぜって、ここのバイトだからに決まってんじゃねえか!お前より前からここにいただろ」

岡部「俺よりも....前から!?」

天王寺「そうだ。こいつが自殺しようとしてるのをたまたま通りかかった俺が止めて、その縁で....って、この話前にもしたよな?」

岡部「そ、そうだったか?」

お、驚いた....だが、確認しなければならんことがある。


岡部「萌郁、ちょっとこい!」グイッ

萌郁「???」

天王寺「おい、岡部!うちのバイトに手ぇ出したら、ただじゃおかねえぞ!」


岡部「お前、FBって知っているか?」ヒソヒソ

萌郁「....なに、それ....?」

岡部「知らないのか?」

萌郁「知らない....」

岡部「そうか、知らないならいいんだ」

どうやら、この反応は本当に知らないようだ。

綯「さっきからなんかヘンだよ、きょうま」

岡部「ん、シスターブラウンもいたのか」

天王寺「てめえ、また変な名前でうちの綯を――」


紅莉栖「グッモーニン。朝から楽しそうね」

岡部「おお、クリスティーナ!」

紅莉栖「ティーナはいらんと言っとろーが!」

岡部「....助手よ、お前は中鉢研究所を知っているか?」

紅莉栖「はあ?何それ、聞いたこともない」

岡部「そうか、それならいいんだ」

紅莉栖「???」

どうやら、過去は変えられたようだ。


まゆり「おーい!みんな、おっはよー!」

るか「みなさん、おはようございます」

ダル「お、みんなおつ~」

岡部「なぜみんな一斉にやってくるんだ?」

まゆり「え~?今から、ラボメン皆でオカリンを応援しに行くからだよ~」

萌郁「私と、綯ちゃんも....応援、いくから....」


岡部「俺を....応援?」

ダル「何言っちゃってんのオカリン。今日は雷ネットABグラチャンの決勝戦っしょ」


岡部「な....に....?」

ということは!!


岡部「おい、俺のパートナーは誰だ!?」

ダル「いや、オカリンは一人だお」


岡部「一人、だと....?」

るか「俺にパートナーなど必要ない、っておっしゃってましたよ。それで決勝戦まで勝ち上がって....やっぱり、凶真さんはすごいです!」

まゆり「オカリンは新人なのにすごいよね~」

Mr.ブラウンはアキバやその付近のラウンダー統括してたポジだし
もう組織抜けられない気もするけどなぁ~   組織を抜ける = 知り過ぎたから消される な感じで

まぁ、そうなるとラボが存在しなくなるし難しいトコだ

ダル「準決勝でヴァイラルアタッカーズを圧倒した時は、正直惚れそうになったお」

綯「どーしたよんどしー!いや10円はげのくろのくじゃくよ!ふーははは!」

天王寺「ああっ!綯、そいつのまねはしちゃダメだって言っただろ!」


紅莉栖「しかも、そのあと言いがかりをつけてきた4℃を“トール・サンダーボルト”でやっつけたのよね」

ダル「僕の未来ガジェットのおかげだお!」


そうか、この世界線の“トール・サンダーボルト”はヴァイラルアタッカーズの対策のために作ったのか。

岡部「....しかし、なぜ俺は一人で雷ネットの大会に....?」

紅莉栖「はあ?あんたが出るって言い出したんじゃない」

まゆり「オカリンどーしたの~?まさか、きおくそーしつ!?」

ダル「その展開はお約束すぐる!だがそれがいい!」

るか「よ、よくないですよぉ....岡部さん、大丈夫ですか?」

岡部「....ああ、ちょっと寝ぼけていただけだ」

萌郁「そろそろ、出発しないと....」

紅莉栖「そうね、行きましょう」

綯「ふーははは!これより、世界はこんとんにつつまれるのだー!」

天王寺「岡部!これ以上綯に変な言葉を吹き込んだら殺す!」

るか「ま、まあまあ....」


....この世界線の俺は、何を考えていたんだ?

――

アキバの街は、あの時見た通りの電気街となっていた。ということは....


岡部「まゆり、メイクイーンを知っているか?」

まゆり「めい....?知らないかな~」

岡部「お前のバイト先はどこだ?」

まゆり「ルモアンヌだよ~」


この世界線には、メイクイーンは存在しない。

大丈夫なのだろうか。俺は、本当にフェイリスを救えているのだろうか。


まゆり「....?ねえオカリン、かわいい絆創膏つけてるね~」

岡部「ん?」

紅莉栖「あら、本当ね。....って、また猫?」

岡部「また猫、とはどういうことだ?」

ダル「だってオカリン、ちょっと前に急に貯金はたいて厨二病チックな猫のチョーカー買ってきたっしょ」

岡部「チョーカーを....なぜ?」

紅莉栖「こっちが聞きたいわよ。別に俺が使うわけじゃない、とか言ってたけど」

るか「誰かに差し上げるんですか?」

岡部「誰か....」


まさか、俺がこの大会に出た目的は....!

――

雷ネットABグラチャン決勝戦の会場であるUPXに到着した。すでに多くの観客が集まっている。


少年A「あっ!ふーはははのひとだ!」

少年B「ほんとだー!ふーはははのひとだー!」

岡部「お、俺はふーはははの人ではない!鳳凰院凶真だ!」

オタA「鳳凰院氏!サインプリーズ!」

オタB「握手してくださいおながいします!」

岡部「ぬおお....」

まゆり「大人気だね~♪」

ダル「雷ネット界に彗星のごとく現れた超新星だからね。強さと厨二病っぷりで@ちゃんの雷ネットスレでも話題を独占してるんだお!」

紅莉栖「正直、恥ずかしい....他人のふり、他人のふり」


スタッフ「あ、鳳凰院さん!控室までご案内します」

岡部「お。おお....助かります」

少年A「えー、ふーはははやってよー」

岡部「後でだっ!」

――

控室は一転して静かだった。選手用のマイクを取り付けるだけで、もう準備は終わりだ。


岡部「........」

俺がこの大会に出たのは、会いたい人がいたからに違いない。

つまりそれは、この決勝戦の相手――


スタッフ「鳳凰院さん、そろそろ時間です!」

岡部「........わかりました」

――

司会者「――お待たせしました、みなさん。それでは、登場していただきます!雷ネット界に突如現れた狂気のマッドサイエンティスト!」

司会者「鳳凰院........凶ーーー真だああぁぁっ!!!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」


大歓声の中会場に入ると、客席の最前列付近にラボメンたちの姿があった。

まゆり「オカリーン!ふぁいとー!」

綯「きょーま!あれやって、あれ!ふーははは、やって!」

岡部「うっ........」

「「「鳳凰院!鳳凰院!鳳凰院!」」」

会場からは鳳凰院コールが巻き起こる。こ、こうなったらやけくそだ!


岡部「フゥーハハハ!狂気のマッドサイエンティストにして世界の支配構造を破壊し、世に混沌をもたらす者....鳳凰院凶真、参上!!」バサァ!


「「「キタ―――――――――――――――――――!!」」」

ダル「ひゃっほう!厨二病乙!」

まゆり「オカリンかっこいー!」

るか「凶真さん、すごいです!」

綯「わーい♪ばさあ!」

オタA「バサァもキター!」

少年B「きょうま、きょうま、きょうま!」

オタC「鳳凰院氏カッケエエエエエエエ!」


紅莉栖「ええ....なんでこれが人気なの....?」

萌郁「私も....わからない....」

観客が落ち着くのを待って、再び司会者が話し始めた。

司会者「さあ、そしてこの鳳凰院凶真を迎え撃つのは、あの雷ネット界の絶対的王者....」


そして、会場の反対側から姿を現したのは――


司会者「ディフェンディングチャンピオン、フェイリス・ニャンニャンだー!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」


さらに大きな歓声が、会場を包み込む。

ダル「キター!フェイリスたーん!優勝はフェイリスたんで決まりだお!」

まゆり「あー!ダル君、裏切っちゃだめだよー!」

ダル「いや、かわいいは正義だから。そもそも僕はフェイリスたんを応援しに来たんだお」

るか「そ、そうなんですか?」

ダル「うおー!フェイリスたーん!俺だ、結婚してくれー!」

オタB「いや、フェイリスたんは俺の嫁」

オタD「は?は?は?」

ダル「ちょ、何言っちゃってんの?」

紅莉栖「....これはひどい」



岡部「........」

よかった....フェイリス、生きていてくれたか....

思い出は消えてしまったが、お前が生きているなら、それでいいんだ。

フェイリス「........」


ダル「....あれ?フェイリスたんの、いつものマイクパフォーマンスは?」

フェイリスは、俺を見つめたまま立ち尽くしていた。会場がざわつく。


司会者「え、えーと、フェイリスさん?」

フェイリス「........」

司会者「フェイリスさーん!!」

フェイリス「ニャニャ!?あ........みんなー!今日はフェイリスの応援に来てくれて、ありがとニャンニャン♪楽しんで行ってねー!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

ダル「ああっ!フェイリスたん、今日もかわいいお!」



司会者がルールの説明をしているうちに、俺とフェイリスは試合用のテーブルについた。

フェイリスは、その間もずっと俺から目をそらすことなく見つめてくる。

フェイリス「ねえねえ、凶真」

そして、フェイリスはマイクを外して俺に顔を近づけ、小さな声で話しかけてきた。


その時、フェイリスがチョーカーをつけていることに気付いた。ずいぶんと古くなっているが、まぎれもなくあのチョーカーだ。

もしかしたら、フェイリスはまだ10年前に会った俺のことを覚えているかもしれない――


岡部「なんだ?」

フェイリス「この大会でもし優勝したら、これからはもっと自由に行動してもいいって、フェイリスはパパと約束をしたのニャ。それから、アキバの街の再開発も、自由にしていいって!」

岡部「??それがどうしたんだ?」

フェイリス「だから、これからは凶真もフェイリスに協力してニャ♪」

岡部「もしかして、俺に負けろと言っているのか?」

フェイリス「フニャ!そういうわけじゃないニャ~。だって、凶真はフェイリスと一緒にいてくれるんでしょ?」


岡部「!.......お前、俺のことを覚えているのか?」


フェイリス「もちろん、覚えてる....それに、思い出したニャ。凶真のこと」

岡部「思い....出した?」

フェイリス「うん。凶真と一緒に過ごしたことも、一緒にラボを創ったことも....それに、凶真がフェイリスを助けるために頑張ってくれたことも」

岡部「な........!?」

フェイリス「今、凶真の目を見たら全部思い出したニャ!」

岡部「な、なぜだ!?」

フェイリス「フェイリスは、凶真のことなら、目を見たらなんでもわかっちゃうのニャン♪」


フェイリス「........それに、10年間ずーっと凶真のことを思い続けていたから、かな?」」

フェイリスは、さらに俺に顔を近づけてきた。




フェイリス「約束通り、留未穂はあなたをもう一度、好きになったよ」





岡部「....!」

岡部「フ....フフ........」




岡部「フゥゥーーーーーハハハハハハハハハハ!!!」


ダル「ちょ、二周目!?」

岡部「やはり、世界はこの鳳凰院凶真の手の内にあるようだな!我が魔眼リーディングシュタイナーは、俺の勝利をその視界にとらえた!」

紅莉栖「いや、意味不明なわけだが。早く始めなさいよ....」


フェイリス「ニャフフ~、凶真は、フェイリスには勝てないのニャン♪そう、これは前世から定められた宿命ニャ!」

ダル「おお、フェイリスたんが応戦している!いいぞもっとやれ!ていうかオカリン自重しろ!」


岡部「フゥーハハハ!いいだろう、フェイリスよ!そこまで言うからには、勝つ自信があるのだな?」

フェイリス「もちろんニャ~♪」

岡部「では、俺が勝ったら、今日からお前は俺のものだ!」


ダル「........は?」

紅莉栖「あ、あいつ何をほざいてるの!?」

るか「あ、あわわ....」


フェイリス「じゃあ、フェイリスが勝ったら、凶真は一生フェイリスのものニャ♪まずはアキバの萌え化に協力をしてもらうニャ!」

ダル「」

萌郁「....え?」

まゆり「わわー!ど、どういうこと?」

ダル「つーか、どっちもご褒美じゃねーか!オカリィィィン!」

綯「???二人とも、なんの話をしてるの?」

紅莉栖「いやいやいやいや、おかしいおかしい....」

萌郁「これって、厨二病なの....?」

まゆり「う~ん....でもオカリン、なんだか楽しそうなのです♪」

るか「た、確かに....」



岡部「なんにせよ、最後に笑うのはやはりこの俺――」




岡部「――これが、シュタインズゲートの選択!」







【シュタインズゲート】幻影のチェシャ猫


~~~完~~~


今度こそ完結です!

今までありがとうございました!

>>209

確かにそうですね。でも、因果律をつなげるためには彼は死ねないので....

三点リーダーが使えてないことで分かった方もいるかもしれませんが、>>1は初SSです(今は使えます…)。

ボロクソに叩かれたらどうしようかと内心ひやひやでしたが、皆優しくて本当にありがたかったです。

html化依頼はどのタイミングがいいでしょうか?

乙!久々に引き込まれる良作だった、これだからSSを読むのを止められない
あ、HTML化依頼はいつ出しても大丈夫(最近依頼してから2週間は処理されてない)だけど依頼してからSS投下したら最依頼しなきゃいけないから気を付けて

>>244

ありがとうございます。
いつでもいいなら様子見てそのうち依頼出してきます。

依頼出してきました。

またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月28日 (月) 16:55:48   ID: B2qYrIV7

カスだな

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