のび太「ドラえも~~~~~ん」
ドラえもん「どうしたんだいのび太くん」
のび太「緊急事態だよ!」
ドラえもん「君が言っても全く慌てる気にならないのが残念だ」
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のび太「早く外を見るんだ!」
ドラえもん「はいはい、分かったからそう慌てるな」
ココアを啜りながら見るテレビには、日常でよく目にするものが映っていました。
こういう類のものは興味もなくあまり関わることもないけれど、一般的に知られているものなら私も知っています。
画面に映る青い物体と黄色い人間は、とてもびっくりした顔で外を凝視しているのでした。
「なんだあれは!」
と、青い物体は状況を確認しようと頭を悩ませ、それとは対照に黄色い人間はワクワクしたような顔で外を見つめています。
その先にあるのは一体なんなのだろう
私はココアを啜るのをやめて画面に注目して、少しだけ夢中になります。
そしてその先に映ったものを見ようとした時、
……………………………………
……………………
………
小鳥の鳴き声と共に目が覚めた私は、今が朝であることを知ります。
髪を解いて整えて、ご飯を食べて歯を磨いて、事務所に向かおうと家を出ました。
「行ってきまーす」
事務所までは2時間も掛かり周りからは大変だねぇと言われることもあるけれど、不思議と私は事務所まで通うのを快く思っています。
本当にアイドル活動をしてるんだ!
時間が掛かることに、そんな満足感を持っているのかもしれません。
事務所まで向かうことに偶に苦痛を感じることはあるけれど、それは嫌なものではなく頑張るぞ!という気分にさせてくれるのです。
事務所には千早ちゃんを含め、やよいや雪歩が来ていました。
「千早ちゃん、おはよう」
呼びかけると、ソファに座ってイヤホンを耳に付けていた千早ちゃんは、振り向いてくれました。
「おはよう、春香」
千早ちゃんは耳からイヤホンを外すと、立ち上がって私に歩いてきます。
友人同士の小さなひととき
それは私にとって大事な時間なのでした。
「遠いのにいつも早いわね、関心するわ」
「そんなことないよ」
いいえ、と、千早ちゃんは首を振って私に微笑みます。
朝から一体どうしたのかな
そう思ったけれど、私に向かって走ってきた2人が思考を遮るのでした。
「はるるん、亜美におはようはないの?」
「真美にもいってよねー」
亜美と真美が飼い主に群がる子犬のように私に飛びついてきます。
こーらこら、事務所で走らない
そう言うのも無意味に思い私はそれらを優しく迎えます。
「あっはは、おはよう亜美真美」
「おはようはるるん〜」
千早ちゃんと話そうと思ったけれど、既に千早ちゃんの姿は何処にも見当たらず、仕方なく私は2人の相手をするのでした。
昼になる頃には全員が集まって、今日の活動についての説明がプロデューサーさんからされます。
は?
亜美真美との絡み?
そんなのはカットよカット!
適当に促したら満足したのか、亜美と真美は何処かへ行きました。
気が付いたら全員が集まっていて、ようやく今日事務所に来た理由、昼過ぎからのアイドル活動についての説明が始まりました。
夕方に活動が終わり、見に来た人達の満足した顔を見た後に私は、今日1日やるべきことを達成した満足感に包まれて事務所に戻りました。
戻る途中、「次の大事な活動はなんですか?」と、プロデューサーさんに聞くと、プロデューサーはこう答えました。
「1カ月後にあるライブかな」
それを聞いた私は、事務所に着くまで1カ月後に向けた計画を考え、帰りつく頃にはほぼスケジュールを考え終えていました。
「ねぇねぇ千早ちゃん」
私は1カ月後のライブについて千早ちゃんに聞こうと、イヤホンを付けている千早ちゃんに呼びかけました。
相変わらず音楽熱心な千早ちゃんは、私の納得する回答をしてくれます。
私は千早ちゃんにこう聞きました。
「千早ちゃんは何かするの?」
「私は空想の中で歌うトレーニングを取り入れてみようと思うわ」
それからは特訓が始まりました。
周りの人は頑張るねぇと言うけれど、
私にはライブをやるんだったらこれくらいやらないとダメでしょうと思えてしまいます。
あっという間に1ヶ月が経ち、ライブの日がやってきた時、私は千早ちゃんに聞きました。
「千早ちゃん、練習の成果はどうだった?」
すると、千早ちゃんはこう答えました。
「えぇ、もう3回くらいライブをやり終えたわ」
私は満足してライブに臨みました。
駆け付けた人たちは皆満足して帰り、私はまた一つ目標を達成した満足感に包まれ、ライブ会場を後にします。
そして事務所に戻る途中、私はまたプロデューサーさんに聞きました。
「次は何を目標にしてるんですか?」
「次は月末にあるミニライブをって、今日はもう休め」
「いえ…そういうわけにはいきませんから」
私はまたいつも通りスケジュールを考えようとしたけれど、何か腑に落ちないものを感じました。
次のミニライブまでのスケジュールを考えるより、今のスケジュールをこなした方が圧倒的にいい結果が生まれるのです。
次のミニライブは、あまり大きなイベントではありませんでした。
私が目指すのはトップアイドルであり、物足りなく感じた私はさらなる高みを目指して、日々のスケジュールの見直しを始めました。
事務所に着いても何も思い浮かばなかった私は、千早ちゃんに意見を聞いてみました。
「千早ちゃんは、何かするの?」
すると、千早ちゃんはこう答えました。
「毎日ライブをやってみようと思う」
なるほどねぇ
私も千早ちゃんと同じことに取り組んでみようと思いました。
そうすれば、もっと高みを目指せる!
すると、わくわくしたものが何処からか込み上げてきたけれど、同時にそれは脱力感へと変わりました。
どことなく、トップアイドルというものが見えてしまったんです。
今までトップアイドルというものは、遠く遠く、手の届かない所にありました。
それがいつの間にか、どうすればトップアイドルになれるのかが分かってしまっていたんです。
それを知った時、私はトップアイドルというものがとても小さなものに見えてしまいました。
「はるるん…」
「え?」
振り返ると、亜美がにやにやと笑っていました。
「どうしたの?」
「今度どっか遊びにいこうよ、はるるんも偶には遊んだら?」
私に笑う亜美の顔が、私にはとても遠いものに感じました。
私だけ別の世界に生きているような気がして、小さな孤独感を感じるのでした。
私は何処へ向かっていけばいいんだろう
その時、私は初めて真面目に考えたのかもしれません。
帰る際、ひとことプロデューサーさんに聞きました。
「トップアイドルってなんですか?」
「え?」
プロデューサーさんは少し戸惑ったように私を見たけれど、私の雰囲気がプロデューサーさんを真面目な表情にさせました。
「それはとっても凄いアイドルのことさ」
それは、今の私達の生活で実現できるんですか?
そう聞こうとしたけれど、私はそれをしませんでした。
何処と無くプロデューサーさんがとても遠いものに感じたからです。
事務所から出る際、私は千早ちゃんに呼び止められました。
「偶には一緒に帰りましょう?」
夜道を歩いていると、千早ちゃんは何処か楽しそうでした。
時が過ぎていくのは早いけれど、千早ちゃんといる時のひとときはとても静かに感じます。
「トップアイドルってなんなのかな?」
「うーん。私もそれを考えてたところなの」
「千早ちゃんも?」
「ええ。何か、もっと大きな物を知らないといけない気がして」
私もそう思ってるよ
そう言おうとして、千早ちゃんは続けて喋ります。
「昨日変な夢を見たの」
「変な夢?」
「カメハメハ!って叫びながら手を構える人がいたんだけど」
「…うん」
「その人は急にそれを止めて空を見上げたの…なんだあれは!って」
「へぇ〜」
「なんだか、それがとても短なものに感じて…ただの夢には思えなかったわ」
私にもそんな事があった気がする
私は千早ちゃんを見送った後、家へと足を歩み始めました。
近いうちに何かがくる!
私はそれを見に染みて感じました。
街を歩いている皆は知らないだけで、着々と何かが始まろうとしている。
それを知っているのはごく僅か。
私はゆっくりと、夜空を見上げました。
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